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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】狭帯域緑色蛍光体
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/59 20060101AFI20240624BHJP
   F21V 9/30 20180101ALI20240624BHJP
【FI】
C09K11/59
F21V9/30
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022560949
(86)(22)【出願日】2021-03-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-19
(86)【国際出願番号】 EP2021058221
(87)【国際公開番号】W WO2021204588
(87)【国際公開日】2021-10-14
【審査請求日】2022-11-01
(31)【優先権主張番号】102020204429.5
(32)【優先日】2020-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】599133716
【氏名又は名称】エイエムエス-オスラム インターナショナル ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】ams-OSRAM International GmbH
【住所又は居所原語表記】Leibnizstrasse 4, D-93055 Regensburg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク バウマン
(72)【発明者】
【氏名】ズィーモン ペシュケ
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ シュミート
【審査官】林 建二
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-527760(JP,A)
【文献】特表2019-533028(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0093011(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/00-11/89
H01L 33/00
H01L 33/48-33/64
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般組成式NaRbLiCs(LiSiO:Eを有する蛍光体であって、ここで、
- v+x+y+z+w=4;
1.16<v<1.20
0.94<x<0.98
0.90<y<0.94
0.80<z<0.84
0.10<w<0.14であり、かつ
- E=Euである、蛍光体。
【請求項2】
二重発光を有さない、請求項1記載の蛍光体。
【請求項3】
発光ピークを1つのみ有する、請求項1記載の蛍光体。
【請求項4】
1つのみの前記発光ピークの両側が、連続的かつ厳密に単調な勾配を有する、請求項記載の蛍光体。
【請求項5】
一般組成式Na 1.18 0.96 Rb 0.92 Li 0.82 Cs 0.12 (Li SiO :Euを有する、請求項1記載の蛍光体。
【請求項6】
前記蛍光体の結晶構造が正方晶系である、請求項1記載の蛍光体。
【請求項7】
空間群I4/mで結晶化する、請求項記載の蛍光体。
【請求項8】
前記蛍光体が、529nm~539nmの範囲のピーク波長を有する、請求項1記載の蛍光体。
【請求項9】
前記蛍光体が、40nm~45nmの半値幅を有する、請求項1記載の蛍光体。
【請求項10】
請求項1記載の蛍光体を備えている、照明装置。
【請求項11】
- 一次電磁放射線を放出するように設定されている半導体層列と、
- 前記蛍光体を備えており、かつ前記一次電磁放射線を二次電磁放射線に少なくとも部分的に変換する変換素子と
を備えている、請求項10記載の照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体、および特に該蛍光体を備えた照明装置に関する。
【0002】
コンシューマーエレクトロニクスの分野では、メーカーは、自社製品を販売するために独自のセールスポイントを見出そうと努力している。テレビ、パソコンのモニター、タブレット、スマートフォンなど、ディスプレイを搭載する多くの機器において、特に顧客にとっては明るく自然に忠実な色が重要である。
【0003】
液晶ディスプレイや他の大半の種類のディスプレイのバックライトに使用される光源では、3原色(赤色、青色および緑色)を加えて色を再現している。そのため、このようなディスプレイで表現できる色の範囲(色空間)は、3原色の色点により形成可能な三角形に限定される。これらは、3つのカラーフィルターによってバックライトのスペクトルから抽出される。しかし、これらのフィルターを透過する波長域はかなり広い。そのため、最大の色空間を得るためには、3つの狭帯域発光ピークからなるスペクトルを有する光源が必要となる。
【0004】
バックライト用LEDでは、通常、青色発光LEDチップに、発光ピークの幅ができるだけ狭い緑色および赤色の燐光体を組み合わせることで、適切な発光スペクトルが得られる。理想的には、発光ピークがカラーフィルターの透過帯域と完全に一致することで、光をできるだけ無駄にせずに最大限の効率が達成され、達成可能な色空間の縮小を招く異なるカラーチャネル間のオーバーラップ/クロストークが最小限に抑えられる。
【0005】
緑色のスペクトル範囲で狭帯域の光を発する蛍光体が求められている。
【0006】
本発明の課題の1つは、緑色のスペクトル範囲の放射線を放出し、かつ半値幅が狭い蛍光体を提示することである。さらに本発明の課題は、本明細書に記載された有利な蛍光体を備えた照明装置を提示することである。
【0007】
これらの課題は、独立請求項に記載の蛍光体および照明装置によって解決される。本発明の有利な実施形態および発展形態は、それぞれの従属請求項の主題である。
【0008】
蛍光体が提示される。本蛍光体には付活剤Eがドープされており、E=Eu、Ce、Ybおよび/またはMnである。特に、付活剤は蛍光体から放射線を放出する役割を担っている。蛍光体は、一般組成式NaRbLiCs(LiSiO:Eを有し、ここで、
- v+x+y+z+w=4;
- 0<v<4;
- 0<x<4;
- 0<y<4;
- 0<z<4;
- 0<w<4であり、
- E=Eu、Ce、Ybおよび/またはMnであり、好ましくはE=Eu単独であるか、またはCe、Ybおよび/もしくはMnとの組み合わせであり、特に好ましくはE=Euである。
【0009】
以下、蛍光体については組成式で記述する。与えられた組成式において、蛍光体がさらなる元素を例えば不純物の形で含むことが可能であり、これらの不純物は合計で、蛍光体中での重量割合がせいぜい1パーミルまたは100ppm(parts per million)または10ppmであることが好ましい。
【0010】
リチウムが2回記載されている組成式NaRbLiCs(LiSiO:Eの表記は、無機化学の技術分野の当業者には一般的に知られているものである。特にこの組成式は、リチウムが蛍光体の結晶構造内で異なる位置を占め得ることを当業者に明らかに示している。一般組成式NaRbLiCs(LiSiO:Eの代替表記として、NaRbCsLi12+zSi16:Eがある。
【0011】
本発明者らは、5種類のアルカリ金属を含む効率的な蛍光体の合成に成功した。
【0012】
少なくとも1つの実施形態によれば、蛍光体は、一般組成式NaRbLiCs(LiSiO:Eを有し、ここで、
- v+x+y+z+w=4;
- 0<v≦3;
- 0<x≦3;
- 0<y≦3;
- 0<z≦3;
- 0<w≦3であり、
- E=Eu、Ce、Ybおよび/またはMnであり、好ましくはE=Eu単独であるか、またはCe、Ybおよび/もしくはMnとの組み合わせであり、特に好ましくはE=Euである。
【0013】
驚くべきことに、5種類のアルカリ金属イオンを含む組成式NaRbLiCs(LiSiO:Eの蛍光体は、一次放射線で励起すると緑色のスペクトル範囲の発光または二次放射線を示し、かつ半値幅が狭い。本発明による蛍光体は、有利なことに、発光帯を1つのみ、あるいは発光ピークを1つのみ有する。これにより、温度が変化しても、蛍光体が放出する放射線の色度座標がせいぜいわずかにしかシフトしないことを保証することができる。特に、色度座標のシフトは、消光挙動も異なる2つの発光帯を有する蛍光体の場合よりも大幅に小さい。
【0014】
以下で、半値幅とは、発光ピークあるいは発光帯の最大値の半分の高さにおけるスペクトル幅であると理解され、略してFWHMまたは半値全幅(Full-width at half maximum)ともいう。
【0015】
少なくとも1つの実施形態によれば、蛍光体は、一般組成式NaRbLiCs(LiSiO:Eを有し、ここで、
- v+x+y+z+w=4;
- 0<v≦2;
- 0<x≦2;
- 0<y≦2;
- 0<z≦2;
- 0<w≦2であり、
- E=Eu、Ce、Ybおよび/またはMnであり、好ましくはE=Eu単独であるか、またはCe、Ybおよび/もしくはMnとの組み合わせであり、特に好ましくはE=Euである。
【0016】
少なくとも1つの実施形態によれば、蛍光体は、一般組成式NaRbLiCs(LiSiO:Eを有し、ここで、
- v+x+y+z+w=4;
- 0.05≦v≦1.50;
- 0.05≦x≦1.50;
- 0.05≦y≦1.50;
- 0.05≦z≦1.50;
- 0.05≦w≦1.50であり、
- E=Eu、Ce、Ybおよび/またはMnであり、好ましくはE=Eu単独であるか、またはCe、Ybおよび/もしくはMnとの組み合わせであり、特に好ましくはE=Euである。
【0017】
組成式NaRbLiCs(LiSiO:Eの蛍光体は、有利には、ピーク波長が529nm~539nmの範囲にあり、半値幅が40nm~45nmである。特に、蛍光体の発光スペクトルは発光ピークを1つしか有しておらず、したがって特に二重発光を示さない。つまり、蛍光体の発光は、特に相対的な最大値を有しておらず、ピーク波長に対応する絶対的な最大値のみを有する。これにより、非常に高い色純度、および非常に高い発光効率(LER)が達成される。
【0018】
本明細書における「ピーク波長」とは、蛍光体の発光スペクトルにおける波長であって、発光スペクトルあるいは発光帯において最大強度が存在するものをいう。
【0019】
少なくとも1つの実施形態によれば、蛍光体は、一般組成式NaRbLiCs(LiSiO:Eを有し、ここで、
- v+x+y+z+w=4;
- 0.50≦v≦1.50;
- 0.50≦x≦1.50;
- 0.50≦y≦1.50;
- 0.50≦z≦1.50;
- 0.05≦w≦0.5であり、
- E=Eu、Ce、Ybおよび/またはMnであり、好ましくはE=Eu単独であるか、またはCe、Ybおよび/もしくはMnとの組み合わせであり、特に好ましくはE=Euである。
【0020】
組成式A(LiSiO:E[式中、Aは、2種類のアルカリ金属イオンを表す]の既知の蛍光体もすでに、緑色のスペクトル範囲にピーク波長を有し、かつ半値幅が狭い。RbLi(LiSiO:Eu2+およびRbNa(LiSiO:Eu2+は、発光ピークを1つのみ有し、ピーク波長が530nmであり、半値幅が42nmである狭帯域緑色蛍光体の例である(Ming Zhao et al., Advanced Materials, 2018, 1802489, “Next-Generation Narrow-Band Green-Emitting RbLi(Li3SiO4)2:Eu2+ Phosphor for Backlight Display Application”; Hongxu Liao et al., Advanced Functional Materials 2019, 1901988, “Polyhedron Transformation toward Stable Narrow-Band Green Phosphors for Wide-Color-Gamut Liquid Crystal Display”)。
【0021】
また、組成式A(LiSiO:E[式中、Aは、2種類のアルカリ金属イオンを表す]の蛍光体が、青色のスペクトル範囲にピーク波長を有する狭帯域の発光をする例もある。そのような蛍光体の一例として、471nmにピーク波長を有し、半値幅がわずか22.4nmであるRbNa(LiSiO:Eu2+が挙げられる(Hongxu Liao et al., Angewandte Chemie, 2018, 130, p 1-5, “Learning from a Mineral Structure toward an Ultra-Narrow-Band Blue-Emitting Silicate Phosphor RbNa3(Li3SiO4)4:Eu2+”)。
【0022】
しかし、組成式A(LiSiO:E[式中、Aは、2種類のアルカリ金属イオンを表す]を有する既知の蛍光体には、青色のスペクトル範囲に発光ピークを1つ有し、緑色のスペクトル範囲に発光ピークを1つ有する、好ましくない二重発光を示す例も存在する。例えば、486nmに発光ピークを示すとともに530nmにも発光ピークを示す(Na0.50.5(LiSiO:Euや、515nmに発光ピークを示すとともに598nmにも発光ピークを示すNaK(LiSiO:Euが挙げられる(Ming Zhao et al., Light: Science & Applications, 2019, “Emerging ultra-narrow-band cyan-emitting phosphor for white LEDs with enhanced color rendition”; Daniel Dutzler et al., Angewandte Chemie Int. Ed. 2018, 57, 1-6, “Alkali Lithosilicates: Renaissance of a Reputable Substance Class with Surprising Luminescence Properties”)。
【0023】
組成式A(LiSiO:Eのアルカリ金属イオンAの数を3種類または4種類に増やすと、蛍光体は専ら二重発光を示すようになる。例えば、蛍光体Cs4-x-y-zRbNaLi[LiSiO:Euは、473nmに発光ピークを示すとともに、531nmにも発光ピークを示し(F. Ruegenberg et al., Chemistry, A European Journal, 2020, 26, 1-8, “A Double-Band Emitter with Ultranarrow-Band Blue and Narrow-Band Green Luminescence”; Fig. 10)、蛍光体CsKNa1.98-yLi(LiSiO:0.02Eu2+(0≦y≦1)は、485nmに発光ピークを示すとともに、526nmにも発光ピークを示し(Wei Wang et al., Chemistry of Materials 2019, “Photoluminescence Control of UCr4C4-Typed Phosphors with Superior Luminous Efficiency and High Color Purity via Controlling Site-Selection of Eu2+ Activators”)、蛍光体RbNaK(LiSiO:Eu2+およびCsNaK(LiSiO:Eu2+はそれぞれ、約480nm/約485nmに発光ピークを示すとともに、約531nmにも発光ピークを示す(Ming Zhao et al., Advanced Optical Materials, 2018, “Discovery of New Narrow-Band Phosphors with the UCr4C4-Related Type Structure by Alkali Cation Effect”)。
【0024】
組成式A(LiSiO:Eの既知の蛍光体から、蛍光体中に異なるアルカリ金属イオンが多く存在するほど、二重発光、ひいては青色のスペクトル範囲の発光が増加する傾向が明確に見て取れた。しかし、特にバックライト用途では、光をできるだけ無駄にせずに最大限の効率を達成し、異なるカラーチャネル間のオーバーラップ/クロストークを最小限に抑えるために、緑色のスペクトル範囲に発光ピークを1つのみ有する狭帯域蛍光体が必要とされる。
【0025】
それだけに、本発明による一般式NaRbLiCs(LiSiO:E[式中、A(LiSiO:EにおけるAは、5種類のアルカリ金属イオン、すなわちリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムを表す]の蛍光体の発光スペクトルが、緑色のスペクトル範囲に発光ピークを1つしか有しておらず、したがって有利にも二重発光を示さないことは、なおさら驚くべきことである。つまり、蛍光体の発光は、特に相対的な最大値を有しておらず、ピーク波長に対応する絶対的な最大値のみを有する。
【0026】
少なくとも1つの実施形態によれば、蛍光体は、一般組成式NaRbLiCs(LiSiO:Eを有し、ここで、
- v+x+y+z+w=4;
- 1.00≦v≦1.40;
- 0.80≦x≦1.20;
- 0.80≦y≦1.20;
- 0.60≦z≦1.00;
- 0.05≦w≦0.30であり、
- E=Eu、Ce、Ybおよび/またはMnであり、好ましくはE=Eu単独であるか、またはCe、Ybおよび/もしくはMnとの組み合わせであり、特に好ましくはE=Euである。
【0027】
少なくとも1つの実施形態によれば、蛍光体は、一般組成式NaRbLiCs(LiSiO:Eを有し、ここで、
- v+x+y+z+w=4;
- 1.08≦v≦1.28;
- 0.86≦x≦1.06;
- 0.82≦y≦1.02;
- 0.72≦z≦0.92;
- 0.05≦w≦0.22であり、
- E=Eu、Ce、Ybおよび/またはMnであり、好ましくはE=Eu単独であるか、またはCe、Ybおよび/もしくはMnとの組み合わせであり、特に好ましくはE=Euである。
【0028】
少なくとも1つの実施形態によれば、蛍光体は、一般組成式NaRbLiCs(LiSiO:Eを有し、ここで、
- v+x+y+z+w=4;
- 1.16≦v≦1.20;
- 0.94≦x≦0.98;
- 0.90≦y≦0.94;
- 0.80≦z≦0.84;
- 0.10≦w≦0.14であり、
- E=Eu、Ce、Ybおよび/またはMnであり、好ましくはE=Eu単独であるか、またはCe、Ybおよび/もしくはMnとの組み合わせであり、特に好ましくはE=Euである。
【0029】
好ましい一実施形態では、E=EuまたはEu2+である。Eu2+を付活剤とした場合、特に効率の良い蛍光体が存在することが判明した。
【0030】
一実施形態によれば、付活剤Eは、0.1モル%~20モル%、1モル%~10モル%、0.5モル%~5モル%、2モル%~5モル%のモル%量で存在することができる。Eの濃度が高すぎると、濃度消光による効率の低下を招くことがある。以下で、付活剤E、特にEuまたはEu2+のモル%のデータは、蛍光体中のLi、K、Na、Rbおよび/またはCsのモル割合に対するモル%データであると理解される。
【0031】
少なくとも1つの実施形態によれば、蛍光体は、330nm~500nm、好ましくは340nm~460nm、特に好ましくは360nm~450nmの一次放射線で励起可能である。
【0032】
少なくとも1つの実施形態によれば、蛍光体は、正方晶系で、あるいは正方晶系の結晶構造で結晶化する。
【0033】
少なくとも1つの実施形態によれば、蛍光体は、空間群I4/mで結晶化する。好ましくは、格子定数a、bおよびcにおいて、10.9Å≦a≦11.1Å、10.9Å≦b≦11.1Å、および6.2Å≦c≦6.4Åである。特に好ましくは、格子定数a、b、cにおいて、a=b=11.0063(5)Åであり、c=6.3336(3)Åである。
【0034】
少なくとも1つの実施形態によれば、蛍光体は、組成式Na1.180.96Rb0.92Li0.82Cs0.12(LiSiO:Euを有する。
【0035】
蛍光体Na1.180.96Rb0.92Li0.82Cs0.12(LiSiO:Euは、緑色のスペクトル範囲にある534nmにピーク波長を有し、かつ半値幅が約42nmで狭帯域であることを特徴とする。この蛍光体は、半値幅が非常に狭く、また該蛍光体の発光スペクトルが発光ピークを1つしか有しないという特性から、既知の緑色蛍光体と比較して、極めて高い色純度および極めて高い発光効率を示す。蛍光体の主波長は、約543nmである。
【0036】
主波長とは、非スペクトル(多色)光混合を、同様の色調知覚をもたらすスペクトル(単色)光で表現する方法である。CIE色空間では、ある色の点とCIE-x=0.333、CIE-y=0.333の点とを結ぶ線を、2点の空間の輪郭に当たるように外挿することができる。当該の色に近い交点は、その交点における純粋なスペクトル色の波長として、その色の主波長を表す。したがって、主波長は、人間の目で知覚される波長である。
【0037】
例えば、蛍光体RbNaK(LiSiO:Eu2+およびCsNaK(LiSiO:Eu2+が青色のスペクトル範囲の発光と緑色のスペクトル範囲の発光との二重発光を示すのに対し、本発明による蛍光体Na1.180.96Rb0.92Li0.82Cs0.12(LiSiO:Eu2+は、驚くべきことに発光ピークを1つしか示さず、したがって二重発光を示さない。
【0038】
よって、本発明者らは、驚くほど有利な特性を有する新規な緑色蛍光体を提供できることを見出した。
【0039】
本蛍光体の製造方法は、他の多くの蛍光体製造方法と比較して非常に簡便に実施することができる。合成は650℃~900℃、特に700℃~850℃または750℃~800℃の範囲の適度な温度で行われるため、非常にエネルギー効率が高い。そのため、例えば使用するオーブンへの要求が少ない。出発物質は市販のものを安価に入手でき、毒性もない。
【0040】
本発明はさらに、照明装置に関する。特に、本照明装置は、蛍光体を備えている。この点で、蛍光体のすべての実施形態および定義が本照明装置にも適用され、その逆も該当する。
【0041】
照明装置が提示される。本照明装置は、一般組成式NaRbLiCs(LiSiO:Eを有する蛍光体を備えており、ここで、
- v+x+y+z+w=4;
- 0<v<4;
- 0<x<4;
- 0<y<4;
- 0<z<4;
- 0<w<4であり、
- E=Eu、Ce、Ybおよび/またはMnであり、好ましくはE=Eu単独であるか、またはCe、Ybおよび/もしくはMnとの組み合わせであり、特に好ましくはE=Euである。
【0042】
少なくとも1つの実施形態によれば、照明装置は、半導体層列を備えている。半導体層列は、一次電磁放射線を放出するように設定されている。
【0043】
少なくとも1つの実施形態によれば、半導体層列は、少なくとも1つの第III-V族化合物半導体材料を有する。半導体材料は、例えばAlIn1-n-mGaN(それぞれ0≦n≦1、0≦m≦1、およびn+m≦1である)のような窒化物系化合物半導体材料である。ここで、半導体層列は、ドーパントに加え、追加成分を有することも可能である。ただし、簡略化のため、半導体層列の必須成分、すなわちAl、Ga、InおよびNについて、たとえこれらが少量のさらなる物質で部分的に置換および/または補足されていてもよい場合であっても、これらのみを示す。特に、半導体層列は、InGaNから形成されている。
【0044】
半導体層列は、少なくとも1つのpn接合を有する活性層および/または1つ以上の量子井戸構造を有する活性層を含む。照明装置の動作中、活性層で電磁放射線を発生させる。放射線の波長または発光極大は、特に330nm~500nmの波長、好ましくは340nm~460nmの波長、特に好ましくは360nm~450nmの波長の好ましくは紫外域および/または可視域にある。
【0045】
少なくとも1つの実施形態によれば、一次放射線の波長または発光極大は、330nm~400nm、好ましくは360nm~400nmの紫外域、または400nm~460nm、好ましくは400nm~450nmの青色域にある。これらの領域の一次放射線で蛍光体を特に効率よく励起できることが判明した。
【0046】
少なくとも1つの実施形態によれば、照明装置は、発光ダイオード、略してLED、特に変換LEDである。照明装置は、白色または緑色の光を発するように設定されていることが好ましい。
【0047】
照明装置は、照明装置中に存在する蛍光体と組み合わせて、完全変換で緑色光を発し、部分変換で白色光を発するように設定されていることが好ましい。
【0048】
少なくとも1つの実施形態によれば、照明装置は、完全変換で緑色光を発するように設定されている。照明装置は、一般組成式NaRbLiCs(LiSiO:Eを有する蛍光体を唯一の蛍光体として備えることができる。本実施形態の照明装置は、例えば映画館、オフィスまたは家庭におけるビデオ投影、ヘッドアップディスプレイ、演色評価数または色温度が調整可能な光源、店舗照明またはFCIランプ(「Feeling of Contrast Index」)などの用途に適合したスペクトルを有する光源など、飽和した緑色の発光が必要な用途に特に好適である。FCIランプは、特にカラーコントラスト指数の高い白色光を発生するように設計された照明装置である。本実施形態の変換用発光ダイオードまたは照明装置は、特に舞台照明におけるカラースポットライト、壁面照明またはムービングヘッドライトにも好適である。少なくとも1つの実施形態によれば、照明装置は、変換素子を備えている。特に、変換素子は、蛍光体を備えているか、または蛍光体からなる。蛍光体は、一次電磁放射線を二次電磁放射線に少なくとも部分的または完全に変換する。
【0049】
少なくとも1つの実施形態によれば、照明装置の全放射線は、白色混合放射線である。本実施形態の照明装置または変換素子は、本蛍光体に加えて赤色蛍光体を備えることができる。本実施形態の照明装置は、特にディスプレイなどの表示素子のバックライトに好適である。
【0050】
少なくとも1つの実施形態によれば、蛍光体は、一次電磁放射線を二次電磁放射線に部分的に変換する。これは、部分変換とも称することができる。その場合、照明装置から出る全放射線は、一次放射線および二次放射線、特に白色混合放射線で構成されている。
【0051】
少なくとも1つの実施形態によれば、変換素子は、本蛍光体に加えて、第2および/または第3の蛍光体を備えている。例えば、これらの蛍光体は母材に埋め込まれている。あるいはこれらの蛍光体は、コンバータセラミック中に存在していてもよい。
【0052】
照明装置は、赤色のスペクトル範囲からの放射線を放出するための第2の蛍光体を備えることができる。
【0053】
実施形態例
組成式Na1.180.96Rb0.92Li0.82Cs0.12(LiSiO:Euを有する実施形態例ABを、以下のように製造した:LiCO、NaCO、KCO、RbCO、CsCO、SiO、およびEuを表1に示す量で混合し、この混合物を、開放型ニッケルるつぼでフォーミングガス雰囲気(N:H=80:20)下に750℃の温度まで4時間加熱した。また、100%H雰囲気下、または最大20%がNであり残部はHであるフォーミングガス雰囲気下で加熱することも可能である。冷却後に蛍光体の緑色単結晶の凝集体が得られ、これをメノウ乳鉢で互いに分離した。
【0054】
【表1】
【0055】
この蛍光体は、電磁スペクトルの緑色のスペクトル範囲の発光を示す。単結晶回折法により、この蛍光体を組成式Na1.180.96Rb0.92Li0.82Cs0.12(LiSiO:Eu2+に割り当てることができる。使用した付活剤濃度ではEuの散乱寄与が無視できるため、Euは精密化で別途考慮しなかった。
【0056】
本発明のさらなる有利な実施形態および発展形態は、図面に関連して以下に説明される実施形態例から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1】本発明による蛍光体の一実施形態例の結晶構造の断面を示す図である。
図2】本発明による蛍光体の一実施形態例のX線回折粉末回折像のリートベルト精密化を示す図である。
図3】本発明による蛍光体の一実施形態例の発光スペクトルを示す図である。
図4】本発明による蛍光体の一実施形態例のクベルカ・ムンク関数を示す図である。
図5】2つの比較例の発光スペクトルを示す図である。
図6】本発明による蛍光体の一実施形態例の熱消光挙動を示す図である。
図7】照明器具の概略断面図である。
図8】照明器具の概略断面図である。
図9】照明器具の概略断面図である。
図10】比較例の発光スペクトルを示す図である。
【0058】
図1は、組成式Na1.180.96Rb0.92Li0.82Cs0.12(LiSiO:Eu2+を有する本発明による蛍光体の正方晶系の結晶構造を示している。塗りつぶされた円はRb原子(88.3%)およびCs原子(11.7%)、塗りつぶされていない円はRb原子(4.1%)およびK原子(95.9%)、線が引かれた塗りつぶされていない円はLi原子(33.0%)、線が引かれた塗りつぶされた円はLi原子(7.8%)およびNa原子(59.2%)を示している。斜線が引かれた大きな多面体はLiO四面体であり、格子状の線が引かれた小さな多面体はSiO四面体である。(LiSiO)単位は、SiO四面体およびLiO四面体を有し、酸素が四面体の角を占め、LiあるいはSiが四面体の中央を占めている。(LiSiO)単位は、(LiSiO部分構造を形成し、これは既知のリチウムケイ酸塩の(LiSiO部分構造に対応する(J.Hofmann, R. Brandes, R. Hoppe, Neue Silicate mit “Stuffed Pyrgoms”: CsKNaLi9{Li[SiO4]}4, CsKNa2Li8{Li[SiO4]}4, RbNa3Li8{Li[SiO4]}4, und RbNaLi4{Li[SiO4]}4, Z. Anorg. Allg.Chem., 1994, 620. 1495 - 1508.)が、この蛍光体は2種類のチャネルの占有が異なる点で既知のリチウムケイ酸塩と異なっている。(LiSiO部分構造は、結晶学的なc軸に沿って2種類のチャネルを形成している。第一の種類のチャネルは、重アルカリ金属であるCs、RbおよびKが占有している。ここで、KおよびRbは交互に配置されており、Rbの一部がCsで置換されているもの(11.7%)と、Kの一部がRbで置換されているもの(4.1%)とがある。第二の種類のチャネルは、軽アルカリ金属であるNaおよびLiが占有している。この第二の種類のチャネルでは、NaおよびLiの位置がすべて完全に占有されているわけではなく、Naの位置は、59.2%がNaで、7.8%がLiで占有され、Liの位置は、33%がLiで占有されている。電荷中性を確保するため、精密化の際に第二の種類のチャネルの占有率の合計を100%に設定した。Na1.180.96Rb0.92Li0.82Cs0.12(LiSiO:Eu2+の新規の結晶構造は、これまで知られていないものである。結晶構造は、CsNaKLi(LiSiOおよびCsNaRbLi(LiSiOの結晶構造と同構造である(J.Hofmann, R. Brandes, R. Hoppe, Neue Silicate mit “Stuffed Pyrgoms”: CsKNaLi9{Li[SiO4]}4, CsKNa2Li8{Li[SiO4]}4, RbNa3Li8{Li[SiO4]}4, und RbNaLi4{Li[SiO4]}4, Z. Anorg. Allg.Chem., 1994, 620. 1495 - 1508.)。このように、Liは結晶構造において、第一に(LiSiO部分構造内、第二に(LiSiO部分構造が形成するチャネル内の位置を占め、そのため組成式の好ましい表記は、Na1.180.96Rb0.92Li0.82Cs0.12(LiSiO:Eu2+であるが、ただし、Na1.180.96Rb0.92Cs0.12Li12.82Si16:Eu2+も使用可能である。この蛍光体は、空間群I4/mで結晶化する。結晶構造を、単結晶(詳細は下記表2、3および4)および粉末X線回折実験(図2)により求めた。
【0059】
Na1.180.96Rb0.92Li0.82Cs0.12(LiSiO:Eu2+の結晶学的データを表2に示す。
【0060】
【表2】
【0061】
Na1.180.96Rb0.92Li0.82Cs0.12(LiSiO:Eu2+の原子位置を表3に示す。
【0062】
【表3】
【0063】
Na1.180.96Rb0.92Li0.82Cs0.12(LiSiO:Eu2+の偏向異方性パラメーターを表4に示す。
【0064】
【表4】
【0065】
図2に、Na1.180.96Rb0.92Li0.82Cs0.12(LiSiO:EuのX線回折粉末回折像のリートベルト精密化を示す。測定されたX線粉末回折像から、蛍光体の高純度が明らかである。ここで、上図は、反射率の測定値と算出値とを重ね合わせたものである。下図は、反射率の測定値と算出値との差を示したものである。
【0066】
図3に、Na1.180.96Rb0.92Li0.82Cs0.12(LiSiO:Eu2+の発光スペクトルを示す。x軸に波長(ナノメートル)、y軸に相対強度(パーセント)をプロットしている。発光スペクトルを測定するために、本発明による蛍光体の粉末を、波長400nmの一次放射線で励起させた。この蛍光体は、ピーク波長が534nm、主波長が543nmである。半値幅は42.3nmであり、CIE色空間の色点は、座標CIE-x:0.259、CIE-y:0.697にある。このように、蛍光体の発光スペクトルは発光ピークを1つしか示さない。そのため、ピーク波長は絶対的な最大値であるだけでなく、発光スペクトル内の唯一の最大値でもある。
【0067】
本発明による蛍光体の粉末を波長460nmの一次放射線で励起させると(図示せず)、この蛍光体は、ピーク波長が534nm、主波長が542.7nmである。半値幅は43.5nmであり、CIE色空間の色点は、座標CIE-x:0.257、CIE-y:0.702にある。この場合も、蛍光体の発光スペクトルは発光ピークを1つしか示さず、ピーク波長は絶対的な唯一の最大値である。
【0068】
一方、図10に示す蛍光体Cs4-x-y-zRbNaLi[LiSiO:Euの発光スペクトルは、2つの発光ピークを示しており、したがって好ましくない二重発光を示していた。
【0069】
蛍光体の発光は、標準的なグリーンフィルターの透過範囲と大きく重なるため、光の損失が少なく、実現可能な色空間が広い。したがって、蛍光体Na1.180.96Rb0.92Li0.82Cs0.12(LiSiO:Eu2+は、特にディスプレイのバックライト用途の変換LEDに適している。
【0070】
図4に、Na1.180.96Rb0.92Li0.82Cs0.12(LiSiO:Eu2+について、規格化クベルカ・ムンク関数(KMF)を波長λ(nm)に対してプロットしたものを示す。ここで、KMFを次のように算出した:
KMF=(1-Rinf/2Rinf、ここで、Rinfは、蛍光体の拡散反射(反射率)に相当する。
【0071】
図4より、330nm~500nmの一次放射線で効率よく蛍光体を励起できることがわかる。KMFの値が高いということは、この範囲での吸収率が高いことを意味する。
【0072】
図5に、既知の蛍光体Lu(Al,Ga)12:Ce(G2)および(Sr,Ba)SiO:Eu(OS2)の発光スペクトルを示す。
【0073】
表5に、本発明による蛍光体Na1.180.96Rb0.92Li0.82Cs0.12(LiSiO:Eu2+(AB)のスペクトルデータと既知の蛍光体Lu(Al,Ga)12:Ce(G2)および(Sr,Ba)SiO:Eu(OS2)のスペクトルデータとの比較を示す。
【0074】
【表5】
【0075】
3つの蛍光体は、いずれも同様の主波長を示している。しかし、本発明による蛍光体ABは、著しく高い発光効率(LER)および著しく高い色純度を示している。その結果、色純度が向上し、全体的な効率も良好となる。
【0076】
図6に、本発明による蛍光体Na1.180.96Rb0.92Li0.82Cs0.12(LiSiO:Eu2+の熱消光挙動を示す。この蛍光体を25℃~225℃の異なる温度で波長400nmの一次放射線で励起させ、その際に、その発光強度を記録した。本発明による蛍光体は、変換LEDで一般的な温度、特に140℃以上の温度では、発光強度の損失をわずかにしか示さない。200℃でも、この損失はわずか10%である。よって、LuAl12:Ceよりもさらに優れた熱消光挙動を示す。したがって好ましいことに、この蛍光体は、より高い動作温度でも変換LEDにも使用することができる。
【0077】
図7図9にそれぞれ、本明細書に記載の照明装置の異なる実施形態、特に変換LEDの概略側面図を示す。
【0078】
図7図9の変換LEDは、本明細書に記載の本発明による蛍光体を少なくとも1つ備えている。さらに、変換LEDには、さらなる蛍光体または蛍光体の組み合わせが存在していてもよい。追加の蛍光体は当業者に知られているため、ここでは明示的に言及しない。
【0079】
図7による変換LEDは、基材10上に配置された半導体層列2を備えている。基材10は、例えば反射性を有するように形成されていてよい。半導体層列2の上方には、層状の変換素子3が配置されている。半導体層列2は、変換LEDの動作時に波長340nm~460nmの一次放射線を放出する活性層(図示せず)を有する。変換素子3は、一次放射線Sのビーム経路に配置されている。変換素子3は、例えばシリコーン、エポキシ樹脂またはハイブリッド材料などの母材と、本発明による蛍光体4の粒子とを含む。
【0080】
さらに蛍光体4は、一次放射線Sを、変換LEDの動作中に少なくとも部分的または完全に、特に529nm~539nmのピーク波長を有する緑色のスペクトル範囲の二次放射線SAに変換することが可能である。蛍光体4は、母材中の変換素子3に製造公差内で均一に分配されている。
【0081】
あるいは蛍光体4は、母材中に濃度勾配を有して分配されていてもよい。
【0082】
あるいは母材が欠落して、蛍光体4がセラミックコンバータとして形成されていてもよい。
【0083】
変換素子3は、半導体層列2の放射線出射面2aおよび半導体層列2の側面の全領域にわたって施与されており、かつ半導体層列2の放射線出射面2aおよび半導体層列2の側面と機械的に直に接している。また、一次放射線Sは、半導体層列2の側面を通じて出射することもできる。
【0084】
変換素子3は、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、またはスプレーコーティング法によって施与することができる。さらに、変換LEDは電気接点(ここでは図示せず)を備えており、その設計および配置は当業者に知られている。
【0085】
あるいは変換素子は、プレハブであってもよく、いわゆるピックアンドプレースプロセスによって半導体層列2に施与することもできる。
【0086】
図8に、変換LED1のさらなる実施形態例を示す。変換LED1は、基材10上に半導体層列2を備えている。半導体層列2上に変換素子3が形成されている。変換素子3はプレートレットとして形成されている。プレートレットは、まとめて焼結された本発明による蛍光体4の粒子からなることができ、したがってセラミックプレートレットであってよく、またプレートレットが、例えば、ガラス、シリコーン、エポキシ樹脂、ポリシラザン、ポリメタクリレートまたはポリカーボネートを母材として有し、そこに蛍光体4の粒子が埋め込まれていてもよい。
【0087】
変換素子3は、半導体層列2の放射線出射面2aの全領域にわたって施与されている。特に、一次放射線Sは、半導体層列2の側面を経てではなく、主に放射線出射面2aを経て出射する。変換素子3は、例えばシリコーン製の接着層(図示せず)を用いて半導体層列2に施与されていてよい。
【0088】
図9による変換LED1は、凹部を有する筐体11を備えている。凹部内には、活性層(図示せず)を備えた半導体層列2が配置されている。変換LEDの動作中、活性層は、340nm~460nmの波長を有する一次放射線Sを放出する。
【0089】
変換素子3は、凹部内の層列のポッティング体として形成されており、例えばシリコーンなどの母材と、蛍光体4、例えばNa1.180.96Rb0.92Li0.82Cs0.12(LiSiO:Euとを含む。蛍光体4は、変換LED1の動作中に、一次放射線Sを二次放射線SAに少なくとも部分的に変換する。あるいは蛍光体は、一次放射線Sを完全に二次放射線SAに変換する。
【0090】
また、図7図9の実施形態例における蛍光体4が、半導体層列2または放射線出射面2aから空間的に離間して変換素子3内に配置されていることも可能である。これは、例えば、沈殿させるか、または筐体に変換層を施与することによって達成することができる。
【0091】
例えば、図9の実施形態とは対照的に、ポッティング体は、母材、例えばシリコーンのみからなることができ、その際、変換素子3は、ポッティング体上に、半導体層列2から離間して筐体11上およびポッティング体上の層として施与される。
【0092】
図面に関連して説明した実施形態例およびその特徴は、たとえそのような組み合わせが図面に明示されていなくても、さらなる実施形態例に従って互いに組み合わせることも可能である。さらに、図面に関連して説明した実施形態例は、一般部の説明に従って追加的または代替的な特徴を有することができる。
【符号の説明】
【0093】
1 照明装置または変換LED
2 半導体層列または半導体チップ
2a 放射線出射面
3 変換素子
4 蛍光体
10 基材
11 筐体
S 一次放射線
SA 二次放射線
LED 発光ダイオード
LER 発光効率
W ワット
lm ルーメン
λdom 主波長
ppm 百万分率
AB 実施形態例
g グラム
IR 相対強度
Mol% モル%
KMS クベルカ・ムンク関数
K ケルビン
cm センチメートル
nm ナノメートル
°2Θ 2シータ度
T 温度
℃ セルシウス度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10