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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】コールドプレート
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/473 20060101AFI20240624BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
H01L23/46 Z
H05K7/20 N
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023529462
(86)(22)【出願日】2022-01-21
(86)【国際出願番号】 JP2022002209
(87)【国際公開番号】W WO2022269965
(87)【国際公開日】2022-12-29
【審査請求日】2023-06-12
(31)【優先権主張番号】P 2021102878
(32)【優先日】2021-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【弁理士】
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】松田 将宗
(72)【発明者】
【氏名】益子 耕一
(72)【発明者】
【氏名】川原 洋司
【審査官】庄司 一隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-022374(JP,A)
【文献】特開2018-081997(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/473
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と、前記第1面とは反対側に位置する第2面と、前記第1面に並列された複数のフィンと、を有する金属製のベースプレートと、
前記複数のフィンを覆う有頂筒状の樹脂カバーと、を備え、
前記第1面には、前記第2面に向けて窪む凹部が形成され、
前記凹部の内面において、前記樹脂カバーが前記ベースプレートに対して加熱融着されており
前記ベースプレートには、前記凹部によって囲まれる空間に連通する樹脂だまりが形成されている、コールドプレート。
【請求項2】
前記凹部の内面には、複数の微細孔を有する第1粗面化部が形成され、
前記樹脂カバーは、前記第1粗面化部において前記ベースプレートに対して加熱融着されている、請求項1に記載のコールドプレート。
【請求項3】
前記樹脂だまりは、前記凹部の底面から前記第2面に向けて窪んでいる、請求項1または2に記載のコールドプレート。
【請求項4】
前記ベースプレートと前記樹脂カバーとが対向する対向方向から見て、前記樹脂だまりは前記凹部から外側に突出しており、
前記樹脂だまりは前記第1面に開口している、請求項1または2に記載のコールドプレート。
【請求項5】
前記ベースプレートと前記樹脂カバーとが対向する対向方向から見て、前記樹脂だまりは、前記第1面と重なっている、請求項1または2に記載のコールドプレート。
【請求項6】
前記凹部は、前記凹部の底面から前記第1面に向かう向きにおいて漸次前記凹部の内径が大きくなるテーパ構造を有し、
前記凹部の側面には、第2粗面化部が形成されている、請求項1からのいずれか一項に記載のコールドプレート。
【請求項7】
前記樹脂カバーの開口端部には、前記樹脂カバーの外側に向けて延びるとともに、前記ベースプレートに対して加熱融着される面を含むフランジ部が形成され、
前記ベースプレートと前記樹脂カバーとが対向する対向方向における前記凹部の寸法は、前記対向方向における前記フランジ部の寸法よりも大きい、請求項1からのいずれか一項に記載のコールドプレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コールドプレートに関する。
本願は、2021年6月22日に、日本に出願された特願2021-102878号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【0002】
特許文献1には、並列された複数のフィンを有する金属製のベースプレートと、複数のフィンを覆う金属カバーと、を備えるコールドプレートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国特許第6712915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の電子部品高集積化による発熱密度の増大により、コールドプレートの需要拡大が予測され、より低価格なコールドプレートが求められている。このため、従来の金属カバーを、金属カバーよりも安価な樹脂カバーに変更することが検討されている。このように樹脂カバーを有するコールドプレートにおいては、樹脂カバーをベースプレートに対して接着剤等を用いずに直接加熱融着させる構成が考えられる。
【0005】
しかしながら、本願発明者らが検証したところ、樹脂カバーをベースプレートに対して加熱融着する際には、溶融した樹脂が、樹脂カバーの内側および外側に流出し、バリを形成する可能性があることが判った。樹脂カバーの内側に形成されたバリは、コールドプレート内を流れる冷媒の流路を狭めたり、樹脂カバーから剥がれて流路に詰まったりする場合があった。これらの場合、樹脂カバーの内側に形成されたバリは、コールドプレートの冷却性能を低下させる可能性があった。樹脂カバーの外側に形成されたバリは、樹脂カバーから剥がれてコールドプレートから脱落する場合があった。この場合、樹脂カバーの外側に形成されたバリは、コールドプレートが取り付けられた電子機器に対して悪影響を及ぼす可能性があった。
【0006】
本発明は、このような事情を考慮してなされ、樹脂カバーをベースプレートに対して加熱融着させる際にバリが生じるのを抑制できるコールドプレートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係るコールドプレートは、第1面と、前記第1面とは反対側に位置する第2面と、前記第1面に並列された複数のフィンと、を有する金属製のベースプレートと、前記複数のフィンを覆う有頂筒状の樹脂カバーと、を備え、前記第1面には、前記第2面に向けて窪む凹部が形成され、前記凹部の内面において、前記樹脂カバーが前記ベースプレートに対して加熱融着されている。
【0008】
本発明の上記態様によれば、加熱溶融した樹脂は、コールドプレートに形成された凹部の中に溜まりやすくなる。これにより、凹部から樹脂がはみ出ること、すなわち、バリが形成されることが抑制される。
【0009】
ここで、前記凹部の内面には、複数の微細孔を有する第1粗面化部が形成され、前記樹脂カバーは、前記第1粗面化部において前記ベースプレートに対して加熱融着されていてもよい。
【0010】
また、前記ベースプレートには、前記凹部によって囲まれる空間に連通する樹脂だまりが形成されていてもよい。
【0011】
また、前記樹脂だまりは、前記凹部の底面から前記第2面に向けて窪んでいてもよい。
【0012】
また、前記ベースプレートと前記樹脂カバーとが対向する対向方向から見て、前記樹脂だまりは前記凹部から外側に突出しており、前記樹脂だまりは前記第1面に開口していてもよい。
【0013】
また、前記ベースプレートと前記樹脂カバーとが対向する対向方向から見て、前記樹脂だまりは、前記第1面と重なっていてもよい。
【0014】
また、前記凹部は、前記凹部の底面から前記第1面に向かう向きにおいて漸次前記凹部の内径が大きくなるテーパ構造を有し、前記凹部の側面には、第2粗面化部が形成されていてもよい。
【0015】
また、前記樹脂カバーの開口端部には、前記樹脂カバーの外側に向けて延びるとともに、前記ベースプレートに対して加熱融着される面を含むフランジ部が形成され、前記ベースプレートと前記樹脂カバーとが対向する対向方向における前記凹部の寸法は、前記対向方向における前記フランジ部の寸法よりも大きくてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の上記態様によれば、樹脂カバーをベースプレートに対して加熱融着させる際にバリが生じるのを抑制可能なコールドプレートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態に係るコールドプレートを示す平面図である。
図2図1に示すII-II断面に沿う断面図である。
図3図2の一部を示す拡大図である。
図4図3に示す領域Aの拡大図である。
図5】第2実施形態に係るコールドプレートの一部を示す拡大図である。
図6】第3実施形態に係るコールドプレートの一部を示す拡大図である。
図7】第4実施形態に係るコールドプレートの一部を示す拡大図である。
図8】第5実施形態に係るコールドプレートの一部を示す拡大図である。
図9】変形例に係るコールドプレートを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態に係るコールドプレートについて図面に基づいて説明する。
図1および図2に示すように、コールドプレート1Aは、金属製のベースプレート10と、樹脂カバー20と、を備える。ベースプレート10は、第1面10aと、第1面10aとは反対側に位置する第2面10bと、を有する。ベースプレート10は、第1面10aに並列された複数のフィン11を有する。複数のフィン11の各々は、板状に形成されている。樹脂カバー20の形状は、有頂筒状である。樹脂カバー20は、複数のフィン11を覆っている。コールドプレート1Aの形状は、樹脂カバー20がベースプレート10を覆うことにより、全体として中空容器状である。
【0019】
(方向定義)
ここで本実施形態では、ベースプレート10と樹脂カバー20とが対向する方向を対向方向Zと称する。対向方向Zは、ベースプレート10の第1面10aと第2面10bとが並ぶ方向でもある。あるいは、対向方向Zは、ベースプレート10に垂直な方向でもある。本明細書において、対向方向Zから見ることを、平面視と称する場合がある。対向方向Zは、上下方向Zとも称される。ただし、上下方向Zは、鉛直方向と平行であってもよいし、平行でなくてもよい。対向方向Zに沿って、ベースプレート10から樹脂カバー20に向かう向きを、+Zの向きまたは上方と称する。+Zの向きは、ベースプレート10の第2面10bから第1面10aに向かう向きでもある。+Zの向きとは反対の向きを、-Zの向きまたは下方と称する。複数のフィン11の各々が延在する方向のうち、対向方向Zに直交する方向を第1方向Xと称する。第1方向Xに沿う一つの向きを、+Xの向きまたは右方と称する。+Xの向きとは反対の向きを、-Xの向きまたは左方と称する。対向方向Zおよび第1方向Xの双方に直交する方向を第2方向Yと称する。第2方向Yに沿う一つの向きを、+Yの向きまたは奥側と称する。+Yの向きとは反対の向きを、-Yの向きまたは手前側と称する。
【0020】
ベースプレート10は、良好な熱伝導性を有する金属によって形成されていることが望ましい。ベースプレート10の材質としては、例えば、銅や銅合金、アルミニウムやアルミニウム合金等を用いることができる。図2に示すように、本実施形態に係るベースプレート10の第1面10aは、上方を向き、第2面10bは、下方を向いている。第1面10aは、上面10aとも称される。第2面10bは、熱源面10bとも称される。
【0021】
本実施形態において、複数のフィン11は、ベースプレート10の第1面10aから上方に向けて突出している。複数のフィン11は、第2方向Yにおいて略一定の間隔を空けて並列されている。「略一定」には、製造誤差を取り除けば第2方向Yにおける間隔が一定であるとみなせる場合も含まれる。なお、複数のフィン11が並列される間隔は、第2方向Yにおいて略一定でなくてもよい。本実施形態において、第2面10bは、平坦面となっている。第2面(熱源面)10bには、不図示の熱源(CPU、その他発熱部品等)が接触する。あるいは、第2面10bには、不図示の熱源から熱を伝える伝熱部材が接触する。なお、第2面10bの形状は、平坦面に限定されない。第2面10bに対して熱源または伝熱部材が接触できれば、第2面10bの形状は適宜変更可能である。
【0022】
ベースプレート10の第1面10aには、第2面10b(下方)に向けて窪む凹部12が形成されている。凹部12は、対向方向Zからみて、略矩形の環状に形成されており、複数のフィン11を取り囲んでいる(図1も参照)。図3に示すように、凹部12の内面は、底面12aと、内側面(側面)12bと、外側面(側面)12cと、を含む。内側面12bは、環状の凹部12における内周側に位置する面である。言い換えれば、内側面12bは、環状に形成された凹部12の内周面に該当する。外側面12cは、環状の凹部12における外周側に位置する面である。言い換えれば、外側面12cは、環状に形成された凹部12の外周面に該当する。
【0023】
樹脂カバー20の材質としては、例えば、ポリフェニレンスルフィルド(PPS)、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアセタール(POM)等を用いることができる。
【0024】
樹脂カバー20は、天壁部21と、周壁部22と、フランジ部23と、を有する。天壁部21は、図1に示すように、平面視において略矩形状に形成されている。なお、天壁部21の形状は略矩形状に限定されず、例えば平面視において略円形状や略楕円形状、あるいは略多角形状等であってもよい。「略矩形状」「略円形状」「略楕円形状」「略多角形状」には、面取り加工や製造誤差を取り除けば平面視において矩形状、円形状、楕円形状、多角形状であるとみなせる場合も含まれる。周壁部22は、天壁部21の外周縁から下方に向けて筒状に延びている。フランジ部23は、周壁部22の下端(開口端部)から樹脂カバー20の外側に向けて環状に延びている。図3に示すように、フランジ部23の下面は、第1粗面化部30A(後述)と接している。フランジ部23の下面は、ベースプレート10に対して加熱融着される面でもある。
【0025】
本実施形態において、樹脂カバー20には、入口連結部24および出口連結部25が形成されている。入口連結部24および出口連結部25の各々は、天壁部21から上方に向けて突出している。樹脂カバー20には、天壁部21および入口連結部24を貫通する供給孔24aと、天壁部21および出口連結部25を貫通する排水孔25aが形成されている。供給孔24aおよび排水孔25aの各々は、コールドプレート1Aの内部空間Sに連通している。
【0026】
入口連結部24は、冷媒を供給する不図示の入口管が連結される部分である。冷媒は、入口連結部24および供給孔24aを通じてコールドプレート1Aの内部空間Sに流入する。出口連結部25は、冷媒を排出する不図示の出口管が連結される部分である。内部空間Sを通った冷媒は、排水孔25aおよび出口連結部25を通じてコールドプレート1Aの外部へと排出される。冷媒としては、例えば、水、アルコール、その他の周知の化合物等を適宜用いることができる。
【0027】
本実施形態において、供給孔24aは、天壁部21の下面から延びて、入口連結部24の右側面に開口している。排水孔25aは、天壁部21の下面から延びて、出口連結部25の左側面に開口している。なお、供給孔24aおよび排水孔25aの構成は、供給孔24aおよび排水孔25aの各々がコールドプレート1Aの内部空間Sに連通していれば適宜変更可能である。例えば、コールドプレート1Aは、入口連結部24および出口連結部25を有していなくてもよい。この場合、供給孔24aおよび排水孔25aの各々は、天壁部21のみを貫通していてもよい。供給孔24aおよび排水孔25aの各々は、周壁部22を貫通していてもよい。
【0028】
図2および図3に示すように、樹脂カバー20(フランジ部23)は、凹部12の内面(本実施形態においては底面12a)において、ベースプレート10に対して加熱融着されている。以下、本実施形態における樹脂カバー20がベースプレート10に融着される原理を説明する。図4に示すように、フランジ部23と接する底面12aには、後述する適宜の表面処理によって、第1粗面化部30Aが形成されている。第1粗面化部30Aは、複数の微細孔30aを有している。
【0029】
加熱融着の際には、凹部12が加熱されるとともに、粗面化された底面12aに対して、フランジ部23が押し付けられる。このとき、フランジ部23の一部が軟化あるいは溶融し、微細孔30aに入り込んで、その後、固化する。その結果、微細孔30aに入り込んで固化した樹脂がアンカーとなり、樹脂カバー20とベースプレート10とが強固に接合される。なお、溶融した樹脂が重力の影響により垂れて凹部12から出るのを防ぐため、上記した加熱融着作業は、底面12a(第1粗面化部30A)が鉛直方向における上方を向くようにした状態で行われるのが好適である。
【0030】
第1粗面化部30Aを形成するために底面12aに対して行う表面処理としては、例えば、エッチング等の化成処理や、レーザー照射を用いることができる。底面12aに対する表面処理として化成処理を用いる場合は、ベースプレート10のうち粗面化しない部分を適宜マスクしてもよい。凹部12全体に対してエッチング等の化成処理を行うことで、底面12aだけでなく内側面12bおよび外側面12cに対しても表面処理を行ってもよい。
【0031】
底面12aに対する表面処理としてレーザー照射を用いる場合は、レーザー光の作用によって底面12aが酸化され、第1粗面化部30Aの表面においてOH基が豊富となる。この場合、樹脂カバー20を形成している樹脂分子が第1粗面化部30Aの表面に位置するOH基と水素結合し、樹脂カバー20とベースプレート10とがより強固に接合される。
【0032】
次に、以上のように構成されたコールドプレート1Aの作用について説明する。
【0033】
コールドプレート1Aは、ベースプレート10の第2面(熱源面)10bに接触した熱源あるいは伝熱部材から熱を受け取り、受け取った熱を外部に放出する放熱モジュールである。
コールドプレート1Aの内部空間Sには、供給孔24aを通じて冷媒が供給される(図2参照)。コールドプレート1Aの内部空間Sにおいて複数のフィン11が第1方向Xに沿って延びているため、供給された冷媒は、第1方向Xに沿ってガイドされ、主として右方に向けて流動する。このとき、冷媒は、ベースプレート10(特にフィン11)を介して熱源から熱を吸収する。熱を吸収した冷媒は、排水孔25aを通じてコールドプレート1Aの外部へと排出される。上記のプロセスにより、コールドプレート1Aは、熱源から熱を受け取り、受け取った熱を外部に放出することができる。
【0034】
ここで、本実施形態に係るコールドプレート1Aは、ベースプレート10に加熱融着された樹脂カバー20を有する。本願発明者らが検証したところ、樹脂カバー20を加熱融着する際には、溶融した樹脂が、樹脂カバー20の内側および外側に流出し、バリを形成する可能性があることが判った。樹脂カバー20の内側に形成されたバリは、コールドプレート内を流れる冷媒の流路を狭めたり、樹脂カバー20から剥がれて流路に詰まったりする場合があった。これらの場合、樹脂カバー20の内側に形成されたバリは、コールドプレートの冷却性能を低下させる可能性があった。樹脂カバー20の外側に形成されたバリは、樹脂カバー20から剥がれてコールドプレートから脱落する場合があった。この場合、樹脂カバー20の外側に形成されたバリは、コールドプレートが取り付けられた装置等に対して悪影響を及ぼす可能性があった。
【0035】
これに対して本実施形態に係るコールドプレート1Aでは、樹脂カバー20とベースプレート10とは、ベースプレート10に形成された凹部12の底面12aにおいて加熱融着されている。これにより、加熱融着時に樹脂カバー20から樹脂が溶融した場合、当該溶融した樹脂は、凹部12の内部に溜まりやすくなる。これにより、溶融した樹脂が凹部12の外部へと溢れ出ることが抑制される。したがって、樹脂カバー20から溶融した樹脂が樹脂カバー20の内側および外側においてバリを形成することが抑制される。なお、本明細書において「バリ」とは、溶融した樹脂が凹部12の外部に溢れ出て固化した固化物を指す。
【0036】
底面12aに対する表面処理としてレーザー照射が用いられる場合には、底面12aで反射(乱反射)したレーザー光の作用によって、内側面12bおよび外側面12cを酸化させることができる。また、内側面12bおよび外側面12cは、レーザー照射によって加熱された底面12aからの熱拡散(熱伝導)によっても酸化させることができる。内側面12bおよび外側面12cが酸化されることにより、内側面12bおよび外側面12cにおいてもOH基が豊富となり、溶融した樹脂分子が内側面12bおよび外側面12cに対して吸着しやすくなる。言い換えれば、底面12aで乱反射したレーザー光の作用および底面12aからの熱拡散によって、内側面12bおよび外側面12cの濡れ性を向上することができる。これにより、例えば樹脂カバー20の加熱融着中にコールドプレート1Aが外力等によって不意に振動した場合においても、樹脂カバー20から溶け出した樹脂が凹部12から飛び出しにくくなる。したがって、バリの形成が抑制される。
【0037】
以上説明したように、本実施形態のコールドプレート1Aは、第1面10aと、第1面10aとは反対側に位置する第2面10bと、第1面10aに並列された複数のフィン11と、を有する金属製のベースプレート10と、複数のフィン11を覆う有頂筒状の樹脂カバー20と、を備え、第1面10aには、第2面10bに向けて窪む凹部12が形成され、凹部12の内面において、樹脂カバー20がベースプレート10に対して加熱融着されている。
【0038】
この構成により、樹脂カバー20から加熱溶融した樹脂は、ベースプレート10に形成された凹部12の中に溜まる。これにより、凹部12から樹脂がはみ出ること、すなわちバリが形成されることが抑制される。
【0039】
また、凹部12の内面には、複数の微細孔30aを有する第1粗面化部30Aが形成され、樹脂カバー20は、第1粗面化部30Aにおいてベースプレート10に対して加熱融着されている。この構成により、軟化あるいは溶融した樹脂カバー20の一部が微細孔30aに入り込んで固化し、アンカーの役割を果たす。したがって、樹脂カバー20とベースプレート10との接合強度が向上する。
【0040】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明するが、第1実施形態と基本的な構成は同様である。このため、同様の構成には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図5に示すコールドプレート1Bにおいて、ベースプレート10には樹脂だまり13が形成されている。樹脂だまり13は、凹部12によって囲まれる空間に連通している。言い換えれば、樹脂だまり13は、凹部12に開口する窪み(溝)である。特に本実施形態に係る樹脂だまり13は、凹部12の底面12aから第2面10b(下方)に向けて窪んでいる。
【0041】
樹脂だまり13は、例えば凹部12に対してエッチング加工、切削加工、レーザー加工等が施されることにより形成されていてもよい。樹脂だまり13は、対向方向Zから見て環状に形成されている凹部12に沿って、連続的に延びていてもよい。あるいは、凹部12に沿って断続的に形成されていてもよい。樹脂だまり13は、内側面12bあるいは外側面12cに形成されていてもよい。なお、樹脂だまり13の形状は、図5の例に限定されない。樹脂だまり13が凹部12によって囲まれる空間に連通していれば、樹脂だまり13の形状は適宜変更可能である。
【0042】
以上説明したように、本実施形態に係るコールドプレート1Bにおいて、ベースプレート10には、凹部12によって囲まれる空間に連通する樹脂だまり13が形成されている。この構成により、樹脂カバー20から溶融した樹脂が樹脂だまり13に流入する。したがって、樹脂が凹部12から飛び出してバリを形成することがより確実に抑制される。
【0043】
また、樹脂だまり13は、凹部12の底面12aから第2面10bに向けて窪んでいる。この構成は、底面12aが鉛直方向における上方を向く状態で樹脂カバー20とベースプレート10との加熱融着が行われる場合に特に有効である。これは、樹脂カバー20から溶融した樹脂が重力の影響により樹脂だまり13へと流れやすくなるからである。これにより、溶融した樹脂が凹部12から飛び出してバリを形成することがより効果的に抑制される。
【0044】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明するが、第2実施形態と基本的な構成は同様である。このため、同様の構成には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図6に示すコールドプレート1Cにおいて、樹脂だまり13は、対向方向Zから見て、ベースプレート10の第1面10aと重なる位置に配置されている。言い換えれば、対向方向Zから見て、樹脂だまり13は、第1面10aと重なっている。本実施形態に係る樹脂だまり13は、凹部12の外側面12cから第1方向Xまたは第2方向Yにおける外側に向けて窪んでいる。
【0045】
この構成によれば、樹脂だまり13が形成されているため、第2実施形態に係るコールドプレート1Bと同様の作用効果を得ることができる。また、樹脂だまり13がベースプレート10の第1面10aに開口していないため、樹脂カバー20から溶融した樹脂が第1面10aよりも上方に飛び出しにくくなる。これにより、バリが生じるのをより効果的に抑制することができる。
【0046】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明するが、第1実施形態と基本的な構成は同様である。このため、同様の構成には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0047】
図7に示すように、本実施形態に係るコールドプレート1Dにおいて、凹部12は、上方に向かう向きにおいて漸次凹部12の内径が大きくなるテーパ構造を有している。言い換えれば、凹部12は、底面12aから第1面10aに向かう向きにおいて漸次凹部12の内径が大きくなるテーパ構造を有している。特に、本実施形態に係る凹部12の内側面12bは、上方に向かう向きにおいて漸次第1方向Xまたは第2方向Yにおける内側に向かうように傾斜している。本実施形態に係る凹部12の外側面12cは、上方に向かうに向きにおいて漸次第1方向Xまたは第2方向Yにおける外側に向かうように傾斜している。
【0048】
本実施形態に係る内側面12bおよび外側面12cには、第2粗面化部30Bが形成されている。第2粗面化部30Bは、例えば内側面12bおよび外側面12cに対してレーザー照射をすることによって形成できる。図7の例において、内側面12bおよび外側面12cは、上方に向かう向きにおいて漸次凹部12の内径が大きくなるように傾いている。このため、下方に向けて照射されるレーザー光を内側面12bおよび外側面12cに対して直接当てることができる。特に、内側面12bおよび外側面12cの各々が対向方向Zに平行な場合と比較して、内側面12bおよび外側面12cに対してレーザー光を照射しやすくなる。第1粗面化部30Aおよび第2粗面化部30Bがともにレーザー照射によって形成されている場合には、第1粗面化部30Aの形成と第2粗面化部30Bの形成とが同一のレーザー照射機によって行われてもよい。
【0049】
内側面12bおよび外側面12cに形成された第2粗面化部30Bは、第1粗面化部30Aと同様に、複数の微細孔30aを有する。さらに、第2粗面化部30Bがレーザー照射によって形成されている場合には、レーザー光の作用により、内側面12bおよび外側面12cを酸化し、第2粗面化部30Bの表面においてOH基を豊富とすることができる。つまり、樹脂カバー20から溶融した樹脂分子が第2粗面化部30Bに対して吸着しやすくなる。言い換えれば、レーザー光の作用によって、第2粗面化部30Bの濡れ性が向上する。これにより、樹脂カバー20から溶け出した樹脂が凹部12からより飛び出しにくくなる。したがって、バリの形成がより抑制される。
【0050】
なお、内側面12bおよび外側面12cの形状は図6の例に限定されない。凹部12が上方に向かう向きにおいて漸次内径が大きくなるテーパ構造を有していれば、内側面12bおよび外側面12cの形状は適宜変更可能である。例えば、内側面12bおよび外側面12cのうち一方が対向方向Zに対して傾斜しており、内側面12bおよび外側面12cのうち他方が対向方向Zに対して平行に形成されていてもよい。
【0051】
第2粗面化部30Bの構成は図7の例に限定されない。第2粗面化部30Bは、内側面12bのみに形成されていてもよいし、外側面12cのみに形成されていてもよい。第2粗面化部30Bは、内側面12bまたは外側面12cの一部のみに形成されていてもよいし、内側面12bおよび外側面12cの全体にわたって形成されていてもよい。
【0052】
以上説明したように、本実施形態に係るコールドプレート1Dにおいて、凹部12は、凹部12の底面12aから第1面10aに向かう向きにおいて漸次凹部12の内径が大きくなるテーパ構造を有し、凹部12の側面には、第2粗面化部30Bが形成されている。この構成によれば、内側面12bおよび外側面12cの濡れ性が向上し、溶融した樹脂が凹部12からより飛び出しにくくなる。また、第2粗面化部30Bをレーザー照射によって形成する場合においては、凹部12がテーパ構造を有していることで、内側面12bまたは外側面12cに対して容易にレーザー光を照射することができる。したがって、内側面12bおよび外側面12cの濡れ性をより確実に向上させることができる。
【0053】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について説明するが、第1実施形態と基本的な構成は同様である。このため、同様の構成には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図8に示すコールドプレート1Eにおいて、対向方向Zにおける凹部12の寸法は、対向方向Zにおけるフランジ部23の寸法よりも大きい。
【0054】
このように対向方向Zにおける凹部12の寸法を大きくすることで、凹部12に溜められる溶融樹脂の体積を増加させることができる。つまり、溶融した樹脂が凹部12から溢れ出ることが抑制される。特に本実施形態に係るコールドプレート1Eにおいては、凹部12によって囲まれる空間の体積(凹部12の容積)は、フランジ部23の体積よりも大きい。このため、仮にフランジ部23全体が溶融したとしても、溶融した樹脂が凹部12から溢れることが抑制される。
【0055】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0056】
例えば、第1粗面化部30Aが形成され、樹脂カバー20が加熱融着されるのは底面12aでなくてもよく、例えば内側面12bや外側面12c等であってもよい。
【0057】
樹脂カバー20はフランジ部23を有していなくてもよい。この場合、周壁部22の下面がベースプレート10に対して加熱融着されていてもよい。
【0058】
凹部12の内面において第1粗面化部30Aが形成されずに樹脂カバー20がベースプレート10に対して加熱融着されていてもよい。また、第1粗面化部30Aが形成されている場合において、第1粗面化部30Aは凹部12の底面12aの全体にわたって形成されていてもよいし、底面12aのうち一部に形成されていてもよい。
【0059】
樹脂だまり13が凹部12によって囲まれる空間に連通していれば、樹脂だまり13の形状および構成は限定されない。例えば、図9に示すコールドプレート1Fのように、樹脂だまり13は複数(図9では4つ)形成されていてもよい。図9の例において、各樹脂だまり13はベースプレート10の第1面10aに開口している。この場合、例えば第1面10aに対してエッチング加工、切削加工、レーザー加工等を施すことによって樹脂だまり13を形成することができる。各樹脂だまり13は、対向方向Zからみて、凹部12から第1方向Xまたは第2方向Yにおける外側に向けて突出している。これにより、樹脂だまり13を形成する際にフィン11が邪魔になりにくくなる。以上説明したように、図9に示すコールドプレート1Fにおいて、対向方向Zからみて、樹脂だまり13は凹部12から外側に突出しており、樹脂だまり13は第1面10aに開口している。この構成により、樹脂だまり13の形成難度を下げることができる。
【0060】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態や変形例を適宜組み合わせてもよい。
【0061】
例えば、図5および図9のそれぞれに示す形態を組み合わせて、凹部12の底面12aから下方に窪む樹脂だまり13と、対向方向Zから見て凹部12から外側に突出する樹脂だまり13と、の両方を備えたコールドプレートを採用してもよい。
図8に示す対向方向Zにおける凹部12の寸法が対向方向Zにおけるフランジ部23の寸法より大きい構造を、第1~第4実施形態に適用してもよい。
【符号の説明】
【0062】
1A~1F…コールドプレート 10…ベースプレート 10a…上面(第1面) 10b…熱源面(第2面) 11…フィン 12…凹部 12a…底面(内面) 12b…内側面(内面、側面) 12c…外側面(内面、側面) 13…樹脂だまり 20…樹脂カバー 23…フランジ部 30A…第1粗面化部 30B…第2粗面化部 30a…微細孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9