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  • 特許-電気化学デバイス用の固体電解質 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】電気化学デバイス用の固体電解質
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/139 20100101AFI20240625BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20240625BHJP
   H01G 11/00 20130101ALI20240625BHJP
   H01G 11/24 20130101ALI20240625BHJP
   H01G 11/30 20130101ALI20240625BHJP
   H01G 11/56 20130101ALI20240625BHJP
   H01G 11/76 20130101ALI20240625BHJP
   H01G 11/78 20130101ALI20240625BHJP
   H01G 11/84 20130101ALI20240625BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20240625BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240625BHJP
   H01M 10/056 20100101ALI20240625BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20240625BHJP
   H01M 50/119 20210101ALI20240625BHJP
   H01M 50/121 20210101ALI20240625BHJP
   H01M 50/126 20210101ALI20240625BHJP
   H01M 50/534 20210101ALI20240625BHJP
   H01M 50/562 20210101ALI20240625BHJP
【FI】
H01M4/139
H01B1/06 A
H01G11/00
H01G11/24
H01G11/30
H01G11/56
H01G11/76
H01G11/78
H01G11/84
H01M4/13
H01M10/052
H01M10/056
H01M10/0585
H01M50/119
H01M50/121
H01M50/126
H01M50/534
H01M50/562
【請求項の数】 34
(21)【出願番号】P 2020560766
(86)(22)【出願日】2019-05-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-30
(86)【国際出願番号】 FR2019051032
(87)【国際公開番号】W WO2019215410
(87)【国際公開日】2019-11-14
【審査請求日】2022-03-10
(31)【優先権主張番号】1853923
(32)【優先日】2018-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514110783
【氏名又は名称】アイ テン
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ギャバン ファビアン
(72)【発明者】
【氏名】フォレ アン-シャーロット
【審査官】結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-042790(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0209893(US,A1)
【文献】特表2015-504478(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/139
H01M 4/13
H01M 10/056
H01M 10/0585
H01M 10/052
H01M 50/10
H01M 50/531
H01M 50/543
H01B 1/06
H01G 11/56
H01G 11/30
H01G 11/78
H01G 11/84
H01G 11/00
H01G 11/24
H01G 11/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオンバッテリ又はスーパーキャパシタ用の電極に堆積されている固体電解質製造する方法であって、以下のステップを含む方法:
a.電極として使用できる材料の層(「電極層」)で事前に被覆された導電性基板を準備し、
b.電解質及び/又は電子絶縁体として使用できる材料の粒子をコアとして含み、これにPEOを含むシェルがグラフトされた、コアシェル粒子の懸濁液から、電解質層を前記電極層へ、堆積させ;
c.そのようにして得られた前記電解質層を乾燥させ;
d.任意で、機械的圧縮及び/又は熱処理により前記電解質層を緻密化させる。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
一次コア粒子の平均サイズD50は100nm未満である、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、
一次コア粒子の平均サイズD50は30nm以下である、方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の方法において、
前記コアの粒子は、水熱又はソルボサーマル合成によって得られる、方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の方法において、
前記コアシェル粒子の前記シェルの厚さは1~100nmである、方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の方法において、
ステップc)又はd)で得られた前記電解質層の厚さは、10μm未満である、方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の方法において、
前記PEOは、質量平均モル質量が7000g/mol未満である、方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の方法において、
ステップb)で使用されるコアシェル粒子の前記懸濁液の乾燥抽出物は、30重量%未満である、方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の方法の使用であって
電子的、電気的又は電気技術的デバイスにおける、固体電解質の製造のための使用。
【請求項10】
請求項9に記載の使用であって
前記デバイスは、バッテリ、キャパシタ、スーパーキャパシタ、容量、抵抗器、インダクタ、トランジスタからなる群において選択された、使用。
【請求項11】
電解質及び/又は電子絶縁体として使用できる材料の粒子をコアとして含み、これにPEOを含むシェルがグラフトされたコアシェル粒子を含む、固体状の電解質。
【請求項12】
請求項11に記載の電解質であって、
固体電解質及びPEOを含み、
固体電解質/PEOの体積比が35%超える電解質。
【請求項13】
請求項11または12に記載の電解質であって、
固体電解質/PEOの体積比が70%を超える電解質。
【請求項14】
請求項11から13のいずれか一項に記載の電解質であって、
多孔度が20%未満である電解質。
【請求項15】
請求項14に記載の電解質であって、
多孔度が10%未満、である電解質。
【請求項16】
少なくとも1つの固体状の請求項11~15のいずれか1項に記載の電解質を備える電気化学デバイス。
【請求項17】
請求項1~8のいずれか1項に記載の方法を実施して、リチウムイオンバッテリを製造するための方法であって、以下のステップを含む方法:
i.アノード及びカソードとして使用できる材料の層(それぞれ「アノード層」、「カソード層」)で事前に被覆され、且つ、それらの面の少なくとも1つの少なくとも一部がカソード層、アノード層でそれぞれ被覆された、前記バッテリの集電体として使用される少なくとも2つの導電性基板を準備し、
ii.電解質及び/又は電子絶縁体として使用できる材料の粒子をコアとして含み、これにPEOを含むシェルがグラフトされた、コアシェルナノ粒子を含むコロイド懸濁液を準備し、
iii.ステップii)で得たコアシェル粒子を含む懸濁液から電解質層を、ステップi)で得たカソード層及び/又はアノード層へ堆積させ、第1及び/又は第2の中間構造を得て、
iv.ステップiii)でそのようにして得た前記層を乾燥させ、
v.前記第1及び/又は第2の中間構造から積層体を形成し、以下によって、「基板/アノード/電解質/カソード/基板」タイプの積層体を得る:
・前記第1の中間構造にアノード層を堆積させること、若しくは、
・前記第2の中間構造にカソード層を堆積させることの、いずれか、
・又は、2つの電解質層のうち一方が他方の上に配置されるように、前記第1の中間構造及び前記第2の中間構造を重ね合わせること、
vi.前のステップで得た前記積層体を、前記積層体の機械的圧縮及び/又は熱処理により高密度化させ、バッテリを得る。
【請求項18】
請求項17に記載の方法において、
前記電解質層は、電気泳動又はディップコーティングにより堆積される、方法。
【請求項19】
請求項17に記載の方法において、
前記カソードは、
高密度電極、
又は、ALDにより若しくは溶液CSDで化学的に、電子絶縁性の層でコーティングされた高密度電極、
又は、多孔質電極、
又は、ALDにより若しくは溶液CSDで化学的に、電子絶縁性の層でコーティングされた多孔質電極、
又は、メソポーラス電極、
又は、ALDにより若しくは溶液CSDで化学的に、電子絶縁性の層でコーティングされたメソポーラス電極であり、
及び/又は、前記アノードは、
高密度電極、
又は、ALDにより若しくは溶液CSDで化学的に、電子絶縁性の層でコーティングされた高密度電極、
又は、多孔質電極、
又は、ALDにより若しくは溶液CSDで化学的に、電子絶縁性の層でコーティングされた多孔質電極、
又は、メソポーラス電極、
又は、ALDにより若しくは溶液CSDで化学的に、電子絶縁性の層でコーティングされたメソポーラス電極である、
方法。
【請求項20】
請求項17から19のいずれか一項に記載の方法おいて、
ステップvi)の後、以下を行う方法:
- 前記バッテリに、以下を、交互に連続して堆積させる:
・前記バッテリの上の、パリレン及び/又はポリイミドの、少なくとも1つの第1層、
・パリレン及び/又はポリイミドの前記第1層の上の、ALD(原子層堆積)による、電気絶縁性の材料で構成された、少なくとも1つの第2層、
・そして、少なくとも1つの第1層及び少なくとも1つの第2層の交互の連続の上に、前記バッテリを、前記バッテリの機械的損傷から保護することを可能にするための層を堆積させ、前記バッテリの封止システムを形成し、
- そのように封止された前記バッテリを、2つの切断面に沿って切断し、前記バッテリのアノード及びカソードの接続部を前記切断面の各々に露出させ、前記封止システムが前記バッテリの6つの面のうち4つを被覆するようにし、
- これらのアノード及びカソード接続部において、並びにその周囲において、以下を連続して堆積させる:
・第1の導電層(任意で)、
・前記第1の導電層に堆積される、銀を充填したエポキシ樹脂ベースの第2層、
・前記第2層に堆積される、ニッケルベースの第3層、
・前記第3層に堆積される、スズ又は銅ベースの第4層。
【請求項21】
請求項20に記載の方法おいて、
前記バッテリを前記バッテリの機械的損傷から保護することを可能にするための前記層は、シリコーン、エポキシ樹脂又はパリレンで構成された、方法。
【請求項22】
請求項20に記載の方法おいて、
前記封止システムが前記バッテリの6つの面のうち4つを、連続して被覆する、方法。
【請求項23】
請求項20に記載の方法おいて、
前記第1の導電層を、ALDによって、堆積させる、方法。
【請求項24】
請求項17から19のいずれか一項に記載の方法において、
ステップvi)の後、以下を行う、方法:
- 前記バッテリに、以下を含む、一連の層によって、すなわちシーケンスによって形成された、封止システムを、連続して交互に堆積させる:
・組み立てられた前記積層体に堆積される、第1の被覆層、
・前記第1の被覆層に原子層堆積によって堆積される、電気絶縁性の材料で構成された、第2の被覆層、
・このシーケンスは、z≧1でz回繰り返され得る、
- この連続した層において、エポキシ樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド、ポリアミド、ポリウレタン、シリコーン、ゾルゲルシリカ又は有機シリカから選択された材料の、最後の被覆層を、堆積させ、
- そのように封止された前記バッテリを、2つの切断面に沿って切断し、前記バッテリのアノード及びカソードの接続部を前記切断面の各々に露出させ、前記封止システムが前記バッテリの6つの面のうち4つを被覆するようにし、
- これらのアノード及びカソードの接続部において、並びにその周囲において、以下を連続して堆積させる:
・ グラファイトを充填した材料の、第1層、
・ 前記第1層に堆積させた、銅のナノ粒子で充填したインクから得られた金属銅を含む、第2層、
- 金属銅の層による、前記カソード及びアノード接続部の被覆を得るために、得られた前記層を熱処理し、
- この金属銅の層において及びその周囲において、以下を、連続して堆積させてもよい:
・ 最小のコストで前記バッテリの気密性を確保するために堆積された、スズ-亜鉛合金の第1層、
・ スズ-亜鉛合金のこの第1層に堆積された、電着によって堆積された純粋なスズベースの第2層、又は、銀、パラジウム及び銅ベースの、合金を含む第2層。
【請求項25】
請求項24に記載の方法において、
前記封止システムは、zシーケンスによって、形成された、方法。
【請求項26】
請求項24に記載の方法において、
前記第1の被覆層は、パリレン、F型のパリレン、ポリイミド、エポキシ樹脂、シリコーン、ポリアミド及び/又はそれらの混合物から選択される材料で形成される、方法。
【請求項27】
請求項24に記載の方法において、
前記グラファイトを充填した材料は、グラファイトを充填したエポキシ樹脂である、方法。
【請求項28】
請求項24に記載の方法において、
前記スズ-亜鉛合金の第1層は、溶融スズ-亜鉛浴への浸漬によって堆積された、方法。
【請求項29】
請求項24に記載の方法において、
前記得られた層は、赤外線フラッシュランプによって熱処理された、方法。
【請求項30】
請求項20に記載の方法において、
前記アノード及びカソード接続部は、前記積層体の反対側にある、方法。
【請求項31】
電池の集電体として使用できる第1の導電性基板と、アノード層と、電解質層と、カソード層と、電池の集電体として使用できる第2の導電性基板と、を含む積層体を有し、
前記電解質層は、コアとシェルを含むコアシェルナノ粒子を含み、
- 前記シェルはPEOを含み、
- 前記コアは、以下からなるグループから選択される、リチウムイオンバッテリ:
- Al、SiO、ZrO
- 一般式Li (TOのガーネット、ここで、
・Aは、酸化状態+IIのカチオンを表し;
・Aは、酸化状態+IIIのカチオンを表し;
・(TO)は、Tが酸化状態+IVの原子で、酸素原子によって形成される四面体の中心に位置する、アニオンを表し、酸化状態+IVの元素Tは、その全部又は一部酸化状態+III又は+Vの原子で置き換えることができ;
・dは2~10であり;xは2.6~3.4であり;yは1.7~2.3であり、zは2.9~3.1である;
- リン酸リチウム、ホウ酸リチウム、酸窒化物、
- LiPOで表され、xは~2.8且つ2y+3zは~7.8且つ0.16≦z≦0.4であって、LiPONと呼ばれる、リチウムの酸窒化物及びリンに基づくリチウム化合物、又はLiPOで表される化合物あって2x+3y+2z=5=wである化合物、又はLiPOで表される化合物あって3.2≦x≦3.8、0.13≦y≦0.4、0≦z≦0.2、2.9≦w≦3.3である化合物、又はLiAlである化合物であって、5x+3y=5、2u+3v+2w=5+t、2.9≦t≦3.3、0.84≦x≦0.94、0.094≦y≦0.26、3.2≦u≦3.8、0.13≦v≦0.46、0≦w≦0.2である化合物、
- それぞれ「LiPON」及び「LIBON」と呼ばれ、リチウムリン又はホウ素の酸窒化物に基づく材料であって、ケイ素、硫黄、ジルコニウム、アルミニウム、又はアルミニウム、ホウ素、硫黄及び/若しくはケイ素の組み合わせを、並びにリチウムリン酸窒化物に基づく材料の場合はホウ素を、含み得る材料、
- 「LiSiPON」と呼ばれる、リチウム、リン及びケイ素の酸窒化物に基づくリチウム化合物、
- LiBON、LiBSO、LiSiPON、LiSON、チオ(thio)-LiSiCON、LiPONBタイプのリチウム酸窒化物(B、P及びSはそれぞれホウ素、リン及び硫黄を表す)、
- 酸化リチウム、ケイ酸塩、
- LiOAであって、Aはハロゲン原子又はハロゲン原子の混合物;Li(3-x)x/2OAであって、0<x≦3、Mは二価の金属、Aはハロゲン原子又はハロゲン原子の混合物;Li(3-x) x/3OAであって0≦x≦3、Mは三価の金属、Aはハロゲン原子又はハロゲン原子の混合物;又はLiCOX(1-z)であって、X及びYはハロゲン原子、且つ0≦z≦1、より選択されるアンチペロブスカイトタイプの固体電解質、
- 化合物La0.51Li0.34Ti2.94、Li3.40.4Ge0.6、LiO-Nb
- LiCO、B、LiO、Al(POLiF、LiN、Li14Zn(GeO、Li3.6Ge0.60.4、LiTi(PO、Li1.3Al0.3Ti1.7(PO、Li1+xAl2-x(PO(M=Ge、Ti及び/又はHf且つ0<x<1)、Li1+x+yAlTi2-xSi3-y12(0≦x≦1且つ0≦y≦1)に基づく配合物。
【請求項32】
請求項31に記載のリチウムイオンバッテリにおいて、
前記ガーネットは、LLZOタイプの酸化物、LiLaZr12;LiLaBaTa12;Li5.5LaNb1.75In0.2512;LiLa12であってM=Nb若しくはTa又はこれら2つの化合物の混合物;Li7-xBaLa3-x12であって0≦x≦1且つM=Nb若しくはTa又はこれら2つの化合物の混合物;およびLi7-xLaZr2-x12であって0≦x≦2、M=Al、Ga、Ta又はこれらの化合物の2つ若しくは3つの混合物から選択される、リチウムイオンバッテリ。
【請求項33】
請求項31に記載のリチウムイオンバッテリにおいて、
前記ハロゲン原子は、F、Cl、Br、Iから選択される元素の少なくとも1つ又はこれらの元素のうちの2つ若しくは3つ若しくは4つの混合物である、リチウムイオンバッテリ。
【請求項34】
請求項31に記載のリチウムイオンバッテリにおいて、
前記LiPOは、Li2.9PO3.30.46である、リチウムイオンバッテリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学の分野、より具体的には全固体リチウムイオンバッテリに関する。より正確には、固体電解質に関し、より具体的には、これらの電位化学システムで使用され得る薄層電解質に関する。
【0002】
本発明はまた、好ましくはPEOの分子がグラフトされたリン酸リチウムの、固体電解質材料のナノ粒子を実施する、好ましくは薄層の、そのような電解質を準備する方法、及びそのようにして得られた電解質に関する。本発明はまた、これらの電解質の少なくとも1つを備える電気化学デバイスを製造するための方法、及びそのようにして得られたデバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
リチウムイオンバッテリは、電気エネルギーの貯蔵を可能にする電気化学部品である。一般に、それは1つ以上の基本セルで構成され、各セルは極性が反対の2つの電極と電解質とで構成されている。様々な種類の電極が、二次リチウムイオンバッテリで使用できる。セルは、リチウム塩を含む液体電解質で含浸された高分子多孔質膜(「セパレータ」とも呼ばれる)で分離された、2つの電極で構成し得る。
【0004】
例えば、特許出願JP2002-042792には、バッテリの電極に固体電解質を堆積させるプロセスについて記載されている。記載された電解質は、実質的に、ポリエチレンオキシド、ポリアクリロニトリル、ポリ(ビニリデンフルオライド)などの高分子膜であり、その細孔は、LiPFなどのリチウム塩で含浸されている。この文献によれば、電気泳動によって堆積された粒子のサイズは、好ましくは1μm未満であり、形成される層の厚さは好ましくは10μm未満である。このようなシステムでは、液体電解質は、膜に含まれる細孔及び電極に移動し、したがって、電極間のイオン伝導を提供する。
【0005】
高電力のバッテリを作製し、2つの電極間のリチウムイオンの輸送の抵抗を減らすことを目的として、高分子膜の多孔度を増大させることが求められた。しかし、高分子膜の多孔度を増大させることは、バッテリの充放電サイクル中に高分子膜の細孔内の金属リチウムデンドライトの沈殿を促進する。これらのデンドライトは、セル内の内部短絡の原因となり、バッテリの熱暴走のリスクを引き起こし得る。
【0006】
液体電解質を含浸させたこれらの高分子膜は、使用される液体電解質よりも低いイオン伝導率を有する。膜の厚さを減少させることによって、この影響を相殺することが要求される場合がある。しかし、これらの高分子膜は機械的に脆く、その電気絶縁性は、非常に薄い厚さの電解質フィルムを備えたバッテリの場合では強い電界の影響下で、又は機械的及び振動的ストレスの影響下で変化し得る。これらの高分子膜は充放電サイクル中に壊れやすく、アノード及びカソードの粒子の剥離を引き起こし、2つの正極及び負極間の短絡を引き起こし、絶縁破壊につながる可能性がある。多孔質電極を使用したバッテリでは、このリスクはさらに顕著になる。
【0007】
機械的抵抗を改善するために、Oharaは、特に、EP1049188A1及びEP1424743B1において、リチウムイオン伝導性のガラスセラミック粒子を含む高分子膜で構成された電解質の使用を提案した。
【0008】
さらに、Maunelらの(Polymer 47(2006)p.5952-5964)から、ポリマーマトリックス中にセラミックチャージを加えることは、ポリマー電解質の形態学的及び電気化学的特性を改良し得ることが知られている;これらのセラミックチャージは、アクティブ(LiN、LiAlなど)であり得、この場合、それらはリチウムイオンを輸送するプロセスに関与し、又はパッシブ(Al、SiO、MgOなど)であり得、この場合、それらはリチウムイオンを輸送するプロセスに関与しない。粒子のサイズ及びセラミックチャージの特性は、電解質の電気化学的特性に影響を与える。これについては、Zhangらの、「Flexible and ion-conducting membrane electrolytes for solid-state lithium batteries: Dispersions of garnet nanoparticles in insulating POE」、NanoEnergy、28(2016)p.447-454を参照されたい。しかし、これらの膜は、比較的脆く、バッテリ組み立て中に誘発される機械的応力の影響下で簡単に破壊される。
【0009】
最もよく研究されている電解質システムの1つは、リチウム塩が溶解しているポリ(エチレンオキシド)(以下、PEOと略記)で構成されているものである。PEO単独ではリチウムイオンの伝導性はあまり良好ではないが、液体電解質をポリマーマトリックスに組み込むと、PEOのアモルファス相が形成され、リチウムイオンの伝導性が向上する。
【0010】
リチウム塩を含浸させたPEOマトリックスにイオン液体を加えることには欠点があることが知られている。第1の欠点は、電解質の輸率を低下させることである。リチウム塩又はイオン液体(リン酸リチウムなど)を含まない固体電解質のみが1に等しい輸率を有する。第2の欠点は、高電位でのPEOの化学的安定性が、PEOマトリックスにリチウム塩及び/又はイオン液体を含浸させた場合、それが固体電解質のナノ粒子を含む場合よりも良好ではないということである(前述のZhangの文献を参照)。これらの電解質では、伝導は実質的にナノ粒子によって提供される;PEOのアモルファス相は、一方では粒子間で、他方では粒子及び電極間で、リチウムイオンの界面への移動を促進する。
【0011】
固体電解質のナノ粒子で帯電したPEOの堆積は、液体電解質が含浸されているかどうかにかかわらず、通常はコーティングによって行われる。固体電解質のナノ粒子の添加は、しかしながら、コーティングに使用される電解質の懸濁液の粘度を増加させる。粘度が高すぎると、従来のコーティング技術では薄層を形成できなくなる。さらに、これらの電解質は一般に厚いままであり、電気抵抗を増加させる。そして最後に、これらの電解質中のナノ粒子は塊(agglomerates)の形態をとるリスクがあり、これはPEOとの接触面を制限するため、その有効性が損なわれ、高品質の薄膜が得られなくなる。文献に記載されているすべての電解質は、粒子の含有量が30体積%未満であることが実際に観察されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、先行技術における前述の不利な点の少なくとも一部を克服しようとするものである。
【0013】
本発明が解決しようとする課題は、安全で、薄層で使用でき、高いイオン伝導率及び1に近い輸率、安定した機械的構造及び長い寿命を有する、電解質を提案することである。
【0014】
本発明が解決しようとする別の課題は、簡素化、安全、高速、実装が容易、工業化が容易で、且つ安価な、そのような電解質の製造方法を提供することである。
【0015】
本発明が解決しようとする別の課題は、高い信頼性で動作し得る、且つ、発火のリスクのない、バッテリのための電極を提供することである。
【0016】
本発明の別の目的は、衝撃及び振動に機械的に耐えることができる高電力密度を有する剛性構造を備えたバッテリを提供することである。
【0017】
本発明の別の目的は、本発明に係る電解質を備えた、バッテリ、キャパシタ、スーパーキャパシタ、太陽電池などの、電子的、電気的又は電気技術的デバイスの製造方法を提供することである。
【0018】
本発明の別の目的は、信頼性が向上し、より長い寿命を有し、高温及び減圧下で原子層堆積技術(ALD)によって堆積されたコーティングによって封止できる、バッテリ、リチウムイオンバッテリセル、キャパシタ、スーパーキャパシタ、太陽電池などのデバイスを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の目的
本発明によれば、課題は、固体電解質/PEOの体積比が35%超え、好ましくは50%超え、好ましくは60%超え、さらにより好ましくは70%を超えの、構造を備える均質な複合構造を有する少なくとも1つの電解質を使用することによって解決される。均一な分散性と組み合わされた固体電解質の高含有量は、この構造に優れた機械的耐性を与える。本発明の第2の目的は、電極に堆積された、リチウムイオンバッテリ又はスーパーキャパシタ用の、好ましくは固体の、好ましくは薄層の、電解質を製造する方法であって、以下のステップを含む方法である:
a.電極として使用できる材料の層(「電極層」)で事前に被覆された導電性基板を準備し、
b.電解質及び/又は電子絶縁体として使用できる材料の粒子をコアとして含み、これにPEOを含むシェルがグラフトされた、コアシェル粒子の懸濁液から、好ましくは電気泳動又はディップコーティングにより、電解質層を、前記電極層へ、堆積させ;
c.そのようにして得られた電解質層を、好ましくは空気流で、乾燥させ;
d.任意で、機械的圧縮及び/又は熱処理により前記電解質層を高密度化させる。
【0020】
有利には、本発明に係る電解質は、電解質として使用できる材料の粒子をコアとして含み、これにPEOを含むシェルがグラフトされた、コアシェル粒子を含む、及び/又は電子絶縁体として使用できる材料の粒子をコアとして含み、それにPEOを含むシェルがグラフトされた、コアシェル粒子を含む、懸濁液から、好ましくは電気泳動又はディップコーティングにより、電解質層を、前記電極層へ、堆積させて得ることができる。
【0021】
好ましくは、一次コア粒子の平均サイズD50は100nm未満、好ましくは50nm未満、さらにより好ましくは30nm以下である。有利には、一次コア粒子は、水熱又はソルボサーマル合成によって得られる。
【0022】
有利には、粒子のシェルの厚さは1~100nmである。
【0023】
有利には、ステップc)又はd)で得られた電解質層の厚さは、10μm未満、好ましくは約6μm未満、より好ましくは約3μm未満である。
【0024】
有利には、PEOは、質量平均モル質量が7000g/mol未満、好ましくは約5000g/molである。
【0025】
有利には、ステップb)で使用されるコアシェル粒子の懸濁液の乾燥抽出物が30重量%未満である。
【0026】
本発明に係る方法は、バッテリ、キャパシタ、スーパーキャパシタ、容量、抵抗器、インダクタ、トランジスタからなる群から選択されたデバイスにおける、好ましくは固体の、好ましくは1つの薄層の、電解質の、製造のために使用し得る。
【0027】
本発明の別の目的は、本発明に係る方法によって得られる、好ましくは固体電解質であり、好ましくは薄層電解質である。
【0028】
有利には、本発明に係る、好ましくは薄層の、電解質は、固体電解質及びPEOを含み、固体電解質/PEOの体積比が35%超え、好ましくは50%超え、好ましくは60%超え、さらにより好ましくは70%を超え、である。
【0029】
有利には、本発明に係る、好ましくは薄層の、電解質は、多孔度が20%未満、好ましくは15%未満、より好ましくは10%未満、である。
【0030】
本発明の別の目的は、少なくとも1つの電解質を、好ましくは固体電解質を、好ましくは薄層電解質を、備える、電気化学デバイスであり、好ましくは、リチウムイオンバッテリ又はスーパーキャパシタである。
【0031】
本発明の別の目的は、本発明に係る方法を実施して、リチウムイオンバッテリを製造するための方法であって、以下のステップを含む方法である:
i.アノード及びカソードとして使用できる材料の層(それぞれ「アノード層」12、「カソード層」22)で事前に被覆され、且つ、それらの面の少なくとも1つの少なくとも一部がカソード層、アノード層でそれぞれ被覆された、バッテリの集電体として使用される少なくとも2つの導電性基板を準備し、
ii.電解質及び/又は電子絶縁体として使用できる材料の粒子をコアとして含み、これにPEOを含むシェルがグラフトされた、コアシェルナノ粒子を含むコロイド懸濁液を準備し、
iii.ステップii)で得られたコアシェル粒子を含む懸濁液から、好ましくは電気泳動又はディップコーティングにより、電解質層を、ステップi)で得たカソード層及び/又はアノード層へ堆積させ、第1及び/又は第2の中間構造を得て、
iv.ステップiii)でそのようにして得た層を、好ましくは空気流で、乾燥させ、
v.前記第1及び/又は第2の中間構造から積層体を形成し、以下によって、「基板/アノード/電解質/カソード/基板」タイプの積層体を得る:
・前記第1の中間構造にアノード層12を堆積させること、若しくは、
・前記第2の中間構造にカソード層22を堆積させること、のいずれか、
・又は、2つの電解質層のうち一方が他方の上に配置されるように、前記第1の中間構造及び前記第2の中間構造を重ね合わせる、
vi.前のステップで得た前記積層体を、機械的圧縮及び/又は熱処理により高密度化させ、セルを、好ましくはバッテリを、得る。
【0032】
ステップvi)で得たバッテリが少なくとも1つの多孔質カソード層22及び/又は少なくとも1つの多孔質アノード層12、好ましくはメソポーラスを備える場合、本発明に係るリチウムイオンバッテリの製造方法は、ステップvi)で得たバッテリをリチウムイオンを運ぶ相で含浸させ、含浸されたバッテリを得るステップを含む。
【0033】
ステップi)及びii)の順番は重要ではない。
【0034】
有利には、電子絶縁体として使用できる前記材料は、好ましくは、Al、SiO、ZrOから選択できる。
【0035】
有利には、カソードは、高密度電極、
又は、ALDにより若しくは溶液(CSD)で化学的に、電子絶縁性の層で、好ましくは電子絶縁性で且つイオン伝導性の層で、コーティングされた高密度電極、
又は、多孔質電極、
又は、ALDにより若しくは溶液(CSD)で化学的に、電子絶縁性の層で、好ましくは電子絶縁性で且つイオン伝導性の層で、コーティングされた多孔質電極、
又は、好ましくは、メソポーラス電極、
又は、ALDにより若しくは溶液(CSD)で化学的に、電子絶縁性の層で、好ましくは電子絶縁性で且つイオン伝導性の層で、コーティングされたメソポーラス電極であり、
及び/又は、アノードは、高密度電極、
又は、ALDにより若しくは溶液(CSD)で化学的に、電子絶縁性の層で、好ましくは電子絶縁性で且つイオン伝導性の層で、コーティングされた高密度電極、
又は、多孔質電極、
又は、ALDにより若しくは溶液(CSD)で化学的に、電子絶縁性の層で、好ましくは電子絶縁性で且つイオン伝導性の層で、コーティングされた多孔質電極、
又は、好ましくは、メソポーラス電極、
又は、ALDにより若しくは溶液(CSD)で化学的に、電子絶縁性の層で、好ましくは電子絶縁性で且つイオン伝導性の層で、コーティングされたメソポーラス電極である。これらの層は、CSD(化学溶液堆積)という略称で知られるように、化学溶液によって堆積し得る。
【0036】
有利には、ステップvi)の後、又は含浸ステップの後、以下を行う:
- バッテリに、以下を、交互に連続して堆積させる:
・前記バッテリの上の、パリレン及び/又はポリイミドの、少なくとも1つの第1層、
・パリレン及び/又はポリイミドの前記第1層の上の、原子層堆積(ALD)による、電気絶縁性の材料で構成された、少なくとも1つの第2層、
・そして、少なくとも1つの第1層及び少なくとも1つの第2層の交互の連続の上に、バッテリを、バッテリの機械的損傷から保護することを可能にするための、好ましくはシリコーン、エポキシ樹脂又はパリレン又はポリイミドで構成された、層を堆積させ、バッテリの封止システムを形成し、
- そのように封止されたバッテリを、2つの切断面に沿って切断し、バッテリのアノード及びカソードの接続部を切断面の各々に露出させ、封止システムが前記バッテリの6つの面のうち4つを、好ましくは連続して、被覆するようにし、
- これらのアノード及びカソード接続部において、並びにその周囲において、以下を連続して堆積させる:
・任意で、第1の導電層を、好ましくはALDによって、堆積させ、
・第1の導電層に、銀を充填したエポキシ樹脂ベースの第2層を堆積させ、
.第2層に、ニッケルベースの第3層を堆積させ、
.第3層に、スズ又は銅ベースの第4層を堆積させる、
- 有利には又は代替的に、ステップvi)の後、又は含浸ステップの後、バッテリに、以下を含む、一連の層によって、すなわちシーケンスによって、好ましくはzシーケンスによって、形成された、封止システムを、連続して交互に堆積させる:
・組み立てられた積層体に堆積される、好ましくはパリレン、F型のパリレン、ポリイミド、エポキシ樹脂、シリコーン、ポリアミド及び/又はそれらの混合物から選択される、第1の被覆層、
・前記第1の被覆層に原子層堆積によって堆積される、電気絶縁性の材料で構成された、第2の被覆層、
・このシーケンスは、z≧1でz回繰り返され得る、
- この連続した層において、エポキシ樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド、ポリアミド、ポリウレタン、シリコーン、ゾルゲルシリカ又は有機シリカから選択された材料の、最後の被覆層を、堆積させ、
- そのように封止されたバッテリを、2つの切断面に沿って切断し、バッテリのアノード及びカソードの接続部を切断面の各々に露出させ、封止システムが前記バッテリの6つの面のうち4つを、好ましくは連続して、被覆するようにし、
- 任意で、特にこのバッテリが多孔質電極を備えるときは、そのように切断された封止されたバッテリを、リチウムイオンを運ぶ相で含浸させ、
- これらのアノード及びカソードの接続部において、並びにその周囲において、以下を連続して堆積させる:
・ グラファイトを充填した材料の、好ましくはグラファイトを充填したエポキシ樹脂の、第1層、
・ 第1層に堆積させた、銅のナノ粒子で充填したインクから得られた金属銅を含む、第2層、
- 金属銅の層による、カソード及びアノード接続部の被覆を得るために、得られた層を、好ましくは赤外線フラッシュランプによって、熱処理し、
- この金属銅の層において及びその周囲において、以下を、連続して堆積させてもよい:
・ 最小のコストでバッテリの気密性を確保するために、好ましくは溶融スズ-亜鉛浴への浸漬によって堆積された、スズ-亜鉛合金の第1層、
・ スズ-亜鉛合金のこの第1層に堆積された、電着によって堆積された純粋なスズベースの第2層、又は、銀、パラジウム及び銅ベースの、合金を含む第2層。
【0037】
好ましくは、アノード及びカソード接続部は、積層体の反対側にある。
【0038】
本発明の別の目的は、この方法によって得られるリチウムイオンバッテリである。本発明の別の目的は、本発明に係る電解質を備えるリチウムイオンバッテリである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1図1は、本発明に係る電解質を備えるバッテリを引き出した正面図を図式的に示し、例示の目的で、封止及び終端部のシステムによって被覆された基本セルの組立物を備えるバッテリの構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図面で使用されている符号のリスト:
【0041】
【表1】
【0042】
この明細書の文脈では、粒子サイズはその最大寸法によって定義される。「ナノ粒子」とは、その寸法の少なくとも1つが100nm以下である、D50がナノメートルサイズのあらゆる粒子又は物体を指す。
【0043】
この明細書の枠組みでは、材料又は電子絶縁層は、好ましくは、電子絶縁性で且つイオン伝導性の層は、電気抵抗(電子の通過に対する抵抗)が10Ω・cm超えの材料又は層である。「薄層」とは、厚さ10μm未満のあらゆる膜を意味する。
【0044】
「メソポーラス材料」とは、その構造内に、サイズがミクロ細孔(幅2nm未満)及びマクロ細孔(幅50nm超え)の中間である、つまり2~50nmの、「メソ細孔」と呼ばれる細孔がある、あらゆる固体を指す。この用語は、当業者のための参照としてのIUPAC(国際純正・応用化学連合)によって採用された用語に対応する。したがって、上記で定義されたようなメソ細孔は、ナノ粒子の定義に関してナノメートルの寸法を有するが、「ナノ細孔」という用語はここでは使用しない。メソ細孔のサイズよりも小さいサイズの細孔は、当業者によって「ミクロ細孔」と呼ばれることが知られている。
【0045】
多孔質の概念(及び前記で開示された用語)の提示は、「Techniques de l’Ingenieur」, traite Analyse et Caracterisation, fascicule P 1050に掲載された、F.Rouquerolらによる「Texture des materiaux pulverulents ou poreux」に記載されている;この記事には、多孔性を特定する技術、特にBET(Brunauer、Emmet及びTeller)法について記載されている。
【0046】
本発明に関して、は「メソポーラス層」は、メソ細孔を有する層を指す。
【0047】
本発明に係る方法を実施するために、電解質又は電子絶縁体のナノ粒子が、好ましくは液相中の懸濁液の形態で提供される。電解質のナノ粒子は、固体電解質粉末(又は電子絶縁体)のナノ粉砕(nanogriding)/分散によって、又は水熱合成によって、又はソルボサーマル合成によって、又は沈殿によって得られる。好ましくは、非常に均一なサイズ(単分散)の一次ナノ粒子を得ることが可能にする方法が選択される。ナノ粉砕は固体ナノ粒子を劣化させる傾向があるが、ソルボサーマル経路は、好ましく、例えば水熱法は、非常に均一なサイズ、良好な結晶性及び純度を有するナノ粒子をもたらす。沈殿によるナノ粒子の合成により、結晶性及び純度が良好で、非常に均一なサイズの一次ナノ粒子を得ることができる。
【0048】
1.電解質又は電子絶縁体として使用できるPEOによるナノ粒子材料の官能基化
電解質又は電子絶縁体のナノ粒子は、当業者に知られている方法にしたがい、液相中の有機分子で官能基化し得る。官能基化は、ナノ粒子の表面に、Q-Zタイプの構造を有する分子をグラフトすることからなる。ここで、Qは、表面への分子の付着を提供する官能基であり、ZはPEO基である。
【0049】
Q基として、ナノ粒子の表面カチオンの錯化官能基(a complexing function)、例えば、リン酸又はホスホネート官能基を使用し得る。
【0050】
好ましくは、電解質又は電子絶縁体のナノ粒子は、以下のタイプのPEO誘導体によって官能基化される:
【0051】
【化1】
【0052】
ここで、Xは、アルキル鎖又は水素原子を表し、nは40~10000(好ましくは50~200)、mは0~10、Q’は、Qの一実施形態であり、以下の群から選択される:
【0053】
【化2】
【0054】
ここでRは、アルキル鎖又は水素原子を表し、R’はメチル基又はエチル基を表し、xは1~5であり、x’は1~5である。
【0055】
より好ましくは、電解質又は電子絶縁体のナノ粒子は、メトキシ-PEO-リン酸塩:
【0056】
【化3】
【0057】
により官能基化され、ここで、nは40~10000、好ましくは50~200である。
【0058】
有利な実施形態によると、Q-Z(又は該当する場合はQ’-Z)の溶液を、電解質又は電子絶縁体のナノ粒子のコロイド懸濁液に加え、Q(ここではQ’を含む)と、電解質又は電子絶縁体のナノ粒子(ここでは「NP-E」と略記)中のすべてのカチオンとのモル比が1~0.01、好ましくは、0.1~0.02となるようにする。モル比Q/NP-Eが1を超えると、分子Q-Zによる電解質又は電子絶縁体のナノ粒子の官能基化は、電解質の粒子が完全に官能基化できないような立体障壁となるリスクがある;これは粒子サイズにも依存する。モル比Q/NP-Eが0.01未満の場合、分子Q-Zは、リチウムイオンの十分な伝導率を提供するのに十分な量ではないおそれがある;これは粒子サイズにも依存する。官能基化中に大量のQ-Zを使用すると、Q-Zが不要に消費される。
【0059】
有利には、電子絶縁体として使用され得る材料は、好ましくは、Al、SiO、ZrO及び/又は以下の電解質材料によって形成される群から選択される。
【0060】
有利には、電解質のナノ粒子は、以下より選択される:
・ 一般式Li (TOのガーネット、ここで、
・ Aは、酸化状態+IIのカチオン、好ましくはCa、Mg、Sr、Ba、Fe、Mn、Zn、Y、Gdを表し;そして、
・ Aは、酸化状態+IIIのカチオン、好ましくはAl、Fe、Cr、Ga、Ti、Laを表し;そして、
・ (TO)は、Tが酸化状態+IVの原子で、酸素原子によって形成される四面体の中心に位置する、アニオンを表し、TOは、有利には、ケイ酸又はジルコン酸のアニオンを表し、酸化状態+IVの元素Tは、その全部又は一部がAl、Fe、As、V、Nb、In、Taなどの酸化状態+III又は+Vの原子で置き換えることができる;
・ dは2~10、好ましくは3~9、より好ましくは4~8である;xは、2.6~3.4(好ましくは2.8~3.2)であり;yは1.7~2.3(好ましくは1.9~2.1)であり、zは2.9~3.1である;
・ ガーネット、好ましくは以下から選択されるもの:LLZOタイプの酸化物、LiLaZr12;LiLaBaTa12;Li5.5LaNb1.75In0.2512;LiLa12であってM=Nb若しくはTa又はこれら2つの化合物の混合物;Li7-xBaLa3-x12であって0≦x≦1且つM=Nb若しくはTa又はこれら2つの化合物の混合物;Li7-xLaZr2-x12であって0≦x≦2、M=Al、Ga、Ta又はこれらの化合物の2つ若しくは3つの混合物;
・ リン酸リチウム、好ましくは以下から選択されるもの:NaSICONタイプのリン酸リチウム、LiPO;LiPO;「LASP」と呼ばれるLiAl0.4Sc1.6(PO、Li1.2Zr1.9Ca0.1(PO;LiZr(PO;Li1+3xZr(P1-xSiであって1.8<x<2.3;Li1+6xZr(P1-xであって0≦x≦0.25;Li(Sc2-x)(PO、M=Al若しくはY且つ0≦x≦1;Li1+x(Sc)2-x(PO、M=Al、Y、Ga又はこれら3つの化合物の混合物であり且つ0≦x≦0.8;Li1+x(Ga1-ySc2-x(POであって0≦x≦0.8;0≦y≦1且つM=Al若しくはY、又はこれら2つの化合物の混合物;Li1+x(Ga)2-x(POであってM=Al、Y又は2つの化合物の混合物で且つ0≦x≦0.8;「LATP」と呼ばれるLi1+xAlTi2-x(POであって0≦x≦1;又は「LAGP」と呼ばれるLi1+xAlGe2-x(POであって0≦x≦1;又はLi1+x+z(Ge1-yTi2-xSi3-z12、0≦x≦0.8且つ0≦y≦1.0且つ0≦z≦0.6且つM=Al、Ga若しくはY又はこれら2つ若しくは3つの化合物の混合物;Li3+y(Sc2-x)Q3-y12であってM=Al及び/若しくはY且つQ=Si及び/若しくはSe、0≦x≦0.8且つ0≦y≦1;又はLi1+x+ySc2-x3-y12、M=Al、Y、Ga又はこれら3つの化合物の混合物、且つQ=Si及び/若しくはSe、且つ0≦x≦0.8且つ0≦y≦1;又はLi1+x+y+z(Ga1-ySc2-x3-z12であって0≦x≦0.8;0≦y≦1;0≦z≦0.6、M=Al若しくはY又はこれら2つの化合物の混合物、且つQ=Si及び/若しくはSe;又はLi1+xZr2-x(PO、0≦x≦0.25;又はLi1+xZr2-xCa(POであって0≦x≦0.25;又はLi1+x 2-x12であって0≦x≦1且つM=Cr、V、Ca、B、Mg、Bi及び/若しくはMo、M=Sc、Sn、Zr、Hf、Se若しくはSi又はこれらの化合物の混合物;
・ ホウ酸リチウムであって、好ましくは以下から選択されるもの:Li(Sc2-x)(BOであってM=Al若しくはY且つ0≦x≦1;Li1+x(Sc)2-x(BO、M=Al、Y、Ga又はこれら3つの化合物の混合物で且つ0≦x≦0.8;Li1+x(Ga1-ySc2-x(BOであって0≦x≦0.8、0≦y≦1且つM=Al若しくはY;Li1+x(Ga)2-x(BOであってM=Al、Y又はこれら2つの化合物の混合物で且つ0≦x≦0.8;LiBO、LiBO-LiSO、LiBO-LiSiO、LiBO-LiSiO-LiSO
・ 酸窒化物であって、好ましくはLiPO4-x2x/3、LiSiO4-x2x/3、LiGeO4-x2x/3であって0<x<4又はLiBO3-x2x/3であって0<x<3、から選択されるもの;
・ x~2.8且つ2y+3z~7.8且つ0.16≦z≦0.4であるLiPOで表される、LiPONと呼ばれる、リチウムの酸窒化物及びリンに基づくリチウム化合物、特にLi2.9PO3.30.46、また、化合物LiPOであって2x+3y+2z=5=w又はLiPOであって3.2≦x≦3.8、0.13≦y≦0.4、0≦z≦0.2、2.9≦w≦3.3の化合物、又はLiAlの形式の化合物であって、5x+3y=5、2u+3v+2w=5+t、2.9≦t≦3.3、0.84≦x≦0.94、0.094≦y≦0.26、3.2≦u≦3.8、0.13≦v≦0.46、0≦w≦0.2;
・ リチウムリン又はホウ素の酸窒化物に基づく、それぞれ「LiPON」及び「LIBON」と呼ばれる材料であって、また、ケイ素、硫黄、ジルコニウム、アルミニウム、又はアルミニウム、ホウ素、硫黄及び/若しくはケイ素の組み合わせを、並びにリチウムリン酸窒化物に基づく材料の場合はホウ素を、含み得る材料、
・ 「LiSiPON」と呼ばれる、リチウム、リン及びケイ素の酸窒化物に基づくリチウム化合物、特にLi1.9Si0.281.01.11.0
・ LiBON、LiBSO、LiSiPON、LiSON、チオ(thio)-LiSiCON、LiPONBタイプのリチウム酸窒化物(B、P及びSはそれぞれホウ素、リン及び硫黄を表す);
・ (1-x)LiBSO-xLiSO、0.4≦x≦0.8の、LiBSOタイプのリチウム酸窒化物;
・ 酸化リチウム、好ましくは、LiLaZr12又はLi5+xLa(Zr、A2-x)O12であってA=Sc、Y、Al、Ga且つ1.4≦x≦2、又はLi0.35La0.55TiO又はLi3xLa2/3-xTiOであって0≦x≦0.16(LLTO)、から選択されるもの;
・ ケイ酸塩、好ましくはLiSi、LiSiO、LiSi、LiAlSiO、LiSiO、LiAlSiから選択されるもの;
・ 以下より選択されるアンチペロブスカイトタイプの固体電解質:LiOAであって、Aはハロゲン原子又はハロゲン原子の混合物であって、好ましくはF、Cl、Br、Iから選択される元素の少なくとも1つ又はこれらの元素のうちの2つ若しくは3つ若しくは4つの混合物;Li(3-x)x/2OA、0<x≦3、Mは二価の金属、好ましくは元素Mg、Ca、Ba、Srの少なくとも1つ又はこれらの元素の2つ若しくは3つ若しくは4つの混合物、Aはハロゲン原子又はハロゲン原子の混合物であって、好ましくは元素F、Cl、Br、Iの少なくとも1つ又はこれらの元素のうちの2つ若しくは3つ若しくは4つの混合物;Li(3-x) x/3OAであって0≦x≦3、Mは三価の金属、Aはハロゲン原子又はハロゲン原子の混合物であって、好ましくは元素F、Cl、Br、Iの少なくとも1つ又はこれらの元素の2つ若しくは3つ若しくは4つの混合物;又はLiCOX(1-z)であって、X及びYはAに関して前述したようなハロゲン原子、且つ0≦z≦1、
・ 化合物La0.51Li0.34Ti2.94、Li3.40.4Ge0.6、LiO-Nb
・ LiCO、B、LiO、Al(POLiF、LiN、Li14Zn(GeO、Li3.6Ge0.60.4、LiTi(PO、Li1.3Al0.3Ti1.7(PO、Li1+xAl2-x(PO(M=Ge、Ti及び/又はHf且つ0<x<1)、Li1+x+yAlTi2-xSi3-y12(0≦x≦1且つ0≦y≦1)に基づく配合物。
【0061】
驚くべきことに、電解質のナノ粒子が以下より選択される、PEOによって官能基化された電解質のナノ粒子から得られた電解質層は、高い導電性を有する:
・ 一般式Li (TOのガーネット、ここで、
・ Aは、酸化状態+IIのカチオン、好ましくはCa、Mg、Sr、Ba、Fe、Mn、Zn、Y、Gdを表し;そして、
・ Aは、酸化状態+IIIのカチオン、好ましくはAl、Fe、Cr、Ga、Ti、Laを表し;そして、
・ (TO)は、Tが酸化状態+IVの原子で、酸素原子によって形成される四面体の中心に位置する、アニオンを表し、TOは、有利には、ケイ酸又はジルコン酸のアニオンを表し、酸化状態+IVの元素Tは、その全部又は一部がAl、Fe、As、V、Nb、In、Taなどの酸化状態+III又は+Vの原子で置き換えることができる;
・ dは2~10、好ましくは3~9、より好ましくは4~8である;xは、2.6~3.4(好ましくは2.8~3.2)であり;yは1.7~2.3(好ましくは1.9~2.1)であり、zは2.9~3.1である;
・ ガーネット、好ましくは以下から選択されるもの:LLZOタイプの酸化物、LiLaZr12;LiLaBaTa12;Li5.5LaNb1.75In0.2512;LiLa12であってM=Nb若しくはTa又はこれら2つの化合物の混合物;Li7-xBaLa3-x12であって0≦x≦1且つM=Nb若しくはTa又はこれら2つの化合物の混合物;Li7-xLaZr2-x12であって0≦x≦2、M=Al、Ga、Ta又はこれらの化合物の2つ若しくは3つの混合物;そして、
・ リン酸リチウム、好ましくは以下から選択されるもの:NaSICONタイプのリン酸リチウム、LiPO;LiPO;「LASP」と呼ばれるLiAl0.4Sc1.6(PO、Li1.2Zr1.9Ca0.1(PO;LiZr(PO;Li1+3xZr(P1-xSiであって1.8<x<2.3;Li1+6xZr(P1-xであって0≦x≦0.25;Li(Sc2-x)(PO、M=Al若しくはY且つ0≦x≦1;Li1+x(Sc)2-x(PO、M=Al、Y、Ga又はこれら3つの化合物の混合物であり且つ0≦x≦0.8;Li1+x(Ga1-ySc2-x(POであって0≦x≦0.8;0≦y≦1且つM=Al若しくはY、又はこれら2つの化合物の混合物;Li1+x(Ga)2-x(POであってM=Al、Y又は2つの化合物の混合物で且つ0≦x≦0.8;「LATP」と呼ばれるLi1+xAlTi2-x(POであって0≦x≦1;又は「LAGP」と呼ばれるLi1+xAlGe2-x(POであって0≦x≦1;又はLi1+x+z(Ge1-yTi2-xSi3-z12、0≦x≦0.8且つ0≦y≦1.0且つ0≦z≦0.6且つM=Al、Ga若しくはY又はこれら2つ若しくは3つの化合物の混合物;Li3+y(Sc2-x)Q3-y12であってM=Al及び/若しくはY且つQ=Si及び/若しくはSe、0≦x≦0.8且つ0≦y≦1;又はLi1+x+ySc2-x3-y12、M=Al、Y、Ga又はこれら3つの化合物の混合物、且つQ=Si及び/若しくはSe、且つ0≦x≦0.8且つ0≦y≦1;又はLi1+x+y+z(Ga1-ySc2-x3-z12であって0≦x≦0.8;0≦y≦1;0≦z≦0.6、M=Al若しくはY又はこれら2つの化合物の混合物、且つQ=Si及び/若しくはSe;又はLi1+xZr2-x(PO、0≦x≦0.25;又はLi1+xZr2-xCa(POであって0≦x≦0.25;又はLi1+x 2-x12であって0≦x≦1且つM=Cr、V、Ca、B、Mg、Bi及び/若しくはMo、M=Sc、Sn、Zr、Hf、Se若しくはSi又はこれらの化合物の混合物。
【0062】
電解質粒子の官能基化を行うために、0.1~50%、好ましくは5~25%、さらにより好ましくは10%の質量濃度の電解質ナノ粒子のコロイド懸濁液が使用される。高濃度では、架橋のリスク及び官能基化する表面に近接できない可能性がある(官能基化されていない、又は官能基化が十分でない粒子が沈殿するリスクがある)。好ましくは、電解質のナノ粒子は、水又はエタノールなどの液相に分散されている。
【0063】
この反応は、分子Q-Zを可溶化することを可能にするすべての適切な溶媒中で行い得る。
【0064】
分子Q-Zによると、特に温度及び反応時間の調整並びに使用する溶媒により、官能基化条件を最適化し得る。電解質のナノ粒子のコロイド懸濁液にQZの溶液を加えた後、反応媒体を0~24時間(好ましくは5分~12時間、より好ましくは0.5~2時間)撹拌したまま維持し、少なくとも一部の、好ましくはすべての分子Q-Zが電解質ナノ粒子の表面にグラフトされ得るようにする。官能基化は、加熱下、好ましくは20~100℃の温度で行い得る。反応媒体の温度は、官能基化分子Q-Zの選択に適合させる必要がある。
【0065】
したがって、これらの官能基化ナノ粒子は、電解質材料で構成されたコアとPEOで構成されたシェルとを備える。シェルの厚さは、典型的には、1~100nmである;この厚さは、典型的には、酸化ルテニウム(RuO)によりポリマーをマーキングした後、透過型電子顕微鏡で測定できる。
【0066】
有利には、このように官能基化されたナノ粒子は、次いで、遠心分離及び再分散の連続サイクルによって、並びに/又は接線流濾過によって精製される。一実施形態では、官能基化された電解質ナノ粒子のコロイド懸濁液は、上澄に存在して反応しなかった分子Q-Zから官能基化された粒子を分離するように、遠心分離される。遠心分離後、上澄を除去する。官能基化された粒子を含む主成分は、溶媒に再分散される。有利には、官能基化された粒子を含む主成分は、所望の乾燥抽出物に達し得るような量の溶媒に再分散される。この再分散は、任意の手段によって、特に超音波浴の使用によって、又は磁気的及び/若しくは手動の攪拌で、行い得る。
【0067】
反応しなかった分子Q-Zを排除するように、いくつかの遠心分離サイクル及び連続的な再分散を行い得る。好ましくは、少なくとも1つ、より好ましくは少なくとも2つの、連続した遠心分離及び再分散サイクルを行う。
【0068】
官能基化された電解質のナノ粒子を再分散させた後、任意の適切な手段によって、所望の乾燥抽出物に達するまで、懸濁液を再濃縮し得る。
【0069】
有利には、PEOにより官能基化された電解質ナノ粒子の懸濁液の乾燥抽出物は、40%(体積で)超えの固体電解質材料、好ましくは60%超え、より好ましくは70%超えの固体電解質材料を含む。
【0070】
2.本発明に係る、PEOにより官能基化された電解質又は電子絶縁体のナノ粒子からの電解質層の開発
本発明によれば、固体電解質は、電気泳動、コーティング方法、ディップコーティング、又はPEOによって官能基化された電解質又は電子絶縁体のナノ粒子の懸濁液の使用を可能にする当業者に知られている他の堆積技術によって堆積できる。
【0071】
有利には、電解質層を電気泳動によって、ディップコーティングによって、又は本発明に係る当業者に知られている他の堆積技術によって堆積するために使用される、PEOによって官能基化された電解質又は電子絶縁体のナノ粒子の懸濁液の乾燥抽出物は、30重量%未満である;そのような懸濁液は、堆積中に十分に安定している。好ましくは、固体電解質は、電気泳動によって又はディップコーティングによって堆積される。これらの2つの技術は、有利には、コンパクトで欠陥のない層を容易に実施することを可能にする。
【0072】
- 集電体基板の性質
電解質層は、アノード12層及び/又はカソード22層に堆積され、導電性基板11、21に適切なプロセスを使用して、及び/又は十分な導電性を有する基板11、21に直接、形成される。
【0073】
この導電性の又は十分な導電性を有する基板11、21は、本発明に係る電解質を使用するバッテリ内の集電体として使用される。この基板は、金属、例えば金属箔、又はポリマー若しくは金属化された非金属箔(すなわち、金属の層でコーティングされている)であり得る。基板は、好ましくは、チタン、銅、ニッケル又はステンレス鋼から構成された箔から選択されることが好ましい。
【0074】
金属箔は、特に金、白金、チタン又はこれらの金属の少なくとも1つ以上を主に含む合金から選択される貴金属の層、又はITOタイプの導電性材料の層(拡散バリアとしても機能する利点がある)でコーティングされていてもよい。
【0075】
多孔質電極を使用するバッテリでは、多孔質電極が含浸されるリチウムイオンを運ぶ液相は、集電体と直接接する。しかし、このリチウムイオンを運ぶ液相が、金属基板と接し、カソードに対してアノード性が高く、アノードに対してカソード性が高いような電位で分極している場合、これらのリチウムイオンを運ぶ液相は、集電体の溶解を誘発し得る。これらのパラサイト反応は、バッテリの寿命を短くし、バッテリの自己放電を加速させ得る。これを防ぐために、すべてのリチウムイオンバッテリのカソードにアルミニウム集電体が使用されている。アルミニウムは、まさにアノード電位でアノード酸化するという特殊性を備えており、その表面に形成される酸化物の層がそれを溶解から保護する。しかし、アルミニウムは600℃に近い溶融温度を有し、少なくとも1つの多孔質電極を備えるバッテリの製造に使用できない。全固体電極の固化処理は、集電体の溶融につながる。したがって、バッテリの寿命を短くし、その自己放電を加速し得るパラサイト反応を防止するために、チタン製の箔を、カソードにおける集電体として有利に使用する。バッテリの動作中、チタン製の箔はアルミニウムのようにアノード酸化し、その酸化物の層はリチウムイオンを運ぶ液相と接するチタンの溶解のあらゆるパラサイト反応を防ぐ。さらに、チタンはアルミニウムよりもはるかに高い融点を有するので、本発明に係る全固体電極は、このタイプの箔上に直接作製できる。
【0076】
これらのしっかりした材料(massive materials)、特にチタン、銅又はニッケルで構成された箔を使用すると、バッテリの電極の切断端部を腐食現象から保護することもできる。
【0077】
ステンレス鋼も、特に合金元素としてチタン若しくはアルミニウムを含む場合、又は表面に保護酸化物の薄層を有する場合、集電体として使用できる。
【0078】
卑金属箔など、集電体として使用される他の基板を、保護コーティングで被覆して使用してもよく、それらと接する電解質の存在によって引き起こされるこれらの箔の溶解を防ぐことができる。
【0079】
これらの卑金属箔は、銅、ニッケル製の箔、又はステンレス鋼製の箔、Fe-Ni合金、Be-Ni-Cr合金、Ni-Cr合金若しくはNi-Ti合金などの金属合金の箔であってもよい。
【0080】
集電体として使用される基板を保護するために使用できるコーティングは、様々な性質のものであってもよい。それは以下のようなものであってもよい:
i.電極と同じ材料の、ゾルゲル法で得られた薄層。この薄膜には多孔性がないので、リチウムイオンを運ぶ相と金属集電体との接触を防ぐことができる;
ii.真空蒸着、特に物理蒸着(PVD)又は化学蒸着(CVD)によって得られた、電極と同じ材料の薄層、
iii.金、チタン、プラチナ、パラジウム、タングステン又はモリブデンの薄い金属層など、欠陥のない高密度の薄い金属層。これらの金属は、良好な導電性を有し、その後の電極製造方法での熱処理に耐性があるので、集電体を保護するために使用できる。この層は、特に電気化学、PVD、CVD、蒸着、ALDによって形成できる、
iv.ALD、PVD、CVDによって、又はゾルゲル溶液のインク付けによって堆積された、ダイヤモンドカーボン、グラフィックなどのカーボンの薄層、これらは、熱処理後にカーボンドープ無機相を得て導電性にできる、
v.酸化物が低電位に還元されるので、カソード基板にのみ堆積されたITO(インジウムスズ酸化物)の層などの導電性酸化物の層、
vi.窒化物は低電位でリチウムを挿入するので、カソード基板にのみ堆積されたTiNの層などの導電性窒化物の層。
【0081】
集電体として使用される基板を保護するために使用できるコーティングは、抵抗が大きくなりすぎて、このコーティングに後で堆積される電極の動作を損なわないように、電子伝導性でなければならない。
【0082】
一般に、バッテリセルの動作に過度の影響を与えないために、電極の動作電位で、基板で測定されるμA/cmで表される最大溶解電流は、μAh/cmで表される電極の表面容量の1000分の1未満でなければならない。
【0083】
アノード層及びカソード層の堆積は、任意の適切な手段によって、集電体として使用されるこのタイプの基板に行い得る。これらのアノード層及びカソード層は、高密度であってもよく、すなわち、体積多孔度が20%未満であってもよい。それらはまた多孔質であってもよく、この場合、それらは開いた多孔性の相互接続されたネットワークを有することが好ましい;この多孔性は、好ましくはメソ多孔性であり、細孔の平均直径は2~50nmである。
【0084】
- PEOにより官能基化された電解質又は電子絶縁体のナノ粒子の電気泳動による堆積
本発明に係る方法は、多孔質層の堆積技術としての、ナノ粒子の懸濁液の電気泳動を使用できる。ナノ粒子の懸濁液から層を堆積する方法それ自体は、知られてる(例えばEP2774208B1を参照)。PEOにより官能基化された粒子の電気泳動堆積は、堆積が行われる導電性基板とカウンタ電極との間に電界を印加することによって行い、コロイド懸濁液中の荷電粒子を移動させ、それらを基板に堆積させる。コロイド懸濁液の安定性を確保するために、極性ナノ粒子、及び/又は、有利には、絶対値が25mV超えのゼータ電位を有するもの、を用いるのが好ましい。
【0085】
電気泳動の堆積速度は、印加する電界及び懸濁液中の粒子の電気泳動の移動度に依存する。それは、非常に速くすることができる。例えば、印加電圧200Vでは、堆積速度は約10μm/分に達し得る。
【0086】
発明者は、この技術により、非常に広い領域に非常に均質な層(基板の表面で均一な粒子の濃度及び電界にしたがっている)を堆積できることを観察した。電気泳動による堆積は、連続の「バッチ」(静的)プロセスで適用される。
【0087】
電解質層は、アノード12及び/又はカソード22層に堆積され、それ自体は、適切なプロセスにより導電性基板11,21に、及び/又は十分な導電性を有する基板に直接、形成される。本発明に係る多孔質電極を使用するバッテリ内で集電体として使用されるこの基板は、好ましくは、チタン、銅、ステンレス鋼又はニッケルの箔から選択される。
【0088】
例えば、ステンレス鋼箔などの、厚さ約5μmであってもよい、金属箔を、又は導電性表面を有するポリマー片を、導電性基板に使用し得る。例えば、厚さ5μmのステンレス鋼箔を使用し得る。金属箔は、特に、金、プラチナ、チタン又はこれらの金属の少なくとも1つ以上を含む合金から選択される、貴金属の層で、又はITOタイプの導電性材料の層で(拡散バリアとしても機能する利点がある)、コーティングされていてもよい。アノード層及びカソード層は、このタイプの導電性基板に任意の適切な手段で堆積させ得る。これらのアノード層及びカソード層は、高密度、すなわち、20%未満の体積多孔度を有していてもよい。それらはまた多孔質であってもよく、この場合、それらは開いた多孔性の相互接続されたネットワークを有することが好ましい;この多孔性は、好ましくは細孔の平均直径が2~50nmのメソ多孔性である。電気泳動堆積中に、安定な電源供給を使用して、導電性基板とこの基板の各側に配置された2つの電極との間に電圧を印加してもよい。この電圧は直流又は交流であり得る。得られた電流を正確にモニターすることは、堆積厚さをモニターして、それらを正確に制御するのに役立つ。
【0089】
電解質層の電気泳動堆積は、粗さの欠陥が存在する場合でも、その形状に関係なく、電極層の表面を完全に被覆する。その結果、層の誘電特性を保証できる。
【0090】
電気泳動による堆積は、緻密な層が直接得られるので、追加の有機バインダの使用を回避できる。電気泳動堆積によって得られる層の緻密さ、及び層内に大量の有機化合物がないことは、乾燥ステップ中の層の亀裂又は他の欠陥の出現のリスクを制限又は防止できる。機械的圧縮のステップは、例えば、乾燥前にプレスすることによって行うことができ、層の品質を改善する;これは、乾燥後の機械的固化に取って代わるものではなく、異なる効果がある。
【0091】
- PEOにより官能基化された電解質又は電子絶縁体のナノ粒子の堆積
PEOにより官能基化された電解質ナノ粒子又は電子絶縁体は、使用されるナノ粒子の化学的性質に関係なく、特にコーティング方法、ディップコーティング、又は当業者に知られている他の堆積技術によって堆積できる。この堆積方法は、PEOによって官能基化された電解質又は電子絶縁体のナノ粒子がほとんど又はまったく帯電していない場合に好ましい。所望の厚さの層を得るために、PEOによって官能基化された電解質又は電子絶縁体のナノ粒子のディップコーティングによる堆積のステップと、それに続く得られた層の乾燥のステップとが、必要に応じて何度も繰り返される。
【0092】
この浸漬/乾燥によるコーティングステップの連続は時間がかかるが、浸漬コーティングによる堆積方法は、簡単、安全、且つ実装及び工業化が容易な方法であり、均質で緻密な最期の層を得ることを可能にする。
【0093】
本発明によれば、PEOによって官能基化された電解質又は電子絶縁体のナノ粒子は、電気泳動によって、ディップコーティングによって、インクジェットによって、ロールコーティングによって、カーテンコーティングによって又はドクターブレードによって堆積され得る。
【0094】
これらの方法はシンプル且つ安全であり、実装及び工業化が容易である。電気泳動堆積は、大きな表面に速い堆積速度で均一な堆積を行うことを可能にする技術である。特に浸漬、ロール、カーテン又はドクターブレードによるコーティング技術は、電気泳動堆積の技術に関して、浴の管理を単純化することを可能にする。インクジェット蒸着により、局所的な蒸着が可能になる。
【0095】
PEOによって官能基化された電解質又は電子絶縁体のナノ粒子の堆積は、電気泳動又はディップコーティングによって有利に行われる。ディップコーティングによる堆積を行うために使用されるナノ粒子の懸濁液は、電気泳動による堆積を行うために使用されるものよりも濃縮されている。
【0096】
- PEOにより官能基化された電解質又は電子絶縁体のナノ粒子の層の乾燥及び高密度化
電気泳動又はディップコーティングにかかわらず、堆積後、得られたナノ粒子の固体層を乾燥させなければならない。乾燥は亀裂の形成を引き起こしてはならない。このため、乾燥は制御された湿度及び温度条件で行うことが好ましい。
【0097】
有利には、これらの層は、アモルファスPEOによって互いに結合された電解質又は電子絶縁体の結晶化ナノ粒子を含む。有利には、これらの層は、電解質又は電子絶縁体のナノ粒子中の含有量が、35体積%超え、好ましくは50%超え、好ましくは60%超え、さらにより好ましくは70体積%を超えである。
【0098】
電子絶縁体のナノ粒子の使用は、バッテリの自己放電を制限し、PEOのアモルファス化に寄与する。
【0099】
有利には、これらの層に存在する電解質又は電子絶縁体のナノ粒子は、D50サイズが100nm未満、好ましくは50nm未満、より好ましくは30nm以下である;この値は、「コアシェル」ナノ粒子の「コア」に関連している。この粒子サイズは、電解質の粒子とPEOとの間のリチウムイオンの良好な伝導性を提供する。
【0100】
乾燥後に得られる電解質層は、バッテリの特性を低下させることなく、バッテリの厚さ及び重量を制限するために、厚さが10μm未満、好ましくは6μm未満、好ましくは5μm未満、好ましくは約3μmである。
【0101】
乾燥後、ナノ粒子の層を高密度化し得る;このステップは任意である。
【0102】
高密度化により、層の多孔性を低減し得る。高密度化後に得られる層の構造は連続的であり、実質的に多孔性がなく、イオンはその中で容易に移動でき、リチウム塩を含む液体電解質を追加する必要はない。このような液体電解質は、バッテリの熱抵抗が低く、バッテリの経年劣化への耐性が低いことの原因となる。乾燥及び高密度化後に得られた固体電解質及びPEOをベースとする層は、一般に、多孔度が20%未満、好ましくは15体積%未満、より好ましくは10体積%未満、最適には5体積%未満である。この値は、断面における透過型電子顕微鏡法により決定できる。
【0103】
堆積後の層の高密度化は、任意の適切な手段、好ましくは以下によって行い得る:
a)任意の機械的手段、特に機械的圧縮、好ましくは一軸圧縮;
b)熱圧着、すなわち圧力下での熱処理。最適な温度は、堆積した材料の化学組成に密接に依存し、また、粒子サイズ及び層の緻密さにも依存する。堆積した粒子の酸化及び表面汚染を防ぐために、制御された雰囲気を維持することが好ましい。有利には、固化は、制御された雰囲気で、周囲温度と使用されるPEOの溶融温度との間の温度で、行う;熱圧着は、周囲温度(約20℃)及び約300℃の間の温度で行い得る。しかし、PEOの劣化を防ぐために、200℃(又はより好ましくは100℃)を超えないことが好ましい。
【0104】
PEOで官能基化された電解質又は電子絶縁体のナノ粒子の高密度化は、これらのナノ粒子のシェルが比較的低圧で容易に変形するポリマーであるPEOを含むため、機械的圧縮(機械的圧力の作用)によってのみ得られる。有利には、圧縮は、10~500MPa、好ましくは50~200MP、の圧力、及び約20~200℃の温度で行う。
【0105】
界面では、PEOはアモルファスであり、固体電解質粒子間の良好なイオン接触を提供する。したがって、PEOは、液体電解質がない場合でも、リチウムイオンを伝導し得る。これは低温でのリチウムイオンバッテリの組み立てに有利であるため、電解質と電極との間の界面での相互拡散のリスクを抑制する。
【0106】
高密度化後に得られる電解質層の厚さは、10μm未満、好ましくは6μm未満、好ましくは5μm未満、好ましくは約3μmであり、バッテリの特性を損なうことなくその厚さ及び重量を制限する。
【0107】
上記の高密度化の方法は、以下に説明するようにバッテリの組み立て中に行い得る。
【0108】
3.本発明に係るPEOにより官能基化された電解質または電子絶縁体のナノ粒子からの電解質層を含むバッテリの組み立て
本発明の目的の1つは、二次リチウムイオン電池用に、好ましくは薄層で、新しい電解質を提供することである。以下、本発明に係る電解質を備えたバッテリについて説明する。
【0109】
本発明に係る電解質層の前駆体材料のナノ粒子の懸濁液は、沈殿またはソルボサーマル方、特に熱水法によって調製でき、これは、直接、良好な結晶性を有するナノ粒子をもたらす。電解質層は、基板21を被覆するカソード層22及び/又は基板11を被覆するアノード層12に、電気泳動又はディップコーティングによって堆積される。どちらの場合も、前記基板は、それぞれ陰極または陽極の集電体として機能できるのに十分な導電性を備えていなければならない。
【0110】
アノード層12、本発明に係る電解質層13、23及びカソード層22によって形成されたセルの組み立ては、好ましくは不活性雰囲気中で、ホットプレスによって行う。温度は、有利には、20~300℃、好ましくは20~200℃、より好ましくは20~100℃である。圧力は、有利には一軸的であり、10~200MPaの間、好ましくは50~200MPaのである。
【0111】
このようにして、完全に固体で剛性を有するセルが得られる。
【0112】
以下、本発明に係るリチウムイオンバッテリを製造する別の例を説明する。この方法は、以下のステップを含む:
(1)アノード及びカソードとして使用できる材料の層(これらの層は、それぞれ「アノード層」12及び「カソード層」22と呼ぶ)で事前に被覆された、少なくとも2つの導電性基板を準備し、
(2)電解質として使用できる材料の粒子をコアとして含み、これにPEOで構成されたシェルがグラフトされた、コアシェルナノ粒子を含むコロイド懸濁液を準備し、
(3)前記コロイド懸濁液から、電気泳動又はディップコーティングにより、前記コアシェルナノ粒子の層を、ステップ(1)で得られたカソード及びアノード層の少なくとも一方へ堆積させ、
(4)そのようにして得た電解質層を、好ましくは空気流で、乾燥させ、
(5)その少なくとも一方が電解質層13、23で被覆されたカソード及びアノード層を積層させ、
(6)ステップ(5)で得たアノード及びカソード層の積層体を、機械的圧縮及び/又は熱処理により処理し、アノード及びカソード層上に存在する電解質層を組み立てる。
【0113】
ステップ(1)及び(2)の順番は重要ではない。
【0114】
有利には、アノード層及びカソード層は、高密度電極、すなわち体積多孔度が20%未満の電極、多孔質電極、好ましくは開いた細孔の相互接続されたネットワークを有するもの又はメソポーラス電極、好ましくは開いたメソ細孔の相互接続ネットワークを有する電極であり得る。
【0115】
多孔質の、好ましくはメソポーラスの、電極は、比表面積が非常に大きいため、液体電解質と使用する際に、電極と電解質との間でパラサイト反応が起こり得る;これらの反応は少なくとも部分的には不可逆である。有利な実施形態では、電子絶縁性の材料の、好ましくはイオン伝導である、被覆し好ましくは欠陥のない、非常に薄い層は、電極の表面を不動態化して、これらのパラサイトの電気化学反応の速度を制限するために及びこれらのパラサイト反応を防止するために、多孔質の、好ましくはメソポーラスの、電極層に適用される。有利には、この誘電体層は、特に多孔質電極層を乾燥させた後又は多孔質電極層を固化した後、好ましくは原子層堆積ALDの技術によって又は溶液CSD中で化学的に、多孔質電極層の細孔及びその内部に堆積された電気絶縁性材料の層であり得る。
【0116】
高密度電極の枠組みでは、及び別の有利な実施形態では、電子絶縁性材料の、好ましくはイオン伝導性の、非常に薄い層が、高密度電極と電解質との間に存在する界面抵抗を低減するために、電極層に、適用され得る。
【0117】
この電子絶縁性材料の、好ましくはイオン伝導性の、層は、有利には10-8S/cm未満の電子伝導率を有する。有利には、この堆積は、多孔質であるか高密度であるかにかかわらず、電極と電解質との間の界面を形成する、電極の少なくとも1つの面で行なわれる。この層は、例えば、アルミナAl、シリカSiO又はジルコニアZrOから構成され得る。カソードでは、LiTi12を使用でき、又はLiTi12のような、カソードの動作電圧でリチウムを挿入せず、電子絶縁体として動作するという特性を持つ、別の材料を使用し得る。
【0118】
代替的に、この電子絶縁性材料の層は、イオン伝導性であってもよく、有利には10-8S/cm未満の電子伝導率を有する。この材料は、バッテリの動作電圧でリチウムを挿入せず、輸送だけ行うように選択しなければならない。これには、例えば、LiPO、LiBOや、LiLaZr12などの幅広い動作電位を有するリチウムランタンジルコニウム酸化物(LLZOと呼ばれる)を使用できる。他方、Li3xLa2/3-xTiOなどのリチウムランタンチタン酸化物(略称LLTO)、リン酸リチウムアルミニウムチタン(略称LATP)、リン酸リチウムアルミニウムゲルマニウム(略称LAGP)は、動作電位の範囲が限られているので、カソードとの接触でのみ使用できる;その範囲を超えると、それらは、リチウムをその結晶構造に挿入し得る。
【0119】
この堆積は、多孔質か高密度かにかかわらず、少なくとも1つの電極を備えるリチウムイオンバッテリの性能をさらに改善する。含浸された多孔質電極の場合、この堆積は、電解質との界面ファラデー反応を抑制し得る。これらのパラサイト反応は、温度が高いときにさらに重大である;それらは、容量の可逆的及び/又は不可逆的な損失の原因となる。固体電解質と接する高密度電極の場合、それは、スペースチャージの出現に関係する界面抵抗を制限し得る。
【0120】
非常に有利には、この堆積は、被覆コーティング(コンフォーマル堆積とも呼ばれる)、すなわち、それが適用される基板の原子トポグラフィを忠実に再現する堆積を可能にする技術によって、行われる。そのようなものとして知られているALD(原子層堆積)又はCSD(化学溶液堆積)技術が適している可能性がある。それは、電解質層の堆積の前及びセルの組み立ての前に、高密度電極に行い得る。それは、製造後、電解質層の堆積の前及び/又は後並びにセルの組み立ての前及び/又は後、多孔質の、好ましくはメソポーラスの、電極に行い得る。ALDによる堆積技術は、周期的な方法によって層ごとに行われ、基板のトポグラフィを真に再現する封止コーティングを行うことを可能にする;それは電極の表面全体に沿う。この被覆コーティングは、典型的には、1~5nmの厚さを有する。CSDによる堆積技術は、基板のトポグラフィを真に再現する封止コーティングを行うことを可能にする;それは電極の表面全体に沿う。この被覆コーティングは、典型的には5nm未満の、好ましくは1~5nmの厚さを有する。
【0121】
使用される電極が多孔質であり、電子絶縁性の、好ましくはイオン伝導性の、材料のナノ層で被覆されている場合、その電子絶縁性材料の、好ましくはイオン伝導性の、層が電極層の開いた多孔性を塞ぐのを防ぐために、それを生成するために用いられる電極材料の粒子の一次直径D50は少なくとも10nmであることが好ましい。
【0122】
電子絶縁性材料の、好ましくはイオン伝導性の、層は、いかなる有機バインダも含まない電極にのみ堆積されなければならない。実際、ALDによる堆積は、典型的には100~300℃の温度で行う。この温度では、バインダを形成する有機材料(例えば、インクのテープキャスティングによって生成される電極に含まれるポリマー)が分解するリスクがあり、ALD反応器を汚染する。さらに、活性電極材料の粒子と接する残留ポリマーの存在は、ALDコーティングが粒子の表面全体を被覆するのを妨げる可能性があり、これはその有効性にとって有害である。
【0123】
例えば、約1.6nmの厚さのアルミナの層が適切である可能性がある。
【0124】
電極がカソードである場合、それは、以下から選択されるカソード材料Pによって構成されていてもよい:
- 酸化物LiMn、Li1+xMn2-xであり0<x<0.15、LiCoO、LiNiO、LiMn1.5Ni0.5、LiMn1.5Ni0.5-xでありXはAl、Fe、Cr、Co、Rh、Nd、及びSc、Y、Lu、La、Ce、Pr、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ybなどの他の希土類から選択され0<x<0.1、LiMn2-xでありM=Er、Dy、Gd、Tb、Yb、Al、Y、Ni、Co、Ti、Sn、As、Mg又はこれらの化合物の混合物であり0<x<0.4、LiFeO、LiMn1/3Ni1/3Co1/3、LiNi0.8Co0.15Al0.05、LiAlMn2-xであり0≦x<0.15、LiNi1/xCo1/yMn1/zでありx+y+z=10;
- リン酸塩LiFePO、LiMnPO、LiCoPO、LiNiPO、Li(PO;式LiMM’POのリン酸塩でありM及びM’(M≠M’)がFe、Mn、Ni、Co、Vから選択され;
- 以下のカルコゲニドのすべてのリチウム形態:V、V、TiS、オキシ硫化チタン(TiOでありz=2-y且つ0.3≦y≦1)、オキシ硫化タングステン(WOであり0.6<y<3且つ0.1<z<2)、CuS、CuS、好ましくはLiであり0<x≦2、Liであり0<x≦1.7、LiTiSであり0<x≦1、オキシ硫化チタン及びオキシ硫化リチウムLiTiOでありz=2-y、0.3≦y≦1、LiWO、LiCuS、LiCuS
【0125】
電極がアノードである場合、それは、以下から選択されるアノード材料Pによって構成されていてもよい:
- カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイト;
- リン酸鉄リチウム(一般式LiFePOのもの);
- ケイ素及びスズの酸窒化物(一般式SiSnでありa>0、b>0、a+b≦2、0<y≦4、0<z≦3)(SiTONとも呼ばれる)、特にSiSn0.871.21.72;同様に、一般式SiSnの酸窒化物-炭化物でありa>0、b>0、a+b≦2、0<c<10、0<y<24、0<z<17;
- 以下のタイプの窒化物:Si(特にx=3且つy=4)、Sn(特にx=3且つy=4)、Zn(特にx=3且つy=2)、Li3-xN(M=Coの場合は0≦x≦0.5、M=Niの場合は0≦x≦0.6、M=Cuの場合は0≦x≦0.3);Si3-xでありM=Co又はFe且つ0≦x≦3、
- 以下の酸化物:SnO、SnO、LiSnO、SnSiO、LiSiO(x>=0及び2>y>0)、LiTi12、TiNb、Co、SnB0.60.42.9及びTiO
- 0~10重量%の炭素を含む複合酸化物TiNbであり、好ましくは炭素はグラフェン及びカーボンナノチューブから選択されるもの。
【0126】
電子絶縁性の、好ましくはイオン伝導性の、材料により、コーティングされているかどうかにかかわらず、高密度の、多孔質の、好ましくはメソポーラスの、電極に、好ましくはALDによって又はCSDによって、本発明に係る電解質を実施し得る。
【0127】
エネルギー密度が高く、電力密度が高いバッテリを得るために、このバッテリは、有利には、多孔質の、好ましくはメソポーラスの、アノード層12とカソード層22と、本発明に係る電解質とを備える。
【0128】
有利には、アノード及びカソード層は、ALDによって又はCSDによって、電子絶縁性の、好ましくはイオン伝導性の、材料の層でコーティングされているかどうかにかかわらず、次に、本発明に係る電解質層で被覆され、セルの組み立てを容易にするためにホットプレスされる。
【0129】
組み立てを行うと、1つ以上の組み立てられたセルから構成された剛性の多層システムが得られる。有利な実施形態では、電子絶縁性材料の、好ましくは前述のようにイオン伝導性の、ALD又はCSDによる、好ましくは欠陥のない、非常に薄い層を、1つ以上の組み立てられたセルのこの剛性の多層システムに適用し得る。これを使用する場合、1回の処理で多孔質電極のすべての表面を被覆できる。この処理は、電極の表面を不動態化することに加え、メソポーラス構造の近接可能な表面のみを、すなわち、リチウムイオンを運ぶ相と接する層となる表面のみを、被覆することを可能にする。
【0130】
この堆積により、少なくとも1つの多孔質電極を備えるリチウムイオンバッテリの性能が改善する。この観察された改善は、実質的に、リチウムイオンを運ぶ相と電極との間の界面でのファラデー反応の抑制である。
【0131】
非常に有利には、この堆積は、被覆コーティング(コンフォーマル堆積とも呼ばれる)、すなわち、それが適用される基板の原子トポグラフィを忠実に再現する堆積を可能にする技術によって行う。そのようなものとして知られているALD(原子層堆積)又はCSD(化学溶液堆積)技術が適切である可能性がある。ALD及びCSDによるこれらの堆積技術により、電極の表面全体に沿うコーティングを行うことが可能となる。この被覆コーティングは、厚さが、典型的には5nm未満、好ましくは1~5nmである。
【0132】
誤動作、特にバッテリの発火の危険性を誘発する可能性のあるあらゆる液体の使用を回避するために、本発明に係る高密度電極及び電解質を備えるバッテリの実施が好ましい。
【0133】
有利には、本発明に係る、少なくとも1つの多孔質の、好ましくはメソポーラスの、電極及び電解質を備えるバッテリは、性能が向上しており、特に電力密度が高い。少なくとも1つの多孔質の、好ましくはメソポーラスの、電極を備える、本発明に係るリチウムイオンバッテリの製造例を、以下、説明する。この方法は、以下のステップを含む:
(1)平均一次直径D50が50nm以下である少なくとも1つのカソード材料のナノ粒子を含むコロイド懸濁液を準備し、これらのナノ粒子は、少なくとも1つのカソード材料の多孔質層を得るように、好ましくは凝集体又は塊を形成する、
(2)平均一次直径D50が50nm以下である少なくとも1つのアノード材料のナノ粒子を含むコロイド懸濁液を準備し、これらのナノ粒子は、少なくとも1つのアノード材料の多孔質層を得るように、好ましくは凝集体又は塊を形成する、
(3)少なくとも2つの、好ましくは金属である、平坦な導電性基板を準備し、該導電性基板は、バッテリの集電体として使用でき、
(4)カソード、アノードの少なくとも1つの薄層を、ステップ(1)、ステップ(2)でそれぞれ得た材料のナノ粒子の前記懸濁液から、ディップコーティング、インクジェット、ロールコーティング、カーテンコーティング、ドクターブレード又は電気泳動により、好ましくはパルス電流定電流電着により、ステップ(3)で得た前記基板に堆積し、
(5)ステップ(4)で得た層を乾燥させ、
(6)任意で、電子絶縁性材料の層を、ALDにより又はCSDにより、ステップ(5)で得たカソード層及び/又はアノードの、細孔及びその内部に堆積させ、
(7)電解質層を、電気泳動又はディップコーティングにより、本発明に係るコア-シェル粒子の懸濁液から、ステップ(5)又はステップ(6)で得たカソード層及び/又はアノード層に、堆積させ、第1の及び/又は第2の中間構造を得て、
(8)そのようにしてステップ(7)で得た層を、好ましくは空気流で、乾燥させ、
(9)以下のいずれかにより、前記第1及び又は第2の中間構造から積層体を生成し、「基板/アノード/電解質/カソード/基板」のタイプの積層体を得て:
・ 前記第1の中間構造にアノード層12を堆積させるか、
・ 又は、前記第2の中間構造にカソード層22を堆積させるか、
・ 又は、その2つの電解質層の一方を他方の上に配置するように、前記第1の中間構造及び前記第2の中間構造を重ね合わせる、
(10)ステップ(9)で得たアノード及びカソード層をホットプレスし、アノード及びカソード層にある、ステップ(8)で得た膜を組み立て、
(11)任意で、ステップ(10)で得た熱圧縮された積層体の層の細孔及びその内部に、電子絶縁性材料の層をALD又はCSDにより堆積させ、
(12)ステップ(10)で又はステップ(11)の後に得た構造を、リチウムイオンを運ぶ相によって含浸させ、含浸された構造、好ましくはセルを得る。
【0134】
ステップ(1)、(2)及び(3)の順番は重要ではない。
【0135】
ホットプレスによりバッテリを形成する積層体の組み立てが完了すると、これをリチウムイオンを運ぶ相で含浸させ、次いで、以下に示すような封止システムで封止し、次いで、切断面に沿って切断し、以下に示すようなバッテリのアノード及びカソード接続部50がその切断面の各々に露出した、ユニットバッテリコンポーネントが得られる。そして、これに、以下に示すように終端システムを堆積させる。
【0136】
一実施形態では、ホットプレスによりバッテリを形成する積層体の組み立てが完了すると、これを、以下に示すような封止システムで封止し、次いで、切断面に沿って切断し、以下に示すようなバッテリのアノード及びカソード接続部50がその切断面の各々に露出した、ユニットバッテリコンポーネントが得られる。次いで、これを、以下に示すように、終端システムの堆積の前に、リチウムイオンを運ぶ相で含浸させる。
【0137】
この相は、有機溶媒又は有機溶媒の混合物に溶解された、及び/又は少なくとも1つのリチウム塩を含むポリマーに溶解された、及び/又は少なくとも1つのリチウム塩を含むイオン液体(すなわち、溶融リチウム塩)に溶解された、リチウム塩によって構成された溶液であってもよい。この相は、これらの成分の混合物から構成された溶液でもあってもよい。
【0138】
リチウムイオンを運ぶ相は、そのような電極が使用されるとき、多孔質電極を含浸させ得る。本発明に係る電解質層は、リチウムイオンを運ぶ相によって含浸されない。
【0139】
リチウムイオンを運ぶ相は、リチウム塩を含むイオン液体であってもよく、有機溶媒又はイオン液体に溶解されたものとは異なっていてもよいリチウム塩を含む有機溶媒の混合物で希釈されていてもよい。
【0140】
イオン液体は、アニオンを伴うカチオンを含む;このアニオン及びこのカチオンは、イオン液体が蓄電池の動作温度範囲で液体状態になるように選択される。イオン液体は、熱安定性が高く、可燃性が低く、不揮発性であり、毒性が少なく且つ電極材料として使用できる材料であるセラミックの濡れ性が良い、という長所がある。驚くべきことに、リチウムイオンを運ぶ相に含まれるイオン液体の重量パーセントは、50%超え、好ましくは60%超え、さらにより好ましくは70%超えであってもよく、これは、従来のリチウムイオンバッテリとは対照的である。従来のものは、電解質中のイオン液体の重量パーセントは、バッテリが放電の際に大きな容量及び高い電圧を維持し、且つサイクルで良好な安定性を維持するために、50重量%未満でなければならない。出願US2010/209783A1に示されているように、50重量%を超えると、従来技術のバッテリの容量は小さくなる。これは、従来技術のバッテリの電解質内のポリマーバインダの存在によって説明できる;これらのバインダはイオン液体によってわずかしか濡らされておらず、リチウムイオンを運ぶ相内のイオン伝導が不十分になり、バッテリの容量の低下を引き起こす。
【0141】
多孔質電極を使用するバッテリは、好ましくは、バインダを含まない。このため、これらのバッテリは、バッテリの最終容量を減少させることなく、少なくとも1つのイオン液体が50重量%を超えの、リチウムイオンを運ぶ相を使用できる。
【0142】
リチウムイオンを運ぶ相は、いくつかのイオン液体の混合物を含んでいてもよい。
【0143】
有利には、イオン液体は、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム(EMI+とも呼ばれる)タイプ及び/又はn-プロピル-n-メチルピロリジニウム(PYR13 とも呼ばれる)及び/又はn-ブチル-n-メチルピロリジニウム(PYR14 とも呼ばれる)のカチオンであってもよく、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(TFSI)及び/又はビス(フルオロスルホニル)イミド(FSI)タイプのアニオンを伴っていてもよい。電解質を形成するために、LiTFSIなどのリチウム塩を、溶媒として使用されるイオン液体又はγ-ブチロラクトンなどの溶媒に溶解してもよい。γ-ブチロラクトンは、イオン液体の結晶化を防ぎ、イオン液体の温度での、特に低温での、動作範囲をより広くする。
【0144】
リチウムイオンを運ぶ相は、PYR14TFSI及びLiTFSIを含む電解液であってもよい;これらの略語は、以下で定義される。
【0145】
有利には、多孔質アノード又はカソードがリン酸リチウムを含む場合、リチウムイオンを運ぶ相は、LiBH、又は、LiBHとLiCl、LiI及びLiBrから選択される1つ以上の化合物との混合物などの固体電解質を含む。LiBHはリチウムの優れた伝導体であり、融点が低いため、特に浸漬することにより、多孔質電極の含浸が容易になる。LiBHは非常に還元力が強いため、電解質としてはほとんど使用されない。多孔質のリン酸リチウム電極の表面に保護膜を使用することで、LiBHによる、電極材料の、特にカソード材料の、還元を防ぎ、電極の劣化を防ぐ。
【0146】
有利には、リチウムイオンを運ぶ相は、少なくとも1つのイオン液体、好ましくは周囲温度での少なくとも1つのイオン液体、例えば、γ-ブチロラクトンなどの、少なくとも1つの溶媒で希釈されていてもよいPYR14TFSIなど、を含む。
【0147】
有利には、リチウムイオンを運ぶ相は、10~40重量%の溶媒、好ましくは30~40重量%の溶媒、さらにより好ましくは30~40重量%のγ-ブチロラクトンを含む。
【0148】
有利には、リチウムイオンを運ぶ相は、50重量%超えの少なくとも1つのイオン液体及び50%未満の溶媒を含み、これは、リチウムイオンを運ぶそのような相を含むバッテリの故障の場合における安全性及び発火のリスクを抑制する。
【0149】
有利には、リチウムイオンを運ぶ相は、以下を含む:
- 30~40重量%の溶媒、好ましくは30~40重量%のγ-ブチロラクトン、及び、
- 50重量%超えの少なくとも1つのイオン液体、好ましくは50重量%超えのPYR14TFSI。
【0150】
リチウムイオンを運ぶ相は、PYR14TFSI、LiTFSI及びγ-ブチロラクトンを含む電解液、好ましくは、約90重量%のPYR14TFSI、0.7MのLiTFSI及び10重量%のγ-ブチロラクトンを含む電解液であってもよい。
【0151】
細孔の平均直径D50が2~80nm、好ましくは2~50nm、好ましくは6~30nm、より好ましくは8~20nmである場合に、多孔質の、好ましくはメソポーラスの、電極は、単純な毛細管現象によって液相を吸収し得る。この全く予想外の効果は、これらの電極の細孔の直径が小さいほど有利である。
【0152】
この組立物の細孔は、好ましくはそれがセラミック材料から構成されている場合、イオン液体、イオン液体の混合物又は有機溶媒で希釈された少なくとも50重量%の少なくとも1つのイオン液体を含む溶液によって容易に濡らすことができる。有利には、多孔質の、好ましくはメソポーラスの、電極は、電解質によって、好ましくは、有機溶媒又はイオン液体に溶解されたものとは異なっていてもよいリチウム塩を含む有機溶媒の混合物で希釈されていてもよい、リチウム塩を含むイオン液体などのリチウムイオンを運ぶ相によって、含浸される。
【0153】
このようにして、非常に高い電力密度を有するリチウムイオンバッテリセルが得られる。
【0154】
4.封止
誘電体層で被覆されているかどうかにかかわらない、リチウムイオンを運ぶ相で含浸されていてもよい、1つ以上の組み立てられたセルによって構成された、多層の剛体システムである、バッテリ1又は組立物は、周辺空気から確実に保護するために適切な方法で封止しなければならない。封止システムは、少なくとも1つの層を含み、好ましくは、いくつかの層の積層体である。封止システムが単層で構成されている場合、それは、ALDによって堆積されるか、又はパリレン及び/若しくはポリイミドで構成されていなければならない。これらの封止層は、化学的に安定で、高温に耐性があり、周辺空気が不透過でなければならない(バリア層)。特許出願WO2017/115032、WO2016/001584、WO2016/001588又はWO2014/131997に記載されている方法の1つを利用してもよい。好ましくは、前記少なくとも1つの封止層は、前記バッテリの6つの面のうち4つを被覆し、ほかの2つの面は、終端システムで被覆される。
【0155】
有利には、バッテリ又は組立物は、いくつかの層の積層体、すなわち、以下を含む、シーケンス、好ましくはzシーケンス(z sequences)によって形成された、封止システム30で被覆されていてもよい。
【0156】
- アノード及びカソードの箔の積層体に堆積された、好ましくはパリレン、F型のパリレン、ポリイミド、エポキシ樹脂、シリコーン、ポリアミド及び/又はこれらの混合物から選択される、第1の被覆層、
- 電気絶縁性材料で構成され、前記第1の被覆層に原子層堆積によって堆積された、第2の被覆層、
このシーケンスは、z≧1でz回繰り返し得る。この多層シーケンスにはバリア効果がある。封止システムのシーケンスが繰り返されるほど、このバリア効果はより大きくなる。それは、堆積された薄層が多数あるのと同様に効果が大きい。
【0157】
有利には、第1の被覆層は、ポリマー層であり、例えばシリコーン(例えば、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)からの含浸若しくはプラズマアシスト化学気相堆積によって堆積される)、又はエポキシ樹脂、又はポリイミド、ポリアミド、又はポリパラキシリレン(より一般的にはパリレンとして知られている)、好ましくはパリレン及び/又はポリイミドベース、から構成されている。この第1の被覆層は、バッテリの、影響を受けやすい要素をその周辺環境から保護することを可能にする。前記第1の被覆層の厚さは、好ましくは、0.5~3μmである。
【0158】
有利には、第1の被覆層は、C型のパリレン、D型のパリレン、N型のパリレン(CAS番号:1633-22-3)、F型のパリレン又はC、D、N及び/若しくはF型のパリレンの混合物であってもよい。パリレン(ポリパラキシリレン又はポリ(p-キシリレン)とも呼ばれる)は、誘電性の透明な半結晶性材料であり、高い熱力学的安定性、溶剤に対する高い耐性及び非常に低い透過性を備えている。パリレンは、外部環境からバッテリを保護できるバリア特性も備えている。この第1の被覆層がF型のパリレンから構成されていると、バッテリの保護は強化される。化学蒸着技術(CVD)により真空蒸着してもよい。この第1の封止層は、有利には、化学蒸着技術(CVD)によって表面に堆積されたガス状モノマーの凝縮から得られ、それによって、その対象物の近接可能なすべての表面の、コンフォーマルで薄く均一な被覆が可能となる。それによって、その動作中のバッテリの体積の変化を追跡することが可能となり、その弾性特性によってバッテリの特定の切断を容易にする。この第1の封止層の厚さは、2~10μm、好ましくは2~5μmであり、さらにより好ましくは約3μmである。それは、積層体の近接可能なすべての表面を被覆し、これらの近接可能な表面の細孔への近接をその表面でのみ閉じ、基板の化学的性質を均一にすることを可能にする。第1の被覆層は、堆積されたポリマーのサイズが大きすぎて積層体の細孔には入ることができないので、バッテリ又は組立物の細孔には入らない。
【0159】
この第1の被覆層は、有利には、剛性である;柔軟な表面と見なすことはできない。したがって、封止は積層体上で直接実行でき、コーティングは近接可能なすべての細孔に浸透できる。
【0160】
一実施形態では、パリレンCの層、パリレンDの層、パリレンN(CAS番号:1633-22-3)の層又はパリレンC、D及び/若しくはNの混合物を含む層などの、パリレンから構成された第1の層を堆積する。パリレン(ポリパラキシリレン又はポリ(p-キシリレン)とも呼ばれる)は、誘電性の透明な半結晶性材料であり、高い熱力学的安定性、溶剤に対する優れた耐性及び非常に低い透過性を備えている。
【0161】
パリレンのこの層は、バッテリの、影響を受けやすい要素を、その周辺環境から保護できる。この保護は、この第1の封止層がパリレンNから構成されていると、強化される。
【0162】
別の実施形態では、ポリイミドベースの第1の層が堆積される。このポリイミドの層は、バッテリの、影響を受けやすい要素をその周辺環境から保護する。
【0163】
別の実施形態では、第1の封止層は、好ましくは1μmの厚さの、ポリイミドの第1の層から構成され、その上に、好ましくは2μmの厚さの、パリレンの第2の層が堆積される。この保護は、この第2の層が、パリレンから、好ましくは厚さ約2μmのパリレンNから、構成されていると、強化される。パリレンの層と組み合わされたポリイミドの層は、バッテリの、影響を受けやすい要素のその周辺環境からの保護を向上させる。
【0164】
しかしながら、本発明者らは、この第1の層がパリレンベースである場合、酸素の存在下で十分な安定性がないことを観察した。この第1の層がポリイミドベースである場合、特に水の存在下では、シール性が十分でない。これらの理由により、第1の層をコーティングする第2の層を堆積する。
【0165】
有利には、電気絶縁性材料から構成される第2の被覆層は、この第1の層に原子層堆積(ALD)などのコンフォーマルな堆積技術によって堆積され得る。したがって、第1の被覆層で、好ましくはパリレン及び/又はポリイミドの第1の層で、事前に被覆された、積層体の近接可能なすべての表面に、コンフォーマルな被覆が得られる;この第2の層は、好ましくは無機層である。ALDによって堆積された層の成長は、基板の性質に影響される。化学的性質の異なる様々な領域を有する基板上にALDによって堆積された層は、不均一な成長を示し、この第2の保護層の完全性が失われる可能性がある。パリレン及び/又はポリイミドのこの第1の層に堆積された第2の層は、パリレン及び/又はポリイミドの第1の層を、空気から保護し、封止されたバッテリの寿命を長くする。
【0166】
ALDによる堆積技術は、非常に粗い表面を、全体的に高い気密性で且つコンフォーマルに被覆するのに特に適している。それらは、例えば穴のない層(「ピンホールフリー」と呼ばれる層)などの、欠陥のない、非常に優れたバリア性を示す、コンフォーマルな層を実現することを可能にする。それらのWVTR係数は非常に小さい。WVTR係数(水蒸気透過率)により、封止システムの蒸気の透過性を評価できる。WVTR係数が小さいほど、封止システムはより気密性が高くなる。例えば、ALDによって堆積された厚さ100nmのAlの層は、蒸気の透過性が0.00034g/mdである。第2の被覆層は、セラミック材料、ガラス質材料又はガラスセラミック材料、例えば、酸化物の、Alタイプの、窒化物の、リン酸塩の、酸窒化物の若しくはシロキサンの、形態のもので、構成されていてもよい。この第2の封止層は、200nm未満、好ましくは5~200nm、より好ましくは10~100nm、10~50nm、さらにより好ましくは約50nmの厚さを有する。
【0167】
ALDによって堆積されたこの第2の被覆層は、一方では構造の気密性を確保すること、すなわち構造内部の水の移動を防止することを可能にし、他方では第1の被覆層を、好ましくはパリレン及び/又はポリイミド、好ましくはF型のパリレンの層を、その劣化を防ぐために、周辺環境から、保護することを可能にする。
【0168】
しかし、ALDによって堆積されたこれらの層は、機械的に非常に脆く、保護の役割を確実にするために剛性の支持面が必要である。柔軟な表面に脆い層が堆積されると、亀裂が形成され、この保護層の完全性が失われる。
【0169】
一実施形態では、バッテリセルの外部環境からの保護を強化するために、第2の被覆層に又は前述したようないくつかの層の積層体によって構成された封止システム30に、すなわち、封止システムのシーケンスに、好ましくはz≧1であるzシーケンスに、第3の被覆層を堆積する。典型的には、この第3の層は、ポリマーから、例えばシリコーン(例えば、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO、CAS番号:107-46-0)からの含浸若しくはプラズマアシスト化学蒸着によって堆積されたもの)、又はエポキシ樹脂、又はポリイミド、又はパリレンから構成されている。
【0170】
さらに、封止システム30は、多層封止システムを形成するために、好ましくは厚さ約3μmの、パリレン及び/又はポリイミドの層と、前述のようにALDによってコンフォーマルに堆積された無機層などの電気絶縁性材料から構成された層とが、交互に連続する層を、含んでいてもよい。封止の性能を向上させるために、封止システムは、好ましくは約3μmの厚さの、パリレン及び/又はポリイミドの第1の層と、第1層にALDによってコンフォーマルに堆積され、電気絶縁性材料から、好ましくは無機層から、構成された、第2の層と、第2の層に堆積され、好ましくは厚さ約3μmの、パリレン及び/又はポリイミドの第3の層と、第3の層にALDによってコンフォーマルに堆積された電気絶縁性材料から構成された第4の層とを含んでいてもよい。
【0171】
次いで、封止システムのこのシーケンスにより、好ましくはzシーケンスにより、封止されたバッテリ又は組立物は、このように封止された積層体を機械的に保護するために、そして任意で美的側面を提供するために、最後の被覆層で被覆してもよい。この最後の被覆層は、バッテリを保護し且つその寿命を長くする。有利には、この最後の被覆層はまた、高温に耐性があるように選択され、後の使用の際にバッテリを保護するのに十分な機械的耐性を有する。有利には、この最後の被覆層の厚さは、1~50μmである。理想的には、この最後の被覆層の厚さは約10~15μmであり、このような厚さの範囲により、バッテリを機械的損傷から保護できる。
【0172】
有利には、この最後の被覆層は、バッテリセルの外部環境からの保護を強化し、バッテリセルを機械的損傷から保護するために、前述したようないくつかの層の積層体によって構成された封止システム30に、すなわち、封止システムのシーケンスに、好ましくはz≧1のzシーケンスに、好ましくは厚さ約3μmでありALDによってコンフォーマルに堆積された無機層の、好ましくはパリレン及び/又はポリイミドのこの交互に連続した層に、堆積される。この最後の封止層は、好ましくは、約10~15μmの厚さを有する。この最後の被覆層は、好ましくは、エポキシ樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド、ポリアミド、ポリウレタン、シリコーン、ゾルゲルシリカ又は有機シリカを主成分とする。有利には、この最後の被覆層は、浸漬によって堆積される。典型的には、この最後の被覆層は、ポリマーから、例えばシリコーン(例えば、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)からの浸漬若しくはプラズマアシスト化学蒸着によって堆積されたもの)、又はエポキシ樹脂、又はパリレン、又はポリイミドから、構成されている。例えば、バッテリを機械的損傷から保護するために、シリコーンの層(典型的には厚さ約15μm)を、インジェクションによって堆積してもよい。封止システム30は、図1に示され、有利には、以下を含む、いくつかの層の積層体で、すなわち、シーケンスで、好ましくはz≧1のzシーケンスで、構成されている:
- アノード及びカソード箔の積層体に堆積された、好ましくは、パリレン、F型のパリレン、ポリイミド、エポキシ樹脂、シリコーン、ポリアミド及び/又はこれらの混合物から選択された、第1の被覆層、
- 前記第1の被覆層に原子層堆積により堆積された、電気絶縁性材料から構成された第2の被覆層、
- また、このいくつかの層の積層体に堆積された、好ましくは、エポキシ樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド、ポリアミド、ポリウレタン、シリコーン、ゾルゲルシリカ又は有機シリカをベースとする、最後の被覆層。
【0173】
これらの材料は、高温に耐性があり、ガラス転移を起こすことなく電子基板に溶接することでバッテリを簡単に組み立てることができる。有利には、バッテリの封止は、積層体の6つの面のうちの4つに行う。封止層は積層体の周囲を囲み、残りの部分の周辺空気からの保護は、終端部により得られる層によって与えられる。
【0174】
封止のステップの後、このように封止された積層体は、次いで、切断面に沿って切断し、バッテリのアノード及びカソード接続部50がその切断面の各々に露出した、ユニットバッテリコンポーネントが得られる。そして、封止システム30は、前記バッテリの6つの面のうちの4つを、好ましくは連続的に、被覆し、そして、バッテリの他の2つの面は、後に終端部40によって被覆されるので、このシステムは溶接なしで組み立てることができる。
【0175】
有利な一実施形態では、このように封止され及び切断された積層体は、無水雰囲気中で、有機溶媒、又は、本出願に示されているように、イオン液体に溶解されたものとは異なっていてもよいリチウム塩を含む有機溶媒混合物で希釈されていてもよい、リチウム塩を含むイオン液体などのリチウムイオンを運ぶ相によって含浸され得る。含浸は、有機溶媒又はイオン液体に溶解されたものとは異なっていてもよいリチウム塩を含む有機溶媒混合物で希釈されていてもよい、リチウム塩を含むイオン液体などの電解液に浸漬して行ってもよい。イオン液体は、毛細管現象によって細孔に即座に入る。
【0176】
バッテリの封止、切断及び場合によって含浸の、ステップ後、終端部40が加えられ、バッテリの適切な動作に必要な電気的接触部が設けられる。
【0177】
5.終端部
有利には、バッテリは、カソード、アノードのそれぞれにおいて、集電体が現れる終端部40を備える。好ましくは、アノード接続部及びカソード接続部は、積層体において反対側にある。これらの接続部50及びその周囲に、終端システム40(a termination system)を堆積させる。接続部は、当業者に知られているプラズマ堆積技術を使用して、好ましくはALDによって並びに/又は(銀が充填された)導電性エポキシ樹脂及び/若しくはスズの溶融浴に浸漬することによって、金属化できる。好ましくは、終端部は、ALDによって堆積された、好ましくは金属の、第1の薄い導電性の被覆層と、この第1の層に堆積された銀が充填された第2のエポキシ樹脂層と、この第2の層に堆積されたスズベースの第3の層とを連続して含む、積層体から構成されている。ALDによって堆積された第1の導電層は、バッテリのその領域を湿気から保護するために使用される。ALDによって堆積されるこの第1の導電層は任意である。それは、終端部でのWVTRを小さくすることにより、バッテリのカレンダ寿命を長くできる。この第1の薄い被覆層は、特に金属又は金属窒化物ベースであってもよい。銀を充填したエポキシ樹脂から構成された第2の層は、電気回路が熱及び/又は振動のストレスにさらされたときに電気的接触を壊すことなく、接続部に「柔軟性」を与えることを可能にする。
【0178】
スズベースの第3の金属化された層は、バッテリの溶接性を確保するために使用される。他の実施形態では、この第3の層は、異なる材料の2つの層から構成され得る。第1の層が銀を充填したエポキシ樹脂の層と接する。この層はニッケルから、電着によって形成される。このニッケルの層は熱バリアとして使用され、再溶融による、コンポーネントの残りの部分を組み立てステップ中の拡散から保護する。このニッケルの層に堆積された最後の層もまた、金属化層であり、再溶融することにより界面の組立物との相性をよくするために、好ましくはスズから構成されている。このスズの層は、溶融スズ浴に浸漬するか又は電着によって、堆積できる;これらの技術は、そのように知られている。
【0179】
マイクロ配線(micro-wiring)による銅トラック上の特定の組立物では、銅製の最後の金属化層が必要になる場合がある。このような層は、スズの代わりの電着によって実現できる。
【0180】
別の実施形態では、終端部40は、銀が充填されたエポキシ樹脂で構成された層と、第1の層に堆積されたスズ又はニッケルベースの第2の層とを連続して含む積層体から構成されていてもよい。
【0181】
別の実施形態では、終端部40は、銀が充填されたエポキシ樹脂の層と、第1の層に堆積されたニッケルベースの第2の層と、スズ又は銅ベースの第3の層とを連続して含む積層体から構成されていてもよい。
【0182】
好ましい実施形態では、終端部40は、それぞれ、非限定的な方法で、銀を充填したエポキシ樹脂などの導電性ポリマー層、ニッケル層及びスズ層の、異なる層から構成されていてもよい。
【0183】
別の好ましい実施形態では、終端部40は、カソード及びアノード接続部の端部において、グラファイトが充填された材料、好ましくはグラファイトが充填されたエポキシ樹脂、から構成された第1の層と、第1の層に堆積された銅のナノ粒子が充填されたインクから得られた金属銅を含む第2の層とを連続的に含む第1の積層体から、構成されている。そして、この終端部の第1の積層体は、金属銅の層によるカソード及びアノード接続部の被覆が得られるように、赤外線フラッシュランプによって焼結される。
【0184】
バッテリの最終的な用途によれば、終端部は、さらに、終端部の第1の積層体に配置された第2の積層体を含み得る。これは、最小のコストでバッテリの気密性を確保するための、好ましくは溶融スズ-亜鉛浴に浸漬することによって、堆積された、スズ-亜鉛合金の第1の層と、第2の積層体のこの第1の層に堆積された、電着によって堆積された純粋なスズベースの第2の層、又は銀、パラジウム及び銅ベースの合金を含む第2の層とを連続して含む。
【0185】
終端部40により、バッテリの端部の各々で、正及び負の電気接続部を交互に取ることができる。これらの終端部は、バッテリの異なる要素間に並列の電気接続部を生成することを可能にする。このために、カソード接続部のみが一方の端部に出て、アノード接続部はもう一方の端部で利用可能である。
【0186】
有利には、アノード及びカソード接続部は、積層体の反対側にある。
【0187】
前述の、電池の組み立て、少なくとも1つの多孔質電極が用いられる場合の組み立てられたバッテリの含浸、封止システム及び終端部の堆積に関連するすべての実施形態は、その組み合わせが当業者にとって現実的である場合、互いに独立してそれぞれ組み合わせてもよい。
【実施例
【0188】
以下の実施例は、本発明の特定の態様を示すが、本発明の範囲を限定しない。
【0189】
実施例1:リン酸リチウム/PEOの電解質層の製造
1.イオン伝導性ポリマーで覆われた固体電解質ナノ粒子の懸濁液の調製
a.LiPOのナノ粒子の懸濁液の実現
2つの溶液を調製した:
11.44gのCHCOOLi、2HOを112mlの水に溶解し、次いで、56mlのエタノールを、激しく攪拌しながらその溶媒に加え、溶液Aを得た。
【0190】
4.0584gのHPOを105.6mlの水で希釈し、次いで、45.6mlのエタノールをこの溶液に加え、以下で溶液Bと呼ぶ第2の溶液を得た。
【0191】
次いで、激しく攪拌しながら、溶液Bを溶液Aに加えた。
【0192】
得られた溶液は、混合中に形成された気泡の消失後に完全に透明になり、溶媒を均質化するためのUltraturraxTMタイプのホモジナイザーの作用下で、1.2リットルのアセトンに加えた。液相懸濁液中の白色沈殿が直ちに観察された。
【0193】
反応媒体を5分間均質化し、次いでマグネチックスターラで10分間攪拌した。1~2時間デカントした。次いで、上澄を廃棄し、残りの懸濁液を6000rpmで10分間遠心分離した。次いで、300mlの水を加えて沈殿物を懸濁液に戻した(ソノトロード、マグネチックスターラを使用)。このようにして得たコロイド懸濁液は、濃度10g/LのLiPOのナノ粒子を含む。
【0194】
b.PEOにより官能基化されたLiPOのナノ粒子のコロイド懸濁液の実現
次いで、事前に得た濃度10g/Lの懸濁液中の電解質のナノ粒子を、メトキシ-PEO5000-ホスホネート(CAS:911391-95-2、n=114)で官能基化した。
【0195】
【化4】
【0196】
この分子の水溶液を電解質ナノ粒子のコロイド懸濁液に加えた。
【0197】
この溶液を電解質ナノ粒子のコロイド懸濁液に加えた後、反応媒体を70℃で1時間撹拌しながら放置し、ホスホネート基をLiPOの電解質ナノ粒子の表面にグラフトさせた。
【0198】
次いで、このように官能基化されたナノ粒子を、遠心分離及び再分散の連続サイクルによって精製し、官能基化された粒子を、上澄に存在する反応しなかった分子から分離した。遠心分離後、上澄を除去した。官能基化された粒子を含む主成分を、所望の乾燥抽出物に達することが可能な量の溶媒に再分散させた。
【0199】
2.アノード層の作製
LiTi12粉末を、数ppmのクエン酸を含む無水エタノール中で約10g/Lで粉砕/分散させ、アノード材料の懸濁液を調製した。粉砕は、粒子サイズD50が70nm未満である安定な懸濁液が得られるように行った。
【0200】
懸濁液に含まれるLiTi12のナノ粒子を、電気泳動によってアノード層12に堆積させた;この層は、第1の導電性基板の2つの面に、1μmの厚さとなるように堆積させた;それを乾燥させ、約600℃で熱処理した。このアノード層12はいわゆる「高密度」層であり、熱固化のステップを経て層の密度を増加させた。
【0201】
次いで、アノードを、ALDによって堆積させた厚さ10nmのLiPOの保護コーティングでコーティングした。
【0202】
3.カソード層の作製
LiMn粉末を水中で粉砕/分散させ、カソード材料約10g/Lで懸濁液を調製した。粉砕は、粒子サイズD50が50nm未満である安定な懸濁液が得られるように行った。
【0203】
カソードは、前述の懸濁液に含まれるLiMnのナノ粒子を電気泳動によって、第2の導電性基板の2つの面に薄いフィルム形態で堆積させて準備した;次いで、厚さ1μmのこのカソード層を約600℃で熱処理した。このカノード層はいわゆる「高密度」層であり、熱固化のステップを経て層の密度を増加させた。
【0204】
次いで、カノードを、ALDによって堆積させた厚さ10nmのLiPOの保護コーティングでコーティングした。
【0205】
4.リン酸リチウム/PEOの電解質層の作製
このようにエタノール中10g/Lの懸濁液で官能基化させたナノ粒子を、電気泳動によって、前述の例のポイント2で示したアノード層12で、前述の例のポイント3で示したカソード層で、それぞれ事前に被覆された第1の(第2の)導電性基板に、両方ともコロイド懸濁液に浸した基板と対極との間に厚さ1.4μmの層が得られるまで、45Vの電圧を印加することにより、堆積させた。
【0206】
このようにして得られた層を乾燥させた。
【0207】
5.本発明に係る電解質を備えるバッテリの製造
例1.2で得たアノード及び例1.3で得たカソードを、それらの電解質の面に、積層させ、その全体を200℃で15分間、50MPaの圧力下に置いて維持した;このようにして、多くのサイクル数で充放電可能なリチウムイオンバッテリが得られた。
[項目1]
リチウムイオンバッテリ又はスーパーキャパシタ用の固体電解質(13、23)を、好ましくは薄層として、電極(12、22)に堆積させる方法であって、以下のステップを含む方法:
a.電極として使用できる材料の層(「電極層」)で事前に被覆された導電性基板(11、21)を準備し、
b.電解質及び/又は電子絶縁体として使用できる材料の粒子をコアとして含み、これにPEOを含むシェルがグラフトされた、コアシェル粒子の懸濁液から、好ましくは電気泳動又はディップコーティングにより、電解質層(13、23)を前記電極層へ、堆積させ;
c.そのようにして得られた前記電解質層(13、23)を、好ましくは空気流で、乾燥させ;
d.任意で、機械的圧縮及び/又は熱処理により前記電解質層を緻密化させる。
[項目2]
項目1に記載の方法において、
一次コア粒子の平均サイズD 50 は100nm未満、好ましくは50nm未満、さらにより好ましくは30nm以下である、方法。
[項目3]
項目1又は2に記載の方法において、
前記コアの粒子は、水熱又はソルボサーマル合成によって得られる、方法。
[項目4]
項目1~3のいずれかに記載の方法において、
前記コアシェル粒子の前記シェルの厚さは1~100nmである、方法。
[項目5]
項目1~4のいずれかに記載の方法において、
ステップc)又はd)で得られた前記電解質層の厚さは、10μm未満、好ましくは約6μm未満である、方法。
[項目6]
項目1~5のいずれかに記載の方法において、
前記PEOは、質量平均モル質量が7000g/mol未満、好ましくは約5000g/molである、方法。
[項目7]
項目1~6のいずれかに記載の方法において、
ステップb)で使用されるコアシェル粒子の前記懸濁液の乾燥抽出物は、30重量%未満である、方法。
[項目8]
項目1~7のいずれかに記載の方法の使用であって
固体電解質の、好ましくは1つの薄層の、電子的、電気的又は電気技術的デバイスの、好ましくは、バッテリ、キャパシタ、スーパーキャパシタ、容量、抵抗器、インダクタ、トランジスタからなる群において選択されたデバイスの、製造のための使用。
[項目9]
項目1~7のいずれかに記載の方法によって得られる、好ましくは薄層の、電解質。
[項目10]
項目9に記載の、好ましくは薄層の、電解質であって、
固体電解質及びPEOを含み、
固体電解質/PEOの体積比が35%超え、好ましくは50%超え、好ましくは60%超え、さらにより好ましくは70%を超え、であることを特徴とする、電解質。
[項目11]
項目9又は10に記載の、好ましくは薄層の、電解質であって、
多孔度が20%未満、好ましくは15%未満、より好ましくは10%未満、であることを特徴とする、電解質。
[項目12]
項目9~11のいずれかに記載の、好ましくは薄層の、少なくとも1つの固体電解質を備える電気化学デバイスであって、
好ましくは、リチウムイオンバッテリ又はスーパーキャパシタである、電気化学デバイス。
[項目13]
項目1~7のいずれかに記載の方法を実施して、リチウムイオンバッテリ(1)を製造するための方法であって、以下のステップを含む方法:
i.アノード及びカソードとして使用できる材料の層(それぞれ「アノード層」(12)、「カソード層」(22))で事前に被覆され、且つ、それらの面の少なくとも1つの少なくとも一部がカソード層、アノード層でそれぞれ被覆された、前記バッテリの集電体として使用される少なくとも2つの導電性基板(11、21)を準備し、
ii.電解質及び/又は電子絶縁体として使用できる材料の粒子をコアとして含み、これにPEOを含むシェルがグラフトされた、コアシェルナノ粒子を含むコロイド懸濁液を準備し、
iii.ステップii)で得たコアシェル粒子を含む懸濁液から、好ましくは電気泳動又はディップコーティングにより、電解質層(13、23)を、ステップi)で得たカソード層及び/又はアノード層へ堆積させ、第1及び/又は第2の中間構造を得て、
iv.ステップiii)でそのようにして得た層を、好ましくは空気流で、乾燥させ、
v.前記第1及び/又は第2の中間構造から積層体を形成し、以下によって、「基板/アノード/電解質/カソード/基板」タイプの積層体を得る:
・前記第1の中間構造にアノード層12を堆積させること、若しくは、
・前記第2の中間構造にカソード層22を堆積させることの、いずれか、
・又は、2つの電解質層のうち一方が他方の上に配置されるように、前記第1の中間構造及び前記第2の中間構造を重ね合わせること、
vi.前のステップで得た前記積層体を、機械的圧縮及び/又は熱処理により高密度化させ、バッテリを得る。
[項目14]
項目13に記載の方法において、
前記カソードは、
高密度電極、
又は、ALDにより若しくは溶液CSDで化学的に、電子絶縁性の層で、好ましくは電子絶縁性で且つイオン伝導性の層で、コーティングされた高密度電極、
又は、多孔質電極、
又は、ALDにより若しくは溶液CSDで化学的に、電子絶縁性の層で、好ましくは電子絶縁性で且つイオン伝導性の層で、コーティングされた多孔質電極、
又は、好ましくは、メソポーラス電極、
又は、ALDにより若しくは溶液CSDで化学的に、電子絶縁性の層で、好ましくは電子絶縁性で且つイオン伝導性の層で、コーティングされたメソポーラス電極であり、
及び/又は、前記アノードは、
高密度電極、
又は、ALDにより若しくは溶液CSDで化学的に、電子絶縁性の層で、好ましくは電子絶縁性で且つイオン伝導性の層で、コーティングされた高密度電極、
又は、多孔質電極、
又は、ALDにより若しくは溶液CSDで化学的に、電子絶縁性の層で、好ましくは電子絶縁性で且つイオン伝導性の層で、コーティングされた多孔質電極、
又は、好ましくは、メソポーラス電極、
又は、ALDにより若しくは溶液CSDで化学的に、電子絶縁性の層で、好ましくは電子絶縁性で且つイオン伝導性の層で、コーティングされたメソポーラス電極である、
方法。
[項目15]
項目13又は14に記載の方法おいて、
ステップvi)の後、以下を行う方法:
- 前記バッテリに、以下を、交互に連続して堆積させる:
・前記バッテリの上の、パリレン及び/又はポリイミドの、少なくとも1つの第1層、
・パリレン及び/又はポリイミドの前記第1層の上の、ALD(原子層堆積)による、電気絶縁性の材料で構成された、少なくとも1つの第2層、
・そして、少なくとも1つの第1層及び少なくとも1つの第2層の交互の連続の上に、前記バッテリを、該バッテリの機械的損傷から保護することを可能にするための、好ましくはシリコーン、エポキシ樹脂又はパリレンで構成された、層を堆積させ、前記バッテリの封止システムを形成し、
- そのように封止された前記バッテリを、2つの切断面に沿って切断し、前記バッテリのアノード及びカソードの接続部を前記切断面の各々に露出させ、前記封止システムが前記バッテリの6つの面のうち4つを、好ましくは連続して、被覆するようにし、
- これらのアノード及びカソード接続部(50)において、並びにその周囲において、以下を連続して堆積させる:
・第1の導電層を、任意で、好ましくはALDによって、堆積させ、
・前記第1の導電層に、銀を充填したエポキシ樹脂ベースの第2層を堆積させ、
.前記第2層に、ニッケルベースの第3層を堆積させ、
.前記第3層に、スズ又は銅ベースの第4層を堆積させる。
[項目16]
項目13又は14に記載の方法において、
ステップvi)の後、以下を行う、方法:
- 前記バッテリに、以下を含む、一連の層によって、すなわちシーケンスによって、好ましくはzシーケンスによって、形成された、封止システム(30)を、連続して交互に堆積させる:
・組み立てられた前記積層体に堆積される、好ましくはパリレン、F型のパリレン、ポリイミド、エポキシ樹脂、シリコーン、ポリアミド及び/又はそれらの混合物から選択される、第1の被覆層、
・前記第1の被覆層に原子層堆積によって堆積される、電気絶縁性の材料で構成された、第2の被覆層、
・このシーケンスは、z≧1でz回繰り返され得る、
- この連続した層において、エポキシ樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド、ポリアミド、ポリウレタン、シリコーン、ゾルゲルシリカ又は有機シリカから選択された材料の、最後の被覆層を、堆積させ、
- そのように封止された前記バッテリを、2つの切断面に沿って切断し、前記バッテリのアノード及びカソードの接続部を前記切断面の各々に露出させ、前記封止システムが前記バッテリの6つの面のうち4つを、好ましくは連続して、被覆するようにし、
- これらのアノード及びカソードの接続部(50)において、並びにその周囲において、以下を連続して堆積させる:
・ グラファイトを充填した材料の、好ましくはグラファイトを充填したエポキシ樹脂の、第1層、
・ 前記第1層に堆積させた、銅のナノ粒子で充填したインクから得られた金属銅を含む、第2層、
- 金属銅の層による、カソード及びアノード接続部の被覆を得るために、得られた層を、好ましくは赤外線フラッシュランプによって、熱処理し、
- この金属銅の層において及びその周囲において、以下を、連続して堆積させてもよい:
・ 最小のコストで前記バッテリの気密性を確保するために、好ましくは溶融スズ-亜鉛浴への浸漬によって、堆積された、スズ-亜鉛合金の第1層、
・ スズ-亜鉛合金のこの第1層に堆積された、電着によって堆積された純粋なスズベースの第2層、又は、銀、パラジウム及び銅ベースの、合金を含む第2層。
[項目17]
項目15に記載の方法において、
前記アノード及びカソード接続部(50)は、前記積層体の反対側にある、方法。
[項目18]
項目13~16のいずれかに記載の方法によって得られるリチウムイオンバッテリ(1)。
図1