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特許7508692軸アセンブリおよび軸アセンブリを備えた操舵伝動装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】軸アセンブリおよび軸アセンブリを備えた操舵伝動装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/16 20060101AFI20240624BHJP
   B62D 5/00 20060101ALI20240624BHJP
   F16C 3/03 20060101ALI20240624BHJP
   F16D 1/02 20060101ALI20240624BHJP
   F16F 1/12 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
B62D1/16
B62D5/00
F16C3/03
F16D1/02 120
F16F1/12 A
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023504307
(86)(22)【出願日】2021-07-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-25
(86)【国際出願番号】 EP2021068542
(87)【国際公開番号】W WO2022017766
(87)【国際公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-01-20
(31)【優先権主張番号】102020119281.9
(32)【優先日】2020-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】597007363
【氏名又は名称】クノル-ブレムゼ ジステーメ フューア ヌッツファールツォイゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Knorr-Bremse Systeme fuer Nutzfahrzeuge GmbH
【住所又は居所原語表記】Moosacher Strasse 80, D-80809 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ディミトリ エプシュタイン
(72)【発明者】
【氏名】ディアク レットウ
(72)【発明者】
【氏名】スヴェン キアシュバウム
【審査官】田邉 学
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-164671(JP,A)
【文献】特開昭55-059069(JP,A)
【文献】特開昭53-100541(JP,A)
【文献】特開2018-052323(JP,A)
【文献】米国特許第6360841(US,B1)
【文献】米国特許第4481866(US,A)
【文献】米国特許第4217813(US,A)
【文献】米国特許第6065561(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/16
B62D 5/00
F16C 3/03
F16D 1/02
F16F 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操舵伝動装置用の軸アセンブリ(1)であって、入力軸(2)と、出力軸(3)と、トーションバー(5)とを備え、該トーションバー(5)は、前記軸アセンブリ(1)の入力側の結合領域(13)において、前記入力軸(2)に相対回動不能に結合されており、前記トーションバー(5)は、前記軸アセンブリ(1)の出力側の結合領域(16)において、前記出力軸(3)に相対回動不能に結合されており、前記入力側の結合領域(13)は、前記出力側の結合領域(16)から離間させられている、軸アセンブリ(1)において、
前記軸アセンブリ(1)は、ねじれ安全機構(18)を有しており、該ねじれ安全機構(18)は、前記出力軸(3)に対して相対的な前記入力軸(2)のねじれを最大のねじれ角に制限していて、該最大のねじれ角への到達時に前記入力軸(2)から前記出力軸(3)へとトルクを伝達することができ
前記入力軸(2)は、前記出力軸に向いている端部に収容室(11)を有しており、該収容室(11)は、前記出力軸(3)の少なくとも1つの端部分(9)を収容している、
ことを特徴とする、軸アセンブリ(1)。
【請求項2】
前記ねじれ安全機構(18)は、前記収容室(11)の高さに配置されていることを特徴とする、請求項記載の軸アセンブリ(1)。
【請求項3】
前記トーションバー(5)は、前記収容室(11)の高さで前記出力軸(3)の内部に配置されていることを特徴とする、請求項1または2記載の軸アセンブリ(1)。
【請求項4】
前記トーションバー(5)と前記入力軸(2)との間の相対回動不能な結合部は、前記収容室(11)の高さに形成されていることを特徴とする、請求項記載の軸アセンブリ(1)。
【請求項5】
操舵伝動装置用の軸アセンブリ(1)であって、入力軸(2)と、出力軸(3)と、トーションバー(5)とを備え、該トーションバー(5)は、前記軸アセンブリ(1)の入力側の結合領域(13)において、前記入力軸(2)に相対回動不能に結合されており、前記トーションバー(5)は、前記軸アセンブリ(1)の出力側の結合領域(16)において、前記出力軸(3)に相対回動不能に結合されており、前記入力側の結合領域(13)は、前記出力側の結合領域(16)から離間させられている、軸アセンブリ(1)において、
前記軸アセンブリ(1)は、ねじれ安全機構(18)を有しており、該ねじれ安全機構(18)は、前記出力軸(3)に対して相対的な前記入力軸(2)のねじれを最大のねじれ角に制限していて、該最大のねじれ角への到達時に前記入力軸(2)から前記出力軸(3)へとトルクを伝達することができ、
前記軸アセンブリ(1)の、前記トーションバー(5)と前記入力軸(2)との間の前記入力側の結合領域(13)において相対回動不能な結合部を形成している構成部材が、さらに、前記ねじれ安全機構(18)の一部を形成していることを特徴とする、軸アセンブリ(1)。
【請求項6】
前記ねじれ安全機構(18)は、前記入力軸(2)に相対回動不能に結合されている安全ピン(6)と、前記出力軸(3)に設けられた空所(10)とによって構成されており、前記安全ピン(6)の一部分は、前記空所(10)内へと突き込まれた状態で配置されており、前記空所(10)は、該空所(10)の壁と前記安全ピン(6)との間に、前記出力軸(3)に対して相対的な前記入力軸(2)の前記ねじれを許容する遊びが存在するように寸法設定されていることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の軸アセンブリ(1)。
【請求項7】
前記空所(10)は、互いに対向している安全面(20)を有しており、該安全面(20)には、前記安全ピン(6)が、前記出力軸(3)に対して相対的な前記入力軸(2)のねじれ時に接触することができ、前記安全面(20)相互の間隔および/または角度位置が、前記最大のねじれ角を規定していることを特徴とする、請求項記載の軸アセンブリ(1)。
【請求項8】
前記入力軸(2)は、入力側の入力軸孔(14)を有しており、該入力側の入力軸孔(14)には、前記安全ピン(6)の一部分が遊びなしに収容されていることを特徴とする、請求項6または7記載の軸アセンブリ(1)。
【請求項9】
前記安全ピン(6)は、前記入力側の結合領域(13)において、前記トーションバー(5)を前記入力軸(2)に相対回動不能に結合していることを特徴とする、請求項6から8までのいずれか1項記載の軸アセンブリ(1)。
【請求項10】
前記トーションバー(5)は、入力側のトーションバー孔(15)を有しており、該入力側のトーションバー孔(15)には、前記安全ピン(6)の一部分が遊びなしに収容されていることを特徴とする、請求項6から9までのいずれか1項記載の軸アセンブリ(1)。
【請求項11】
前記出力軸(3)は、前記出力側の結合領域(16)に出力側の出力軸孔(8)を有しており、前記トーションバー(5)は、前記出力側の結合領域(16)に出力側のトーションバー孔(17)を有しており、前記出力側の出力軸孔(8)および前記出力側のトーションバー孔(17)にそれぞれ遊びなしに結合ピン(7)が部分的に収容されていることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の軸アセンブリ(1)。
【請求項12】
前記出力軸(3)は、該出力軸(3)の長手方向に延びている貫通路(12)を有しており、該貫通路(12)内には、前記トーションバー(5)の少なくとも大部分が配置されていることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の軸アセンブリ(1)。
【請求項13】
前記トーションバー(5)の、少なくとも前記入力側の結合領域(13)から前記出力側の結合領域(16)へと延びる部分は、前記出力軸(3)の前記貫通路(12)内に配置されていることを特徴とする、請求項12記載の軸アセンブリ(1)。
【請求項14】
前記出力軸(3)は、ねじ山付きスピンドルとして形成されていることを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項記載の軸アセンブリ(1)。
【請求項15】
請求項1から14までのいずれか1項記載の軸アセンブリ(1)を備えた操舵伝動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操舵伝動装置用の軸アセンブリであって、入力軸と、出力軸と、トーションバーとを備え、このトーションバーは、軸アセンブリの入力側の結合領域において、入力軸に相対回動不能に結合されており、トーションバーは、軸アセンブリの出力側の結合領域において、出力軸に相対回動不能に結合されており、入力側の結合領域は、出力側の結合領域から離間させられている、軸アセンブリに関する。本発明は、さらに、軸アセンブリを備えた操舵伝動装置に関する。
【0002】
車両の操舵時には、操舵力がステアリングホイールから車両のホイールに伝達されなければならない。このことは、操舵伝動装置によって行われる。操舵伝動装置は、通常、操舵時に所望の遊びを提供するトーションバーを有している。トーションバーは、ねじれ弾性を有する要素である。この要素は、操舵伝動装置の2つの軸を結合しており、例えば、ステアリングホイール側の入力軸をホイール側の出力軸に結合している。この出力軸の回転運動を線形運動に変換することができるようにするために、出力軸は、じかに、ねじ山、ピニオンまたはこれに類するものを備えていてもよい。
【0003】
トーションバーを備えた操舵伝動装置は、先行技術に基づき公知である。独国特許出願公開第102011017150号明細書には、トーションバーによって連結された2つの軸部分を備えたステアリングコラムが記載されている。トーションバーは、ねじれ弾性を有していて、軸部分の内部に配置されている。この公知のアセンブリは、トーションバーが、例えば材料疲労または過負荷に基づき壊れてしまった場合の安全機構を設けていない。その結果、ステアリングの故障が生じてしまう。
【0004】
独国特許出願公開第102014212367号明細書には、操舵入力軸と、この操舵入力軸にトーションバーを介して連結されたピニオン軸とを備えた操舵伝動装置が記載されている。操舵入力軸はハウジング内に支承されている。このハウジングは遮断要素を有している。ステアリングロッドが壊れると、遮断要素が操舵入力軸の軸方向の運動を制限する。これによって、このような場合に操舵伝動装置の磁石が、操舵入力軸を案内する支持軸受に衝突してしまうことが阻止される。
【0005】
これに対して、本発明の根底にある課題は、より高い運転安全性を有する、トーションバーを備えた軸アセンブリを提供することである。さらに、本発明の根底にある課題は、操舵伝動装置のトーションバーの損傷時でさえ、確実な操舵が引き続き可能となる操舵伝動装置を提供することである。
【0006】
これらの課題は、請求項1記載の軸アセンブリならびに請求項16記載の操舵伝動装置によって解決される。従属請求項は、本発明の、互いに独立した種々異なる有利な改良形態に該当し、これらの改良形態の特徴は、技術的に有意な範囲内で当業者によって互いに自由に組み合わせられてもよい。
【0007】
本発明の第1の態様によれば、操舵伝動装置用の軸アセンブリが提案される。軸アセンブリは、入力軸と、出力軸と、トーションバーとを有し、このトーションバーは、軸アセンブリの入力側の結合領域において、入力軸に相対回動不能に結合されている。さらに、トーションバーは、軸アセンブリの出力側の結合領域において、出力軸に相対回動不能に結合されている。さらに、入力側の結合領域は、出力側の結合領域から離間させられている。軸アセンブリは、本発明によれば、ねじれ安全機構を有しており、このねじれ安全機構は、出力軸に対して相対的な入力軸のねじれを最大のねじれ角に制限していて、最大のねじれ角への到達時に入力軸から出力軸へとトルクを伝達することができる。
【0008】
重要なのは、本発明によるねじれ安全機構を設けることにより、両要素、つまり入力軸および出力軸の基本的に所望のねじれが最大量に制限されるように、軸アセンブリを構成するという基本的な考えである。これにより、既に有利には、トーションバーの破損の危険が大幅に減じられる。さらに、システム全体の運転安全性に対する不都合な影響も大幅に制限される。なぜならば、トーションバーがいずれ故障したとしても、ねじれ運動の伝達が、引き続き、本発明によるねじれ安全機構によって引き継がれるからである。これにより、トーションバーの破損時でさえ、引き続き操舵が可能であることが保証されている。
【0009】
ねじれ安全機構は、出力軸に対して相対的な入力軸のねじれを、最大のねじれ角まで許容する。出力軸に対して相対的な入力軸のねじれは、本発明によれば、軸アセンブリの長手方向軸線を中心とする回動であり得る。トーションバーが損傷すると、このトーションバーは、トルクをもはや入力軸から出力軸へと伝達できないことがあり得る。この場合、ねじれ安全機構によって、入力軸と出力軸との間の最大のねじれ角が超過されないようになっている。ねじれ安全機構は、さらに、トーションバーが過度にねじれてしまわないことを保証する。過度のねじれは、トーションバーを損傷させるおそれがある。トーションバーは、本発明によれば、ねじれ弾性を有する棒状のばね要素であり得る。このトーションバーは、入力側の結合領域と出力側の結合領域との間の長さに沿って出力軸に対して相対的に入力軸がねじれる際にねじれ弾性変形する。
【0010】
有利には、ねじれ安全機構は、入力軸から出力軸へと伝達すべきトルクが専らねじれ安全機構を介して伝達されるように構成されていてもよい。
【0011】
ねじれ安全機構は、好ましくは、入力軸に相対回動不能に結合されている安全ピンと、出力軸に設けられた空所とによって形成されており、安全ピンの一部分は、空所内へと突き込まれた状態で配置されている。空所は、空所の壁と安全ピンとの間に、出力軸に対して相対的な入力軸のねじれを許容する遊びが存在するように寸法設定されている。したがって、安全ピンと空所の壁との間には、出力軸に対して相対的な入力軸のねじれを可能にする間隔あるいはクリアランスが存在している。安全ピンが壁に当接したときに初めて、ねじれがもはや不可能となる。安全ピンでは、種々異なる幾何学的な形状が可能であるが、好適には安全ピンは円筒形を有している。同様に空所でも、それぞれ異なる幾何学的な形状が可能であるが、安全ピンの形状に適合していることが望ましい。空所は、例えば、出力軸の軸線に対して横方向で出力軸を通って完全に、さらに好適には中心で延びていて、例えば貫通孔として構成されていてもよい。また、安全ピンは、完全に空所を通って案内されていてもよい。出力軸が、空所の領域において、例えば内側で中空に形成されている場合、空所は、中空軸の対向している2つの周面部分に形成されていてもよい。
【0012】
空所は、互いに対向している安全面を有しており、この安全面には、安全ピンが、出力軸に対して相対的な入力軸のねじれ時に接触することができ、安全面相互の間隔および/または角度位置が、最大のねじれ角を規定していると有利である。こうして空所は、例えば部分的に楔形の横断面を有することができ、この横断面は、出力軸に対して相対的な入力軸のねじれを一定の範囲で可能にする。空所はこのとき、有利には、出力軸の外側の周面から出力軸の軸線方向で見て、楔形に延在して形成されていてもよい。つまりこの場合、空所は、出力軸の外側の周面の各所において、出力軸の周面部分の、軸線に向いている内側の面の各所よりも大きな開口幅を有し得る。
【0013】
好適には、入力軸は、入力側の入力軸孔を有しており、この入力側の入力軸孔には、安全ピンの一部分が遊びなしに収容されている。孔とは、本発明の文脈では、それがどのように製作されたかにかかわらず、要素に設けられた任意の中空室を意味している。入力側の入力軸孔は、特に好適には、入力軸の軸線に対して横方向にかつ中心で延在して配置されていて、好ましくは完全に入力軸を貫いて延びている。本発明によれば、入力側の入力軸孔が円形の横断面を有していることが可能である。このとき、安全ピンは円筒形である。安全ピンは、入力側の入力軸孔に押し込むことができ、必要に応じてこの孔から取り出すことができる。好ましくは、入力側の入力軸孔の中心と、出力軸に設けられた前述の空所の中心とは、互いに一致するようにアライメントされている。
【0014】
好ましくは、安全ピンが、入力側の結合領域において、トーションバーを入力軸に相対回動不能に結合している。したがって、安全ピンは、出力軸に対する入力軸のロックに役立つだけでなく、入力軸とトーションバーとの間の相対回動不能な結合も作り出す。このことは好適には、トーションバーが、入力側のトーションバー孔を有しており、この入力側のトーションバー孔に安全ピンの一部分が遊びなしに収容されているように実施される。したがって、安全ピンは、入力側の入力軸孔内および入力側のトーションバー孔内に部分的に配置されていてもよく、安全ピンの別の部分は空所内に配置されている。好ましくは、入力側の入力軸孔および入力側のトーションバー孔は、互いに整列するようにアライメントされている。本発明の別の実施形態によれば、入力軸をトーションバーに結合するために安全ピンを用いないことも可能である。その場合、別の結合手段、例えば、結合ピンまたはこれに類するものが、入力軸内およびトーションバー内へと差し込まれていてもよい。
【0015】
本発明によれば、出力軸が、出力側の結合領域に出力側の出力軸孔を有しており、トーションバーが、出力側の結合領域に出力側のトーションバー孔を有しており、出力側の出力軸孔および出力側のトーションバー孔にそれぞれ遊びなしに結合ピンが部分的に収容されていることが想定されていてもよい。こうして、トーションバーを出力軸に相対回動不能に結合することができる。しかしながら、本発明の意味において、どのようにしてトーションバーを出力軸に結合することができるかという別の可能性も考えられる。
【0016】
本発明の特別な一実施形態によれば、出力軸は、出力軸の長手方向に延びている貫通路を有しており、この貫通路内には、トーションバーの少なくとも大部分が配置されている。貫通路の内部では、出力軸に対して相対的な入力軸のねじれ時にトーションバーが弾性変形させられる。トーションバーは出力軸の内部に配置されているので、軸アセンブリは、比較的短い構造を有することができる。なぜならば、例えば入力軸と出力軸との間にトーションバーのための付加的な間隔を設ける必要がないからである。本発明によれば、トーションバーの、少なくとも入力側の結合領域から出力側の結合領域へと延びる部分が、出力軸の貫通路内に配置されていることが可能である。しかし、トーションバーは、本発明によれば、出力軸の他の領域へと延びていてもよい。本発明の別形によれば、トーションバーは、さらに、出力軸の端部から突出することができる。好ましくは、トーションバーの軸線に沿って見た長さに対して、トーションバーの少なくとも70%、好適には少なくとも80%、さらに好適には少なくとも90%、特に少なくとも95%が、出力軸の貫通路内に配置されている。
【0017】
入力軸は、出力軸に向いている端部に好ましくは収容室を有しており、この収容室は、出力軸の少なくとも1つの端部分を収容している。したがって、入力軸を出力軸に結合するために、出力軸を入力軸の収容室内に押し込むことができる。収容室は、例えば円筒形に形成されていてもよい。収容室は、さらに有利には、盲孔として形成されていてもよい。このとき、本発明の有利な実施形態によれば、ねじれ安全機構が、収容室の高さに配置されている。例えば、前述の安全ピンは、収容室の高さで入力軸内および出力軸内に差し込まれていてもよい。
【0018】
好適には、出力軸の端部分が入力軸に収容されているだけでなく、トーションバーも、収容室の高さで出力軸の内部に配置されている。このことは、トーションバーの端部が、収容室の高さで出力軸の端部分の内部に配置されていることを意味する。特に好適には、トーションバーと入力軸との間の相対回動不能な結合部が、収容室の高さに形成されている。このためには、本発明によれば、安全ピンが、収容室の高さで入力軸の孔にもトーションバーの孔にも差し込まれていてもよい。
【0019】
本発明の有利な一実施形態によれば、軸アセンブリの、トーションバーと入力軸との間の入力側の結合領域において相対回動不能な結合部を形成している構成部材は、さらに、ねじれ安全機構の一部を形成している。この構成部材は、前述の安全ピンまたは同等のロック要素であってもよい。しかしながら、ねじれ安全機構の正確な構成は、本実施形態では自由に選択可能であり、内部に安全ピンの一部分が配置されている空所を出力軸が有する前述の別形に限定されない。
【0020】
出力軸は、好ましくはねじ山付きスピンドルである。ねじ山付きスピンドルは、雄ねじ山を備えている。雄ねじ山は、本発明では好適には少なくとも、入力側の結合領域と出力側の結合領域との間のねじ山付きスピンドルの部分にわたって延びている。操舵伝動装置では、ねじ山付きスピンドルの雄ねじ山に、大抵はナット(ボール循環ナットとも呼ばれる)が外嵌されており、このナットは、ナットが回動可能ではないように、操舵伝動装置に内包されている。それゆえ、ねじ山付きスピンドルの回転時には、ナットはねじ山付きスピンドルに沿って軸方向に移動させられる。ナットは、例えばピットマンアームに連結されていてもよく、このピットマンアームを介して操舵力が車両のホイールに伝達される。しかしながら、本発明に係る軸アセンブリは、原則的に、他の使用領域でも使用され得る。
【0021】
本発明の更なる態様によれば、前述の軸アセンブリを具備した操舵伝動装置が記載される。この操舵伝動装置は、好ましくは、力がステアリングホイールから軸アセンブリの入力軸に伝達され得るように形成されている。入力軸は、トーションバーを用いて軸アセンブリの出力軸に弾性的に連結されている。トーションバーが、破損するかまたはその他の理由から、連結機能をもはや果たすことできない場合、それにもかかわらず、操舵伝動装置を介して引き続き操舵が可能である。このことは軸アセンブリのねじれ安全機構によって可能となり、このねじれ安全機構は、出力軸に対して相対的な入力軸のねじれを最大のねじれ角に制限していて、最大のねじれ角への到達時に入力軸から出力軸へとトルクを伝達することができる。
【0022】
図面には、本発明の有利な実施形態が示してある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】操舵伝動装置用の本発明に係る軸アセンブリの概略的な側面図である。
図2】軸アセンブリの出力軸の概略的な側面図である。
図3】軸アセンブリの概略的な断面図である。
図4】軸アセンブリのねじれ安全機構の概略的な断面図である。
図5】軸アセンブリのねじれ安全機構の概略的な別の断面図である。
【0024】
図1には、操舵伝動装置用の本発明に係る軸アセンブリ1の概略的な側面図が示してある。この軸アセンブリ1は、入力軸2と出力軸3とを有している。この出力軸3はねじ山付きスピンドルである。出力軸3は雄ねじ山4を備えている。操舵伝動装置に軸アセンブリ1を使用する場合には、雄ねじ山4に、例えばナット(ボール循環ナットとも呼ばれる)が外嵌されてもよい。このナットは、出力軸3の回転時にこの出力軸3に沿って軸方向に運動させられ、操舵伝動装置のピットマンアームに連結されていてもよい。軸アセンブリ1は、さらに、トーションバー5を有している。このトーションバー5は、大部分で出力軸3もしくは入力軸2の内部に配置されていて、図1では、小さな部分でのみ出力軸3を越えて突出している。
【0025】
出力軸3は、入力軸2に設けられた(図1に認めることができない)収容室内に差し込まれている。この収容室を有する入力軸2の部分には、さらに、安全ピン6が差し込まれている。この安全ピン6は、1つには、入力軸2をトーションバー5に相対回動不能に結合している。もう1つには、安全ピン6は、出力軸3に対して相対的な入力軸2のねじれを最大のねじれ角に制限している。軸アセンブリ1は、さらに、結合ピン7を有している。この結合ピン7は、出力軸3の、入力軸2と反対側の端部に差し込まれている。結合ピン7は、トーションバー5を出力軸3に相対回動不能に結合している。
【0026】
図2には、軸アセンブリの出力軸3の概略図が示してある。この出力軸3は、図2には示していない結合ピン7を収容するための出力側の出力軸孔8を有している。出力軸3の端部分9は、出力軸3のその他の部分よりもやや狭幅に形成されている。出力軸3の端部分9は、入力軸内に差し込むことができる。端部分9には、空所10が存在している。この空所10を通して、同じく図2には示していない安全ピン6が案内される。
【0027】
図3には、軸アセンブリ1の概略的な断面図が示してある。断面は、図1に示した切断線A-Aに沿って延在している。以下に、軸アセンブリ1の機能形態を詳しく説明する。入力軸2は収容室11を有している。この入力軸2の収容室11内には、出力軸3の端部分9が差し込まれている。出力軸3は貫通路12を有しており、この貫通路12内には、トーションバー5が配置されている。このトーションバー5は、軸アセンブリ1の入力側の結合領域13において、安全ピン6によって入力軸2に相対回動不能に結合されている。安全ピン6は、入力軸2の入力側の入力軸孔14と、トーションバー5の入力側のトーションバー孔15とに遊びなしに挿嵌されている。トーションバー5は、さらに、軸アセンブリ1の出力側の結合領域16において、結合ピン7によって出力軸3に相対回動不能に結合されている。結合ピン7は、出力軸3の出力側の出力軸孔8と、トーションバー5の出力側のトーションバー孔17とに遊びなしに挿嵌されている。したがって、入力軸2は、トーションバー5を介して出力軸3に結合されている。トーションバー5はねじれ弾性を有しているので、出力軸3に対して相対的な入力軸2のねじれ運動が可能となる。
【0028】
しかしながら、入力軸2は、出力軸3に対して相対的に過度にねじれ可能でないことが望ましい。特にトーションバー5が損傷させられた場合に、入力軸2から出力軸3に相変わらずトルクを伝達することができることが確保されていることが望ましい。このことは、安全ピン6によって保証される。この安全ピン6は、出力軸3の空所10を通して案内されている。この空所10は、安全ピン6と空所10の壁との間に、最大のねじれ角までの出力軸3に対して相対的な入力軸2のねじれを許容する遊びがあるように寸法設定されている。このことは、図4および図5から明らかである。空所10と安全ピン6とは、軸アセンブリ1のねじれ安全機構を一緒に形成している。
【0029】
図4には、軸アセンブリのねじれ安全機構18の概略的な断面図が示してある。断面は、図3に示した切断線C-Cに沿って延在している。ねじれ安全機構18は、空所10と安全ピン6とによって形成されている。空所10は、出力軸3の端部分9に存在している。安全ピン6は、空所10を通して案内されている。安全ピン6と空所10の壁との間には、空所10内での安全ピン6の運動を可能にするクリアランス19が存在している。したがって、安全ピン6が空所10の安全面20(図5)に接触する最大のねじれ角に達するまで、入力軸2を出力軸3に対して相対的にねじることが可能となる。
【0030】
図5には、軸アセンブリのねじれ安全機構18の概略的な別の断面図が示してある。断面は、図1に示した切断線B-Bに沿って延在している。安全ピン6は、入力軸2の入力側の入力軸孔14と、トーションバー5の入力側のトーションバー孔15とに遊びなしに挿嵌されている。安全ピン6は、さらに、出力軸3の空所10を通して案内されている。この空所10の安全面20と安全ピン6との間には、クリアランス19が存在している。したがって、安全ピン6が安全面20に接触するまで、入力軸2を出力軸3に対して相対的にねじることが可能となる。こうして、トーションバー5が過度にねじられることが回避され、トーションバー5がいずれ故障した場合にも、入力軸2から出力軸3へのトルクの伝達を安全ピン6を介して行うことができる。
【符号の説明】
【0031】
1 軸アセンブリ
2 入力軸
3 出力軸
4 雄ねじ山
5 トーションバー
6 安全ピン
7 結合ピン
8 出力側の出力軸孔
9 端部分
10 空所
11 収容室
12 貫通路
13 入力側の結合領域
14 入力側の入力軸孔
15 入力側のトーションバー孔
16 出力側の結合領域
17 出力側のトーションバー孔
18 ねじれ安全機構
19 クリアランス
20 安全面
図1
図2
図3
図4
図5