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特許7508759軽量・耐摩耗性アルミニウム基粉末冶金複合材料の軌道交通用ブレーキディスク及びその製造方法
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  • 特許-軽量・耐摩耗性アルミニウム基粉末冶金複合材料の軌道交通用ブレーキディスク及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】軽量・耐摩耗性アルミニウム基粉末冶金複合材料の軌道交通用ブレーキディスク及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 1/05 20230101AFI20240625BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20240625BHJP
   B22F 1/12 20220101ALI20240625BHJP
   C22C 1/10 20230101ALI20240625BHJP
   B22F 5/00 20060101ALI20240625BHJP
   C22C 21/00 20060101ALI20240625BHJP
   F16D 65/12 20060101ALI20240625BHJP
   C22C 1/051 20230101ALI20240625BHJP
【FI】
C22C1/05 C
B22F1/00 N
B22F1/12
C22C1/10 J
B22F5/00 G
C22C21/00 E
F16D65/12 E
C22C1/051
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022547987
(86)(22)【出願日】2021-01-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-19
(86)【国際出願番号】 CN2021074119
(87)【国際公開番号】W WO2021164516
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】202010101037.9
(32)【優先日】2020-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522312285
【氏名又は名称】湖南湘投軽材科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Hunan Xiangtou Lightweight Material Technology CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110002295
【氏名又は名称】弁理士法人M&Partners
(72)【発明者】
【氏名】霍 樹海
(72)【発明者】
【氏名】曹 柳絮
(72)【発明者】
【氏名】蒋 兆汝
(72)【発明者】
【氏名】劉 春軒
(72)【発明者】
【氏名】伍 智敏
(72)【発明者】
【氏名】王 暢
(72)【発明者】
【氏名】邱 振宇
(72)【発明者】
【氏名】戴 青松
(72)【発明者】
【氏名】謝 屹
(72)【発明者】
【氏名】呉 雲
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】中国特許第107100949(CN,B)
【文献】特開平10-140273(JP,A)
【文献】特開平10-140275(JP,A)
【文献】国際公開第2017/169962(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第110004342(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108642337(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107829003(CN,A)
【文献】特開2004-091846(JP,A)
【文献】特開昭60-121250(JP,A)
【文献】特開平08-134561(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 1/04-1/059
B22F 1/00-12/90
C22C 21/00-21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム粉末、主要合金元素、微量元素、及びセラミック粒子からなる耐摩耗性アルミニウム基複合材料で構成され、前記主要合金元素は、Cu、Si、Fe、Ni及びMgの少なくとも1種から選択され、前記微量元素は、Sr、Ce及びSnの少なくとも1種から選択され
前記耐摩耗性アルミニウム基複合材料は、質量パーセントで、
3%~12%の前記主要合金元素、
0.5~1%の前記微量元素、
20%~75%の前記セラミック粒子、及び
残部の前記アルミニウム粉末からなる
ことを特徴とする軽量・耐摩耗性アルミニウム基粉末冶金複合材料の軌道交通用ブレーキディスク。
【請求項2】
前記セラミック粒子は、SiC、Al及びSiの少なくとも1種である、
ことを特徴とする請求項1に記載の軽量・耐摩耗性アルミニウム基粉末冶金複合材料の軌道交通用ブレーキディスク。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の軽量・耐摩耗性アルミニウム基粉末冶金複合材料の軌道交通用ブレーキディスクの製造方法であって、
1)耐摩耗性アルミニウム基複合材料の混合粉体をリングディスク状の金型に充填し、室温で冷間プレス成形し、離型して、軌道交通ブレーキディスクのグリーン体を得るステップと、
2)前記軌道交通用ブレーキディスクのグリーン体を焼結成形して、軌道交通用ブレーキディスクの前駆体を得るステップと、
3)前記軌道交通用ブレーキディスクの前駆体を熱間プレス成形用金型に入れてプレス成形して、軌道交通用ブレーキディスクの粗製体を得るステップと、
4)前記軌道交通用ブレーキディスクの粗製体を機械加工するステップと、を含む、ことを特徴とする製造方法。
【請求項4】
前記冷間プレス成形の条件として、圧力が150MPa~300MPa、加圧速度が1 mm/s~5mm/s、保圧時間が3s~10sである、ことを特徴とする請求項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記焼結成形のプロセスは、ワックス除去、焼結及び冷却を含む、ことを特徴とする請求項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記焼結成形の条件として、窒素保護下、8℃/min~15℃/minの加熱速度で、まず350℃~450℃まで昇温し、15min~30min保温し、次に580℃~ 620℃に昇温し、25min~45min保温し、最後に500℃以下に降温する、ことを特徴とする請求項又はに記載の製造方法。
【請求項7】
前記プレス成形の条件として、プレス温度が500℃~600℃、圧力が150MPa~300MPa、加圧速度が1mm/s~5mm/s、保圧時間が5s~30sである、ことを特徴とする請求項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記機械加工は、バリ、フラッシュ、及び表面酸化物層の除去を含む、ことを特徴とする請求項に記載の製造方法。
【請求項9】
得られた軽量・耐摩耗性アルミニウム基粉末冶金複合材料の軌道交通用ブレーキディスクの密度は2.60g/cm~2.95g/cmである、ことを特徴とする請求項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道交通用ブレーキディスクの技術分野に関し、特に軽量で耐摩耗性があるアルミニウム基粉末冶金複合材料を利用して製造された軌道交通用ブレーキディスクに関するものであり、さらに、当該軽量で耐摩耗性があるアルミニウム基複合材料を利用して冷間プレス成形、焼結及び熱間プレス成形を組み合わたプロセスによって軌道交通用ブレーキディスクを製造する方法に関し、軌道交通用ブレーキディスク製造の技術分野に属する。
【0002】
本出願は、2020年02月19日に中国特許庁に出願された出願番号202010101037.9の「軽量・耐摩耗性アルミニウム基粉末冶金複合材料の軌道交通用ブレーキディスク及びその製造方法」という名称の中国特許出願に基づいく優先権を主張し、その内容はすべて参照により本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
軽量化は軌道交通車両の省エネ・消費削減を実現する最も有効な手段の一つである。従来の交通装備のエンジンやブレーキディスクなどは、主に鋳鉄系、鋳鋼や鍛鋼などの鉄系金属材料を採用し、その密度が大きく、熱伝導性が悪く、熱亀裂などの欠陥が発生しやすい。その中で最もよく使われるねずみ鋳鉄は、引張強さが約250MPa程度で、伸び率はわずか0.3%~0.8%である。そのため、鉄鋼材料の代わりに高性能軽金属材料を採用して上記の肝心な運動部品に適用することにより、車全体の重量を軽減するだけでなく、交通装備の高速運動部品のモーメントを低減することができ、交通装備の動力性能をより著しく改善し、同時にエネルギー消費を低減することができる。高性能ブレーキローターは、高速列車の開発の基礎となるものである。高速列車の急速な発展に伴い、ブレーキ材料に対する要求もより高く、より新しいものになっている。ブレーキ材料については、高速、高エネルギーで高い摩擦性能、安定性、及び優れた耐疲労性能、耐熱クラック拡張能力と高い耐摩耗性能を保証しなければならない。また、緊急時には、高速列車が安全な緊急ブレーキ距離を有することを保証しなければならない。現在、純空気ディスクブレーキは300km/hクラスの高速列車が安全なブレーキを実施する最も重要な手段である。高速鉄道のブレーキディスクはバネ下質量に属し、その質量はほとんど台車全体の20%を占め、ブレーキディスクの軽量化は台車の動力学品質を高め、牽引エネルギー消費を減らすのに役立つ。日本の新幹線に対する試験の結果により、車軸重量を16トンから11.3トンに減らすと、運行コストを34%削減できることが分かった。そのため、軽量化軌道交通用ブレーキディスクの製造は、解決すべき緊急の課題となっている。
【0004】
アルミニウム基複合材料は密度が小さく、比強度が高く、熱安定性がよく、熱伝導性能が良いなどの一連の利点を有し、「中国製造2025」を支持し、環境友好型社会と省エネ・消費削減を実現する重要な材料であり、重要な応用分野で必要とされる新しい材料でもある。これを軌道交通用ブレーキディスクの材料として、その重量を大幅に低減し、省エネ・排出削減の効果を達成することができる。しかし、純粋な粒子強化アルミニウム基複合材料は軟らかく、自動車の可変運転条件下でのブレーキ摩耗要求を満たすことが困難であるため、他の合金元素や微量元素の添加や強化体セラミック粒子の含有量の向上によりこの状況を改善することが期待される。ドイツは率先してアルミニウム基複合材料のブレーキディスクの研究を展開し、各ブレーキディスクの質量が115kgから65kgに減少したと報告されているが、鋳造法を採用しており、鋳造中の気孔や欠陥などの問題を回避することは困難であると同時に、この方法では、アルミニウム基複合材料中のセラミック粒子の含有量の上限が制限されるため、その含有量が20%以下になり、機械的性能を大幅に向上させることが困難になり、高速列車のブレーキ要求を満たすことは困難である。日本とフランスでもアルミニウム基複合材料のブレーキディスクの研究が行われているが、それらはまだ研究と試験の段階にある。中国では、この分野の研究は、基本的に空白である。その難点は、軌道交通用ブレーキディスクのサイズが極めて大きく、従来の製造プロセスによる製造は組織と性能の面で使用要求を達成することが困難である。従来の粉末冶金法により、セラミック粒子の含有量を高めて、使用要求に達することができるが、このようなサイズが大きく、構造が複雑な製品を製造することができず、亀裂が発生しやすい。従って、粉末冶金の原理を用いて、プロセスとパラメータの革新と改善により、要求に合致するセラミック粒子強化アルミニウム基複合材料の軌道交通用ブレーキディスクの製造が期待される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の軌道交通用ブレーキディスクの多くは鉄系金属材料を採用し、その密度が大きく、熱伝導性が悪く、熱亀裂などの欠陥が発生しやすく、エネルギー消費が大きく、環境保護に不利であるという問題がある。攪拌鋳造などの既存の製造方法で製造されたアルミニウム基複合材料のブレーキディスクには、セラミック粒子の含有量が上限を突破しにくいか、又はセラミック粒子の不均一な分布の問題や、製造成形工程において気孔、収縮、クラックが発生しやすい問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
軌道交通装備の軽量化の傾向と従来の軌道交通用ブレーキディスクの製造技術に存在する欠陥に対して、本発明の目的は、軽量で耐摩耗性があるアルミニウム基複合材料の軌道交通用ブレーキディスクを提供し、従来の鋳鉄製ブレーキディスクはエネルギー消費が大きく、環境保護に不利な問題、及び純アルミニウム基粉末冶金複合材料のブレーキディスクは耐摩耗性がなく、ブレーキ要求に達しない難題を解決することである。
【0007】
上記の技術的目的を達成するために、本発明は、アルミニウム粉末、主要合金元素、微量元素、及びセラミック粒子からなる耐摩耗性アルミニウム基複合材料で構成され、前記主要合金元素は、Cu、Si、Fe、Ni及びMgの少なくとも1種から選択され、前記微量元素は、Sr、Ce及びSnの少なくとも1種から選択される軽量・耐摩耗性アルミニウム基粉末冶金複合材料の軌道交通用ブレーキディスクを提供する。
【0008】
好ましい形態では、前記耐摩耗性アルミニウム基複合材料は、質量パーセントで、3%~12%の主要合金元素(各主要合金元素の質量分率は0.2%~12%の範囲で調整可能)、1.5%以下の微量元素(各微量元素の質量分率は0~1.5%の範囲で調整可能)、20%~75%のセラミック粒子(各セラミック粒子の質量分率は20%~75%の範囲で調整可能)、及び残部のアルミニウム粉末からなる(アルミニウム粉末、主要合金元素、微量元素及びセラミック粒子の合計質量を100%とする)。
【0009】
本発明の技術案は、アルミニウム基複合材料にCu、Si、Fe、Ni及びMgなどの合金元素を適量導入することを提案し、化学組成と焼結の程度を制御することにより、焼結過程で上記合金元素が内部に液相体を生成して焼結を促進し、これらの元素を主成分とする二元または多元の微細な金属間化合物強化相をその場で生成し、アルミニウム基複合材料の機械的特性を強化する役割を果たし、その耐摩耗性能を改善する。質量分率は強化効果に重要な役割を果たし、質量分率が好ましい範囲より小さいと強化効果が得られず、質量分率が大きすぎて好ましい範囲より大きいと、上記の金属間化合物を形成して耐摩耗性能を向上させることができないだけでなく、ブレーキディスクの質量が増加して軽量化効果を得ることができなくなる。
【0010】
本発明の技術案は、アルミニウム基複合材料にSr、Ce及びSnなどの微量元素を少量添加することをさらに提出し、少量の微量元素は合金元素での金属間化合物の生成を促進することができるが、含有量が多すぎると、他の金属間化合物不純物が生成し、その性能に影響を与える。
【0011】
好ましい形態では、前記セラミック粒子は、SiC、Al及びSiの少なくとも1種から選択される。
【0012】
本発明の技術案では、アルミニウム基複合材料にSiC、Al、Siなどのセラミック粒子を導入し、これらのセラミック粒子は極めて高い強度と優れた高温耐性を有し、複合材料の強化材としての最初の選択肢であり、複合材料の総合性能を大幅に改善でき、含有量が高いほど、耐摩耗性と耐熱性の向上効果が顕著になる。しかし、既存の製造方法の限界により、、ブレーキディスク中のセラミックとアルミニウム合金との浸透性が悪いため、セラミック粒子の含有量が高すぎてはいけなく、総合性能が低下するという問題を突破することができなかった。本発明の技術案では、冷間プレス成形、焼結及び熱間プレス成形を組み合わせたプロセスを用いて、セラミック粒子の含有量の上限を高め、例えば、セラミック粒子の質量%含有量を20%より高く、好ましくは40%より高く、さらに好ましくは60%より高く、最大で75%にすることができ、ブレーキディスクの耐摩耗性能をさらに向上させることができる。
【0013】
本発明の他の目的は、冷間プレス成形、焼結及び熱間プレス成形を組み合わせたプロセスで軌道交通用ブレーキディスクを製造する方法を提供することである。当該方法で製造された軌道交通用ブレーキディスクは、軽量化で耐摩耗性能と制動性能に優れており、各種の軌道交通ブレーキシステムの製造に広く利用することができ、アルミニウム基複合材料のブレーキディスクにおいてセラミック粒子の含有量が上限を突破するのが困難であり、分布が不均一であるという問題や、製造成形工程において気孔、収縮、クラックが発生しやすい問題も解決することができる。
【0014】
本発明は、さらに、軽量・耐摩耗性アルミニウム基粉末冶金複合材料の軌道交通用ブレーキディスクの製造方法を提供する。この製造方法は、1)耐摩耗性アルミニウム基複合材料混合粉体をリングディスク状の金型に充填し、室温で冷間プレス成形し、離型して、軌道交通用ブレーキディスクのグリーン体を得るステップと、2)前記軌道交通用ブレーキディスクのグリーン体を焼結成形して、軌道交通用ブレーキディスクの前駆体を得るステップと、3)前記軌道交通用ブレーキディスクの前駆体を熱間プレス成形金型に入れてプレス成形して、軌道交通用ブレーキディスクの粗製体を得るステップと、4)前記軌道交通用ブレーキディスクの粗製体を機械加工するステップと、を含む。
【0015】
好ましい形態では、前記冷間プレス成形の条件として、圧力が150MPa~300MPa、加圧速度が1mm/s~5mm/s、保圧時間が3s~10sである。耐摩耗性アルミニウム基複合材料の混合粉体を超大型のリングディスク状の金型に充填し、金型を閉じてガス抜きした後に、室温で冷間プレス成形する。成形された軌道交通用ブレーキディスクのグリーン体は、粉体がよく結合され、外径600mm~900mm、内径200mm~450mm、高さ20mm~140mmに達する超大型のリングディスク状のグリーン体となる。冷間プレス後のグリーン体の形状を図1に示す。冷間プレス成形用金型を図2に示し、金型の内部はグリーン体の形状に従って従来通り設計される。
【0016】
好ましい形態では、前記焼結成形のプロセスは、ワックス除去、焼結及び冷却を含む。
【0017】
好ましい形態では、前記焼結成形の条件として、窒素保護下、8℃/min~15℃/minの加熱速度で、まず350℃~450℃まで昇温し、15min~30min保温し、次に580℃~620℃に昇温し、25min~45min保温し、最後に500℃以下に降温する。さらに好ましい条件として、窒素ガス中の酸素含有量が10ppm未満、露点温度が-40℃未満である必要がある。本発明の技術案は、アルミニウム基粉末冶金複合材料のブレーキディスクの焼結温度プロファイルを初めて提案し、その目的は、グリーン体の温度を液相線付近に到達させ、炉冷却に伴って徐々に固相線付近まで冷却することにより、グリーン体の塑性を高めると同時に、焼結と冷却による内部応力を除去し、超大サイズのブレーキディスクのグリーン体の無欠陥成形を確保することである。
【0018】
好ましい形態では、前記プレス成形は、「一体化熱間プレス成形」であり、その条件として、プレス温度が500℃~600℃、圧力が150MPa~300MPa、加圧速度が1mm/s~5mm/s、保圧時間が5s~30sである。プレス成形後のブレーキディスクの粗製体は、ネットサイズに近い外形と完全な放熱リブ構造を有する。熱間プレス金型を図3に、上型を図4に示す。従来の粉末冶金製品には、熱間プレス成形プロセスが採用されない反対に、本発明の技術案では、軌道交通用ブレーキディスクの製造に上記の「一体化熱間プレス成形」プロセスを追加し、上記のパラメータを用いることを初めて提案する。これにより、軌道交通用ブレーキディスクの前駆体の緻密性をさらに高め、ブレーキディスクの機械的特性、特に耐摩耗性能と材料の剛性を全面的に向上させることができる一方、複雑な放熱リブ形状を直接プレスすることができ、パラメータの制御により、角欠けやクラックなどの欠陥なく放熱リブの構造健全性を確保し、ブレーキディスのグリーン体の寸法をネットサイズに近づけるとともに、冷間プレスや焼結工程で起こりうる不具合を修復して歩留まりを向上させることができる。
【0019】
好ましい形態では、前記機械加工は、バリ、フラッシュ、及び表面酸化物層の除去を含む。前記機械加工プロセスは荒切削である。
【0020】
好ましい形態では、得られた軽量・耐摩耗性アルミニウム基粉末冶金複合材料の軌道交通用ブレーキディスクの密度は2.60g/cm~2.95g/cmである。
【0021】
好ましい形態では、耐摩耗性アルミニウム基複合材料の混合粉体の製造として、アルミニウム粉末、主要合金元素、微量元素及びセラミック粒子を混合機に入れて混合し、混合機の速度は15r/min~35r/min、混合時間は35min~60minである。
【0022】
本発明の技術案で提供された軽量・耐摩耗性アルミニウム基粉末冶金複合材料の軌道交通用ブレーキディスクは、一方では、アルミニウム基粉末冶金複合材料の組成を調整することに基づいて、その耐摩耗性能、総合機械的特性及び機械加工特性を改善し、軽量でありながら軌道交通用ブレーキディスクのブレーキ要求を満たすことができ、他方では、粉末冶金の原理を用いて、冷間プレス成形、焼結、一体化熱間プレス成形プロセス及び対応するパラメータの制御により、ネットサイズに近い形状且つ無欠陥の各種の軌道交通用ブレーキディスクが得られる。
【0023】
本発明に係る金型は、既存の軌道交通用ブレーキディスクの形状に従って従来通りに設計することができる。
【発明の効果】
【0024】
従来技術と比較すると、本発明の技術案の有益な技術的効果は、以下の通りである。
1)本発明で得られたアルミニウム基粉末冶金軌道交通用ブレーキディスクは、ブレーキディスクの重量を大幅に削減すると同時に、耐摩耗性能とブレーキ性能が良好で、緻密性がよく、気孔とクラックがないという利点を持ち、軌道交通車両のブレーキ要求を満たしながらエネルギー消費を大幅に削減でき、省エネ・排出削減の効果を発揮し、その密度が2.60g/cm~2.95g/cm、硬度が60HRB以上、引張強さが230MPaより高く、様々の軌道交通車両のブレーキシステムに広く適用できる。
2)本発明の軌道交通用ブレーキディスクに用いられる材料には、大量のセラミック粒子と微細な金属間化合物を導入することにより、Al-粒子強化相を形成し、アルミニウム基複合材料の機械的特性、特に耐摩耗性と材料の剛性を大幅に向上させることができる。
3)本発明のアルミニウム基粉末冶金複合材料の軌道交通用ブレーキディスクの製造プロセスは、粉末冶金の原理を採用し、アルミニウム基粉末冶金の軌道交通用ブレーキディスク中のセラミック粒子の含有量の上限を突破し、その質量分率が最大75%に達することができ、ブレーキディスクの強度と耐摩耗性能を大幅に向上させることができる。
4)本発明のアルミニウム基粉末冶金複合材料の軌道交通用ブレーキディスクの製造プロセスでは、一体化熱間プレス成形の追加並びに冷間プレス、焼結及び熱間プレス成形のパラメータの制御により、外径が600mm~900mm、内径が200mm~450mm、高さが20mm~140mmに達することができる、超大サイズを有する軌道交通用ブレーキディスクが得られる。また、ブレーキディスクは内部が緻密で、気孔やクラックがなく、ネットサイズに近く、完全な放熱リブ構造を有するため、その後の機械加工のコストを大幅に削減することができる。
5)本発明のアルミニウム基粉末冶金複合材料の軌道交通用ブレーキディスクの製造工程は、工程数が少なく、操作が簡便で、コストが低く、歩留まりが高く、且つ様々な形状の軌道交通用ブレーキディスクの製造に応用でき、工業化の大量連続生産が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】冷間プレス後のグリーン体の形状の概略図である。
図2】冷間プレス成形金型である。
図3】熱間プレス成形金型の内部構造図である。
図4】熱間プレス成形金型の上型の図である。
図5】Al-30%SiC複合材料の軌道交通用ブレーキディスクの微細構造図である。
図6】アルミニウム基粉末冶金複合材料の軌道交通用ブレーキディスクの実物図である。
図7】熱間プレス成形されていないアルミニウム基粉末冶金複合材料の軌道交通用ブレーキディスクの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の理解を容易にするために、本発明をより包括的に説明し、本発明の好ましい実施例について述べる。しかしながら、本発明は、様々な形態で実施することが可能であり、本明細書に記載された実施例に限定されるものではない。むしろ、これらの実施例は、本発明の開示についてより徹底的且つ包括的な理解を提供する目的で提供されるものである。
【0027】
特に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明に属する当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本発明の明細書で使用される用語は、特定の実施例を説明する目的でのみ使用され、本発明を限定するものではない。
【0028】
実施例1
本実施例のアルミニウム基粉末冶金複合材料の軌道交通用ブレーキディスクの製造方法は、以下のステップに従って実施された。1)4.5%のCu、3.5%のMg、1.5%のSi、0.2%のSr、0.3%のCe、30%のSiC及び60%のアルミニウム粉末(上記はすべて質量分率)を混合機に添加し、20r/minの速度で60min混合して、耐摩耗性アルミニウム基複合材料の粉体を得た。2)ステップ1)で処理された耐摩耗性アルミニウム基複合材料の粉体を冷間プレス金型に充填し、圧力200MPa、加圧速度2mm/s、保圧時間8sで冷間プレスした。3)ステップ2)で処理された軌道交通用ブレーキディスクのグリーン体を、窒素保護下(通常、窒素中の酸素含有量は10ppm未満、露点温度は-40℃未満である)で焼結し、10℃/minの加熱速度で、まず450℃に昇温し、20min保温し、次に620℃に昇温し、30min保温し、最後に490℃に降温した。4)ステップ3)で処理された軌道交通用ブレーキディスクの前駆体を熱間プレス金型に入れ、プレス温度530℃、圧力200MPa、加圧速度3mm/s、保圧時間20sでプレス成形した。5)ステップ4)で処理された軌道交通用ブレーキディスクの粗製体を荒切削して、バリ、フラッシュ及び表面酸化物層を除去した。つまり、アルミニウム基粉末冶金複合材料の軌道交通用ブレーキディスクの製造を完了した。
【0029】
テストの結果、当該方法で製造したアルミニウム基粉末冶金複合材料の軌道交通用ブレーキディスクの密度は2.79g/cm、機械的特性は表1のとおりで、密度や機械的特性も低く、軽量化効果は明らかである。図5は当該Al-30%複合材料の軌道交通用ブレーキディスクの走査型電子顕微鏡による微細構造図であり、図5からブレーキディスクは内部が緻密で、気孔や小さなクラックがなく、粒子が均一に分布していることがわかった。図6は当該アルミニウム基粉末冶金複合材料の軌道交通用ブレーキディスクの写真であり、ブレーキディスクの外部にクラックや欠陥がないことがわかった。
【0030】
表1 アルミニウム基粉末冶金複合材料の軌道交通用ブレーキディスクの機械的特性
【0031】
実施例2
本実施例のアルミニウム基粉末冶金複合材料の軌道交通用ブレーキディスクの製造方法は、以下のステップに従って実施された。1)5%のFe、2%のMg、1%のNi、0.5%のCe、40%のSiC及び51.5%のアルミニウム粉末(上記はすべて質量分率)を混合機に添加し、20r/minの速度で50min混合して、耐摩耗性アルミニウム基複合材料の粉体を得た。2)ステップ1)で処理された耐摩耗性アルミニウム基複合材料の粉体を冷間プレス金型に充填し、圧力250MPa、加圧速度2mm/s、保圧時間10sで冷間プレスした。3)ステップ2)で処理された軌道交通用ブレーキディスクのグリーン体を、窒素保護下(通常、窒素中の酸素含有量は10ppm未満、露点温度は-40℃未満である)で焼結し、10℃/minの加熱速度で、まず460℃に昇温し、20min保温し、次に600℃に昇温し、30min保温し、最後に490℃に降温した。4)ステップ3)で処理された軌道交通用ブレーキディスクの前駆体を熱間プレス金型に入れ、プレス温度550℃、圧力200MPa、加圧速度3mm/s、保圧時間20sでプレス成形した。5)ステップ4)で処理された軌道交通用ブレーキディスクの粗製体を荒切削して、バリ、フラッシュ及び表面酸化物層を除去した。つまり、アルミニウム基粉末冶金複合材料の軌道交通用ブレーキディスクの製造を完了した。
【0032】
テストの結果、当該方法で製造したアルミニウム基粉末冶金複合材料の軌道交通用ブレーキディスクの機械的特性は表2のとおりである。当該材料で製造したブレーキディスクは、従来の鉄系金属材料のものに比べて、引張強さと伸び率に優れ、剛性と塑性が向上されることがわかった。
【0033】
表2 アルミニウム基粉末冶金複合材料の軌道交通用ブレーキディスクの機械的特性
【0034】
実施例3
本実施例のアルミニウム基粉末冶金複合材料の軌道交通用ブレーキディスクの製造方法は、以下のステップに従って実施された。1)5%のSi、5%のFe、0.5%のCe、0.5%のSn、60%のSiC及び29%のアルミニウム粉末(上記はすべて質量分率)を混合機に添加し、20r/minの速度で50min混合して、耐摩耗性アルミニウム基複合材料の粉体を得た。2)ステップ1)で処理された耐摩耗性アルミニウム基複合材料の粉体を冷間プレス金型に充填し、圧力250MPa、加圧速度2mm/s、保圧時間10sで冷間プレスした。3)ステップ2)で処理された軌道交通用ブレーキディスクのグリーン体を、窒素保護下(通常、窒素中の酸素含有量は10ppm未満、露点温度は-40℃未満である)で焼結し、10℃/minの加熱速度で、まず460℃に昇温し、20min保温し、次に600℃に昇温し、30min保温し、最後に490℃に降温した。4)ステップ3)で処理された軌道交通用ブレーキディスクの前駆体を熱間プレス金型に入れ、プレス温度550℃、圧力200MPa、加圧速度3mm/s、保圧時間20sでプレス成形した。5)ステップ4)で処理された軌道交通用ブレーキディスクの粗製体を荒切削して、バリ、フラッシュ及び表面酸化物層を除去した。つまり、アルミニウム基粉末冶金複合材料の軌道交通用ブレーキディスクの製造を完了した。
【0035】
テストの結果、当該方法で製造したアルミニウム基粉末冶金複合材料の軌道交通用ブレーキディスクの機械的特性は表3のとおりである。当該材料で製造したブレーキディスクは、従来の鉄系金属材料のものに比べて、引張強さと伸び率に優れ、剛性と塑性が向上されることがわかった。
【0036】
表3 アルミニウム基粉末冶金複合材料の軌道交通用ブレーキディスクの機械的特性
【0037】
実施例4
本実施例のアルミニウム基粉末冶金複合材料の軌道交通用ブレーキディスクの製造方法は、以下のステップに従って実施された。1)1%のFe、2%のMg、1%のNi、5%のSi、0.3%のCe、0.4%のSn、0.3%のSr、55%のSiC及び34%のアルミニウム粉末(上記はすべて質量分率)を混合機に添加し、20r/minの速度で50min混合して、耐摩耗性アルミニウム基複合材料の粉体を得た。2)ステップ1)で処理された耐摩耗性アルミニウム基複合材料の粉体を冷間プレス金型に充填し、圧力300MPa、加圧速度2mm/s、保圧時間10sで冷間プレスした。3)ステップ2)で処理された軌道交通用ブレーキディスクのグリーン体を、窒素保護下(通常、窒素中の酸素含有量は10ppm未満、露点温度は-40℃未満である)で焼結し、10℃/minの加熱速度で、まず460℃に昇温し、20min保温し、次に600℃に昇温し、30min保温し、最後に490℃に降温した。4)ステップ3)で処理された軌道交通用ブレーキディスクの前駆体を熱間プレス金型に入れ、プレス温度550℃、圧力300MPa、加圧速度3mm/s、保圧時間20sでプレス成形した。5)ステップ4)で処理された軌道交通用ブレーキディスクの粗製体を荒切削して、バリ、フラッシュ及び表面酸化物層を除去した。つまり、アルミニウム基粉末冶金複合材料の軌道交通用ブレーキディスクの製造を完了した。
【0038】
テストの結果、当該方法で製造したアルミニウム基粉末冶金複合材料の軌道交通用ブレーキディスクの機械的特性は表4のとおりである。当該材料で製造したブレーキディスクは、従来の鉄系金属材料のものに比べて、引張強さと伸び率に優れ、剛性と塑性が向上されることがわかった。
【0039】
表4 アルミニウム基粉末冶金複合材料の軌道交通用ブレーキディスクの機械的特性
【0040】
比較例1
比較例1は、微量元素を添加しない軌道交通用ブレーキディスクの製造方法であり、以下のステップに従って実施された。1)5%のFe、2%のMg、1%のNi、40%のSiC及び52%のアルミニウム粉末(上記はすべて質量分率)を混合機に添加し、20r/minの速度で50min混合して、耐摩耗性アルミニウム基複合材料の粉体を得た。2)ステップ1)で処理された耐摩耗性アルミニウム基複合材料の粉体を冷間プレス金型に充填し、圧力250MPa、加圧速度2mm/s、保圧時間10sで冷間プレスした。3)ステップ2)で処理された軌道交通用ブレーキディスクのグリーン体を、窒素保護下(通常、窒素中の酸素含有量は10ppm未満、露点温度は-40℃未満である)で焼結し、10℃/minの加熱速度で、まず460℃に昇温し、20min保温し、次に600℃に昇温し、30min保温し、最後に490℃に降温した。4)ステップ3)で処理された軌道交通用ブレーキディスクの前駆体を熱間プレス金型に入れ、プレス温度550℃、圧力200MPa、加圧速度3mm/s、保圧時間20sでプレス成形した。5)ステップ4)で処理された軌道交通用ブレーキディスクの粗製体を荒切削して、バリ、フラッシュ及び表面酸化物層を除去した。つまり、アルミニウム基粉末冶金複合材料の軌道交通用ブレーキディスクの製造を完了した。
【0041】
テストの結果、当該方法で製造したアルミニウム基粉末冶金複合材料の軌道交通用ブレーキディスクの機械的特性は表5のとおりである。実施例2のブレーキディスクの性能と比較すると、強さと硬度が大幅に低下し、塑性も極めて悪く、ブレーキディスクに要求される強さと摩擦を満たすことができない。
【0042】
表5 アルミニウム基粉末冶金複合材料の軌道交通用ブレーキディスクの機械的特性
【0043】
比較例2
比較例2は、プレス成形されない軌道交通用ブレーキディスクの製造方法であり、以下のステップに従って実施された。1)4.5%のCu、3.5%のMg、1.5%のSi、0.2%のSr、0.3%のCe、30%のSiC及び60%のアルミニウム粉末(上記はすべて質量分率)を混合機に添加し、20r/minの速度で60min混合して、耐摩耗性アルミニウム基複合材料の粉体を得た。2)ステップ1)で処理された耐摩耗性アルミニウム基複合材料の粉体を冷間プレス金型に充填し、圧力200MPa、加圧速度2mm/s、保圧時間8sで冷間プレスした。3)ステップ2)で処理された軌道交通用ブレーキディスクのグリーン体を、窒素保護下(通常、窒素中の酸素含有量は10ppm未満、露点温度は-40℃未満である)で焼結し、10℃/minの加熱速度で、まず450℃に昇温し、20min保温し、次に620℃に昇温し、30min保温し、最後に490℃に降温した。4)ステップ3)で処理された軌道交通用ブレーキディスクの粗製体を荒切削して、バリ、フラッシュ及び表面酸化物層を除去した。つまり、アルミニウム基粉末冶金複合材料の軌道交通用ブレーキディスクの製造を完了した。
【0044】
図7はプレス成形されない軌道交通用ブレーキディスクの写真であり、ディスク本体に深刻なクラックがあり、内部の粉体の結合も悪く、全く要求を満たしていないことがわかった。
【0045】
実施例5
本実施例のアルミニウム基粉末冶金複合材料の軌道交通用ブレーキディスクの製造方法は、以下のステップに従って実施された。1)4.5%のCu、3.5%のMg、1.5%のSi、0.2%のSr、0.3%のCe、30%のAl及び60%のアルミニウム粉末(上記はすべて質量分率)を混合機に添加し、20r/minの速度で60min混合して、耐摩耗性アルミニウム基複合材料の粉体を得た。2)ステップ1)で処理された耐摩耗性アルミニウム基複合材料の粉体を冷間プレス金型に充填し、圧力200MPa、加圧速度2mm/s、保圧時間8sで冷間プレスした。3)ステップ2)で処理された軌道交通用ブレーキディスクのグリーン体を、窒素保護下(通常、窒素中の酸素含有量は10ppm未満、露点温度は-40℃未満である)で焼結し、10℃/minの加熱速度で、まず450℃に昇温し、20min保温し、次に620℃に昇温し、30min保温し、最後に490℃に降温した。4)ステップ3)で処理された軌道交通用ブレーキディスクの前駆体を熱間プレス金型に入れ、プレス温度530℃、圧力200MPa、加圧速度3mm/s、保圧時間20sでプレス成形した。5)ステップ4)で処理された軌道交通用ブレーキディスクの粗製体を荒切削して、バリ、フラッシュ及び表面酸化物層を除去した。つまり、アルミニウム基粉末冶金複合材料の軌道交通用ブレーキディスクの製造を完了した。
【0046】
テストの結果、当該方法で製造したアルミニウム基粉末冶金複合材料の軌道交通用ブレーキディスクの機械的特性は表6のとおりである。当該材料で製造したブレーキディスクは、従来の鉄系金属材料のものに比べて、引張強さと伸び率に優れ、剛性と塑性が向上されることがわかった。
【0047】
表6 アルミニウム基粉末冶金複合材料の軌道交通用ブレーキディスクの機械的特性
【0048】
実施例6
本実施例のアルミニウム基粉末冶金複合材料の軌道交通用ブレーキディスクの製造方法は、以下のステップに従って実施された。1)4.5%のCu、3.5%のMg、1.5%のSi、0.2%のSr、0.3%のCe、30%のSi及び60%のアルミニウム粉末(上記はすべて質量分率)を混合機に添加し、20r/minの速度で60min混合して、耐摩耗性アルミニウム基複合材料の粉体を得た。2)ステップ1)で処理された耐摩耗性アルミニウム基複合材料の粉体を冷間プレス金型に充填し、圧力200MPa、加圧速度2mm/s、保圧時間8sで冷間プレスした。3)ステップ2)で処理された軌道交通用ブレーキディスクのグリーン体を、窒素保護下(通常、窒素中の酸素含有量は10ppm未満、露点温度は-40℃未満である)で焼結し、10℃/minの加熱速度で、まず450℃に昇温し、20min保温し、次に620℃に昇温し、30min保温し、最後に490℃に降温した。4)ステップ3)で処理された軌道交通用ブレーキディスクの前駆体を熱間プレス金型に入れ、プレス温度530℃、圧力200MPa、加圧速度3mm/s、保圧時間20sでプレス成形した。5)ステップ4)で処理された軌道交通用ブレーキディスクの粗製体を荒切削して、バリ、フラッシュ及び表面酸化物層を除去した。つまり、アルミニウム基粉末冶金複合材料の軌道交通用ブレーキディスクの製造を完了した。
【0049】
テストの結果、当該方法で製造したアルミニウム基粉末冶金複合材料の軌道交通用ブレーキディスクの機械的特性は表7のとおりである。当該材料で製造したブレーキディスクは、従来の鉄系金属材料のものに比べて、引張強さと伸び率に優れ、剛性と塑性が向上されることがわかった。
【0050】
表7 アルミニウム基粉末冶金複合材料の軌道交通用ブレーキディスクの機械的特性
【0051】
実施例7
本実施例のアルミニウム基粉末冶金複合材料の軌道交通用ブレーキディスクの製造方法は、以下のステップに従って実施された。1)5%のFe、2%のMg、1%のNi、0.5%のCe、40%のAl及び51.5%のアルミニウム粉末(上記はすべて質量分率)を混合機に添加し、20r/minの速度で50min混合して、耐摩耗性アルミニウム基複合材料の粉体を得た。2)ステップ1)で処理された耐摩耗性アルミニウム基複合材料の粉体を冷間プレス金型に充填し、圧力250MPa、加圧速度2mm/s、保圧時間10sで冷間プレスした。3)ステップ2)で処理された軌道交通用ブレーキディスクのグリーン体を、窒素保護下(通常、窒素中の酸素含有量は10ppm未満、露点温度は-40℃未満である)で焼結し、10℃/minの加熱速度で、まず460℃に昇温し、20min保温し、次に600℃に昇温し、30min保温し、最後に490℃に降温した。4)ステップ3)で処理された軌道交通用ブレーキディスクの前駆体を熱間プレス金型に入れ、プレス温度550℃、圧力200MPa、加圧速度3mm/s、保圧時間20sでプレス成形した。5)ステップ4)で処理された軌道交通用ブレーキディスクの粗製体を荒切削して、バリ、フラッシュ及び表面酸化物層を除去した。つまり、アルミニウム基粉末冶金複合材料の軌道交通用ブレーキディスクの製造を完了した。
【0052】
テストの結果、当該方法で製造したアルミニウム基粉末冶金複合材料の軌道交通用ブレーキディスクの機械的特性は表8のとおりである。当該材料で製造したブレーキディスクは、従来の鉄系金属材料のものに比べて、引張強さと伸び率に優れ、剛性と塑性が向上されることがわかった。
【0053】
表8 アルミニウム基粉末冶金複合材料の軌道交通用ブレーキディスクの機械的特性
【0054】
実施例8
本実施例のアルミニウム基粉末冶金複合材料軌道交通用ブレーキディスクの製造方法は、以下のステップに従って実施された。1)5%のFe、2%のMg、1%のNi、0.5%のCe、40%のSi及び51.5%のアルミニウム粉末(上記はすべて質量分率)を混合機に添加し、20r/minの速度で50min混合して、耐摩耗性アルミニウム基複合材料の粉体を得た。2)ステップ1)で処理された耐摩耗性アルミニウム基複合材料の粉体を冷間プレス金型に充填し、圧力250MPa、加圧速度2mm/s、保圧時間10sで冷間プレスした。3)ステップ2)で処理された軌道交通用ブレーキディスクのグリーン体を、窒素保護下(通常、窒素中の酸素含有量は10ppm未満、露点温度は-40℃未満である)で焼結し、10℃/minの加熱速度で、まず460℃に昇温し、20min保温し、次に600℃に昇温し、30min保温し、最後に490℃に降温した。4)ステップ3)で処理された軌道交通用ブレーキディスクの前駆体を熱間プレス金型に入れ、プレス温度550℃、圧力200MPa、加圧速度3mm/s、保圧時間20sでプレス成形した。5)ステップ4)で処理された軌道交通用ブレーキディスクの粗製体を荒切削して、バリ、フラッシュ及び表面酸化物層を除去した。つまり、アルミニウム基粉末冶金複合材料の軌道交通用ブレーキディスクの製造を完了した。
【0055】
テストの結果、当該方法で製造したアルミニウム基粉末冶金複合材料の軌道交通用ブレーキディスクの機械的特性は表9のとおりである。当該材料で製造したブレーキディスクは、従来の鉄系金属材料のものに比べて、引張強さと伸び率に優れ、剛性と塑性が向上されることがわかった。
【0056】
表9 アルミニウム基粉末冶金複合材料の軌道交通用ブレーキディスクの機械的特性
【0057】
実施例9
本実施例のアルミニウム基粉末冶金複合材料の軌道交通用ブレーキディスクの製造方法は、以下のステップに従って実施された。1)5%のFe、2%のMg、1%のNi、0.5%のCe、20%のSiC、20%のSi及び51.5%のアルミニウム粉末(上記はすべて質量分率)を混合機に添加し、20r/minの速度で50min混合して、耐摩耗性アルミニウム基複合材料の粉体を得た。2)ステップ1)で処理された耐摩耗性アルミニウム基複合材料の粉体を冷間プレス金型に充填し、圧力250MPa、加圧速度2mm/s、保圧時間10sで冷間プレスした。3)ステップ2)で処理された軌道交通用ブレーキディスクのグリーン体を、窒素保護下(通常、窒素中の酸素含有量は10ppm未満、露点温度は-40℃未満である)で焼結し、10℃/minの加熱速度で、まず460℃に昇温し、20min保温し、次に600℃に昇温し、30min保温し、最後に490℃に降温した。4)ステップ3)で処理された軌道交通用ブレーキディスクの前駆体を熱間プレス金型に入れ、プレス温度550℃、圧力200MPa、加圧速度3mm/s、保圧時間20sでプレス成形した。5)ステップ4)で処理された軌道交通用ブレーキディスクの粗製体を荒切削して、バリ、フラッシュ及び表面酸化物層を除去した。つまり、アルミニウム基粉末冶金複合材料の軌道交通用ブレーキディスクの製造を完了した。
【0058】
テストの結果、当該方法で製造したアルミニウム基粉末冶金複合材料の軌道交通用ブレーキディスクの機械的特性は表10のとおりである。当該材料で製造したブレーキディスクは、従来の鉄系金属材料のものに比べて、引張強さと伸び率に優れ、剛性と塑性が向上されることがわかった。
【0059】
表10 アルミニウム基粉末冶金複合材料の軌道交通用ブレーキディスクの機械的特性
【0060】
実施例10
本実施例のアルミニウム基粉末冶金複合材料の軌道交通用ブレーキディスクの製造方法は、以下のステップに従って実施された。1)5%のFe、2%のMg、1%のNi、0.5%のCe、20%のSiC、20%のAl及び51.5%のアルミニウム粉末(上記はすべて質量分率)を混合機に添加し、20r/minの速度で50min混合して、耐摩耗性アルミニウム基複合材料の粉体を得た。2)ステップ1)で処理された耐摩耗性アルミニウム基複合材料の粉体を冷間プレス金型に充填し、圧力250MPa、加圧速度2mm/s、保圧時間10sで冷間プレスした。3)ステップ2)で処理された軌道交通用ブレーキディスクのグリーン体を、窒素保護下(通常、窒素中の酸素含有量は10ppm未満、露点温度は-40℃未満である)で焼結し、10℃/minの加熱速度で、まず460℃に昇温し、20min保温し、次に600℃に昇温し、30min保温し、最後に490℃に降温した。4)ステップ3)で処理された軌道交通用ブレーキディスクの前駆体を熱間プレス金型に入れ、プレス温度550℃、圧力200MPa、加圧速度3mm/s、保圧時間20sでプレス成形した。5)ステップ4)で処理された軌道交通用ブレーキディスクの粗製体を荒切削して、バリ、フラッシュ及び表面酸化物層を除去した。つまり、アルミニウム基粉末冶金複合材料の軌道交通用ブレーキディスクの製造を完了した。
【0061】
テストの結果、当該方法で製造したアルミニウム基粉末冶金複合材料の軌道交通用ブレーキディスクの機械的特性は表11のとおりである。当該材料で製造したブレーキディスクは、従来の鉄系金属材料のものに比べて、引張強さと伸び率に優れ、剛性と塑性が向上されることがわかった。
【0062】
表11 アルミニウム基粉末冶金複合材料の軌道交通用ブレーキディスクの機械的特性
【0063】
実施例11
本実施例のアルミニウム基粉末冶金複合材料の軌道交通用ブレーキディスクの製造方法は、以下のステップに従って実施された。1)5%のFe、2%のMg、1%のNi、0.5%のCe、20%のSi、20%のAl及び51.5%のアルミニウム粉末(上記はすべて質量分率)を混合機に添加し、20r/minの速度で50min混合して、耐摩耗性アルミニウム基複合材料の粉体を得た。2)ステップ1)で処理された耐摩耗性アルミニウム基複合材料の粉体を冷間プレス金型に充填し、圧力250MPa、加圧速度2mm/s、保圧時間10sで冷間プレスした。3)ステップ2)で処理された軌道交通用ブレーキディスクのグリーン体を、窒素保護下(通常、窒素中の酸素含有量は10ppm未満、露点温度は-40℃未満である)で焼結し、10℃/minの加熱速度で、まず460℃に昇温し、20min保温し、次に600℃に昇温し、30min保温し、最後に490℃に降温した。4)ステップ3)で処理された軌道交通用ブレーキディスクの前駆体を熱間プレス金型に入れ、プレス温度550℃、圧力200MPa、加圧速度3mm/s、保圧時間20sでプレス成形した。5)ステップ4)で処理された軌道交通用ブレーキディスクの粗製体を荒切削して、バリ、フラッシュ及び表面酸化物層を除去した。つまり、アルミニウム基粉末冶金複合材料の軌道交通用ブレーキディスクの製造を完了した。
【0064】
テストの結果、当該方法で製造したアルミニウム基粉末冶金複合材料の軌道交通用ブレーキディスクの機械的特性は表12のとおりである。当該材料で製造したブレーキディスクは、従来の鉄系金属材料のものに比べて、引張強さと伸び率に優れ、剛性と塑性が向上されることがわかった。
【0065】
表12 アルミニウム基粉末冶金複合材料の軌道交通用ブレーキディスクの機械的特性
【0066】
実施例12
本実施例のアルミニウム基粉末冶金複合材料の軌道交通用ブレーキディスクの製造方法は、以下のステップに従って実施された。1)5%のSi、5%のFe、0.5%のCe、0.5%のSn、20%のSiC、20%のAl、20%のSi及び29%のアルミニウム粉末(上記はすべて質量分率)を混合機に添加し、20r/minの速度で50min混合して、耐摩耗性アルミニウム基複合材料の粉体を得た。2)ステップ1)で処理された耐摩耗性アルミニウム基複合材料の粉体を冷間プレス金型に充填し、圧力250MPa、加圧速度2mm/s、保圧時間10sで冷間プレスした。3)ステップ2)で処理された軌道交通用ブレーキディスクのグリーン体を、窒素保護下(通常、窒素中の酸素含有量は10ppm未満、露点温度は-40℃未満である)で焼結し、10℃/minの加熱速度で、まず460℃に昇温し、20min保温し、次に600℃に昇温し、30min保温し、最後に490℃に降温した。4)ステップ3)で処理された軌道交通用ブレーキディスクの前駆体を熱間プレス金型に入れ、プレス温度550℃、圧力200MPa、加圧速度3mm/s、保圧時間20sでプレス成形した。5)ステップ4)で処理された軌道交通用ブレーキディスクの粗製体を荒切削して、バリ、フラッシュ及び表面酸化物層を除去した。つまり、アルミニウム基粉末冶金複合材料の軌道交通用ブレーキディスクの製造を完了した。
【0067】
テストの結果、当該方法で製造したアルミニウム基粉末冶金複合材料の軌道交通用ブレーキディスクの機械的特性は表13のとおりである。当該材料で製造したブレーキディスクは、従来の鉄系金属材料のものに比べて、引張強さと伸び率に優れ、剛性と塑性が向上されることがわかった。
【0068】
表13 アルミニウム基粉末冶金複合材料の軌道交通用ブレーキディスクの機械的特性
【0069】
上記の実施例は、本発明のいくつかの実施形態を示したものにすぎず、その記述が具体的且つ詳細であるが、本発明の特許の範囲を限定するものとして解釈されるべきでない。なお、当業者にとって、本発明の趣旨から逸脱しないかぎり、若干の変形や改良が可能であり、これらはすべて本発明の保護範囲内に含まれることに留意されたい。したがって、本発明の保護範囲は、添付の特許請求の範囲に準ずるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7