(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】プログラム、情報処理装置及び情報処理方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20240624BHJP
【FI】
G06Q50/10
(21)【出願番号】P 2023042122
(22)【出願日】2023-03-16
【審査請求日】2023-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】507228172
【氏名又は名称】株式会社JSOL
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】下原 裕一郎
(72)【発明者】
【氏名】橋本 洋
(72)【発明者】
【氏名】石川 淳也
(72)【発明者】
【氏名】安藤 徹
【審査官】深津 始
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-133412(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 -G06Q 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象機器を構成する構成部品の構成部品情報、及び、各構成部品の接続に関する接続情報を取得し、
基準機器の構成部品情報及び接続情報と、取得した構成部品情報及び接続情報とに基づき
、前記基準機器と前記対象機器との間で、構成部品及び接続の差異を抽出し、
抽出した差異と、予め算定されている、機器の各構成部品、及び構成部品間の各接続、の故障率とに基づき、差異に起因する故障率を示す前記対象機器のリスクを算定する
処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項2】
前記基準機器が有する構成部品を、前記対象機器が有しない場合、故障に伴うリスクをゼロとする一方で、外的要因に基づき前記リスクを算定する
請求項
1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記基準機器及び前記対象機器における、構成部品及び構成部品間の接続を表示すると共に、構成部品及び接続の差異並びに算定したリスクを表示する
請求項
1に記載のプログラム。
【請求項4】
前記対象機器に対する前記構成部品及び接続の編集を受け付け、編集後の前記対象機器のリスクを表示する
請求項
1に記載のプログラム。
【請求項5】
前記基準機器及び前記対象機器は人工衛星又は人工衛星を構成する機器であって、宇宙空間の浮遊物または宇宙線を含む外的要因を考慮して、地球圏内における第1リスクと宇宙空間における第2リスクとを算定する
請求項
1に記載のプログラム。
【請求項6】
対象機器を構成する構成部品の構成部品情報、及び、各構成部品の接続に関する接続情報を取得する取得部と、
基準機器の構成部品情報及び接続情報と、取得した構成部品情報及び接続情報とに基づき
、前記基準機器と前記対象機器との間で、構成部品及び接続の差異を抽出する抽出部と、
抽出した差異と、予め算定されている、機器の各構成部品、及び構成部品間の各接続、の故障率とに基づき、差異に起因する故障率を示す前記対象機器のリスクを算定する算定部と
を備える情報処理装置。
【請求項7】
対象機器を構成する構成部品の構成部品情報、及び、各構成部品の接続に関する接続情報を取得し、
基準機器の構成部品情報及び接続情報と、取得した構成部品情報及び接続情報とに基づき
、前記基準機器と前記対象機器との間で、構成部品及び接続の差異を抽出し、
抽出した差異と、予め算定されている、機器の各構成部品、及び構成部品間の各接続、の故障率とに基づき、差異に起因する故障率を示す前記対象機器のリスクを算定する
処理をコンピュータが行う情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象機器のリスクを決定するプログラム、情報処理装置及び情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
システム又は製品に潜む事故につながりかねないリスクを識別するリスク分析手法がある。近年、システムや製品が複雑化するにしたがって、リスクの識別が困難になっている。個々の専門性が高く、その因果関係を全体的に理解するためには相応の技術と工数の両面が必要となるため、これを容易とする分析手法が求められている。特許文献1には、リスク分析の実施者による見落としの防止、及び、分析時間の短縮を図ることが可能なリスク分析支援装置が提案されている。
【0003】
リスク分析の対象は、電化製品、コンピュータシステム、工業プラント等、幅広いものが対象となり得るが、特許文献1に記載のリスク分析支援装置は、制御構造のリスクを分析するものであり、製品のリスク分析は対象としていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものである。その目的は、製品に関わるリスク、特に一点物又は一品物と言われる1台又は数台の少量生産される製品又はシステムのリスクを算定するプログラム、情報処理装置及び情報処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の一態様に係るプログラムは、対象機器を構成する構成部品の構成部品情報、及び、各構成部品の接続に関する接続情報を取得し、基準機器の構成部品情報及び接続情報と、取得した構成部品情報及び接続情報とに基づき、前記基準機器と前記対象機器との間で、構成部品及び接続の差異を抽出し、抽出した差異と、予め算定されている、機器の各構成部品、及び構成部品間の各接続、の故障率とに基づき、差異に起因する故障率を示す前記対象機器のリスクを算定する処理をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0007】
本願の一態様にあっては、少量生産される製品又はシステムのリスクを算定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】リスク算定システムの構成例を示すブロック図である。
【
図2】算定サーバのハードウェア構成例を示すブロック図である。
【
図3】端末のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【
図10】リスク算定処理の手順例を示すフローチャートである。
【
図13】ミッションリスク算定処理の手順例を示すフローチャートである。
【
図15】再算定処理の手順例を示すフローチャートである。
【
図16】対比表示画面の他の例を示す説明図である。
【
図17】対比表示画面の他の例を示す説明図である。
【
図19】ジャンル選択画面の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1はリスク算定システムの構成例を示すブロック図である。リスク算定システム100は算定サーバ1及び端末2を含む。算定サーバ1及び端末2はネットワークNにより、互いに通信可能に接続されている。算定サーバ1はサーバコンピュータ、ワークステーション、PC(Personal Computer)等で構成する。また、算定サーバ1を複数のコンピュータからなるマルチコンピュータ、ソフトウェアによって仮想的に構築された仮想マシン又は量子コンピュータで構成しても良い。さらに、算定サーバ1の機能をクラウドサービスで実現してもよい。端末2はデスクトップPC、ノートパソコン、タブレットコンピュータ等で構成する。
図1において、端末2は1台のみを表示しているが、2台以上であってもよい。
【0010】
図2は算定サーバのハードウェア構成例を示すブロック図である。算定サーバ1は制御部11、主記憶部12、補助記憶部13、通信部14及び読み取り部15を含む。各構成はバスBにより接続されている。
【0011】
制御部11は、一又は複数のCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等の演算処理装置を有する。制御部11は、補助記憶部13に記憶された制御プログラム1P(プログラム、プログラム製品)を読み出して実行することにより、種々の情報処理、制御処理等を行い、取得部、算定部等の機能部を実現する。
【0012】
主記憶部12は、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、フラッシュメモリ等である。主記憶部12は主として制御部11が演算処理を実行するために必要なデータを一時的に記憶する。
【0013】
補助記憶部13はハードディスク又はSSD(Solid State Drive)等であり、制御部11が処理を実行するために必要な制御プログラム1Pや各種DB(Database)を記憶する。補助記憶部13はシステム構成DB131、雛形DB132、ミッションDB133及びジャンルDB134を記憶する。補助記憶部13は算定サーバ1と別体であって、外部接続された外部記憶装置であってもよい。補助記憶部13に記憶する各種DB等を、算定サーバ1とは異なるデータベースサーバやクラウドストレージに記憶してもよい。
【0014】
通信部14はネットワークNを介して、端末2と通信を行う。また、制御部11が通信部14を用い、ネットワークN等を介して他のコンピュータから制御プログラム1Pをダウンロードし、補助記憶部13に記憶してもよい。
【0015】
読み取り部15はCD(Compact Disc)-ROM及びDVD(Digital Versatile Disc)-ROMを含む可搬型記憶媒体1aを読み取る。制御部11が読み取り部15を介して、制御プログラム1Pを可搬型記憶媒体1aより読み取り、補助記憶部13に記憶してもよい。また、半導体メモリ1bから、制御部11が制御プログラム1Pを読み込んでもよい。
【0016】
図3は端末のハードウェア構成例を示すブロック図である。端末2は制御部21、主記憶部22、補助記憶部23、通信部24、入力部25及び表示部26を含む。各構成はバスBで接続されている。
【0017】
制御部21は、一又は複数のCPU、MPU、GPU等の演算処理装置を有する。制御部21は、補助記憶部23に記憶された制御プログラム2P(プログラム、プログラム製品)を読み出して実行することにより、種々の機能を提供する。
【0018】
主記憶部22は、SRAM、DRAM、フラッシュメモリ等である。主記憶部22は主として制御部21が演算処理を実行するために必要なデータを一時的に記憶する。
【0019】
補助記憶部23はハードディスク又はSSD等であり、制御部21が処理を実行するために必要な各種データを記憶する。補助記憶部23は端末2と別体であって、外部接続された外部記憶装置であってもよい。補助記憶部23に記憶する各種DB等を、データベースサーバやクラウドストレージに記憶してもよい。
【0020】
通信部24はネットワークNを介して、算定サーバ1と通信を行う。また、制御部21が通信部24を用い、ネットワークN等を介して他のコンピュータから制御プログラム2Pをダウンロードし、補助記憶部23に記憶してもよい。
【0021】
入力部25はキーボードやマウスである。表示部26は液晶表示パネル等を含む。表示部26は算定サーバ1が出力したリスク算定結果などを表示する。また、入力部25と表示部26とを一体化し、タッチパネルディスプレイを構成してもよい。なお、端末2は外部の表示装置に表示を行ってもよい。
【0022】
図4はシステム構成DBの例を示す説明図である。システム構成DB131はリスクの算定対象となる製品又はシステム(対象機器)の構成情報(構成部品情報)を記憶する。製品又はシステム構成はノードとリンクとを含むグラフ構造で表現する。システム構成DB131はグラフ構造をテーブルとして記憶する。システム構成DB131はSysID列、ID列、名称列、上位列、下位列、接続線列及び注記列を含む。SysID列は製品又はシステムを特定するSysIDを記憶する。ID列はノードを特定するIDを記憶する。名称列はノードの名称を記憶する。名称は例えば部品名称、機能部名称である。上位列及び下位列はリンクを表現するものである。上位列は上位ノードのIDを記憶する。下位列は下位ノードのIDを記憶する。上位はデータや信号の上流であり、データの送信部、信号の出力部等を示す。それに対応して、下位はデータの受信部や信号の入力部等を示す。なお、2つのノードで双方向通信する場合は、互いに上位かつ下位であるとして表現する。機能モジュールでは、単機能の機能モジュールを複数組み合わせて、一つの複雑な機能を実現する場合、一つの複雑な機能を実現する機能モジュールが上位であり、複数の単機能の機能モジュールが下位となる。ハードウェアモジュールの場合は、モジュールが上位であり、モジュールを構成する部品が下位となる。接続線列は他の構成と接続される接続線の種類(接続情報)を記憶する。注記列はリスクに関連する事項を記憶する。
【0023】
図5は雛形DBの例を示す説明図である。雛形DB132はリスク算定の基準となる製品又はシステム(基準機器)の構成情報(構成部品情報)を記憶する。システム構成DB131と同様な構成である。雛形DB132は雛形ID列、ID列、名称列、上位列、下位列、接続線列、注記列及びリスク列を含む。雛形ID列は雛形を特定する雛形IDを記憶する。ID列はノードを特定するIDを記憶する。名称列はノードの名称を記憶する。上位列は上位ノードのIDを記憶する。下位列は下位ノードのIDを記憶する。接続線列は他の構成と接続される接続線の種類(接続情報)を記憶する。注記列はリスクに関連する事項を記憶する。リスク列はリスク算定に必要な情報を記憶する。
【0024】
システム構成DB131、雛形DB132は一例である。UML(Unified Modeling Language)やSysML(System Modeling Language)などのモデル言語で使用されるデータ構造を利用して、システム構成DB131、雛形DB132を構築してもよい。また、システムの開発方法であるMBSE(Model-Based Systems Engineering)を扱うシステムを用いて、システム構成DB131、雛形DB132を実現してもよい。
【0025】
次に、雛形を用いたリスク算定の流れについて、例を用いて説明する。以下の説明においては、人工衛星を例にして説明する。なお、人工衛星は多数の部品、モジュール等から構成される複雑なシステムであるが、以下の説明において、構成を簡略化して説明する。
図6はシステム構成例を示すグラフ図である。
図6は
図4に示したシステム構成DB131の内容をグラフ構造で示したものである。ノードを四角形で、リンクを矢印で示している。矢印の元が上位であり、先が下位であることを示す。
図6において、線で囲んだ部分は、以下のリスク算定において、着目する部分構成を示す。
【0026】
図7はリスク算定例を示す説明図である。リスク算定は基準となる雛形との比較により行う。雛形のリスクは予め算定されている。
図7において、ケースAは算定対象となるシステムの一部構成を示す。雛形との差異は、蓄電バッテリと制御部(計算機)とを結ぶ電力線が二重化されていることである。ここで各電力線はそれぞれ制御部(計算機)が稼働する十分な電力を供給可能とする。雛形において電力線が切れる確率が1%であるとすると、姿勢制御部に電源が供給されなくなる確率も1%である。この場合、算定対象となるシステムでは、電力線が2本とも切れた場合のみ、姿勢制御部に電源が供給されなくなるので、その確率は1%×1%で、0.01%である。電源断等による姿勢制御部の故障は次のようなリスクに影響する。姿勢制御がでないことにより、重力の影響を受け、早期に大気圏に突入する確率に影響する。また、姿勢制御できないことにより、太陽電池パネルが最適な向きにならないことによる電力枯渇率に影響する。例えば、デブリと言われる宇宙浮遊物の衝突(外的要因)を回避するための衝突回避運動が行えなくなり、デブリが衝突してしまう確率に影響する。デブリ以外にも、宇宙線の影響(外的要因)により半導体に異常が生じ、姿勢制御部が故障する可能性も考えられる。
【0027】
図8はリスク算定の他の例を示す説明図である。
図8において、ケースBは算定対象となるシステムの一部構成を示す。雛形との差異は、姿勢制御部がない点である。この場合、姿勢制御部が要因となるリスクは0と算定される。ただし、姿勢制御部がなければ回避できないリスクがある場合、雛形と比較してリスクが高くなる。デブリが衝突して、人工衛星が故障するリスクが0.001%である場合、姿勢制御部でデブリを回避できない確率が30%であったとしても、故障リスクは0.001%×30%=0.0003%となる。それに対して、姿勢制御部がなければ、故障リスクは0.001%となり、雛形よりもリスクが高くなる。
【0028】
図9はリスク算定の他の例を示す説明図である。
図9において、ケースCは算定対象となるシステムの一部構成を示す。雛形との差異は、ヒータが雛形ものと比して安価なものを選定している点である。安価ヒータを選定した場合、品質の低下が予測される。例えば、雛形のヒータの故障率は1%であるが、ケースCの安価ヒータの故障率が2%であったとすると、ヒータの故障リスクは2倍ということになる。ヒータが故障すると、蓄電しているバッテリが最適な温度で運用できなくなり、バッテリの寿命が短くなるおそれがある。ひいてはミッションの運用期間が短くなることに繋がる。
【0029】
図10はリスク算定処理の手順例を示すフローチャートである。ユーザは端末2にリスクの算定対象となる製品又はシステムの構成を入力する。端末2の制御部21は入力を受け付ける(ステップS1)。制御部21は受け付けた構成を算定サーバへ送信する(ステップS2)。この際、算定対象となる製品又はシステムのジャンル等を送信してもよい。算定サーバ1の制御部11は構成を受信する(ステップS3)。制御部11は構成をシステム構成DB131へ記憶する(ステップS4)。制御部11は算定対象となる製品又はシステムの雛形を、雛形DB132から読み出し、算定対象の構成と、雛形の構成とを比較し、差分を抽出する(ステップS5)。制御部11は抽出した差分を用いて、リスクを算定する(ステップS6)。算定例は
図7から
図9を参照して説明したとおりである。制御部11は算定結果を端末2へ送信する(ステップS7)。端末2の制御部21は結果を受信する(ステップS8)。制御部21は結果を表示部26に表示し(ステップS9)、処理を終了する。なお、リスク算定システム100をスタンドアローンシステムとし、算定サーバ1の能力を備えた端末2が単独で、リスク算定処理を実行してもよい。
【0030】
(表示画面)
図11は表示画面の例を示す説明図である。表示画面d01は構成領域d011、属性領域d012、リスク領域d013及び選択ボタンd014を含む。構成領域d011はリスクを算定するシステムの構成を表示する。属性領域d012はシステム構成要素の属性、例えば、製品名、機能、性能、リスクに関連する情報を表示する。リスク領域d013は雛形との比較で算定したリスクを表示する。選択ボタンd014を選択すると、リスクの基準となる雛形(テンプレート)を選択する画面が表示される。
【0031】
(ミッションのリスク算定)
上述の例では、人工衛星の一部の構成についてのリスクを算定する例を示したが、複数の構成のリスクを組み合わせることにより、人工衛星のミッションのリスクが算定可能である。
図12はミッションDBの例を示す説明図である。ミッションDB133はミッションとそれを達成するために使用される構成、機能の対応関係を記憶する。ミッションDB133はミッションID列、名称列、構成1列、構成2列、構成3列及び構成4列等を含む。ミッションID列はミッションを特定するミッションIDを記憶する。名称列はミッションの名称を記憶する。構成1列から構成4列はミッションを達成するために利用される機能、構成を記憶する。構成N列(Nは自然数)の数は可変であり、ミッションによっては、値がない列があってもよい。
【0032】
図13はミッションリスク算定処理の手順例を示すフローチャートである。ユーザは端末2において、リスクを算定したいミッションを選択する。端末2の制御部21は選択を受け付ける(ステップS21)。制御部21は選択されたミッションのミッションIDを算定サーバ1へ送信する(ステップS22)。算定サーバ1の制御部11はミッションIDを受信する(ステップS23)。制御部11はミッションに達成のために使用する構成、機能をミッションDB133から取得する(ステップS24)。制御部11は処理対象とする構成、機能を選択する(ステップS25)。制御部11は選択肢構成、機能のリスクを算定する(ステップS26)。制御部11は未処理の構成、機能があるか否かを判定する(ステップS27)。制御部11は未処理の構成、機能があると判定した場合(ステップS27でYES)、処理をステップS25へ戻し、未処理の構成、機能についてのリスク算定を行う。制御部11は未処理の構成、機能がないと判定した場合(ステップS27でNO)、ミッション全体のリスクを算定する(ステップS28)。ミッション全体のリスクは、各構成、機能のリスクを積和演算したものとなる。例えば、カメラで地球観測ための画像を撮影する場合、カメラが正常動作し、姿勢制御部と位置決めのいずれが動作すれば撮影可能である場合、全体のリスクは次のように算定する。
【0033】
全体のリスク=カメラのリスク×(姿勢制御部のリスク+位置決めのリスク)
【0034】
制御部11はミッション全体のリスクを端末2へ送信する(ステップS29)。端末2の制御部21はミッション全体のリスクを受信する(ステップS30)。制御部21は受信したミッション全体のリスクを表示部26に表示し(ステップS31)、処理を終了する。以上のような方法により、ミッションのリスクを算定することが可能となる。なお、人工衛星は、地球圏と宇宙空間とで運用されるが、運用環境が異なるため、地球圏でのリスク(第1リスク)と宇宙区間でのリスク(第2リスク)とを分けて、リスク算定を行ってもよい。
【0035】
図14は対比表示画面の例を示す説明図である。対比表示画面d02は対象製品と雛形との構成を対比可能に表示する画面である。対比表示画面d02は対象製品領域d021、雛形領域d022、ミッション領域d023、及びリスク領域d024を含む。対象製品領域d021は対象製品の構成を表示する。対象製品領域d021は雛形との差異を示す差異表示マークd0211を含む。雛形領域d022はリスク算定のために対比する雛形の構成を表示する。ミッション領域d023はリスク算定の対象としているミッションを表示する。リスク領域d024は算定したリスクを表示する。リスク領域d024は差異に基づくリスク等の個別リスク表示d0241及びミッションの全体リスク表示d0242を含む。
【0036】
(再算定)
ユーザは算定されたリスクを参照した上で、システム構成を変更し、変更後の構成でのリスクを算定させることも可能である。
図15は再算定処理の手順例を示すフローチャートである。ユーザはシステム構成の変更内容を端末2に入力する。端末2の制御部21は変更を受け付ける(ステップS41)。制御部21は変更内容を算定サーバ1へ送信する(ステップS42)。算定サーバ1の制御部11は変更内容を受信する(ステップS43)。制御部11は変更内容を反映したシステム構成と雛形とを対比して差分を抽出する(ステップS44)。制御部11は抽出した差分を用いて、リスクを再算定する(ステップS45)。制御部11は再算定の結果を端末2へ送信する(ステップS46)。端末2の制御部21は再算定の結果を受信する(ステップS47)。制御部21は再算定の結果を表示部26に表示し(ステップS48)、処理を終了する。再算定機能により、ユーザはシステム構成を変更することにより、リスクがどのように変動するのか確認することが可能となる。
【0037】
図16及び
図17は対比表示画面の他の例を示す説明図である。
図16及び
図17に示す対比表示画面は、一部を除き
図14に示した対比表示画面と同様であるので、主に異なる部分について、説明する。
図16に示す対比表示画面d02は、対象製品領域d021において、編集コンテキストメニューd025が表示されている。編集コンテキストメニューd025は、例えば、差異表示マークd0211をマウスで右クリックすることにより表示される。編集コンテキストメニューd025は、対象製品と雛形との差異を小さくする又はなくすために、対象製品の構成について編集するメニューである。
図16において、編集コンテキストメニューd025は、3つのメニューが表示されている。メニュー「雛形と合わせる」を選択すると、雛形と同じ構成が、対象製品に追加される。メニュー「選択して追加」を選択すると、予めデータベースに登録されている構成の中から、選択したものが追加される。メニュー「新規追加」を選択すると、データベースに新たな構成を追加した上で、当該構成を対象製品に追加する。同様に、接続線についても、追加、削除が可能である。
【0038】
図16の編集コンテキストメニューd025で、メニュー「雛形と合わせる」を選択すると、
図17に示した画面が表示される。対象製品と雛形との差異が2点から1点に減り、リスクは再計算されて表示される。
【0039】
以上のようなリスク算定システム100は、人工衛星に限らず、様々な製品やシステムに利用可能である。そのためには、製品やシステムのジャンル毎に雛形を作成する必要がある。作成した雛形を雛形DB132に記憶する。また、リスク算定対象となる製品やシステム構成をシステム構成DB131に記憶する。リスク算定を行う場合には、製品やシステムのジャンルを指定する。算定サーバ1は指定されたジャンルに対応した雛形を、雛形DB132から読み出し、リスクを算定する。
【0040】
図18はジャンルDBの例を示す説明図である。ジャンルDB134はジャンル列及び雛形ID列を含む。ジャンル列は製品やシステムのジャンルを記憶する。雛形ID列はジャンルに対応した雛形の雛形IDを記憶する。
図18において、ジャンルと雛形とは1対1対応であるかのようになっているが、それに限らない。一つのジャンルに複数の雛形が対応してもよいし、一つの雛形に複数のジャンルが対応してもよい。
【0041】
図19はジャンル選択画面の例を示す説明図である。ジャンル選択画面d03は一覧表示領域d031を含む。一覧表示領域d031は、リスク算定システム100で取り扱える製品やシステムのジャンルを表示する。表示するジャンルは上述したジャンルDB134の記憶内容に基づく。ユーザはマウスポインタMPでジャンルを選択すると、選択されたジャンルに対応した表示画面へ遷移する。
図19において、人工衛星を選択すると、
図11に示した表示画面へ遷移する。
【0042】
エンドユーザは、ジャンルDB134に基づくジャンル選択画面d03を用いることにより、ジャンル毎の雛形を呼び出すことが可能となる。
【0043】
本実施の形態においては、人工衛星のような少量生産されるシステムのリスクを算定することが可能となる。リスク算定システム100で扱う構成情報は入れ子構造でもよい。例えば、リスク算定の対象となるシステムを複数の機器から構成され、各機器は複数の部品から構成されるように定義してもよい。工場を定義する場合、工場は複数の設備で構成され、各設備は複数の機器で構成され、各機器は複数の部品で構成されているように定義する。いずれの段階においても、製品と部品との関係を示すデータ構造により、構成を定義し、製品と部品との関係を用いた情報処理と同様な処理により、リスクの算定が可能であることは、当業者であれば明らかである。
【0044】
各実施の形態で記載されている技術的特徴(構成要件)はお互いに組み合わせ可能であり、組み合わせすることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
また、特許請求の範囲には他の2以上のクレームを引用するクレームを記載する形式(マルチクレーム形式)を用いているが、これに限るものではない。マルチクレームを少なくとも一つ引用するマルチクレーム(マルチマルチクレーム)を記載する形式を用いて記載しても良い。
【符号の説明】
【0045】
100 :リスク算定システム
1 :算定サーバ
11 :制御部
12 :主記憶部
13 :補助記憶部
131 :システム構成DB
132 :雛形DB
133 :ミッションDB
134 :ジャンルDB
14 :通信部
15 :読み取り部
1P :制御プログラム
1a :可搬型記憶媒体
1b :半導体メモリ
2 :端末
21 :制御部
22 :主記憶部
23 :補助記憶部
24 :通信部
25 :入力部
26 :表示部
2P :制御プログラム
N :ネットワーク
【要約】
【課題】製品に関わるリスク、特に一点物又は一品物と言われる1台又は数台の少量生産される製品又はシステムのリスクを算定するプログラム、情報処理装置及び情報処理方法を提供すること。
【解決手段】プログラムは、対象機器を構成する構成部品の構成部品情報、及び、各構成部品の接続に関する接続情報を取得し、基準機器の構成部品情報及び接続情報と、取得した構成部品情報及び接続情報とに基づき前記対象機器のリスクを算定する処理をコンピュータに実行させる。
【選択図】
図10