(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】損傷制御支柱
(51)【国際特許分類】
E01D 19/02 20060101AFI20240624BHJP
E01D 19/04 20060101ALI20240624BHJP
E04H 9/02 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
E01D19/02
E01D19/04 101
E04H9/02 301
(21)【出願番号】P 2022007515
(22)【出願日】2022-01-21
【審査請求日】2023-09-11
(73)【特許権者】
【識別番号】396007890
【氏名又は名称】大日本ダイヤコンサルタント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107375
【氏名又は名称】武田 明広
(72)【発明者】
【氏名】徳橋 亮治
(72)【発明者】
【氏名】野中 哲也
(72)【発明者】
【氏名】田崎 賢治
(72)【発明者】
【氏名】宮田 秀太
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-045134(JP,A)
【文献】特開2014-020071(JP,A)
【文献】特開2016-056677(JP,A)
【文献】特開2013-064244(JP,A)
【文献】特開平05-179657(JP,A)
【文献】特開2009-256885(JP,A)
【文献】特開平11-158884(JP,A)
【文献】特開2015-169040(JP,A)
【文献】実開昭62-143706(JP,U)
【文献】特開2000-096834(JP,A)
【文献】特開2009-024367(JP,A)
【文献】特開2016-065403(JP,A)
【文献】特開2013-057207(JP,A)
【文献】特開2011-001815(JP,A)
【文献】特開2001-200508(JP,A)
【文献】特開2014-088664(JP,A)
【文献】特開2014-222012(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111005306(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 1/00-24/00
E04C 3/00-3/46
E02B 3/04-3/14
E04H 9/00-9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フーチングの上に垂直に設置された柱材と、垂直な杖材と、杖材を柱材に固定するための杖材固定手段とを有し、
杖材は、柱材の外周面の外側に配置され、上端部が、杖材固定手段を介して柱材に固定され、下端部が、その下方側の要素と接しておらず、当該下方側の要素との間に間隙が形成され、
前記間隙は、設計地震動の最大時において、杖材の下端部が前記下方側の要素に接触せず、設計地震動を超過する作用が生じた時に、杖材の下端部が前記下方側の要素に接触し、杖材の抵抗が柱材に伝達される大きさに設定されていることを特徴とする損傷制御支柱。
【請求項2】
柱材の外周面の外側に延在する外周部を有するベースプレートが、柱材の下部に固定され、
前記下方側の要素が、前記ベースプレートの外周部であることを特徴とする、請求項1に記載の損傷制御支柱。
【請求項3】
フーチングの上面に鋼材が固定され、
前記下方側の要素が、前記鋼材であることを特徴とする、請求項1に記載の損傷制御支柱。
【請求項4】
杖材の内側縁部が、柱材の外周面と接しておらず、柱材の外周面との間に間隙が形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の損傷制御支柱。
【請求項5】
杖材、及び、杖材固定手段が、根巻きコンクリートによって外側から覆われていることを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の損傷制御支柱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の支柱(橋脚等)の構造に関し、特に、損傷を抑制することができる支柱に関する。
【背景技術】
【0002】
2011年東北地方太平洋沖地震の津波や、2016年熊本地震の活断層の被害を受け、設計を超える作用に対して想定しておくことの重要性が高まっている。想定を超える状態に対しては、影響を低減する観点や、機能回復のための復旧性に配慮した減災の観点を取り入れることが重要である。
【0003】
従来、橋脚の倒壊を防ぐ技術、橋脚の耐荷力を調整する技術として、様々な技術が提案されている(特許文献1~4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-027239号公報
【文献】特開2008-297720号公報
【文献】特開2007-197930号公報
【文献】特開2016-056677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1~4の発明は、いずれも橋の性能の向上を期待できるものであるが、想定を超える極大地震が生じた場合には、橋脚の損傷、橋の倒壊を回避できない可能性がある。また、橋脚に損傷が生じると、被災後に橋脚の復旧工事が必要になり、道路機能を回復させるまでに多大な時間とコストがかかるのが課題である。
【0006】
本発明は、このような従来技術における問題を解決しようとするものであって、支柱(橋脚等)の変形能と耐力の更なる向上を期待することができ、特に、超過作用時(設計地震動を超える地震作用が生じた時)における支柱基部(橋脚基部)の損傷を好適に抑制することができる損傷制御支柱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る損傷制御支柱は、垂直な柱材と、柱材のベースと、柱材の固定手段と、柱材のベースの上方に配置された損傷制御部材とによって構成されていることを特徴としている。損傷制御部材は、垂直な杖材と、上方において杖材を柱材に固定するための杖材固定手段とを有し、杖材の上端部が、杖材固定手段の下側面に固定されている。
【0008】
尚、杖材の下端部が、柱材のベースと接しておらず、それらの間に間隙が形成されていることで、設計で想定する範囲では損傷制御支柱は機能せず、超過作用時のみ機能することが好ましい。
【0009】
また、杖材固定手段が、柱材の外側を取り囲むように延在する水平な下アウターフランジ及び上アウターフランジと、それらを連結するウェブユニットとによって構成されていることが好ましい。また、ウェブユニットが、柱材の外側において等しい間隔を置いて配置され、杖材が、各ウェブユニットの直下の位置に一つずつ配置されていることが好ましく、更に、損傷制御部材が、杖材固定手段の取付位置において柱材の剛性を増加させる補剛手段を有していることが好ましい。
【0010】
また、杖材が、センターリブと、その左右両側面に固定された補強リブとによって構成されていることが好ましく、更に、杖材の内側縁部が、柱材の外面と接しておらず、それらの間に間隙が形成されていることが好ましい。
【0011】
また、柱材が、フーチングの上に垂直に設置され、内部にコンクリートが充填された円形断面の鋼管であり、柱材のベースが、鋼管の下部に固定されたベースプレートであり、柱材の固定手段が、鋼管をフーチング上に固定するためのアンカーボルト及びナットであることが好ましく、更に、損傷制御部材が、根巻きコンクリートによって外側から覆われていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る損傷制御支柱は、耐震設計された支柱の変形能と耐力の更なる向上を期待することができ、特に、超過作用時における支柱基部の損傷を好適に抑制することができる。
【0013】
本発明を橋脚に適用した場合、橋脚の耐荷力が上昇し、支承が破壊する場合は、上部構造の慣性作用が遮断されることで橋脚の損傷が進展せず、また、支承が破壊しない場合でも、高いじん性を発揮し、容易には倒壊しないという効果を期待することができる。そして、橋脚の抵抗力を段階的に調整することで、支承と橋脚に耐力の差を生じさせることで支承に損傷を誘導し、被災後の使用性や修復性を確保することを目的とした設計(損傷制御設計)を行うことが可能となる。また、橋脚より先行して支承が破壊すると、橋脚にはすべり摩擦力のみ作用し、破壊前の地震動による作用と比べて極端に小さくなる。そのため、地震動の大きさによらず、橋脚の損傷は免れることから、被災後の橋脚の復旧が不要になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の第一実施形態に係る損傷制御橋脚の基部(地上部)の斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の第一実施形態に係る損傷制御橋脚の基部の垂直断面図である。
【
図3】
図3は、
図2に示すA-A線による損傷制御橋脚の水平断面図である。
【
図4】
図4は、
図2に示すB-B線による損傷制御橋脚の水平断面図である。
【
図6】
図6は、CFT構造の鋼管を採用した橋脚と、本発明の第一実施形態に係る損傷制御橋脚(CFT構造+損傷制御部材5)における水平荷重Hと水平変位δの関係を示すグラフである。
【
図7】
図7は、本発明の第一実施形態に係る損傷制御橋脚が中立位置にある状態、及び、設計地震動の最大時の変位状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面に沿って本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明を橋脚に適用して構成した「損傷制御橋脚」(第一実施形態)の基部の斜視図、
図2は、その垂直断面図、
図3は、
図2に示すA-A線による水平断面図、
図4は、
図2に示すB-B線による水平断面図、
図5は、
図1、
図2に示す損傷制御部材5の一部切欠斜視図である。
【0016】
本実施形態の損傷制御橋脚は、フーチング1(
図2参照)の上に垂直に設置された円形断面の鋼管2(柱材)と、二枚の水平なベースプレート3(下ベースプレート31、及び、上ベースプレート32)(柱材のベース)と、損傷制御部材5と、アンカーボルト7及びナット8(柱材の固定手段)(
図1参照)と、それらを外側から全体的に覆う根巻きコンクリート9等によって構成されている。
【0017】
尚、鋼管2の内部にはコンクリート(図示せず)が充填されている。つまり、本実施形態においては、橋脚を構成する鋼管2の構造として、CFT(Concrete Filled Steel Tube)構造が採用されている。
【0018】
二枚のベースプレート3は、鋼管2の下部において上下に間隔を置いて配置され、鋼管2に対して固定されている。これらのベースプレート3のうち、下ベースプレート31は、
図3に示すように、鋼管2の外周面の外側を取り囲むように延在する外周部31aと、鋼管2の内周面に沿ってその内側に円環状に延在する内周部31bとによって構成されている。また、
図4に示すように、上ベースプレート32も、鋼管2の外周面の外側を取り囲むように延在する外周部32aと、鋼管2の内周面に沿ってその内側に円環状に延在する内周部32bとによって構成されている。
【0019】
下ベースプレート31の外周部31aと、上ベースプレート32の外周部32aには、アンカーボルト7を挿通させるためのボルト孔35,36がそれぞれ多数形成されている。これらの外周部31a,32aは、多数枚の垂直なリブプレート33によって連結されている。尚、リブプレート33は、ボルト孔35,36の左右の近傍位置、より詳細には、アンカーボルト7の上端部に装着されるナット8の下方(上下方向に重なる位置)に配置され、固定されている。
【0020】
また、下ベースプレート31の内周部31bと上ベースプレート32の内周部32bも、多数枚(本実施形態においては16枚)の垂直なリブプレート34によって連結されている。
【0021】
アンカーボルト7は、下端部が、
図2に示すフーチング1の下部に埋設されたアンカー部(図示せず)によって固定され、上半部が、フーチング1の上方へ突出するように設置されている。そして、アンカーボルト7の上半部がベースプレート3(下ベースプレート31、及び、上ベースプレート32)の各ボルト孔35,36に挿通され、それらの上端部に装着されたナット8を締めつけることにより、フーチング1(
図2参照)上に鋼管2が固定されている。
【0022】
本実施形態の損傷制御橋脚の特徴的な事項は、
図1、
図2、及び、
図5に示すように、上ベースプレート32の上方に隙間をあけた損傷制御部材5が配置されていることである。この損傷制御部材5は、垂直な杖材56と、上方において杖材56を鋼管2に固定するための手段(杖材固定手段)と、この杖材固定手段の取付位置において鋼管2の剛性を増加させる補剛手段とによって構成されている。尚、杖材固定手段は、本実施形態においては、
図5に示す二枚の水平なアウターフランジ(下アウターフランジ51、及び、上アウターフランジ52)、及び、ウェブユニット55によって構成され、補剛手段は、
図2に示す二枚の水平なインナーフランジ(下インナーフランジ53、上インナーフランジ54)によって構成されている。
【0023】
より具体的には、杖材固定手段を構成する下アウターフランジ51及び上アウターフランジ52は、鋼管2の外周面の外側を取り囲むように延在し、また、補剛手段を構成する下インナーフランジ53及び上インナーフランジ54は、鋼管2の内周面に沿ってその内側に円環状に延在している。
【0024】
下アウターフランジ51と上アウターフランジ52は、上下に所定間隔を置いて配置され、鋼管2の外周面にそれぞれ固定されるとともに、それらの間に配置された多数(本実施形態においては8つ)のウェブユニット55によって連結されている。尚、ウェブユニット55は、所定の間隔を置いて近接配置された、垂直かつ平行な三枚のウェブ55a~55c(
図5参照)によってそれぞれ構成されており、円周方向へ等しい間隔を置いて(本実施形態においては45°の角度間隔で)配置されている。
【0025】
下インナーフランジ53は、
図2に示すように、下アウターフランジ51と同じ高さ位置に配置され、また、上インナーフランジ54は、上アウターフランジ52と同じ高さ位置に配置され、鋼管2の内周面にそれぞれ固定されている。
【0026】
杖材56は、
図5に示すように、センターリブ58と、その左右両側面に固定された補強リブ57a~57dとによって構成されている。センターリブ58は、垂直方向及び鋼管2の半径方向と一致する方向へ延在し、補強リブ57a~57dは、垂直方向及びセンターリブ58と直交する方向へ延在している。尚、杖材56は、各ウェブユニット55の直下の位置に一つずつ配置され、上端部が、下アウターフランジ51の下側面に固定されている。
【0027】
杖材56の下端部56aは、上ベースプレート32と接しておらず、それらの間には、所定の間隙C1(
図2、
図5参照)が形成されている。また、杖材56の内側縁部56bは、鋼管2の外周面と接しておらず、それらの間には、所定の間隙C2(
図2、
図5参照)が形成されている。尚、この間隙C2が設けられている理由は、地震動により鋼管2の基部において座屈が生じた際に、半径方向外側へ向かって変形した鋼管2と杖材56とが接触しないように隙間を確保しておく必要があるからである。
【0028】
本実施形態に係る損傷制御橋脚は、上述の通り、橋脚を構成する鋼管2がCFT構造となっており、コンクリートを充填していない鋼管よりも高い変形能を有している。そして、この損傷制御橋脚は、CFT構造の鋼管2の上ベースプレート32の上方に損傷制御部材5が配置されていることにより、その変形能と耐力の更なる向上を期待することができ、特に、超過作用時における橋脚基部の損傷を好適に抑制することができる。
【0029】
以下、この点について簡単に説明する。
図6は、耐震設計された特定のCFT構造の橋脚(CFT)と、当該CFT構造の橋脚の鋼管に損傷制御部材を配置した橋脚(本発明)における水平荷重Hと水平変位δの関係を示すグラフである。当該CFT橋脚の挙動特性が、
図6において破線で示す通りとなる場合、本実施形態に係る損傷制御橋脚の挙動特性は、
図6において実線で示す通りとなり、CFT橋脚の限界状態を超えた領域において、第2の限界状態まで耐力の上昇を期待することができる。
【0030】
より具体的には、本実施形態に係る損傷制御橋脚は、
図2及び
図5に示す間隙C1(杖材56の下端部56aと、上ベースプレート32との間隙)が、CFT構造の鋼管2の変形能との関係で適切な値に設定されており、
図7に示すように、設計地震動(レベル2地震動)の最大時においても、杖材56の下端部56aが、上ベースプレート32に対して接触しないように構成されている。そして、超過作用時には、杖材56の下端部56a(センターリブ58の下端部、及び、補強リブ57a~57dの下端部)が、上ベースプレート32(
図5において一点鎖線で示す位置)に接触し、杖材56の抵抗が軸力として伝達され、橋脚の圧縮側の抵抗力が増加して、橋脚基部の損傷を抑制することができる。この抵抗力の増加は、橋脚の主な抵抗箇所が基部から上アウターフランジ位置の鋼管2に移行することで達成される。
【0031】
図8に、損傷制御部材5の抵抗メカニズムを示す。杖材56は、接触により生じる軸力Nと、接触部の摩擦に伴って生じる曲げモーメントMに抵抗する機能を有する。
【0032】
このため橋脚の耐荷力が上昇し、支承が破壊する場合は、上部構造の慣性作用が遮断されることで橋脚の損傷が進展せず、また、支承が破壊しない場合でも、高いじん性を発揮し、容易には倒壊しないという効果を期待することができる。そして、橋脚の抵抗力を段階的に調整することで、支承と橋脚の耐力の階層化を図り(損傷制御の観点)、被災後の使用性や修復性を確保する(機能回復の観点)という二つの観点を踏まえて、損傷制御設計を行うことが可能となる。
【0033】
尚、間隙C1は、上述の通り、レベル2地震動に対しては耐荷性能に影響がない範囲とすることが好ましいが、過度に大きくすると、橋脚のじん性は向上するものの残留変位は大きくなる。これらの影響を踏まえて、間隙C1を適切な値に設定することが好ましい。
【0034】
また、損傷制御部材5の下アウターフランジ51(杖材固定手段)を鋼管2に取り付ける位置(上ベースプレート32(柱材のベース)からの高さ位置)を高くするほど、橋脚の水平耐力が向上することから、支承の破壊を制御しやすくなるが、損傷制御部材5が大規模になる。これらの影響を踏まえて、下アウターフランジ51(杖材固定手段)の取付位置を、適切な値に設定することが好ましい。
【0035】
尚、下アウターフランジ51(杖材固定手段)の取付位置は、設計地震動によって鋼管2の基部に局部座屈が生じる範囲(有効破壊長領域L
e)よりも高い位置とすることが有効である。この有効破壊長領域L
eは、下記の二つの式(数1、数2)から求めることができる。
【数1】
【数2】
ここで、Rtは径厚比パラメータ、Dは鋼管の直径、tは鋼管の板厚であり、上記二つの式の最大値を有効破壊長領域L
eと推定する。
【0036】
また、本実施形態に係る損傷制御橋脚は、CFT橋脚の設計限界状態までの挙動に影響を与えないことから、橋脚を新設する時点だけでなく、既設の橋脚においても、アンカー部や基礎の耐力に余裕のある場合には適用が可能である。具体的には、対象となる既設の橋脚が、内部にコンクリートが充填されていない鋼管によって構成されている場合には、鋼管2の内周面に下インナーフランジ53及び上インナーフランジ54(
図2参照)を固定し、杖材56が下側面に固定された下アウターフランジ51、及び、上アウターフランジ52を鋼管2の外周面に固定することにより、本実施形態に係る損傷制御橋脚を構成することができる。また、対象となる既設の橋脚が、CFT構造の鋼管によって構成されている場合には、インナーフランジ(補剛手段)を省略し、より高い剛性を有するアウターフランジ(杖材固定手段)を採用することで、損傷制御橋脚を構成することができる。
【0037】
尚、上記実施形態においては、柱材として円形断面の鋼管2を使用した橋脚に本発明を適用する例を説明したが、矩形断面の鋼管(図示せず)を柱材として使用した橋脚に適用することもでき、また、鉄筋コンクリート製の柱材(図示せず)を使用した橋脚に適用することもできる。
【0038】
また、上記実施形態においては、柱材の固定手段として、ベースプレート3の各ボルト孔35,36に挿通されたアンカーボルト7、及び、その上端部に装着されたナット8(
図1~
図4参照)が採用されているが、他の固定手段によって柱材が固定された橋脚に適用することもでき、更に、超過作用時に、杖材56の下端部56aが、ベースプレート3以外の要素(柱材のベース)(例えば、フーチング1の上面に固定された鋼材等)の上面に接触するように構成することもできる。
【0039】
また、上記実施形態においては、杖材固定手段として、鋼管2の外周面の外側を円環状に取り囲むように延在する下アウターフランジ51及び上アウターフランジ52、並びに、それらを連結するウェブユニット55が採用されているが(
図2、
図5参照)、円環状のものには限定されず、例えば、超過作用時において、杖材56の抵抗を、杖材56の上方において、鋼管2に伝達できるようなブラケットを杖材固定手段として採用し、それらを各杖材56の上方に一つずつ配置してもよい。
【0040】
また、上記実施形態においては、下アウターフランジ51と上アウターフランジ52とを連結するウェブユニット55が、それぞれ三枚のウェブ55a~55cによって構成されているが(
図5参照)、それらの枚数は限定されず、例えば、一枚のウェブのみによって、各ウェブユニット55を構成することもできる。
【0041】
また、上記実施形態においては、杖材56が、センターリブ58と、補強リブ57a~57dとによって構成されているが、かかる構成には限定されず、円形断面、矩形断面、又は、異形断面の鋼材(筒状又は中実)を、杖材として採用することもできる。
【0042】
また、本発明の適用対象は、橋脚には限定されず、他の構造物の支柱に対しても適用することが可能である。
【符号の説明】
【0043】
1:フーチング、
2:鋼管、
3:ベースプレート、
31:下ベースプレート、
31a:外周部、
31b:内周部、
32:上ベースプレート、
32a:外周部、
32b:内周部、
33,34:リブプレート、
35,36:ボルト孔、
5:損傷制御部材、
51:下アウターフランジ、
52:上アウターフランジ、
53:下インナーフランジ、
54:上インナーフランジ、
55:ウェブ、
56:杖材、
56a:下端部、
56b:内側縁部、
57a~57d:補強リブ、
58:センターリブ、
7:アンカーボルト、
8:ナット、
9:根巻きコンクリート、
C1,C2:間隙、