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特許7508487可鍛性デバイスを真っすぐにするための形状記憶素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】可鍛性デバイスを真っすぐにするための形状記憶素子
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/24 20060101AFI20240624BHJP
   A61M 25/00 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
A61B17/24
A61M25/00 540
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021570849
(86)(22)【出願日】2020-05-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-01
(86)【国際出願番号】 IB2020054415
(87)【国際公開番号】W WO2020240313
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2023-04-11
(31)【優先権主張番号】16/427,854
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ゴバリ・アサフ
【審査官】羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06080160(US,A)
【文献】特開昭57-148927(JP,A)
【文献】米国特許第04977886(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0239138(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0009054(US,A1)
【文献】特開平11-267095(JP,A)
【文献】特開2009-195379(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0065555(US,A1)
【文献】特開平08-308934(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B
A61M
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療器具であって、
(a) ハンドルと、
(b) 前記ハンドルに取り付けられ、前記ハンドルから延在し、患者の開口部に挿入されるように構成されている管状部材であって、前記管状部材は、前記ハンドルに連結する剛性な近位延在部分と、前記剛性な近位延在部分の遠位側に連結する可鍛性の遠位端部分であって、前記患者の前記開口部において医療手技を行うために屈曲するよう構成されている可鍛性の遠位端部分とを有し、前記可鍛性の遠位端部分は長手方向軸を画定し、前記管状部材は、前記ハンドルと前記可鍛性の遠位端部分の遠位端との間に画定される第1の長さを有する、管状部材と、
(c) 前記管状部材の前記剛性な近位延在部分の遠位部と前記可鍛性の遠位端部分の近位部との間にわたって、それらの外側に連結されている屈曲可能な形状記憶素子(SME)であって、前記SMEが、前記管状部材の前記第1の長さより小さい第2の長さを有し、前記SMEが加熱されると事前形成形状へと真っすぐになるよう構成されており、これにより、前記ハンドルから延在する前記管状部材が、前記剛性な近位延在部分から前記可鍛性の遠位端部分にわたって真っすぐになり、前記SMEが形状記憶材料から作製されており、前記形状記憶材料の前記事前形成形状が前記SMEを真っすぐにする、形状記憶素子(SME)と、
を備え、
前記SMEがスリーブであり、前記スリーブは前記形状記憶材料から全体的に作製されており、前記形状記憶材料の前記事前形成形状が、前記SMEを真っすぐにし、前記スリーブは前記可鍛性の遠位端部分の前記長手方向軸を包囲し、前記SMEが、加熱されていない状態で、使用者が前記管状部材の前記可鍛性の遠位端部分に外力を加えることによって手作業により屈曲するように構成されており、前記SMEが、前記管状部材の前記剛性な近位延在部分を通る電線を介して給電を受ける導線から電流を受信し、前記電流に応答して真っすぐになるように構成されており、前記導線が、前記スリーブの内側に配置され、前記スリーブの少なくとも近位端と遠位端との間にわたって延在し、
前記スリーブが、前記可鍛性の遠位端部分の前記近位部を取り囲むように構成されている、医療器具。
【請求項2】
前記形状記憶材料がニチノールを含む、請求項1に記載の医療器具。
【請求項3】
前記SMEが、前記事前形成形状に戻るよう、前記SMEに供給された前記電流を伝導することによって加熱されるように構成されている、請求項1に記載の医療器具。
【請求項4】
ヒータを備え、前記ヒータは、前記SMEに熱的に連結されており、かつ前記SMEを前記事前形成形状へと真っすぐにするよう、前記SMEに供給された前記電流を伝導することによって加熱されるように構成されている、請求項1に記載の医療器具。
【請求項5】
前記SMEが、前記管状部材の壁の外側に接着されている、請求項1に記載の医療器具。
【請求項6】
前記管状部材が、前記患者の耳、鼻、又は喉のうちの少なくとも1つの前記開口部に挿入されるように、サイズ決めされ、及び、構成されている、請求項1に記載の医療器具。
【請求項7】
前記可鍛性の遠位端部分が吸引先端を含み、前記管状部材が管腔を含み、前記管腔が、前記患者から流体を排出するために前記吸引先端と協働するように構成されている、請求項6に記載の医療器具。
【請求項8】
前記スリーブは、前記使用者により、真っすぐな状態から屈曲状態まで手作業により屈曲するように構成されており、前記スリーブは、前記SMEの加熱に応答して、前記SMEにより、前記屈曲状態から前記真っすぐな状態まで真っすぐにし、前記ハンドルから延在する前記管状部材を前記剛性な近位延在部分から前記可鍛性の遠位端部分にわたって真っすぐにするように構成されている、請求項1に記載の医療器具。
【請求項9】
前記長手方向軸が少なくとも1つの平面を規定し、前記スリーブが前記少なくとも1つの平面に関して対称である、請求項1に記載の医療器具。
【請求項10】
前記スリーブが中実の円筒形側壁を含む、請求項7に記載の医療器具。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の医療具を製造する方法であって、
前記患者の前記開口部に挿入されるように構成されている前記管状部材を前記ハンドルに取り付けて、前記管状部材を前記ハンドルから延在させることであって、前記管状部材が、前記医療手技を行うために屈曲するよう構成されている前記可鍛性の遠位端部分を有する、ことと、
前記管状部材の前記可鍛性の遠位端部分に前記SMEを連結することであって、前記SMEが、加熱されると、前記事前形成形状へと真っすぐになるよう構成されており、これにより、前記可鍛性の遠位端部分が真っすぐになる、ことと、
を含む、方法。
【請求項12】
前記SMEが、前記形状記憶材料から少なくとも一部が作製されており、前記形状記憶材料の前記事前形成形状が前記SMEを真っすぐにする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記形状記憶材料がニチノールを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記管状部材の前記剛性な近位延在部分を通る前記電線を介して前記給電を受ける前記導線から前記電流を受信し、前記電流に応答して真っすぐになるよう、前記SMEに電気的に配線することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記SMEが、前記事前形成形状に戻るよう、前記SMEに供給された前記電流を伝導することによって加熱されるように構成されている、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記SMEを前記事前形成形状へと真っすぐにするよう、前記SMEに供給された前記電流を伝導することによって加熱されるように構成されているヒータを前記SMEに熱的に連結することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記管状部材の前記可鍛性の遠位端部分への前記SMEの連結が、前記管状部材の壁の外側に前記SMEを接着させることを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記可鍛性の遠位端部分上に前記スリーブを取り付けることを含む、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、医療器具、より具体的には、調節可能な形状を有する、耳鼻咽喉(ENT)向け剛性器具に関する。
【背景技術】
【0002】
器具の形状の調節が必要となることがある処置を容易にするためのさまざまな手術用器具が、特許文献に提案されている。例えば、米国特許出願第2014/0150782号は、マルチポートマニホールド又は気管内チューブアダプターの吸引ポートに連結するように構成されている連結部材を備える閉鎖吸引システムモジュールを記載している。一実施形態では、この閉鎖吸引システムモジュールは、身体に挿入された管又は人工気道の内面を洗浄するように構成されている吸引カテーテルを備える(単独で、又は自然気道若しくは気道の一部を吸引することに追加して)。吸引カテーテルは、吸引カテーテルの遠位部分(例えば、吸引カテーテルの遠位端又は先端近傍)に洗浄部分を備えていることがある。実施形態では、吸引カテーテルの遠位端は、カテーテルの操縦性を補助する1つ以上の可撓性材料を含むことができる。
【0003】
別の例として、米国特許第4,665,906号は、応力誘発性マルテンサイト合金素子を代わりに使用することによって改善され得る、形状記憶合金から作製された素子の使用が最近、提案されている医療デバイスを記載している。応力誘発性マルテンサイトを使用することにより、デバイスの温度感度が低下し、それにより、デバイスの装着及び/又は取り外しが一層容易になる。実施形態では、カテーテルデバイスは、カテーテル軸の下方に真っすぐなピンを挿入することによって真っすぐにされ、カテーテルは、応力誘発性マルテンサイトの形成によって変形する。
【0004】
米国特許出願第2008/0200761号は、ハウジング内に封入された、屈曲可能な部分及び枢動可能なレバーを有する内視鏡デバイスを記載している。このレバーは、使用者が一旦、トリガを握り終えると、トリガ及び制御ワイヤを休止位置に戻すためのスプリング手段に接続されている。枢動可能なレバーは、それぞれ、調節ワイヤ及び制御ワイヤに接続されている第1の端部及び第2の端部を画定している。トリガが握られると、屈曲可能な部分は、完全に真っすぐな構成から制御されて湾曲する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態は、ハンドル、管状部材及び屈曲可能な形状記憶素子(SME)を含む医療器具を提供する。管状部材は、ハンドルに取り付けられて、ここから延在し、かつ患者の開口部に挿入されるよう構成されている。管状部材は、開口部において医療手技を行うよう、屈曲するように構成されている遠位端部分を有する。屈曲可能な形状記憶素子(SME)は、管状部材の遠位端部分に連結されており、この場合、SMEは、加熱されると、事前形成形状へと真っすぐになるよう構成されており、これにより、遠位端部分が真っすぐになる。
【0006】
一部の実施形態では、SMEは、形状記憶材料から少なくとも一部が作製されており、この材料の事前形成形状が、SMEを真っすぐにする。
【0007】
一部の実施形態では、形状記憶材料は、ニチノールを含む。
【0008】
実施形態では、SMEは、管状部材を通るワイヤを介して電流を受信し、この電流に応答して真っすぐになるように構成されている。別の実施形態では、SMEは、真っすぐな事前形成形状に戻るよう、SEMに供給された電流を伝導することによって加熱されるように構成されている。
【0009】
実施形態では、本医療器具は、SMEに熱的に連結されており、かつSMEを真っすぐな事前形成形状へと真っすぐにするよう、SEMに供給された電流を伝導することによって加熱されるように構成されているヒータを更に含む。
【0010】
一部の実施形態では、SMEは、管状部材の壁の内側又は外側に接着されている。他の実施形態では、SMEは、管状部材の壁に組み込まれている。
【0011】
実施形態では、SMEは、遠位端部分を取り囲むように構成されているスリーブを含む。
【0012】
本発明の実施形態によれば、患者の開口部に挿入されるように構成されている管状部材をハンドルに取り付けて、ハンドルから延在させることを含む、医療機器を製造する方法であって、管状部材が、医療手技を行うために屈曲するよう構成されている遠位端部分を有する、方法が更に提供される。屈曲可能な形状記憶素子(SME)は、管状部材の遠位端部分に連結されており、この場合、SMEは、加熱されると、事前形成形状へと真っすぐになるよう構成されており、これにより、遠位端部分が真っすぐになる。
【0013】
本発明の実施形態によれば、(a)ハンドル、(b)ハンドルに取り付けられてここから延在する管状部材であって、開口部において医療手技を行うため屈曲するよう構成されている遠位端部分を有する管状部材、及び(c)管状部材の遠位端部分に連結されている屈曲可能な形状記憶素子(SME)を含む医療器具を、患者の身体の開口部に挿入することを含む、方法であって、SMEが、加熱されると、事前形成形状へと真っすぐになるよう構成されており、これにより、遠位端部分が真っすぐになる、方法が更に提供される。管状部材の遠位端は、ハンドルから屈曲している。医療手技は、SMEが屈曲している間に開口部で行われる。医療手技を行った後に、管状部材の遠位端部分は、SMEを事前形成形状に設定することによって、真っすぐにされる。真っすぐになった医療器具は、患者の身体から後退される。
【0014】
本発明は、以下の「発明を実施するための形態」を図面と併せて考慮することで、より完全に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態による、耳鼻咽頭(ENT)システムの概略描写図である。
図2A】本発明の実施形態による、屈曲状態にある剛性器具の模式図である。
図2B】本発明の実施形態による、真っすぐな状態にある剛性器具の模式図である。
図3】本発明の実施形態による、図2の剛性器具の製造方法を概略的に例示するフローチャートである。
図4】本発明の実施形態による、図2の剛性器具を真っすぐにするための方法を概略的に例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
概論
副鼻腔などの器官の一部の空洞は、人によってさまざまになる複雑な三次元構造体である。特定の副鼻腔、及び副鼻腔の選択した領域へのアクセスを実現することは、非常に特異的な形状を有する剛性医療器具を必要とすることがある。副鼻腔を処置するための手術用器具、例えば、内視鏡、把持具及び/又は吸引デバイスなどの医療器具は、通常、耳鼻咽喉(ENT)医師が利用可能な、さまざまな形状で生産される。したがって、手術をするENTの医師は、副鼻腔内の特定の作業に最も適した特定の形状を選択することができる。しかし、このような器具を後退させるため、医師は、器具の遠位端を満足する程度に真っすぐにする必要があることがある。
【0017】
本発明の実施形態は、その所期使用に好適なほど十分に、依然として剛性な形状にされている医療器具を真っすぐにすることが可能な、医療器具及び関連方法の改善を実現する。開示される実施形態では、医療器具は、形状記憶材料で作製された屈曲可能な形状記憶素子(SME)を備える。SMEは、形状記憶材料が所定の温度より高く加熱されることが可能な、電気加熱機構を備えるか、又はこれに結合されている。SMEは、その非加熱状態では可撓性であり、器具の遠位端を真っすぐにするために、その事前形成状態(すなわち、加熱すると)では剛性がありかつ真っすぐであるように構成されている。
【0018】
本文脈において、「形状記憶材料」とは、事前形成形状を有し、加熱されたときに変形前の形状に戻る任意の材料を指す。
【0019】
金属合金からポリマーに及ぶ、温度によって操作される多くの種類の形状記憶材料が存在する。本明細書に記載される実施形態は、主に形状記憶合金、より詳細にはニチノールを指すが、開示されている器具は、任意の他の好適な形状記憶材料を使用して実装され得る。
【0020】
一部の実施形態では、電流はSME構造自体を流れて、SMEはそれ自体の電気抵抗によって加熱が引き起こされる。他の実施形態では、電流は、SMEに適合させた(例えば、取り付けられた)1つ以上のヒータを流れる。
【0021】
SMEは、他の形状の中でも、スプリング、ビーム又はシリンダーの形態にあってもよい。このような素子は、内部に、例えば、器具の遠位端の部分の内部に配設されていてもよい。代替として又は更に、このような素子は、医療器具の管状部材の遠位端の部分の上に置かれた、及び/又は遠位端の壁に組み込まれた外部スリーブの形態にあってもよい。
【0022】
例えば、実施形態では、吸引装置などのENT器具の屈曲した遠位端を真っすぐにするために、可撓性管状ニチノールスプリングが、デバイスの遠位端の部分の上に置かれている。次に、スプリングは、その変形前形状に戻り、吸引デバイスの遠位端を真っすぐにするよう、60℃に加熱される。
【0023】
形状記憶材料から作製された素子を使用して医療器具を真っすぐにするための開示技法は、最低限の侵襲性医療手技を単純化することができる。
【0024】
システムの説明
図1は、本発明の実施形態による、耳鼻咽頭(ENT)システム20の概略描写図である。システム20は、1つ以上のメモリ42と通信するシステムプロセッサ40によって動作する。以下の説明では、システム20は、以下に一層詳細に記載されるとおり、医師54が患者22に対して副鼻腔手技を行うために使用すると想定される剛性器具21を備える。器具21は、磁気追跡システム23によって、手技中に追跡される磁気センサ32を備える。追跡を効果的にするため、患者22及び磁気追跡システム23の医療画像が、基準のシステム20のフレーム内に登録される。医療画像は、通常、磁気共鳴撮像(MRI)画像又は透視画像を含むことができるが、本明細書における説明では、画像は、例として、透視コンピュータ断層撮影(CT)画像を含むことが想定されている。
【0025】
副鼻腔手技の前及びその間に、磁気追跡システム内にある磁気放射体アセンブリ24が、患者の頭部の下に置かれている。アセンブリ24は、磁場放射体26を備え、これは、定位置に固定されており、かつ患者22の頭部が位置する領域30に正弦波交流磁場を送信する。例として、アセンブリ24の放射体26は、患者22の頭部の周りに、ほぼ蹄鉄形に配置される。しかしながら、アセンブリ24の放射体の別の構成が当業者に明らかとなり、このようなすべての構成が、本発明の範囲内に含まれると想定される。
【0026】
放射体26を含めた、システム20の素子は、システムプロセッサ40によって制御される。プロセッサ40は、コンソール50に装着されてよく、このコンソールは、マウス又はトラックボールなどのキーパッド及び/又はポインティングデバイスを通常、含む、操作制御部58を備えている。コンソール50は、ケーブルを介して、及び/又は無線で放射体に接続する。医師54は、システム20を用いるENT手技を実行すると同時に、プロセッサと相互作用する動作制御装置58を用いる。手技を実行している間、プロセッサは画面56に手技の結果を表示することができる。
【0027】
器具21は、その近位端にハンドル62を備える。ハンドル62は、以下に記載されているとおり、吸引などの器具21の手順を行うことが可能なホース59に接続されている。更に分かるとおり、ハンドル62は、以下に記載されているとおり、ケーブル33によりコンソール50に接続されて、器具21の遠位端のSMEを使用して、真っすぐな器具21に給電する。
【0028】
プロセッサ40は、メモリ42内に記憶されたソフトウェアを用いてシステム20を操作する。ソフトウェアは、例えば、ネットワーク上で、プロセッサ40に電子形態でダウンロードすることができ、代替的に若しくは追加的に、ソフトウェアは、磁気メモリ、光学メモリ、若しくは電子メモリなどの、非一時的な有形媒体で提供し、かつ/又は保存することができる。
【0029】
プロセッサ40は、とりわけ、アセンブリ24の磁気放射体26を操作するためにソフトウェアを更に使用する。上述したとおり、放射体は、さまざまな周波数の正弦波交流磁場を患者22の頭部を含む領域30に伝送し、放射体からの磁場はセンサ32内に信号を誘導する。信号、及び/又は信号から得られたデータは、プロセッサに有線及び/又は無線で送信されてもよく、プロセッサは、受信したデータ及び/又は信号を解析して、アセンブリによって定義された座標系に対して測定される、センサの位置の値及び向きの値を導出する。
【0030】
本明細書の説明において、剛性器具21は、デバイスのルーメンを流れる流体の排液を可能にするために使用される吸引デバイスであると想定される。当業者は、この説明を変更すべきところは変更して、内視鏡又は把持具などの他のタイプのENT器具に適合することができ、このような器具はすべて、本発明の範囲内に含まれると想定される。
【0031】
可鍛性デバイスを真っすぐにするための形状記憶素子
図2A及び図2Bは、それぞれ、本発明の実施形態による、屈曲状態及び真っすぐな状態にある剛性器具21の模式図である。器具21は、その遠位端において、当分野において公知の方法によって屈曲され得る吸引先端65を備える、管状部材60を備える。図2Aに示されているその屈曲形態では、吸引先端65は、長手方向軸66aを画定する。吸引先端は、通常、部材60の真っすぐになった長手方向軸66bと直交しない角度θを成し、一実施形態では、角度θは約40°である。
【0032】
管状部材60は、その近位端において、ハンドル62に接続されている。吸引が適用されると、部材60から排出された流体を受容する目的で、ハンドル62は、ホース59(図2A及び図2Bには示されていないが、上の図1には概略的に示されている)をハンドルに接続することを可能にするホース連結部64を備える。一部の実施形態では、ハンドル62は、部材60からの吸引を医師が制御することを可能にする制御装置を組み込んでもよい。
【0033】
医師によって手作業により所望の形状に屈曲することができるENT吸引デバイスは、本特許出願の譲受人に譲渡され、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、「Malleable Suction Device」と題する2018年10月4日に出願された米国仮特許出願第62/741,402号に記載されている。
【0034】
一部の実施形態では、器具21は、部材60と先端65との間に取り付けられたSME68を備える。図2Aにおいて分かるとおり、SME68は、その非加熱状態では、屈曲形状70aへと屈曲するほど十分な可撓性がある。
【0035】
一部の実施形態では、SME68は、ニチノールから作製されている。本開示技法は、形状記憶合金、例えば、銅-アルミニウム-ニッケルという他の材料ファミリーを使用することができる。本開示技法はまた、形状記憶ポリマーなどの他の種類の熱応答性材料を使用することができる。形状記憶材料は、3種以上の事前形成形状を有してもよい。以下の説明では、例として、形状記憶材料はニチノールを指す。
【0036】
形状記憶合金は、通常、2つの安定相:「オーステナイト」と呼ばれる高温相、及び「マルテンサイト」と呼ばれる低温相を有する。そのオーステナイト温度を超える温度まで形状記憶合金を加熱すると、この合金は、自己順応したマルテンサイト状態から、ある特定の事前形成形状を有するオーステナイトに変換する。形状記憶合金をそのマルテンサイト温度よりも低い温度まで冷却すると、この合金は、そのマルテンサイト状態に戻る。
【0037】
図2Bに示されているとおり、SME68が、そのオーステナイト温度より高く加熱されると、SME68は真っすぐになって、その事前形成形状70bになり、そのようにすることによって、先端65(部材60の遠位端とも称される)が真っすぐになる。医師54による意思でSME68が真っすぐな状態にされることによって、吸引先端65は、図2Bで分かるとおり、真っすぐにされており、医師54は、真っすぐになった器具21を後退させることができる。
【0038】
一部の実施形態では、電流は、SME68自体を流れて、SME68それ自体の電気抵抗によって加熱を引き起こす。代替的な実施形態では、電流は、SME68に組み込まれた(例えば、接着された)ヒータ(図示せず)を流れる。図2A及び図2Bによって示された実施例において、どちらか一方の方法を使用して、電流は、SME68に含まれている、又はSME68に近接して置かれている、導線71及び導線73を介して、SME68を加熱するように供給される。分かるように、導線71及び導線73が、管状部材60から延びる電線75を介して、ハンドル62におけるソケット77に連結されて、ケーブル33を介して、コンソール50からの給電を受ける。ハンドル62の上にあるスイッチ79により、医師56は、電流を「オン」及び「オフ」に切り替えることが可能となる。
【0039】
図2A及び図2Bに示される例示的な図は、概念を明確化する目的のために単に選択されているに過ぎない。図2は、本発明の実施形態に関連する部分しか示されていない。例えば、磁気センサ32などの器具21に含まれる他の素子が省略されている。
【0040】
図3は、本発明の実施形態による、図2の剛性器具の製造方法を概略的に例示するフローチャートである。このプロセスは、加熱機構取り付け工程80における、SME68にヒータなどの加熱機構を取り付けることから始まる。次に、配線工程82において、加熱機構が電気的にワイヤ接続され、その結果、電流が供給されてSME68を加熱することができる。最後に、ワイヤ接続されたSME68は、SME取り付け工程84において、器具21に取り付けられる。
【0041】
図3に示されている製造プロセスは、このプロセスを概念的に説明するために、例として提示されている。他の工程又は代替製造工程が行われてもよい。例えば、器具21は、既に完全にワイヤ接続されていてもよく、器具21に取り付けられると、SME68は、コンセントを使用して電気的に接続されてもよい。
【0042】
図4は、本発明の実施形態による、図2の剛性器具を真っすぐにするための方法を概略的に例示するフローチャートである。このプロセスは、器具挿入工程90において、医師54が、副鼻腔などの、患者34の器官に器具21を挿入することから始まる。処置工程92において、医師54は、吸引先端65を屈曲させることを含めて、器具21を操作し、これによって、屈曲可能なSME68は、その加熱温度未満でも十分な可撓性状態にあることが可能となる。医師54が、器具21を後退させるためにそれを真っすぐにすることを必要とする場合、図2Bに示されているとおり、器具を真っすぐにする工程94において、この医師は、SME68を加熱して、SME68がその事前形成形状70bへと真っすぐになるように操り、そうすることによって部材60を真っすぐにする。最後に、器具の引き戻し工程96において、医師54は、患者34から真っすぐになった器具21を後退させる。
【0043】
本明細書に記載されている実施形態は、主にENT用途に対処しているが、本明細書に記載されている方法及びシステムはまた、他の用途に使用することができる。
【0044】
上に述べた実施形態は例として挙げたものであり、本発明は上記に具体的に示し説明したものに限定されない点が理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、上記の明細書に記載されるさまざまな特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせの両方、並びに前述の記載を一読すると当業者が着想すると思われるそれらの変形及び修正であって、先行技術に開示されていない変形及び修正を含む。参照により本特許出願に援用される文献は、これらの援用文献において、いずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾して定義されている場合には、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の一部とみなすものとする。
【0045】
〔実施の態様〕
(1) 医療器具であって、
ハンドルと、
前記ハンドルに取り付けられてここから延在している、患者の開口部に挿入されるように構成されている管状部材であって、前記開口部において、医療手技を行うために屈曲するよう構成されている遠位端部分を有する、管状部材と、
前記管状部材の前記遠位端部分に連結されている屈曲可能な形状記憶素子(SME)であって、加熱されると、事前形成形状へと真っすぐになるよう構成されており、これにより、前記遠位端部分が真っすぐになる、形状記憶素子(SME)と、
を備える、医療器具。
(2) 前記SMEが、形状記憶材料から少なくとも一部が作製されており、前記形状記憶材料の事前形成形状が、前記SMEを真っすぐにする、実施態様1に記載の医療器具。
(3) 前記形状記憶材料がニチノールを含む、実施態様2に記載の医療器具。
(4) 前記SMEが、前記管状部材を通る配線を介して電流を受信し、前記電流に応答して真っすぐになるように構成されている、実施態様2に記載の医療器具。
(5) 前記SMEが、前記真っすぐな事前形成形状に戻るよう、前記SEMに供給された前記電流を伝導することによって加熱されるように構成されている、実施態様4に記載の医療器具。
【0046】
(6) ヒータを備え、前記ヒータは、前記SMEに熱的に連結されており、かつ前記SMEを前記真っすぐな事前形成形状へと真っすぐにするよう、前記SEMに供給された前記電流を伝導することによって加熱されるように構成されている、実施態様4に記載の医療器具。
(7) 前記SMEが、前記管状部材の壁の内側又は外側に接着されている、実施態様1に記載の医療器具。
(8) 前記SMEが、前記管状部材の壁に組み込まれている、実施態様1に記載の医療器具。
(9) 前記SMEが、前記遠位端部分を取り囲むように構成されているスリーブを備える、実施態様1に記載の医療器具。
(10) 医療機器を製造する方法であって、
患者の開口部に挿入されるように構成されている管状部材をハンドルに取り付けて、前記ハンドルから延在させることであって、前記管状部材が、医療手技を行うために屈曲するよう構成されている遠位端部分を有する、ことと、
前記管状部材の前記遠位端部分に屈曲可能な形状記憶素子(SME)を連結することであって、前記SMEが、加熱されると、事前形成形状へと真っすぐになるよう構成されており、これにより、前記遠位端部分が真っすぐになる、ことと、
を含む、方法。
【0047】
(11) 前記SMEが、形状記憶材料から少なくとも一部が作製されており、前記形状記憶材料の事前形成形状が前記SMEを真っすぐにする、実施態様10に記載の方法。
(12) 前記形状記憶材料がニチノールを含む、実施態様11に記載の方法。
(13) 前記管状部材を通るワイヤを介して電流を受信し、前記電流に応答して真っすぐになるよう、前記SMEに電気的に配線することを含む、実施態様11に記載の方法。
(14) 前記SMEが、前記真っすぐな事前形成形状に戻るよう、前記SMEに供給された前記電流を伝導することによって加熱されるように構成されている、実施態様13に記載の方法。
(15) 前記SMEを前記真っすぐな事前形成形状へと真っすぐにするよう、前記SMEに供給された前記電流を伝導することによって加熱されるように構成されているヒータを前記SMEに熱的に連結することを含む、実施態様13に記載の方法。
【0048】
(16) 前記管状部材の前記遠位端部分への前記SMEの連結が、前記管状部材の壁の内側又は外側に前記SMEを接着させることを含む、実施態様10に記載の方法。
(17) 前記管状部材の前記遠位端部分への前記SMEの連結が、前記管状部材の壁に前記SMEを組み込むことを含む、実施態様10に記載の方法。
(18) 前記遠位端部分上にスリーブを取り付けることを含む、実施態様10に記載の方法。
(19) 方法であって、
患者の身体における開口部に医療器具を挿入することであって、前記医療器具が、
ハンドルと、
前記ハンドルに取り付けられてここから延在している、管状部材であって、前記開口部において、医療手技を行うために屈曲するよう構成されている遠位端部分を有する、管状部材と、
前記管状部材の前記遠位端部分に連結されている屈曲可能な形状記憶素子(SME)であって、加熱されると、事前形成形状へと真っすぐになるよう構成されており、これにより、前記遠位端部分が真っすぐになる、形状記憶素子(SME)と、
を備える、ことと、
前記ハンドルから前記管状部材の前記遠位端を屈曲することと、
前記SMEが屈曲している間に、前記開口部で前記医療手技を行うことと、
前記医療手技を行った後に、前記SMEを前記事前形成形状に設定することによって、前記管状部材の前記遠位端部分を真っすぐにすることと、
前記患者の身体から、前記真っすぐになった医療器具を後退させることと
を含む、方法。
図1
図2A
図2B
図3
図4