(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】誤り率測定装置及び誤り率測定方法
(51)【国際特許分類】
H04L 1/00 20060101AFI20240624BHJP
H04L 25/02 20060101ALI20240624BHJP
H04L 25/03 20060101ALI20240624BHJP
H04L 25/49 20060101ALI20240624BHJP
H04L 43/0823 20220101ALI20240624BHJP
【FI】
H04L1/00 C
H04L25/02 301K
H04L25/02 302Z
H04L25/03 C
H04L25/49 L
H04L43/0823
(21)【出願番号】P 2023044442
(22)【出願日】2023-03-20
【審査請求日】2023-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003694
【氏名又は名称】弁理士法人有我国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大沼 弘季
(72)【発明者】
【氏名】保坂 恭男
【審査官】川口 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-118188(JP,A)
【文献】特開2022-042838(JP,A)
【文献】特開2017-142090(JP,A)
【文献】特開2019-201311(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0042380(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0095166(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0353696(US,A1)
【文献】アンリツ株式会社,MX183000A ハイスピード シリアルデータ テストソフトウェア 取扱説明書 第21版[online],2021年11月30日,pp. 4-11~4-27, 4-42~4-60, 4-68~4-124,インターネット<URL:https://dl.cdn-anritsu.com/ja-jp/test-measurement/files/Manuals/Operation-Manual/MP1900A/mx183000a_opm_j_21_0.pdf>
【文献】アンリツ株式会社,PCIe Gen1からGen6までとUSB Type-Cをサポート[online],2023年01月28日,インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20230128034222/https://www.anritsu.com/ja-jp/test-measurement/solutions/hssd-mp1900a/index>
【文献】野崎 原生ほか,USB 3.2のすべて,CQ出版株式会社,2020年03月15日,pp.354~366
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 1/00
H04L 25/00 - 25/66
H04L 43/0823
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リンク状態管理機構を搭載した被測定物(200)から入力される入力信号の周波数特性を調整するイコライザ(21)と、
前記イコライザにより調整された前記入力信号のシンボル値を取得するシンボル値取得部(23)と、
前記シンボル値取得部により取得された前記シンボル値の誤り率を算出する誤り率算出部(27)と、を備える誤り率測定装置(1)であって、
前記リンク状態管理機構によって管理される複数のステートのうちのループバックに前記被測定物を遷移させるリンクトレーニングの開始前に、前記複数のステートのうちのコンプライアンスモードに前記被測定物を遷移させるための遷移制御信号を出力する信号出力部(10)と、
前記入力信号が、前記コンプライアンスモードに遷移した前記被測定物から出力されるコンプライアンスパターンであるときに、前記誤り率算出部により算出された前記誤り率が最小になるように、前記シンボル値取得部により前記シンボル値を取得するための複数のパラメータの校正値を探索するオートサーチ部(28)と、を備え、
前記コンプライアンスパターンは、4値の前記シンボル値を持つPAM4(Pulse Amplitude Modulation 4)信号であり、
前記複数のパラメータは、前記コンプライアンスパターンの基準タイミングからの遅延量であるDelayと、前記コンプライアンスパターンの電圧軸方向の閾値であるUpper Vth、Middle Vth、及びLower Vthと、前記イコライザのゲインとを含むことを特徴とする誤り率測定装置。
【請求項2】
規格で定義された複数のプリセットの中から任意の1以上のプリセットを選択するプリセット選択部(57d~57f)と、前記プリセット選択部により選択された前記1以上のプリセットを前記被測定物から出力される前記コンプライアンスパターンとして設定するプリセット設定ボタン(57i)と、を表示する表示部(32)を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の誤り率測定装置。
【請求項3】
リンク状態管理機構によって管理される複数のステートのうちのループバックに、前記リンク状態管理機構を搭載した被測定物(200)を遷移させるリンクトレーニングの開始前に、前記複数のステートのうちのコンプライアンスモードに前記被測定物を遷移させるための遷移制御信号を出力する信号出力ステップ(S25)と、
前記被測定物から入力される入力信号の周波数特性をイコライザ(21)により調整するイコライザステップ(S27)と、
前記イコライザステップにより調整された前記入力信号のシンボル値を取得するシンボル値取得ステップ(S28)と、
前記シンボル値取得ステップにより取得された前記シンボル値の誤り率を算出する誤り率算出ステップ(S29)と、
前記入力信号が、前記コンプライアンスモードに遷移した前記被測定物から出力されるコンプライアンスパターンであるときに、前記誤り率算出ステップにより算出された前記誤り率が最小になるように、前記シンボル値取得ステップにより前記シンボル値を取得するための複数のパラメータの校正値を探索するオートサーチステップ(S30,S31)と、を含み、
前記コンプライアンスパターンは、4値の前記シンボル値を持つPAM4信号であり、
前記複数のパラメータは、前記コンプライアンスパターンの基準タイミングからの遅延量であるDelayと、前記コンプライアンスパターンの電圧軸方向の閾値であるUpper Vth、Middle Vth、及びLower Vthと、前記イコライザのゲインとを含むことを特徴とする誤り率測定方法。
【請求項4】
規格で定義された複数のプリセットの中から任意の1以上のプリセットを選択するプリセット選択部(57d~57f)と、前記プリセット選択部により選択された前記1以上のプリセットを前記被測定物から出力される前記コンプライアンスパターンとして設定するプリセット設定ボタン(57i)と、を表示する表示ステップ(S22)を更に含むことを特徴とする請求項3に記載の誤り率測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誤り率測定装置及び誤り率測定方法に関し、特に、被測定物から入力されるPAM4(Pulse Amplitude Modulation 4)信号の誤り率を測定する誤り率測定装置及び誤り率測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、IoTやクラウドコンピューティングの普及により通信システムは膨大なデータを扱うようになり、通信システムを構成する各種の通信機器のインタフェースは高速化とシリアル伝送化が進んでいる。このような通信機器で採用されているUSB(登録商標)(Universal Serial Bus)やPCI Express(登録商標)(Peripheral Component Interconnect Express、以下、「PCIe」とも呼ぶ)などのハイスピードシリアルバス(High Speed Serial Bus)規格では、リンク状態管理機構(Link Training and Status State Machine:LTSSM)と呼ばれるステートマシンにより、デバイス間の通信の初期化やリンク速度の調整などが管理されている。
【0003】
例えば、PCIeでは、LTSSMのステート遷移図は
図7に示すようなものであり、ステートとして、L0、L0s、L1、L2、Detect、Polling(ポーリング)、Configuration、Disabled、Hot Reset、Loopback(ループバック)、Recoveryが定義されている。さらに、
図8に示すように、Pollingには、Polling.Active、Polling.Configuration、Polling.Complianceの3つのサブステートが定義されている。Polling.Complianceは、被測定物(Device Under Test:DUT)からPCIe規格で定義されたコンプライアンスパターン(Compliance Pattern又はModified Compliance Pattern)を出力させるサブステートであり、コンプライアンスモードとも呼ばれる。
【0004】
ハイスピードシリアルバス規格でよく使われる信号変調方式としてNRZ(Non Return to Zero)がある。NRZ信号のビット誤り率(Bit Error Rate:BER)を誤り率測定装置(例えば、特許文献1参照)で解析するにあたり、適切なVthとDelayの校正値を設定する必要がある。
図9(a)に示すように、Vthは、NRZ信号のハイレベルとローレベルを判別するための閾値電圧であり、ほとんどの場合は振幅の中央値である0Vに固定される。Delayは、NRZ信号を打ち抜くクロック信号の立ち上がりと、NRZ信号のアイ開口の中心との時間差を表すパラメータであり、ボーレート(Baud rate)に依存することが知られている。
【0005】
PCIeでは、PCIe Gen1~5までは信号変調方式としてNRZが採用されている。誤り率測定装置でBER測定等を実施するに当たっては、PCIe Gen1~5の互いに異なるボーレートごとにDelayの校正値を切り替えながらリンクトレーニングを実施して、DUTをLoopbackに持ち込む必要がある。
【0006】
PCIe Gen6では、信号変調方式としてPAM4が初めて採用され、リンクトレーニング中にPAM4信号をトレーニングパターンとして用いることとなった。PAM4信号は、0(00),1(01),2(10),3(11)からなる4値の論理レベルのシンボルで構成される。誤り率測定装置でPAM4信号のBER測定等をNRZ信号と同様に実施するためには、PAM4信号の論理レベルを解析した上でリンクトレーニングを実施して、DUTをLoopbackに持ち込む必要がある。
【0007】
PAM4信号を解析するためには、NRZ信号におけるVthに相当するMiddle Vthに加えて、適切なUpper/Lower Vthを閾値電圧の校正値として誤り率測定装置に設定する必要がある。なお、Middle VthはNRZ信号におけるVthと同様に中央値であり、通常0Vに設定される。Upper VthとLower Vthは、
図9(b)に示すように、Middle Vthから±δV離れた位置に設定される。δは、DUT自体のロスと、DUTが装着されるCBB(Compliance Base Board)などのテストフィクスチャで模擬される信号経路のロスとの組合せロス量に依存する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
適切な校正値が誤り率測定装置に設定されていない場合、PCIe Gen6でのリンクトレーニングが失敗し、PCIe規格で定義されるBase Spec及びCEM Specといった試験項目の評価ができなくなってしまう。このため、適切な校正値を誤り率測定装置に設定することが必要であるが、PCIe Gen6の64GT/sステートでは数msecでタイムアウトしてしまうため、リンクトレーニング中にこれらの校正値の最適値を探索できないという問題があった。
【0010】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであって、PAM4信号の解析に必要な複数のパラメータの校正値をリンクトレーニングの開始前に取得することにより、リンクトレーニングをエラー無く実施して誤り率測定等を実施できる誤り率測定装置及び誤り率測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明に係る誤り率測定装置は、リンク状態管理機構を搭載した被測定物から入力される入力信号の周波数特性を調整するイコライザと、前記イコライザにより調整された前記入力信号のシンボル値を取得するシンボル値取得部と、前記シンボル値取得部により取得された前記シンボル値の誤り率を算出する誤り率算出部と、を備える誤り率測定装置であって、前記リンク状態管理機構によって管理される複数のステートのうちのループバックに前記被測定物を遷移させるリンクトレーニングの開始前に、前記複数のステートのうちのコンプライアンスモードに前記被測定物を遷移させるための遷移制御信号を出力する信号出力部と、前記入力信号が、前記コンプライアンスモードに遷移した前記被測定物から出力されるコンプライアンスパターンであるときに、前記誤り率算出部により算出された前記誤り率が最小になるように、前記シンボル値取得部により前記シンボル値を取得するための複数のパラメータの校正値を探索するオートサーチ部と、を備え、前記コンプライアンスパターンは、4値の前記シンボル値を持つPAM4信号であり、前記複数のパラメータは、前記コンプライアンスパターンの基準タイミングからの遅延量であるDelayと、前記コンプライアンスパターンの電圧軸方向の閾値であるUpper Vth、Middle Vth、及びLower Vthと、前記イコライザのゲインとを含む構成である。
【0012】
この構成により、本発明に係る誤り率測定装置は、リンクトレーニングの開始前に、複数のステートのうちのPolling.Complianceに被測定物を遷移させて、被測定物からコンプライアンスパターンを出力させるようになっている。さらに、本発明に係る誤り率測定装置は、被測定物から出力されたコンプライアンスパターンを用いて、複数のパラメータの校正値の最適値を探索することができる。これにより、本発明に係る誤り率測定装置は、PAM4信号の解析に必要な複数のパラメータの校正値をリンクトレーニングの開始前に取得することにより、リンクトレーニングをエラー無く実施して誤り率測定等を実施できる。
【0013】
また、本発明に係る誤り率測定装置は、規格で定義された複数のプリセットの中から任意の1以上のプリセットを選択するプリセット選択部と、前記プリセット選択部により選択された前記1以上のプリセットを前記被測定物から出力される前記コンプライアンスパターンとして設定するプリセット設定ボタンと、を表示する表示部を更に備える構成であってもよい。
【0014】
この構成により、本発明に係る誤り率測定装置は、任意の1以上のプリセットを指定するユーザインタフェースを提供して、PAM4信号の解析に必要な複数のパラメータの校正値を指定されたプリセットごとに取得することができる。
【0015】
また、本発明に係る誤り率測定方法は、リンク状態管理機構によって管理される複数のステートのうちのループバックに、前記リンク状態管理機構を搭載した被測定物を遷移させるリンクトレーニングの開始前に、前記複数のステートのうちのコンプライアンスモードに前記被測定物を遷移させるための遷移制御信号を出力する信号出力ステップと、前記被測定物から入力される入力信号の周波数特性をイコライザにより調整するイコライザステップと、前記イコライザステップにより調整された前記入力信号のシンボル値を取得するシンボル値取得ステップと、前記シンボル値取得ステップにより取得された前記シンボル値の誤り率を算出する誤り率算出ステップと、前記入力信号が、前記コンプライアンスモードに遷移した前記被測定物から出力されるコンプライアンスパターンであるときに、前記誤り率算出ステップにより算出された前記誤り率が最小になるように、前記シンボル値取得ステップにより前記シンボル値を取得するための複数のパラメータの校正値を探索するオートサーチステップと、を含み、前記コンプライアンスパターンは、4値の前記シンボル値を持つPAM4信号であり、前記複数のパラメータは、前記コンプライアンスパターンの基準タイミングからの遅延量であるDelayと、前記コンプライアンスパターンの電圧軸方向の閾値であるUpper Vth、Middle Vth、及びLower Vthと、前記イコライザのゲインとを含む構成である。
【0016】
また、本発明に係る誤り率測定方法は、規格で定義された複数のプリセットの中から任意の1以上のプリセットを選択するプリセット選択部と、前記プリセット選択部により選択された前記1以上のプリセットを前記被測定物から出力される前記コンプライアンスパターンとして設定するプリセット設定ボタンと、を表示する表示ステップを更に含む構成であってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、PAM4信号の解析に必要な複数のパラメータの校正値をリンクトレーニングの開始前に取得することにより、リンクトレーニングをエラー無く実施して誤り率測定等を実施できる誤り率測定装置及び誤り率測定方法を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係る誤り率測定装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る誤り率測定装置のリンクトレーニング設定画面の一例である。
【
図4】本発明の実施形態に係る誤り率測定装置の機器接続画面の一例である。
【
図5】本発明の実施形態に係る誤り率測定装置のプリセット選択画面の一例である。
【
図6】本発明の実施形態に係る誤り率測定装置を用いる誤り率測定方法の処理を示すフローチャートである。
【
図7】PCIeのLTSSMのステート遷移図である。
【
図9】(a)はNRZ信号の2値の論理レベルを判別するための閾値電圧を示す図であり、(b)はPAM4信号の4値の論理レベルを判別するための閾値電圧を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る誤り率測定装置及び誤り率測定方法の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0020】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る誤り率測定装置1は、LTSSMを搭載したDUT200からの入力信号の誤り率を測定するものであり、信号出力部10と、信号入力部20と、データ記憶部30と、操作部31と、表示部32と、制御部40と、を備える。DUT200が対応するハイスピードシリアルバス規格の例としては、PCIeやUSBなどが挙げられる。
【0021】
データ記憶部30は、RAM(Random Access Memory)などのメモリによって構成される。データ記憶部30は、後述するパルスパターン発生器13に出力する既知パターンのデータとして、例えば、DUT200に入力するPAM4信号のシンボル列(0、1、2、3のシンボル値からなるシンボルの列)を記憶している。また、データ記憶部30は、DUT200に入力するPAM4信号のMSB(Most Significant Bit)及びLSB(Least Significant Bit)のビット列を記憶していてもよい。データ記憶部30に記憶されているPAM4信号のシンボル列、並びにMSB及びLSBのビット列は、後述する誤り率算出部27がDUT200からの入力信号と比較するための基準データにもなっている。
【0022】
また、データ記憶部30は、DUT200の種類と、DUT200が装着されるCBBなどのテストフィクスチャで模擬される信号経路の所望のロス値の組合せごとに、後述する複数のパラメータの校正値をファイル単位で記憶するようになっている。例えば、DUT200がSynopsys社製のAIC(Add-in Card)であり、信号経路のロス値が6dBである場合の複数のパラメータの校正値は、「Synopsys_6dBLossBoard」というファイル名のファイルに記録される。なお、ファイル名の付け方は上記に限定されず、ユーザにとってDUT200の種類とロス値の組合せが分かりやすい任意の名称であってもよい。
【0023】
制御部40は、誤り率測定装置1の動作モードを校正モードと測定モードのいずれかに切り替えるための動作モード切替部41を含む。校正モードは、DUT200のLTSSMによって管理される複数のステートのうちのLoopbackにDUT200を遷移させるリンクトレーニングの開始前に、DUT200からの入力信号のシンボル値を取得するための複数のパラメータの校正値を取得するモードである。測定モードは、校正モードで取得された複数のパラメータの校正値を用いて、DUT200からの入力信号の誤り率の測定を行うモードである。
【0024】
信号出力部10は、測定モードにおいて、DUT200のLTSSMによって管理される複数のステート間のステート遷移を制御するトレーニングパターンをDUT200に出力するようになっている。また、信号出力部10は、測定モードにおいて、DUT200からの入力信号の誤り率測定を行うための既知パターンのテスト信号を出力するようになっている。
【0025】
また、信号出力部10は、校正モードにおいて、複数のステートのうちのコンプライアンスモードにDUT200をダイレクト遷移させるための遷移制御信号をDUT200に出力するようになっている。ここで、ダイレクト遷移とは、PCIe Gen1の2.5GT/sからPCIe Gen6の64GT/sへ直接遷移することを意味している。
【0026】
さらに、信号出力部10は、校正モードにおいて、PCIe Gen6規格で定義された複数のプリセットのそれぞれに対応するコンプライアンスパターンをDUT200から出力させるためのプリセット選択信号を出力するようになっている。
【0027】
信号出力部10は、例えば、シンセサイザ11と、ジッタ変調源12と、パルスパターン発生器13と、ノイズ発生源14と、を備える。
【0028】
ジッタ変調源12は、シンセサイザ11が生成するクロックに所望のジッタを付加したてジッタクロック、又は、シンセサイザ11により生成されたクロックそのものを、パルスパターン発生器13とDUT200に出力するようになっている。
【0029】
パルスパターン発生器13は、パルスパターン信号を発生させてノイズ発生源14に出力するようになっている。例えば、パルスパターン発生器13は、ジッタ変調源12から入力されたジッタクロックを用いて、データ記憶部30から入力される既知パターンのデータからなるパルスパターン信号を発生させる。パルスパターン発生器13が発生させるパルスパターン信号は、例えばPAM4信号、NRZ信号、又はRZ信号である。パルスパターン発生器13が発生させるパルスパターン信号の他の例としては、NRZ-PSK信号、NRZ-DPSK信号、NRZ-DQPSK信号、RZ-DPSK信号、RZ-DQPSK信号、PAM8信号、PAM16信号などが挙げられる。
【0030】
ノイズ発生源14は、パルスパターン発生器13から出力されたパルスパターン信号にジッタや電圧ノイズを加えたストレス信号、又は、パルスパターン発生器13から出力されたパルスパターン信号そのものをDUT200に出力するようになっている。
【0031】
ノイズ発生源14から出力されるストレス信号は、主に測定モードにおけるテスト信号として用いられる。なお、パルスパターン発生器13から出力されたパルスパターン信号が、DUT200をPolling.Complianceに遷移させるための遷移制御信号やトレーニングパターンである場合には、シンセサイザ11により生成されたクロックがジッタ変調源12からそのまま出力されるとともに、パルスパターン発生器13から出力された遷移制御信号又はトレーニングパターンがそのままDUT200に出力されることが望ましい。
【0032】
信号入力部20は、DUT200から出力された入力信号を入力するものであり、イコライザ21と、誤り検出器22と、を備える。
【0033】
DUT200からの入力信号は、例えば、PCIe Gen6規格で定義されたコンプライアンスパターンである。コンプライアンスパターンは、校正モードにおいて、複数のステートのうちのPolling.ComplianceにDUT200を遷移させるための遷移制御信号が信号出力部10から出力されたことによってDUT200から出力される4値のシンボル値を持つPAM4信号である。あるいは、DUT200からの入力信号は、測定モードにおいて、信号出力部10から出力されたPAM4信号などのテスト信号が、Loopbackに遷移したDUT200から折り返されたものである。以下では、主に、DUT200からの入力信号がPCIe Gen6のコンプライアンスパターンである校正モードでの構成及び動作について説明する。
【0034】
図2に示すように、DUT200から出力されるPAM4信号は、Upper信号(高レベル信号)、Middle信号(中レベル信号)、及びLower信号(低レベル信号)からなる。
【0035】
Lower信号は、シンボル値0に対応する振幅レベルL0からシンボル値1に対応する振幅レベルL1までの低電圧範囲H1の信号である。Middle信号は、シンボル値1に対応する振幅レベルL1からシンボル値2に対応する振幅レベルL2までの中電圧範囲H2の信号である。Upper信号は、シンボル値2に対応する振幅レベルL2からシンボル値3に対応する振幅レベルL3までの高電圧範囲H3の信号である。
【0036】
イコライザ21は、後述するオートサーチ部28により探索されたゲインの校正値が設定されることにより、DUT200からの入力信号の周波数特性を調整するようになっている。イコライザ21は、例えば、CTLE(Continuous Time Linear Equalizer)、LFE(Low Frequency Equalizer)、DFE(Decision Feedback Equalizer)などで構成される。PCIe Gen6などのコンプライアンステストでは規定されたロスの大きい信号経路にて試験が実施される。このため、オートサーチ部28により探索されたゲインの校正値は、イコライザ21が、主に中域から高域周波数にかけての信号経路によるロスを補償して、DUT200からの入力信号のアイ開口を再度開かせることができる値となっている。
【0037】
誤り検出器22は、シンボル値取得部23と、誤り率算出部27と、オートサーチ部28と、を含む。さらに、シンボル値取得部23は、クロック再生部24と、遅延部25と、シンボル値検出部26と、を含む。
【0038】
シンボル値取得部23は、オートサーチ部28により探索された複数のパラメータの校正値を用いて、イコライザ21により調整されたDUT200からの入力信号のシンボル値、又はMSB及びLSBを取得するようになっている。これらの複数のパラメータは、入力信号の電圧軸方向の閾値であるUpper Vth、Middle Vth、及びLower Vthと、入力信号の時間軸方向の情報であるDelayと、イコライザ21のゲインと、を含んでおり、それらの校正値は、データ記憶部30に記憶されるようになっている。
【0039】
シンボル値検出部26は、イコライザ21により調整された入力信号を、後述する遅延部25から出力されたクロック信号の立ち上がり又は立ち下がりのタイミングで打ち抜くことにより、DUT200から出力された入力信号のシンボル値、又はMSB及びLSBを検出するようになっている。
【0040】
図2に示すように、DUT200からの入力信号がPAM4信号である場合、シンボル値検出部26は、Upper信号の電圧レベルがUpper Vth以上であるとき、シンボル値3(MSB=1、LSB=1)を検出する。
【0041】
シンボル値検出部26は、Middle信号の電圧レベルがMiddle Vth以上であり、Upper信号の電圧レベルがUpper Vth未満であるとき、シンボル値2(MSB=1、LSB=0)を検出する。
【0042】
シンボル値検出部26は、Lower信号の電圧レベルがLower Vth以上であり、Upper信号の電圧レベルがUpper Vth未満であり、Middle信号の電圧レベルがMiddle Vth未満であるとき、シンボル値1(MSB=0、LSB=1)を検出する。
【0043】
シンボル値検出部26は、Lower信号がLower Vth未満であれば、シンボル値0(MSB=0、LSB=0)を検出する。
【0044】
クロック再生部24は、イコライザ21により調整された入力信号から再生クロック信号を生成するようになっている。
【0045】
Delayは、クロック再生部24により生成された再生クロック信号の立ち上がり又は立ち下がりと、例えばUpper信号のアイ開口の中心との時間差を表すパラメータである。あるいは、Delayは、規格のボーレートに応じた外部クロック信号の立ち上がり又は立ち下がりと、Upper信号のアイ開口の中心との時間差を表すパラメータであってもよい。すなわち、Delayは、DUT200からの入力信号の基準タイミングからの遅延量であると言える。本明細書では、再生クロック信号と外部クロック信号をまとめて、単に「クロック信号」とも呼ぶ。
【0046】
遅延部25は、Delayにより示される上記の時間差を打ち消すように、入力信号を打ち抜くクロック信号を遅延させるようになっている。あるいは、遅延部25は、Delayにより示される上記の時間差を打ち消すように、入力信号を遅延させるものであってもよい。すなわち、遅延部25は、クロック信号が入力信号のアイ開口の中心を打ち抜けるように、クロック信号及び入力信号のいずれか又は両方を遅延させるものである。
【0047】
誤り率算出部27は、シンボル値取得部23により取得されたシンボル値と、データ記憶部30に記憶されている基準データのシンボル値を順次比較することにより、シンボル値取得部23により取得されたDUT200からの入力信号のシンボル値の誤り率(Symbol error ratio:SER)を算出するようになっている。
【0048】
あるいは、誤り率算出部27は、シンボル値取得部23により取得されたMSB及びLSBと、データ記憶部30に記憶されている基準データのMSB及びLSBとの比較に基づいて、DUT200からの入力信号のMSB及びLSBのBERをそれぞれ算出するものであってもよい。なお、本明細書では、BERとSERをまとめて、単に「誤り率」とも呼ぶ。
【0049】
オートサーチ部28は、例えば特許第6235631号や特許第6672375号などに開示された周知のオートサーチ処理を行うものである。オートサーチ部28は、DUT200からの入力信号が、Polling.Complianceに遷移したDUT200から出力されるコンプライアンスパターンであるときに、DUT200の種類と所望のロス値の組合せごとに誤り率算出部27により算出された誤り率が最小又は所定値以下になるように、シンボル値取得部23によりシンボル値を取得するための複数のパラメータの校正値を探索するようになっている。すなわち、オートサーチ部28は、
図2に示すような、DUT200から出力されたコンプライアンスパターンのUpper信号、Middle信号、及びLower信号の各信号について、上記の複数のパラメータの最適値を探索する。
【0050】
操作部31は、ユーザによる操作入力を受け付けるためのものであり、
図1に示す誤り率測定装置1が備える、例えば操作ノブ、各種キー、スイッチ、ボタンや、表示部32の表示画面上のソフトキーなどのユーザインタフェースで構成される。また、操作部31は、誤り率測定装置1の校正モードと測定モードの実行に関わる各種設定を行う。
【0051】
表示部32は、
図1に示す誤り率測定装置1が備える、例えばLCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)などの表示機器などで構成され、制御部40からの表示制御信号に基づいて、誤り率測定装置1の校正モードと測定モードの実行に関わる設定画面や測定結果などを表示する。なお、表示部32は、表示画面上のソフトキーなどの操作部31の操作機能を有していてもよい。
【0052】
制御部40は、信号出力部10、信号入力部20、データ記憶部30、操作部31、及び表示部32を統括制御している。また、制御部40は、例えばCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ROM(Read Only Memory)、RAM、HDD(Hard Disk Drive)などを含むコンピュータなどの制御装置で構成される。また、制御部40は、CPU又はGPUによる所定のプログラムの実行により、動作モード切替部41の少なくとも一部をソフトウェア的に構成することが可能である。
【0053】
図3に示すように、表示部32は、例えばPCIe Gen6のリンクトレーニングにおける各種条件を設定するためのリンクトレーニング設定画面50を表示するようになっている。
【0054】
リンクトレーニング設定画面50は、校正モードに関する機能を実行するための表示領域51(図中の「Calibration for PAM4」)を含む。表示領域51は、複数のパラメータの校正値を記録するファイルを指定するための「File Name」のテキストボックス51aと、複数のパラメータの校正値の手動調整を開始するための「Edit」のソフトキー51bと、「File Name」のテキストボックス51aに入力されたファイルを開くための「Open」のソフトキー51cと、複数のパラメータの校正値の取得を開始するための「Cal. Start」のソフトキー51dと、を含む。
【0055】
リンクトレーニング設定画面50における「Cal. Start」のソフトキー51dがユーザにより押下されると、表示部32は、例えば
図4の表示形式の機器接続画面56を表示する。
【0056】
機器接続画面56は、「Connection Diagram」の表示領域56aと、「Instruction」の表示領域56bと、「Next >」のソフトキー56cと、「Cancel」のソフトキー56dと、を含む。
【0057】
「Connection Diagram」の表示領域56aは、誤り率測定装置1を構成する各モジュールと、テストフィクスチャの一例であるCBBとの間の配線方法を矢印で示す表示領域である。また、「Instruction」の表示領域56bは、「Connection Diagram」の表示領域56aにおいて矢印で示された配線方法を言語で説明する表示領域である。
【0058】
「Connection Diagram」の表示領域56aに表示されている「Synthesizer」、「Jitter Modulation Source」、「Equalizer」、「ED」、「PPG」、及び「Noise Generator」の各モジュールは、シンセサイザ11、ジッタ変調源12、イコライザ21、誤り検出器22、パルスパターン発生器13、及びノイズ発生源14のそれぞれに相当するものである。
【0059】
「Next >」のソフトキー56cがユーザにより押下されると、表示部32は、例えば
図5の表示形式のプリセット選択画面57を表示する。「Cancel」のソフトキー56dがユーザにより押下されると、機器接続画面56の表示が終了する。
【0060】
プリセット選択画面57は、「Train DUT to Polling.Compliance」のラジオボタン57aと、「Manual」のラジオボタン57bと、テキストボックス57cと、「All ON」のソフトキー57dと、「All OFF」のソフトキー57eと、「Q0」から「Q10」のソフトキー57fと、「Instruction」の表示領域57gと、「< Back」のソフトキー57hと、「Next >」のソフトキー57iと、「Cancel」のソフトキー57jと、を含む。
【0061】
「Train DUT to Polling.Compliance」のラジオボタン57aと、「Manual」のラジオボタン57bは、校正方法を選択するためのボタンである。
【0062】
「Train DUT to Polling.Compliance」は、信号出力部10がDUT200をPolling.Complianceへ遷移させるための遷移制御信号を出力して、コンプライアンスパターンをDUT200から自動的に出力させる校正方法である。
【0063】
「Manual」は、DUT200が装着されたテストフィクスチャをユーザが手動で操作することにより、DUT200をPolling.Complianceへ遷移させて、コンプライアンスパターンをDUT200から出力させる校正方法である。
【0064】
テキストボックス57cは、オートサーチ部28により探索される複数のパラメータの校正値を記録するファイルを指定するためのものである。ユーザは、DUT200の種類とロス値の組合せごとに用意されたファイルを、テキストボックス57cで指定することができる。
【0065】
「All ON」のソフトキー57dと、「All OFF」のソフトキー57eと、「Q0」から「Q10」のソフトキー57fは、PCIe Gen6規格で定義された複数のプリセットの中から任意の1以上のプリセットを選択するプリセット選択部を構成する。「Q0」から「Q10」はそれぞれ、PCIe Gen6のプリセットQ0~Q10に対応している。
図5は、ソフトキー57fにより、PCIe Gen6のプリセットQ0~Q10のうち、Q1、Q2、Q3、Q4、Q6、Q7が選択された状態を示している。
【0066】
「Instruction」の表示領域57gは、プリセット選択画面57で設定できる内容を言語で説明する表示領域である。
【0067】
「< Back」のソフトキー57hがユーザにより押下されると、表示部32は、プリセット選択画面57を終了して、機器接続画面56を再び表示する。
【0068】
「Next >」のソフトキー57iは、上記のプリセット選択部により選択された1以上のプリセットをDUT200から出力されるコンプライアンスパターンとして設定するプリセット設定ボタンを構成する。「Next >」のソフトキー57iがユーザにより押下されると、オートサーチ部28は、複数のパラメータの校正値の探索を開始する。このとき、信号出力部10は、遷移制御信号をDUT200に出力するとともに、上記のプリセット選択部により選択された1以上のプリセットのそれぞれに対応するコンプライアンスパターンをDUT200から出力させるためのプリセット選択信号をDUT200に出力する。
【0069】
さらに、制御部40は、プリセット選択信号によって指定されるプリセットに対応するコンプライアンスパターンをデータ記憶部30から読み出して、誤り率算出部27に設定する。これにより、誤り率算出部27が、プリセット選択信号によって指定されるプリセットに対応するコンプライアンスパターンを、シンボル値取得部23により取得されたシンボル値と比較するための基準データとして使用することができるようになる。
【0070】
「Cancel」のソフトキー57jがユーザにより押下されると、上記のプリセット選択部により選択された1以上のプリセットがDUT200から出力されるコンプライアンスパターンとして設定されずに、プリセット選択画面57の表示が終了する。
【0071】
以下、本実施形態の誤り率測定装置1を用いる誤り率測定方法について、
図6のフローチャートを参照しながら、校正モードにおける処理の一例を説明する。なお、上述の誤り率測定装置1の構成の説明と重複する説明は適宜省略する。
【0072】
まず、リンクトレーニング設定画面50における「Cal. Start」のソフトキー51dがユーザにより押下されることにより、表示部32は、機器接続画面56を表示する(ステップS21)。
【0073】
次に、機器接続画面56における「Next >」のソフトキー56cがユーザにより押下されることにより、表示部32は、プリセット選択画面57を表示する(表示ステップS22)。
【0074】
次に、プリセット選択画面57において、LTSSMを搭載したDUT200の種類とロス値の組合せに応じたファイルがテキストボックス57cにおいてユーザにより指定される。また、ユーザによるソフトキー57d~57fの押下により、1以上のプリセットが選択される(ステップS23)。
【0075】
次に、プリセット選択画面57において、ユーザによる「Next >」のソフトキー57iの押下により、制御部40は、テキストボックス57cにおいて指定されたファイルから、ステップS23で選択された1以上のプリセットのうちの1つに対応する複数のパラメータの初期値を読み込んで、信号入力部20の各部に設定する(ステップS24)。
【0076】
次に、信号出力部10は、複数のステートのうちのPolling.ComplianceにDUT200を遷移させるための遷移制御信号をDUT200に出力する(信号出力ステップS25)。
【0077】
次に、信号出力部10は、ステップS23で選択された1以上のプリセットのうちの1つに対応するコンプライアンスパターンをDUT200から出力させるためのプリセット選択信号をDUT200に出力する(ステップS26)。
【0078】
次に、イコライザ21は、DUT200から入力されるコンプライアンスパターンの周波数特性を調整する(イコライザステップS27)。
【0079】
次に、シンボル値取得部23は、イコライザステップS27により調整されたコンプライアンスパターンのシンボル値を取得する(シンボル値取得ステップS28)。
【0080】
次に、誤り率算出部27は、シンボル値取得ステップS28により取得されたシンボル値の誤り率を算出する(誤り率算出ステップS29)。
【0081】
次に、オートサーチ部28は、誤り率算出ステップS29で得られた誤り率が最小であるか否か、すなわち、現在、信号入力部20の各部に設定されている複数のパラメータの校正値が最適値であるか否かを判断する(オートサーチステップS30)。誤り率算出ステップS29で得られた誤り率が最小である場合(ステップS30:YES)、制御部40は、ステップS32以降の処理を実行する。誤り率算出ステップS29で得られた誤り率が最小でない場合(ステップS30:NO)、制御部40はステップS31以降の処理を実行する。
【0082】
ステップS31においてオートサーチ部28は、複数のパラメータの新たな校正値を信号入力部20の各部に設定し(オートサーチステップS31)、再びイコライザステップS27以降の処理を実行する。
【0083】
ステップS32において制御部40は、現在、信号入力部20の各部に設定されている複数のパラメータの校正値の最適値を、ステップS23においてテキストボックス57cにおいて指定されたファイルに記録する(ステップS32)。
【0084】
次に、制御部40は、ステップS23で選択された全てのプリセットのプリセット選択信号がDUT200に出力されたか否かを判断する(ステップS33)。ステップS23で選択された全てのプリセットのプリセット選択信号がDUT200に出力された場合(ステップS33:YES)、制御部40は、本フローチャートの処理を終了する。ステップS23で選択された全てのプリセットのプリセット選択信号がDUT200に出力されていない場合(ステップS33:NO)、制御部40は、まだプリセット選択信号がDUT200に出力されていないプリセットについて、再びステップS26以降の処理を実行する。
【0085】
以上説明したように、本実施形態に係る誤り率測定装置1は、リンクトレーニングの開始前に、複数のステートのうちのPolling.ComplianceにDUT200を遷移させて、DUT200からコンプライアンスパターンを出力させるようになっている。さらに、本実施形態に係る誤り率測定装置1は、DUT200から出力されたコンプライアンスパターンを用いて、複数のパラメータの校正値の最適値を探索することができる。これにより、本実施形態に係る誤り率測定装置1は、PAM4信号の解析に必要な複数のパラメータの校正値をリンクトレーニングの開始前に取得することにより、リンクトレーニングをエラー無く実施して誤り率測定等を実施できる。
【0086】
また、本実施形態に係る誤り率測定装置1は、PCIe Gen6規格で定義された複数のプリセットの中から任意の1以上のプリセットを、DUT200から出力されるコンプライアンスパターンとして設定することができるプリセット選択画面57を表示するようになっている。これにより、本実施形態に係る誤り率測定装置1は、任意の1以上のプリセットを指定するユーザインタフェースを提供して、PAM4信号の解析に必要な複数のパラメータの校正値を指定されたプリセットごとに取得することができる。
【符号の説明】
【0087】
1 誤り率測定装置
10 信号出力部
11 シンセサイザ
12 ジッタ変調源
13 パルスパターン発生器
14 ノイズ発生源
20 信号入力部
21 イコライザ
22 誤り検出器
23 シンボル値取得部
24 クロック再生部
25 遅延部
26 シンボル値検出部
27 誤り率算出部
28 オートサーチ部
30 データ記憶部
31 操作部
32 表示部
40 制御部
50 リンクトレーニング設定画面
56 機器接続画面
57 プリセット選択画面
57a,57b ラジオボタン
57c テキストボックス
57d~57f ソフトキー(プリセット選択部)
57i ソフトキー(プリセット設定ボタン)
200 DUT
【要約】
【課題】PAM4信号の解析に必要な複数のパラメータの校正値をリンクトレーニングの開始前に取得することにより、リンクトレーニングをエラー無く実施して誤り率測定等を実施できる誤り率測定装置及び誤り率測定方法を提供する。
【解決手段】誤り率測定装置1は、リンクトレーニングの開始前に、DUT200をコンプライアンスモードに遷移させるための遷移制御信号を出力する信号出力部10と、入力信号がDUT200から出力されたPAM4信号のコンプライアンスパターンであるときに、誤り率算出部27により算出された誤り率が最小になるように、シンボル値取得部23によりシンボル値を取得するための複数のパラメータの校正値を探索するオートサーチ部28と、を備え、複数のパラメータは、コンプライアンスパターンの基準タイミングからの遅延量と、コンプライアンスパターンの電圧軸方向の閾値と、イコライザ21のゲインと、を含む。
【選択図】
図1