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特許7508768静電荷像現像用トナー、画像形成方法及び画像形成装置
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  • 特許-静電荷像現像用トナー、画像形成方法及び画像形成装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】静電荷像現像用トナー、画像形成方法及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/097 20060101AFI20240625BHJP
   G03G 15/08 20060101ALI20240625BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
G03G9/097 374
G03G9/097 375
G03G9/097 371
G03G15/08 220
G03G21/00 318
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019198542
(22)【出願日】2019-10-31
(65)【公開番号】P2021071614
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-09-20
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 幸治
(72)【発明者】
【氏名】小原 慎也
(72)【発明者】
【氏名】櫻田 育子
【審査官】中山 千尋
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-097161(JP,A)
【文献】特開2018-141957(JP,A)
【文献】特開2019-158901(JP,A)
【文献】特開2018-180268(JP,A)
【文献】特表2011-507049(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/097
G03G 15/08
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともトナー母体粒子及び外添剤を含有する静電荷像現像用トナーであって、
前記外添剤として、少なくとも無機粒子A及びシリカ粒子Bを含有する粒子であり、
前記無機粒子Aが、チタン酸カルシウムを含有し、かつ、当該無機粒子Aの一次粒子の個数平均粒径が50~75nmの範囲内であり、
前記シリカ粒子Bが、一次粒子の個数平均粒径が60~120nmの範囲内であり、かつ、当該シリカ粒子Bの円形度が0.95~1.00の範囲内であることを特徴とする静電荷像現像用トナー。
【請求項2】
前記無機粒子Aと前記シリカ粒子Bの一次粒子の個数平均粒径の比の値R(無機粒子Aの一次粒子の個数平均粒径/シリカ粒子Bの一次粒子の個数平均粒径)が、下記関係式(1)を満たすことを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
関係式(1) 0.58≦R
【請求項3】
前記無機粒子Aがシランカップリング剤により疎水化処理されており、当該シランカップリング剤が、下記一般式(1)で表される構造を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の静電荷像現像用トナー。
一般式(1): X-Si(OR)
(式中、Xは炭素数2~8のアルキル基、Rはメチル基又はエチル基を示す。)
【請求項4】
前記外添剤がアルミナ粒子を含有し、当該アルミナ粒子の一次粒子の個数平均粒径が10~20nmの範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項5】
前記トナー母体粒子の平均円形度が、0.955~0.985の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項6】
請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナーを用いることを特徴とする画像形成方法。
【請求項7】
請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナーを用いる画像形成装置であって、
少なくとも電子写真感光体と、前記電子写真感光体の表面を帯電させる帯電手段と、当該電子写真感光体の表面に静電荷像を形成する露光手段と、前記静電荷像を、前記静電荷像現像用トナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段と、前記トナー像を転写材に転写する転写手段と、前記転写材に転写されたトナー像を定着させる定着手段と、前記電子写真感光体上の残留する前記静電荷像現像用トナーを除去するクリーニング手段とを備え、
さらに、前記電子写真感光体の表面に滑剤を塗布する滑剤塗布機構を有することを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電荷像現像用トナー、画像形成方法及び画像形成装置に関し、より詳しくは、外添剤のトナーからの脱離による電子写真感光体のクリーニング性の劣化と外添剤のすり抜けに起因するハーフトーン画像における縦筋の画像不良とを抑制した静電荷像現像用トナー及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年商業印刷分野におけるデジタル印刷の普及に伴い、特に当該デジタル印刷においては、高画質な画像を安定して、かつ高速で出力することが求められている。また、温湿度環境が変化した場合でも、高速で安定した画像が得られることが求められている。
【0003】
商業印刷分野におけるデジタル印刷(プロダクションプリント)は、少部数で必要時にその都度繰り返し出力することが可能であるという利点がある一方で、ユーザーの要求は多様化してきている。電子写真画像形成システムは、そのニーズを達成できる一出力手段であり、特にデジタル印刷では写真画像を容易に取り込めることから、ユーザーの画像品質に対する要求は高く、メーカーも日々研鑽を重ねている状況である。
【0004】
前記電子写真画像形成システムにおいて、静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」ともいう。)として、小粒径のケミカルトナーの採用は、高画質化を達成できる一手段である。しかし、一方で、小粒径になるほどクリーニングブレードによる電子写真感光体(以下、単に「感光体」ともいう。)上の転写後の残留トナーの除去は困難となり、あらゆる使用環境においてクリーニング性能の確保が大きな問題となっている。
【0005】
小粒径のケミカルトナーのクリーニング性能向上の一改良手段として、数平均一次粒径が30~150nmの範囲内のゾル・ゲル法によるシリカ粒子を外添剤として添加する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この技術によれば感光体上へのトナーの過度な付着を抑え、クリーニングブレードによるトナーの除去が容易になる。
【0006】
一方で、上記粒径のシリカ粒子は比較的粒径としては大きく、トナーから、脱離しやすい。このことにより、例えば、縦帯を連続で印刷した際に、縦帯部で脱離するシリカ粒子が多くなり、感光体上の縦帯部の滑剤を研磨することで、その部分だけ、感光体の電位がわずかに変化し、その後のハーフトーン画像にて、縦筋の画像不良となってしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2014-44287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、外添剤のトナーからの脱離による電子写真感光体のクリーニング性の劣化と外添剤のすり抜けに起因するハーフトーン画像における縦筋の画像不良とを抑制した静電荷像現像用トナー及び画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、外添剤が特定種の2種類の粒子A及びBを含有し、当該粒子Aの一次粒子の個数平均粒径が特定の範囲内であり、当該粒子Bの一次粒子の個数平均粒径及び円形度が特定の範囲内である静電荷像現像用トナーによって、外添剤のトナーからの脱離による電子写真感光体のクリーニング性の劣化と外添剤のすり抜けに起因するハーフトーン画像における縦筋の画像不良とを抑制した静電荷像現像用トナー及び画像形成装置が得られることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
【0011】
1.少なくともトナー母体粒子及び外添剤を含有する静電荷像現像用トナーであって、
前記外添剤として、少なくとも無機粒子A及びシリカ粒子Bを含有する粒子であり、
前記無機粒子Aが、チタン酸カルシウムを含有し、かつ、当該無機粒子Aの一次粒子の個数平均粒径が50~75nmの範囲内であり、
前記シリカ粒子Bが、一次粒子の個数平均粒径が60~120nmの範囲内であり、かつ、当該シリカ粒子Bの円形度が0.95~1.00の範囲内であることを特徴とする静電荷像現像用トナー。
【0012】
2.前記無機粒子Aと前記シリカ粒子Bの一次粒子の個数平均粒径の比の値R(無機粒子Aの一次粒子の個数平均粒径/シリカ粒子Bの一次粒子の個数平均粒径)が、下記関係式(1)を満たすことを特徴とする第1項に記載の静電荷像現像用トナー。
関係式(1) 0.58≦R
【0013】
3.前記無機粒子Aがシランカップリング剤により疎水化処理されており、当該シランカップリング剤が、下記一般式(1)で表される構造を有することを特徴とする第1項又は第2項に記載の静電荷像現像用トナー。
一般式(1): X-Si(OR)
(式中、Xは炭素数2~8のアルキル基、Rはメチル基又はエチル基を示す。)
【0015】
.前記外添剤がアルミナ粒子を含有し、当該アルミナ粒子の一次粒子の個数平均粒径が10~20nmの範囲内であることを特徴とする第1項から第項までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー。
【0016】
.前記トナー母体粒子の平均円形度が、0.955~0.985の範囲内であることを特徴とする第1項から第項までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー。
【0017】
.第1項から第項までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナーを用いることを特徴とする画像形成方法。
【0018】
.第1項から第項までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナーを用いる画像形成装置であって、
少なくとも電子写真感光体と、前記電子写真感光体の表面を帯電させる帯電手段と、当該電子写真感光体の表面に静電荷像を形成する露光手段と、前記静電荷像を、前記静電荷像現像用トナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段と、前記トナー像を転写材に転写する転写手段と、前記転写材に転写されたトナー像を定着させる定着手段と、前記電子写真感光体上の残留する前記静電荷像現像用トナーを除去するクリーニング手段とを備え、
さらに、前記電子写真感光体の表面に滑剤を塗布する滑剤塗布機構を有することを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0019】
本発明の上記手段により、外添剤のトナーからの脱離による電子写真感光体のクリーニング性の劣化と外添剤のすり抜けに起因するハーフトーン画像における縦筋の画像不良とを抑制した静電荷像現像用トナー、画像形成方法及び画像形成装置を提供することができる。
【0020】
本発明の効果の発現機構ないし作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
【0021】
本発明の静電荷像現像用トナーに含有される外添剤として、無機粒子Aであるチタン酸カルシウム及びチタン酸バリウムの比重はそれぞれ4.0g/cm前後、6.0g/cm前後と高く、これら比重の高い外添剤とシリカ粒子Bを一緒に外添した場合、シリカ粒子Bのトナーに対する付着強度が高くなることが分かった。
【0022】
これは、外添時にトナーに付着したチタン酸カルシウム又はチタン酸バリウムが別のトナーに付着したシリカ粒子など、他の外添剤と衝突する際に、おそらく比重が大きいことにより、チタン酸カルシウム又はチタン酸バリウムはトナー上を移動せずに、衝突時のエネルギーロスを緩和して、シリカ粒子Bのトナーに対する付着強度を高くすることができるものと推察される。
【0023】
その結果、縦帯を連続で印刷した際に、縦帯部でトナーから脱離するシリカ粒子を少なくすることができ、感光体上の縦帯部の滑剤を研磨することによる画像不良を抑制できるものと考えられる。また、トナーから脱離するシリカ粒子を少なくすることによって、感光体上へのトナーの過度な付着を抑え、クリーニングブレードによるトナーの除去が容易になるものと考えられる。
【0024】
一方で比重の高い一般的な外添剤として、無機粒子であるチタニアも知られているが、チタニアはチタン酸カルシウム又はチタン酸バリウム(モース硬度3~5)に対して、モース硬度が5.5~7.5と高い。そのため、それ自身がトナーから外れた際に、感光体上の滑剤を研磨しやすく、結果として、画像不良を起こしやすいと考えられる。したがって、本発明に係る画像不良を改善する効果は、外添剤に用いる無機粒子のモース硬度がやや低いチタン酸カルシウム及びチタン酸バリウムを採用することも寄与していると推察される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】画像形成装置の一例を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の静電荷像現像用トナーは、少なくともトナー母体粒子及び外添剤を含有する静電荷像現像用トナーであって、前記外添剤として、少なくとも無機粒子A及びシリカ粒子Bを含有する粒子であり、前記無機粒子Aが、チタン酸カルシウム又はチタン酸バリウムを含有し、かつ、当該無機粒子Aの一次粒子の個数平均粒径が40~80nmの範囲内であり、前記シリカ粒子Bが、一次粒子の個数平均粒径が60~120nmの範囲内であり、かつ、当該シリカ粒子Bの円形度が0.95~1.00の範囲内であることを特徴とする。この特徴は、下記実施態様に共通する又は対応する技術的特徴である。
【0027】
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、前記無機粒子Aと前記シリカ粒子Bの一次粒子の個数平均粒径の比の値Rが、前記関係式(1)を満たすことが好ましく、無機粒子Aの粒径がシリカ粒子Bに対して0.58以上であると、無機粒子Aとシリカ粒子Bの衝突の際に、無機粒子Aがシリカ粒子Bの凹部にはまりにくくなり、十分な衝突のエネルギーが得られ、結果として、トナーからのシリカ粒子Bの脱離を防ぎ、縦筋の画像不良耐性が高くなる。
【0028】
前記無機粒子Aがシランカップリング剤により疎水化処理されており、当該シランカップリング剤が、前記一般式(1)で表される構造を有することが、疎水化によるトナーの分散性を向上し、電子写真感光体のクリーニング性能を向上する観点から、好ましい。
【0029】
前記無機粒子Aの一次粒子の個数平均粒径が、50~75nmの範囲内であることが好ましい。50nm以上であれば、現像機内での機械的衝撃力などにより無機粒子Aのトナー表面への埋没を抑制し、シリカ粒子Bのトナーに対する付着強度を高くする。また、75nm以下であれば、同一添加量における無機粒子Aの個数を増やせることにより、シリカ粒子Bのトナーに対する付着強度を高くする。
【0030】
また、前記外添剤がアルミナ粒子を含有し、当該アルミナ粒子の一次粒子の個数平均粒径が10~20nmの範囲内であることが好ましく、アルミナ粒子はモース硬度が9と非常に高く、外添する際にアルミナ粒子が存在することで、チタン酸カルシウム又はチタン酸バリウムの解砕を促進させ、トナー粒子への分散性を向上させ、前記シリカ粒子Bをトナーに埋め込む効果が大きくなる。10nm以上であれば、解砕の効果が大きくなり、また、20nm以下であれば、トナー粒子からの脱離がしにくくなり、感光体上の滑剤の研磨を抑制することができる。
【0031】
前記トナー母体粒子の平均円形度が、0.955~0.985の範囲内であることが好ましく、トナー母体粒子の円形度が高い方が、トナーのくぼみにチタン酸カルシウム又はチタン酸バリウムがとどまることが少なくなるので、上記シリカ粒子のトナーへの埋め込みの効果は大きい。ただし、トナー自身のクリーニング性を維持する上で、円形度の上限は、0.985以下であることが好ましい。
【0032】
本発明の画像形成方法は、本発明の静電荷像現像用トナーを用い、さらに本発明の画像形成装置は、少なくとも電子写真感光体と、前記電子写真感光体の表面を帯電させる帯電手段と、当該電子写真感光体の表面に静電荷像を形成する露光手段と、前記静電荷像を、本発明の静電荷像現像用トナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段と、前記トナー像を転写材に転写する転写手段と、前記転写材に転写されたトナー像を定着させる定着手段と、前記電子写真感光体上の残留トナーを除去するクリーニング手段とを備え、さらに、前記電子写真感光体の表面に滑剤を塗布する滑剤塗布機構を有することを特徴とする。
【0033】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0034】
≪本発明の静電荷像現像用トナーの概要≫
本発明の静電荷像現像用トナーは、少なくともトナー母体粒子及び外添剤を含有する静電荷像現像用トナーであって、前記外添剤として、少なくとも無機粒子A及びシリカ粒子Bを含有する粒子であり、前記無機粒子Aが、チタン酸カルシウム又はチタン酸バリウムを含有し、かつ、当該無機粒子Aの一次粒子の個数平均粒径が40~80nmの範囲内であり、前記シリカ粒子Bが、一次粒子の個数平均粒径が60~120nmの範囲内であり、かつ、当該シリカ粒子Bの円形度が0.95~1.00の範囲内であることを特徴とする。
【0035】
「一次粒子の個数平均粒径」は、無機粒子A及びシリカ粒子Bの走査型電子顕微鏡像を撮影し、この写真画像をスキャナーにより取り込む。画像処理解析装置LUZEX AP(株式会社ニレコ製)を用いて、それぞれについて2値化処理し、1種類の粒子につき無作為に100個の粒子を抽出し、水平方向フェレ径を算出し、その平均値を個数平均一次粒径とする。
【0036】
無機粒子Aの一次粒子の個数平均粒径は40~80nmの範囲内であるが、個数平均粒径が40nmより小さい場合には、外添剤として粒子一個当たりの質量が低下するため、外添時のトナー上での、無機粒子Aのシリカ粒子Bに対する衝突によるシリカ粒子Bの埋め込み効果が少なく、結果としてシリカ粒子Bのトナーに対する付着強度を低下すると考えられる。また、80nmより大きい場合には、同一添加量における無機粒子Aの個数が減少することと、トナーへの付着強度が弱くなることで、やはりシリカ粒子Bのトナーに対する付着強度を低下する。好ましくは、前述のとおり50~75nmの範囲内である。
【0037】
前述のとおり、前記無機粒子Aと前記シリカ粒子Bの一次粒子の個数平均粒径の比の値Rが、前記関係式(1)を満たすことが好ましく、無機粒子Aの粒径がシリカ粒子の粒径に対して0.58以上であると、無機粒子Aが小さ過ぎず、トナーへの外添時にトナー上で、当該無機粒子Aとシリカ粒子の衝突の際に、無機粒子Aがシリカ粒子の凹部にはまりにくくなり、十分な衝突のエネルギーが得られ、結果として、シリカ粒子Bのトナーに対する付着強度を高くし、縦筋画像不良耐性が高くなる。
【0038】
シリカ粒子Bの一次粒子の個数平均粒径は60~120nmの範囲内であるが、60nmより小さい場合には、トナーのクリーニング性向上への効果が小さくなる。また、120nmより大きい場合には、トナー母体粒子への付着強度が低くなりすぎて、トナー母体粒子から脱離しやすくなり、結果として縦筋画像不良耐性が低くなる。
【0039】
「シリカ粒子Bの円形度」は、シリカ粒子を走査型電子顕微鏡「JSM-7401(JEOL社製)」を用いて10万倍写真を撮影し、この写真画像をスキャナーに取り込む。画像処理解析装置「LUZEX(登録商標) AP」((株)ニレコ製)ソフトウェアバージョン Ver.1.32を用いて、当該写真画像から無作為に抽出した粒子100個についての粒子の投影面積及び粒子の周長から、円形度を算出し、その平均値を粒子の平均円形度とする。
【0040】
円形度=(投影面積の等しい円の周長)/(粒子の周長)
シリカ粒子Bの円形度は、0.95~1.00の範囲であるが、0.95より低い場合には、上記無機粒子Aであるチタン酸カルシウム又はチタン酸バリウムとシリカ粒子Bの衝突の際に、シリカ粒子Bの凹部にはまりやすくなり、十分な衝突のエネルギーを得られづらくなり、結果として、シリカ粒子Bのトナーへの付着強度が低くなり、縦筋画像不良耐性が低くなる。
【0041】
本発明に係るトナー母体粒子の平均円形度は、0.955~0.985の範囲内であることが好ましい。トナー母体粒子の円形度が高い方がくぼみにチタン酸カルシウム又はチタン酸バリウムがとどまらずに、上記シリカ粒子Bのトナー母体粒子への埋め込みの効果は大きい。ただし、0.985以上に円形度を高くすると、トナー自身のクリーニング性が劣化する場合があるため、上限は0.985であることが好ましい。
【0042】
「静電荷像現像用トナー」は、少なくとも結着樹脂と着色剤とからなるトナー母体粒子と、外添剤とを含有することが好ましい。当該トナー母体粒子は、結着樹脂及び着色剤のほか、必要に応じて離型剤、帯電制御剤、又は界面活性剤などの種々の内添剤を含有してもよい。
【0043】
なお、本発明において、「トナー」とは、「トナー粒子」の集合体のことをいい、トナー粒子とは、上述のトナー母体粒子に外添剤を添加したものをいう。また、以下の説明においては、トナー母体粒子とトナー粒子とを特に区別する必要がない場合、単に「トナー粒子」又は「トナー」ともいう。
【0044】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、数値範囲を表す「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用している。
【0045】
〔1〕無機粒子A
本発明に係る無機粒子Aは、チタン酸カルシウム又はチタン酸バリウム(以下チタン酸化合物ともいう。)を含有し、かつ、当該無機粒子Aの一次粒子の個数平均粒径は40~80nmの範囲内である。前記個数平均粒径の範囲の効果は前述のとおりであるが、比較的小径のものを使用することで、同じ添加質量でも個数が多くなり、トナー表面全体に分散しやすいことから、電荷を放出しやすく、定着性や貼り付き性に優れる効果もある。
【0046】
チタン酸カルシウム及びチタン酸バリウムは、チタン以外の金属元素(以下、ドーパントともいう。)がドープされたものであることが、トナー画像に蓄積した電荷を放出する観点から、好ましい。ドーパントは、イオン化したときに、チタン酸化合物粒子を構成する結晶構造に入り得るイオン半径となる金属元素が好ましい。
【0047】
ドーパントとしては、具体的には、ランタノイド、シリカ、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、パラジウム、インジウム、アンチモン、タンタル、タングステン、レニウム、イリジウム、白金、ビスマス、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、銀、錫が挙げられる。ランタノイドとしては、ランタン、セリウムが好ましい。これらの中でも、ドープしやすさの観点から、ランタンが好ましい。
【0048】
本発明に使用可能なチタン酸カルシウム又はチタン酸バリウムは、公知の方法により作製することが可能である。
【0049】
例えば、メタチタン酸と呼ばれる水和物の形態を有する酸化チタン(IV)化合物TiO・HOを経て作製する方法がある。この方法は、前記酸化チタン(IV)化合物を炭酸カルシウム、炭酸バリウム等の炭酸金属塩あるいは金属酸化物と反応させた後、焼成処理によりチタン酸カルシウムに代表されるチタン酸化合物を生成する方法である。なお、メタチタン酸等の酸化チタンの加水分解物は、鉱酸解膠品とも呼ばれ、酸化チタン粒子が分散した液の形態を有するものである。この酸化チタン加水分解物よりなる鉱酸解膠品に水溶性の炭酸金属塩や金属酸化物を添加し、その混合液を50℃以上にしてアルカリ水溶液を添加しながら反応することによりチタン酸化合物が作製される。
【0050】
鉱酸解膠品の代表例の1つメタチタン酸は、亜硫酸SOの含有量が1.0質量%以下、好ましくは0.5質量%以下で、塩酸によりpH0.8~1.5に調整して解膠処理したものである。
【0051】
作製に使用されるアルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム水溶液に代表される苛性アルカリ水溶液が好ましく使用される。
【0052】
チタン酸化合物の製造工程では、酸化チタンの水和物や加水分解物と金属酸化物等の添加比率、反応時における酸化チタン水和物や加水分解物の濃度、アルカリ水溶液添加時の温度や添加速度等を調整して、チタン酸化合物の粒径を制御することができる。また、反応工程で炭酸化合物の生成を防ぐために窒素ガス雰囲気下で反応を行うことが好ましい。 アルカリ水溶液を添加する時の温度は、高いほど結晶性のものが得られるが、実用的には50℃~101℃の範囲が適切である。また、アルカリ水溶液の添加速度は得られるチタン酸化合物の粒子径に影響を与える傾向があり、添加速度が遅いほど粒子径の大きなチタン酸化合物が得られ、添加速度が速いほど粒子径の小さなものが形成される傾向がある。アルカリ水溶液の添加速度は、仕込原料に対し0.001~1.0当量/時、好ましくは0.005~0.5当量/時で、所望の粒子径に応じて適宜調整することが可能である。アルカリ水溶液の添加速度は目的に応じて途中で変更することも可能である。
【0053】
本発明に係る無機粒子Aは、表面が疎水化処理されていることが分散性の観点から、好ましい。
【0054】
疎水化処理剤としては、一般的なシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、各種シリコーンオイル、シリコーンオイルや脂肪酸、脂肪酸金属塩などを用いることができるが、シランカップリング剤が好ましい。
【0055】
シランカップリング剤としては、例えば、クロロシラン、アルコキシシラン、シラザン、特殊シリル化剤等が挙げられる。具体的には、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、N,O-(ビストリメチルシリル)アセトアミド、N,N-ビス(トリメチルシリル)ウレア、tert-ブチルジメチルクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシランを代表的なものとして例示することができる。
【0056】
また、特に、シランカップリング剤は下記一般式(1)で表される構造を有することが好ましい。
【0057】
一般式(1): X-Si(OR)
上記一般式(1)中、Xは炭素数2~8のアルキル基を表す。Rは、メチル基又はエチル基を表す。
【0058】
表面処理方法としては、例えば、気相中で浮遊させられた粒子に対して処理剤又は処理剤を含む溶液を噴霧するスプレードライ法等による乾式法や処理剤を含有する溶液中に粒子を浸漬し、乾燥する湿式法や処理剤と粒子を混合機により混合する混合法などが挙げられる。
【0059】
上記式のアルキル鎖を有するシランカップリング剤を用いることでシランカップリング剤の反応基により、無機粒子表面の水酸基を減らし疎水化することができ、チタン酸カルシウム又はチタン酸バリウム同士の凝集体が減少し、トナー上でのチタン酸カルシウム及びチタン酸バリウムの分散性を向上させることができ、上記シリカをトナーに埋め込む効果が大きくなる。
【0060】
炭素数が8より大きい場合には、シランカップリング剤の未反応物が存在しやすくなることで、無機粒子の凝集体を作りやすく、2より小さい場合には、炭素数が短いことから、そもそもの疎水化度が低く、分散性を向上させづらい。
【0061】
(疎水化度の測定方法)
疎水化度は粉体濡れ性試験機(WET-101P;株式会社レスカ製)を用いて、次のように測定を行い求めることができる。以下、シリカ粒子の疎水化度を測定した例を説明する。
【0062】
実験室環境下、200mLのトールビーカーに長さ20mmのスターラーチップと25℃のイオン交換水60mLとを入れ、粉体濡れ性試験機(WET-101P;株式会社レスカ製)にセットする。イオン交換水の上に無機粒子A50mgを浮かべ、すぐに蓋とメタノール供給ノズルをセットし、スターラー撹拌開始と同時に測定を開始する。メタノール(メタノール 特級;関東化学株式会社製)の供給速度は2.0mL/分、測定時間は70分とする。また、スターラーの撹拌速度は、380~420rpmとする。シリカ粒子は、最初はイオン交換水の界面に浮いているが、メタノール濃度が上昇するにつれて、徐々にイオン交換水とメタノールとの混合液に濡れて液体中に分散する。これにより、液体の光透過率が徐々に低下する。得られたデータから、横軸にメタノールの供給量(mL)から計算されるメタノール濃度(vol%)、縦軸に光透過率(電圧比)(%)をプロットし、光透過率が最大値と最小値の中間となるときのメタノール濃度を「疎水化度」とする。
【0063】
また、シリコーンオイルを疎水化剤として用いることも好ましい。
【0064】
当該シリコーンオイルの具体例としては、例えば、オルガノシロキサンオリゴマー、オクタメチルシクロテトラシロキサン、又はデカメチルシクロペンタシロキサン、テトラメチルシクロテトラシロキサン、テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサンなどの環状化合物や、直鎖状又は分岐状のオルガノシロキサンを挙げることができる。また、側鎖、又は片末端や両末端や側鎖片末端や側鎖両末端などに変性基を導入した反応性の高い、少なくとも末端を変性したシリコーンオイルを用いても良い。変性基の種類としては、アルコキシ、カルボキシル、カルビノール、高級脂肪酸変性、フェノール、エポキシ、メタクリル、アミノなどが挙げられるが特に限定されるものではない。また、例えば、アミノ/アルコキシ変性など数種の変性基を有するシリコーンオイルであっても良い。また、ジメチルシリコーンオイルとこれら変性シリコーンオイル、更には他の表面処理剤とを混合処理若しくは併用処理しても構わない。併用する処理剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、各種シリコーンオイル、脂肪酸、脂肪酸金属塩、そのエステル化物、ロジン酸等を例示することができる。
【0065】
チタン酸化合物粒子の含有量は、例えば、トナー母体粒子100質量部に対して0.1~2.0質量部の範囲内であることが好ましく、0.2~1.0質量部の範囲内であることがより好ましい。0.1質量部以上であると、本発明の効果をより確実に得ることができる。2.0質量部以下であると、低カバレッジ印刷時に現像機内で現像剤が撹拌された際のトナー粒子とキャリア粒子の衝撃をチタン酸化合物粒子が受ける確率を低く抑えることができるので、チタン酸化合物粒子のトナー母体粒子への埋没を起こりにくくすることができる。
【0066】
〔2〕シリカ粒子B
本発明に係るシリカ粒子Bは、一次粒子の個数平均粒径が60~120nmの範囲内であり、かつ、当該シリカ粒子Bの円形度が0.95~1.00の範囲内である。
【0067】
前記個数平均粒径の範囲及び円形度の範囲の効果は前述のとおりである。他の外添剤に比べて粒子径が大きいため、スペーサーとしての役割を有するため、トナーが現像装置中で撹拌されているときに、より小さな他の外添剤がトナー母体粒子に埋め込まれることを防止する観点からも好ましい。また、トナー母体粒子同士の融着を防止する観点からも好ましい。
【0068】
前記無機粒子Aと前記シリカ粒子Bの一次粒子の個数平均粒径の比の値R(無機粒子Aの一次粒子の個数平均粒径/シリカ粒子Bの一次粒子の個数平均粒径)が、下記関係式(1)を満たすことが、好ましい。
関係式(1) 0.58≦R
【0069】
この範囲であれば、シリカ粒子Bに対して無機粒子Aが小さ過ぎないため、無機粒子Aとシリカ粒子Bの衝突の際に、無機粒子Aがシリカ粒子Bの凹部にはまることなく、十分な衝突のエネルギーが得られやすく、結果としてシリカ粒子Bの付着強度が向上しやすい。
【0070】
シリカ粒子の製造方法としては、公知の製造方法、すなわち燃焼法、アーク法、溶融法などの乾式法によるもの、沈降法、ゲル法、ゾル・ゲル法などの湿式法などによるものが挙げられる。これらの製造方法のうち溶融法、ゾル・ゲル法は形状が球形のシリカ粒子を得られやすい点で、より好ましく、更には、粒度分布の狭さからゾル・ゲル法が好ましい。従って、このようなシリカ粒子を外添剤の原材料として用いることにより、トナー粒子表面の帯電性を均一なものとすることができる。
【0071】
(ゾル・ゲル法)
ゾル・ゲル法によって作製されるシリカ粒子は、ヒドロカルビルオキシシラン化合物(アルコキシシラン化合物やフェノキシシラン化合物など)の加水分解により作製される。
【0072】
ゾル・ゲル法によってシリカ粒子を作製し、その後、表面処理することによりシリカ粒子を作製する方法としては、例えば、以下の手順が挙げられる。
(1)アンモニア水を触媒に用い、テトラメトキシシランあるいはテトラエトキシシランを、温度をかけながら水とアルコールの混合溶媒中に滴下し撹拌を行うことで反応させる。このようにしてシリカゾル懸濁液を形成する。
(2)反応により形成されたシリカゾル懸濁液を遠心分離し、湿潤シリカゲルとアルコール、アンモニア水に分離する。
(3)湿潤シリカゲルに溶剤を添加して再度シリカゾルの状態にし、疎水化処理剤を添加することによりシリカコア材表面の疎水化処理を行う。
(4)疎水化処理を行ったシリカゾルから溶媒を除去し、乾燥、シーブを行うことにより、目的のシリカ粒子が得られる。
【0073】
ゾル・ゲル法で作製されるシリカコア材の平均一次粒径は、加水分解時や縮重合時に原料のアルコキシシラン、アンモニア、アルコール、水等の化合物の添加量や反応温度、撹拌速度、供給速度等の制御により所望の粒径にできる。
【0074】
シリカ粒子Bの添加割合は、トナー母体粒子100質量部に対して0.5~5.0質量部であることが好ましく、より好ましくは1.0~3.0質量部である。これらのシリカ粒子Bは疎水化処理剤で表面処理されていてもよい。
【0075】
疎水化処理剤としては、前述の一般的なシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、各種シリコーンオイル、シリコーンオイルや脂肪酸、脂肪酸金属塩などを用いることができるが、前記一般式(1)で表されるシランカップリング剤が好ましい。
【0076】
〔3〕アルミナ粒子
アルミナとは、Alで表される酸化アルミニウムをさすものであり、α型、γ型、σ型、またその混合体等の形態が知られており、形状としてもその結晶系の制御によって立方形状のものから球状のものまである。
【0077】
アルミナは、公知の方法により作製することができる。アルミナを作製する方法としては、バイヤー法が一般的であるが、高純度かつナノサイズのアルミナを得るために、加水分解法(住友化学製)、気相合成法(シーアイ化成製)、火炎加水分解法(日本アエロジル製)、水中火花放電法(岩谷化学製)等が挙げられる。
【0078】
アルミナ粒子の形状は、既存の溶射技術を基本とし、水素、天然ガス、アセチレンガス、プロパンガス、ブタン等の燃料ガスとで形成された高温火炎中に原料粉末を投入し、溶融球状化させることによって制御することができる。
【0079】
また、アルミナ原料粉末を火炎中に投入するときの供給方法は、キャリアガスに酸素、空気、窒素、アルゴン等を用いた乾式又は、水、メタノール、エタノール等を分散媒としたスラリーを用いた湿式でもよい。
【0080】
その製造装置の一例は、球状化炉と、その炉に接続された捕集装置とを基本構成としているものである。球状化炉で製造された球状アルミナ粉末は、ブロワー等にて空気輸送され捕集装置で回収される。球状化炉本体と輸送配管等は水冷ジャケット方式で水冷されていることが好ましい。捕集装置としては、サイクロン、重力沈降、ルーバー、バグフィルター等が用いられる。捕集温度は、可燃ガスの量による発熱量とブロワーの吸引量によって決定され、その調整は冷却水量や、ライン内に設けられた外気の取り入れ量等で行われる。
【0081】
アルミナ粒子の形状、粒径は、反応条件、たとえば火炎温度、水素又は酸素の含有率、アルミナ原料粉末の品質、火炎中での滞留時間又は凝集ゾーンの長さによって変更することができる。
【0082】
また、アルミナ表面は疎水化処理されていることが好ましい。環境差による変動の抑制とキャリアへ移行した際の帯電量変動を抑制することができる。表面処理に関しては、前述の通りである。
【0083】
アルミナ粒子はモース硬度が9と非常に高く、外添する際にアルミナ粒子が存在することで、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウムの解砕を促進させ、トナーへの分散性を向上させ、前記シリカ粒子をトナーに埋め込む効果が大きくなる。
【0084】
10nmよりも小さい場合には、解砕の効果が低くなり、また、20nmよりも大きい場合には、トナーからの脱離しやすくなり、感光体上の滑剤を研磨しやすくなるため、好ましいアルミナ粒子の一次粒子の個数平均粒径は、10~20nmの範囲内である。
【0085】
〔4〕トナー母体粒子
本発明に係るトナー母体粒子は、少なくとも結着樹脂と着色剤とからなるトナー母体粒子と、外添剤とを含有することが好ましい。当該トナー母体粒子は、結着樹脂及び着色剤のほか、必要に応じて離型剤、帯電制御剤、又は界面活性剤などの種々の内添剤を含有してもよい。
【0086】
〔4.1〕結着樹脂
本発明に係るトナー母体粒子は、非晶性樹脂と結晶性樹脂とを含有することが好ましく、非晶性樹脂はポリエステル樹脂又はビニル樹脂であることがより好ましい。また、本発明に係るトナー母体粒子は、着色剤を含有し、さらに必要に応じて、離型剤(ワックス)及び荷電制御剤などの他の構成成分を含有してもよい。
【0087】
本発明では、結着樹脂全体に対して非晶性樹脂を50~70質量%、結晶性樹脂を5~30質量%の範囲内で含有することが好ましい。
【0088】
<結晶性樹脂>
本発明において、結晶性樹脂とは、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱変化ではなく、明確な吸熱ピークを有する樹脂をいう。明確な吸熱ピークとは、具体的には、示差走査熱量測定(DSC)において、昇温速度10℃/分で測定した際に、吸熱ピークの半値幅が15℃以内であるピークのことを意味する。
【0089】
結晶性樹脂の融点Tmcは、十分な高温保存性を得る観点から60℃以上であることが好ましく、十分な低温定着性を得る観点から85℃以下であることが好ましい。
【0090】
結晶性樹脂の融点Tmcは、DSCにより測定することができる。具体的には、結晶性樹脂の試料0.5mgをアルミニウム製パン「KITNO.B0143013」に封入し、熱分析装置「Diamond DSC」(パーキンエルマー社製)のサンプルホルダーにセットして、10℃/分の昇温速度で0℃から200℃まで昇温し、得られた吸熱曲線における吸熱ピークのピークトップの温度を結晶性樹脂の融点(Tmc)として測定する。
【0091】
トナー母体粒子に対する結晶性樹脂の含有量は、十分な低温定着性を得る観点から、5~30質量%の範囲内であることが好ましく、7~20質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0092】
当該含有量が5質量%以上である場合、十分な可塑効果が得られ、低温定着性が十分となる。また、当該含有量が20質量以下である場合、トナーとしての熱的安定性や物理的なストレスに対する安定性が十分となる。
【0093】
結晶性樹脂としては、特に限定されないが、ポリオレフィン系樹脂、ポリジエン系樹脂及びポリエステル系樹脂が挙げられる。これらの中でも十分な低温定着性及び光沢均一性を得ることができ、かつ、使い易さの観点から結晶性ポリエステル樹脂であることが好ましい。
【0094】
また、結晶性樹脂の数平均分子量(Mn)は、2500~5000の範囲内であることが好ましく、3000~4500の範囲内であることがより好ましい。これらの範囲内とすることで、結晶性樹脂の溶液粘度を上述した好適範囲に調整することができる。また、定着画像の強度が不足することがなく、現像液撹拌中に結晶性樹脂が粉砕されたり、過度な可塑効果によりトナーのガラス転移温度Tgが低下して、トナーの熱的安定性が低下することもない。また、シャープメルト性が発現し、低温定着が可能となる。
【0095】
上記Mnは、以下のようにゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した分子量分布から求めることができる。
【0096】
試料を濃度0.1mg/mLとなるようにテトラヒドロフラン(THF)中に添加し、40℃まで加温して溶解させた後、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターで処理して、試料液を調製する。GPC装置HLC-8220GPC(東ソー社製)及びカラム「TSKgelSuperH3000」(東ソー社製)を用い、カラム温度を40℃に保持しながら、キャリア溶媒としてTHFを流速0.6mL/分で流す。キャリア溶媒とともに、調製した試料液100μLをGPC装置内に注入し、示差屈折率検出器(RI検出器)を用いて試料を検出する。そして、単分散のポリスチレン標準粒子の10点を用いて測定した検量線を用いて、試料の分子量分布を算出する。このとき、データ解析において、上記フィルター起因のピークが確認された場合には、当該ピーク前の領域をベースラインとして設定した。
【0097】
結晶性ポリエステル樹脂は、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸)と、2価以上のアルコール(多価アルコール)との重縮合反応によって得られる。
多価カルボン酸の例には、ジカルボン酸が含まれる。このジカルボン酸は、1種でもそれ以上でもよく、脂肪族ジカルボン酸であることが好ましく、芳香族ジカルボン酸をさらに含んでいてもよい。脂肪族ジカルボン酸は、直鎖型であることが、結晶性ポリエステルの結晶性を高める観点から好ましい。
【0098】
脂肪族ジカルボン酸の例には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸、1,11-ウンデカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸(ドデカン二酸)、1,13-トリデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、1,16-ヘキサデカンジカルボン酸、1,18-オクタデカンジカルボン酸、これらの低級アルキルエステル、及び、これらの酸無水物、が含まれる。中でも、低温定着性及び転写性の両立との効果が得られやすい観点から、炭素数6~16の脂肪族ジカルボン酸が好ましく、さらに炭素数10~14の脂肪族ジカルボン酸がより好ましい。
【0099】
芳香族ジカルボン酸の例には、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、t-ブチルイソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸及び4,4′-ビフェニルジカルボン酸が含まれる。中でも、入手容易性及び乳化容易性の観点から、テレフタル酸、イソフタル酸又はt-ブチルイソフタル酸が好ましい。
【0100】
結晶性ポリエステル樹脂における上記ジカルボン酸由来の構成単位に対する脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位の含有量は、結晶性ポリエステルの結晶性を十分に確保する観点から、50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましく、80モル%以上であることがさらに好ましく、100モル%であることが特に好ましい。
【0101】
多価アルコール成分の例には、ジオールが含まれる。ジオールは、1種でもそれ以上でもよく、脂肪族ジオールであることが好ましく、それ以外のジオールをさらに含んでいてもよい。脂肪族ジオールは、結晶性ポリエステルの結晶性を高める観点から、直鎖型であることが好ましい。
【0102】
脂肪族ジオールの例には、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール及び1,20-エイコサンジオールが含まれる。中でも、低温定着性及び転写性の両立との効果が得られやすい観点から、炭素数が2以上かつ120以下の脂肪族ジオールが好ましく、さらに炭素数が4以上かつ10以下の脂肪族ジオールがより好ましい。
その他のジオールの例には、二重結合を有するジオール、及び、スルホン酸基を有するジオール、が含まれる。具体的には、二重結合を有するジオールの例には、2-ブテン-1,4-ジオール、3-ヘキセン-1,6-ジオール及び4-オクテン-1,8-ジオールが含まれる。
【0103】
結晶性ポリエステル樹脂におけるジオール由来の構成単位に対する脂肪族ジオール由来の構成単位の含有量は、トナーの低温定着性及び最終的に形成される画像の光沢性を高める観点から、50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましく、80モル%以上であることがさらに好ましく、100モル%であることが特に好ましい。
【0104】
結晶性ポリエステル樹脂のモノマーにおける上記ジオールと上記ジカルボン酸との割合は、ジオールのヒドロキシ基[OH]とジカルボン酸のカルボキシ基[COOH]との当量比[OH]/[COOH]で2.0/1.0~1.0/2.0の範囲内であることが好ましく、1.5/1.0~1.0/1.5の範囲内であることがより好ましく、1.3/1.0~1.0/1.3の範囲内であることが特に好ましい。
【0105】
結晶性ポリエステル樹脂は、公知のエステル化触媒を利用して、上記多価カルボン酸及び多価アルコールを重縮合する(エステル化する)ことにより合成することができる。
【0106】
結晶性ポリエステル樹脂の合成に使用可能な触媒は、1種でもそれ以上でもよく、その例には、ナトリウム、リチウムなどのアルカリ金属化合物;マグネシウム、カルシウムなどの第2族元素を含む化合物;アルミニウム、亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウムなどの金属化合物;亜リン酸化合物;リン酸化合物;及び、アミン化合物;が含まれる。
【0107】
具体的には、スズ化合物の例には、酸化ジブチルスズ、オクチル酸スズ、ジオクチル酸スズ、及びこれらの塩が含まれる。チタン化合物の例には、テトラノルマルブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラメチルチタネート、テトラステアリルチタネートなどのチタンアルコキシド;ポリヒドロキシチタンステアレートなどのチタンアシレート;及び、チタンテトラアセチルアセトナート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネートなどのチタンキレートが含まれる。ゲルマニウム化合物の例には、二酸化ゲルマニウムが含まれ、アルミニウム化合物の例には、ポリ水酸化アルミニウムなどの酸化物、アルミニウムアルコキシド、及び、トリブチルアルミネート、が含まれる。
【0108】
結晶性ポリエステル樹脂の重合温度は、150~250℃の範囲内であることが好ましい。また、重合時間は、0.5~10時間であることが好ましい。重合中には、必要に応じて反応系内を減圧にしてもよい。
【0109】
本発明に係る結晶性樹脂は、1種でもよいが、2種以上であってもよい。
【0110】
(ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂)
さらには、当該結晶性ポリエステル樹脂が、ユニットとして結晶性ポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂を含んだハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂であることがより好ましい。前記非晶性樹脂ユニットは、結着樹脂に含まれる非晶性樹脂、すなわち、ハイブリッド樹脂以外の樹脂、と同種の樹脂で構成されると好ましい。このような形態でハイブリッド化することにより、結晶性ポリエステル樹脂と結着樹脂との親和性が高まり、ハイブリッド樹脂が非晶性樹脂中により取り込まれやすくなる。その結果、水分吸着しやすい結晶性ポリエステルユニットがトナー母体内部に存在するため、吸湿によってトナー粒子どうしの付着力が高まることを防ぎ、クリーニング性がより一層向上する。
【0111】
ここで、「同種の樹脂」とは、繰り返し単位中に特徴的な化学結合が共通に含まれていることを意味する。ここで、「特徴的な化学結合」とは、物質・材料研究機構(NIMS)物質・材料データベース(http://polymer.nims.go.jp/PoLyInfo/guide/jp/term polymer.html)に記載の「ポリマー分類」に従う。すなわち、ポリアクリル、ポリアミド、ポリ酸無水物、ポリカーボネート、ポリジエン、ポリエステル、ポリハロオレフィン、ポリイミド、ポリイミン、ポリケトン、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリフェニレン、ポリホスファゼン、ポリシロキサン、ポリスチレン、ポリスルフィド、ポリスルホン、ポリウレタン、ポリウレア、ポリビニル及びその他のポリマーの計22種によって分類されたポリマーを構成する化学結合を「特徴的な化学結合」という。
【0112】
<非晶性樹脂>
本発明に係る非晶性樹脂は、上記の結晶性を有さない樹脂である。例えば、非晶性樹脂は、非晶性樹脂又はトナー粒子の示差走査熱量測定(DSC)を行ったときに、融点を有さず、比較的高いガラス転移温度(Tg)を有する樹脂である。
【0113】
なお、上記非晶性樹脂のTgは、30~80℃の範囲内であることが好ましく、特に45~65℃の範囲内であることが好ましい。
【0114】
ガラス転移温度は、ASTM(米国材料試験協会規格)D3418-82に規定された方法(DSC法)に準じて測定することができる。測定には、DSC-7示差走査カロリメーター(パーキンエルマー社製)、TAC7/DX熱分析装置コントローラ(パーキンエルマー社製)などを用いることができる。具体的には、トナー3.0mgをアルミニウム製パンに封入して測定を行う。リファレンスとして空のアルミニウム製パンを使用する。昇降速度10℃/minで0℃から200℃まで昇温し、1分間200℃で等温保持する一回目の昇温過程、冷却速度10℃/minで200℃から0℃まで冷却し、1分間0℃で等温保持する冷却過程、及び昇降速度10℃/minで0℃から200℃まで昇温する二回目の昇温過程をこの順に経る測定条件(昇温・冷却条件)において、0℃から200℃まで昇温する二回目の昇温過程によって得られたDSC曲線からガラス転移温度を求めることができる。
【0115】
非晶性樹脂は、1種でもそれ以上でもよい。非晶性樹脂の例には、ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ウレア樹脂及び非晶性ポリエステル樹脂が含まれる。
【0116】
本発明では、非晶性樹脂は、熱可塑性を制御しやすい観点から、ビニル樹脂を結着樹脂における主成分として含有することが好ましく、非晶性ポリエステル樹脂も含有することが好ましい。なお、本発明においては、主成分とは、結着樹脂中に当該樹脂を50質量%以上含有することをいう。
【0117】
上記ビニル樹脂は、例えばビニル化合物の重合体であり、その例には、アクリル酸エステル樹脂、スチレン・アクリル酸エステル樹脂、及び、エチレン-酢酸ビニル樹脂が含まれる。中でも、熱定着時の可塑性の観点から、スチレン・アクリル酸エステル樹脂(スチレン・アクリル樹脂)が好ましい。
【0118】
スチレン・アクリル樹脂は、少なくとも、スチレン単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを付加重合させて形成される。スチレン単量体は、CH=CH-Cの構造式で表されるスチレンの他に、スチレン構造中に公知の側鎖や官能基を有するスチレン誘導体を含む。
【0119】
また、(メタ)アクリル酸エステル単量体は、CH(R)=CHCOOR(Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素数が1~24のアルキル基を表す)で表されるアクリル酸エステルやメタクリル酸エステルの他に、これらのエステルの構造中に公知の側鎖や官能基を有するアクリル酸エステル誘導体やメタクリル酸エステル誘導体を含む。
【0120】
スチレン単量体の例には、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-フェニルスチレン、p-エチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン及びp-n-ドデシルスチレンが含まれる。
【0121】
(メタ)アクリル酸エステル単量体の例には、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-オクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート及びフェニルアクリレートなどのアクリル酸エステル単量体;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、n-オクチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレートなどのメタクリル酸エステル;が含まれる。
【0122】
なお、本明細書中、「(メタ)アクリル酸エステル単量体」とは、「アクリル酸エステル単量体」と「メタクリル酸エステル単量体」との総称であり、それらの一方又は両方を意味する。例えば、「(メタ)アクリル酸メチル」は、「アクリル酸メチル」及び「メタクリル酸メチル」の一方又は両方を意味する。
【0123】
上記(メタ)アクリル酸エステル単量体は、1種でもそれ以上でもよい。例えば、スチレン単量体と2種以上のアクリル酸エステル単量体とを用いて共重合体を形成すること、スチレン単量体と2種以上のメタクリル酸エステル単量体とを用いて共重合体を形成すること、及び、スチレン単量体とアクリル酸エステル単量体及びメタクリル酸エステル単量体とを併用して共重合体を形成すること、のいずれも可能である。
【0124】
上記スチレン・アクリル樹脂の可塑性を制御する観点から、上記スチレン・アクリル樹脂におけるスチレン単量体に由来する構成単位の含有量は、40~90質量%の範囲内であることが好ましい。また、上記非晶性樹脂における(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構成単位の含有率は、10~60質量%の範囲内であると好ましい。
【0125】
上記スチレン・アクリル樹脂は、上記スチレン単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体以外の他の単量体に由来する構成単位をさらに含有していてもよい。他の単量体は、カルボキシ基又はヒドロキシ基を有する化合物であることが好ましい。
【0126】
上記非晶性樹脂は、上記スチレン単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体以外の他の単量体に由来する構成単位をさらに含有していてもよい。他の単量体は、多価アルコール由来のヒドロキシ基(-OH)又は多価カルボン酸由来のカルボキシ基(-COOH)とエステル結合する化合物であることが好ましい。すなわち、非晶性樹脂は、上記スチレン単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体に対して付加重合可能であり、かつ、カルボキシ基又はヒドロキシ基を有する化合物(両性化合物)がさらに重合してなる重合体であることが好ましい。
【0127】
上記化合物の例には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル等などのカルボキシ基を有する化合物;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどのヒドロキシ基を有する化合物;が含まれる。
【0128】
上記スチレン・アクリル樹脂における上記両性化合物に由来する構成単位の含有量は、0.5~20質量%の範囲内であることが、トナー帯電量制御の観点から好ましい。
【0129】
上記スチレン・アクリル樹脂は、公知の油溶性又は水溶性の重合開始剤を使用して単量体を重合する方法によって合成することができる。油溶性の重合開始剤の例には、アゾ系又はジアゾ系重合開始剤、及び、過酸化物系重合開始剤、が含まれる。
【0130】
上記アゾ系又はジアゾ系重合開始剤の例には、2,2′-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2′-アゾビスイソブチロニトリル、1,1′-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2′-アゾビス-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル及びアゾビスイソブチロニトリルが含まれる。
【0131】
過酸化物系重合開始剤の例には、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、t-ブチルヒドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,2-ビス-(4,4-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン及びトリス-(t-ブチルパーオキシ)トリアジンが含まれる。
【0132】
また、乳化重合法でスチレン・アクリル樹脂の樹脂粒子を合成する場合には、重合開始剤として水溶性ラジカル重合開始剤が使用可能である。水溶性重合開始剤の例には、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、アゾビスアミノジプロパン酢酸塩、アゾビスシアノ吉草酸とその塩、及び、過酸化水素、が含まれる。
【0133】
上記スチレン・アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、非晶性樹脂の可塑性を制御しやすい観点から、5000~150000の範囲内であることが好ましく、10000~70000の範囲内であることがより好ましい。
【0134】
(非晶性ポリエステル樹脂)
非晶性ポリエステル樹脂は、ポリエステル樹脂であって、示差走査熱量測定(DSC)を行った時に、融点を有さず、比較的高いガラス転移温度(Tg)を有する樹脂である。また、非晶性ポリエステル樹脂を構成する単量体は、結晶性ポリエステル樹脂を構成する単量体とは異なるため、例えば、NMR等の分析によって結晶性ポリエステル樹脂と区別することができる。
【0135】
非晶性ポリエステル樹脂は、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸)と、2価以上のアルコール(多価アルコール)との重縮合反応によって得られる。具体的な非晶性ポリエステル樹脂については特に制限はなく、本技術分野における従来公知の非晶性ポリエステル樹脂が用いられ得る。
【0136】
非晶性ポリエステル樹脂の具体的な製造方法は、特に限られるものではなく、公知のエステル化触媒を利用して、多価カルボン酸及び多価アルコールを重縮合する(エステル化する)ことにより当該樹脂を製造することができる。
【0137】
製造の際に使用可能な触媒、重縮合(エステル化)の温度、重縮合(エステル化)の時間は特に限定されるものではなく、上記結晶性ポリエステル樹脂と同様である。
【0138】
非晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、特に制限されないが、例えば、5000~100000の範囲内であることが好ましく、5000~50000の範囲内であることがより好ましい。上記重量平均分子量(Mw)が5000以上であると、トナーの耐熱保管性を向上させることができ、100000以下であると、低温定着性をより向上させることができる。上記重量平均分子量(Mw)は、上記した方法により測定することができる。
【0139】
非晶性ポリエステル樹脂の調製に用いられる多価カルボン酸及び多価アルコールの例としては、特に制限されないが、以下が挙げられる。
【0140】
《多価カルボン酸》
多価カルボン酸としては、不飽和脂肪族多価カルボン酸、芳香族多価カルボン酸、及びこれらの誘導体を用いることが好ましい。非晶性の樹脂を形成することができれば、飽和脂肪族多価カルボン酸を併用しても良い。
【0141】
上記不飽和脂肪族多価カルボン酸としては、例えば、メチレンコハク酸、フマル酸、マレイン酸、3-ヘキセンジオイック酸、3-オクテンジオイック酸、炭素数2~20のアルケニル基で置換されたコハク酸等の不飽和脂肪族ジカルボン酸;3-ブテン-1,2,3-トリカルボン酸、4-ペンテン-1,2,4-トリカルボン酸、アコニット酸等の不飽和脂肪族トリカルボン酸;4-ペンテン-1,2,3,4-テトラカルボン酸等の不飽和脂肪族テトラカルボン酸等が挙げられる。また、これらの低級アルキルエステルや酸無水物を用いることもできる。
【0142】
上記芳香族多価カルボン酸としては、例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、t-ブチルイソフタル酸、テトラクロロフタル酸、クロロフタル酸、ニトロフタル酸、p-フェニレン二酢酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4′-ビフェニルジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,5-ベンゼントリカルボン酸(トリメシン酸)、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸、ヘミメリット酸等の芳香族トリカルボン酸;ピロメリット酸、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸等の芳香族テトラカルボン酸;メリト酸等の芳香族ヘキサカルボン酸等が挙げられる。また、これらの低級アルキルエステルや酸無水物を用いることもできる。
【0143】
上記多価カルボン酸は、単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。
【0144】
《多価アルコール》
多価アルコールとしては、結晶性ポリエステル樹脂との相溶性制御の観点から、不飽和脂肪族多価アルコール、芳香族多価アルコール及びこれらの誘導体を用いることが好ましい。非晶性の樹脂を得ることができれば、飽和脂肪族多価アルコールを併用しても良い。
【0145】
上記不飽和脂肪族多価アルコールとしては、例えば、2-ブテン-1,4-ジオール、3-ブテン-1,4-ジオール、2-ブチン-1,4-ジオール、3-ブチン-1,4-ジオール、9-オクタデセン-7,12-ジオール等の不飽和脂肪族ジオール等が挙げられる。また、これらの誘導体を用いることもできる。
【0146】
上記芳香族多価アルコールとしては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール類、これらのエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物等のビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、1,3,5-ベンゼントリオール、1,2,4-ベンゼントリオール、1,3,5-トリヒドロキシメチルベンゼン等が挙げられる。また、これらの誘導体を用いることもできる。これらの中でも、特に熱特性を適正化しやすいという観点から、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物やプロピレンオキサイド付加物等のビスフェノールA化合物を用いることが好ましい。
【0147】
また、3価以上の多価アルコールの炭素数は特に制限されないが、熱特性を適正化させやすいことから、炭素数3~20の範囲内であることが好ましい。
【0148】
上記多価アルコールは、単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。
【0149】
非晶性ポリエステル樹脂は、非晶性ポリエステル重合セグメントと、スチレン由来の構成単位を有するビニル重合セグメントと、が化学的に結合したハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂であっても良い。
【0150】
なお、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂中の各セグメントの構成成分及び含有割合は、例えば、NMR測定、メチル化反応Py-GC/MS測定により特定することができる。
【0151】
非晶性ポリエステル重合セグメントは、非晶性ポリエステル樹脂と同様の多価カルボン酸成分及び多価アルコール成分との重縮合反応によって得られる公知のポリエステル樹脂に由来する部分であって、トナーの示差走査熱量測定(DSC)において、明確な吸熱ピークが認められない重合セグメントをいう。
【0152】
上記多価カルボン酸成分としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、6-メチルアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、フマル酸、シトラコン酸、ジグリコール酸、シクロヘキサン-3,5-ジエン-1,2-ジカルボン酸、リンゴ酸、クエン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、マロン酸、ピメリン酸、酒石酸、粘液酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラクロロフタル酸、クロロフタル酸、ニトロフタル酸、p-カルボキシフェニル酢酸、p-フェニレン二酢酸、m-フェニレンジグリコール酸、p-フェニレンジグリコール酸、o-フェニレンジグリコール酸、ジフェニル酢酸、ジフェニル-p,p′-ジカルボン酸、ナフタレン-1,4-ジカルボン酸、ナフタレン-1,5-ジカルボン酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、ドデセニルコハク酸などのジカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ピレントリカルボン酸、ピレンテトラカルボン酸などが挙げられる。これら多価カルボン酸は、単独でも又は2種以上混合しても用いることができる。これらの中でも、フマル酸、マレイン酸、メサコン酸などの脂肪族不飽和ジカルボン酸や、イソフタル酸やテレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、コハク酸、トリメリット酸を用いることが好ましい。
【0153】
また、多価アルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物などの2価のアルコール;グリセリン、ペンタエリスリトール、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサエチロールメラミン、テトラメチロールベンゾグアナミン、テトラエチロールベンゾグアナミンなどの3価以上のポリオールなどが挙げられる。これら多価アルコール成分は、単独でも又は2種以上混合しても用いることができる。これらの中でも、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物などの2価のアルコールが好ましい。
【0154】
ビニル重合セグメントとしては、スチレン由来の構成単位を含むものであれば特に制限されないが、熱定着時の可塑性を考慮すると、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル重合セグメント(スチレン・アクリル重合セグメント)が好ましい。
【0155】
スチレン・アクリル重合セグメントは、少なくとも、スチレン単量体と、(メタ)アクリル酸エステル単量体と、を付加重合させて形成されるものである。スチレン・アクリル重合セグメントの形成が可能な単量体の具体例としては、上記スチレン・アクリル樹脂で説明した単量体と同様のものが挙げられるため、ここでは説明を省略する。
【0156】
ビニル重合セグメント中のスチレン由来の構成単位の含有率は、ビニル重合セグメントの全量に対し、40~95質量%の範囲内であると好ましい。また、ビニル重合セグメント中の(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構成単位の含有率は、ビニル重合セグメントの全量に対し、5~60質量%の範囲内が好ましい。
【0157】
さらに、ビニル重合セグメントは、上記スチレン単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体の他、上記非晶性ポリエステル重合セグメントに化学的に結合するための化合物が付加重合されてなると好ましい。具体的には、上記結晶性ポリエステル重合セグメントに含まれる、多価アルコール成分由来のヒドロキシ基[-OH]又は多価カルボン酸成分由来のカルボキシ基[-COOH]とエステル結合する化合物を用いると好ましい。したがって、ビニル重合セグメントは、スチレン及び(メタ)アクリル酸エステル単量体に対して付加重合可能であり、かつ、カルボキシ基[-COOH]又はヒドロキシ基[-OH]を有する化合物をさらに重合してなると好ましい。
【0158】
このような化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル等のカルボキシ基を有する化合物;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基を有する化合物が挙げられる。
【0159】
ビニル重合セグメント中の上記化合物に由来する構成単位の含有率は、ビニル重合セグメントの全量に対し、0.5~20質量%の範囲内が好ましい。
【0160】
スチレン・アクリル重合セグメントの形成方法は、特に制限されず、公知の油溶性又は水溶性の重合開始剤を使用して単量体を重合する方法が挙げられる。重合開始剤の具体例は、上記ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の項で説明したものと同様である。
【0161】
ビニル重合セグメントの含有量は、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂中2~25質量%の範囲内であることが好ましい。
【0162】
ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂を製造する方法としては、既存の一般的なスキームを使用することができる。代表的な方法としては、次の三つが挙げられる。
【0163】
(1)ビニル重合セグメントをあらかじめ重合しておき、当該ビニル重合セグメントの存在下で非晶性ポリエステル重合セグメントを形成する重合反応を行ってハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂を製造する方法。
【0164】
(2)非晶性ポリエステル重合セグメント及びビニル重合セグメントをそれぞれ形成しておき、これらを結合させてハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂を製造する方法。
【0165】
(3)非晶性ポリエステル重合セグメントをあらかじめ重合しておき、当該非晶性ポリエステル重合セグメントの存在下でビニル重合セグメントを形成する重合反応を行ってハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂を製造する方法。
【0166】
〔4.2〕着色剤
本発明に係る着色剤は、1種でもそれ以上でもよい。典型的な着色剤の例には、マゼンタ、イエロー、シアン及びブラックの各色用の着色剤が含まれる。
マゼンタ用の着色剤の例には、C.I.ピグメントレッド2、同3、同5、同6、同7、同15、同16、同48:1、同53:1、同57:1、同60、同63、同64、同68、同81、同83、同87、同88、同89、同90、同112、同114、同122、同123、同139、同144、同149、同150、同163、同166、同17 0、同177、同178、同184、同202、同206、同207、同209、同222、同238及び同269が含まれる。
【0167】
イエロー用の着色剤の例には、C.I.ピグメントオレンジ31、同43、C.I.ピグメントイエロー12、同14、同15、同17、同74、同83、同93、同94、同138、同155、同162、同180及び同185が含まれる。
【0168】
シアン用の着色剤の例には、C.I.ピグメントブルー2、同3、同15、同15:2、同15:3、同15:4、同16、同17、同60、同62、同66及びC.I.ピグメントグリーン7が含まれる。
【0169】
ブラック用の着色剤の例には、カーボンブラック及び磁性体粒子が含まれる。カーボンブラックの例には、チャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック及びランプブラックが含まれる。磁性体粒子の磁性体の例には、鉄、ニッケル、コバルトなどの強磁性金属;これらの金属を含む合金、フェライト、マグネタイトなどの強磁性金属の化合物;二酸化クロム;及び、強磁性金属を含まないが熱処理することにより強磁性を示す合金;が含まれる。熱処理により強磁性を示す合金の例には、マンガン-銅-アルミニウム、マンガン-銅-スズなどのホイスラー合金が含まれる。
【0170】
上記トナー母体粒子中における上記着色剤の含有量は、適宜に、そして独立して決めることができ、例えば画像の色再現性を確保する観点から、1~30質量%の範囲内であることが好ましく、2~20質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0171】
また、着色剤の粒子の大きさは、体積平均粒径で、例えば10~1000nmの範囲内であることが好ましく、50~500nmの範囲内であることがより好ましく、80~300nmの範囲内であることがさらに好ましい。
【0172】
当該体積平均粒径は、カタログ値であってもよく、また、例えば着色剤の体積平均粒径(体積基準のメディアン径)は、「UPA-150」(マイクロトラック・ベル株式会社製)によって測定することができる。
【0173】
〔4.3〕その他材料
<離型剤>
本発明に用いられる離型剤には、公知のものを使用することができる。
【0174】
離型剤は1種でもそれ以上でもよい。離型剤の例には、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどのポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの分枝鎖状炭化水素ワックス;パラフィンワックス、サゾールワックスなどの長鎖炭化水素系ワックス;及び、ジステアリルケトンなどのジアルキルケトン系ワックス、カルナウバワックス、モンタンワックス、ベヘン酸ベヘニル、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18-オクタデカンジオールジステアレート、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエートなどのエステル系ワックス、エチレンジアミンベヘニルアミド、トリメリット酸トリステアリルアミドなどのアミド系ワックス;が含まれる。
【0175】
上記離型剤は、ビニル系樹脂と相溶化しやすい。このため、上記離型剤の可塑効果により、上記トナーのシャープメルト性を高め、十分な低温定着性を得ることができる。上記離型剤は、十分な低温定着性を得る観点から、エステル系ワックス(エステル系化合物)であることが好ましく、さらに耐熱性及び低温定着性を両立させる観点から、直鎖状エス テル系ワックス(直鎖状エステル系化合物)であることがより好ましい。
【0176】
上記離型剤の融点は、十分な高温保存性を得る観点から、60℃以上であることが好ましく、65℃以上であることがより好ましい。また、上記離型剤の融点は、十分なトナーの低温定着性を得る観点から、100℃以下であることが好ましく、90℃以下であることがより好ましい。
【0177】
また、本発明のトナーにおける離型剤の含有量は、1~30質量%の範囲内であることが好ましく、5~20質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0178】
本発明のトナーは、本実施の形態に係る効果を奏する範囲において、前述の結晶性樹脂、非晶性樹脂及び離型剤以外の他の成分をさらに含有していてもよい。例えば、上記トナー母体粒子が含有していてもよい上記他の成分の例には、着色剤及び荷電制御剤が含まれる。
【0179】
<荷電制御剤>
本発明に用いられる荷電制御剤には公知のものを利用することができ、その例には、ニグロシン系染料、ナフテン酸又は高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第4級アンモニウム塩化合物、アゾ系金属錯体、及び、サリチル酸金属塩、が含まれる。
【0180】
本発明のトナーにおける荷電制御剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して通常0.1~10質量部の範囲内であり、好ましくは0.5~5質量%の範囲内である。
【0181】
また、荷電制御剤の粒子の大きさは、数平均一次粒径で例えば10~1000nmの範囲内であり、好ましくは50~500nmの範囲内であり、より好ましくは80~300nmの範囲内である。
【0182】
<その他の外添剤>
本発明に係るトナーの外添剤としては、前述の無機粒子A、シリカ粒子B、又はアルミナ粒子の他にも、公知の無機粒子や有機粒子などを用いることができる。使用する外添剤は、一種でもそれ以上でもよく、特に粒径の異なる外添剤2種以上を用いることが好ましい。粒径が異なると外添剤としての役割は異なり、一般に、大径であるほどスペーサー効果を発揮してトナーどうしの付着力を低下させ、小径であるほどトナー母体の表面を被覆しやすいため流動性を底上げすることができる。また、形状に関しては、球状の外添剤だけではなく、ルチル型酸化チタンに代表される針状のもの他、不定形状、紡錘形状、金平糖状のものなど、制限なく用いることができる。
【0183】
前記無機粒子の例には、ジルコニア粒子、酸化亜鉛粒子、酸化クロム粒子、酸化セリウム粒子、酸化アンチモン粒子、酸化タングステン粒子、酸化スズ粒子、酸化テルル粒子、酸化マンガン粒子及び酸化ホウ素粒子が含まれる。上記無機粒子は、その表面が疎水化処理されていることが好ましく、当該疎水化処理には、公知の表面処理剤が用いられる。当該表面処理剤は、一種でもそれ以上でもよく、その襟には、シランカップリング剤、シリコーンオイル、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、脂肪酸、脂肪酸金属塩、そのエステル化物及びロジン酸が含まれる。
【0184】
前記有機粒子としては、数平均一次粒子径が10~2000nm程度の球形の有機粒子が含まれる。具体的には、スチレンやメチルメタクリレートなどの単独重合体やこれらの共重合体による有機粒子を使用することができる。
また、感光体とクリーニングブレードの間の摩擦力を低減させる目的で、滑剤をトナーに外添してもよい。
【0185】
滑剤としては、公知の脂肪酸金属塩を用いることができるが、延展性の観点からモース硬度が2以下である脂肪酸金属塩が好ましく、このような脂肪酸金属塩としては、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、リチウムから選ばれる金属の塩が好ましい。この中でも脂肪酸亜鉛、脂肪酸カルシウム、脂肪酸リチウム又は脂肪酸マグネシウムが特に好ましい。また、脂肪酸金属塩の脂肪酸としては、炭素数12以上22以下の高級脂肪酸が好ましい。炭素数12以上の脂肪酸を用いると遊離脂肪酸の発生を抑えることができ、また、脂肪酸の炭素数が22以下であれば、脂肪酸金属塩の融点が高くなりすぎず、良好な定着性を得ることができる。脂肪酸としては、ステアリン酸が特に好ましく、本発明に用いられる脂肪酸金属塩としては、延展性の観点から、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸リチウムが好ましく、ステアリン酸亜鉛であることがより好ましい。これらの脂肪酸金属塩は2種以上併用してもよい。
【0186】
脂肪酸金属塩の個数平均粒径としては、20μm以下の範囲が好ましく、2.0μm以下が特に好ましい。
【0187】
〔5〕トナー粒子の製造方法
本発明に係るトナー粒子の製造方法としては、特に限定されず、混練粉砕法、懸濁重合法、乳化凝集法、溶解懸濁法、ポリエステル伸長法、分散重合法など公知の方法が挙げられる。
【0188】
(トナー母体粒子の製造方法)
本発明に係るトナー母体粒子は、結着樹脂と離型剤、結晶性樹脂を含有し、必要に応じて着色剤とその他内添剤を含むことが好ましい。その製造法は、特に限定されるものではないが、乳化凝集法が好ましい。乳化凝集法によれば、粒度分布がシャープであり、粒径が高度に制御されたトナー母体粒子を得ることができる。
本発明の乳化凝集法によるトナー粒子の製造方法の一例を以下に示す。
(1)水系媒体中に着色剤粒子が分散されてなる分散液を調製する工程
(2)水系媒体中に、必要に応じて内添剤を含有した結着樹脂粒子が分散されてなる分散液を調製する工程
(3)着色剤粒子の分散液と結着樹脂粒子の分散液とを混合して、着色剤粒子及び結着樹脂粒子を凝集、会合、融着させてトナー粒子を形成する工程
(4)トナー粒子の分散系(水系媒体)からトナー粒子を濾別し、界面活性剤などを除去する工程
(5)トナー粒子を乾燥する工程
(6)トナー粒子に外添剤を添加する工程
【0189】
(凝集剤)
本発明に用いられる凝集剤としては、特に限定されるものではないが、金属の塩から選択されるものが好適に使用される。例えば、ナトリウム、カリウム、リチウムなどのアルカリ金属の塩などの一価の金属の塩、例えばカルシウム、マグネシウム、マンガン、銅などの二価の金属の塩、鉄、アルミニウムなどの三価の金属の塩などが挙げられ、具体的な塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸マンガンなどを挙げることができ、これらの中で特に好ましくは二価の金属の塩である。二価の金属の塩を使用すると、より少量で凝集を進めることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0190】
(トナー母体粒子の粒径)
本発明に係るトナー母体粒子の体積平均粒径は、4.5~8μmの範囲であることが好ましい。画質を向上の観点ではより小径であることが好ましいが、粒径が小さいとトナー母体粒子の付着力が高まり、クリーニング性が悪化してしまう。トナー母体の体積平均粒径が前記範囲内であれば、出力画像の画質とクリーニング性の両方の観点を満たし、かつ帯電、現像、転写などの機能も両立させることができる。なお、トナー母体粒子の粒径は、5~6.2μmの範囲であれば、上記観点においてより好ましく、ドット再現性も高まるためより高画質な画像が得られる。
【0191】
トナーの体積平均粒径は、体積基準メディアン径(D50%径)として、例えば、「マルチサイザー3(ベックマン・コールター社製)」に、データ処理用ソフト「Software V3.51」を搭載したコンピューターシステム(ベックマン・コールター製)を接続した装置を用いて、前述と同様に測定、算出することができる。測定手順としては、トナー粒子0.02gを、界面活性剤溶液20mlに分散させ、馴染ませた後超音波分散を1分間行い、トナー粒子分散液を作製する。前記界面活性剤溶液としては、例えば、界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈したものを用いるとよい。このトナー粒子分散液を、ISOTONII(ベックマン・コールター社製)のビーカーに測定濃度5~10%になるまで滴下していき、測定機カウントを25000個に設定して測定する。ここで、マルチサイザー3のアパチャー径は100μmのものを使用する。測定は、2~60μmの範囲を256分割しての頻度数を算出し、体積積算分率が大きい方から50%の粒子径を体積基準メディアン径(D50%径)として得て、トナー体積平均粒径とする。
【0192】
(トナー母体粒子の平均円形度)
トナー母体粒子の平均円形度は0.920~1.000の範囲内であることが好ましく、0.955~0.985の範囲内であることがより好ましい。
【0193】
ここで、上記平均円形度の測定は前述のとおりである。
【0194】
(コア・シェル構造)
また、乳化凝集法によるトナー粒子製造方法では、コア・シェル構造を有するトナー粒子の作製に適しており、当該トナー母体粒子はコア・シェル構造であることがより好ましい。コア・シェル構造を有するトナー母体粒子の製造例を挙げると、まず、コア粒子用の結着樹脂粒子と着色剤粒子とを凝集、会合、融着させ、コア粒子を作製する。続いて、コア粒子の分散液中にシェル層用の結着樹脂粒子を添加し、コア粒子表面にシェル層用の結着樹脂粒子を凝集、融着させてコア粒子表面を被覆するシェル層を形成することで、得ることができる。
【0195】
(外添処理)
上記(6)トナー粒子に外添剤を添加する工程において、トナー母体粒子に対する外添剤混合処理は、機械式混合装置を用いることができる。機械式混合装置としては、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、タービュラーミキサー等が使用できる。これらの中で、ヘンシェルミキサーのように処理される粒子に剪断力を付与できる混合装置を用いて、混合時間を長くする又は撹拌羽根の回転周速を上げる等の混合処理を行えばよい。また、複数種類の外添剤を使用する場合、トナー粒子に対して全ての外添剤を一括で混合処理するか、又は外添剤に応じて複数回に分けて分割して混合処理してもよい。
【0196】
外添剤の混合方法は、上記機械式混合装置を用いて、混合強度、すなわち撹拌羽根の周速、混合時間、又は、混合温度等を制御することによって外添剤の解砕度合いや付着強度を制御することができる。
【0197】
〔6〕現像剤
本発明に係るトナーは、磁性又は非磁性の1成分現像剤として使用することもできるが、キャリアと混合して2成分現像剤として使用してもよい
(2成分現像剤)
2成分現像剤は、トナー粒子の含有量(トナー濃度)が4.0~8.0質量%となるように、トナー粒子とキャリア粒子とを適宜に混合することによって、二成分現像剤を構成することができる。当該混合に用いられる混合装置の例には、ナウターミキサー、Wコーン及びV型混合機が含まれる。
【0198】
(キャリア粒子)
キャリア粒子は、磁性体により構成される。当該キャリア粒子の例には、当該磁性体からなる芯材粒子と、その表面を被覆する被覆材の層とを有する被覆型キャリア粒子、及び、樹脂中に磁性体の微粉末が分散されてなる樹脂分散型のキャリア粒子が含まれる。当該キャリア粒子は、感光体へのキャリア粒子の付着を抑制する観点から、被覆型キャリア粒子であることが好ましい。
【0199】
(キャリアコア(芯材粒子))
芯材粒子は、磁性体、例えば、磁場によってその方向に強く磁化する物質、によって構成される。当該磁性体は、一種でもそれ以上でもよく、その例には、鉄、ニッケル及びコバルトなどの強磁性を示す金属、これらの金属を含む合金もしくは化合物、及び、熱処理することにより強磁性を示す合金、が含まれる。
【0200】
上記強磁性を示す金属又はそれを含む化合物の例には、鉄、下記式(a)で表わされるフェライト、及び、下記式(b)で表わされるマグネタイト、が含まれる。式(a)、式(b)中のMは、Mn、Fe、Ni、Co、Cu、Mg、Zn、Cd及びLiの群から選ばれる一以上の1価又は2価の金属を表す。
式(a):MO・Fe
式(b):MFe
【0201】
また、上記熱処理することにより強磁性を示す合金の例には、マンガン-銅-アルミニウム及びマンガン-銅-錫などのホイスラー合金、及び、二酸化クロム、が含まれる。
【0202】
上記芯材粒子は、各種のフェライトであることが好ましい。これは、被覆型キャリア粒子の比重は、芯材粒子を構成する金属の比重よりも小さくなることから、現像器内における撹拌の衝撃力をより小さくすることができるためである。
【0203】
(キャリアコート樹脂(被覆材))
当該被覆材には、キャリア粒子の芯材粒子の被覆に利用される公知の樹脂を用いることができる。当該被覆材は、シクロアルキル基を有する樹脂であることが、キャリア粒子の水分吸着性を低減させる観点、及び、被覆層の芯材粒子との密着性を高める観点、から好ましい。当該シクロアルキル基の例には、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基及びシクロデシル基が含まれる。中でも、シクロヘキシル基又はシクロペンチル基が好ましく、被覆層とフェライト粒子との密着性の観点からシクロへキシル基がより好ましい。樹脂の重量平均分子量Mwは、例えば10,000~800,000であり、より好ましくは100,000~750,000である。当該樹脂における上記シクロアルキル基の含有量は、例えば10質量%~90質量%である。上記樹脂中の当該シクロアルキル基の含有量は、例えば、熱分解-ガスクロマトグラフ/質量分析(P-GC/MS)や1H-NMR等によって求めることが可能である。
【0204】
〔7〕画像形成方法及び画像形成装置
本発明の静電荷像現像用トナーは、感光体に接触するように設けられた帯電ローラーによって感光体表面を帯電させる工程を有する画像形成方法に、好適に適用することができる。帯電ローラーによって感光体表面を帯電させる工程を有する画像形成方法では、一般に感光体表面の滑剤が分解されやすく、画像濃度差が大きくなりやすいが、本発明の静電荷像現像用トナーを用いれば、画像濃度差を小さくすることができる。
【0205】
以下、本発明の静電荷像現像用トナーを用いて行う電子写真用の画像形成方法及び画像形成装置の一例を、図1に示す画像形成装置を用いて説明する。
【0206】
当該画像形成方法は、本発明の静電荷像現像用トナーを用いて、基材(記録媒体ともいう。)に画像を形成する。具体的には、少なくとも帯電工程、露光工程、現像工程及び転写工程を有する電子写真画像形成方法であって、前記転写工程では、静電荷像担持体(感光体ドラム413)上から中間転写体(中間転写ベルト421)上にトナー像を転写する一次転写工程と、当該中間転写体上の前記トナー像を転写材(用紙S)上に転写する二次転写工程を有することが好ましい。
【0207】
図1に示す画像形成装置100は、少なくとも電子写真感光体と、前記電子写真感光体の表面を帯電させる帯電手段と、当該電子写真感光体(以下、感光体ドラムともいう。)の表面に静電荷像を形成する露光手段と、前記静電荷像を、トナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段と、前記トナー像を転写材に転写する転写手段と、前記転写材に転写されたトナー像を定着させる定着手段と、前記電子写真感光体上の残留トナーを除去するクリーニング手段とを備える。すなわち、画像読取部110、画像処理部30、画像形成部40、用紙搬送部50及び定着装置60等を備える。
【0208】
画像形成部40は、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色トナーによる画像を形成する画像形成ユニット41Y、41M、41C及び41Kを有する。これらは、収容されるトナー以外はいずれも同じ構成を有するので、以後、色を表す記号を省略することがある。画像形成部40は、さらに、中間転写ユニット42及び二次転写ユニット43を有する。これらは、転写装置に相当する。
【0209】
画像形成ユニット41は、露光装置411、現像装置412、感光体ドラム413、帯電装置414及びドラムクリーニング装置415を有する。
【0210】
感光体ドラム413は、例えば負帯電型の有機感光体である。感光体ドラム413の表面は、光導電性を有する。感光体ドラム413は、感光体に相当する。
【0211】
帯電装置414は、感光体ドラム413に接触するように設けられた帯電ローラーによって感光体ドラム413表面を帯電させる帯電ローラー方式とすることが好ましい。帯電ローラー方式を用いた画像形成においては、一般に感光体表面の滑剤が分解されやすく、画像濃度差が大きくなりやすいが、本発明の静電荷像現像用トナーを用いれば、画像濃度差を抑えることができる。帯電装置414は、コロナ帯電器や、帯電ブラシ、帯電ブレードなどの接触帯電部材を感光体ドラム413に接触させて帯電させる接触帯電装置であってもよい。
【0212】
露光装置411は、例えば、光源としての半導体レーザーと、形成すべき画像に応じたレーザー光を感光体ドラム413に向けて照射する光偏向装置(ポリゴンモーター)とを含む。
【0213】
現像装置412は、二成分現像方式の現像装置である。現像装置412は、例えば、二成分現像剤を収容する現像容器と、当該現像容器の開口部に回転自在に配置されている現像ローラー(磁性ローラー)と、二成分現像剤が連通可能に現像容器内を仕切る隔壁と、現像容器における開口部側の二成分現像剤を現像ローラーに向けて搬送するための搬送ローラーと、現像容器内の二成分現像剤を撹拌するための撹拌ローラーと、を有する。上記現像容器には、二成分現像剤としての上記トナーが収容されている。
【0214】
中間転写ユニット42は、中間転写ベルト421を感光体ドラム413に圧接させる一次転写ローラー422、バックアップローラー423Aを含む複数の支持ローラー423、及びベルトクリーニング装置426を有する。中間転写ベルト421は、複数の支持ローラー423にループ状に張架される。複数の支持ローラー423のうちの少なくとも一つの駆動ローラーが回転することにより、中間転写ベルト421は矢印A方向に一定速度で走行する。
【0215】
二次転写ユニット43は、無端状の二次転写ベルト432、及び二次転写ローラー431Aを含む複数の支持ローラー431を有する。二次転写ベルト432は、二次転写ローラー431A及び支持ローラー431によってループ状に張架される。
【0216】
定着装置60は、例えば、定着ローラー62と、定着ローラー62の外周面を覆い、用紙S上のトナー画像を構成するトナーを加熱、融解するための無端状の発熱ベルト63と、用紙Sを定着ローラー62及び発熱ベルト63に向けて押圧する加圧ローラー64と、を有する。
【0217】
画像形成装置100は、さらに、画像読取部110、画像処理部30及び用紙搬送部50を有する。画像読取部110は、給紙装置111及びスキャナー112を有する。用紙搬送部50は、給紙部51、排紙部52、及び搬送経路部53を有する。給紙部51を構成する三つの給紙トレイユニット51a~51cには、坪量やサイズなどに基づいて識別された用紙S(規格用紙、特殊用紙)があらかじめ設定された種類ごとに収容される。搬送経路部53は、レジストローラー対53aなどの複数の搬送ローラー対を有する。
【0218】
画像形成装置100による画像形成方法の一例を説明する。
【0219】
スキャナー112は、コンタクトガラス上の原稿Dを光学的に走査して読み取る。原稿Dからの反射光がCCDセンサー112aにより読み取られ、入力画像データとなる。入力画像データは、画像処理部30において所定の画像処理が施され、露光装置411に送られる。
【0220】
感光体ドラム413は一定の周速度で回転する。帯電装置414は、感光体ドラム413の表面を一様に負極性に帯電させる。露光装置411では、ポリゴンモーターのポリゴンミラーが高速で回転し、各色成分の入力画像データに対応するレーザー光が、感光体ドラム413の軸方向に沿って展開し、当該軸方向に沿って感光体ドラム413の外周面に照射される。こうして感光体ドラム413の表面には、静電荷像が形成される。
【0221】
現像装置412では、上記現像容器内の二成分現像剤の撹拌、搬送によってトナー粒子が帯電し、二成分現像剤は上記現像ローラーに搬送され、当該現像ローラーの表面で磁性ブラシを形成する。帯電したトナー粒子は、上記磁性ブラシから感光体ドラム413における静電荷像の部分に静電的に付着する。こうして、感光体ドラム413の表面の静電荷像が可視化され、感光体ドラム413の表面に、静電荷像に応じたトナー画像が形成される。
【0222】
感光体ドラム413の表面のトナー画像は、中間転写ユニット42によって中間転写ベルト421に転写される。転写後に感光体ドラム413の表面に残存する転写残トナーは、感光体ドラム413の表面に摺接するドラムクリーニングブレードを有するドラムクリーニング装置415によって除去される。
【0223】
一次転写ローラー422によって中間転写ベルト421が感光体ドラム413に圧接することにより、感光体ドラム413と中間転写ベルト421とによって、一次転写ニップが感光体ドラムごとに形成される。当該一次転写ニップにおいて、各色のトナー画像が中間転写ベルト421に順次重なって転写される。
【0224】
一方、二次転写ローラー431Aは、中間転写ベルト421及び二次転写ベルト432を介して、バックアップローラー423Aに圧接される。それにより、中間転写ベルト421と二次転写ベルト432とによって、二次転写ニップが形成される。当該二次転写ニップを用紙Sが通過する。用紙Sは、用紙搬送部50によって二次転写ニップへ搬送される。用紙Sの傾きの補正及び搬送のタイミングの調整は、レジストローラー対53aが配設されたレジストローラー部により行われる。
【0225】
上記二次転写ニップに用紙Sが搬送されると、二次転写ローラー431Aへ転写バイアスが印加される。この転写バイアスの印加によって、中間転写ベルト421に担持されているトナー画像が用紙Sに転写される。トナー画像が転写された用紙Sは、二次転写ベルト432によって、定着装置60に向けて搬送される。
【0226】
定着装置60は、発熱ベルト63と加圧ローラー64とによって、定着ニップを形成し、搬送されてきた用紙Sを当該定着ニップ部で加熱、加圧する。用紙S上のトナー画像を構成するトナー粒子は、加熱され、その内部で結晶性樹脂が速やかに融け、その結果、比較的少ない熱量で速やかにトナー粒子全体が融解し、トナー成分が用紙Sに付着する。こうして、比較的少ない熱量で速やかにトナー画像が用紙Sに定着する。トナー像が定着された用紙Sは、排紙ローラー52aを備えた排紙部52により機外に排紙される。こうして、高画質の画像が形成される。
【0227】
なお、二次転写後に中間転写ベルト421の表面に残存する転写残トナーは、中間転写ベルト421の表面に摺接するベルトクリーニングブレードを有するベルトクリーニング装置426によって除去される。
【0228】
(滑剤塗布機構)
感光体ドラムとクリーニングブレードの間の摩擦力を低減させる目的で、滑剤の塗布機構(滑剤塗布ユニットともいう。)が前記クリーニングブレードの上流又は下流に装着していることが好ましい。
【0229】
ユニットとしては、滑剤を塗布できる機構があれば特に制限されるものではないが、例えば、滑剤を固めて作製した滑剤棒からブラシを介して感光体上に滑剤を供給し、クリーニングブレードとは別の固定化ブレードにて滑剤を塗布する機構などがあげられる。
【0230】
滑剤の種類としては、高級脂肪酸の金属塩が挙げられ、より具体的には、ステアリン酸の亜鉛、アルミニウム、銅、マグネシウム、カルシウムなどの塩;オレイン酸の亜鉛、マンガン、鉄、銅、マグネシウムなどの塩;パルミチン酸の亜鉛、銅、マグネシウム、カルシウムなどの塩;リノール酸の亜鉛、カルシウムなどの塩;リシノール酸の亜鉛、カルシウムなどの塩;が含まれる。
【0231】
上記滑剤の大きさは、体積基準のメディアン径(体積平均粒径)で0.3~20μmの範囲内であることが好ましく、0.5~10μmの範囲内であることがより好ましい。
【0232】
上記外添剤の粒径は、カタログ値であってもよく、実測値であってもよい。
【実施例
【0233】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。
【0234】
<無機粒子Aの作製>
(1)「無機粒子A1」の作製
[メタチタン酸分散液の調製]
メタチタン酸分散液に、4.0モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液によりpHを9.0に調整して脱硫処理を行った後、6.0モル/リットルの塩酸水溶液を添加してpHを5.5に調整して中和処理した。その後、メタチタン酸分散液をろ過、水洗処理して作製したメタチタン酸のケーキ物に水を加え、酸化チタンTiO換算で1.25モル/リットルに相当する分散液に調製した後、6.0モル/リットルの塩酸水溶液でpH1.2に調整した。そして、分散液の温度を35℃に調整して、この温度下で1時間撹拌を行ってメタチタン酸分散液を解膠処理した。
【0235】
[チタン酸化合物1の反応工程]
上記解膠処理を行ったメタチタン酸分散液より、酸化チタンTiO換算で0.156モルに相当するメタチタン酸を採取して反応容器に投入し、続いて、炭酸カルシウムCaCO水溶液を反応容器に投入した。このとき、酸化チタン濃度が0.156モル/リットルとなる様に反応系を調製した。また、炭酸カルシウムCaCOは、酸化チタンに対しモル比で1.15となる様(CaCO/TiO=1.15/1.00)に添加した。
【0236】
上記反応容器内に窒素ガスを供給して、20分間放置することにより反応容器内を窒素ガス雰囲気下にした後、メタチタン酸、炭酸カルシウム、からなる混合溶液を90℃に加温した。続いて、水酸化ナトリウム水溶液を14時間かけてpHが8.0になるまで添加し、その後、90℃で1時間撹拌を続けて反応を終了させた。
【0237】
反応終了後、反応容器内を40℃まで冷却し、窒素雰囲気下で上澄み液を除去した後、純水2500質量部を反応容器内に投入してデカンテーションを繰り返し2回行った。デカンテーション実施後、反応系をヌッチェでろ過処理してケーキ物を形成し、得られたケーキ物を110℃に加熱して大気中で8時間の乾燥処理を行った。
【0238】
得られたチタン酸カルシウムの乾燥物をアルミナ性るつぼに投入し、930℃で脱水するとともに焼成処理した。焼成処理後、チタン酸カルシウムを水中に投入し、サンドグラインダで湿式粉砕処理を行い分散液とした後、6.0モル/リットルの塩酸水溶液を添加してpHを2.0に調整して、過剰分の炭酸カルシウムを除去した。
【0239】
[無機粒子A1疎水化処理]
過剰分の炭酸カルシウムを除去処理した後、イソブチルトリメトキシシランの希釈液(イソブチルシラン10質量部/エタノール90質量部)を準備し疎水化処理をおこなった。窒素雰囲気化でヘンシェルミキサーにて,30分間撹拌することで疎水化処理をした。その際チタン酸カルシウム固形分100質量部に対してイソブチルトリメトキシシランを3.1質量部添加して、処理を行った。前記湿式の表面処理を行った後、4.0モル/リットル水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pHを6.5に調整して中和処理を行い、その後、ろ過、洗浄を行い、150℃で乾燥処理した。さらに、機械式粉砕装置を用いて60分間解砕処理を行って「無機粒子A1」を作製した。
【0240】
(2)「無機粒子A2~A7」の作製
水酸化ナトリウム水溶液をpH8.0になるまで滴下するときの時間を下記表Iのとおりに変更したこと以外無機粒子A1と同様に作製することで、「無機粒子A2~A7」を作製した。
【0241】
(3)「無機粒子A8~A11」の作製
疎水化処理剤を下記表Iのとおりに変更した以外は無機粒子A1と同様に作製することで、「無機粒子A8~A11」を作製した。
【0242】
表Iに記載の疎水化処理に用いたシランカップリング剤は、下記一般式(1)で表され構造を有し、Xとしてアルキル基の炭素数C1、C2、C8、C10を表し、Rはメチル基を表す。
一般式(1): X-Si(OR)
【0243】
(4)「無機粒子A12」の作製
炭酸カルシウムを炭酸バリウムに変更した以外は無機粒子A1と同様に作製することで、「無機粒子A12」を作製した。
【0244】
(5)「無機粒子A13」として、チタン工業社製の「STT30、50nm」を使用した。
【0245】
【表1】
【0246】
<シリカ粒子1の作製>
個数平均一次粒径が20nmの気相法により作製されたシリカ粒子100質量部に、窒素雰囲気下で撹拌しながら、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)20質量部をヘキサン50質量部で希釈した溶液をスプレーした。この反応混合物を280℃で60分間、窒素気流化で撹拌して乾燥し、その後冷却してシリカ粒子1を得た。
【0247】
<シリカ粒子Bの作製>
(1)「シリカ粒子B1」の作製
窒素雰囲気下、反応容器にエタノール200質量部、テトラエトキシシラン12質量部、水6質量部を入れ、500rpmで攪拌しているところに20%アンモニア水10質量部を10分かけて滴下した。30℃で4時間攪拌した後、液量が半分になるまでエバポレーターで濃縮留去した。ここに水を400質量部加え0.3M硝酸でpH4(25℃)に調整したものを、遠心沈降機によって生成物を沈殿させた。上澄み液をデカンテーションで除去した後、凍結乾燥機で約60時間凍結乾燥させた後、シリカ粒子を白色粉末として得た。このシリカ粒子粉末を、ヘキサメチルジシロキサン(HMDS)10質量部をトルエン100質量部に希釈した溶液に添加し、超音波をかけながら1時間攪拌した。次に、シリカ粒子を分散させた溶液をエバポレーターで減圧留去し、液量が半分になった時点でエタノール100質量部を添加した。エバポレーターで減圧留去し、さらに120℃で3時間の加熱を加えて得られた固形物を粉砕して、数平均一次粒径80nm、平均円形度は0.980の粒状のシリカ粒子B1を得た。
【0248】
(2)「シリカ粒子B2」の作製
最初のエタノール量を220質量部に、攪拌数を550rpmに変更した以外はシリカ粒子B1と同様に作製することで、「シリカ粒子B2」を作製した。
【0249】
(3)「シリカ粒子B3」の作製
最初のエタノール量を150質量部に、攪拌数を180rpmに変更した以外はシリカ粒子B1と同様に作製することで、「シリカ粒子B3」を作製した。
【0250】
(4)「シリカ粒子B4」の作製
最初のエタノール量を250質量部に、攪拌数を600rpmに変更した以外はシリカ粒子B1と同様に作製することで、「シリカ粒子B4」を作製した。
【0251】
(5)「シリカ粒子B5」の作製
最初のエタノール量を140質量部に、攪拌数を160rpmに変更した以外はシリカ粒子B1と同様に作成することで、「シリカ粒子B5」を作製した。
【0252】
(6)「シリカ粒子B6」の作製
金属製撹拌棒、滴下ノズル(テフロン(登録商標)製マイクロチューブポンプ)、及び、温度計を有した容積3Lのガラス製反応容器にメタノール600質量部、10%アンモニア水140質量部を入れ、撹拌混合して、アルカリ触媒溶液(1)を得た。このアルカリ触媒溶液(1)を窒素置換した。その後、アルカリ触媒溶液(1)を撹拌しながら、テトラメトキシシラン(TMOS)400質量部と、触媒(NH)濃度が4.4%のアンモニア水160質量部とを、下記供給量で、同時に滴下を開始し、シリカ粒子の懸濁液(シリカ粒子懸濁液(1))を得た。
【0253】
シリカ粒子懸濁液(1)200部に、ヘキサメチルジシロキサン(HMDS)10質量部を添加して疎水化処理を行なった。その後、ホットプレートを用いて、65℃で
加熱し、乾燥させることで、シリカ粒子B6を生成した。
【0254】
(7)「シリカ粒子B7」の作製
最初のアンモニア水を100質量部に変更した以外はシリカ粒子B6と同様に作製することで、「シリカ粒子B7」を作製した。
【0255】
【表2】
【0256】
<アルミナ粒子の作製>
[アルミナ粒子1の作製]
三塩化アルミニウム(AlCl)320kg/hを約200℃で蒸発装置中で蒸発させ、塩化物の蒸気を、窒素により、バーナーの混合チャンバー中に通過させる。ここで、気体流を水素100Nm/h及び空気450Nm/hと混合し、中央チューブ(直径7mm)を介して火炎へ供給する。結果、バーナー温度は230℃であり、チューブの排出速度は約35.8m/sである。水素0.05Nm/hをジャケットタイプの気体として外側チューブを介して供給する。気体は反応チャンバー中で燃焼し、下流の凝集ゾーンで約110℃まで冷却される。そこでは、アルミナの一次粒子の凝集が行われる。同時に生成される塩酸含有ガスから、得られた酸化アルミニウム粒子をフィルター又はサイクロン中で分離し、湿空気を有する粉末を約500~700℃で処理することにより、接着性の塩化物を除去する。こうして個数平均粒径が17nmのアルミナ粒子1を得ることができた。
【0257】
アルミナ粒子の粒径は、反応条件、たとえば火炎温度、水素又は酸素の含有率、三塩化アルミニウムの品質、火炎中での滞留時間又は凝集ゾーンの長さによって変更することができる。
【0258】
(表面処理)
上記で得られたアルミナ粒子1を反応容器に入れて、窒素雰囲気下、粉末を回転羽根で撹拌しながら、アルミナ粉体100gに対して疎水化処理剤イソブチルトリメトキシシラン20gをヘキサン60gで希釈させたものを添加し、200℃120分加熱撹拌後冷却水で冷却し、表面処理されたアルミナ粒子1を得た。
【0259】
[アルミナ粒子2及び3の作製]
火炎温度を変更して、表のような粒径となるようにしたこと以外はアルミナ粒子1を作製するのと同様にして、アルミナ粒子2及び3を作製した。
【0260】
【表3】
【0261】
<トナー母体粒子の作製>
[着色剤粒子分散液1の調製]
n-ドデシル硫酸ナトリウム11.5質量部をイオン交換水160質量部に撹拌、溶解させた溶液を撹拌させており、当該溶液中に銅フタロシアニン24.5質量部を徐々に添加した。次いで、撹拌装置「クレアミックスWモーション CLM-0.8」(エム・テクニック(株)製)を用いて分散処理を行うことにより、体積基準のメディアン径が126nmである着色剤粒子分散液1を調製した。
【0262】
[スチレン・アクリル樹脂粒子分散液1の調製]
〈第一段重合〉
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム4質量部及びイオン交換水3000質量部を仕込み、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。昇温後、過硫酸カリウム10質量部をイオン交換水200質量部に溶解させたものを添加し、液温75℃とし、
・スチレン 584質量部
・アクリル酸n-ブチル 160質量部
・メタクリル酸 56質量部
からなる単量体混合液を1時間かけて滴下後、75℃にて2時間加熱、撹拌しながら重合を行うことにより、樹脂粒子[1]の分散液を調製した。
【0263】
〈第二段重合〉
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム2質量部をイオン交換水3000質量部に溶解させた溶液を仕込み、80℃に加熱後、上記の樹脂粒子[1]42質量部(固形分換算)、マイクロクリスタリンワックス「HNP-0190」(日本精蝋社製)70質量部を、
・スチレン 239質量部
・アクリル酸n-ブチル 111質量部
・メタクリル酸 26質量部
・n-オクチルメルカプタン 3質量部
からなる単量体溶液に80℃にて溶解させた溶液を添加し、循環経路を有する機械式分散機「CLEARMIX」(エム・テクニック社製)により、1時間混合分散させることにより、乳化粒子(油滴)を含む分散液を調製した。
【0264】
次いで、この分散液に、過硫酸カリウム5質量部をイオン交換水100質量部に溶解させた開始剤溶液を添加し、この系を80℃にて1時間にわたって加熱撹拌して重合を行うことにより、樹脂粒子[2]の分散液を調製した。
【0265】
〈第三段重合〉
上記の樹脂粒子[2]の分散液に、さらに、過硫酸カリウム10質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた溶液を添加し、80℃の温度条件下に、
・スチレン 380質量部
・アクリル酸n-ブチル 132質量部
・メタクリル酸 39質量部
・n-オクチルメルカプタン 6質量部
からなる単量体混合液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間にわたって加熱撹拌することにより重合を行った後、28℃まで冷却することにより、スチレン・アクリル樹脂粒子分散液1を得た。
【0266】
[結晶性樹脂粒子分散液1の調製]
〈結晶性樹脂粒子1の合成〉
ポリエステル重合セグメントの材料として、多価カルボン酸化合物のセバシン酸(分子量202.25)220質量部と、多価アルコール化合物の1,12-ドデカンジオール(分子量202.33)298質量部を、窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した反応容器に入れ160℃に加熱し、溶解させた。その後、2-エチルヘキサン酸スズ(II)2.5質量部、没食子酸0.2質量部を加えて210℃に昇温し、8時間反応を行った。さらに8.3kPaにて1時間反応を行い、結晶性樹脂1を得た。
【0267】
得られた結晶性樹脂1は示差走査熱量計「ダイヤモンドDSC」((株)パーキンエルマー社製)を用い、昇温速度10℃/minの条件でDSC曲線を取得した。吸熱ピークトップ温度を測定する手法による融点(Tm)の測定結果は82.8℃であり、また、GPC「HLC-8120GPC」(東ソー社製)による分子量を測定の結果、標準スチレン換算のMwは28000であった。
【0268】
〈結晶性樹脂粒子分散液1の調製〉
上記結晶性樹脂1を100質量部、酢酸エチル400質量部に溶解させた。次いで、5.0質量%の水酸化ナトリウム水溶液25質量部を添加して、樹脂溶液を調製した。この樹脂溶液を、撹拌装置を有する容器へ投入し、樹脂溶液を撹拌しながら、0.26質量%のラウリル硫酸ナトリウム水溶液638質量部を30分間かけて滴下混合した。ラウリル硫酸ナトリウム水溶液の滴下途中、反応容器内の液が白濁し、さらに、ラウリル硫酸ナトリウム水溶液を全量滴下後、樹脂溶液粒子を均一に分散させた乳化液が調製された。次いで、上記乳化液を40℃に加熱し、ダイヤフラム式真空ポンプ「V-700」(BUCHI社製)を使用して、150hPaの減圧下で酢酸エチルを蒸留除去することにより、結晶性ポリエステル樹脂よりなる結晶性樹脂粒子分散液1を得た。
【0269】
(1)トナー母体粒子1の作製
〈凝集・融着工程〉
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、結着樹脂粒子分散液1の分散液300質量部(固形分換算)と、結晶性樹脂粒子分散液1の分散液60質量部(固形分換算)と、イオン交換水1100質量部と、着色剤粒子分散液1 40質量部(固形分換算)とを仕込み、液温を30℃に調整した後、5Nの水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを10に調整した。次いで、塩化マグネシウム60質量部をイオン交換水60質量部に溶解した水溶液を、撹拌下、30℃にて10分間かけて添加した。3分間保持した後に昇温を開始し、この系を60分間かけて85℃まで昇温し、85℃を保持したまま凝集し粒子成長反応を継続した。この状態で、「コールターマルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)にて凝集粒子の粒径を測定し、体積基準のメディアン径が6.2μmになった時点で、塩化ナトリウム40質量部をイオン交換水160質量部に溶解した水溶液を添加して粒子成長を停止させ、さらに、熟成工程として液温度80℃にて1時間にわたって加熱撹拌することにより粒子間の融着を進行させ、これにより、円形度が0.97のトナー母体粒子1の分散液を調製した。
【0270】
〈洗浄・乾燥工程〉
調製したトナー母体粒子1分散液をバスケット型遠心分離機「MARKIII 型式番号60×40+M」(松本機械(株)製)で固液分離し、トナー母体粒子1のウェットケーキを形成した。このウェットケーキを、前記バスケット型遠心分離機で濾液の電気伝導度が5μS/cmになるまで40℃のイオン交換水で洗浄し、その後「フラッシュジェットドライヤー」((株)セイシン企業製)に移し、水分量が0.5質量%となるまで乾燥することにより、トナー母体粒子1を作製した。
【0271】
(2)トナー母体粒子2~5の作製
熟成工程の時間を調整したこと以外はトナー母体粒子1と同様に作成することで、「トナー母体粒子2~5を作製した。
【0272】
【表4】
【0273】
<トナーの作製>
[トナー1の作製]
上記のようにして作製した「トナー母体粒子1」に、
・シリカ粒子1(HMDS処理、個数平均一次粒子径=20nm) 1.0質量部
・無機粒子A1 0.5質量部
・シリカ粒子B1 1.0質量部
を添加し、ヘンシェルミキサー型式「FM20C/I」(日本コークス工業(株)製)に添加し、羽根先端周速が50m/sとなるようにして回転数を設定して20分間撹拌し、トナー母体粒子1からなる「トナー1」を作製した。
【0274】
また、外添混合時の内温は40℃±1℃となるように設定し、41℃になった場合は、ヘンシェルミキサーの外浴に冷却水を5L/分の流量で冷却水を流し、39℃になった場合は、1Lf/分となるように冷却水を流すことでヘンシェルミキサー内部の温度制御を実施した。
【0275】
[トナー2~17及び22~27の作製]
表V、表VIのように外添剤を変更したこと以外はトナー1と同様にして、トナー2~17及び22~27を作製した。
【0276】
[トナー18~20の作製]
下記表Vのようにアルミナ粒子1~3の0.03質量部をトナー1に追加で添加したこと以外はトナー1と同様に作製することで、「トナー18~20」を作製した。
【0277】
[トナー21の作製]
上記のようにして作製した「トナー母体粒子1」に、
・シリカ粒子1(HMDS処理、個数平均一次粒子径=20nm) 1.0質量部
・無機粒子A1 0.5質量部
・シリカ粒子B1 1.0質量部
・滑剤粒子「MZ-2」;日油社製) 0.3質量部
を添加し、ヘンシェルミキサー型式「FM20C/I」(日本コークス工業(株)製)に添加し、羽根先端周速が50m/sとなるようにして回転数を設定して20分間撹拌し、トナー母体粒子1からなる「トナー21」を作製した。
【0278】
また、外添混合時の内温は40℃±1℃となるように設定し、41℃になった場合は、ヘンシェルミキサーの外浴に冷却水を5L/分の流量で冷却水を流し、39℃になった場合は、1L/分となるように冷却水を流すことでヘンシェルミキサー内部の温度制御を実施した。
【0279】
<現像剤の作製>
(現像剤1の作製)
上記のようにして作製したトナー1、下記作製したキャリア1を、トナー濃度が6.5質量%となるようにして混合し現像剤1を作製し以下の評価に供した。混合機は、V型混合機を用いて30分間混合した。
【0280】
(現像剤2~27の作製)
表V及び表VIのようにトナー1を変更したこと以外は現像剤1と同様にして、現像剤2~17を作製した。
【0281】
〈キャリア1の作製〉
(キャリア芯材粒子1の作製)
MnO:35mol%、MgO:14.5mol%、Fe:50mol%及びSrO:0.5mol%になるように原料を秤量し、水と混合した後、湿式のメディアミルで5時間粉砕してスラリーを得た。
【0282】
得られたスラリーをスプレードライヤーにて乾燥し、真球状の粒子を得た。この粒子を粒度調整した後、950℃で2時間加熱し、仮焼成を行った。直径0.3cmのステンレスビーズを用いて湿式ボールミルで1時間粉砕したのち、さらに直径0.5cmのジルコニアビーズを用いて4時間粉砕した。バインダーとしてPVAを固形分に対して0.8質量%添加し、次いでスプレードライヤーにより造粒、乾燥し、電気炉にて、温度1350℃、5時間保持し、本焼成を行った。
【0283】
その後、解砕し、さらに分級して粒度調整し、その後磁力選鉱により低磁力品を分別し、キャリア芯材粒子1を得た。キャリア芯材粒子1の粒径は35μmであった。
【0284】
(芯材被覆用樹脂1の作製)
0.3質量%のベンゼンスルホン酸ナトリウムの水溶液中に、メタクリル酸シクロヘキシル及びメタクリル酸メチルを「質量比=5:5」(共重合比)で添加し、単量体総量の0.5質量%にあたる量の過硫酸カリウムを添加して乳化重合を行い、スプレードライで乾燥することで、「被覆材1」を作製した。得られた被覆材1における重量平均分子量は50万であった。
【0285】
(キャリア1の作製)
水平撹拌羽根付き高速撹拌混合機に、芯材粒子として上記で準備した「キャリア芯材粒子1」100質量部と、「被覆材1」を4.5質量部投入し、水平回転翼の周速が8m/secとなる条件で、22℃で15分間混合撹拌した後、120℃で50分混合して機械的衝撃力(メカノケミカル法)の作用で芯材粒子の表面に被覆材を被覆させて、「キャリア1」を製造した。
【0286】
≪評価方法≫
(1)トナーのクリーニング性
滑剤粒子を添加しない水準では滑剤塗布機構を有する評価用電子写真画像形成装置として、市販の電子写真画像形成装置「bizhub PRESS C1070」(コニカミノルタ社製)を用い、滑剤粒子を添加した水準では、滑剤塗布機構を有さない評価用電子写真画像形成装置として、市販の電子写真画像形成装置「bizhubC759」(コニカミノルタ社製)を用いた。
【0287】
低温低湿度(10℃・20%RH)の環境下にて、A4サイズの記録用紙に印字面積率10%平網画像と印字面積率0%画像(白紙)を半々ずつ含む画像を50000枚まで連続で出力した。この50000枚の時の出力サンプルの0%画像部分にクリーニング劣化による地汚れもしくはスジ状の汚れが発生が観られるか、以下の基準に従って評価した。なお、評価の中で、0%画像部分の反射濃度はマクベス反射濃度計RD907を用い、未出力の紙面濃度を0として、相対反射濃度として計測した。反射濃度が0.10以下を合格とした。評価ランクは以下のとおり。
◎:反射濃度が0.04以下
〇:反射濃度が0.04を超え、0.10以下
×:反射濃度が0.10を超える
【0288】
(2)外添剤の脱離による縦筋評価
滑剤粒子を添加しない水準では滑剤塗布機構を有する評価用電子写真画像形成装置として、市販の電子写真画像形成装置「bizhub PRESS C1070」(コニカミノルタ社製)を用い、滑剤粒子を添加した水準では、滑剤塗布機構を有さない評価用電子写真画像形成装置として、市販の電子写真画像形成装置「bizhubC759」(コニカミノルタ社製)を用いた。
【0289】
低温低湿度(10℃・20%RH)の環境下にて、印字面積率10%の横帯を300000枚印刷した。
【0290】
その後、A3で両端に横幅30mm縦帯のチャートを100枚印刷し、ハーフトーン画像を出力した。このハーフトーン画像を観察し、縦筋が発生していないか確認した。発生していない場合には縦帯チャートをさらに100枚印刷し、ハーフトーン画像に縦筋が発生するまで繰り返し、発生するまでに印刷した縦帯チャートの総数を評価した。
【0291】
上記縦帯チャートの総数が3000枚以上を合格とした。評価ランクは以下のとおり。
【0292】
◎:縦帯チャートの総数が4500枚を超える
〇:縦帯チャートの総数が3000枚以上4500枚以下
×:縦帯チャートの総数が3000枚未満
トナーの構成と上記評価結果を、下記表V及び表VIに示す。
【0293】
【表5】
【0294】
【表6】
【0295】
表V及び表VIの結果から、本発明の静電荷像現像用トナーは、クリーニング不良、及びハーフトーン画像における縦筋の画像不良を抑制したトナーであることが明らかである。
【符号の説明】
【0296】
100 画像形成装置
30 画像処理部
40 画像形成部
50 用紙搬送部
60 定着装置
411 露光装置
412 現像装置
413 感光体ドラム
414 帯電装置
42 中間転写ユニット
421 中間転写ベルト(中間転写体)
110 画像読取部
図1