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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】蓄電池システム
(51)【国際特許分類】
   H04W 84/10 20090101AFI20240624BHJP
   H04W 8/00 20090101ALI20240624BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
H04W84/10 110
H04W8/00 110
H02J7/00 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023506641
(86)(22)【出願日】2021-03-18
(86)【国際出願番号】 JP2021011193
(87)【国際公開番号】W WO2022195820
(87)【国際公開日】2022-09-22
【審査請求日】2023-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉川 知秀
(72)【発明者】
【氏名】黒田 和人
(72)【発明者】
【氏名】菊地 祐介
(72)【発明者】
【氏名】淺見 康太
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 伸
【審査官】岡本 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-38213(JP,A)
【文献】特開2016-46887(JP,A)
【文献】特開2019-28822(JP,A)
【文献】特開2006-67160(JP,A)
【文献】特開2008-3773(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルを含む組電池と、BLE規格に基づいて電波を送受信する第1無線通信モジュールと、前記第1無線通信モジュールの動作を制御する電池監視ユニットと、を各々備えた複数の蓄電池モジュールと、
BLE規格に基づいて電波を送受信する複数の第2無線通信モジュールと、複数の前記第2無線通信モジュールの動作を制御する演算処理装置と、を備えた電池管理ユニットと、を備え、
前記第1無線通信モジュールには予め第1識別子が設定され、
前記第2無線通信モジュールと前記第1無線通信モジュールとの間でコネクションを開始する際に、前記第2無線通信モジュールから送信されたアドバタイズパケットに含まれる第2識別子の値が前記第1識別子の値である前記第1無線通信モジュールがブロードキャスターとなり、アドバタイズパケットを送信するように構成されている、蓄電池システム。
【請求項2】
前記第1無線通信モジュールは、所定の値の前記第2識別子を含むアドバタイズパケットを受信したときに、前記第1識別子の値に関わらずブロードキャスターとなるように構成され、
前記第2無線通信モジュールは、前記所定の値の前記第2識別子を含むアドバタイズパケットを送信した後に受信したアドバタイズパケットにより通信相手である前記第1無線通信モジュールを特定し、特定された前記第1無線通信モジュールに対して前記第1識別子の変更を要求する信号を送信するように構成されている、請求項1記載の蓄電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、蓄電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の蓄電池モジュールを組み合わせた蓄電池システムは、様々な用途で利用されている。例えば多数の蓄電池モジュールを備えた蓄電池システムにおいて、蓄電池モジュールと管理装置との間で有線通信を行うと、通信線の配線のための人件費が必要となるとともに、配線途絶のリスクも生じる。また、蓄電池モジュール数に応じて通信線の配線が必要となり、蓄電池システムの構成が複雑になる可能性がある。このため、近年、蓄電池システムの構成の簡素化等を目的に、蓄電池モジュールと管理装置との間の通信を電波により無線化する検討がされている。
【0003】
蓄電池モジュールは、電池の電圧と温度とを測定する監視回路および通信モジュールを備えている。蓄電池モジュールが有線により接続されないときには、監視回路と通信モジュールとは、蓄電池モジュールに搭載された電池から電源を得ることとなる。電池に蓄えられたエネルギーは効率よく負荷へ供給されることが好ましいため、監視回路や通信モジュールでのエネルギー消費を低く抑えることが要求される。
【0004】
消費電力を低く抑えた無線通信の規格として、例えば、Bluetooth(登録商標) low energy(BLE)が知られている。BLEでは、2.400GHz~2.480GHzの帯域を40のチャネル(ch)に分割して通信する。40chに含まれる3chは、アドバタイジングチャネルとして、通信相手の発見・ネットワーク参加制御の用途やブロードキャストに用いられる。残りの37chは、データチャンネルとして、コネクション後のデータ通信に用いられる。
【0005】
想定するBLEを用いた蓄電池システムでは、はじめに無線通信のマスターとなる電池管理装置が、アドバタイズチャンネルを使用して通信相手としてスレーブである蓄電池モジュールを発見し、コネクションを完了する。コネクションが完了したらマスター・スレーブ間で通信を開始する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】日本国特開2019-75742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
BLEを用いた蓄電池システムでは、通信モジュールは、はじめにアドバタイズチャンネルを使用して通信相手を発見し、コネクションを完了する。コネクションが完了したらマスター・スレーブ間で通信を開始する。BLEの規格ではアドバタイジングパケットを調整する仕様は無く、例えば数百台の蓄電池モジュールで構成される大規模な蓄電池システムでは、各々の蓄電池モジュールがランダムなタイミングで送信を試みるため、多数のアドバタイジングパケットが3チャネルに集中して高確率で衝突が発生し、コネクションに複数回失敗することが予想される。そのため、全ての監視回路と管理装置との間での通信が確立されるまで蓄電池システムを稼働させることができず、蓄電池システムが稼働するまでに長時間要する可能性があった。
【0008】
またBLE規格では1台のマスターデバイスに接続するスレーブデバイスの台数は実使用上の制限はされていないが、BLE SoC(System on Chip)に接続台数制限が存在する場合がある。そこで、例えば大規模な蓄電池システムのように多数のスレーブ管理が求められるシステムではマスターデバイスを複数個搭載したマルチマスター構成が必要となる。
【0009】
本発明の実施形態は上記事情を鑑みて成されたものであって、起動時やメンテナンス時における待機時間を短縮する蓄電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施形態による蓄電池システムは、複数の電池セルを含む組電池と、BLE規格に基づいて電波を送受信する複数の第1無線通信モジュールと、複数の前記第1無線通信モジュールの動作を制御する電池監視ユニットと、を備えた蓄電池モジュールと、BLE規格に基づいて電波を送受信する複数の第2無線通信モジュールと、複数の前記第2無線通信モジュールの動作を制御する演算処理装置と、を備えた電池管理ユニットと、を備え、前記第1無線通信モジュールには予め第1識別子が設定され、前記第2無線通信モジュールと前記第1無線通信モジュールとの間でコネクションを開始する際に、前記第2無線通信モジュールから送信されたアドバタイズパケットに含まれる第2識別子の値が前記第1識別子の値である前記第1無線通信モジュールがブロードキャスターとなり、アドバタイズパケットを送信するように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、一実施形態の蓄電池システムの構成例を概略的に示す図である。
図2図2は、一実施形態の蓄電池システムにおいて、電池管理ユニットと蓄電池モジュールとがコネクションを確立する際の動作の一例について説明するための図である。
図3図3は、一実施形態の蓄電池システムにおいて、電池管理ユニットと蓄電池モジュールとの間でコネクションを確立する動作の一例を説明するフローチャートである。
図4図4は、一実施形態の蓄電池システムにおいて、蓄電池モジュールの無線通信モジュールのグループを変更する動作の一例について説明するための図である。
図5図5は、一実施形態の蓄電池システムにおいて、蓄電池モジュールの無線通信モジュールのグループを変更する動作の一例を説明するフローチャートである。
【実施形態】
【0012】
以下に、実施形態の蓄電池システムについて図面を参照して詳細に説明する。
図1は、一実施形態の蓄電池システムの構成例を概略的に示す図である。
本実施形態の蓄電池システムは、複数の蓄電池モジュールMDL1-MDLnと、電池管理ユニット(BMU:Battery Management Unit)BMUと、第1コンタクタCPと、第2コンタクタCMと、を備えている。なお、蓄電池システムは、電池管理ユニットBMUを複数台備えていてもよい。
【0013】
蓄電池モジュールMDL1-MDLnの各々は、複数の電池セルを含む組電池BTと、電池監視ユニット(CMU:Cell Monitoring Unit)C2と、無線通信モジュール(第1無線通信モジュール)20と、を備えている。
【0014】
蓄電池モジュールMDL1は最も高電位側に配置され、蓄電池モジュールMDLnは最も低電位側に配置されている。複数の蓄電池モジュールMDL1-MDLnは、例えば複数の組電池BTが直列になるように電気的に接続されている。
組電池BTは、例えば、直列又は並列に接続されたリチウムイオン電池の電池セルを複数備えている。
【0015】
無線通信モジュール20は、例えば後述する演算処理装置C22により動作を制御され、電池管理ユニットBMUとの間で電波による通信(送受信)を行うことができる。本実施形態の蓄電池システムでは、無線通信モジュール20は、BLE規格に基づいて、電池管理ユニットBMUに備えられた複数台の無線通信モジュール(第1マスター10および第2マスター11を含む)のうちの一つとの間で通信を行うことができる。
【0016】
無線通信モジュール20には予め識別子(第1識別子)が付与されている。複数の無線通信モジュール20は、付与された識別子によりグループ化されている。無線通信モジュール20は、例えば、電池管理ユニットBMUから識別子(第2識別子)を含むアドバタイズパケットが送信されたとき、受信した識別子に応じた動作を行う。例えば、アドバタイズパケットに含まれる識別子(第2識別子)の値と、自身に設定された識別子(第1識別子)の値とが同じであるときに、無線通信モジュール20はオブザーバーからブロードキャスターとなる。
【0017】
また、例えば、アドバタイズパケットに所定の値(例えば「0」)の識別子が含まれているとき、全ての無線通信モジュール20がオブザーバーからブロードキャスターとなるように設定されてもよい。この場合、アドバタイズパケットに含まれる識別子の値は、複数の無線通信モジュール20をグループ化するために使用される値と異なる値であることが望ましい。
【0018】
電池監視ユニットC2は、複数の電池セルそれぞれの電圧と、組電池BTの少なくとも1か所の温度とを検出する測定回路C21と、演算処理装置C22とを備え、無線通信モジュール20を介して周期的に電池管理ユニットBMUへ電圧と温度との測定値を送信することができる。
【0019】
また、演算処理装置C22は、無線通信モジュール20を介して電池管理ユニットBMUから受信した制御信号に基づいて、無線通信モジュール20の動作を制御する。また、演算処理装置C22は、無線通信モジュール20を介して電池管理ユニットBMUから受信した制御信号に基づいて、複数の電池セルの電圧の均等化(セルバランス)を行う。
【0020】
演算処理装置C22は、例えばハードウエアにより構成されてもよく、ソフトウエアにより構成されてもよく、ハードウエアとソフトウエアとを組み合わせて構成されてもよい。演算処理装置C22は、例えば、CPUやMPUなどのプロセッサを少なくとも1つと、プロセッサにより実行されるプログラムが記録されたメモリと、を備え、ソフトウエアにより蓄電池モジュールMDL1-MDLnの種々動の機能を実現する回路である。
【0021】
第1コンタクタCPは、蓄電池モジュールMDL1の高電位側の端子と蓄電池システムの正極端子との間を接続する主回路に介在し、複数の蓄電池モジュールMDL1-MDLnと正極端子との電気的接続を切替えることができる。第1コンタクタCPは、電池管理ユニットBMUからの制御信号により、接点を開閉する動作を制御される。
【0022】
第2コンタクタCNは、蓄電池モジュールMDLnの低電位側の端子と蓄電池システムの負極端子との間を接続する主回路に介在し、複数の蓄電池モジュールMDL1-MDLnと負極端子との電気的接続を切替えることができる。第2コンタクタCNは、電池管理ユニットBMUからの制御信号により、接点を開閉する動作を制御される。
【0023】
電池管理ユニットBMUは、複数の第2無線通信モジュール(第1マスター10および第2マスター11を含む)と、演算処理装置C1と、を備えている。
【0024】
演算処理装置C1は、例えば上位装置(図示せず)との間で有線通信を行うことが可能な通信回路(図示せず)を備えている。演算処理装置C1は、上位装置から各種制御信号を受信し、受信した情報に基づいて複数の電池監視ユニットC2、第1コンタクタCP、および、第2コンタクタCMの動作を制御することが可能である。
【0025】
演算処理装置C1は、複数の電池監視ユニットC2それぞれから複数の電池セルの電圧の検出値と組電池BTの温度の検出値とを周期的に受信し、主回路に設けられた電流センサ(図示せず)から複数の組電池BTに流れる電流の検出値を周期的に受信する。電池管理ユニットBMUは、受信した値に基づいて、例えば組電池BT(又は電池セル)の充電状態(SOC:state of charge)および劣化状態(SOH:state of health)を演算することができる。
【0026】
演算処理装置C1は、複数の電池セルの電圧や複数の組電池BTに流れる電流を監視し、複数の電池セルの電圧を均等化するよう電池監視ユニットC2を制御する。電池管理ユニットBMUは、例えば、電池セルが過充電や過放電などの異常な状態とならないよう蓄電池システムの動作を制御する。
【0027】
演算処理装置C1は、ハードウエアにより構成されてもよく、ソフトウエアにより構成されてもよく、ハードウエアとソフトウエアとの組み合わせにより構成されてもよい。演算処理装置C1は、例えば、プロセッサを少なくとも1つと、プロセッサにより実行されるプログラムを記録したメモリと、を備えていてもよい。
【0028】
第2無線通信モジュール10、11は、演算処理装置C1により動作を制御され、複数の電池監視ユニットC2の無線通信モジュール20との間で、電波による通信(送受信)を行う。本実施形態の蓄電池システムでは、第2無線通信モジュール10、11は、BLE規格に基づいて複数の電池監視ユニットC2の無線通信モジュール20との間で通信を行う。
【0029】
次に、本実施形態の蓄電池システムにおいて、電池管理ユニットBMUと複数の蓄電池モジュールMDL1-MDLnとの間で通信を行う動作の一例について説明する。
図2は、一実施形態の蓄電池システムにおいて、電池管理ユニットと蓄電池モジュールとがコネクションを確立する際の動作の一例について説明するための図である。
図3は、一実施形態の蓄電池システムにおいて、電池管理ユニットと蓄電池モジュールとの間でコネクションを確立する動作の一例を説明するフローチャートである。
【0030】
ここでは、電池管理ユニットBMUの第2無線通信モジュール10、11がマスターであり、蓄電池モジュールMDL1-MDLnの無線通信モジュール20がスレーブとなる。なお、以下の説明では、電池管理ユニットBMUは、第1マスター10と、第2マスター11との2つの無線通信モジュールマスターを備えているものとして説明する。
【0031】
電池管理ユニットBMUと蓄電池モジュールMDL1-MDLnとの間でコネクションを開始するときには、第2無線通信モジュール10、11はブロードキャスターであり、無線通信モジュール20はオブザーバーである。
【0032】
なお、無線通信モジュール(スレーブ)20は、特定のマスター装置からのアドバタイズパケットのみに反応するように、予め(例えば出荷時等)、識別子が設定されている。本実施形態では、無線通信モジュール20に、例えば「1」と「2」とのいずれか一方の識別子が設定され、識別子により複数の無線通信モジュール20が2つにグループ化されている。
【0033】
本実施形態では、蓄電池モジュールMDL1、MDL3…MDLnの無線通信モジュール20には予め識別子「1」が設定され、以下では第1グループのスレーブとする。蓄電池モジュールMDL2、MDL4…MDL(n-1)の無線通信モジュール20には予め識別子「2」が設定され、以下では第2グループのスレーブとする。
【0034】
例えば電池管理ユニットBMUの演算処理装置C1が第1マスター10にコネクション要求を送信するよう指令を出力すると(ステップSA1)、第1マスター10は、識別子「1」を含むアドバタイズパケットを送信し、オブザーバーとなる(ステップSA2)。
【0035】
第1グループのスレーブは、識別子「1」を含むアドバタイズパケットを受信すると、オブザーバーからブロードキャスターとなり、アドバタイズパケットを所定のインターバル毎に3チャンネルのアドバタイズチャンネルに送信する(ステップSA3)。このとき、第2グループのスレーブは、識別子「1」を含むアドバタイズパケットには応じず、オブザーバーの状態が維持される。
【0036】
電池管理ユニットBMUの第1マスター10は、第1グループのスレーブから送信されたアドバタイズパケットを順次受信し、アドバタイズパケットにより通信相手を特定し、コネクションを完了する(ステップSA4)。第1マスター10は、例えば、第1グループに含まれる全てのスレーブからアドバタイズパケットを受信したことによりコネクション完了することができる。
【0037】
第1マスター10は、第1グループのスレーブとのコネクションが完了したことを演算処理装置C1へ通知する(ステップSA5)。
演算処理装置C1は、第1マスター10から通知を受けると、第2マスター11にコネクション要求を実行するよう指令を出力する(ステップSA6)。第2マスター11は、識別子「2」を含むアドバタイズパケットを送信し、オブザーバーとなる(ステップSA7)。
【0038】
第2グループのスレーブは、識別子「2」を含むアドバタイズパケットを受信すると、オブザーバーからブロードキャスターとなり、アドバタイズパケットを所定のインターバル毎に3チャンネルのアドバタイズチャンネルに送信する(ステップSA8)。このとき、第1グループのスレーブは、識別子「1」を含むアドバタイズパケットには応じず、オブザーバーの状態が維持される。
【0039】
第2マスター11は、第2グループのスレーブから送信されたアドバタイズパケットを順次受信し、アドバタイズパケットにより通信相手を特定してコネクションを完了する(ステップSA9)。第2マスター11は、例えば、第2グループに含まれる全てのスレーブからアドバタイズパケットを受信したことによりコネクション完了することができる。
第2マスター11は、第2グループのスレーブとのコネクションが完了したことを演算処理装置C1へ通知する(ステップSA10)。
【0040】
上記のように、複数の無線通信モジュール20がグループ単位でアドバタイズパケットを送信することで、一度に送信されるアドバタイズパケットの数を減らすことができ、アドバタイズパケット同士の衝突確率を低減し、コネクションの成功確率を向上させることができる。また、第2無線通信モジュール10、11の各々がコネクション要求をする際のアドバタイズパケットと無線通信モジュール20のアドバタイズパケットとの衝突確率も低減させることができ、コネクションの成功確率を向上させることができる。
【0041】
これにより、蓄電池システムにおいて電池管理ユニットBMUと蓄電池モジュールMDL1-MDLnとの間でコネクションが確立されるまでの時間を短縮することができる。
【0042】
次に、本実施形態の蓄電池システムにおいて、蓄電池モジュールの無線通信モジュールのグループを変更する動作の一例について説明する。
図4は、一実施形態の蓄電池システムにおいて、蓄電池モジュールの無線通信モジュールのグループを変更する動作の一例について説明するための図である。
図5は、一実施形態の蓄電池システムにおいて、蓄電池モジュールの無線通信モジュールのグループを変更する動作の一例を説明するフローチャートである。
【0043】
ここでは、例えば遮蔽箱に収容された蓄電池システムにおいて、蓄電池モジュール(スレーブ)MDL1、MDL2、MDL3、MDL5、MDL6、MDL7の無線通信モジュール20に付されている識別子(「1」又は「2」)を識別子「3」に変更する動作の一例について説明する。
【0044】
複数の無線通信モジュール20に設定されたグループを変更するときには、蓄電池モジュールMDL1-MDLnの中からグループを変更しない無線通信モジュール20を含むモジュールを電池盤から取り出し、遮蔽箱の外に出す(ステップSB1)。図4に示す例では、例えば、蓄電池モジュールMDL1、MDL2、MDL3、MDL5、MDL6、MDL7が遮蔽箱内に配置され、蓄電池モジュールMDL4、MDL8が遮蔽箱の外に配置される。
【0045】
遮蔽箱は、箱の内側と外側とで無線通信の電波を遮ることができる材質(例えば金属)により形成されている。従って、遮蔽箱に収容された電池管理ユニットBMUの第1マスター10および第2マスター11が送信したパケットは、遮蔽箱の外にある無線通信モジュール20には届かない。ここでは、第1マスター10から送信されるパケットにより、蓄電池モジュールMDL1、MDL2、MDL3、MDL5、MDL6、MDL7のグループを変更する動作の一例について説明する。なお、遮蔽箱は、グループを変更する無線通信モジュール20とグループを変更しない無線通信モジュール20との間で電波を遮蔽することが可能な構成であればよく、箱状の形状である必要はない。例えば、電波を遮蔽可能なシートや壁を遮蔽箱に代えて用いても構わない。
【0046】
続いて、第1マスター10と、遮蔽箱内の蓄電池モジュールMDL1、MDL2、MDL3、MDL5、MDL6、MDL7の無線通信モジュール(スレーブ)との間で以下の(1)-(3)を行う。
(1)第1マスター10は、所定の値の識別子を含むアドバタイズパケットを送信する(ステップSB2)。本実施形態では、所定の値の識別子を「0」としている。識別子「0」(所定の値の識別子)を含むアドバタイズパケットを受信した無線通信モジュール20は、予め付された識別子の値に関わらず、ブロードキャスターとなる。
【0047】
識別子「0」を含むアドバタイズパケットは、遮蔽箱内のスレーブのみが受信する。遮蔽箱内のスレーブが識別子「0」を含むアドバタイズパケットを受信するとブロードキャスターとなる。
【0048】
(2)続いて、遮蔽箱内のスレーブが、アドバタイズパケットを所定のインターバル毎に3チャンネルのアドバタイズチャンネルに送信する(ステップSB3)。
第1マスター10は、遮蔽箱内のスレーブから送信されたアドバタイズパケットを順次受信し、アドバタイズパケットにより通信相手を特定する。
【0049】
(3)続いて、第1マスター10は、特定したスレーブに対して、現在設定されている識別子を「3」に変更するグループ変更信号を送信し、遮蔽箱内のスレーブに設定された識別子を「3」に変更する(ステップSB4)。この後、第1マスター10は、演算処理装置C1にグループ変更が完了したことを通知してもよい。
【0050】
グループ変更を行った後、遮蔽箱の外に出した蓄電池モジュールMDL4、MDL8を遮蔽箱内に収容し(ステップSB5)、電池管理ユニットBMUと蓄電池モジュールMDL1-MDL8により電池盤を構成することにより、蓄電池システムを運用することが可能となる。
【0051】
上記によれば、例えば、大規模な蓄電池システムにおいて、蓄電池モジュールMDL1-MDLnに予め設定された識別子の変更が必要となったとき、複数の無線通信モジュール20の識別子をまとめて変更することが可能となる。したがって、例えば、蓄電池システムに何らかの不具合や運用上のトラブルが発生したときに、一部の無線通信モジュール20のグループを切り替えることにより、蓄電池システムを長時間停止させることなく、円滑に運用を継続させることが可能となる。
すなわち、本実施形態によれば、起動時やメンテナンス時における待機時間を短縮する蓄電池システムを提供することができる。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
図1
図2
図3
図4
図5