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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】結紮装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/12 20060101AFI20240624BHJP
【FI】
A61B17/12
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021575122
(86)(22)【出願日】2020-02-04
(86)【国際出願番号】 JP2020004050
(87)【国際公開番号】W WO2021156930
(87)【国際公開日】2021-08-12
【審査請求日】2022-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100207789
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 良平
(72)【発明者】
【氏名】吉井 利博
【審査官】豊田 直希
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0231353(US,A1)
【文献】特表2019-520902(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0150929(US,A1)
【文献】特開2002-191609(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102727276(CN,A)
【文献】中国実用新案第202699218(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00-18/00
A61F 2/01
A61N 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉可能なアームを有するクリップユニットと、
前記クリップユニットと解除可能に連結されるコネクタと、
前記コネクタに接続され、前記クリップユニットを操作可能に構成されるワイヤと、
前記ワイヤが挿通する開口を有するパイプと、
を備え、
前記コネクタが前記クリップユニットと連結した第一状態の時、前記開口の内径は、前記コネクタの径方向の寸法より小さく、
前記コネクタが前記クリップユニットと連結されない第二状態の時、前記開口の内径は、前記コネクタの径方向の寸法より大きい、
を備える結紮装置。
【請求項2】
前記パイプは、前記第二状態の時、前記開口の内径が前記コネクタの寸法より小さい状態から、前記開口の内径が前記コネクタの寸法より大きい状態へと変形可能に構成される、
請求項1に記載の結紮装置。
【請求項3】
前記パイプは、基端側に向かって内径が縮小する縮径部と、前記縮径部の前記基端側に連なる小径部と、を有し、
前記開口の内径は、前記小径部の内径である、
請求項1に記載の結紮装置。
【請求項4】
前記パイプは、前記第一状態の時、前記縮径部に前記コネクタが接触できるように構成され、
前記小径部の内径は、前記コネクタの径方向の寸法より小さい
請求項3に記載の結紮装置。
【請求項5】
前記小径部は、前記縮径部よりも変形しやすく構成されている、
請求項3に記載の結紮装置。
【請求項6】
前記コネクタは、前記クリップユニットと連結する爪を有し、
前記コネクタの前記径方向の寸法は、前記爪の前記径方向の寸法である、
請求項1に記載の結紮装置。
【請求項7】
前記コネクタは、前記ワイヤの長手軸に沿って延びる板状部と、前記板状部から先端側に向かって延びる爪と、を有し、
前記爪は、基端側に向かって延びる後端部を有する、
請求項1に記載の結紮装置。
【請求項8】
前記パイプは、基端側に向かって内径が縮小する縮径部と、前記縮径部の前記基端側に連なる小径部と、を有し、
前記後端部が前記縮径部と接触することにより前記コネクタと前記クリップユニットの連結が解除される、
請求項7に記載の結紮装置。
【請求項9】
前記クリップユニットは、前記アームが挿通する押さえ管をさらに有し、
前記パイプの内径は、前記押さえ管の外径よりも大きい、
請求項1に記載の結紮装置。
【請求項10】
前記パイプは基端側に向かって内径が縮小する縮径部を有し、
前記縮径部は自身の軸線方向に延びるスリットを有し、
前記縮径部の基端内に進入した前記コネクタが前記スリットをはさんで対向する前記基端の外周面を離間させることにより、前記開口が変形可能に構成される、
請求項2に記載の結紮装置。
【請求項11】
開閉可能に構成されるクリップアームと、
クリップアームの少なくとも一部が挿通する補助部材と、
前記補助部材に設けられた開口と、
を備え、
第1の位置に前記クリップアームが配される時、前記開口は第1の径を有し、
前記第1の位置よりも前記開口に近い第2の位置に前記クリップアームが配される時、前記開口は、前記第1の径よりも大きい第2の径へと拡径可能に構成され
前記クリップアームと解除可能に連結するアプリケータをさらに備え、
前記第1の位置に前記クリップアームが配される時、前記クリップアームと前記アプリケータは連結しており、
前記第2の位置に前記クリップアームが配される時、前記クリップアームと前記アプリケータは連結解除されている
結紮装置。
【請求項12】
前記アプリケータは、前記クリップアームと解除可能に連結するコネクタを有し、
前記第1の位置に前記クリップアームが配される時、前記コネクタが前記開口よりも先端側に配され、
前記第2の位置に前記クリップアームが配される時、前記コネクタの少なくとも一部が前記開口に挿通する、
請求項1に記載の結紮装置。
【請求項13】
前記補助部材は、基端側に向かって内径が縮小する縮径部と、前記縮径部の前記基端側に連なる小径部と、を有し、
前記コネクタは、前記コネクタの長手軸に沿って延びる板状部と、前記板状部から先端側に向かって延びる爪と、を有し、
前記爪は、基端側に向かって延びる後端部を有し、
前記後端部が前記縮径部と接触することにより前記コネクタと前記クリップアームの連結が解除される、
請求項1に記載の結紮装置。
【請求項14】
前記小径部は、前記縮径部よりも変形しやすく構成されている、
請求項1に記載の結紮装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アプリケータ、より詳しくは、組織を結紮する留置デバイスが取り付けられるアプリケータ、並びにこのアプリケータを備える結紮装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡を用いて行う処置として、クリップユニット等の留置デバイスを使った結紮が知られている。クリップユニットは一対のアームを備えている。一対のアームが組織を挟んだ状態で一対のアームを所定量牽引すると、一対のアームが組織を強く締め付けた状態でロックされる。
【0003】
クリップユニットは、アプリケータに装着された状態で体内に導入される。クリップユニットは組織を結紮した状態で体内に留置されるため、一対のアームがロックされた後にアプリケータから切り離す必要がある。
【0004】
アプリケータとクリップユニットとの連結を解除する態様がいくつか知られている。例えば、アプリケータとクリップユニットとを連結する部材を破断する態様、部材を破断させずに変形させて連結を解除する態様、部材を回動させて連結を解除する態様(例えば、特許文献1参照。)などである。
変形による連結解除は、小片が生じない点で破断による連結解除に比して優れている。変形による連結解除は、部材と接続された操作伝達部材の牽引操作のみで連結解除できる点で回動による連結解除に比して優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】日本国特許第5750620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
操作者は、一対のアームを閉じさせて対象組織を締め付け、把持位置などを確認しながら結紮が十分であることを確認する。結紮が不十分であると判断した場合には、一対のアームを開かせて対象組織の締め付けを解除し、再度結紮操作を行う。そして、結紮が十分であると判断した場合には、アームをロックする。この時、クリップユニットのアームをロックするために必要な操作力量(ロック力量)が、対象組織を結紮するために必要な力量よりも大幅に大きいことで、操作者は力量のギャップを認識することができ、誤ってアームをロックしてしまうことなく操作を行うことができる。
【0007】
クリップユニットのアームをロックするために必要な操作力量(ロック力量)の大きさは、アームが挟んだ対象組織から受ける反力により変化する。対象組織が硬いと、ロック力量は大きくなる。
変形による連結解除をクリップユニットに適用する場合、ロックが完了する前に連結が解除されると、組織を結紮できない。したがって、連結解除に必要な操作力量(解除力量)は、通常、ロック力量よりも大きく設定される。また、上述したギャップを確保する観点から、ロック力量が更に大きく設定されることもある。ここで、アームが平均的な硬さの組織を挟んだ場合のロック力量を基準にして解除力量を設定すると、硬い組織を挟んだ場合にロックが完了していないにもかかわらず連結が解除される可能性がある。アームが硬い組織を挟んだ場合のロック力量を基準にして解除力量を設定するとこのような可能性をなくせるが、解除力量が非常に大きくなり、操作しにくくなる可能性がある。
【0008】
他に、操作感の問題がある。変形による連結解除の後、操作力量が変化しなかったり、増加したりすると、操作者は、連結が解除されたことを知覚できない。その結果、不必要に操作を継続するなど、操作が煩雑になる。
【0009】
上記事情を踏まえ、本発明は、留置デバイスを用いて硬い組織を確実に結紮でき、かつ連結が解除されたことを容易に検知できるアプリケータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一つの態様に係る結紮装置は、開閉可能なアームを有するクリップユニットと、前記クリップユニットと解除可能に連結されるコネクタと、前記コネクタに接続され、前記クリップユニットを操作可能に構成されるワイヤと、前記ワイヤが挿通する開口を有するパイプと、を備え、前記コネクタが前記クリップユニットと連結した第一状態の時、前記開口の内径は、前記コネクタの径方向の寸法より小さく、前記コネクタが前記クリップユニットと連結されない第二状態の時、前記開口の内径は、前記コネクタの径方向の寸法より大きい、を備える。
【0011】
本発明のその他の態様に係る結紮装置は、開閉可能に構成されるクリップアームと、クリップアームの少なくとも一部が挿通する補助部材と、前記補助部材に設けられた開口と、を備え、第1の位置に前記クリップアームが配される時、前記開口は第1の径を有し、前記第1の位置よりも前記開口に近い第2の位置に前記クリップアームが配される時、前記開口は、前記第1の径よりも大きい第2の径へと拡径可能に構成される。
【0012】
本発明の更なる一つの態様は、被検体内に留置可能な留置デバイスと解除可能に接続されたコネクタと、前記コネクタに接続された動力伝達部材と、前記動力伝達部材が挿通する開口を有する補助部材とを有する結紮装置における留置デバイスの接続解除方法であって、前記動力伝達部材を牽引することにより前記コネクタを前記補助部材に接触させ、前記コネクタを前記補助部材に接触させることにより前記コネクタを変形させて前記コネクタを前記留置デバイスから切り離し、前記動力伝達部材を牽引することにより前記補助部材の前記開口の内径を、前記コネクタの外径よりも小さい第1の径から前記コネクタの外径よりも大きい第2の径へと拡径する、留置デバイスの接続解除方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、留置デバイスを用いて硬い組織を確実に結紮でき、かつ連結が解除されたことを容易に検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第一実施形態に係る結紮装置の全体構成図である。
図2】同結紮装置のクリップユニットを示す図である。
図3】同クリップユニットの断面図である。
図4】同クリップユニットの断面図であり、図3と異なる方向における断面を示す。
図5】同結紮装置におけるクリップ装着部位の拡大断面図である。
図6】同結紮装置においてアームとフックとの連結が解除される動作の一過程を示す模式図である。
図7】アームおよびフックの連結解除動作の一過程を示す模式図である。
図8】フックがガイドパイプから抜ける動作の一過程を示す図である。
図9】結紮装置の動作における操作ワイヤの牽引量と力量の値との関係を示すグラフである。
図10】本発明の第二実施形態に係るアプリケータの部分拡大図である。
図11】同アプリケータのガイドパイプの外観図である。
図12】同ガイドパイプの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の第一実施形態について、図1から図9を参照して説明する。
図1は、本実施形態の医療機器である結紮装置1の外観を示す図である。結紮装置1は、体内に留置されるクリップユニット(留置デバイス)10と、クリップユニット10を操作するためのアプリケータ50とを備えている。クリップユニット10は、アプリケータ50の先端(遠位端)に装着される。
【0016】
図2は、クリップユニット10の外観を示す図である。図3は、クリップユニット10の断面図である。図2に示すように、クリップユニット10は、アーム部20と、アーム部20の一部が収容された押さえ管30とを備えている。
【0017】
アーム部20は、第一アーム21および第二アーム22の一対のアームを有する。第一アーム21および第二アーム22は、それぞれ先端部に爪21aおよび22aを有する。図3に示すように、アーム部20の基端部20aにおいて、第一アーム21と第二アーム22とが接続されている。基端部20aは、U字状に形成されている。
アーム部20は、合金や金属で形成されている。アーム部20の材質としては、ステンレス鋼、コバルトクロム合金、ニッケルチタン合金などを例示できる。
第一アーム21および第二アーム22は、図2に示す初期状態において拡開している。第一アーム21および第二アーム22は、初期状態から互いに接近すると、材料の弾性力により、初期状態に戻ろうとする付勢力が生じる。
【0018】
押さえ管30は、金属や樹脂等で形成された筒状の部材である。図3に示すように、アーム部20の基端部20aは、押さえ管30内に収容されている。アーム部20の先端部は、押さえ管の先端開口30aから突出している。押さえ管30の基端開口30bは、先端開口30aよりも小さい。
【0019】
図4は、押さえ管30の内部を図3と異なる方向から見た図である。図4に示すように、アーム部20の各アームの中間部には、係止部23が設けられており、係止部23において各アーム21、22の幅方向の寸法が大きくなっている(図4には第一アーム21のみ見えている)。各係止部23は、第一アーム21と第二アーム22とが接近することにより、基端開口30bを通過することができる。基端開口30bを通過後に第一アーム21と第二アーム22とが離間すると、係止部23は、基端開口30bを通過できなくなる。その結果、アーム部20は、一対のアームが閉じた状態でロックされる。
押さえ管30の内部には、コイルバネ31が配置されている。コイルバネ31の前端は、第一アーム21および第二アーム22の後面に接触できる。コイルバネ31の後端は、基端開口30bを有する押さえ管の後端面32と接触できる。
上述したアーム部20および押さえ管30の基本構造は公知であり、例えば、PCT国際公開2014/181676に開示されている。
【0020】
アプリケータ50は、図1に示すように、細長の挿入部51と、挿入部51に通された操作ワイヤ(動力伝達部材)52と、挿入部51に接続された操作部60とを備える。
挿入部51としては、例えばコイルで形成されたシースを使用できる。
操作部60は、挿入部51と接続された本体61と、本体61に対して摺動可能に取り付けられたスライダ62とを有する。
操作ワイヤ52としては、たとえば金属素線からなる撚線ワイヤを使用できる。操作ワイヤ52の基端部は、スライダ62と接続されている。スライダ62を本体61に対して移動させると、挿入部51内で操作ワイヤ52を進退させることができる。
【0021】
図5は、クリップユニット10が装着されたアプリケータ50先端部の拡大断面図である。
操作ワイヤ52の先端には、クリップユニット10と係合するフック(コネクタ)70が固定されている。図5に示すように、操作ワイヤ52の先端部は押さえ管30内に進入し、フック70とアーム部20の基端部20aとが係合している。フック70の外形寸法は、コイルバネ31の内径よりわずかに小さく、コイルバネと干渉せずにコイルバネ31内を移動できる。
【0022】
フック70は、操作ワイヤ52と接続される後部71と、基端部20aと係合する前部72とを有する。
後部71は、前後方向両端に近づくにつれて徐々に縮小する紡錘状に形成され、後端に開口する有底の穴71aを有する。操作ワイヤ52の先端部は、穴71a内に進入している。操作ワイヤ52とフック70とは、例えばロウ付け等により接続されている。本実施形態においてはフック70と操作ワイヤ52とは、同軸の状態を保持して接続されている。
【0023】
前部72は、一対の係合アーム73および74を有する。係合アーム73および74は、アーム部20の開閉方向と直交する方向からアーム部20を挟み込んでいる。係合アーム73は、アーム部20と接触する爪部75と、爪部75と後部71とを接続する板状部76とを有する。係合アーム74は、係合アーム73と同様に、爪部77および板状部78を有し、係合アーム73と同一の形状を有する。係合アーム73および74は、フック70の中心軸線X1に対して線対称となる位置に設けられている。
【0024】
図5に示すように、挿入部51の先端には、硬質のガイドパイプ(補助部材)55が取り付けられている。ガイドパイプ55の先端側領域の内径は、押さえ管30の外径よりも大きく、押さえ管30が進入できる。ガイドパイプ55は、基端に近づくにつれて内径が徐々に小さくなる縮径部55aを有し、縮径部55aよりも基端側の小径部55bの内径は、縮径部55aの最小内径と概ね同一である。フック70の後部71の外形寸法は、小径部55bの内径より小さく、爪部75、77によって規定される前部72の最大外形寸法は、小径部55bの内径より大きい。
【0025】
小径部55bは、縮径部55aよりも薄く形成されている。本実施形態において、挿入部51とガイドパイプ55とは、縮径部55aにおいて溶接等により接合されている。これにより、小径部55bと挿入部51との間には隙間が存在している。
【0026】
操作ワイヤ52には、図示しないストッパが取り付けられている。ストッパの形状や寸法は、ガイドパイプ内に進入できないように設定されているため、ストッパがガイドパイプの後端と接触すると、操作ワイヤはそれ以上前進できない。
【0027】
上記のように構成された結紮装置1の使用時の動作について説明する。結紮装置1は、内視鏡のチャンネルを経由して体内に導入される。結紮装置1を内視鏡に挿入する際、使用者はスライダ62を所定量後退させて、アーム部20が閉じ、かつロックされていない状態で挿入する。アーム部20が閉じたクリップユニット10および挿入部51の先端部を、別途準備したアウターシース内に収容した状態で内視鏡に挿入してもよい。
【0028】
結紮装置1を内視鏡先端部のチャンネル開口から突出させて、スライダを引く力を小さくしたりアウターシースを後退させたりすると、アーム部20は、自身の弾性復元力と、コイルバネ31の弾性復元力とにより、押さえ管30に対して前進する。その結果、一対のアーム21、22が開いた開形態となる。ストッパがガイドパイプ55の後端と接触すると、アーム部20は、押さえ管30に対して前進できなくなるため、アーム部20は押さえ管30から脱落せずに開形態を保持する。
【0029】
使用者が、スライダ62を本体61に対して後退させると、操作ワイヤ52が牽引されてアーム部20が押さえ管30に対して後退する、その結果、一対のアーム21、22が閉じた閉形態となる。使用者は、一対のアーム21、22間に組織を位置させて一対のアーム21、22を閉じることにより、組織を結紮できる。後述するロック操作を行うまでは、スライダ62を本体61に対して前進させることにより、一対のアーム21、22を閉形態から再び開形態に遷移させることができる。したがって、結紮装置1においては、ロック操作を行うまでは、操作ワイヤ52によりクリップユニット10を操作して組織のつかみ直しを行える。
図5に示すように、ガイドパイプ55内には、フック70の外径よりもわずかに大きい内径の規制部58が設けられている。規制部58は、基端部20aとフック70との意図しない連結解除を防止する。基端部20aとフック70との係合が解除されるためには、係合アーム73、74が一定距離以上離れる必要があるが、規制部58内には、係合アーム73と係合アーム74とが十分に離間できる程度の空間が存在しない。その結果、フック70と基端部20aとの係合は、係合アーム73、74が規制部58を通過するまでは解除されず、係合状態が好適に保持される。
【0030】
一対のアーム21、22間に位置する組織を結紮してよいと判断したら、使用者はアーム部20を閉形態に固定するためのロック操作を行う。ロック操作において、使用者は、つかみ直しができる範囲を超えて、さらにスライダ62を本体61に対して後退させる。スライダ62が後退すると、操作ワイヤ52が牽引され、一対のアーム21、22は、組織を挟んだまま略平行となって押さえ管30内に進入する。さらに、一対のアーム21、22に設けられた係止部23が互いに接近し、押さえ管30の基端開口30bを通過可能な位置関係となる。
基端開口30bを通過して押さえ管30外に移動した一対の係止部23は、操作ワイヤ52から受ける力が弱まると再び離間し、基端開口30bを通過できない位置関係となる。その結果、基端開口30bの縁に一対の係止部23が当接することでアーム部20の押さえ管30からの突出が防止され、アーム部20はロックされて閉形態が保持される。
【0031】
ロック操作の過程で、基端部20aおよびフック70は基端開口30bを通って押さえ管30外に移動するが、基端部20aとフック70との係合状態は規制部58により好適に保持される。
アーム部20がロックされた後、使用者がさらにスライダ62を後退させると、基端部20aとフック70との係合が解除され、クリップユニット10がアプリケータ50から切り離される。以下、連結解除時におけるフック70の動作について、詳細に説明する。
【0032】
アーム部20がロックされた後にスライダ62が後退されると、操作ワイヤ52が牽引される。その結果、図6に示すように、爪部75、77の後端部が縮径部55aの内面に接触する。操作ワイヤ52が牽引されると、爪部75、77の後端部は、縮径部55aの内面に沿って移動し、小径部55b内に進入する。
【0033】
爪部の後側が小径部55b内に進入するにつれて、爪部75、77は、それぞれ板状部との接続部位を中心として回動する。その結果、図7に示すように、爪部75、77の先端側は、互いに離間する方向に移動し、アーム部の基端部20aから離れる。こうして、フック70とアーム部20との連結が解除される。
【0034】
連結解除後にさらに操作ワイヤ52が牽引されると、板状部76および板状部78の先端部が互いに接近し、爪部75、77がさらに小径部55b内に進入する。
小径部55bは、薄く、かつ挿入部51との間に隙間を有するため、フック70の前部72が進入する際の力量を受けて、挿入部51の内面に向かって変形する。その結果、図8に示すように、小径部55bは内径を増加させるように変形しつつ、前部72を通過させる。これにより、小径部55bには、フック70が通過可能な開口Opが形成される。開口Opの内径は、変形前の小径部55bの内径よりも大きい。
【0035】
使用者がさらにスライダ62を後退させると、フック70は開口Opを通過し、ガイドパイプ55の基端開口から抜けてガイドパイプ55よりも手元側に移動する。フック70がガイドパイプ55から抜けると、操作ワイヤ52の牽引に抗する外力がフック70に作用しなくなるため、スライダ62を後退させるために必要な力量が大きく減少し、スライダ62の操作が軽くなる。したがって、使用者は、クリップユニット10がアプリケータ50から切り離されたことを容易に知覚することができる。
使用者が内視鏡およびアプリケータ50を体外に抜去すると、一連の手技が終了する。
【0036】
以上説明したように、本実施形態の結紮装置1によれば、規制部58と爪部75、77との寸法関係により、硬い組織を結紮する場合であってもクリップユニット10のアームがロックされる前にクリップユニット10とアプリケータ50との連結が解除されることが防止される。
【0037】
また、爪部75、77の後端部をガイドパイプ55の縮径部55aに押し付けるだけで、爪部が開いてクリップユニット10とアプリケータ50との連結が解除される。したがって、使用者は、スライダ62を後退させ続けるだけで連結を解除でき、その際に必要な力量を、アームをロックする際に必要とされる力量よりも小さくできる。
【0038】
さらに、連結解除後のフック70は、小径部55bが内径を増加させるように変形することにより、小径部に形成された開口Opを通ってガイドパイプ55から抜けることができる。その結果、上述のように、スライダ62の操作が著しく軽くなり、クリップユニット10がアプリケータ50から切り離されたことを使用者が容易に知覚できる。
【0039】
上述した各作用により、結紮装置1においては、硬い組織を挟んだ状態でクリップユニット10を確実に留置することと、操作のしやすさとを両立できる。
【0040】
図9に操作ワイヤ52の牽引量と発生する力量との関係を示す。アーム部が組織を挟んだ後、スライダ62を操作して操作ワイヤを牽引すると、アーム部のほぼ全体が押さえ管内に引き込まれるまでの領域R1においては、挟んだ組織から受ける反力により力量Nが徐々に増加する。
続いて、アーム部の基端部が押さえ管の基端開口に到達するまでの領域R2においては、アーム部と押さえ管の内面とがほぼ平行であるため、力量Nは徐々に低下する。
【0041】
続いて、アーム部がロックされるまでの領域R3において、係止部23が基端開口を乗り越えるためにアーム部を変形させる必要があるため、再び力量Nが増加する。ロックが完了すると、力量Nはいったん低下する。
続いて、アーム部とフックとの連結が解除されるまでの領域R4において、再び力量Nが増加する。力学的には、領域R4における最大力量値N2が領域R3における最大力量値N1以下であると、アーム部がロックされる前にフックとの連結が解除されてしまい、組織を結紮できない可能性がある。しかし、本実施形態では、規制部58と爪部75、77との寸法関係により、物理的に連結解除を抑制し、かつ爪部75、77の後端部をガイドパイプ55の縮径部55aに押し付ける動作により爪部を開くことにより、最大力量値N2を最大力量値N1以下としつつ、アーム部がロックされる前にフックとの連結が解除されることを、爪部の剛性のみに依存せずに防止している。
【0042】
続いて、爪部75、77が小径部55b内に進入するまでの領域R5において、力量Nは漸増するが、小径部55bが容易に変形して開口Opが形成されるため、領域R5の最大力量値は最大力量値N1を超えない。爪部75、77がガイドパイプ55から抜けた後の領域R6において、力量Nは急速に減少するため、使用者は、アーム部とフックとの連結が解除されたこと、すなわち、クリップユニットがアプリケータから切り離されたことを、容易に認識できる。
【0043】
本発明の第二実施形態について、図10から図12を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
図10は、本実施形態に係るアプリケータ150のガイドパイプ550周辺を示す図である。ガイドパイプ550は、規制部58および縮径部55aを有する第一部材551と、小径部550bを有する第二部材552との、2つの部材で構成されている。
【0044】
図11は、ガイドパイプ550の外観図である。第二部材552は、筒状であって、自身の軸線と平行に延びるスリット552aにより外周面が分割されている。これにより、第二部材552は、C字状の断面形状を有し、スリット552aを挟んで対向する外周面は、互いに接近および離間できる。
第二部材552の前部は、第一部材551の後部に外側から係合し、これにより第一部材551と第二部材552とが一体になっている。
【0045】
本実施形態に係るアプリケータ150においては、フック70の前部72が小径部550b内に進入すると、前部72が内側から第二部材552を押し広げる。その結果、スリット552aを挟んで対向する第二部材552の外周面が離間する。離間距離が所定値以上になると、第一部材551と第二部材552との係合が外れ、第二部材552が第一部材551から切り離される。
その結果、第一部材551の後端に、小径部550bの内径よりも大きい開口が形成され、フックが円滑にガイドパイプ550から抜けられるようになる。
【0046】
本実施形態のアプリケータ150も、第一実施形態のアプリケータ50と同様に、硬い組織を挟んだ状態でクリップユニットを確実に留置することと、操作のしやすさとを両立できる。
【0047】
本実施形態において、第一部材と第二部材とは、同一の材料で形成されてもよいし、異なる材料で形成されてもよい。第二部材が第一部材よりも変形しやすい材料である等の場合は、第二部材の厚さが第一部材以上であってもよい。
【0048】
また、図12に示す変形例のように、第一部材の形状と第二部材の形状とを一つの部材553で形成し、第一部材の外周面にスリット552aを延ばしてもよい。
スリットは小径部の外周面を分割していればよく、直線状でなくてもよい。
フック前部が小径部内を通過する際、第二部材は必ずしも第一部材から切り離されなくてもよい。この場合は、第二部材が押し広げられることにより、第二部材に前部72が通過できる大きさの開口が形成される。
【0049】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において各構成要素に種々の変更を加えたり、削除したりすることが可能である。
【0050】
本発明において、規制部材やガイドパイプは必須ではない。例えば、ガイドパイプの一部に規制部を設けてもよいし、挿入部を構成するシースの先端部を成型加工することにより、縮径部や小径部を形成してもよい。
ガイドパイプを使用する場合、ガイドパイプの一部がちぎれる等によって開口が形成されてもよい。
【0051】
小径部の内腔の断面形状は円形に限られず、例えば正方形等の多角形でもよい。
【0052】
本発明に係る留置デバイスは、上述したクリップユニットには限られない。例えば、日本国特許第4981157号に記載された、結紮状態で体内に留置可能なスネアワイヤであってもよい。
【0053】
本発明に係る動力伝達部材は、上述したワイヤには限られない。例えば、腹腔鏡下で使用する処置具等に本発明が適用される場合、動力伝達部材は、硬質のロッドであってもよい。
【0054】
本発明に係る補助部材は、小径部を有さなくてもよい。この場合は、動力伝達部材が牽引されてコネクタが縮径部の基端部を変形させることにより補助部材に開口が形成される。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、留置デバイスを装着して使用するアプリケータに適用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 結紮装置
10 クリップユニット(留置デバイス)
20 アーム部
21 第一アーム
22 第二アーム
50 アプリケータ
51 挿入部
52 操作ワイヤ(動力伝達部材)
55 ガイドパイプ(補助部材)
55a 縮径部
55b、550b 小径部
70 フック(コネクタ)
75、77 爪部
552a スリット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12