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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】化学反応器の生産
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/00 20060101AFI20240624BHJP
   B81C 1/00 20060101ALI20240624BHJP
   B81B 1/00 20060101ALI20240624BHJP
   G01N 30/60 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
B01J19/00 321
B81C1/00
B81B1/00
G01N30/60 D
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022080775
(22)【出願日】2022-05-17
(62)【分割の表示】P 2018569094の分割
【原出願日】2017-06-30
(65)【公開番号】P2022126635
(43)【公開日】2022-08-30
【審査請求日】2022-06-15
(31)【優先権主張番号】2016/5556
(32)【優先日】2016-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518463496
【氏名又は名称】ファーマフルーイディクス エヌブイ
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】オプ デ ビーク,ジェフ
(72)【発明者】
【氏名】ジェイコブズ,ポール
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ マルシェ,ウィム
【審査官】長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-508440(JP,A)
【文献】特開昭61-035966(JP,A)
【文献】特開2014-213485(JP,A)
【文献】特開2009-023097(JP,A)
【文献】特開2006-272564(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0018365(US,A1)
【文献】Wim De Malshce,Integration of porous layers in orderd pillar arrays for liquid chromatography,Lab on an Chip,2007年09月21日,vol.7,pp.1705-1711
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 19/00
B01J 20/00
H01L 21/3065
H01L 21/302
H01L 21/02
B81C 1/00
B81B 1/00
G01N 30/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に実装される化学反応器を生産するための方法であって、前記化学反応器は、
前記化学反応器の使用時に液体および/または気体を輸送するための1つまたは複数の有効流路であって、支柱構造を含む、有効流路と、
前記化学反応器の使用時に液体/気体が前記1つまたは複数の有効流路のうちの1つの有効流路に進入することを可能にするための、前記有効流路に接続された入力流路と、
前記化学反応器の使用時に前記1つまたは複数の有効流路のうちの1つの有効流路から前記液体および/または気体の少なくとも1つの成分を取り出すための、前記有効流路に接続された出力流路と
を含み、前記方法は、
前記1つまたは複数の有効流路、前記入力流路、および前記出力流路を有する前記化学反応器の初期設計を取得することと、
前記初期設計の縁部に配置された前記1つまたは複数の有効流路のうちの1つの有効流路の近位に配置された構造化エリアであって、前記有効流路のうちの1つの有効流路に流体接続しない構造化エリアの少なくとも1部分を初期設計にさらに導入し、それにより追加設計を取得することと、
前記追加設計にしたがって前記化学反応器を生産することであって、前記生産することは、RIEエッチングまたはボッシュエッチングによって前記流路および/または支柱構造を形成または処理するために、前記基板に電流密度を発生することを含み、前記構造化エリアは、前記初期設計の外側に配置された有効流路における電流密度の不均一性を生産時に少なくとも部分的に相殺し、前記構造化エリアは擬似流路を含み、前記擬似流路は前記化学反応器の使用時に液体および/または気体の輸送のために使用されない流路である、生産することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記構造化エリアは前記有効流路から150μm未満の位置に配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つまたは複数の有効流路は複数の実質的に平行な有効流路を含み、前記複数の有効流路は蛇行構造において流体的に相互接続される、請求項1~請求項2のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
前記擬似流路は前記有効流路の深さに等しい深さを有するか、または、前記擬似流路は前記有効流路の深さよりも小さいもしくは大きい深さを有する、請求項1~請求項3のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記擬似流路は、前記擬似流路が隣接して実装された前記有効流路の反対側に配置された前記有効流路と同一の設計を有する、請求項~請求項のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記擬似流路は支柱構造を含むか、または、前記擬似流路は支柱構造を含まない、請求項~請求項のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記流路および前記支柱構造を形成または処理するために、前記基板に電流密度を発生させ、前記構造化エリアは、前記初期設計の外側に配置された前記有効流路における前記電流密度が10%の許容誤差で対称的となるよう選択される、および/または、
前記追加設計にしたがって前記化学反応器を生産することは陽極酸化処理ステップを含む、請求項1~請求項のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記構造化エリアは、有効表面を増加させるための構造要素が配置されているエリアである、請求項1~請求項のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記構造化エリアはマイクロ流路である、請求項1~請求項のうちのいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的には、例えばクロマトグラフシステムなどの化学反応器に関する。さらに詳細には、本発明は、化学反応生産技術に、ならびに、その結果生産された化学反応器(例えば、所望により、微細加工された支柱構造も含み得る複数の平行な導管を有する化学反応器)に関する。
【背景技術】
【0002】
液体伝播を利用するシステムは、化学成分生成、ナノ粒子合成、成分の分離および/または抽出、その他を含む、多数の用途を有する。混合物を分離して、例えば、それらを正確に分析することを可能にするための分離技術の具体例としては、クロマトグラフィーが挙げられる。ガスクロマトグラフィー、ゲルクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、その他などの、多様な形態のクロマトグラフィーが存在する。
【0003】
液体クロマトグラフィーは通常、薬学および化学において分析および生産の両方の用途のために使用される。液体クロマトグラフィーでは、使用法は、移動相および固定相に対する異なる物質の親和度における差異から作られる。各物質が固定相に対するそれ自体の「粘着力」を有するため、各物質は、移動相とともに、より高速または低速で搬送され、それにより特定の物質が他の物質から分離される。このことは基本的には任意の結合に当てはまり、液体クロマトグラフィーは、物質の蒸発が不必要であるという利点を、および、温度における変動が無視可能な効果しか有さないという利点を有する。
【0004】
液体クロマトグラフィーの典型的な例は、微細加工されたカラムで充填された1つまたは複数の流路に基づくクロマトグラフィーカラムに基づく。微細加工カラムに基づくクロマトグラフィーカラムが液体クロマトグラフィーに導入されて以来、係るクロマトグラフィーカラムは、充填床構造および一体構造システムに基づくシステムに対する価値ある代替物となり得ることが証明された。微細加工カラムは高程度の均一性が与えられ、完璧に配置され得るため、流路における差異に起因する拡散または「エディ拡散(Eddy dispersion)」は略完全に回避され得る。この原理は、液体閉塞伝播(liquid plug propagation)に基づく化学反応器に広く当てはまる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、国際公開第WO2014/122592号における記載のように、中心と同様に縁部において等しく正確に生産された支柱構造を想定して、カラムの壁部および流路の中心における流速の差異に起因する縁部効果の問題が知られているが、支柱構造を有するカラムの効率における変動のすべてが必ずしもこれにより説明されるとは限らないよう見受けられる。
【0006】
例えば、複数の平行な流路を有する構造(通常は、高い分離力を有する長いカラムを生成するよう選択されるが、使用される基板の長さは制限される)において、外側流路における分離効率が通常は構造においてより中心に配置された流路における効率よりも低いことが決定されている。
【0007】
したがって、改善された効率または均一性を有するカラムが必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る実施形態の目的は、生産方法を、ならびに、カラムにおける全流路における効率が同等である1つまたは複数の流路を有する化学反応器を、提供することである。係る化学反応器の1つの具体例としては、例えば、物質を分離するための支柱構造を有するクロマトグラフィーカラムが挙げられる。
【0009】
1つまたは複数の流路を有するカラムの従来の製造では、カラム構造の外側縁部上に配置された流路における構造が他の流路により包囲される流路における支柱構造と異なった様式で形成されていることが驚くべきことに見出された。
【0010】
本発明の実施形態の利点は、カラム構造の他の流路により包囲される流路における構造と同等となるよう、カラム構造の外側縁部上に配置された流路において構造の生産時における変動が相殺されることである。
【0011】
本発明の実施形態の利点は、物質を分離するための効率的なシステムの生産が可能となることである。
【0012】
本発明の実施形態の利点は、物質を分離するための支柱構造で充填された複数の平行な流路を有するシステムが生産され得ることである。なおこのシステムでは、構造の外側の流路は物質の分離において少なくとも1つの他の流路により両側を包囲された流路と同様に効率的であり得る。
【0013】
本発明に係る実施形態の利点は、本発明の実施形態では、支柱構造を有するシステムの生産が可能となることである。なおこのシステムでは、1組の平行流路における異なる流路の効率は、これらの流路において使用される支柱に制限を加えることを必要とすることなく、等しい。
【0014】
本発明に係る少なくともいくつかの実施形態の利点は、提供されるシステムがすべての流路において非常に良好な分離力を有することである。
【0015】
上記の目的は、本発明の実施形態に係る装置および方法により達成される。
【0016】
本発明は、基板上で実装される化学反応器を作る方法に関する。なおこの化学反応器は、化学反応器の使用時に液体および/または気体を輸送するための1つまたは複数の有効流路を含む。なおこれらの流路は所望により構造または支柱構造を含む。この化学反応器は、とりわけ、液体/気体がこれらの有効流路に進入することを可能にするための、1つまたは複数の有効流路に接続された入力と、有効流路から液体/気体の少なくとも1つの成分を取り出すための、1つまたは複数の有効流路のうちの1つの有効流路に接続された出力とを含む。この方法は、1つまたは複数の有効流路、入力、および出力を有する化学反応器の初期設計を取得することと、初期設計の縁部に配置された1つまたは複数の有効流路のうちの1つの有効流路の近位に配置された構造化エリアであって、これらの有効流路のうちの1つの有効流路に流体接続しない構造化エリアの少なくとも1部分を初期設計にさらに導入し、それにより追加設計を取得することと、追加設定にしたがって化学反応器を生産することとを含む。なお、この化学反応器を生産することは基板において電流密度を生成することを含み、構造化エリアは、生産時に、初期設計の外側上に配置された有効流路における電流密度における不均一性を少なくとも部分的に相殺する。この不均一性は非対称的であり得る。
【0017】
本発明に係る実施形態の利点は、構造化エリア(例えば擬似流路)の使用により、有効流路の生産が質的により良好な方法で実行され得ることである。したがって初期設計の外側上に配置された有効流路は、初期設計の中心に配置された有効流路から、より少なく逸脱するか、またはまったく逸脱しない。もし設計がただ1つの有効流路を有する場合、有効流路の両側の縁部は、1つまたは複数の擬似流路を使用することにより、より正確に作られる。
【0018】
構造化エリアは、有効流路から150μm未満(例えば100μm未満)の位置に配置され得る。
【0019】
1つまたは複数の有効流路は複数の実質的に平行な有効流路を含み、これらの複数の有効流路は蛇行構造において流体的に相互接続される。
【0020】
この構造化エリアは擬似流路を含み、この擬似流路は反応器の使用時に液体および/または気体の輸送のために使用されない流路である。擬似流路は通常、有効流路に対する接続を有さず、入力または出力が提供される必要はない。
【0021】
この擬似流路は有効流路の深さに等しい深さを有し得る。代替的に、この擬似流路は有効流路の深さよりも小さいかまたは大きい深さを有し得る。
【0022】
この擬似流路は、この擬似流路が隣接して実装された有効流路の反対側に配置された有効流路と同一の設計を有し得る。
【0023】
この擬似流路は支柱構造を含み得る。この擬似流路は支柱構造を含まない場合もある。
【0024】
この擬似流路は、この擬似流路が隣接して実装された有効流路の反対側に配置された有効流路と同一の設計を有し得る。
【0025】
基板における電流密度の発生は流路および支柱構造を形成または処理するために実行される。ここで、構造化エリアは、初期設計の外側に配置された有効流路における電流密度が、他の有効流路における電流密度と10%の許容誤差で等しくなるよう選択される。
【0026】
追加設計にしたがって化学反応器を生成することは、表面に陽極酸化処理を施すステップを含み得る。
【0027】
いくつかの実施形態では、この構造化エリアは、この表面に対して構造を適用することにより自由表面エリアが拡大されるエリアである。
【0028】
他の態様では、本発明は上述の方法により生産される化学反応器に関する。この化学反応器はクロマトグラフィーカラムであり得る。
【0029】
本発明はさらに、基板上に実装された化学反応器に関する。なおこの化学反応器は、化学反応器の使用時に液体および/または気体を輸送するための1つまたは複数の有効流路を含む。なおこれらの流路は所望により、支柱構造と、液体および/または気体が1つまたは複数の有効流路のうちの1つの有効流路に進入することを可能にするための、有効流路に接続された入力と、有効流路から液体/気体の少なくとも1つの成分を取り出すための、1つまたは複数の有効流路のうちの1つの有効流路に接続された出力とを含む。
【0030】
この基板は、化学反応器の縁部に配置された1つまたは複数の有効流路のうちの1つの有効流路の近位に配置された構造化エリアであって、これらの有効流路のうちの1つの有効流路に流体接続されない構造化エリアをさらに含む。
【0031】
この化学反応器はクロマトグラフィーカラムであり得る。
【0032】
この構造化エリアは有効流路から150μm未満の位置に配置され得る。
【0033】
1つまたは複数の有効流路は複数の実質的に平行な有効流路を含み、これらの複数の有効流路は蛇行構造において流体的に相互接続される。
【0034】
この構造化エリアは擬似流路であるかまたは擬似流路を含み得る。この構造化エリアは通常、反応器の使用時に液体および/または気体の輸送のために使用されない流路である。擬似流路は通常、有効流路に対する接続を有さず、入力または出力が提供される必要はない。
【0035】
この擬似流路は有効流路の深さに等しい深さを有し得る。
【0036】
この擬似流路は、この擬似流路が隣接して実装された有効流路の反対側に配置された有効流路と同一の設計を有し得る。
【0037】
この擬似流路は支柱構造を含み得る。
【0038】
代替的に、この擬似流路は支柱構造を含まない場合もある。
【0039】
この擬似流路は、この擬似流路が隣接して実装された有効流路の反対側に配置された有効流路と同一の設計を有し得る。
【0040】
他の態様では、本発明は上述の化学反応器のための設計にも関する。
【0041】
他の態様では、本発明は上述の化学反応器のための設計にも関する。従属請求項の特徴は、請求項において明示的に説明されるものに限らず、独立請求項の特徴と、および他の従属請求項の特徴と、適宜組み合わせられ得る。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明の一実施形態に係る、擬似流路が提供された化学反応器の設計を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る、構造化表面が提供された化学反応器の設計を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
これらの図面は単に概略的であり、限定的ではない。これらの図面では、これらの要素のうちのいつくかの要素の寸法は例示目的のために拡大され、寸法通りでない場合もある。これらの寸法および相対的寸法は本発明を実施するにあたっては実際の縮小に必ずしも対応しない。請求項における任意の参照符号は範囲を限定するものと解釈されるべきでない。
【0044】
特定の実施形態および特定の図面を参照して本発明について説明するが、本発明はこれらの実施形態および図面に限定されるものではなく、請求項によってのみ限定される。
【0045】
請求項で使用される「~を有する」および「~を含む」という用語は、当該用語の後方に記載される手段に限定されないと解釈されるべきであり、他の要素またはステップを除外しない。したがって、これらの用語は、記載される特徴、整数、ステップ、または参照される構成要素の存在を指定するものと解釈されるべきであるが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、もしくは構成要素、またはこれらの群の存在または追加を除外しない。したがって「手段AおよびB’を含む装置」という表現の範囲は、構成要素AおよびBのみからなる装置に限定されるべきではない。この表現は、本発明に関しては、当該装置の関連構成要素がAおよびBであることのみを意味する。
【0046】
本明細書の全体を通して「1つの実施形態」または「一実施形態」を参照することは、当該の実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通じて様々な箇所における「1つの実施形態」または「一実施形態」という語句の事例のすべては、同一の実施形態を指す場合もあるが、必ずしも同一の実施形態を指すとは限らない。さらに本開示から当業者には明らかであるように特定の特徴、構造、または特性は、任意の好適な様式で1つまたは複数の実施形態に組み合わされ得る。
【0047】
同様に、本発明の例示的実施形態に関する説明では、本開示を簡略化し、本発明の様々な態様のうちの1つまたは複数の態様の理解を支援する目的のために、本発明の様々な特徴が、単一の実施形態、図面、またはその説明にまとめられる場合もあることが理解されるべきである。しかし開示のこの方法は、請求される発明が各請求項で明示的に記載されるよりも多数の特徴を要求するという意図を反映するものと解釈されるべきではない。むしろ、以下の請求項が反映するように、本発明の態様は、単一の上記で開示された実施形態の全部の特徴よりも少ない特徴の中に存在する。したがって詳細な説明の後に添付される請求項は、各請求項が本発明の別個の実施形態としてそれ自体が存在する状態で、この詳細な説明に明示的に組み込まれる。
【0048】
さらに、本明細書で記載のいくつかの実施形態が他の実施形態に含まれるいくつかの特徴を含むが他の特徴を含まない一方で、異なる実施形態の特徴の組み合わせは、当業者により理解されるであろうように、本発明の範囲に含まれ、異なる実施形態を形成することが意図される。例えば、以下の請求項では、請求される実施形態のうちの任意の実施形態が任意の組み合わせにおいて使用され得る。
【0049】
本発明の特定の特徴または態様を記述する際における特定の専門用語の使用は、当該の専門用語が、その専門用語が関連する本発明の特徴または態様の任意の特定の特性を含むよう制限されるように本明細書で再定義されることを示唆するものと受け取るべきではないことに注意すべきである。
【0050】
第1の態様では、本発明は化学反応器を生産するための方法に関する。係る化学反応器はクロマトグラフィーカラムであり得るが、クロマトグラフィーカラムに限定されない。本発明から利益を受け得る化学反応器の他の例としては、例えば、浄化フィルタまたはトラップカラム、触媒を用いる反応器(マイクロまたはマイクロ以外)、多相反応器、燃料電池、電気化学反応器、毛細管電気クロマトグラフィー反応器、その他が挙げられる。本発明から利益を受ける化学反応器は、その生産時に通電状態/電場下で処理ステップ(例えば陽極酸化処理ステップ)が実行される化学反応器である。さらに、使用時に、したがって生産時にのみではなく、均一な電場が存在すると好適である反応器は、本発明から利益を受けることが可能である。さらに、熱の均一な供給および除去が役割を演じる化学反応器においても利益が得られる。構造化エリアも利益を提供し得る。いくつかの実施形態では、本発明はクロマトグラフィーカラムに関する。有効流路の近傍における構造化エリアの使用は、例えば係るカラムの生産時において、極めて有利であり得る。支柱構造に多孔性を付与することが知られている。例えば多孔性がカラムに付与されている場合、クロマトグラフィーが改善される。支柱構造に多孔性を付与することにより、システムの秩序ある構造が維持される一方で自由表面エリアの量が劇的に改善される。一方、電圧が印加されるかまたは電界下で行われる任意の処理プロセスは、本発明から利益を得ることが可能である。上述のように、流路の熱抵抗も、生産時に(または動作時においてさえ)個別的に、または電流密度と組み合わせて、有利であり得る。これらの特徴のうちの1つまたは複数を達成するために最適化が実装され得る。いくつかの実施形態では、最適化が実行されると、1つの最適な特性が得られるのではなく、2つ以上の特性(例えば、生産時の均一な電流密度、および均一な熱抵抗)が共同して改善され得る。
【0051】
本発明の実施形態によれば、化学反応器は1つまたは複数の有効流路を含む。係る流路は多くの場合マイクロ流体流路である。いくつかの実施形態では、係る流路は支柱構造を含み得る。この化学反応器は、流体/気体が有効流路に進入することを可能にするために、1つまたは複数の有効流路のうちの1つの有効流路に接続された入力をさらに含む。この化学反応器は、有効流路から液体/気体の少なくとも1つの成分を取り出すために、1つまたは複数の有効流路のうちの1つの有効流路に接続された出力をさらに含む。
【0052】
本発明の実施形態によれば、この方法は、1つまたは複数の有効流路、入力、および出力を有する化学反応器の初期設計を取得することを含む。この方法は、初期設計の縁部に配置された1つまたは複数の有効流路のうちの1つの有効流路の近位に配置された構造化エリアの少なくとも1部分を初期設計に導入することをさらに含む。なおこのステップは、以前のステップと同時に実行されることが可能である。この構造化エリアは、これらの有効流路のうちの1つの流路に対して流体接続しない。このようにして追加設計が取得される。この構造化エリアは、生産時に近傍の有効流路における電流密度が可能な限り均一になることを保証するよう適応され得る。この構造化エリアは、代替的または追加的に、生産時または使用時において熱供給/熱除去が最適化されることを保証するよう適応され得る。したがって、改善または最適化された発熱性および吸熱性を有する反応器が得られ得る。いくつかの実施形態では、両方の特徴が同時に改善される。その結果として、両方の特徴が改善された反応器を得ることが可能となるが、これらの特徴のいずれもが絶対的最適化を達成していない。
【0053】
この方法は、追加設定にしたがって化学反応器を生産することをさらに含む。支柱ベースのクロマトグラフィーカラムを作るための多数の方法が存在する。例示として、化学反応器を生産するための事例が提供されるであろう。
【0054】
化学反応器を作るための例示的な処理がDe Malsche et al. Lab on a Chip 7 (2007) 1705-1711.において示されている。この事例では、支柱構造を有するクロマトグラフィーカラムを生産するための処理が開示される。この例示的処理はチップ製造に基づくものであるが、実施形態はこれに限定されない。この事例の第1のステップでは、300nmの低圧CVDによるSiNがシリコンウェーハ上に堆積される。後続ステップでは、支柱は、リソグラフィーにより画成され、さらにRIEエッチングによりSiNにおいて作られる。後続ステップでは、レジストが取り除かれ、送達流路がこの追加的ステップを通して画成される。後続ステップでは、これらの流路はSiNにおいてRIEエッチングが施され、引き続き、50μmのボッシュエッチングが施される。次にこのレジストは取り除かれ、送達流路および支柱の両方がシリコンにおいて10μmを越えるエッチングが施される。次に750nm層のアルミニウムがウェーハの後部上に堆積され、ウェーハは保持器内に配置され、ウェーハの上側面を陽極酸化処理するために保持器内に配置される。陽極酸化処理の後、アルミニウム層はエッチングにより除去され、流路までの供給貫通孔が後部側面を通して形成され、前方側面は、例えば、箔を用いて、汚染を回避するためにカバーされる。製品は最終的に硝酸を用いて洗浄され、脱イオン水中で洗浄され、ガラス基板に陽極接合される。
【0055】
上記の技術は、化学反応器のための生産方法の単なる一例である。本発明に係る実施形態はこれに限定されない。本発明の実施形態に係る方法は、特定の設計が使用されるという点において特徴付けられる。この設計では、通電状態の処理ステップにおいて製品の部分のより均一な処理が達成されるよう、能動的に使用されるであろう構造が製品の外側に提供される。
【0056】
第2の態様では、本発明は化学反応器に関する。この化学反応器は上記の方法にしたがって生産されるが、本発明の実施形態はこれに限定されない。本発明は、基板上に実装された化学反応器に関する。なおこの化学反応器は、所望により支柱構造を含む1つまたは複数の有効流路と、液体/気体が1つまたは複数の有効流路のうちの1つの有効流路に進入することを可能にするための、有効流路に接続された入力と、1つまたは複数の有効流路のうちの1つの有効流路から液体/気体の少なくとも1つの成分を取り出すための、有効流路に接続された出力とを含む。この基板は、化学反応器の縁部に配置された1つまたは複数の有効流路のうちの1つの有効流路の近位に配置された構造化エリアをさらに含む。なおこの構造化エリアは、これらの有効流路のうちの1つの流路に対して流体接続しない。いくつかの実施形態では、構造化エリアは、生産時に同様のパワー分布を達成するために、構造の縁部に配置された有効流路に対して十分に近接して配置された擬似流路である。この距離は、例えば、有効流路から150μm未満(例えば有効流路から100μm未満)であり得る。代替的に、この構造化エリアは、当該技術分野で周知のシステムよりも大きい自由表面エリアを生じさせる構造がその上に提供された表面であり得る。擬似流路は、有効流路の深さに等しい深さを、または有効流路の深さよりも小さい深さを、有し得る。
【0057】
反応器が作られる物質は、当該技術分野で周知の物質に対応し得る。通常は、陽極酸化処理され得る物質が使用される。
【0058】
流路および任意の支柱の特徴は、当該技術分野で周知の特徴に対応し得る。流路は、例えば、50μm~250mmの範囲(例えば50μm~100mmの範囲、例えば50μm~100mmの範囲、例えば50μm~20mmの範囲)の幅を有し得る。流路は、2μm~1mmの範囲(例えば2μm~シリコンウェーハの通常のウェーハ厚さの範囲)の深さを有し得る。支柱は100nm~3mmの範囲(例えば100nm~100μmの範囲)の通常寸法を有し得る。
【0059】
図1では、化学反応器100に対する設計の第1の事例が示されている。この事例では、支柱構造120を含む複数の平行な有効流路110が提供されている。この設計では、擬似流路130も提供されている。図2では、化学反応器100のための設計の第2の事例が示されている。この事例では、擬似流路130に代わって、構造化表面140が提供されている。係る構造化表面140は、通常存在する標準的な表面からなるが、構造要素を含む。これらの構造要素は突起または小窩であり得る。これらの構造要素は100nm~100μmの範囲の通常の寸法を有し得る。
図1
図2