IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ラジオメーター・メディカル・アー・ペー・エスの特許一覧

特許7508611血液中尿素の検出を改善するための混合したイオノフォアイオン選択性電極
<>
  • 特許-血液中尿素の検出を改善するための混合したイオノフォアイオン選択性電極 図1
  • 特許-血液中尿素の検出を改善するための混合したイオノフォアイオン選択性電極 図2
  • 特許-血液中尿素の検出を改善するための混合したイオノフォアイオン選択性電極 図3
  • 特許-血液中尿素の検出を改善するための混合したイオノフォアイオン選択性電極 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】血液中尿素の検出を改善するための混合したイオノフォアイオン選択性電極
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/333 20060101AFI20240624BHJP
   G01N 27/327 20060101ALI20240624BHJP
   G01N 27/38 20060101ALI20240624BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20240624BHJP
   G01N 27/27 20060101ALI20240624BHJP
   G01N 27/26 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
G01N27/333 331A
G01N27/327 353J
G01N27/38
G01N27/416 341G
G01N27/416 351A
G01N27/416 351B
G01N27/27 A
G01N27/26 381A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023014646
(22)【出願日】2023-02-02
(62)【分割の表示】P 2021077126の分割
【原出願日】2016-12-12
(65)【公開番号】P2023052859
(43)【公開日】2023-04-12
【審査請求日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】PA201500818
(32)【優先日】2015-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】500554782
【氏名又は名称】ラジオメーター・メディカル・アー・ペー・エス
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100104374
【弁理士】
【氏名又は名称】野矢 宏彰
(72)【発明者】
【氏名】ケーア,トマス
(72)【発明者】
【氏名】ミゲルスン,ローネ
(72)【発明者】
【氏名】サアアンスン,ポウル・ラウン
(72)【発明者】
【氏名】ヤコプスン,ハンス・ピーダ・ブロビェア
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-175275(JP,A)
【文献】特開平05-322843(JP,A)
【文献】特表平01-502360(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0060471(US,A1)
【文献】BAKKER E; ET AL,ION-SELECTIVE ELECTRODES BASED ON TWO COMPETITIVE IONOPHORES FOR DETERMINING EFFECTIVE STABILITY CON,ANALYTICAL CHEMISTRY,AMERICAN CHEMICAL SOCIETY,1998年01月15日,VOL:70, NR:2,PAGE(S):295 - 302,http://dx.doi.org/10.1021/ac970878h
【文献】LEE K S; ET AL,MULTIIONOPHORE-BASED SOLID-STATE POTENTIOMETRIC ION SENSOR AS A CATION DETECTOR FOR ION CHROMATOGRAPHY,SENSORS AND ACTUATORS B,ELSEVIER SCIENCE,1994年,VOL:20,PAGE(S):239 - 246,http://dx.doi.org/10.1016/0925-4005(94)01198-2
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26-27/49
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数回使用のセンサアレイを動作させる方法であって、前記センサアレイは、第1のイオン選択性電極及び第2のイオン選択性電極を含む2つ以上の異なるイオン選択性電極を備え、前記第1のイオン選択性電極は、(a)第1のイオノフォア及び(b)少なくとも第2のイオノフォアを備える膜を含み、前記第2のイオン選択性電極は、前記第2のイオノフォアを備える膜を含み、前記第1のイオノフォアは、前記第1のイオン選択性電極以外の前記センサアレイにおける任意のイオン選択性電極中に存在せず、
ただし、前記第1のイオノフォアが、前記第1のイオン選択性電極中以外には、前記センサアレイ中のいかなるイオン選択性電極中にも存在しない場合は除かれ、
前記方法は、
i.前記センサアレイを、1点較正の参照点を確立するための1種以上のリンス溶液と順に接触させるステップ、前記リンス溶液のそれぞれは、前記第1のイオノフォアが選択性であるイオンを実質的に欠いており、かつ前記第2のイオノフォアが選択性であるイオンを少なくとも含む、
ii.続いて前記センサアレイを生体由来のサンプルと接触させるステップを含む、方法。
【請求項2】
前記ステップiにおいて、前記センサアレイを、1種以上の較正溶液とさらに接触させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記任意のイオン選択性電極が、前記第2のイオン選択性電極である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のイオン選択性電極が、アンモニウム選択性電極、リチウム選択性電極、及びマグネシウム選択性電極から選択される、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記第1のイオン選択性電極が、アンモニウム選択性電極である、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記アンモニウム選択性電極が、尿素センサの一部である、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記尿素センサが、酵素層によって被覆されているアンモニウム選択性電極を備え、前記酵素層は、ポリマー及びウレアーゼを含む、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記酵素層は、前記酵素層を被覆する外層をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記アンモニウム選択性電極の膜が、ポリマーと、(a)アンモニウム選択性イオノフォア、及び(b)カルシウム選択性イオノフォア、カリウム選択性イオノフォア、及びナトリウム選択性イオノフォアから選択される更なるイオン選択性イオノフォアである2種のイオノフォアと、を含む、請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
ステップi及びiiが、いくつかのサイクルで繰り返される請求項1~のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
ステップi及びiiの1サイクルを完了するために要する時間が、15~60秒である、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体由来のサンプル中の様々な種の含有量を測定するための改善された複数回使用のセンサアレイ(multiple-use sensor)に関する。より具体的には、血液ガスに関する臨床現場即時(point-of-care、POC)検査の分野では、また、いわゆる代謝パネルの評価では、全血中の尿素濃度の信頼できる、迅速かつ正確な測定が必要である。特にPOC検査に関しては、POC環境は、患者の状態の迅速な評価を必要とする非常に容態が悪い患者を含んでいることから、可能な限り最高の速さで測定を行う必要がある。したがって、具体的には、単回使用又は複数回使用にかかわらず、現在一般に使用されているようなセンサカートリッジ形式で配備することができる尿素センサが必要である。本発明は、測定時間が短く、次の測定を実施し得る前の回復時間が短い高速で複数回使用のセンサアレイに関する。
【背景技術】
【0002】
共通の測定チャンバ(measuring chamber)中に配置された複数回使用のセンサアレイの動作では、センサは、次に詳細に説明するように、リンス溶液に全体的にセンサを曝して、次のサンプルのためにセンサを準備する。リンス溶液へのセンサのこの曝露は、センサが後にサンプル又は較正溶液に曝されるときに、差分シグナル(signal)値を得るための参照点としてセンサの状態値のいわゆる1点較正の確立を構成する。この原理は、電位値測定センサ(いわゆる電位差測定センサ)並びに電流測定センサ(アンペロメトリックセンサ)の両方に適用する。参照点という用語は、上記の様式で使用される電位差測定センサが、電気測定回路を完成させるための参照電極を必要としないことを示すものと理解するべきではない。上記の意味における参照点は、実際には、電位差測定センサの傾き及び標準電位を較正するために必要な較正点のうちの1つに他ならない。これはまた、センサを較正するために使用されるすべての溶液中に電位差測定センサの一次イオンを存在させることが一般に望ましい理由も説明する。一次イオンとは、ここでは、センサが最も選択する傾向がある(selective)イオンと理解されるべきである。電位差測定センサは、それらの一次イオン以外のイオンに曝されるときにシグナルを表示することも一般に認められている。これは、電位差測定センサメカニズムが、分子認識と、いわゆるイオノフォア分子に対する、一次イオンの結合と、それよりはるかに少ない程度での二次イオンの結合とも基づいているからである。この枠組みにおいて、用語「一次イオン」は、イオノフォアに最も特異的に結合するイオンを意味している。一次イオンの活性aと、適切な参照電極に対して記録された電位との関係は、以下の式:
E=E+(RT/nF)・ln[a
で記述することができる。
【0003】
この式は、イオン選択性電極に関するNernst式とも時として呼ばれる。一次イオンが溶液中に存在しないとき、対数関数内の項は非常に小さいことが理解することができる。もちろん、この場合の電位は負の無限大にはならず、それは物理的には無意味であろうが、それにもかかわらず、一次イオンが存在しないことから生じる問題点を正確に示している。実際の実験では、一次イオンが存在しないとき、ノイズ及び/又はドリフトによっても引き起こされうる(plagued)明確に定義されない電位が認められる。これは、イオン選択電極に関するNernst式の一般化を導き、それにより二次イオンの影響も考慮することができる。既知であり、しばしば適用される式は、二次干渉イオンを説明するために対数関数内に項が加えられている、いわゆるNicholskii-Eisenmann式:
E=E+S log[a+ΣKI,J(a(zI/zJ)
(式中、aはやはり一次イオンの活性であり、aも任意の二次イオンの活性である)、である。
【0004】
上記の理由により好ましいとされるような、複数回使用のセンサアレイのリンス溶液中にアンモニウムイオンも存在することを必要とする特殊な場合に関しては、尿素-アンモニウム転化バイオセンサ(urea-to-ammonium converting biosensor)の変換素子としてアンモニウム選択性電位差測定センサ(アンモニウム選択性電極)を配備している間は、アンモニウムイオンの存在は、以下で詳述するように、多くの化学的理由により望ましくないことを見出した。理解できるように、センサの正確な較正を得るために、一次イオンを存在させることが非常に好ましいことから、これはジレンマをもたらす。
【0005】
上記のように、アンモニウムイオンの存在は、いくつかの他のセンサに影響を与え、またいくつかの他のセンサにも有害であることを見出した。例えば、二酸化炭素のためのセンサの場合には、重炭酸イオンを含有する緩衝液が下に配設されているガス透過膜を使用するのが一般的である。最も一般的には、10mM~100mMの濃度の重炭酸ナトリウム溶液が使用される。二酸化炭素センサをも浸漬するリンス溶液中にアンモニウムイオンが存在する場合、アンモニウムイオンを含有する溶液と平衡状態にあって微量に存在するガスであるアンモニアは、内側の重炭酸ナトリウム水溶液中に拡散し、そこでアンモニウムイオンへと転化される。これにより二酸化炭素センサの機能が低下することになる。
【0006】
更に、他のイオンのためのセンサ、すなわちイオン選択性電極(ISE)は、特定の構造原理に応じていくつかの点で影響を受ける場合がある。今日、ほとんどすべてのPOCの複数回使用のセンサアレイに基づく血液ガス分析器は固体状態のISEを配備している。これらは、典型的には、イオン選択性膜の下に配設された混合した電子/イオン導体を有する。例えば、ポリオクチルチオフェン(poly-octyl thiophene、PEDOT)又はポリアニリン(polyaniline、PANI)等の電子導電性ポリマーを使用することができる。他の例としては、例えば、イオン選択性材料、ナトリウムバナジウムブロンズの固体状態内部参照系(solid state inner reference system)、及び接点材料を備える電極デバイスを開示している米国特許第6,805,781号に記載されているような遷移元素の酸化物が挙げられる。また、他の例としては、銀電極の上部に形成された塩化銀層の使用が挙げられる。上記のように、もしアンモニアがイオン選択性膜を通って拡散し、混合した導体層に到達すると、予想外の電位シフト又はドリフトが観察されることがある。これは、強塩基であるアンモニアが、導体と膜との界面において釣り合っている平衡に干渉する場合があるという事実に起因している。また、これが起こり得る正確なメカニズムはISEの構造原理によって決まる。
【0007】
最後に、アンペロメトリックセンサもまた、アンモニウムイオンの存在に不利な影響を受ける(suffer from)場合がある。これは、ポリマー膜、例えばアンペロメトリックセンサのためにも使用されるポリマー膜を通って拡散するアンモニアの能力によってもまた引き起こされる。よく知られているように、多くのこのようなセンサは、酸素を電子受容体として使用する酵素によって酸素から発生される過酸化水素の測定に基づいている。しばしば、過酸化水素の測定は、過酸化水素が酸化されて酸素分子へと戻る貴金属アノードを用いることよって行われる。このプロセスは、プロトンの生成を伴う。これにより、反応速度がpH依存性である貴金属電極上でのアノード反応によるフィードバック制御機構が作り出される。明らかに、確かにそうであるように、もしアンモニアが貴金属電極の表面に拡散すると、これにより過酸化水素検出のために起こる反応に影響を与える可能性がある。
【0008】
リンス溶液及び較正溶液中のアンモニアの存在に関して、ガスであるアンモニアはポリマー材料中を通って当然流出する可能性があり、それにより明らかに溶液の濃度とpHが変化しうる独自の問題が引き起こされる。これは、較正の精度に有害であり、結果に偏りをもたらす。
【0009】
たとえリンス溶液中にアンモニウムイオン有していないものを選択すべき場合であっても、例えば尿素センサのバイオセンサ層における尿素の加水分解によって発生したアンモニウムイオンは、非常に低い濃度でもアンモニウム選択性電極の電位を決定してしまう、という更なる問題がある。これは、アンモニウムがアンモニウムISEそれ自体の一次イオンであるためである。したがって、残りの極微量のアンモニウムが依然として電位発生の原因となることから、リンスレベル(level)に対応するベースライン電位を確立することは非常に困難になる。これは、以下で更に詳細に説明され、リンス溶液及び較正溶液の動作サイクル(operational cycle)を説明する。
【0010】
アンモニウム選択性電極の枠組みにおいて上で説明したが、これらを単独で使用する場合、尿素センサで使用する場合にかかわらず、複数回使用のセンサアレイに存在するイオン選択性電極の他のタイプについても同じであり、リンス時に明確な電位を確立するために、リンス溶液中における一次イオンそれぞれの存在が必要であるが、このようなイオンは他の電極に対して再び有害作用を引き起こす可能性がある。徹底的に調査したわけではないが、これは、リチウムイオン及びマグネシウムイオンのようないくつかのアニオンの組み合わせ及びカチオンの組み合わせの場合と同じ可能性がある。
【0011】
著者らの知る限りでは、血液ガス分析装置のための既存の尿素センサはこの問題を解決しようとはしていない。分析装置のサイクル時間が十分に長ければ、リンス中にアンモニウムイオンを有さないことの悪影響はあまり重大ではないように思われる。十分な時間及び体積のリンスを適用すれば、残留しているアンモニウムイオンの濃度は非常に低いレベルに低下することになる。しかしながら、非常に速いサイクル時間が必要であることから、この問題は悪化してきた。
【0012】
国際公開第2004/048960(A1)号は、カリウム、アンモニウム、及びナトリウムのような複数のイオンの測定のための疑似参照電極(pseudo reference electrode)として使用されるマルチイオノフォア膜電極を開示している。
【0013】
Lee et al.(1994)(K.S.Lee,J.H.Shin,M.J.Cha,G.S.Cha,M.Trojanowicz,D.Liu,H.D.Goldberg,R.W.Hower,R.B.Brown,”Multiionophore-Based Solid-State Potentiometric Ion Sensor as a Cation Detector for Ion Chromatography,” Sensors and Actuators,B20,1994,pp.239-246)は、例えば、カリウム、アンモニウム、及びナトリウム選択性のイオノフォアとしてバリノマイシン、ノナクチン、及びETH 2120を含むマルチイオン選択性膜電極を開示している。
【0014】
Bakker and Pretsch(1998)(Bakker E,Pretsch E.Ion-selective electrodes based on two competitive ionophores for determining effective stability constants of ion-carrier complexes in solvent polymeric membranes.Anal Chem 1998;70:295-302)は、リチウム選択性イオノフォア及びH選択性イオノフォアを含むリチウム選択性電極を開示している。
【0015】
Qin and Bakker(2002)(Yu Qin,Eric Bakker.Quantitive binding constants of H-selective chromoionophores and anion ionophores in solvent polymeric sensing membranes.Talanta 58(2002)909-918)は、アニオンイオノフォアとH選択性クロモイオノフォアとの組み合わせを開示している。
【0016】
米国特許第4,762,594号は、補償目的のために混合したイオノフォア電極を組み込むことによって人工参照(artificial reference)(電極)を発生させる方法に関する。米国特許は、とりわけ、少なくとも第1のイオン特異的センサ及び第2のイオン特異的センサを用いる較正測定のための方法を開示しており、第1のセンサは第1及び第2の異なる化学種にのみ感受性のある電極の組み合わせであり、第2のセンサは第2の種にのみ感受性がある。
【0017】
米国特許第5,580,441号は、測定イオンに応答して電位を発生するための第1のイオン選択性電極と、妨害イオンに応答する第2のイオン選択性電極とを備える装置を開示している。
【0018】
米国特許第6,805,781号は、イオン選択性材料と、バナジウムナトリウムブロンズの固体状態内部参照系と、接点材料とを含み、ナトリウムはブロンズ中に可逆的にインターカレートされ得る、電極装置を開示している。
【発明の概要】
【0019】
本発明の一態様は、複数回使用のセンサアレイに関するものであり、発明の態様1を参照されたい。
【0020】
本発明の別の態様は、センサアレイを動作させる方法に関するものであり、発明の態様5を参照されたい。
【0021】
本発明の第3の態様は、アンモニウム選択性電極に関するものであり、発明の態様9を参照されたい。
【0022】
本発明の第4の態様は、尿素センサに関するものであり、発明の態様10を参照されたい。
【0023】
本発明の第5の態様は、リンス溶液の使用に関するものであり、発明の態様11を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施例1の詳細な説明を参照し、平面尿素センサの構造を示す図である。
図2】イオン選択性膜に添加されたバリオンマイシンを有する、及び有していないアンモニウム選択性電極の応答を示す図であり、実施例2を参照されたい。
図3】イオン選択性膜に添加されたバリオンマイシンを有する、及び有していないアンモニウム選択性電極の応答を示す図であり、実施例2を参照されたい。
図4】複数回使用のセンサアレイの動作に関するものであり、多用途センサアレイ(multiuse sensor array)における尿素センサの電極応答を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、生体由来のサンプル中の様々な種を測定するためのセンサアレイに取り付けられた複数回使用のセンサの分野に関する。係る種は、H、Na、K、Li、Mg2+、Ca2+、NH 等のイオン種、並びに尿素、グルコース、ラクテート、クレアチン、クレアチニン等の非イオン種の両方である。尿素は、一般に使用されかつ好ましいタイプの尿素センサにおいて、尿素はウレアーゼによってNH へと酵素的に分解され、次いでイオン選択性電極によって検出される、という意味で、その検出は間接的であることから、特別な例である。
【0026】
本明細書で使用される場合、用語「複数回使用のセンサアレイ」は、長期間にわたって、典型的には多くの日、週、又は月にわたって分析器に取り付けられ、分析のために数回使用されるセンサアレイを意味することを意図している。センサアレイの寿命の間、センサアレイはリンス溶液で断続的に洗浄され、較正スケジュールに従って、分析対象のイオン及び分子を異なる濃度で含有する較正溶液で洗い流す。これにより、正確な較正機能の判定が可能になる。
【0027】
用語「イオノフォア」は、本明細書では、単純なイオンを結合することができる分子を指し、その結合は、ある特定の顕著な特徴を有する、すなわち1)イオノフォア-イオン複合体は、空のイオノフォアと、イオンへと容易に解離でき、2)複合体は、ある特定のイオノフォアがある特定のイオンと複合体を形成するように、選択的に形成され、3)その複合体は、マトリックス中において移動性であり、その中で溶解される。しばしば、イオノフォアは、標的イオンに対していくつかの結合を形成することができる分子ケージ又は多座配位性分子である。これは、特異性及び結合強度の両方を高める。
【0028】
イオノフォアの例としては、バリノマイシン、4-tert-ブチルカリックス[4]-アレーン-テトラ酢酸テトラエチルエステル(一般的にはナトリウムイオノフォアXとして知られている)、ノナクチン、クラウンエーテル、カリックスアレーン、トリアルキルアミン、及びリン酸エステルが挙げられる。
【0029】
アンモニウム選択性イオノフォアの実例は、生物学的に誘導された物質であるノナクチン(一般にアンモニウムイオノフォアIとして知られている)である。他の例としては、合成により誘導されたアンモニウムイオノフォア、例えば、国際公開第03/057649号、又はKim et al.,”Thiazole-Containing Benzo-Crown Ethers:A New Class of Ammonium-Selective Ionophores”(Anal.Chem.,2000,72(19),pp4683-4688)に記載されているものが挙げられる。
【0030】
カリウム選択性イオノフォアの実例は、バリノマイシン、ビス[(ベンゾ-15-クラウン-4)-4′-イルメチル]ピメレート(一般にカリウムイオノフォアIIとして知られている)、及び2-ドデシル-2-メチル-1,3-プロパンジ-イル-ビス[N-(5′-ニトロ(ベンゾ-15-クラウン-5)(一般にBME44として知られている)である。
【0031】
ナトリウム選択性イオノフォアの実例は、4-tert-ブチルカリックス[4]アレーン-テトラ酢酸テトラエチルエステル(一般にナトリウムイオノフォアXとして知られている)、メトキシエチルテトラエステルカリックス[4]アレーン(一般にMETEとして知られている)、及びモネンシンの誘導体である。
【0032】
リチウム選択性イオノフォアの実例は、N、N′-ジヘプチル-N,N′,5,5-テトラメチル-3,7-ジオキサノノアンジアミド(一般にリチウムイオノフォアIとして知られている)である。
【0033】
マグネシウム選択性イオノフォアの実例は、N、N″-オクタメチレンビス(N′-ヘプチル-N′-メチルマロンアミド(一般にマグネシウムイオノフォアIII又はETH 4030として知られている)である。
【0034】
複数回使用のセンサアレイ
上記したように、本発明は、とりわけ、測定チャンバ中に配置された複数回使用のセンサアレイを提供し、当該センサアレイは、第1のイオン選択性電極を含む2つ以上の異なるイオン選択性電極を備え、当該第1のイオン選択性電極は、(a)第1のイオノフォア及び(b)少なくとも1つの更なるイオノフォアを含む膜を含み、当該第1のイオノフォアは、第1のイオン選択性電極以外のセンサアレイにおける任意のイオン選択性電極中に存在しない。
【0035】
用語「センサアレイ」は、本明細書では、流体サンプルの対応する検体が実質的に同時にセンサによって測定され得るように配置されている2つ以上の異なるセンサの集合体を指すことを意図している。
【0036】
センサアレイ(すなわち、単一センサのアレイ)は、例えば、米国特許第8,728,288(B2)号に記載されているように、確実に各センサが実質的に同時にサンプルに曝されるために、測定チャンバセル構造中に配置される。
【0037】
センサアレイは、2つ以上の異なるイオン選択性電極を備えている。好ましくは、センサアレイは、少なくとも3つ、例えば少なくとも4つ、又は少なくとも5つの異なるイオン選択性電極を備える。
【0038】
第1のイオン選択性電極は、典型的には、アンモニウム選択性電極から選択される。
【0039】
第1のイオン選択性電極以外のセンサアレイ中のイオン選択性電極としては、典型的には、少なくともナトリウム選択性電極及びカリウム選択性電極が挙げられる。
【0040】
いくつかの興味深い実施形態では、第1のイオン選択性電極以外のセンサアレイ中のイオン選択性電極としては、典型的には、少なくともナトリウム選択性電極、カリウム選択性電極、及びカルシウム選択性電極が挙げられる。
【0041】
いくつかの興味深い実施形態では、センサアレイはまた、他の非イオン種、例えばグルコース、ラクテート、クレアチン、及びクレアチニンから選択される1種以上の非イオン種のためのセンサも含む。
【0042】
更に、センサアレイは、典型的には参照電極も含む。
【0043】
実施形態
センサアレイの1つの興味深い実施形態では、第1のイオン選択性電極は、アンモニウム選択性電極、リチウム選択性電極、及びマグネシウム選択性電極から選択される。特に、第1のイオン選択性電極は、アンモニウム選択性電極である。
【0044】
本発明の重要な変形例では、アンモニウム選択性電極は、尿素センサの一部を形成し、この実施形態によれば、尿素センサは、上に酵素層を有するアンモニウム選択性電極を備える。当該酵素層は、尿素をアンモニウムへと転化することができるウレアーゼ酵素を含み、アンモニウムは、最終的には、下にあるアンモニウム選択性電極によって検出される。
【0045】
アンモニウム選択性電極の1つの重要な変形例(例えば、尿素センサの一部であるとして)は、その膜が、ポリマーと、(a)アンモニウム選択性イオノフォア、及び(b)カ
ルシウム選択性イオノフォア、カリウム選択性イオノフォア、及びナトリウム選択性イオノフォアから選択される更なるイオン選択性イオノフォアである2種のイオノフォアと、を含むものである。
【0046】
アンモニウム選択性電極の更なる特徴は、「アンモニウム選択性電極」という項目において更に以下で記載されるものである。
【0047】
尿素センサの更なる特徴は、「尿素センサ」という項目において更に以下で記載されるものである。
【0048】
センサアレイを動作させる方法
本発明はまた、上で定義したセンサアレイを動作させる方法も提供し、その方法は、
i.センサアレイを1種以上のリンス溶液及び、任意選択で1種以上の較正溶液と順に接触させるステップであって、当該リンス溶液のそれぞれは当該第1のイオノフォアが選択する傾向があるイオンを実質的に欠いている、ステップと、
ii.続いてそのセンサアレイを生体由来のサンプルと接触させるステップと、を含む。
【0049】
本明細書で使用されるとき、例えば、リンス溶液に関して、「実質的に欠いている」という用語は、各構成成分(複数可)の含有量が1.0×10-6M未満であることを意味することを意図している。好ましくは、各構成成分(複数可)の含有量は、10×10-6M未満、例えば1.0×10-9M未満である。
【0050】
本明細書で使用されるとき、用語「生体由来のサンプル」は、生理学的液体から採取された液体サンプルを意味することを意図している。その実例は、血液(例えば全血、血漿、血清、血液分画等)、尿、透析液、及び胸膜のようなものである。
【0051】
通常の使用では、アイドル状態(idle state)にあり、測定を行う準備ができているとき、センサアレイは常にリンス溶液に浸される。典型的には、最適な性能のために、リンス溶液の組成は、逸脱条件が適用されないとき、例えば、低酸素症(超低酸素濃度(too low oxygen concentration))、高ナトリウム血症(超高ナトリウム濃度(too high sodium concentration))、又は提供患者が病気である場合に適用され得るあらゆる他の非標準状態等の逸脱条件が適用されないときには、生体由来のサンプルの組成に近くなるように選択される。サンプル、例えば全血サンプルを導入されるときは、残留しているリンス溶液は、好ましくは少量の気体(例えば純粋な空気又は酸素)を導入することによってセンサアレイから迅速に洗い流し、次いでサンプルをセンサアレイの前側に移動させる。そのとき、サンプルは、測定されるべき物質のいずれかの濃度よりも高い濃度又は低い濃度を有し得る。リンスレベルが正常未満である場合には、リンスレベルから上方に移動するか又は下方に移動するかのいずれかのセンサシグナルを想定することができる。これは、リンス溶液が1点較正と呼ばれる理由についても説明しており、その理由は、サンプル測定状態において、リンスとサンプルとの差分値が、例えばNernst較正関数の使用によって説明されるように、その後の計算に入力する一次結果を形成するからである。この差分値を取得したら、サンプルも移動し、測定チャンバをリンス溶液で洗い流して次の測定のためにセンサアレイを回復させる。
【0052】
センサアレイの第1のイオン選択性電極がアンモニウム選択性電極であり、このようなアンモニウム選択性電極が尿素センサの一部である場合、リンス溶液は好ましくはアンモニウムイオン並びに尿素を欠いている。
【0053】
更に、センサアレイを典型的に動作させる方法にとっては、リンス溶液とサンプルとの切り替えが、センサシグナルに影響を及ぼすことが理解できる。イオン選択性電極に関しては、いくつかのイオンが、センサ膜の最外層中に吸収されている場合があり、リンス溶液へと逆に拡散するのにある程度の時間を要する。特に、アンモニウム選択性電極に関しては、尿素センサの酵素層において発生されたアンモニウムイオンを測定するために使用する際には、特別な状態が生じる。ウレアーゼの作用によって尿素がアンモニウムイオンとアンモニアに転化されるとき、特にアンモニアがアンモニウム選択性電極の膜に吸収されることがある。測定後にリンスを行ってサンプルを切り替えると同時に、いくらかのアンモニアが膜に残り、ゆっくりとしか放出されない可能性がある。それが放出されると直ちにアンモニウムイオンへと逆に転化され、次いで、アンモニウムがリンス溶液に添加されたかのようにシグナルに影響を及ぼす。ここで示唆されているような第1及び第2のイオノフォアの存在効果は、この長引くアンモニウム放出の有害な影響を低下させることにある。
【0054】
上記のステップi及びiiは、測定及びアイドル状態の回復を行うのに必要な多くのサイクルで繰り返される。
【0055】
したがって、本発明の方法は、センサから外部へ拡散する時間を必要とする残留するイオン又は分子に由来する有害な影響が低減されることから、明らかに測定サイクル時間をはるかに短くすることが可能である。典型的には、本明細書に記載の複数回使用のセンサアレイを用いるときのサンプリングサイクル時間(sampling cycle time)は、5~120秒であり、例えば10~90秒であり、例えば15~60秒、又は更に15~30秒である。
【0056】
本発明方法のいくつかの好ましい実施形態では、第1のイオン選択性電極(他のイオン選択性電極は第1の電極ではない)は、特に「複数回使用のセンサアレイ」-「実施形態」の項目の下に記載されている本明細書に記載のものである。
【0057】
測定チャンバ中に配置された複数回使用のセンサアレイであって、当該センサアレイは、第1のイオン選択性電極及び第2のイオン選択性電極を含む2つ以上の異なるイオン選択性電極を備え、当該第1のイオン選択性電極は、(a)第1のイオノフォア及び(b)少なくとも第2のイオノフォアを備える膜を含み、当該第2のイオン選択性電極は、第2のイオノフォアを備える膜を含み、当該第1のイオノフォアは、第1のイオン選択性電極中以外には、センサアレイ中のいかなるイオン選択性電極中にも存在しない。
【0058】
また標準的な動作では、(a)第1のイオノフォア及び(b)第2のイオノフォア(及び可能であれば好ましくはないが、更なるイオノフォア)を含む第1のイオン選択性電極と、第2のイオノフォア(第1のイオノフォアではない)を含む第2のイオン選択性電極とが以下のように使用され、すなわち、第1のイオン選択性電極における2種のイオノフォアの存在により、第1のイオノフォアと第2のイオノフォアの両方の一次イオンに対して全体的に感受性を有するようになった。驚くべきことに、その応答は、二次イオンを考慮することができるNicholski-Eisenmannの項を含むNernst式に極めて厳密に従う。反対に、第2のイオン選択性電極は、第2のイオノフォアの一次イオンにのみ応答し、そのイオン選択性電極の較正機能の定期的な使用により、そのイオンの濃度を独立に測定することができる。最終的に、第1のイオン選択性電極の一次イオンの濃度は、今説明した二次イオンの濃度を差し引くことによって得ることができる。二次イオンに対する第1のイオン選択性電極の選択性を、第2のイオノフォアを添加することによって意図的に上昇させたため、それにより、差し引くことによって一次イオンの濃度を測定することができる。
【0059】
イオン選択性電極
イオン選択性電極は、典型的には、導電性材料の電極層を支持する電気絶縁材料の基材上に設けられ、その上に、イオン選択性電極のイオン選択性膜が配置される、平面電極デバイスである。
【0060】
基材は、所望の任意の形状で提案することができ、典型的には、他のイオン選択性電極(第2のイオン選択性電極を含む)及びセンサ(例えば酵素センサ)のための支持体も構成し、それによってセンサアレイのための共通基材を構成する。
【0061】
その支持体は、任意の適切な電気絶縁材料で作製することができる。しかしながら、それが準備されかつ使用される条件に耐えることができなければならない。基材は、通常は、セラミック材料又はポリマー材料を含む。セラミック基材は、熱的、機械的、及び化学的に安定であるという利点を有する。セラミック基材がポリマー膜と組み合わせて使用される場合、膜が接着材料に接着し、その接着材料が基材に接着するように、接着材料を使用する必要があり得る。一例が、米国特許第5,844,200号に開示されている。酸化アルミニウム及び苦土カンラン石は、基材として適切なセラミック材料である。ポリマー基材は、使用するのにより経済的であり、セラミック基材の場合よりも、ポリマー膜と基材との間により良好な接着をもたらすことができる。支持体として適切であり得るポリマー材料の中では、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリイミド(Kapton(登録商標))、ポリ(メチルメタクリレート)、及びポリスチレンを挙げることができる。
【0062】
導電性材料は、典型的には、1種以上の貴金属、例えば、金、パラジウム、白金、ロジウム、若しくはイリジウム、好ましくは金若しくは白金、又はそれらの混合物から作製されるか、又は含む。他の適切な導電性材料は、黒鉛又は鉄、ニッケル又はステンレス鋼である。導電性材料は、例えば、イオン選択性電極の調製及び使用の両方に関して、導電性材料の特性に有利な効果を有するバインダー系等の別の成分と混合することができる。導電性材料は、ブロンズ材料、例えばNa0.33ブロンズ、例えば米国特許第6,805,781号に開示されているタイプのブロンズを更に含むことができる。このようなブロンズ材料は、典型的には、貴金属の導電性材料を包含する。
【0063】
イオン選択性電極は、1種以上のイオノフォア(上で特定した)、ポリマー、任意選択で可塑剤、及び任意選択で親油性塩を含む膜を更に含む。その膜は、導電性材料を被覆している。膜に適切なポリマー材料は、例えば、ポリビニルクロリド、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、シリコーン、ポリエステル、又はポリウレタン、又はそれらの混合物、例えば、様々な量のポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールと共にカルボキシル化されたポリビニルクロリン及びポリウレタンである。適切な可塑剤の中では、ジオクチル-アジペート、2-ニトロフェニルオクチルエーテル、ジオクチルセバケート、ジオクチルフタレートを挙げることができる。親油性塩の実例は、カリウムテトラキス(4-クロロフェニル)ボレート、テトラドデシルアンモニウムテトラキス(4-クロロフェニル)ボレート、及びカリウムテトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレートである。
【0064】
イオン選択性電極は、典型的には、厚膜プリンティング(thick-film printing)、ドロップキャスティング、スプレーコーティング、又はスピンコーティング等の小型化に適する方法によって調製される。イオン選択性電極の好ましい実施形態は、厚膜プリンティングによって少なくとも部分的に調製された平坦で小型化された電極である。このようなイオン選択性電極の有利な特性としては、それらが極めて少量のサンプル体積しか必要としないこと、また、その調製方法がイオン選択性電極並びにセンサアレイの大量生産に適していることである。所望ならば、厚膜プリンティングによって導電性材料のみを適用し、その後、イオン選択性材料膜を適用する。
【0065】
アンモニウム選択性電極
本発明は、膜を含むアンモニウム選択性電極を更に提供し、その膜は、ポリマーと、(a)アンモニウム選択性イオノフォア、及び(b)カルシウム選択性イオノフォア、カリウム選択性イオノフォア、及びナトリウム選択性イオノフォアから選択される更なるイオン選択性イオノフォアである2種のイオノフォアと、を含む。
【0066】
アンモニウム選択性電極は、導電性材料の電極層を支持する電気絶縁材料の基材を含む。基材及び電極層は、その上に配設されたアンモニウム選択性イオノフォア含有ポリマー膜を有する。アンモニウム選択性電極の構造に関する原理は、実施例1に記載されているようなものであり得る。
【0067】
1つの重要な変形例では、アンモニウム選択性イオノフォアはノナクチンであり、更なるイオン選択性イオノフォアはカリウム選択性イオノフォアであり、特にバリノマイシンである。
【0068】
本発明の重要な変形例では、アンモニウム選択性電極は、尿素センサの一部である(「尿素センサ」の項を更に参照されたい)。
【0069】
リチウム選択性電極
本発明は、膜を含むリチウム選択性電極を更に提供し、その膜は、ポリマーと、(a)リチウム選択性イオノフォア、及び(b)カルシウム選択性イオノフォア、カリウム選択性イオノフォア、及びナトリウム選択性イオノフォアから選択される更なるイオン選択性イオノフォアである2種のイオノフォアと、を含む。
【0070】
リチウム選択性電極に関する構造及び選択(preference)は、本質的には、上記のイオン選択性電極について一般に記載されたものに従うが、例えばN、N′-ジヘプチル-N,N′,5,5-テトラメチル-3,7-ジオキサノノアンジアミド(一般にリチウムイオノフォアIとして知られている)等のリチウム選択性イオノフォアを使用する。
【0071】
マグネシウム選択性電極
本発明は、膜を含むマグネシウム選択性電極を更に提供し、その膜は、ポリマーと、(a)マグネシウム選択性イオノフォア、及び(b)カルシウム選択性イオノフォア、カリウム選択性イオノフォア、及びナトリウム選択性イオノフォアから選択される更なるイオン選択性イオノフォアである2種のイオノフォアと、を含む。
【0072】
マグネシウム選択性電極に関する構造及び選択は、本質的には、上記のイオン選択性電極について一般に記載されたものに従うが、N、N″-オクタメチレンビス(N′-ヘプチル-N′-メチルマロンアミド(一般にマグネシウムイオノフォアIII又はETH
4030として知られている)等のマグネシウム選択性イオノフォアを使用する。
【0073】
尿素センサ
本発明は、上で定義したアンモニウム選択性電極を備える尿素センサを更に提供する(「アンモニウム選択性電極」の項を参照されたい)。
【0074】
したがって、尿素センサは、
(i)膜を含むアンモニウム選択性電極であって、その膜は、ポリマーと、(a)アンモニウム選択性イオノフォア、及び(b)カルシウム選択性イオノフォア、カリウム選択性イオノフォア、及びナトリウム選択性イオノフォアから選択される更なるイオン選択性イオノフォアである2種のイオノフォアと、を含む、アンモニウム選択性電極と、
(ii)電極を被覆する酵素層であって、当該酵素層がポリマー及びウレアーゼを含む
、酵素層と、
(iii)任意選択で酵素層を被覆する外層と、を含む。
【0075】
酵素層は、典型的には、ウレアーゼ及びポリマー、例えば、様々な量のポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールと共にカルボキシ化されたポリビニルクロリン又はポリウレタンを含有する。
【0076】
任意選択の外層は、様々な量のポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールと共にポリウレタンを含有する。
【0077】
尿素センサの構造に関する原理は、実施例1に記載されているようなものであり得る。
【0078】
リンス溶液の使用
サンプリングに続いて適用されるリンス溶液が測定可能な量のアンモニウム(及び/又は尿素)を含むアンモニウム選択性電極を(おそらくは尿素センサの一部として)備える従来の複数回使用のセンサアレイとは異なり、本発明のアンモニウム選択性電極の電極膜中に他のイオノフォア(複数可)を含有させると、リンス溶液におけるアンモニウム並びに尿素の使用を回避することができる。
【0079】
したがって、本発明は、尿素及びアンモニウムイオンを実質的に欠いている、アンモニウム選択性電極を含む2つ以上の異なるイオン選択性電極を備える複数回使用のセンサアレイのためのリンス溶液の使用を提供する。
【実施例
【0080】
実施例1-アンモニウム選択性電極を含む尿素センサの構造
図1に示す本発明によるアンモニウム選択性電極デバイスは、米国特許第6,805,781号に記載されているように、平面小型化電極デバイスを特徴とすることができるタイプである。図示した電極デバイスは、PVCのポリマー支持体1上に設けられている。その支持体を貫通している直径0.01mmの孔にスルーホールプリンティングによる接点材料として白金ペースト2が充填されている。この充填は、支持体の一方の側にある金ペーストの下側接触面3と、支持体のもう一方の側にある金ペーストの上側接触面4との間に電気的接触を媒介する。白金ペーストの上側接触面4は、ナトリウムバナジウムブロンズペーストの参照系5と接触している。白金ペーストはブロンズペーストによって完全に被覆されている。参照系の上には、第1のイオノフォア及び少なくとも第2のイオノフォアを含むイオン選択性PVC膜6が、参照系5を完全に被覆するように適用されている。PVC膜の上には、ウレアーゼの酵素層7がある。電極デバイスの直径は約1.5mmである。電極デバイスの使用中、下側接触面3は、通常の測定機器と、例えば外部導電体を介して、接続されている。
【0081】
実施例2-試験のためのアンモニウム選択性電極
酵素層及び外層が存在していないことを除いて、実施例1の記載に従ってアンモニウム選択性電極を調製した。
【0082】
アンモニウム選択性膜6は、PVCのシクロヘキサノン中の溶液、ジオクチルセバケート等の可塑剤、カリウムテトラ(p-クロロ-フェニルボレート)等の親油性塩、及びアンモニウム選択性イオノフォアノナクチンから調製した。この溶液には、バリノマイシンは添加しなかった(A)。この溶液におけるバリノマイシンに関しては、この物質は、存在するノナクチンのモルパーセントとして、(B)2.6mol%のバリノマイシン、(C)5.2mol%のバリノマイシン、(D)13mol%のバリノマイシン、及び(E)26mol%のバリノマイシンの量で、シクロヘキサノン溶液に添加した。
【0083】
リンス及び較正時における、膜に含まれたバリノマイシンを有していない(A)アンモニウム選択性電極の応答を図2に示す。アンモニウムイオンの存在/非存在の影響は、リンス時に測定された電位に関して異なるレベルが記録される点に認められる。アンモニウムイオンがリンス溶液中に存在するとき(それぞれ1mM及び3mMのNH )、センサはすべて同じレベルに達する。
【0084】
リンス及び較正時における、膜に含まれたバリノマイシンを有する(B)~(E)アンモニウム選択性電極の応答を図3に示す。左から右へと、膜中のバリノマイシンの濃度は増加する。同じ条件下で応答を調べるためにいくつかの電極を同時に保持することができる改良された分析器で電極を調べたが、電極それら自体は異なっていた。電極はすべて次のようにして較正した。最初に、アンモニウムイオンが存在していない較正溶液に電極を曝した。これによりベースライン電位を確立した。次に、リンス溶液をセンサの前側で洗い流して、アンモニウムイオン含有溶液の読取値を得た。リンス溶液は4mMのK及び3mMのNH を含有し、較正溶液も4mMのKを含有していたがNH は含有していなかった。膜中のバリノマイシンのレベルによると、バリノマイシン濃度に応じて電極は異なる反応を示した。明確にするために、電位はすべて、リンス溶液の電位の共通値を示すようにシフトさせた。実際に、リンス電位と、較正溶液を含有するアンモニウムイオンについて得られた値との両方が、研究対象の電極間で異なっていた。
【0085】
実施例3-複数回使用のセンサアレイの動作
図4は、複数回使用のセンサアレイの動作に関するものであり、多用途センサアレイにおける尿素センサの電極応答を示す図である。複数回使用のセンサアレイの尿素センサは、実施例1に記載されているように製造され、バリノマイシン含有量は30mol%であった。センサは、ウレアーゼ含有バイオセンサ膜で更に被覆して尿素に対して感受性をもたせた。センサアレイは、センシング能力(sensing capability)を提供する1つのセンサアレイと、較正及び測定を実行するための必要な溶液をすべて含有している1つの溶液パックと、を保持した改良血液ガス分析器に取り付けた。更に、その分析器は、溶液の流れを制御する一組のソフトウェアプログラムを備えている。尿素センサは、尿素含有溶液で較正されるが、リンス溶液には、この物質とアンモニウムイオンも欠けている。リンス溶液に曝されると、電極は、複数回使用のセンサアレイに統合された適切な参照電極に対して測定された電位を確立する。リンス電位のいくつかの読取値をコンピュータメモリに記憶させる。較正溶液(これら由来のシグナルは示されていない)及びサンプルを順に導入して、それぞれの電位値を得る。尿素濃度の3つの異なるレベル(10mM、20mM、及び42mMの尿素)に関するシグナルを図4に示す。各サンプルに関して、尿素の濃度は、登録及び保存されたリンス電位値及びサンプルから得られた電位値を考慮して計算する。差分シグナルは引き算によって得られ、一連のアルゴリズムを用いて尿素濃度を得る。
【0086】
概論
本明細書及び特許請求の範囲は、イオノフォア、センサ、電極等について時に言及するが、本明細書で定義される生成物及び方法は、1つ、2つ、又はそれを超えるタイプの個々の構成成分又は要素を含み得ることを理解すべきである。2つ以上の異なる構成成分が存在する実施形態では、各構成成分の総量は、個々の構成成分に関して本明細書で定義された量に対応しているべきである。
【0087】
化合物(複数可)、イオノフォア(複数可)、電極(複数可)等の表現における「(複数可)」は、1つ、2つ、又はそれを超えるタイプの個々の構成成分又は要素が存在し得ることを示している。一方、「1」という表現が使用されるときは、それぞれの構成成分又は要素のうちの一(1)つだけが存在する。
【0088】
本明細書を通して、「含む、備える(comprise)」又はそのバリエーション「含む、備える(comprising)」若しくは「含む、備える(comprises)」等は、記載された要素、
整数、若しくはステップ、又は要素、整数、若しくはステップの群を包含することを意味しているが、任意の他の要素、整数、若しくはステップ、又は要素、整数、若しくはステップの群の排除を意味していないことが理解されよう。
[発明の態様]
[1]
測定チャンバ中に配置された複数回使用のセンサアレイであって、前記センサアレイは、第1のイオン選択性電極及び第2のイオン選択性電極を含む2つ以上の異なるイオン選択性電極を備え、前記第1のイオン選択性電極は、(a)第1のイオノフォア及び(b)少なくとも第2のイオノフォアを備える膜を含み、前記第2のイオン選択性電極は、前記第2のイオノフォアを備える膜を含み、前記第1のイオノフォアは、前記第1のイオン選択性電極中以外には、前記センサアレイ中のいかなるイオン選択性電極中にも存在しない、複数回使用のセンサアレイ。
[2]
前記第1のイオン選択性電極が、アンモニウム選択性電極、リチウム選択性電極、及びマグネシウム選択性電極から選択される、1に記載のセンサアレイ。
[3]
前記第1のイオン選択性電極が、アンモニウム選択性電極、例えば尿素センサの一部であるアンモニウム選択性電極である、2に記載のセンサアレイ。
[4]
前記アンモニウム選択性電極の膜が、ポリマーと、(a)アンモニウム選択性イオノフォア、及び(b)カルシウム選択性イオノフォア、カリウム選択性イオノフォア、及びナトリウム選択性イオノフォアから選択される更なるイオン選択性イオノフォアである2種のイオノフォアと、を含む、3に記載のセンサアレイ。
[5]
1~4のいずれか一項に記載のセンサアレイを動作させる方法であって、
i.前記センサアレイを1種以上のリンス溶液及び任意選択で1種以上の較正溶液と順次接触させるステップであって、前記リンス溶液のそれぞれは前記第1のイオノフォアが選択する傾向がある前記イオンを実質的に欠いている、ステップと、
ii.続いて前記センサアレイを生体由来のサンプルと接触させるステップと、を含む、方法。
[6]
ステップi及びiiが、いくつかのサイクルで繰り返される5に記載の方法。
[7]
前記サンプリングサイクル時間が、15~60秒である、6に記載の方法。
[8]
前記第1のイオン選択性電極が、2~4のいずれか一項に記載のものである、5~7のいずれかに記載の方法。
[9]
膜を含むアンモニウム選択性電極であって、前記膜が、ポリマーと、アンモニウム選択性イオノフォア及びカリウム選択性イオノフォアである2種のイオノフォアと、を含む、アンモニウム選択性電極。
[10]
9に記載のアンモニウム選択性電極と、前記電極を被覆する酵素層とを備える尿素センサであって、前記酵素層は、ポリマー及びウレアーゼと、任意選択で前記酵素層を被覆する外層と、を含む、尿素センサ。
[11]
アンモニウム選択性電極を含む2つ以上の異なるイオン選択性電極を備える複数回使用
のセンサアレイのためのリンス溶液の使用であって、前記リンス溶液が尿素及びアンモニウムイオンを実質的に欠いている、リンス溶液の使用。
【0089】
[12]
複数回使用のセンサアレイを動作させる方法であって、前記センサアレイは、第1のイオン選択性電極及び第2のイオン選択性電極を含む2つ以上の異なるイオン選択性電極を備え、前記第1のイオン選択性電極は、(a)第1のイオノフォア及び(b)少なくとも第2のイオノフォアを備える膜を含み、前記第2のイオン選択性電極は、前記第2のイオノフォアを備える膜を含み、前記第1のイオノフォアは、前記第1のイオン選択性電極中以外には、前記センサアレイ中のいかなるイオン選択性電極中にも存在せず、
前記方法は、
i.前記センサアレイを、1点較正の参照点を確立するための1種以上のリンス溶液、及び任意に1種以上の較正溶液と順に接触させるステップ、前記リンス溶液のそれぞれは、前記第1のイオノフォアが選択性であるイオンを実質的に欠いており、かつ前記第2のイオノフォアが選択性であるイオンを少なくとも含む、
ii.続いて前記センサアレイを生体由来のサンプルと接触させるステップを含む、方法。
[13]
前記第1のイオン選択性電極が、アンモニウム選択性電極、リチウム選択性電極、及びマグネシウム選択性電極から選択される、12に記載の方法。
[14]
前記第1のイオン選択性電極が、アンモニウム選択性電極である、13に記載の方法。
[15]
前記アンモニウム選択性電極が、尿素センサの一部である、14に記載の方法。
[16]
前記尿素センサが、酵素層によって被覆されているアンモニウム選択性電極を備え、前記酵素層は、ポリマー及びウレアーゼと、任意に前記酵素層を被覆する外層と、を含む、15に記載の方法。
[17]
前記アンモニウム選択性電極の膜が、ポリマーと、(a)アンモニウム選択性イオノフォア、及び(b)カルシウム選択性イオノフォア、カリウム選択性イオノフォア、及びナトリウム選択性イオノフォアから選択される更なるイオン選択性イオノフォアである2種のイオノフォアと、を含む、14~16のいずれかに記載の方法。
[18]
ステップi及びiiが、いくつかのサイクルで繰り返される12~17のいずれかに記載の方法。
[19]
ステップi及びiiの1サイクルを完了するために要する時間が、15~60秒である、18に記載の方法。
図1
図2
図3
図4