(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】ユビキチン化欠損キメラ抗原受容体及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20240624BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240624BHJP
C12N 15/867 20060101ALI20240624BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240624BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20240624BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240624BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20240624BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240624BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240624BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20240624BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240624BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240624BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20240624BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C07K19/00
C12N15/867 Z
C07K16/28
C07K16/46
C12N5/10
C12N7/01
C12N15/13
A61K35/17
A61K38/17
A61P35/02
A61P37/04
C12P21/08
(21)【出願番号】P 2021561800
(86)(22)【出願日】2019-10-31
(86)【国際出願番号】 CN2019114655
(87)【国際公開番号】W WO2020211330
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2021-12-15
(31)【優先権主張番号】201910302508.X
(32)【優先日】2019-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518222745
【氏名又は名称】上海科技大学
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI TECH UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No.393 Middle Huaxia Road, Pudong New Area, Shanghai, China
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】王▲ハオ▼鵬
(72)【発明者】
【氏名】李文濤
(72)【発明者】
【氏名】邱士真
(72)【発明者】
【氏名】魏平
【審査官】松原 寛子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/007869(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/129418(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第108350062(CN,A)
【文献】Nature biotechnology,2018年,Vol.36,p.346-350
【文献】cancer cell,2015年,Vol.28,p.417-420
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/13
C12N 15/62
C12N 15/63
C12N 15/867
C07K 16/28
C07K 16/46
C07K 19/00
C12N 5/10
C12N 7/01
A61K 35/17
A61K 38/17
A61P 35/02
A61P 37/04
C12P 21/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
順に連結される細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、細胞内ドメインを含み、
前記細胞外ドメインは抗原認識領域を含み、
前記細胞内ドメインは、順に連結される共刺激シグナル伝達領域とCD3ζ細胞内領域を含み、共刺激シグナル伝達領域-CD3ζ細胞内領域を形成しており、前記共刺激シグナル伝達領域は、CD28
細胞内領域又は41BB
細胞内領域から選択され、
前記共刺激シグナル伝達領域-CD3ζ細胞内領域は、野生型の共刺激シグナル伝達領域-CD3ζ細胞内領域内のリシンがアルギニンに突然変異して形成されたポリペプチドであり、前記共刺激シグナル伝達領域-CD3ζ細胞内領域における全てのリシン部位がアルギニンに突然変異している、キメラ抗原受容体。
【請求項2】
(1)前記41BB細胞内領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:1に示され、
(2)前記CD28細胞内領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:2に示され、
(3)前記CD3ζ細胞内領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:3に示され、
(4)前記共刺激シグナル伝達領域-CD3ζ細胞内領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:4又は5に示される、
との特徴のうちの1又は複数を更に含むことを特徴とする請求項1に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項3】
a.前記抗原認識領域は、腫瘍表面抗原を標的とする一本鎖抗体から選択され、前記腫瘍表面抗原は、CD19、CD123、CD30、BCMA、Her2、IL13Rα2及びGD2のうちの1又は複数から選択され、
b.前記細胞外ドメインは、シグナルペプチド及び/又はヒンジ領域を更に含み、順に連結されるシグナルペプチド-抗原認識領域ヒンジ領域を形成しており、
c.前記膜貫通ドメインは、CD4、CD8α、OX40又はH2-Kbの膜貫通領域から選択され、
d.前記キメラ抗原受容体のアミノ酸配列はSEQ ID NO:10又はSEQ ID NO:11に示される、
との特徴のうちの1又は複数を更に含むことを特徴とする請求項1に記載のキメラ抗原受
容体。
【請求項4】
特徴aにおいて、前記一本鎖抗体はFMC63又は14g2aから選択されることを特徴とする請求項3に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項5】
特徴bにおいて、前記シグナルペプチドはCD8αシグナルペプチドから選択され、及び/又は、前記ヒンジ領域はCD8αのヒンジ領域から選択されることを特徴とする請求項3に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項6】
(1)請求項1~5のいずれか1項に記載のキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドと、
(2)(1)の前記ポリヌクレオチドの配列の相補的ポリヌクレオチド、から選択されるポリヌクレオチド。
【請求項7】
前記ポリヌクレオチドの配列は、SEQ ID NO:15~SEQ ID NO:18に示されることを特徴とする請求項6に記載のポリヌクレオチド。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のポリヌクレオチドを含む核酸構築物。
【請求項9】
ベクターであることを特徴とする請求項8に記載の核酸構築物。
【請求項10】
レンチウイルスベクターであり、複製起点、3’LTR、5’LTR、及び請求項6又は7に記載のポリヌクレオチドを含むことを特徴とする請求項8に記載の核酸構築物。
【請求項11】
請求項8~10のいずれか1項に記載の核酸構築物を含むレンチウイルス。
【請求項12】
請求項11に記載のレンチウイルスを用いて
T細胞を感染させるステップを含むT細胞の体外活性化方法。
【請求項13】
遺伝子組み換えT細胞を含む薬物組成物であって、
前記T細胞は、請求項6又は7に記載のポリヌクレオチドを含むか、或いは請求項8~10のいずれか1項に記載の核酸構築物を含むか、或いは請求項11に記載のレンチウイルスに感染されているか、或いは請求項12に記載の方法で作製された体外にて活性化されたT細胞である、ことを特徴とする薬物組成物。
【請求項14】
請求項1~5のいずれか1項に記載のキメラ抗原受容体、請求項6又は7に記載のポリヌクレオチド、請求項8~10のいずれか1項に記載の核酸構築物又は請求項11に記載のレンチウイルス、又は請求項13に記載の薬物組成物を、腫瘍治療薬の製造に適用する方法。
【請求項15】
前記腫瘍は、白血病及びリンパ腫のうちの1又は複数から選択されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記腫瘍は、B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、ヘアリー細胞白血病及び急性骨髄性白血病から選択されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キメラ抗原受容体の分野に関し、具体的には、ユビキチン化欠損キメラ抗原受容体及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
キメラ抗原受容体は、CAR(chimeric antigen receptor)と略称され、特定の腫瘍抗原を標的とするCARが搭載されたT細胞をCAR-T細胞と称する。CAR-T療法は、養子免疫細胞療法に続く優れた治療法であり、すでに様々な腫瘍(特に、血液系腫瘍)の治療において明らかな効果を得ている。2017年、米国FDAは、CD19抗原を標的とする商業化された2種類のCAR-T製品について、悪性白血病及びリンパ腫治療への適用を承認しており、治療効果が目覚ましい。しかし、固形腫瘍の治療において、CAR-T療法には依然として多くの制限が存在する。これについては、様々な要因に起因してCAR-T細胞が患者の体内で有効に増殖し続けられないことが、CAR-Tの抗腫瘍活性を制限する主な原因の1つであると考えられている。研究の結果、血液腫瘍の治療か固形腫瘍の治療かに関わらず、体内におけるCAR-T細胞の増殖能力を強化させれば、CAR-T治療の効果を著しく改善可能なことが証明されている。これは、CAR-T設計の最適化に対し1つの方向性を示すものである。既存の最適化設計ストラテジーでは、主に、CAR-T細胞内にT細胞の肝細胞性及び増殖能力を促進するサイトカイン(例えば、IL-7、IL-15、IL-18等(13-15))を共発現させている。しかし、こうした設計は、往々にして作製の難易度が高く、形質転換効率が低い等の要因から、一定規模以上の工業生産や臨床実践が制限されている。
【0003】
よって、CAR構造そのものを対象とした改変設計がより好ましい方案と考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来技術の欠点に鑑みて、本発明の目的は、ユビキチン化欠損キメラ抗原受容体及びその使用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的及び関連するその他の目的を実現するために、本発明は、第1の局面において、キメラ抗原受容体を提供する。当該キメラ抗原受容体は、順に連結される細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、細胞内ドメインを含む。
【0006】
前記細胞外ドメインは抗原認識領域を含む。
【0007】
前記細胞内ドメインは、順に連結される共刺激シグナル伝達領域とCD3ζ細胞内領域を含み、共刺激シグナル伝達領域-CD3ζ細胞内領域を形成している。
【0008】
前記共刺激シグナル伝達領域-CD3ζ細胞内領域は、野生型の共刺激シグナル伝達領域-CD3ζ細胞内領域内のリシンがアルギニンに突然変異して形成されたポリペプチドである。
【0009】
本発明は、第2の局面において、ポリヌクレオチド配列を提供する。当該ポリヌクレオチド配列は、(1)請求項で記載するキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチド配列と、(2)(1)で記載したポリヌクレオチド配列の相補的配列、から選択される。
【0010】
本発明は、第3の局面において、核酸構築物を提供する。前記核酸構築物は、前記ポリヌクレオチド配列を含む。
【0011】
好ましくは、前記核酸構築物はベクターである。
【0012】
より好ましくは、前記核酸構築物はレンチウイルスベクターであり、複製起点、3’LTR、5’LTR、前記ポリヌクレオチド配列を含む。
【0013】
本発明は、第4の局面において、レンチウイルスを提供する。前記レンチウイルスは前記核酸構築物を含む。
【0014】
本発明は、第5の局面において、T細胞の体外活性化方法を提供する。前記方法は、前記レンチウイルスを前記T細胞に感染させるステップを含む。
【0015】
本発明は、第6の局面において、遺伝子組み換えT細胞、又は当該遺伝子組み換えT細胞を含む薬物組成物を提供する。特徴として、前記細胞は、前記ポリヌクレオチド配列を含むか、或いは前記核酸構築物を含むか、或いは前記レンチウイルスに感染されているか、或いは前記方法で作製される。
【0016】
本発明は、第7の局面において、前記キメラ抗原受容体、前記ポリヌクレオチド配列、前記核酸構築物又は前記レンチウイルスの、活性化T細胞の作製及び/又はT細胞の分解抑制における使用を提供する。
【0017】
本発明は、第8の局面において、前記キメラ抗原受容体、前記ポリヌクレオチド配列、前記核酸構築物、前記レンチウイルス又は前記遺伝子組み換えT細胞を、(1)腫瘍治療薬の製造、(2)腫瘍殺傷効率の向上、(3)T細胞の増殖能力の維持、(4)腫瘍成長の抑制、のうちの1又は複数の用途に適用する方法を提供する。
【0018】
好ましくは、前記腫瘍は、白血病又はリンパ腫のうちの1又は複数から選択される。
【0019】
より好ましくは、前記腫瘍は、B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、ヘアリー細胞白血病及び急性骨髄性白血病から選択される。
【0020】
本発明は、第9の局面において、細胞療法を提供する。当該細胞療法において、T細胞は前記CARを発現するよう遺伝子組み換えがなされ、CAR-T細胞はこれを必要とする適用者に注入される。
【発明の効果】
【0021】
上述したように、本発明におけるユビキチン化欠損キメラ抗原受容体及びその使用は、以下の有益な効果を有する。
【0022】
本発明では、CARの細胞内セグメントにおける全てのリシン部位をアルギニンに突然変異させることで、抗原刺激後にCARに発生するユビキチン修飾を阻害した。当該ストラテジーは、異なるCARや、変換の異なる細胞内共刺激領域のいずれにも適用可能である。
【0023】
また、このような改変方法を細胞内共刺激領域が41BBであるCAR-Tに適用したところ、従来の41BB CAR-Tと比較して、KRを突然変異させたこの種のCAR-Tは、体外培養時に標的細胞刺激にいっそう良好に反応して増殖し、セントラルメモリーT細胞への分化に傾いた表現型を有した。且つ、長期間にわたる体外腫瘍殺傷試験におい
て、この種のCAR-Tはより強い殺傷活性を示した。強化されたこのような表現型は、41BB KR CAR-Tが代謝においていっそう酸化的リン酸化依存となるのに有利であり、より強いミトコンドリア生成能力及び機能を有した。且つ、改変した41BB KR CAR-Tは、従来の41BB WT CAR-Tよりも多くの抗酸化タンパク質産物を産生可能であり、細胞の生存及び増殖能力が強化された。
【0024】
更に、本発明は、腫瘍マウスモデルにおいて、41BB KR CAR-Tと41BB WT CAR-Tの体内抗腫瘍効果を比較した。増殖レベルにおいて、41BB KR CAR-Tは、より強い増殖反応を有しており、且つ増殖能力が一段と持続的であった。また、細胞分化表現型においては、脾臓、血液或いは腫瘍のいずれにおいても、改変されたCAR-Tはより多くのセントラルメモリーT細胞を蓄積し、ターミナルエフェクターT細胞への分化は減少した。よって、改変したCAR-Tは、より有効に腫瘍組織を浸潤して殺傷することが可能であり、T細胞注射投与量が同一の場合には、改変したCAR-Tの方が腫瘍の成長を効果的に制御可能であった。
【0025】
本発明は、CAR-Tの最適化及び改変のための方法を提供するものであって、特に、CAR-Tが固形腫瘍内での増殖能力に劣るとの課題について解決策を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1A】
図1Aは、Jurkat細胞にCD19-ζCARを発現させて、CD19特異的抗原又はMeso非抗原を発現させたK562細胞と作用させた結果を示す図である。
【
図1B】
図1Bは、Jurkat細胞に、CD19-ζ、CD19-CD28ζ、CD19-41BBζCARをそれぞれ発現させたあと、標的細胞と作用させた結果を示す図である。
【
図2】
図2は、KRを突然変異させたCARのダウンモジュレーション及び分解抑制の結果を示す図である(
図2のAは、ヒト初代T細胞にCD19-41BBζWT CAR又はKR CARを発現させた後のユビキチン修飾の状況を比較したものである。
図2のBは、ヒト初代T細胞にCD19-41BBζWT CAR又はKR CARを発現させた後の標的細胞刺激に対する反応を比較したものである。
図2のC及びDは、ヒト初代T細胞上で、KRの突然変異がCD19-CD28ζ及びGD2-CD28ζCARのダウンモジュレーションに及ぼす影響を比較したものである。
図2のEは、ヒト初代T細胞上で、CD19-41BBζCARの分解に対するKRの突然変異の影響をテストしたものである。
図2のFは、
図2のEの定量化結果であって、KRの突然変異が当該反応におけるCARの分解を効果的に抑制したことを示している。
図2のGは、Jurkat細胞上で、KRの突然変異がGD2-41BBζ、GD2-CD28ζCARの分解に及ぼす影響をテストしたものである。
図2のHは、
図2のGの定量化結果であって、KRの突然変異が抗原刺激誘導型のCARの分解を効果的に抑制したことを示している)。
【
図3】
図3は、KRの突然変異がCAR-Tの体外(in vitro)機能に及ぼす影響を示す図である(体外機能実験はいずれもヒト初代T細胞で実施した。
図3のAは、標的細胞刺激に反応した後のCAR-Tの増殖に対するKRの突然変異の影響を示している。
図3のBは、体外培養条件におけるWT及びKR CAR-Tの分化状況を示しており、CD62LとCD45RAを分化指標としてFACS分析を行ったものである。
図3のCは、
図3のBについての統計分析であって、KRの突然変異によって、CAR-Tがより多量にセントラルメモリーT細胞に分化した一方、ターミナルエフェクターT細胞への分化は減少したことを示している。
図3のDは、4日間標的細胞刺激した後のCAR-Tの分化表現型を示しており、CAR-Tと放射線照射後の標的細胞を2:1の比率で共培養し、CD27及びCD45ROを分化指標としてFACS分析を行ったものである。
図3のEは、
図3のDについての統計分析であって、KRの突然変異によって、CAR-Tが標的細胞刺激への反応後により多くのセントラルメモリーT細胞を形成したことを示している。
図3のFは、CAR-Tの体外殺傷活性テストを示している)。
【
図4】
図4は、CD19-41BBζKR CARがより多くのセントラルメモリーT細胞を蓄積可能であること、及び強化された増殖表現型の分子基盤を有することを示す図である(この部分の実験は、いずれもヒト初代T細胞で実施及び検証した。
図4のAは、酸化代謝におけるWT CAR-TとKR CAR-Tの差をシーホース社(Seahorse)の計器で検出したものであり、検出細胞にはいずれも予め2週間の標的細胞刺激を施した。
図4のBは、
図4のAの主要パラメータについての統計分析を示す図である。
図4のC及びDは、Mito Trackerを検出マーカーとして、FACS検出方法及び共焦点蛍光検出方法のそれぞれによって、KR CAR-Tがより強いミトコンドリア生成能力を有することを検証したものである。
図4のEは、放射線照射後の標的細胞による刺激前後のWT及びKR CAR-Tについて、ミトコンドリアの生成及び機能に関連する4つの重要遺伝子の変化を蛍光定量PCRで検出したものである。
図4のF及びGは、ウエスタンブロット検出方法及びFACS検出方法のそれぞれによって、KR CAR-Tが標的細胞刺激後により多くの抗アポトーシス因子Bcl-xLを産生可能なことを検証したものである。
図4のHは、蛍光定量PCRを検出手段として、KR CAR-Tが標的細胞刺激後に、WT CAR-Tよりも多くの41BB下流抗アポトーシス産物Bcl-xL、Bfl1のmRNAを生成することを検証したものである)。
【
図5】
図5は、腫瘍マウスモデル体内におけるCD19-41BBζWTとKR CAR-Tの機能を比較した図である(
図5のAは、体内におけるWT及びKR CARのダウンモジュレーション現象を比較したものである。
図5のBは、WT及びKR CAR-Tの腫瘍浸潤効果を示している。
図5のCは、腫瘍マウス体内にCAR-T細胞を注射してから10日後、20日後、40日後のマウス脾臓内におけるWT及びKR CAR-Tの数量の変化を示している。
図5のDは、腫瘍マウスの脾臓内におけるCAR-Tの分化表現型を比較したものである。
図5のEは、
図5のDについての統計分析図である。
図5のFは、腫瘍マウスの末梢血内におけるCAR-Tの分化表現型を比較したものである。
図5のGは、
図5のFについての統計分析図である。
図5のHは、腫瘍組織内におけるCAR-Tの分化表現型を比較したものである。
図5のIは、
図5のHについての統計分析図である)。
【
図6】
図6は、CD19-41BBζWTとKR CAR-Tの抗腫瘍効果を比較した図である(
図6のAは、異なるT細胞を注射したNSGマウス体内におけるホタルルシフェラーゼ遺伝子を発現した標的細胞の成長状況を示している。
図6のBは、
図6のAの定量化結果を示す図である)。
【
図7】
図7は、CD19-41BBζ及びCD19-CD28ζCAR-T細胞の表現型に対するKRの突然変異の影響を比較した図である(
図7のA及びBは、それぞれ、Jurkat細胞上にCD19-41BBζ又はCD19-CD28ζ及び対応する突然変異型CARを発現させた後のCD69及びICOSの発現レベルを比較したものである。
図7のCは、CD19-41BBζ又はCD19-CD28ζ及び対応する突然変異型CARを発現させたヒト初代T細胞のPD-1発現レベルを示している。図中のPD-1の相対的な発現レベルは、CD19-41BBζWT CAR-T細胞の発現レベルを基準としている。
図7のD~Gは、CARを発現した後の初代T細胞の分化表現型の結果を示している。
図7のD及びEは、CD19 CARを発現したT細胞を示しており、
図7のDはCD4T細胞、
図7のEはCD8T細胞を示している。
図7のF及びGは、GD2 CARを発現したT細胞を示しており、
図7のFはCD4T細胞、
図7のGはCD8T細胞を示している)。
【
図8】
図8は、腫瘍細胞再刺激モデルに対するCD19-41BBζWT及びKR CAR-T細胞の反応効果を比較した図である(
図8のAでは、マウスに2×10
6個の腫瘍細胞を皮下移植してから4日後に1.5×10
6個のCAR-T細胞を注射して治療し、マウスの体全体から腫瘍信号が検出されなくなってから腫瘍細胞を再び移植した(尾静脈に1×10
6個の腫瘍細胞を注入)。矢印は、再刺激のタイミングを示しており、各線はマウス1匹を示している。
図8のBは、標的細胞で10日間体外刺激した後の2種類のCAR-T細胞について、体内での抗腫瘍効果を比較したものである。皮下移植した腫瘍細胞は1×10
6個であり、4日後に尾静脈にT細胞を2×10
6個注射した。なお、マウスは各群6匹とした。
図8のCは、標的細胞で21日間体外刺激した後の2種類のCAR-T細胞について、体内での抗腫瘍効果を比較したものである。皮下移植した腫瘍細胞は3×10
6個であり、4日後に尾静脈にT細胞を1×10
7個注射した。なお、マウスは各群4~6匹とした。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明で記載するキメラ抗原受容体は、順に連結される細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、細胞内ドメインを含む。
【0028】
前記細胞外ドメインは抗原認識領域を含む。
【0029】
前記細胞内ドメインは、順に連結される共刺激シグナル伝達領域とCD3ζ細胞内領域を含み、共刺激シグナル伝達領域-CD3ζ細胞内領域を形成している。
【0030】
前記共刺激シグナル伝達領域-CD3ζ細胞内領域は、野生型の共刺激シグナル伝達領域-CD3ζ細胞内領域内のリシンがアルギニンに突然変異して形成されたポリペプチドである。
【0031】
一実施形態において、前記共刺激シグナル伝達領域は、CD27、CD28、CD134、41BB又はICOSの細胞内領域から選択される。
【0032】
好ましくは、前記共刺激シグナル伝達領域は、41BB細胞内領域又はCD28細胞内領域から選択される。
【0033】
一実施形態において、前記41BB細胞内領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:1に示される(41BB KR)。具体的には、以下である。
【0034】
RRGRRRLLYIFRQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCEL。
【0035】
一実施形態において、前記CD28細胞内領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:2に示される(CD28KR)。具体的には、以下である。
【0036】
RSRRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRRHYQPYAPPRDFAAYRS。
【0037】
一実施形態において、前記CD3ζ細胞内領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:3に示される(CD3KR)。具体的には、以下である。
【0038】
RVRFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDRRRGRDPEMGGRPQRRRNPQEGLYNELQRDRMAEAYSEIGMRGERRRGRGHDGLYQGLSTATRDTYDALHMQALPPR。
【0039】
一実施形態において、前記共刺激シグナル伝達領域-CD3ζ細胞内領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:4(41BB-CD3KR)又はSEQ ID NO:5(CD28-CD3KR)に示される。具体的には、以下である。
【0040】
RRGRRRLLYIFRQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCELRVRFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDRRRGRDPEMGGRPQRRRNPQEGLYNELQRDRMAEAYSEIGMRGERRRGRGHDGLYQGLSTATRDTYDALHMQALPPR。(SEQIDNO:4)
【0041】
RSRRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRRHYQPYAPPRDFAAYRSRVRFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDRRRGRDPEMGGRPQRRRNPQEGLYNELQRDRMAEAYSEIGMRGERRRGRGHDGLYQGLSTATRDTYDALHMQALPPR。(SEQIDNO:5)
【0042】
一実施形態において、前記抗原認識領域は、腫瘍表面抗原を標的とする一本鎖抗体から選択される。また、前記腫瘍表面抗原は、CD19、CD123、CD30、BCMA、Her2、IL13Rα2及びGD2のうちの1又は複数から選択される。
【0043】
好ましくは、CD19又はGD2から選択される。
【0044】
一実施形態において、前記一本鎖抗体は、軽鎖可変領域と重鎖可変領域を含む。
【0045】
一実施形態において、前記軽鎖可変領域と前記重鎖可変領域はリンカー配列で連結されている。
【0046】
一実施形態において、前記一本鎖抗体はFMC63又は14g2aから選択される。
【0047】
一実施形態において、前記一本鎖抗体は、モノクローナル抗体FMC63の軽鎖可変領域と重鎖可変領域を含み、前記軽鎖可変領域と重鎖可変領域が選択的にリンカー配列で連結されている。
【0048】
一実施形態において、前記一本鎖抗体は、モノクローナル抗体14g2aの軽鎖可変領域と重鎖可変領域を含み、前記軽鎖可変領域と重鎖可変領域が選択的にリンカー配列で連結されている。
【0049】
更に、前記細胞外ドメインは、シグナルペプチド及び/又はヒンジ領域を含み、順に連結されるシグナルペプチド-抗原認識領域ヒンジ領域を形成している。
【0050】
好ましくは、前記シグナルペプチドはCD8αシグナルペプチドから選択され、及び/又は、前記ヒンジ領域はCD8αのヒンジ領域から選択される。
【0051】
一実施形態において、前記抗原認識領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:6又はSEQ ID NO:7に示される。具体的には、以下である。
【0052】
DIQMTQTTSSLSASLGDRVTISCRASQDISKYLNWYQQKPDGTVKLLIYHTSRLHSGVPSRFSGSGSGTDYSLTISNLEQEDIATYFCQQGNTLPYTFGGGTKLEITGGGGSGGGGSGGGGSEVKLQESGPGLVAPSQSLSVTCTVSGVSLPDYGVSWIRQPPRKGLEWLGVIWGSETTYYNSALKSRLTIIKDNSKSQVFLKMNSLQTDDTAIYYCAKHYYYGGSYAMDYWGQGTSVTVSS(SEQ ID NO:6、抗CD19(FMC63))。
【0053】
DVVMTQTPLSLPVSLGDQASISCRSSQSLVHRNGNTYLHWYLQKPGQSPKLLIHKVSNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDLGVYFCSQSTHVPPLTFGAGTKLELKGGGGSGGGGSGGGGSEVQLLQSGPELEKPGASVMISCKASGSSFTGYNMNWVRQNIGKSLEWIGAIDPYYGGTSYNQKFKGRATLTVDKSSSTAYMHLKSLTSEDSAVYYCVSGMEYWGQGTSVTVSS。(SEQ ID NO:7、抗GD2(14g2a))
【0054】
一実施形態において、CD8αシグナルペプチドのアミノ酸配列はSEQ ID NO:8に示される。具体的には、以下である。
【0055】
MALPVTALLLPLALLLHAARP。
【0056】
一実施形態において、前記CD8αのヒンジ領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:9に示される。具体的には、以下である。
【0057】
TTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACD。
【0058】
前記膜貫通ドメインは、CD4、CD8α、OX40又はH2-Kbの膜貫通領域から選択される。好ましくは、CD8αの膜貫通領域から選択される。
【0059】
一実施形態において、前記CD8αの膜貫通領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:10に示される。具体的には、以下である。
【0060】
IYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYC。
【0061】
一実施形態において、前記キメラ抗原受容体のアミノ酸配列はSEQ ID NO:11~14に示される。具体的には、以下である。
【0062】
MALPVTALLLPLALLLHAARPEQKLISEEDLDIQMTQTTSSLSASLGDRVTISCRASQDISKYLNWYQQKPDGTVKLLIYHTSRLHSGVPSRFSGSGSGTDYSLTISNLEQEDIATYFCQQGNTLPYTFGGGTKLEITGGGGSGGGGSGGGGSEVKLQESGPGLVAPSQSLSVTCTVSGVSLPDYGVSWIRQPPRKGLEWLGVIWGSETTYYNSALKSRLTIIKDNSKSQVFLKMNSLQTDDTAIYYCAKHYYYGGSYAMDYWGQGTSVTVSSTTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDIYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYCRRGRRRLLYIFRQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCELRVRFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDRRRGRDPEMGGRPQRRRNPQEGLYNELQRDRMAEAYSEIGMRGERRRGRGHDGLYQGLSTATRDTYDALHMQALPPR。(SEQ ID NO:11、CD19 41BB KR CAR)
【0063】
MALPVTALLLPLALLLHAARPEQKLISEEDLDIQMTQTTSSLSASLGDRVTISCRASQDISKYLNWYQQKPDGTVKLLIYHTSRLHSGVPSRFSGSGSGTDYSLTISNLEQEDIATYFCQQGNTLPYTFGGGTKLEITGGGGSGGGGSGGGGSEVKLQESGPGLVAPSQSLSVTCTVSGVSLPDYGVSWIRQPPRKGLEW
LGVIWGSETTYYNSALKSRLTIIKDNSKSQVFLKMNSLQTDDTAIYYCAKHYYYGGSYAMDYWGQGTSVTVSSTTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDIYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYCRSRRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRRHYQPYAPPRDFAAYRSRVRFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDRRRGRDPEMGGRPQRRRNPQEGLYNELQRDRMAEAYSEIGMRGERRRGRGHDGLYQGLSTATRDTYDALHMQALPPR。(SEQ ID NO:12、CD19 CD28 KR CAR)
【0064】
MALPVTALLLPLALLLHAARPEQKLISEEDLDVVMTQTPLSLPVSLGDQASISCRSSQSLVHRNGNTYLHWYLQKPGQSPKLLIHKVSNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDLGVYFCSQSTHVPPLTFGAGTKLELKGGGGSGGGGSGGGGSEVQLLQSGPELEKPGASVMISCKASGSSFTGYNMNWVRQNIGKSLEWIGAIDPYYGGTSYNQKFKGRATLTVDKSSSTAYMHLKSLTSEDSAVYYCVSGMEYWGQGTSVTVSSTTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDIYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYCRRGRRRLLYIFRQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCELRVRFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDRRRGRDPEMGGRPQRRRNPQEGLYNELQRDRMAEAYSEIGMRGERRRGRGHDGLYQGLSTATRDTYDALHMQALPPR。(SEQ ID NO:13、GD2 41BB KR
CAR)
【0065】
MALPVTALLLPLALLLHAARPEQKLISEEDLDVVMTQTPLSLPVSLGDQASISCRSSQSLVHRNGNTYLHWYLQKPGQSPKLLIHKVSNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDLGVYFCSQSTHVPPLTFGAGTKLELKGGGGSGGGGSGGGGSEVQLLQSGPELEKPGASVMISCKASGSSFTGYNMNWVRQNIGKSLEWIGAIDPYYGGTSYNQKFKGRATLTVDKSSSTAYMHLKSLTSEDSAVYYCVSGMEYWGQGTSVTVSSTTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDIYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYCRSRRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRRHYQPYAPPRDFAAYRSRVRFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDRRRGRDPEMGGRPQRRRNPQEGLYNELQRDRMAEAYSEIGMRGERRRGRGHDGLYQGLSTATRDTYDALHMQALPPR。(SEQ ID NO:14、GD2 CD28 KR CAR)
【0066】
本発明のキメラ抗原受容体における上記各部分を形成する際には、互いを直接連結してもよいし、リンカー配列を介して連結してもよい。リンカー配列は、当該分野において周知の抗体に適用されるリンカー配列とすればよく、例えば、G及びSを含むリンカー配列とする。通常、リンカーは、前後が繰り返される1又は複数のモチーフを含む。例えば、当該モチーフは、GGGS、GGGGS、SSSSG、GSGSA及びGGSGGとすることができる。好ましくは、当該モチーフは、リンカー配列において隣接しており、繰り返し間にアミノ酸残基は挿入されない。リンカー配列は、1個、2個、3個、4個又は5個の繰り返しモチーフを含んで構成可能である。リンカーの長さは3~25個のアミノ酸残基とすることができ、例えば、3~15個、5~15個、10~20個のアミノ酸残基とする。いくつかの実施方案において、リンカー配列はポリグリシンリンカー配列である。
リンカー配列中のグリシンの数に特に制限はなく、通常は2~20個とし、例えば、2~15個、2~10個、2~8個とする。グリシン及びセリン以外にも、リンカーは、その他の既知のアミノ酸残基(例えばアラニン(A)、ロイシン(L)、トレオニン(T)、グルタミン酸(E)、フェニルアラニン(F)、アルギニン(R)、グルタミン(Q)等)を含み得る。
【0067】
理解すべき点として、遺伝子クローン操作では、適切な酵素切断部位の設計を要することが多い。その場合、発現するアミノ酸配列の末端に必然的に1又は複数の無関係な残基が導入されるが、これが標的配列の活性に影響することはない。また、融合タンパク質の作製、組換えタンパク質の発現促進、宿主細胞外に自動的に分泌される組換えタンパク質の取得、或いは組換えタンパク質の有利な精製のためには、組換えタンパク質のN-末端、C-末端又は当該タンパク質内のその他の適切な領域内(例えば、適切なリンカーペプチド、シグナルペプチド、リーダーペプチド、末端伸長等を含むが、これらに限らない)に何らかのアミノ酸を添加せねばならないことが多い。そのため、本発明の融合タンパク質(即ち、上記のCAR)のN末端又はC末端は、タンパク質タグとして、1又は複数のポリペプチドフラグメントを更に含んでもよい。本文では、任意の適切なタグを適用可能である。例えば、前記タグは、FLAG、HA、HA1、c-Myc、Poly-His、Poly-Arg、Strep-TagII、AU1、EE、T7、4A6、ε、B、gE及びTy1とすることができる。これらのタグは、タンパク質の精製に適用可能である。
【0068】
本発明で提供するポリヌクレオチド配列は、(1)請求項で記載するキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチド配列と、(2)(1)で記載したポリヌクレオチド配列の相補的配列、から選択される。
【0069】
好ましくは、前記ポリヌクレオチド配列はSEQ ID NO:15~18で示される。具体的には、以下である。
【0070】
ATGGCCTTACCAGTGACCGCCTTGCTCCTGCCGCTGGCCTTGCTGCTCCACGCCGCCAGGCCGGAGCAGAAGCTGATCAGCGAGGAGGACCTGGACATCCAGATGACACAGACTACATCCTCCCTGTCTGCCTCTCTGGGAGACAGAGTCACCATCAGTTGCAGGGCAAGTCAGGACATTAGTAAATATTTAAATTGGTATCAGCAGAAACCAGATGGAACTGTTAAACTCCTGATCTACCATACATCAAGATTACACTCAGGAGTCCCATCAAGGTTCAGTGGCAGTGGGTCTGGAACAGATTATTCTCTCACCATTAGCAACCTGGAGCAAGAAGATATTGCCACTTACTTTTGCCAACAGGGTAATACGCTTCCGTACACGTTCGGAGGGGGGACCAAGCTGGAGATCACAGGTGGCGGTGGCTCGGGCGGTGGTGGGTCGGGTGGCGGCGGATCTGAGGTGAAACTGCAGGAGTCAGGACCTGGCCTGGTGGCGCCCTCACAGAGCCTGTCCGTCACATGCACTGTCTCAGGGGTCTCATTACCCGACTATGGTGTAAGCTGGATTCGCCAGCCTCCACGAAAGGGTCTGGAGTGGCTGGGAGTAATATGGGGTAGTGAAACCACATACTATAATTCAGCTCTCAAATCCAGACTGACCATCATCAAGGACAACTCCAAGAGCCAAGTTTTCTTAAAAATGAACAGTCTGCAAACTGATGACACAGCCATTTACTACTGTGCCAAACATTATTACTACGGTGGTAGCTATGCTATGGACTACTGGGGCCAAGGAACCTCAGTCACCGTCTCCTCAACCACCACTCCCGCACCCCGCCCTCCTACTCCTGCCCCTACCATTGCtAGCCAACCGCTTA
GTCTGAGACCTGAGGCCTGTAGGCCCGCTGCTGGTGGCGCTGTGCACACCCGAGGATTGGACTTCGCTTGCGACATCTACATCTGGGCACCTCTGGCTGGGACCTGCGGCGTGTTGTTGTTGAGCCTGGTGATTACGCTGTACTGTAGACGGGGCAGACGCAGACTCCTGTATATATTCCGCCAACCATTTATGAGACCAGTACAAACTACTCAAGAGGAAGATGGCTGTAGCTGCCGATTTCCAGAAGAAGAAGAAGGAGGATGTGAACTGAGAGTGAGATTCAGCAGGAGCGCAGACGCCCCCGCGTACCAGCAGGGCCAGAACCAGCTCTATAACGAGCTCAATCTAGGACGAAGAGAGGAGTACGATGTTTTGGACCGCAGACGTGGCCGGGACCCTGAGATGGGGGGAAGACCGcagAGAAGGCGCAACCCTCAGGAAGGCCTGTACAATGAACTGCAGCGCGATAGAATGGCGGAGGCCTACAGTGAGATTGGGATGAGAGGCGAGCGCCGGAGGGGCAGAGGGCACGATGGCCTTTACCAGGGTCTCAGTACAGCCACCCGCGACACCTACGACGCCCTTCACATGCAGGCCCTGCCTCCTCGC。(SEQ ID NO:15、CD19 41BB KR CAR)
【0071】
ATGGCCTTACCAGTGACCGCCTTGCTCCTGCCGCTGGCCTTGCTGCTCCACGCCGCCAGGCCGGAGCAGAAGCTGATCAGCGAGGAGGACCTGGACATCCAGATGACACAGACTACATCCTCCCTGTCTGCCTCTCTGGGAGACAGAGTCACCATCAGTTGCAGGGCAAGTCAGGACATTAGTAAATATTTAAATTGGTATCAGCAGAAACCAGATGGAACTGTTAAACTCCTGATCTACCATACATCAAGATTACACTCAGGAGTCCCATCAAGGTTCAGTGGCAGTGGGTCTGGAACAGATTATTCTCTCACCATTAGCAACCTGGAGCAAGAAGATATTGCCACTTACTTTTGCCAACAGGGTAATACGCTTCCGTACACGTTCGGAGGGGGGACCAAGCTGGAGATCACAGGTGGCGGTGGCTCGGGCGGTGGTGGGTCGGGTGGCGGCGGATCTGAGGTGAAACTGCAGGAGTCAGGACCTGGCCTGGTGGCGCCCTCACAGAGCCTGTCCGTCACATGCACTGTCTCAGGGGTCTCATTACCCGACTATGGTGTAAGCTGGATTCGCCAGCCTCCACGAAAGGGTCTGGAGTGGCTGGGAGTAATATGGGGTAGTGAAACCACATACTATAATTCAGCTCTCAAATCCAGACTGACCATCATCAAGGACAACTCCAAGAGCCAAGTTTTCTTAAAAATGAACAGTCTGCAAACTGATGACACAGCCATTTACTACTGTGCCAAACATTATTACTACGGTGGTAGCTATGCTATGGACTACTGGGGCCAAGGAACCTCAGTCACCGTCTCCTCAACCACCACTCCCGCACCCCGCCCTCCTACTCCTGCCCCTACCATTGCtAGCCAACCGCTTAGTCTGAGACCTGAGGCCTGTAGGCCCGCTGCTGGTGGCGCTGTGCACACCCGAGGATTGGACTTCGCTTGCGACATCTACATCTGGGCACCTCTGGCTGGGACCTGCGGCGTGTTGTTGTTGAGCCTGGTGATTACGCTGTACTGTAGGAGTAGAAGGAGCAGGCTCCTGCACAGTGACTACATGAACATGACTCCCCGCCGCCCCGGGCCCACCCGCAGACATTACCAGCCCTATGCCCCACCACGCGACTTCGCAGCCTATCGCTCCAGAGTGAGATTCAGCAGGAGCGCAGACGCCCCCGCGTACCAGCAGGGCCAGAACCAGCTCTATAACGAGCTCAATCTAGGACGAAGAGAGGAGTACGATGTTTTGGACCGCAGACGTGGCCGGGACCCTGA
GATGGGGGGAAGACCGcagAGAAGGCGCAACCCTCAGGAAGGCCTGTACAATGAACTGCAGCGCGATAGAATGGCGGAGGCCTACAGTGAGATTGGGATGAGAGGCGAGCGCCGGAGGGGCAGAGGGCACGATGGCCTTTACCAGGGTCTCAGTACAGCCACCCGCGACACCTACGACGCCCTTCACATGCAGGCCCTGCCTCCTCGC。(SEQ ID NO:16、CD19 CD28 KR CAR)
【0072】
ATGGCCTTACCAGTGACCGCCTTGCTCCTGCCGCTGGCCTTGCTGCTCCACGCCGCCAGGCCGGAGCAGAAGCTGATCAGCGAGGAGGACCTGGATGTTGTCATGACTCAAACCCCTTTATCTTTGCCCGTATCCCTTGGTGACCAGGCTTCAATTTCGTGTCGTAGTAGCCAATCTCTCGTGCATCGCAATGGCAACACATATCTACACTGGTACCTGCAGAAACCAGGACAATCCCCGAAGTTATTGATCCATAAAGTTTCAAATCGATTTTCGGGGGTCCCTGATCGGTTCAGTGGTAGCGGCTCTGGAACGGACTTTACTCTTAAGATATCCAGAGTAGAAGCCGAGGATCTCGGGGTGTATTTCTGCTCACAGTCGACCCACGTTCCCCCACTAACATTTGGTGCAGGCACGAAACTGGAATTAAAGGGTGGCGGTGGCTCGGGCGGTGGTGGGTCGGGTGGCGGCGGATCTGAAGTTCAATTATTGCAGTCTGGTCCTGAGCTTGAAAAACCCGGCGCTTCCGTCATGATTTCATGTAAGGCCTCGGGAAGTAGCTTTACTGGGTATAATATGAACTGGGTACGTCAAAATATCGGTAAATCTCTCgaaTGGATAGGCGCAATTGATCCATACTATGGAGGGACCTCCTACAACCAGAAGTTCAAAGGTCGCGCGACACTAACGGTGGACAAGTCATCGAGTACTGCTTATATGCATCTGAAAAGCTTAACCTCTGAAGATTCCGCCGTTTACTATTGCGTCTCAGGCATGGAGTACTGGGGACAAGGGACATCGGTAACGGTGAGTAGCACCACCACTCCCGCACCCCGCCCTCCTACTCCTGCCCCTACCATTGCtAGCCAACCGCTTAGTCTGAGACCTGAGGCCTGTAGGCCCGCTGCTGGTGGCGCTGTGCACACCCGAGGATTGGACTTCGCTTGCGACATCTACATCTGGGCACCTCTGGCTGGGACCTGCGGCGTGTTGTTGTTGAGCCTGGTGATTACGCTGTACTGTAGACGGGGCAGACGCAGACTCCTGTATATATTCCGCCAACCATTTATGAGACCAGTACAAACTACTCAAGAGGAAGATGGCTGTAGCTGCCGATTTCCAGAAGAAGAAGAAGGAGGATGTGAACTGAGAGTGAGATTCAGCAGGAGCGCAGACGCCCCCGCGTACCAGCAGGGCCAGAACCAGCTCTATAACGAGCTCAATCTAGGACGAAGAGAGGAGTACGATGTTTTGGACCGCAGACGTGGCCGGGACCCTGAGATGGGGGGAAGACCGcagAGAAGGCGCAACCCTCAGGAAGGCCTGTACAATGAACTGCAGCGCGATAGAATGGCGGAGGCCTACAGTGAGATTGGGATGAGAGGCGAGCGCCGGAGGGGCAGAGGGCACGATGGCCTTTACCAGGGTCTCAGTACAGCCACCCGCGACACCTACGACGCCCTTCACATGCAGGCCCTGCCTCCTCGC。(SEQ ID NO:17、GD2 41BB KR CAR)
【0073】
ATGGCCTTACCAGTGACCGCCTTGCTCCTGCCGCTGGCCTTGCTGCTCCACGCCGCCAGGCCGGAGCAGAAGCTGATCAGCGAGGAGGACCTGGATGTTGTCATGACTCAAACCCCTTTATCTTTGCCCGTATCCCTTGGTGACCAGGCTTCAATTTCGT
GTCGTAGTAGCCAATCTCTCGTGCATCGCAATGGCAACACATATCTACACTGGTACCTGCAGAAACCAGGACAATCCCCGAAGTTATTGATCCATAAAGTTTCAAATCGATTTTCGGGGGTCCCTGATCGGTTCAGTGGTAGCGGCTCTGGAACGGACTTTACTCTTAAGATATCCAGAGTAGAAGCCGAGGATCTCGGGGTGTATTTCTGCTCACAGTCGACCCACGTTCCCCCACTAACATTTGGTGCAGGCACGAAACTGGAATTAAAGGGTGGCGGTGGCTCGGGCGGTGGTGGGTCGGGTGGCGGCGGATCTGAAGTTCAATTATTGCAGTCTGGTCCTGAGCTTGAAAAACCCGGCGCTTCCGTCATGATTTCATGTAAGGCCTCGGGAAGTAGCTTTACTGGGTATAATATGAACTGGGTACGTCAAAATATCGGTAAATCTCTCgaaTGGATAGGCGCAATTGATCCATACTATGGAGGGACCTCCTACAACCAGAAGTTCAAAGGTCGCGCGACACTAACGGTGGACAAGTCATCGAGTACTGCTTATATGCATCTGAAAAGCTTAACCTCTGAAGATTCCGCCGTTTACTATTGCGTCTCAGGCATGGAGTACTGGGGACAAGGGACATCGGTAACGGTGAGTAGCACCACCACTCCCGCACCCCGCCCTCCTACTCCTGCCCCTACCATTGCtAGCCAACCGCTTAGTCTGAGACCTGAGGCCTGTAGGCCCGCTGCTGGTGGCGCTGTGCACACCCGAGGATTGGACTTCGCTTGCGACATCTACATCTGGGCACCTCTGGCTGGGACCTGCGGCGTGTTGTTGTTGAGCCTGGTGATTACGCTGTACTGTAGGAGTAGAAGGAGCAGGCTCCTGCACAGTGACTACATGAACATGACTCCCCGCCGCCCCGGGCCCACCCGCAGACATTACCAGCCCTATGCCCCACCACGCGACTTCGCAGCCTATCGCTCCAGAGTGAGATTCAGCAGGAGCGCAGACGCCCCCGCGTACCAGCAGGGCCAGAACCAGCTCTATAACGAGCTCAATCTAGGACGAAGAGAGGAGTACGATGTTTTGGACCGCAGACGTGGCCGGGACCCTGAGATGGGGGGAAGACCGcagAGAAGGCGCAACCCTCAGGAAGGCCTGTACAATGAACTGCAGCGCGATAGAATGGCGGAGGCCTACAGTGAGATTGGGATGAGAGGCGAGCGCCGGAGGGGCAGAGGGCACGATGGCCTTTACCAGGGTCTCAGTACAGCCACCCGCGACACCTACGACGCCCTTCACATGCAGGCCCTGCCTCCTCGC。(SEQ ID NO:18、GD2 CD28 KR CAR)
【0074】
本発明のポリヌクレオチド配列は、DNA形式であってもよいし、RNA形式であってもよい。DNA形式は、cDNA、ゲノムDNA又は人工的に合成されたDNAを含む。DNAは、1本鎖であってもよいし、2本鎖であってもよい。また、DNAは、コード鎖であってもよいし、非コード鎖であってもよい。本発明は、融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列の縮重バリアントも含む。即ち、同一のアミノ酸配列をコードするがヌクレオチド配列の一部が異なるヌクレオチド配列も含む。
【0075】
通常、本文中で記載するポリヌクレオチド配列はPCR増幅法で取得可能である。具体的には、本文中で開示するヌクレオチド配列(特に、オープンリーディングフレーム配列)に基づいてプライマーを設計し、市販のcDNAライブラリか、当業者にとって既知の一般的な方法で作製したcDNAライブラリを鋳型として用い、増幅することで関連の配列を取得する。配列が長い場合には、2回又は複数回のPCR増幅を行った後、各回で増幅した断片を正しい順序で連結せねばならないことが多い。
【0076】
本発明で提供する核酸構築物は、上記のポリヌクレオチド配列を含む。
【0077】
前記核酸構築物は、更に、上記のポリヌクレオチド配列に操作的に連結される1又は複数の調節配列を含む。本発明で記載するCARのコード配列は、前記タンパク質の発現を保証するために、様々な方式で操作可能である。核酸構築物をベクターに挿入する前に、発現ベクターの違いや要求に応じて、核酸構築物を操作してもよい。組換えDNA手法を利用してポリヌクレオチド配列を変更する技術は、当該分野において既知である。
【0078】
調節配列は、適切なプロモーター配列とすることができる。通常、プロモーター配列は、発現されるタンパク質のコード配列に操作的に連結される。プロモーターは、選択された宿主細胞において転写活性を示すいずれのヌクレオチド配列としてもよく、突然変異したもの、切断されたもの、及び雑種プロモーターを含む。且つ、当該宿主細胞と同種又は異種の細胞外又は細胞内のポリペプチドをコードする遺伝子から取得可能である。
【0079】
調節配列は、適切な転写ターミネーター配列、つまり、宿主細胞により識別されることで転写を終結させる配列とすることができる。ターミネーター配列は、当該ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の3’末端に操作的に連結される。選択された宿主細胞において機能を有するあらゆるターミネーターを本発明に適用可能である。
【0080】
調節配列は、宿主細胞の翻訳にとって重要なmRNAの非翻訳領域である適切なリーダー配列としてもよい。リーダー配列は、当該ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の5’末端に操作可能に連結される。選択された宿主細胞において機能を有するあらゆるターミネーターを本発明に適用可能である。
【0081】
好ましくは、前記核酸構築物はベクターである。
【0082】
通常は、CARをコードするポリヌクレオチド配列を操作可能にプロモーターに連結し、構築物を発現ベクターに組み込むことで、CARをコードするポリヌクレオチド配列の発現を実現する。当該ベクターは、真核細胞の複製及び統合にとって適切となり得る。代表的なクローニングベクターは、所望の核酸配列の発現を調節可能な転写及び翻訳のターミネーター、開始配列及びプロモーターを含む。
【0083】
本発明のCARをコードするポリヌクレオチド配列は、数多くのタイプのベクターにクローニング可能である。例えば、プラスミド、バクテリオファージ、ファージ誘導体、動物ウイルス及びコスミドにクローニング可能である。更に、ベクターは発現ベクターである。発現ベクターは、ウイルスベクター形式で細胞に提供可能である。ウイルスベクター技術は当該分野において公知である。ベクターとして用い得るウイルスには、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス及びレンチウイルスが含まれる(但し、これらに限らない)。通常、適切なベクターには、少なくとも1つの有機体において役割を発揮する複製起点、プロモーター配列、便利な制限酵素部位、及び1又は複数の選択可能なマーカーが含まれる。
【0084】
より好ましくは、前記核酸構築物はレンチウイルスベクターであり、複製起点、3’LTR、5’LTR及び前記ポリヌクレオチド配列を含む。
【0085】
適切なプロモーターの一例としては、最初期サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター配列が挙げられる。当該プロモーター配列は、自身に操作可能に連結される任意のポリヌクレオチド配列を高水準で発現可能とする強い構成型プロモーター配列である。適切なプロモーターの別の例としては、伸長因子-1α(EF-1α)が挙げられる。ただし、シミアンウイルス40(SV40)の初期プロモーター、マウス乳癌ウイルス(MMTV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の長い末端反復(LTR)プロモーター、MoMu
LVプロモーター、トリ白血病ウイルスプロモーター、EBウイルスの最初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、及びヒト遺伝子プロモーター(例えば、アクチンプロモーター、ミオシンプロモーター、ヘムプロモーター及びクレアチンキナーゼプロモーター。但し、これらに限らない)を含む(但し、上記に限らない)その他の構成型プロモーター配列を使用してもよい。更に、誘導型プロモーターの使用を検討してもよい。誘導型プロモーターを使用することで分子スイッチが提供される。分子スイッチは、一過性発現時において、誘導型プロモーターに操作可能に連結されているポリヌクレオチド配列の発現をオンとすることができ、発現を期待しない場合には発現をオフとする。誘導型プロモーターの例には、メタロチオネインプロモーター、糖質コルチコイドプロモーター、プロゲステロンプロモーター及びテトラサイクリンプロモーターが含まれる(但し、これらに限らない)。
【0086】
CARのポリペプチド又はその部分の発現を評価するために、細胞に導入される発現ベクターは、選択可能なマーカー遺伝子又はレポーター遺伝子うちのいずれか一方又は双方を含んでもよい。このことは、ウイルスベクターによってトランスフェクション又は感染を試みた細胞群から発現細胞を鑑定及び選択するのに都合がよい。他方で、選択可能なマーカーは、単独のDNA断片に保持されてコトランスフェクション手順に使用することが可能である。選択可能なマーカー及びレポーター遺伝子の双方のフランキングには、宿主細胞内で発現可能となるよう、いずれも適切な調節配列が備わっている。有効な選択可能なマーカーには、例えばneoなどの抗生物質耐性遺伝子が含まれる。
【0087】
レポーター遺伝子は、潜在的にトランスフェクションされた細胞の鑑定に用いられると共に、調節配列の機能性評価にも用いられる。DNAが受容細胞に導入された後、レポーター遺伝子の発現が適切なタイミングで測定される。適切なレポーター遺伝子には、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、分泌型アルカリホスファターゼ又は緑色蛍光タンパク質遺伝子をコードする遺伝子が含まれ得る。また、適切な発現システムは、公知且つ既知の技術で作製可能であるか、商業的に取得される。
【0088】
遺伝子を細胞に導入する方法及び遺伝子を細胞に発現させる方法は、当該分野において既知である。ベクターは、当該分野における任意の方法で容易に宿主細胞(例えば、哺乳動物、細菌、酵母又は昆虫の細胞)に導入可能である。例えば、発現ベクターは、物理、化学又は生物学的手段で宿主細胞に導入可能である。
【0089】
ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入する物理的方法には、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション、粒子衝撃、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション等が含まれる。また、興味のあるポリヌクレオチドを宿主細胞に導入する生物学的方法には、DNA及びRNAベクターを使用する方法が含まれる。また、ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入する化学的手段には、例えば、高分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズといったコロイド分散系や、水中油型乳剤、ミセル、混合ミセル及びリポソームを含む脂質ベースのシステムが含まれる。
【0090】
ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入する生物学的方法には、ウイルスベクター(特に、レンチウイルスベクター)を使用する方法が含まれる。これは、遺伝子を哺乳動物(例えば、ヒト)の細胞に導入するための最も汎用的な方法となっている。その他のウイルスベクターは、レンチウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルスI型、アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルス等から入手可能である。遺伝子を哺乳動物の細胞に導入するための数多くのウイルスベースのシステムがすでに開発されており、例えば、レンチウイルスによって、遺伝子導入システムに用いられる便利なプラットフォームが提供されている。当該分野において既知の技術を用いれば、選択した遺伝子をベクターに導入し、レンチ
ウイルス粒子にパッケージングすることが可能である。当該組換えウイルスは、その後分離して体内又は体外の対象細胞に導入可能となる。当該分野では、数多くのレトロウイルスシステムが知られている。また、いくつかの実施方案では、アデノウイルスベクターを使用する。当該分野では、数多くのアデノウイルスベクターが知られている。また、一実施方案では、レンチウイルスベクターを使用する。
【0091】
本発明は、レンチウイルスを提供する。前記レンチウイルスは上記の核酸構築物を含む。また、好ましくは前記ベクターを含み、より好ましくは、前記レンチウイルスベクターを含む。
【0092】
本発明は、T細胞の体外活性化方法を提供する。前記方法は、前記レンチウイルスを前記T細胞に感染させるステップを含む。
【0093】
本発明のCAR-T細胞は、体内でT細胞の安定的な増殖と、血液及び骨髄における高水準での持続的延長時間を経て、特異的メモリーT細胞を形成可能である。いかなる具体的理論にも拘束されることなく、代替抗原を発現する標的細胞に遭遇し、その後これが除去された場合、本発明のCAR-T細胞は、体内でセントラルメモリー様状態に分化可能である。
【0094】
本発明は、更に、細胞療法を含む。当該細胞療法において、T細胞は本文中で記載するCARを発現するよう遺伝子組み換えがなされる。また、CAR-T細胞は、これを必要とする適用者に注入される。注入された細胞は、適用者の腫瘍細胞を殺傷可能である。抗体療法とは異なり、CAR-T細胞は体内で複製可能であって、持続的に腫瘍を制御可能な長期持続性を発揮する。
【0095】
CAR-T細胞が発揮する抗腫瘍免疫反応は、能動的又は受動的な免疫反応である。このほか、CARにより誘導される免疫反応は、養子免疫細胞療法のステップの一部分となり得る。CAR-T細胞は、CARの抗原結合部分に対して特異的な免疫反応を誘導する。
【0096】
治療可能な癌は、血液腫瘍(例えば、白血病やリンパ腫)のような非固形腫瘍とすることができる。特に、本発明のCAR、そのコード配列、核酸構築物、発現ベクター、ウイルス及びCAR-T細胞を用いて治療可能な疾病は、好ましくはCD19誘導性の疾病であり、特にCD19誘導性の血液腫瘍である。
【0097】
具体的に、本文中の「CD19誘導性の疾病」には、例えば、B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、ヘアリー細胞白血病及び急性骨髄性白血病といった白血病及びリンパ腫が含まれる(但し、これらに限らない)。
【0098】
本発明は、遺伝子組み換えT細胞、又は当該遺伝子組み換えT細胞を含む薬物組成物を提供する。前記細胞は、前記ポリヌクレオチド配列を含むか、或いは前記核酸構築物を含むか、或いは前記レンチウイルスに感染されているか、或いは前記方法で作製される。
【0099】
本発明のCAR-修飾T細胞は、単独で投与してもよいし、薬物組成物として、希釈剤及び/又はその他の成分(例えば、関連のサイトカイン又は細胞群)と組み合わせて投与してもよい。簡単に言うと、本発明の薬物組成物には、本文中で記載したCAR-T細胞と、1又は複数種類の薬学的又は生理学的に許容可能なベクター、希釈剤又は賦形剤の組み合わせが含まれ得る。このような組成物には、緩衝液(例えば、中性緩衝生理食塩水、硫酸塩緩衝生理食塩水等)、炭水化物(例えば、グルコース、マンノース、ショ糖又はデキストラン、マンニトール)、タンパク質、ポリペプチド又はアミノ酸(例えばグリシン)、抗酸化剤、キレート剤(例えば、EDTA又はグルタチオン)、アジュバント(例えば
、水酸化アルミニウム)、及び防腐剤が含まれ得る。
【0100】
本発明の薬物組成物は、治療(又は予防)対象の疾病に適した方式で投与される。投与の数量及び頻度は、例えば、患者の病症、患者の疾病タイプ及び深刻度といった要素から決定する。
【0101】
「免疫学的有効量」、「抗腫瘍有効量」、「腫瘍-抑制有効量」又は「治療量」を示す場合、投与対象の本発明の組成物の正確な量は医師により決定される。その際には、患者(対象)の年齢、体重、腫瘍の大きさ、感染又は転移の程度及び病症の個体差が考慮される。通常、本文中で記載するT細胞を含む薬物組成物の投与量は、104~109細胞/kg(体重)、好ましくは、105~106細胞/kg(体重)とすることができる。T細胞組成物は、これらの投与量で複数回投与してもよい。細胞は、免疫療法において公知の注入技術で投与可能である。具体的な患者に対する最適な投与量及び治療プランについては、医療分野の技術者であれば、患者の疾病の兆候を観察し、それにより治療を調節することで容易に決定可能である。
【0102】
対象組成物の投与は、噴霧法、注射、内服、点滴、埋め込み又は移植を含む任意の容易な方式で実施可能である。本文中で記載する組成物は、皮下、皮内、腫瘍内、結節内、脊髄内、筋肉内、静脈内注射又は腹膜内注射によって患者に投与可能である。一実施方案において、本発明のT細胞組成物は、皮内又は皮下注射によって患者に投与する。他の実施方案において、本発明のT細胞組成物は、好ましくは静脈注射によって投与する。また、T細胞組成物は、腫瘍、リンパ節又は感染部位に直接注入可能である。
【0103】
本発明のいくつかの実施方案において、本発明のCAR-T細胞又はその組成物は、当該分野において既知のその他の治療法と組み合わせ可能である。前記治療法には、化学療法、放射線治療及び免疫抑制剤が含まれる(但し、これらに限らない)。例えば、各種の放射線治療製剤を組み合わせて治療することが可能である。これらの放射線治療製剤には、シクロスポリン、アザチオプリン、メトトレキサート、ミコフェノール酸、FK506、フルダラビン、ラパマイシン及びミコフェノール酸等が含まれる。更なる実施方案において、本発明の細胞組成物は、骨髄移植や、化学療法薬(例えば、フルダラビン)、放射線外部照射療法(XRT)、シクロホスファミド又は抗体(例えば、OKT3又はCAMPATH)を利用したT細胞アブレーション療法と組み合わせて(例えば、事前、同時又は事後)患者に投与する。
【0104】
本文中の「抗腫瘍効果」とは生物学的な効果を意味し、腫瘍体積の減少、腫瘍細胞数の減少、転移数の減少、推定寿命の延長又は癌関連の各種生理的症状の改善によって示すことができる。
【0105】
「患者」、「対象」「個体」等は、本文中で互換的に使用可能であり、免疫反応を発揮し得る生体有機体(例えば、哺乳動物)を意味する。これには、例えば、ヒト、犬、猫、マウス、ラット及びその遺伝子組換え種が含まれる(但し、これらに限らない)。
【0106】
前記キメラ抗原受容体、前記ポリヌクレオチド配列、前記核酸構築物又は前記レンチウイルスは、活性化T細胞の作製及び/又はT細胞の分解抑制に適用される。
【0107】
前記キメラ抗原受容体、前記ポリヌクレオチド配列、前記核酸構築物、前記レンチウイルス又は前記遺伝子組み換えT細胞は、(1)腫瘍治療薬の製造、(2)腫瘍殺傷効率の向上、(3)T細胞の増殖能力の維持、(4)腫瘍成長の抑制、のうちの1又は複数の用途に適用される。
【0108】
好ましくは、前記腫瘍は、白血病又はリンパ腫のうちの1又は複数から選択される。
【0109】
より好ましくは、前記腫瘍は、B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、ヘアリー細胞白血病及び急性骨髄性白血病から選択される。
【0110】
以下に、特定の具体的実施例を通じて、本発明の実施形態につき説明する。なお、当業者であれば、本明細書で開示する内容から本発明のその他の利点及び効果を容易に理解可能である。更に、本発明は、その他の異なる具体的実施形態によっても実施又は適用可能である。また、本明細書の各詳細は、異なる視点及び適用に基づき、本発明の精神を逸脱しないことを前提に各種の補足又は変更が可能である。
【0111】
本発明の具体的実施形態について更に記載する前に、理解すべき点として、本発明の保護の範囲は後述する特定の具体的実施方案に限らない。更に、理解すべき点として、本発明の実施例で使用する用語は特定の具体的実施方案を記載するためのものであって、本発明の保護の範囲を制限するものではない。また、本発明の明細書及び特許請求の範囲では、別途明示しない限り、「1つ」、「一の」及び「この」といった単数形には複数形が含まれる。
【0112】
実施例で数値範囲を示している場合には、本発明において別途説明している場合を除き、各数値範囲の2つの端点及び2つの端点間の任意の数値をいずれも選択可能であると解釈すべきである。また、別途定義している場合を除き、本発明で使用するあらゆる技術及び科学用語は、当業者により一般的に理解される意味と同義である。更に、実施例で使用している具体的方法、デバイス、材料のほかに、当業者による従来技術の理解及び本発明の記載に基づいて、本発明の実施例で述べる方法、デバイス、材料と類似又は同等の従来技術における任意の方法、デバイス及び材料を用いて本発明を実現してもよい。
【0113】
別途説明している場合を除き、本発明で開示する実験方法、検出方法、作製方法は、いずれも当該分野において一般的な分子生物学、生化学、クロマチン構造及び分析、分析化学、細胞培養、組換えDNA技術及び関連分野における一般的技術を用いている。
【実施例】
【0114】
実施例1:CARのベクター作製
本発明で使用するCD19及びGD2 CARの抗原特異的一本鎖抗体(scFv)配列は、それぞれ臨床で使用するFMC63及び14g2a配列から取得した。CARの細胞外セグメント構造は、CD8αシグナルペプチド配列、mycタグ配列、scFv配列、CD8αのヒンジ配列を直列に連結して構成した。また、膜貫通領域配列はCD8αの膜貫通領域配列とした。細胞内セグメント構造は、ヒトの41BB細胞内セグメント配列又はCD28細胞内セグメント配列にヒトのCD3ζ細胞内セグメント配列を直列に連結して構成した。以上のアミノ酸配列及び細胞内セグメントのリシンをアルギニンに突然変異させたアミノ酸配列は、いずれもコドンを最適化した後に塩基配列に変換し、企業(Qinglan Biotech社)にて合成した。本発明における全てのCARの塩基配列は、共焦点蛍光顕微鏡撮影実験で使用する一部のCARをpHR-hEF1α-EGFPベクターにクローニングした以外は、最終的にギブソン(Gibson)連結方式(NEB#E2611L)でpHR-hEF1α-IRES-EGFPベクターにクローニングした。
【0115】
実施例2:ヒト初代T細胞の培養及びレンチウイルス感染
ヒト初代T細胞は、いずれも事情を理解している健康な志願者から採取した。初代T細胞は、10%のウシ胎児血清、100U/mlのペニシリン及び100μg/mlのストレプトマイシン硫酸塩を含むRPMI-1640培地で培養した(以上の試薬はいずれもG
ibco社から購入した)。T細胞の増殖を維持するために、培地には100U/mlのhIL-2(シグマアルドリッチ社)を添加した。
【0116】
レンチウイルスの作製:2.2×105個のLenti-X 293T細胞(タカラ社#632180)を10%のウシ胎児血清を含むDMEM培地(Gibco社#11995-065)に再懸濁し、6ウェル細胞培養プレート(コーニング社#CLS3516)内で24時間培養した。リポソームトランスフェクションシステム(Mirus社#2300)を利用して、500ngのレンチウイルスパッケージングプラスミドpCMVdR8.92(Addgene#8455)及びpMD2.G(Addgene#12259)と500ngのパッケージング対象のレンチウイルスプラスミドをリポソームトランスフェクションの説明書の操作手順に基づいてLenti-X 293T細胞培地に加えた。そして、48時間後に細胞上清を収集し、-80℃の冷蔵庫内に凍結保存して備えた。
【0117】
初代T細胞のレンチウイルス感染:抗CD3及び抗CD28抗体でコーティングされた磁気ビーズ(ライフテクノロジーズ社#11132D)を使用してT細胞を活性化させた。T細胞と磁気ビーズを1:3の比率で24時間共培養した後、作製済みのレンチウイルスを加えて感染させた。そして、18時間後に細胞上清を取り除き、新鮮なT細胞完全培地に交換した。T細胞を磁気ビーズで5日間刺激した後に磁気ビーズを取り除き、2~3日置きに新鮮なT細胞完全培地を補充した。
【0118】
実施例3:フローサイトメトリー分析
細胞表面マーカーの染色:抗体をFACS緩衝液(リン酸緩衝液PBS+2%ウシ胎児血清)に希釈した後、4℃の暗環境下で細胞と25分間共培養した。
【0119】
細胞内マーカーの染色:まず、4%のポリアセタール(Meilunbio社#MA0192)を用い、細胞を室温で15分間固定した後、予め冷却しておいたメタノールを用いて氷上で50分間膜破壊した。その後、室温の暗環境下で抗体希釈液(及び表面染色)と60分間共培養して染色した。また、Zombie Violet Fixable viability試薬キット(Biolegend社#423114)を使用して細胞の生死状態を区別した。
【0120】
フローサイトメトリーのデータは、BD LSRFortessa機器(BD バイオサイエンス社)によって取得し、FlowJo ソフトウェア(Tree Star社)を使用してデータ分析を行った。フローサイトメトリーに使用した抗体情報のリストを以下に示す。
【0121】
【0122】
実施例4:共焦点蛍光イメージング
細胞のリソソーム及びミトコンドリアのイメージングを生細胞状態で行った。リソソームとミトコンドリアは、それぞれLysoTracker Red(インビトロジェン社#L7528)及びMitoTracker Orange(インビトロジェン社#M7510)でマーカー染色した。染色の方式としては、染料を1:1000の希釈比で培地に加え、37℃のインキュベーター内で細胞と30分間共培養した。細胞画像は、A1R-si顕微鏡(ニコン)又はTCS SP8 STED顕微鏡(ライカ)で取得した。
【0123】
腫瘍組織切片の染色:まず、切り取った腫瘍組織を4%のポリアセタール内に浸漬して、4℃で一晩固定した。次に、固定した腫瘍組織を30%のショ糖溶液に投入し、組織片が底に沈むまで脱水した後、OCTコンパウンド(サクラ社#4583)を使用して組織を固定及び包埋した。続いて、クリオスタット(ライカ)を使用して包埋組織を8μmの組織切片に切断してから染色した。細胞核は、ヘキスト染色(インビトロジェン社#H1399)によって識別した。染色方式としては、染料を1:1000の希釈比でPBS緩衝液中に加え、切片に滴下してから室温で遮光しつつ10分間培養した。余分な染料はPB
S緩衝液で洗い落とした。CAR-T細胞はEGFP蛍光を有し、標的細胞はmCherry蛍光を有していたため、顕微鏡によって2種類の細胞を直接識別可能であった。70%のグリセリンを切片に滴下し、カバーガラスで覆った後、マニキュアでスライドガラスの縁をシールすることでプレパラート作製を完了した。組織切片画像は、TCS SP8 STED顕微鏡で取得した。
【0124】
実施例5:細胞の代謝分析
XF24シーホース細胞外フラックスアナライザー(シーホースバイオサイエンス社)を使用して、CAR-T細胞のミトコンドリア機能をテストした。まず、ポリ-L-リシン(シグマアルドリッチ社#P4832)でXF24細胞培養プレートをコーティングした後、CAR-T細胞を1ウェルあたり1.5×105個の数量で、2mMのL-グルタミン、5.5mMのグルコース及び1mMのピルビン酸ナトリウムを含むRPMI 1640培地に再懸濁して30分間培養した。次に、XF24細胞外フラックスアナライザーをキャリブレーションした。キャリブレーション手順は計器の使用説明書を参照した。また、キャリブレーションと同時に、CAR-T細胞をCO2が存在しないインキュベーター内に載置して培養した。そして、1μMのオリゴマイシン、2μMの2,4-ジニトロフェノール、及び40nMのロテノン、及び1μMのアンチマイシンA(以上の阻害剤はいずれもシーホースバイオサイエンス社から入手した)を使用して細胞の酸素消費速度(OCR)を測定した。
【0125】
実施例6:CARのダウンモジュレーション及び分解の測定
CAR-T細胞と標的細胞又は非標的細胞を1:3の細胞比率として24ウェル細胞培養プレート内で共培養した。培養時間は具体的な実験に応じて決定した。細胞表面のCARのダウンモジュレーションは、フローサイトメトリーによって細胞表面のCARの発現量を分析することで測定した。また、CARの分解については、更に固定して膜破壊操作した後、フローサイトメトリーによって細胞内外のCARの発現量の変化を分析した。CARの分解経路の検出は、CAR-T細胞と標的細胞を1:3の細胞比率とし、96ウェル細胞培養U底プレート内で8時間共培養した後に実行した。その際、MG132(セレック社#S2619)及びNH4Cl(シグマ社#254134)をそれぞれプロテアソームとリソソームの機能抑制に使用した。また、ウエスタンブロット方式でCARの分解を検出する場合には、CAR-T細胞と標的細胞を1:1の細胞比率とし、48ウェル細胞培養プレート内で共培養した。また、新たに生成されたCARによる測定結果への干渉を減少させるために、一部の実験では、更に25μg/mlのシクロヘキシミド(CST社#2112)を加えることでタンパク質の合成を抑制した。
【0126】
実施例7:フローサイトメトリーに基づくCAR-Tの体外殺傷機能測定
CD19及びmCherry蛍光を発現する二重陽性のK562標的細胞と、CD19及びmCherry蛍光を発現しないK562非標的細胞を1:1の細胞比率で混合した後、具体的な実験計画の細胞比率でCAR-T細胞と3日間共培養した。細胞は24ウェル細胞培養プレート内で培養し、50U/mlのIL-2を加えた。
【0127】
フローサイトメトリー分析:T細胞を含まないK562混合細胞群を対照群として、K562標的細胞が占める細胞の割合(CK%)を分析した。T細胞を含む実験群では、CD3ε染色によってT細胞をK562細胞群から区別した後、K562標的細胞がK562細胞群に占める割合(EX%)を分析した。そして、T細胞の殺傷効率=(1-EX%/CK%)×100%とした。
【0128】
実施例8:マウス腫瘍モデル及びCAR-Tの体内機能測定
体内実験の対象は、5~8週齢の免疫不全(NSG)マウスとした。体内におけるCAR-Tの抗腫瘍効果を比較するために、まずは、NSGマウスの大腿外側の皮下に、ホタル
ルシフェラーゼ遺伝子を発現しているK562-CD19標的細胞を具体的実験の指定数だけ移植した。そして、標的細胞を体内で4日間安定させた後、NSGマウスの尾静脈にCAR-T細胞を具体的実験の指定数だけ注射して治療した。続いて、毎週、動物・生体イメージング技術によって体内における腫瘍の成長状況をモニタリングした。
【0129】
具体的に実施した操作:担癌マウスの腹腔にホタルルシフェリン基質を注射した。基質の使用量は、1.5mg/g(マウスの体重)に基づき投与した。10分後に、基質がマウスの全身に十分に循環するまで待機してから、2.5~3.5%のイソフルランガスでマウスを麻酔してイメージングを行った。生物発光イメージングは、IVISスペクトルイメージングシステム(パーキンエルマー社)で実行し、蛍光定量データは生体イメージングソフトウェア(パーキンエルマー社)で取得した。
【0130】
実施例9:結果分析
CAR-Tの抗原刺激下におけるCARのダウンモジュレーション及び分解の結果は
図1に示す通りとなった。具体的には、
図1Aに示すように、T細胞とK562細胞の作用比率を1:3とし、反応時間を図中の横座標に示す通りとして、FACSにより細胞表面のCARの発現量を分析した。CAR-Tと標的細胞K562-CD19を作用させた後、CARは急速に反応してダウンモジュレーションしたが、非標的細胞K562-Mesoと作用させた場合にはダウンモジュレーションは発生しなかった。また、
図1Bに示すように、T細胞と標的細胞の作用比率を1:3とし、反応時間を図中の横座標に示す通りとして、細胞内染色法により、FACSを用いて細胞全体のCARの発現量の変化を分析した。すると、標的細胞刺激から60分以内に、CARに分解が発生した。また、含まれる細胞内セグメント構造の違いによってCARの分解速度は異なっていた。
【0131】
KRを突然変異させたCARのダウンモジュレーション及び分解抑制の結果は、
図2に示す通りとなった。具体的には、
図2のAに示すように、共免疫沈降法によってCARタンパク質をプルダウンさせて、ウエスタンブロットにより測定した。すると、標的細胞と5分間作用させた後に、WT CARには明らかなユビキチン修飾バンドが形成されたが、KR CARには刺激前後のいずれにおいてもユビキチン修飾は形成されなかった。このことから、CARの細胞内セグメントのリシン部位を突然変異させれば、CARのユビキチン修飾を効果的にブロック可能なことが証明された。また、
図2のBに示すように、T細胞と標的細胞の作用比率を1:3とし、反応時間を図中の横座標に示す通りとして、FACSにより細胞表面のCARの発現量を分析した。すると、標的細胞と作用させた後、WT CAR-TにはCARの明らかなダウンモジュレーション反応が発生したが、KRを突然変異させたCARはダウンモジュレーションに対する感受性が低かった。また、蛍光定量PCRでWT CARとKR CARのmRNAの変化を測定したところ、新たに生成されたCARの量に違いは認められなかった。即ち、KR CARにダウンモジュレーションが見られなかったのは、より多くのCARが生成されたからではなく、CARのダウンモジュレーションが抑制されたためであった。また、
図2のC及びDに示すように、T細胞と標的細胞の作用比率をいずれも1:3とし、反応時間を図中の横座標に示す通りとして、FACSにより細胞表面のCARの発現量の変化を分析した。2種類のCARはダウンモジュレーションのキネティクスが異なっていたが、KRの突然変異によってCARのダウンモジュレーションレベルを抑制することができた。本発明では、
図2のB~Dの実験を通じて、CARの細胞内セグメントのリシン部位をアルギニンに突然変異させることで、抗原刺激誘導型のCARのダウンモジュレーションを効果的に抑制可能であり、且つ異なる構造のCARに適用可能なことが証明された。また、
図2のEに示すように、T細胞と標的細胞の作用比率を1:1とし、反応時間を3~9時間とした。且つ、新たに生成されたCARによる測定結果への影響を回避するために、反応系に25μMのシクロヘキシミド(CHX)を加えてタンパク質の合成を抑制し、ウエスタンブロットでCARタンパク質の発現量の変化を測定した。
図2のEの定量化結果は
図2のFに示す通りとな
り、KRの突然変異が当該反応におけるCARの分解を効果的に抑制したことが示された。また、
図2のGに示すように、T細胞と標的細胞の作用比率を1:1とし、反応時間を4~12時間として、ウエスタンブロットによりCARタンパク質の発現量の変化を測定した。
図2のGの定量化結果は
図2のHに示す通りとなり、KRの突然変異が抗原刺激誘導型のCARの分解を効果的に抑制したことが示された。本発明では、
図2のE~Hの実験を通じて、CARの細胞内セグメントのリシン部位をアルギニンに突然変異させることで、抗原刺激誘導型のCARの分解を効果的に抑制可能であり、且つ各種構造のCARに適用可能なことが証明された。
【0132】
KRの突然変異がCAR-Tの体外機能に及ぼす影響は
図3に示す通りとなった。具体的に、体外機能実験はいずれもヒト初代T細胞で実施した。
図3のAでは、CAR-Tと放射線照射後の標的細胞を2:1の比率で共培養した。そして、2日ごとにT細胞を1回カウントし、新たな培地を補充して細胞密度を1.5million/mlに制御した。また、8~10日置きに2:1の細胞比率で標的細胞を補充した。CD19-41BBζCARの場合を例示すると、KRを突然変異させたCAR-Tは、より効果的に標的細胞刺激誘導型の増殖に反応可能であった。体外培養条件におけるWT及びKR CAR-Tの分化状況については、
図3のBに示すように、CD62LとCD45RAを分化指標としてFACS分析を行った。
図3のCは、
図3のBについての統計分析である。KRの突然変異によって、CAR-Tはより多量にセントラルメモリーT細胞に分化した一方、ターミナルエフェクターT細胞への分化は減少した。また、4日間標的細胞刺激した後のCAR-Tの分化表現型の結果は
図3のDに示す通りとなった。CAR-Tと放射線照射後の標的細胞を2:1の比率で共培養し、CD27及びCD45ROを分化指標としてFACS分析を行った。
図3のDについての統計分析の結果は
図3のEに示す通りとなった。KRの突然変異によって、CAR-Tは標的細胞刺激への反応後により多くのセントラルメモリーT細胞を形成した。また、
図3のFに示すように、T細胞と標的細胞を図中の横座標に示す細胞比率で共培養した。培養時間は3日間とし、FACSで標的細胞の残存比率を分析してCAR-Tの殺傷効率を推計した。T細胞と標的細胞の細胞比率が1:1よりも小さい場合に、KR CAR-Tはより高い殺傷効率を有した。
【0133】
CD19-41BBζKR CARがより多くのセントラルメモリーT細胞を蓄積可能であること、及び強化された増殖表現型の分子基盤を有することが
図4に示されている。この部分の実験は、いずれもヒト初代T細胞で実施及び検証した。
図4のAに示すように、本発明では、酸化代謝におけるWT CAR-TとKR CAR-Tの差をシーホース社の計器で検出した。なお、検出細胞にはいずれも予め2週間の標的細胞刺激を施した。
図4のAの主要パラメータについての統計分析は
図4のBに示す通りとなった。KR CAR-Tは、WT CAR-Tよりも高い基礎酸素消費速度(OCR)を有していた。KR CAR-Tの最大呼吸能力はWT CAR-Tよりも明らかに高く、最終的なKR CAR-Tの残存呼吸能力もWT CAR-Tより明らかに高かった。これは、KR CAR-Tがより強い酸化呼吸代謝を有しており、低酸素条件であったとしても、KR CAR-Tがより効果的に酸化的リン酸化を実行可能なことを反映している。また、
図4のC及びDに示すように、本発明では、Mito Trackerを検出マーカーとして、FACS検出方法及び共焦点蛍光検出方法のそれぞれによって、KR CAR-Tがより強いミトコンドリア生成能力を有することを検証した。
図4のEに示すように、本発明では、放射線照射後の標的細胞による刺激前後のWT及びKR CAR-Tについて、ミトコンドリアの生成及び機能に関連する4つの重要遺伝子の変化を蛍光定量PCRで検出した。未刺激のWT CAR-Tの遺伝子発現量を対照としたところ、標的細胞刺激を受けたKR CAR-Tは、4つの遺伝子の発現においていずれもWT CAR-Tよりも高い発現レベルを示した。これにより、KR CAR-Tがより強いミトコンドリア生成能力を有する原因を解釈した。また、本発明では、
図4のC~Eの実験を通じて、KR CAR-Tがより強い酸化呼吸能力を有する原因を解釈した。また、ウエスタンブロット検出方法及びF
ACS検出方法のそれぞれによって、KR CAR-Tが標的細胞刺激後により多くの抗アポトーシス因子Bcl-xLを産生可能なことを検証したところ、結果は
図4のF及びGに示す通りとなった。
図4のFに示すように、本発明では、ウエスタンブロットによって、KR CAR-Tがより多くの抗アポトーシス因子Bcl-2及び細胞の肝細胞性マーカーβ-カテニンを産生可能であることが更に示された。また、
図4のHに示すように、本発明では、蛍光定量PCRを検出手段として、KR CAR-Tが標的細胞刺激後に、WT CAR-Tよりも多くの41BB下流抗アポトーシス産物Bcl-xL、Bfl1のmRNAを生成可能なことを検証した。これにより、KR CAR-Tがより強い増殖能力を有する原因についても部分的に解釈した。
【0134】
腫瘍マウスモデル体内におけるCD19-41BBζWTとKR CAR-Tの機能を比較したところ、
図5に示す通りとなった。具体的に、
図5のAに示すように、本発明では、体内におけるWT及びKR CARのダウンモジュレーション現象を比較した。各ラットの末梢血及び脾臓内のCARの発現量を対照として、腫瘍内のCARの発現レベルの変化を比較したところ、WT CAR-Tでは表面のCARがほぼ完全にダウンモジュレーションしたのに対し、KRを突然変異させた場合には、腫瘍内のCARのダウンモジュレーションが抑制されて、CAR-T表面に25%を超えるCARが残留した。また、
図5のBに示すように、T細胞を注射してから14日後に、腫瘍組織をマウスから剥離して凍結切片を作製し、免疫蛍光共焦点分析を行ったところ、KR CAR-Tを接種したマウスの腫瘍にはより多くのCAR-T細胞とより少ない腫瘍細胞が見られた。また、
図5のCは、本発明において、腫瘍マウス体内にCAR-T細胞を注射してから10日後、20日後、40日後のマウス脾臓内におけるWT及びKR CAR-Tの数量の変化を示している。KR CAR-Tが各検出タイミングのいずれにおいてもWT CAR-Tよりも多くの細胞量を示し、10~40日間の細胞数に明らかな減少が見られなかったのに対し、WT CAR-Tの細胞数は40日目に明らかに減少した。また、腫瘍マウスの脾臓内におけるCAR-Tの分化表現型を比較したところ、
図5のDに示す通りとなった。ここでは、CD62LとCD45RAを分化指標としてFACS分析を行った。
図5のDについて統計分析したところ、
図5のEに示すように、WT CARと比較して、KR CARはT細胞をより多量に記憶細胞(特に、セントラルメモリーT細胞)に分化させた一方、ターミナルエフェクターT細胞への分化は減少した。同様に、腫瘍マウスの末梢血内におけるCAR-Tの分化表現型を比較したところ、
図5のFに示す通りとなった。
図5のFについて統計分析したところ、
図5のGに示すように、やはりKR CARはT細胞をより多量にメモリーT細胞に分化させた。また、腫瘍組織内におけるCAR-Tの分化表現型を比較したところ、
図5のHに示す通りとなった。CD27とCD45ROを分化の指標としてFACS分析を行い、
図5のHについて統計分析したところ、
図5のIに示すように、KR CAR-TはWT CAR-Tよりも多くのセントラルメモリーT細胞を蓄積可能であった。本発明における
図5のD~Iより、KR CAR-Tが腫瘍マウス体内で増殖能力を維持可能であり、且つより効果的に腫瘍組織を浸潤可能な原因の大部分を解釈した。
【0135】
CD19-41BBζWTとKR CAR-Tの抗腫瘍効果を比較したところ、
図6に示す通りとなった。具体的に、異なるT細胞を注射したNSGマウス体内におけるホタルルシフェラーゼ遺伝子を発現した標的細胞の成長状況は、
図6に示す通りとなった。100万個の標的細胞を皮下移植してから4日後に、尾静脈から50万個のCAR-T又はCAR-Tに感染していないT細胞を注射して治療した。そして、1週間置きにフルオレセイン基質を腹腔注射し、蛍光イメージングシステムを利用して腫瘍の成長をモニタリングした。
図6のAの定量化結果は、
図6のBに示すように、通常T細胞が腫瘍の成長を制御不可能であったのに対し、WT CAR-Tは腫瘍の成長を遅延させるとともに、部分的な治愈を実現可能であった。一方、KR CAR-Tは腫瘍の発展を完全に抑制可能であった。
【0136】
CD19-41BBζ及びCD19-CD28ζCAR-T細胞の表現型に対するKRの突然変異の影響を比較したところ、
図7に示す通りとなった。具体的には、
図7のA及びBに示すように、41BB、CD28及びこれらのKR突然変異型共刺激領域を含むCD19 CARをレンチウイルス感染方式でJurkat細胞上に発現させて、1週間後にFACS方式で細胞表面の活性化マーカーCD69及びICOSの発現レベルを検出した。図面から明らかなように、41BBは、突然変異後に自己活性化レベルが大きくは向上せず、正常CD28の自己活性化レベルよりも低かったのに対し、CD28は突然変異後に非常に強い自己活性化シグナルを発生させた。このことは、強い刺激シグナル誘導型の細胞死(activation induced cell death,AICD)を引き起こし、細胞の分化及び疲弊(exhaustion)を加速するため、CAR-T細胞の抗腫瘍機能の発揮にとっては不利となる。また、T細胞の疲弊マーカーの分析結果は
図7のCに示す通りとなった。41BB、CD28及びこれらのKR突然変異型共刺激領域を含むCD19 CARをレンチウイルス感染方式でヒト初代T細胞上に発現させて、1週間後にFACS方式で細胞表面のPD-1マーカーの発現レベルを検出した。図中の相対的な発現量は、CD19-41BBζWT CAR-T細胞の発現量を基準としている。図面から明らかなように、41BBは、突然変異後にPD-1の発現に顕著な変化が見られなかったのに対し、CD28は、突然変異後にPD-1が著しく上昇しており、CAR-T細胞の機能を発揮するには不利となった。T細胞の分化表現型の分析結果は、
図7のD、E、F、Gに示す通りとなった。分化マーカーとしては、CD62L/CD45RAを用いた。CD62L+CD45RA+はnaiveT細胞、CD62L+CD45RA-はセントラルメモリーT細胞(central memory)、CD62L-CD45RA-はエフェクターメモリーT細胞(effector memory)、CD62L-CD45RA+はエフェクターメモリーT細胞(effector)であり、分化度は順に増加した。CD28及びこれらのKR突然変異型共刺激領域を含むCD19又はGD2 CARをレンチウイルス感染方式でヒト初代T細胞上に発現させて、10~14日後に、FACS方式で細胞表面のCD62L/CD45RAの発現レベルを検出した。
図7のD、E、F、Gから明らかなように、CD19かGD2 CAR-T細胞かに関わらず、CD28のKRの突然変異によっていずれも分化が強化され、CAR-T細胞の増殖に不利となった。
【0137】
腫瘍細胞再刺激(rechallenge)モデルにおけるCD19-41BBζWT及びKR CAR-Tの効果を比較したところ、
図8に示す通りとなった。具体的には、
図8のAに示すように、NSGマウスに2×10
6個の腫瘍細胞を皮下移植してから4日後に、1.5×10
6個のCAR-T細胞を尾静脈注射によって腫瘍マウスの体内に注入し、介入治療を行った。その後、毎週、生体イメージングシステムによってマウス体内の腫瘍の成長をモニタリングした。すると、4週間後に、WT CAR-T細胞を注射したマウスについては、2匹のみが体内の腫瘍細胞が完全に消滅した(全5匹)のに対し、KR
CAR-T細胞を注射したマウスは、4匹について腫瘍の兆候が検出されなくなった(全5匹)。その後、回復したマウスの体内に再び1×10
6個の腫瘍細胞を注射した(黒色の矢印は再移植のタイミングを示している)。なお、元の位置の腫瘍再生による干渉を回避するために、尾静脈注射によって全身性の移植を行った。すると、その後の検出において、KR CAR-T細胞を注射した4匹の回復マウスについては、1匹のみが再移植した腫瘍細胞を防御不可能であったのに対し、WT CAR-T細胞を注射した2匹の生存マウスは、いずれも腫瘍細胞の再刺激によって死亡した。また、2種類のCAR-T細胞を同じ初期レベルの腫瘍負荷モデルに確実に作用させるために、本発明では、別途、体外で標的細胞刺激を受けたCAR-Tについて、腫瘍細胞再刺激に対する反応状況を比較した。具体的には、
図8のBに示すように、CAR-T細胞を体外で10日間標的細胞刺激した後に腫瘍マウスに注射した。このときには、1×10
6個の腫瘍細胞をマウスの皮下に移植してから4日後に、2×10
6個の上記CAR-T細胞を尾静脈に注入した。マ
ウスは各群6匹とした。また、各線がマウス1匹を示している。この場合には、WT CAR-T細胞で治療したマウスは1匹のみが腫瘍の成長を抑制したが、KR CAR-T細胞では、比較的短時間のうちにマウス体内の腫瘍細胞が完全に消滅した。更に、
図8のCに示すように、CAR-T細胞を体外で21日間標的細胞刺激した後に腫瘍マウスに注射した。このときには、3×10
6個の腫瘍細胞をマウスの皮下に移植してから4日後に、1×10
7個の上記CAR-T細胞を尾静脈に注入した。マウスは各群4~6匹とした。このように、更に長期間にわたって標的細胞刺激を繰り返し、腫瘍負荷を増加させたストレスモデルにおいて、WT CAR-T細胞は抗腫瘍能力を完全に喪失した。一方、KR CAR-T細胞は、時間は要したものの、最終的には腫瘍の成長を抑制した。以上の体内実験の結果は、KRの突然変異によって41BB CAR-T細胞の機能が延長されたことを意味している。
【0138】
臨床実践では、一般的に、患者の限られた自家T細胞を使用して大量のCAR-T細胞を作製し、再注入療法に用いる必要がある。この場合には、長期間の体外増幅とT細胞機能の低下という矛盾した局面に対峙せねばならない。これに対し、我々の実験において、KRを突然変異させた41BBζCAR-T細胞は、長期的な体外増幅と抗原刺激の後でも、腫瘍モデル内で有効性に優れた抗腫瘍効果を発揮可能であった。このことは、KRを突然変異させた設計を利用すれば、臨床生産において長い時間をかけて体外培養したCAR-T細胞であっても、有効性に優れた抗腫瘍効果の維持が期待できることを示している。
【0139】
以上は本発明の好ましい実施例にすぎず、本発明を形式的及び実質的になんら制限するものではない。指摘すべき点として、当業者であれば、本発明の方法を逸脱しないことを前提に、若干の改良及び補足が可能であって、これらの改良及び補足もまた本発明の保護の範囲内とみなすべきである。本専門分野に精通した技術者が、本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、上記で開示した技術内容を利用して実施可能な些細な修正、追加及び変形の等価の変更は、いずれも本発明における等価の実施例である。また、本発明の実質的技術に基づいて上記の実施例に対し実施される任意の等価の変更の修正、追加及び変形も、本発明の技術方案の範囲に属する。
【配列表】