IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マキノ インコーポレイテッドの特許一覧

特許7508677多結晶質ダイヤモンドを使用してチタン合金を機械加工する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】多結晶質ダイヤモンドを使用してチタン合金を機械加工する方法
(51)【国際特許分類】
   B23Q 15/08 20060101AFI20240624BHJP
   B23Q 15/013 20060101ALI20240624BHJP
   B23B 51/00 20060101ALI20240624BHJP
   B23B 51/06 20060101ALI20240624BHJP
   B23B 27/20 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
B23Q15/08
B23Q15/013
B23B51/00 M
B23B51/00 T
B23B51/06 Z
B23B27/20
【請求項の数】 8
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023155683
(22)【出願日】2023-09-21
(62)【分割の表示】P 2021561707の分割
【原出願日】2020-04-20
(65)【公開番号】P2023178291
(43)【公開日】2023-12-14
【審査請求日】2023-10-20
(31)【優先権主張番号】62/835,862
(32)【優先日】2019-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/850,482
(32)【優先日】2020-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507241735
【氏名又は名称】マキノ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】オルヴェラ,デヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ラーソン,マーク,ダブリュ
(72)【発明者】
【氏名】リスト,ブライアン,ティ
(72)【発明者】
【氏名】メレディス,ポール,エル
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-064840(JP,A)
【文献】特開2005-262389(JP,A)
【文献】国際公開第2013/065201(WO,A1)
【文献】特開2014-083646(JP,A)
【文献】特開平04-217414(JP,A)
【文献】特開2010-179379(JP,A)
【文献】特開2011-219360(JP,A)
【文献】特表2012-525987(JP,A)
【文献】特開2015-193073(JP,A)
【文献】沖田淳也, 外 4名,切削環境評価技術とその応用,住友電工テクニカルレビュー,第173号,日本,2008年07月,P.48-52
【文献】Kamaruddin KAMDANI, 外 2名,High Speed Drilling Ti6Al4V,Proceeding of International Conference on Leading Edge Manufacturing in 21 st century:LEM21,セッションID 7A110,2007年11月,p.7A110-,ISSN 2424-3086,https://doi.org/10.1229/jsmelem.2007.4.7A110
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 15/08、013
B23B 51/00、06
B23B 27/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドリルに取り付けられた、基材頂面の1/3以上にわたるPCD材料からなる上層が上に固定される基材を有する少なくとも一つの切削インサートを使用して、耐熱超合金(HRSA)である工作物穴あけ作業する方法において、
a)インサート面速度が50メートル/分を超えるように前記ドリルを回転させる工程と、
b)前記穴あけ作業が0.050ミリメートル~0.200ミリメートルの厚さを有するチップを生成するように、前記ドリルの送り量を調整する工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記耐熱超合金は、チタン合金である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記耐熱超合金は、Ti-6AL4Vである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記PCD材料は、前記基材の頂面全体に延びる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記PCD材料は、前記少なくとも一つの切削インサートの刃先が前記工作物と係合する接触領域において、前記切削インサートの前記接触領域内で前記刃先から1ミリメートルを越えて内側に延びる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
冷却剤の流れを主として前記PCD材料の頂面に導く工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ドリルの回転中における切削インサートの縁部の振れの大きさは、0.030ミリメートル以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ドリルの送り量は、0.050~0.200ミリメートル/回転である、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年4月18日出願の米国特許仮出願第62/835,862号及び2020年4月16日出願の米国特許正規出願第16/850,482号の利益を主張するものであり、これらは、引用により全体が本明細書に組み込まれる。本出願では、米国特許出願公開第2020/0001374号の内容は、全体が引用によって組み込まれる。
【0002】
本発明は、金属加工作業に関し、より詳しくは、多結晶質ダイヤモンド(PCD)の厚さが1ミリメートルよりも大きい、カーバイド基材上に焼結された多結晶質ダイヤモンド切削インサートでチタン合金などの耐熱超合金(HRSA)を機械加工することに関する。
【背景技術】
【0003】
PCDは、金属加工作業において、特に、アルミニウム部品を機械加工する際に長年使用されてきた。しかしながら、PCD材料は、非常に高価であり、そして、鉄鋼材料またはチタン合金を切削したときには長持ちしない。PCD先端は、従来、カーバイド基材上へ「ろう付け(braze)」され、PCD材料の原価高のため、インサートは、非常に少量のPCD(例えば、一つの隅部上に小さい三角形)を使用する。これらのろう付けされた先端は、特定の金属加工作業で非常に有効であるが、チタン合金の機械加工など、特定の他の状態下では、PCDインサートとカーバイド基材とのろう付けは、高温により弱くなり、不良が発生しやすい。
【0004】
全体として、金属を切削することにより熱が生成され、全ての材料は、異なる速度で熱を伝達する。この速度の測定値は、熱伝導率と呼ばれている。PCDは、おおよそ800W/m-Kの速度で熱を伝達するが、一方、タングステンカーバイドは、28W/m-Kで熱を伝達する。カーバイドのこの低い伝達速度は、大抵の場合、熱に抗するので効果的である。工作物、または、さらに工作物から除去された切削チップは、工作物の熱伝達速度の方が高い場合には熱を吸収する。耐熱超合金で作製された工作物を機械加工するとき、切削作業は、熱を、PCD先端を介して先端を支持する基板に素早く伝達する。PCD先端が基材内にろう付けされた以前のデザインにおいて、切削工具(cutting tool)によって吸収された熱が、ろう付けを軟化して弱体化して、工具(tool)は、不良となる。さらに、カーバイド切削インサートを使用する速度が高いほど多くの摩擦熱が生成され、温度が上昇してカーバイド工具(carbide tool)は、軟化して早期故障に至る。
【0005】
現在、機械加工チタン合金の機能が達成されるのは、高速鋼カッターまたはカーバイドカッター(中実または挿入型)によってであるが、論じたばかりの理由から、さらに、PCD材料の脆弱性及びコストのために、PCDベースの工具材料によってではない。
【0006】
PCDインサートでのチタンなどの耐熱超合金の機械加工の必要性が存在する。また、PCDインサートでチタン合金を機械加工するだけでなく、50メートル/分を超えることができる表面速度を有する高速用途でチタン合金または他のHRSA材料を機械加工する構成及び方法が必要とされかつ適応される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
回転工具保持具(rotary tool holder)上に取り付けられた少なくとも一つの切削インサート(cutting insert)を使用することであって、少なくとも一つの切削インサートは、基材頂面に固定されたかまたは該基材頂面と一体の、少なくとも1ミリメートル厚さのPCD上層(a top layer of PCD)を有する基材で構成され、インサート面速度率が50メートル/分を超えるように回転工具保持具を回転させる工程と、機械加工作業がほぼ0.050ミリメートル~0.200ミリメートルの厚さを有するチップを生成するように工具保持具(tool holder)の工具送り量(回転当たりの歯当たりの前進)(tool feed rate (advance per tooth per revolution))及び/又は半径方向の係合を調整する工程とを含むHRSAを機械加工する方法。
一態様として、前記回転工具保持具の回転中における切削インサートの縁部の振れの大きさは、0.030ミリメートル以下である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】PCD層が基材の上にある切削インサートの等角図を例示する。
図1B】PCD層が基材の上にある図1Aの切削インサートの上面図を例示する。
図1C】PCD層が基材の上にある切削インサートの別の実施形態の側面斜視図を例示する。
図1D】PCD層が基材の上にある切削インサートの別の実施形態の上面図を例示する。
図1E】PCD層が基材の上にある切削インサートの別の実施形態の正面斜視図を例示する。
図2A】PCDインサートを使用する機械加工に利用することができる典型的な工具保持具を例示する。
図2B】PCDインサートを使用する機械加工に利用することができる典型的な工具保持具を例示する。
図2C】PCDインサートを使用する機械加工に利用することができる典型的な工具保持具を例示する。
図3】異なる切削インサート材料の切削速度及び寿命を例示するチャートである。
図4A】工具がポケット加工(pocketing)作業中に従うことができる潜在的な工具経路を例示する。
図4B】工具がポケット加工作業中に従うことができる潜在的な工具経路を例示する。
図5A】工具が倣い削り(profiling)作業中に従うことができる一つの経路を例示する。
図5B】工具が倣い削り作業中に従うことができる一つの経路を例示する。
図6A】工具が倣い削り作業中に従うことができる第二の経路を例示する。
図6B】工具が倣い削り作業中に従うことができる第二の経路を例示する。
図7】工具が倣い削り作業中に従うことができる第三の経路を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
全体として、本発明による方法は、回転当たりの歯当たりの前進、フライス加工(milling)工具の半径方向の係合、または、これらの状態の組み合わせによって決まる最大切削チップ厚さが結果となる、複数の刃先(cutting edge)の制御した係合に関する。加えて、この方法は、現行技術を用いて利用可能な速くなった表面速度で工作物を機械加工中に刃先に対する係合及び離脱ショック(engagement and disengagement shock)を制限するように工作物に対して工具の経路を制御することに関する。
【0010】
図1A図1Bは、基材20と一体の材料15のPCD層を有する切削インサート10を例示する。例示するように、PCD材料15は、基材20の頂面全体の上方に延びる。
中心孔25は、切削インサート10を工具保持具に固定する取り付けねじを受け入れるためにインサート10を貫通して延びる。図1A図1Bに例示する切削インサート10は、取り付けねじを受け入れる孔を有するが、本明細書で開示する本発明は、クランプを使用して固定することができる完全に中実の切削インサート(貫通孔なし)、または、別の方法で固定することができる任意の他の切削工具を含むがこれらに限定されない、チタンを機械加工するために使用することができる任意の切削工具に適用可能であることを認識するべきである。
【0011】
図1A図1Bに例示する切削インサート10は、上から見たときに正方形形状を有するが、本明細書で論じるような基材へのPCD層の適用は、正方形のインサートに限定されず、本質的に任意の形状のインサートに適用可能であり得る。さらに、図1A図1Bに例示されるのは、基材20の頂面全体の上方に延びるPCD材料15を有する切削インサート10であるが、工作物に係合することになる刃先に隣接するインサート上の基材20の部分にPCD層を選択的に適用することは全く可能である。これらの状況下では、PCD材料15は、工作物に係合することになるインサート10の領域内において、全ての基本的な方向(all cardinal directions)に1ミリメートルを越えて延びることが好ましい。PCD材料15は、基材20の全体の表面の上に延びなくてもよいが、基材20の頂面の1/3以上の上に延びることが好ましい。
【0012】
図1C図1Eは、PCD層が中心から全体的に半径方向に凹設部分内で延びるリブを含む別の実施形態を例示する。これらのリブは、PCD層内で構造的な支持をもたらし、また、チップ割れの強化をもたらす領域をもたらすこともできる。
【0013】
図2A図2Cは、機械加工作業に従事するために切削インサート10のうちの一つ以上を固定するために利用することができる典型的な工具保持具及び、特に典型的な回転工具保持具を示す。特に、図2Aは、フライスカッターを例示し、図2Bは、ドリルを例示し、図2Cは、エンドミルを例示する。これらの工具保持具の各々は、所与の機械作業のために多軸CNC機内に固定することができる。
【0014】
図3の表に注意を向けると、出願人は、本発明によるPCDインサート及び機械加工法を利用することによって、例えば、Ti-6AL4Vに限定されず、Ti-6AL4Vなどのチタン合金で作製された工作物に適用したときに、金属加工作業中に切削速度をカーバイド工具の従来の速度の最大5倍まで増大させることが可能であると判断した。特に、図3を参照すると、カーバイドインサートを使用する従来の切削作業では、60~90分の工具寿命で50~70メートル/分の切削速度を利用することができる。他方、本発明によるPCDインサートを利用して、切削速度を50メートル/分の同じ速度に維持することは可能であり、工具寿命は、720分以上に増大することになる。本発明を最良に利用するためには、出願人は、PCDインサートの高速用途が最適であると考えている。特に、適切な状態下では、好適な実施形態において、PCD切削インサートの切削速度は、150~200メートル/分とすることができ、工具寿命は、90~120分とすることができる。その結果として、本発明によるPCDインサートは、高速機械加工を可能にするだけではなく、適切に使用されたとき、この工具寿命は、カーバイド切削インサート競合品の工具寿命を超える。
【0015】
一般的な機械加工作業で重視するのは、工作物を機械加工するときの歯当たりの送り量(feed per tooth)(チップロード(chip load)ともいう)であり、切削チップの最大厚さではない。出願人は、切削チップ(cut chip)の最大厚さを重視することによって、チタンなどの耐熱超合金の機械加工作業を最適化することが可能であるとわかった。
【0016】
本明細書で説明するPCDインサートは、PCD層の相対的に大きな容積が熱を吸収して伝達することができるので魅力的である。PCD層からの熱伝達は、PCD層に対する冷却剤で支援することができる。加えて、PCDは、より硬質である傾向があり、従って、カーバイドよりも長く摩耗に抗することができるので、同じ硬度ではないカーバイドほどは物理的に磨耗しない。最後に、PCDの方が、高い係数を有する被覆の有無を問わず超硬合金と比較すると、摩擦係数が低い。このより低い摩擦係数は、2つの理由から有意である。この低い摩擦係数によって、切削摩擦及び結果として生じる発熱が低減され、また、切削インサートが工作物面を介してまたはそれに沿って移動するのに必要とされる力の量が低減される。
【0017】
切削チップの厚さは、重要である。切削チップ厚さの判定は、工具直径と半径方向の係合量及び回転当たりの歯当たりの送り量との関係の関数である。工具保持具の直径が与えられると、半径方向の係合及び送り量が、工具経路の機械工具のプログラミングに指定される。先述したように、以前の機械加工プロセスとは異なり、本発明では、所望のチップ厚さを限界値として指定して、適切なチップ厚さを確保するために所与の半径方向の係合に使用する所与の送り量を見つける。従来の実施方法は、半径方向の係合及び送り量を指定することであり、結果は、チップ厚さが結果として生じる。
【0018】
ここまで論じてきたことは、PCDを使用する耐熱超合金の機械加工の一般的な適用である。このプロセスが特に有益である特定の適用がある。
【0019】
ポケットフライス加工(pocket milling)は、工作物の表面上の閉鎖された境界内の材料を特定の奥行きに除去する機械加工技術である。フライスカッター直径の115%以上である作製された初孔を生成する必要がある。過去においてであれば、図4Aに例示するように、切削工具は隅部を機械加工する隅部領域に達するまで、工具経路は、ポケット外形形状の複数の縮小バージョンとなる。
【0020】
しかしながら、図4Bに注意を向けると、フライスカッターの、孔の側壁への進入は、工具とポケット壁部との接触に達するまで、つる巻状(helical)または少なくとも螺旋状(spiral)の進入経路を利用することができ、その後、隅部は、一定の半径方向の係合アプローチに従って機械加工される。この螺旋状の切削を達成するために切削工具が進む距離がより大きくなり得るが、PCD器具を使用して可能になる切削速度が有意に増大して、加工時間全体は、有意に低減される。その後、材料のかなりの部分が除去されると、材料のその後の帯は、カッター直径の百分率としての量で、所与のステップでMastercam(登録商標)動的フライス加工経路でなど、材料に入る半径方向の経路進入によって除去することができる。このようにして、PCDインサートを利用するフライスカッターを使用して、フライス加工時間を有意に短縮することができる。先に論じた回転当たりの歯当たりの送り量が同様にこの作業に適用可能であることを認識するべきである。
【0021】
倣いフライス削りは、垂直の、傾斜した、または5軸線織面(5-axis ruled surfaces)を荒または仕上げフライス削りするのに使用される。選択された表面は、連続的な工具経路を可能にする必要がある。図5Aに例示するように、従来の工具類を使用すると、切削寸法は、かなり高目である。先述したように、カーバイド切削インサートを表面切削速度で利用すると、50~70メートル/分であり得、工具寿命は、60~90分であり得る。しかしながら、カーバイドインサートは、PCDよりも有意に大きい靭性を有し、その結果として、刃先が倣い削りするべき材料の肩部に遭遇したときに切削インサートに対する初期衝撃に耐えることができる。
【0022】
発明者は、切削速度が現在最大200メートル/分までであり得ることから、PCDインサートを使用して倣い削り作業をより少ない時間で達成することができることを発見した。しかしながら、PCDインサートが衝撃に対して強くないことから、倣い削り作業の工具経路は異なる。少なくとも3つのオプション、即ち、工具によるまっすぐなアプローチのための傾斜面、「斜路」が準備された部品材料、又は、一定の半径方向の係合及び跨ぎ量のための斜路形状のカッター経路が、倣い削りについてあり得る。
【0023】
第一の実施例として、図5Bに例示するように、PCDインサートを使用する倣い削り作業については、切削インサートは、異形カット(profile cut)のまっすぐな部分にカッター直径の60%の半径で3.4~6.8度で傾斜される。その後、カッターは、傾斜した部分に戻って機械加工作業を完了することができる。斜路の長さは、直径の2倍~直径の10倍とすることができる。一例として、これは、80ミリメートル直径の工具について160ミリメートル~800ミリメートルランプの斜路を示唆することになる。
【0024】
第二の実施例として、部品材料は、斜路が作成される。図5Bに例示するランプは、図6Aに示すような方法で衝撃により強い工具で従来の技術を使用して生成することができる。その後、PCDインサートは、図6Bに例示するように、倣い削り作業を完了するために利用することができる。
【0025】
倣い削りのさらに別の実施例において、図7は、一定の半径方向の係合及び跨ぎ量を使用して、円など、曲線状の勾配に機械加工される工作物での構成を例示する。工具経路は、工作物の周りの線で示されている。一定の半径方向の係合をもたらすために、工具経路は、インサートに掛かる衝撃を最小限に抑えるために隅部の小さい部分に係合し、その後、工具は、曲線状の経路を始める。複数の相互作用を介して、湾曲した形状は、一定の半径方向の係合で工作物全体に与えられる。
【0026】
重要なことは、これらの工具経路は、工具に掛かる負荷の増加が非常に滑らかであり、漸進的なように半径方向の係合の変化を制御することである。最も重要なのは、工具の方向の急な変化がない。そうすることによって、PCDインサートを利用する倣い削り作業は、掛かる時間が少なくて済み、工具寿命が延び、従来のカーバイド工具類を使用して達成されなかった効率が得られるようになる。
【0027】
フライス加工を除いて、発明者らは、また、PCDインサートは、例えば、図2Bに例示するドリルである工具保持具を使用する穴明け作業中に耐熱超合金を機械加工する間に有用であり得ることを発見した。まさに前と同様に、50~200メートル/分の表面速度を利用して、0.050~0.200ミリメートル/回転の送り量を実行することができる。もう一度、送り量の増大を所与の進入距離にわたって制御することが必要であり、かつ、このような目標を達成するために、例えば、G93.2ファナック速度送りオプション(G93.2 Fanuc rate feed option)(A02B-0326-R635)を利用することができる。しかしながら、このタスクを達成するために新しい機械アルゴリズムを生成するか、または、既存の機械アルゴリズムを使用することが可能である。このような技術は、当業者に知られている。
【0028】
ここまで説明してきたことは、フライス加工及び穴明けに関する金属加工作業である。
しかしながら、本明細書で適用される概念は、同様の利点で、中ぐりなど、他の機械加工作業に等しく適用することができることを認識するべきである。
【0029】
説明の目的上、これ以降、用語「端部」、「上部」、「下部」、「右」、「左」、「垂直」、「水平」、「頂部」、「底部」、「横方向」、「長手方向」及びそれの派生語は、図面中に配向されたような実施例に関するものとする。しかしながら、実施例は、それとは反対であると明示的に明記される場合を除き、様々な代替変形例及びステップシーケンスを想定することができることを理解するべきである。また、添付図面に例示して以下の明細書で説明する特定の実施例は、本発明の単に例示の実施例または態様であると理解するべきである。従って、本明細書で開示する特定の実施例または態様は、制限的なものと解釈されないものとする。
【0030】
本発明を、現在最も実際的な好適であり非限定的な実施形態、実施例または態様であると考えることに基づいてある程度詳細に説明してきたが、このような詳細は、単にその目的のためのものであり、本発明は、開示した好適であり非限定的な実施形態、実施例または態様に限定されず、それに対して、特許請求の範囲の精神及び範囲内のある変更例及び同等の構成を包含することが意図されていることを理解すべきである。例えば、本発明は、可能な限り、いかなる好適であり非限定的な実施形態、実施例または態様の一つ以上の特徴も、他のいかなる好適であり非限定的な実施形態、実施例または態様の一つ以上の特徴とも組み合わせることができることを企図することを理解すべきである。
【0031】
〔その他の実施形態〕
(A1)
本発明の他の実施形態は、
回転工具保持具に取り付けられた、基材頂面の1/3以上にわたるPCD材料からなる上層が上に固定される基材を有する少なくとも一つの切削インサートを使用して、耐熱超合金(HRSA)である工作物をフライス加工する方法において、
a)インサート面速度が50メートル/分を超えるように前記回転工具保持具を回転させる工程と、
b)前記フライス加工が0.050ミリメートル~0.200ミリメートルの厚さを有するチップを生成するように、前記回転工具保持具の送り量及び/又は径方向切込み量を調整する工程と、
を含む、方法でありうる。
【0032】
(A2)
(A1)に記載の本発明の実施形態において、前記耐熱超合金材料は、チタン合金でありうる。
【0033】
(A3)
(A1)に記載の本発明の実施形態において、前記耐熱超合金材料は、Ti-6AL4Vでありうる。
【0034】
(A4)
(A1)に記載の本発明の実施形態において、前記PCD材料は、前記基材の頂面全体に延びうる。
【0035】
(A5)
(A1)に記載の本発明の実施形態において、前記PCD材料は、前記少なくとも一つの切削インサートの刃先が前記工作物と係合する接触領域において、前記切削インサートの前記接触領域内で前記刃先から1ミリメートルを越えて内側に延びうる。
【0036】
(A6)
(A1)に記載の本発明の実施形態において、当該方法は冷却剤の流れを主として前記PCD材料の頂面に導く工程をさらに含みうる。
【0037】
(A7)
(A1)に記載の本発明の実施形態において、前記回転工具保持具の回転中における切削インサートの縁部の振れの大きさは、0.030ミリメートル以下でありうる。
【0038】
(A8)
(A1)に記載の本発明の実施形態において、前記フライス加工は、ポケット加工でありうる。
【0039】
(A9)
(A8)に記載の本発明の実施形態において、前記ポケット加工は、高速機械加工によってされうる。
【0040】
(A10)
(A9)に記載の本発明の実施形態において、
前記ポケット加工は、
a)工作物に、前記回転工具保持具の直径よりも大きい孔を生成する工程と、
b)工程a)の後に、前記孔の中心から螺旋状の進入経路が延びているような運転を実行する工程と、
c)工程b)の後に、隅部を仕上げるために半径方向の経路を利用して材料に進入し、加工の残りを実行する工程と、
を含む、方法でありうる。
【0041】
(A11)
(A1)に記載の本発明の実施形態において、前記フライス加工は、倣い削りでありうる。
【0042】
(A12)
(A11)に記載の本発明の実施形態において、前記少なくとも一つの切削インサートは、前記少なくとも一つの切削インサートの最大表面速度及び最大工具寿命を可能にするために斜路に沿って前記工作物に導入されうる。
【0043】
(A13)
(A11)に記載の本発明の実施形態において、前記少なくとも一つの切削インサートは、PCD材料を含まない工具を使用して生成された斜路に沿って導入されうる。
【0044】
(A14)
(A11)に記載の本発明の実施形態において、前記少なくとも一つの切削インサートの径方向切込み量が一定でありえ、かつ、前記少なくとも一つの切削インサートを移動する制御装置が一定のステップオーバー量を利用しうる。
【0045】
(B1)
本発明の他の実施形態は、
回転工具保持具に取り付けられた、基材頂面の1/3以上にわたるPCD上層が上に固定される基材を有する少なくとも一つの切削インサートを使用して、耐熱超合金(HRSA)を機械加工する方法において、
a)インサート面速度率が50メートル/分を超えるように前記回転工具保持具を回転させる工程と、
b)前記機械加工作業がほぼ0.050ミリメートル~0.200ミリメートルの厚さを有するチップを生成するように、前記工具保持具の工具送り量(回転当たりの歯当たりの前進)及び/又は半径方向の係合を調整する工程と、
を含む、方法でありうる。
【0046】
(B2)
(B1)に記載の本発明の実施形態において、前記HRSA材料は、チタン合金でありうる。
【0047】
(B3)
(B1)に記載の本発明の実施形態において、前記HRSA材料は、Ti-6AL4Vでありうる。
【0048】
(B4)
(B1)に記載の本発明の実施形態において、前記PCD材料は、前記基材の頂面全体の上方に延びうる。
【0049】
(B5)
(B1)に記載の本発明の実施形態において、前記PCD材料は、接触領域において前記基材の頂面の上で、1/3以上に延び、前記PCDは、各基本方位に1ミリメートル以上延びうる。
【0050】
(B6)
(B1)に記載の本発明の実施形態において、冷却剤の流れを前記PCDの主として頂面の上方に導く工程をさらに含みうる。
【0051】
(B7)
(B1)に記載の本発明の実施形態において、前記工具保持具の中心線及び前記少なくとも一つの切削インサートの各々の縁部からの外周の振れは、0.030ミリメートル以下でありうる。
【0052】
(B8)
(B1)に記載の本発明の実施形態において、機械加工の前記方法は、フライス加工作業に適用されうる。
【0053】
(B9)
(B8)に記載の本発明の実施形態において、前記フライス加工作業は、ポケット加工でありうる。
【0054】
(B10)
(B9)に記載の本発明の実施形態において、前記ポケット加工作業の工具経路は、高速機械加工の機会を最大化するように選択されうる。
【0055】
(B11)
(B10)に記載の本発明の実施形態において、
前記ポケット加工作業は、
a)工作物に、前記フライス加工工具直径よりも大きい孔を生成する工程と、
b)前記機械加工の大部分について螺旋状に進むことなど、最小送り量変動を必要とする連続運転を実行する工程と、
c)予め定義された標準的な工具経路に基づいて従来の技術を利用して前記機械加工の残りを実行する工程と、
を含みうる。
【0056】
(B12)
(B8)に記載の本発明の実施形態において、フライス加工作業は、倣い削りでありうる。
【0057】
(B13)
(B12)に記載の本発明の実施形態において、前記少なくとも一つの切削インサートは、前記少なくとも一つの切削インサートの最大表面速度及び最大工具寿命を可能にするために浅い斜路に沿って前記工作物に導入されうる。
【0058】
(B14)
(B12)に記載の本発明の実施形態において、前記少なくとも一つの切削インサートは、従来の工具を使用して生成された浅い斜路に沿って導入されうる。
【0059】
(B15)
(B12)に記載の本発明の実施形態において、前記少なくとも一つの切削インサートは、一定の半径方向の係合及び跨ぎ量を利用しうる。
【0060】
(B16)
(B1)に記載の本発明の実施形態において、機械加工の前記方法は、穴明け作業に適用されうる。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2A
図2B
図2C
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7