(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】潤滑剤における粘度指数向上剤としての硫黄フリーのポリアルキル(メタ)アクリレートコポリマー
(51)【国際特許分類】
C08F 220/12 20060101AFI20240624BHJP
C10M 145/14 20060101ALI20240624BHJP
C09K 5/10 20060101ALI20240624BHJP
C10L 1/196 20060101ALI20240624BHJP
C10N 30/02 20060101ALN20240624BHJP
C10N 30/12 20060101ALN20240624BHJP
C10N 30/00 20060101ALN20240624BHJP
C10N 40/04 20060101ALN20240624BHJP
C10N 40/16 20060101ALN20240624BHJP
【FI】
C08F220/12
C10M145/14
C09K5/10 E
C10L1/196
C10N30:02
C10N30:12
C10N30:00 Z
C10N40:04
C10N30:00 A
C10N40:16
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023125862
(22)【出願日】2023-08-01
【審査請求日】2023-10-11
(31)【優先権主張番号】P 2022127958
(32)【優先日】2022-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】由岐 剛
(72)【発明者】
【氏名】荒井 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】岸田 伸宏
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 建吾
(72)【発明者】
【氏名】松田 智博
【審査官】久保田 葵
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-538834(JP,A)
【文献】特表2016-504469(JP,A)
【文献】特開2022-094357(JP,A)
【文献】特表2021-515841(JP,A)
【文献】特表2014-500388(JP,A)
【文献】特開2013-129847(JP,A)
【文献】国際公開第2017/094348(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 220/12
C10M 145/14
C09K 5/10
C10L 1/196
C10N 30/02
C10N 30/12
C10N 30/00
C10N 40/04
C10N 40/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫黄フリーのコポリマーであって、50ppm未満の硫黄含有率および
11193~
50000g/molの重量平均分子量を有し、かつ、それぞれモノマー組成物の全重量を基準として、以下:
(a)線状または分岐状のC
1~C
6アルキル(メタ)アクリレート、またはそれらの混合物から選択されるモノマー
0.1~40重量%、
(b)線状または分岐状のC
7~C
15アルキル(メタ)アクリレート、分岐状のC
18~C
36アルキル(メタ)アクリレート、またはそれらの混合物から選択されるモノマー 25~
99.9重量%
、
(c)線状のC
16~C
36アルキル(メタ)アクリレート、またはそれらの混合物から選択されるモノマー 0~35重量%
、および
(d)アシル基中に炭素原子1~11個を有するビニルエステル、アルコール基中に炭素原子1~10個を有するビニルエーテル、酸素官能化および/または窒素官能化された分散性化合物、複素環式(メタ)アクリレート、複素環式ビニル化合物、共有結合されたリン原子を含有する化合物、エポキシ基を含有する化合物、ハロゲンを含有する化合物、スチレンまたは側鎖中にアルキル置換基を有し、かつ炭素原子8~17個を有する置換スチレン、またはそれらの混合物から選択される、1種以上のエチレン性不飽和モノマー 0~10重量%
を含む、モノマー組成物のラジカル重合により得ることができ
、前記モノマー組成物の前記ラジカル重合が、1種以上の硫黄フリー連鎖移動剤の存在下で実施され、前記硫黄フリー連鎖移動剤が、以下:
(i)テルペノイド
から選択される、前記硫黄フリーのコポリマー。
【請求項2】
前記モノマー組成物がさらに
、1種以上のエチレン性不飽和モノマー(d)を含む、請求項1に記載の硫黄フリーのコポリマー。
【請求項3】
前記モノマー組成物中の前記モノマー(a)、(b)、(c)および(d)の全量が、前記モノマー組成物の全重量を基準として、合計が少なくとも80重量%になるように選択される、請求項2に記載の硫黄フリーのコポリマー。
【請求項4】
前記硫黄フリー連鎖移動剤が、以下:
(i)リモネン、ミルセン、α-テルピネン、β-テルピネン、γ-テルピネン、テルピノレン、α-ピネン、β-ピネン、ジペンテン、またはそれらの混合
物
から選択される、請求項
1に記載の硫黄フリーのコポリマー。
【請求項5】
以下:
(A)50ppm未満の硫黄含有率を有する基油、および
(B)請求項1に記載の硫黄フリーのコポリマー
を含む、組成物。
【請求項6】
硫黄フリー流動点降下剤をさらに含む、請求項
5に記載の組成物。
【請求項7】
銅からなるか、または銅を含有する金属の銅腐食を防止するための、請求項
5または
6に記載の組成物。
【請求項8】
前記硫黄フリーのコポリマーまたはそれらの混合物の含有率が、前記組成物の全重量を基準として、20~99.5重量%である、請求項
5または
6に記載の組成物。
【請求項9】
粘度指数向上剤としての、請求項
8に記載の組成物。
【請求項10】
前記硫黄フリーのコポリマーまたはそれらの混合物の含有率が、前記組成物の全重量を基準として、0.1~30重量%である、請求項
5または
6に記載の組成物。
【請求項11】
潤滑剤、誘電流体、冷却剤または燃料としての、請求項
10に記載の組成物。
【請求項12】
粘度指数を向上させるため、および銅からなるか、または銅を含有する金属の銅腐食を防止するための、請求項1に記載の硫黄フリーのコポリマーまたは請求項
5に記載の組成物の使用。
【請求項13】
銅からなるか、または銅を含有する金属の銅腐食を抑制または低減する方法であって、請求項1に記載の硫黄フリーのコポリマーまたは請求項
5に記載の組成物を、添加剤として、前記金属と接触する流体に添加する、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫黄フリーのポリアルキル(メタ)アクリレートコポリマーおよび同ポリアルキル(メタ)アクリレートコポリマーを含む組成物に関する。本発明による組成物は、添加剤、好ましくは金属部品と接触する流体、例えばドライブライン流体用の粘度指数向上剤(VII)であってよいか、または1種以上の基油を含む組成物、例えば潤滑剤、誘電流体、冷却剤、燃料等であってよい。本発明は、粘度指数を向上させるため、および金属の腐食を防止するための上記のポリマーまたは組成物の使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアルキル(メタ)アクリレート(PAMA)コポリマーは、潤滑剤、殊にドライブライン(DL)流体用の粘度指数向上剤(VII)および/または流動点降下剤(PPD)として広く使用されている。
【0003】
粘度指数向上剤(VII)は、少なくとも基油または炭化水素を含む流体、例えば潤滑剤、誘電流体、冷却剤、燃料等の温度依存特性を改善するのに使用される添加剤である。前記粘度指数(VI)はしばしば、40℃での動粘度(KV40)および100℃での動粘度(KV100)から計算される。前記VIが高ければ高いほど、前記流体の粘度の温度依存性は低くなる、すなわち、前記VIが高い場合にその温度に依存した粘度変化の範囲は狭い。
【0004】
VIの向上は、乗物、例えば自動車における燃料消費量およびCO2排出量の減少をもたらし、そのため、優れたVI向上特性を有する多くのポリアルキル(メタ)アクリレートがこのために開発された。
【0005】
そのうえ、潤滑剤、誘電流体、冷却剤、燃料等として使用される流体のせん断抵抗は、極めて重要である:一方では、前記流体の寿命を、そのせん断抵抗が高い(その粘度損失が低いことを意味する)場合に延ばすことができ、かつ他方では、前記せん断抵抗の改善は、金属部品の破損を引き起こしうるせん断損失を低下させる。さらに、せん断損失による前記流体の一部の成分の分解は、前記流体中の不溶性成分またはフラグメントの形成をまねくことがあり、これらは、例えば、フィルターまたは他の機械部品を閉塞させることがあり、かつそのような流体が使用される機械装置または電気装置、例えば変速機の故障をまねくことがある。
【0006】
流体、例えばDL流体の高いせん断安定性を達成するには、連鎖移動剤(CTA)、例えばドデシルメルカプタンの存在下でのラジカル重合により得られるポリマーがしばしば使用される。なぜなら、ドデシルメルカプタンの使用は、より低分子量のポリマーをもたらすからである。しかし、そのようなCTA中の硫黄分は、前記ポリマー中に残留し、かつ金属、殊に銅からなるか、または銅を含有する金属の腐食を引き起こす。
【0007】
欧州特許出願公開第3498808号明細書(EP3498808A1)には、せん断後に改善されたせん断安定性および溶解度を有するポリブタジエン含有ポリアルキル(メタ)アクリレート粘度指数向上剤が開示されている。この文献は、金属腐食の問題に触れていない。
【0008】
米国特許第6746993号明細書(US6746993B2)にも、VIIとして使用することができる、せん断安定なPAMAコポリマーが開示されている。そこにも、金属腐食の問題については挙げられていない。
【0009】
他方では、機械装置または電気装置、例えば乗物の変速機、エンジン、バッテリーおよびパワートレインの金属部品に直接適用されるか、またはこれらにおいて使用される流体、殊にドライブライン流体、例えば潤滑剤、誘電流体、冷却剤または燃料において使用することができる、向上したVIIへの高まる需要が常にある。
【0010】
殊に電気車両およびハイブリッド車両の成長市場のためには、上記の流体、好ましくはe-DL流体のVIおよびせん断抵抗を改善するだけではなく、前記流体と直接接触する金属部品、例えば銅からなるか、または銅を含む金属部品に腐食を生じさせないVIIが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】欧州特許出願公開第3498808号明細書
【文献】米国特許第6746993号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の目的は、多様な基油への優れた溶解性、優れた粘度指数向上特性およびせん断抵抗改善特性を有するだけではなく、乗物、例えば自動車、列車または航空機における機械装置または電気装置における金属部品の銅腐食も防止または低減する粘度指数向上剤として使用することができる、新規なポリアルキル(メタ)アクリレートコポリマーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
粘度指数向上剤(VII)として使用することができ、かつ高いせん断安定性を有するポリアルキル(メタ)アクリレートコポリマーを、従来の硫黄含有連鎖移動剤(CTA)を全く使用せずに合成することができることが驚くべきことに見出された。そのようなコポリマーは、上記の技術的課題を解決する。なぜなら、それらのコポリマーは、銅からなるか、または銅を含有する金属部品の銅腐食を防止または低減する一方で、前記流体への添加剤として使用される際に、優れた粘度指数向上特性およびせん断安定性を維持するからである。
【0014】
それに応じて、第1の態様において、本発明は、請求項1に定義されるとおり、50ppm未満の硫黄含有率を有する硫黄フリーのコポリマーに関する。
【0015】
第2の態様において、本発明は、本発明による硫黄フリーのコポリマーを含む組成物に関する。
【0016】
第3の態様において、本発明は、粘度指数を向上させるため、および銅からなるか、または銅を含有する金属の銅腐食を防止するための、前記コポリマーまたは前記組成物の使用に関する。
【0017】
第4の態様において、本発明は、銅からなるか、または銅を含有する金属の銅腐食を防止する方法に関する。
【0018】
発明の詳細な説明
本発明による硫黄フリーのコポリマー
第1の態様において、本発明は、50ppm未満の硫黄含有率および5000~100000g/molの重量平均分子量(Mw)を有し、かつ、それぞれモノマー組成物の全重量を基準として、以下:
(a)線状または分岐状のC1~C6アルキル(メタ)アクリレート、またはそれらの混合物から選択されるモノマー 0~40重量%、
(b)線状または分岐状のC7~C15アルキル(メタ)アクリレート、分岐状のC18~C36アルキル(メタ)アクリレート、またはそれらの混合物から選択されるモノマー 25~100重量%、および
(c)線状のC16~C36アルキル(メタ)アクリレート、またはそれらの混合物から選択されるモノマー 0~35重量%
を含む、モノマー組成物のラジカル重合により得ることができる、硫黄フリーのコポリマーに関する。
【0019】
本発明によれば、前記モノマー組成物中の前記モノマー(a)、(b)および(c)の全量は、前記モノマー組成物中の前記モノマーの全量を基準として、合計が少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも85重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、および最も好ましくは95~100重量%になるように選択される。
【0020】
本明細書において使用される用語「(メタ)アクリレート」は、1種以上のアクリル酸のエステル、1種以上のメタクリル酸のエステルまたはアクリル酸およびメタクリル酸のエステルの混合物をいう。本明細書において使用される用語「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸、メタクリル酸およびアクリル酸とメタクリル酸との混合物をいう。そのため、用語「アルキル(メタ)アクリレート」は、アルキルメタクリレート、ならびにアルキルアクリレートモノマーを含む。
【0021】
好ましくは、本発明による硫黄フリーのコポリマーは、それぞれ前記モノマー組成物の全重量を基準として、以下:
(a)線状または分岐状のC1~C6アルキル(メタ)アクリレート、またはそれらの混合物から選択されるモノマー 0.1~40重量%、
(b)線状または分岐状のC7~C15アルキル(メタ)アクリレート、分岐状のC18~C36アルキル(メタ)アクリレート、またはそれらの混合物から選択されるモノマー 25~99.9重量%、より好ましくは25~99.8重量%、および
(c)線状のC16~C36アルキル(メタ)アクリレート、またはそれらの混合物から選択されるモノマー 0~35重量%、より好ましくは0.1~35重量%
を含む、モノマー組成物のラジカル重合により得ることができる。
【0022】
本発明のモノマー組成物は、モノマー(a)、(b)および(c)以外の、さらなるモノマーをさらに含んでいてよい。
【0023】
本発明によるモノマー組成物中に含まれていてよい、さらなるモノマーは、アシル基中に炭素原子1~11個を有するビニルエステル、アルコール基中に炭素原子1~10個を有するビニルエーテル、酸素官能化および/または窒素官能化された分散性化合物、複素環式(メタ)アクリレート、複素環式ビニル化合物、共有結合されたリン原子を含有する化合物、エポキシ基を含有する化合物、ハロゲンを含有する化合物、スチレンおよび側鎖中にアルキル置換基を有し、かつ炭素原子8~17個を有する置換スチレンからなる群から選択される、1種以上のエチレン性不飽和モノマー(d)である。
【0024】
好ましくは、モノマー(d)が前記モノマー組成物中に含まれる場合に、前記モノマー組成物中の前記モノマー(a)、(b)、(c)および(d)の全量は、前記モノマー組成物の全重量を基準として、合計が前記モノマーの全量の少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも85重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、および最も好ましくは95~100重量%になるように選択される。
【0025】
本発明によれば、前記モノマー組成物の前記ラジカル重合は、連鎖移動剤(CTA)を全く使用せずに実施されてよい。好ましくは、前記モノマー組成物のラジカル重合は、1種以上の硫黄フリー連鎖移動剤の存在下で実施される。
【0026】
好ましくは、本発明によるラジカル重合のための前記硫黄フリーCTAの量は、使用される場合には、前記モノマー組成物の全重量を基準として、0.1~30重量%、好ましくは0.1~20重量%、より好ましくは0.1~10重量%、および最も好ましくは0.2~5重量%である。
【0027】
本発明によるポリアルキル(メタ)アクリレートコポリマーは、5000~100000g/mol、好ましくは8000~100000g/mol、より好ましくは10000~80000g/mol、よりいっそう好ましくは10000~50000g/mol、最も好ましくは10000~35000g/molの重量平均分子量(Mw)を有する。
【0028】
前記ポリマーおよびオリゴマー連鎖移動剤の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ポリメチルメタクリレート校正標準を使用して以下の測定条件を用いるゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定される:
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
操作温度:40℃
カラム:カラムセットは、4本のカラム:PSS-SDV 100 Å 10μm 8.0×50mm、PSS-SDV Linear XL 10μm 8.0×300mm×2本、PSS-SDV 100 Å 10μm 8.0×300mmからなり、全てのカラムが10μmの平均粒度を有する。
流量:1mL/min
注入体積:100μL
機器:オートサンプラー、ポンプおよびカラムオーブンからなるShodex GPC101
検出装置:Shodexからの屈折率検出器。
【0029】
前記ポリアルキル(メタ)アクリレートの適切な重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、当業者により自らの技術知識に基づいて、かつ本発明のコポリマーを含む(1種以上の)組成物の用途に応じて、調整または選択することができる。
【0030】
好ましくは、本発明のポリアルキル(メタ)アクリレートの多分散指数(PDI)は、1.0~5.0、好ましくは1.2~4.0、より好ましくは1.2~3.5の範囲内である。前記PDIは、重量平均分子量の、数平均分子量に対する比(Mw/Mn)として定義される。
【0031】
モノマー(a):
本発明のモノマー(a)は、線状または分岐状のC1~C6アルキル(メタ)アクリレートからなる群から選択される。
【0032】
用語「線状または分岐状のC1~C6アルキル(メタ)アクリレート」は、炭素原子1~6個を有する線状または分岐状のアルキル鎖を有する(メタ)アクリル酸のエステルをいう。前記用語は、特定の長さのアルコールとの個々の(メタ)アクリル酸エステル、および同様に異なる長さのアルコールとの(メタ)アクリル酸エステルの混合物を含む。
【0033】
前記の線状または分岐状のC1~C6アルキル(メタ)アクリレートの例は、メチルメタクリレート(MMA)、メチルアクリレートおよびエチルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート(BMA)およびブチルアクリレート(BA)、イソブチルメタクリレート(IBMA)、ヘキシルメタクリレートおよびシクロヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレートおよびそれらの組合せであるが、これらに限定されない。
【0034】
前記モノマー(a)は、単一モノマー、例えば前記の線状または分岐状のC1~C6アルキル(メタ)アクリレートから選択される1種であってよいか、または前記モノマー(a)は、前記の線状または分岐状のC1~C6アルキル(メタ)アクリレートの上記の群から選択される2種以上のモノマーの混合物であってよい。
【0035】
好ましくは、メチルメタクリレート(MMA)は、本発明によるモノマー(a)として使用される。
【0036】
本発明によれば、前記モノマー組成物は、前記モノマー組成物の全重量を基準として、1種以上のモノマー(a) 0~40重量%、より好ましくは0.1~40重量%を含む。
【0037】
モノマー(b):
本発明のモノマー(b)は、線状または分岐状のC7~C15アルキル(メタ)アクリレートおよび分岐状のC18~C36アルキル(メタ)アクリレートからなる群から選択される。
【0038】
用語「線状または分岐状のC7~C15アルキル(メタ)アクリレート」は、炭素原子7~15個を有する線状または分岐状のアルキル鎖を有する(メタ)アクリル酸のエステルをいう。前記用語は、特定の長さのアルコールとの個々の(メタ)アクリル酸エステル、および同様に異なる長さのアルコールとの(メタ)アクリル酸エステルの混合物を含む。
【0039】
同じように、用語「分岐状のC18~C36アルキル(メタ)アクリレート」は、炭素原子18~36個を有する分岐状のアルキル鎖を有する(メタ)アクリル酸のエステルをいう。前記用語は、特定の長さのアルコールとの個々の(メタ)アクリル酸エステル、および同様に異なる長さのアルコールとの(メタ)アクリル酸エステルの混合物を含む。
【0040】
前記の線状または分岐状のC7~C15アルキル(メタ)アクリレートモノマーの例は、C12~C15-アルキルメタクリレート(LIMA)、2-エチルヘキシルアクリレート(EHA)、2-エチルヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、ノニルメタクリレート、デシルメタクリレート、イソデシルメタクリレート(IDMA、分岐状の(C10)アルキル異性体混合物をベースとする)、ウンデシルメタクリレート、n-ドデシルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、n-テトラデシルメタクリレート、ペンタデシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート(LMA)、ドデシル-ペンタデシルメタクリレート(DPMA)、およびそれらの混合物であるが、これらに限定されない。好ましい線状または分岐状のC7~C15アルキル(メタ)アクリレートモノマーb)は、ラウリルメタクリレート(LMA)、ドデシル-ペンタデシルメタクリレート(DPMA)、C12~C15-アルキルメタクリレート(LIMA)、n-ドデシルメタクリレート、n-テトラデシルメタクリレート、またはそれらの混合物である。
【0041】
前記の分岐状のC18~C36アルキル(メタ)アクリレートの例は、2-ヘキシルドデシル(メタ)アクリレート、2-オクチルドデシル(メタ)アクリレート、2-デシル-テトラデシル(メタ)アクリレート、2-ドデシルヘキサデシル(メタ)アクリレート、5-イソプロピルヘプタデシル(メタ)アクリレート、4-tert-ブチルオクタデシル(メタ)アクリレート、5-エチルオクタデシル(メタ)アクリレート、3-イソプロピルオクタデシル(メタ)アクリレート、2-デシルオクタデシル(メタ)アクリレート、2-テトラデシルオクタデシル(メタ)アクリレート、2-セチルエイコシル(メタ)アクリレート、2-ステアリルエイコシル(メタ)アクリレート、エイコシルテトラトリアコンチル(メタ)アクリレート、2-デシル-テトラデシル(メタ)アクリレート、2-デシルオクタデシル(メタ)アクリレート、2-ドデシル-1-ヘキサデシル(メタ)アクリレート、1,2-オクチル-1-ドデシル(メタ)アクリレート、2-テトラデシルオクタデシル(メタ)アクリレート、1,2-テトラデシル-オクタデシル(メタ)アクリレートおよび2-ヘキサデシル-エイコシル(メタ)アクリレートであるが、これらに限定されない。
【0042】
モノマー(b)は、モノマー(b)の上記の群から選択される単一モノマーであってよいだけではなく、モノマー(b)は、モノマー(b)の上記の群から選択される2種以上のモノマーの混合物であってもよい。
【0043】
好ましくは、本発明によるモノマー(b)は、線状または分岐状のC12~C15アルキルメタクリレート、分岐状のC18~C30アルキル(メタ)アクリレート、またはそれらの混合物から選択される。より好ましくは、前記モノマー(b)は、ラウリルメタクリレート(LMA)、LIMA、DPMA、n-ドデシルメタクリレート、n-テトラデシルメタクリレート、2-デシル-テトラデシルメタクリレート、またはそれらの混合物からなる群から選択される。
【0044】
本発明によれば、前記モノマー組成物は、前記モノマー組成物の全重量を基準として、1種以上のモノマー(b) 25~100重量%、好ましくは25~99.9重量%、より好ましくは25~99.8重量%を含む。
【0045】
モノマー(c):
本発明のモノマー(c)は、線状のC16~C36アルキル(メタ)アクリレートからなる群から選択される。
【0046】
用語「線状のC16~C36アルキル(メタ)アクリレート」は、炭素原子16~36個を有する線状のアルキル鎖を有する(メタ)アクリル酸のエステルをいう。前記用語は、特定の長さのアルコールとの個々の(メタ)アクリル酸エステル、および同様に異なる長さのアルコールとの(メタ)アクリル酸エステルの混合物を含む。
【0047】
モノマー(c)は、モノマー(c)の上記の群から選択される単一モノマーであってよいだけではなく、モノマー(c)は、モノマー(c)の群から選択される2種以上のモノマーの混合物であってもよい。
【0048】
好ましくは、モノマー(c)は、線状のC16~C30アルキル(メタ)アクリレート、より好ましくは線状のC16~C28アルキル(メタ)アクリレート、および最も好ましくは線状のC16~C24アルキル(メタ)アクリレートから選択される。
【0049】
前記の線状のC16~C24アルキル(メタ)アクリレートの例は、n-ヘキサデシルメタクリレート、n-ヘプタデシルメタクリレート、n-オクタデシルメタクリレート、n-ノナデシルメタクリレート、エイコシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート(SMA)、ベヘニルメタクリレートであるが、これらに限定されない。
【0050】
好ましくは、本発明によるモノマー(c)は、ステアリルメタクリレート(SMA)、n-ヘキサデシルメタクリレート、n-オクタデシルメタクリレート、またはそれらの混合物からなる群から選択される。
【0051】
本発明によれば、前記モノマー組成物は、前記モノマー組成物の全重量を基準として、1種以上のモノマー(c) 0~35重量%、好ましくは0.1~35重量%を含む。
【0052】
モノマー(d):
本発明によれば、前記モノマー組成物は、アシル基中に炭素原子1~11個を有するビニルエステル、アルコール基中に炭素原子1~10個を有するビニルエーテル、酸素官能化および/または窒素官能化された分散性化合物、複素環式(メタ)アクリレート、複素環式ビニル化合物、共有結合されたリン原子を含有する化合物、エポキシ基を含有する化合物、ハロゲンを含有する化合物、スチレンおよび側鎖中にアルキル置換基を有し、かつ炭素原子8~17個を有する置換スチレンから選択される1種以上のエチレン性不飽和モノマー(d)をモノマー(d)としてさらに含んでいてよい。
【0053】
好ましくは、モノマー(d)は、エーテルアルコールの(メタ)アクリレート、アミノアルキル(メタ)アクリレート、アミノアルキル(メタ)アクリルアミド、芳香族基を含有するビニルモノマーからなる群から選択される。
【0054】
好適なアシル基中に炭素原子1~11個を有するビニルエステルは、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニルからなる群から選択され、好ましくはアシル基中に炭素原子2~9個、より好ましくは2~5個を含むビニルエステルであり、ここで、前記アシル基は、線状または分岐状であってよい。
【0055】
アルコール基中に炭素原子1~10個を有する好適なビニルエーテルは、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテル、ビニルブチルエーテルからなる群から選択され、好ましくはアルコール基中に炭素原子1~8個、より好ましくは1~4個を含むビニルエーテルであり、ここで、前記アルコール基は、線状または分岐状であってよい。
【0056】
酸素官能化および/または窒素官能化された分散性モノマーに由来する好適なモノマーは、アミノアルキル(メタ)アクリレート、例えばN,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノペンチル(メタ)アクリレート、N,N-ジブチルアミノヘキサデシル(メタ)アクリレート、アミノアルキル(メタ)アクリルアミド、例えばN,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、例えば3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3,4-ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,5-ジメチル-1,6-ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオール(メタ)アクリレート、p-ヒドロキシスチレン、ビニルアルコール、アルケノール(炭素原子3~12個を有する(メチル)アリルアルコール)、多価(3~8価)アルコール(グリセリン、ペンタエリトリトール、ソルビトール、ソルビタン、ジグリセリド、糖)エーテルまたは(メタ)アクリレート、C1~8-アルキルオキシ-C2~4-アルキル(メタ)アクリレート、例えばメトキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシヘプチル(メタ)アクリレート、メトキシヘキシル(メタ)アクリレート、メトキシペンチル(メタ)アクリレート、メトキシオクチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシブチル(メタ)アクリレート、エトキシヘプチル(メタ)アクリレート、エトキシヘキシル(メタ)アクリレート、エトキシペンチル(メタ)アクリレート、エトキシオクチル(メタ)アクリレート、プロポキシメチル(メタ)アクリレート、プロポキシエチル(メタ)アクリレート、プロポキシプロピル(メタ)アクリレート、プロポキシブチル(メタ)アクリレート、プロポキシヘプチル(メタ)アクリレート、プロポキシヘキシル(メタ)アクリレート、プロポキシペンチル(メタ)アクリレート、プロポキシオクチル(メタ)アクリレート、ブトキシメチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシプロピル(メタ)アクリレート、ブトキシブチル(メタ)アクリレート、ブトキシヘプチル(メタ)アクリレート、ブトキシヘキシル(メタ)アクリレート、ブトキシペンチル(メタ)アクリレートおよびブトキシオクチル(メタ)アクリレートからなる群から選択され、エトキシエチル(メタ)アクリレートおよびブトキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0057】
好適な複素環式(メタ)アクリレートは、2-(1-イミダゾリル)エチル(メタ)アクリレート、2-(4-モルホリニル)エチル(メタ)アクリレート、1-(2-メタクリロイルオキシエチル)-2-ピロリドン、N-メタクリロイルモルホリン、N-メタクリロイル-2-ピロリジノン、N-(2-メタクリロイルオキシエチル)-2-ピロリジノン、N-(3-メタクリロイルオキシプロピル)-2-ピロリジノンからなる群から選択される。
【0058】
好適な複素環式ビニル化合物は、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、2-メチル-5-ビニルピリジン、3-エチル-4-ビニルピリジン、2,3-ジメチル-5-ビニルピリジン、ビニルピリミジン、ビニルピペリジン、9-ビニルカルバゾール、3-ビニルカルバゾール、4-ビニルカルバゾール、1-ビニルイミダゾール、2-メチル-1-ビニルイミダゾール、N-ビニルピロリドン、N-ビニルピロリジン、3-ビニルピロリジン、N-ビニル-カプロラクタム、N-ビニルブチロラクタム、ビニルオキソラン、ビニルフラン、ビニルオキサゾール類および水素化ビニルオキサゾール類からなる群から選択される。
【0059】
共有結合されたリン原子を含有するモノマーは、2-(ジメチルホスファト)プロピル(メタ)アクリレート、2-(エチレンホスフィト)プロピル(メタ)アクリレート、ジメチルホスフィノメチル(メタ)アクリレート、ジメチルホスホノエチル(メタ)アクリレート、ジエチル(メタ)アクリロイルホスホネート、ジプロピル(メタ)アクリロイルホスフェート、2-(ジブチルホスホノ)エチル(メタ)アクリレート、ジエチルホスファトエチル(メタ)アクリレート、2-(ジメチルホスファト)-3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(エチレンホスフィト)-3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピルジエチルホスホネート、3-(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピルジプロピルホスホネート、3-(ジメチルホスファト)-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-(エチレンホスフィト)-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシ-3-ヒドロキシプロピルジエチルホスホネート、2-(メタ)アクリロイルオキシ-3-ヒドロキシプロピルジプロピルホスホネートおよび2-(ジブチルホスホノ)-3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートからなる群から選択される。
【0060】
エポキシ基を含有する好適なモノマー(d)は、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートおよびグリシジル(メタ)アリルエーテル等である。
【0061】
ハロゲンを含有する好適なモノマー(d)は、例えば、塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、塩化(メタ)アリルおよびハロゲン化スチレン(ジクロロスチレン)等である。
【0062】
前記の側鎖中にアルキル置換基を有し、かつ炭素原子8~17個を有する置換スチレンの例は、α-メチルスチレンおよびα-エチルスチレン、環上にアルキル置換基を有する置換スチレン、例えばビニルトルエンおよびp-メチルスチレン、ハロゲン化スチレン、例えばモノクロロスチレン、ジクロロスチレン、トリブロモスチレンおよびテトラブロモスチレン、ニトロスチレンであるが、これらに限定されない。特に好ましいモノマー(d)は、スチレンである。
【0063】
より好ましくは、前記モノマー(d)は、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(DMAEMA)、N-(3-ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド(DMAPMAM)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、2-[2-ヒドロキシ-5-[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、N-ビニルピロリドンまたはそれらの混合物からなる群から選択される。
【0064】
本発明の好ましい実施態様において、前記モノマー組成物は、前記モノマー組成物の全重量を基準として、1種以上のモノマー(d) 0~10重量%、より好ましくは0.1~7重量%、よりいっそう好ましくは1~5重量%を含む。
【0065】
好ましくは、前記モノマー組成物中のモノマーa)、b)、c)およびd)の量は、前記モノマー組成物中の前記モノマーの全量を基準として、合計が少なくとも80重量%、好ましくは合計が少なくとも90重量%、より好ましくは合計が少なくとも95重量%、よりいっそう好ましくは合計が95~99重量%、および最も好ましくは合計が95~100重量%になる。
【0066】
他のモノマー(e):
本発明によれば、前記モノマー(a)、(b)、(c)および(d)以外の、さらなるモノマー(e)は、それから得られるコポリマーの特性がマイナスの影響または不利な影響を受けない限り、前記モノマー組成物中に含まれていてよい。
【0067】
硫黄フリー連鎖移動剤(CTA):
本発明によれば、前記ポリアルキル(メタ)アクリレートは、少なくとも1種の硫黄フリー連鎖移動剤(CTA)の存在下での前記モノマー組成物のラジカル重合により得ることができる。前記の1種以上の硫黄フリーCTAは、好ましくは、以下の化合物またはそれらの混合物から選択される:
(i)テルペノイド、
(ii)10000g/mol未満の重量平均分子量(M
w)を有するメタクリレートまたはメタクリル酸のオリゴマー、
(iii)1000g/mol未満の重量平均分子量(M
w)を有するスチレンオリゴマー、
(iv)Co(II)錯体、
(v)化学式(I)
【化1】
[式中、Aは、-O-または-CH
2-であり、Xは、C
1~C
4アルキル、ペルオキシC
1~C
6アルキル、ペルオキシC
6~C
10アラルキル、-CH
2Ph、または-COOR
1(ここで、R
1はC
1~C
4アルキルである)であり、かつZは、Ph、-CN、-OR
1(ここで、R
1はC
1~C
4アルキルである)、COOR
1(ここで、R
1はC
1~C
4アルキルである)、または-CONH
2である]により表される付加-開裂連鎖移動剤、
(vi)キノン、
(vii)炭素原子4~14個を有するエチレン性不飽和炭化水素、
(viii)イソプロパノール。
【0068】
前記オリゴマーCTAの重量平均分子量(Mw)は、上記のように本発明のコポリマーと同じように測定することができる。
【0069】
好ましくは、前記硫黄フリーCTA(i)は、リモネン、ミルセン、α-テルピネン、β-テルピネン、γ-テルピネン、テルピノレン、α-ピネン、β-ピネン、およびジペンテンからなる群から選択されるが、これらの化合物に限定されない。
【0070】
好ましくは、前記硫黄フリーCTA(ii)は、C1~C36アルキルメタクリレート、酸素官能化および/または窒素官能化された分散性メタクリレート、複素環式メタクリレート、芳香族メタクリレート、およびメタクリル酸からなる群から選択される少なくとも1種のモノマーを重合することにより得ることができるが、前記方法により得られる化合物に限定されない。
【0071】
好ましくは、前記硫黄フリーCTA(iii)は、α-メチルスチレンダイマー、およびスチレンダイマーからなる群から選択される。
【0072】
前記硫黄フリーCTA(iv)は、Co(II)と、式(II)~(VII):
【化2】
[式中、各Rは独立して、PhまたはC
1~C
12アルキルを表すか、または隣接する炭素原子上の2個のRは一緒になって、C
5~C
8アルキレンを表し、各R
1は、独立して、H、-OHまたはC
1~C
12アルキルであり、各R
2は、独立して、-OHまたは-NHであり、各R
3は、独立して、H、Ph、C
1~C
12アルキル、ヒドロキシフェニル、またはC
1~C
4アルコキシフェニルであり、かつ各nは、独立して、2または3の整数である]による少なくとも1種の配位子とを含む、Co(II)錯体である。
【0073】
上記のCo(II)錯体は、例えば、国際公開第2014/106589号(WO2014/106589A1)から公知である。
【0074】
好ましくは、前記硫黄フリーCTA(v)は、好ましくは、α-ベンジルオキシスチレン、α-ベンジルオキシアクリロニトリル、メチル=α-ベンジルオキシアクリレート、α-ベンジルオキシアクリルアミド、ケテンジエチルアセタール、メチル=α-ベンジルオキシビニルエーテル、α-イソプロポキシスチレン、またはそれらの混合物からなる群から選択される。
【0075】
好ましくは、前記硫黄フリーCTA(vi)は、1,4-ナフトキノン、2-メチル-1,4-ナフトキノン、2-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノン、またはそれらの混合物からなる群から選択される。
【0076】
好ましくは、前記硫黄フリーCTA(vii)は、1,4-シクロヘキサジエン、2-メチル-1,4-シクロヘキサジエン、1,2-ジヒドロナフタレン、9,10-ジヒドロフェナントレン、オクタヒドロフェナントレン、9,10-ジヒドロアントラセン、オクタヒドロアントラセン、テトラリン、インデン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、および1-ドデセン、またはそれらの混合物からなる群から選択される。
【0077】
本発明によれば、前記ポリアルキル(メタ)アクリレート中の硫黄分は好ましくない。しかしながら、前記モノマー組成物中の(1種以上の)硫黄含有連鎖移動剤の含有率が、前記モノマー組成物の全重量を基準として0.05重量%未満に維持される限り、必要に応じて、1種以上の従来の硫黄含有CTAが使用されてよい。
【0078】
前記の硫黄フリーのポリアルキル(メタ)アクリレートコポリマーの製造
本発明によれば、前記ポリアルキル(メタ)アクリレートコポリマーは、以下の工程:
(i)上記のモノマー組成物を用意する工程、および
(ii)前記モノマー組成物中でラジカル重合を開始する工程
を含む方法により製造される。
【0079】
本発明のラジカル重合は、上記のような1種以上の硫黄フリー連鎖移動剤の存在下で実施されてよい。
【0080】
標準のフリーラジカル重合は、とりわけ、Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, 第6版に詳述されている。
【0081】
原子移動ラジカル重合(ATRP法)はそれ自体として公知である。これは「リビング」フリーラジカル重合であることが推定されるが、しかしながら、その機構の説明により限定することを意図するものではない。これらの方法において、遷移金属化合物は、移動可能な原子団を有する化合物と反応される。これは、前記の移動可能な原子団の、前記遷移金属化合物への移動を含み、その結果として前記金属は酸化される。この反応は、フリーラジカルを形成し、これがエチレン基へ付加する。しかしながら、前記原子団の、前記遷移金属化合物への移動は可逆的であり、こうして前記原子団は、前記の成長するポリマー鎖に移動して戻り、その結果として制御重合系を形成する。それに応じて、前記ポリマーの形成、その分子量および分子量分布を制御することが可能である。
【0082】
この反応様式は、例えば、J.-S. Wang, et al., J. Am. Chem. Soc, vol. 117, p. 5614-5615 (1995)、Matyjaszewski, Macromolecules, vol. 28, p. 7901-7910 (1995)に記載されている。そのうえ、国際公開第96/30421号(WO 96/30421)、国際公開第97/47661号(WO 97/47661)、国際公開第97/18247号(WO 97/18247)、国際公開第98/40415号(WO 98/40415)および国際公開第99/10387号(WO 99/10387)の特許出願公開明細書には、上記で説明されたATRPの変法が開示されている。そのうえ、本発明のコポリマーは、例えば、可逆付加-開裂連鎖移動法(RAFT法)によって得ることもできる。この方法は、例えば、国際公開第98/01478号(WO 98/01478)および国際公開第2004/083169号(WO 2004/083169)に詳細に記載されている。
【0083】
前記重合は、標準圧力、減圧または高めた圧力下で実施することができる。その重合温度も決定的ではない。しかしながら、一般に、-20~200℃、好ましくは50~150℃およびより好ましくは80~130℃の範囲内である。
【0084】
本発明によれば、1種以上のラジカル開始剤が、前記モノマー組成物のラジカル重合に使用されてよい。
【0085】
好適なラジカル開始剤は、例えば、アゾ開始剤、例えばアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2′-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(AMBN)および1,1-アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、およびペルオキシ化合物、例えばメチルエチルケトンペルオキシド、アセチルアセトンペルオキシド、ジラウリルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、ケトンペルオキシド、tert-ブチルペルオクトエート、メチルイソブチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、ジクミルペルオキシド、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、クミルヒドロペルオキシド、tert-ブチルヒドロペルオキシドおよびビス(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネートである。
【0086】
好ましくは、前記ラジカル開始剤は、2,2′-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2-ビス(tert-ブチルペルオキシ)ブタン、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、1,1-ジ-tert-ブチルペルオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、tert-ブチルペルオキシベンゾエートおよびtert-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエートからなる群から選択される。特に好ましい開始剤は、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエートおよび2,2-ビス(tert-ブチルペルオキシ)ブタンである。
【0087】
好ましくは、前記モノマー組成物の全重量に対するラジカル開始剤の全量は0.01~10重量%である。
【0088】
ラジカル開始剤の全量が、単一工程において添加されてよく、または前記重合反応の過程で幾つかの工程において添加されてもよい。好ましくは、前記ラジカル開始剤は、幾つかの工程において添加される。例えば、前記ラジカル開始剤の一部分が、ラジカル重合を開始させるために添加されてよく、かつ前記ラジカル開始剤の第2の部分が、初期添加の0.5~3.5時間後に添加されてよい。
【0089】
本発明によれば、前記ポリアルキル(メタ)アクリレートコポリマーは、好ましくは硫黄含有連鎖移動剤を全く使用せずに製造される。しかしながら、硫黄含有CTA、例えばn-ドデシルメルカプタンまたは2-メルカプトエタノールが、前記モノマー組成物の前記ラジカル重合に使用される場合には、その含有率は、前記モノマー組成物の全重量を基準として、0.05重量%未満であるべきである。
【0090】
好ましくは、硫黄含有連鎖移動剤は、本発明のモノマー組成物中に含まれないか、または前記モノマー組成物の前記ラジカル重合において使用されないか、または添加されない。
【0091】
好ましくは、工程(i)において用意される前記モノマー組成物を、油の添加により希釈して、反応混合物を用意する。前記反応混合物の全重量に対する、前記モノマー組成物の量、すなわちモノマーの全量は、好ましくは20~90重量%、より好ましくは40~80重量%、最も好ましくは50~70重量%である。
【0092】
好ましくは、前記モノマー組成物を希釈するのに使用される油は、APIグループII、III、IVまたはV油、またはそれらの混合物である。好ましくは、APIグループIIまたはIII油またはそれらの混合物は、前記モノマー組成物を希釈するのに使用される。
【0093】
本発明によるポリアルキル(メタ)アクリレートコポリマーを含む組成物
本発明は、以下:
(A)基油、および
(B)上記のポリアルキル(メタ)アクリレートコポリマー
を含む、組成物にも関する。
【0094】
本発明によれば、用語「基油」は、基油または燃料をいう。
【0095】
本発明の組成物は、希釈剤としての基油(A)と、本発明によるポリアルキル(メタ)アクリレートコポリマー(B)とを含む、添加剤組成物であってよい。前記添加剤組成物は、例えば、粘度指数向上剤(VII)として、ならびに腐食抑制剤として、機械装置または電気装置の金属または金属部品と直接接触するか、または直接接触しうる流体に添加されてよい。典型的には、前記添加剤組成物は、比較的多量の本発明によるポリマーを含む。
【0096】
本発明の組成物は、希釈剤として1種以上の基油(A)と、本発明によるポリアルキル(メタ)アクリレートコポリマー(B)とを含み、機械装置または電気装置の金属または金属部品と直接接触する流体組成物、例えば潤滑剤、誘電流体、冷却剤または燃料であってもよい。前記の流体としての本発明の組成物は、任意に、以下に詳細に説明されるようなさらなる添加剤を含んでいてもよい。前記組成物は、例えば、変速機油またはエンジン油として、乗物、例えば自動車、列車、航空機等の機械装置および電気装置用の潤滑油または冷却剤として使用することができる。前記組成物は、この場合に、上記の添加剤組成物と比較して、より少量の本発明によるポリマーを含む。
【0097】
そのため、上記の組成物中の本発明によるポリアルキル(メタ)アクリレートコポリマーの濃度(処理率とも呼ぶ)は、それらの使用目的に応じて、例えば0.1~99.5重量%、または0.5~99.5重量%の、広い範囲にわたっていてよい。
【0098】
前記組成物が添加剤組成物として使用される場合には、それぞれ前記添加剤組成物の全重量を基準として、前記の1種以上の基油(成分(A))の量は、好ましくは0.5~80重量%、より好ましくは50~80重量%であり、かつポリマー(成分(B))の量は、好ましくは20~99.5重量%、より好ましくは20~50重量%である。
【0099】
前記組成物が、潤滑剤、誘電流体、冷却剤として、または燃料として使用される場合には、それぞれ前記組成物の全重量を基準として、基油(成分(A))の量は、好ましくは70~99.9重量%、より好ましくは80~99.9重量%、よりいっそう好ましくは85~99.5重量%であり、かつコポリマー(成分(B))の量は、好ましくは前記ポリマー0.1~30重量%、より好ましくは0.1~20重量%、よりいっそう好ましくは0.5~15重量%である。
【0100】
好ましくは、(A)および(B)の量は、合計が95~100重量%になる。残部は従来の添加剤であってよい。
【0101】
そのうえ、本発明の組成物は、1種以上の硫黄フリー流動点降下剤、例えば線状または分岐状のC16~C40アルキル(メタ)アクリレートのラジカル重合により得ることができるコポリマーをさらに含んでいてよい。
【0102】
基油:
前記組成物において使用されうる基油(A)は、天然および合成油、水素化分解、水素化、および水素化仕上げに由来する油、未精製油、精製油、再生油またはそれらの混合物を含む。
【0103】
前記基油は、アメリカ石油協会(API)により規定されるように定義することもできる(“Appendix E-API Base Oil Interchangeability Guidelines for Passenger Car Motor Oils and Diesel Engine Oils”の2008年4月版、節1.3、副見出し1.3.“Base Stock Categories”参照)。
【0104】
APIは現在、潤滑剤ベースストックの5つのグループを定義する(API 1509, Annex E - API Base Oil Interchangeability Guidelines for Passenger Car Motor Oils and Diesel Engine Oils、2011年9月)。グループI、IIおよびIIIは、それらが含有する飽和分および硫黄の量と、それらの粘度指数とにより分類される鉱油であり、グループIVは、ポリアルファオレフィンであり、かつグループVは、例えばエステル油を含めた、その他全てを含む。以下の第1表は、これらのAPI分類を説明する。
【0105】
【0106】
本発明のためには、0.03%よりも多い量で硫黄を含有するAPIグループI油の使用は、好ましくないことがある。好ましくは、APIグループI油は除かれる。
【0107】
本発明による潤滑剤組成物を製造するのに使用される適切な基油の100℃での動粘度(KV100)は、ASTM D7042に従って、好ましくは1mm2/s~10mm2/sの範囲内、より好ましくは1mm2/s~8mm2/s、よりいっそう好ましくは1mm2/s~5mm2/sの範囲内である。
【0108】
本発明により使用できるさらなる基油は、グループII~IIIフィッシャー-トロプシュ由来基油である。
【0109】
フィッシャー-トロプシュ由来基油は、当該技術分野において公知である。用語「フィッシャー-トロプシュ由来」は、基油が、フィッシャー-トロプシュ法の合成物であるか、または前記合成物に由来することを意味する。フィッシャー-トロプシュ由来基油は、GTL(ガス・ツー・リキッド)基油と呼ばれることもある。本発明の潤滑組成物における基油として好都合に使用されうる好適なフィッシャー-トロプシュ由来基油は、例えば、欧州特許出願公開第0776959号明細書(EP0776959)、欧州特許出願公開第0668342号明細書(EP0668342)、国際公開第97/21788号(WO97/21788)、国際公開第00/15736号(WO00/15736)、国際公開第00/14188号(WO00/14188)、国際公開第00/14187号(WO00/14187)、国際公開第00/14183号(WO00/14183)、国際公開第00/14179号(WO00/14179)、国際公開第00/08115号(WO00/08115)、国際公開第99/41332号(WO99/41332)、欧州特許出願公開第1029029号明細書(EP1029029)、国際公開第01/18156号(WO01/18156)、国際公開第01/57166号(WO01/57166)および国際公開第2013/189951号(WO2013/189951)に開示されたものである。
【0110】
殊に変速機油配合物のためには、APIグループIIの基油、APIグループIIIの基油および様々なグループIIおよびグループIII油の混合物が使用される。
【0111】
好ましくは、前記の1種以上の基油(A)は、APIグループII基油、APIグループIII基油またはAPIグループIIおよびAPIグループIII基油の混合物である。
【0112】
前記組成物は好ましくは、150超、より好ましくは180超の粘度指数を有する。前記粘度指数は、ASTM D2270に従って測定される。
【0113】
添加剤:
本発明による組成物は、摩擦調整剤、分散剤、消泡剤、清浄剤、酸化防止剤、流動点降下剤、耐摩耗添加剤、極圧添加剤、銅腐食抑制剤以外の防食添加剤、着色剤およびそれらの混合物からなる群から選択される、さらなる添加剤を含有していてもよい。
【0114】
適切な分散剤は、ポリ(イソブチレン)誘導体、例えば、ホウ酸化PIBSIを含めたポリ(イソブチレン)スクシンイミド(PIBSI)、およびN/O官能基を有するエチレン-プロピレンオリゴマーを含む。
【0115】
分散剤(ホウ酸化分散剤を含む)は、前記潤滑剤組成物の全量を基準として、0~5重量%の量で好ましくは使用される。
【0116】
適した消泡剤は、シリコーン油、フルオロシリコーン油およびフルオロアルキルエーテルである。
【0117】
前記消泡剤は、前記組成物の全量を基準として、0.005~0.1重量%の量で好ましくは使用される。
【0118】
好ましい清浄剤は、金属含有化合物、例えばフェノキシド、サリチレート、チオホスホネート、殊にチオピロホスホネート、チオホスホネートおよびホスホネート、スルホネートおよびカーボネートを含む。金属として、これらの化合物は、殊にカルシウム、マグネシウムおよびバリウムを含有していてよい。これらの化合物は、好ましくは中性または過塩基性の形で使用されてよい。
【0119】
清浄剤は、前記組成物の全量を基準として、0.2~1重量%の量で好ましくは使用される。
【0120】
好適な酸化防止剤は、例えば、フェノール系酸化防止剤およびアミン系酸化防止剤を含む。
【0121】
フェノール系酸化防止剤は、例えば、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4′-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、4,4′-ビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、4,4′-ビス(2-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2′-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2′-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4′-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4′-イソプロピリデンビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、2,2′-メチレンビス(4-メチル-6-ノニルフェノール)、2,2′-イソブチリデンビス(4,6-ジメチルフェノール)、2,2′-メチレンビス(4-メチル-6-シクロヘキシルフェノール)、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチル-フェノール、2,4-ジメチル-6-t-ブチルフェノール、2,6-ジ-t-アミル-p-クレゾール、2,6-ジ-t-ブチル-4-(N,N′-ジメチルアミノメチルフェノール)、4,4′-チオビス(2-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4′-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2′-チオビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、ビス(3-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルベンジル)スルフィド、ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)スルフィド、n-オクチル-3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネート、n-オクタデシル-3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネート、2,2′-チオ[ジエチル-ビス-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を含む。それらのうち、殊に好ましいのは、ビスフェノール系酸化防止剤およびエステル基含有フェノール系酸化防止剤である。
【0122】
前記アミン系酸化防止剤は、例えば、モノアルキルジフェニルアミン、例えばモノオクチルジフェニルアミン、モノノニルジフェニルアミン、ジアルキルジフェニルアミン、例えば4,4′-ジブチルジフェニルアミン、4,4′-ジペンチルジフェニルアミン、4,4′-ジヘキシルジフェニルアミン、4,4′-ジヘプチルジフェニルアミン、4,4′-ジオクチルジフェニルアミン、4,4′-ジノニルジフェニルアミン、ポリアルキルジフェニルアミン、例えばテトラブチルジフェニルアミン、テトラヘキシルジフェニルアミン、テトラオクチルジフェニルアミン、テトラノニルジフェニルアミン、ナフチルアミン類、具体的にはα-ナフチルアミン、フェニル-α-ナフチルアミンおよびさらにアルキル置換フェニル-α-ナフチルアミン、例えばブチルフェニル-α-ナフチルアミン、ペンチルフェニル-α-ナフチルアミン、ヘキシルフェニル-α-ナフチルアミン、ヘプチルフェニル-α-ナフチルアミン、オクチルフェニル-α-ナフチルアミン、ノニルフェニル-α-ナフチルアミンを含む。それらのうち、ジフェニルアミン類は、その抗酸化作用の見地から、ナフチルアミン類よりも好ましい。
【0123】
好適な酸化防止剤は、さらに、硫黄およびリンを含有する化合物、例えば金属ジチオホスフェート、例えば亜鉛ジチオホスフェート(ZnDTP)、「OOSトリエステル」=ジチオリン酸と、オレフィン、シクロペンタジエン、ノルボルナジエン、α-ピネン、ポリブテン、アクリル酸エステル、マレイン酸エステルからの活性化二重結合との反応生成物(燃焼時に無灰)、有機硫黄化合物、例えばジアルキルスルフィド、ジアリールスルフィド、ポリスルフィド、変性チオール、チオフェン誘導体、キサンテート、チオグリコール、チオアルデヒド、硫黄含有カルボン酸、複素環式硫黄/窒素化合物、殊にジアルキルジメルカプトチアジアゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾール、亜鉛ビス(ジアルキルジチオカルバメート)およびメチレンビス(ジアルキルジチオカルバメート)、有機リン化合物、例えばトリアリールおよびトリアルキルホスフィット、有機銅化合物および過塩基性カルシウムおよびマグネシウムをベースとするフェノキシドおよびサリチレートからなる群から選択されてよい。
【0124】
酸化防止剤は、前記組成物の全量を基準として、0~15重量%、好ましくは0.1~10重量%、より好ましくは0.5~5重量%の量で使用される。
【0125】
前記流動点降下剤は、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、塩素化パラフィン-ナフタレン縮合物、塩素化パラフィン-フェノール縮合物、ポリアルキル(メタ)アクリレート、ポリアルキルスチレンを含む。好ましいのは、5000~200000g/molの重量平均分子量を有するポリアルキル(メタ)メタクリレートである。
【0126】
前記流動点降下剤の量は、前記組成物の全量を基準として、好ましくは0.1~5重量%である。
【0127】
好ましい耐摩耗添加剤および極圧添加剤は、硫黄含有化合物、例えば亜鉛ジチオホスフェート、亜鉛ジ-C3~12-アルキルジチオホスフェート(ZnDTP)、亜鉛ホスフェート、亜鉛ジチオカルバメート、モリブデンジチオカルバメート、モリブデンジチオホスフェート、ジスルフィド、硫化オレフィン、硫化油脂、硫化エステル、チオカーボネート、チオカルバメート、ポリスルフィド、リン含有化合物、例えばホスフィット、ホスフェート、例えばトリアルキルホスフェート、トリアリールホスフェート、例えばトリクレジルホスフェート、アミン中和モノアルキルおよびジアルキルホスフェート、エトキシル化モノアルキルおよびジアルキルホスフェート、ホスホネート、ホスフィン、それらの化合物のアミン塩または金属塩、硫黄およびリン含有耐摩耗剤、例えばチオホスフィット、チオホスフェート、チオホスホネート、それらの化合物のアミン塩または金属塩を含む。
【0128】
前記耐摩耗剤は、前記組成物の全量を基準として、0~3重量%、好ましくは0.1~1.5重量%、より好ましくは0.5~0.9重量%の量で存在していてよい。
【0129】
好ましい摩擦調整剤は、機械的に活性な化合物、例えば二硫化モリブデン、グラファイト(フッ化グラファイトを含む)、ポリ(トリフルオロエチレン)、ポリアミド、ポリイミド、吸着層を形成する化合物、例えば長鎖カルボン酸、脂肪酸エステル、エーテル、アルコール、アミン、アミド、イミド、摩擦化学反応による層を形成する化合物、例えば飽和脂肪酸、リン酸およびチオリン酸エステル、キサントゲネート、硫化脂肪酸、ポリマー様層を形成する化合物、例えばエトキシル化ジカルボン酸部分エステル、ジアルキルフタレート、メタクリレート、不飽和脂肪酸、硫化オレフィンおよび有機金属化合物、例えばモリブデン化合物(モリブデンジチオホスフェートおよびモリブデンジチオカルバメートMoDTC)およびそれらとZnDTPとの組合せ、銅含有有機化合物を含んでいてよい。
【0130】
上記で列挙した化合物の一部は、複数の機能を満足しうる。例えば、ZnDTPは、主として耐摩耗添加剤および極圧添加剤であるが、酸化防止剤および腐食抑制剤(ここでは:金属不動態化剤/不活性化剤)の特性も有する。
【0131】
上記で詳述した添加剤は、とりわけ、T. Mang, W. Dresel (eds.):“Lubricants and Lubrication”, Wiley-VCH, Weinheim 2001、R. M. Mortier, S. T. Orszulik (eds.):“Chemistry and Technology of Lubricants”に詳細に記載されている。
【0132】
好ましくは、前記の1種以上の添加剤の全濃度は、前記組成物の全重量を基準として、20重量%まで、より好ましくは0.05重量%~15重量%、より好ましくは5重量%~15重量%である。
【0133】
好ましくは、本発明によるポリマー、前記基油または燃料および任意に1種以上の添加剤の量は、前記組成物の全重量を基準として、合計95~100重量%、好ましくは合計100重量%になる。
【0134】
本発明のポリアルキル(メタ)アクリレートコポリマーまたはそれらの組成物の使用
本発明は、粘度指数を向上させるため、および/または銅からなるか、または銅を含有する金属の銅腐食を防止するための、上記の硫黄フリーのポリアルキル(メタ)アクリレートコポリマーの使用に関する。
【0135】
本発明の硫黄フリーのポリアルキル(メタ)アクリレートコポリマーは、乗物、例えば自動車(電気車両およびハイブリッド車両)、列車または航空機における機械装置または電気装置、例えばパワートレイン、変速機、エンジンおよび電動機およびバッテリーにおける金属部品と接触する流体、例えばドライブライン(DL)流体用の添加剤として使用することができる。
【0136】
優れた粘度指数向上特性およびせん断抵抗特性に加えて、本発明のポリアルキル(メタ)アクリレートコポリマーは、銅からなるか、または銅を含有する金属部品の銅腐食を効果的に防止し、そのため、添加剤として、好ましくは銅腐食抑制効果を有する粘度指数向上剤(VII)として、好適に使用することができる。
【0137】
本発明は、粘度指数を向上させるため、および/または銅からなるか、または銅を含有する金属の銅腐食を防止するための、本発明による硫黄フリーのポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーを含む、上記の組成物の使用にも関する。
【0138】
本発明による組成物を使用して銅腐食を抑制または低減する方法
さらなる態様において、本発明は、銅からなるか、または銅を含有する少なくとも1つの金属部品の銅腐食を抑制または低減する方法にも関し、本発明による硫黄フリーのポリアルキル(メタ)アクリレートコポリマーまたは上記に詳細に定義された組成物が、添加剤として、前記金属と接触する流体に添加される。
【0139】
好ましくは、前記金属部品は、乗物のパワートレイン、より好ましくはエンジン、電動機、バッテリー、変速機、シャフトまたはギヤの部品である。
【0140】
前記銅腐食は、以下に実験の部において詳細に記載されるASTM D130、銅腐食試験に従って測定される。
【0141】
本発明の組成物は、硫黄フリーまたは実質的に硫黄フリー(硫黄含有率50ppm未満)であり、ひいては機械装置または電気装置の金属部品と直接接触する流体として使用される際に、銅腐食を生じないか、またはごくわずかに生じるのみである。
【0142】
それに応じて、少なくとも1種以上の基油(A)と、粘度指数向上剤または流動点降下剤として本発明の1種以上のポリアルキル(メタ)アクリレート(B)とを含む組成物は、優れた粘度指数向上効果およびせん断安定性改善効果を達成するだけではなく、金属、好ましくは銅からなるか、または銅を含有する金属の腐食も防止し、ひいては機械装置または電気装置における変速機、エンジン、バッテリー、パワートレイン、ギヤ等を潤滑および冷却するために好適に使用することができる。
【0143】
本発明の硫黄フリーのポリアルキル(メタ)アクリレートコポリマーおよび潤滑剤、誘電流体、冷却剤または燃料としての本発明によるポリマーを含む組成物は、駆動システム(例えば手動変速機油、ディファレンシャルギヤ油、自動変速機油およびベルト式無段変速機油、アクスルフルード配合物、デュアルクラッチ変速機油、およびハイブリッド専用変速機油)において、電気車両およびハイブリッド車両用のE-ドライブを冷却および潤滑するため、冷却剤および燃料において、または工業用油配合物において(例えばギヤ油に)、有利に使用することができる。
【0144】
実験の部
本発明は、以下に、例および比較例を参照して詳細にさらに説明されるが、本発明の範囲を限定することを何ら意図するものではない。
【0145】
省略形
CTA 連鎖移動剤
init. 開始剤
MMA メチルメタクリレート
LMA ラウリルメタクリレート、C12 73%、C14 27%、全て線状
LIMA C12~C15-アルキルメタクリレート(平均炭素数=13.4、ここでC12 20%、C13 34%、C14 29%、C15 17%)、線状 40%
DPMA C12~C15-アルキルメタクリレート(平均炭素数=13.4、ここでC12 20%、C13 30%、C14 30%、C15 20%)、線状 77%
C12MA n-ドデシルメタクリレート
C14MA n-テトラデシルメタクリレート
iC24MA 2-デシル-テトラデシルメタクリレート
C16MA n-ヘキサデシルメタクリレート
SMA ステアリルメタクリレート、C16 34%、C18 66%、全て線状
C18MA n-オクタデシルメタクリレート
DMAEMA 2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート
DMAPMAM N-(3-ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド
RUVA-93 2-[2-ヒドロキシ-5-[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール
PEGMA メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、平均Mn=950、Sigma-Aldrich製
NVP N-ビニルピロリドン
ADVN 2,2′-アゾビス[2,4-ジメチルバレロニトリル]、Wako-Fujifilm製
tBPO tert-ブチル=2-エチルペルオキシヘキサノエート(Luperox 26、ARKEMA Yoshitomi製)
tBPB tert-ブチルペルベンゾエート
V601 ジメチル=2,2′-アゾビス(イソブチレート)、Wako-Fujifilm製
DDM n-ドデシルメルカプタン
t-DDM tert-ドデシルメルカプタン
Mn 数平均分子量
Mw 重量平均分子量
NB3020 Nexbase(登録商標)3020、2.2mm2/sのKV100を有するNesteからのグループII基油
NB3043 Nexbase(登録商標)3043、4.3mm2/sのKV100を有するNesteからのグループIII基油
Yubase 2 2.576mm2/sのKV100を有するSKからのグループII基油
Yubase 3 3.12mm2/sのKV100を有するSKからのグループII基油
Yubase 4 4.244mm2/sのKV100を有するSKからのグループIII基油
Chevron Neutral Oil 150R 5.24mm2/sのKV100を有するChevronからのグループII基油
Chevron Neutral Oil 100R 4.08mm2/sのKV100を有するChevronからのグループII基油
Berylane 230SSP 1.01mm2/sのKV100を有するTOTALからのグループII/III基油
PDI 多分散指数、Mw/Mnにより計算される分子量分布
VI 粘度指数、ASTM D2270に従って測定。
【0146】
方法:
前記動粘度は、ASTM D7042に従って測定される。好ましくは、前記動粘度は、100℃(KV100)および40℃(KV40)の温度で測定される。
【0147】
前記せん断抵抗は、前記潤滑剤をJASO M347に従ってせん断にかける前後に前記潤滑剤の特性を測定することにより、評価される。せん断は、超音波せん断安定性試験機を使用してJASO M347 - 4.5.1(1時間法)に従って測定される。
【0148】
本発明によるコポリマーP1~P15および比較例の比較P1~比較P7の合成
本発明によるコポリマーP1~P15および比較例の比較P1~比較P7の以下の合成において、第2表および第3表に示される原料をそれぞれ使用した。以下の表における量は、重量%で示される。
【0149】
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表3】
【0150】
コポリマーP1、P2、P9およびP10の合成
凝縮器、撹拌機および熱電対を備えた4つ口ガラス製丸底フラスコに、それぞれ、装入混合物として第2表に示された原料を装入した。窒素下で95℃に加熱した後に、第2表中のモノマーフィード混合物として示された原料混合物を、それぞれ前記フラスコに180分間にわたって添加した。95℃で120分間維持した後に、最終的にコポリマーP1、P2、P9およびP10が得られた。
【0151】
コポリマーP3、P4およびP5の合成
凝縮器、撹拌機および熱電対を備えた4つ口ガラス製丸底フラスコに、それぞれ、装入混合物として第2表に示された原料を装入した。窒素下で95℃に加熱した後に、第2表中のモノマーフィード混合物として示された原料混合物を、それぞれ前記フラスコに180分間にわたって添加した。95℃で120分間維持した後に、第2表中の「最終工程開始剤」として示された開始剤をそれぞれ前記フラスコに添加した。95℃で120分間維持した後に、最終的にコポリマーP3、P4およびP5が得られた。
【0152】
コポリマーP6の合成
凝縮器、撹拌機および熱電対を備えた4つ口ガラス製丸底フラスコに、装入混合物として第2表に示された原料を装入した。窒素下で95℃に加熱した後に、第2表中のモノマーフィード混合物として示された原料混合物を、前記フラスコに180分間にわたって添加した。95℃で120分間維持した後に、第2表中の「最終工程開始剤」として示された開始剤を前記フラスコに添加した。95℃で120分間維持した後に、第2表に示された希釈油を前記フラスコに添加し、かつ溶剤を、減圧下で180分間、蒸発により除去し、ついで最終的にコポリマーP6が得られた。
【0153】
コポリマーP8の合成
凝縮器、撹拌機および熱電対を備えた4つ口ガラス製丸底フラスコに、装入混合物として第2表に示された原料を装入した。窒素下で110℃に加熱した後に、第2表中のモノマーフィード混合物として示された原料混合物を、前記フラスコに180分間にわたって添加した。110℃で120分間維持した後に、最終的にコポリマーP8が得られた。
【0154】
コポリマーP12の合成
凝縮器、撹拌機および熱電対を備えた4つ口ガラス製丸底フラスコに、装入混合物として第2表に示された原料を装入した。窒素下で30分間110℃に加熱した後に、第2表に示された開始剤フィード混合物を、前記フラスコに180分間にわたって添加した。前記温度を110℃で60分間維持した後に、溶剤を、減圧下で240分間、蒸発により除去し、ついで最終的にコポリマーP12が得られた。
【0155】
コポリマーP13の合成
凝縮器、撹拌機および熱電対を備えた4つ口ガラス製丸底フラスコに、第2表中の装入混合物としての原料を装入した。窒素下で30分間110℃に加熱した後に、第2表に示された装入混合物用の開始剤を、前記フラスコに添加し、その後、第2表に示されたモノマーフィード混合物を、前記フラスコに210分間にわたって添加した。温度を110℃で60分間維持した後に、第2表に示された開始剤フィード混合物を、前記フラスコに添加した。温度を110℃で60分間維持した後に、第2表に示されたグラフト化モノマー混合物を、前記フラスコに添加した。130℃に加熱した後に、第2表に示された最終工程開始剤の全量の40重量%を、前記フラスコに添加した。温度を130℃で60分間維持した後に、第2表に示された最終工程開始剤の全量の20重量%を、前記フラスコに添加した。温度を130℃で60分間維持した後に、第2表に示された最終工程開始剤の全量の20重量%を、前記フラスコに添加した。温度を120℃に低下させた後に、残りの最終工程開始剤を前記フラスコに添加し、温度を120℃で180分間維持し、ついで最終的にコポリマーP13が得られた。
【0156】
コポリマーP14の合成
凝縮器、撹拌機および熱電対を備えた4つ口ガラス製丸底フラスコに、第2表中の装入混合物としての原料を装入した。窒素下で30分間110℃に加熱した後に、その後、第2表に示されたモノマーフィード混合物を、前記フラスコに180分間にわたって添加した。温度を110℃で120分間維持した後に、第2表に示されたグラフト化モノマー混合物において示されたグラフト化モノマー混合物を、前記フラスコに添加した。130℃に加熱した後に、第2表に示された最終工程開始剤の全量の40重量%を、前記フラスコに添加した。温度を130℃で60分間維持した後に、第2表に示された最終工程開始剤の全量の20重量%を、前記フラスコに添加した。温度を130℃で60分間維持した後に、第2表に示された最終工程開始剤の全量の20重量%を、前記フラスコに添加し、残りの最終工程開始剤を前記フラスコに添加し、温度を130℃で180分間維持し、その後、ストリッピングを100mbarで240分間行った。ついで最終的にコポリマーP14が得られた。
【0157】
コポリマーP15の合成
凝縮器、撹拌機および熱電対を備えた4つ口ガラス製丸底フラスコに、第2表中の装入混合物としての原料を装入した。窒素下で30分間110℃に加熱した後に、その後、第2表に示されたモノマーフィード混合物を、前記フラスコに180分間にわたって添加した。温度を110℃で120分間維持した後に、第2表に示されたグラフト化モノマー混合物において示されたグラフト化モノマー混合物を、前記フラスコに添加した。130℃に加熱した後に、第2表に示された最終工程開始剤の全量の40重量%を、前記フラスコに添加した。温度を130℃で60分間維持した後に、第2表に示された最終工程開始剤の全量の20重量%を、前記フラスコに添加した。温度を130℃で60分間維持した後に、第2表に示された最終工程開始剤の全量の20重量%を、前記フラスコに添加し、残りの最終工程開始剤を前記フラスコに添加し、温度を130℃で180分間維持し、その後、ストリッピングを13mbarで180分間行った。ついで最終的にコポリマーP15が得られた。
【0158】
コポリマー比較P4の合成
凝縮器、撹拌機および熱電対を備えた4つ口ガラス製丸底フラスコに、第3表に装入混合物として示された原料を装入した。窒素下で85℃に加熱した後に、第3表中のモノマーフィード混合物として示された原料混合物を、前記フラスコに240分間にわたって添加した。85℃で120分間維持した後に、第3表に示された希釈油を前記フラスコに添加した。85℃で60分間維持した後に、最終的にコポリマー比較P4が得られた。
【0159】
コポリマー比較P5の合成
凝縮器、撹拌機および熱電対を備えた4つ口ガラス製丸底フラスコに、第3表に装入混合物として示された原料を装入した。窒素下で85℃に加熱した後に、第3表中のモノマーフィード混合物として示された原料混合物を、前記フラスコに240分間にわたって添加した。その後、反応温度を90℃に上昇させた。90℃で30分間維持した後に、第3表に示された希釈油を前記フラスコに添加した。90℃で30分間維持した後に、最終的にコポリマー比較5が得られた。
【0160】
コポリマーP7および比較P3の合成
凝縮器、撹拌機および熱電対を備えた4つ口ガラス製丸底フラスコに、それぞれ、第2表または第3表中の装入混合物として示された原料を装入した。窒素下で30分間110℃に加熱した後に、前記表に示された開始剤フィード混合物の全量の8重量%を、それぞれ前記フラスコに60分間にわたって添加した。ついで、開始剤フィード混合物の全量の15重量%を、それぞれ前記フラスコに60分間にわたって添加した。その後、反応温度を105℃に低下させ、ついで残りの開始剤フィード混合物を、前記フラスコに45分間にわたって添加した。前記フィードの終了30分後に、最終的にコポリマーP7および比較3が得られた。
【0161】
コポリマーP11の合成
凝縮器、撹拌機および熱電対を備えた4つ口ガラス製丸底フラスコに、それぞれ、第2表に装入混合物として示された原料を装入した。窒素下で30分間95℃に加熱した後に、第2表に示された開始剤フィード混合物を、それぞれ前記フラスコに180分間にわたって添加した。その後、反応温度を95℃で60分間維持し、ついで第2表中の「最終工程開始剤」として示された開始剤をそれぞれ前記フラスコに添加した。温度を95℃で60分間維持した後に、最終的にコポリマーP11が得られた。
【0162】
コポリマー比較P1および比較P2の合成
凝縮器、撹拌機および熱電対を備えた4つ口ガラス製丸底フラスコに、それぞれ、第3表に装入混合物として示された原料を装入した。窒素下で30分間110℃に加熱した後に、第3表に示された全開始剤フィード混合物の5重量%を、それぞれ前記フラスコに60分間にわたって添加した。ついで、開始剤フィード混合物の全量の25重量%を、それぞれ前記フラスコに60分間にわたって添加した。その後、残りの開始剤フィード混合物を、それぞれ前記フラスコに60分間にわたって添加した。前記フィードの終了60分後に、第3表中の「最終工程開始剤」として示された開始剤をそれぞれ前記フラスコに添加した。温度を110℃で60分間維持した後に、最終的にコポリマー比較P1および比較P2が得られた。
【0163】
コポリマー比較P6の合成
凝縮器、撹拌機および熱電対を備えた4つ口ガラス製丸底フラスコに、第3表に装入混合物として示された原料を装入した。窒素下で30分間105℃に加熱した後に、第3表に示された開始剤フィード混合物の全量の10.7重量%を、前記フラスコに1分間にわたって添加した。ついで、開始剤フィード混合物の全量の8.9重量%を、前記フラスコに59分間にわたって添加した。ついで、開始剤フィード混合物の全量の17.9重量%を、前記フラスコに60分間にわたって添加した。その後、残りの開始剤フィード混合物を、前記フラスコに45分間にわたって添加した。前記フィードの終了60分後に、第3表中の「最終工程開始剤」として示された開始剤を、前記フラスコに添加した。温度を105℃で60分間維持した後に、最終的にコポリマー比較P6が得られた。
【0164】
コポリマー比較P7の合成
凝縮器、撹拌機および熱電対を備えた4つ口ガラス製丸底フラスコに、第3表に装入混合物として示された原料を装入した。窒素下で30分間120℃に加熱した後に、第3表に示された開始剤フィード混合物の全量の22重量%を、前記フラスコに75分間にわたって添加した。ついで、開始剤フィード混合物の全量の30重量%を、前記フラスコに60分間にわたって添加した。その後、反応温度を105℃に低下させた。ついで、残りの開始剤フィード混合物を、前記フラスコに53分間にわたって添加した。前記温度を105℃で30分間維持した後に、第3表に示された希釈油を前記フラスコに添加した。105℃で30分間維持した後に、最終的にコポリマー比較P7が得られた。
【0165】
前記コポリマーのモノマー組成:
第4表および第5表は、前記コポリマーP1~P13および比較P1~比較P7をそれぞれ製造するのに使用された反応混合物のモノマー組成を示す。これらの成分の量は、重量%で示され、それぞれ合計が100%になる。
【表4】
【表5】
【0166】
硫黄フリーCTAの合成:
第4表に硫黄フリー連鎖移動剤として示されたLMAオリゴマーを、以下のとおり合成した。
【0167】
LMAオリゴマー(Co:750ppm)の合成
開始剤混合物6gを、V601(0.3g)およびLMA(5.7g)から製造した。
凝縮器、撹拌機および熱電対を備えた4つ口ガラス製丸底フラスコに、LMA(94.3g)およびコバルト(II)テトラフェニルポルフィリン(0.075g)を装入した。窒素下で30分間95℃に加熱した後に、上記の開始剤混合物の33.3重量%を、前記フラスコに60分間にわたって添加した。ついで、前記開始剤混合物全体の33.3重量%を、前記フラスコに60分間にわたって添加した。その後、残りの開始剤フィード混合物を、前記フラスコに60分間にわたって添加した。前記フィードの終了60分後に、LMAオリゴマー(Co:750ppm)が得られた。
【0168】
LMAオリゴマー(Co:100ppm)の合成
開始剤混合物6gを、V69(0.15g)およびLMA(0.6g)から製造した。
コンデンサー、撹拌機および熱電対を備えた4つ口ガラス製丸底フラスコに、LMA(99.2g)およびコバルト(II)テトラフェニルポルフィリン(0.01g)を装入する。窒素下で30分間105℃に加熱した後に、上記の開始剤混合物の33.3重量%を、前記フラスコに60分間にわたって添加した。ついで、前記開始剤混合物全体の33.3重量%を、前記フラスコに60分間にわたって添加した。その後、残りの開始剤フィード混合物を、前記フラスコに60分間にわたって添加した。前記フィードの終了60分後に、LMAオリゴマー(Co:100ppm)が得られる。
【0169】
前記コポリマー合成に使用されるCTA、前記コポリマーの分子量(MnおよびMw)およびPDIは、以下の第6表および第7表にまとめられている。第6表および第7表中の量は重量%で示される。
【0170】
第6表:本発明のポリマーの製造に使用されるCTA、ならびにポリマー特性
【表6】
【0171】
第7表:比較ポリマーの製造に使用されるCTA、ならびにポリマー特性
【表7】
【0172】
銅板試験:ASTM D130に従う実験の詳細
本発明によるポリマーP1~P13ならびに比較P1~比較P7を基油中に溶解させて、前記銅板試験をASTM D130に従って165.5℃で24時間実施した。
【0173】
前記例において使用された基油は、JIS K 2541-6に従って測定されたそれらの硫黄含有率と共に、第8表にまとめられている:
第8表:
【表8】
【0174】
銅板試験
磨きたての銅板を、通気性の栓をしたガラスビーカー中の本発明の試料油または比較用の試料油35mL中に浸漬し、所定の温度条件下で所定の期間にわたって加熱した。加熱期間の終了時に、前記銅板を取り出し、石油エーテルで洗浄し、かつその色および変色レベルを、ASTM銅板腐食標準に対して評価した。この腐食の評価のためのASTM D130に従う分類は、第9表に定義されている。
【0175】
第9表:ASTM D130に従う銅板分類
【表9】
【0176】
前記ASTM銅板腐食標準は、前記の変色の状態に示す特徴を持つ板で作られている。
【0177】
銅溶出
銅板試験後に、流体中の銅含有率を、JPI-5S-44に従って分析した。
【0178】
前記基油のタイプおよびそれらの量、前記コポリマーのタイプおよびそれらの量、ならびに前記基油と前記コポリマーとを含む組成物の特性は、以下の第10表および第11表にまとめられている。
【0179】
【0180】
【0181】
第10表から明らかであるように、本発明の硫黄フリーのポリアルキル(メタ)アクリレートコポリマーをそれぞれ含む流体1~15は、ASTM D130、銅腐食試験に従って1aまたは1bとして分類される。そのうえ、流体1~15は、高い粘度指数および優れたせん断安定性(低い粘度損失)を示す。流体2は、銅板試験後に極めて低い銅溶出を示す。
【0182】
他方では、第11表に示され、かつ硫黄含有CTA(DDMまたはt-DDM)の存在下で合成されたポリアルキル(メタ)アクリレートコポリマー比較P1~P7をそれぞれ含む比較流体1~7は、匹敵する粘度指数を示すけれども、ASTM D130に従って2e~4aとして分類される。比較流体6は極めて高いVIを示すが、その粘度損失も極端に高く、ひいてはDL流体として使用することができない。比較流体2は、銅板試験後に高い銅溶出を示す。
【0183】
まとめると、本発明による硫黄フリーのポリアルキル(メタ)アクリレートコポリマーは、比較コポリマーと比較して生じる銅腐食がより少ない一方で、優れており、かつバランスの取れたVI向上効果およびせん断安定性改善効果が維持される。