IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 宇部興産株式会社の特許一覧

特許7508761水性樹脂組成物及びそれを含有するコーティング剤組成物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】水性樹脂組成物及びそれを含有するコーティング剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/00 20060101AFI20240625BHJP
   C08G 18/08 20060101ALI20240625BHJP
   C08G 18/32 20060101ALI20240625BHJP
   C08G 18/44 20060101ALI20240625BHJP
   C08G 18/65 20060101ALI20240625BHJP
   C08J 7/04 20200101ALI20240625BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20240625BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
C08G18/00 C
C08G18/08 019
C08G18/32 071
C08G18/44
C08G18/65 023
C08J7/04 A CFF
C09D5/02
C09D175/04
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018214278
(22)【出願日】2018-11-15
(65)【公開番号】P2020083902
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】UBE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】今嶋 啓晶
(72)【発明者】
【氏名】三吉 健太
【審査官】大塚 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-228654(JP,A)
【文献】特開2006-307174(JP,A)
【文献】国際公開第2017/038306(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/039259(WO,A1)
【文献】特開2003-137961(JP,A)
【文献】特表2011-516701(JP,A)
【文献】特開2018-021151(JP,A)
【文献】特開2010-280842(JP,A)
【文献】特表2011-518899(JP,A)
【文献】特開2005-330339(JP,A)
【文献】特開2001-002911(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00
C08G 18/08
C08G 18/32
C08G 18/44
C08G 18/65
C08J 7/04
C09D 5/02
C09D 175/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性ポリウレタン樹脂分散体と、イソシアネート基含有化合物とを含む、水性樹脂組成物であって、
水性ポリウレタン樹脂が、(a)ポリオール由来の構造(但し、(c)及びダイマージオール由来の構造を除く)と、(b)ポリイソシアネート由来の構造と、(c)酸性基含有ポリオール由来の構造と、(d)水酸基含有ポリアミン由来の構造及び/又は(e)水酸基含有モノアミン由来の構造とを含み、
水性樹脂組成物中の水酸基(OH)に対するイソシアネート基(NCO)のモル比(NCO/OH比)が、1.05~3であり、
水性ポリウレタン樹脂の水酸基価が、~26KOHmg/gであり、
イソシアネート基含有化合物が、1分子当たりイソシアネート基を2個以上有する化合物であり、
(a)ポリオール由来の構造が、ポリカーボネートポリオール由来の構造を含む、
水性樹脂組成物。
【請求項2】
イソシアネート基含有化合物が、水分散型イソシアネート基含有化合物である、請求項1に記載の水性樹脂組成物。
【請求項3】
水性樹脂組成物中の水酸基(OH)に対するイソシアネート基(NCO)のモル比(NCO/OH比)が、1.05~2.5である、請求項1又は2に記載の水性樹脂組成物。
【請求項4】
(a)ポリオール由来の構造が、さらに、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、ポリジエンポリオール及び低分子量ジオールからなる群から選択される少なくとも1種に由来する構造を含み、
低分子量ジオールが、炭素数2~9の脂肪族ジオール及び炭素数6~12の脂環式構造を有するジオールから選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の水性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の水性樹脂組成物含む、コーティング剤組成物。
【請求項6】
請求項5に記載のコーティング剤組成物を硬化させて得られる、硬化物。
【請求項7】
請求項5に記載のコーティング剤組成物を硬化させて得られる硬化層と、基材からなる層とを含む、積層体。
【請求項8】
水性樹脂組成物の製造方法であって、
(a)ポリオール由来の構造(但し、(c)及びダイマージオール由来の構造を除く)と、(b)ポリイソシアネート由来の構造と、(c)酸性基含有ポリオール由来の構造と、(d)水酸基含有ポリアミン由来の構造及び/又は(e)水酸基含有モノアミン由来の構造とを含む水性ポリウレタン樹脂分散体と、イソシアネート基含有化合物とを混合する工程を含む、
水性樹脂組成物中の水酸基(OH)に対するイソシアネート基(NCO)のモル比(NCO/OH)が、1.05~3であり、
水性ポリウレタン樹脂の水酸基価が、~26KOHmg/gであり、
イソシアネート基含有化合物が、1分子当たりイソシアネート基を2個以上有する化合物であり、
(a)ポリオール由来の構造が、ポリカーボネートポリオール由来の構造を含む、
水性樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
請求項1~4のいずれか1項に記載の水性樹脂組成物を基材に塗布して硬化させて、基材と硬化層からなる積層体を得る工程を含む、積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温加熱処理条件下において、十分な特性を発現する水性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
水性樹脂組成物は、基材への密着性、耐摩耗性、耐衝撃性、耐溶剤性等に優れていることから、塗料、インク、接着剤、各種コーティング剤として、紙、プラスチックス、フィルム、金属、ゴム、エラストマー、繊維製品等に幅広く使用される。
これらの技術分野では、環境対応の面から、乾燥・焼付温度の低下や加熱時間の短縮が求められているが、一般的に加熱処理の簡易化は塗膜の基材への密着性及び力学特性の低下につながる。したがって、低温加熱処理条件下において、十分な特性が発現する水性樹脂組成物が望まれる。
例えば、特許文献1には、水分散型ポリウレタン組成物、水分散型アクリル樹脂、及び硬化剤を含有する水性樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2005/075587号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の水性樹脂組成物は、低温加熱処理条件下における基材との密着性について言及されていない。
それゆえ、水性樹脂組成物を低温加熱処理条件下で塗膜とした際に要求される機能や特性、例えば、基材に対する優れた密着性を満足するような、特定の構造及び組成を有する水性樹脂組成物が求められていた。
本発明の課題は、即ち、上記問題を解決し、低温加熱処理条件下で基材に対する優れた密着性を有する水性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の課題は、水性ポリウレタン樹脂分散体と、イソシアネート基含有化合物とを含む水性樹脂組成物であって、水性ポリウレタン樹脂が、(a)ポリオール由来の構造(但し、(c)を除く)と、(b)ポリイソシアネート由来の構造と、(c)酸性基含有ポリオール由来の構造と、(d)水酸基含有ポリアミン由来の構造及び/又は(e)水酸基含有モノアミン由来の構造とを含み、水性樹脂組成物中の水酸基(OH)に対するイソシアネート基(NCO)のモル比(NCO/OH)が、0.1~10である、水性樹脂組成物によって解決される。
【0006】
[1]水性ポリウレタン樹脂分散体と、イソシアネート基含有化合物とを含む、水性樹脂組成物であって、
水性ポリウレタン樹脂が、(a)ポリオール由来の構造(但し、(c)を除く)と、(b)ポリイソシアネート由来の構造と、(c)酸性基含有ポリオール由来の構造と、(d)水酸基含有ポリアミン由来の構造及び/又は(e)水酸基含有モノアミン由来の構造とを含み、
水性樹脂組成物中の水酸基(OH)に対するイソシアネート基(NCO)のモル比(NCO/OH比)が、0.1~10である、水性樹脂組成物。
[2]イソシアネート基含有化合物が、水分散型イソシアネート基含有化合物である、[1]の水性樹脂組成物。
[3]水性樹脂組成物中の水酸基(OH)に対するイソシアネート基(NCO)のモル比(NCO/OH比)が、1~2.5である、[1]又は[2]の水性樹脂組成物。
[4](a)ポリオール由来の構造が、ポリカーボネートポリオール由来の構造、ポリエーテルポリオール由来の構造及びポリエステルポリオール由来の構造からなる群より選ばれる少なくとも1種である、[1]~[3]のいずれかの水性樹脂組成物。
[5]水性ポリウレタン樹脂の水酸基価が、1~100KOHmg/gである、[1]~[4]のいずれかの水性樹脂組成物。
[6][1]~[5]のいずれかの水性樹脂組成物含む、コーティング剤組成物。
[7][6]のコーティング剤組成物を硬化させて得られる、硬化物。
[8][6]のコーティング剤組成物を硬化させて得られる硬化層と、基材からなる層とを含む、積層体。
[9]水性樹脂組成物の製造方法であって、
(a)ポリオール由来の構造(但し、(c)を除く)と、(b)ポリイソシアネート由来の構造と、(c)酸性基含有ポリオール由来の構造と、(d)水酸基含有ポリアミン由来の構造及び/又は(e)水酸基含有モノアミン由来の構造とを含む水性ポリウレタン樹脂分散体と、イソシアネート基含有化合物とを混合する工程を含む、
水性樹脂組成物中の水酸基(OH)に対するイソシアネート基(NCO)のモル比(NCO/OH)が、0.1~10である、水性樹脂組成物の製造方法。
[10](a)ポリオール由来の構造が、ポリカーボネートポリオール由来の構造、ポリエーテルポリオール由来の構造及びポリエステルポリオール由来の構造からなる群より選ばれる少なくとも1種である、[9]の水性樹脂分散体の製造方法。
[11]水性ポリウレタン樹脂の水酸基価が、1~100KOHmg/gである、[9]又は[10]の水性樹脂分散体の製造方法。
[12][1]~[5]のいずれかの水性樹脂組成物を基材に塗布して硬化させて、基材と硬化層からなる積層体を得る工程を含む、積層体の製造方法。
本発明は、以下に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、低温加熱処理条件下で基材に対する優れた密着性を有する水性樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<水性樹脂組成物>
本発明に係る水性樹脂組成物は、水性ポリウレタン樹脂分散体と、イソシアネート基含有化合物とを含む水性樹脂組成物であって、水性ポリウレタン樹脂が、(a)ポリオール由来の構造(但し、(c)を除く)と、(b)ポリイソシアネート由来の構造と、(c)酸性基含有ポリオール由来の構造と、(d)水酸基含有ポリアミン由来の構造及び/又は(e)水酸基含有モノアミン由来の構造とを含み、水性樹脂組成物中の水酸基(OH)に対するイソシアネート基(NCO)のモル比(NCO/OH比)が、0.1~10である。
低温加熱処理条件下における基材への密着性及び耐薬品性の観点から、NCO/OH比は、好ましくは0.1~5であり、更に好ましくは0.5~3であり、特に好ましくは1~2.5である。
【0009】
<水性ポリウレタン樹脂分散体>
水性ポリウレタン樹脂分散体とは、水系媒体に水性ポリウレタン樹脂が分散された、ポリウレタン樹脂の水性分散体である。
【0010】
<水性ポリウレタン樹脂>
水性ポリウレタン樹脂は、(a)ポリオール由来の構造(但し、(c)を除く)と、(b)ポリイソシアネート由来の構造と、(c)酸性基含有ポリオール由来の構造と、(d)水酸基含有ポリアミン由来の構造及び/又は(e)水酸基含有モノアミン由来の構造とを有する。更に、任意の構造として、(f)鎖延長剤由来の構造(但し、(d)を除く)、(g)末端停止剤由来の構造(但し、(e)を除く)及び(c’)中和剤の部分が対イオンとして存在していてもよい。
【0011】
(a)ポリオールに由来する構造とは、ポリオールの分子構造のうち、ポリウレタン化反応に関与する基以外の部分構造を意味する。ポリオールに由来する構造は、ウレタン化反応によって、ポリウレタンに導入される。(b)~(c)についても同様である。
また、(d)水酸基含有ポリアミン由来の構造とは、(d)の分子構造のうち、鎖延長化反応に関与する基以外の部分構造を意味する。(d)水酸基含有ポリアミン由来の構造は、鎖延長化反応によってポリウレタンに導入される。(f)についても同様である。
更に、(e)水酸基含有モノアミン由来の構造とは、(e)の分子構造のうち、ウレタン化反応及び鎖延長反応を停止する反応に関与する基以外の部分構造を意味する。(e)水酸基含有モノアミン由来の構造は、末端停止剤としてポリウレタンに導入される。(g)についても同様である。
【0012】
<(a)ポリオール(但し、(c)を除く)>
(a)ポリオールとは、1分子中に2つ以上の水酸基を有する化合物である。(a)ポリオールとしては、例えば、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、その他のポリオール(例えば、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、ポリジエンポリオール、低分子量ジオール等)等が挙げられる。
低温加熱処理条件下における基材への密着性の観点から、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールからなる群より選ばれる少なくとも1種のポリオールを含むことが好ましく、ポリカーボネートポリオール及びポリエーテルポリオールからなる群より選ばれる少なくとも1種のポリオールを含むことが特に好ましい。
【0013】
(ポリカーボネートポリオール)
ポリカーボネートポリオールの種類は、特に限定されないが、式(1A)及び/又は式(1B)のポリオール由来の構造と、カーボネート結合を有するポリカーボネートポリオールが好ましい。
【0014】
【化1】
(式(1A)中、Z1は炭素原子数2~12の二価の脂肪族炭化水素基を示す。
式(1B)中、Z2は炭素原子数6~18の二価の環状脂肪族炭化水素基を示す。)
【0015】
前記「炭素原子数2~12の二価の脂肪族炭化水素基」とは、「炭素原子数2~12の脂肪族炭化水素」から2つの水素を除いた基を示す。「炭素原子数2~12の二価の脂肪族炭化水素基」の具体例としては、例えば、エチレン基、トリメチレン基(プロピレン基)、テトラメチレン基(ブチレン基)、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基、ドデカメチレン基などが挙げられるが、好ましくはテトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基である。
前記「「炭素原子数2~12の二価の脂肪族炭化水素基」は、直鎖状でも分岐鎖を有していてもよい。
前記「炭素原子数6~18の二価の環状脂肪族炭化水素基」とは、「炭素原子数6~18の環状脂肪族炭化水素」から2つの水素を除いた基を示す。「炭素原子数6~18の二価の環状脂肪族炭化水素基」としては、例えば、1,3-シクロヘキシレン基、1,4-シクロヘキシレン基、1,4-シクロヘキサンジメチレン基などが挙げられるが、好ましくは1,4-シクロヘキサンジメチレン基である。
【0016】
前記式(1A)で示されるポリオール(ポリオール(1A))としては、例えば、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ウンデカンジオール、ドデカンジオールが挙げられるが、好ましくは、直鎖状又は分岐鎖を有する炭素原子数2~10の脂肪族ポリオールであり、さらに好ましくは、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオールである。
なお、複数種類のポリオール(1A)を併用しても良い。
【0017】
前記式(1B)で示されるポリオール(以下、ポリオール(1B)と称することもある)としては、例えば、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられるが、好ましくは1,4-シクロヘキサンジメタノールが使用される。
なお、複数種類のポリオール(1B)を併用しても良い。
【0018】
式(1A)及び/又は式(1B)のポリオールと、炭酸エステルとを、触媒の存在化で反応させることよって得られるポリカーボネートポリオールとしては、例えば、1,6-ヘキサンジオールを原料として得られるポリカーボネートポリオール、2-メチルー1,3プロパンジオールを原料として得られるポリカーボネートポリオール、1,4-シクロヘキサンジメタノールと1,6-ヘキサンジオールとの混合物(モル比として1:3)を原料として得られるポリカーボネートポリオール、1,4-シクロヘキサンジメタノールと1,6-ヘキサンジオールとの混合物(モル比とて1:1)を原料として得られるポリカーボネートポリオール、1,4-シクロヘキサンジメタノールと1,6-ヘキサンジオールとの混合物(モル比として3:1)を原料として得られるポリカーボネートポリオール、1,6-ヘキサンジオールを原料として得られるポリカーボネートポリオール、1,5-ペンタンジオールと1,6-ヘキサンジオールとの混合物(モル比として1:1)を原料として得られるポリカーボネートポリオールが挙げられる。
【0019】
(ポリエーテルポリオール)
ポリエーテルポリオールは、分子中にエーテル結合を有するポリオールであれば特に限定されない。ポリエーテルポリオールの機能特性が低下しない範囲で、カーボネート結合及び/又はエステル結合を含有していてもよい。ポリエーテルポリオールは、例えば、環状エーテルの開環重合やエポキシ化合物の開環重合により得られる、アルキレン基がエーテル結合したものであることが好ましい。ポリエーテルポリオールの繰り返し単位の炭素数は特に限定されないが、入手容易性の観点から、繰り返し単位の炭素数は2~4であることが好ましく、3~4であることが更に好ましく、4であることが特に好ましい。
ポリエーテルポリオールとしては、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、アルキル側鎖を有するポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリピロピレングリコール、及びこれら2種以上の共重合体等が挙げられる。
【0020】
(ポリエステルポリオール)
ポリエステルポリオールとしては、分子中にエステル合を有するポリオールであれば特に限定されない。ポリエステルポリオールの機能特性が低下しない範囲で、カーボネート結合及び/又はエーテル結合を含有していてもよい。ポリエステルポリオールは、例えば、ポリエチレンアジペートジオール、ポリブチレンアジペートジオール、ポリエチレンブチレンアジペートジオール、ポリへキサメチレンイソフタレートアジペートジオール、ポリエチレンサクシネートジオール、ポリブチレンサクシネートジオール、ポリエチレンセバケートジオール、ポリブチレンセバケートジオール、ポリ-ε-カプロラクトンジオール、ポリ(3-メチル-1,5-ペンチレンアジペート)ジオール、1,6-へキサンジオールとダイマー酸との重縮合物等のポリエステルジオールが挙げられる。
【0021】
(その他のポリオール)
その他のポリオールとは、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオール以外のポリオールである。その他のポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、ポリジエンポリオール、低分子量ジオール等が挙げられる。
【0022】
低分子量ジオールとしては、特に限定はないが、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等の炭素数2~9の脂肪族ジオール;1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-ビス(ヒドロキシエチル)シクロヘキサン、2,7-ノルボルナンジオール、テトラヒドロフランジメタノール、2,5-ビス(ヒドロキシメチル)-1,4-ジオキサン等の炭素数6~12の脂環式構造を有するジオール等を挙げることができる。
【0023】
(a)ポリオールは、数平均分子量が400~8,000であることが好ましく、数平均分子量が400~4,000であることがより好ましい。数平均分子量がこの範囲にあることで、適切な粘度及び良好な取り扱い性が得られる。更に、ポリイソシアネートとの反応性が充分なものとなることから、ポリウレタンプレポリマー製造容易性、効率化等が向上する。また得られたポリウレタン樹脂のソフトセグメントとしての性能の確保が容易であり、強靭な塗膜が得られるという利点を有する。更に、得られたポリウレタン樹脂エマルジョンを含むエマルジョン組成物を用いて塗膜を形成した場合に、割れの発生を抑制し易い。本明細書において、数平均分子量は、JIS K 1577に準拠して測定した水酸基価に基づいて算出した数平均分子量とする。具体的には、水酸基価を測定し、末端基定量法により、(56.1×1,000×価数)/水酸基価[mgKOH/g]で算出する。前記式中において、価数は1分子中の水酸基の数である。
【0024】
<(b)ポリイソシアネート>
(b)ポリイソシアネートとは、1分子当たりイソシアネート基を2個以上有する化合物である。1分子当たりイソシアネート基を3個以上有するポリイソシアネートも使用することができる。
(b)ポリイソシアネートは、特に制限されないが、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネートが挙げられる。
【0025】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート(TDI)、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジイソシアナトビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’,4’’-トリフェニルメタントリイソシアネート、m-イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート、p-イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネートなどが挙げられる。
【0026】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2-イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2-イソシアナトエチル)カーボネート、2-イソシアナトエチル-2,6-ジイソシアナトヘキサノエートなどが挙げられる。
【0027】
脂環式ポリイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12-MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水素添加TDI)、ビス(2-イソシアナトエチル)-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボキシレート、2,5-ノルボルナンジイソシアネート、2,6-ノルボルナンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0028】
塗膜の硬度及び耐薬品性の観点から、脂環式ポリイソシアネートが好ましく、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI)が特に好ましい。
なお、ポリイソシアネートは、複数種を併用してもよく、アロファネート、ヌレートなどに変性されていてもよい。
【0029】
<(c)酸性基含有ポリオール>
(c)酸性基含有ポリオールは、分子内に酸性基を少なくとも1個有するポリオールである。酸性基は、特に制限されないが、カルボキシ基、スルホニル基、リン酸基、フェノール性水酸基等が挙げられる。酸性基含有ポリオールの種類は、特に制限されないが、具体的には、2,2-ジメチロールプロピオン酸、2,2-ジメチロールブタン酸等のジメチロールアルカン酸、N,N-ビスヒドロキシエチルグリシン、N,N-ビスヒドロキシエチルアラニン、3,4-ジヒドロキシブタンスルホン酸、3,6-ジヒドロキシ-2-トルエンスルホン酸等が挙げられる。これらの中でも、入手容易性の観点から、2個のメチロール基を含む炭素原子数4~12のアルカン酸(ジメチロールアルカン酸)が好ましく、中でも、2,2-ジメチロールプロピオン酸が好ましい。
なお、(c)酸性基含有ポリオールは、複数種を併用してもよい。
【0030】
<(c’)中和剤>
(c’)中和剤は、(c)酸性基含有ポリオールの酸性基を中和することができる化合物であり、酸性基の種類等に応じて適宜選択できる。(c’)中和剤としては、具体的には、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、N-フェニルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、N-メチルモルホリン、ピリジン、2-(ジメチルアミノ)-2-メチル-1-プロパノール(DMAP),N,N-ジメチル-2-アミノエタノール(DMAE、2-(ジメチルアミノ)-2-メチル-1-プロパノール(DMAMP)等の有機アミン類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機アルカリ塩類;アンモニア等が挙げられる。(c’)中和剤は、有機アミン類であることが好ましく、3級アミンであることがより好ましく、トリエチルアミンであることが特に好ましい。
なお、(c’)中和剤は、複数種を併用してもよい。
【0031】
<(d)水酸基含有ポリアミン>
(d)水酸基含有ポリアミンとは、1分子中に2個以上のアミノ基及び/又はイミノ基と1個以上の水酸基(フェノール性水酸基は除く)を有する化合物である。(d)水酸基含有ポリアミンは、鎖延長剤として作用することができる。
(d)水酸基含有ポリアミンとしては、3級アミンを除くアルカノールポリアミン類が好ましく、具体的には、3,5-ジアミノベンジルアルコールなどの芳香族アルカノールジアミン類、1,3-ジアミノ-2-プロパノール、2、2’-(エチレンビスイミノ)ビスエタノール、N-(2-ヒドロキシエチル)-N’-(2-アミノエチル)エチレンジアミン、N-(3-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、2-[ビス(2-アミノエチル)アミノ]エタノール、1-[2-[(2-アミノエチル)アミノ]エチル]アミノ-2-プロパノール、N、N-ビス(ヒドロキシエチル)ジエチレントリアミン、N1、N4-ビス(ヒドロキシエチル)ジエチレントリアミン、N1-(2-ヒドロキシプロピル)トリエチレンテトラアミン、N4-(2-ヒドロキシプロピル)トリエチレンテトラアミン、N-(2-ヒドロキシプロピル)トリエチレンテトラアミン、2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール等の脂肪族アルカノールポリアミン類が挙げられるが、低温加熱処理条件下で基材に対する優れた密着性及び耐薬品性の観点から、2-(2-アミノエチルアミノ)エタノールが好ましい。
なお、(d)水酸基含有ポリアミンは、複数種を組み合わせてもよく、(f)鎖延長剤と組み合わせてもよい。
【0032】
<(e)水酸基含有モノアミン>
(e)水酸基含有モノアミンとは、1分子中に1個のアミノ基又はイミノ基と1個以上の水酸基(フェノール性水酸基は除く)を有する化合物である。(e)水酸基含有モノアミンは、ポリウレタン樹脂末端のウレタン化反応及びは鎖延長反応を停止できる成分であり、末端停止剤として作用することができる。
(e)水酸基含有モノアミンとしては、例えば、アドレナリン、2-(4-アミノフェニル)エタノール、2-(2-アミノフェニル)エタノール、2-アニリノエタノール、2-アミノベンジルアルコール、3-アミノベンジルアルコール、4-アミノベンジルアルコール、2-アミノ-1-フェニルエタノール、N-ベンジルエタノールアミン、N,N-ジベンジル-2-アミノエタノール、N-(2-ヒドロキシエチル)-2-シアノ-4-ニトロアニリン、2-(2-ニトロアニリノ)エタノール、フェニルアラニノール、2,2-[4-(2-ヒドロキシエチルアミノ)-3-ニトロフェニルイミノ]ジエタノール等の芳香族モノアミン類、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、1-アミノ-2-プロパノール、3-アミノ-1-プロパノール、3-アミノ-1,2-プロパンジオール、2-アミノ-1-ブタノール、1-アミノ-2-ブタノール、5-アミノ-1-ペンタノール、2-アミノ-1-プロパノール、4-アミノ-1-ブタノール、6-アミノ-1-ヘキサノール、2-アミノ-1,3-プロパンジオール、2-(ブチルアミノ)エタノール、ジイソプロパノールアミン、2-(ジイソプロピルアミノ)エタノール、2-(エチルアミノ)エタノール、4-エチルアミノ-1-ブタノール、1-エチルアミノ-2-プロパノール、2-[(ヒドロキシメチル)アミノ]エタノール、ジエタノールアミン、2-(イソプロピルアミノ)エタノール、3-(イソプロピルアミノ)プロパノール、4-(イソプロピルアミノ)ブタノール、5-(イソプロピルアミノ)ペンタノール、2-(メチルアミノ)エタノール、3-メチルアミノ-1,2-プロパンジオール、バリノール等の(ポリ)アルカノールモノアミン類が挙げられるが、低温加熱処理条件下で基材に対する優れた密着性の観点から、2-アミノエタノール、N,N-ジエタノールアミンが好ましい。
なお、(e)水酸基含有モノアミンは、複数種を併用してもよく、(g)末端停止剤と組み合わせてもよい。
【0033】
<(f)鎖延長剤(但し、(d)を除く)>
(f)鎖延長剤とはイソシアネート基と反応する基を2つ以上有する化合物である。(f)鎖延長剤としては、例えば、エチレンジアミン、1,4-テトラメチレンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、1,4-ブタンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、1,4-ヘキサメチレンジアミン、3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、キシリレンジアミン、ピペラジン、アジポイルヒドラジド、ヒドラジン、2,5-ジメチルピペラジン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のポリアミン化合物;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等のジオール化合物;ポリエチレングリコールに代表されるポリアルキレングリコール類;水が挙げられ、中でもポリアミン化合物が好ましく、ジアミン化合物がより好ましく、1級ジアミン化合物が特に好ましい。
なお、(f)鎖延長剤は、複数種を併用してもよい。
【0034】
<(g)末端停止剤(但し、(e)を除く)>
(g)末端停止剤は、ポリウレタン樹脂末端のウレタン化反応及び鎖延長反応を停止できる化合物である。(g)末端停止剤としては、イソシアネート基と反応する基を1つ有する化合物が挙げられる。イソシアネート基と反応する基としては、水酸基、アミノ基、イミノ基、メルカプト基等を合計1つ持つ化合物が挙げられ、具体例としては、例えば、3,5-ジメチルピラゾール、n-ブチルアミン、ジ-n-ブチルアミン等のモノアミン;エタノール、イソプロパノール、ブタノール等の1価アルコール等が挙げられる。
(g)末端停止剤は、複数種を併用してもよい。
【0035】
<水系媒体>
水系媒体は、水性ポリウレタン樹脂を分散させることができる媒体であり、例えば、水が挙げられる。水としては、例えば、上水、イオン交換水、蒸留水、超純水等が挙げられるが、水性ポリウレタン樹脂粒子の安定性の観点から、イオン交換水であることが好ましい。なお、水系媒体は、水性ポリウレタン樹脂の分散性及び安定性を低下させない範囲で、有機溶媒を含んでいてもよい。
有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、β-アルコキシプロピオンアミド(KJケミカルズ製KJCMPA(R)-100、KJCMBPA(R)-100)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、酢酸エチル等が挙げられる。
【0036】
<ポリウレタン樹脂の特性>
ポリウレタン樹脂の重量平均分子量は、好ましくは25,000~10,000,000であり、更に好ましくは50,000~5,000,000であり、特に好ましくは100,000~1,000,000である。
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した値であり、予め作成した標準ポリスチレンの検量線から求めた換算値を使用することができる。重量平均分子量を25,000以上とすることで、水性樹脂組成物を塗膜とした際に、物性に優れた塗膜を得ることができる。重量平均分子量を10,000,000以下とすることで、水性樹脂組成物の乾燥性を高くすることができる。
【0037】
ポリウレタン樹脂の水酸基価は、好ましくは1~100KOHmgであり、更に好ましくは5~60KOHmg/gであり、特に好ましくは10~50KOHmg/gである。この範囲とすることで、低温加熱処理条件下で基材に対する密着性に優れた塗膜を得ることができる。
【0038】
<水性ポリウレタン樹脂分散体の製造方法>
ポリウレタン樹脂エマルジョンの製造方法は、ポリウレタン樹脂が水系媒体に分散されている、ポリウレタン樹脂エマルジョンが得られる方法であれば特に限定されない。ポリウレタン樹脂エマルジョンの製造方法としては、全ての原料を一度に反応させるワンショット法や、イソシアネート末端のポリウレタンプレポリマーを製造した後に鎖延長剤を反応させるプレポリマー法等が挙げられる。以下、プレポリマー法によるポリウレタン樹脂エマルジョンの製造方法の一例について説明する。
【0039】
プレポリマー法によるポリウレタン樹脂エマルジョンの製造方法は、例えば、
(a)ポリオールと、(b)ポリイソシアネートと、(c)酸性基含有ポリオールとを反応させてポリウレタンプレポリマーを得る工程(α)、
ポリウレタンプレポリマーを水系媒体中に分散させる工程(β)、
ポリウレタンプレポリマーの酸性基を(c’)中和剤を用いて中和する工程(γ)、
ポリウレタンプレポリマーと、鎖延長剤とを反応させる工程(δ)
を含む。ここで、工程(α)は、得られた(A)ポリウレタンプレポリマーに、更に末端停止剤を添加する工程を含んでもよい。
工程(β)、工程(γ)及び工程(δ)の順序は、特に制限されず、例えば、工程(γ)、工程(β)、工程(δ)の順に行ってもよく、工程(β)と工程(γ)を同時に行った後に工程(δ)を行ってもよく、前記工程を同時に行ってもよい。
【0040】
<工程(α)>
工程(α)において、(a)ポリオールと、(b)ポリイソシアネートと、(c)酸性基含有ポリオールとから、ポリウレタンプレポリマーを得る場合には、(a)、(b)、及び(c)とを順不同で反応させてもよく、同時に反応させてもよい。
【0041】
工程(α)は、不活性ガス雰囲気下で行ってもよいし、大気雰囲気下で行ってもよい。
工程(α)において、(a)ポリオールと、(b)ポリイソシアネートと、(c)酸性基含有ポリオールとを反応させる際の反応温度としては、特に制限はされないが、好ましくは40~150℃であり、特に好ましくは60~120℃である。反応温度を40℃以上とすることで、原料が十分に溶解し又は原料が十分な流動性を得て、ポリウレタンプレポリマーの粘度を低くして充分な撹拌を行うことができ、反応温度を150℃以下とすることで、副反応が起こる等の不具合を起こさずに、反応を進行させることができる。
【0042】
工程(α)において、反応性を向上させるために、触媒を用いることもできる。前記触媒としては、特に制限はされないが、例えば、スズ系触媒(トリメチルスズラウリレート、ジブチルスズジラウリレートなど)や鉛系触媒(オクチル酸鉛等)、チタン系触媒(チタンテトラブトキシドなど)などの金属塩、有機金属誘導体、アミン系触媒(トリエチルアミン、N-エチルモルホリン、トリエチレンジアミンなど)、ジアザビシクロウンデセン系触媒が挙げられる。中でも、反応性の観点から、ジブチルスズジラウリレート、チタンテトラブトキシドが好ましい。
【0043】
工程(α)において、(a)ポリオールと、(b)ポリイソシアネートと、(c)酸性基含有ポリオールとの反応は、無溶媒でも有機溶媒を加えて行ってもよい。無溶媒で反応を行う場合には、(a)ポリオールと、(b)ポリイソシアネートと、(c)酸性基含有ポリオールとの混合物が、攪拌性の観点から、液状であることが好ましい。有機溶媒を加えて反応させる場合、使用する有機溶媒としては、ポリウレタン樹脂エマルジョンの水系媒体において前記した有機溶媒が挙げられる。アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチルは、ポリウレタンプレポリマーを水に分散し、鎖延長反応を行った後に加熱又は減圧により除去できるので好適に使用される。また、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、β-アルコキシプロピオンアミド、ジプロピレングリコールジメチルエーテルは、得られたポリウレタン樹脂エマルジョンから塗膜を作製する際に造膜助剤として働くため好ましい。
【0044】
工程(α)において、(a)~(g)の合計100質量部に対する、(a)ポリオールの使用量は、好ましくは20~90質量部であり、更に好ましくは30~80質量部であり、特に好ましくは50~80質量部である。(a)ポリオールの使用量を20質量部以上とすることで、得られる水性ポリウレタン樹脂を含む水性樹脂組成物の乾燥性を高くすることができ、90質量部以下とすることで、得られるポリウレタン樹脂を含む水性樹脂組成物の分散性が向上する。
【0045】
工程(α)において、(a)ポリオール、(b)ポリイソシアネート、(c)酸性基含有ポリオールの全水酸基のモル数に対する、(b)ポリイソシアネートのイソシアネート基のモル数の比は、好ましくは1.05~2.5であり、更に好ましくは1.1~2.0であり、特に好ましくは1.2~1.8である。
【0046】
(a)ポリオール、(b)ポリイソシアネート、(c)酸性基含有ポリオールの全水酸基のモル数に対する、(b)ポリイソシアネートのイソシアネート基のモル数の比を1.05以上とすることで、分子末端にイソシアネート基を有しないポリウレタンプレポリマーの量が少なくなり、鎖延長剤と反応しない分子が少なくなる。これにより、ポリウレタン樹脂エマルジョンの貯蔵安定性が高くなる。
(a)ポリオール、(b)ポリイソシアネート、(c)酸性基含有ポリオールの全水酸基のモル数に対する、(b)ポリイソシアネートのイソシアネート基のモル数の比を2.5以下とすることで、反応系内に残る未反応の前記ポリイソシアネートの量が少なくなり、(b)ポリイソシアネートと前記鎖延長剤が効率的に反応し、水との反応による望まない分子伸長を起こしにくくなるため、貯蔵安定性が向上する。更に、得られる水性ポリウレタン樹脂分散体を含む水性樹脂組成物の乾燥性が高くなる。
【0047】
工程(α)において、(a)~(g)の合計100質量部に対する、(c)酸性基含有ポリオールの使用量は、好ましくは0.5~10質量部であり、特に好ましくは1~5質量部である。(c)酸性基含有ポリオールの使用量を0.5質量部以上とすることで、得られる水性ポリウレタン樹脂の水系媒体中への分散性が良好になり、10質量部以下とすることで、得られる水性ポリウレタン樹脂分散体を含む水性樹脂組成物の乾燥性が高くなる。また、水性樹脂組成物を塗布して得た塗膜の耐水性を高くすることができ、得られる塗膜の柔軟性も良好にすることができる。
【0048】
工程(α)において、(e)水酸基含有モノアミンおよび(g)末端停止剤の割合は、所望するポリウレタンプレポリマーの分子量等に応じて適宜決定することができる。
【0049】
また、(a)ポリオール及び(c)酸性基含有ポリオールの合計の水酸基当量数(総水酸基当量数)は、好ましくは100~1,000である。総水酸基当量数が、この範囲であれば、乾燥性、増粘性が上がりやすく、水性ポリウレタン樹脂の製造が容易であり、硬度の点で優れた塗膜が得られやすい。更に、得られる水性ポリウレタン樹脂を含む水性樹脂組成物の貯蔵安定性、乾燥性と塗布して得られる塗膜の硬度の観点から、総水酸基当量数は、より好ましくは200~900であり、更に好ましくは300~800であり、特に好ましくは500~800である。
【0050】
水酸基当量数は、以下の式(1)及び(2)で算出することができる。
各ポリオールの水酸基当量数=各ポリオールの分子量/各ポリオールの水酸基の数(フェノール性水酸基は除く)・・・(1)
ポリオールの総水酸基当量数=M/ポリオールの合計モル数・・・(2)
水性ポリウレタン樹脂の場合、式(2)において、Mは、[〔ポリカーボネートポリオール化合物の水酸基当量数×ポリカーボネートポリオール化合物のモル数〕+〔酸性基含有ポリオールの水酸基当量数×酸性基含有ポリオールのモル数〕]+〔ポリエチレンオキサイド鎖含有ポリオールの水酸基当量数×ポリエチレンオキサイド鎖含有ポリオールのモル数〕]を示す。
【0051】
工程(α)において、有機溶媒の使用量は、(a)ポリオールと、(b)ポリイソシアネートと、(c)酸性基含有ポリオールとの全量に対して質量基準で、好ましくは0.1~2.0倍であり、特に好ましくは0.15~0.8倍である。
【0052】
工程(α)で得られるポリウレタンプレポリマーの酸価(AV)は、好ましくは2~40mgKOH/gであり、更に好ましくは3~30mgKOH/gであり、特に好ましくは4~20mgKOH/gである。ポリウレタンプレポリマーの酸価を4mgKOH/g以上とすることで、水系媒体への分散性、貯蔵安定性を良くすることができる傾向がある。また、ポリウレタンプレポリマーの酸価を20mgKOH/g以下とすることで、得られる水性ポリウレタン樹脂を含む水性樹脂組成物の塗膜の耐水性を高め、得られる塗膜の柔軟性を高くすることができ、更に、塗膜作製時の乾燥性を上げることができる。
【0053】
なお、「ポリウレタンプレポリマーの酸価」とは、ポリウレタンプレポリマーを製造するにあたって用いられる溶媒及び前記ポリウレタンプレポリマーを水系媒体中に分散させるための中和剤を除いた、いわゆる固形分中の酸価を示す。具体的には、ポリウレタンプレポリマーの酸価は、下記式(3)によって導き出すことができる。
〔ポリウレタンプレポリマーの酸価〕=〔((d)酸性基含有ポリオールのミリモル数)×((d)酸性基含有ポリオール1分子中の酸性基の数)〕×56.11/〔(a)ポリエチレンオキサイド鎖を有するポリオール、(b)ポリオール、(d)酸性基含有ポリオール、及び(c)ポリイソシアネートの合計の質量〕・・・(3)
【0054】
<工程(β)>
工程(β)において、水系媒体中にポリウレタンプレポリマーを分散させる方法としては、特に制限されないが、例えば、ホモミキサーやホモジナイザーなどによって攪拌されている水系媒体中に、ポリウレタンプレポリマーを添加する方法、ホモミキサーやホモジナイザー等によって攪拌されているポリウレタンプレポリマーに水系媒体を添加する方法などを適宜採用できる。
【0055】
<工程(γ)>
工程(γ)において、(c’)中和剤の使用量は、(c)酸性基含有ポリオールの合計モル数に対して、好ましくは0.5~1.7倍であり、更に好ましくは0.6~1.3であり、特に好ましくは0.7~1.2である。この範囲内とすることで、分散性が良好となる。なお、水性ポリウレタン樹脂の酸性基のモル数は、基本的にはポリウレタン樹脂を得る際に用いた酸性基含有ポリオールのモル数に、酸性基含有ポリオール1分中の酸性基の数を掛けた数字である。また、中和剤のモル数は、水性ポリウレタン樹脂分散体に添加した中和剤のモル数である。
【0056】
<工程(δ)>
工程(δ)において、ポリウレタンプレポリマーと(d)水酸基含有ポリアミンおよび(f)鎖延長剤との反応は、冷却下でゆっくりと行ってもよく、必要に応じて60℃以下の加熱条件下で反応を促進して行ってもよい。冷却下における反応時間は、例えば、0.5~24時間とすることができ、60℃以下の加熱条件下における反応時間は、例えば、0.1~6時間とすることができる。なお、鎖延長は水によっても行うことができるため、工程(β)における水系媒体が水である場合、分散媒としての水が鎖延長剤を兼ねることになる。
【0057】
工程(δ)において、(d)水酸基含有ポリアミンおよび(f)鎖延長剤の使用量は、得られるポリウレタンプレポリマー中の鎖延長起点となるイソシアネート基に対して、好ましくは当量以下であり、特に好ましくは0.7~0.99当量である。イソシアネート基の当量以下の量で鎖延長剤を添加することで、鎖延長されたウレタンポリマーの分子量を低下させず、水性ポリウレタン樹脂分散体を含む水性樹脂組成物を塗布して得た塗膜の強度を高くすることができる。
【0058】
<イソシアネート基含有化合物>
イソシアネート基含有化合物とは、1分子当たりイソシアネート基を2個以上有する化合物である。水性ポリウレタン樹脂分散体を得る際に用いた(b)ポリイソシアネートの未反応物をイソシアネート基含有化合物として用いてもよい。
イソシアネート基含有化合物は、特に制限されないが、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネートが挙げられる。
なお、イソシアネート基含有化合物は、複数種を併用してもよい。
【0059】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート(TDI)、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジイソシアナトビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’,4’’-トリフェニルメタントリイソシアネート、m-イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート、p-イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネートなどが挙げられる。
【0060】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2-イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2-イソシアナトエチル)カーボネート、2-イソシアナトエチル-2,6-ジイソシアナトヘキサノエートなどが挙げられる。
【0061】
脂環式ポリイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12-MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水素添加TDI)、ビス(2-イソシアナトエチル)-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボキシレート、2,5-ノルボルナンジイソシアネート、2,6-ノルボルナンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0062】
水性ポリウレタン樹脂分散体との分散性及び低温加熱処理条件下における基材への密着性の観点から、水分散型イソシアネート基含有化合物が好ましい。
水分散型イソシアネート基含有化合物とは、前記イソシアネート基含有化合物をポリアルキレノキシ基、カルボキシル基等の親水基で変性し、水に対する分散性を向上させたイソシアネート基含有化合物である。
水性ポリウレタン樹脂分散体との分散性の観点から、水分散型イソシアネート基含有化合物の中でも、親水基部分を外側(親水部分)に向け、イソシアネート基を内側(疎水部分)に向けて水中で分散する水分散型イソシアネート基含有化合物が好ましい。
また、基材への密着性の観点から、水分型イソシアネート基含有化合物中のイソシアネート基の割合は、5~30質量%が好ましく、8~20質量%が特に好ましい。
【0063】
水分散型イソシアネート基含有化合物として、一般的に入手が可能で使用できるものとしては、例えば、住化バイエルウレタン(株)製バイヒジュール(登録商標)305、XP2655、40―170、304、3100、2336、LS2150/1、302、XP2451、XP2451/1、2547、2487/1、DN、DA―L、XP2759、BL116、BL5140、BL5235、TPLS2186、BL2781 XP、BL2706XP、BL2805XP、バイヒドロール(登録商標)TPLS2153、三井化学ポリウレタン(株)製タケネート(登録商標)WD―220、WD―240、WD―720、WD―725、WD―726、WD―730、WB―700、WB―720、WB―730、WB―920、日本ポリウレタン工業(株)製アクアネート100、110、200、210、120、旭化成ケミカルズ(株)製デュラネート(登録商標)WB40―100、WB40―80D、WT20―100、WT30―100、WE50―100、Vencorex chemicals社製Easaqua WAT―3、WAT―4、M―501、M―502、WXD―401、XD―803、XL―600、XD―401、XD―803、エボニックデグサジャパン(株)製VESTANAT(登録商標)EP―DS1205、EP―DS1076、北広ケミカル(株)製TZ―1300、TZ―1301、TZ―1310、TZ―1312、TZ―1320、TZ―1322、TZ―1370、TZ―1372等が挙げられる。
【0064】
<水樹脂組成物の製造方法>
本願発明に係る水性樹脂組成物の製造方法は、
(a)ポリオール由来の構造(但し、(c)を除く)と、(b)ポリイソシアネート由来の構造と、(c)酸性基含有ポリオール由来の構造と、(d)水酸基含有ポリアミン由来の構造及び/又は(e)水酸基含有モノアミン由来の構造とを含む水性ポリウレタン樹脂分散体と、イソシアネート基含有化合物とを混合する工程を含む。
前記製造方法により得られる水性樹脂組成物中の水酸基(OH)に対するイソシアネート基(NCO)のモル比(NCO/OH)は、0.1~10である。
イソシアネート基含有化合物は、水性ポリウレタン樹脂分散体との分散性を向上させるために、イソシアネート基含有化合物を界面活性剤等の乳化剤にて分散させて用いることが好ましく、水分散型イソシアネート基含有化合物を用いることが特に好ましい。水分散型イソシアネート基含有化合物を用いる場合は、乳化剤がなくても水性ポリウレタン樹脂分散体との分散性を向上させることができ、得られる塗膜の密着性も優れている。
【0065】
水性ポリウレタン樹脂分散体とイソシアネート基含有化合物との混合方法は、特に限定されず、水性ポリウレタン樹脂分散体にイソシアネート基含有化合物を添加しながら混合してもよいし、イソシアネート基含有化合物に水性ポリウレタン樹脂分散体を添加しながら混合してもよく、両者を同時に添加しながら混合してもよい。
混合温度や混合時間は、特に限定されず、例えば、常温で、水性ポリウレタン樹脂分散体とイソシアネート基含有化合物との混合物をホモジナイザーやディスパーサーなどで1~30分間混合することで、水性樹脂組成物を得ることができる。
【0066】
<コーティング剤組成物>
本発明に係るコーティング剤組成物(以下、コーティング剤組成物には塗料組成物が含まれる)は、前記水性樹脂組成物を含む。
コーティング剤組成物には、水性樹脂組成物以外の樹脂の水性分散液及び/又は水溶液を添加することができる。前記樹脂としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂等が挙げられる。
【0067】
コーティング剤組成物には、着色顔料や体質顔料、光輝性顔料を添加することができる。着色顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、モリブデンレッド、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリン顔料、スレン系顔料、ペリレン顔料等が挙げられる。これらは、単独であってもよいし、複数種を併用してもよい体質顔料としては、例えば、クレー、カオリン、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、アルミナホワイトが挙げられる。光輝性顔料は、例えば、アルミニウム、銅、亜鉛、真ちゅう、ニッケル、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタンや酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタンや酸化鉄で被覆された雲母を使用することができる。
【0068】
コーティング剤組成物には、必要に応じて、増粘剤、硬化触媒、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、可塑剤、表面調整剤、沈降防止剤等の通常の添加剤を含有することができる。
コーティング剤組成物の製造方法は、特に制限されないが、公知の製造方法を用いることができる。一般的には、コーティング剤組成物は、前記水性樹脂組成物及び上述した他の樹脂及び/又は各種添加剤を混合し、適用方法に応じた粘度に調整することにより製造される。
コーティング剤組成物の被コーティング材質の被適用材質(基材)としては、金属、プラスチック、無機物、エラストマー、木材、コンクリート、モルタル等が挙げられる。
コーティング剤組成物を被適用材質に適用した後、加熱硬化させてコーティング層を得ることが好ましい。
前記加熱方法としては、自己の反応熱による加熱方法と、コーティング剤組成物と基材とを積極加熱する加熱方法等が挙げられる。積極加熱は、コーティング剤組成物と基材とを熱風オーブンや電気炉、赤外線誘導加熱炉に入れて加熱する方法が挙げられる。
前記加熱温度は、好ましくは40~200℃であり、より好ましくは60~160℃である。このような温度で加熱することにより、より効率的に乾燥を行うことができる。前記加熱時間は、好ましくは1秒~20時間であり、より好ましくは1~10時間である。このような加熱時間とすることにより、より硬度の高い複合樹脂フィルムを得ることができる。複合樹脂フィルムを得るための乾燥条件は、例えば、120℃で3~10秒での加熱が挙げられる。
特に本発明では、80~90℃程度の比較的低温で基材への密着性に優れた硬化物を形成することができる。硬化物の塗膜の厚さは、特に制限されないが、基材への密着性及び塗膜強度の観点から、好ましくは1~100μmであり、特に好ましくは3~50μmである。
【0069】
<積層体>
本発明に係る積層体は、水性樹組成物又は水性樹脂組成物を含むコーティング剤組成物を硬化させて得られる硬化層と、基材からなる層とを有し、硬化層と基材からなる層が接しているものをいう。
以下、積層体の実施形態について説明するが、特に記載がないものについては、前記コーティング剤組成物の実施形態と同じであってもよい。
【0070】
積層体を構成する基材としては、例えば、プラスチック基材、エラストマー基材、土木建築用基材、金属基材及びガラス基材等を用いることができる。プラスチック基材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ABS樹脂、アクリル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等からなる基材が挙げられる。エラストマー基材としては、天然ゴム、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等からなる基材が挙げられる。土木建築用基材としては、コンクリート、モルタル、タイル等からなる基材が挙げられる。金属基材としては、アルミニウム、鉄、ステンレス等からなる基材及びこれらの基材を表面処理した基材が挙げられる。
【0071】
<積層体の製造方法>
本発明に係る積層体の製造方法は、
水性樹脂組成物を基材に塗布して硬化させて、基材と硬化層からなる積層体を得る工程を含む。低温処理加熱時の基材との密着性の観点から、イソシアネート基含有化合物は、水分散型イソシアネート基含有化合物が好ましい。
硬化方法は、特に限定されないが、水性樹脂組成物と基材とを熱風オーブンや電気炉、赤外線誘導加熱炉に入れて加熱する方法が挙げられる。
加熱温度は、好ましくは40~200℃であり、より好ましくは60~160℃である。このような温度で加熱することにより、より効率的に硬化を行うことができる。特に本発明では、80~90℃程度の低温で基材への密着性に優れた硬化物を形成することができる。
加熱時間は、好ましくは1秒~20時間であり、より好ましくは1~10時間である。このような加熱時間とすることにより、硬化層と基材との密着性が高い積層体を得ることができる。
硬化物の塗膜の厚さは、特に制限されないが、基材への密着性及び塗膜の強度の観点から、好ましくは1~100μmであり、特に好ましくは3~50μmである。
【実施例
【0072】
以下、本発明について、具体的な実施例に基づいて、更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。
物性の測定は以下のように行った。
【0073】
(水酸基価)
水性ポリウレタン樹脂の水酸基価は、JIS K 1557のB法に準拠して測定した。
【0074】
(NCO/OH比)
水性樹脂組成物中の水酸基価(OH)に対するイソシアネート基(NCO)のモル比(NCO/OH比)は、水性ポリウレタン樹脂の水酸基価(OH)と、イソシアネート基含有化合物のイソシアネート基量(NCO)から、以下の式(1)~(3)により算出した。水性ポリウレタン樹脂分散体中のポリウレタン樹脂は、いずれも30質量%として計算した。
なお、水性樹脂組成物中に水性ポリウレタン樹脂以外の水酸基価(OH)を有する化合物が含まれる場合は、水性ポリウレタン樹脂以外の水酸基価(OH)を有する化合物のOHモル量を計算し、(NCO/OH比)を計算する必要がある。水性樹脂組成物中にイソシアネート基含有化合物以外のイソシアネート基(NCO)を有する化合物が含まれる場合も同様である。
式(1):NCO/OH=NCOモル量(mоl)÷OHモル量(mоl)
式(2):NCOモル量(mоl)=イソシアネート基含有化合物の質量(g)×イソシアネート濃度(質量%)÷42÷100
式(3):OHモル量(mоl)=水性ポリウレタン樹脂の質量(g)×0.3×水性ポリウレタン樹脂の水酸基価(KOHmg/g)÷56.1÷1000
【0075】
(密着性試験)
実施例及び比較例の水性樹脂組成物をバーコーター♯10にて各種基材(ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート樹脂、エチレンプロピレンジエンゴム)上に塗布後、80℃で45分、又は80℃で15分加熱して塗膜を形成した。常温にて1昼夜静置し、塗膜に20mm×20mmの面積に縦横2mm間隔で切り目を入れ、粘着テープを張った後、剥がした時の状態を下記の基準で評価した。
◎:塗膜の剥離なし
○:塗膜の一部分(10%未満)が剥離した
△:塗膜の一部分(30%未満)が剥離した
×:塗膜の全面が剥離した
【0076】
(耐薬品性試験)
実施例及び比較例の水性樹脂組成物をバーコーター♯10にてガラス基材上に塗布し、80℃で45分乾燥して塗膜を形成した。常温にて1昼夜静置し、薬液(超純水、5質量%硫酸水溶液、80質量%エタノール水溶液、5質量%水酸化ナトリウム水溶液)を染み込ませた脱脂綿を塗膜上に置き、乾燥しないよう蓋を被せた状態で1昼夜静置した後、脱脂綿を取り除き、塗膜の状態を目視で確認し、下記の基準で評価した。
◎:塗膜の変化なし
○:軽微な白化が見られる
△:塗膜の一部が白化、溶解
×:塗膜が溶解
【0077】
〔合成例1:水性ポリウレタン樹脂分散体(1)〕
撹拌機及び加熱器を備えた反応装置で、ポリカーボネートジオール(製品名:ETERNACOLL(登録商標)UH-200;宇部興産株式会社製;数平均分子量1958;水酸基価57.3mgKOH/g、1,6-ヘキサンジオールと炭酸エステルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール、431.1g)と、2,2-ジメチロールプロピオン酸(30.6g)と、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12-MDI、197.9g)とを、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(218.5g)中、ジブチルスズジラウレート(0.52g)存在下、窒素雰囲気下で、80~90℃で4時間加熱した。残存NCOを定量したところ、OH転化率98%以上であった。反応混合物を80℃にした後、トリエチルアミン(23.2g)を加え、30分撹拌した。反応混合物のうち、855.9gを抜き出し、強撹拌しながら水(1248.7g)に入れた後、35質量%の2-アミノエタノール水溶液(22.6g)、35質量%の2-メチル-1,5-ペンタンジアミン水溶液(68.5g)を加え、水性ポリウレタン樹脂分散体(1)を得た。
【0078】
〔合成例2:水性ポリウレタン樹脂分散体(2)〕
撹拌機及び加熱器を備えた反応装置で、ポリカーボネートジオール(製品名:ETERNACOLL(登録商標)UH-300;宇部興産株式会社製;数平均分子量2976;水酸基価37.7mgKOH/g、1,6-ヘキサンジオールと炭酸エステルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール、460g)と、2,2-ジメチロールプロピオン酸(31.2g)と、H12-MDI(174.4g)とを、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(217g)中、ジブチルスズジラウレート(0.5g)存在下、窒素雰囲気下で、80~90℃で4時間加熱した。残存NCOを定量したところ、OH転化率98%以上であった。反応混合物を80℃にした後、トリエチルアミン(24.7g)を加え、30分撹拌した。反応混合物のうち、411.8gを抜き出し、強撹拌しながら水(599g)に入れた後、35質量%の2-アミノエタノール水溶液(11.1g)、35質量%の2-メチル-1,5-ペンタンジアミン水溶液(26.7g)を加え、水性ポリウレタン樹脂分散体(2)を得た。
【0079】
〔合成例3:水性ポリウレタン樹脂分散体(3)〕
撹拌機及び加熱器を備えた反応装置で、ポリカーボネートジオール(製品名:ETERNACOLL(登録商標)UH-300;宇部興産株式会社製;数平均分子量2976;水酸基価37.7mgKOH/g、190g)と、2,2-ジメチロールプロピオン酸(20.3g)と、IPDI(80.6g)とを、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(96.1g)中、ジブチルスズジラウレート(0.2g)存在下、窒素雰囲気下で、80~90℃で4時間加熱した。残存NCOを定量したところ、OH転化率98%以上であった。反応混合物を80℃にした後、トリエチルアミン(16.1g)を加え、30分撹拌した。反応混合物のうち、372gを抜き出し、強撹拌しながら水(523g)に入れた後、35質量%の2-アミノエタノール水溶液(10.1g)、35質量%の2-メチル-1,5-ペンタンジアミン水溶液(30.0g)を加え、水性ポリウレタン樹脂分散体(3)を得た。
【0080】
〔合成例4:水性ポリウレタン樹脂分散体(4)〕
撹拌機及び加熱器を備えた反応装置で、ポリカーボネートジオール(製品名:ETERNACOLL(登録商標)UH-300;宇部興産株式会社製;数平均分子量2907;水酸基価38.6mgKOH/g、359.8g)と、2,2-ジメチロールプロピオン酸(18.8g)と、IPDI(90.8g)とを、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(155.5g)中、ジブチルスズジラウレート(0.37g)存在下、窒素雰囲気下で、80~90℃で4時間加熱した。残存NCOを定量したところ、OH転化率98%以上であった。反応混合物を80℃にした後、トリエチルアミン(14.3g)を加え、30分撹拌した。反応混合物のうち、598.4gを抜き出し、強撹拌しながら水(868.4g)に入れた後、35質量%の2-アミノエタノール水溶液(15.6g)、35質量%の2-メチル-1,5-ペンタンジアミン水溶液(19.2g)、35質量%のジエチレントリアミン水溶液(1.3g)を加え、水性ポリウレタン樹脂分散体(4)を得た。
【0081】
〔合成例5:水性ポリウレタン樹脂分散体(5)〕
撹拌機及び加熱器を備えた反応装置で、ポリカーボネートジオール(製品名:ETERNACOLL(登録商標)UH-200;宇部興産株式会社製;数平均分子量1958;水酸基価57.3mgKOH/g、383.7g)と、2,2-ジメチロールプロピオン酸(25.8g)と、IPDI(140.5g)とを、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(182g)中、ジブチルスズジラウレート(0.4g)存在下、窒素雰囲気下で、80~90℃で4時間加熱した。残存NCOを定量したところ、OH転化率98%以上であった。反応混合物を80℃にした後、トリエチルアミン(20.6g)を加え、30分撹拌した。反応混合物のうち、354gを抜き出し、強撹拌しながら水(510g)に入れた後、35質量%の2-アミノエタノール水溶液(8.6g)、35質量%のジエチレントリアミン水溶液(15.1g)を加え、水性ポリウレタン樹脂分散体(5)を得た。
【0082】
〔合成例6:水性ポリウレタン樹脂分散体(6)〕
撹拌機及び加熱器を備えた反応装置で、ポリカーボネートジオール(製品名:ETERNACOLL(登録商標)UH-300;宇部興産株式会社製;数平均分子量2976;水酸基価37.7mgKOH/g、218g)と、2,2-ジメチロールプロピオン酸(13.7g)と、IPDI(66.3g)とを、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(98.6g)中、ジブチルスズジラウレート(0.2g)存在下、窒素雰囲気下で、80~90℃で4時間加熱した。残存NCOを定量したところ、OH転化率98%以上であった。反応混合物を80℃にした後、トリエチルアミン(10.9g)を加え、30分撹拌した。反応混合物のうち、360gを抜き出し、強撹拌しながら水(517g)に入れた後、35質量%の2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール水溶液(27.3g)を加え、水性ポリウレタン樹脂分散体(6)を得た。
【0083】
〔合成例7:水性ポリウレタン樹脂分散体(7)〕
撹拌機及び加熱器を備えた反応装置で、ポリカーボネートジオール(製品名:ETERNACOLL(登録商標)UH-200;宇部興産株式会社製;数平均分子量2000;水酸基価56.1mgKOH/g、200g)と、2,2-ジメチロールプロピオン酸(13.8g)と、IPDI(82.7g)とを、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(63.0g)中、ジブチルスズジラウレート(0.2g)存在下、窒素雰囲気下で、80~90℃で4時間加熱した。残存NCOを定量したところ、OH転化率98%以上であった。反応混合物を80℃にした後、トリエチルアミン(11.7g)を加え、30分撹拌した。反応混合物のうち、340gを抜き出し、強撹拌しながら水(564g)に入れた後、35質量%の2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール水溶液(38.7g)を加え、水性ポリウレタン樹脂分散体(7)を得た。
【0084】
〔合成例8:水性ポリウレタン樹脂分散体(8)〕
撹拌機及び加熱器を備えた反応装置で、ポリカーボネートジオール(製品名:ETERNACOLL(登録商標)UH-200;宇部興産株式会社製;数平均分子量2000;水酸基価56.1mgKOH/g、302g)と、2,2-ジメチロールプロピオン酸(31.5g)と、IPDI(133.0g)とを、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(154g)中、ジブチルスズジラウレート(0.4g)存在下、窒素雰囲気下で、80~90℃で4時間加熱した。残存NCOを定量したところ、OH転化率98%以上であった。反応混合物を80℃にした後、275gを抜き出し、強撹拌しながら2質量%の2-ジメチルアミノエタノール水溶液(413g)に入れた後、35質量%の2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール水溶液(23.5g)を加え、水性ポリウレタン樹脂分散体(5)を得た。
加え、4時間撹拌し、重合することにより、複合樹脂水性分散体(8)を得た。
【0085】
〔合成例9:水性ポリウレタン樹脂分散体(9)〕
撹拌機及び加熱器を備えた反応装置で、ポリカーボネートジオール(製品名:ETERNACOLL(登録商標)UH-200;宇部興産株式会社製;数平均分子量2000;水酸基価56.1mgKOH/g、302g)と、2,2-ジメチロールプロピオン酸(31.5g)と、IPDI(133.0g)とを、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(154g)中、ジブチルスズジラウレート(0.4g)存在下、窒素雰囲気下で、80~90℃で4時間加熱した。残存NCOを定量したところ、OH転化率98%以上であった。反応混合物を80℃にした後、275gを抜き出し、強撹拌しながら3質量%の2-(ジメチルアミノ)-2-メチル-1-プロパノール水溶液(413g)に入れた後、35質量%の2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール水溶液(23.6g)を加え、水性ポリウレタン樹脂分散体(9)を得た。
【0086】
〔合成例10:水性ポリウレタン樹脂分散体(10)〕
撹拌機及び加熱器を備えた反応装置で、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(製品名:PTMG2000;三菱ケミカル株式会社製;数平均分子量1957;水酸基価57.3mgKOH/g、299.4g)と、2,2-ジメチロールプロピオン酸(21.1)と、H12-MDI(135.2)とを、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(80.58g)中、ジブチルスズジラウレート(0.36g)存在下、窒素雰囲気下で、80~90℃で4時間加熱した。残存NCOを定量したところ、OH転化率98%以上であった。反応混合物を80℃にした後、トリエチルアミン(15.8g)を加え、30分撹拌した。反応混合物のうち、515.8gを抜き出し、強撹拌しながら水(909.2g)に入れた後、35質量%の2-アミノエタノール水溶液(16.3g)、35質量%の2-メチル-1,5-ペンタンジアミン水溶液(49.0g)を加え、水性ポリウレタン樹脂分散体(10)を得た。
【0087】
〔合成例11:水性ポリウレタン樹脂分散体(11)〕
35質量%の2-アミノエタノール水溶液の代わりに、35質量%のN,N-ジアミノエタノール水溶液(16.8g)を用いたこと以外は、合成例10と同様にして合成し、水性ポリウレタン樹脂分散体(11)を得た。
【0088】
〔合成例12:水性ポリウレタン樹脂分散体(12)の合成〕 撹拌機及び加熱器を備えた反応装置で、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(製品名:PTMG2000;三菱ケミカル株式会社製;数平均分子量1955;水酸基価57.4mgKOH/g、280g)と、2,2-ジメチロールプロピオン酸(19.2g)と、IPDI(113g)とを、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(89.1g)中、ジブチルスズジラウレート(0.3g)存在下、窒素雰囲気下で、80~90℃で4時間加熱した。残存NCOを定量したところ、OH転化率98%以上であった。反応混合物を80℃にした後、トリエチルアミン(15.3g)を加え、30分撹拌した。反応混合物のうち、236gを抜き出し、強撹拌しながら水(403g)に入れた後、35質量%の2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール水溶液(22.2g)を加え、水性ポリウレタン樹脂分散体(12)を得た。
【0089】
〔合成例13:水性ポリウレタン樹脂分散体(13)〕
撹拌機及び加熱器を備えた反応装置で、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(製品名:PTMG2000;三菱ケミカル株式会社製;数平均分子量1955;水酸基価57.4mgKOH/g、311g)と、2,2-ジメチロールプロピオン酸(22.9g)と、H12-MDI(145g)とを、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(102g)中、ジブチルスズジラウレート(0.5g)存在下、窒素雰囲気下で、80~90℃で4時間加熱した。残存NCOを定量したところ、OH転化率98%以上であった。反応混合物を80℃にした後、トリエチルアミン(18.1g)を加え、30分撹拌した。反応混合物のうち、235gを抜き出し、強撹拌しながら水(398g)に入れた後、35質量%の2-アミノエタノール水溶液(17.3g)、35質量%の2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール水溶液(15.3g)を加え、水性ポリウレタン樹脂分散体(13)を得た。
【0090】
〔合成例14:水性ポリウレタン樹脂分散体(14)〕
撹拌機及び加熱器を備えた反応装置で、ポリカーボネートジオール(製品名:ETERNACOLL(登録商標)PH-200;宇部興産株式会社製;数平均分子量1958;水酸基価57.3mgKOH/g、1,5-ペンタンジオールと1,6-ヘキサンジオールと炭酸ジメチルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール、201g)と、2,2-ジメチロールプロピオン酸(13.8g)と、H12-MDI(82.4g)とを、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(97.9g)中、ジブチルスズジラウレート(0.2g)存在下、窒素雰囲気下で、80~90℃で4時間加熱した。残存NCOを定量したところ、OH転化率98%以上であった。反応混合物を80℃にした後、トリエチルアミン(10.8g)を加え、30分撹拌した。反応混合物のうち、371gを抜き出し、強撹拌しながら水(544g)に入れた後、35質量%の2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール水溶液(24.8g)を加え、水性ポリウレタン樹脂分散体(14)を得た。
【0091】
〔合成例15:水性ポリウレタン樹脂分散体(15)〕
撹拌機及び加熱器を備えた反応装置で、ポリカーボネートジオール(製品名:ETERNACOLL(登録商標)UP-200;宇部興産株式会社製;数平均分子量1950;水酸基価57.5mgKOH/g、2-メチル-1,3-プロパンジオールと炭酸エステルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール、200g)と、2,2-ジメチロールプロピオン酸(13.2g)と、IPDI(68.7g)とを、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(91.7g)中、ジブチルスズジラウレート(0.2g)存在下、窒素雰囲気下で、80~90℃で4時間加熱した。残存NCOを定量したところ、OH転化率98%以上であった。反応混合物を80℃にした後、トリエチルアミン(10.3g)を加え、30分撹拌した。反応混合物のうち、348gを抜き出し、強撹拌しながら水(511g)に入れた後、35質量%の2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール水溶液(23.0g)を加え、水性ポリウレタン樹脂分散体(15)を得た。
【0092】
〔合成例16:水性ポリウレタン樹脂分散体(16)〕
撹拌機及び加熱器を備えた反応装置で、ポリカーボネートジオール(製品名:ETERNACOLL(登録商標)UM-180(1/3);宇部興産株式会社製;数平均分子量1931;水酸基価58.1mgKOH/g、1,4-シクロヘキサンジメタノール及び1,6-ヘキサンジオール(モル比で1:3)と炭酸ジメチルとを反応させて得られたポリカーボネートポリオール、201g)と、2,2-ジメチロールプロピオン酸(13.4g)と、IPDI(75.6g)とを、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(98.4g)中、ジブチルスズジラウレート(0.2g)存在下、窒素雰囲気下で、80~90℃で4時間加熱した。残存NCOを定量したところ、OH転化率98%以上であった。反応混合物を80℃にした後、トリエチルアミン(10.5g)を加え、30分撹拌した。反応混合物のうち、374gを抜き出し、強撹拌しながら水(542g)に入れた後、35質量%の2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール水溶液(33.5g)を加え、水性ポリウレタン樹脂分散体(16)を得た。
【0093】
〔合成例17:水性ポリウレタン樹脂分散体(17)〕
35質量%の2-アミノエタノール水溶液の代わりに、35質量%の2-メチル-1,5-ペンタンジアミン水溶液(87.9g)を加えたこと以外は、合成例1と同様に合成し、水性ポリウレタン樹脂分散体(17)を得た。
【0094】
【表1】
【0095】
表1中の略語は以下の通りである。
<ポリオール(a)>
UH-200:1,6-ヘキサンジオールと炭酸ジメチルとを反応させて得られるポリカーボネートポリオール(数平均分子量:約2000、宇部興産製)
UH-300:1,6-ヘキサンジオールと炭酸ジメチルとを反応させて得られるポリカーボネートポリオール(数平均分子量:約3000、宇部興産製)
PTMG2000:ポリテトラメチレンエーテルグリコール(数平均分子量:約2000、三菱化学製)
PH-200:1,5-ペンタンジオールと1,6-ヘキサンジオールと炭酸ジメチルとを反応させて得られるポリカーボネートポリオール(数平均分子量:約2000、宇部興産製)
UP-200:2-メチル-1,3-プロパンジオールと炭酸ジメチルとを反応させて得られるポリカーボネートポリオール(数平均分子量:約2000、宇部興産製)
UM-180:1,6-ヘキサンジオールとシクロヘキサンジメタノールと炭酸ジメチルとを反応させて得られるポリカーボネートポリオール(数平均分子量:約1800、宇部興産製)
<ポリイソシアネート(b)>
H12-MDI:4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート
IPDI:イソホロンジイソシアネート
<酸性基含有ポリオール(c)>
DMPA:2,2-ジメチロールプロピオン酸
<水酸基含有ポリアミン(d)>
AEEA: 2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール
<水酸基含有モノアミン(e)>
EA:2―アミノエタノール
DEA:N,N-ジエタノールアミン
<鎖延長剤(f)>
MPMD:2-メチル-1,5-ペンタンジアミン
DETA:ジエチレントリアミン
<末端停止剤(g)>
DMPZ:3,5-ジメチルピラゾール
<中和剤(c’)>
TEA:トリエチルアミン
DMAE:N,N-ジメチル-2-アミノエタノール
DMAMP:2-(ジメチルアミノ)-2-メチル-1-プロパノール
【0096】
〔実施例1〕
水性ポリウレタン樹脂(1)(10g)にデュラネート(登録商標)WT30-100(0.15g)を加え、ミキサーで2分間攪拌混合し、水性樹脂組成物を得た。
〔比較例2〕
水性ポリウレタン樹脂(17)(10g)にデュラネート(登録商標)WT30-100(0.15g)を加え、ミキサーで2分間攪拌混合し、水性樹脂組成物を得た。
【0097】
〔実施例2~30〕
表2の記載の割合(NCO/OH比)で、水性ポリウレタン樹脂分散体にイソシアネート基含有化合物を加え、ミキサーで2分間攪拌混合し、水性樹脂組成物を得た。
【0098】
【表2】
【0099】
表1中の略語は以下の通りである。
<水性ポリウレタン樹脂分散体>
PUD:水性ポリウレタン樹脂分散体
<イソシアネート基含有化合物>
WT30-100:デュラネート(登録商標)WT30-100(旭化成ケミカルズ製)
WE50-100:デュラネート(登録商標)WE50-100(旭化成ケミカルズ製)
WB40-100:デュラネート(登録商標)WB40-100(旭化成ケミカルズ製)
M-501:Easaqua(登録商標)M-501(Vencorex chemicals製)
M-502:Easaqua(登録商標)M-501(Vencorex chemicals製)
XL-600:Easaqua(登録商標)XL-600(Vencorex chemicals製)
XD-401:Easaqua(登録商標)XD-401(Vencorex chemicals製)
XD-803:Easaqua(登録商標)XD-803(Vencorex chemicals製)
【0100】
【表3】
【0101】
【表4】
【0102】
【表5】
【0103】
【表6】
【0104】
各表中の略語は以下の通りである。
ABS:ABS樹脂
PC:ポリカーボネート樹脂
EPDM:エチレンプロピレンジエンゴム
PET:ポリエチレンテレフタレート樹脂
また、各表中の密着性(80℃、45分)、密着性(80℃、15分)及び耐薬品性(80℃、45分)のかっこ内は、塗膜の形成条件を示す。各表中の評価項目の「-」は未評価を示す。
【0105】
表3の実施例1~9と比較例1、2及び表4の実施例1,3と比較例1、2の比較より、本願発明に係る水性樹脂組成物を80℃で45分間加熱して形成された塗膜は、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂及びエチレンプロピレンジエゴムへの密着性が優れていることが分かる。
更に、表5の実施例1、2、10、11より、本願発明に係る水性樹脂組成物を80℃で15分間加熱して形成された膜は、低温でかつ短時間の加熱条件下においても、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂及びポリエチレンテレフタレート樹脂への密着性に優れた塗膜を得ることができることが分かる。
また、表6の実施例2、6、9、11、12と比較例2の比較より、本願発明に係る水性樹脂組成物から得られる塗膜は、耐薬品性にも優れていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明の水性樹脂組成物は、低温加熱処理条件下で基材に対する優れた密着性を有し、コーティング剤、積層体等の原料として広く利用できる。