(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】部材を成形する装置及び方法
(51)【国際特許分類】
B21D 24/00 20060101AFI20240624BHJP
B21D 22/02 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
B21D24/00 G
B21D22/02 A
(21)【出願番号】P 2021568668
(86)(22)【出願日】2020-04-29
(86)【国際出願番号】 EP2020061839
(87)【国際公開番号】W WO2020229171
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2023-03-07
(31)【優先権主張番号】102019112635.5
(32)【優先日】2019-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】521500225
【氏名又は名称】アレキサンダー ヴィルデン ベタイリグンゲン ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラーション,ヤン ロルフ
【審査官】黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102015215184(DE,A1)
【文献】米国特許第02960142(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0318087(US,A1)
【文献】特開2018-149589(JP,A)
【文献】特開平10-244344(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 22/00 - 26/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部材(2)を成形する装置(1)であって、
第1工具(3)と第2工具(4)とを備え、
前記第1工具(3)と第2工具(4)は、該工具(3、4)間に載置される部材(2)を成形するために、互いに対して移動軸(5)に沿って移動可能であり、
前記第1工具(3)の表面(6)は、
前記第1工具(3)の前記表面(6)の膨張領域(7)において、前記移動軸(5)に対して交差する方向に、
前記第1工具(3)の前記表面(6)の隣接した領域に対して膨張可能であり、
前記第1工具(3)は、弾性を有するリング(8)を有し、前記リング(8)は、前記移動軸(5)の周りに延在するように形成されており、且つ、前記移動軸(5)に対して交差する方向に膨張可能であるか、又は、
前記第1工具(3)の周囲にわたって等距離のところに分布する複数の膨張要素が設けられており、前記第1工具(3)の前記表面(6)の膨張領域(7)は、前記膨張要素を径方向に変位させることにより隣接した膨張要素間の対応する間隙が増大することでもって、膨張することができるか、
である装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置(1)であって、
前記第1工具(3)の前記表面(6)は、前記膨張領域(7)において、前記移動軸(5)に平行に形成されている
装置。
【請求項3】
請求項1に記載の装置(1)であって、
前記リング(8)は、液圧チャンバ(9)に隣接して形成されており、
前記リング(8)は、前記液圧チャンバ(9)内に収容されている液圧媒体の圧力を増加することにより膨張可能となっている
装置。
【請求項4】
請求項1に記載の装置(1)であって、
前記リング(8)は、少なくとも1つの冷却路(10)を有する
装置。
【請求項5】
請求項1、2のいずれか1項に記載の装置(1)であって、
前記第1工具(3)の前記表面(6)の前記膨張領域(7)は、初期状態において、隣接する領域内へ段差なしで繋がっている
装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の装置(1)を用いて部材(2)を成形する方法であって、
a)
前記第1工具(3)と
前記第2工具(4)との間に、成形対象の部材(2)を載置するステップと、
b)前記第1工具(3)と前記第2工具(4)とを移動軸(5)に沿って互いに対して移動させることにより、前記部材(2)を成形するステップと、
c)前記第1工具(3)の表面(6)を前記表面(6)の
前記膨張領域(7)において前記移動軸(5)に対して交差する方向に膨張させることにより、前記部材(2)をさらに成形するステップと
を含む方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、
ステップc)において、前記部材(2)は、縁領域(11)において成形される
方法。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の方法であって、ステップc)において、
前記部材(2)は、50~750バールの間の圧力でもって成形される
方法。
【請求項9】
請求項6又は7に記載の方法であって、
ステップc)において、前記第1工具(3)の前記表面(6)の前記膨張領域(7)が冷却される
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部材を成形する、特に鋼板部材を成形する装置及び方法に関する。本装置及び方法は、自動車用ホイールリムの製造に特に適している。
【背景技術】
【0002】
部材、特に鋼製の部材を、プレス工具を使用して成形することが先行技術から知られている。このようにするために、成形対象の部材は、通常、パンチとダイとの間に置かれ、パンチを用いてダイの中に押し込まれる。その結果、部材は、パンチとダイがなす形状となる。特に、いわゆる深絞りが知られている。
【0003】
公知の方法は、基本的に、パンチの移動方向に対して交差する方向をほぼ向いている表面の形成に限定される。他方で、パンチの移動方向に対して平行な表面は、非常に不正確にしか成形することができない。特に、部材の厚さが変化する場合は、このような表面の成形は、先行技術では不十分な程度にしかできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記に基づき、本発明は、先行技術から知られている前述の課題を少なくとも部分的に克服することを目的とし、特に、部材を成形する装置及び方法であって、求める形状に関する制約が特に少なく成形を行える装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、独立請求項の特徴によって達成される。従属請求項には、本発明のさらに有利な実施形態を記載する。従属請求項において個々に挙げる特徴は、技術的に有意な方法で互いに組み合わせ可能であり、これらの特徴は本発明のさらなる実施形態を規定し得る。さらに、これらの請求項に記載の特徴は、本明細書においてより詳細に規定され且つ説明されており、これによって本発明のさらなる好適な実施形態を示されている。
【0006】
本発明により、部材を成形する装置を提示する。この装置は、第1工具と第2工具とを備え、第1工具と第2工具は、該工具間に載置される部材を成形するために、互いに対して移動軸に沿って移動可能である。第1工具の表面は、膨張領域において、移動軸に対して交差する方向に膨張可能である。
【0007】
前述の装置は、鋼板部材を成形するように構成されることが好ましい。前述の装置を用いて、部材を特に深絞りの態様で成形することができる。特に、前述の装置を使用すれば、鋼板部材を熱処理後に成形することができる。そのため、好ましくは、装置は、加熱された部材の成形に適している。特に、好ましくは、装置は、900℃までの部材温度に耐え得る。本装置は、特に、円い形状のものの製造に使用可能である。この目的のために、作製対象の製品の部品を、特に、前述の装置を用いて成形し、その後組み立てることもできる。前述の装置は、自動車用ホイールリム用の部材を成形することに使用されるのが好ましい。部材は、前述の装置の一部ではない。
【0008】
好ましくは、前述の装置は、プレス装置として設計されている。特に、部材は、前述の装置を用いてプレス硬化の態様で成形し硬化することができる。この目的のために、好ましくは、第1工具の少なくとも一部、又は、第2工具の少なくとも一部、又は、その両方が、冷却されるように設計されている。冷却の結果として、プレス中に、部材内に構造変化が生じ得る。これにより、部材を硬化することができる。冷却が局所的にのみ行われる場合には、局所的硬化を達成することができる。
【0009】
本装置は、第1工具及び第2工具を備える。これらの工具はそれぞれ、パンチ又はダイであることが好ましい。好ましくは、第1工具はパンチとして設計されており、第2工具はダイとして設計されている。これの代わりに、第1工具がダイとして設計されており、第2工具がパンチとして設計されていることも好ましい。2つの工具が互いから距離をおいたところにあれば、2つの工具間に成形対象の部材を載置することができる。この状態を、装置の開放状態と称することができる。
【0010】
2つの工具は、互いに対して移動可能である。このことは、特に液圧式に実施できる。2つの工具を互いに対して移動させることにより、部材を成形することができる。この目的のために、これらの工具は、部材を成形するのに十分な圧力で互いに対して押圧できることが好ましい。
【0011】
2つの工具は、第1工具が移動可能に保持され、第2工具が静止して保持されるようにすることで、互いに対して移動可能となる。また、これの代わりに、2つの工具は、第2工具が移動可能に保持され、第1工具が静止して保持されるようにすることで、互いに対して移動可能となる。両方の工具を移動可能に保持することもできる。
【0012】
好ましくは、第1工具と第2工具とは互いに合致する。従って、第1工具は、第2工具の相手方部分を形成し、またその逆も同様である。2つの工具は、互いに向かって移動可能であり、この移動は、これらの2つの工具間に、成形対象の部材の形状に対応する間隙のみが空いているような態様で行われる。この状態を、閉鎖状態と称することができる。好ましくは、閉鎖状態のとき、第1工具は第2工具に係合する、またその逆も同様である。
【0013】
従って、成形対象の部材は、開放状態のときに、2つの工具間に載置できる。2つの工具を互いに対して移動させることにより、これらの工具を閉鎖状態にすることができ、それによって部材が成形される。
【0014】
工具は、移動軸に沿って移動する。好ましくは、第1工具及び第2工具の少なくとも一方は、回転対称であるように設計されている。その場合、回転軸は、移動軸と一致することが好ましい。移動軸に沿って移動することにより、移動軸と平行な力を、部材に及ぼすことができる。2つの工具の形状によって、この力を、移動軸に対して垂直な力の成分も生じるように偏向させることができる。従って、部材は、その表面の領域が移動軸に対して或る角度で配置されるように成形することが可能である。ただし、部材の表面の領域が移動軸と平行であると、2つの工具を相対移動させることにより所望の形状にすることは困難を伴う。
【0015】
特に、これらの領域を成形するために、第1工具の表面を、膨張領域において移動軸に対して交差する方向に膨張させることができる。これにより、特に移動軸に対して垂直な成分を有するさらなる力を、部材に及ぼすことができる。好ましくは、この力は、移動軸に対して垂直な、唯1つの成分を有する。この付加的な力は、部材を成形可能であり、特に、この表面の領域が移動軸と平行に位置するように成形可能である。
【0016】
膨張領域において移動軸に対して交差する方向に表面を膨張可能であることは、膨張領域において第1工具を拡張できるということを意味する。膨張領域のみが膨張可能であることが好ましく、隣接した領域が不変のままとできることが好ましい。そのため、特に、隣接した領域に対して、膨張領域が膨張可能であることが好ましい。よって、第1工具の表面は、膨張領域において突出物が創成されるような態様で膨張可能である。
【0017】
移動軸に対して交差する方向への膨張とは、表面の少なくとも一部分が移動軸に対して交差する方向に変位することを意味すると理解される。そのため、膨張領域は、移動軸に対して斜めに膨張することも可能である。しかし、膨張領域内の表面が移動軸に対して垂直に膨張することが好ましい。これにより、部材は、対応する領域において、移動軸と平行な表面を有することができる。
【0018】
膨張領域において表面が膨張可能であることは、第1工具全体を均一に熱膨張させることにより可能になる。膨張領域は、少なくとも1つの膨張要素を移動させることにより膨張可能となることが好ましい。
【0019】
前述の装置において、第1工具の表面は膨張可能である。前述のように、第1工具は、パンチ又はダイとして設計可能である。これにより、パンチ又はダイの表面は膨張可能とすることができる。パンチの表面が膨張可能であることが好ましい。
【0020】
第1工具の表面及び第2工具の表面が両方とも膨張可能とすることもできる。2つの工具の表面の、互いに対応する領域が膨張可能であることが好ましい。
【0021】
装置の好適な実施形態によれば、第1工具の表面は、膨張領域において、移動軸に平行に形成されている。
【0022】
部材は、基本的に、2つの工具を互いに向かって移動させることにより成形することができる。部材は、2つの工具の形状により予め決められた形状を与えられる。上に述べたように、移動軸と平行な表面を形成することは困難である。しかし、前述の装置を用いれば、膨張領域が膨張可能であることにより、このような表面の形成が、特に実現可能となる。
【0023】
この実施形態において、膨張領域に割り当てられる領域における、第2工具の表面は、移動軸と平行に形成されることが好ましい。膨張領域の相手方部分を形成する第2工具の表面の領域が、膨張領域に割り当てられる。本装置が閉鎖状態のとき、第1工具の表面の膨張領域、及び、第2工具の表面の対応する領域は、部材上の同じ地点の両側で部材に隣接する。
【0024】
装置のさらなる好適な実施形態によれば、第1工具はリングを有し、このリングは、移動軸の周り延在するように形成されており、且つ、移動軸に対して交差する方向に膨張可能である。
【0025】
この実施形態において、膨張要素は、リングとして設計されている。好ましくは、リングは、第1工具の表面内の、移動軸の周りに延在する溝内に挿入される。第1工具が移動軸に関して回転対称であるように設計されている場合、リングは、円形のリングであることが好ましい。
【0026】
リングは、弾性を有するように設計されていることが好ましい。よって、リングは、均一に膨張可能となる。これにより、相応に均一な圧力を、部材に及ぼすことができる。
【0027】
好ましくは、リングは閉じた表面を有する。これにより、部材の連続的な表面にリングを接触させて成形することができる。
【0028】
別の好適な実施形態においては、連続的なリングの代わりに、複数の膨張要素を設けることができる。好ましくは、膨張要素は、第1工具の周囲にわたって等距離のところに分布した状態で配置される。膨張要素は、剛性のものとすることができる。この場合、第1工具の表面の膨張領域は、膨張要素を径方向に変位させることにより隣接した膨張要素間の対応する間隙が増大することでもって、膨張することができる。好ましくは、隣接した膨張要素間の対応する間隙は、初期状態のときには隣接した膨張要素が互いに接触しているように、最小化される。初期状態とは、そこから膨張領域を膨張することのできる状態のことである。部材を成形するための2つの工具が互いに対して移動する間は、膨張領域は初期状態にあることが好ましい。
【0029】
装置のさらなる好適な実施形態によれば、リングは、液圧チャンバに隣接して形成されており、液圧チャンバ内に収容されている液圧媒体の圧力を増加することにより膨張可能となっている。
【0030】
好ましくは、リングは、第1工具の表面内の、移動軸の周りに延在する溝内に挿入される。好ましくは、リングは、溝よりも小さく、溝がリングにより完全には埋まらない。好ましくは、リングと溝とは、同じ外径を有する。好ましくは、リングは、溝よりも大きい内径を有する。これにより、リングと溝の境界との間に空洞が創成される。好ましくは、この空洞は、液圧チャンバとして使用される。好ましくは、液圧チャンバは、シールによって封止される。好ましくは、シールは、リング上又は溝の境界上又はその両方において、リングと溝の境界とがぶつかるところに配置される。
【0031】
好ましくは、液圧チャンバは、液圧媒体を収容するように構成される。好ましくは、液圧媒体により、液圧チャンバが満たされる。液圧媒体としては、水又は液圧作動油又はその両方が好適である。
【0032】
液圧チャンバ内の液圧媒体の圧力が増加すると、リングは外方へ押し出され、この範囲で膨張する。液圧チャンバ内の圧力は、特に、適切なポンプによって増加することができる。
【0033】
装置の好適な実施形態によれば、リングは少なくとも1つの冷却路を有する。
【0034】
膨張領域は、少なくとも1つの冷却路を用いて冷却することができる。少なくとも1つの冷却路は、この冷却路を流れる冷却媒体を有するように構成されることが好ましい。好適な冷却媒体は水である。水は、特に、ポンプによって、少なくとも1つの冷却路内を圧送することができる。
【0035】
好ましくは、リングは2つの冷却路を有する。よって、一方で、リングの複雑さを抑えることができ、他方で、充分に均一な冷却を達成することができる。
【0036】
冷却路が2つ以上ある場合、これらの冷却路は互いに平行に配置されることが好ましい。これにより、特に均一な冷却を達成することができる。
【0037】
装置の好適な実施形態によれば、第1工具の表面の膨張領域は、初期状態において、隣接する領域内へ段差なしで繋がっている。
【0038】
初期状態とは、そこから膨張領域を膨張することのできる状態のことである。この状態のとき、膨張領域とこの膨張領域に隣接する領域との間の移行は、円滑である。よって、膨張領域とこの膨張領域に隣接した領域との間に、段差は無い。
【0039】
初期状態のとき、部材は、2つの工具間で相対移動させることにより、前述の装置のみを用いて成形することができる。膨張領域が膨張可能であることは、初期では重要でない。好ましくは、2つの工具の相対移動により部材が成形された後にのみ、部材は、膨張領域の膨張によって成形される。この場合、膨張領域は、膨張領域とこの膨張領域に隣接する領域との間に段部が創成されるように、初期状態から膨張することが好ましい。
【0040】
さらなる態様として、部材を成形する方法が提示される。この方法は、
a)第1工具と第2工具との間に、成形対象の部材を載置するステップと、
b)第1工具と第2工具とを移動軸に沿って互いに対して移動させることにより、部材を成形するステップと、
c)第1工具の表面をこの表面の膨張領域において移動軸に対して交差する方向に膨張させることにより、部材をさらに成形するステップと
を含む。
【0041】
部材を成形する本装置の、前述の特別な利点及び設計特徴を、部材を成形する本方法に適用及び転用することができ、その逆も同様である。特に、本装置は、本方法を実行するように構成されることが好ましい。特に、本方法は、本装置を用いて実行されることが好ましい。
【0042】
好ましくは、ステップa)、b)、c)は、記載する順序で実行される。ステップa)は、好ましくは、ステップb)の開始前に完了する。ステップb)は、好ましくは、ステップc)の前に完了する。また、これの代わりに、ステップc)は、ステップb)が終了する前に開始し、ステップb)とステップc)とが時間的に少なくとも部分的に重なることが好ましい。
【0043】
ステップb)において、部材は、2つの工具間で相対移動により成形される。これをメイン成形と呼ぶことができる。こうすることにより、部材に、ほぼ所望の形状を与えておくことができる。このことは、特に、部材の表面のうち、2つの工具の移動軸と平行に形成されるのでないところに適用される。特に、このような表面は、ステップc)において得ることができる。この目的のために、膨張領域は、ステップc)において膨張する。この成形は、さらなる成形と称され、ステップb)によるメイン成形に加えて行われる。
【0044】
この方法の好適な実施形態によれば、ステップc)において、部材は、縁領域において成形される。
【0045】
第1工具の表面の膨張領域が膨張可能であることにより、本実施形態では、縁領域を特に正確に成形することができる。
【0046】
この方法のさらなる好適な実施形態によれば、ステップc)において、部材は、50~750バールの間の圧力でもって成形される。
【0047】
指定される圧力は、液圧チャンバ内の液圧媒体の圧力であることが好ましい。この圧力は、膨張要素を介して、特にリングを介して、部材上にかかり続ける。
【0048】
この方法のさらなる好適な実施形態によれば、ステップc)において、第1工具の表面の膨張領域が冷却される。
【0049】
好ましくは、冷却は、リング内の冷却路によって、特に冷却媒体を冷却路を通して圧送することにより実行される。
【0050】
以下で、図面を参照して、本発明及び技術的環境を、より詳細に説明する。本発明が、図示する実施形態により限定されるべきではないことに留意すべきである。特段の記載のない限り、特に、図で説明する事項から部分的特徴を抽出し、それらを他の構成要素及び本明細書又は図又はその両方の知見と組み合わせることも可能である。特に、図面及び特に図示の寸法比は、概略的なものにすぎないことに留意せねばならない。同一の参照符号は同一の対象物を表すものであり、他の図の説明から必要に応じて任意の説明を補足として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図3】成形後の部材とともに示した、
図1の装置の略側断面図である。
【
図4】
図1~
図3の装置を用いて実行可能な、部材を成形する方法の流れを示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
図1は、部材2を成形する装置1を示す。
図1では、装置1が、部材2がない状態で示されている。これに対して、
図3では部材2を示している。装置1は、第1工具3と第2工具4とを備え、これらの工具は、該工具3、4間に載置される部材2を成形するために、互いに対して移動軸5に沿って移動可能である。装置1が
図1に示す状態であるとき、部材2を工具3、4間に載置することができる。
図1に示す装置1の状態は、開放状態と称してもよい。そして、工具3、4は、
図1に示す状態から互いに向かって移動することができ、これにより、部材2が成形され、
図3に示す状態が達成される。この状態を閉鎖状態と称してもよい。
【0053】
図に示した実施形態においては、第1工具3はパンチとして設計されており、第2工具4はダイとして設計されている。第1工具3と第2工具4との間の相対移動は、図に示した実施形態では、例えば、第2工具4が静止しており、第1工具3が下方に移動することで実現することができる。
【0054】
第1工具3の表面6は、膨張領域7において、移動軸5に対して交差する方向に膨張可能である。このようにするために、第1工具3はリング8を有し、このリング8は、移動軸5の周りに延在するように形成されており、且つ、移動軸5に対して交差する方向に膨張可能である。リング8は、液圧チャンバ9に隣接して形成されており、液圧チャンバ9内に収容されている液圧媒体の圧力を増加することにより膨張可能となっている。
【0055】
図2は、
図1の装置1の、円で囲った領域の拡大図を示している。液圧チャンバ9は、リング8により制限されている。液圧チャンバ9は、リング8表面の各シール12により閉じられている。また、リング8は、2つの冷却路10をさらに有する。冷却路10は、リング8と同様に、移動軸5の周りに延在するように形成されている。この冷却路10を冷却媒体が流れている場合は、リング8に隣接する領域において、部材2を冷却することができる。
【0056】
第1工具3の表面6は、膨張領域7において、移動軸5に平行に形成されている。第1工具3の表面6の膨張領域7は、初期状態において、隣接する領域内へ段差なしで繋がっている。この初期状態を
図2に示す。
【0057】
図3では、
図1及び
図2の装置1を、部材2と共に示している。工具3、4は、移動軸5に沿って互いに向かって移動する。このとき、工具3、4が係合して、成形される部材2の形状に対応する間隙のみを間に残す程度まで移動する。装置1の、
図3に示す状態は、閉鎖状態と称してもよい。この状態のとき、リング8は、部材2の縁領域11に隣接する。リング8を膨張させることにより、部材2を縁領域11において成形可能となる。
【0058】
図3には、第2工具4と、第1工具3の表面6と、この表面6の膨張領域7と、リング8と、液圧チャンバ9とをさらに示す。
【0059】
図4は、部材2を成形する方法の概略的な流れを示す。この方法は、
図1~
図3に示す装置1を用いて実行することができる。参照符号は、これらの図に関連するものである。
この方法は、
a)第1工具3と第2工具4との間に、成形対象の部材2を載置するステップと、
b)第1工具3と第2工具4とを移動軸5に沿って互いに対して移動させることにより、部材2を成形するステップと、
c)第1工具3の表面6を表面6の膨張領域7内で移動軸5に対して交差する方向に膨張させることにより、縁領域11において、50~750バールの間の圧力でもって、部材2をさらに成形するステップと
を含む。この工程において、第1工具3の表面6の膨張領域7が冷却される。
【0060】
前述の装置1及び前述の方法を用いれば、部材2を、特に鋼板部材を、その外形が工具3、4の移動軸5に平行となって特に良好に形成されるような態様で、成形可能となる。よって、特に、円形形状を特に良好な精度で形成可能となる。部材2の厚さの変動の悪影響を打ち消すことが可能となる。本装置1及び方法は、自動車用ホイールリムの製造に特に適している。
【符号の説明】
【0061】
1 装置
2 部材
3 第1工具
4 第2工具
5 移動軸
6 表面
7 膨張領域
8 リング
9 液圧チャンバ
10 冷却路
11 縁領域
12 シール