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特許7508548包絡線追跡システム、携帯デバイス、及び包絡線追跡の方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】包絡線追跡システム、携帯デバイス、及び包絡線追跡の方法
(51)【国際特許分類】
   H03F 1/02 20060101AFI20240624BHJP
   H03F 3/24 20060101ALI20240624BHJP
   H04B 1/04 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
H03F1/02 111
H03F3/24
H04B1/04 A
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022518988
(86)(22)【出願日】2020-09-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-29
(86)【国際出願番号】 US2020052329
(87)【国際公開番号】W WO2021061864
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2023-09-04
(31)【優先権主張番号】62/907,120
(32)【優先日】2019-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503031330
【氏名又は名称】スカイワークス ソリューションズ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SKYWORKS SOLUTIONS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】ドロギ、 セルジュ フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】バルテアヌ、 フロリネル ジー.
【審査官】工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2003/0146791(US,A1)
【文献】特表2015-533066(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F1/00-3/72
H04B1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
包絡線追跡システムであって、
無線周波数信号を増幅するべく構成される電力増幅器であって前記電力増幅器供給電圧端子ら電力を受けるべく構成される電力増幅器と、
前記無線周波数信号の包絡線に対応する包絡線信号に基づいて前記電力増幅器への供給電圧を生成するべく構成される包絡線追跡器と
を含み、
前記包絡線追跡器は、
複数の調節済み電圧を出力するべく構成されるDC/DC変換器と、
前記複数の調節済み電圧及び前記包絡線信号に基づいて変調器出力電圧を生成するべく構成される変調器と、
前記変調器出力電圧端子と前記電力増幅器供給電圧端子との間に接続される第1フィルタと、
前記DC/DC変換器の複数の電圧出力端子のうちのDC電圧出力端子と前記電力増幅器供給電圧端子との間に接続される第2フィルタと
を含む、包絡線追跡システム。
【請求項2】
前記DC/DC変換器はさらに、前記DC電圧出力端子においてDC電圧を生成するべく構成される、請求項1の包絡線追跡システム。
【請求項3】
前記複数の調節済み電圧はそれぞれが異なる電圧レベルを有する、請求項1の包絡線追跡システム。
【請求項4】
前記変調器は、それぞれが前記変調器出力電圧端子と前記複数の調節済み電圧のうちの対応する一つの調節済み電圧を出力する端子との間に接続される複数のスイッチを含む、請求項1の包絡線追跡システム。
【請求項5】
前記第1フィルタは、少なくとも一つの直列インダクタと、少なくとも一つのシャントキャパシタとを含む、請求項1の包絡線追跡システム。
【請求項6】
前記第1フィルタはさらに、前記変調器出力電圧端子と前記電力増幅器供給電圧端子との間に、前記少なくとも一つの直列インダクタと直列に接続されるDCブロックキャパシタを含む、請求項5の包絡線追跡システム。
【請求項7】
前記第2フィルタは、少なくとも一つの直列インダクタと、少なくとも一つのシャントキャパシタとを含む、請求項1の包絡線追跡システム。
【請求項8】
前記包絡線追跡器はさらに、前記第1フィルタを通るAC経路と前記第2フィルタを通るDC経路との間の相対的な遅延を制御するべく構成される制御可能遅延回路を含み、
前記AC経路は前記変調器の出力電圧端子と前記電力増幅器の供給電圧端子との間に形成され、
前記DC経路は前記DC電圧出力端子と前記電力増幅器の供給電圧端子との間に形成される、請求項1の包絡線追跡システム。
【請求項9】
前記制御可能遅延回路は、それぞれが前記複数の調節済み電圧のうちの対応する一つの調節済み電圧の遅延を制御するべく構成される複数の制御可能遅延バッファを含む、請求項8の包絡線追跡システム。
【請求項10】
前記第2フィルタを通るDC経路が、前記包絡線追跡器から前記電力増幅器の供給電圧端子に与えられるエネルギーの少なくとも75パーセントを搬送し、
前記DC経路は前記DC電圧出力端子と前記電力増幅器の供給電圧端子との間に形成される、請求項1の包絡線追跡システム。
【請求項11】
携帯デバイスであって、
無線周波数送信信号を生成するべく構成される送受信器と、
前記無線周波数送信信号を増幅するべく構成される電力増幅器を含むフロントエンド回路であって前記電力増幅器は前記電力増幅器供給電圧端子ら電力を受けるべく構成されるフロントエンド回路と、
前記無線周波数送信信号の包絡線に対応する包絡線信号に基づいて前記電力増幅器への供給電圧を生成するべく構成される包絡線追跡器を含む電力管理回路と
を含み、
前記包絡線追跡器は、
複数の調節済み電圧を出力するべく構成されるDC/DC変換器と、
前記複数の調節済み電圧及び前記包絡線信号に基づいて変調器出力電圧を生成するべく構成される変調器と、
前記変調器出力電圧端子と前記電力増幅器供給電圧端子との間に接続される第1フィルタと、
前記DC/DC変換器の複数の電圧出力端子のうちのDC電圧出力端子と前記電力増幅器供給電圧端子との間に接続される第2フィルタと
を含む、携帯デバイス。
【請求項12】
前記DC/DC変換器はさらに、前記DC電圧出力端子においてDC電圧を生成するべく構成される、請求項11の携帯デバイス。
【請求項13】
電池電圧を与える電池をさらに含み、
前記DC/DC変換器は、前記電池電圧のDC/DC変換を与えることに基づいて前記複数の調節済み電圧及び前記DC電圧出力端子におけるDC電圧を生成するべく構成される、請求項11の携帯デバイス。
【請求項14】
前記第1フィルタは、
少なくとも一つの直列インダクタと、
少なくとも一つのシャントキャパシタと、
前記変調器出力電圧端子と前記電力増幅器供給電圧端子との間に、前記少なくとも一つの直列インダクタと直列に接続されるDCブロックキャパシタと
を含む、請求項11の携帯デバイス。
【請求項15】
前記包絡線追跡器はさらに、前記第1フィルタを通るAC経路と前記第2フィルタを通るDC経路との間の相対的な遅延を制御するべく構成される制御可能遅延回路を含み、
前記AC経路は前記変調器の出力電圧端子と前記電力増幅器の供給電圧端子との間に形成され、
前記DC経路は前記DC電圧出力端子と前記電力増幅器の供給電圧端子との間に形成される、請求項11の携帯デバイス。
【請求項16】
前記制御可能遅延回路は、それぞれが前記複数の調節済み電圧のうちの対応する一つの調節済み電圧の遅延を制御するべく構成される複数の制御可能遅延バッファを含む、請求項15の携帯デバイス。
【請求項17】
包絡線追跡の方法であって、
電力増幅器を使用して無線周波数信号を増幅することと、
前記電力増幅器への供給電圧を使用して前記電力増幅器に電力を供給することと、
DC/DC変換器から複数の調節済み電圧を出力することと、
変調器を使用して、前記複数の調節済み電圧及び包絡線信号に基づいて変調器出力電圧を生成することであって、前記包絡線信号は前記無線周波数信号の包絡線に対応することと、
前記変調器出力電圧端子と前記電力増幅器供給電圧端子との間に存在する第1フィルタを使用して前記電力増幅器への供給電圧を制御することと、
前記DC/DC変換器の複数の電圧出力端子のうちのDC電圧出力端子と前記電力増幅器供給電圧端子との間に存在する第2フィルタを使用して前記電力増幅器への供給電圧を制御することと
を含む、方法。
【請求項18】
前記DC/DC変換器を使用して前記DC電圧出力端子においてDC電圧を生成することをさらに含む、請求項17の方法。
【請求項19】
前記第1フィルタの直列DCブロックキャパシタを使用して前記第1フィルタを通る低周波数電流がブロックされる、請求項17の方法。
【請求項20】
制御可能遅延回路を使用して、前記第1フィルタを通るAC経路と前記第2フィルタを通るDC経路との間の相対的な遅延を制御することをさらに含み、
前記AC経路は前記変調器の出力電圧端子と前記電力増幅器の供給電圧端子との間に形成され、
前記DC経路は前記DC電圧出力端子と前記電力増幅器の供給電圧端子との間に形成される、請求項17の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は電子システムに関し、詳しくは無線周波数(RF)電子機器のための電力増幅器に関する。
【背景技術】
【0002】
RF通信システムにおいて、アンテナを介した送信を目的としてRF信号を増幅するべく電力増幅器が使用される。電池寿命を延ばすべく及び/又は適切な送信電力レベルを与えるべく、RF信号送信の電力を管理することが重要である。
【0003】
一以上の電力増幅器を有するRF通信システムの例は、携帯電話機、タブレット、基地局、ネットワークアクセスポイント、顧客宅内機器(CPE)、ラップトップ、及びウェアラブル電子機器を含むがこれらに限られない。例えば、セルラー規格、無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)規格、及び/又は任意の他の適切な通信規格を使用して通信する無線デバイスにおいては、RF信号増幅を目的として電力増幅器を使用することができる。RF信号は、例えば周波数レンジ1(FR1)における第5世代(5G)通信のための約410MHz~約7.125GHzの範囲のような、約30kHz~300GHzの範囲にある周波数を有し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2012/0269240号明細書
【文献】米国特許出願公開第2013/0207731号明細書
【発明の概要】
【0005】
所定の実施形態において、本開示は、無線周波数信号を増幅するべくかつ電力増幅器供給電圧からの電力を受けるべく構成される電力増幅器と、当該無線周波数信号の包絡線に対応する包絡線信号に基づいて当該電力増幅器供給電圧を生成するべく構成される包絡線追跡器とを含む包絡線追跡システムに関する。包絡線追跡器は、複数の調節済み電圧を出力するべく構成されるDC/DC変換器と、当該複数の調節済み電圧及び当該包絡線信号に基づいて変調器出力電圧を生成するべく構成される変調器と、当該変調器出力電圧と当該電力増幅器供給電圧との間に結合される第1フィルタと、DC電圧と電力増幅器供給電圧との間に結合される第2フィルタとを含む。
【0006】
様々な実施形態において、DC/DC変換器はさらに、当該DC電圧を生成するべく構成される。一定数の実施形態によれば、DC/DC変換器は、当該複数の調節済み電圧のいずれに対しても異なるパルス幅変調器シーケンスを有するDC電圧を生成するべく構成される。
【0007】
いくつかの実施形態において、DC/DC変換器は、電池電圧を受けるべく、かつ、当該電池電圧のDC/DC変換を与えることに基づいて複数の調節済み電圧及びDC電圧を生成するべく、構成される。
【0008】
いくつかの実施形態において、当該複数の調節済み電圧はそれぞれが、異なる電圧レベルを有する。
【0009】
様々な実施形態において、包絡線追跡器はさらに、グランドと複数の調節済み電圧のうち対応する一つとの間に結合される複数のデカップリングキャパシタを含む。
【0010】
いくつかの実施形態において、変調器は、それぞれが変調器出力電圧と当該複数の調節済み電圧の対応調節済み電圧との間に結合される複数のスイッチを含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、第1フィルタは、少なくとも一つの直列インダクタ及び少なくとも一つのシャントキャパシタを含む。一定数の実施形態によれば、第1フィルタはさらに、変調器出力電圧と電力増幅器供給電圧との間に直列されるDCブロックキャパシタを含む。
【0012】
様々な実施形態において、第2フィルタは、少なくとも一つの直列インダクタ及び少なくとも一つのシャントキャパシタを含む。
【0013】
いくつかの実施形態において、包絡線追跡器はさらに、第1フィルタを通るAC経路と第2フィルタを通るDC経路との間の相対的な遅延を制御するべく構成される制御可能遅延回路を含む。一定数の実施形態によれば、制御可能遅延回路は、それぞれが当該複数の調節済み電圧の各調節済み電圧の遅延を制御するべく構成される複数の制御可能遅延バッファを含む。
【0014】
様々な実施形態において、第2フィルタを通るDC経路が、包絡線追跡器から電力増幅器に与えられるエネルギーの少なくとも75パーセントを搬送する。
【0015】
所定の実施形態において、本開示は包絡線追跡器に関する。包絡線追跡器は、電力増幅器供給電圧を出力するべく構成される電力増幅器供給電圧端子と、電池電圧を調節することに基づいて複数の調節済み電圧を出力するべく構成されるDC/DC変換器と、当該複数の調節済み電圧及び包絡線信号に基づいて変調器出力電圧を生成するべく構成される変調器と、当該変調器出力電圧と当該電力増幅器供給電圧との間に結合されるAC経路フィルタと、DC電圧と当該電力増幅器供給電圧との間に結合されるDC経路フィルタとを含む。
【0016】
いくつかの実施形態において、DC/DC変換器はさらに、当該DC電圧を生成するべく構成される。一定数の実施形態によれば、DC/DC変換器は、当該複数の調節済み電圧のいずれに対しても異なるパルス幅変調器シーケンスを有するDC電圧を生成するべく構成される。
【0017】
いくつかの実施形態において、DC/DC変換器は、電池電圧を受けるべく、かつ、当該電池電圧のDC/DC変換を与えることに基づいて複数の調節済み電圧及びDC電圧を生成するべく、構成される。
【0018】
様々な実施形態において、複数の調節済み電圧はそれぞれが、異なる電圧レベルを有する。
【0019】
いくつかの実施形態において、包絡線追跡器はさらに、グランドと複数の調節済み電圧の対応調節済み電圧との間に結合される複数のデカップリングキャパシタを含む。
【0020】
いくつかの実施形態において、変調器は、それぞれが変調器出力電圧と当該複数の調節済み電圧の対応調節済み電圧との間に結合される複数のスイッチを含む。
【0021】
様々な実施形態において、AC経路フィルタは、少なくとも一つの直列インダクタ及び少なくとも一つのシャントキャパシタを含む。一定数の実施形態によれば、AC経路フィルタはさらに、変調器出力電圧と電力増幅器供給電圧との間に直列されるDCブロックキャパシタを含む。
【0022】
いくつかの実施形態において、DC経路フィルタは、少なくとも一つの直列インダクタ、及び少なくとも一つのシャントキャパシタを含む。
【0023】
様々な実施形態において、包絡線追跡器はさらに、第1フィルタを通るAC経路と第2フィルタを通るDC経路との間の相対的な遅延を制御するべく構成される制御可能遅延回路を含む。一定数の実施形態によれば、制御可能遅延回路は、それぞれが当該複数の調節済み電圧の各調節済み電圧の遅延を制御するべく構成される複数の制御可能遅延バッファを含む。
【0024】
いくつかの実施形態において、DC経路フィルタは、包絡線追跡器から電力増幅器供給電圧端子に与えられるエネルギーの少なくとも75パーセントを搬送する。
【0025】
所定の実施形態において、本開示は携帯デバイスに関する。携帯デバイスは、無線周波数送信信号を生成するべく構成される送受信器と、当該無線周波数送信信号を増幅して電力増幅器供給電圧から電力を受けるべく構成される電力増幅器を含むフロントエンド回路と、当該無線周波数送信信号の包絡線に対応する包絡線信号に基づいて電力増幅器供給電圧を生成するべく構成される包絡線追跡器を含む電力管理回路とを含む。包絡線追跡器は、複数の調節済み電圧を出力するべく構成されるDC/DC変換器と、当該複数の調節済み電圧及び当該包絡線信号に基づいて変調器出力電圧を生成するべく構成される変調器と、当該変調器出力電圧と当該電力増幅器供給電圧との間に結合される第1フィルタと、DC電圧と電力増幅器供給電圧との間に結合される第2フィルタとを含む。
【0026】
いくつかの実施形態において、DC/DC変換器はさらに、当該DC電圧を生成するべく構成される。一定数の実施形態によれば、DC/DC変換器は、当該複数の調節済み電圧のいずれに対しても異なるパルス幅変調器シーケンスを有するDC電圧を生成するべく構成される。
【0027】
いくつかの実施形態において、携帯デバイスはさらに、電池電圧を与える電池を含み、DC/DC変換器は、当該電池電圧のDC/DC変換を与えることに基づいて複数の調節済み電圧とDC電圧とを生成するように構成される。
【0028】
いくつかの実施形態において、当該複数の調節済み電圧はそれぞれが、異なる電圧レベルを有する。
【0029】
様々な実施形態において、包絡線追跡器はさらに、グランドと複数の調節済み電圧のうち対応する一つとの間に結合される複数のデカップリングキャパシタを含む。
【0030】
いくつかの実施形態において、変調器は、それぞれが変調器出力電圧と当該複数の調節済み電圧の対応調節済み電圧との間に結合される複数のスイッチを含む。
【0031】
いくつかの実施形態において、第1フィルタは、少なくとも一つの直列インダクタ及び少なくとも一つのシャントキャパシタを含む。一定数の実施形態によれば、第1フィルタはさらに、変調器出力電圧と電力増幅器供給電圧との間に直列されるDCブロックキャパシタを含む。
【0032】
いくつかの実施形態において、第2フィルタは、少なくとも一つの直列インダクタ、及び少なくとも一つのシャントキャパシタを含む。
【0033】
様々な実施形態において、包絡線追跡器はさらに、第1フィルタを通るAC経路と第2フィルタを通るDC経路との間の相対的な遅延を制御するべく構成される制御可能遅延回路を含む。一定数の実施形態によれば、制御可能遅延回路は、それぞれが当該複数の調節済み電圧の各調節済み電圧の遅延を制御するべく構成される複数の制御可能遅延バッファを含む。
【0034】
いくつかの実施形態において、第2フィルタを通るDC経路が、包絡線追跡器から電力増幅器に与えられるエネルギーの少なくとも75パーセントを搬送する。
【0035】
所定の実施形態において、本開示は包絡線追跡の方法に関する。方法は、電力増幅器を使用して無線周波数信号を増幅することと、電力増幅器供給電圧を使用して電力を当該電力増幅器に供給することと、DC/DC変換器から複数の調節済み電圧を出力することと、変調器を使用して当該複数の調節済み電圧及び包絡線信号に基づく変調器出力電圧を生成することとを含み、当該包絡線信号は、当該無線周波数信号の包絡線に対応する。方法はさらに、変調器出力電圧と電力増幅器供給電圧との間に存在する第1フィルタを使用して当該電力増幅器供給電圧を制御することと、DC電圧と当該電力増幅器供給電圧との間に存在する第2フィルタを使用して当該電力増幅器供給電圧を制御することとを含む。
【0036】
いくつかの実施形態において、方法はさらに、DC/DC変換器を使用してDC電圧を生成することを含む。一定数の実施形態によれば、方法はさらに、複数の調節済み電圧のそれぞれに対して異なるパルス幅変調器シーケンスを有するDC電圧を生成することを含む。
【0037】
様々な実施形態において、方法はさらに、電池電圧のDC/DC変換を与えることに基づいて複数の調節済み電圧及びDC電圧を生成することを含む。
【0038】
いくつかの実施形態において、当該複数の調節済み電圧はそれぞれが、異なる電圧レベルを有する。
【0039】
いくつかの実施形態において、方法はさらに、第1フィルタの直列DCブロックキャパシタを使用してDCブロックを与えることを含む。
【0040】
様々な実施形態において、方法はさらに、第1フィルタを通るAC経路と第2フィルタを通るDC経路との間の相対的な遅延を、制御可能遅延回路を使用して制御することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】一実施形態に係る携帯デバイスの模式的な図である。
図2】一実施形態の、電力増幅器のための包絡線追跡システムの模式的な図である。
図3A】他実施形態の、電力増幅器のための包絡線追跡システムの模式的な図である。
図3B】他実施形態の、電力増幅器のための包絡線追跡システムの模式的な図である。
図3C】他実施形態の、電力増幅器のための包絡線追跡システムの模式的な図である。
図3D】他実施形態の、電力増幅器のための包絡線追跡システムの模式的な図である。
図4】効率対出力電力のグラフである。
図5】他実施形態の、電力増幅器のための包絡線追跡システムの模式的な図である。
図6】他実施形態の、電力増幅器のための包絡線追跡システムの模式的な図である。
図7】他実施形態に係る携帯デバイスの模式的な図である。
図8】無線周波数(RF)信号を送信する通信システムの一実施形態の模式的な図である。
図9】一実施形態に係るマルチレベル供給(MLS)変調システムの模式的な図である。
図10】一実施形態に係るMLSDC/DC変換器の模式的な図である。
図11】MLSDC/DC変換のためのタイミングの一例の模式的な図である。
図12】連続波信号のためのMLS包絡線追跡の一例の模式的な図である。
図13】様々な信号波形の包絡線周波数分布の一例の模式的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
所定の実施形態の以下の詳細な説明は、特定の実施形態の様々な記載を提示する。しかしながら、ここに記載されるイノベーションは、例えば特許請求の範囲により画定かつカバーされる数多くの異なる態様で具体化することができる。本明細書において、同じ参照番号が同一の又は機能的に同様の要素を示す図面が参照される。理解されることだが、図面に示される要素は必ずしも縮尺どおりとは限らない。さらに理解されることだが、所定の実施形態は、図面に示されるよりも多くの要素、及び/又は図面に示される要素の部分集合を含み得る。さらに、いくつかの実施形態は、2つ以上の図面からの特徴の任意の適切な組み合わせも含み得る。
【0043】
包絡線追跡は、電力増幅器の電力付加効率(PAE)を、当該電力増幅器が増幅する無線周波数(RF)信号の包絡線に関連して電力増幅器供給電圧の電圧レベルを効率的に制御することによって、増加させるべく使用することができる技法である。すなわち、RF信号の包絡線が増加すると、電力増幅器へ供給される電圧も増加し得る。同様に、RF信号の包絡線が減少すると、電力増幅器へ供給される電圧も減少して消費電力が低下する。
【0044】
マルチレベル包絡線追跡器が、異なる電圧レベルの2以上の調節済み電圧を生成するマルチレベル供給(MLS)DC/DC変換器と、当該調節済み電圧から選択された選択調節済み電圧を出力するMLS変調器と、MLS変調器の出力をフィルタリングして電力増幅器のための電力増幅器供給電圧を生成するフィルタとを含み得る。
【0045】
マルチレベル包絡線追跡器は、電力増幅器供給電圧のためのDC電流及びAC電流の双方がMLS変調器及び/又は共通フィルタのスイッチを通って循環するときに効率劣化を被ることがある。例えば、当該変調器のスイッチ及び/又は当該フィルタのインダクタのDC抵抗に電力損失が生じる。
【0046】
スイッチのDC抵抗は低くなる(例えば電力増幅器のDC負荷のわずかなパーセンテージとなる)ように実装することができるにもかかわらず、この態様でスイッチを実装することにより、相対的に大きなレイアウト及び/又は有意なスイッチング損失がもたらされる。例えば、所望のソースインピーダンスが約0.2オームのとき、MLS変調器のスイッチは、0.2オーム未満のオン状態抵抗を達成するように制約を受ける。これにより、相対的に大きなスイッチレイアウトがもたらされる。
【0047】
別個のDC経路及びAC経路を備えたマルチレベル包絡線追跡システムが与えられる。所定の実施形態において、電力増幅器のための電力増幅器供給電圧を生成する包絡線追跡システムが与えられる。包絡線追跡システムは、多数の調節済み電圧を出力するMLSDC/DC変換器と、電力増幅器により増幅されたRF信号の包絡線に対応する包絡線信号に基づいて当該調節済み電圧の選択を経時的に制御するMLS変調器と、当該MLS変調器の出力と当該電力増幅器供給電圧との間に結合されるAC経路フィルタと、DC電圧と当該電力増幅器供給電圧との間に結合されるDC経路フィルタとを含む。
【0048】
DC経路フィルタを通るDC経路とAC経路フィルタを通る別個のAC経路とを含むことにより、包絡線追跡システムの効率の向上を達成することができる。例えば、DC電流のような低周波数電流がDC経路フィルタを通して(例えばフィルタインダクタを介して)与えられるので、変調器のスイッチのサイズ及び/又はDC抵抗の制約を緩和することができる。したがって、AC経路における低いスイッチング損失を達成することができるので、全体的なシステム効率を高めることができる。一例において、DC経路は、包絡線追跡システムが電力増幅器に与えるエネルギーの少なくとも75%を搬送する。
【0049】
高速包絡線信号が、DCを中心とするエネルギー含量を有し得るので、DC経路は、低周波数エネルギー含量のための高効率な経路を与えることができる。さらに、DC経路フィルタは、当該フィルタのインダクタがDC飽和なしで動作できることから相対的に小さなコンポーネントサイズを有し得る。一例において、DC経路フィルタは、AC経路フィルタのサイズの約半分未満で実装される。所定の実装例において、AC経路フィルタは、AC経路フィルタを通るDC電流をブロックするのに役立つ直列DCブロックキャパシタを含む。
【0050】
所定の実装例において、DC電圧は、DC/DC変換器からの調整済み電圧である。例えば、MLSDC/DC変換器は、DC電圧の生成にも使用することができる。かかる実装例において、DC電圧の電圧レベルは、MLS変調器に与えられる複数の調整済み電圧のうちの一つの電圧レベルと同じであっても異なっていてもよい。
【0051】
図1は、一実施形態に係る携帯デバイス70の模式的な図である。携帯デバイス70は、一次アンテナ1、ダイバーシティアンテナ2、一次アンテナチューニング回路3、ダイバーシティアンテナチューニング回路4、双極双投(DPDT)アンテナダイバーシティスイッチ5、一次フロントエンドモジュール6、ダイバーシティフロントエンドモジュール7、電池8、マルチレベル供給(MLS)包絡線追跡器9、送受信器10、ベース帯域モデム11、及びアプリケーションプロセッサ12を含む。
【0052】
携帯デバイスの一実施形態が示されるにもかかわらず、ここでの教示は、多種多様な態様で実装される携帯デバイスに適用可能である。したがって、他の実装例も可能である。
【0053】
図示の実施形態において、一次フロントエンドモジュール6は、第1電力増幅器21、第2電力増幅器22、第3電力増幅器23、第4電力増幅器24、第1低雑音増幅器31、第2低雑音増幅器32、第3低雑音増幅器33、ダイプレクサ42、送信/受信帯域スイッチ41、送信フィルタ43、第1デュプレクサ45、第2デュプレクサ46、第3デュプレクサ47、第1受信フィルタ51、第2受信フィルタ52、第3受信フィルタ53、第1方向性結合器59、及び第2方向性結合器60を含む。付加的に、ダイバーシティフロントエンドモジュール7は、第1低雑音増幅器35、第2低雑音増幅器36、第1受信フィルタ55、第2受信フィルタ56、第1受信帯域選択スイッチ61、及び第2受信帯域選択スイッチ62を含む。
【0054】
フロントエンド回路の一実施形態が示されるにもかかわらず、フロントエンド回路の他の実装例も可能である。例えば、フロントエンド回路は、一以上のアンテナから送信及び/又は受信されるRF信号の処理のための電力増幅器(PA)、低雑音増幅器(LNA)、フィルタ、スイッチ、位相シフタ、デュプレクサ、及び/又は他の適切な回路を含んでよい。フロントエンドの機能の例は、送信のための信号増幅、受信信号増幅、信号フィルタリング、異なる帯域間のスイッチング、異なる電力モード間のスイッチング、送信モード及び受信モード間のスイッチング、信号のデュプレクシング、信号のマルチプレクシング(例えばダイプレクシング又はトライプレクシング)、又はこれらの何らかの組み合わせを含むがこれらに限られない。
【0055】
したがって、一次フロントエンドモジュール、ダイバーシティ受信フロントエンドモジュール、アンテナ選択、及び/又はアンテナチューニングの他の実装例も使用してよい。
【0056】
図1に示されるように、MLS包絡線追跡器9は、携帯デバイス70において電力増幅器が無線送信目的でRF信号を増幅するための、一以上の電力増幅器供給電圧を生成するべく使用される。図示の実施形態において、MLS包絡線追跡器9は、電池8から電池電圧VBATTを受け、第1電力増幅器21のための第1電力増幅器供給電圧VPA1、及び第1電力増幅器22のための第2電力増幅器供給電圧VPA2を生成する。MLS包絡線追跡器9が2つの電力増幅器供給電圧を生成する一例が示されるにもかかわらず、MLS包絡線追跡器9は、これよりも多い又は少ない電力増幅器供給電圧を生成してよい。
【0057】
MLS包絡線追跡器9は、第1電力増幅器21が増幅する第1RF信号の包絡線を追跡するべく第1電力増幅器供給電圧VPA1を制御する。付加的に、MLS包絡線追跡器9は、第2電力増幅器22が増幅する第2RF信号の包絡線を追跡するべく第2電力増幅器供給電圧VPA2を制御する。所定の実装例において、MLS包絡線追跡器9は、ベース帯域モデム11から一以上の包絡線信号を受信する。例えば、MLS包絡線追跡器9は、第1RF信号の包絡線を示す第1包絡線信号と、第2RF信号の包絡線を示す第2包絡線信号とを受信することができる。
【0058】
電池8は、携帯デバイス70における使用のための、例えばリチウムイオン電池を含む任意の適切な電池としてよい。電池電圧VBATTは、MLS包絡線追跡器9のDC/DC変換器によって調節され、ここでの教示に係るマルチレベル包絡線追跡のために使用される調節済み電圧が生成される。
【0059】
送受信器10は、送信のためのRF信号を生成し、一次アンテナ1及びダイバーシティアンテナ2から受信した入来RF信号を処理する。理解されることだが、RF信号の送信及び受信に関連付けられる様々な機能は、図1においてまとめて送受信器10として代表される一以上のコンポーネントによって達成することができる。一例において、所定タイプのRF信号を取り扱うべく別個のコンポーネント(例えば別個の回路又はダイ)を設けてもよい。
【0060】
ベース帯域モデム11は、送受信器10に、送信のためのRF信号を生成するべく送受信器10が処理する送信信号のデジタル表現を与える。ベース帯域モデム11もまた、送受信器10が与える受信信号のデジタル表現を処理する。
【0061】
図1に示されるように、ベース帯域モデム11は、携帯デバイス70における一次アプリケーション処理を与える役割を果たすアプリケーションプロセッサ12に結合される。アプリケーションプロセッサ12は、メモリ管理、グラフ処理、及び/又はマルチメディアデコーディングを含むがこれらに限られないアプリケーションをサポートするのに適切なシステム能力を与えることのような、多種多様な機能を与えることができる。
【0062】
携帯デバイス70が、マルチレベル包絡線追跡器のRFシステムの一例を示すにもかかわらず、ここでの教示に従って実装される一以上のマルチレベル包絡線追跡器を、多種多様なRFシステムに含めることができる。
【0063】
図2図3C図5及び図6は、電力増幅器のための包絡線追跡システムの様々な実施形態の模式的な図を描く。しかしながら、ここでの教示は、多種多様な態様で実装される包絡線追跡器に適用可能である。したがって、他の実装例も可能である。
【0064】
図2は、一実施形態の、電力増幅器71のための包絡線追跡システム100の模式的な図である。包絡線追跡システム100は、MLSDC/DC変換器72、DC経路フィルタ73、MLS変調器81、及びAC経路フィルタ91を含む。MLSDC/DC変換器72は、スイッチングレギュレータとも称する。
【0065】
電力増幅器71は、RF入力信号RFINを増幅してRF出力信号RFOUTを生成する。MLS変調器81は、RF入力信号RFINの包絡線に関連して変化する包絡線信号(ENVELOPE)を受信する。包絡線信号はアナログ又はデジタルとしてよい。
【0066】
図示の実施形態において、MLSDC/DC変換器72は、電池電圧VBATTを受け、異なる電圧レベルの様々な調節済み電圧VMLSa、VMLSb、VMLSc、…VMLSnを生成するDC/DC変換を与える。一例に4つのMLS電圧が描かれるにもかかわらず、MLSDC/DC変換器72は、省略記号により示されるように、これよりも多い又は少ないMLS電圧を生成してよい。この実施形態において、MLSDC/DC変換器72はまた、電池電圧VBATTを調節することによってDC電圧VDCも生成する。DC電圧VDCは、調節済み電圧VMLSa、VMLSb、VMLSc、…VMLSnのうちの一つの電圧レベルと同じであっても異なっていてもよい。
【0067】
MLS変調器81は、調節済み電圧VMLSa、VMLSb、VMLSc、…VMLSn及び包絡線信号を受信し、変調器出力電圧をAC経路フィルタ91に出力する。所定の実装例において、MLS変調器81は、包絡線信号に基づき経時的に適切な調節電圧を選択することに基づいて出力電圧を制御する。例えば、MLS変調器81は、包絡線信号の値に基づいて、調節済み電圧VMLSa、VMLSb、VMLSc、…VMLSnのうちの一つを変調器の出力に選択的に接続するスイッチのバンクを含み得る。
【0068】
DC経路フィルタ73及びAC経路フィルタ91はそれぞれが、MLSDC/DC変換器72からのDC電圧VDC及びMLS変調器81の出力をフィルタリングすることによって、電力増幅器71のための電力増幅器供給電圧VPAを生成する。
【0069】
DC経路フィルタ73を通るDC経路とAC経路フィルタ91を通るAC経路とを含むことにより、包絡線追跡システム100の効率向上を達成することができる。例えば、低周波数電流(DC電流を含むがこれに限られない)がDC経路フィルタ73と通して与えられるので、MLS変調器のスイッチのサイズ及び/又はDC抵抗の制約を緩和することができる。
【0070】
したがって、AC経路における低いスイッチング損失を達成することができるので、全体的なシステム効率を高めることができる。一例において、DC経路は、包絡線追跡システム100が電力増幅器71に与えるエネルギーの少なくとも75%を搬送する。
【0071】
図3Aは、他実施形態の、電力増幅器101のための包絡線追跡システム140の模式的な図である。包絡線追跡システム140は、包絡線追跡集積回路(IC)102と、DC経路フィルタ103と、AC経路フィルタ104と、DAC回路105と、包絡線フィルタ106と、第1デカップリングキャパシタ111~第4デカップリングキャパシタ114それぞれと、インダクタ117とを含む。
【0072】
一実施形態の包絡線追跡システムが図3Aに示されるにもかかわらず、ここでの教示は、多種多様な態様で実装される包絡線追跡システムに適用可能である。したがって、他の実装例も可能である。
【0073】
図示の実施形態において、包絡線追跡IC102は、MLSスイッチング回路121と、デジタル制御回路122と、ベース帯域MLS変調器123と、変調器制御回路124とを含む。図3Aの包絡線追跡IC102は、例えば電池電圧(VBATT)の受信、シリアルペリフェラルインタフェイス(SPI)を経由した通信、DC電圧VDCの出力、包絡線信号(ENVELOPE)の受信、デカップリングキャパシタ111~114への接続、及びインダクタ117への接続のような、様々な機能を与えるための様々なピン又はパッドとともに描かれる。包絡線追跡ICはまた、ここでは包絡線追跡半導体ダイ又はチップとも称する。
【0074】
MLSスイッチング回路121は、電圧調節を与えるべくインダクタ117を通る電流を制御する。例えば、MLSスイッチング回路121はスイッチ及びコントローラを含み、このコントローラは、(パルス幅変調を含むがこれに限られない)任意の適切な調節スキームを使用してこのスイッチをオン及びオフにしてDC/DC変換を与える。図示の実施形態において、MLSスイッチング回路121は、異なる電圧レベルにある4つの調節済みMLS電圧と一の調節済みDC電圧VDCとを出力する。しかしながら、MLSスイッチング回路121は、これよりも多い又は少ない調節済み電圧を出力するように実装してもよい。
【0075】
図3Aに示されるように、MLSスイッチング回路121は、デジタル制御回路122によって制御される。デジタル制御回路122は、MLSスイッチング回路121により出力される一以上の調節済み電圧の電圧レベル制御を含むがこれに限られないプログラミング可能性をMLSスイッチング回路121に与える。図3Aに示されるように、デジタル制御回路122はSPIバスに結合される。所定の実装例において、デジタル制御回路122は、SPIバス及び/又は他のチップインタフェイスを経由して受信されたデータに基づいてMLSスイッチング回路121を制御する。
【0076】
MLSスイッチング回路121はまた、変調器制御回路124によって制御され得る。一例において、調節済みDC電圧VDCは、少なくとも部分的に変調器制御回路124によって制御される。
【0077】
ベース帯域MLS変調器123は、AC経路フィルタ104を通して電力増幅器供給電圧VPAに結合される出力部を含む。所定の実装例において、ベース帯域MLS変調器123は、各調節済みMLS電圧とAC経路フィルタ104との間に結合されるスイッチを含む。付加的に、変調器のスイッチは、包絡線信号に基づいて変調器コントローラ124によって選択的に開閉される。
【0078】
図示の実施形態において、DC経路フィルタ103は、シャントキャパシタ127及び直列インダクタ128を含む。付加的に、AC経路フィルタ104は、第1直列インダクタ131、第2直列インダクタ132、第1シャントキャパシタ135、及び第2シャントキャパシタ136を含む。DC経路フィルタ及びAC経路フィルタの実装例が図3Aに描かれるにもかかわらず、ここでの教示は、多種多様な態様で実装されるDC経路フィルタ及びAC経路フィルタにも適用可能である。したがって、他の実装例のフィルタも、ここでの教示に従って使用することができる。
【0079】
所定の実装例において、フィルタの一以上のコンポーネントは、柔軟性及び/又は制御性を高めるように制御可能である(例えばデジタルプログラム可能であり及び/又はアナログチューニングされる)。例えば、図示の実施形態において、第1シャントキャパシタ135及び第2シャントキャパシタ136が制御可能である。制御可能フィルタコンポーネントの2つの例が示されるにもかかわらず、他のフィルタコンポーネントを制御可能となるように付加的又は代替的に実装してよい。
【0080】
図3Bは、他実施形態の、電力増幅器101のための包絡線追跡システム150の模式的な図である。図3Bの包絡線追跡システム150は図3Aの包絡線追跡システム140と同様であるが、包絡線追跡システム150が、AC経路フィルタ144の異なる実装例を含む点で異なる。
【0081】
例えば、図3AのAC経路フィルタ104と比較すると、図3BのAC経路フィルタ144はさらに、AC経路フィルタ144を通る低周波数電流をブロックするDCブロックキャパシタ138を含む。図示の実施形態において、DCブロックキャパシタ138は、AC経路フィルタ144の出力部に結合される。
【0082】
DCブロックキャパシタ138を含めることにより、AC経路における低いスイッチング損失を達成することができるので、全体的なシステム効率を高めることができる。例えば、DCブロックキャパシタ138は、AC経路フィルタ144を通ってAC経路により搬送されるエネルギーに対するDC経路フィルタ103を通ってDC経路により搬送されるエネルギーのパーセンテージの増加に役立つ。一例において、DC経路は、DC経路フィルタ103a包絡線追跡システム150が与えるエネルギーの少なくとも75%を電力増幅器101に搬送する。
【0083】
図3Cは、他実施形態の、電力増幅器101のための包絡線追跡システム160の模式的な図である。図3Cの包絡線追跡システム160は図3Bの包絡線追跡システム150と同様であるが、包絡線追跡システム160が、AC経路フィルタ154の異なる実装例を含む点で異なる。
【0084】
例えば、図3BのAC経路フィルタ144と比較すると、図3CのAC経路フィルタ154が、フィルタの入力部に結合されるDCブロックキャパシタ138を含む。DCブロックキャパシタは、AC経路フィルタにおいて多種多様な箇所に、例えば入力部に、出力部に、又は入力部と出力部との間の信号経路に沿うように、含めてよい。
【0085】
図3Dは、他実施形態の、電力増幅器101のための包絡線追跡システム170の模式的な図である。図3Dの包絡線追跡システム170は図3Aの包絡線追跡システム140と同様であるが、包絡線追跡システム170が、2つのMLS調節済み電圧で動作する包絡線追跡IC102を含む点で異なる。付加的に、デカップリングキャパシタ113及び114は、MLS調節済み電圧が少数であることに鑑み、省略されている。
【0086】
図3Dの包絡線追跡システム170は、複雑性が低下しているという利点を有する。さらに、包絡線追跡システム170は、高帯域幅変調に適切となり得るシンボル追跡によるシンボルを使用するアプリケーションに十分に適している。例えば、シンボル追跡によるシンボルを使用する場合、2つのMLS電圧をプログラムしてシンボルレート(例えば16μs)で連続して使用することができる。すなわち、MLS変調器123は、電力増幅器供給電圧を生成するために使用される電圧を、新たな電圧保持キャパシタへとスイッチングすることによって変化させることができる。
【0087】
シンボル追跡によるシンボルを使用する場合、使用されるフィルタリングを少なくすることができるが、それでもAC/DC分割によれば、有益なことに、直列スイッチの必要性が回避される。
【0088】
図4は、効率対出力電力のグラフである。グラフは、異なるシミュレーションに対する電力増幅器と包絡線追跡器との組み合わせの効率対出力電力の3つのプロットを含む。例えば、第1プロット171は、DC経路に0.1オームのスイッチ抵抗が含まれるシミュレーションに対応し、LTE効率の第2プロット172、DC経路に1.0オームのスイッチ抵抗が含まれる第3プロット173である。別個のAC経路及びDC経路を与えることによって低いDC経路抵抗を達成することができるので、効率の向上もまた実現され得る。
【0089】
包絡線追跡システムのシミュレーション結果の特定例が図4に示されるにもかかわらず、他のシミュレーション結果も可能である。例えば、シミュレーション結果は、シミュレーションパラメータ(動作周波数を含む)、回路トポロジー、及び/又は作製プロセスを含むがこれらに限られない多種多様な因子に基づいて変わり得る。
【0090】
図5は、他実施形態の、電力増幅器71のための包絡線追跡システム180の模式的な図である。図5の包絡線追跡システム180は、図2の包絡線追跡システム100と同様であるが、包絡線追跡システム150はさらに、制御可能遅延回路98を含む。
【0091】
図示の実施形態において、包絡線追跡システム180は、DC経路フィルタ73を通るときのMLSDC/DC変換器72から電力増幅器71の供給入力へのDC経路遅延tを有して動作する。付加的に、包絡線追跡システム180は、制御可能遅延回路98、MLS変調器81、及びAC経路フィルタ91を通るときのMLSDC/DC変換器72から電力増幅器71の供給入力へのAC経路遅延tを有して動作する。
【0092】
制御可能遅延回路98を含むことにより、包絡線追跡システム180の効率を高めるようにAC経路とDC経路との間の相対的な遅延を制御することができる。所定の実装例において、制御可能遅延回路98の遅延は、DC経路遅延t及びAC経路遅延tを所望の位相シフトに実質的に整合させて効率を高めるように動作する。
【0093】
例えば、遅延差の補償が存在しなければ、DC経路の制御帯域幅がAC経路の制御帯域幅よりも狭くなることに起因してAC経路の電流とDC経路の電流とが競合し得る。この例において、AC経路が、制御可能遅延回路98による遅延を受けることで、負荷が見るDC経路の相対的な遅延が制御される。所定の実装例において、結合が生じる帯域幅にわたる約90度の位相シフトによって、相対的に高い効率が得られる。所定の実装例において、デジタル状態機械又は他の適切な制御回路が、約90度の位相遅延を達成する制御を与えるように動作する。
【0094】
図6は、他実施形態の、電力増幅器101のための包絡線追跡システム200の模式的な図である。図6の包絡線追跡システム200は図3Aの包絡線追跡システム140と同様であるが、包絡線追跡システム200が、包絡線追跡IC182の異なる実装例を含む点で異なる。
【0095】
例えば、図3Aの包絡線追跡IC102と比較すると、図6の包絡線追跡IC182はさらに、制御可能遅延バッファ191~194を含む。図3Aに示されるように、制御可能遅延バッファ191~194が、MLSスイッチング回路121が生成する各MLS調節済み電圧に制御可能な遅延を与えることにより、DC経路遅延tに対してAC経路遅延tを相対的に調整することが許容される。
【0096】
この実施形態において、制御可能遅延バッファ191~194の遅延は、デジタル制御回路122により制御可能なので、様々なMLS調節済み電圧経路間の遅延の任意の変動を考慮する柔軟性が向上する。
【0097】
図7は、他実施形態に係る携帯デバイス800の模式的な図である。携帯デバイス800は、ベース帯域システム801、送受信器802、フロントエンドシステム803、アンテナ804、電力管理システム805、メモリ806、ユーザインタフェイス807、及び電池808を含む。
【0098】
携帯デバイス800は、2G、3G、4G(LTE、LTEアドバンスト、及びLTEアドバンストプロ)、5G、WLAN(例えばWi-Fi)、WPAN(例えばBluetooth(登録商標)及びZigBee(登録商標))、WMAN(例えばWiMax)、及び/又はGPS技術を含むがこれらに限られない多種多様な通信技術を使用して通信するように使用することができる。
【0099】
送受信器802は、送信のためのRF信号を生成し、アンテナ804から受信した入来RF信号を処理する。理解されることだが、RF信号の送信及び受信に関連付けられる様々な機能は、図7においてまとめて送受信器802として代表される一以上のコンポーネントによって達成することができる。一例において、所定タイプのRF信号を取り扱うべく別個のコンポーネント(例えば別個の回路又はダイ)を設けてもよい。
【0100】
フロントエンドシステム803は、アンテナ804に送信し及び/又はアンテナ804から受信する信号のコンディショニングを補助する。図示の実施形態において、フロントエンドシステム803は、電力増幅器(PA)811、低雑音増幅器(LNA)812、フィルタ813、スイッチ814、及びデュプレクサ815を含む。しかしながら、他の実装例も可能である。
【0101】
例えば、フロントエンドシステム803は、送信信号の増幅、受信信号の増幅、信号のフィルタリング、異なる帯域間のスイッチング、異なる電力モード間のスイッチング、送信モード及び受信モード間のスイッチング、信号のデュプレクシング、信号のマルチプレクシング(例えばダイプレクシング又はトライプレクシング)、又はこれらの何らかの組み合わせを含むがこれらに限られない一定数の機能を与えることができる。
【0102】
所定の実装例において、携帯デバイス800は、キャリアアグリゲーションをサポートするので、ピークデータレートを増加させる柔軟性が得られる。キャリアアグリゲーションは、周波数分割デュプレクシング(FDD)及び時間分割デュプレクシング(TDD)の双方に使用することができるので、複数のキャリア又はチャネルを集約(アグリゲーション)するべく使用してよい。キャリアアグリゲーションは、同じ動作周波数帯域内に連続キャリアが集約される連続アグリゲーションを含む。キャリアアグリゲーションは不連続でもよく、共通帯域内又は異なる帯域内で周波数が分離したキャリアを含んでもよい。
【0103】
複数のアンテナ804は、多種多様なタイプの通信のために使用されるアンテナを含み得る。例えば、アンテナ804は、多種多様な周波数及び通信規格に関連付けられる信号の送信及び/又は受信に関連付けられるアンテナを含み得る。
【0104】
所定の実装例において、アンテナ804は、MIMO通信及び/又はスイッチ式ダイバーシティ通信をサポートする。例えば、MIMO通信は、単数の無線周波数チャネルを経由して多重データストリームを通信する多重アンテナを使用する。MIMO通信は、無線環境の空間的多重化(マルチプレクシング)に起因して高信号対雑音比、改善されたコーディング、及び/又は信号干渉低減からの利益を受ける。スイッチ式ダイバーシティとは、特定の時刻に動作する特定のアンテナが選択される通信を言及する。例えば、観測ビット誤り率及び/又は信号強度指標のような様々な因子に基づいて一群のアンテナから特定のアンテナを選択するようにスイッチを使用することができる。
【0105】
携帯デバイス800は、所定の実装例においてビームフォーミングとともに動作し得る。例えば、フロントエンドシステム803は、送受信器802により制御される可変位相を有する位相シフタを含み得る。付加的に、位相シフタは、アンテナ804を使用した信号の送信及び/又は受信のためのビームの形成及び指向性を与えるように制御される。例えば、信号送信の文脈において、アンテナ804に与えられる送信信号の位相が、アンテナ804から放射される信号が、建設的及び破壊的な干渉を使用して結合されるように、制御され、所与の方向に伝播する強い信号強度を有するビームのような品質を示す集約送信信号が生成される。信号受信の文脈において、位相は、信号が特定の方向からアンテナ804に到達するときに多くの信号エネルギーが受信されるように制御される。所定の実装例において、アンテナ804は、ビームフォーミングを強化するべく一以上のアレイのアンテナ素子を含む。
【0106】
ベース帯域システム801は、音声及びデータのような様々なユーザ入出力(I/O)の処理を容易にするユーザインタフェイス807に結合される。ベース帯域システム801は、送受信器802に送信信号のデジタル表現を与え、これを送受信器802が処理して送信用のRF信号が生成される。ベース帯域システム801はまた、送受信器802により与えられる受信信号のデジタル表現も処理する。図7に示されるように、携帯デバイス800の動作を容易にするべくベース帯域システム801がメモリ806に結合される。
【0107】
メモリ806は、携帯デバイス800の動作を容易にするべく及び/又はユーザ情報の格納を与えるべく、データ及び/又は命令の格納のような多種多様な目的のために使用することができる。
【0108】
電力管理システム805は、携帯デバイス800の一定数の電力管理機能を与える。電力管理システム805は、本開示の一以上の特徴に従って実装されるMLS包絡線追跡器860を含み得る。
【0109】
図7に示されるように、電力管理システム805は、電池808から電池電圧を受信する。電池808は、携帯デバイス800における使用のための、例えばリチウムイオン電池を含む任意の適切な電池としてよい。
【0110】
図8は、RF信号を送信する通信システム950の一実施形態の模式的な図である。通信システム950は、電池901、MLS包絡線追跡器902、電力増幅器903、方向性結合器904、デュプレクシング・スイッチング回路905、アンテナ906、ベース帯域プロセッサ907、信号遅延回路908、デジタルプリディストーション(DPD)回路909、I/Q変調器910、観測受信器911、相互変調検出回路912、包絡線遅延回路921、座標回転デジタル計算(CORDIC)回路922、整形回路923、デジタル/アナログ変換器924、及び再構成フィルタ925を含む。
【0111】
図8の通信システム950は、本開示の一以上の特徴に従って実装される包絡線追跡システムを含み得るRFシステムの一例を示す。しかしながら、ここでの教示は、多種多様な態様で実装されるRFシステムに適用可能である。
【0112】
ベース帯域プロセッサ907は、所望の振幅、周波数及び位相の正弦波又は正弦信号の信号成分に対応する同相(I)信号及び直角位相(Q)信号を生成するように動作する。例えば、I信号及びQ信号は、正弦波の等価表現を与える。所定の実装例において、I信号及びQ信号はデジタル形式で出力される。ベース帯域プロセッサ907は、ベース帯域信号を処理する任意の適切なプロセッサとしてよい。例えば、ベース帯域プロセッサ907は、デジタル信号プロセッサ、マイクロプロセッサ、プログラミング可能コア、又はこれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0113】
信号遅延回路908は、I信号及びQ信号に調整可能遅延を与え、包絡線追跡器902に与えられる差動包絡線信号ENV_p、ENV_nと電力増幅器903に与えられるRF信号RFINとの相対的な整合性の制御を補助する。信号遅延回路908が与える遅延量は、相互変調検出回路912が検出する隣接帯域の相互変調量に基づいて制御される。
【0114】
DPD回路909は、信号遅延回路908からの遅延されたI信号及びQ信号にデジタル整形を与え、デジタルプリディストーション(DPD)されたI信号及びQ信号を生成するように動作する。図示の実施形態において、DPD回路909が与えるDPDは、相互変調検出回路912が検出する相互変調量に基づいて制御される。DPD回路909は、電力増幅器903のディストーションを低減し及び/又は電力増幅器903の効率を増加させる役割を果たす。
【0115】
I/Q変調器910は、デジタルプリディストーションされたI信号及びQ信号を受信し、これらの信号はRF信号RFINを生成するべく処理される。例えば、I/Q変調器910は、デジタルプリディストーションされたI信号及びQ信号をアナログ形式に変換するように構成されるDACと、アナログI信号及びQ信号を無線周波数(RF)にアップコンバートする混合器と、アップコンバートされたI信号及びQ信号を結合してRF信号RFINにする信号結合器とを含み得る。所定の実装例において、I/Q変調器910は、処理される信号の周波数成分をフィルタリングするべく構成される一以上のフィルタを含み得る。
【0116】
包絡線遅延回路921は、ベース帯域プロセッサ907からのI信号及びQ信号を遅延させる。付加的に、CORDIC回路922は、遅延されたI信号及びQ信号を処理し、RF信号RFINの包絡線を代表するデジタル包絡線信号を生成する。図8がCORDIC回路922を使用する一実装例を示すにもかかわらず、包絡線信号を他の態様で取得することもできる。
【0117】
整形回路923は、通信システム950の性能を高めるべくデジタル包絡線信号を整形するように動作する。所定の実装例において、整形回路923は、デジタル包絡線信号の各レベルを対応する整形される包絡線信号レベルにマッピングする整形表を含む。包絡線整形は、電力増幅器903の線形性、ディストーション、及び/又は効率の制御に役立ち得る。
【0118】
図示の実施形態において、整形された包絡線信号は、DAC924によって差動アナログ包絡線信号に変換されたデジタル信号である。付加的に、差動アナログ包絡線信号は、再構成フィルタ925によってフィルタリングされ、MLS包絡線追跡器902の差動包絡線増幅器により使用されるのに適切な差動包絡線信号ENV_p、ENV_nが生成される。所定の実装例において、再構成フィルタ925は差動低域通過フィルタを含む。
【0119】
包絡線信号伝達の一例が示されるにも関わらず、ここでの教示は、多種多様な態様で実装される包絡線信号伝達にも適用可能である。例えば、他例において、MLS包絡線追跡器902にデジタル包絡線データを与えることを優先させてDAC924及び再構成フィルタ925が省略される。
【0120】
引き続き図8を参照すると、MLS包絡線追跡器902は、再構成フィルタ925から包絡線信号を受信するとともに電池901から電池電圧VBATTを受け、差動包絡線信号ENV_p、ENV_nを使用して電力増幅器903のための電力増幅器供給電圧VCC_PAを生成する。電力増幅器供給電圧VCC_PAは、RF信号RFINの包絡線に関連して変化する。電力増幅器903は、I/Q変調器910からRF信号RFINを受信し、増幅されたRF信号RFOUTを、この例ではデュプレクシング・スイッチング回路905を介してアンテナ906に与える。
【0121】
方向性結合器904が電力増幅器903の出力とデュプレクシング・スイッチング回路905の入力との間に配置されることにより、デュプレクシング・スイッチング回路905の挿入損失を含まない電力増幅器903の出力電力測定が許容される。方向性結合器904の検知された出力信号が観測受信器911に与えられる。観測受信器911は、ダウンコンバートされたI信号及びQ信号を生成するべくダウンコンバージョンを与える混合器と、当該ダウンコンバートされたI信号及びQ信号からI観測信号及びQ観測信号を生成するDACとを含み得る。
【0122】
相互変調検出回路912は、I観測信号及びQ観測信号とベース帯域プロセッサ907からのI信号及びQ信号との相互変調積を決定する。付加的に、相互変調検出回路912は、DPD回路909が与えるDPD及び/又は信号遅延回路908の遅延を制御して差動包絡線信号ENV_p、ENV_nとRF信号RFINとの相対的整合性を制御する。他実施形態において、相互変調検出回路912は付加的又は代替的に、信号遅延回路921の遅延を制御する。
【0123】
電力増幅器903の出力からのフィードバック経路とベース帯域とを含めることにより、I信号及びQ信号を、通信システム950の動作を最適化するべく動的に調整することができる。例えば、通信システム950をこの態様で構成することにより、電力の制御、送信器障害の補償、及び/又はDPDの実行を補助することができる。
【0124】
単数段として示されるにもかかわらず、電力増幅器903は一以上の段を含んでよい。さらに、ここでの教示は、多数の電力増幅器を含む通信システムにも適用可能である。
【0125】
図9は、一実施形態に係るMLS変調システム1050の模式的な図である。MLS変調システム1050は、変調器制御回路1020、MLSDC/DC変換器1025、変調器スイッチバンク1027、及びデカップリングキャパシタバンク1030を含む。
【0126】
図9のMLS変調システム1050は、マルチレベル包絡線追跡器への組み込みに適切なMLS変調器回路の一実装例を示す。しかしながら、ここでの教示に従って実装されるマルチレベル包絡線追跡器には、MLS変調器回路の他実装例も含めてよい。
【0127】
MLSDC/DC変換器1025は、電池電圧VBATTのDC/DC変換を与えることに基づいて第1調節済み電圧VMLS1、第2調節済み電圧VMLS2、及び第3調節済み電圧VMLS3を生成する。3つの調節済み電圧を有する一例が示されるにもかかわらず、MLSDC/DC変換器1025は、これよりも多い又は少ない調節済み電圧を生成してよい。所定の実装例において、調節済み電圧の少なくとも一部分が、電池電圧VBATTに対してブーストされる。付加的又は代替的に、調節済み電圧の一以上は、電池電圧VBATTよりも低い電圧を有するバック電圧である。
【0128】
デカップリングキャパシタバンク1030は、MLSDC/DC変換器1025が生成する調節済み電圧の安定化を補助する。例えば、図9のデカップリングキャパシタバンク1030は、第1調節電圧VMLS1をデカップリングする第1デカップリングキャパシタ1031、第2調節電圧VMLS2をデカップリングする第2デカップリングキャパシタ1032、及び第3調節電圧VMLS3をデカップリングする第3デカップリングキャパシタ1033を含む。
【0129】
引き続き図9を参照すると、変調器スイッチバンク1027は、変調器の出力(MODOUT)と第1調節電圧VMLS1との間に接続される第1スイッチ1041、当該変調器の出力と第2調節電圧VMLS2との間に接続される第2スイッチ1042、及び当該変調器の出力と第3調節電圧VMLS3との間に接続される第3スイッチ1043を含む。変調器制御部1020は、スイッチ1041~1043を選択的に開閉して変調器の出力を制御するべく動作する。
【0130】
図10は、一実施形態に係るMLSDC/DC変換器1073の模式的な図である。MLSDC/DC変換器1073は、インダクタ1075、第1スイッチS、第2スイッチS、第3スイッチS、第4スイッチS、第5スイッチS、及び第6スイッチSを含む。MLSDC/DC変換器1073はさらに、調節を与える当該スイッチ開閉のための制御回路(図10に図示せず)も含む。
【0131】
図10のMLSDC/DC変換器1073は、マルチレベル包絡線追跡器への組み込みに適切なMLSDC/DC変換器の一実装例を示す。しかしながら、ここでの教示に従って実装されるマルチレベル包絡線追跡器には、MLSDC/DC変換器の他実装例も含めてよい。
【0132】
図示の実施形態において、第1スイッチSは、電池電圧VBATTに電気的に接続される第1端と、第2スイッチSの第1端に及びインダクタ1075の第1端に電気的に接続される第2端とを含む。第2スイッチSはさらに、第1供給又はグランド供給VGNDに電気的に接続される第2端を含む。図10が、グランド供給及び電池電圧を使用して電力が与えられるDC/DC変換器の構成を示すにもかかわらず、ここでの教示は、任意の適切な電力供給を使用して電力が与えられるDC/DC変換器にも適用可能である。インダクタ1075はさらに、第3スイッチS~第6スイッチSそれぞれの第1端に電気的に接続される第2端を含む。第3スイッチSはさらに、グランド供給VGNDに電気的に接続される第2端も含む。第4スイッチS、第5スイッチS及び第6スイッチSはそれぞれが、第1調節済み電圧VMLS1、第2調節済み電圧VMLS2及び第3調節済み電圧VMLS3それぞれを生成するべく構成される第2端を含む。
【0133】
第1スイッチS~第6スイッチSは、調節済み電圧を目標電圧レベルの特定の誤差許容範囲内に維持するように選択的に開閉される。3つの調節済み電圧を有する一例が示されるにもかかわらず、MLSDC/DC変換器1073は、これよりも多い又は少ない調節済み電圧を生成するべく実装されてよい。
【0134】
図示の実施形態において、MLSDC/DC変換器1073は、電池電圧VBATTよりも大きな調節済みブースト電圧を生成するべく、及び/又は電池電圧VBATTよりも小さな調節済みバック電圧を生成するべく動作可能なバック・ブースト変換器として動作する。しかしながら、他の実装例も可能である。
【0135】
図11は、MLSDC/DC変換のためのタイミングの一例の模式的な図である。図11に示されるように、調節サイクルの幅を、MLSDC/DC変換により生成される調節済み電圧の電圧レベルを制御するべく使用することができる。例えば、一つのMLS調節済み電圧を周期t1に関連付ける一方で、第2の調節電圧を異なる周期t2に関連付けることができる。付加的に、異なる電圧レベル間のクローバー電流を回避するべく非重畳の周期tovlpを使用することもできる。
【0136】
ここでの所定の実装例において、一以上の調節周期(例えばt1及び/又はt2)及び/又は一以上の非重畳周期(例えばtovlop)はデジタル制御可能である。所定の実装例において、遅延は、デジタル状態機械及び/又は他の適切な回路に基づいて制御される。
【0137】
MLSDC/DC変換によって生成される調節済み電圧は、変調器によって選択的に変調器出力フィルタに与えることができる。図示の例において、変調器出力フィルタは、シャントキャパシタC1及びC2と直列インダクタL1及び2とを含むように描かれる。しかしながら、変調器出力フィルタの他の実装例も可能である。
【0138】
変調器出力フィルタを通るAC経路と当該変調器をバイパスするDC経路との双方を与えることにより、効率を高めることができる。例えば、包絡線追跡システムをこの態様で実装することにより、変調器の出力フィルタのインダクタ(例えばインダクタL1及び/又はL2)に蓄積するエネルギーを低減させることができる。このエネルギーの低減により、ひいては、フィルタへのオーバーシュート及び/又はMLSスイッチへの戻りクローバー電流が低下する。
【0139】
一実施形態において、MLSDC/DC変換器が、電力増幅器供給電圧を制御する変調器のための2以上のMLS電圧と、当該変調器をバイパスするDC経路を通る電力増幅器供給電圧を制御するDC電圧とを生成する。付加的に、DC電圧の調節は、MLS電圧の調節とは異なる。例えば、調節のために使用される調節周期及び/又は非重畳周期は、DC電圧とMLS電圧とで異なってよい。すなわち、パルス幅変調器(PWM)シーケンスがDC経路とAC経路とで異なってよい。
【0140】
図12は、連続波信号のためのMLS包絡線追跡の一例の模式的な図である。示される例は、約100MHzの周波数及び約10nsの対応周期を有する連続波信号のための例である。当該信号のための適切なMLS電圧レベルの例が示される。
【0141】
図13は、様々な信号波形の包絡線周波数分布の一例の模式的な図である。信号波形の各タイプに対し、グラフは、DC包絡線エネルギー、1MHz未満のAC包絡線エネルギー、及び1MHz超過のAC包絡線エネルギーのパーセンテージを描く。変調器出力フィルタを通るAC経路と当該変調器をバイパスするDC経路との双方を与えることにより、様々なタイプのRF信号波形の効率が高められる。
【0142】
おわりに
【0143】
上述の実施形態のいくつかが、携帯デバイスに関連する例を与えてきた。しかしながら、これらの実施形態の原理及び利点は、包絡線追跡を必要とする任意の他のシステム又は装置のために使用することができる。
【0144】
文脈が明確にそうでないことを要求しない限り、明細書及び特許請求の範囲全体を通して、「含む」、「備える」等の用語は、排他的又は網羅的な意味とは逆の、包括的な意味で、すなわち「~を含むがこれに限られない」意味で解釈されるべきである。ここで一般に使用される用語「結合」は、2つ以上の要素が、直接に接続されるか、又は一以上の中間要素を経由して接続されるかのいずれかとなり得ることを言及する。同様に、ここで一般に使用される用語「接続」も、2つ以上の要素が、直接に接続されるか、又は一以上の中間要素を経由して接続されるかのいずれかとなり得ることを言及する。加えて、本願において使用される場合、用語「ここで」、「上」、「下」、及び同様の意味の用語は、本願全体を言及するものとし、本願のいずれか特定の部分を言及するわけではない。文脈上許容される場合、単数又は複数の数を使用する上記の詳細な説明における用語は、それぞれ複数又は単数の数も含み得る。2つ以上の項目のリストを参照する「又は」及び「若しくは」という用語は、その用語の以下の解釈、すなわち、リスト内の項目のいずれか、リスト内の項目のすべて、及びリスト内の項目の任意の組み合わせ、のすべてをカバーする。
【0145】
さらに、具体的に記述されない限り、又は使用される文脈内でそうでないと理解されない限り、とりわけ「できる」、「し得る」、「してよい」、「かもしれない」、「例えば」、「のような」投のようなここで使用される条件的言語は一般に、所定の実施形態が所定の特徴、要素、及び/又は状態を含む一方で他の実施形態は含まないことを意図する。すなわち、かかる条件的言語は一般に、特徴、要素及び/若しくは状態が、一以上の実施形態に必要な任意の態様で存在すること、又は一以上の実施形態が、著者のインプット若しくはプロンプトあり若しくはなしで、これらの特徴、要素及び/若しくは状態が含まれるか否か、若しくは任意の特定の実施形態において行われるべきか否かを決定する論理を必ず含むこと、を含意することが意図されていない。
【0146】
本発明の実施形態の上記説明は、網羅的であることを意図したものではなく、又は上記開示の正確な形態に本発明を限定することを意図したものでもない。本発明の特定の実施形態及び例は、説明目的のために上述されているが、当業者が認識するように、本発明の範囲内で様々な等価な修正例が可能である。例えば、プロセス又はブロックが所与の順序で提示される一方、代替の実施形態が異なる順序でステップを有するルーチンを実行し又はブロックを有するシステムを用いることができ、いくつかのプロセス又はブロックは、削除、移動、追加、細分化、結合及び/又は修正され得る。これらのプロセス又はブロックはそれぞれが、様々な異なる態様で実装してよい。また、プロセス又はブロックは、直列に実行されるように示されることがある一方、これらのプロセス又はブロックは、その代わりに並列に実行されてもよく、又は異なる時刻に実行されてもよい。
【0147】
ここに与えられる本発明の教示は、必ずしも上述のシステムというわけではない他のシステムに適用することができる。上述の様々な実施形態の要素及び作用は、さらなる実施形態を与えるべく組み合わせてよい。
【0148】
本発明の所定の実施形態が記載されてきたが、これらの実施形態は例としてのみ提示されており、本開示の範囲を限定することを意図しない。実際のところ、ここに記載される新規な方法及びシステムは、様々な他の形式で具体化してよく、さらには、ここに記載される方法及びシステムの形式の様々な省略、置換及び変更を、本開示の要旨から逸脱することなく行ってよい。添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物は、本開示の範囲及び要旨に収まるような形式又は修正をカバーすることが意図される。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13