(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】積層セラミック電子部品及びその実装基板
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20240625BHJP
H01G 2/06 20060101ALI20240625BHJP
H05K 1/18 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
H01G4/30 201M
H01G4/30 201C
H01G4/30 201N
H01G4/30 513
H01G4/30 515
H01G2/06 500
H05K1/18 K
(21)【出願番号】P 2019163752
(22)【出願日】2019-09-09
【審査請求日】2021-11-04
【審判番号】
【審判請求日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】10-2019-0065361
(32)【優先日】2019-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リー、ユン タエ
(72)【発明者】
【氏名】ジュン、 キュン ムーン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ハン
【合議体】
【審判長】井上 信一
【審判官】▲高▼橋 徳浩
【審判官】山本 章裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-182107(JP,A)
【文献】実開昭63-71524(JP,U)
【文献】特開昭62-145712(JP,A)
【文献】特開2015-50453(JP,A)
【文献】国際公開第2015/108151(WO,A1)
【文献】特開2018-170489(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 2/06
H01G 4/12
H01G 4/30
H05K 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに向かい合う第1面及び第2面、互いに向かい合う第3面及び第4面、及び互いに向かい合う第5面及び第6面を有するとともに、
誘電体層と、前記第1面及び第2面が互いに向かい合う方向に誘電体層を挟んで互いに対向するように配置された第1内部電極及び第2内部電極
と、を含む活性部、並びに前記活性部の前記第1面及び第2面側にそれぞれ形成されたカバー部を含むセラミック本体と、
前記セラミック本体の第5面及び第1面から第4面の第5面側の一部に配置される第1外部電極並びに前記セラミック本体の第6面及び第1面から第4面の第6面側の一部に配置される第2外部電極と
、
前記第1面及び第2面上で前記第1外部電極及び第2外部電極の間
の前記カバー部上に配置されるとともに前記第1外部電極及び第2外部電極と接着された補強部材
と、
前記補強部材と前記第1外部電極の界面及び前記補強部材と前記第2外部電極の界面に配置された接着層と、を含み、前記接着層は、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド(PAI)樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)樹脂、ポリスルホン(PS)樹脂、ポリエーテルスルホン(PES)樹脂、ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリエステル樹脂から1種以上を含む、積層セラミック電子部品。
【請求項2】
前記補強部材の熱膨張係数(Coefficient of Thermal Expansion、CTE)は、誘電体層の熱膨張係数の1倍から4倍の範囲内である、請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項3】
前記補強部材のヤング率は、誘電体層のヤング率の0.5倍以上である、請求項1または2に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項4】
前記補強部材は、前記セラミック本体の第3面及び第4面上で前記第1外部電極及び第2外部電極の間にさらに配置される、請求項1から3のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項5】
前記補強部材は、耐熱性樹脂を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項6】
前記補強部材は、熱硬化性樹脂及び繊維補強材を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項7】
前記補強部材は、チタン酸バリウム(BaTiO
3)系セラミック材料を含む、請求項1から
6のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項8】
前記セラミック本体を貫通して前記第1内部電極と連結される第1連結電極及び前記セラミック本体を貫通して前記第2内部電極と連結される第2連結電極をさらに含み、
前記第1連結電極は第1外部電極と電気的に連結され、前記第2連結電極は第2外部電極と電気的に連結される、請求項1から
7のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項9】
2つ以上の電極パッドを有するプリント回路基板と、
前記プリント回路基板上に設置された積層セラミック電子部品と、
前記電極パッドと前記積層セラミック電子部品とを連結する半田付けと、を含み、
前記積層セラミック電子部品は、
互いに向かい合う第1面及び第2面、互いに向かい合う第3面及び第4面、及び互いに向かい合う第5面及び第6面を有するとともに、
誘電体層と、前記第1面及び第2面が互いに向かい合う方向に誘電体層を挟んで互いに対向するように配置された第1内部電極及び第2内部電極
と、を含む活性部、並びに前記活性部の前記第1面及び第2面側にそれぞれ形成されたカバー部を含むセラミック本体と、
前記セラミック本体の第5面及び第1面から第4面の第5面側の一部に配置される第1外部電極並びに前記セラミック本体の第6面及び第1面から第4面の第6面側の一部に配置される第2外部電極と
、
前記第1面及び第2面上で前記第1外部電極及び第2外部電極の間
の前記カバー部上に配置されるとともに前記第1外部電極及び第2外部電極と接着された補強部材
と、
前記補強部材と前記第1外部電極の界面及び前記補強部材と前記第2外部電極の界面に配置された接着層と、を含み、前記接着層は、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド(PAI)樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)樹脂、ポリスルホン(PS)樹脂、ポリエーテルスルホン(PES)樹脂、ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリエステル樹脂から1種以上を含む、積層セラミック電子部品の実装基板。
【請求項10】
前記補強部材の熱膨張係数(Coefficient of Thermal Expansion、CTE)は、誘電体層の熱膨張係数の1倍から4倍の範囲内である、請求項
9に記載の積層セラミック電子部品の実装基板。
【請求項11】
前記補強部材のヤング率は、誘電体層のヤング率の0.5倍以上である、請求項
9または
10に記載の積層セラミック電子部品の実装基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミック電子部品及びその実装基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、MLCC(Multi Layer Ceramic Capacitor)を用いた電子機器の使用が急増している。特にスマートフォンの場合、5G時代が到来してキャパシタ数量が増加し、高容量化が必要とされている。一方、技術的には、セット製品の小型化によりMLCC及びインダクタのような受動素子の実装面積が減少しており、これによって受動素子の小型化及び薄型化が益々求められている状況である。したがって、積層セラミックキャパシタ及びインダクタをIC及びAPとパッケージ化するか、またはAP下端部にLSC型に実装して実装自由度を高める法案が考慮されている。
【0003】
上記の場合、単なる実装面積の減少にとどまらず、基板内で発生するESLの減少にも効果が大きいため、厚さが薄い積層セラミックキャパシタ製品に対する需要が増加している。
【0004】
しかし、積層セラミックキャパシタは厚さが薄いと、容量が減少するため、一般に横/縦の長さを伸ばす方法で容量を維持する。この場合、キャパシタは長さに比べて薄い厚さを有するようになり、熱荷重など外部の応力が作用すると、チップクラックが発生しやすくなるという問題がある。
【0005】
したがって、厚さが薄い積層セラミックキャパシタを商業的に適用するためには、上記厚さが薄い積層セラミックキャパシタに加わる応力を緩和させ、且つクラックを防止することができる積層セラミックキャパシタの構造を提供して構造的信頼性を向上させる必要性が提起されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一目的は、クラックの発生を防止することができる積層セラミック電子部品及びその実装基板を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、部品に加わる応力を緩和することができる積層セラミック電子部品及びその実装基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態は、誘電体層を含み、互いに向かい合う第1面及び第2面、互いに向かい合う第3面及び第4面、及び互いに向かい合う第5面及び第6面を有するセラミック本体と、上記セラミック本体の第5面及び第6面にそれぞれ配置される第1外部電極及び第2外部電極と、を含み、上記第1外部電極及び第2外部電極と接着され、上記第1面及び第2面に配置された補強部材を含む、積層セラミック電子部品を提供することができる。
【0009】
本発明の他の実施形態は、2つ以上の電極パッドを有するプリント回路基板と、上記プリント回路基板上に設置された積層セラミック電子部品と、上記電極パッドと上記積層セラミック電子部品とを連結する半田付けと、を含み、上記積層セラミック電子部品は、誘電体層を含み、互いに向かい合う第1面及び第2面、互いに向かい合う第3面及び第4面、及び互いに向かい合う第5面及び第6面を有するセラミック本体と、上記セラミック本体の第5面及び第6面にそれぞれ配置される第1外部電極及び第2外部電極と、を含み、上記第1外部電極及び第2外部電極と接着され、上記第1面及び第2面に配置された補強部材を含む、積層セラミック電子部品の実装基板を提供することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一実施形態によると、クラックの発生を防止し、且つ部品に加わる応力を緩和することができる積層セラミック電子部品及びその実装基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】積層セラミック電子部品で発生するクラックを示す模式図である。
【
図2】本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品を示す斜視図である。
【
図4】本発明の他の実施形態による積層セラミック電子部品を示す斜視図である。
【
図6】本発明の他の実施形態による積層セラミック電子部品を示す斜視図である。
【
図8】本発明の他の実施形態による積層セラミック電子部品を示す斜視図である。
【
図10】本発明の一実施形態による補強部材を付着する前の積層セラミックキャパシタを示す斜視図である。
【
図11】本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタの断面図である。
【
図12】本発明の他の実施形態による補強部材を付着する前の積層セラミックキャパシタを示す斜視図である。
【
図13】本発明の他の実施形態による積層セラミックキャパシタの断面図である。
【
図14】本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品の実装基板を示す斜視図である。
【
図15】本発明による補強部材の熱膨張係数の変化に対する応力の変化を示すグラフである。
【
図16】本発明による補強部材のモジュラスの変化に対する応力の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために拡大縮小表示(又は強調表示や簡略化表示)がされることがあり、図面上の同一の符号で示される要素は同一の要素である。
【0013】
明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とするとき、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外する意味ではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0014】
本発明は、積層セラミック電子部品に関するものであり、上記電子部品としては、キャパシタ、インダクタ、圧電体素子、バリスタ、またはサーミスタなどが挙げられる。
【0015】
図1は基板上に積層セラミック電子部品が適用された場合を示す模式図である。
図1を参照すると、外部からの引張応力などが加わる場合、積層セラミック電子部品にクラックが発生し得る。例えば、外部からの熱荷重が印加されると、基板、半田及び積層セラミック電子部品の熱膨張係数が異なって熱応力が発生し、このような応力が集中する部分で電子部品のクラックが発生する。本発明は、外部応力を緩和してクラックを防止することができる積層セラミック電子部品に関するものである。
【0016】
本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品は、誘電体層を含み、互いに向かい合う第1面及び第2面、互いに向かい合う第3面及び第4面、及び互いに向かい合う第5面及び第6面を有するセラミック本体と、上記セラミック本体の第5面及び第6面にそれぞれ配置される第1外部電極及び第2外部電極と、を含み、上記第1外部電極及び第2外部電極と接着され、上記第1面及び第2面に配置された補強部材を含むことができる。
【0017】
図10は本発明の積層セラミック電子部品の斜視図である。
図10を参照すると、本発明による積層セラミック電子部品のセラミック本体は、Z軸方向に互いに向かい合う第1面及び第2面を有することができ、上記第1面及び第2面と連結され、且つY軸方向に互いに向かい合う第3面及び第4面を有することができ、上記第1面~第4面と連結され、且つX軸方向に互いに向かい合う第5面及び第6面を有することができる。
【0018】
本発明の一実施形態において、セラミック本体110の形状は特に制限されないが、図示のように六面体状であることができる。
【0019】
図面上に表示されたX、Y、Zはそれぞれ長さ方向、幅方向及び厚さ方向を意味することができる。ここで、厚さ方向は、誘電体層が積層された積層方向と同一の概念として用いられることができる。
【0020】
本発明の一実施形態によると、上記セラミック本体の第5面及び第6面にはそれぞれ、第1外部電極及び第2外部電極が配置されることができる。また、上記セラミック本体の第1面及び第2面には、補強部材が配置されることができる。上記補強部材は、セラミック本体の第1面及び第2面に接着されていてもよく、第1外部電極及び第2外部電極と接着されていてもよい。本明細書において「接着」とは、接着物と被着物の表面が界面の結合力によって結合されている状態を意味することができる。上記界面の結合力は、接着物と被着物の表面分子間の化学的相互作用によるものであることができ、または機械的結合によるものであることができる。
【0021】
上記補強部材は、第1外部電極及び第2外部電極と物理的または化学的結合によって接着されていることができる。上記補強部材を第1外部電極または第2外部電極と分離するために必要な引張強度を接着力としたときに、上記補強部材と、第1外部電極または第2外部電極との間の接着力は特に制限されないが、例えば、1Mpa以上であることができる。
【0022】
図2は本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品を示す斜視図である。
図2を参照すると、本発明の積層セラミック電子部品は、誘電体層を含むセラミック本体110と、第1外部電極131及び第2外部電極132と、を含むことができる。また、上記第1外部電極131及び第2外部電極132に接着され、セラミック本体の第1面に配置された補強部材151と、第2面に配置された補強部材152と、を含むことができる。
【0023】
図3は
図2の斜視図をY軸方向から見た正面図である。
図3を参照すると、本発明の補強部材151、152は、セラミック本体110を挟んでZ軸方向に互いに向かい合うように配置することができ、第1外部電極131及び第2外部電極132と接着されていることができる。
【0024】
上記補強部材151、152は、第1外部電極131及び第2外部電極132と接着されているため、電子部品の外部からの応力を緩和させることができ、これによるクラックを防止することができる。
【0025】
本発明の他の実施形態において、本発明による積層セラミック電子部品に含まれる補強部材の熱膨張係数(Coefficient of Thermal Expansion、CTE)は、誘電体層の熱膨張係数の1倍から4倍の範囲内であることができる。上記熱膨張係数は、25℃の出発温度及び5℃/minの昇温速度で0.05Nの荷重及び1気圧の条件で測定された値であることができる。上記熱膨張係数は、TA instruments社のTMA Q400などのようなTMA(Thermomechanical Analyzer)装備で測定された値であることができる。
【0026】
本発明による積層セラミック電子部品の補強部材の熱膨張係数が誘電体層の熱膨張係数の1倍から4倍の範囲内に属することにより、外部の熱による応力を効果的に低減させることができ、外部応力によるクラックを防止することができる。上記補強部材の熱膨張係数が誘電体層の熱膨張係数の1倍から4倍の範囲を満たすと、特に制限されないが、例えば、3.8ppm/℃以上、4.2ppm/℃以上、4.8ppm/℃以上、5.4ppm/℃以上、6.0ppm/℃以上、6.6ppm/℃以上、7.2ppm/℃以上、7.4ppm/℃以上または7.6ppm/℃以上であることができ、38ppm/℃以下、36ppm/℃以下、34ppm/℃以下、32ppm/℃以下、31ppm/℃以下または30.4ppm/℃以下であることができる。
【0027】
図15は本発明による補強部材の熱膨張係数の変化に対する、補強部材を適用しない場合に備えて補強部材を適用した場合の電子部品に加わる応力の相対値(補強部材を適用した場合/補強部材を適用していない場合)を示すグラフである。
【0028】
図15を参照すると、補強部材の熱膨張係数が増加するにつれて、電子部品に加わる応力が低くなり、再び一定のレベルを超えて高くなる傾向が確認できる。これは、誘電体層の熱膨張係数に近接する領域では、上記補強部材が誘電体層に加わる応力を緩和させることができることを示唆するが、所定の範囲以上または以下では、誘電体層に加わる応力がむしろ高くなる結果を示す。
【0029】
上記
図15は誘電体層の熱膨張係数が約7.6ppm/℃である場合を基準として作成したグラフである。
図15を参照すると、補強部材の熱膨張係数が誘電体層の熱膨張係数の1倍に該当する7.6ppm/℃から誘電体層の熱膨張係数の4倍に該当する30.4ppm/℃の範囲まで、電子部品に加わる応力が60%未満と大きく低減される結果が確認できる。
【0030】
即ち、上記結果を参照すると、本発明の一実施形態による補強部材の熱膨張係数が誘電体層の熱膨張係数の1倍から4倍の範囲内に属することにより、外部からの熱による応力を効果的に低減させることができ、外部応力によるクラックを防止することができる。
【0031】
本発明の他の実施形態において、本発明による積層セラミック電子部品の補強部材のモジュラスは、誘電体層のモジュラスの0.5倍以上であることができる。上記モジュラスは、ヤング率(Young's Modulus)を意味することができ、例えば、TA instruments社のTMA Q400などのような動的機械分析機(Dynamic Mechanical Analysis、DMA)によって25℃、1気圧で測定された値であることができる。上記補強部材のモジュラスの上限は特に制限されないが、例えば、誘電体層のモジュラスの50倍以下であることができる。本発明による補強部材のモジュラスが誘電体層のモジュラスの0.5倍以上の範囲であれば特に制限されないが、例えば、40.0GPa以上、41.0GPa以上、41.5GPa以上、42.0GPa以上、42.5GPa以上、43.0GPa以上、43.5GPa以上、44.0GPa以上、44.5GPa以上、45.0GPa以上または45.5GPa以上であることができ、上限は特に制限されないが、4500GPa以下であることができる。本発明による補強部材のモジュラスが上記範囲を満たす場合、電子部品に加わる応力をさらに緩和させることができる。
【0032】
図16は本発明による補強部材のモジュラスの変化に対する、補強部材を適用しない場合に備えて補強部材を適用した場合の電子部品に加わる応力の相対値(補強部材を適用した場合/補強部材を適用していない場合)を示すグラフである。
【0033】
図16を参照すると、補強部材のモジュラスが増加するにつれて、電子部品に加わる応力が低くなる結果が確認できる。これは、補強部材のモジュラスが増加するにつれて、外部の応力に対する変化の程度が小さくなることを意味する。したがって、補強部材のモジュラスを高めて電子部品に加わる外部応力の影響を最小化することができる。
【0034】
上記
図16は誘電体層のモジュラスが91.0GPaである場合を基準として作成したグラフである。
図16を参照すると、補強部材のモジュラスが誘電体層のモジュラスの0.5倍である約45.5GPaである場合、電子部品に加わる応力が60%未満と大きく低減される結果が確認できる。
【0035】
即ち、上記結果を参照すると、本発明の一実施形態による補強部材のモジュラスが誘電体層のモジュラスの0.5倍以上の範囲内に属することにより、外部の応力を効果的に低減させることができ、外部応力によるクラックを防止することができる。
【0036】
本発明のさらに他の実施形態において、補強部材は、セラミック本体の第3面及び第4面にさらに配置されることができる。
図4は本発明の上記実施形態の斜視図であり、
図5は
図4をY軸方向から見た正面図である。
図4及び
図5を参照すると、上記補強部材251は、セラミック本体210の第1面、第2面、第3面及び第4面に配置されることができ、第1外部電極231及び第2外部電極232に接着されていることができる。
【0037】
したがって、本実施形態では、本発明の積層セラミック電子部品を外部から見たときに、第1外部電極231、第2外部電極232及び補強部材251のみが見られ、セラミック本体210は、第1及び第2外部電極231、232と補強部材251の内部に位置することができる。本実施形態のように、セラミック本体210の第1面、第2面、第3面及び第4面に補強部材が配置され、上記補強部材が第1外部電極231及び第2外部電極232と接着されている場合、補強部材251による応力緩和効果が最大化して、電子部品に発生し得るクラックを防止することができる。
【0038】
本発明の一実施形態において、本発明による積層セラミック電子部品に適用される補強部材は、耐熱性樹脂を含むことができる。上記耐熱性樹脂は、電子部品の実装温度(300℃以上)に耐えることができる高耐熱性樹脂であることができる。上記耐熱性樹脂で補強部材を形成する場合、セラミック本体及び外部電極が形成されている電子部品の外側に直接耐熱性樹脂を塗布した後、それを硬化させて補強部材を形成することができる。この場合、耐熱性樹脂の硬化過程で第1外部電極及び第2外部電極と補強部材とが接着されることができる。
【0039】
本発明の他の実施形態において、本発明による積層セラミック電子部品に適用される補強部材は、熱硬化性樹脂及び繊維補強材を含むことができる。上記熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド(PAI)樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)樹脂、ポリスルホン(PS)樹脂、ポリエーテルスルホン(PES)樹脂、ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリエステル樹脂からなるグループから選択される1種以上を含むことができる。上記繊維補強材は、補強部材の強度を高めるために添加されるものであり、例えば、ガラス繊維(Glass Fiber、Glass Cloth、Glass Fabric)であることができる。本実施形態による積層セラミック電子部品は、セラミック本体及び外部電極が形成されている電子部品の外側に繊維補強材を含む熱硬化性樹脂を塗布した後、それを硬化させて補強部材を形成することができる。この場合、熱硬化性樹脂の硬化過程で、第1外部電極及び第2外部電極と補強部材とが接着されることができる。
【0040】
本発明の他の実施形態によると、補強部材と第1外部電極の界面及び補強部材と第2外部電極の界面に接着層がさらに配置されることができる。
図6は本実施形態による積層セラミック電子部品の斜視図であり、
図7は
図6をY軸方向から見た正面図である。
図6及び
図7を参照すると、セラミック本体310の第1面及び第2面に配置され、第1外部電極331及び第2外部電極332に接着される補強部材351は、接着層361、362、363、364を介して接着されていることができる。
【0041】
図8及び9は本発明のさらに他の実施形態を示す。
図8は本実施形態による積層セラミック電子部品の斜視図であり、
図9は
図8をY軸方向から見た正面図である。
図8及び
図9を参照すると、セラミック本体410の第1面、第2面、第3面及び第4面に配置され、第1外部電極431及び第2外部電極432に接着される補強部材451は、接着層463、464を介して接着されていることができる。
【0042】
上記接着層は、補強部材を第1外部電極及び第2外部電極と接着させることができるものであれば、特に制限されないが、例えば、上述の熱硬化性樹脂などを用いることができる。
【0043】
本発明の一実施形態において、補強部材は、チタン酸バリウム(BaTiO3)系セラミック材料を含むことができる。上記補強部材は、チタン酸バリウム(BaTiO3)系セラミックパウダーに、本発明の目的に応じて様々なセラミック添加剤、有機溶剤、可塑剤、結合剤、分散剤などが添加されることができ、例えば、誘電体層と同一の組成のセラミック材料を用いることができる。
【0044】
本発明の一実施形態によると、本発明の積層セラミック電子部品のセラミック本体は、誘電体層を挟んで互いに対向するように配置された第1内部電極及び第2内部電極を含むことができる。
図10は本発明の補強部材を付着する前の積層セラミック電子部品を示す斜視図であり、
図11は
図10の積層セラミックキャパシタに補強部材を付着した様子を示す断面図である。
図10及び
図11を参照すると、本実施形態による積層セラミック電子部品は、誘電体層511を含むセラミック本体510と、上記セラミック本体510の両側端部に形成された第1及び第2外部電極531、532と、を含み、上記セラミック本体510は、上記誘電体層511を挟んで上記セラミック本体510の両端面を介して交互に露出するように積層された複数の第1及び第2内部電極521、522を含んで容量が形成される活性部と、上記活性部の上部及び下部に形成されたカバー部と、を含むことができる。
【0045】
以下では、本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品を説明し、特に積層セラミックキャパシタを説明するが、これに制限されるものではない。
【0046】
一つの例示において、上記セラミック本体510の厚さは100μm以下であることができる。上記のようにセラミック本体510を100μm以下の厚さで製作することにより、基板内蔵用積層セラミックキャパシタ及びAP下端部にLSC型に実装することができる積層セラミックキャパシタに適用することができる。また、上記セラミック本体510の厚さは、第1面及び第2面間の垂直距離であることができる。
【0047】
本発明の一実施形態によると、上記誘電体層511を形成する原料は十分な静電容量を得ることができる限り、特に制限されず、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)粉末であることができ、上記チタン酸バリウム粉末にカルシウム(Ca)、ジルコニウム(Zr)及び/またはストロンチウム(Sr)などが一部固溶されていることができる。
【0048】
上記誘電体層511を形成する材料は、チタン酸バリウム(BaTiO3)などのパウダーに、本発明の目的に応じて様々なセラミック添加剤、有機溶剤、可塑剤、結合剤、分散剤などが添加されることができる。
【0049】
上記誘電体層511の形成に用いられるセラミック粉末の平均粒径は、特に制限されず、本発明の目的を達成するために調節されることができ、例えば、400nm以下に調節されることができる。
【0050】
このようなセラミック本体510は、キャパシタの容量形成に寄与する部分としての活性部と、上下マージン部として、活性部の上下部にそれぞれ形成された上部及び下部カバー部とで構成されることができる。
【0051】
上記活性部は、部誘電体層511を挟んで複数の第1及び第2内部電極521、522を繰り返し積層して形成されることができる。
【0052】
上記上部及び下部カバー部は、内部電極を含まないことを除いては、誘電体層511と同一の材料及び構成を有することができる。
【0053】
上記上部及び下部カバー部は、単一の誘電体層または2つ以上の誘電体層を活性部の上下面にそれぞれ上下方向に積層して形成することができ、基本的には、物理的または化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0054】
一般に、積層セラミックキャパシタ内部のセラミック膜(誘電体層)は、高い破壊強度を有する金属膜(内部電極)と交互に積層されているため、セラミック物質からなる単一の構造に比べて高い破壊強度を有する。しかし、カバー部を構成するセラミック層は、金属膜によって保護されないため、一定以上の厚さを確保できないと、破壊強度が急激に低くなる。具体的には、カバー部の厚さがセラミック本体の長さに対して1/40以下であるか、またはセラミック本体の厚さに対して1/5以下に減少する場合、破壊強度は急激に低くなる。
【0055】
これによって、一般の基板内蔵用積層セラミックキャパシタの場合には、上部及び下部カバー部の厚さを厚く形成して、破壊強度の低下に伴う内部電極の損傷を防止している。
【0056】
しかし、上述のように上部及び下部カバー部の厚さを厚く形成する場合、基板内蔵用積層セラミックキャパシタ内部の電流経路が長くなるという問題があるため、等価直列インダクタンス(ESL)を低減することが容易でないという問題がある。また、本発明の一実施形態のように、100μm以下の厚さを有する積層セラミックキャパシタは、カバー部の厚さを厚く形成することができないという問題がある。
【0057】
これに対し、本発明による積層セラミック電子部品は、補強部材を適用することにより、上部及び下部カバー部の厚さを厚く形成せず、外部応力を低減させてクラックの発生を防止することができる。
【0058】
図12は本発明の他の実施形態において補強部材を付着していない積層セラミックキャパシタを示す斜視図であり、
図13は
図12の積層セラミックキャパシタに補強部材を付着した様子を示す断面図である。
図12及び
図13を参照すると、本発明の積層セラミック電子部品は、セラミック本体610を貫通して上記第1内部電極621と連結される第1連結電極641と、上記本体610を貫通して上記第2内部電極622と連結される第2連結電極642と、をさらに含み、上記第1連結電極641は、第1外部電極631と電気的に連結され、上記第2連結電極642は、第2外部電極6312と電気的に連結されることができる。
【0059】
上記第1及び第2内部電極、第1及び第2外部電極、及び第1及び第2連結電極は、導電性材料により形成されることができ、上記導電性材料は、特に限定されないが、ニッケル(Ni)及び/または銅(Cu)などを含むことができる。
【0060】
本発明はまた、積層セラミック電子部品の実装基板に関するものである。本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品の実装基板は、2つ以上の電極パッドを有するプリント回路基板と、上記プリント回路基板上に設置された積層セラミック電子部品と、上記電極パッドと上記積層セラミック電子部品とを連結する半田付けと、を含み、上記積層セラミック電子部品は、誘電体層を含み、互いに向かい合う第1面及び第2面、互いに向かい合う第3面及び第4面、及び互いに向かい合う第5面及び第6面を有するセラミック本体と、上記セラミック本体の第5面及び第6面にそれぞれ配置される第1外部電極及び第2外部電極と、を含み、上記第1外部電極及び第2外部電極と接着され、上記第1面及び第2面に配置された補強部材を含むことができる。
【0061】
本発明の他の実施形態において、本発明による積層セラミック電子部品の実装基板の補強部材の熱膨張係数(Coefficient of Thermal Expansion、CTE)は、誘電体層の熱膨張係数の1倍から4倍の範囲内であることができる。
【0062】
本発明のさらに他の実施形態において、本発明による積層セラミック電子部品の実装基板の補強部材のモジュラスは、誘電体層のモジュラスの0.5倍以上であることができる。
【0063】
その他に、積層セラミック電子部品に対する具体的な説明は、上述の本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品の特徴と同一であるため、ここでは省略する。
【0064】
下記表1は、補強部材を適用していない積層セラミックキャパシタに加わる応力を1としたときに、補強部材を適用した積層セラミックキャパシタに加わる応力の相対値を示す。
【0065】
【0066】
上記サンプルは、熱膨張係数が7.6ppm/℃であり、モジュラスが136.5GPaであるセラミックシートを補強部材として用い、ノボラック系エポキシ接着剤を用いて外部電極に補強部材を接着させて製造した。
【0067】
サンプル1は補強部材がない構造の結果であり、サンプル2はセラミック本体の第1面~第4面に補強部材を接着した構造の結果である。サンプル3は補強部材をセラミック本体の第1面、即ち上面のみに接着した構造の結果であり、サンプル4は補強部材をセラミック本体の第2面、即ち下面のみに接着した構造の結果である。
【0068】
上記表1を参照すると、セラミック本体の上部/下部の一方のみに補強部材を接着した場合、キャパシタに加わる応力がむしろ増加することが確認できる。これは、補強部材を接着しない領域に応力が集中して応力の低減が困難である結果を示す。
【0069】
これに対し、セラミック本体の第1面~第4面に補強部材を接着したサンプル2の場合、従来に比べて約59%の最大応力が減少したことが確認できる。これは、外部電極に接着されている補強部材がキャパシタに加わる応力を分散させることにより、キャパシタの誘電体層に加わる応力を緩和させることができることを示唆する。これにより、外部応力によるクラックを防止できることが確認できる。
【0070】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲で多様な修正及び変形が可能であるということは、当技術分野の通常の知識を有する者には明らかである。
【符号の説明】
【0071】
11、110、210、310、410、510、610、710 セラミック本体
31、131、231、331、431、531、631、731 第1外部電極
32、132、232、332、432、532、632、732 第2外部電極
110、210、310、410、510、610、710 セラミック本体
641 第1連結電極
642 第2連結電極
151、152、251、351、352、451、751 補強部材
361、362、363、364、463、464 接着層
511 誘電体層
771、772 半田付け
801 プリント回路基板