(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】放射線硬化コーティングの表面特性の向上
(51)【国際特許分類】
C09D 201/02 20060101AFI20240624BHJP
C08G 77/46 20060101ALI20240624BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20240624BHJP
C09D 4/02 20060101ALI20240624BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20240624BHJP
C09D 183/04 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
C09D201/02
C08G77/46
C08F290/06
C09D4/02
C09D7/65
C09D183/04
(21)【出願番号】P 2023514447
(86)(22)【出願日】2021-08-30
(86)【国際出願番号】 EP2021073880
(87)【国際公開番号】W WO2022049031
(87)【国際公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-04-28
(32)【優先日】2020-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596089399
【氏名又は名称】ビック-ケミー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】マルク エーベルハルト
(72)【発明者】
【氏名】ギヨーム ヤウンキー
【審査官】橋本 栄和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/181650(WO,A1)
【文献】特開2019-014892(JP,A)
【文献】特開平05-132557(JP,A)
【文献】特開2020-090580(JP,A)
【文献】国際公開第2019/020542(WO,A1)
【文献】米国特許第04348454(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 201/02
C08G 77/46
C08F 290/06
C09D 4/02
C09D 7/65
C09D 183/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線硬化コーティングの表面特性を改善する方法であって、
前記改善された表面特性が、テープ剥離特性を含み、
放射線硬化性コーティング組成物に、前記放射線硬化性コーティング組成物の合計重量に基づいて0.1~10.0重量%の、ポリシロキサン骨格及びこのポリシロキサン骨格にリンカー基を介して接続している少なくとも2つのメタクリロイル基を有するポリマー(A)を添加すること、
を含み、
前記リンカー基は、少なくとも1つの非環状エーテル基を有し、
前記ポリシロキサン骨格は、Si-C結合を介して前記リンカー基に接続しており、
ポリマー(A)を、
(i)少なくとも2つのSi-H基を有するポリシロキサン骨格を提供すること、
(ii)少なくとも1つのメタクリロイル基、1つのアリル基、及び、前記アリル基と前記少なくとも1つのメタクリロイル基との間に位置する少なくとも1つの非環状エーテル基を有する分子を提供すること、並びに、
(iii)ヒドロシリル化反応を介して前記Si-H基と前記アリル基とを反応させることによって、前記ポリシロキサン骨格(i)と前記分子(ii)との間で共有結合を形成すること
を含むプロセスによって調製する、
方法。
【請求項2】
前記放射線硬化性コーティング組成物を基材に適用すること、及び、前記組成物を活性放射線に曝露することによって硬化すること、をさらに含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記放射線硬化性コーティング組成物が、さらに、前記ポリマー(A)とは異なる放射線硬化性バインダをさらに含む、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項4】
ポリマー(A)中の前記リンカー基が、互いに独立に、1~100の非環状エーテル基を有する、請求項1~
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記非環状エーテル基が、ポリアルキレンオキシド基である、請求項
4に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリアルキレンオキシド基が、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、及びエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのコポリマーのうちの少なくとも1つを含む、請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの非環状エーテル基が、グリシドール又はトリメチロールプロパンオキセタンの重合単位を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ポリマー(A)の前記ポリシロキサン骨格が、式(I)-[O-SiR
2]-の繰り返し単位を含み、Rは、互いに独立に、炭素原子1~30を有するヒドロカルビル基を表す、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリシロキサン骨格が、2~300の式(I)の繰り返し単位を有する、請求項
6に記載の方法。
【請求項10】
工程(i)で提供される前記ポリシロキサン骨格が、2つの末端Si-H基を有するポリジメチルシロキサンである、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程(i)で提供される前記ポリシロキサン骨格が、少なくとも2つの側方Si-H基を有するポリジメチルシロキサンである、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
工程(ii)で提供される、少なくとも1つのメタクリロイル基、1つのアリル基、及び、前記アリル基と前記少なくとも1つのメタクリロイル基との間に位置する少なくとも1つの非環状エーテル基を有する前記分子が、アリルオキシポリエチレングリコールメタクリレートである、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記放射線硬化性コーティング組成物に、ポリシロキサン骨格及びこのポリシロキサン骨格にリンカー基を介して接続している1つのメタクリロイル基を有するポリマーを添加すること
をさらに含み、
前記リンカー基が、少なくとも1つの非環状エーテル基を含み、前記ポリシロキサン骨格が、Si-C結合を介して前記リンカー基に接続しており、
前記ポリシロキサン骨格が、側方又は末端の、少なくとも25mol%ポリプロピレンオキシドを含むポリアルキレンオキシド部分をさらに有する、
請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記放射線硬化性組成物に、ポリシロキサン骨格及びこのポリシロキサン骨格にSi-C結合を介して接続している少なくとも25mol%のポリプロピレンオキシドを含む少なくとも2つのポリアルキレンオキシド部分を有するポリマーを添加することをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線硬化コーティングの表面特性を向上させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線硬化では、反応性のモノマー及びオリゴマーが、高エネルギー放射線によって、例えば紫外線又は電子ビームによって、高分子量材料へと変換される。放射線硬化は、加熱処理と比較して非常に速いプロセスであり、高い製造速度を可能にする。さらに、迅速な硬化は、省空間かつ省材料の操作を可能にする。放射線硬化は、環境の観点で明確な利点を提供し、例えば、低い排出及び低いエネルギー要求を提供する。放射線硬化は、例えば、コーティング材料、塗料、プリントインクなどの製造のために用いられる。これらのコーティングは、多くの場合に、比較的良好な品質によって特徴づけられ、特には光沢及び摩耗耐性の観点で比較的良好な品質によって特徴づけられる。
【0003】
この技術の急速な普及に起因して、放射線硬化性組成物のための要件が着実に増加しており、ますます広範囲になっている。硬化性組成物中におけるシリコーン添加剤の使用は、向上した特性を有する硬化製品を得るための方法であり、例えば、とりわけ、種々の工業材料において、いわゆる洗浄容易性を有する防汚コーティング、撥水性及び撥油性、並びにテープ剥離特性を有する硬化製品を得るための方法である。上記した利点に起因して、放射線硬化性コーティング組成物は、ますます重要になってきている。
【0004】
大部分の放射線硬化性組成物は、(メタ)アクリレート基を用いて、フリーラジカル反応で重合される。したがって、添加剤を(メタ)アクリレート基で修飾することは、適切なアプローチである。
【0005】
好ましくは、アクリレート基を、放射線硬化性システムで用いる。アクリレート基は、Si-O-C結合又はSi-C結合によって、ポリシロキサンの骨格に結合されてよい。
【0006】
DE3841843は、アクリレート化されたポリシロキサンを記載しており、これは、種々の縮合反応によって製造され、Si-O-C結合をもたらし、これは、特に水媒介系において不安定であり、したがって、不安定な製品を生じる。さらには、クロロポリシロキサンと、ヒドロキシ官能性アクリレート、例えばヒドロキシエチルアクリレート、との反応は、塩酸を放出し、これは、アンモニアで中和される必要があり、時間のかかるフィルター処理プロセスによって最終的に除去される必要がある。
【0007】
DE3820294は、アクリレート化されたポリシロキサンを記載しており、これは、ヒドロシリル化及びそれに続くポリマー類似反応を伴う複数ステップの反応によって製造されうる。ヒドロシリル化は、不飽和化合物の添加、例えばアリルグリシジルエーテルの添加によって達成され、得られたエポキシ官能性ポリシロキサンとアクリル酸との後続の反応によって、アクリレート化分子が製造される。この2ステップ法は、放射線硬化性組成物における適合性に関して重要な有機修飾(例えばポリエーテル)をアクリル官能基とともに導入することを可能にしない。
【0008】
DE3819140及びUS6211322は、2ステッププロセスを記載しており、第1ステップにおいて、ヒドロキシル官能性アリル化合物をSi-H官能性ポリシロキサンと反応させて、ヒドロキシル基含有ポリエーテル修飾ポリシロキサンを生じさせる。第2ステップにおいて、ヒドロキシル基をアクリレート化する。通常、高度に着色された産物が得られ、これは、金属触媒の使用、重合防止剤、及び、高いアクリル化の程度を達成するための高温での蒸留による過剰な反応産物、典型的にはアクリル酸又はブチルアクリレート、の除去に起因する。
【0009】
US2009/0234089は、眼用レンズのためのモノマーを記載しており、これは、比較的安全に装着できる。より特には、この文献は、親水性側鎖としてのポリオキシエチレンを含有する親水性のポリシロキサンマクロモノマーに関する。
【0010】
Kim H.K.らの「Determination of key variables affecting surface properties of UV curable coatings using experimental design(実験設計を用いたUV硬化性コーティングの表面特性に影響する重要変数の決定)」、Polymer Testing、Vol.21、No.4、2002年1月、pp.417-424、は、シリコーンアクリレートを含有するUV硬化性コーティングを記載している。表面摩耗抵抗性、スリップ性、及びレベリング作用が、シリコーンアクリレートに帰属されている。
【0011】
Kim H.K.らの「Characterization of UV-cured polyester acrylate films containing acrylate functional polydimethylsiloxane(アクリレート官能性ポリジメチルシロキサンを含有するUV硬化ポリエステルアクリレートフィルムの特性評価)」、European Polymer Journal、Vol.39、No.11、2003年11月、pp.2235~2241、は、UV硬化性コーティング配合物における反応性添加剤としてのアクリレート官能性ポリジメチルシロキサンの試験を記載している。低摩擦係数が、シリコーンアクリレートと関連付けられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
現在、放射線硬化コーティングの表面特性を向上させる方法のための要求が存在する。この方法は、明確に規定された構造を有する放射線硬化性ポリシロキサンを用いる必要があり、多数の放射線硬化性官能基にわたる制御が必要である。得られる製品は、さらなる精製/フィルター処理の工程、又は反応性希釈剤中での希釈工程を必要とすべきではない。これらは、特にはクリアコーティングで用いられる場合に、低着色である必要があり、かつ利用可能であり放射線硬化性組成物中における100%作用物質として用いられる準備ができている必要があり、それによって、配合者に、より高い柔軟性がもたらされる。
【0013】
この方法は、ヘイズ及び/又は表面欠陥を生じるべきではなく、放射線硬化コーティングにおける優れた表面特性を有している。さらには、向上した表面スリップ特性、長期間にわたるテープ剥離特性及び傷耐性、並びに、撥水性及び撥油性、並びに、すべてのタイプの硬化製品の向上した防汚性が所望される。さらには、複数の放射線硬化性基を有する低着色の多官能性添加剤を提供する簡便な方法によって、100%作用物質としての添加剤を製造する必要がある。本発明の目的は、向上した表面特性及びテープ剥離特性を有する放射線硬化コーティングを提供する方法を提供することである。これは、レベリング性及び低減された濁度の間の、かつ他の有利な特性との間の、例えば優れた滑り性及び長期間にわたるテープ剥離特性との間の極めて優れたバランスとして理解されるべきである。本発明のさらなる目的は、有利な特性、例えば良好な濡れ性、低いクレーター形成性、非常に優れたレベリング性、及び低いヘイズ、を保持することであった。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、放射線硬化コーティングの表面特性を向上させる方法を提供し、これは、放射線硬化コーティング組成物に、この放射線硬化コーティングの合計重量に基づいて、0.1~10.0重量%の、ポリシロキサン骨格とこのポリシロキサン骨格にリンカー基を介して接続している少なくとも2つのメタクリロイル基とを有するポリマー(A)を添加することを含み、リンカー基が、少なくとも1つの非環状エーテル基を含み、ポリシロキサン骨格が、リンカー基に、Si-C結合を介して接続しており、ポリマー(A)を、下記を含む方法によって調製する:
(i)少なくとも2つのSi-H基を有するポリシロキサン骨格を提供すること、
(ii)少なくとも1つのメタクリロイル基、1つのアリル基、及び、アリル基と少なくとも1つのメタクリロイル基との間に位置している少なくとも1つの非環状エーテル基を有する分子を提供すること、
(iii)ヒドロシリル化反応を介してSi-H基をアリル基と反応させることによって、このポリシロキサン骨格(i)とこの分子(ii)との間で共有結合を形成すること。
【0015】
本発明の方法は、上記の目的を満たす。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本方法の典型的な実施態様では、向上した表面特性が、表面スリップ性、撥水性、汚れ除去特性、汚れ接着への耐性、及びテープ剥離特性のうちの少なくとも1つを含む。
【0017】
一般的には、放射線硬化性コーティング組成物は、基材に適用され、活性放射線に曝露されることによって硬化される。したがって、本発明の方法は、典型的には、さらに、放射線硬化性コーティング組成物を基材に適用すること、及び、活性放射線への曝露によって組成物を硬化すること、を含む。活性放射線の例は、紫外放射線及び電子ビーム放射線である。
【0018】
本発明の方法によれば、ポリマー(A)を、コーティング組成物の重量で計算して、0.1~10.0重量%の量で、放射線硬化性コーティング組成物に添加する。好ましい実施態様では、ポリマー(A)を、0.2~5.0重量%、又は0.2~3.0重量%の量で、放射線硬化性コーティング組成物に添加する。
【0019】
典型的な実施態様では、放射線硬化性コーティング組成物が、さらに、ポリマー(A)とは異なる放射線硬化性バインダを含有する。
【0020】
放射線硬化性バインダとして、(メタ)アクリル官能性(メタ)アクリレート共重合体、ポリエーテルアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、アミノアクリレート、メラミンアクリレート、及び対応するメタクリレートが、一般に用いられる。ウレタン(メタ)アクリレート、及びポリエステル(メタ)アクリレート樹脂が、好ましくは用いられる。
【0021】
放射線硬化性バインダは、コーティング組成物の重量で計算して、好ましくは30~99重量%の量で、特に好ましくは30~90重量%の量で、非常に特に好ましくは45~80重量%の量で、用いられる。
【0022】
ポリマー(A)のリンカー基は、それぞれ独立に、1~100の非環状エーテル基を含有することが好ましい。
【0023】
非環状エーテル基は、一般に、アルキレンオキシドの重合された単位(重合単位)を含む。アルキレンオキシドは、好ましくは、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドのうちの少なくとも1つを含む。いくつかの態様では、非環状エーテル基が、グリシドール又はトリメチロールプロパンオキセタン(TMPO)の重合単位を含む。アルキレンオキシドの重合単位は、グリシドール又はTMPOと組み合わされてもよい。非環状エーテル基が1超のタイプのモノマー単位の重合された単位を有する場合には、そのようなユニットは、統計的に(ランダムに)配置されてよく、グラジエントとして配置されてよく、又はブロックで配置されてよい。
【0024】
重合されたモノマー単位の数は、一般に、1~100の範囲であり、例えば、3~50、又は3~20である。
【0025】
非環状エーテル基は、ポリアルキレンオキシド基であることが特に好ましく、ポリアルキレンオキシド基は、例えば、ポリエチレンオキシド基、ポリプロピレンオキシド基、及び、エチレンオキシド基とプロピレンオキシド基とのコポリマーである。
【0026】
一般に、ポリマー(A)のポリシロキサン骨格は、式(I)-[O-SiR2]-の繰り返し単位を有しており、Rは、互いに独立に、炭素原子数1~30を有するヒドロカルビル基を表す。好ましい実施態様では、ポリシロキサン骨格が、2~300の式(I)の繰り返しユニットを有する。
【0027】
さらに好ましい実施態様では、工程(i)で提供されるポリシロキサン骨格が、2つの末端Si-H基を有するポリジメチルシロキサンである。
【0028】
別の実施態様では、工程(i)で提供されるポリシロキサン骨格が、少なくとも2つの側方Si-H基を有するポリジメチルシロキサンである。
【0029】
少なくとも2つのSi-H基を有する適切なポリシロキサンは、下記の一般式(I)で表すことができる。
MaM´bDcD´dTeQf (I)
式中、
・Mは、[R3SiO1/2]を表し、
・M´は、[R2SiHO1/2]を表し
・Dは、[R2SiO2/2]を表し
・D´は、[RSiHO2/2]を表し
・Tは、[RSiO3/2]を表し
・Qは、[SiO4/2]を表し
・aは、0~10の整数、好ましくは0~2の整数、より好ましくは2であり、
・bは、0~10の整数、好ましくは0~2の整数、より好ましくは2であり、
・cは、0~300の整数、好ましくは2~250の整数、より特には5~200の整数であり、
・dは、0~100の整数、好ましくは0~50の整数、より特には0~20の整数であり、
・eは、0~10の整数、好ましくは0~5の整数、より特には0であり、
・fは、0~10の整数、好ましくは0~5の整数、より特には0であり、
a+b≧2かつb+d≧2であることを条件として、
・Rは、互いに独立に、C1~C30の炭化水素ラジカルを表し、好ましくは、メチル、オクチル、又はフェニル、(α-メチル)スチリル)を表し、より好ましくはメチルである。
【0030】
M、D、T及びQのユニットを用いるポリシロキサンの記載が、従来技術において一般に知られている。式(I)の化合物は、既知の平衡法によって調製できる。
【0031】
本発明の方法は、また、少なくとも1つのメタクリロイル基、1つのアリル基、及びアリル基と少なくとも1つのメタクリロイル基との間に位置する少なくとも1つの非環状エーテル基を有する分子を提供することも含む。この分子は、一般に、170~6000g/molの範囲内の数平均分子量を有する。
【0032】
この方法の好ましい実施態様では、工程(ii)で提供される、少なくとも1つのメタクリロイル基、1つのアリル基、及びアリル基と少なくとも1つのメタクリロイル基との間に位置する少なくとも1つの非環状エーテル基を有する分子が、アリルオキシポリエチレングリコールメタクリレートである。
【0033】
工程(ii)で提供される、少なくとも1つのメタクリロイル基、1つのアリル基、及びアリル基と少なくとも1つのメタクリロイル基との間に位置する少なくとも1つの非環状エーテル基を有する分子は、既知のプロセスによって調製できる。そのようなプロセスの1つは、下記を含む:
(i)下記を提供すること:
(a)1又は複数のヒドロキシ基を有するアリルポリエーテル
(b)1つのメタクリル基を有する分子
及び、
(ii)エステル(交換)反応によって、アリルポリエーテル(a)と分子(b)との間で1又は複数の共有結合を形成すること。
【0034】
ポリマー(A)は、ヒドロシリル化反応を介してSi-H基をアリル基と反応させることによって、ポリシロキサン骨格(i)と、少なくとも1つのメタクリロイル基、1つのアリル基、及びアリル基と少なくとも1つのメタクリロイル基との間に位置する少なくとも1つの非環状エーテル基を有する分子との間で共有結合を形成させることによって、調製される。そのようなヒドロシリル化反応は、WO2019/020542に記載されている。
【0035】
ポリマー(A)は、一般に、2000~100000g/molの範囲内の、好ましくは5000~60000g/molの範囲内の、より好ましくは4000~50000g/molの範囲内の、さらにより好ましくは3000~40000g/molの範囲内の、重量平均分子量(Mw)を有する。
【0036】
重量平均分子量は、分離モジュールWaters2695及び屈折率検出器Waters2414を用いて22℃で行われるゲル浸透クロマトグラフィーによって決定できる。トルエン又はTHFは適切な溶出剤であり、校正のためにポリジメチルシロキサン基準を用いる。
【0037】
随意に、ポリマー(A)は、メタクリル基を有しない追加的な構造部分を有してよい。そのような随意の部分は、それらが用いられる系(システム)との適合性、及びポリマー(A)の他の特性を調節し微調整するために含有されてよい。そのような随意の部分の例は、ポリエーテル部分であり、例えば、ポリエチレン酸化物及び/又はポリプロピレン酸化物、ポリエステル部分、炭化水素部分、フッ化炭化水素部分、及びポリウレタン部分に基づく。これらの随意の部分は、ポリシロキサン骨格に、ヒドロシリル化又は脱水素縮合によって接続されてよい。1つの実施態様では、追加的な構造部分が、同一のタイプの部分を有する。別の実施態様では、異なるタイプの部分を有する追加的な構造部分が存在してよい。
【0038】
いくつかの実施態様では、本発明の方法が、さらに、放射線硬化性コーティング組成物に、ポリシロキサン骨格及びこのポリシロキサン骨格にリンカー基を介して接続している1つのメタクリロイル基を有するポリマーを添加することを含み、リンカー基が、少なくとも1つの非環状エーテル基を有し、ポリシロキサン骨格が、Si-C結合を介してリンカー基に接続しており、かつ、ポリシロキサン骨格が、さらに、側方の又は末端の、少なくとも25mol%のポリプロピレン酸化物を有するポリアルキレンオキシド部分を有する。
【0039】
さらなる実施態様では、本方法が、放射線硬化性組成物に、ポリシロキサン骨格及びSi-C結合を介してこのポリシロキサン骨格に接続しており少なくとも25mol%のポリプロピレンオキシドを含有する少なくとも2つのポリアルキレンオキシド部分を有するポリマーを、添加することを含む。
【0040】
放射線硬化性コーティング組成物は、また、少なくとも1つの反応性希釈剤を含有してもよい。
【0041】
DIN55945に従って、反応性希釈剤又は反応性溶媒は、化学反応による硬化の際に、大部分がコーティングの一部になるすべての溶媒である。放射線硬化性反応性希釈剤の例は、ブチルアクリレート、(2-エチルヘキシル)アクリレート、ラウリルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、(2-フェノキシエチル)アクリレート、イソボルニルアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリ又はテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エチルトリグリコールメタクリレート、フルフリルメタクリレート、(2-ヒドロキシエチル)メタクリレート、(2-ヒドロキシプロピル)メタクリレート、ラウリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、アリルメタクリレート、1,3-ブタンジオールジメタクリレート、1,4-ブタジエンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、グリシジルメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチルジグリコールアクリレート、(4-tert-ブチルシクロヘキシル)アクリレート、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルピロリドン、ビニルプロピオネート、ビスフェノールAジメタクリレート、ジアノールジアクリレート、1,2-ドデカンジオールジメタクリレート、N,N-ジビニル-エチレンウレア、エチレングリコールジメタクリレート、オクタデシルジアクリレート、ポリエチレングリコール n-ジメタクリレート、ジヒドロジシクロペンタジエニルアクリレート、エチルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、1,4-ブタンジオールモノビニルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールノノビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、及び、トリエチレングリコールジビニルエーテル。
【0042】
反応性二重結合に加えて1又は複数の他の反応性基を有する反応性希釈剤を用いることも可能である。そのような反応性希釈剤の例としては、アリルグリシジルエーテル、(2-ヒドロキシエチル)アクリレート、(2-ヒドロキシプロピル)アクリレート、(2-ヒドロキシエチル)アクリレートホスフェート、(2-ヒドロキシエチル)メタクリレートホスフェート、及び[2-(三級ブチルアミノ)エチル]メタクリレートが挙げられる。
【0043】
放射線硬化性の反応性希釈剤は、一般に、コーティング組成物の重量に基づいて計算して、0~65重量%、好ましくは20~62重量%、特に好ましくは35~60重量%、非常に特に好ましくは40~55重量%の重量で、用いられる。
【0044】
放射線硬化性コーティング組成物は、随意に、有機又は無機の非放射線硬化性溶媒を含有する。この無機溶媒としては、例えば、水を用いてよい。有機溶媒の使用が好ましい。適切な有機溶媒は、当業者に知られている典型的な有機溶媒であり、例えば、脂肪族、脂環式、芳香族の溶媒であり、典型的なアルコール類、エーテル類、エステル類、及び/又はケトン類であり、例えば、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ブチルグリコール、ブチルジグリコール、ブチルアセテート、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、キシレン、トルエン、Shellsol A、Solvesso製品である。
【0045】
放射線硬化性コーティング組成物は、さらに、1又は複数の光開始剤を含入してよい。
【0046】
光開始剤としては、放射線硬化性システム中の添加剤が言及され、これは、紫外又は可視の放射線の吸収に起因して反応性中間体を形成し、これが、重合反応を開始させうる。
【0047】
適切な光開始剤の例としては、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニル-エタノン、(1-ヒドロキシシクロヘキシル)フェニルメタノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン、2-ヒドロキシ-1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-メチル-1-プロパノン、2-ベンジル 2-ジメチルアミノ-1 - (4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-1-プロパノン、α、α-ジエトキシアセトフェノン、ジフェニル-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-(2,4,4-トリメチルペンチル)フォスフィンオキシド、1-フェニルー1,2-プロパンジオン-2-[0-(エトキシカルボニル)-オキシム]、ビス(n5-シクロペンタジエニル)ビス[2,6-ジフルオロ-3-(1H-1-ピロール‐1-イル)-フェニル]チタニウム、2-イソプロピルチオキサントン、1,2-ジフェニル-2-(p-トリルスルフォニロキシ)エタノン、が挙げられる。
【0048】
1又は複数の光開始剤が含まれる場合には、それらは、一般に、コーティング組成物の重量に基づいて計算して、0.5~5.0重量%の合計量で用いられ、好ましくは1.0~4.5重量%、非常に特に好ましくは2.0~4重量%の合計量で用いられる。
【0049】
放射線硬化性コーティング組成物は、さらに、少なくとも1つのUV吸収剤を含有しうる。用語UV吸収剤は、290~400nmの範囲内のUV光の有害な影響に対する保護のために塗料又はプラスチックに添加される光安定剤の一種を意味することが理解される。最も重要なUV吸収剤の種類は、2-(2-ヒドロキシフェニル)2H-ベンゾトリアゾール、(2-ヒドロキシフェニル)-s-トリアジン、ヒドロベンゾフェノン、及びオキサルアニリドである。
【0050】
さらに、放射線硬化性コーティング組成物は、顔料又はフィラーを含有してよい。そのような顔料又はフィラーの選択は、個々の場合の要件に応じて当業者によって選択できる。
【0051】
放射線硬化性コーティング組成物は、さらに、脱気剤、消泡剤、乳化剤、湿潤剤、及び分散剤、接着促進剤、フィルム形成補助剤、レオロジー調整剤(増粘剤)、難燃剤、乾燥促進剤、乾燥剤、皮張り防止剤、耐腐食剤、ワックス、マット化剤、及び当業者に知られる他の添加剤を含有してよい。そのような添加剤は、当業者の専門知識に基づいて個々の場合の要件に応じて当業者によって選択されてよく、かつ、慣用的で公知でありかつ有効な量で用いられてよい。
【0052】
本発明の方法は、優れたテープ剥離特性、耐接着特性、及び防汚特性を有するコーティングを提供する。そのようなコーティングは、落書き防止コーティング、テープ剥離性コーティング、自浄性表面、防氷コーティング、例えば、汚れ防止木材及び家具コーティング、及び圧力感受性接着剤のための種々の剥離コーティングとして適切である。他の用途としては、中でも、UV及びEBフレキソ印刷インク、プリントインク(刷り重ねワニスを含む)、インクジェットインク、工業コーティング、カンコーティング、及び粉末コーティングが挙げられる。さらに、ポリマー(A)の非常に広範な適合性に起因して、このコーティングは透明コーティング組成物としても適切である。
【0053】
本発明の方法は、コーティングの他の特性に悪影響を及ぼさず、例えば、耐候性又は機械耐性に悪影響を及ぼさない。コーティングの物理的特性、例えば、腐食保護、光沢保持、及び耐風化性に関する物理的特性は、本発明に係る方法によって阻害されない。本発明の方法に従って調製されるコーティングは、一般に、数年の期間にわたって所望の特性を示し、数回の洗浄サイクルにわたってこれらの特性を維持する。
【実施例】
【0054】
実施例
原材料
【0055】
【0056】
分析方法
ヨウ素価
ヨウ素価は、H2の容積測定を介してDIN53241-1に従って決定された。
【0057】
GPC-分析
数平均分子量及び重量平均分子量並びに分子量分布を、DIN55672-1:2007-08に従って、40℃で、高圧液体クロマトグラフィーポンプ(WATERS600 HPLCポンプ)及び屈折率検出器(Waters 410)を用いて決定した。WATERSの3つのStyragelカラムの組み合わせ、サイズ300mm×7.8mmID/カラム、粒子サイズ5μm、孔サイズHR4、HR2、及びHR1、を分離カラムとして用いた。用いられた溶出剤は、1ml/minの溶出速度を有するトルエンであった。慣用的な校正を、ポリジメチルシロキサン標準を用いて行った。
【0058】
比較例 TEGO(商標)Rad2500
ラジカル架橋性アクリル化ポリシロキサン、これは、UVインク及びコーティングにスリップ特性及び消泡特性を付与し、「剥離」コーティングを配合する際の第1の選択肢として推奨される。
【0059】
比較例1
第1の工程で、N=39の平均鎖長さ及び一般式MHD39MHを有する末端SiH基含有ポリジメチルシロキサン(124.9g、0.098等量のSiH)、98mgの希釈されたKARSTEDT濃縮物20%溶液(1gのKARSTEDT濃縮物20%溶液を99gのキシレンで希釈した)、及び19.8mgの4-メトキシフェノールを、撹拌器、滴下漏斗、温度計、N2入口及び還流濃縮器を備える500mLの四つ口フラスコに添加し、攪拌しつつ80℃にまで加熱した。この温度で、54.33g(0.118等量のアリル基)のUniox PKA-5003を、30分間にわたって滴下して添加した。この添加の完了の際に、1時間後に、99%超の変換が達成されるまで、80℃で攪拌を続けた。変換は、20分間隔でSiH値(ヨウ素価)を決定することによってチェックした。そのあとで、19.8mgの2,6-ジ-tert.-ブチル-4-メチルフェノールを添加し、揮発物を、真空下で蒸留によって除去した。得られたヒドロキシ末端ポリエーテルポリジメチルシロキサンは、透明であり、わずかに黄褐色の液体であった。
【0060】
第2の工程で、第1工程で得られた生成物を、メチルメタクリレート及び触媒としてのZirconium(IV)アセチルアセトナートを用いてメタクリレート化した。撹拌器、温度計、N2入口及び還流濃縮器を有する水分離機、を備える500mLの四つ口フラスコに、126.7gの第1工程の生成物(0.114等量)、13.68gのメチルメタクリレート(0.137等量)及び0.21gの4-メトキシフェノールを投入した。攪拌下で、0.416gのZirconium(IV)アセチルアセトナートを添加し、生じた反応混合物を15分間にわたって90℃に加熱した。そして、温度を100℃にまで上昇させ、全混合物を100℃で6時間にわたって攪拌した。そのあとで、揮発物を、真空(10mbar、75℃加熱槽)下で蒸留によって除去した。
最終生成物のNMR分析は、45%のメタクリル化度を示した。GPC分析の結果は、下記のとおりであった:Mn=2197g/mol、Mw=5053g/mol、Mw/Mn=2.3。
【0061】
比較例2
第1の工程で、2-アリルオキシエチルアクリレートの合成を、下記のとおりにして行った:
2-アリルオキシエタノール(30g、0.29mol、Sigma-Aldrich)、メチレンクロリド(266g、Sigma-Aldrich)及びトリエチルアミン(33.39g、0.33mol、Sigma-Aldrich)を、撹拌器、滴下漏斗、温度計、N2入口及び還流濃縮器を備える四つ口フラスコ中に配置した。混合物を、氷浴で冷却した。アクリロイルクロリド(29.87g、0.33mol、Alfa Aesar)を、1時間にわたって滴下によって添加した。そのあとで、氷浴を取り除き、混合物を室温で2時間にわたって攪拌し、そして、濾過した。濾過物を脱イオン水で数回抽出した。得られた有機相をマグネシウム硫化物で乾燥させ、その後に、真空蒸留してすべての揮発物を除去した。NMR分析は、定量的収率(43.7g、0.28mol)でほぼ無色の液体として2-アリルオキシエチルアクリレートが得られたことを示した。
【0062】
第2の工程で、N=39の平均鎖長さ及び一般式MHD39MHを有する末端SiH基含有ポリジメチルシロキサン(111g、0.087等量のSiH)、87mgの希釈されたKARSTEDT濃縮物20%溶液(1gのKARSTEDT濃縮物20%溶液を99gのキシレンで希釈した)、及び17.6mgの4-メトキシフェノールを、撹拌器、滴下漏斗、温度計、N2入口及び還流濃縮器を備える500mLの四つ口フラスコに添加し、攪拌しつつ80℃にまで加熱した。この温度で、16.3g(0.105等量のアリル基)の(第1工程からの)2-アリルオキシエチルアクリレートを、30分間にわたって滴下して添加した。この添加の完了の際に、20分間隔でSiH値(ヨウ素価)を同時に計測しつつ、80℃で攪拌を継続した。40分後に、SiH値がゼロであり、これは、SiH基の完全な消費を示す。反応混合物は、褐色で、不均一で、泥状の濁った組成物となった。攪拌なしで、それは、水相及び膨張した沈殿物に分離した。これは、反応が所望のとおりに進行しなかったことを示す。
【0063】
比較例3
第1の工程で、Uniox PKA 5003のアクリレート化を、下記のとおりに行った:
Uniox PKA 5003(59.7g、0.13等量のOH基)、メチレンクロリド(266g、Sigma-Aldrich)及びトリエチルアミン(14.9g、0.15mol、Sigma-Aldrich)の混合物を、撹拌器、滴下漏斗、温度計、N2入口及び還流濃縮器を備える四つ口フラスコに投入した。この混合物を、氷浴で冷却した。(13.35g、0.15mol、Alfa Aesar)のアクリロイルクロリドを1時間にわたって滴下によって添加した。そのあとで、氷浴を取り除き、混合物を2時間にわたって室温で攪拌し、そして、濾過した。濾過物を脱イオン水で数回抽出処理した。得られた有機相をマグネシウム硫化物で乾燥させ、そのあとで、真空蒸留してすべての揮発物を除去した。NMR分析は、定量的収率(63.1g、0.12mol)でほぼ無色の液体としてUniox PKA 5003アクリレートが得られたことを示した。
【0064】
第2の工程で、N=39の平均鎖長さ及び一般式MHD39MHを有する末端SiH基含有ポリジメチルシロキサン(50g、0.039等量のSiH)、39.2mgの希釈されたKARSTEDT濃縮物20%溶液(1gのKARSTEDT濃縮物20%溶液を99gのキシレンで希釈した)、及び7.9mgの4-メトキシフェノールを、撹拌器、滴下漏斗、温度計、N2入口及び還流濃縮器を備える500mLの四つ口フラスコに添加し、攪拌しつつ80℃にまで加熱した。この温度で、24.16g(0.047等量のアリル基)の(第1工程からの)Uniox PKA 5003アクリレートを30分間にわたって滴下によって添加した。この添加の完了の際に、20分間隔でSiH値(ヨウ素価)を同時に計測しつつ、80℃で攪拌を継続した。40分後に、SiH値がゼロであり、これは、SiH基の完全な消費を示す。反応混合物は、不均一で、泥状の濁った組成物となった。攪拌なしで、それは、水相及び膨張した沈殿物に分離した。これは、反応が所望のとおりに進行しなかったことを示す。
【0065】
実施例1
N=39の平均鎖長さ及び一般式MHD39MHを有する末端SiH基含有ポリジメチルシロキサン(124.9g、0.098等量のSiH)、98mgの希釈されたKARSTEDT濃縮物20%溶液(1gのKARSTEDT濃縮物20%溶液を99gのキシレンで希釈)、及び19.8mgの4-メトキシフェノールを、撹拌器、滴下漏斗、温度計、N2入口及び還流濃縮器を備える500mLの四つ口フラスコに添加し、攪拌しつつ80℃にまで加熱した。この温度で、73.11g(0.118等量のアリル基)のBisomer AA E 450 MAを30分間にわたって滴下によって添加した。この添加の完了のときに、1時間後に99%超の変換が達成されるまで、80℃での攪拌を継続した。この変換を、20分間隔でSiH値(ヨウ素価)を決定することによって、チェックした。そのあとで、19.8mgの2,6-ジ-tert.-ブチル-4-メチルフェノールを添加し、真空下での蒸留によって揮発物を除去した。得られた反応生成物は、クリアで、わずかに黄褐色の液体であった。
【0066】
NMR分析によって、予期された構造が確認された。
【0067】
GPC分析の結果は、下記のとおりであった:Mn=1692g/mol、Mw=8494g/mol、Mw/Mn=5.02。
【0068】
実施例2
N=93の平均鎖長さ及び一般式MDH
7D86Mを有する側方SiH基含有ポリジメチルシロキサン(78.07g、0.083等量のSiH)、83mgの希釈されたKARSTEDT濃縮物20%溶液(1gのKARSTEDT濃縮物20%溶液を99gのキシレンで希釈)、13mgの4-メトキシフェノール、及び57gのキシレンを、撹拌器、滴下漏斗、温度計、N2入口及び還流濃縮器を備える500mLの四つ口フラスコに添加し、攪拌しつつ80℃にまで加熱した。この温度で、61.71g(0.1等量のアリル基)のBisomer AA E 450 MAを30分間にわたって滴下によって添加した。この添加の完了の際に、2時間後に99%超の変換が達成されるまで、80℃での攪拌を継続した。この変換を、20分間隔でSiH値(ヨウ素価)を決定することによって、チェックした。そのあとで、13mgの2,6-ジ-tert.-ブチル-4-メチルフェノールを添加し、真空下での蒸留によって揮発物を除去した。得られた反応生成物は、クリアで、わずかに黄褐色の液体であった。
【0069】
NMR分析によって、予期された構造が確認された。
【0070】
GPC分析の結果は、下記のとおりであった:Mn=4080g/mol、Mw=36050、Mw/Mn=8.8。
【0071】
実施例3
N=39の平均鎖長さ及び一般式MHD39MHを有する末端SiH基含有ポリジメチルシロキサン(71.64g、0.056等量のSiH)、56mgの希釈されたKARSTEDT濃縮物20%溶液(1gのKARSTEDT濃縮物20%溶液を99gのキシレンで希釈)、9mgの4-メトキシフェノールを、撹拌器、滴下漏斗、温度計、N2入口及び還流濃縮器を備える500mLの四つ口フラスコに添加し、攪拌しつつ80℃にまで加熱した。この温度で、(平均3つのプロピレングリコールユニットを含有する)ポリプロピレングリコール-モノ-アリルエーテル(6.55g、0.028等量のアリル基)及びBisomer AA E 450 MA(24.29g、0.039等量のアリル基)の混合物を30分間にわたって滴下によって添加した。この添加の完了の際に、2時間後に99%超の変換が達成されるまで、80℃での攪拌を継続した。この変換を、20分間隔でSiH値(ヨウ素価)を決定することによって、チェックした。そのあとで、9mgの2,6-ジ-tert.-ブチル-4-メチルフェノールを添加し、真空下での蒸留によって揮発物を除去した。得られた生成物は、クリアで、わずかに濁った明黄褐色の液体であった。
【0072】
NMR分析によって、予期された構造が確認された。
【0073】
GPC分析の結果は、下記のとおりであった:Mn=1447g/mol、Mw=6077、Mw/Mn=4.2
【0074】
適用試験
配合A(Ebecryl(商標)608に基づく)
【表2】
【0075】
配合Aの調製
TMPTA、TPGDA及びベンゾフェノンを、Dispermat(商標)CV(30分、3000rpm、3cm直径の溶解ディスク)を用いて混合した。その後に、Ebecryl(商標)608及びEvecryl(商標)P115を添加し、混合物の全体を、10分間にわたって3000rpmで均一化処理した。
【0076】
配合B(Laromer(商標)LR8986に基づく)
【表3】
【0077】
配合Bの調製
Laromer(商標)LR8986、Ebecryl(商標)210、及びHDDAを、Dispermat(商標)CV(15分、4000rpm、3cm直径の溶解ディスク)を用いて混合した。その後に、Ebecryl(商標)608及びEvecryl(商標)P115を添加し、混合物の全体を、10分間にわたって3000rpmで均一化処理した。
【0078】
Darocure 4265を、適用の直前に添加して、保存の間における配合物の硬化を防止した。
【0079】
試験手順
50gの配合A(又は配合B)及び0.25gの添加物を、Dispermat(商標)LC(2分、5000rpm、3cm直径の溶解ディスク)を用いて混合した。
【0080】
サンプルを、Erichsenの自動K-Loxプリンティングプルーファーを用いて、下記のとおりにして、PETフィルム(会社:Putz Folien、製品名:Hostaphan GN460)の上に配置した:
- スリップ計測及びテープ剥離計測のためには、6μmスパイラルドクターブレードを用いた、
- レベリング性評価のためには、12μmのスパイラルドクターブレードを用いた。
【0081】
この湿潤コーティングを、3回の連続的な施行で、UVバンク「Aktiprint Mini」(120W/cm及びベルト速度12m/min)で硬化させた。
【0082】
24時間後に、テープ剥離及びCOFを、Thwing-Albert FP 2260を用いて計測した。
【0083】
テープ剥離性能は、ASTM D3330に従って計測した。Tesafilm(商標)(透明オフィスボックス 57404、長さ約24cm)を、手でコーティングの上に接着させ、指で短時間にわたって押圧した。そして、テープ剥離を、上記のASTM法で記載されているようにして計測する。Tesafilm(商標)ストリップの半分のみを除去して、いわゆる「テープ剥離直後」を計測する。他方の半分は、同一の方法で24時間後に除去して、いわゆる「テープ剥離24時間」を計測する。テープを除去するために必要な力の値が低いほど、添加物のテープ剥離特性が良好である。
【0084】
液体コーティングの発泡性を、その調製のすぐ後に、1(発泡なし)から6(非常に多くの発泡)までの指標で、視覚的に評価した。
【0085】
レベリング性を、1(非常に良好なレベリング性)から6(非常に劣るレベリング性)までの指標で、視覚的に評価した。
【0086】
コーティングの濁度を、1(クリア、透明なフィルム)から6(透明でなく、濁ったフィルム)までの指標で、視覚的に評価した。
【0087】
試験結果
下記の結果を、配合Aに関して得た。
【表4】
【0088】
【0089】
本発明の例は、比較Tego Rad(商標)2500及び比較例1と比べて、比較的良好な適合性を示す(実施例1(例1)の添加物は、比較的低い濁度及び向上したレベリング性を示す)。
【0090】
テープ剥離特性の計測は、添加物の間の最も重量な違いを明らかにする。3つの本発明の例(実施例1、2及び3)は、すべて、比較的低い引張力によって、より効果的な剥離を示す。
【0091】
すべての実施例は、合理的に低い発泡形成を有していた。
【0092】
実施例1は、全体として、優れた適合性と非常に有利なテープ特性との組み合わせを示す。
本開示は下記の態様を含む。
<態様1>
放射線硬化コーティングの表面特性を改善する方法であって、
放射線硬化性コーティング組成物に、前記放射線硬化性コーティング組成物の合計重量に基づいて0.1~10.0重量%の、ポリシロキサン骨格及びこのポリシロキサン骨格にリンカー基を介して接続している少なくとも2つのメタクリロイル基を有するポリマー(A)を添加すること、
を含み、
前記リンカー基は、少なくとも1つの非環状エーテル基を有し、
前記ポリシロキサン骨格は、Si-C結合を介して前記リンカー基に接続しており、
ポリマー(A)を、
(i)少なくとも2つのSi-H基を有するポリシロキサン骨格を提供すること、
(ii)少なくとも1つのメタクリロイル基、1つのアリル基、及び、前記アリル基と前記少なくとも1つのメタクリロイル基との間に位置する少なくとも1つの非環状エーテル基を有する分子を提供すること、並びに、
(iii)ヒドロシリル化反応を介して前記Si-H基と前記アリル基とを反応させることによって、前記ポリシロキサン骨格(i)と前記分子(ii)との間で共有結合を形成すること
を含むプロセスによって調製する、
方法。
<態様2>
前記改善された表面特性が、表面スリップ性、撥水性、汚れ除去特性、耐汚れ接着性、及びテープ剥離特性のうちの少なくとも1つを含む、態様1に記載の方法。
<態様3>
前記放射線硬化性コーティング組成物を基材に適用すること、及び、前記組成物を活性放射線に曝露することによって硬化すること、をさらに含む、態様1又は2に記載の方法。
<態様4>
前記放射線硬化性コーティング組成物が、さらに、前記ポリマー(A)とは異なる放射線硬化性バインダをさらに含む、態様1~3のいずれか一項に記載の方法。
<態様5>
ポリマー(A)中の前記リンカー基が、互いに独立に、1~100の非環状エーテル基を有する、態様1~4のいずれか一項に記載の方法。
<態様6>
前記非環状エーテル基が、ポリアルキレンオキシド基である、態様5に記載の方法。
<態様7>
前記ポリアルキレンオキシド基が、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、及びエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのコポリマーのうちの少なくとも1つを含む、態様6に記載の方法。
<態様8>
ポリマー(A)の前記ポリシロキサン骨格が、式(I)-[O-SiR
2
]-の繰り返し単位を含み、Rは、互いに独立に、炭素原子1~30を有するヒドロカルビル基を表す、態様1~7のいずれか一項に記載の方法。
<態様9>
前記ポリシロキサン骨格が、2~300の式(I)の繰り返し単位を有する、態様7に記載の方法。
<態様10>
工程(i)で提供される前記ポリシロキサン骨格が、2つの末端Si-H基を有するポリジメチルシロキサンである、態様1~9のいずれか一項に記載の方法。
<態様11>
工程(i)で提供される前記ポリシロキサン骨格が、少なくとも2つの側方Si-H基を有するポリジメチルシロキサンである、態様1~10のいずれか一項に記載の方法。
<態様12>
工程(ii)で提供される、少なくとも1つのメタクリロイル基、1つのアリル基、及び、前記アリル基と前記少なくとも1つのメタクリロイル基との間に位置する少なくとも1つの非環状エーテル基を有する前記分子が、アリルオキシポリエチレングリコールメタクリレートである、態様1~11のいずれか一項に記載の方法。
<態様13>
前記放射線硬化性コーティング組成物に、ポリシロキサン骨格及びこのポリシロキサン骨格にリンカー基を介して接続している1つのメタクリロイル基を有するポリマーを添加すること
をさらに含み、
前記リンカー基が、少なくとも1つの非環状エーテル基を含み、前記ポリシロキサン骨格が、Si-C結合を介して前記リンカー基に接続しており、
前記ポリシロキサン骨格が、側方又は末端の、少なくとも25mol%ポリプロピレンオキシドを含むポリアルキレンオキシド部分をさらに有する、
態様1~12のいずれか一項に記載の方法。
<態様14>
前記放射線硬化性組成物に、ポリシロキサン骨格及びこのポリシロキサン骨格にSi-C結合を介して接続している少なくとも25mol%のポリプロピレンオキシドを含む少なくとも2つのポリアルキレンオキシド部分を有するポリマーを添加することをさらに含む、態様13に記載の方法。