(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】電子機器および制御方法
(51)【国際特許分類】
G06F 3/00 20060101AFI20240624BHJP
G06F 1/26 20060101ALI20240624BHJP
G06F 13/38 20060101ALI20240624BHJP
G06F 21/62 20130101ALI20240624BHJP
【FI】
G06F3/00 P
G06F1/26 306
G06F13/38 350
G06F21/62
(21)【出願番号】P 2022202554
(22)【出願日】2022-12-19
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【氏名又は名称】片岡 央
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 裕一郎
(72)【発明者】
【氏名】中田 宗文
(72)【発明者】
【氏名】宇田川 博貴
(72)【発明者】
【氏名】牧 耕太郎
【審査官】田中 啓介
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-111666(JP,A)
【文献】特開2018-169676(JP,A)
【文献】特開2006-309531(JP,A)
【文献】特開2016-206912(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0115000(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F1/26-3/00、3/18
G06F12/14
G06F13/20-13/42
G06F21/00-21/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホストシステムと、
信頼の基点として機能するコントローラと、
伝送線路と接続可能なコネクタと、
前記伝送線路の断続を切り替え可能なスイッチと、を備え、
前記伝送線路は、電源線と信号線を有し、
前記コントローラは、
前記伝送線路を用いて接続される外部デバイスを検出し、
前記外部デバイスとの通信を開始せず、
前記外部デバイスが電力の
供給元となる場合または通信可能な場合、
前記外部デバイスとの接続を示す接続情報を出力デバイスに提示させ、
前記外部デバイスが通信可能な場合、
入力デバイスからの操作信号の入力に応じて、
前記スイッチに対し、前記外部デバイスとのデータ伝送の要否を制御させる
電子機器。
【請求項2】
前記出力デバイスは、発光素子を含み、
前記コントローラは、前記外部デバイスを検出するとき、前記発光素子を点灯させる 請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記出力デバイスは、表示デバイスを含み、
前記コントローラは、前記外部デバイスを検出するとき、前記
外部デバイスとの通信状態の変更に係る前記入力デバイスの操作方法を示す案内情報を前記表示デバイスに出力する
請求項
1に記載の電子機器。
【請求項4】
前記入力デバイスは、キーボードであり、
前記操作方法は、所定の複数のキーの押下である
請求項
3に記載の電子機器。
【請求項5】
前記入力デバイスと前記出力デバイスを備える
請求項
1に記載の電子機器。
【請求項6】
ホストシステムと、
信頼の基点として機能するコントローラと、
伝送線路と接続可能なコネクタと、
前記伝送線路の断続を切り替え可能なスイッチと、を備え、
前記伝送線路が電源線と信号線を有する電子機器における制御方法であって、
前記コントローラが、
前記伝送線路を用いて接続される外部デバイスを検出し、前記外部デバイスとの通信を開始しない第1ステップと、
前記外部デバイスが電力の
供給元となる場合または通信可能な場合、
前記外部デバイスとの接続を示す接続情報を出力デバイスに提示させる第2ステップと、
前記外部デバイスが通信可能な場合、
入力デバイスからの操作信号の入力に応じて、
前記スイッチに対し、前記外部デバイスとのデータ伝送の要否を制御させる第3ステップと
を実行する制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、電子機器および制御方法、例えば、伝送線路の使用時におけるセキュリティに関する。
【背景技術】
【0002】
ラップトップ型パーソナルコンピュータ(PC:Personal Computer)をはじめとする電子機器では、データの他、電力も伝送可能な伝送線路と接続できるアダプタが普及している。かかるアダプタのうち、USB-Cアダプタが普及している。USB-Cアダプタは、USB-C(Universal Serial Bus Type-C)規格に準拠したUSB-Cコネクタを備える。USB-Cは、USB機器およびケーブルにおけるピンコネクタの規格である。例えば、特許文献1に記載の電子デバイスは、入力ポートとしてUSB-Cコネクタを備え、電力が供給され充電可能としている。USB-Cコネクタは、空港などの公共空間(public space)に設置され、無償で利用可能とされることがある。公共空間のUSB-Cの利用を通じ、かかる電子機器を所持するユーザに対する便宜が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電力とデータをいずれも伝送可能に接続されることで、予期せずに電子機器からデータが漏洩するおそれがある。例えば、電子機器への充電を主目的として公共空間のUSB-Cコネクタに装着する場合、USB-Cコネクタを経由して各種のデータが送受信可能となる。このときUSB-Cコネクタを経由して悪意ある第三者が各種のデータをハッキングするリスクが生じる。他方、一律にデータの伝送を完全に封じると利便性が失われかねない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願は上記の課題を解決するためになされたものであり、本願の第1の態様に係る電子機器は、コントローラと、伝送線路と接続可能なコネクタと、を備え、前記伝送線路は、電源線と信号線を有し、前記コントローラは、前記伝送線路を用いて接続される外部デバイスを検出し、前記外部デバイスとの通信を開始せず、前記外部デバイスが電力の供給元となる場合または通信可能な場合、前記外部デバイスとの接続を示す接続情報を出力デバイスに提示させる。
【0006】
上記の電子機器において、前記出力デバイスは、発光素子を含み、前記コントローラは、前記外部デバイスを検出するとき、前記発光素子を点灯させてもよい。
【0007】
上記の電子機器において、前記外部デバイスが通信可能な場合、前記コントローラは、入力デバイスからの操作信号の入力に応じて、前記外部デバイスとの通信状態を変更してもよい。
【0008】
上記の電子機器において、前記出力デバイスは、表示デバイスを含み、前記コントローラは、前記外部デバイスを検出するとき、前記通信状態の変更に係る前記入力デバイスの操作方法を示す案内情報を前記表示デバイスに出力してもよい。
【0009】
上記の電子機器において、前記入力デバイスは、キーボードであり、前記操作方法は、所定の複数のキーの押下であってもよい。
【0010】
上記の電子機器は、前記入力デバイスと前記出力デバイスを備えてもよい。
【0011】
本願の第2の態様に係る制御方法は、コントローラと、伝送線路と接続可能なコネクタと、を備え、前記伝送線路は、電源線と信号線を有する電子機器における制御方法であって、前記コントローラが、前記伝送線路を用いて接続される外部デバイスを検出し、前記外部デバイスとの通信を開始しない第1ステップと、前記外部デバイスが電力の供給元となる場合または通信可能な場合、前記外部デバイスとの接続を示す接続情報を出力デバイスに提示させる第2ステップと、を実行する。
【発明の効果】
【0012】
本願の実施形態によれば、給電時における予期しないセキュリティリスクを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態に係る電子機器のハードウェア構成例を示す概略ブロック図である。
【
図2】本実施形態に係る電子機器の実装例を示す概略ブロック図である。
【
図3】本実施形態に係る発光素子の第1配置例を示す図である。
【
図4】本実施形態に係る発光素子の第2配置例を示す図である。
【
図5】本実施形態に係る電子機器の機能構造を例示する階層図である。
【
図6】本実施形態に係る電子機器の使用形態を例示する図である。
【
図7】本実施形態に係る表示画面の表示例を示す図である。
【
図8】本実施形態におけるデバイス種類ごとの通知要否の例を示す表である。
【
図9】本実施形態に係る通知制御の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本願の実施形態について、図面を参照して説明する。まず、本実施形態に係る電子機器1の概要について説明する。
電子機器1は、コントローラと、伝送線路と接続可能なコネクタとを備え、伝送線路は、電源線と信号線を有する。コントローラは、伝送線路を用いて接続される他の機器を検出し、信号線を用いた通信を行わず、機器が自器に電力を供給可能または自器と通信可能な場合、機器との接続状態を出力デバイスに通知させる。
以下の説明では、電子機器1がノートブック型PCであり、伝送線路がUSB(Universal Serial Bus) Type-Cケーブルである場合を主とする。USB type-Cは、入出力機器ならびに伝送線路の標準規格の1つである。
【0015】
図1は、本実施形態に係る電子機器1のハードウェア構成例を示す概略ブロック図である。電子機器1は、プロセッサ11と、メインメモリ12と、ビデオサブシステム13と、ディスプレイ14と、SoC21と、BIOSメモリ22と、補助記憶装置23と、オーディオシステム24と、WLANカード25と、USBアダプタ26と、EC31と、入力部32と、電源回路33と、バッテリ34と、電源ボタン36と、発光素子38と、PDコントローラ40と、リタイマー・信号切り替えスイッチ(リタイマー/SW)41を備える。
【0016】
プロセッサ11は、ソフトウェア(プログラム)に記述された命令で指示される種々の演算処理を実行する。プロセッサ11には、少なくとも1個のCPUが含まれる。CPUは、電子機器1全体の動作を制御する。CPUは、例えば、OS(Operating System)、BIOS、アプリケーションプログラム(本願では、「アプリ」と呼ぶこともある)など、ソフトウェアに基づく処理を実行する。なお、ソフトウェアに記述された指令(コマンド)で指示される処理を実行することを、「ソフトウェアを実行する」、「ソフトウェアの実行」などと呼ぶことがある。
【0017】
メインメモリ12は、プロセッサ11の実行プログラムの読み込み領域として、または、実行プログラムの処理データを書き込む作業領域として利用される書き込み可能メモリである。メインメモリ12は、例えば、複数個のDRAM(Dynamic Random Access Memory)チップで構成される。実行プログラムには、OS、周辺機器などのハードウェアを操作するための各種ドライバ、各種サービス/ユーティリティ、アプリ等が含まれる。プロセッサ11とメインメモリ12は、電子機器1の主たるコンピュータシステム(ホストシステム)をなす。
【0018】
ビデオサブシステム13は、画像表示に関連する機能を実現するためのサブシステムであり、ビデオコントローラを含む。ビデオコントローラは、プロセッサ11からの描画命令を処理し、処理した描画情報をビデオメモリに書き込むとともに、ビデオメモリからこの描画情報を読み出して、ディスプレイ14に表示情報を示す表示データとして出力するビデオサブシステム13は、1個または複数個のGPU(Graphic Processing Unit)を含んで構成されてもよい。GPUは、主に実時間画像処理、その他の並列演算処理を担うプロセッサである。GPUは、CPUと一部の処理を分担することがある。
GPUは、プロセッサ11として機能するCPUと一体化し、同一のコアに形成されてもよいし、CPUとは別個のコアに形成されてもよい。GPUは、画像処理以外の並列演算処理を実行することも、CPUと一部の処理を分担することもありうる。
【0019】
ディスプレイ14は、ビデオサブシステム13から出力された描画データ(表示データ)に基づく表示画面を表示する。ディスプレイ14は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、OLED(Organic Light Emitting Diode、有機発光ダイオード)ディスプレイなどのいずれであってもよい。
【0020】
SoC(System on a Chip)21は、複数のコントローラを備え、複数のデバイスと各種のデータを入出力できるように接続可能とする。コントローラは、例えば、USB(Universal Serial Bus)、シリアルATA(AT Attachment)、SPI(Serial Peripheral Interface)バス、PCI(Peripheral Component Interconnect)バス、PCI-Expressバス、および、LPC(Low Pin Count)などのバスコントローラのいずれか1個または組み合わせである。複数のデバイスとして、例えば、後述するBIOSメモリ22、補助記憶装置23、オーディオシステム24、WLANカード25、USBアダプタ26、および、EC31が含まれる。SoC21は、リタイマー・信号切り替えスイッチを経由してUSBアダプタ26と接続される。
【0021】
BIOS(Basic Input Output System)メモリ22は、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)やフラッシュROMなど、電気的に書き換え可能な不揮発性メモリで構成される。BIOSメモリ22は、BIOSなどのシステムファームウェア、EC31その他のデバイスの動作を制御するためのファームウェアなどを記憶する。
【0022】
補助記憶装置23は、電気的に書き換え可能な不揮発性メモリで構成される。補助記憶装置23は、プロセッサ11その他のデバイスの処理に用いられる、または、それらの処理により取得された各種のデータ、各種のプログラムなどを記憶する。補助記憶装置23は、例えば、SSD(Solid State Drive)、HDD(Hard Disk Drive)などのいずれか1個またはいずれかの組み合わせであってもよい。
【0023】
オーディオシステム24は、マイクロホンとスピーカ(図示せず)が接続され、音声データの記録、再生および出力を行う。なお、マイクロホンとスピーカは、例えば、電子機器1に内蔵されてもよいし、電子機器1とは別体であってもよい。
【0024】
WLAN(Wireless Local Area Network、無線LAN)カード25は、無線LANに接続し、無線LANに直接または間接的に接続された他の機器との間でデータ通信を行う。無線LANは、所定の無線通信方式(例えば、IEEE802.11)に従って機器間で各種のデータを送受信可能とする。無線LANでは、機器間の通信がアクセスポイントを経由して実行される。アクセスポイントは、自局を含んで構成される無線LAN内の機器、または、他のネットワークとデータを送受信可能に接続する基地局である。
【0025】
USBアダプタ26は、USB規格に基づく通信機能(本願では「USB通信機能」と呼ぶことがある)を有する各種のデバイス(本願では、「外部デバイス」と呼ぶことがある)を電気的に接続するためのUSBコネクタ26c(
図4)を備える。USBコネクタ26cは、例えば、USB-C規格に準拠したUSB-Cコネクタである。USBコネクタ26cは、自装置内のUSBを終端する端子を備え、別個のUSBコネクタと電気的に接続されるように嵌合可能な形態を有する。別個のUSBコネクタはUSB-Cケーブルの一端を終端し、USBコネクタ26cと嵌合可能とする。USB-Cケーブルは、電源線(power line)と信号線(signal line)を備え、これらを一括して束ねて構成された伝送線路である。個々のUSB-Cケーブルに備わる端子は、電源線と信号線を終端し、伝送線路の一部をなす。従って、USBアダプタ26は、外部デバイスとの間で各種のデータを送受信可能とし、かつ、電力を送受電可能とする。
【0026】
USBアダプタ26は、電子機器1を構成するリタイマー・信号切り替えスイッチ41、電源回路33およびPDコントローラ40に物理的に接続される。USBアダプタ26は、リタイマー・信号切り替えスイッチ41を経由してSoC21と接続される。USBアダプタ26は、電子機器1のホストシステムの動作状態に関わらず、電源回路33と外部デバイスとの間で電力を送受電可能に接続する。USBアダプタ26は、PDコントローラ40を経由してEC31からの指令に従い、外部デバイスとのUSB規格に基づく通信状態を制御する。USBアダプタ26は、リタイマー・信号切り替えスイッチ41、SoC21およびPDコントローラ40のそれぞれとの間でデータを送受信可能に接続される。
【0027】
EC(Embedded Controller)31は、電子機器1のホストシステムの動作状態に関わらず、各種デバイス(周辺装置やセンサ等)を監視して制御するワンチップマイコン(One-Chip Microcomputer)である。EC31は、プロセッサ11とは別個にCPU、ROM、RAM、複数チャネルのA/D(Analog-to-Digital)入力端子、D/A(Digital-to-Analog)出力端子、タイマおよびディジタル入出力端子(図示せず)を備える。EC31のディジタル入出力端子には、例えば、入力部32、電源回路33、などが接続され、EC31は、これらの動作を制御する。例えば、EC31は、入力部32から入力される操作信号に従って、PDコントローラ40を経由して通信機能を有する外部デバイスとの通信状態を制御する。EC31は、入力部32から入力される操作信号に従って、リタイマー・信号切り替えスイッチ41を制御することにより、通信機能を有する外部デバイスとの通信状態を制御してもよい。EC31は、外部デバイスとの通信状態に従って発光素子38の点灯状態を制御してもよい。
【0028】
入力部32は、ユーザの操作を検出し、検出した操作に応じた操作信号をEC31に出力する入力デバイスを備える。入力部32には、例えば、キーボード、スイッチ、タッチパッドなどが含まれる。入力部32をなすタッチセンサは、ディスプレイ14と一体に重なり合い、タッチパネルとして構成されてもよい。
【0029】
電源回路33は、USBアダプタ26、または、バッテリ34から供給される直流電力の電圧を、電子機器1を構成する各デバイスの動作に要する電圧に変換し、変換した電圧を有する電力を供給先のデバイスに供給する。電源回路33は、EC31の制御に従って、電力供給を実行する。電源回路33は、自器に供給される電力の電圧を変換するDC/DC(Direct)変換器(以下、「DC/DC33d」と呼ぶ)と、電圧が変換された電力をバッテリ34に供給する給電器を備える。給電器は、USBアダプタ26から電力が供給されている場合、各デバイスにおいて消費されずに残された電力をバッテリ34に供給する。給電器は、USBアダプタ26から電力が供給されない場合、または、USBアダプタ26から供給される電力が不足する場合には、バッテリ34から放電される電力をDC/DC33dを経由して各デバイスに供給する。
バッテリ34として、二次電池が用いられる。二次電池は、充電および放電とも可能な蓄電池である。二次電池として、例えば、リチウムイオン電池である。
【0030】
電源ボタン36は、押下操作が受け付けられる都度、電子機器1の全体に対する電力の供給状態として、電源投入(Power ON)および電源断(Power OFF)のいずれかに制御する。押下操作が受け付けられるとき、電源ボタン36は、押下を示す押下信号をEC31に出力する。EC31は、電子機器1が電源断であって電源ボタン36から押下信号が入力されるとき、電源回路33に対し、電子機器1の各デバイスへの電力供給を開始させる(電源投入)。プロセッサ11は、自部への電力供給の開始を検出するとき、BIOSメモリ22からBIOSを読み取り、メインメモリ12にロードし、BIOSに従って起動処理(ブート)を実行する。起動処理において、プロセッサ11は、補助記憶装置23に退避させていたデータをメインメモリ12にロードする。その後、プロセッサ11は、OSを起動し、OSの起動が完了した後、補助記憶装置23などのデバイスの制御に係るデバイスドライバの実行を開始する。
【0031】
他方、EC31は、電子機器1に電源投入され、かつ、電源ボタン36から押下信号が入力されるとき、プロセッサ11に停止処理(シャットダウン)を実行させる。プロセッサ11は、停止処理において、その時点で作業領域に存在するデータを補助記憶装置23その他の補助記憶装置に退避させる。プロセッサ11は、データの退避を終了した後、その時点で実行しているアプリ、補助記憶装置23などのデバイスドライバ、その他のプログラムによる処理を停止する。その後、プロセッサ11は、停止処理の完了をEC31に通知する。EC31は、電源回路33に電子機器1の各デバイスへの電力供給を停止させる。
【0032】
発光素子38は、EC31から出力される指令が入力され、入力される指令に従い点灯する。発光素子38は、例えば、LED(Light Emitting Diode、発光ダイオード)を備える。後述するように、発光素子38は、USBアダプタ26と外部機器との接続状態を提示するための出力デバイスの例として機能する。例えば、EC31は、通信可能または電源として機能する外部デバイスのUSBアダプタ26への接続が検出されるとき、発光素子38に点滅指令を出力する。発光素子38は、EC31から点滅指令が入力されるとき点滅を開始する。EC31は、通信可能または電源として機能する外部デバイスのUSBアダプタ26からの離脱が検出されるとき、発光素子38に消灯指令を出力する。発光素子38は、EC31から消灯指令が入力されるとき点滅を停止し、消灯する。
【0033】
PD(Power Delivery)コントローラ40は、USBアダプタ26と外部デバイスとの接続状態を検出し、検出した接続状態に応じて外部デバイスとの送受電を制御する。また、PDコントローラ40は、検出した接続状態をEC31に通知する。PDコントローラ40は、EC31からの指令に従ってリタイマー・信号切り替えスイッチ41の設定を切り替え、外部デバイスとの通信状態を制御する。EC31は、例えば、入力部32から接続状態の変更を示す操作信号が入力される都度、接続指令と断絶指令とを交互に切り替える。接続指令は、外部デバイスと通信可能な状態である接続状態を指示する指令である。断絶指令は、外部デバイスと通信できない状態である断絶状態を指示する指令である。PDコントローラ40は、EC31からの接続指令が入力されるときリタイマー・信号切り替えスイッチ41に対し、外部デバイスと各種のデータを、USBアダプタ26を経由して送信可能または受信可能となるよう制御する。PDコントローラ40は、EC31からの断絶指令が入力されるときリタイマー・信号切り替えスイッチ41に対し、外部デバイスと可能としていたUSBアダプタ26を経由したデータの送信および受信が停止されるように制御する。
【0034】
次に、本実施形態に係る電子機器1のハードウェア構成例のうち主に外部デバイスとの接続に係る部分の実装例について説明する。
図2は、本実施形態に係る電子機器1の実装例を示す概略ブロック図である。
図2の例では、電子機器1は、接続操作部1oと、接続制御部1cとに区分される。その他の部材については、図示が省略されている。
【0035】
接続操作部1oは、ユーザの操作に応じて接続制御部1cに対して外部デバイスとの接続状態を制御する。接続操作部1oは、EC31と、キーボード32kとを備える。EC31は、電子機器1における信頼の基点(RoT:Root of Trust)とするハードウェアとして機能する(HW RoT)。RoTは、デバイスの信頼性を保証するための、ハードウェアおよびソフトウェアコンポーネントを指す。NIST(National Institute of Standards and Technology、米国国立標準技術研究所)発行のセキュリティガイドラインNIST SP-800-193において次の要件が定義されている。(1)物理・論理攻撃に対して、安全な設計がなされていること、(2)小さく、かつ、保護されていること、(3)ハードウェアで実装するか、ハードウェアで保護されていることが望ましい。
【0036】
この点、EC31は、SoC21、ホストシステムおよび接続制御部1cとは別個であり、より小規模なハードウェアを用いて構成される。また、EC31は、他のデバイスと共通の記憶媒体を共用せず、外部デバイスとの間で直接入出力がなされない。
キーボード32kは、入力部32の一例である。キーボード32kは、複数のキーを有するキー群を備え、ユーザからの押下を検出したキーに対応する文字(記号、数字も含まれる)を示す操作信号を生成する。
図2の例では、キーボード32kからの操作信号の出力先は、EC31に限られる。キーボード32kにはユーザの操作が有効に作用し、他のデバイスからの制御を受けない。即ち、キーボード32kは、信頼の基点とするEC31に独立的かつ直接的に操作するため、外部デバイスと協働して新たにセキュリティリスクを生じずに済む。
【0037】
EC31は、PDコントローラ40とデータバスを用いて接続される。EC31とPDコントローラ40との間の通信方式として、例えば、I2C(Inter-Integrated Circuit)などのデバイス間通信方式が利用可能である。
【0038】
接続制御部1cは、PDコントローラ40、リタイマー・信号切り替えスイッチ41およびUSBアダプタ26を備える。USBアダプタ26は、USBケーブルの一端に設けられた他のUSBアダプタと嵌合し、着脱可能に装着する装着具を備える。USBケーブルの他端には外部デバイスが接続される。USBアダプタ26は、電子機器1内部の電源線と信号線を終端する。電源線は、USBアダプタ26とDC/DC33dとの間を、リタイマー・信号切り替えスイッチ41を経由して電気的に接続可能とする。
【0039】
図示の例では、信号線として、CC信号線(Configuration Channel line)、USB2信号線およびUSB3信号線が含まれる。電源となるデバイスでは、所定の電源電圧がプルアップ抵抗Rpを介して所定の電源電圧(例えば、5V)がCC信号線の一端に印加される。負荷となるデバイスでは、プルダウン抵抗Rdを介してCC信号線の一端がグランドに接触され、基準電位が与えられる。PDコントローラ40は、CC信号線の終端に生じた電位に基づいて外部デバイスの接続の有無を判定することができる。PDコントローラ40は、例えば、CC信号線の終端における電位が0V以上であって電源電圧以下となるとき外部デバイスが接続されたと判定し、それ以外の場合、外部デバイスが接続されていないと判定することができる。PDコントローラ40は、外部デバイスが接続されている状態から接続されなくなった状態に変化するとき、USBアダプタ26から外部デバイスが離脱したと判定することができる。このとき、PDコントローラ40は、外部デバイスの離脱を示す離脱情報をEC31に出力する。
【0040】
PDコントローラ40は、CC信号線の終端における電流の流入または流出に基づいて外部デバイスの送受電関係を判定することができる。送受電関係は、電源(source)と負荷(sink)のいずれとして機能するかを示す電力需給の役割(power role)を意味する。電源は、電子機器1に対して電力を供給可能とする。負荷は、電子機器1からの電力の供給先となる。PDコントローラ40は、例えば、CC信号線の終端から自器への電流の流入を検出するとき、外部デバイスが電源として機能すると判定し、自部からCC信号線への電流の流出を検出するとき、外部デバイスが負荷として機能すると判定することができる。
【0041】
PDコントローラ40は、CC信号線で伝送される電気信号を監視し、外部デバイスのUSB-C規格に基づく送受電機能(PD capability、PD対応)の有無を判定する。PDコントローラ40は、外部デバイスとの接続後、所定時間以内に所定の信号波形を有する電気信号(例えば、SOP(Start Of Packet)信号)を検出したか否かに基づいて、PD対応の有無を判定することができる。PDコントローラ40は、PD対応の有無を示すPD対応情報を生成する。
PDコントローラ40は、CC信号線を用いてPD対応を有すると判定した外部デバイスから当該デバイスの設定情報(configuration)を受信し、取得される設定情報から通信機能情報を抽出する。通信機能情報は、送信元の外部デバイスがUSB通信機能を有するか否かを示す情報である。
【0042】
リタイマー・信号切替スイッチ41は、EC31からの制御に従い、USBアダプタ26と、SoC21、電源回路33もしくはPDコントローラ40との間における各種のデータの断続を制御する。リタイマー・信号切替スイッチ41は、信号切替スイッチとリタイマーを備える。信号切替スイッチは、主にUSB2信号線(後述)の断続を切り替える。リタイマーは、USB3信号線(後述)、その他の伝送線路の断続を切り替える。リタイマーは、例えば、電磁式スイッチを有し、電気的にデータ伝送の要否を切り替える。リタイマーは、電磁式スイッチに代えてIC(Integrated Circuit)を有し、ICに対する設定変更によりディジタル的にデータ伝送の要否を切り替えてもよい。
【0043】
PDコントローラ40は、取得した送受電関係情報、PD対応情報および通信機能情報を含む接続情報をEC31に出力する。
EC31は、PDコントローラ40から接続情報を待ち受ける。EC31は、PDコントローラ40から接続情報が入力されるとき外部デバイスがUSBアダプタ26に接続されたと判定する。EC31は、接続情報から通信機能情報を抽出し、抽出した通信機能情報に基づいて外部デバイスがUSB通信機能を有するか否かを判定する。EC31は、外部デバイスがUSB通信機能を有すると判定するとき、発光素子38に点滅指令を出力する。EC31は、接続情報から送受電関係情報を抽出し、抽出した送受電関係情報に基づいて外部デバイスが負荷と電源のいずれの役割をもって機能するかを判定する。EC31は、外部デバイスが電源として機能する、即ち、自装置が外部デバイスに対する負荷として機能すると判定するとき、発光素子38に点滅指令を出力してもよい。EC31は、電源としての機能の判定に加え、PD対応なしとの判定が得られるときに、発光素子38に点滅指令を出力してもよい。ここで、EC31は、接続情報から抽出したPD対応情報に基づいてPD対応の有無を判定することができる。
発光素子38は、EC31から点滅指令が入力されるとき、点滅を開始する。
【0044】
また、EC31は、PDコントローラ40から離脱情報を待ち受ける。EC31は、離脱情報が入力されるとき外部デバイスがUSBアダプタ26から離脱したと判定する。EC31は、点滅指令を出力した外部デバイスが離脱したと判定するとき、発光素子38に消灯指令を出力する。発光素子38は、EC31から消灯指令が入力されるとき、点滅を停止し、消灯する。発光素子38には、点滅指令の入力から次の消灯指令までの点滅期間が指示される。発光素子38は、点滅期間において点灯期間と消灯期間が一定周期(例えば、200~1000ms、典型的には、300ms)で繰り返されるように設定されてもよい。発光素子38は、点灯期間において点灯し、消灯期間において消灯する。
【0045】
EC31は、キーボード32kから入力される操作信号を待ち受け、入力される操作信号が特定の操作を示すか否かを判定する。EC31は、特定の操作として、所定の複数のキーに対する操作を示すか否かを判定する。これらの複数のキーは、キーボード32kに備わるキー群の一部であり、個々のキーは、各々異なる文字を示す。
EC31は、特定の操作を示すと判定される都度、通信の要否判定を切り替える。EC31は、通信の要否判定を切り替える都度、その時点において判定されている通信の要否を示す制御信号を、リタイマー・信号切り替えスイッチ41に出力する。リタイマー・信号切り替えスイッチ41は、EC31から入力される制御信号で指示される通信の要否に従って、USB3信号線によるデータ伝送の可否を制御する。USB3信号線は、USB3.0、または、より後期の版のUSB規格(例えば、USB3.1)に従った通信に用いられる伝送路である。但し、電子機器1の動作開始時においては、SW26s3はデータ伝送否、即ち、通信否と設定しておく。
【0046】
EC31は、当該制御信号を、リタイマー・信号切り替えスイッチ41に出力する。リタイマー・信号切り替えスイッチ41は、EC31から入力される制御信号で指示される通信の要否に従って、USB2信号線によるデータ伝送の可否を制御する。USB2信号線は、USB2.0、または、より初期の版のUSB規格(例えば、USB1.1)に従った通信に用いられる伝送路を意味する。電子機器1の動作開始時においては、SW26s2はデータ伝送否、即ち、通信否と設定しておく。USB2信号線に対する制御を、PDコントローラ40を経由しないことで、USB2.0以前の版との互換性を確保することができる。但し、電子機器1の動作開始時において(初期設定)、リタイマー・信号切り替えスイッチ41はデータ伝送否、即ち、通信否と設定しておく。
【0047】
次に、発光素子38の配置例について説明する。
図3の例では、発光素子38の一例であるLED38pが、電子機器1の筐体の表面において電源ボタン36に隣接して配置されている。当該筐体の表面には、キーボード32kとタッチセンサ32tが配置されている。この配置により、LED38pの点滅が容易に視認されるので、ユーザは外部デバイスの接続状態を容易に把握することができる。また、キーボード32kの操作による通信状態の変更を動機付けることができる。
【0048】
また、筐体の前面左方には、さらにスライドスイッチ32sが配置されている。スイッチ32sは、無線機能のON/OFFを操作により突起部の位置に応じて切り替えるためのスイッチである。EC31は、無線機能ONと指示される場合、WLANカード25を動作させる。その場合、EC31は、リタイマー・信号切り替えスイッチ41に対し、USB2信号線ならびにUSB3信号線によるデータ伝送否と指示してもよい。
EC31は、無線機能OFFと指示される場合、WLANカード25の動作を停止させる。その場合、EC31は、リタイマー・信号切り替えスイッチ41に対し、USB2信号線ならびにUSB3信号線によるデータ伝送要と指示してもよい。
【0049】
図4の例では、発光素子38の他の例であるLED38dが、電子機器1の筐体の側面においてUSBコネクタ26cに隣接して設置されている。この配置によっても、USBコネクタ26cと関連付けてLED38pの点滅が容易に視認されるので、通信可能なUSBデバイスまたは負荷となるUSBデバイスの接続を把握することができる。
【0050】
携帯電話機などの既存の情報機器では、USB接続時におけるデータの入出力は、当該機器のプロセッサがOS上でアプリを実行して実現されてもよい。アプリの実行により、USBデバイスの発見、発見したUSBデバイスに対する操作画面の表示、操作の受け付け、受け付けた操作に応じたUSBデバイスとのデータの入出力などの機能が提供される。プロセッサは、OSからUSBデバイス専用のデバイスドライバを呼び出し、そのデバイスドライバの実行によりUSBデバイスの動作ならびにデータの入出力を制御する。
【0051】
これに対し、本実施形態に係る接続操作部1oは、
図5に例示されるように、電子機器1は信頼の基点となるハードウェア(HW RoT)としてEC31がファームウェアを実行し、キーボード32kと協働する。接続操作部1oの機能を得るために、OS、デバイスドライバおよびアプリの実行も、それ以外のハードウェアの利用も要しない。そして、通信可能な外部デバイスの接続が通知されたうえで、所定の操作に応じて当該外部デバイスとの通信の要否が制御される。よって、ユーザが無意識のうちに電子機器1が外部デバイスと接続することが回避される。そのため、USBコネクタ26cを経由した外部デバイスからの攻撃、データ伝送などのセキュリティリスクを低減することができる。
【0052】
なお、上記の説明では、外部デバイスの接続状態を示す通知情報の出力先とする出力デバイスとして発光素子38を用い、発光素子38を点滅させる場合を例示したが、これには限られない。EC31は、外部デバイスの接続状態を示す通知情報を含んだ表示画面を示す表示データを表示デバイス(例えば、ディスプレイ14)に出力し、表示画面を表示させてもよい。この場合、EC31は、SoC21、プロセッサ11およびビデオサブシステム13を経由せずに、ディスプレイ14と直接結線されてもよい。電源回路33は、ディスプレイ14に動作電力を供給する。通知情報を含む表示画面の表示に要する消費電力は、ビデオサブシステム13からの表示データに基づく表示画面の表示に要する消費電力よりも格段に少なくしてもよい。
【0053】
図6は、本実施形態に係る通知情報の表示例を示す図である。
図6(a)は、ユーザの住居において電子機器1に外部デバイスとしてUSB-Cモニタが接続されている状況における表示画面を例示する。かかる状況では、データ漏洩、不正操作などセキュリティリスクが比較的低く、外部デバイスとの通信が所望されることがある。
図6(b)は、公共空間において電子機器1に外部デバイスとしてUSBコネクタを経由してドッキングステーションが接続されている状況での表示画面を例示する。かかる状況では、セキュリティリスクが比較的高く、外部デバイスとの通信を断絶することが所望されることがある。図示されるUSB-Cモニタ、ドッキングステーションともに電源として機能し、USB通信機能を有する。そのため、EC31は、電源として機能する外部デバイスを示す通知情報としてバッテリの図形を表す表示画面を表示させている。表示画面は、バッテリの図形のうち、その時点におけるバッテリ34の残量に対応する大きさを有する領域を、その他の領域とは異なる態様(
図6の例では、色、輝度、等)で表す。EC31は、電源回路33により検出されたバッテリ34の起電力に対して、起電力に対する残量を与える所定の関数を用いて、残量を算出することができる。これにより、ユーザには電子機器1に給電可能な機器の接続と、その時点における残量が通知される。
【0054】
EC31は、キーボード32kから入力される操作信号を待ち受け、所定の複数のキー操作を示す操作信号を検出する都度、外部デバイスとの間で信号線を用いた通信の要否、即ちデータの入出力の有無を交互に切り替える。
図6(a)は、外部デバイスから給電されながらデータが送受信される状況を示し、
図6(b)は、外部デバイスから給電されるがデータの送受信が停止された状況を示す。ユーザは、利用環境を確認したうえで自身の意思のもとでの操作を行い、外部デバイスとの通信の要否を切り替えることができる。
【0055】
図7は、本実施形態に係る通知情報の他の表示例を示す図である。
図7の例では、USBアダプタ26に外部デバイスが装着されるときに表示される表示画面を表す。接続される外部デバイスはドッキングステーションである。ドッキングステーションは、電源として機能し、USB通信機能を有する。図示される通知画面にはUSBアダプタ26(USB-Cポート)へのデバイスの装着に応じて通信が遮断されている状態を示すメッセージ「USB-C:通信を遮断しました」および「USB-Cポートにデバイスが装着されました」を含む。また、通知画面には、通信の要否の切り替えを指示するための操作として、いずれかのファンクションキー「Fn」、文字キー「U」および「S」の組み合わせに対する操作を案内するための案内情報が含まれている。案内情報に接したユーザは、案内されたキー操作により通信の要否を切り替え可能であることを知得することができる。このようにキーボード32kに備わるキー群のうち、特定の複数の文字キーの組み合わせに対する押下には、ユーザの意思が反映され、他物体との接触による偶発的な押下と区別される。
【0056】
上記のようにEC31は、USBアダプタ26に接続された外部デバイスが有する機能に基づいて通知情報の出力の要否を判定する。次に、デバイス種類ごとの通知要否の例について説明する。
図8は、デバイス種類ごとの通知要否の例を示す表である。
図8は、デバイス種類、送受電関係情報、PD対応情報、通信機能情報および通知要否を各列に示す。通知可否は、外部デバイスの機能に依存する。
図8の例では、USB通信を可能するデバイスとして、モバイルモニタ、ドッキングステーション、および、USB-Cモニタに対して通知要とする。また、負荷として機能し、かつPD対応なし、とするデバイスに対しても通知要とする。通知がなされることで、ユーザに対して通信が遮断されていること、または、通信の可否を切り替え可能なことを気づかせることができる。EC31は、それ以外の種類のデバイスに対しては、通知否とする。通知否とするデバイスには、通信機能を有しないデバイス、通信機能を有していても通信によるセキュリティリスクが比較的高いデバイス、などが含まれうる。
【0057】
次に、本実施形態に係る通知制御の例について説明する。
図9は、本実施形態に係る通知制御の例を示すフローチャートである。
(ステップS102)EC31は、PDコントローラ40からの接続情報の入力を待ち受ける。EC31は、接続情報が入力されるとき(ステップS102 YES)、外部デバイスがUSBアダプタ26に接続されたと判定し、ステップS104の処理に進む。EC31は、接続情報が入力されないとき(ステップS102 NO)、外部デバイスがUSBアダプタ26に接続されないと判定し、ステップS110の処理に進む。
【0058】
(ステップS104)EC31は、PDコントローラ40から入力されるPD対応情報がPD対応を示すとき(ステップS104 YES)、ステップS106の処理に進む。
EC31は、PDコントローラ40から入力されるPD対応情報がPD非対応を示すとき(ステップS104 NO)、ステップS108の処理に進む。
(ステップS106)EC31は、PDコントローラ40から入力される通信機能情報がUSB通信機能有りを示すとき(ステップS106 YES)、ステップS114の処理に進む。
EC31は、通信機能情報がUSB通信機能なしを示すとき(ステップS106 NO)、ステップS112の処理に進む。
(ステップS108)EC31は、PDコントローラ40から入力される送受電関係情報が電源として機能するか否かを判定する。電源として機能すると判定する場合(ステップS108 YES)、ステップS116の処理に進む。電源として機能しないと判定する場合(ステップS108 NO)、ステップS118の処理に進む。
【0059】
(ステップS110)EC31は、外部デバイスが接続されないため(非接続)、通知否と判定する。その後、EC31は、出力デバイスに外部デバイスの接続状態を通知させ、
図9の処理を終了する。
(ステップS112)EC31は、USB通信機能を有しない外部デバイス(例えば、ACアダプタ、モバイルバッテリ、等)が接続されているため、通知否と判定する。その後、
図9の処理を終了する。
(ステップS114)EC31は、USB通信機能を有する外部デバイス(例えば、ドッキングステーション、モニタ、等)が接続されているため、通知要と判定する。その後、EC31は、出力デバイスに外部デバイスの接続状態を通知させ、
図9の処理を終了する。
(ステップS116)EC31は、電源として機能する非PD対応デバイス(例えば、非PD充電器)が接続されているため、通知否と判定する。その後、
図9の処理を終了する。
(ステップS118)EC31は、負荷として機能する非PD対応デバイス(例えば、バス給電非PDデバイス)が接続されているため、通知要と判定する。その後、EC31は、出力デバイスに外部デバイスの接続状態を通知させ、
図9の処理を終了する。
【0060】
なお、上記の説明では、USB通信機能を有する外部デバイスまたは電源として機能する外部デバイスがUSBアダプタ26に接続されているとき、EC31は発光素子38を点滅させる場合とディスプレイ14に表示画面を表示させる場合を例にした。USB通信機能を有する外部デバイスに対しては、EC31は、当該外部デバイスとの通信状態に応じて異なる態様で当該外部デバイスとの接続情報を出力デバイスに提示させてもよい。EC31は、例えば、当該外部デバイスとの通信状態に応じて異なる態様で発光素子38を点灯させてもよい。より具体的には、EC31は、当該外部デバイスと通信中である場合には、通信を断絶中である場合とは異なり、発光素子38を点滅させず、点灯を継続させてもよい。EC31は、当該外部デバイスと通信中である場合には、
図7に例示される表示画面において「通信を遮断しました」、「このデバイスが信頼できることを確認のうえで下記キー操作で通信を開始できます」とのメッセージに代え、通信中である旨のメッセージ「通信中です」と、通信の終了を案内するためのメッセージ「下記キー操作で通信を終了できます」を表示させてもよい。
【0061】
なお、電子機器1のホストシステムがアプリを実行し、ディスプレイ14に画面表示を実現できる場合がある。その場合、EC31は、当該アプリによる処理と連携し、外部デバイスとの接続状態を示す接続情報、接続状態の変更のための案内情報、などのいずれか、または、それらの組み合わせを示す表示画面を表示させてもよい。また、EC31は、アプリその他のソフトウェアを実行し、画面表示を実現できる出力デバイスに対しても、ホストシステムによるディスプレイ14に対する画面表示と同様に連携して、表示画面を表示させてもよい。
【0062】
EC31は、電源として機能する外部デバイスと、負荷として機能する外部デバイスとでも異なる態様で当該外部デバイスとの接続情報を表示させてもよい。EC31は、例えば、電源として機能する外部デバイスの接続時には発光素子38を橙色で点灯させ、負荷として機能する外部デバイスの接続時には発光素子38を緑色で点灯させてもよい。EC31は、例えば、電源として機能する外部デバイスの接続時には表示画面において、その旨を示すメッセージ「このデバイスから充電できます」を表示させてもよい。EC31は、負荷として機能する外部デバイスの接続時には表示画面において、その旨を示すメッセージとして、例えば「このデバイスからは充電できません」とのメッセージを表示させてもよい。
【0063】
上記の説明では、通信状態を変更するための入力デバイスに対する入力操作として、キーボード32kに備わるキー群のうち複数のキーに対するキー操作、スライドスイッチ32sの突起部に対するスライド操作を適用する場合を例にしたが、これには限られない。かかる入力操作として、例えば、タッチセンサ32tに対するスワイプ操作など、ユーザにより簡素になされ、偶発的な接触と容易に区別できる操作であれば適用可能である。スワイプ操作とは、検出面上の1点の位置に接触しながら、その位置を一定時間以上継続して所定の範囲内の速度で移動させる操作である。
また、外部デバイスとのデータおよび電力の伝送方式として、USB type-Cが適用される場合を主としたが、これには限られない。伝送方式としてUSB type-Cとは別個の標準規格が適用されてもよいし、いかなる標準規格にも準拠していなくてもよい。
【0064】
上記の説明では、電子機器1がノートブック型PCである場合を主としたが、これには限られない。電子機器1は、タブレット端末装置、携帯電話機など、その他の形態の情報機器として構成されてもよいし、計測器、音響装置、映像装置、補助記憶装置などの特定の機能を主機能として有する機器として構成されてもよい。
また、入力部32をなす入力デバイスと出力デバイスが電子機器1と一体に構成されている場合を例にしたが、これには限られない。入力デバイスと出力デバイスの一方または両方は、電子機器1の他の部分と着脱可能であってもよい。
【0065】
以上に説明したように、本実施形態に係る電子機器1は、コントローラ(例えば、EC31)と、伝送線路と接続可能なコネクタ(例えば、USBコネクタ26c)と、を備え、伝送線路は、電源線と信号線を有する。コントローラは、伝送線路を用いて接続される外部デバイスを検出し、外部デバイスとの通信を開始せず、外部デバイスが電力の供給元となる場合または通信可能な場合、外部デバイスとの接続を示す接続情報を出力デバイスに提示させる。
この構成によれば、電源線と信号線を有する伝送線路を用いて接続された外部デバイスと通信が行われない状態で、その接続を示す接続情報が出力デバイスにより提示される。そのため、伝送線路を用いた電子機器1への給電時または外部デバイスとの通信に先行して、電子機器1に備わるコンピュータシステムの動作に頼らずに、ハードウェア的に伝送線路を介したデータ伝送に伴うセキュリティリスクを電子機器1のユーザに喚起することができる。
【0066】
また、出力デバイスは、発光素子38を含み、コントローラは、外部デバイスを検出するとき、発光素子を点灯させてもよい。
この構成によれば、発光素子の点灯に接したユーザに対して外部デバイスの接続を通知することができる。
【0067】
また、外部デバイスが通信可能な場合、コントローラは、入力デバイスからの操作信号の入力に応じて、外部デバイスとの通信状態を変更してもよい。
この構成によれば、入力デバイスに対する操作により、接続された外部デバイスとの通信状態が変更可能となる。そのため、ユーザは、自身の操作に応じて外部デバイスとの通信の要否を選択することができる。
【0068】
また、出力デバイスは、表示デバイスを含み、コントローラは、外部デバイスを検出するとき、通信状態の変更に係る入力デバイスの操作方法を示す案内情報を表示デバイスに出力してもよい。
この構成によれば、表示デバイスに提示された案内情報により、接続された外部デバイスとの通信状態の変更に係る操作方法がユーザに案内される。そのため、外部デバイスとの通信の要否を操作により変更可能であり、変更するための手立てをユーザに知得させることができる。
【0069】
また、入力デバイスは、キーボード32kであり、操作方法は、所定の複数のキーの押下であってもよい。
この構成によれば、所定の複数のキーに対する押下操作に応じて、外部デバイスとの通信の要否が制御される。そのため、偶発的な押下による接続状態の変化を回避し、ユーザの意思に従って接続状態を変化させることができる。
【0070】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は上述の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。上述の実施形態において説明した各構成は、任意に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0071】
1…電子機器、1c…接続制御部、1o…接続操作部、11…プロセッサ、12…メインメモリ、13…ビデオサブシステム、14…ディスプレイ、21…SoC、22…BIOSメモリ、23…補助記憶装置、24…オーディオシステム、25…WLANカード、26…USBアダプタ、26c…USBコネクタ、26p、26s2、26s3…SW、31…EC、32…入力部、32k…キーボード、32t…タッチセンサ、32s…スライドスイッチ、33…電源回路、33d…DC/DC、34…バッテリ、36…電源ボタン、37…ACアダプタ、38…発光素子、38d、38p…LED、40…PDコントローラ、41…リタイマー・信号切り替えスイッチ
【要約】
【課題】給電時における予期しないセキュリティリスクを回避する。
【解決手段】コネクタは電源線と信号線を有する伝送線路と接続可能とし、コントローラは、伝送線路を用いて接続される外部デバイスを検出し、外部デバイスとの通信を開始せず、外部デバイスが電力の供給先となる場合または通信可能な場合、外部デバイスとの接続を示す接続情報を出力デバイスに提示させる。本実施形態は、電子機器と制御方法のいずれでも実現することができる。
【選択図】
図2