(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】放射線撮像装置、放射線撮像システムおよび放射線撮像装置の制御方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 5/32 20230101AFI20240624BHJP
H04N 25/68 20230101ALI20240624BHJP
H04N 25/70 20230101ALI20240624BHJP
A61B 6/42 20240101ALI20240624BHJP
【FI】
H04N5/32
H04N25/68
H04N25/70
A61B6/42 500S
(21)【出願番号】P 2022117630
(22)【出願日】2022-07-25
【審査請求日】2023-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】岩渕 祐貴
【審査官】橋爪 正樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-129343(JP,A)
【文献】特開2019-091969(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/32- 5/325
H04N 25/68-25/70
A61B 6/00- 6/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄積された電荷に基づき信号を出力する複数の画素が行列状に配置された放射線検出器と、
前記放射線検出器に放射線が照射されて前記複数の画素に蓄積された電荷の情報である第1の出力情報を取得し、続けて、前記放射線検出器に放射線が照射されずに前記複数の画素に蓄積された電荷の情報である第2の出力情報を取得する手段と、を有し、
前記第1の出力情報および前記第2の出力情報は、補正された放射線画像を取得するための情報であって
、
前記第1の出力情報に含まれる所定行の出力値は第1の期間をかけて電荷が蓄積された出力値であり、前記第2の出力情報に含まれる前記所定行の出力値は第
2の期間をかけて電荷が蓄積された出力値であり、前記第2の期間は前記第1の期間よりも長い期間であることを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項2】
前記第1の出力情報の取得および前記第
2の出力情報の取得は、前記放射線検出器の各行において、蓄積された電荷のリセット動作が行われた後に行われることを特徴とする請求項1に記載の放射線撮像装置。
【請求項3】
前記放射線検出器には、第1の群の画素行と第2の群の画素行が交互に並び、前記第1の群の画素行では第1の周期タイミングで前記リセット動作が順次行われ、前記第2の群の画素行では第2の周期タイミングで前記リセット動作が順次行われることを特徴とする請求項2に記載の放射線撮像装置。
【請求項4】
前記所定行は、前記第1の出力情報の取得開始前に前記リセット動作が最後に行われた画素行とは異なる画素行であることを特徴とする請求項3に記載の放射線撮像装置。
【請求項5】
前記リセット動作が最後に行われた画素行と同じ群の画素行であって、前記リセット動作が最後に行われたタイミングと同じ同期タイミングに前記リセット動作が行われた画素行は、前記所定行とは異なる画素行であることを特徴とする請求項4に記載の放射線撮像装置。
【請求項6】
前記所定行は、前記リセット動作が最後に行われた画素行の2つ先の画素行を少なくとも含むことを特徴とする請求項4に記載の放射線撮像装置。
【請求項7】
前記所定行は、前記リセット動作が最後に行われた画素行の1つ先の画素行を更に含み、前記2つ先の画素行における前記第2の期間に対する前記第1の期間の差分の期間は、前記1つ先の画素行における前記第2の期間に対する前記第1の期間の差分の期間よりも長い期間であることを特徴とする請求項6に記載の放射線撮像装置。
【請求項8】
前記第2の期間の長さは、前記第1の期間の長さに基づき決定されることを特徴とする請求項1に記載の放射線撮像装置。
【請求項9】
放射線を検知する検知部を更に有し、
前記複数の画素にバイアス電圧が印加されてから前記検知部が放射線の照射開始を検知するまでの期間の長さに基づいて、前記第2の期間に対する前記第1の期間の差分の期間の長さを決定することを特徴とする請求項1に記載の放射線撮像装置。
【請求項10】
前記検知部が前記照射開始を検知するまでの期間が
第1の期間である場合
の前記差分の期間の長さは、前記検知部が前記照射開始を検知するまでの期間が
前記第1の期間よりも短い
第2の期間である場合
の前記差分の期間の長さ
よりも長くなるように制御
されることを特徴とする請求項9に記載の放射線撮像装置。
【請求項11】
前記放射線撮像装置の周囲の環境温度をモニタする温度検出部を更に有し、
前記温度検出部がモニタする温度に基づき前記第2の期間に対する前記第1の期間の差分の期間の長さを決定することを特徴とする請求項1に記載の放射線撮像装置。
【請求項12】
前記環境温度が
第1の温度である場合
の前記差分の期間の長さは、前記環境温度が
前記第1の温度よりも低い第2の温度である場合
の前記差分の期間の長さ
よりも長くなるように制御
されることを特徴とする請求項11に記載の放射線撮像装置。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の放射線撮像装置と、
前記放射線撮像装置により出力された放射線画像
を表示する画像表示手段と、
を有することを特徴とする放射線撮像システ
ム。
【請求項14】
蓄積された電荷に基づき信号を出力する複数の画素が行列状に配置された放射線検出器を備える放射線撮像装置の制御方法であって、
前記放射線検出器に放射線が照射されて前記複数の画素に蓄積された電荷の情報である第1の出力情報を取得し、続けて、前記放射線検出器に放射線が照射されずに前記複数の画素に蓄積された電荷の情報である第2の出力情報を取得する工程を有し、
前記第1の出力情報および前記第2の出力情報は、補正された放射線画像を取得するための情報であって、
前記第1の出力情報に含まれる所定行の出力値は第1の期間をかけて電荷が蓄積された出力値であり、前記第2の出力情報に含まれる前記所定行の出力値は第
2の期間をかけて電荷が蓄積された出力値であり、前記第2の期間は前記第1の期間よりも長い期間であることを特徴とする制御方法。
【請求項15】
前記第1の出力情報の取得および前記第
2の出力情報の取得は、前記放射線検出器の各行において、蓄積された電荷のリセット動作が行われた後に行われることを特徴とする請求項14に記載の制御方法。
【請求項16】
前記放射線検出器には、第1の群の画素行と第2の群の画素行が交互に並び、前記第1の群の画素行では第1の周期タイミングで前記リセット動作が順次行われ、前記第2の群の画素行では第2の周期タイミングで前記リセット動作が順次行われることを特徴とする請求項15に記載の制御方法。
【請求項17】
前記所定行は、前記第1の出力情報の取得開始前に前記リセット動作が最後に行われた画素行とは異なる画素行であることを特徴とする請求項16に記載の制御方法。
【請求項18】
前記リセット動作が最後に行われた画素行と同じ群の画素行であって、前記リセット動作が最後に行われたタイミングと同じ同期タイミングに前記リセット動作が行われた画素行は、前記所定行とは異なる画素行であることを特徴とする請求項17に記載の制御方法。
【請求項19】
前記所定行は、前記リセット動作が最後に行われた画素行の2つ先の画素行を少なくとも含むことを特徴とする請求項17に記載の制御方法。
【請求項20】
コンピュータに請求項14乃至19のいずれか一項に記載される制御方法の各工程を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線撮像装置、放射線撮像システムおよび放射線撮像装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、X線による医療画像診断や非破壊検査に用いる撮影装置として、半導体材料によって形成された平面検出器(Flat Panel Detector、以下FPDと略す)を用いた放射線撮像装置が普及している。このような放射線撮像装置は、例えば医療画像診断においては、一般撮影のような静止画撮影や、透視撮影のような動画撮影のデジタル撮像装置として用いられている。このような撮像装置では、X線発生装置とFPDの同期を行う構成が一般的であるが、FPDとX線発生装置との接続が必要であり、設置場所が制限されるという課題がある。
【0003】
これに対して、特許文献1には、X線発生装置とFPDの同期を行うことなく、FPDが有する各画素に接続されたバイアス線に流れる電流により、放射線の照射開始などを検出する技術が開示されている。具体的には、画素を順次走査することでリセット動作を行い、放射線の照射を検知したら、リセット動作を停止させ、蓄積動作へ移行する。放射線の照射が終了したら、順次画素の走査を行い、画像データの読出動作を行う。
【0004】
また、特許文献1には、画像データの読出動作の後で、放射線が照射されない状態でリセット動作から読出動作までを同様に行い、オフセット補正データを読み出す技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
変換素子の暗電流成分が時間的に変動する場合、特許文献1の技術では、放射線を検知した行の前後で生じる段差状のアーチファクトを補正できずに画質が低下する場合があることを本発明者らは見出した。特に、リセット動作を、インタレースと呼ばれる走査方向に隣接しない行、たとえば偶数行と奇数行を分けて走査する方式の場合、段差状のアーチファクトがより顕著となる場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題は、蓄積された電荷に基づき信号を出力する複数の画素が行列状に配置された放射線検出器と、前記放射線検出器に放射線が照射されて前記複数の画素に蓄積された電荷の情報である第1の出力情報を取得し、続けて、前記放射線検出器に放射線が照射されずに前記複数の画素に蓄積された電荷の情報である第2の出力情報を取得する手段と、を有し、前記第1の出力情報および前記第2の出力情報は、補正された放射線画像を取得するための情報であって、前記第1の出力情報に含まれる所定行の出力値は第1の期間をかけて電荷が蓄積された出力値であり、前記第2の出力情報に含まれる前記所定行の出力値は第2の期間をかけて電荷が蓄積された出力値であり、前記第2の期間は前記第1の期間よりも長い期間であることを特徴とする放射線撮像装置により解決される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の少なくとも一つの実施形態により、リセット動作に起因するアーチファクトを低減し、良好な画質の放射線画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態に係る放射線撮像システムの構成例を示す図である。
【
図2】第1の実施形態に係る放射線撮像装置の構成例を示す図である。
【
図3】第1の実施形態に係る放射線撮像装置の動作を示すフローチャートである。
【
図4】第1の実施形態に係る放射線撮像装置の駆動タイミングを示す図である。
【
図5】第1の実施形態に係る放射線撮像装置の駆動タイミングを示す図である。
【
図6】第1の実施形態に係る放射線撮像装置の補正メカニズムを示す図である。
【
図7】第1の実施形態に係る放射線撮像装置の補正メカニズムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態による放射線撮像システムの構成例を示すブロック図である。放射線は、放射線崩壊によって放出される粒子(光子を含む)の作るビームであるα線、β線、γ線などの他に、同程度以上のエネルギーを有するビーム、例えばX線や粒子線、宇宙線なども、含まれるものとする。以下、放射線がX線である例を説明する。
【0011】
放射線撮像システムは、X線発生装置201、制御手段202、X線検知手段203、駆動手段204、読出し手段205、平面型検出器206、演算手段208、補正手段209及び表示手段(又はコンピュータ)210を有する。制御手段202は、X線検知手段203、駆動手段204及び読出し手段205を制御する。駆動手段204は、平面型検出器206を駆動する。
【0012】
X線発生装置(放射線発生装置)201は、被写体を介して、平面型検出器206及びX線検知手段203にX線(放射線)を照射する。平面型検出器206は、X列×Y行の行列状に配置された複数の画素を有し、各画素は被写体を透過したX線を電荷に変換して蓄積し、その蓄積した電荷を画素出力値として出力する。X線検知手段203は、X線の照射開始及び照射終了を検知し、X線の照射信号を制御手段202に出力する。
【0013】
平面型検出器206は、X線検知手段203がX線の照射開始を検知すると、X線に応じた電荷の蓄積を開始し、X線検知手段203がX線の照射終了を検知すると、その蓄積した電荷に応じた画素出力値を読出し手段205に出力する。すると、読出し手段205は、X列×Y行の画素のX線照射に応じた画像情報を出力する。
【0014】
X線検知手段203は、時間TX及びTEを演算手段208に出力する。時間TXは、
図4に示すように、バイアス電圧印加開始時刻からX線照射開始検知時刻までの時間である。時間TEは、
図4に示すように、バイアス電圧印加開始時刻からX線照射終了検知時刻までの時間である。駆動手段204は、
図4に示すように、X線照射開始時にリセット動作(空読み)を停止した行RXを演算手段208に出力する。
【0015】
演算手段208は、バイアス電圧印加開始時刻からX線照射開始検知時刻までの時間TX、バイアス電圧印加開始時刻からX線照射終了検知時刻までの時間TE及びリセット動作(空読み)を停止した行RXを制御手段202に出力する。
【0016】
制御手段202は、演算手段208からの情報をもとに、リセット動作を繰り返し、蓄積動作を行う制御をする。その後、蓄積した電荷に応じた画素出力値を読出し手段205に出力する。すると、読出し手段205は、X列×Y行の画素のX線照射を含まないオフセット画像情報を出力する。補正手段209は、X線照射に応じた画像情報からX線照射を含まないオフセット画像情報を減算することにより、画像情報の補正を行う。
【0017】
表示手段(又はコンピュータ)210は、補正手段209により補正された画像情報を表示(又は処理)する。ここで、表示手段(又はコンピュータ)210は、キーボートやタッチパネル等の種々の入力デバイスを有していてもよい。
【0018】
図2は、
図1の放射線撮像装置10における駆動手段204、読出し手段205、及び平面型検出器206のより詳細な構成の例を示す図である。平面型検出器206は、垂直駆動回路114、検出部112及びバイアス電源部103を有する。読出し手段205は、読出し回路113、出力バッファアンプ109及びアナログ/デジタル(A/D)変換器110を有する。
【0019】
平面型検出器206は、放射線を検出する素子である画素100を2次元行列状に配置したセンサであり、放射線を検出して画像情報を出力する。
図2では、説明の簡便化のために、3行×3列の画素100を有する検出部112の例を示す。しかしながら、実際の平面型検出器206はより多画素であり、例えば17インチの場合、約2800行×約2800列の画素を有している。
【0020】
検出部112は、行列状に配置された複数の画素100を有する。それぞれの画素100は、放射線又は光を電荷に変換する変換素子S11~S33と、変換素子S11~S33の電荷に応じた電気信号を出力するスイッチ素子T11~T33とを有し、画素出力値を出力する。
【0021】
変換素子S11~S33は、間接型の変換素子又は直接型の変換素子であり、照射された放射線を電荷に変換する。間接型の変換素子S11~S33は、放射線を光に変換する波長変換体と、その光を電荷に変換する光電変換素子とを有する。直接型の変換素子S11~S33は、放射線を直接電荷に変換する。照射された光を電荷に変換する光電変換素子としては、ガラス基板等の絶縁性基板上に配置されアモルファスシリコンを主材料とするMIS型フォトダイオードを用いることができる。また、光電変換素子は、PIN型フォトダイオードでもよい。
【0022】
スイッチ素子T11~T33は、制御端子と2つの主端子を有するトランジスタであり、薄膜トランジスタ(TFT)が好ましい。変換素子S11~S33は、それぞれ、一方の電極がスイッチ素子T11~T33の2つの主端子の一方に電気的に接続され、他方の電極が共通のバイアス線Bsを介してバイアス電源部103と電気的に接続される。
【0023】
1行目の複数のスイッチ素子T11~T13は、それらの制御端子が1行目の駆動線R1に共通に電気的に接続される。2行目の複数のスイッチ素子T21~T23は、それらの制御端子が2行目の駆動線R2に共通に電気的に接続される。3行目の複数のスイッチ素子T31~T33は、それらの制御端子が3行目の駆動線R3に共通に電気的に接続される。
【0024】
垂直駆動回路114は、例えばシフトレジスタであり、駆動線R1~R3を介して、駆動信号をスイッチ素子T11~T33に供給することにより、スイッチ素子T11~T33の導通状態を行単位で制御する。
【0025】
1列目の複数のスイッチ素子T11~T31は、それぞれ、一方の主端子が変換素子S11~S31に接続され、他方の主端子が1列目の信号線Sig1に電気的に接続されている。1列目のスイッチ素子T11~T31が導通状態である間に、1列目の変換素子S11~S31の電荷に応じた電気信号が、信号線Sig1を介して読出し回路113に出力される。
【0026】
2列目の複数のスイッチ素子T12~T32は、それぞれ、一方の主端子が変換素子S12~S32に接続され、他方の主端子が2列目の信号線Sig2に電気的に接続されている。2列目のスイッチ素子T12~T32が導通状態である間に、2列目の変換素子S12~S32の電荷に応じた電気信号が、信号線Sig2を介して読出し回路113に出力される。
【0027】
3列目の複数のスイッチ素子T13~T33は、それぞれ、一方の主端子が変換素子S13~S33に接続され、他方の主端子が3列目の信号線Sig3に電気的に接続されている。3列目のスイッチ素子T13~T33が導通状態である間に、3列目の変換素子S13~S33の電荷に応じた電気信号が、信号線Sig3を介して読出し回路113に出力される。列方向に複数配列された信号線Sig1~Sig3は、複数の画素100から出力された電気信号を並列に読出し回路113に出力する。
【0028】
読出し回路113は、信号線Sig1~Sig3の電気信号をそれぞれ増幅する増幅回路106を信号線Sig1~Sig3毎に設けている。各増幅回路106は、積分アンプ105と、可変ゲインアンプ104と、サンプルホールド回路107とを有する。
【0029】
積分アンプ105は、信号線Sig1~Sig3の電気信号を増幅する。可変ゲインアンプ104は、積分アンプ105からの電気信号を可変ゲインで増幅する。サンプルホールド回路107は、可変ゲインアンプ104で増幅された電気信号をサンプルしホールドする。積分アンプ105は、信号線Sig1~Sig3の電気信号を増幅して出力する演算増幅器121と、積分容量122と、リセットスイッチ123とを有する。
【0030】
積分アンプ105は、積分容量122の値を変えることにより、ゲイン(増幅率)を変更することが可能である。各列の演算増幅器121は、それぞれ、反転入力端子が信号線Sig1~Sig3に接続され、正転入力端子が基準電圧Vrefの基準電源部111に接続され、出力端子が増幅された電気信号を出力する。
【0031】
基準電源部111は、各演算増幅器121の正転入力端子に基準電圧Vrefを供給する。積分容量122は、演算増幅器121の反転入力端子と出力端子の間に配置される。サンプルホールド回路107は、制御信号SHのサンプリングスイッチ124と、サンプリング容量125とを有する。また、読出し回路113は、各列のスイッチ126と、マルチプレクサ108とを有する。
【0032】
マルチプレクサ108は、各列のスイッチ126を順次導通状態することにより、各増幅回路106から並列に出力される電気信号を順次、出力バッファアンプ109にシリアル信号として出力する。出力バッファアンプ109は、電気信号をインピーダンス変換して出力する。アナログ/デジタル(A/D)変換器110は、出力バッファアンプ109から出力されたアナログ電気信号をデジタル電気信号に変換し、画像情報として
図1の補正手段209に出力する。
【0033】
バイアス電源部103は、電流-電圧変換回路115及びA/D変換器127を有する。電流-電圧変換回路115は、バイアス線Bsにバイアス電圧Vsを供給しつつ、バイアス線Bsに流れる電流を電圧に変換し、A/D変換器127に出力する。A/D変換器127は、電流情報を有するアナログ電圧値を、電流情報を有するデジタル電圧値に変換して出力する。
図1のX線検知手段203は、A/D変換器127が出力する電流情報を用いてX線の照射開始及び照射終了を検知する。
【0034】
垂直駆動回路114は、
図1の駆動手段204から入力された制御信号D-CLK,OE,DIOに応じて、スイッチ素子T11~T33を導通状態にする導通電圧と非道通状態とする非導通電圧を有する駆動信号を、各駆動線R1~R3に出力する。これにより、垂直駆動回路114は、スイッチ素子T11~T33の導通状態及び非導通状態を制御し、検出部112を駆動する。
【0035】
制御信号D-CLKは、垂直駆動回路114として用いられるシフトレジスタのシフトクロックである。制御信号DIOは、垂直駆動回路114のシフトレジスタの転送パルスである。制御信号OEは、垂直駆動回路114のシフトレジスタの出力イネーブル信号である。以上により、垂直駆動回路114は、駆動の時間と走査方向を設定する。
【0036】
また、駆動手段204は、制御信号RC、制御信号SH、及び制御信号CLKを読出し回路113に出力することによって、読出し回路113の各構成要素の動作を制御する。制御信号RCは、積分アンプ105のリセットスイッチ123の動作を制御するための信号である。制御信号SHは、サンプルホールド回路107のサンプリングスイッチ124を制御するための信号である。制御信号CLKは、マルチプレクサ108の動作を制御するためのクロック信号である。
【0037】
図3は
図1の放射線撮像システムの制御方法を示すフローチャートであり、
図4はその制御方法のタイミングチャートである。ステップS301では、平面検出器206の製品型番を判別する。ステップS302では、電流-電圧変換回路115は、
図4に示すように、バイアス線Bsにバイアス電圧Vsの印加を開始する。
【0038】
次に、ステップS303では、制御手段202は、X線の照射が開始されたか否かを判定する。X線検知手段203は、A/D変換器127が出力する電流情報(照射されるX線に応じた電気信号)が閾値以上になった場合に、X線照射信号を制御手段202に出力する。制御手段202は、X線照射信号が入力された場合にはX線の照射が開始されたと判断し、X線照射信号が入力されない場合にはX線の照射が開始されていないと判断する。X線の照射が開始された場合にはステップS305に進み、X線の照射が開始されていない場合にはステップS304に進む。
【0039】
ステップS304では、検出部112は、制御手段202の制御により、
図4に示すように、駆動線R1~R14を導通電圧にし、スイッチ素子T11~T33等を導通状態にする。これにより、暗電流の電荷蓄積により生じた変換素子S11~S33等の電荷をリセットするリセット動作が行われる。その後、ステップS303に戻る。検出部112は、X線の照射前に、暗電流によって生じた変換素子S11~S33等の電荷のリセットを行うリセット動作を繰り返し行う。
【0040】
ステップS304のリセット動作(空読み)では、例えば、
図4に示すように、インタレースのリセット動作が行われる。まず、偶数行の画素100の駆動線R2,R4,R6,・・・,R14が順次導通電圧になり、偶数行の画素100のスイッチ素子T21,T41等が順次導通状態になり、偶数行の画素100の変換素子S21,S41等の電荷がリセットされる。
【0041】
次に、奇数行の画素100の駆動線R1,R3,R5,・・・,R13が順次導通電圧になり、奇数行の画素100のスイッチ素子T11,T31等が順次導通状態になり、奇数行の画素100の変換素子S11,S31等の電荷がリセットされる。上記の偶数行のリセットと奇数行のリセットとの組みの動作は、X線開始が検知されるまで、繰り返し行われる。
【0042】
X線照射開始の検知後、ステップS305では、駆動手段204は、X線検知行RXを記憶する。X線検知行RXは、X線照射の開始によりリセット動作(空読み)を停止した行RXを示し、
図4の場合には駆動線R4に対応する4行目である。
【0043】
次に、ステップS306では、駆動手段204は、制御手段202を介して、X線検知手段203から時間TXを入力し、時間TXを記憶する。時間TXは、
図4に示すように、バイアス電圧印加開始時刻からX線照射開始検知時刻までの時間である。
【0044】
次に、ステップS307は、制御手段202は、X線の照射が終了したか否かを判定する。X線検知手段203は、A/D変換器127が出力する電流情報(照射されるX線に応じた電気信号)が閾値未満になった場合に、X線照射信号の出力を停止する。また、X線検知手段203は、X線照射開始の検知時刻から所定時間(X線照射期間)経過後に、X線照射信号の出力を停止してもよい。
【0045】
制御手段202は、X線照射信号の入力が停止された場合にはX線の照射が終了したと判断し、X線照射信号が入力されている場合にはX線の照射が終了していないと判断する。X線の照射が終了した場合にはステップS309に進み、X線の照射が終了していない場合にはステップS308に進む。ステップS308では、検出部112は、制御手段202の制御により、電荷の蓄積動作を行う。その後、ステップS307に戻る。
【0046】
電荷の蓄積動作は、
図4に示すように、全ての駆動線R1~R14を非導通電圧にし、全ての画素100のスイッチ素子T11~T33等を非導通状態にして、X線の照射に応じた電荷を変換素子S11~S33等に蓄積する動作である。X線の照射が終了するまで、変換素子S11~S33等において電荷の蓄積動作が行われる。
【0047】
X線照射終了の検知後、ステップS309では、駆動手段204は、制御手段202を介して、X線検知手段203から時間TEを入力し、時間TEを記憶する。時間TEは、
図4に示すように、バイアス電圧印加開始時刻からX線照射終了時刻までの時間である。
【0048】
次に、ステップS310では、検出部112は、制御手段202の制御により、X線の照射に応じた電荷を読み出す読出動作502を行う。読出動作502では、駆動線R1~R14が順次、導通電圧のパルスになり、スイッチ素子S11~S33等が行単位で順次、導通状態になり、先頭行の画素100から最終行の画素100まで行単位で順番に信号線Sig1~Sig3等に電気信号が出力される。A/D変換器110は、先頭行から最終行までの画素100のX線照射に応じた画像情報を出力する。
【0049】
次に、ステップS311では、段差補正用蓄積動作EW1とEW2の時間を決定する。具体的には、バイアス電圧印加開始時刻からX線照射開始検知時刻までの時間TX、バイアス電圧印加開始時刻からX線照射終了検知時刻までの時間TEから、X線撮影時にそれぞれの画素100に含まれる暗電流成分に応じて決定する。
【0050】
なお、段差補正用蓄積動作EW1とEW2は、ステップ308のX線画像用蓄積動作とステップ317のオフセット補正画像用蓄積動作と同じ動作を行うが、段差補正用に意図して時間を追加するための蓄積動作である。バイアス電圧印加開始時刻からX線照射開始検知時刻までの時間TXのみで、段差補正用蓄積動作EW1とEW2の時間を決定する場合は、ステップ306と307の間に行うこともできる。
【0051】
次に、ステップ312では、ステップS304のリセット動作(空読み)と同様にインタレースのリセット動作が行われる。まず、偶数行の画素100の駆動線R2,R4,R6,・・・,R14が順次導通電圧になり、偶数行の画素100のスイッチ素子T21,T41等が順次導通状態になり、偶数行の画素100の変換素子S21,S41等の電荷がリセットされる。
【0052】
次に、奇数行の画素100の駆動線R1,R3,R5,・・・,R13が順次導通電圧になり、奇数行の画素100のスイッチ素子T11,T31等が順次導通状態になり、奇数行の画素100の変換素子S11,S31等の電荷がリセットされる。このとき、リセット動作(空読み)を停止した行RXが偶数であるときは、偶数行のリセット動作を全駆動線だけ実施してステップ312を終了する。
【0053】
リセット動作(空読み)を停止した行RXが奇数であるときは、奇数行のリセット動作を全駆動線だけ実施してステップ312を終了する。それまでの偶数行と奇数行のリセット動作(空読み)の繰り返し回数は0回以上から任意で設定できる。
【0054】
次に、ステップ313では、ステップS311で決定した段差補正用蓄積動作EW1だけ、検出部112は、制御手段202の制御により、電荷の蓄積動作を行う。電荷の蓄積動作は、
図4に示すように、全ての駆動線R1~R14を非導通電圧にし、全ての画素100のスイッチ素子T11~T33等を非導通状態にして、X線の照射に応じた電荷を変換素子S11~S33等に蓄積する動作である。
【0055】
次に、ステップ314では、ステップS304と同様にリセット動作(空読み)が行われる。リセット動作(空読み)を停止した行RXが偶数であるときは、奇数行のリセット動作を全駆動線だけ実施してステップ314を終了する。リセット動作(空読み)を停止した行RXが奇数であるときは、偶数行のリセット動作を全駆動線だけ実施してステップ314を終了する。
【0056】
次に、ステップ315では、ステップS311で決定した段差補正用蓄積動作EW2だけ、検出部112は、制御手段202の制御により、電荷の蓄積動作を行う。電荷の蓄積動作は、
図4に示すように、全ての駆動線R1~R14を非導通電圧にし、全ての画素100のスイッチ素子T11~T33等を非導通状態にして、X線の照射に応じた電荷を変換素子S11~S33等に蓄積する動作である。
【0057】
次に、ステップ316では、リセット動作(空読み)を停止した行RXが偶数であるときは、偶数行のリセット動作を、リセット動作(空読み)を停止した行RXまで実施してステップ316を終了する。リセット動作(空読み)を停止した行RXが奇数であるときは、奇数行のリセット動作を、リセット動作(空読み)を停止した行RXまで実施してステップ316を終了する。
【0058】
次に、ステップ317では、バイアス電圧印加開始時刻からX線照射終了検知時刻までの時間TEから、バイアス電圧印加開始時刻からX線照射開始検知時刻までの時間TXまでの時間を減算した時間だけ電荷の蓄積動作を行う。
【0059】
電荷の蓄積動作は、
図4に示すように、全ての駆動線R1~R14を非導通電圧にし、全ての画素100のスイッチ素子T11~T33等を非導通状態にして、X線の照射に応じた電荷を変換素子S11~S33等に蓄積する動作である。
【0060】
次に、ステップS318では、検出部112は、制御手段202の制御により、X線の照射を含まない電荷を読み出す読出動作502を行う。読出動作502では、駆動線R1~R14が順次、導通電圧のパルスになり、スイッチ素子S11~S33等が行単位で順次、導通状態になり、先頭行の画素100から最終行の画素100まで行単位で順番に信号線Sig1~Sig3等に電気信号が出力される。A/D変換器110は、先頭行から最終行までの画素100からX線照射を含まない画像情報を出力する。
【0061】
次に、行方向に生じる偶奇数行の段差状(縞状)のアーチファクトを低減するメカニズムを説明する。
図5は、バイアス電圧印加後の放射線撮像システムの駆動タイミング図である。制御手段202は、放射線の照射開始が検知されるまでの間、第一の群の走査行と第二の群の走査行を繰り返し走査する、すなわちインタレースでのリセット動作505を行う。
【0062】
X線検知手段203により放射線の照射開始が検知されると、制御手段202は、走査中のリセット動作を停止させ、放射線の照射終了までの期間は放射線画像用蓄積動作506を行い、続けて放射線画像の読出動作507を行う。その後、第一の群の走査行と第二の群の走査行を繰り返し走査するインタレースでのリセット動作508を再度行う。放射線の照射を検知した群の検知した行まで走査した上で走査を停止し、オフセット画像用蓄積動作509を行い、続けてオフセット補正画像の読出動作510を行い、オフセット補正画像を読み出す。
【0063】
図5では、X線照射の開始によりリセット動作505を停止した行RXは、駆動線R4に対応する4行目でX線を検知した場合を示している。リセット動作505、放射線画像用蓄積動作506、放射線画像の読出動作507における、奇数行R3の電荷蓄積時間には、暗電流成分501が生じる。リセット動作508、オフセット画像用蓄積動作509、オフセット画像の読出動作510における、奇数行R3の電荷蓄積時間には、暗電流成分503が生じる。
【0064】
リセット動作505、放射線画像用蓄積動作506、放射線画像の読出動作507における、偶数行R4の電荷蓄積時間には、暗電流成分502が生じる。リセット動作508、オフセット画像用蓄積動作509、オフセット画像の読出動作510における、偶数行R4の電荷蓄積時間には、暗電流成分504が生じる。
【0065】
このとき、
図5に示すように、放射線画像の奇数行R3に含まれる暗電流成分501と、オフセット補正画像の奇数行R3に含まれる暗電流成分503は同じにならない。放射線画像の偶数行R4に含まれる暗電流成分502と、オフセット補正画像の偶数行R4に含まれる暗電流成分504も同じにならない。
【0066】
結果として、X線照射を含む画像情報からX線照射を含まない画像情報を減算したオフセット補正後画像でも、奇数行R3と偶数行R4の暗電流成分はキャンセルしきれず、残存暗電流成分が残ってしまう。このR3とR4の残存暗電流成分の差分が原因で、放射線画像には段差状のアーチファクトが発生する。
【0067】
そこで
図6に示すように、放射線画像の読出動作後のリセット動作において、第一の群の走査と第二の群の走査期間中に、第一の群のリセット動作後に蓄積動作605、第二の群のリセット動作後に蓄積動作606の少なくとも何れかの任意の蓄積時間を加える。その後、
図5と同様に、放射線の照射を検知した群の検知した行まで走査した上で走査を停止し、オフセット補正画像用蓄積動作を行い、オフセット補正画像用蓄積動作後に、オフセット補正画像を読み出す。
すなわち、放射線画像の読出動作後のリセット動作の開始から終了までの間に、さらに任意の蓄積時間を加えることで、放射線画像の読出動作後のリセット動作の時間が、放射線画像の読出動作前のリセット動作の時間よりも長くなるようにする。このようにすれば、放射線画像に含まれる暗電流成分と、オフセット補正画像に含まれる暗電流成分を合わせることができるので、放射線画像に発生するアーチファクトを低減することができる。
【0068】
任意の時間の段差補正用蓄積動作606により、オフセット補正画像の奇数行R3に含まれる暗電流成分603が増加する。結果、X線照射を含む画像情報からX線照射を含まない画像情報を減算したオフセット補正後画像において、奇数行R3と偶数行R4の暗電流成分の差分が小さくなり、段差が改善する。
【0069】
図7は、バイアス電圧印加後の放射線撮像装置10の駆動タイミングを示す図である。
図6と同様に、放射線画像の読出動作後のリセット動作において、第一の群の走査と第二の群の走査期間中に、第一の群と第二の群の少なくとも何れかに任意の時間の段差補正用の蓄積動作705、706を加え走査を行う。以下、
図7が
図6と異なる点を説明する。
【0070】
任意の時間の段差補正用蓄積動作705により、オフセット補正画像の偶数行R6に含まれる暗電流成分705が増加する。結果、X線照射を含む画像情報からX線照射を含まない画像情報を減算したオフセット補正後画像の奇数行R5と偶数行R6の暗電流成分の差分が小さくなり、段差が改善する。
【0071】
図7に示すように、X線照射の開始によりリセット動作505を停止した行RX(
図7ではR4に相当)を境に、奇数行と偶数行の電荷蓄積時間の大小関係が逆転する。この特性から、段差補正用蓄積動作705と706は、第一の群の走査と第二の群の走査の双方の間に実施する。それぞれ段差補正用蓄積動作705は、行RXよりも後の行の段差補正を行い、段差補正用蓄積動作706は、行RXよりも前の行の段差補正を行う。
【0072】
図7に示すように、放射線画像の奇数行のR5に含まれる暗電流成分702と、偶数行のR6に含まれる暗電流成分701は異なる。このため、段差補正用蓄積動作705、706の時間は必ずしも同じである必要はない。
【0073】
なお、ここまでの説明においては、電荷蓄積時間の差が大きくアーチファクトが顕著に発生するインタレースでのリセット動作を例として記載しているが、この限りではない。例えば、リセット動作は
図5におけるR1からR2、R3・・・と各行ごとに順次行うようにしてもよい。この場合においても、リセット動作505を停止した行の前後で電荷蓄積時間の差が発生するため、本実施形態の段差補正用蓄積動作によるアーチファクトの低減の効果を得ることができる。
【0074】
(第2の実施形態)
検出部112では、X線が照射されていない期間でも暗電流が発生する。そのため、蓄積時間707が長いほど、暗電流成分701と702が大きくなる。蓄積時間707が短いほど、暗電流成分701と702が小さくなる。この特性から、制御手段202は、時間TEから時間TXまでの時間を減算した時間だけの蓄積時間707に応じて、段差補正用蓄積動作705と706の少なくとも一方の時間を制御する。
【0075】
具体的には、蓄積時間707が長いほど、段差補正用蓄積動作705と706の少なくとも一方の時間を長くする。蓄積時間707が短いほど、段差補正用蓄積動作705と706の少なくとも一方の時間を短くする。上記制御によって、隣接する行同士の暗電流成分の差分を小さくして、段差を改善する。演算手段208は、縦軸を蓄積時間707、横軸を段差補正用蓄積動作705または706の時間としたテーブルをもち、蓄積時間707に応じて、段差補正用蓄積動作705または706の時間を制御可能である。
【0076】
検出部112では、バイアス電圧印加開始時刻からX線照射開始検知時刻までの時間TXに応じて、暗電流が変化する。具体的には、時間TXが短ければ、暗電流の変化が急峻になり、隣接する行の暗電流成分の差分は大きくなる。時間TXが長ければ、隣接する行の暗電流成分の差分は小さくなる。この特性から、バイアス電圧印加開始時刻からX線照射開始検知時刻までの時間TXまでの時間に応じて、段差補正用蓄積動作705と706の少なくとも一方の時間を制御できる。
【0077】
具体的には、バイアス電圧印加開始時刻からX線照射開始検知時刻までの時間TXが短いほど、段差補正用蓄積動作705と706の少なくとも一方の時間を長くする。バイアス電圧印加開始時刻からX線照射開始検知時刻までの時間TXが長いほど、段差補正用蓄積動作705と706の少なくとも一方の時間を短くする。上記制御によって、隣接する行同士の暗電流成分の差分を小さくして、段差を改善する。
【0078】
演算手段208は、縦軸を時間TX、横軸を段差補正用蓄積動作705または706の時間としたテーブルをもち、時間TXに応じて、段差補正用蓄積動作705または706の時間を制御可能である。
【0079】
制御手段202は、環境温度をモニタする温度検出部をもっていてもよい。画素100は、環境温度によっても、暗電流が変化する。例えば、環境温度が高ければ、暗電流の変化は急峻となり、環境温度が低ければ暗電流は緩やかに変化する。この特性から、環境温度に応じて、段差補正用蓄積動作705と706の少なくとも一方の時間を制御するとよい。
【0080】
具体的には、環境温度が高ければ、低いときよりも段差補正用蓄積動作705と706の少なくとも一方の時間を長くするとよい。このような制御によって、隣接する行同士の暗電流成分の差分を小さくして、放射線画像におけるアーチファクトを低減することができる。
【0081】
このとき、演算手段208は、縦軸を環境温度、横軸を段差補正用蓄積動作705または706の時間としたテーブルをもち、環境温度に応じて、段差補正用蓄積動作705または706の時間を制御するようにしてもよい。
【0082】
また、平面検出器206のセンサの種類(サイズ、メーカ等の違い)によっても、同じ温度に対する暗電流成分は異なる。よって、例えば演算手段208などに、センサの種類を判別できる機能を持たせ、
図3のS301のタイミングで平面検出器206のセンサの種類を判別してもよい。
【0083】
このようにして得られた平面検出器206のセンサの種類ごとに、前記温度検出部がモニタする温度に応じて、段差補正用蓄積動作705または706の時間を制御してもよい。例えば、演算手段208は、センサの種類と、環境温度と、段差補正用蓄積動作と、をテーブルとして持ち、センサの種類および環境温度から、段差補正用蓄積動作を決定してもよい。
【0084】
ここで、センサの種類を判別する機能は演算手段208以外が有していてもよいし、表示手段(又はコンピュータ)210が有する入力手段によってユーザがセンサの種類を入力するようにしてもよい。
【0085】
なお、蓄積時間707または、バイアス電圧印加開始時刻からX線照射開始検知時刻までの時間TXまたは、環境温度の少なくともひとつ以上の組み合わせで、段差補正用の蓄積動作705と706の少なくとも一方の時間を制御することもできる。
【0086】
以上のように、演算手段208は、蓄積時間707、バイアス電圧印加開始時刻からX線照射開始検知時刻までの時間TX、環境温度、センサの種類から、段差補正用蓄積動作705または706の時間を制御することが可能である。このようにして段差補正用蓄積動作705または706の時間を決定することにより、リセット動作に起因するアーチファクトを低減し、良好な画質の放射線画像を得ることができる。
【0087】
(その他の実施形態)
本発明は、上述の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。
【0088】
また、記録媒体は、フレキシブルディスク、光ディスク(例えばCD-ROM、DVD-ROM)、光磁気ディスク、磁気テープ、不揮発性のメモリ(例えばUSBメモリ)、ROM等、種々の記録媒体を用いることができる。また、上述の機能を実施するプログラムを、ネットワークを介してダウンロードしてコンピュータにより実行するようにしてもよい。
【0089】
また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することにより、上述の実施形態の機能が実現されるだけに限定するものではない。そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているOS(オペレーティングシステム)等が実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって上述した実施形態の機能が実現される場合も含まれる。
【0090】
さらに、記録媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれてもよい。そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPU等が実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって上述の機能が実現される場合も含まれる。
【0091】
以上の実施形態に関し、発明の一側面および選択的な特徴として以下の付記を開示する。
【0092】
(付記1)
行列状に配置され、放射線を電荷に変換して画素出力値を出力する複数の画素を含む検出部と、
前記複数の画素に電荷を蓄積する蓄積動作中において駆動信号を行ごとに印加することにより前記複数の画素における電荷をリセットする第1のリセット動作と、照射された放射線に基づく電荷を前記複数の画素に蓄積する第1の蓄積動作と、前記複数の画素から照射された放射線に応じた画像情報の出力を行う第1の読出動作と、前記複数の画素に電荷を蓄積する蓄積動作中において駆動信号を行ごとに印加することにより前記複数の画素における電荷を行ごとにリセットする第2のリセット動作と、前記画像情報のオフセット補正に用いるための電荷を蓄積する第2の蓄積動作と、オフセット画像情報の出力を行う第2の読出動作と、をこの順に前記検出部に行わせる制御部と、を有し、
前記制御部は、前記第1のリセット動作の時間よりも前記第2のリセット動作の時間が長くなるように、前記第2のリセット動作を前記検出部に行わせること
を特徴とする放射線撮像装置。
【0093】
(付記2)
前記制御部は、前記第1のリセット動作および前記第2のリセット動作を、前記複数の画素のうちの第1の群と第2の群とを交互に走査するインタレース方式で前記検出部に行わせるようにしてもよい。
【0094】
(付記3)
前記制御部は、前記第1のリセット動作の時間よりも前記第2のリセット動作の時間が長くなるように、前記第1のリセット動作における、前記第1の群の走査の間および前記第2の群の走査の間の両方で前記複数の画素に電荷を蓄積する第3の蓄積動作を行わせるようにしてもよい。
【0095】
(付記4)
前記制御部は、前記第1の群の走査の間に行う前記第3の蓄積動作と、前記第2の群の走査の間に行う前記第3の蓄積動作と、のそれぞれの時間を制御するようにしてもよい。
【0096】
(付記5)
前記制御部は、前記第1の群の走査の間に行う前記第3の蓄積動作と、前記第2の群の走査の間に行う前記第3の蓄積動作とで、時間が異なるように制御するようにしてもよい。
【0097】
(付記6)
前記制御部は、前記第3の蓄積動作の時間を、前記第1の蓄積動作の時間に基づき制御するようにしてもよい。
【0098】
(付記7)
前記制御部は、前記第1の蓄積動作の時間が短い場合の前記第3の蓄積動作の時間よりも、前記第1の蓄積動作の時間が長い場合の前記第3の蓄積動作の時間が長くなるように制御するようにしてもよい。
【0099】
(付記8)
放射線の照射開始を検知する検知部を有し、
前記制御部は、前記第3の蓄積動作の時間を、前記複数の画素にバイアス電圧が印加されてから前記検知部が放射線の照射開始を検知するまでの時間に基づき制御するようにしてもよい。
【0100】
(付記9)
前記制御部は、前記照射開始を検知するまでの時間が長い場合の前記第3の蓄積動作の時間よりも、前記照射開始を検知するまでの時間が短い場合の前記第3の蓄積動作の時間が長くなるように制御するようにしてもよい。
【0101】
(付記10)
前記放射線撮像装置の周囲の環境温度をモニタする温度検出部を有し、
前記制御部は、前記第3の蓄積動作の時間を、前記温度検出部がモニタする温度に基づき制御するようにしてもよい。
【0102】
(付記11)
前記制御部は、前記環境温度が低い場合の前記第3の蓄積動作の時間よりも、前記環境温度が高い場合の前記第3の蓄積動作の時間が長くなるように制御するようにしてもよい。
【0103】
(付記12)
前記制御部は、前記第3の蓄積動作の時間を、前記検出部の種類に応じて制御するようにしてもよい。
【0104】
(付記13)
付記1乃至12のいずれか一項に記載の放射線撮像装置と、
前記放射線撮像装置により出力された前記画像情報を表示する画像表示手段と、
を有することを特徴とする放射線撮像システム。
【0105】
(付記14)
放射線を電荷に変換して画素出力値を出力する複数の画素が行列状に配置された検出部を有する放射線撮像装置の制御方法であって、
前記複数の画素に電荷を蓄積する蓄積動作中において駆動信号が行ごとに印加することにより前記複数の画素における電荷を行ごとにリセットする第1のリセット工程と、
照射された放射線に基づく電荷を前記複数の画素に蓄積する第1の蓄積工程と、
前記複数の画素から照射された放射線に応じた画像情報の出力を行う第1の読出し工程と、
前記複数の画素に電荷を蓄積する蓄積動作中において駆動信号を行ごとに印加することにより前記複数の画素における電荷を行ごとにリセットする第2のリセット工程と、
前記画像情報のオフセット補正に用いるための電荷を蓄積する第2の蓄積工程と、
オフセット画像情報の出力を行う第2の読出し工程と、をこの順に行い、
前記第1のリセット工程の時間よりも、前記第2のリセット工程の時間が長いことを特徴とする制御方法。
【0106】
(付記15)
前記第1のリセット工程および前記第2のリセット工程を、前記複数の画素のうちの第1の群と第2の群とを交互に走査するインタレース方式で行ってもよい。
【0107】
(付記16)
前記第1のリセット工程の時間よりも前記第2のリセット工程の時間が長くなるように、前記第1のリセット工程における、前記第1の群の走査の開始から終了までの間および前記第2の群の走査の開始から終了までの間の両方で、前記複数の画素に電荷を蓄積する第3の蓄積工程を行ってもよい。
【0108】
(付記17)
コンピュータに付記14乃至16のいずれか一つに記載される制御方法の各工程を実行させるためのプログラム。
【符号の説明】
【0109】
10 放射線撮像装置
100 画素
112 検出部
202 制御手段