(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】シミュレーション装置、シミュレーション方法及びシミュレーションプログラム
(51)【国際特許分類】
G06T 19/00 20110101AFI20240624BHJP
【FI】
G06T19/00 A
(21)【出願番号】P 2023173642
(22)【出願日】2023-10-05
【審査請求日】2023-10-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505082110
【氏名又は名称】株式会社JR東日本情報システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】弁理士法人きさらぎ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】馬場 庸平
【審査官】橘 高志
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-080205(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シミュレーション用3D空間モデルを取得するシミュレーション用3D空間モデル取得処理と、
前記シミュレーション用3D空間モデル内の複数箇所を疑似的に撮影する疑似撮影処理と、
前記疑似撮影処理で撮影された複数の画像データ
を用いて、前記シミュレーション用3D空間モデルを再現した疑似3D空間モデルを生成する疑似3D空間モデル生成処理と
を実行可能に構成されている制御部を備える
ことを特徴とするシミュレーション装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記シミュレーション用3D空間モデルと前記疑似3D空間モデルとを比較し、誤差を算出するモデル比較処理を実行可能に構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のシミュレーション装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記シミュレーション用3D空間モデルを撮影した際の設定をアウトプット可能に構成されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のシミュレーション装置。
【請求項4】
前記制御部は、撮影環境情報を設定する撮影環境情報設定処理を実行可能に構成されており、
前記撮影環境情報は、自然光の情報を含み、
前記疑似撮影処理は、前記シミュレーション用3D空間モデル内に前記撮影環境情報を反映させた状態で実行される
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のシミュレーション装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記シミュレーション用3D空間モデルを生成するための画像データの撮影に使用するカメラを再現した仮想カメラのデータを取得する仮想カメラ取得処理を実行可能に構成されると共に、
前記疑似撮影処理の撮影は、前記仮想カメラで実行され、該仮想カメラを複数台配置可能である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のシミュレーション装置。
【請求項6】
ユーザが撮影条件を入力可能な入力部を備え、
前記撮影条件は、前記仮想カメラの撮影経路及び撮影間隔を含み、
前記制御部は、前記撮影条件の入力を受け付ける条件受付処理を実行可能に構成されると共に、受け付けた前記撮影条件で自動的に前記疑似撮影処理及び前記疑似3D空間モデル生成処理を実行するように構成されている
ことを特徴とする請求項5に記載のシミュレーション装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記疑似3D空間モデル内の任意の測定対象の指定を受け付ける指定受付処理と、
指定された前記測定対象の設計寸法を取得する設計寸法取得処理と、
前記測定対象の寸法と、該測定対象の取得した前記設計寸法とを比較し、誤差を算出する寸法比較処理と
を実行可能に構成されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のシミュレーション装置。
【請求項8】
前記シミュレーション用3D空間モデルは、台車とカメラを備える可動式撮影装置により、現実空間を撮影した画像データから生成される
ことを特徴とする請求項7に記載のシミュレーション装置。
【請求項9】
前記可動式撮影装置は、遠景撮影用のカメラと、近景撮影用のカメラとを備える
ことを特徴とする請求項8に記載のシミュレーション装置。
【請求項10】
シミュレーション用3D空間モデルを取得するシミュレーション用3D空間モデル取得工程と、
前記シミュレーション用3D空間モデル内の複数箇所を疑似的に撮影する疑似撮影工程と、
前記疑似撮影工程で撮影された複数の画像データ
を用いて、前記シミュレーション用3D空間モデルを再現した疑似3D空間モデルを生成する疑似3D空間モデル生成工程と
を備える
ことを特徴とするシミュレーション方法。
【請求項11】
シミュレーション用3D空間モデルを取得するシミュレーション用3D空間モデル取得処理と、
前記シミュレーション用3D空間モデル内の複数箇所を疑似的に撮影する疑似撮影処理と、
前記疑似撮影処理で撮影された複数の画像データ
を用いて、前記シミュレーション用3D空間モデルを再現した疑似3D空間モデルを生成する疑似3D空間モデル生成処理と
をシミュレーション装置に実行させる
ことを特徴とするシミュレーションプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シミュレーション装置、シミュレーション方法及びシミュレーションプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走行体に複数の照明手段及び複数の画像取得手段を設置した走行型トンネル覆工撮影装置が知られている(特許文献1)。特許文献1の走行型トンネル覆工撮影装置は、複数の画像取得手段が互いに異なる方向を向くよう設置されており、これら複数の画像取得手段で撮影された画像を合成することでトンネル覆工面全体の3次元モデルを作成し、この3次元モデルをもとに画像展開図を作成可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、高精度の3次元モデルを生成するためには、基礎となる画像の撮影精度が重要となる。このため、撮影精度の高い画像を撮影するためには、例えば、画像取得手段(カメラ)の位置や角度等の最適な撮影設定を特定することが必要である。しかしながら、以下のとおり、位置・角度の検証を撮影場所で実施することは効率が悪い。
【0005】
まず、画像の撮影場所への移動や撮影作業には長時間を要するため、撮影場所で最適な撮影設定を特定するために繰り返し撮影を行うことは、効率が悪い上に、時間の制約から何度も撮影を実施することができないという問題がある。また、3次元モデルの生成処理にも長時間を要するため、撮影場所で画像の撮影後に直ちに結果を確認することができないという問題がある。さらに、屋外撮影のため、時間の経過や季節、天候により、同じ撮影場所であっても撮影環境が毎回異なり、撮影設定同士の純粋な比較ができないという問題がある。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みなされたものであり、最適な撮影設定を特定する効率を高めることが可能なシミュレーション装置、シミュレーション方法及びシミュレーションプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るシミュレーション装置は、シミュレーション用3D空間モデルを取得するシミュレーション用3D空間モデル取得処理と、前記シミュレーション用3D空間モデル内の複数箇所を疑似的に撮影する疑似撮影処理と、前記疑似撮影処理で撮影された複数の画像データから疑似3D空間モデルを生成する疑似3D空間モデル生成処理とを実行可能に構成されている制御部を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係るシミュレーション装置において、前記制御部は、前記シミュレーション用3D空間モデルと前記疑似3D空間モデルとを比較し、誤差を算出するモデル比較処理を実行可能に構成されてもよい。
【0009】
本発明に係るシミュレーション装置において、前記制御部は、前記シミュレーション用3D空間モデルを撮影した際の設定をアウトプット可能に構成されてもよい。
【0010】
本発明に係るシミュレーション装置において、前記制御部は、撮影環境情報を設定する撮影環境情報設定処理を実行可能に構成されており、前記撮影環境情報は、自然光の情報を含み、前記疑似撮影処理は、前記シミュレーション用3D空間モデル内に前記撮影環境情報を反映させた状態で実行されてもよい。
【0011】
本発明に係るシミュレーション装置において、前記制御部は、前記シミュレーション用3D空間モデルを生成するための画像データの撮影に使用するカメラを再現した仮想カメラのデータを取得する仮想カメラ取得処理を実行可能に構成されると共に、前記疑似撮影処理の撮影は、前記仮想カメラで実行され、該仮想カメラを複数台配置可能であってもよい。
【0012】
本発明に係るシミュレーション装置は、ユーザが撮影条件を入力可能な入力部を備え、前記撮影条件は、前記仮想カメラの撮影経路及び撮影間隔を含み、前記制御部は、前記撮影条件の入力を受け付ける条件受付処理を実行可能に構成されると共に、受け付けた前記撮影条件で自動的に前記疑似撮影処理及び前記疑似3D空間モデル生成処理を実行するように構成されてもよい。
【0013】
本発明に係るシミュレーション装置において、前記制御部は、前記疑似3D空間モデル内の任意の測定対象の指定を受け付ける指定受付処理と、指定された前記測定対象の設計寸法を取得する設計寸法取得処理と、前記測定対象の寸法と、該測定対象の取得した前記設計寸法とを比較し、誤差を算出する寸法比較処理とを実行可能に構成されてもよい。
【0014】
本発明に係るシミュレーション装置において、前記シミュレーション用3D空間モデルは、台車とカメラを備える可動式撮影装置により、現実空間を撮影した画像データから生成されてもよい。
【0015】
本発明に係るシミュレーション装置において、前記可動式撮影装置は、遠景撮影用のカメラと、近景撮影用のカメラとを備えてもよい。
【0016】
本発明に係るシミュレーション方法は、シミュレーション用3D空間モデルを取得するシミュレーション用3D空間モデル取得工程と、前記シミュレーション用3D空間モデル内の複数箇所を疑似的に撮影する疑似撮影工程と、前記疑似撮影工程で撮影された複数の画像データから疑似3D空間モデルを生成する疑似3D空間モデル生成工程とを備えることを特徴とする。
【0017】
本発明に係るシミュレーションプログラムは、シミュレーション用3D空間モデルを取得するシミュレーション用3D空間モデル取得処理と、前記シミュレーション用3D空間モデル内の複数箇所を疑似的に撮影する疑似撮影処理と、前記疑似撮影処理で撮影された複数の画像データから疑似3D空間モデルを生成する疑似3D空間モデル生成処理とをシミュレーション装置に実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、最適な撮影設定を特定する効率を高めることが可能なシミュレーション装置、シミュレーション方法及びシミュレーションプログラムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係るシミュレーション装置を示す機能ブロック図
【
図2】本実施形態に係る可動式撮影装置を示す概略図
【
図3】本実施形態に係る可動式撮影装置の撮影方法を示す概略図
【
図4】本実施形態に係る可動式撮影装置で撮影された撮影データの一例を示す図
【
図5】本実施形態に係る画像データの補正の一例を示す図
【
図6】本実施形態に係るシミュレーション用3D空間モデルの一例を示す図
【
図7】本実施形態に係る仮想カメラデータの一例を示す模式図
【
図8a】本実施形態に係る現実空間で撮影した画像データの一例を示す図
【
図8b】本実施形態に係るシミュレーション用3D空間モデルで撮影した画像データの一例を示す図
【
図9】本実施形態に係るシミュレーション用3D空間モデルの一部を示す図
【
図10】本実施形態に係る疑似3D空間モデルの一部を示す図
【
図11】本実施形態に係るシミュレーション用3D空間モデル内のレールの表面を示す図
【
図12】本実施形態に係る疑似3D空間モデル内のレールの表面を示す図
【
図14】本実施形態に係るシミュレーション用3D空間モデルを撮影した際の設定の出力データの一例を示す図
【
図15】本実施形態に係るシミュレーション装置の機能の一例を示す模式図
【
図16】本実施形態に係るシミュレーション装置の機能の一例を示す模式図
【
図17】本実施形態に係るシミュレーション方法の一例を示すフローチャート
【
図18】本実施形態に係る疑似3D空間モデルの評価方法の一例を示すフローチャート
【
図19】本実施形態に係る測定対象の評価方法の一例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。また、図面は、本発明を示すために適宜強調や省略、比率の調整を行った模式的な図となっており、実際の形状や位置関係、比率とは異なる場合がある。
【0021】
[本実施形態に係るシミュレーション装置の構成]
まず、
図1を参照して、本発明の実施形態に係るシミュレーション装置10を概説する。本実施形態に係るシミュレーション装置10は、概略的には、
図1に示すように、入力部20と、表示部30と、制御部40と、記憶部50とを備える。
【0022】
入力部20は、例えば、キーボードや、マウス、タッチパッド、ジョイスティック、マイク等の入力機器により構成されており、入力部20を操作することにより、シミュレーション装置10において通常必要とされる情報入力の機能に加え、例えば、後述する撮影環境情報52や、後述する仮想カメラデータ53、後述する撮影条件SC等の入力や、後述する測定対象の指定、後述する分析メニューの選択等の操作をすることができる。このような構成を備えることにより、シミュレーション装置10は、入力部20を介して撮影条件SCを入力することができる。
【0023】
表示部30は、表示装置としてのディスプレイを有しており、シミュレーション装置10において通常必要とされる画面表示の機能に加え、例えば、後述するシミュレーション用3D空間モデル51や、後述する疑似3D空間モデル55、後述する分析部48が出力した誤差、分析メニュー選択画面(図示せず)等を表示する。また、表示部30は、入力部20の機能を有するタッチパネルで構成され得る。表示部30がタッチパネルで構成された場合は、ユーザは、例えば、表示部30を操作することにより、撮影環境情報52や、仮想カメラデータ53、撮影条件SC等の各種の情報をシミュレーション装置10に対して入力可能となる。
【0024】
なお、入力部20及び表示部30の構成は、上述した構成に限定されず、これら入力部20及び表示部30に代わり、同等の機能を有する構成であれば(例えば、遠隔から利用可能な表示手段や入力手段等)、これに限定されるものではない。
【0025】
制御部40は、空間再現部42と、疑似撮影部44と、3D空間モデル生成部46と、分析部48とを含む。
【0026】
空間再現部42は、シミュレーション用3D空間モデル51を取得するシミュレーション用3D空間モデル取得処理(
図17のS1)を実行可能に構成されている。本実施形態において、空間再現部42は、記憶部50に格納されたシミュレーション用3D空間モデル51を読み出すことで、該シミュレーション用3D空間モデル51を取得するが、これに限定されない。例えば、空間再現部42は、シミュレーション用3D空間モデル51用の画像データ54からシミュレーション用3D空間モデル51を生成し、該シミュレーション用3D空間モデル51を取得してもよいし、サーバや、他の装置に格納されたシミュレーション用3D空間モデル51を取得してもよい。
【0027】
シミュレーション用3D空間モデル51は、3D空間モデルの生成に使用する画像データ54の撮影をシミュレーション可能な3D空間モデルである。シミュレーション用3D空間モデル51は、例えば、現実空間の作業現場等を撮影した画像データ54から生成された3D空間モデルである。また、シミュレーション用3D空間モデル51は、現実空間を模した3D空間モデルであれば、実在する場所を再現した3D空間モデルでなくてもよい。例えば、シミュレーション用3D空間モデル51は、建築物や資材等が任意の位置に配置されている、試験的又は理想的なシミュレーション環境を再現した架空の3D空間モデルであってもよい。
【0028】
本実施形態において、シミュレーション用3D空間モデル51は、可動式撮影装置1により、現実空間を撮影した画像データ54から生成される。可動式撮影装置1は、
図2に示すように、台車2とカメラ4を備える。
【0029】
台車2は、ユーザが押したり牽引したりするためのハンドルを有するいわゆる手押し台車であってもよいし、車輪を駆動する駆動部を含み、自動で移動するものであってもよいし、他の動力車等に押されたり牽引されたりすることで移動するものであってもよい。
【0030】
なお、可動式撮影装置1は、台車2を備えずに、カメラ4をユーザが持って撮影してもよい。また、可動式撮影装置1は、台車2の代わりにジンバル等の撮影補助機材を備えてもよい。
【0031】
本実施形態において、可動式撮影装置1は、カメラ4を複数備えており、遠景撮影用のカメラ4と、近景撮影用のカメラ4とを備える。この場合において、遠景撮影用のカメラ4は、中央に設けられた中央カメラ4aであっても良く、近景撮影用のカメラ4は、中央カメラ4aを境として概ね対称に設けられた右サイドカメラ4bと左サイドカメラ4cであってもよい。例えば、レールRが敷設された場所のシミュレーション用3D空間モデル51を作成する場合、まず、遠景撮影用の中央カメラ4aは、可動式撮影装置1の進行方向が広く写る構図で撮影するように構成されている。そして、近景撮影用の右サイドカメラ4b及び左サイドカメラ4cは、それぞれ左右のレールRの側面が大きく写る構図で撮影するように構成されている。
【0032】
なお、カメラ4の台数及び配置は、上述した構成や、
図2に示す構成に限定されず、種々の任意の台数及び配置を採用可能である。
【0033】
カメラ4は、三脚や固定治具等に取り付けられており、撮影中に動かないように台車2上に配置されている。複数のカメラ4は、パソコン等の制御装置からの通信制御より、同時にシャッターを切るように構成されている。また、複数のカメラ4により動画を撮影し、撮影した動画を構成する画像データ54からシミュレーション用3D空間モデル51を生成することも可能である。
【0034】
このような構成を備える可動式撮影装置1は、
図3に示すように、レールR上を移動しながら、遠景撮影用のカメラ4によって、線路の近くに所定の間隔で配置される寸法取得用のマーカMが写るように広範囲を所定の間隔(例えば、50~60cm)で撮影をすると共に、近景撮影用のカメラ4によって細部を撮影し、
図4に示すように、異なるアングルの複数の画像データ54を取得する。なお、マーカMは、中央カメラ4a、右サイドカメラ4b及び左サイドカメラ4cの少なくともいずれか1台が撮影した画像データ54に写っていればよい。
【0035】
その後、
図5に示すように、各画像データ54は、3D空間モデルの生成に適した状態に補正がされ、
図6に示すように、複数の画像データ54を合成することで、本実施形態に係るシミュレーション用3D空間モデル51が生成される。本実施形態に係るシミュレーション用3D空間モデル51内には、レールRを含む線路が敷設されている。
【0036】
なお、画像データ54の補正及びシミュレーション用3D空間モデル51の生成は、他の装置によって実行されてもよいし、後述する疑似3D空間モデル55と同様に、3D空間モデル生成部46によって実行されてもよい。
【0037】
また、空間再現部42は、撮影環境情報52を設定する撮影環境情報設定処理(
図17のS2)を実行可能に構成されている。具体的には、空間再現部42は、記憶部50に格納されている撮影環境情報52を読み出し、該撮影環境情報52を取得したシミュレーション用3D空間モデル51に設定する。
【0038】
なお、撮影環境情報52は、予め記憶部50に格納されていなくてもよい。すなわち、空間再現部42は、ユーザによる入力部20を介した撮影環境情報52の入力を受付可能に構成されており、入力を受け付けた撮影環境情報52をシミュレーション用3D空間モデル51に設定してもよい。また、空間再現部42は、サーバや、他の装置に格納された撮影環境情報52を取得し、該撮影環境情報52を設定してもよい。
【0039】
撮影環境情報52は、自然光の情報を含む。自然光の情報は、例えば、自然光の明るさや、該自然光の光源である太陽や月の方角、角度、色温度等である。空間再現部42は、自然光の情報に基づいて、上述した太陽の角度等だけでなく自然光による陰影の情報として、例えば、陰影の向きや、濃淡等も再現可能である。また、撮影環境情報52は、照明器具を使用した撮影をシミュレーションする場合、照明器具の情報を含んでもよい。照明器具の情報とは、例えば、照明器具の明るさ、配置、照射方向等である。さらに、撮影環境情報52は、風によるブレ等の撮影に影響を与える外乱の情報や、レールRの錆等のテクスチャの情報を含んでもよい。
【0040】
さらに、空間再現部42は、シミュレーション用3D空間モデル51を生成するための画像データ54の撮影に使用するカメラ4を再現した仮想カメラVCの仮想カメラデータ53を取得する仮想カメラ取得処理(
図17のS3)を実行可能に構成されている。本実施形態において、空間再現部42は、仮想カメラデータ53を記憶部50から読み出すことで、該仮想カメラデータ53を取得するが、これに限定されない。
【0041】
例えば、仮想カメラデータ53は、予め記憶部50に格納されていなくてもよい。すなわち、空間再現部42は、ユーザによる入力部20を介した仮想カメラデータ53の入力を受付可能に構成されており、入力を受け付けた仮想カメラデータ53を取得してもよい。また、空間再現部42は、サーバや他の装置に格納された仮想カメラデータ53を取得してもよい。
【0042】
仮想カメラデータ53は、例えば、
図7に示すように、カメラ4のイメージセンサのサイズ(イメージセンサの高さ及び幅)の情報と、カメラ4のレンズの焦点距離の情報と、カメラ4の撮影範囲の情報とを含む。
【0043】
疑似撮影部44は、シミュレーション用3D空間モデル51内の複数箇所を疑似的に撮影する疑似撮影処理(
図17のS5)を実行可能に構成されている。本実施形態において、疑似的な撮影とは、シミュレーション用3D空間モデル51内をレンダリングした静止画の画像データ54を保存することを意味する。疑似撮影処理で撮影された画像データ54は、記憶部50に格納される。
【0044】
具体的には、疑似撮影処理は、
図8bに示すように、可動式撮影装置1による撮影(
図8a参照)と同様に、シミュレーション用3D空間モデル51内のレールR上で視点を移動させながら、所定の間隔で疑似的に撮影する。また、この際に、寸法取得用のマーカMを疑似的にシミュレーション用3D空間モデル51内の線路の近くに所定の間隔で配置し、疑似撮影処理を実行してもよい。
【0045】
なお、疑似撮影処理において、視点の移動操作と撮影操作は、入力部20を介してユーザが実施するが、これに限定されず、後述するように、疑似撮影部44が自動的に実行してもよい。
【0046】
本実施形態において、疑似撮影処理は、シミュレーション用3D空間モデル51内に空間再現部42が撮影環境情報設定処理で設定した撮影環境情報52を反映させた状態で実行される。例えば、お昼時の撮影環境情報52が設定している場合、疑似撮影処理は、太陽が南側の高い位置にある状態を再現したシミュレーション用3D空間モデル51内で実行される。また、夕暮れ時の撮影環境情報52が設定されている場合、疑似撮影処理は、太陽が西側の低い位置にある状態を再現したシミュレーション用3D空間モデル51内で実行される。さらに、夜間の撮影環境情報52が設定されている場合、疑似撮影処理は、暗闇を再現したシミュレーション用3D空間モデル51内で実行される。
【0047】
また、本実施形態において、疑似撮影処理の撮影は、仮想カメラVCで実行される。すなわち、本実施形態の疑似撮影処理では、空間再現部42が取得した仮想カメラデータ53に基づいてカメラ4を再現した仮想カメラVCの視点でシミュレーション用3D空間モデル51内をレンダリングする処理がシミュレーション用3D空間モデル51内の複数箇所で実行される。
【0048】
本実施形態に係る疑似撮影処理では、仮想カメラVCを複数台配置してシミュレーション用3D空間モデル51内を疑似的に撮影可能である。例えば、可動式撮影装置1のように、現実空間で3台のカメラ4を使用して3D空間モデルの生成に使用する画像データ54の撮影を実施する場合、カメラ4を再現した仮想カメラVCをシミュレーション用3D空間モデル51内に3台配置して疑似的に撮影することができる。
【0049】
また、疑似撮影部44は、撮影条件SCの入力を受け付ける条件受付処理(
図17のS4)を実行可能に構成されると共に、受け付けた撮影条件SCで自動的に疑似撮影処理を実行するように構成されている。撮影条件SCは、仮想カメラVCの撮影経路及び撮影間隔を含む。本実施形態において、仮想カメラVCは、シミュレーション用3D空間モデル51内のレールR上を移動するため、撮影経路は、レールR上である。なお、撮影経路は、レールR上に限定されるものではなく、ユーザが自由に入力することが可能である。
【0050】
また、撮影条件SCは、仮想カメラVCの高さ、俯角、進行方向角度を含む。さらに、仮想カメラVCを複数台配置して疑似撮影処理を実行する場合、撮影条件SCは、代表となる仮想カメラVC(本実施形態において、中央カメラ4aを模した仮想カメラVC)からの水平距離を含む。高さは、例えば、地面から仮想カメラVCのセンサまでの高さである。俯角は、仮想カメラVCの地面に対する垂直方向の首振り角度である。進行方向角度は、仮想カメラVCの地上に対する水平方向の首振り角度である。
【0051】
ユーザは、
図13に示すように、入力部20を介して撮影条件SCを入力することで、疑似撮影部44に自動的に入力した撮影条件SCで疑似撮影処理を実行させることができる。また、ユーザは、複数パターンの撮影条件SCを入力しておくことにより、入力したパターン毎に疑似撮影部44に自動的に疑似撮影処理を実行させることができる。
【0052】
さらに、疑似撮影部44は、
図14に示すように、シミュレーション用3D空間モデル51を撮影した際の設定をアウトプット可能に構成されている。本実施形態において、疑似撮影部44は、仮想カメラVCの高さ、俯角、進行方向角度及び水平距離をアウトプット可能に構成されているが、これに限定されない。例えば、疑似撮影部44は、仮想カメラVCの撮影時の絞り値(F値)やシャッタースピード、焦点距離をアウトプット可能に構成されてもよい。
【0053】
3D空間モデル生成部46は、疑似撮影処理で撮影された複数の画像データ54から疑似3D空間モデル55を生成する疑似3D空間モデル生成処理(
図17のS6)を実行可能に構成されている。具体的には、3D空間モデル生成部46は、複数の画像データ54の被写体の特徴点を抽出し、該特徴点の移動距離から空間座標を計算し3D空間モデルを生成するように構成されている。3D空間モデル生成部46は、生成した3D空間モデルを記憶部50に格納する。
【0054】
なお、3D空間モデル生成部46は、生成した3D空間モデルを記憶部50に格納せずに、サーバや他の装置に格納してもよい。
【0055】
図9及び
図11は、本実施形態に係るシミュレーション用3D空間モデル51の一部を示す図である。
図10及び
図12は、
図9及び
図11に示すシミュレーション用3D空間モデル51内を疑似撮影処理で撮影した複数の画像データ54から3D空間モデル生成部46が疑似3D空間モデル生成処理で生成した疑似3D空間モデル55の一部を示す図である。
図9~12に示すように、3D空間モデル生成部46は、シミュレーション用3D空間モデル51を再現した疑似3D空間モデル55を生成可能である。
【0056】
また、3D空間モデル生成部46は、疑似撮影部44が受け付けた撮影条件SCで自動的に疑似撮影処理を実行する場合、該疑似撮影処理に続いて疑似3D空間モデル生成処理を自動的に実行するように構成されている。
【0057】
分析部48は、シミュレーション用3D空間モデル51と疑似3D空間モデル55とを比較し、誤差を算出するモデル比較処理(
図18のS12)を実行可能に構成されている。具体的には、分析部48は、分析する疑似3D空間モデル55を記憶部50から読み出す疑似3D空間モデル取得処理(
図18のS10)と、読み出した疑似3D空間モデル55の基となったシミュレーション用3D空間モデル51を記憶部50から読み出す比較3D空間モデル取得処理(
図18のS11)を実行可能に構成されており、読み出したシミュレーション用3D空間モデル51と疑似3D空間モデル55とを形状比較し、誤差を算出する。
【0058】
具体的には、分析部48は、シミュレーション用3D空間モデル51と、疑似3D空間モデル55が同じ位置(2つの3D空間モデル形状から最も位置誤差が少ない位置)に来るように重ね合わせ、シミュレーション用3D空間モデル51及び疑似3D空間モデル55を構成する点1つ1つについて、最も近い点との距離を測ることにより、生成した疑似3D空間モデル55が、シミュレーション用3D空間モデル51からどれくらい乖離したか(誤差)を算出する。また、分析部48は、シミュレーション用3D空間モデル51と、疑似3D空間モデル55を重ね合わせて表示部30に表示可能であり、ユーザは、可視化された2つの3D空間モデルの差を確認することができる。
【0059】
また、分析部48は、算出した誤差を出力する誤差出力処理(
図18のS13)を実行可能に構成されている。誤差の出力は、例えば、表示部30への誤差の表示であってもよいし、誤差のデータをドキュメントファイルとして出力してもよい。
【0060】
なお、3D空間モデル生成部46が生成した疑似3D空間モデル55を記憶部50に格納しない場合、疑似3D空間モデル取得処理において、分析部48は、サーバ等から疑似3D空間モデル55を取得する。シミュレーション用3D空間モデル51が記憶部50に格納されていない場合も同様に、比較3D空間モデル取得処理において、分析部48は、シミュレーション用3D空間モデル51の格納先から該シミュレーション用3D空間モデル51を取得する。また、疑似3D空間モデル生成処理から連続してモデル比較処理を実行する場合、分析部48は、疑似3D空間モデル取得処理を実行しなくてもよい。
【0061】
分析部48は、
図15に示すように、疑似3D空間モデル55内の測定対象の分析を実行可能に構成されている。具体的には、分析部48は、疑似3D空間モデル55内の任意の測定対象の指定を受け付ける指定受付処理(
図19のS21)と、指定された測定対象の設計寸法56を取得する設計寸法取得処理(
図19のS22)と、測定対象の寸法と、該測定対象の取得した設計寸法56とを比較し、誤差を算出する寸法比較処理(
図19のS24)とを実行可能に構成されている。
【0062】
また、分析部48は、分析する疑似3D空間モデル55を記憶部50から読み出す疑似3D空間モデル取得処理(
図19のS20)と、読み出した疑似3D空間モデル内の受け付けた測定対象の寸法を取得する測定対象寸法取得処理(
図19のS23)と、算出した誤差を出力する誤差出力処理(
図19のS25)を実行可能に構成されている。
【0063】
より具体的には、分析部48は、ユーザにより、入力部20を介してされた測定対象の指定を受け付け、記憶部50から指定された測定対象の設計寸法56を読み出すことで、設計寸法56を取得する。また、分析部48は、記憶部50に設計寸法56が格納されていない場合、サーバや、他の装置に格納された設計寸法56を取得する。さらに、分析部48は、格納された設計寸法56を読み出さずに、設計寸法56の入力を受け付け、受け付けた設計寸法56を測定対象の設計寸法56として取得してもよい。すなわち、ユーザは、入力部20を介して設計寸法56を直接入力することも可能である。
【0064】
設計寸法56は、例えば、測定対象が疑似3D空間モデル内のガードレールや柵の場合、ガードレールや柵の設計図に記載された断面図から取得され得る。また、測定対象は、例えば、ガードレールの高さ等の所定の1箇所の寸法に限らず、例えば、ガードレールの断面形状等の複合的な箇所であってもよい。
【0065】
なお、3D空間モデル生成部46が生成した疑似3D空間モデル55を記憶部50に格納しない場合、疑似3D空間モデル取得処理において、分析部48は、サーバ等から疑似3D空間モデル55を取得する。また、疑似3D空間モデル生成処理から連続して寸法比較処理を実行する場合、分析部48は、疑似3D空間モデル取得処理を実行しなくてもよい。
【0066】
さらに、分析部48は、指定された測定対象の寸法を取得する。分析部48は、指定された測定箇所の寸法を疑似3D空間モデル55から算出する。測定対象の寸法が記憶部50に格納されている場合、分析部48は、該記憶部50から読み出すことで測定対象の寸法を取得してもよい。
【0067】
その後、分析部48は、取得した測定対象の寸法と、測定対象の設計寸法56とを比較し、誤差を算出する。そして、分析部48は、算出した誤差を出力する。誤差の出力は、例えば、表示部30への誤差の表示であってもよいし、誤差のデータをドキュメントファイルとして出力してもよい。
【0068】
分析部48は、分析メニュー選択画面の分析メニューの選択を受け付け可能に構成されており、受け付けた分析メニューを自動的に実行可能に構成されている。分析メニュー選択画面は、例えば、予め設定された複数の測定対象の分析メニューが表示され、分析部48は、ユーザが入力部20を介して選択した測定対象の設計寸法取得処理、測定対象寸法取得処理、寸法比較処理及び誤差出力処理を自動的に実行する。
【0069】
また、入力部20がマイクの場合、分析部48は、音声入力による分析メニューの選択を受け付け、測定対象の設計寸法取得処理、測定対象寸法取得処理、寸法比較処理及び誤差出力処理を自動的に実行してもよい。
【0070】
さらに、分析部48は、
図16に示すように、3D空間モデルの分析を実行可能に構成されている。分析部48は、例えば、3D空間モデル内の分析対象の形状分析が可能である。分析部48は、分析対象の設計時の断面図を取得すると共に、3D空間モデル内の分析対象を検出し、検出した分析対象の断面図を取得する。そして、分析部48は、取得した分析対象の設計時の断面図と分析対象の断面図を形状分析し、分析結果を出力する。
【0071】
記憶部50は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等の記憶媒体を有すると共に、様々なデータを読み書き可能に記憶する。記憶部50は、
図1に示すように、シミュレーション用3D空間モデル51と、撮影環境情報52と、仮想カメラデータ53と、画像データ54と、疑似3D空間モデル55と、設計寸法56と、シミュレーションプログラム57とを格納する。
【0072】
シミュレーションプログラム57は、シミュレーション用3D空間モデル51を取得するシミュレーション用3D空間モデル取得処理と、シミュレーション用3D空間モデル51内の複数箇所を疑似的に撮影する疑似撮影処理と、疑似撮影処理で撮影された複数の画像データ54から疑似3D空間モデル55を生成する疑似3D空間モデル生成処理とをシミュレーション装置10に実行させる。
【0073】
[シミュレーション方法の説明]
本実施形態に係るシミュレーション装置10を用いたシミュレーション方法について
図17を参照して説明する。
図17は、本実施形態に係るシミュレーション装置10を用いたシミュレーションの手順の一例を示すフローチャートである。本実施形態に係るシミュレーション方法は、概略的には、シミュレーション用3D空間モデル51を取得するシミュレーション用3D空間モデル取得工程と、シミュレーション用3D空間モデル51内の複数箇所を疑似的に撮影する疑似撮影工程と、疑似撮影工程で撮影された複数の画像データ54から疑似3D空間モデル55を生成する疑似3D空間モデル生成工程とを備える。
【0074】
また、本実施形態に係るシミュレーション方法は、撮影環境情報52を設定する撮影環境情報設定工程と、シミュレーション用3D空間モデル51を生成するための画像データ54の撮影に使用するカメラ4を再現した仮想カメラVCの仮想カメラデータ53を取得する仮想カメラ取得工程と、撮影条件SCの入力を受け付ける条件受付工程とを備える。
【0075】
以下この方法について詳述する。なお、疑似撮影工程は、ユーザが入力した撮影条件SCに基づいて制御部40が自動的に行うものとして説明するが、これに限定されない。疑似撮影工程は、ユーザが入力部20を介して行ってもよい。また、疑似撮影工程の疑似的な撮影は、仮想カメラVCで行うものとして説明するが、これに限定されない。疑似的な撮影は、仮想カメラVCで行わなくてもよい。
【0076】
まず、制御部40の空間再現部42は、記憶部50からシミュレーション用3D空間モデル51を読み出すことで、該シミュレーション用3D空間モデル51を取得する(
図17のS1:シミュレーション用3D空間モデル取得工程)。また、空間再現部42は、撮影環境情報52の入力を受け付けることで、又は、記憶部50から撮影環境情報52を読み出すことで、取得したシミュレーション用3D空間モデル51に撮影環境情報52を設定する(
図17のS2:撮影環境情報設定工程)。
【0077】
なお、制御部40の空間再現部42が取得したシミュレーション用3D空間モデル51は、表示部30に表示されてもよいし、表示されなくてもよい。表示部30にシミュレーション用3D空間モデル51を表示する場合、撮影環境情報52の設定後、該撮影環境情報52を反映したシミュレーション用3D空間モデル51が表示部30に表示される。
【0078】
さらに、制御部40の空間再現部42は、カメラ4を再現した仮想カメラVCの仮想カメラデータ53の入力を受け付けることで、又は、記憶部50から仮想カメラデータ53を読み出すことで、該仮想カメラデータ53を取得する(
図17のS3:仮想カメラ取得工程)。なお、空間再現部42は、表示部30にシミュレーション用3D空間モデル51を表示する場合、仮想カメラVCをシミュレーション用3D空間モデル51内に配置して表示する。
【0079】
次に、ユーザは、入力部20を介して撮影条件SCを入力する。撮影条件SCは、仮想カメラVC撮影経路及び撮影間隔を含む。また、撮影条件SCは、仮想カメラVCの高さや向き等のアングルの情報を含む。そして、制御部40の疑似撮影部44は、撮影条件SCの入力を受け付ける(
図17のS4:条件受付工程)。
【0080】
なお、撮影条件SCは、事前に記憶部50に格納されており、ユーザは、入力部20を介して格納された撮影条件SCを選択してもよい。その場合、制御部40の疑似撮影部44は、記憶部50から選択された撮影条件SCを読み出す。
【0081】
その後、制御部40の疑似撮影部44は、受け付けた撮影条件SCでシミュレーション用3D空間モデル51内の複数箇所を疑似的に撮影する(
図17のS5:疑似撮影工程)。また、疑似撮影部44は、複数の画像データ54を記憶部50に格納する。疑似撮影工程の終了後、制御部40の3D空間モデル生成部46は、疑似撮影部44が撮影した複数の画像データ54を記憶部50から読み出し、疑似3D空間モデル55を生成する(
図17のS6:疑似3D空間モデル生成工程)。以上の工程により、本実施形態に係るシミュレーション装置10による一連のシミュレーション方法が実行される。
【0082】
なお、ユーザは、条件受付工程において、複数パターンの撮影条件SCを入力することも可能であり、複数パターンの撮影条件SCが入力された場合、撮影条件SCごとに疑似撮影工程及び疑似3D空間モデル生成工程が行われる。疑似撮影工程及び疑似3D空間モデル生成工程は、全パターンの疑似撮影工程を行った後に、全パターンの疑似3D空間モデル生成工程を行ってもよいし、パターン毎に疑似撮影工程と疑似3D空間モデル生成工程を行うことを繰り返してもよい。
【0083】
[本実施形態に係るシミュレーション装置、シミュレーション方法及びシミュレーションプログラムの利点]
以上説明したように、本実施形態に係るシミュレーション装置10は、シミュレーション用3D空間モデル51を取得するシミュレーション用3D空間モデル取得処理と、シミュレーション用3D空間モデル51内の複数箇所を疑似的に撮影する疑似撮影処理と、疑似撮影処理で撮影された複数の画像データ54から疑似3D空間モデル55を生成する疑似3D空間モデル生成処理とを実行可能に構成されている制御部40を備える。
【0084】
そして、本実施形態に係るシミュレーション装置10は、このような構成を備えることにより、シミュレーション用3D空間モデル51内で疑似的な撮影を実施し、疑似3D空間モデル55を生成して生成精度を確認することができるため、最適な撮影設定を特定する効率を高めることが可能であるという利点を有している。
【0085】
また、本実施形態に係るシミュレーション装置10において、制御部40は、シミュレーション用3D空間モデル51と疑似3D空間モデル55とを比較し、誤差を算出するモデル比較処理を実行可能に構成されている。このような構成を備えることにより、生成した疑似3D空間モデル55の精度を定量的に確認することができるため、最適な撮影設定を特定する効率をより高めることが可能であるという利点を有している。
【0086】
さらに、本実施形態に係るシミュレーション装置10において、制御部40は、シミュレーション用3D空間モデル51を撮影した際の設定をアウトプット可能に構成されている。このような構成を備えることにより、シミュレーションした撮影時の設定を実際の撮影場所での撮影にフィードバックできるため、最適な撮影設定を特定する効率をより高めることが可能であるという利点を有している。
【0087】
またさらに、本実施形態に係るシミュレーション装置10において、制御部40は、撮影環境情報52を設定する撮影環境情報設定処理を実行可能に構成されており、撮影環境情報52は、自然光の情報を含み、疑似撮影処理は、シミュレーション用3D空間モデル51内に撮影環境情報52を反映させた状態で実行される。このような構成を備えることにより、撮影場所での撮影時期や撮影時間帯に合わせてシミュレーションできるため、最適な撮影設定を特定する効率をより高めることが可能であるという利点を有している。
【0088】
また、本実施形態に係るシミュレーション装置10において、制御部40は、シミュレーション用3D空間モデル51を生成するための画像データ54の撮影に使用するカメラ4を再現した仮想カメラVCのデータを取得する仮想カメラ取得処理を実行可能に構成されると共に、疑似撮影処理の撮影は、仮想カメラVCで実行され、該仮想カメラVCを複数台配置可能である。このような構成を備えることにより、実際の撮影に使用するカメラ4を疑似的に使用してシミュレーションできるため、最適な撮影設定を特定する効率をさらに高めることが可能であるという利点を有している。
【0089】
さらに、本実施形態に係るシミュレーション装置10は、ユーザが撮影条件SCを入力可能な入力部20を備え、撮影条件SCは、仮想カメラVCの撮影経路及び撮影間隔を含み、制御部40は、撮影条件SCの入力を受け付ける条件受付処理を実行可能に構成されると共に、受け付けた撮影条件SCで自動的に疑似撮影処理及び疑似3D空間モデル生成処理を実行するように構成されている。このような構成を備えることにより、入力部20を介した手動操作により疑似的な撮影の操作を実施するよりも高速に疑似撮影処理を実行することができ、続けて疑似3D空間モデル生成処理を実行できるため、短時間で疑似3D空間モデル55を生成し、確認することが可能となり、最適な撮影設定を特定する効率をさらに高めることが可能であるという利点を有している。また、例えば、撮影条件SCだけ事前に入力しておくことで、終業時間外であっても自動的に何パターンものシミュレーションができるため、最適な撮影設定を特定する効率をさらに高めることが可能であるという利点を有している。
【0090】
またさらに、本実施形態に係るシミュレーション装置10において、制御部40は、疑似3D空間モデル55内の任意の測定対象の指定を受け付ける指定受付処理と、指定された測定対象の設計寸法56を取得する設計寸法取得処理と、測定対象の寸法と、該測定対象の取得した設計寸法56とを比較し、誤差を算出する寸法比較処理とを実行可能に構成されている。このような構成を備えることにより、生成した疑似3D空間モデル55の細部の精度をその測定対象の実際の寸法に近しい設計寸法56と比較し、定量的に確認できるため、最適な撮影設定を特定する効率をさらに高めることが可能であるという利点を有している。
【0091】
また、本実施形態に係るシミュレーション装置10において、シミュレーション用3D空間モデル51は、台車2とカメラ4を備える可動式撮影装置1により、現実空間を撮影した画像データ54から生成される。このような構成を備えることにより、現実空間を撮影した画像データ54から生成されたシミュレーション用3D空間モデル51内でシミュレーションするため、実際の撮影に即した環境で撮影設定を特定することができ、最適な撮影設定を特定する効率をさらに高めることが可能であるという利点を有している。
【0092】
さらに、本実施形態に係るシミュレーション装置10において、可動式撮影装置1は、遠景撮影用のカメラ4と、近景撮影用のカメラ4とを備える。このような構成を備えることにより、遠景撮影用のカメラ4が撮影した画像データ54を矛盾なく結合してシミュレーション用3D空間モデル51の全体を生成し、該シミュレーション用3D空間モデル51の詳細部分を近景撮影用のカメラ4で撮影した画像データ54から生成することができるため、より現実空間を細部まで忠実に再現したシミュレーション用3D空間モデル51で最適な撮影設定を特定することができるという利点を有している。また、近景用のカメラ4で撮影した画像データ54だけを使用してシミュレーション用3D空間モデル51を生成した場合に、シミュレーション用3D空間モデル51が歪むバナナエフェクトと呼ばれる現象が発生することがあるが、遠景撮影用のカメラ4と近景撮影用のカメラ4を備えることにより、バナナエフェクトの発生を抑制することができる。
【0093】
[変形例]
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は、上述した実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【0094】
例えば、上述した実施形態において、制御部40は、シミュレーション用3D空間モデル51と疑似3D空間モデル55とを比較し、誤差を算出するモデル比較処理を実行可能に構成されているものとして説明したが、これに限定されない。制御部40は、モデル比較処理を実行できなくてもよい。
【0095】
上述した実施形態において、制御部40は、シミュレーション用3D空間モデル51を撮影した際の設定をアウトプット可能に構成されているものとして説明したが、これに限定されない。制御部40は、シミュレーション用3D空間モデル51を撮影した際の設定をアウトプットできなくてもよい。
【0096】
上述した実施形態において、制御部40は、撮影環境情報52を設定する撮影環境情報設定処理を実行可能に構成されており、撮影環境情報52は、自然光の情報を含み、疑似撮影処理は、シミュレーション用3D空間モデル51内に撮影環境情報52を反映させた状態で実行されるものとして説明したが、これに限定されない。制御部40は、撮影環境情報設定処理を実行できなくてもよい。また、疑似撮影処理は、シミュレーション用3D空間モデル51内に撮影環境情報52を反映させた状態で実行されなくてもよい。例えば、疑似撮影処理は、例えば、シミュレーション装置10にデフォルトで設定された光等、自然光以外の光をシミュレーションした状態で実行されてもよい。
【0097】
上述した実施形態において、制御部40は、シミュレーション用3D空間モデル51を生成するための画像データ54の撮影に使用するカメラ4を再現した仮想カメラVCのデータを取得する仮想カメラ取得処理を実行可能に構成されると共に、疑似撮影処理の撮影は、仮想カメラVCで実行され、該仮想カメラVCを複数台配置可能であるものとして説明したが、これに限定されない。制御部40は、仮想カメラ取得処理を実行できなくてもよい。また、疑似撮影処理の撮影は、カメラ4を再現した仮想カメラVCで実行されずに、カメラ4を再現していない仮想カメラVCで実行されてもよいし、公知のレンダリング機能やキャプチャ機能であってもよい。
【0098】
上述した実施形態において、シミュレーション装置10は、ユーザが撮影条件SCを入力可能な入力部20を備え、撮影条件SCは、仮想カメラVCの撮影経路及び撮影間隔を含み、制御部40は、撮影条件SCの入力を受け付ける条件受付処理を実行可能に構成されると共に、受け付けた撮影条件SCで自動的に疑似撮影処理及び疑似3D空間モデル生成処理を実行するように構成されているものとして説明したが、これに限定されない。シミュレーション装置10は、入力部20を備えなくてもよい。また、制御部40は、条件受付処理を実行できなくてもよいし、自動的に疑似撮影処理及び疑似3D空間モデル生成処理を実行しなくてもよい。
【0099】
上述した実施形態において、制御部40は、疑似3D空間モデル55内の任意の測定対象の指定を受け付ける指定受付処理と、指定された測定対象の設計寸法56を取得する設計寸法取得処理と、測定対象の寸法と、該測定対象の取得した設計寸法56とを比較し、誤差を算出する寸法比較処理とを実行可能に構成されているものとして説明したが、これに限定されない。制御部40は、指定受付処理と、設計寸法取得処理と、寸法比較処理とを実行できなくてもよい。
【0100】
上述した実施形態において、シミュレーション用3D空間モデル51は、台車2とカメラ4を備える可動式撮影装置1により、現実空間を撮影した画像データ54から生成されるものとして説明したが、これに限定されない。シミュレーション用3D空間モデル51は、台車2とカメラ4を備える可動式撮影装置1により、現実空間を撮影した画像データ54から生成されなくてもよい。シミュレーション用3D空間モデル51は、上述したように、実在しない3D空間の3D空間モデルであってもよいし、可動式撮影装置1以外の装置により、現実空間に基づいて生成されてもよい。例えば、シミュレーション用3D空間モデル51は、カメラ4のみで撮影した画像データ54から生成されてもよいし、動画データから生成されてもよいし、3Dスキャナ等により、現実空間をスキャンして生成されてもよい。
【0101】
上述した実施形態において、可動式撮影装置1は、遠景撮影用のカメラ4と、近景撮影用のカメラ4とを備えるものとして説明したが、これに限定されない。可動式撮影装置1は、複数台のカメラ4を備えずに、1台のカメラ4のみを備えてもよい。また、複数のカメラ4は、全て遠景撮影用のカメラ4であってもよいし、全て近景撮影用のカメラ4であってもよい。
【符号の説明】
【0102】
1 可動式撮影装置
2 台車
4 カメラ
4a 中央カメラ
4b 右サイドカメラ
4c 左サイドカメラ
10 シミュレーション装置
20 入力部
30 表示部
40 制御部
42 空間再現部
44 疑似撮影部
46 3D空間モデル生成部
48 分析部
50 記憶部
51 シミュレーション用3D空間モデル
52 撮影環境情報
53 仮想カメラデータ
54 画像データ
55 疑似3D空間モデル
56 設計寸法
57 シミュレーションプログラム
M マーカ
R レール
SC 撮影条件
VC 仮想カメラ
【要約】
【課題】最適な撮影設定を特定する効率を高めることが可能なシミュレーション装置、シミュレーション法及びシミュレーションプログラムを提供する。
【解決手段】シミュレーション用3D空間モデルを取得するシミュレーション用3D空間モデル取得処理と、前記シミュレーション用3D空間モデル内の複数箇所を疑似的に撮影する疑似撮影処理と、前記疑似撮影処理で撮影された複数の画像データから疑似3D空間モデルを生成する疑似3D空間モデル生成処理とを実行可能に構成されている制御部を備える。
【選択図】
図1