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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】ずれ防止機能を有するステント
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/00 20060101AFI20240624BHJP
   A61F 2/82 20130101ALI20240624BHJP
【FI】
A61F2/00
A61F2/82
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022525165
(86)(22)【出願日】2020-10-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-11
(86)【国際出願番号】 US2020057696
(87)【国際公開番号】W WO2021086936
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-06-14
(31)【優先権主張番号】62/927,391
(32)【優先日】2019-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ヘンチー、トラビス
(72)【発明者】
【氏名】ライアン、ショーン
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-504773(JP,A)
【文献】特開2012-065825(JP,A)
【文献】特表2016-527051(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/00
A61F 2/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の端部領域、前記第1の端部領域の反対側の第2の端部領域、および外側表面を含む拡張可能スキャフォールドであり、前記拡張可能スキャフォールドが径方向につぶれた状態から径方向に拡張した状態にシフトするように構成された、拡張可能スキャフォールドと、
前記拡張可能スキャフォールドの前記外側表面に沿って配置されたコーティングであり、前記コーティングが、ベース・コーティング層と、前記ベース・コーティング層の上に配置されたマイクロパターン・コーティング層とを含み、前記マイクロパターン・コーティング層の少なくとも一部分が、複数のずれ防止部材と、壁部とを含み、前記マイクロパターン・コーティング層が、前記マイクロパターン・コーティング層の前記壁部内にのみ延びる優先分離領域をさらに含み、前記優先分離領域が、前記マイクロパターン・コーティング層の第1の領域と前記マイクロパターン・コーティング層の第2の領域との間に位置決めされる、コーティングと、を備え、
前記優先分離領域が、前記拡張可能スキャフォールドが前記径方向につぶれた状態から前記径方向に拡張した状態にシフトするにつれて前記マイクロパターン・コーティング層の前記第1の領域が前記マイクロパターン・コーティング層の前記第2の領域から両者の間の前記優先分離領域に沿って分離することを可能にするように構成される、
体管腔を治療する医療用ステント。
【請求項2】
前記優先分離領域が、前記マイクロパターン・コーティング層の厚さの一部分のみを通して延びている、請求項1に記載の医療用ステント。
【請求項3】
前記マイクロパターン・コーティング層の前記第1の領域の前記マイクロパターン・コーティング層の前記第2の領域からの分離が、前記優先分離領域に沿って前記マイクロパターン・コーティング層に孔を生じる、請求項1または2に記載の医療用ステント。
【請求項4】
前記孔が、前記マイクロパターン・コーティング層の前記壁部を貫通して延びている、請求項3に記載の医療用ステント。
【請求項5】
前記孔が、前記マイクロパターン・コーティング層の前記壁部の一部分のみを通して延びている、請求項3に記載の医療用ステント。
【請求項6】
前記マイクロパターン・コーティング層内に配置された複数の孔をさらに備え、前記複数の孔が、前記ステントの長手方向軸に沿って位置合わせされる、請求項1から3のいずれか一項に記載の医療用ステント。
【請求項7】
前記複数の孔の位置合わせが、ミシン目状の優先分離領域を生じる、請求項6に記載の医療用ステント。
【請求項8】
前記優先分離領域が、前記第1の端部領域から前記第2の端部領域まで前記ステントの長手方向軸に沿って連続的に延びる、請求項7に記載の医療用ステント。
【請求項9】
前記優先分離領域が、前記ステントの前記長手方向軸に沿って直線的に延びる、請求項7または8に記載の医療用ステント。
【請求項10】
前記優先分離領域が、前記ステントの前記長手方向軸に沿って非直線的に延びる、請求項7または8に記載の医療用ステント。
【請求項11】
前記拡張可能スキャフォールドが、複数の編成されたフィラメントを含み、前記複数のフィラメントが、それらの間に複数のセルを画定するように配置され、前記優先分離領域が、前記複数のセルのうちの1つの中に位置決めされる、請求項1から10のいずれか一項に記載の医療用ステント。
【請求項12】
第1の端部領域、前記第1の端部領域の反対側の第2の端部領域、および外側表面を含む拡張可能スキャフォールドであり、前記拡張可能スキャフォールドが径方向につぶれた状態から径方向に拡張した状態にシフトするように構成された、拡張可能スキャフォールドと、
前記拡張可能スキャフォールドの前記外側表面に沿って配置されたコーティングであり、前記コーティングが、ベース・コーティング層と、前記ベース・コーティング層の上に配置されたマイクロパターン・コーティング層とを含み、前記マイクロパターン・コーティング層の少なくとも一部分が、複数のずれ防止部材と、壁部とを含む、コーティングと、を備え、
前記マイクロパターン・コーティング層が、前記マイクロパターン・コーティング層の前記壁部内にのみ延びる複数の優先分離領域をさらに含み、前記優先分離領域のそれぞれが、互いに離間されており、前記優先分離領域のそれぞれが、前記拡張可能スキャフォールドが前記径方向につぶれた状態から前記径方向に拡張した状態にシフトするときに前記マイクロパターン・コーティング層中に孔を画定するように構成される、
体管腔を治療する医療用ステント。
【請求項13】
前記優先分離領域のそれぞれが、前記マイクロパターン・コーティング層の第1の領域と前記マイクロパターン・コーティング層の第2の領域との間に位置決めされ、前記優先分離領域のそれぞれが、前記拡張可能スキャフォールドが前記径方向につぶれた状態から前記径方向に拡張した状態にシフトするにつれて前記マイクロパターン・コーティング層の前記第1の領域が前記マイクロパターン・コーティング層の前記第2の領域から両者の間の各優先分離領域に沿って分離することを可能にするように構成される、請求項12に記載の医療用ステント。
【請求項14】
前記複数の優先分離領域のそれぞれが、前記拡張可能スキャフォールドが前記径方向につぶれた状態から前記径方向に拡張した状態にシフトするときに前記コーティングが前記拡張可能スキャフォールドの前記外側表面から分離することを防止するように構成される、請求項12または13に記載の医療用ステント。
【請求項15】
前記優先分離領域のそれぞれの前記孔が、前記マイクロパターン・コーティング層の前記壁部を貫通して延びている、請求項12から14のいずれか一項に記載の医療用ステント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医療装置、医療装置を製造する方法、およびその使用に関する。さらに詳細には、本開示は、ずれ防止機能を有する拡張可能ステント、ならびにその製造方法および使用方法の例に関する。
【背景技術】
【0002】
植込み型医療装置(例えば拡張可能ステント)は、体管腔内の狭窄を治療し、かつ/あるいは医療処置の後で、消化された物質、血液、またはその他の流体が流れるための流路を提供するように設計されることがある。いくつかの医療装置は、例えば内視鏡またはステント送達手段を介して経腔的に植え込まれることがある、径方向拡張可能または自己拡張可能ステントを含むことがある。さらに、一部のステントは、食道消化管、胃腸消化管(腸、胃、および結腸を含む)、気道、尿路、胆道、脈管系など、様々な体管腔に植え込まれる可能性がある。
【0003】
いくつかの場合には、治療部位において体管腔を開くのに十分な径方向の力を維持しながら、十分な可撓性を有するようにステントを設計することが望ましいこともある。ただし、一部のステントでは、ステントの送達の際に助けとなる圧縮性および可撓性によって、配設後に当初配設された位置からずれやすいステントになってしまうこともある。例えば、食道消化管または胃腸消化管内に位置決めされるように設計されたステントは、蠕動(すなわち管内の内容物を押し流す、食道、腸、および結腸の筋肉の不随意の収縮および弛緩)によってずれる傾向を有することもある。さらに、食道、腸、および結腸などの一般に湿潤な、かつ本来的に滑らかな環境が、その内部に配設されたときにステントがずれる傾向の一因となる。ステントのずれを低減する1つの方法は、ステントのむき出しの金属部分を体管腔の組織に対して露出させることを含むことがある。ステント・スキャフォールドは、その網目または開口内への組織の内方成長を促進する構造を提供することがある。組織の内方成長は、ステントを適所に定着させ、ステントのずれのリスクを低減させることがある。
【0004】
さらに、ステントが体管腔内でずれる程度を低減するステントを設計することが重要であるが、配設後に体管腔から容易に除去され得、かつ/または体管腔内で容易に再位置決めされ得るステントを設計することも重要である。組織の内方成長を促進するように(例えば上述のようにステントのずれを低減するように)設計されたむき出し部分(すなわち被覆されていない部分)を含むステントは、組織がいったんステントを体管腔内に定着させてしまうと除去することがより困難になることもある。さらに、ステントをステント送達装置に装填し、ステント送達装置から配設することを容易にするステントを設計することも重要である。ステントの硬さを減少させ、径方向の配設力を高める1つの方法は、ステントに対して適用されるコーティング(例えばずれ防止コーティング)の厚さ、したがって総体積を減少させることを含むことがある。したがって、いくつかの場合には、ずれ防止機能および減少させた総体積の両方を有するコーティングを有するステントを設計することが望ましいこともある。ずれ防止機能および減少させた体積を有するコーティングを有する医療装置の例が、本明細書には開示されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、医療装置の設計、材料、製造方法、および使用の代替形態を提供するものである。体管腔を治療する例示的な医療用ステントは、第1の端部領域、第1の端部領域の反対側の第2の端部領域、および外側表面を含む拡張可能スキャフォールドを含み、この拡張可能スキャフォールドは、径方向につぶれた状態から径方向に拡張した状態にシフトするように構成される。このステントは、拡張可能スキャフォールドの外側表面に沿って配置されたコーティングをさらに含む。コーティングの少なくとも一部分は、複数のずれ防止部材を含む。コーティングは、優先分離領域をさらに含み、この優先分離領域は、コーティングの第1の領域とコーティングの第2の領域との間に位置決めされる。さらに、優先分離領域は、拡張可能スキャフォールドが径方向につぶれた状態から径方向に拡張した状態にシフトするにつれてコーティングの第1の領域がコーティングの第2の領域から両者の間の優先分離領域に沿って分離することを可能にするように構成される。
【0006】
上記の実施形態のいずれかの代替として、または上記の実施形態のいずれかに加えて、優先分離領域は、拡張可能スキャフォールドが径方向につぶれた状態から径方向に拡張した状態にシフトするときにコーティングが拡張可能スキャフォールドの外側表面から分離することを防止するように構成される。
【0007】
上記の実施形態のいずれかの代替として、または上記の実施形態のいずれかに加えて、コーティングの第1の領域のコーティングの第2の領域からの分離は、優先分離領域に沿ってコーティングに孔を生じる。
【0008】
上記の実施形態のいずれかの代替として、または上記の実施形態のいずれかに加えて、孔は、コーティングの壁部を貫通して延びている。
上記の実施形態のいずれかの代替として、または上記の実施形態のいずれかに加えて、孔は、コーティングの壁部の一部分のみを通して延びている。
【0009】
上記の実施形態のいずれかの代替として、または上記の実施形態のいずれかに加えて、この医療用ステントは、コーティング内に配置された複数の孔をさらに備え、複数の孔は、ステントの長手方向軸に沿って位置合わせされる。
【0010】
上記の実施形態のいずれかの代替として、または上記の実施形態のいずれかに加えて、優先分離領域の複数の孔の位置合わせは、ミシン目状の優先分離領域を生じる。
上記の実施形態のいずれかの代替として、または上記の実施形態のいずれかに加えて、優先分離領域は、第1の端部領域から第2の端部領域までステントの長手方向軸に沿って連続的に延びる。
【0011】
上記の実施形態のいずれかの代替として、または上記の実施形態のいずれかに加えて、優先分離領域は、ステントの長手方向軸に沿って直線的に延びる。
上記の実施形態のいずれかの代替として、または上記の実施形態のいずれかに加えて、優先分離領域は、ステントの長手方向軸に沿って非直線的に延びる。
【0012】
上記の実施形態のいずれかの代替として、または上記の実施形態のいずれかに加えて、拡張可能スキャフォールドは、複数の編成されたフィラメントを含み、複数のフィラメントは、それらの間に複数のセルを画定するように配置され、優先分離領域は、複数のセルのうちの1つの中に位置決めされる。
【0013】
体管腔を治療する別の医療用ステントは、第1の端部領域、第1の端部領域の反対側の第2の端部領域、および外側表面を含む拡張可能スキャフォールドを含み、拡張可能スキャフォールドは、径方向につぶれた状態から径方向に拡張した状態にシフトするように構成される。このステントは、拡張可能スキャフォールドの外側表面に沿って配置されたコーティングをさらに含み、コーティングの少なくとも一部分は、その上に配置された複数のずれ防止部材を含む。さらに、コーティングは、複数の優先分離領域をさらに含み、優先分離領域のそれぞれは、互いに離間されており、優先分離領域のそれぞれは、拡張可能スキャフォールドが径方向につぶれた状態から径方向に拡張した状態にシフトするときにコーティング中に孔を画定するように構成される。
【0014】
上記の実施形態のいずれかの代替として、または上記の実施形態のいずれかに加えて、優先分離領域のそれぞれは、コーティングの第1の領域とコーティングの第2の領域との間に位置決めされ、優先分離領域のそれぞれは、拡張可能スキャフォールドが径方向につぶれた状態から径方向に拡張した状態にシフトするにつれてコーティングの第1の領域がコーティングの第2の領域から両者の間の各優先分離領域に沿って分離することを可能にするように構成される。
【0015】
上記の実施形態のいずれかの代替として、または上記の実施形態のいずれかに加えて、複数の優先分離領域のそれぞれは、拡張可能スキャフォールドが径方向につぶれた状態から径方向に拡張した状態にシフトするときにコーティングが拡張可能スキャフォールドの外側表面から分離することを防止するように構成される。
【0016】
上記の実施形態のいずれかの代替として、または上記の実施形態のいずれかに加えて、優先分離領域のそれぞれの孔は、コーティングの壁部を貫通して延びている。
上記の実施形態のいずれかの代替として、または上記の実施形態のいずれかに加えて、優先分離領域のそれぞれの孔は、コーティングの壁部の一部分のみを通して延びている。
【0017】
上記の実施形態のいずれかの代替として、または上記の実施形態のいずれかに加えて、優先分離領域のそれぞれは、第1の端部領域から第2の端部領域までステントの長手方向軸に沿って連続的に延びる。
【0018】
上記の実施形態のいずれかの代替として、または上記の実施形態のいずれかに加えて、優先分離領域のそれぞれは、ステントの長手方向軸に沿って互いに離間される。
上記の実施形態のいずれかの代替として、または上記の実施形態のいずれかに加えて、拡張可能スキャフォールドは、複数の編成されたフィラメントを含み、複数のフィラメントは、それらの間に複数のセルを画定するように配置され、優先分離領域のそれぞれは、複数のセルのうちの対応するセルの中に位置決めされる。
【0019】
別の医療用ステントは、第1の端部領域、第1の端部領域の反対側の第2の端部領域、および外側表面を含む拡張可能スキャフォールドを含み、拡張可能スキャフォールドは、径方向につぶれた状態から径方向に拡張した状態にシフトするように構成される。さらに、拡張可能スキャフォールドは、それらの間に位置する複数のセル開口を画定する複数の編成されたフィラメントを含む。さらに、このステントは、拡張可能スキャフォールドの外側表面に沿って配置されたコーティングを含み、コーティングの少なくとも一部分は、マイクロパターンを含み、このマイクロパターンは、複数のずれ防止部材を含む。さらに、マイクロパターンは、編成されたステント・フィラメントの間にセル開口がある状態で配置される。
【0020】
上記のいくつかの実施形態の概要は、本開示の開示される各実施形態またはあらゆる実装を説明することを意図したものではない。以下の図面および詳細な説明は、これらの実施形態をより詳細に例示するものである。
【0021】
本開示は、以下の詳細な説明を添付の図面と関連付けて考慮すれば、より完全に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】被覆された領域を含む例示的なステントを示す図。
図2】被覆された領域およびマイクロパターンを含む別の例示的なステントを示す図。
図3図2に示されるステントの一部分を示す詳細図。
図4図2に示されるステントの線4-4に沿った断面図を示す図。
図5】被覆された領域およびマイクロパターンを含む別の例示的なステントを示す図。
図6図5に示されるステントの一部分を示す詳細図。
図7】被覆された領域およびマイクロパターンを含む別の例示的なステントを示す図。
図8図7に示されるステントの一部分を示す詳細図。
図9】被覆された領域およびマイクロパターンを有する配設前の構成の別の例示的なステントを示す図。
図9A図9に示されるステントの線9A-9Aに沿った断面図を示す図。
図10】配設後の構成の図9に示される例示的なステントを示す図。
図11図10に示される例示的なステントの一部分を示す図。
図11A】被覆された領域およびマイクロパターンを有する配設前の構成の別の例示的なステントを示す図。
図11B図11Aに示される例示的なステントの一部分を示す図。
図11C】配設後の構成の図11Aに示される例示的なステントを示す図。
図12】被覆された領域およびマイクロパターンを有する配設前の構成の別の例示的なステントを示す図。
図12A図12に示されるステントの線12A-12Aに沿った断面図を示す図。
図13】配設後の構成の図12に示される例示的なステントを示す図。
図13A図13に示されるステントの線13A-13Aに沿った断面図を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本開示は様々な修正および代替形態の余地があるが、例示を目的として、その詳細を図面に示し、詳細に説明する。ただし、その意図は、本開示を記載の特定の実施形態に限定することではないことを理解されたい。逆に、その意図は、本開示の趣旨および範囲内に含まれる全ての修正、均等物、および代替物をカバーすることである。
【0024】
以下に定義される用語については、特許請求の範囲、または本明細書の他の箇所において異なる定義が与えられない限り、これらの定義が適用されるものとする。
全ての数値は、明示されているか否かに関わらず、本明細書では、「約」という用語によって修飾されるものと想定されている。「約」という用語は、一般に、記載されている値と等価である(例えば同じ機能または結果を有する)と当業者が考える数の範囲を指す。多くの場合には、「約」という用語は、最も近い有意な数字に丸められた数を含む可能性がある。
【0025】
エンドポイントによる数値範囲の記載は、その範囲内の全ての数を含む(例えば、1から5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、および5を含む)。
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかにそうではないことを示していない限り、複数形の意味を含む。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される「または(あるいは、もしくは)」という用語は、一般に、文脈が明らかにそうではないことを示していない限り、「および/または」を含む意味で利用されている。
【0026】
本明細書における「実施形態」、「いくつかの実施形態」、「他の実施形態」などに対する言及は、記載されている実施形態が、1つまたは複数の特定の特徴、構造、および/または特性を含む可能性があることを示すことに留意されたい。ただし、これらの記載は、全ての実施形態がその特定の特徴、構造、および/または特性を含むことを必ずしも意味するとは限らない。さらに、特定の特徴、構造、および/または特性が、ある実施形態と関連付けて記載されるとき、そうではないと明確に述べられていない限り、明示的に述べられているか否かに関わらず、その特定の特徴、構造、および/または特性が他の実施形態と関連付けて使用される可能性もあることを理解されたい。
【0027】
以下の詳細な説明は、図面を参照して読まれるべきであり、図面では、異なる図面の類似の要素が同様に採番されている。その図面は必ずしも原寸に比例せず、例示の実施形態を表しており、本開示の範囲を制限するように意図されていない。
【0028】
上述のように、植込み型医療装置は、体管腔内の狭窄を治療し、かつ/あるいは侵襲的医療処置の後で、消化された物質またはその他の物質もしくは流体が流れるための流路を提供するように設計されることがある。本明細書に開示される例は、径方向拡張可能または自己拡張可能ステントを含むことがある。拡張可能ステントは、内視鏡、または別の所望の送達手段を介して、経腔的に植え込まれることがある。さらに、一部のステントは、食道管、腸および結腸を含む胃腸管、気道、尿路、胆管および/または膵管を含む胆道、脈管系など、様々な体管腔に植え込まれる可能性がある。
【0029】
いくつかの場合には、治療部位において体管腔を開くのにさらに十分な径方向の力を有しながら、送達中に蛇行状の体管腔に沿うことができるだけの十分な可撓性を有するようにステントを設計することが望ましいこともある。ただし、一部のステントでは、ステントの送達の際に助けとなる圧縮性および可撓性によって、当初の配設位置からずれやすいステントになってしまうこともある。例えば、食道または腸内に位置決めされるように設計されたステントは、蠕動(すなわち管内の内容物を押し流す、食道、腸、および結腸の筋肉の不随意の収縮および弛緩)によってずれる傾向を有することもある。さらに、食道、腸、および結腸などの一般に湿潤な、かつ本来的に滑らかな環境が、その内部に配設されたときにステントがずれる傾向の一因となる。
【0030】
さらに、ステントが体管腔内でずれる程度を低減するステントを設計することが重要であるが、配設後に体管腔から容易に除去され得、かつ/または体管腔内で容易に再位置決めされ得るステントを設計することも重要である。組織の内方成長を促進するように(例えば上述のようにステントのずれを低減するように)設計されたむき出し部分(すなわち被覆されていない部分)を含むステントは、組織がいったんステントを体管腔内に定着させてしまうと除去することがより困難になることもある。ステントを体管腔から除去するために必要な力を低減する1つの方法は、ステントの一部分を被覆することによって、体管腔とステントの外側表面との間に物理的バリヤを作成する(例えば組織の内方成長によって定着される可能性があるステントの表面積を減少させる)ことを含むことがある。ステントを除去および/または再位置決めする能力を維持しながらステントのずれを低減する1つの方法は、ずれ防止表面テクスチャを有するようにステントの外側表面を設計することを含むことがある。例えば、ステント・スキャフォールドは、ステントの表面摩擦を改善するグリップ構造(例えばマイクロパターン・グリップ構造)を含むことがある。増大された表面摩擦が、ステントを適所に定着させ、ステントのずれのリスクを低減させ得る。マイクロパターン表面テクスチャを含む例示的な医療装置が、以下に開示されている。
【0031】
図1は、ステント110として示される、例示的な植込み型医療装置を示す図である。ただし、ステントとして示されているが、植込み型医療装置110は、内視鏡的、皮下的、経皮的、または外科的に導入されて、食道、腸、結腸、尿道、気管、気管支、胆管、または血管などの器官、組織、または内腔内に位置決めされ得る、いくつかの装置のうちのいずれであってもよい。ステント110は、様々な医療用途のために体管腔内に位置決めされるように構成される可能性がある。例えば、ステント110は、体管腔内の狭窄を治療するために使用されることもある。さらに、ステント110は、食物またはその他の消化された物質が隣接する組織に直接接触することなくその内部を通るための通路を提供するために使用されることもある。本明細書に記載の例は、例えば食道消化管、ならびに胃腸消化管、脈管、尿路、胆道、気道、および腎管において利用される可能性があると企図されている。いくつかの場合には、ステント110(例えば腸ステント、食道ステント、脈管ステント、気道ステント、気管支ステントなど)は、拡張可能スキャフォールドを含むこともある。
【0032】
ステント110の拡張可能スキャフォールドは、第1の端部領域112と、第1の端部領域112とは反対側のステント110の端部に位置決めされた第2の端部領域114とを有することがある。いくつかの場合には、第1の端部領域112は、ステント110の第1の端部まで延び、第2の端部領域114は、第1の端部とは反対側のステント110の第2の端部まで延びることがある。ステントの拡張可能スキャフォールドは、第1の端部領域112と第2の端部領域114との間に延びて、またはその他のかたちで植込み型医療装置110の第1の端部領域112と第2の端部領域114との間に位置決めされて、開いた端部を有し、かつその内部に延びる内腔を画定する拡張可能管状フレームワークまたはスキャフォールドを形成する、中央領域116を含むことがある。図1に示されるように、第1の端部領域112および/または第2の端部領域114は、望ましい場合には、径方向に拡張された構成において中央領域116の外径より大きな拡大された外径を有するフレア部分を含むことがある。例えば、図1は、径方向に拡張された構成において中央領域116の外径より大きな外径をともに有する第1の端部領域112および第2の端部領域114を示している。他の実施形態では、第1の端部領域112および第2の端部領域114のうちの一方のみがフレア部分を含むこともあるし、あるいは望ましい場合には、ステント110の拡張可能スキャフォールドがその全長に沿って一定の外径を有することもある。
【0033】
複数の支柱部材118が、様々な異なる設計および/または幾何学的パターンで配置されて、ステント110の拡張可能管状フレームワークまたはスキャフォールドを形成する可能性がある。ステントのセル開口(例えば隣接する支柱部材の間の開口)、支柱の太さ、支柱の設計、ステントのセルの形状については多数の設計、パターン、および/または構成が企図されており、本明細書に開示される実施形態と共に利用される可能性がある。さらに、本明細書に開示される自己拡張可能ステントの例は、結合されて剛性および/または半剛性のステント構造を形成する1つまたは複数の支柱部材118を有するステントを含むこともある。本明細書に開示されるいくつかの例では、剛性および/または半剛性のフレームワーク構造を形成する支柱部材118の集合体が、スキャフォールドと呼ばれることもある。例えば、支柱部材118は、ステント110の拡張可能スキャフォールドまたはフレームワークを形成するように編み組み、撚り合わせ、編成、織り込み、編み合わせ、またはかぎ針編みなどされたワイヤまたはフィラメントであることがある。ステント110の支柱部材(例えばワイヤまたはフィラメント)118は、抑制を解かれたときに拡張された直径まで自己拡張するように構成されることもある。あるいは、支柱部材118は、単一の円筒形の管状のレーザ切断されたニチノールの管状部材であって、残っている部分が支柱部材118を形成する管状部材など、モノリシック構造(例えば円筒形の管状部材)から構成されることもある。ステント110のモノリシック構造は、抑制を解かれたときに拡張された直径まで自己拡張するように構成されることがある。
【0034】
本明細書に開示される少なくともいくつかの例におけるステント110の拡張可能スキャフォールドは、様々な材料で構成され得る。例えば、ステント110の拡張可能スキャフォールドは、金属(例えばニチノール)で構成されることもある。他の場合には、ステント110の拡張可能スキャフォールドは、高分子材料(例えばPET)で構成されることもある。さらに他の場合には、ステント110の拡張可能スキャフォールドは、金属材料と高分子材料の組合せで構成されることもある。さらに、ステント110の拡張可能スキャフォールド、またはその一部分は、生体吸収性および/または生物分解性材料を含むこともある。
【0035】
上述のように、いくつかの場合には、ステント110は、ステント110の拡張可能スキャフォールド118に沿って配置されたコーティング120(図1ではドット・パターンで示されている)を含むことがある。いくつかの例では、コーティング120は、第1のコーティング層またはベース・コーティング層と呼ばれることもある。ベース・コーティング層120は、追加のコーティング層(以下で述べる)の適用前に拡張可能スキャフォールドに対して適用されることがある。図1は、ステント110の全長および全周に沿って延びるコーティング120を示しているが、いくつかの例では、コーティング120はステント110の一部分のみに沿って配置されることもある。さらに、コーティング120は、ステント110を完全に被覆し、したがってステント110の拡張可能フレームワークまたはスキャフォールドの支柱118の間の網目(例えばセル開口)をまたいで、またはそれらの網目に架かるように延びることもある。換言すれば、コーティング120は、ステント110の拡張可能フレームワークまたはスキャフォールドを完全に取り囲んで、拡張可能フレームワークの網目を完全に閉塞し、それによりステント110の内腔への組織の内方成長を防止することがある。図1は、支柱部材118の外側表面に沿って延びるコーティング120を示しているが、コーティング120は、支柱部材118の内側表面に沿って延び、かつ/あるいは支柱部材118を完全に取り囲む、またはカプセル化することもあると企図されている。さらに、以下でさらに詳細に述べるように、コーティング120は、ステント・フィラメント18の内側表面および/または外側表面に対して高分子のシートまたはチューブを噴霧、浸漬、紡績、または取り付けることによって適用され得る。
【0036】
いくつかの場合には、コーティング120は、エラストマまたは非エラストマ材料を含むことがある。さらに、コーティング120の一部分は、生体安定性材料などの好適な材料で構成されることもある。例えば、コーティング120は、シリコーン、ポリテトラフルオロエチレン、またはポリウレタンなどの高分子材料、あるいは本明細書に開示されるものを含むその他の材料を含むこともある。さらに、コーティング120の一部分は、生体安定性材料であることもある。本明細書の説明では、生体安定性材料は、生分解しない材料と定義され得る。例えば、コーティング120は、シリコーン、ポリテトラフルオロエチレン、またはポリウレタンなどの高分子材料、あるいは本明細書に開示されるものを含むその他の材料を含むこともある。他の例では、コーティング120は、織物、PEEK、ABS、PLS、またはその他の好適な材料で構成されることもある。さらに、コーティング120は、3D印刷された材料を含むこともある。
【0037】
上述のように、いくつかの例では、ステント110の表面摩擦を増大させる1つまたは複数のフィーチャを含むようにステント110を設計することが望ましいことがある。例えば、図2は、いくつかの例において、ステント110のコーティングが、ベース・コーティング層120に加えて、またはベース・コーティング層120の代替として、複数のずれ防止要素で構成されたマイクロパターン・コーティング層122を含むことがあることを示している。総体としてマイクロパターン・コーティング層122を形成する個々のずれ防止要素の詳細については、図3を参照して以下でさらに詳細に説明する。マイクロパターン・コーティング層122は、ステント110を除去および/または再位置決めする能力を維持しながら、ステントのずれを低減するように設計されることがある。上述のように、また以下でさらに詳細に述べるように、マイクロパターン・コーティング層122を形成するずれ防止要素は、ステント110の表面摩擦を改善する複数のグリップ構造(例えばマイクロパターン・グリップ構造)を含むことがある。
【0038】
さらに、図2は、マイクロパターン・コーティング層122が、ステント110の拡張可能スキャフォールドの全長および/または全周に対して形成されずに、様々な構成でステント110の拡張可能スキャフォールドの選択された部分のみに沿って配置されることがあることを示している。例えば、図2は、螺旋構成でステント110の周りに配置されたマイクロパターン・コーティング層122を示している。換言すれば、マイクロパターン・コーティング層122は、ステント110の外側表面の周りに螺旋状に延びる1つ以上の、あるいは複数の螺旋状ストリップで構成される。
【0039】
図2は、ステント110に沿って延びる螺旋状マイクロパターン122がピッチ角を含むことを示している。ただし、他の例では、(1つまたは複数の螺旋状ストリップを形成する)マイクロパターン・コーティング層122のピッチ角は様々である可能性があることは理解され得る。換言すれば、他の例示的なステントの設計は、図2に示されるピッチ角よりも大きい、または小さいピッチ角を有する螺旋状に構成されたマイクロパターン・コーティング層122を含むことがある。
【0040】
さらに、図2は、ステント110の第1の端部領域112(ステント110のフレア部分沿いを含む)から第2の端部領域114(ステント110のフレア部分沿いを含む)まで延びるマイクロパターン・コーティング層122を示している。ただし、マイクロパターン・コーティング層122は、ステント110の任意の部分に沿って延びる可能性があるものと企図されている。例えば、マイクロパターン・コーティング層122は、中央領域116のみに沿って配置されることもある。他の例では、マイクロパターン・コーティング層122は、ステント110の中央領域116と、第1の端部領域112および/または第2の端部領域114のうちの1つまたは複数とに沿って配置されることもある。
【0041】
図3は、図2の詳細図である。図3は、図2に示されるマイクロパターン・コーティング層122が、マイクロパターン・コーティング層122の基部から延びる個々のずれ防止要素124の集合体(例えば複数のずれ防止要素124)で構成されることがあることを示している。各ずれ防止要素124は、互いに比較的近接した状態で離間され、それにより総体として、ステント110が体管腔内に配設されたときにずれる可能性を低下させる表面テクスチャまたはグリップ表面を形成し得る。
【0042】
図3は、個々のずれ防止要素124のそれぞれが円筒状(例えば柱状)に成形されることがあることをさらに示している。ただし、個々のずれ防止要素124は、様々な形状を有する可能性があるものと企図されている。例えば、各ずれ防止要素124は、丸形、方形、三角形、卵形、多角形、菱形、柱状、矩形、釘状、フック状、任意の好適な幾何学的形状、またはそれらの組合せであり得る。その他のずれ防止要素124の例示的な形状は、その全体を本願明細書に援用する米国特許出願公開第2013/0268063号に開示されている。
【0043】
いくつかの例では、マイクロパターン・コーティング層122(ずれ防止要素124を含む)は、最初にマイクロパターン・コーティング層122に利用される材料をベース・コーティング層120上に堆積させ、その後にマイクロパターン・コーティング層122をスタンピングして個々のずれ防止要素124を形成する(例えばマイクロパターン・コーティング層122の一部分をスタンピングして、総体としてマイクロパターン・コーティング層122を形成するずれ防止要素124のそれぞれを形成する)ことによって形成されることがある。いくつかの例では、マイクロパターン・コーティング層122は、ベース・コーティング120に対して塗布された液体シリコーンを含むことがある。例えば、液体シリコーンは、マイクロパターンがはめ込まれた金型上に成層されることがある。このシリコーン層を硬化させた後で、それは、追加の液体シリコーン層を介してベース・コーティング120に対して取り付けられ得る(例えば、成形されたマイクロパターン・シリコーンをベース・コーティング120に対して取り付けるために液体シリコーンの層が利用されることもある)。ただし、他の実施形態では、マイクロパターン・コーティング層は、ベース・コーティング層120上に直接成形されることもあるし、あるいは成形され、その後にベース・コーティング層120に対して適用されることもある。
【0044】
さらに、他の例では、図3に示されるずれ防止要素124は、ベース・コーティング層120をスタンピングすることによって形成されることがあることも理解され得る。例えば、いくつかの場合には、ずれ防止要素124は、ベース・コーティング層120の一部分をスタンピングして各ずれ防止要素124を形成することによって形成されることがある。
【0045】
さらに他の例では、マイクロパターン・コーティング層122(ずれ防止要素124を含む)は、ステント110のフィラメント118に沿ってスリーブ(例えばシース、チューブなど)を位置決めすることによってステント110に沿って形成されることもある。スリーブは、ステント110に対して位置決めされて固定される前にマイクロパターン・コーティング層122を含むように形成されていることもあることは理解され得る。例えば、図3に示されるマイクロパターン・コーティング層122を含むスリーブは、成形などによって第1の製造工程で形成されることがあり、これにより、その後に第2の製造工程で、このスリーブがステント110の外側表面に対して結合される。
【0046】
図4は、図2の線4-4に沿って取った断面を示す図である。図4は、ステント110の中央長手方向軸130の周りに配置されたステント・フィラメント118を示している。さらに、図4は、個々のフィラメント118のそれぞれを取り囲むベース・コーティング層120を示している。さらに、図4は、ベース・コーティング層120がステント110のセル開口をまたいで延びることがあることを示している。
【0047】
さらに、図4の詳細図は、ベース・コーティング層120、マイクロパターン・コーティング層122、および上述の複数のずれ防止部材124の断面図を示している。図4の詳細図に示されるように、ベース・コーティング層120は、厚さ「X」を有することがある。いくつかの例では、ベース・コーティング層120の厚さは、約20~80ミクロン、約30~70ミクロン、約40~60ミクロン、約40~70ミクロン、約30~80ミクロン、または約50ミクロンであることがある。さらに、図4の詳細図は、ベース・コーティング層120およびマイクロパターン・コーティング層122を含むステント・スキャフォールド上のコーティングの全厚は、厚さ「Y」を有することがあることを示している。いくつかの例では、ステント・スキャフォールド上のコーティングの全厚(ずれ防止部材124の先端までのベース・コーティング120とマイクロパターン・コーティング層122の厚さを合わせた厚さ)は、約40~220ミクロン、約80~180ミクロン、約60~200ミクロン、約80~170ミクロン、約100~170ミクロン、約90~150ミクロン、約100~140ミクロン、約110~130ミクロン、または約120ミクロンであることがある。
【0048】
(ベース・コーティング層120の他のより薄い部分と比較して)より厚いマイクロパターン・コーティング122の部分が、ステント110が体管腔内に配設されたときにずれる可能性を低減する外向きに延びる表面テクスチャまたはグリップ表面を形成する可能性がある一方で、コーティングのベース・コーティング層120の削減された厚さが、ステント110がより少ない抵抗で径方向につぶれる、かつ/または径方向に拡張することを可能にする可能性があることがあることは理解され得る。上記の説明から、例示的なステントの外側表面に対するマイクロパターン・コーティング層(例えばマイクロパターン・コーティング層122)の追加が、ステントの総コーティング体積を増大させることになることは理解され得る。さらに、いくつかの例では、この追加のコーティング体積が、ステント(例えばステント110)の軸方向の硬さおよび/または径方向の配設力を増大させる可能性があることも理解され得る。したがって、さらに、ステントの外側表面の一部分のみに沿ったマイクロパターン・コーティング層(例えば層122)の適用が、ステントの外側表面全体に沿って配置されたマイクロパターン・コーティング層を有することに関連する望ましくない影響を減少させる(例えば緩和する)可能性があることも理解され得る。換言すれば、ステントの選択された部分のみに沿ってマイクロパターン・コーティング層(例えば層122)を適用することによってステントの総体積を減少させる(それによりステントの硬さおよび径方向の配設力を改善する)ことが望ましいことがある。さらに、ステントのコーティングの全厚を減少させることは、ステントを送達装置内に装填しようとするときに追加の利点をもたらすこともある。例えば、コーティングを様々な位置に限定することは、コーティングの総体積を減少させ得るだけでなく、ステントの機械的性質を維持する助けにもなり得、短縮する力および径方向の力が大きく損なわれず、それによりステントがより大幅に減少した直径まで圧縮して、ステント送達装置に対するステントの装填を容易にすることができる。
【0049】
さらに、図4は、ずれ防止要素124が拡張可能スキャフォールドの支柱部材118から径方向に離れるように延びるように、ずれ防止要素124がステント110に沿って配置されることがあることを示している。上述のように、ベース・コーティング層120および/またはマイクロパターン・コーティング層122は、隣接する支柱118の間の網目または開口をまたいで延びることがある。さらに、図4は、マイクロパターン・コーティング層122が、ステント110がその内部に配設される可能性がある体管腔の内側表面と接触するように、ステント110の最外表面に位置決めされることがあることを示している。
【0050】
図4に示されるように、マイクロパターン・コーティング層122が、それと係合する例示的な体管腔の内側表面と接触および係合するように設計されたテクスチャ付きの、かつ/または粗面化された表面を形成することがあることは理解され得る。例えば、いくつかの場合には、マイクロパターン・コーティング層122のテクスチャ付きの表面は、ステント110の被覆された部分を例示的な体管腔の内側表面に沿って一時的に定着させることがある。
【0051】
図5は、別の例示的なステント210を示す図である。ステント210は、上述のステント110と形状および機能が同様であることがある。例えば、ステント210は、第1の端部領域212から第2の端部領域214まで延びる拡張可能スキャフォールド(拡張可能スキャフォールドを形成するように配置された1つまたは複数の編成されたフィラメント218を含む)を含むことがある。中央領域216は、第1の端部領域212と第2の端部領域214との間に延びることがある。第1の端部領域212および/または第2の端部領域214は、望ましい場合には、径方向に拡張された構成において中央領域216の外径より大きな拡大された外径を有するフレア部分を含むことがある。さらに、ステント210は、ステント210の拡張可能スキャフォールドに沿って配置されたベース・コーティング層220を含むこともある。
【0052】
図5は、さらに、ステント210の一部分が、上述したものと同様の複数のずれ防止要素から構成される別個のマイクロパターン・コーティング層222を含むことがあることを示している。ただし、図5に示されるマイクロパターン・コーティング層222は、「ドット」パターンで構成されることがある。換言すれば、マイクロパターン・コーティング層222は、マイクロパターン・コーティング層222のコーティングの他の不連続な個々のエリア(例えば他の不連続パッチ)から離間した、コーティングの複数の個々の不連続なエリア(例えば不連続パッチ)を含み、マイクロパターン・コーティング層222のそれぞれの不連続なエリアが、そこに形成された複数のずれ防止要素を含むことがある。マイクロパターン・コーティング層222の不連続パッチは、ステント210の長さおよび/または外周(あるいは任意の部分)に沿って配置されることがある。ずれ防止要素の各エリア/パッチ(例えば領域、部分など)は、分離しており、互いに離間されていることがある。さらに、ずれ防止要素の各エリア/パッチは、望ましい場合には、円形(例えばドット)など、所望の形状で構成されることがある。ずれ防止要素の全ての不連続エリアの総体が、図5に示されるようにマイクロパターン・コーティング層222と呼ばれることもある。
【0053】
いくつかの例では、マイクロパターン・コーティング層222の「ドット」の1つまたは複数は、ステント210の全長(またはその一部分)に沿って互いに位置合わせされることがある。ただし、他の例では、マイクロパターン・コーティング層222のドットは、互いに位置合わせされないこともある。むしろ、マイクロパターン・コーティング層222のドットは、ステント210に沿って様々なパターンで配置されることもある。いくつかの例では、マイクロパターン・コーティング層222のドットは、無作為な分布で配置されることもある。
【0054】
さらに、図5は、第1の端部領域212(ステント210のフレア部分沿いを含む)から第2の端部領域214(ステント210のフレア部分沿いを含む)まで延びるマイクロパターン・コーティング層222を示している。ただし、マイクロパターン・コーティング層222は、ステント210の任意の部分に沿って延びる可能性があるものと企図されている。例えば、マイクロパターン・コーティング層222は、中央領域216のみに沿って、あるいはステント210の中央領域216と、第1の端部領域212および/または第2の端部領域214のうちの1つまたは複数とに沿って、位置決めされることもある。
【0055】
図6は、図5の詳細図である。図3と同様に、図6は、図3に示されるマイクロパターン・コーティング層222が、マイクロパターン・コーティング層222の基部から径方向外向きに延びる個々のずれ防止要素224のアレイ(例えば複数のずれ防止要素224)を含むことがあることを示している。各ずれ防止要素224は、互いに比較的近接した状態で離間され、それにより総体として、ステント210が体管腔内に配設されたときにずれる可能性を低下させる表面テクスチャまたはグリップ表面を形成し得る。
【0056】
さらに、図6は、複数のずれ防止要素224が総体として円(例えば上述のドット・マイクロパターン・コーティング層222の1つの「ドット」)を形成するように配置されることがあることを示している。ずれ防止要素224は、本明細書に記載の他のマイクロパターン構造と同様に形成され得るものと企図されている。例えば、図6に示されるマイクロパターン・コーティング層222は、マイクロパターン・コーティング層222を形成するために利用される材料をベース・コーティング層220上に適用し、その後にマイクロパターン・コーティング層222をスタンピングして個々に成形されたずれ防止要素224にすることによって形成されることがある。あるいは、マイクロパターン・コーティング層222は、別個に成形され、その後にベース・コーティング層220に対して適用されることもある。さらに、図6に示されるマイクロパターン・コーティング層222は、ステント210の任意の部分に沿って配置される可能性がある。
【0057】
図7は、別の例示的なステント310を示す図である。ステント310は、上述の他の例示的なステントと形状および機能が同様であることがある。例えば、ステント310は、第1の端部領域312から第2の端部領域314まで延びる拡張可能スキャフォールド(拡張可能スキャフォールドを形成するように配置された1つまたは複数の編成されたフィラメント318を含む)を含むことがある。中央領域316は、第1の端部領域312と第2の端部領域314との間に延びることがある。第1の端部領域312および/または第2の端部領域314は、望ましい場合には、径方向に拡張された構成において中央領域316の外径より大きな拡大された外径を有するフレア部分を含むことがある。さらに、ステント310は、ステント310の拡張可能スキャフォールドに沿って配置されたベース・コーティング層320を含むこともある。
【0058】
図7は、さらに、ステント310の一部分が、上述したものと同様の複数のずれ防止要素から構成される別個のマイクロパターン・コーティング層322を含むことがあることを示している。ただし、図7に示されるマイクロパターン・コーティング層322は、複数の個々の「菱形」パターンを含むことがある。換言すれば、マイクロパターン・コーティング層322は、マイクロパターン・コーティング層322のコーティングの他の不連続な個々のエリア(例えば他の不連続パッチ)から離間した、コーティングの複数の個々の不連続なエリア(例えば不連続パッチ)を含み、マイクロパターン・コーティング層322のそれぞれの不連続なエリアが、そこに形成された複数のずれ防止要素を含むことがある。マイクロパターン・コーティング層322の不連続パッチは、ステント310の長さおよび/または外周(あるいは任意の部分)に沿って配置されることがある。ずれ防止要素の各エリア/パッチ(例えば領域、部分など)は、分離しており、互いに離間されていることがある。さらに、ずれ防止要素の各エリア/パッチは、望ましい場合には、菱形など、所望の形状で構成されることがある。ずれ防止要素の全ての不連続エリアの総体が、図7に示されるようにマイクロパターン・コーティング層322と呼ばれることもある。
【0059】
いくつかの例では、マイクロパターン・コーティング層322の「菱形」の1つまたは複数は、ステント310の全長(またはその一部分)に沿って互いに位置合わせされることがある。ただし、他の例では、マイクロパターン・コーティング層322の菱形は、互いに位置合わせされないこともある。むしろ、マイクロパターン・コーティング層322の菱形は、ステント310に沿って様々なパターンで配置されることもある。いくつかの例では、マイクロパターン・コーティング層322の菱形は、無作為な分布で配置されることもある。
【0060】
さらに、図7は、第1の端部領域312(ステント310のフレア部分沿いを含む)から第2の端部領域314(ステント310のフレア部分沿いを含む)まで延びるマイクロパターン・コーティング層322を示している。ただし、マイクロパターン・コーティング層322は、ステント310の任意の部分に沿って延びる可能性があるものと企図されている。例えば、マイクロパターン・コーティング層322は、中央領域316のみに沿って、あるいはステント310の中央領域316と、第1の端部領域312および/または第2の端部領域314のうちの1つまたは複数とに沿って、位置決めされることもある。
【0061】
図8は、図7の詳細図である。図8は、図7に示されるマイクロパターン・コーティング層322が、個々のずれ防止要素324のアレイ(例えば複数のずれ防止要素324)から構成されることがあることを示している。各ずれ防止要素324は、互いに比較的近接した状態で離間され、それにより総体として、ステント310が体管腔内に配設されたときにずれる可能性を低下させる表面テクスチャまたはグリップ表面を形成し得る。
【0062】
さらに、図8は、複数のずれ防止要素324が総体として菱形(例えば上述のマイクロパターン322の1つの「菱形」)を形成するように配置されることがあることを示している。ずれ防止要素324は、本明細書に記載の他のマイクロパターンと同様に形成され得るものと企図されている。例えば、図8に示されるマイクロパターン・コーティング層322は、マイクロパターン・コーティング層322を形成するために利用される材料をベース・コーティング層320上に適用し、その後にマイクロパターン・コーティング層322をスタンピングして個々に成形されたずれ防止要素324にすることによって形成されることがある。あるいは、マイクロパターン・コーティング層322は、別個に成形され、その後にベース・コーティング層320に対して適用されることもある。さらに、図8に示されるマイクロパターン・コーティング層322は、ステント310の任意の部分に沿って配置される可能性がある。
【0063】
いくつかの例(図7および図8に関連して述べた例示的なマイクロパターンなど)では、総体としてマイクロパターン・コーティング層322を形成する個々の菱形パッチのうちの1つまたは複数は、ステント310の隣接するフィラメント318の間に位置決めされることもある。換言すれば、マイクロパターン・コーティング層322は、個々のずれ防止要素324がステントの支柱318の間に完全に収まるエリア内に位置することにより、マイクロパターン・コーティング層322を有するエリアのステント310の全体的な径方向の厚さを低減するように形成されることがある。
【0064】
図2図8を参照して述べた上記の例は、いくつかの異なるマイクロパターン・コーティング層の構成を示しているが、様々な異なるマイクロパターン・コーティング層の構成が企図され得ることは理解され得る。例えば、マイクロパターン・コーティング層は、ステントの長手方向軸に沿って延びる縞、および/またはステントの外側表面の周りに円周方向に延びる帯を含むことがある。他の例では、マイクロパターン・コーティング層は、ステントのずれを低減するように配向されたシェブロン状のパターンを含むこともあるし、あるいは、マイクロパターン・コーティングは、フレア部分、中央領域、または遠位部分のみに適用されることもある。さらに、マイクロパターン・コーティング層は、ドット、方形、縞、螺旋などの組合せを含むこともある。
【0065】
図9は、別の例示的なステント410を示す図である。ステント410は、上述の他の例示的なステントと形状および機能が同様であることがある。例えば、ステント410は、第1の端部領域412から第2の端部領域414まで延びる拡張可能スキャフォールド(拡張可能スキャフォールドを形成するように配置された1つまたは複数の編成されたフィラメント418を含む)を含むことがある。さらに、ステント410は、ステント410の拡張可能スキャフォールドに沿って配置されたベース・コーティング420を含むことがある。さらに、ステント410は、ベース・コーティング420に沿って配置されたマイクロパターン・コーティング層422を含むことがあり、これにより、マイクロパターン・コーティング層422は、ステント410の全長に沿ってステント410の全周の周りに延びる。マイクロパターン・コーティング層422は、本明細書に開示される他のマイクロパターン・コーティング層と形状および機能が同様であることがある。例えば、図9の詳細図に示されるように、マイクロパターン・コーティング層422は、マイクロパターン・コーティング層422の基部から径方向外向きに延びる複数のずれ防止要素424を含むことがある。ずれ防止要素424は、ステント410の外部表面に対して追加のグリップ力を提供するように設計されることがある。
【0066】
さらに、図9は、未拡張の(例えば配設前の)構成のステント410を示している。換言すれば、図9に示されるステント410は、配設後の構成(図10に示される)のステント410と比較して小さな外径を有する。さらに、いくつかの場合には、1つまたは複数の「優先分離領域」426を含むようにステント410を設計することが望ましいことがある。図9に示されるステントの例では、個々に離間された分離領域426が、ステント410に沿って長手方向に延びることがある。例えば、マイクロパターン・コーティング層422は、ステント410の長さおよび外周に沿って所望の間隔で配置された複数の不連続な優先分離領域426を含むことがある。
【0067】
優先分離領域426は、ステント410がつぶれた配設前の構成から拡張した配設後の構成に拡張するにつれてマイクロパターン・コーティング層422の1つの領域がマイクロパターン・コーティング層422の隣接する領域から遠ざかるように移動することを可能にする、効果的に配置された孔、ノッチ、スリット、スロット、チャネル、溝、空隙、または応力集中部を含むことがあることは理解され得る。換言すれば、優先分離領域426は、マイクロパターン・コーティング層422の第1の部分がマイクロパターン・コーティング層422の第2の部分から分離し、第2の部分から離間するように設計されているステント410に沿った領域を画定することがあり、優先分離領域426は、マイクロパターン・コーティング422の分離した第1の部分と第2の部分との間に位置決めされている。図9に示される優先分離領域426は、ステント410がまだつぶれた構成から拡張した構成に拡張していないので、閉じた構成で位置決めされることは理解され得る。
【0068】
図9Aは、図9の線9A-9Aに沿って取った断面図を示している。図9Aは、個々のフィラメント418のそれぞれを取り囲むベース・コーティング層420を示している。さらに、図9Aは、ベース・コーティング層420がステント410のセル開口をまたいで延びることがあることを示している。さらに、図9Aは、ベース・コーティング層420上に配置されたマイクロパターン・コーティング層422を示している(例えば、マイクロパターン・コーティング層422は、ベース・コーティング420の外側表面に対して適用されることがある)。さらに、マイクロパターン・コーティング層422は、径方向に収縮した構成においてステント410の全周の周りに延びることもある。
【0069】
さらに、図9Aの詳細図は、ベース・コーティング層420に沿って配置されたマイクロパターン・コーティング層422(個々のずれ防止要素424を含む)を示している。さらに、図9Aは、マイクロパターン・コーティング層422の壁部438内に延びる優先分離領域426(例えばマイクロパターン・コーティング層422の外側表面から径方向内向きに延びる)を示している。図9Aに示されるように、優先分離領域426は、マイクロパターン・コーティング層422を通ってベース・コーティング層420の外側表面まで延びているなど、コーティングの壁部438内で部分的にしか延びていないこともある。ただし、いくつかの例では、優先分離領域426は、マイクロパターン・コーティング層422の厚さの一部のみを通して延びていることも、あるいはベース・コーティング層420の中まで、またはベース・コーティング層420を貫通して延びていることもあるものと企図されている。
【0070】
図10は、つぶれた構成(図9に示される)から拡張した構成に拡張した後のステント410を示す図である。ステント410が拡張するにつれて、マイクロパターン・コーティング層422は、マイクロパターン・コーティング層422に加えられる拡張力による応力の加わった状態で配置されることがあることは理解され得る。例えば、マイクロパターン・コーティング層422の一部分が伸長することがあり、したがって張力の加わった状態で配置されることがある。図10に示されるように、優先分離領域426のうちの1つまたは複数が開くこと(例えば分離すること)によって、応力を緩和(例えば軽減)し、それによりマイクロパターン・コーティング層422が望ましくない位置で裂けることを防止し、逆にマイクロパターン・コーティング層422の所定の部分が互いに分離するようにし得る。例えば、優先分離領域426がマイクロパターン・コーティング層422の隣接する部分どうしを分離する(例えば、マイクロパターン・コーティング層422の一部分をマイクロパターン・コーティング層422の別の部分から分離させる)ことができるようにすることによって、ステント410が体管腔内でより容易に径方向に拡張することができるようにし得る。
【0071】
図11は、図10に示される例示的な優先分離領域426のうちの1つを示す斜視図である。分かりやすいように、図11は、分離領域426に隣接して位置決めされることがあるステント・フィラメント418は示していないことに留意されたい。ただし、上記の説明では分離領域426がステントのセル開口(例えばステント・フィラメント418の間の空間)内に位置決めされるものとして示しているが、分離領域426はステント・フィラメント418沿いを含むステントの任意の部分に沿って位置決めされる可能性があるものと企図されていることは理解され得る。
【0072】
図11は、拡張した構成における優先分離領域426を示しており、このとき、マイクロパターン・コーティング層422の第1の部分432(ベース・コーティング420に沿って配置され、個々のずれ防止要素424を含む)は、マイクロパターン・コーティング層422の第2の部分434から分離しており、両者の間に優先分離領域426がある状態になっている。第1の部分432の第2の部分434からの分離により、マイクロパターン・コーティング層422の壁部438を貫通して延びる空隙(例えば開口、孔、穴など)436を作成し得る。ただし、いくつかの例では、空隙436は、マイクロパターン・コーティング層422の壁部438の一部のみを通して延びていることもあるとも企図される。図11に示されるように、ベース・コーティング層420は、径方向に拡張した構成において空隙436をまたいで延び、それにより空隙436をステント410の内腔から分離することがある。ベース・コーティング層420は、マイクロパターン・コーティング層422の材料よりも大きな弾性を有する材料で構成されて、第1の部分434が第2の部分434から分離するにつれてベース・コーティング層420がマイクロパターン・コーティング層422より容易に伸長するようになっていることもある。
【0073】
いくつかの場合には、空隙436の形状は、図10および図11に示される菱形とは異なることもある。例えば、空隙436の形状は、円形、矩形、卵形、三角形、多角形、任意の好適な幾何学的形状、またはそれらの組合せである可能性がある。さらに、いくつかの場合には、分離領域426は、それらがミシン目を形成するように位置合わせされることもある。換言すれば、分離領域426のサイズ、形状、および配列は、ミシン目を生じ、それによりステント410が拡張するにつれてコーティング420がミシン目に沿って裂け得る(例えば空隙が次々に順番に裂ける)ようになっていることがある。
【0074】
図11Aは、別の例示的なステント610を示す図である。ステント610は、上述の他の例示的なステントと形状および機能が同様であることがある。例えば、ステント610は、第1の端部領域612から第2の端部領域614まで延びる拡張可能スキャフォールド(拡張可能スキャフォールドを形成するように配置された1つまたは複数の編成されたフィラメント618を含む)を含むことがある。さらに、ステント610は、ステント610の拡張可能スキャフォールドに沿って配置されたベース・コーティング層620を含むことがある。さらに、ステント610は、ベース・コーティング層620に沿って配置されたマイクロパターン・コーティング層622を含むことがある。いくつかの場合には、ベース・コーティング層620は、ステント610の全長に沿ってステント610の全周の周りに延びることがある。マイクロパターン・コーティング層622は、本明細書に開示される他のマイクロパターン・コーティング層と形状および機能が同様であることがある。例えば、図11Aの詳細図に示されるように、マイクロパターン・コーティング層622は、マイクロパターン・コーティング層622の基部から径方向外向きに延びる複数のずれ防止要素624を含むことがある。ずれ防止要素624は、ステント610の外部表面に対して追加のグリップ力を提供するように設計されることがある。
【0075】
さらに、図11Aは、未拡張の(例えば径方向に収縮した、径方向に束縛された、配設前の)構成のステント610を示している。換言すれば、図11Aに示されるステント610は、配設後の径方向に拡張した構成(図11Cに示される)のステント610と比較して小さな外径を有する。径方向に収縮した構成では、ステント610は、径方向に拡張した構成のステント610の軸方向長さと比較して長い軸方向長さを有する。
【0076】
さらに、いくつかの場合には、1つまたは複数の「優先分離領域」626を含むようにステント610を設計することが望ましいことがある。図11Aに示されるステントの例では、個々に離間された分離領域626が、ステント610に沿って長手方向に離間されていることがある。例えば、マイクロパターン・コーティング層622は、ステント610の長さおよび外周に沿って所望の間隔で配置された複数の不連続な優先分離領域626を含むことがある。
【0077】
優先分離領域626は、ステント610が径方向につぶれた配設前の構成から径方向に拡張した配設後の構成に拡張するにつれてマイクロパターン・コーティング層622の1つの領域がマイクロパターン・コーティング層622の隣接する領域に対して相対的に移動することを可能にする、効果的に配置された孔、ノッチ、スリット、スロット、チャネル、溝、空隙、または応力集中部を含むことがあることは理解され得る。図11Aに示される優先分離領域626は、ステント610が径方向に拡張して拡張した構成になる前の径方向につぶれた軸方向に細長い構成である状態では、開いた構成(例えば菱形に似ている)で位置決めされていることは理解され得る。換言すれば、ステント610が軸方向に細長くなることによって、優先分離領域626を開いて、マイクロパターン・コーティング層622における優先分離領域626の両側の部分を離間させ得る。
【0078】
図11Bは、図11Aに示される例示的な優先分離領域626のうちの1つを示す斜視図である。分かりやすいように、図11Bは、分離領域626に隣接して位置決めされることがあるステント・フィラメント618は示していないことに留意されたい。ただし、上記の説明では分離領域626がステントのセル開口(例えばステント・フィラメント618の間の空間)内に位置決めされるものとして示しているが、分離領域626はステント・フィラメント618沿いを含むステント610の任意の部分に沿って位置決めされる可能性があるものと企図されていることは理解され得る。
【0079】
図11Bは、ステント610が径方向につぶれた構成であるときの優先分離領域626を示しており、このとき、マイクロパターン・コーティング層622の第1の部分632(ベース・コーティング620に沿って配置され、個々のずれ防止要素624を含む)は、マイクロパターン・コーティング層622の第2の部分634から分離しており、両者の間に優先分離領域626がある状態になっている。第1の部分632の第2の部分634からの分離により、マイクロパターン・コーティング層622の壁部を貫通して延びる空隙(例えば開口、孔、穴など)636を作成し得る。ただし、いくつかの例では、空隙636は、マイクロパターン・コーティング層622の壁部の一部のみを通して延びていることもあるとも企図される。図11Bに示されるように、ベース・コーティング層620は、径方向につぶれた構成において空隙636をまたいで延び、それにより空隙636をステント610の内腔から分離することがある。ベース・コーティング層620は、マイクロパターン・コーティング層622の材料よりも大きな弾性を有する材料で構成されて、第1の部分634が第2の部分634から分離するにつれてベース・コーティング層620がマイクロパターン・コーティング層622より容易に伸長するようになっていることもある。
【0080】
いくつかの場合には、空隙636の形状は、図11Bに示される菱形とは異なることもある。例えば、空隙636の形状は、円形、矩形、卵形、三角形、多角形、任意の好適な幾何学的形状、またはそれらの組合せである可能性がある。
【0081】
図11Cは、径方向につぶれた構成(図11Aに示される)から径方向に拡張した構成に径方向に拡張した後のステント610を示す図である。ステント610がつぶれた構成から拡張した構成にシフトするにつれて、ステント610が軸方向に収縮して軸方向の長さが短くなり、それが分離領域626を閉じさせ、マイクロパターン・コーティング層622の優先分離領域626の両側の部分を接近させることになり得ることは理解され得る。これにより、マイクロパターン・コーティング層622は、実質的に連続的にステント610の外側表面にわたって延びることになり得る。図11Cに示されるように、優先分離領域626は、閉じた構成であるときには、ステント610の長手方向軸に対して直交するように位置合わせされ、円周方向に延びることがある。したがって、優先分離領域626の円周方向の両端は、ステント610が径方向につぶれた軸方向に細長い構成から径方向に拡張した軸方向に収縮した構成に移行するときに遠ざかることがあり、かつ/または優先分離領域626の軸方向の両端は、ステント610が径方向につぶれた軸方向に細長い構成から径方向に拡張した軸方向に収縮した構成に移行するときに接近することがある。したがって、優先分離領域626の円周方向の両端は、ステント610が径方向に拡張した軸方向に収縮した構成から径方向につぶれた軸方向に細長い構成に移行するときに接近することがあり、かつ/または優先分離領域626の軸方向の両端は、ステント610が径方向に拡張した軸方向に収縮した構成から径方向につぶれた軸方向に細長い構成に移行するときに遠ざかることがある。
【0082】
図12は、別の例示的なステント510を示す図である。ステント510は、上述の他の例示的なステントと形状および機能が同様であることがある。例えば、ステント510は、第1の端部領域512から第2の端部領域514まで延びる拡張可能スキャフォールド(拡張可能スキャフォールドを形成するように配置された1つまたは複数の編成されたフィラメント518を含む)を含むことがある。さらに、ステント510は、ステント510の拡張可能スキャフォールドに沿って配置されたベース・コーティング520を含むことがある。さらに、ステント510は、ベース・コーティング層に沿って配置されたマイクロパターン・コーティング層522を含むことがあり、これにより、マイクロパターン・コーティング層522は、ステント510の全長に沿ってステント510の全周の周りに延びる。マイクロパターン・コーティング層522は、本明細書に開示される他のマイクロパターン・コーティング層と形状および機能が同様であることがある。例えば、図12の詳細図に示されるように、マイクロパターン・コーティング層522は、マイクロパターン・コーティング層522の基部から径方向外向きに延びる複数のずれ防止要素524を含むことがある。ずれ防止要素524は、ステント510の外部表面に対して追加のグリップ力を提供するように設計されることがある。
【0083】
さらに、図12は、未拡張の(例えば配設前の)構成のステント510を示している。換言すれば、図12に示されるステント510は、配設後の構成(図13に示される)のステント510と比較して小さな外径を有する。さらに、上述のものと同様に、いくつかの場合には、1つまたは複数の優先分離領域526を含むようにステント510を設計することが望ましいことがある。ただし、図12に示されるステントの例では、分離領域526が、ステント510の長手方向軸に沿って延びる、より長い、連続的な直線状の「ストリップ」を含むこともある。いくつかの場合には、各優先分離領域526は、いくつかの場合においてステント510の全長に沿っていることがあるマイクロパターン・コーティング層522の全長にわたって延びる。
【0084】
例えば、優先分離領域526は、ステント510がつぶれた配設前の構成から拡張した配設後の構成に拡張するにつれてマイクロパターン・コーティング層522の1つの領域がマイクロパターン・コーティング層522の隣接する領域から遠ざかるように移動することを可能にする、効果的に配置された直線状のスリット、チャネル、溝、または応力集中部を含むことがあることは理解され得る。換言すれば、優先分離領域526は、マイクロパターン・コーティング層522の第1の部分がマイクロパターン・コーティング層522の第2の部分から分離しており、第2の部分から離間するように設計されているステント510に沿った領域を画定することがあり、優先分離領域526は、マイクロパターン・コーティング522の分離した第1の部分と第2の部分との間に位置決めされている。図12に示される優先分離領域526は、ステント510がまだつぶれた構成から拡張した構成に拡張していないので、閉じた構成で位置決めされることは理解され得る。
【0085】
図12Aは、図12の線12A-12Aに沿って取った断面図を示している。図12Aは、個々のフィラメント518のそれぞれを取り囲むベース・コーティング層520を示している。さらに、図12Aは、ベース・コーティング層520がステント510のセル開口をまたいで延びることがあることを示している。さらに、図12Aは、ベース・コーティング層520上に配置されたマイクロパターン・コーティング層522を示している(例えば、マイクロパターン・コーティング層522は、ベース・コーティング層520の外側表面に対して適用されることがある)。さらに、マイクロパターン・コーティング層522は、径方向に収縮した構成においてステント510の全周の周りに延びることもある。
【0086】
さらに、図12Aの詳細図は、ベース・コーティング層520に沿って配置されたマイクロパターン・コーティング層522(個々のずれ防止要素524を含む)を示している。さらに、図12Aは、マイクロパターン・コーティング層522の壁部538内に延びる優先分離領域526(例えばマイクロパターン・コーティング層522の外側表面から径方向内向きに延びる)を示している。図12Aに示されるように、優先分離領域526は、マイクロパターン・コーティング層522を通ってベース・コーティング層520の外側表面まで延びているなど、コーティングの壁部538内で部分的にしか延びていないこともある。ただし、いくつかの例では、優先分離領域526は、マイクロパターン・コーティング層522の厚さの一部のみを通して延びていることも、あるいはベース・コーティング層520の中まで、またはベース・コーティング層520を貫通して延びていることもあるものと企図されている。
【0087】
図13は、つぶれた構成(図12に示される)から拡張した構成に拡張した後のステント510を示す図である。上述のように、ステント510が拡張するにつれて、マイクロパターン・コーティング層522は、マイクロパターン・コーティング層522に加えられる拡張力による応力の加わった状態で配置されることがあることは理解され得る。したがって、図9図11を参照して上述した方法と同様に、マイクロパターン・コーティング層522の隣接する部分が優先分離領域526に沿って分離し、それによりステント表面に沿った長手方向チャネル528を作成することがあり、その長手方向チャネル528内で、ベース・コーティング層520の一部分が、マイクロパターン・コーティング層522の互いに分離した長手方向ストリップの間に露出している。
【0088】
図13に示されるように(また上述のように)、優先分離領域526のうちの1つまたは複数が開くこと(例えば分離すること)によって、ステント配設力によって与えられる応力を緩和(例えば軽減)し、それによりマイクロパターン・コーティング層522が望ましくない位置で裂けることを防止し、逆にマイクロパターン・コーティング層422の所定の部分が互いに分離するようにし得る。例えば、優先分離領域526がマイクロパターン・コーティング層522の隣接する部分どうしを分離する(例えば、マイクロパターン・コーティング層522の一部分をマイクロパターン・コーティング層522の別の部分から分離させる)ことができるようにすることによって、ステント410が体管腔内でより容易に径方向に拡張することができるようにし得る。
【0089】
図13Aは、図13の線13A-13Aに沿って取った断面図を示している。上述のように、図13Aは、拡張した構成のステント510を示している。図13Aは、個々のフィラメント518のそれぞれを取り囲むベース・コーティング層520を示している。さらに、図13Aは、ベース・コーティング層520がステント510のセル開口をまたいで延びることがあることを示している。さらに、図13Aは、ベース・コーティング520上に配置されたマイクロパターン・コーティング層522を示している(例えば、マイクロパターン・コーティング層522は、ベース・コーティング520の外側表面に対して適用されることがある)。
【0090】
さらに、図13Aの詳細図は、ベース・コーティング520に沿って配置されたマイクロパターン・コーティング層522(個々のずれ防止要素524を含む)を示している。さらに、図13Aは、優先分離領域526に沿って拡張したマイクロパターン・コーティング層522を示しており、このとき、優先分離領域526は、互いに遠ざかるように移動した、または分離した、マイクロパターン・コーティング層522の分離した部分(例えば長手方向ストリップ)の間にベース・コーティング層520を露出させる拡張された「チャネル」528を形成する。換言すれば、マイクロパターン・コーティング層522が拡張するにつれて、マイクロパターン・コーティング層522の一部分がマイクロパターン・コーティング層522の隣接する部分から分離して、優先分離領域526に沿ったチャネル528を作成する。図13Aに示されるように、ベース・コーティング層420は、径方向に拡張した構成ではチャネル528をまたいで延び、それによりチャネル528をステント510の内腔から分離することがある。ベース・コーティング層520は、マイクロパターン・コーティング層522の材料よりも大きな弾性を有する材料で構成されて、マイクロパターン・コーティング層522の第1の長手方向ストリップがマイクロパターン・コーティング層522の第2の長手方向ストリップから分離するにつれてベース・コーティング層520がマイクロパターン・コーティング層522より容易に伸長するようになっていることもある。
【0091】
図12図13Aは、優先分離領域526を、ステント510の全長(または全長の一部分)に沿って延びる直線状の長手方向ストリップであるものとして説明しているが、優先分離領域526がステント510に沿った他の構成を含むこともあることは理解され得る。例えば、分離領域526は、螺旋構成でステント510に沿って延びることもある。
【0092】
上述のように、本明細書に記載のマイクロパターン・コーティング層のうちのいずれかは、本明細書に記載のステントが目標部位に隣接して位置決めされた(例えば食道または腸内で隣接して配置された)ときに、そのステントが長手方向に変位する、または体管腔の内側表面に対して相対的にずれることを防止するように構成されることがあることは理解され得る。いくつかの場合には、マイクロパターン・コーティング層は、ずれ防止要素の具体的な設計および/またはサイズに基づいて様々な異なるテクスチャを含み得る。例えば、表面テクスチャは、体管腔の壁部に沿って突出する、体管腔の壁部内に部分的に突出する、かつ/または体管腔の壁部を貫通して突出する、あるいはその他の方法で体管腔の壁部と係合することによって、マイクロパターン・コーティング層と体管腔(例えば食道または腸)の組織との間にある程度の相互作用(例えば表面摩擦、機械的連結、面結合(interface)、係合など)をもたらすように構成されることがある、点、スパイク、スパー(spur)、リブ、バンプ、リッジ、突起などを含み得る。マイクロパターン・コーティング層のテクスチャ付き表面が体管腔の組織と係合することにより、ステントが体管腔内の植込み時に体管腔に対して長手方向に変位する、またはずれることをまず防止し得る。マイクロパターン・コーティング層の組成(表面テクスチャを含む)は、体管腔の組織(例えば食道または腸の内側表面)との摩擦および/または接着を生じることがあり、それにより、ステントが体管腔に対して長手方向に変位する、またはずれることを防止し得る。例えば、いくつかの場合には、表面テクスチャは、体管腔の内側表面を「掴む」ように設計されることもある。
【0093】
本明細書に開示されるステントのいずれかの様々な構成要素に使用されることが可能な材料は、医療装置に一般的に関連する材料を含み得る。ただし、これは、材料を本明細書に開示される材料に限定することが意図されているわけではない。逆に、本明細書に開示される任意のステントの様々な構成要素に使用されることが可能な材料は、金属、金属合金、高分子(そのうちの一部の例は以下に開示されている)、金属高分子複合体、セラミック、およびそれらの組合せなど、あるいはその他の好適な材料を含み得る。好適な高分子のいくつかの例は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ポリオキシメチレン(POM、例えばデュポン社(DuPont)製のDELRIN(登録商標))、ポリエーテルブロックエステル、ポリウレタン(例えばPolyurethane 85A)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエーテルエステル(例えばディー・エス・エム・エンジニアリング・プラスチックス社(DSM Engineering Plastics)製のARNITEL(登録商標))、エーテルまたはエステル系共重合体(例えばブチレン/ポリ(アルキレンエーテル)フタレートおよび/またはデュポン社製のHYTREL(登録商標)などのその他のポリエステルエラストマ)、ポリアミド(例えばバイエル社(Bayer)製のDURETHAN(登録商標)またはエルフ・アトケム社(Elf Atochem)製のCRISTAMID(商標))、エラストマポリアミド、ブロックポリアミド/エーテル、ポリエーテルブロックアミド(PEBA、例えば商標PEBAX(登録商標)で入手可能)、エチレンビニルアセテート共重合体(EVA)、シリコーン、ポリエチレン(PE)、MARLEX(登録商標)高密度ポリエチレン、MARLEX(登録商標)低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン(例えばREXELL(商標))、ポリエステル、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリパラフェニレンテレフタルアミド(例えばKEVLAR(登録商標))、ポリスルホン、ナイロン、ナイロン12(イー・エム・エス・アメリカン・グリロン社(EMS American Grilon)製のGRILAMID(登録商標)など)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PFA)、エチレンビニルアルコール、ポリオレフィン、ポリスチレン、エポキシ、ポリ塩化ビニリデン(PVdC)、ポリ(スチレン-b-イソブチレン-b-スチレン)(例えばSIBSおよび/またはSIBS 50A)、ポリカーボネート、イオノマー、生体適合性高分子、その他の好適な材料、またはそれらの混合物、組合せ、共重合体、および高分子/金属複合体などを含む。いくつかの実施形態では、シースは、液晶高分子(LCP)と混合されることができる。例えば、その混合物は、最大で約6パーセントのLCPを含有することができる。
【0094】
好適な金属および金属合金のいくつかの例は、304V、304L、および316LVステンレス鋼などのステンレス鋼、軟鋼、線形弾性および/または超弾性ニチノールなどのニッケルチタン合金、ニッケルクロムモリブデン合金(例えばINCONEL(登録商標)625などのUNS:N06625、HASTELLOY(登録商標) C-22(登録商標)などのUNS:N06022、HASTELLOY(登録商標) C276(商標)などのUNS:N10276、およびその他のHASTELLOY(登録商標)合金など)、ニッケル銅合金(例えばMONEL(登録商標) 400、NICKELVAC(商標) 400、およびNICORROS(登録商標) 400などのUNS:N04400)、ニッケルコバルトクロムモリブデン合金(例えばMP35-N(商標)などのUNS:R30035)、ニッケルモリブデン合金(例えばHASTELLOY(登録商標) ALLOY B2(商標)などのUNS:N10665)、その他のニッケルクロム合金、その他のニッケルモリブデン合金、その他のニッケルコバルト合金、その他のニッケル鉄合金、その他のニッケル銅合金、ならびにその他のニッケルタングステンまたはタングステン合金などの他のニッケル合金、コバルトクロム合金、コバルトクロムモリブデン合金(例えばELGILOY(登録商標)およびPHYNOX(登録商標)などのUNS:R30003)、白金富化ステンレス鋼、チタン、それらの組合せ、あるいはその他の任意の好適な材料を含む。
【0095】
少なくともいくつかの実施形態では、本明細書に記載のステントの様々な構成要素は、放射線不透過性材料でドープされる、または放射線不透過性材料で構成されるなどして、放射線不透過性材料を含むこともある。放射線不透過性材料は、医療処置中に蛍光透視スクリーン上に比較的明るい像を生み出すことができる、または別の撮像技術を実施することができる材料として理解される。この比較的明るい像が、本明細書に記載のステントの様々な構成要素についてユーザがその位置を決定するのを助ける。放射線不透過性材料のいくつかの例は、限定されるわけではないが、金、白金、パラジウム、タンタル、タングステン合金、および放射線不透過性充填剤が装荷された高分子材料などを含む可能性がある。さらに、同じ結果を得るために、他の放射線不透過性マーカ・バンドおよび/またはコイルが、本明細書に記載のステントの様々な構成要素の設計に組み込まれることもある。
【0096】
いくつかの実施形態では、ある程度の磁気共鳴撮像(MRI)適合性が、本明細書に記載のステントの様々な構成要素に付与される。例えば、記載のステントの様々な構成要素は、実質的に像を歪ませず、実質的なアーチファクト(例えば像中のギャップ)を生じない材料で構成されることがある。例えば、特定の強磁性材料は、MRI像中にアーチファクトを生じることがあるので、好適ではないことがある。本明細書に記載のステントの様々な構成要素は、MRIマシンが撮像することができる材料で構成されることもある。これらの特性を呈するいくつかの材料は、例えば、タングステン、コバルトクロムモリブデン合金(例えばELGILOY(登録商標)およびPHYNOX(登録商標)などのUNS:R30003)、ニッケルコバルトクロムモリブデン合金(例えばMP35-N(商標)などのUNS:R30035)、ならびにニチノールなどを含む。
【0097】
本開示は、多くの点で、単なる例示であることを理解されたい。詳細、特に形状、サイズ、およびステップの配列については、本開示の範囲を逸脱することなく変更が加えられ得る。これは、適切な範囲まで、1つの例示的な実施形態の特徴のいずれかが他の実施形態で使用されることも含み得る。もちろん、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲を表現する文言によって定義される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図9A
図10
図11
図11A
図11B
図11C
図12
図12A
図13
図13A