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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】自動車のドアラッチ装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 81/20 20140101AFI20240625BHJP
   B60J 5/00 20060101ALI20240625BHJP
   E05B 79/08 20140101ALI20240625BHJP
   E05B 85/02 20140101ALI20240625BHJP
【FI】
E05B81/20 B
B60J5/00 N
E05B79/08
E05B85/02
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020146969
(22)【出願日】2020-09-01
(65)【公開番号】P2022041641
(43)【公開日】2022-03-11
【審査請求日】2023-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000148896
【氏名又は名称】三井金属アクト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【弁理士】
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【弁理士】
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】花木 直樹
(72)【発明者】
【氏名】木村 俊太郎
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-9478(JP,A)
【文献】特開2015-137509(JP,A)
【文献】特開2004-293038(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0038137(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0244999(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 77/00-85/28
B60J 5/00- 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドア側に取り付けられ、車体側のストライカと噛合することにより前記ドアを閉鎖位置に保持するための自動車のドアラッチ装置において、
前記ドアラッチ装置は、
前記ドアの閉鎖時、前記ストライカと噛合するラッチ及び当該ラッチに係合するラチェットを含む噛合機構と、
前記噛合機構を収容するボディに固定され、前記ドアの閉鎖時、前記ストライカが進入するストライカ進入溝を有するベースプレートと、
前記ベースプレートに固定されるケーシングであって、その第1の側面が、前記ベースプレートの車外側を向く側面に対向するように、前記ベースプレートに固定されるケーシングと、
前記ドアに設けられる手動オープナ装置のドア開操作に基づいてリリース作動するリリースレバーを含むリリース機構と、
前記リリースレバーのリリース作動を前記ラチェットに伝達可能として前記ラッチに対する前記ラチェットの係合を解除可能とするアンロック状態及び前記リリースレバーのリリース作動を前記ラチェットに伝達不能として前記ラッチに対する前記ラチェットの係合を解除不能とするロック状態に切り替わり可能な施解錠機構と、
前記施解錠機構を電動でアンロック状態及びロック状態に切替可能な施解錠用モータ及び前記リリースレバーを電動でリリース作動させることが可能なリリース用モータを含む電動機構と、
前記ラッチをハーフラッチ位置からフルラッチ位置に回動させるクローザ機構と、を備え、
前記リリース機構、前記施解錠機構及び前記電動機構を構成する全ての要素を、前記ケーシングにおける前記ベースプレートの前記側面に対向する前記第1の側面と反対側の第2の側面側に配置し、
前記クローザ機構を構成する全ての要素を、前記ケーシングの前記第1の側面と前記ベースプレートとの間に配置したことを特徴とする自動車のドアラッチ装置。
【請求項2】
前記クローザ機構は、前記ケーシングの前記第1の側面と前記ベースプレートとの間に所定角度回動可能に枢支されると共に、前記ドアの所定位置に配置される電動クローザ装置に連結されて回動するクローズレバーと、当該クローズレバーに連結され、前記クローズレバーと共に一体回動することにより前記ラッチをハーフラッチ位置からフルラッチ位置に回動させるサブレバーとを含むことを特徴とする請求項1記載の自動車のドアラッチ装置。
【請求項3】
さらに、前記クローザ機構は、前記クローズレバーによる前記サブレバーの回動を前記ラッチに伝達可能とする初期位置及び伝達不能とするキャンセル位置に移動可能なキャンセルレバーを含み、
前記キャンセルレバーは、前記ケーシングに設けた開口部を通って前記ケーシングの前記第1の側面から前記第2の側面側に露出する連絡部を有し、前記リリースレバーがリリース作動した場合、前記連絡部が前記リリースレバーに当接することにより、初期位置からキャンセル位置に移動することを特徴とする請求項2に記載の自動車のドアラッチ装置。
【請求項4】
前記施解錠用モータ及び前記リリース用モータを、前記ストライカ進入溝の水平方向の基準線を前方に延長した延長線よりも上位に位置するように配置したことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の自動車のドアラッチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のドアに取り付けられ、車体側のストライカと噛合することによりドアを閉鎖位置に保持するための自動車のドアラッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載された発明においては、ドア内に、ドアラッチ装置と、ドアラッチ装置のラッチを駆動させてドアを半ドア位置から全閉位置に強制作動させる電動クローザ装置と、ドアに設けられるアウトサイドハンドル及びインサイドハンドルのドア開操作を中継制御し、当該中継制御した操作をドアラッチ装置に伝達するための操作中継装置とを配置した構成を備える。
【0003】
上記ドアラッチ装置は、金属製のベースプレートにおける車外側を向く一側面側に、ドアクローザ装置を構成する各要素と、ロッドまたはボーデンケーブル等に構成される操作伝達部材を介して操作中継装置に連結される各種要素を配置することにより構成される。
【0004】
上記操作中継装置は、ドアラッチ装置から離れた位置に配置されると共に、モータの動力に基づいて、アウトサイドハンドル及びインサイドハンドルのドア開操作を有効とするアンロック状態及び無効とするロック状態に切り替え可能な複数の要素により構成される施解錠機構と、施解錠機構がアンロック状態のとき、アウトサイドハンドル及びインサイドハンドルのドア開操作に基づいて作動するリリースレバーとを含み、リリースレバーが操作伝達部材を介してドアラッチ装置のいずれかの要素に連結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6035586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の発明は、操作中継装置がドアラッチ装置から離れた位置に配置されるため、操作中継装置のリリースレバーの作動をドアラッチ装置に伝達するための操作伝達部材を必要とすることから構成部品の増加を招くだけでなく、操作中継装置をドアラッチ装置とは別々にドアに組み付けなければないことから組付作業効率の低下を招く虞がある。
【0007】
上記操作伝達部材の増加及び組付作業効率の低下を解消するために、操作中継装置の施解錠機構及びリリースレバーをドアラッチ装置のベースプレートに配置することが考えられる。しかし、このようにすると、ベースプレートに多数の要素を集中して配置しなければならないため、ベースプレートの大型化、ひいてはドアラッチ装置の大型化を招き、ドアラッチ装置のドアに対する組付に悪影響を与える虞がある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑み、ドアに対する組付作業の効率化、構成部品の削減及び小型化を可能にした自動車のドアラッチ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
本発明は、ドア側に取り付けられ、車体側のストライカと噛合することにより前記ドアを閉鎖位置に保持するための自動車のドアラッチ装置において、前記ドアラッチ装置は、前記ドアの閉鎖時、前記ストライカと噛合するラッチ及び当該ラッチに係合するラチェットを含む噛合機構と、前記噛合機構を収容するボディに固定され、前記ドアの閉鎖時、前記ストライカが進入するストライカ進入溝を有するベースプレートと、前記ベースプレートに固定されるケーシングであって、その第1の側面が、前記ベースプレートの車外側を向く側面に対向するように、前記ベースプレートに固定されるケーシングと、前記ドアに設けられる手動オープナ装置のドア開操作に基づいてリリース作動するリリースレバーを含むリリース機構と、前記リリースレバーのリリース作動を前記ラチェットに伝達可能として前記ラッチに対する前記ラチェットの係合を解除可能とするアンロック状態及び前記リリースレバーのリリース作動を前記ラチェットに伝達不能として前記ラッチに対する前記ラチェットの係合を解除不能とするロック状態に切り替わり可能な施解錠機構と、前記施解錠機構を電動でアンロック状態及びロック状態に切替可能な施解錠用モータ及び前記リリースレバーを電動でリリース作動させることが可能なリリース用モータを含む電動機構と、前記ラッチをハーフラッチ位置からフルラッチ位置に回動させるクローザ機構と、を備え、前記リリース機構、前記施解錠機構及び前記電動機構を構成する全ての要素を、前記ケーシングにおける前記ベースプレートの前記側面に対向する前記第1の側面と反対側の第2の側面側に配置し、前記クローザ機構を構成する全ての要素を、前記ケーシングの前記第1の側面と前記ベースプレートとの間に配置したことを特徴とする。
【0010】
好ましくは、前記クローザ機構は、前記ケーシングの前記第1の側面と前記ベースプレートとの間に所定角度回動可能に枢支されると共に、前記ドアの所定位置に配置される電動クローザ装置に連結されて回動するクローズレバーと、当該クローズレバーに連結され、前記クローズレバーと共に一体回動することにより前記ラッチをハーフラッチ位置からフルラッチ位置に回動させるサブレバーとを含む。
【0011】
好ましくは、さらに、前記クローザ機構は、前記クローズレバーによる前記サブレバーの回動を前記ラッチに伝達可能とする初期位置及び伝達不能とするキャンセル位置に移動可能なキャンセルレバーを含み、前記キャンセルレバーは、前記ケーシングに設けた開口部を通って前記ケーシングの前記第1の側面から前記第2の側面側に露出する連絡部を有し、前記リリースレバーがリリース作動した場合、前記連絡部が前記リリースレバーに当接することにより、初期位置からキャンセル位置に移動する。
【0012】
好ましくは、前記施解錠用モータ及び前記リリース用モータを、前記ストライカ進入溝の水平方向の基準線を前方に延長した延長線よりも上位に位置するように配置する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、クローザ機構の全ての要素を、ベースプレートの車外側を向く側面に対向するケーシングの第1の側面とベースプレートとの間に配置し、リリース機構、施解錠機構及び電動機構の全ての要素をケーシングの第1の側面と反対側の第2の側面に配置したことによって、ケーシングの小型化を可能にし、かつ従来のように操作中継装置と連結するための操作伝達部材を削減できると共に、ドアへの組付作業を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係るドアラッチ装置が取り付けられるドアの概略側面図である。
図2】車内斜め後方から見たドアラッチ装置斜視図である。
図3】車内斜め後方から見たドアラッチ装置の要部分解斜視図である。
図4】車外斜め後方から見たドアラッチ装置の要部分解斜視図である。
図5】車外斜め後方から見たドアラッチ装置の分解斜視図である。
図6】施解錠機構がアンロック状態にあるときの車外側から見たドアラッチ装置における噛合機構及び操作機構の側面図である。
図7】施解錠機構がアンロック状態で、インサイドハンドルがドア開操作されたときの車外側から見たドアラッチ装置における噛合機構及び操作機構の側面図である。
図8】施解錠機構がアンロック状態で、アウトサイドハンドルがドア開操作されたときの車外側から見たドアラッチ装置における噛合機構及び操作機構の側面図である。
図9】施解錠機構がアンロック状態で、リリース用モータが駆動したときの車外側から見たドアラッチ装置における噛合機構及び操作機構の側面図である。
図10】施解錠機構がロック状態にあるときの車外側から見たドアラッチ装置における噛合機構及び操作機構の側面図である。
図11】噛合機構がフルラッチ状態、クローザ機構が初期状態にあるときの車外側から見たドアラッチ装置における噛合機構及び操作機構の側面図である。
図12】噛合機構がハーフラッチ状態、クローザ機構が初期状態にあるときの車外側から見たドアラッチ装置における噛合機構及び操作機構の側面図である。
図13】クローザ機構がクローザ作動している最中の車外側から見たドアラッチ装置における噛合機構及び操作機構の側面図である。
図14】クローザ機構がクローザ作動している最中、キャンセル操作されたときの車外側から見たドアラッチ装置における噛合機構及び操作機構の側面図である。
図15】クローザ機構のクローザ作動が切断されたときの車外側から見たドアラッチ装置における噛合機構及び操作機構の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、自動車の車体側面に前後方向へ開閉可能に支持されるスライドドア(以下、「ドア」という)Dの模式図である。
【0016】
ドアDの内部には、ドアDを全閉位置に保持するためのドアラッチ装置1と、ドアラッチ装置1をクローザ作動させることでドアDを半ドア位置(全閉位置の直前位置であって、ドアラッチ装置1のハーフラッチ状態に対応)から全閉位置(ドアラッチ装置1のフルラッチ状態に対応)に強制的に閉め込むための電動クローザ装置CLとが設けられる。同じく車外側の側面(アウタパネル)には、ドアDを車外から開閉する際に操作されるアウトサイドハンドル(車外側の手動オープナ装置)OHが設けられる。同じく車内側の側面(インナパネル)には、ドアDを室内から開閉する際に操作されるインサイドハンドル(車内側の手動オープナ装置)IHと、ドアラッチ装置1後述の施解錠機構を手動操作でアンロック状態及びロック状態に切替える際に操作されるロック操作ノブLKが設けられる。同じく前下部には、ドアDを全開位置に保持するための全開ラッチ装置OLが設けられる。また、車体には、必要に応じて、ドアDを電動で開閉移動させるための図示略の電動開閉装置が設けられる。
【0017】
全開ラッチ装置OLは、ドアDが全開位置にあるとき、車体側に設けられる図示略の全開用ストライカに係合することによりドアDを全開位置に保持し、全開用ストライカとの係合が解除されることによりドアDの閉作動を可能にする。なお、全開ラッチ装置OLは、本発明に直接関係しないため、当該装置の詳細説明については省略する。
【0018】
図2~5に示すように、ドアラッチ装置1は、平面視略L字状の金属製のベースプレート2と、当該ベースプレート2の後部に固定される合成樹脂製のボディ3と、ベースプレート2の車外側を向く側面に対して第1の側面41が対向するように、ベースプレート2に固定される合成樹脂製のケーシング4と、ケーシング4の第1の側面41と反対側の車外側を向く第2の側面42を閉塞する合成樹脂製のサイドカバー5Aと、ケーシング4とサイドカバー5Aとの上部合わせ面を覆う合成樹脂製のトップカバー5Bとを備える。
【0019】
ベースプレート2は、ドアDのインナパネルの内側面に対向する要素配置部2aと、当該要素配置部2aの後部に略L字状に折曲形成されるカバー部2bとを有し、折曲部分の角部には、ドアDの閉鎖時、後述の噛合機構のラッチ7に対して噛合するストライカSが進入するストライカ進入溝2dが設けられる。ボディ3は、ベースプレート2のカバー部2bと共にドアDのインナパネルの後部内面に固定される。サイドカバー5A及びトップカバー5Bは、ケーシング4内への雨水浸入を防止する機能を有する。
【0020】
ボディ3の内部には、車体側のストライカSに噛合することでドアDを閉鎖位置に保持するための噛合機構が設けられる。噛合機構は、略前後方向を向くラッチ軸6により枢支され、ドアDの閉鎖時、ストライカSと噛合するラッチ7と、略前後方向を向くラチェット軸8により枢支され、ラッチ7の外周縁に設けられたフルラッチ係合部7aおよびハーフラッチ係合部7bの各々に選択的に係合可能なラチェット9とを含む。
【0021】
ラッチ7は、ドアDの閉作動に伴って、ストライカSに噛合することにより、ラッチ軸6に巻装されたスプリング10(例えば、図6参照)の付勢力に抗して、オープン位置(例えば、図2、3に示すフルラッチ位置から反時計方向へ略90度回転した位置)からクローズ方向(時計方向)へ略45度回転してストライカSに辛うじて噛合するハーフラッチ位置を経てストライカSに完全に噛合するフルラッチ位置(例えば、図2、3に示す位置)に回動し、また、ドアDの開作動に伴って、フルラッチ位置からオープン方向(反時計方向)へ回転してストライカSが離脱するオープン位置に回転する。
【0022】
ラチェット9は、ボディ3に支持されるスプリング11の付勢力により、ラチェット軸8回りに常時係合方向(図2、3において時計方向)へ付勢されると共に、ラッチ7がオープン位置にあるときにはラッチ7の外周縁に当接し、ラッチ7がハーフラッチ位置にあるときにはハーフラッチ係合部7bに係合し、ラッチ7がフルラッチ位置にあるときにはフルラッチ係合部7aに係合することで、ラッチ7のオープン方向への回動を阻止する。ラチェット軸8には、ラチェット9と一体となって回動する回転体91(例えば、図6参照)が設けられる。
【0023】
さらに、ラチェット9は、後述の施解錠機構がアンロック状態にあるとき、後述のリリース機構のリリース作動により、フルラッチ係合部7aおよびハーフラッチ係合部7bの各々に係合した係合位置からスプリング11の付勢力に抗してリリース方向(図2、3において反時計方向)に回動することによって、フルラッチ係合部7aおよびハーフラッチ係合部7bの各々から外れてラッチ7のオープン方向への回動を許可してドアDの開作動を可能にする。
【0024】
以下の説明で使用する噛合機構の「ラッチ状態」とは、ストライカSがラッチ7に係合し、ラチェット9がラッチ7のフルラッチ係合部7aに係合した状態を指す。「アンラッチ状態」とは、ラッチ7がオープン位置にある状態を指す。
【0025】
図4~10に示すように、ケーシング4における車外側を向く第2の側面42には、各種要素で構成される操作機構が配置される。操作機構は、アウトサイドハンドルOH及びインサイドハンドルIHのドア開操作に応じた態様でリリース作動するリリース機構と、リリース機構のリリース作動を有効または無効にする状態に切替可能な施解錠機構と、インサイドハンドルIHのドア開操作に応じたリリース機構のリリース作動を無効にするチャイルドプルーフ機構と、各種要素を電動で作動させるための電動機構とを含む。図3、5に示すように、ケーシング4における車内側を向く第1の側面41、すなわちベースプレート2の要素配置部2aとケーシング4の第1の側面41との間には、電動クローザ装置CLに連結されることにより、ドアDを半ドア位置から全閉位置に強制的に締め込むためのクローザ機構が配置される。
【0026】
好ましくは、操作機構を構成する全ての要素をケーシング4における車外側を向く第2の側面42側に配置して、ケーシング4における車内側を向く第1の側面41側には操作機構を構成する要素を一切配置しない。さらには、クローザ機構を構成する全ての要素をケーシング4における車内側を向く第1の側面41側に配置して、ケーシング4における車外側を向く第2の側面42側にはクローザ機構を構成する要素を一切配置しないものとする。
【0027】
なお、以下の説明で使用する操作機構及びクローザ機構の各種要素の回転方向の向きは、車外側から見た側面視で、図6~15を基準とする。
【0028】
リリース機構は、当該リリース機構を構成する要素である、車内外方向を向く軸12によりケーシング4に所定角度回動可能に枢支される第1リリースレバー13と、第1リリースレバー13と独立して回転し得るように軸12によりケーシング4に所定角度回動可能に枢支される第2リリースレバー14と、第1リリースレバー13及び第2リリースレバー14と独立して回転し得るように軸12によりケーシング4に所定角度回動可能に枢支される第3リリースレバー15とを含む。
【0029】
第1リリースレバー13は、軸12によりケーシング4に枢支されると共に、下端部に設けた長孔13aにボーデンケーブルまたはロッドにより構成される第1操作伝達部材51の一端部が連結され、上端部にボーデンケーブルまたはロッドにより構成される第2操作伝達部材52の一端部が連結される。
【0030】
第1操作伝達部材51の他端部は、アウトサイドハンドルOHに連結される。これにより、アウトサイドハンドルOHのドア開操作は、第1操作伝達部材51を介して第1リリースレバー13に伝達されて、第1リリースレバー13は、軸12を中心に図6に示す初期位置からリリース方向(反時計方向)へ所定角度回動する。第1リリースレバー13のリリース方向へのリリース作動は、自体に設けた当接部13bの後端が第3リリースレバー15に対して前方から当接することにより、第3リリースレバー15を介して第2リリースレバー14に伝達される。
【0031】
第2操作伝達部材52の他端部は、インサイドハンドルIHの近傍に設けられる中間レバー53に連結される。中間レバー53は、図1に示すように第3操作伝達部材54を介して全開ラッチ装置OLに連結される。これにより、アウトサイドハンドルOHのドア開操作は、第1操作伝達部材51、第1リリースレバー13、第2操作伝達部材52、中間レバー53、第3操作伝達部材54を経由して全開ラッチ装置OLに伝達されて、全開ラッチ装置OLをリリース作動させる。この結果、ドアDが全開位置に保持されている場合には、アウトサイドハンドルOHをドア開操作することで、全開ラッチ装置OLをリリース作動させて、ドアDを閉じることができる。
【0032】
第2リリースレバー14は、下端部に設けた連結部14aにボーデンケーブルまたはロッドにより構成される第4操作伝達部材55の一端部が連結される。第4操作伝達部材55の他端部は、インサイドハンドルIHに連結される。これにより、インサイドハンドルIHのドア開操作は、第4操作伝達部材55を介して第2リリースレバー14に伝達されて、第2リリースレバー14は、軸12を中心に図6に示す初期位置からリリース方向(反時計方向)へ所定角度回動する。第2リリースレバー14のリリース方向へのリリース作動は、チャイルドプルーフ機構がアンロック状態であれば第3リリースレバー15に伝達され、チャイルドプルーフ機構がロック状態であれば第3リリースレバー15に伝達されない。
【0033】
なお、インサイドハンドルIHは、常時は中立位置に保持されて、中立位置から後方への操作をドア開操作とし、中立位置から前方への操作をドア閉操作として、ドア開操作を第4操作伝達部材55を経由して第2リリースレバー14に伝達可能であり、ドア閉操作を中間レバー53、第3操作伝達部材54を経由して全開ラッチ装置OLに伝達可能な構成を備える。
【0034】
第3リリースレバー15は、軸12によりケーシング4に枢支されて、第1リリースレバー13のリリース作動、または第2リリースレバー14のリリース作動に連動可能であって、連動したときには、軸12を中心にリリース方向(反時計方向)へ所定角度回動し、当該回動を施解錠機構に伝達する。
【0035】
施解錠機構は、当該施解錠機構を構成する要素である、下端部が第3リリースレバー15の後端部に所定角度回動可能に連結される第1ロックレバー16及び第2ロックレバー17を含み、アウトサイドハンドルOH及びインサイドハンドルIHのいずれかのドア開操作により、ドアDを開けることが可能なアンロック状態と、アウトサイドハンドルOH及びインサイドハンドルIHのいずれの操作によってもドアDを開けることができないロック状態に切替え可能である。
【0036】
第1ロックレバー16は、下端部が第3リリースレバー15の第1アーム部15aに設けた連結孔15bに枢支されることにより、第3リリースレバー15に所定角度回動可能に連結される。
【0037】
第2ロックレバー17は、上端部に設けた軸部17bが第3リリースレバー15の連結孔15bに回動可能に支持されることにより、第1ロックレバー16と共に第3リリースレバー15の連結孔15bに前後方向へ所定角度回動可能に連結される。
【0038】
第1ロックレバー16及び第2ロックレバー17は、一端が第1ロックレバー16に掛止され、他端が第2ロックレバー17に掛止されたスプリング18の付勢力により、常時は図6に示すように互いに上下方向に略一直線に並んだ通常状態に保持された形態で一緒に作動する。これにより、第1ロックレバー16及び第2ロックレバー17は、第3リリースレバー15のリリース作動に連動して下方へ所定量移動する。
【0039】
第2ロックレバー17の下部に設けた上下方向の長孔17aには、前端部が電動機構の施解錠用回転体26に連結されたリンク19の後端部が相対的に上下方向に移動可能に連結される。これにより、施解錠用回転体26の回転は、リンク19を経由して第2ロックレバー17に伝達されて、第1ロックレバー16及び第2ロックレバー17は、施解錠用回転体26の回転に基づいて、軸部17bを中心に図6に示すアンロック位置から時計方向へ所定角度回動した図10に示すロック位置及びその逆に回動する。
【0040】
リンク19は、後端部が第2ロックレバー17の長孔17aに相対的に上下方向に移動可能に連結されると共に、ケーシング4に設けた前後方向の長孔4bに前後方向に移動可能に挿入され、前端部が施解錠用回転体26に連結されることにより、施解錠用回転体26の回転に伴って前後方向へ移動する。
【0041】
なお、施解錠機構のアンロック状態とは、第1ロックレバー16及び第2ロックレバー17が共にアンロック位置にある状態を指し、同じくロック状態とは、第1ロックレバー16及び第2ロックレバー17が共にロック位置にある状態を指す。
【0042】
図6に示すように、施解錠機構がアンロック状態にある場合、第3リリースレバー15がリリース作動すると、第1ロックレバー16及び第2ロックレバー17は、アンロック位置から下方へ移動する。この移動により、第1ロックレバー16の上端部に設けた鈎状の当接部16aがラチェット9と一体に回動する回転体91に対して上方から当接することにより、ラチェット9は、リリース方向へ回動する。この結果、ラチェット9とラッチ7との互いの係合関係が解除されて、ドアDの開きを可能にする。
【0043】
図10に示すように、施解錠機構がロック状態にある場合には、第1ロックレバー16の当接部16aは回転体91に対して当接不能な位置にある。したがって、この状態で、第3リリースレバー15のリリース作動に基づいて、第1ロックレバー16及び第2ロックレバー17がロック位置から下方へ移動しても、第1ロックレバー16の当接部16aが回転体91に対して当接することなく空振り移動して、ラチェット9をリリース方向へ回動させることができないため、ドアDを開けることができない。
【0044】
チャイルドプルーフ機構は、当該チャイルドプルーフ機構を構成する要素である、車内外方向を向く軸20によりケーシング4の下部に所定角度回動可能に枢支される第1チャイルドプルーフレバー21と、下端部22bが第1チャイルドプルーフレバー21の前端部に所定角度回動可能に連結される第2チャイルドプルーフレバー22と、第2チャイルドプルーフレバー22に設けた前後方向の長孔22aに摺動自在に係合する摺動ピン23とを含む。
【0045】
第1チャイルドプルーフレバー21は、ドアDの後端面から突出する操作部21aを有し、ドアDを開けた状態で、操作部21aが手動操作されることで、図6に示すアンロック位置から反時計方向へ所定角度回転したロック位置及びその逆に回動可能である。
【0046】
第2チャイルドプルーフレバー22は、側面視略倒立L字状を呈して、下端部22bが第1チャイルドプルーフレバー21の前端部に所定角度回動可能に連結されることにより、第1チャイルドプルーフレバー21がアンロック位置にある場合には図6に示すアンロック位置に保持され、第1チャイルドプルーフレバー21がロック位置にある場合にはアンロック位置から所定量上方に移動したロック位置に保持される。
【0047】
摺動ピン23は、車内外方向を向く軸状を呈して、車外側から第2リリースレバー14に設けた上下方向の長孔14b、第3リリースレバー15の下部に設けた側面視略倒立L字状の長孔15c、第1リリースレバー13に設けた逃げ孔13cを貫通して第2チャイルドプルーフレバー22の長孔22aに摺動自在に係合する。
【0048】
第1チャイルドプルーフレバー21及び第2チャイルドプルーフレバー22がアンロック位置にある場合には、摺動ピン23は、第2リリースレバー14の長孔14b及び第3リリースレバー15の長孔15cの下端に位置(アンロック位置)することで、第2リリースレバー14のリリース作動を第3リリースレバー15に対して伝達可能とする。
【0049】
第1チャイルドプルーフレバー21及び第2チャイルドプルーフレバー22がロック位置にある場合には、摺動ピン23は、第3リリースレバー15の長孔15cの上端に位置(ロック位置)して、長孔15cの前方に延伸する上部を空動可能として、第2リリースレバー14のリリース作動を第3リリースレバー15に対して伝達不能とする。これにより、施解錠機構がアンロック状態で、チャイルドプルーフ機構がアンロック状態の場合には、インサイドハンドルIHの操作を有効にして、第3リリースレバー15をリリース作動させることにより、上述のようにラチェット9をリリース作動させてドアDを開けることができる。しかし、チャイルドプルーフ機構がロック状態の場合には、インサイドハンドルIHの操作に基づく第2リリースレバー14のリリース作動で、第3リリースレバー15をリリース作動させることができないため、インサイドハンドルIHの開操作を無効にしてドアDを開けることができない。
【0050】
なお、チャイルドプルーフ機構のアンロック状態とは、第1チャイルドプルーフレバー21、第2チャイルドプルーフレバー22及び摺動ピン23がそれぞれアンロック位置にある状態を指し、同じくロック状態とは、第1チャイルドプルーフレバー21、第2チャイルドプルーフレバー22及び摺動ピン23がそれぞれロック位置にある状態を指す。
【0051】
電動機構は、当該電動機構を構成する要素である、ケーシング4の上部に配置される施解錠用モータ24及び当該施解錠用モータ24よりも上位に配置されるリリース用モータ25と、施解錠用モータ24の駆動により回転する施解錠用回転体26と、リリース用モータ25の駆動により回転するリリース用回転体27とを含む。
【0052】
好ましくは、施解錠用モータ24及びリリース用モータ25は、ベースプレート2におけるストライカ進入溝2dの水平方向の基準線X(図6参照)を前方に延長した延長線よりも上位に位置するように配置される。このように配置すると、ストライカ進入溝2dから浸入した雨水が、電装部品である施解錠用モータ24及びリリース用モータ25に付着することを防止できる。
【0053】
施解錠用モータ24は、車体の適所に設けた図示略の操作スイッチまたは携帯用のワイヤレス操作スイッチのロック/アンロック操作を契機に正転または逆転駆動すると共に、施解錠用モータ24の回転軸に固着されたウォーム24aがケーシング4に車内外方向を向く軸28により枢支された施解錠用回転体26に噛合することで施解錠用回転体26を正転または逆転させる。
【0054】
施解錠用回転体26には、リンク19の前端部が連結される。これにより、施解錠機構がアンロック状態にある場合、施解錠用モータ24の正転駆動により施解錠用回転体26が図6に示すアンロック位置から時計方向へ所定角度回動した図10に示すロック位置に移動することにより、当該移動に伴ってリンク19を後方へ移動させると共に、第1ロックレバー16及び第2ロックレバー17を軸部17bを中心に時計方向へ所定角度回動させて、施解錠機構をアンロック状態からロック状態に切り替えることができる。また、施解錠機構がロック状態にある場合には、施解錠用モータ24の逆転駆動により施解錠用回転体26が図10に示すロック位置から反時計方向へ所定角度回動してアンロック位置に移動することにより、当該移動に伴ってリンク19を前方へ移動させると共に、第1ロックレバー16及び第2ロックレバー17を軸部17bを中心に反時計方向へ所定角度回動させて、施解錠機構をロック状態からアンロック状態に切り替えることができる。
【0055】
さらに、施解錠用回転体26は、第5操作伝達部材56を介してドアDの車室内側に設けられるロック操作ノブLKに連結されて、ロック操作ノブLKの操作に基づいても、アンロック位置からロック位置及びその逆に回動可能であって、施解錠用モータ24の駆動と同様に施解錠機構をアンロック状態及びロック状態に切替可能である。施解錠用回転体26のアンロック位置及びロック位置への保持は、ケーシング4に支持されたターンオーバースプリング29の付勢力により行われる。
【0056】
リリース用モータ25は、車体の適所に設けた操作スイッチまたはワイヤレス操作スイッチの操作、若しくはアウトサイドハンドルOHまたはインサイドハンドルIHのドア開操作を図示略の検出スイッチが検出したことを契機に駆動し、当該駆動により、リリース用モータ25の回転軸に固着されたウォーム25aがケーシング4に軸30により枢支されたリリース用回転体27に噛合することで、リリース用回転体27を図6に示す初期位置からリリース方向(時計方向)へ回転させる。
【0057】
リリース用回転体27の回転面には、カム部27aが設けられる。カム部27aには、第1リリースレバー13に設けた当接部13bが摺動可能に当接する。これにより、リリース用回転体27がリリース方向へ所定角度回転することにより、第1リリースレバー13は、リリース方向へ所定角度回動し、当該回動により第2、3リリースレバー1415を経由してラチェット9をリリース作動させてドアDを開けることができる。ドアDを開けた後、リリース用モータ25への給電が停止されると、リリース用回転体27は、図示略のスプリングの付勢力により作動前の初期位置に復帰する。
【0058】
図3、5、11~15に示すように、クローザ機構は、クローザ機構を構成する要素である、第1クローズレバー31、第2クローズレバー32、サブレバー33及びキャンセルレバー34を含む。これら要素は、ベースプレート2の要素配置部2aと当該要素配置部2aに対向するケーシング4との間、すなわちリリース機構、施解錠機構、チャイルドプルーフ機構及び電動機構が配置される第2の側面42と反対側の第1の側面41に配置される。
【0059】
上述のように、クローザ機構を操作機構が配置されるケーシング4の第2の側面42と反対側の第1の側面41に配置することで、ケーシング4の両側に操作機構及びクローザ機構の各要素を最適な位置に効率よく配置可能となり、また第1クローズレバー31及び第2クローズレバー32に作用するラッチ7の回動力を金属製のベースプレート2にて吸収することができ、ケーシング4の小型化、ひいてはドアラッチ装置1の全体の小型化を可能にすることができる。
【0060】
第1クローズレバー31は、車内外方向を向く軸35によりベースプレート2の要素配置部2aに所定角度回動可能に枢支されると共に、下端部の連結部31bがボーデンケーブルまたはロッドにより構成される第6操作伝達部材57を介して電動クローザ装置CLの図示略の出力レバーに連結される。これにより、電動クローザ装置CLの図示略のモータの駆動に基づいて出力レバーが回動すると、第1クローズレバー31は、図11に示す初期位置からスプリング36の付勢力に抗して、クローズ方向(反時計方向)へ所定角度回動し、当該回動を第2クローズレバー32に伝達する。
【0061】
好ましくは、図2に示すように、第6操作伝達部材57の端末部57aが連結される第1クローズレバー31の連結部31bは、ベースプレート2の要素配置部2aの下部に設けた切欠き部2cから外部に露出するように設けられる。このようにすると、ケーシング4をベースプレート2に固定し、ベースプレート2の要素配置部2aとケーシング4の側面との間にクローザ機構を配置した後であっても、第6操作伝達部材57の端末部57aを第1クローズレバー31の連結部31bに目視作業により容易かつ確実に連結可能となる。
【0062】
第2クローズレバー32は、車内外方向を向く軸37によりベースプレート2の要素配置部2aに所定角度回動可能に枢支されると共に、外周に設けた歯部32aが第1クローズレバー31の外周に設けた歯部31aに噛合することにより、第1クローズレバー31のクローズ方向への回動に連動して図11に示す初期位置からクローズ方向(時計方向)へ所定角度回動する。
【0063】
サブレバー33は、長手方向の中央部が車内外方向を向く連結軸38により第2クローズレバー32の下端部に所定角度回動可能に連結されると共に、スプリング39により回転方向へ付勢され、かつ常時は前端部に設けた回転ローラ33aがキャンセルレバー34の下端部に設けたブロック部34aに対して下方から当接して、連結軸38を中心とする反時計方向への回動が阻止された状態で図11に示す初期位置に保持されている。
【0064】
回転ローラ33aの中心は、第2クローズレバー32の回転中心である軸37の中心と合致している。したがって、キャンセルレバー34によりサブレバー33の連結軸38を中心とする反時計方向への回動が阻止された状態で、第2クローズレバー32が回動した場合には、サブレバー33も第2クローズレバー32と一体となって軸37を中心に回動する。
【0065】
サブレバー33は、第2クローズレバー32と一体となって軸37を中心にクローズ方向へ回動すると、サブレバー33の後端部に設けた出力部33bがハーフラッチ位置にあるラッチ7に設けたアーム部7cを持ち上げることで、ラッチ7をハーフラッチ位置からフルラッチ位置まで強制的に回動させる。
【0066】
キャンセルレバー34は、車内外方向を向く軸40によりケーシング4に所定角度回動可能に枢支されると共に、第2リリースレバー14のリリース作動、すなわちアウトサイドハンドルOHまたはインサイドハンドルIHのドア開操作に基づいて、図11に示す初期位置からキャンセル方向(反時計方向)へ所定角度回動(以下、当該回動を「キャンセル作動」という)する。
【0067】
アウトサイドハンドルOHまたはインサイドハンドルIHのドア開操作に基づくキャンセルレバー34のキャンセル作動は、キャンセルレバー34の上部に連絡部34bを形成し、当該連絡部34bをケーシング4に設けた開口部4aを貫通させて、ケーシング4の第1の側面41から第2の側面42に突出させると共に、ケーシング4の第2の側面42に突出した連絡部34bに第2リリースレバー14の一部14cを回動方向に当接させることによって達成される。
【0068】
キャンセルレバー34は、図11に示すように、初期位置にある場合には、ブロック部34aがサブレバー33の回転ローラ33aの真上に当接する位置にあって、サブレバー33の連結軸38を中心とする反時計方向への回動を阻止することで、サブレバー33と第2クローズレバー32との一体回動を可能にし、また、図14に示すように、キャンセル方向に回動した位置にある場合には、ブロック部34aがサブレバー33の回転ローラ33aに対して当接不能な位置に退避して、サブレバー33の連結軸38を中心とする反時計方向への回動を自由にすることで、第2クローズレバー32のクローズ作動をラッチ7に対して伝達不能とする。
【0069】
上述により、キャンセルレバー34が初期位置にある場合には、電動クローザ装置CLの動力に基づく第1クローズレバー31の回動により、第2クローズレバー32がクローズ作動すると、サブレバー33も第2クローズレバー32と共に軸37を中心にクローズ作動し、当該作動によりサブレバー33の出力部33bがハーフラッチ位置にあるラッチ7のアーム部7cを下方から押し上げることで、ラッチ7をハーフラッチ位置からフルラッチ位置まで強制回動させる。
【0070】
しかし、第1クローズレバー31及び第2クローズレバー32が電動クローザ装置CLの動力によりクローズ作動している最中、アウトサイドハンドルOHまたはインサイドハンドルIHのドア開操作に基づいて、キャンセルレバー34をリリース作動させると、サブレバー33の反時計方向への回動が自由となるため、ラッチ7のアーム部7cに当接していたサブレバー33は、反時計方向へ回動して、第2クローズレバー32のクローズ作動がラッチ7に対して伝達不能になる。これにより、ラッチ7がフルラッチ位置へ向けて強制的に回動させられている最中であっても、電動クローザ装置CLにおける動力の伝達経路を切断して、電動クローザ装置CLの動力を伝達不能とすることができ、ドアDの挟み込む等を回避することができる。
【0071】
次に、本実施形態におけるドアラッチ装置1の主な作用について説明する。なお、以下に説明にするドアラッチ装置1の状態は、全てチャイルドプルーフ機構がアンロック状態にあるときである。
【0072】
<ドアDが全閉位置、施解錠機構がアンロック状態のとき、インサイドハンドルIHをドア開操作した場合>
図6、7に基づいて説明する。インサイドハンドルIHのドア開操作は、第4操作伝達部材55を経由して第2リリースレバー14に伝達される。第2リリースレバー14は、軸12を中心に図6に示す初期位置から反時計方向へリリース作動する。これにより、図7に示すように、第2リリースレバー14のリリース作動は、摺動ピン23を介して第3リリースレバー15に伝達される。第3リリースレバー15は、リリース作動に基づいて第1ロックレバー16及び第2ロックレバー17をアンロック位置から下方へリリース作動させる。そして、第1ロックレバー16は、当接部16aがラチェット9と一体となって回動する回転体91に対して上方から当接することで、ラチェット9をリリース作動させる。この結果、ラッチ7とラチェット9との互いの係合関係が解除されてドアDの開きを許可する。
【0073】
<ドアDが全閉位置、施解錠機構がアンロック状態のとき、アウトサイドハンドルOHをドア開操作した場合>
図6、8を参照して説明する。アウトサイドハンドルOHのドア開操作は、第1操作伝達部材51を経由して第1リリースレバー13に伝達される。第1リリースレバー13は、軸12を中心に図6に示す初期位置から反時計方向へリリース作動する。第1リリースレバー13のリリース作動は、図8に示すように、当接部13bの後部が第3リリースレバー15に当接することで、第3リリースレバー15に伝達される。これにより、第3リリースレバー15は、リリース作動に基づいて第1ロックレバー16及び第2ロックレバー17をアンロック位置から下方へリリース作動させる。そして、第1ロックレバー16は、当接部16aがラチェット9における回転体91に対して上方から当接することで、ラチェット9をリリース作動させる。この結果、ラッチ7とラチェット9との互いの係合関係が解除されてドアDの開きを許可する。
【0074】
<ドアDが全閉位置、施解錠機構がアンロック状態のとき、操作スイッチの操作に基づいてリリース用モータ25が駆動した場合>
図6、9に基づいて説明する。リリース用モータ25の駆動は、ウォーム25a、リリース用回転体27、カム部27aを経由して第1リリースレバー13に伝達される。第1リリースレバー13は、軸12を中心に図6に示す初期位置から反時計方向へリリース作動する。第1リリースレバー13のリリース作動は、図9に示すように、当接部13bの後部が第3リリースレバー15に当接することで、第3リリースレバー15に伝達される。これにより、第3リリースレバー15は、リリース作動に基づいて第1ロックレバー16及び第2ロックレバー17をアンロック位置から下方へリリース作動させる。そして、第1ロックレバー16は、当接部16aがラチェット9における回転体91に対して上方から当接することで、ラチェット9をリリース作動させる。この結果、ラッチ7とラチェット9との互いの係合関係が解除されてドアDの開きを許可する。
【0075】
なお、施解錠機構がロック状態にある場合には、操作スイッチのドア開操作に基づいて、先ず、施解錠用モータ24を駆動制御して、施解錠機構をロック状態からアンロック状態に切替えた後、リリース用モータ25を駆動制御する。このようにすると、操作スイッチのドア開操作においては、施解錠機構がロック状態にあっても、一度の操作によってドアDを開けることができる。
【0076】
<ドアDが全閉位置、施解錠機構がアンロック状態のとき、施解錠用モータ24が操作スイッチの施錠操作に基づいて駆動した場合>
図6、10を参照して説明する。施解錠用モータ24の駆動は、ウォーム24a、施解錠用回転体26及びリンク19を経由して第2ロックレバー17に伝達される。これにより、第1ロックレバー16及び第2ロックレバー17は、第2ロックレバー17の軸部17bを中心に図6に示すアンロック位置から時計方向へ所定角度回動して図10に示すロック位置に回動する。これにより、施解錠機構は、アンロック状態からロック状態に切り替わる。
【0077】
施解錠機構がロック状態に切り替わると、第1ロックレバー16の当接部16aがラチェット9の回転体91に対して当接不能な位置にあって、アウトサイドハンドルOHまたはインサイドハンドルIHの操作に基づく第3リリースレバー15のリリース作動により第1ロックレバー16が下方へ移動しても、第1ロックレバー16がラチェット9をリリース作動させることができないため、アウトサイドハンドルOH及びインサイドハンドルIHがドア開操作されてもドアDを開けることができない。
【0078】
<電動クローザ装置CLによるクローズ作動
図11~13を参照して説明する。図11は、ラッチ7がフルラッチ位置にあるときの要部の側面図、図12は、ラッチ7がハーフラッチ位置にあるときの要部の側面図、図13は、クローザ装置CLがクローズ作動しているときの要部の側面図である。
【0079】
ドアDが開いているときには、ラッチ7はオープン位置、その他の要素は初期位置にある。この状態で、ドアDが閉じられて、ストライカSがラッチ7の噛合溝7dに噛合して、ラッチ7がオープン位置から図12に示すようにハーフラッチ位置に回動し、当該回動が図示略の検知スイッチにより検出されると、当該検出を契機に、クローザ装置CLは、図示略の制御回路装置により駆動制御される。電動クローザ装置CLの動力は、第6操作伝達部材57を経由して第1クローズレバー31に伝達される。これにより、図13に示すように、第1クローズレバー31は、軸35を中心に初期位置から反時計方向へクローズ作動し、第2クローズレバー32は、軸37を中心に初期位置から時計方向へクローズ作動する。この結果、サブレバー33の出力部33bがラッチ7のアーム部7cを下方から持ち上げることで、ラッチ7をハーフラッチ位置から図13に示すようにフルラッチ位置に強制的に回動させる。そして、ラッチ7のフルラッチ位置への回動により、ドアDが半ドア位置から全閉位置に移動すると、電動クローザ装置CLは反転制御されて、第1クローズレバー31及び第2クローズレバー32は、図11に示すように、それぞれの初期位置に戻る。
【0080】
<電動クローザ装置CLによるクローズ作動をキャンセルさせる場合>
クローズ作動をキャンセルさせる場合の作動を図14、15に基づいて説明する。上記説明した電動クローザ装置CLがクローズ作動している最中、例えば、ドアDとその乗降口との間に何らかの挾み込みが生じる等して、緊急にクローズ作動をキャンセルさせる必要性が生じた場合には、アウトサイドハンドルOHまたはインサイドハンドルIHをドア開操作する。
【0081】
アウトサイドハンドルOHまたはインサイドハンドルIHのドア開操作は、施解錠状態の状態に関係なく、最終的に第2リリースレバー14を経由してキャンセルレバー34に伝達される。キャンセルレバー34は、図14に示すように、軸40を中心に初期位置から反時計方向へ所定角度回動し、ブロック部34aがサブレバー33の回転ローラ33aに対して当接不能な位置に退避するキャンセル作動を行う。
【0082】
図14に示すように、キャンセルレバー34がキャンセル作動すると、サブレバー33は、連結軸38を中心に反時計方向への回動が自由な状態となる。これにより、ラッチ7のアーム部7cに当接してラッチ7をフルラッチ位置へ向けて回動させていたサブレバー33は、連結軸38を中心とする反時計方向への回動が自由になるため、クローズ作動をラッチに対して伝達不能となる。この結果、電動クローザ装置CLのクローズ作動は、第2クローズレバー32とラッチ7との間で切断される。また、これと同時に、第2リリースレバー14のリリース作動に基づいて第3リリースレバー15及び第1ロックレバー16がリリース作動することから、ラチェット9をリリース作動させて、即座にドアDを開けて、挾み込みの危険性を回避可能となる。
【0083】
以上により、本実施形態の自動車のドアラッチ装置1においては、クローザ機構を構成する全ての要素をケーシング4の第1の側面41とベースプレート2との間に配置し、リリース機構、施解錠機構及び電動機構を構成する全ての要素をケーシング4の第2の側面42側に配置したことによって、クローザ機構、リリース機構、施解錠機構及び電動機構の要素をそれぞれ最適に位置に配置して、ケーシング4の小型化を可能にし、かつ従来のように操作中継装置と連結するための操作伝達部材を削減できると共に、ドアDへの組付作業を効率的に行うことができる。
【0084】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、次のような種々の変形や変更を施すことが可能である。
(a)チャイルドプルーフ機構を省略して、リリース機構の第2リリースレバーと第3リリースレバーとを一体構造とする。
(b)クローザ機構の第1クローズレバーと第2クローズレバーとを一体構造とする。
【符号の説明】
【0085】
1 ドアラッチ装置
2 ベースプレート
2a 要素配置部
2b カバー部
2c 切欠き部
2d ストライカ進入溝
3 ボディ
4 ケーシング
4a 開口部
4b 長孔
5A サイドカバー
5B トップカバー
6 ラッチ軸
7 ラッチ
7a フルラッチ係合部
7b ハーフラッチ係合部
7c アーム部
7d 噛合溝
8 ラチェット軸
9 ラチェット
91 回転体
10 スプリング
11 スプリング
12 軸
13 第1リリースレバー
13a 長孔
13b 当接部
13c 逃げ孔
14 第2リリースレバー
14a 連結部
14b 長孔
14c 一部
15 第3リリースレバー
15a 第1アーム部
15b 連結孔
15c 長孔
16 第1ロックレバー
16a 当接部
17 第2ロックレバー
17a 長孔
17b 軸部
18 スプリング
19 リンク
20 軸
21 第1チャイルドプルーフレバー
21a 操作部
22 第2チャイルドプルーフレバー
22a 長孔
22b 下端部
23 摺動ピン
24 施解錠用モータ
24a ウォーム
25 リリース用モータ
25a ウォーム
26 施解錠用回転体
27 リリース用回転体
27a カム部
28 軸
29 ターンオーバースプリング
30 軸
31 第1クローズレバー
31a 歯部
31b 連結部
32 第2クローズレバー
32a 歯部
33 サブレバー
33a 回転ローラ
33b 出力部
34 キャンセルレバー
34a ブロック部
34b 連絡部
35 軸
36 スプリング
37 軸
38 連結軸
39 スプリング
40 軸
41 第1の側面
42 第2の側面
51 第1操作伝達部材
52 第2操作伝達部材
53 中間レバー
54 第3操作伝達部材
55 第4操作伝達部材
56 第5操作伝達部材
57 第6操作伝達部材
57a 端末部
D ドア
CL 電動クローザ装置
IH インサイドハンドル(手動オープナ装置)
LK ロック操作ノブ
OL 全開ラッチ装置
OH アウトサイドハンドル(手動オープナ装置)
S ストライカ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15