(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】研削砥石のAE信号検出装置
(51)【国際特許分類】
B24B 49/10 20060101AFI20240624BHJP
B24B 45/00 20060101ALI20240624BHJP
B23Q 17/09 20060101ALI20240624BHJP
G01H 1/00 20060101ALI20240624BHJP
G01N 29/14 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
B24B49/10
B24B45/00 Z
B23Q17/09 G
G01H1/00 G
G01N29/14
(21)【出願番号】P 2021574512
(86)(22)【出願日】2020-12-11
(86)【国際出願番号】 JP2020046423
(87)【国際公開番号】W WO2021153042
(87)【国際公開日】2021-08-05
【審査請求日】2023-06-30
(31)【優先権主張番号】P 2020012643
(32)【優先日】2020-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004293
【氏名又は名称】株式会社ノリタケカンパニーリミテド
(74)【代理人】
【識別番号】100085361
【氏名又は名称】池田 治幸
(74)【代理人】
【識別番号】100147669
【氏名又は名称】池田 光治郎
(72)【発明者】
【氏名】五十君 智
(72)【発明者】
【氏名】大橋 智実
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-170744(JP,A)
【文献】特開平02-112733(JP,A)
【文献】特開平04-035865(JP,A)
【文献】特開昭62-162446(JP,A)
【文献】特開2002-066879(JP,A)
【文献】特表2018-504289(JP,A)
【文献】特開平09-196751(JP,A)
【文献】特開2019-030963(JP,A)
【文献】特開2013-084795(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 49/10
B23Q 17/00 - 17/12
B24B 45/00
G01H 1/00
G01N 29/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に固定された固定フランジと前記固定フランジに対して接近離隔可能に設けられた移動フランジとの間に挟持された、円環状の研削砥石に発生する弾性波を受けてAE信号を出力するAEセンサと、前記AEセンサから出力されたAE信号を無線で送信する送信回路部と、前記無線で送信されたAE信号を受信する受信回路部とを備える、研削砥石のAE信号検出装置であって、
前記AEセンサは、前記移動フランジまたは前記固定フランジに配置され、前記研削砥石から伝達される弾性波を検出してAE信号を出力するものであ
り、
前記移動フランジまたは前記固定フランジには、円環状の外周壁と前記外周壁の一端を閉じて前記研削砥石に密着させられる底壁とを有し、前記研削砥石とは反対側に開口する収容空間が形成されており、
前記AEセンサは、前記収容空間内において前記底壁に固定され、前記研削砥石から伝達された前記弾性波を検知するものであり、
前記AEセンサは、受信板を有し前記受信板が前記研削砥石に直接密接した状態で前記底壁に固定されている
ことを特徴とする研削砥石のAE信号検出装置。
【請求項2】
前記移動フランジまたは前記固定フランジには、円環状の外周壁と前記外周壁の一端を閉じて前記研削砥石に密着させられる底壁とを有し、前記研削砥石とは反対側に開口する収容空間が形成されており、
前記AEセンサは、前記収容空間内において前記外周壁の内周面に固定され、前記研削砥石から前記外周壁へ伝達された前記弾性波を検知するものである
ことを特徴とする請求項1の研削砥石のAE信号検出装置。
【請求項3】
前記送信回路部に定電圧を供給する定電圧電源回路部を備え、
前記送信回路部および前記定電圧電源回路部は、前記収容空間内に設けられている
ことを特徴とする請求項
2の研削砥石のAE信号検出装置。
【請求項4】
前記送信回路部に定電圧を供給する定電圧電源回路部を備え、
前記定電圧電源回路部は、相互に磁気結合された、位置固定の給電コイルおよび前記回転軸と共に回転する受電コイルを含む非接触給電装置を介して電力供給を受ける
ことを特徴とする請求項
2の研削砥石のAE信号検出装置。
【請求項5】
前記収容空間の開口は、少なくとも一部が非導電性材料から構成された蓋板により閉じられている
ことを特徴とする請求項
3の研削砥石のAE信号検出装置。
【請求項6】
前記研削砥石は、砥粒と前記砥粒を結合する結合材とを含み、円環状に一体成形されたものである
ことを特徴とする請求項1から
5のいずれか1の研削砥石のAE信号検出装置。
【請求項7】
回転軸に固定された固定フランジと前記固定フランジに対して接近離隔可能に設けられた移動フランジとの間に挟持された、円環状の研削砥石に発生する弾性波を受けてAE信号を出力するAEセンサと、前記AEセンサから出力されたAE信号を無線で送信する送信回路部と、前記無線で送信されたAE信号を受信する受信回路部とを備える、研削砥石のAE信号検出装置であって、
前記AEセンサは、前記移動フランジまたは前記固定フランジに配置され、前記研削砥石から伝達される弾性波を検出してAE信号を出力するものであり、
前記移動フランジまたは前記固定フランジには、円環状の外周壁と前記外周壁の一端を閉じて前記研削砥石に密着させられる底壁とを有し、前記研削砥石とは反対側に開口する収容空間が形成されており、
前記AEセンサは、前記収容空間内において前記外周壁の内周面に固定され、前記研削砥石から前記外周壁へ伝達された前記弾性波を検知するものであり、
前記送信回路部に定電圧を供給する定電圧電源回路部を備え、
前記送信回路部および前記定電圧電源回路部は、前記収容空間内に設けられており、
前記収容空間の開口は、少なくとも一部が非導電性材料から構成された蓋板により閉じられている
ことを特徴とする研削砥石のAE信号検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研削砥石の研削加工点から発生する弾性波を検出してAE信号を出力する研削砥石のAE信号検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
研削焼け、目詰まり、砥石の切れ味、砥石周面状態などの研削ホイールの研削面状態或いはドレッシング状態を判定し、或いは監視するために、研削ホイールを構成する砥粒などの破砕に関連して研削面から放射される音波を検出してAE信号(Acoustic emission
signal:周波数が比較的高い周波数例えば100kHz以上の超音波領域である振動波)を出力する研削ホイール用AE信号検出装置が、知られている。例えば、特許文献1に記載された研削ホイール用AE信号検出装置がそれである。
【0003】
特許文献1に記載の研削ホイールのAE信号検出装置では、研削ホイールの研削加工点の近傍にて弾性波を検出するように、例えば超砥粒層からなる研削層を構成するセグメント砥石が外周壁の外周面に貼り着けられたホイールコア(台金)内に、弾性波を検出するAEセンサが外周壁の内周面に固着されている。この特許文献1には、ビトリファイド研削ホイールにおいて発生する弾性波を検出してAE信号を出力するためにホイールコア内に設けられた研削ホイール側AEセンサと、被削材において発生する被削材側AE信号を検出するための被削材側AEセンサと、前記研削ホイール側AE信号及び被削材側AE信号を周波数解析する周波数解析部と、その周波数解析部によりそれぞれ周波数解析された研削ホイール側AE信号及び被削材側AE信号に基づいて前記ビトリファイド研削ホイールの研削面状態を判定する研削面状態判定部とを設けることで,研削ホイールの研削面状態の判定或いは評価を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の研削ホイールのAE信号検出装置では、砥石ホイールの交換に際しては、ホイールコアの外周壁の外周面に貼り着けられた研削ホイール層例えばセグメント砥石を貼り換える必要があるため、研削加工装置を連続的に運転させるには、AEセンサを内蔵した砥石ホイールを予備として用意する必要があった。この場合、AEセンサ、及びAEセンサから出力されるAE信号を増幅するプリアンプが異なると、得られるAE信号の絶対値が必ずしも一致しないため、砥石ホイールの交換毎に、目詰まり、切れ味、研削面状態、ドレッシング状態等の判定のために設けた閾値を設定し直す必要があった。また、ホイールコア内に、AEセンサ、プリアンプ、通信回路基板、電源を設ける必要があるため、例えばビトリファイド砥石やレジノイド砥石などのような一般砥石、すなわち円環状に一体成形されてホイールコアを持たない研削砥石には、適用が困難であった。
【0006】
本発明は以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、研削砥石の研削加工点からの弾性波を検出でき、研削砥石の交換に際して、AEセンサ、プリアンプ、通信回路基板を交換する必要がなく、ホイールコアを持たない、一体成形された研削砥石にも適用が可能な、研削砥石のAE信号検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、以上の事情を背景として種々検討を重ねた結果、一体成形された研削砥石が装着される部材に、少なくともAEセンサを内蔵させると、研削砥石の研削加工点からの弾性波を検出でき、研削砥石の交換に際して、AEセンサ、及びそれに接続された通信回路基板等を交換する必要がなく、ビトリファイド砥石やレジノイド砥石などのようなホイールコアを持たない研削砥石であっても、その交換毎に、目詰まり、切れ味、研削面状態、ドレッシング状態等の判定のために設けた閾値を設定し直す必要がないということを見いだした。本発明は、斯かる知見に基づいて為されたものである。
【0008】
すなわち、第1発明の要旨とするところは、(a)回転軸に固定された固定フランジと前記固定フランジに対して接近離隔可能に設けられた移動フランジとの間に挟持された、円環状の研削砥石に発生する弾性波を受けてAE信号を出力するAEセンサと、前記AEセンサから出力されたAE信号を無線で送信する送信回路部と、前記無線で送信されたAE信号を受信する受信回路部とを備える、研削砥石のAE信号検出装置であって、(b)前記AEセンサは、前記移動フランジまたは前記固定フランジに配置され、前記研削砥石から伝達される弾性波を検出してAE信号を出力し、(c)前記移動フランジまたは前記固定フランジには、円環状の外周壁と前記外周壁の一端を閉じて前記研削砥石に密着させられる底壁とを有し、前記研削砥石とは反対側に開口する収容空間が形成されており、(d)前記AEセンサは、前記収容空間内において前記底壁に固定され、前記研削砥石から伝達された前記弾性波を検知するものであり、(e)前記AEセンサは、受信板を有し前記受信板が前記研削砥石に直接密接した状態で前記底壁に固定されていることにある。
【0009】
第2発明の要旨とするところは、第1発明において、前記移動フランジまたは前記固定フランジには、円環状の外周壁と前記外周壁の一端を閉じて前記研削砥石に密着させられる底壁とを有し、前記研削砥石とは反対側に開口する収容空間が形成されており、前記AEセンサは、前記収容空間内において前記外周壁の内周面に固定され、前記研削砥石から前記外周壁へ伝達された前記弾性波を検知することにある。
【0012】
第3発明の要旨とするところは、第2発明において、前記送信回路部に定電圧を供給する定電圧電源回路部を備え、前記送信回路部および前記定電圧電源回路部は、前記収容空間内に設けられていることにある。
【0013】
第4発明の要旨とするところは、第2発明において、前記送信回路部に定電圧を供給する定電圧電源回路部を備え、前記定電圧電源回路部は、相互に磁気結合された、位置固定の給電コイルおよび前記回転軸と共に回転する受電コイルを含む非接触給電装置を介して電力供給を受けることにある。
【0014】
第5発明の要旨とするところは、第3発明において、前記収容空間の開口は、少なくとも一部が非導電性材料から構成された蓋板により閉じられていることにある。
【0015】
第6発明の要旨とするところは、第1発明から第5発明のいずれか1の発明において、前記研削砥石は、砥粒と前記砥粒を結合する結合材とを含み、円環状に一体成形されたものであることにある。
第7発明の要旨とするところは、(a)回転軸に固定された固定フランジと前記固定フランジに対して接近離隔可能に設けられた移動フランジとの間に挟持された、円環状の研削砥石に発生する弾性波を受けてAE信号を出力するAEセンサと、前記AEセンサから出力されたAE信号を無線で送信する送信回路部と、前記無線で送信されたAE信号を受信する受信回路部とを備える、研削砥石のAE信号検出装置であって、(b)前記AEセンサは、前記移動フランジまたは前記固定フランジに配置され、前記研削砥石から伝達される弾性波を検出してAE信号を出力し、(c)前記移動フランジまたは前記固定フランジには、円環状の外周壁と前記外周壁の一端を閉じて前記研削砥石に密着させられる底壁とを有し、前記研削砥石とは反対側に開口する収容空間が形成されており、(d)前記AEセンサは、前記収容空間内において前記外周壁の内周面に固定され、前記研削砥石から前記外周壁へ伝達された前記弾性波を検知するものであり、(e)前記送信回路部に定電圧を供給する定電圧電源回路部を備え、(f)前記送信回路部および前記定電圧電源回路部は、前記収容空間内に設けられており、(g)前記収容空間の開口は、少なくとも一部が非導電性材料から構成された蓋板により閉じられていることにある。
【発明の効果】
【0016】
第1発明の研削砥石のAE信号検出装置によれば、前記AEセンサは、前記移動フランジまたは前記固定フランジに配置され、前記研削砥石から伝達される弾性波を検出してAE信号を出力するものである。これにより、回転軸に固定された固定フランジと移動フランジとが接近離隔可能であって研削砥石を脱着可能であるので、研削砥石の交換に際して、AEセンサや回路基板を交換する必要がなく、ホイールコアを持たない一体成形された研削砥石にも適用が可能となる。また、前記移動フランジまたは前記固定フランジには、円環状の外周壁と前記外周壁の一端を閉じて前記研削砥石に密着させられる底壁とを有し、前記研削砥石とは反対側に開口する収容空間が形成されており、前記AEセンサは、前記収容空間内において前記底壁に固定され、前記研削砥石から伝達された前記弾性波を検知するものであるので、研削砥石の研削加工点で発生する弾性波を明確に検出することができる。さらに、前記AEセンサは、受信板を有し前記受信板が前記研削砥石に直接密接した状態で前記底壁に固定されているので、研削砥石の研削加工点で発生する弾性波を明確に検出することができる。
【0017】
第2発明の研削砥石のAE信号検出装置によれば、前記AEセンサは、前記収容空間内において前記外周壁の内周面に固定され、前記研削砥石から前記外周壁へ伝達された前記弾性波を検知するものである。これにより、研削砥石の研削加工点からの距離が短いので、研削砥石の研削加工点で発生する弾性波を明確に検出することができる。
【0020】
第3発明の研削砥石のAE信号検出装置によれば、前記送信回路部に定電圧を供給する定電圧電源回路部を備え、前記送信回路部および前記定電圧電源回路部は、前記収容空間内に設けられている。これにより、研削砥石と共に回転している状態で、収容空間内に設けられた送信回路部から移動フランジまたは固定フランジの外部へ電波を送信することができる。
【0021】
第4発明の研削砥石のAE信号検出装置によれば、前記送信回路部に定電圧を供給する定電圧電源回路部を備え、前記定電圧電源回路部は、相互に磁気結合された、位置固定の給電コイルおよび前記回転軸と共に回転する受電コイルを含む非接触給電装置を介して電力供給を受けるものである。これにより、電池を前記収容空間内に搭載することが不要となる。
【0022】
第5発明の研削砥石のAE信号検出装置によれば、前記収容空間の開口は、少なくとも一部が非導電性材料から構成された蓋板により閉じられている。これにより、収容空間内に設けられた送信回路部から移動フランジまたは固定フランジの外部へ送信される電波が障害を受けることがないので、電波により搬送されるデータが安定して受信されることができる。
【0023】
第6発明の研削砥石のAE信号検出装置によれば、前記研削砥石は、砥粒と前記砥粒を結合する結合材とを含み、円環状に一体成形されたものである。これにより、ビトリファイド砥石やレジノイド砥石などのような一般砥石、すなわち円環状に一体成形されてホイールコアを持たない研削砥石の研削点に発生する弾性波をAE信号として検出することができる。
第7発明の研削砥石のAE信号検出装置によれば、前記AEセンサは、前記移動フランジまたは前記固定フランジに配置され、前記研削砥石から伝達される弾性波を検出してAE信号を出力するものであるので、回転軸に固定された固定フランジと移動フランジとが接近離隔可能であって研削砥石を脱着可能であるので、研削砥石の交換に際して、AEセンサや回路基板を交換する必要がなく、ホイールコアを持たない一体成形された研削砥石にも適用が可能となる。また、前記AEセンサは、前記収容空間内において前記外周壁の内周面に固定され、前記研削砥石から前記外周壁へ伝達された前記弾性波を検知するものであるので、研削砥石の研削加工点からの距離が短いので、研削砥石の研削加工点で発生する弾性波を明確に検出することができる。また、前記送信回路部に定電圧を供給する定電圧電源回路部を備え、前記送信回路部および前記定電圧電源回路部は、前記収容空間内に設けられているので、研削砥石と共に回転している状態で、収容空間内に設けられた送信回路部から移動フランジまたは固定フランジの外部へ電波を送信することができる。さらに、前記収容空間の開口は、少なくとも一部が非導電性材料から構成された蓋板により閉じられていることから、収容空間内に設けられた送信回路部から移動フランジまたは固定フランジの外部へ送信される電波が障害を受けることがないので、電波により搬送されるデータが安定して受信されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施例の研削砥石のAE信号検出装置を備える研削加工装置の構成を説明する図である。
【
図2】研削砥石に密着した移動フランジ内に設けられた
図1の研削砥石のAE信号検出装置の構成を、一部を切り欠いて説明する図である。
【
図3】
図2の研削砥石のAE信号検出装置の構成を拡大して示す図である。
【
図4】研削砥石にドレッシングを行なったときに
図2に示すAE信号検出装置により得られたAE信号を周波数解析して得られた周波数スペクトルを示す図である。
【
図5】研削砥石によりセラミック板を研削したときに
図2に示すAE信号検出装置により得られたAE信号を周波数解析して得られた周波数スペクトルを示す図である。
【
図6】
図2に示すAE信号検出装置により得られたAE信号を周波数解析して得られた周波数スペクトルであって、研削砥石の無負荷回転時の周波数スペクトルを示す図である。
【
図7】
図1の面状態表示装置の表示例を説明する図である。
【
図8】
図1の面状態表示装置の他の表示例を説明する図である。
【
図9】切込速度が0.8mm/min、周速度が2700m/minであるときの、CBNビトリファイド砥石の台金に内蔵されたAEセンサを用いたときに得られたAE信号の周波数スペクトルを上段に、CBNビトリファイド砥石を挟む
図3に示す移動フランジに内蔵されたAEセンサを用いたときに得られたAE信号の周波数スペクトルを下段に、対比して示す図である。
【
図10】切込速度が0.8mm/min、周速度が2100m/minであるときの、CBNビトリファイド砥石の台金に内蔵されたAEセンサを用いたときに得られたAE信号の周波数スペクトルを上段に、CBNビトリファイド砥石を挟む
図3に示す移動フランジに内蔵されたAEセンサを用いたときに得られたAE信号の周波数スペクトルを下段に、対比して示す図である。
【
図11】切込速度が2.8mm/min、周速度が2700m/minであるときの、CBNビトリファイド砥石の台金に内蔵されたAEセンサを用いたときに得られたAE信号の周波数スペクトルを上段に、CBNビトリファイド砥石を挟む
図3に示す移動フランジに内蔵されたAEセンサを用いたときに得られたAE信号の周波数スペクトルを下段に、対比して示す図である。
【
図12】
図9の研削条件、
図10の研削条件、及び
図11の研削条件においてそれぞれ得られた、CBNビトリファイド砥石の台金にAEセンサが内蔵された場合及び
図3に示す移動フランジに内蔵された場合の振動強度比を、対比してそれぞれ示す図である。
【
図13】ビトリファイド砥石をドレッシングしたときに、ビトリファイド砥石を挟む
図3に示す移動フランジに内蔵されたAEセンサを用いて検出されたAE信号を周波数解析して得られた周波数スペクトルを示す図である。
【
図14】
図13の周波数スペクトル中の25~45kHz区間内においてFFT解析周期毎に得られる周波数スペクトルの積分信号の時間変化を一点鎖線で、
図13の周波数スペクトル中の45~75kHz区間内においてFFT解析周期毎に得られる周波数スペクトルの積分信号の時間変化を実線でそれぞれ示す図である。
【
図15】切込速度が0.8mm/minであるときの、ビトリファイド砥石を挟む
図3に示す移動フランジに内蔵されたAEセンサを用いたときに得られたAE信号の周波数スペクトルを示す図である。
【
図16】切込速度が2.0mm/minであるときの、ビトリファイド砥石を挟む
図3に示す移動フランジに内蔵されたAEセンサを用いたときに得られたAE信号の周波数スペクトルを示す図である。
【
図17】本発明の他の実施例における研削砥石のAE信号検出装置の要部を示す図であって、
図3に相当する図である。
【
図18】切込速度が0.8mm/min、周速度が1500m/minであるときの、CBNビトリファイド砥石の台金に内蔵されたAEセンサを用いたときに得られたAE信号の周波数スペクトルを示す図である。
【
図19】
図18と同様の研削条件下で、CBNビトリファイド砥石を挟む
図17に示す移動フランジの底壁に固定されたAEセンサを用いたときに得られたAE信号の周波数スペクトルを示す図である。
【
図20】本発明のさらに他の実施例における研削砥石のAE信号検出装置の要部を示す図であって、
図3に相当する図である。
【
図21】本発明のさらに他の実施例における研削砥石のAE信号検出装置の要部を示す図であって、
図2に相当する図である。
【
図22】本発明のさらに他の実施例における研削砥石のAE信号検出装置の要部を示す図であって、
図3に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は発明に関連する要部を説明するものであり、寸法及び形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例1】
【0026】
図1は、研削砥石14のAE信号検出装置10の検出部として機能する移動フランジ20を備える研削加工装置12の構成を説明する図である。
図1において、研削加工装置12には、溶融アルミナ系砥粒、炭化珪素系砥粒、セラミックス砥粒などの一般砥粒や、CBN砥粒、ダイヤモンド砥粒の超砥粒などの砥粒14aが、ビトリファイドボンド、メタルボンドなどの結合材14bにより結合された一般砥石、例えば、台金(ホイールコア)を備えない一体成形された円環状の研削砥石14が用いられている。
【0027】
図2は、研削砥石14の装着構造を示している。回転中心線Cまわりに回転駆動される研削加工装置12の回転軸(主軸)16の軸端には、雄ねじ16bが形成されている。研削砥石14は、回転軸16の雄ねじ16bに螺合されたナット22により締結されることで、回転軸16の軸端に装着された鉄製の固定フランジ18と移動フランジ20との間に挟圧された状態で装着される。固定フランジ18は、回転軸16の軸端部に形成されたテーパ部16aにテーパ嵌合された円筒部18bと、円筒部18bの一端から径方向(外周側)に突き出す円板部である固定フランジ部18aとを備えている。
【0028】
移動フランジ20は、円筒部18bに回転中心線Cと同心に摺動可能に嵌合された貫通穴20aと、研削砥石14に密接する円板部である移動フランジ部20bと、を備えている。回転軸16の軸端にナット22が螺合されると、座金23を介して移動フランジ20が押圧されることにより、固定フランジ部18aと移動フランジ部20bとの間で研削砥石14が挟圧された状態で、固定される。研削砥石14は、例えば
図1に示すように柱状の被削材Wの外周面を研削する。
【0029】
図3は、研削砥石14のAE信号検出装置10の検出部の構成を拡大して示す図である。移動フランジ部20bは、円筒状の外周壁20cと、その外周壁20cの一端を閉じて研削砥石14に密着させられる底壁20dと、外周壁20cと同心の円筒状の内周壁20eとを一体に有し、研削砥石14とは反対側に開口する円環状の収容空間20fが内部に形成されている。AEセンサ24は、収容空間20f内において、外周壁20cの内周面に固着され研削砥石14の研削点から外周壁20cへ伝達された弾性波を検知する。
【0030】
収容空間20f内には、AEセンサ24の出力信号を増幅するプリアンプ26と、アンテナ及び送信回路を含む回路基板から構成され、プリアンプ26からの出力信号を空中へ送信する送信回路部28と、プリアンプ26からの出力信号をAD変換して空中へ送信する送信回路部28へ定電圧を供給する蓄電池30と、が固設されている。蓄電池30は、定電圧電源回路部として機能し、プリアンプ26及び送信回路部28へ電力を供給する二次電池である。蓋板32は、電波を透過させる材質例えば合成樹脂板、ガラス板などの非導電性材料から構成され、収容空間20fの開口を閉じた状態で移動フランジ20に止めネジ34により固定されている。上記送信回路部28は、好適には、例えばIEEE802.11ac規格のWi-fi通信を行なうMCUを備えた通信モジュールから構成されている。
【0031】
AEセンサ24は、研削砥石14に含まれる砥粒14a等の破砕時に発生し且つ研削砥石14内を伝播する例えば20kHz以上の超音波領域の弾性振動域である極めて周波数の高い破砕振動(acoustic emission)を、研削砥石14に密着した底壁20dを通して検出し、その破砕振動を表すアナログの電気信号であるAE信号SAEを出力する。AEセンサ24は、弾性波を検知する受信板24aを一端部に有し、受信板24aに受信された機械的振動をAE信号SAEに変換して出力する機/電変換素子例えば圧電素子を備えている。
【0032】
図1に戻って、研削加工装置12は、さらに、送信回路部28から無線で送信されたAE信号SAEを受信するためのアンテナ36を有する受信回路部38と、受信回路部38により受信された搬送波を通過させる所定の周波数帯を備えたバンドパスフィルタ40と、搬送波から復調されたAE信号SAEをA/D変換するA/D変換器42と、そのデジタル信号に変換されたAE信号SAEを処理する演算制御装置44と、を備えている。
【0033】
A/D変換器42は、高分解能を有し、例えば10μ秒(マイクロ秒)以下のサンプリング周期、好適には5μ秒以下のサンプリング周期、さらに好適には1μ秒以下のサンプリング周期で、AE信号SAEをデジタル信号に変換する。A/D変換器42のサンプリング周期は、短くなるほど(高速となるほど)、例えば後述の
図4及び
図5に示す、目こぼれ(砥粒破砕)に関連する第1周波数帯B1と、砥粒と被削材との接触(擦れ)により生じる摩擦振動や弾性振動に関連する第2周波数帯B2とが明確となる。なお、以下の実施例では、A/D変換器42のサンプリング周期として1μ秒が用いられている。
【0034】
演算制御装置44は、CPU、ROM、RAM、インターフェースなどを含む電子制御装置すなわち所謂マイクロコンピュータであって、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って入力信号を処理することにより、ドレッシング面状態を判定するための、研削面状態を表す数値、グラフ、或いは図形などを算出し、研削面状態表示装置としても機能する面状態表示装置48から出力させるとともに、研削制御装置72へ送信する。
【0035】
研削加工装置12の演算制御装置44は、周波数解析部50、研削面状態出力部51、及びドレッシング面状態出力部52を機能的に備えている。周波数解析部50は、被削材Wの研削加工中或いは研削砥石14のドレッシング中において、A/D変換器42から入力されたAE信号SAEの周波数解析(FFT)を繰り返し行なって、信号強度を示す縦軸と周波数を示す横軸との二次元座標において、周波数成分の大きさを示す種々の信号強度を周波数毎にピーク波形で周波数軸(横軸)上に示す周波数スペクトルを生成する。
【0036】
研削面状態出力部51は、被削材Wの研削加工中において、上記周波数スペクトルから、例えば32.5kHzを中心部に含む予め設定された第1周波数帯B1、例えば20から35kHzの第1周波数帯B1についての第1信号強度SP1、及び、例えば55kHzを中心部に含む予め設定された第2周波数帯B2、例えば40から60kHzの第2周波数帯B2についての第2信号強度SP2を、それぞれ算出する。それらの第1信号強度SP1及び第2信号強度SP2としては、瞬時値であってもよいが、目つぶれや目こぼれを安定的に把握するために、好適には、A/D変換器42のサンプリング周期よりも充分に長く設定された所定周期内例えば周波数解析周期内の積分値或いは移動平均値が用いられる。
【0037】
また、ドレッシング面状態出力部52は、ドレッサ46を用いた研削砥石14のドレッシング中において、研削面状態出力部51と同様に、上記周波数スペクトルから、32.5kHzを中心部に含む予め設定された第1周波数帯B1、例えば25から35kHzの第1周波数帯B1についての第1信号強度SP1、及び、55kHzを中心部に含む予め設定された第2周波数帯B2、例えば40から60kHzの第2周波数帯B2についての第2信号強度SP2を、それぞれ算出する。それらの第1信号強度SP1及び第2信号強度SP2としては、瞬時値であってもよいが、目つぶれや目こぼれを安定的に把握するために、好適には、A/D変換器42のサンプリング周期よりも充分に長く設定された所定周期内例えば周波数解析周期内の積分値或いは移動平均値が用いられる。
【0038】
研削面状態出力部51は、被削材Wの研削加工中において、或いは、ドレッシング面状態出力部52は研削砥石14のドレッシング中において、それぞれ、第1信号強度SP1及び第2信号強度SP2の少なくとも一方に基づいて、ドレッシング面状態評価値例えば信号強度の所定周期の積分値或いは移動平均値に関連する関連値(例えばレベル値)、或いは信号強度比SR(=SP1/SP2)或いはその関連値(例えばレベル値)を算出し、面状態表示装置48へ出力する。
【0039】
これにより、
図4及び
図5の周波数スペクトルに示すような、第1信号強度SP1及び第2信号強度SP2の少なくとも一方、信号強度比SR或いはそれらの関連値を、研削面状態評価値として、或いはドレッシング面状態評価値として面状態表示装置48に表示させる。なお、第1信号強度SP1及び第2信号強度SP2の一方を用いる場合には、研削面状態評価値或いはドレッシング面状態評価値は、第1信号強度SP1及び第2信号強度SP2の一方の信号強度値そのものであってもよいし、把握し易い指標値例えばレベル値に変換した値であってもよい。
【0040】
ここで、AEセンサ24によって検出されるAE信号波から高速で高分解能のA/D変換器42を用いてデジタル信号に変換されたSAE信号の周波数解析により得られる周波数スペクトルにおいて、第1周波数帯B1内のピーク波形信号群及び第2周波数帯B2内のピーク波形信号群の発生について、CBNレジノイド砥石について本発明者が行なった研削試験を、以下に説明する。
【0041】
研削試験1は、CBNレジノイド砥石について、ドレッシング時、セラミック板研削加工時、無負荷回転時のそれぞれにおいて得られる周波数スペクトルにおいて、ピーク波形信号群で構成される第1周波数帯B1及び第2周波数帯B2の発生状態の検証試験である。研削試験2は、ビトリファイド砥石の研削時及びドレッシング時にそれぞれ得られる周波数スペクトルにおいて、ピーク波形信号群で構成される第1周波数帯B1及び第2周波数帯B2の発生状態の検証試験である。
【0042】
(研削試験1)
第1周波数帯B1及び第2周波数帯B2の発生を確認するために、以下の条件で、ドレッシング、及び研削をおこなった。以下の研削工具は、
図2及び
図3に示すように、AEセンサ24を内蔵した移動フランジ20をCBNレジノイド砥石の側面に密着して装着した。
研削工具 :CBNレジノイド砥石 CBC 170 P 75 B
直径400mm×厚み10mm
ドレッシング工具 :ロータリドレッサ SD 40 Q M
直径100mm×幅1.5mm
セラミック板 :厚み1mmのアルミナ板
研削工具の周速度 :1250m/min
ドレッサの周速度 :864m/min
ドレッサの切込み量:直径0.002mm/pass
ドレスリード :0.15mm/r.o.w.
セラミック板に対する切込み量 :200μm
セラミック板に対する切込み速度 :1.2mm/min
【0043】
図4、
図5及び
図6は、CBNレジノイド砥石のドレッシング時、セラミック板の研削時、無負荷回転時のそれぞれにおいてそれぞれ得られたAE信号の周波数スペクトルを示している。CBNレジノイド砥石の無負荷回転時には、
図6に示すように、第1周波数帯B1及び第2周波数帯B2の周波数成分が含まれていない。しかし、CBNレジノイド砥石のドレッシング時には、
図4に示すように、25~35
kHzの第1周波数帯B1の周波数成分と40~60
kHzの第2周波数帯B2の周波数成分とが得られた。また、CBNレジノイド砥石のセラミック板研削加工時には、
図5に示すように、20~35
kHzの第1周波数帯B1の周波数成分と、40~60
kHzの第2周波数帯B2の周波数成分とが得られた。
【0044】
図5のセラミック板研削加工時の第1周波数帯B1の周波数成分のパワーは、
図4のドレッシング時に比較して相対的に小さいが、セラミック板は脆性材料であるためにセラミック板の加工時における砥粒14aの破砕が起こり難いからであると推定される。ドレッシング時は、砥粒14aの破砕が促進されるために第1周波数帯B1の周波数成分のパワーは相対的に大きいが、第2周波数帯B2の周波数成分のパワーは相対的に小さい。このようなことから、第1周波数帯B1の周波数成分のパワーは、砥粒14aの破砕時に発生する振動に由来するものであり、第2周波数帯B2の周波数成分のパワーは、砥粒14aとセラミック板、或いは、砥粒14aとドレッサ46の接触に起因する摩擦振動または弾性振動に由来するものであると推定される。
【0045】
図7は、
図1の面状態表示装置48の一表示態様として、例えば液晶画面に表示される棒グラフ型のレベル表示例を示し、
図8は、
図1の面状態表示装置48の一表示態様として、例えば液晶画面或いは計器に表示されるレベルメータ型の表示例を示している。
図7では、第1信号強度SP1及び第2信号強度SP2の両方が表示されているが、それらのうちの一方が、ドレッシング面状態を示す評価値として表示されていてもよい。
図8では、第1信号強度SP1、第2信号強度SP2、信号強度比SR(=SP1/SP2)が表示されているが、それらのうちの1つ、或いはそれに対応するレベル値が、研削面状態或いはドレッシング面状態を示す評価値として表示されていてもよい。これらの研削面状態或いはドレッシング面状態を示す評価値は、研削加工装置(ドレッシング装置)12における研削条件或いはドレッシング条件を手動で調節する手動制御において利用される。
【0046】
図7では、砥粒14aの破砕に関連する第1周波数帯B1についての第1信号強度SP1を示す棒グラフ54が左側に、砥粒14aとドレッサ46との摺接に関連する第2周波数帯B2についての第2信号強度SP2を示す棒グラフ56が右側に、左右一対として示される。左側の棒グラフ54が示す第1周波数帯B1の砥粒14aの破砕状態に基づいて目こぼれ状態を評価することができ、また、右側棒グラフ56が示す第2周波数帯B2の砥粒14aとドレッサ46との摺接状態に基づいて目つぶれ状態を評価することができる。
【0047】
また、
図7の棒グラフ54及び56は、第1周波数帯B1及び第2周波数帯B2内でそれぞれ4区分された周波数帯毎の信号強度が示されているので、左右の棒グラフ54及び56の対比によって、
図7(a)に示す、砥粒破砕時の振動強度が砥粒14aとドレッサ46との接触に起因する摩擦振動或いは弾性振動の強度を上まわる目こぼれ状態であるか、
図7(b)に示す、砥粒破砕時の振動強度が砥粒14aとドレッサ46との接触に起因する摩擦振動或いは弾性振動の強度を下まわる目つぶれ状態であるかを判別できる。さらに、第1周波数帯B1及び第2周波数帯B2のそれぞれにおける破砕強度パターンに基づいて、砥粒14aの破砕及び砥粒14aとドレッサ46との接触に起因する摩擦振動或いは弾性振動状態を正確に評価することができる。
【0048】
図8の面状態表示装置48の表示例は、針を用いて目盛りを指示する複数のメータ型の表示器58、59、60により構成されている。表示器58は、砥粒14aの破砕に関連する第1周波数帯B1についての第1信号強度SP1を示し、表示器59は、砥粒14aとドレッサ46との接触により発生する摩擦振動或いは弾性振動に関連する第2周波数帯B2についての第2信号強度SP2を示す。表示器58の表示レベルが示す第1周波数帯B1の砥粒破砕時の振動強度に基づいて目こぼれ状態を評価することができ、表示器60の表示レベルが示す第2周波数帯B2の砥粒14aとドレッサ46との接触により発生する摩擦振動或いは弾性振動の強度に基づいて目つぶれ状態を評価することができる。
【0049】
また、表示器58及び59の表示レベルがそれぞれ示す第1周波数帯B1及び第2周波数帯B2のそれぞれにおける信号強度の比較に基づいて、目こぼれ状態或いは目つぶれ状態を一層正確に評価することができる。表示器60は、砥粒14aの破砕に関連する第1周波数帯B1についての第1信号強度SP1と砥粒14aとドレッサ46との摩擦状態に関連する第2周波数帯B2についての第2信号強度SP2との信号強度比SR(=SP1/SP2)を示す。
【0050】
図1に戻って、研削加工装置12は、研削砥石14が取り付けられた回転軸16を回転駆動する主軸駆動モータ62と、円柱状の被削材Wを回転駆動する被削材回転駆動モータ64と、研削砥石14を円柱状の被削材Wの外周面に押し当てるために被削材Wを径方向に移動させる被削材移動モータ66と、ドレッサ46を回転駆動するドレッサ駆動モータ68と、ドレッサ46をその回転中心線C方向に送るドレッサ送りモータ70と、研削制御装置72とを備えている。
【0051】
研削制御装置72は、演算制御装置44と同様のマイクロコンピュータから構成されており、研削自動制御部74及びドレッシング制御部76を機能的に備えている。研削自動制御部74は、研削開始指令信号を受けると、予め設定された動作で研削砥石14及び被削材Wをそれぞれ回転駆動しつつ相対移動させることで被削材Wを研削し、被削材Wの研削が完了すると被削材Wの回転を停止させるとともに原位置へ戻す。
【0052】
研削自動制御部74は、被削材Wの研削加工の過程において、ドレッシング面状態出力部52から出力された実際の第1信号強度SP1、第2信号強度SP2、或いは信号強度比SR(=SP1/SP2)に基づいて、被削材Wに対する実際の評価値が示す研削面状態が予め設定された目標評価値が示す研削面状態となるように、主軸駆動モータ62、被削材回転駆動モータ64と、被削材移動モータ66を自動制御する。例えば、研削自動制御部74は、目標信号強度比SRTを目つぶれ及び目こぼれのバランスのよい値に設定し、ドレッシング面状態出力部52からリアルタイムで逐次出力される実際の信号強度比SRが例えば0.55程度に予め設定された目標信号強度比SRTと一致するように、研削条件を自動調節する。
【0053】
例えば、実際の信号強度比SRが予め設定された目標信号強度比SRTを超える場合には目こぼれ傾向であるので、その目こぼれを抑制するために、加工能率(切込速度)の下降、研削砥石14の周速度Vgの上昇(回転数の上昇)、被削材Wの周速度の下降のうちの少なく1つを実行し、実際の信号強度比SRを目標信号強度比SRTへ向かって変化させる。反対に、実際の信号強度比SRが予め設定された目標信号強度比SRTを下まわる場合には目つぶれ傾向であるので、その目つぶれを抑制するために、加工能率(切込速度)の上昇、研削砥石14の周速度Vgの下降(回転数の下降)、被削材Wの周速度の上昇のうちの少なく1つを実行し、実際の信号強度比SRを目標信号強度比SRTへ向かって変化させる。
【0054】
本発明者等は、ビトリファイドCBN砥石を用いる点を共通にして、台金内にAEセンサ24を設けた場合と、
図3に示すように台金を持たないビトリファイドCBN砥石を挟む移動フランジ20内にAEセンサ24を設けた場合との間の整合性を検証する実験を、以下に示す研削条件を用いて行なった。
<研削条件>
砥石 :CB 80 N 200 V
研削盤 :汎用円筒研削盤
研削方式 :湿式プランジ研削
砥石周速度 :2100m/min、2700m/min
ワーク材質 :SCM435焼き入れ鋼 HRc48±2
ワーク周速度 :0.45m/sec
切込速度 :R0.8mm/min、 R2.8mm/min
スパークアウト :10rev
研削液 :ノリタケクール SEC700(×50)
研削液流量 :20L/min
【0055】
図9は、切込速度がR0.8mm/min、周速度が2700m/minであるときの、CBNビトリファイド砥石の台金に内蔵されたAEセンサ24を用いたときに得られたAE信号の周波数スペクトルを上段の(a)に、CBNビトリファイド砥石を挟む移動フランジ20に内蔵されたAEセンサ24を用いたときに得られたAE信号の周波数スペクトルを下段の(b)に、対比して示している。
【0056】
図10は、切込速度がR0.8mm/min、周速が2100m/minであるときの、CBNビトリファイド砥石の台金に内蔵されたAEセンサ24を用いたときに得られたAE信号の周波数スペクトルを上段の(a)に、CBNビトリファイド砥石を挟む移動フランジ20に内蔵されたAEセンサ24を用いたときに得られたAE信号の周波数スペクトルを下段の(b)に、対比して示している。
【0057】
図11は、切込速度がR2.8mm/min、周速が2700m/minであるときの、CBNビトリファイド砥石の台金に内蔵されたAEセンサ24を用いたときに得られたAE信号の周波数スペクトルを上段の(a)に、CBNビトリファイド砥石を挟む移動フランジ20に内蔵されたAEセンサ24を用いたときに得られたAE信号の周波数スペクトルを下段の(b)に、対比して示している。
【0058】
図12は、
図9の研削条件、
図10の研削条件、及び
図11の研削条件においてそれぞれ得られた、CBNビトリファイド砥石の台金にAEセンサ24が内蔵された場合、及び移動フランジ20に内蔵された場合のAE信号を周波数解析して得た周波数スペクトルの振動強度比a/bを、対比してそれぞれ示している。ここで、aは28~36kHzの第1周波数帯B1内の振幅平均値である振動強度、bは45~75kHzの第2周波数帯B2内の振幅平均値である振動強度である。
【0059】
図9、
図10、
図11、及び
図12から明らかなように、上記各研削条件において、AEセンサ24が台金内に内蔵された場合とAEセンサ24が移動フランジ20に内蔵された場合との間では、振動強度及び振動強度比は同様の傾向を示すことが確認された。
【0060】
(研削試験2)
また、本発明者等は、ビトリファイド砥石(台金のない一般砥石:SH 80 J 8
V)を固定フランジ18と移動フランジ20との間に挟んだ状態で、以下に示すドレッシング条件を用いてドレッシングを行なった場合に、移動フランジ20に内蔵されたAEセンサ24を用いて振動を測定した。この実験では、厚み0.5mmのポリラベルがビトリファイド砥石と固定フランジ18及び移動フランジ20との間に介挿されている。
<ドレッシング条件>
ドレッサ :LL単石ドレッサ □0.8mm
砥石周速度 :2700m/min
ドレスリード :0.1mm/r.o.w.
ドレス切込量 :20μm/pass
総切込量 :R200μm
【0061】
図13は、ビトリファイド砥石をドレッシングしたときに、ビトリファイド砥石を挟む移動フランジ20に内蔵されたAEセンサ24を用いて検出されたAE信号を周波数解析して得られた周波数スペクトルを示している。
図14は、
図13の周波数スペクトル中の25~45kHz区間内においてFFT解析周期毎に得られる周波数スペクトルの積分信号の時間変化を一点鎖線で、
図13の周波数スペクトル中の45~75kHz区間内においてFFT解析周期毎に得られる周波数スペクトルの積分信号の時間変化を実線でそれぞれ示している。
【0062】
図13及び
図14から明らかなように、ドレッシング中に発生したAE信号が明確に認識できる。なお、ドレッシング中の消費電力の変化からは、ドレッシング中であることはノイズに埋もれて認識できなかった。
【0063】
また、本発明者等は、上記ドレッシング条件を用いてドレッシングされたビトリファイド砥石(台金のない一般砥石:SH 80 J 8 V)を固定フランジ18と移動フランジ20との間に挟んだ状態で、以下に示す研削条件を用いて研削を行なった場合に、移動フランジ20に内蔵されたAEセンサ24を用いて振動を測定した。
<研削条件>
ビトリファイド砥石 :SH 80 J 8 V
研削盤 :汎用円筒研削盤
研削方式 :湿式プランジ研削
砥石周速度 :2700m/min
ワーク材質 :SCM435焼き入れ鋼 HRc48±2
ワーク周速度 :27m/min
ワーク材質 :SCM435
切込速度 :R0.8mm/min、 R2.0mm/min
スパークアウト :10rev
研削液 :ノリタケクール SEC700(×50)
研削液流量 :20L/min
【0064】
図15は、切込速度がR0.8mm/minであるときの、ビトリファイド砥石を挟む移動フランジ20に内蔵されたAEセンサ24を用いたときに得られたAE信号の周波数スペクトルを示している。
図16は、切込速度がR2.0mm/minであるときの、ビトリファイド砥石を挟む移動フランジ20に内蔵されたAEセンサ24を用いたときに得られたAE信号の周波数スペクトルを示している。
【0065】
図15及び
図16に示すように、特定の周波数帯、すなわち25~45kHzの第1周波数帯B1及び45~75kHzの第2周波数帯B2に発生する振動ピークを検出することができた。また、
図15に示す切込速度がR0.8mm/minであるときに比較して、
図16に示す切込速度がR2.0mm/minであるときは、45~75kH
zの第2周波数帯B2に発生する振動ピークが相対的に小さい。加工負荷が高いことによる砥粒14aの脱落により、作用砥粒が少なくなった結果であると推定される。
【0066】
上述のように、本実施例の研削砥石14のAE信号検出装置10によれば、回転軸16に固定された固定フランジ18と固定フランジ18に対して接近離隔可能に設けられた移動フランジ20との間に挟持された、円環状の研削砥石14に発生する弾性波を受けてAE信号を出力するAEセンサ24と、AEセンサ24から出力されたAE信号を無線で送信する送信回路部28と、前記無線で送信されたAE信号を受信する受信回路部38とを備える、研削砥石14のAE信号検出装置10であって、AEセンサ24は、移動フランジ20に配置され、研削砥石14から移動フランジ20を介して伝達される弾性波を検出してAE信号を出力するものである。これにより、回転軸16に固定された固定フランジ18と移動フランジ20とが接近離隔可能であって研削砥石14を脱着可能であるので、研削砥石14の交換に際して、AEセンサ24や回路基板を交換する必要がなく、ホイールコアを持たない一体成形された研削砥石にも適用が可能となる。
【0067】
また、本実施例の研削砥石14のAE信号検出装置10によれば、移動フランジ20には、円環状の外周壁20cと外周壁20cの一端を閉じて研削砥石14に密着させられる底壁20dとを有し、研削砥石14とは反対側に開口する収容空間20fが形成されており、AEセンサ24は、収容空間20f内において外周壁20cの内周面に固定され、研削砥石14から外周壁20cへ伝達された弾性波を検知するものである。これにより、研削砥石14の研削加工点からの距離が短いので、研削砥石14の研削加工点で発生する弾性波を明確に検出することができる。
【0068】
また、本実施例の研削砥石14のAE信号検出装置10によれば、送信回路部28に定電圧を供給する蓄電池(定電圧電源回路部)30を備え、送信回路部28及び蓄電池30は、収容空間20f内に設けられている。これにより、研削砥石14と共に回転している状態で、収容空間20f内に設けられた送信回路部28から移動フランジ20の外部へ電波を送信することができる。
【0069】
また、本実施例の研削砥石14のAE信号検出装置10によれば、収容空間20fの開口は、少なくとも一部がプラスチックなどの非導電性材料から構成された蓋板32により閉じられている。これにより、収容空間20f内に設けられた送信回路部28から移動フランジ20の外部へ送信される電波が、障害を受けることがなく、位置固定の受信回路部38のアンテナ36に一層容易に受信される。
【0070】
また、本実施例の研削砥石14のAE信号検出装置10によれば、研削砥石14は、砥粒14aと砥粒14aを結合する結合材14bとを含み、円環状に一体成形されたものである。これにより、ビトリファイド砥石やレジノイド砥石などのような一般砥石、すなわち円環状に一体成形されてホイールコアを持たない研削砥石の研削点に発生する弾性波をAE信号として検出することができる。
【0071】
また、本実施例の研削砥石14のAE信号検出装置10によれば、円環状の外周壁20cと外周壁20cの一端を閉じて研削砥石14に密着させられる底壁20dとを有し、研削砥石14とは反対側に開口する収容空間20fが形成された移動フランジ20と、収容空間20f内において外周壁20cに固着され、研削砥石14の研削加工点において発生する弾性波を検出してAE信号SAEを出力するAEセンサ24と、収容空間20f内に設けられ、AEセンサ24から出力されたAE信号SAEを無線で送信する送信回路部28と、収容空間20fの開口を閉じる非導電性の蓋板32と、を備えている。
【0072】
これにより、移動フランジ20の底壁20dには、研削砥石14の研削加工点において発生する弾性波を検出してAE信号SAEを出力するAEセンサ24が固着されているので、移動フランジ20が研削砥石14の側面に圧接された状態で回転軸16に装着されることで、研削砥石14の研削加工点からの弾性波を検出できる。また、研削砥石14の交換に際しては、移動フランジ20が圧接される研削砥石14だけを交換して再利用できるので、AEセンサ24、プリアンプ26、送信回路部28を交換する必要がなく、研削砥石14の大型化や、適用できる研削加工装置12への制限が抑制され、台金(ホイールコア)を持たない研削砥石にも適用が可能となる。
【0073】
また、本実施例の研削砥石14のAE信号検出装置10によれば、AEセンサ24は、弾性波を検知する受信板24aを一端部に有し、受信板24aを外周壁20cに向けた状態で外周壁20cに固着されている。これにより、研削砥石14の研削加工点からの距離が短く、研削砥石14の研削加工点からの弾性波を一層明確に検出される。
【0074】
また、本実施例の研削砥石14のAE信号検出装置10によれば、移動フランジ20の収容空間内20fには、AEセンサ24から出力されたAE信号SAEを増幅して送信回路部28へ出力するプリアンプ26と、送信回路部28及びプリアンプ26に定電圧を供給する蓄電池30とが、配置されている。これにより、研削砥石14の研削加工点からの弾性波を、位置固定の受信回路部38により容易に受信できる。
【実施例2】
【0075】
次に、本発明の他の実施例を説明する。以下の説明において、前述の実施例と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0076】
本実施例の研削砥石14のAE信号検出装置110は、
図17に示すように、AEセンサ24が移動フランジ20の底壁20dに固定されている点で、実施例1の研削砥石14のAE信号検出装置10と相違するが、他は同様に構成されている。
【0077】
AEセンサ24は、移動フランジ20の底壁20dに形成された嵌合穴20g内に嵌め入れられた状態で、接着剤20hにより底壁20dに固定されている。
【0078】
本発明者等は、ビトリファイドCBN砥石を用いる点を共通にして、台金内にAEセンサ24を設けた場合と、
図17に示すように台金を持たないビトリファイドCBN砥石を挟む移動フランジ20の底壁20dにAEセンサ24を設けた場合との間の差異を検証する実験を、以下に示す研削条件を用いて行なった。
<研削条件>
砥石 :CB 80 N 200 V
研削盤 :汎用円筒研削盤
研削方式 :湿式プランジ研削
砥石周速度 :1500m/min
ワーク材質 :SCM435焼き入れ鋼 HRc48±2
ワーク周速度 :0.45m/sec
切込速度 :R0.8mm/min
研削液 :ノリタケクール SEC700(×50)
研削液流量 :20L/min
【0079】
図18は、切込速度がR0.8mm/min、周速度が1500m/minであるときの、CBNビトリファイド砥石の台金に内蔵されたAEセンサ24を用いたときに得られたAE信号の周波数スペクトルを示し、
図19は、同様の研削条件下で、CBNビトリファイド砥石を挟む移動フランジ20の底壁に固定されたAEセンサ24を用いたときに得られたAE信号の周波数スペクトルを示している。
図19に示す周波数スペクトルは、
図18に比較して、波形がくっきりとし、強度(振幅)も大きく現れた。
【0080】
上述のように、本実施例の研削砥石14のAE信号検出装置110によれば、前述の実施例の効果に加えて、移動フランジ20には、円環状の外周壁20cと外周壁20cの一端を閉じて研削砥石14に密着させられる底壁20dとを有し、研削砥石14とは反対側に開口する収容空間20fが形成されており、AEセンサ24は、収容空間20f内において底壁20dに固定され、研削砥石14から移動フランジ20を介して伝達された弾性波を検知するものである。これにより、研削砥石14の研削加工点で発生する弾性波を一層明確に検出することができる。
【実施例3】
【0081】
本実施例の研削砥石14のAE信号検出装置210は、
図20に示すように、AEセンサ224が移動フランジ20の底壁20dを貫通状態で固定されている点で、実施例1の研削砥石14のAE信号検出装置10と相違するが、他は同様に構成されている。
【0082】
図20において、研削砥石14のAE信号検出装置210の移動フランジ20には、回転中心線Cに平行な方向の貫通穴213が底壁20dを貫通して形成されており、AEセンサ224が、その貫通穴213を通り、AEセンサ224の先端面にある受信板224aが研削砥石14の側面に当接した状態で、装着されている。AEセンサ224は、円柱状の先端部224bとその先端部224bよりも大径の大径部224cとを有する一方で、貫通穴213は、弾性を有する振動絶縁シート215を介して、AEセンサ224の円柱状の先端部224b及び大径部224cを嵌めいれる段付穴形状とされており、AEセンサ224の抜け落ちが防止されている。
【0083】
貫通穴213の内側の開口部にはボルト217が螺合されており、ボルト217が、ゴムなどの弾性材料219を介してAEセンサ224を付勢している。これにより、移動フランジ20の装着前の状態では、AEセンサ224の先端面にある受信板224aは、貫通穴213から研削砥石14側へ僅かに突き出しており、移動フランジ20が研削砥石14に密着させられると、受信板224aを研削砥石14に直接密接した状態で底壁20dに固定される。
【0084】
上述のように、本実施例の研削砥石14のAE信号検出装置210によれば、前述の実施例の効果に加えて、AEセンサ224が受信板224aを有し、受信板224aが研削砥石14に直接密接した状態で底壁20dに固定されているので、研削砥石14の研削加工点からの弾性波を、一層明確に検出できる。
【実施例4】
【0085】
本実施例の研削砥石14のAE信号検出装置310は、
図21に示すように、蓄電池30に替わる非接触給電装置331を設けた他は、実施例1の研削砥石14のAE信号検出装置10と同様に構成されている。
【0086】
図21において、移動フランジ20の収容空間20f内には蓄電池30が備えられておらず、研削砥石14に対して固定フランジ18とは反対側に位置するナット22の研削砥石14とは反対側に、複数本(本実施例では4本)の支持軸378を介して支持された外ケース380が設けられている。外ケース380は、その径方向寸法が固定フランジ18及び移動フランジ20よりも充分に小径であり、前述の実施例の円環状の収容空間20fの最小径すなわち移動フランジ20の内周壁20eの外周面よりも小径であって、ナット22と同等の外径を有している。
【0087】
外ケース380内には、定電圧電源回路部331aと受電コイル331bとが設けられている。位置固定に設けられた固定アーム382の先端部には、コイル駆動回路331dと給電コイル331cとが固定されている。受電コイル331bと給電コイル331cとは、回転中心線C方向に僅かな間隙Gを隔て且つ回転中心線Cまわりに相対回転可能となるように、外ケース380と固定アーム382の先端部とにそれぞれ設けられて、磁気的に結合されている。定電圧電源回路部331aは、受電コイル331bに供給された電力を定電圧電力に変換してプリアンプ26、送信回路部28等に供給する。上記定電圧電源回路部331a、受電コイル331b、コイル駆動回路331d、及び給電コイル331cは、本実施例の非接触給電装置331として機能している。
【0088】
上述のように、本実施例の研削砥石14のAE信号検出装置310によれば、前述の実施例の効果に加えて、定電圧電源回路部331aは、相互に磁気結合された、位置固定の給電コイル331c及び回転軸16と共に回転する受電コイル331bを含む非接触給電装置331を介して電力供給を受ける。前述の実施例の効果に加えて、蓄電池30の電圧チェックや交換等のメンテナンスが不要となるとともに、比較的重量の大きい蓄電池30の偏在による重心のずれが解消される。
【実施例5】
【0089】
本実施例の研削砥石14のAE信号検出装置410の検出部は、移動フランジ20にではなく、
図22に示すように、回転軸16にテーパ嵌合された固定フランジ418に設けられている点で、実施例1と相違する。
【0090】
固定フランジ418は固定フランジ18と同様に鉄製であって研削砥石14が固定フランジ418と移動フランジ20との間に挟圧された状態で装着されている。固定フランジ418は、回転軸16の軸端部に形成されたテーパ部16aにテーパ嵌合された円筒部418bと、円筒部418bの一端から径方向に突き出す円板部である固定フランジ部418aとを有している。
【0091】
固定フランジ部418aは、円筒状の外周壁418cと、その外周壁418cの一端を閉じて研削砥石14に密着させられる底壁418dと、外周壁418cと同心の円筒状の内周壁418eとを一体に有し、研削砥石14とは反対側に開口する円環状の収容空間418fが内部に形成されている。AEセンサ24は、収容空間418f内において、外周壁418cの内周面に固着され、研削砥石14の研削点から外周壁418cへ伝達された弾性波を検知する。
【0092】
収容空間418f内には、AEセンサ24の出力信号を増幅するプリアンプ426と、アンテナ及び送信回路を含む回路基板から構成され、プリアンプ426からの出力信号を空中へ送信する送信回路部428と、プリアンプ426からの出力信号をAD変換して空中へ送信する送信回路部428へ定電圧を供給する蓄電池430とが、固設されている。
【0093】
蓄電池430は、定電圧電源回路部として機能し、プリアンプ426及び送信回路部428へ電力を供給する二次電池である。蓋板432は、電波を透過させる材質例えば合成樹脂板、ガラス板などの非導電性材料から構成され、収容空間418fの開口を閉じた状態で固定フランジ418に止めネジ434により固定されている。
【0094】
本実施例のAE信号検出装置410の検出部によれば、実施例1のAE信号検出装置10と同様に、円筒状の外周壁418cと外周壁418cの一端を閉じて研削砥石14に密着させられる底壁418dとを有し、研削砥石14とは反対側に開口する収容空間418fが形成された固定フランジ418と、収容空間418f内において外周壁418cに固着され、研削砥石14の研削加工点において発生する弾性波を検出してAE信号SAEを出力するAEセンサ24と、収容空間418f内に設けられ、AEセンサ24から出力されたAE信号SAEを無線で送信する送信回路部428と、収容空間418fの開口を閉じる非導電性の蓋板432と、を備えている。
【0095】
これにより、固定フランジ418の底壁418dには、研削砥石14の研削加工点において発生する弾性波を検出してAE信号SAEを出力するAEセンサ24が固着されているので、固定フランジ418が研削砥石14の側面に圧接された状態で回転軸16に装着されることで、研削砥石14の研削加工点からの弾性波を検出できる。また、研削砥石14の交換に際しては、固定フランジ418が圧接される研削砥石14だけを交換して再利用できるので、AEセンサ24、プリアンプ426、送信回路部428を交換する必要がなく、研削砥石14の大型化や、適用できる研削加工装置12への制限が抑制され、台金(ホイールコア)を持たない研削砥石にも適用が可能となる。
【0096】
以上、本発明の一実施例を図面を用いて説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0097】
例えば、前述の
図2及び
図3の実施例において、移動フランジ20に替えて、座金23を介してナット22により押圧される円板状の押板と、この押板と研削砥石14との間に介在させられた厚肉円板状のスペーサとが設けられてもよい。この場合、上記スペーサ内には、移動フランジ20と同様に、AEセンサ24、プリアンプ26、送信回路部28、蓄電池30が設けられる。これにより、上記スペーサは、固定フランジ18に対して接近離隔可能に設けられ、固定フランジ18との間に研削砥石14を締め付けて固定する前述の移動フランジ20として機能する。
【0098】
なお、上述したのはあくまでも本発明の一実施例であり、本発明はその主旨を逸脱しない範囲において種々の変更が加えられ得るものである。
【符号の説明】
【0099】
10,110,210,310,410:AE信号検出装置 14:研削砥石 14a:砥粒 14b:結合材 16:回転軸 18,418:固定フランジ 20:移動フランジ 20c,418c:外周壁 20d,418d:底壁 20f,418f:収容空間
24,224:AEセンサ 24a,224a:受信板 28,428:送信回路部 30,430:蓄電池(定電圧電源回路部) 331:非接触給電装置 331a:定電圧電源回路部 331b:受電コイル 331c:給電コイル 32,432:蓋板 38:受信回路部