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特許7508780酸化セリウムのナノ粒子、酸化セリウムのナノ粒子の製造方法、ポリペプチドの分解方法、酸化酵素代替物、漂白剤、消毒剤、抗酸化酵素代替物、ラジカル消去剤、抗カビ剤および抗ウイルス剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】酸化セリウムのナノ粒子、酸化セリウムのナノ粒子の製造方法、ポリペプチドの分解方法、酸化酵素代替物、漂白剤、消毒剤、抗酸化酵素代替物、ラジカル消去剤、抗カビ剤および抗ウイルス剤
(51)【国際特許分類】
   C01F 17/235 20200101AFI20240625BHJP
   A61K 33/244 20190101ALI20240625BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20240625BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20240625BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20240625BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240625BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20240625BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20240625BHJP
   B82Y 5/00 20110101ALI20240625BHJP
【FI】
C01F17/235
A61K33/244
A61P31/10
A61P31/12
A61K9/16
A61K47/32
A61K47/34
B82Y40/00
B82Y5/00
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019570583
(86)(22)【出願日】2019-12-17
(86)【国際出願番号】 JP2019049348
(87)【国際公開番号】W WO2020129963
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】P 2018236451
(32)【優先日】2018-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関口 翔太
(72)【発明者】
【氏名】松田 和大
(72)【発明者】
【氏名】本白水 崇光
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 正照
【審査官】小川 武
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/159763(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/019849(WO,A1)
【文献】特表2016-514163(JP,A)
【文献】国際公開第2012/053497(WO,A1)
【文献】特表2017-514670(JP,A)
【文献】特開2016-029123(JP,A)
【文献】特開2003-213589(JP,A)
【文献】特表2008-532246(JP,A)
【文献】特開2001-083713(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0088116(US,A1)
【文献】MERRIFIELD Ruth. C. et al.,Synthesis and Characterization of Polyvinylpyrrolidone Coated Cerium Oxide Nanoparticles,Environmental Science & Technology,2013年,vol.47,pp.12426-12433,METHODOLOGY, Table.1, p.12431左欄32行-右欄1-2行
【文献】ACS Nano, 2014, vol.8, No.10, pp.10328-10342
【文献】ZHOU Fu. et al.,CeO2 Spherical Crystallites: Synthesis, Formation Mechanism, Size Control, and Electrochemical Prope,Journal of Physical Chemistry,2007年,vol.111,pp.1651-1657,2. Experimental Section
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01F 17/00,17/10
A61K 33/244
A61P 31/10
A61P 31/12
A61K 9/16
A61K 47/32
A61K 47/34
B82Y 40/00
B82Y 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピペラジン、ピリジン、イミダゾールまたはカルバゾール骨格を側鎖に有するビニル系ポリマーで表面が被覆された、酸化セリウムのナノ粒子。
【請求項2】
X線吸収微細構造スペクトル測定によって得られるCe L3端XANESスペクトルは、5726.0~5729.0eVおよび5735.0~5739.0eVの間に極大吸収を有する請求項1に記載の酸化セリウムのナノ粒子。
【請求項3】
ポリマーで表面が被覆された酸化セリウムのナノ粒子の製造方法であって、
工程a:複素環式アミン骨格を有するポリマーの溶液と、セリウム(III)イオンを含む溶液またはセリウム(III)塩とを混合し、混合溶液を得る工程、および
工程b:工程aで得られた混合溶液にセリウム(III)イオンをセリウム(IV)イオンに酸化するための酸化剤を添加する工程、
を含み、
前記複素環式アミン骨格を有するポリマーが、ピペラジン、ピリジン、イミダゾールもしくはカルバゾールのいずれかを側鎖に有するビニル系ポリマー、またはポリアミドである、酸化セリウムのナノ粒子の製造方法
【請求項4】
請求項3に記載の製造方法によって得られる、酸化セリウムのナノ粒子。
【請求項5】
ポリペプチドを含む試料を請求項1、2または4に記載の酸化セリウムのナノ粒子と接触させる、ポリペプチドの分解方法。
【請求項6】
請求項1、2または4のいずれか一つに記載の酸化セリウムのナノ粒子を含む酸化酵素代替物
【請求項7】
請求項1、2または4に記載の酸化セリウムのナノ粒子を含む漂白剤。
【請求項8】
請求項1、2または4に記載の酸化セリウムのナノ粒子を含む消毒剤。
【請求項9】
請求項1、2または4のいずれか一つに記載の酸化セリウムのナノ粒子を含む抗酸化酵素代替物
【請求項10】
請求項1、2または4に記載の酸化セリウムのナノ粒子を含むラジカル消去剤。
【請求項11】
請求項1、2または4のいずれか一つに記載の酸化セリウムのナノ粒子を含む抗カビ剤。
【請求項12】
請求項1、2または4のいずれか一つに記載の酸化セリウムのナノ粒子を含む抗ウイルス剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーで表面が被覆された酸化セリウムのナノ粒子、当該ナノ粒子を用いた核酸またはポリペプチドの分解方法、酸化セリウムのナノ粒子の製造方法、酸化剤、抗酸化剤、抗カビ剤および抗ウイルス剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、安全や衛生管理に対する意識が高まる中で、有害物質や微生物を分解する抗菌技術が注目されている。例えば、酸化チタンは、光触媒特性によって活性酸素種を発生させ、有機物を酸化分解する特性を有しており、抗菌剤としての利用の他、アセトアルデヒドやアンモニアなどの低分子、アレルゲン、ウイルスなどの各種有害物質を分解する用途への利用も期待されている。
【0003】
一方、酸化セリウムのナノ粒子(ナノセリア)は、酸化作用、抗酸化作用、抗菌作用など様々な特性を有し、カタラーゼ、オキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、ホスファターゼ等の酵素と同様の触媒活性を有することも知られている。また、酸化セリウムのナノ粒子は、光触媒特性を有する酸化チタンとは異なる用途への利用が期待できる。
しかしながら、一般に、ナノ粒子は凝集しやすい性質がある。酸化セリウムのナノ粒子も凝集しやすいため、粒子表面をポリマーなどでコーティングして粒子の分散性を向上させ、酸化剤や抗菌剤等に用いる場合がある。
【0004】
非特許文献1、2には、表面がポリアクリル酸やデキストランで被覆された酸化セリウムのナノ粒子が記載されており、酸化活性や抗菌活性などが検討されている。
また、非特許文献3には、ポリマーの代わりにスルホコハク酸-ビス(2-エチルヘキシル)ナトリウムで表面が被覆された酸化セリウムのナノ粒子が記載されており、ホスファターゼ活性について検討されている。さらに、非特許文献3には、酸化セリウムのナノ粒子は、リン酸エステルを加水分解するホスファターゼ活性を有しているが、核酸については分解できなかったことが開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】A.Asati,Angew. Chem. Int. Ed. 2009, 48, 2308-2312.
【文献】M.H.Kuchma,Nanomedicine: Nanotechnology, Biology, and Medicine 2010, 6, 738-744.
【文献】Q.Wang,International Journal of Nanomedicine 2013, 8, 3395-3399.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、ポリマーで表面が被覆された酸化セリウムのナノ粒子を用いる新たな用途の検討を行った。しかし、後述する核酸およびポリペプチドの分解試験のとおり、非特許文献1に記載のポリアクリル酸で表面が被覆された酸化セリウムのナノ粒子を用いて、プラスミドやポリペプチドの分解を試みたところ、プラスミドについては、非特許文献3において報告されている結果と同様に、分解を確認することができなかった。また、ポリペプチドについては、分解率が非常に低いことがわかった。
これらの結果から、核酸やポリペプチドを高い分解率で分解することができる新規な酸化セリウムのナノ粒子を見いだすことを課題として、検討を行った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために、酸化セリウムのナノ粒子の表面を被覆するポリマーについて検討した。その結果、ピペラジン、ピリジン、イミダゾールまたはカルバゾールの骨格を有するビニル系ポリマーまたはポリアミドで表面が被覆された酸化セリウムのナノ粒子が、核酸やポリペプチドを高い分解率で分解可能であることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
本発明は以下のとおりである。
(1)複素環式アミン骨格を有するビニル系ポリマーまたはポリアミドで表面が被覆された、酸化セリウムのナノ粒子。
(2)前記複素環式アミン骨格は、ピペラジン、ピリジン、イミダゾールまたはカルバゾールのいずれかにより構成される、(1)に記載の酸化セリウムのナノ粒子。
(3)前記ビニル系ポリマーが、前記複素環式アミン骨格を側鎖に有するポリマーであることを特徴とする(1)に記載の酸化セリウムのナノ粒子。
(4)前記ポリアミドが、前記複素環式アミン骨格を主鎖に有するポリマーであることを特徴とする(1)に記載の酸化セリウムのナノ粒子。
(5)X線吸収微細構造スペクトル測定によって得られるCe L3端XANESスペクトルは、5726.0~5729.0eVおよび5735.0~5739.0eVの間に極大吸収を有することを特徴とする(1)~(4)のいずれか一つに記載の酸化セリウムのナノ粒子。
【0009】
(6)核酸を含む試料を(1)~(5)のいずれか一つに記載の酸化セリウムのナノ粒子と接触させることを特徴とする、核酸の分解方法。
(7)ポリペプチドを含む試料を(1)~(5)のいずれか一つに記載の酸化セリウムのナノ粒子と接触させることを特徴とする、ポリペプチドの分解方法。
(8)ポリマーで表面が被覆された酸化セリウムのナノ粒子の製造方法であって、
工程a:複素環式アミン骨格を有するポリマーの溶液と、セリウム(III)イオンを含む溶液またはセリウム(III)塩とを混合し、混合溶液を得る工程、および
工程b:工程aで得られた混合溶液に酸化剤を添加する工程、
を含む、酸化セリウムのナノ粒子の製造方法。
(9)(1)~(5)のいずれか一つに記載の酸化セリウムのナノ粒子を含む酸化剤。
(10)(1)~(5)のいずれか一つに記載の酸化セリウムのナノ粒子を含む抗酸化剤。
(11)(1)~(5)のいずれか一つに記載の酸化セリウムのナノ粒子を含む抗カビ剤。
(12)(1)~(5)のいずれか一つに記載の酸化セリウムのナノ粒子を含む抗ウイルス剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明の酸化セリウムのナノ粒子を用いれば、核酸やポリペプチドを、従来のナノ粒子より高い分解率で分解することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明で用いるポリマーの構造を説明する図である。
図2図2は、本発明で用いるピペラジン骨格を有するポリマーの構造を説明する図である。
図3図3は、本発明の実施例15の抗カビ試験を説明する図である。
図4図4は、本発明の実施例15の抗カビ試験の結果を説明する図である。
図5図5は、実施例2で調製した本発明の酸化セリウムのナノ粒子のCeL3端XANESスペクトルを示す図である。
図6図6は、比較例1で調製した本発明の酸化セリウムのナノ粒子のCeL3端XANESスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の複素環式アミン骨格を有するビニル系ポリマーまたはポリアミドで表面が被覆された酸化セリウムのナノ粒子は、本明細書中で、本発明の酸化セリウムのナノ粒子と記載する場合がある。
本発明で用いるビニル系ポリマーまたはポリアミドは、図1に示すように、ピペラジン、ピリジン、イミダゾールまたはカルバゾール等の複素環式アミン骨格Rを主鎖(図1(a))または側鎖(図1(b)および(c))に有する。本発明にかかるビニル系ポリマーまたはポリアミドは、主鎖や側鎖の任意の位置に置換基を有していてもよいし、ピペラジン、ピリジン、イミダゾールまたはカルバゾール等の複素環式アミン骨格の任意の位置に置換基を有していてもよい。図1(a)に示すポリマーでは、主鎖中に複素環式アミン骨格を有し、側鎖中に置換基R1およびR2を有している。図1(b)に示すポリマーでは、側鎖中に複素環式アミン骨格を有し、複素環式アミン骨格の置換基として置換基R2を有している。図1(c)に示すポリマーでは、側鎖中に複素環式アミン骨格を有し、複素環式アミン骨格は側鎖の置換基R1の置換基であって、複素環式アミン骨格の置換基として置換基R3を有している。図1(a)~(c)に示す構造は、本発明で用いるビニル系ポリマーまたはポリアミドの例示であり、これに限定されるものではない。なお、本明細書中で特に断らない限り、置換基は、アルキル基、アセチル基、ヒドロキシル基、アミノ基、シアノ基、カルボキシル基、エステル基、アルデヒド基、アミド基、エーテル基、ケトン基、ハロゲン基、スルホン酸基またはリン酸基である。置換基の数は単数でも複数でもよい。
【0013】
本発明で用いるビニル系ポリマーは、主鎖にメチレン基を有しているポリマーである。例として、ピペラジン骨格を主鎖または側鎖に有するビニル系ポリマーの構造を図2(a)、(b)に示す。図2(a)に示すように、ピペラジン骨格を主鎖に有する場合、主鎖のメチレン基とメチレン基の間に、ピペラジン骨格を有する。ピリジン、イミダゾールまたはカルバゾール骨格等の他の複素環式アミン呼格を主鎖に有する場合も図2(a)と同様に、メチレン基とメチレン基の間に、複素環式アミン骨格を有する。
【0014】
本発明で用いるビニル系ポリマーの側鎖に、ピペラジン骨格を有する場合、図2(b)に示すように、メチレン基の炭素にピペラジン骨格直接が結合していてもよいし、アルキル基、アミノ基を介してピペラジン骨格が結合していてもよい。ピリジン、イミダゾールまたはカルバゾール骨格等の他の複素環式アミン骨格を有する場合、図2(b)と同様に、メチレン基の炭素にピリジン、イミダゾールまたはカルバゾール骨格等の複素環式アミン骨格が直接結合していてもよいし、アルキル基、アミノ基を介して結合していてもよい。
【0015】
本発明で用いるビニル系ポリマーは、側鎖にピペラジン、ピリジン、イミダゾールまたはカルバゾール骨格を有するビニル系ポリマーが好ましい。側鎖にピペラジン、ピリジン、イミダゾールまたはカルバゾール骨格を有するビニル系ポリマーは、ビニル基を有するビニル系モノマーの重合反応によって得られる。
【0016】
ビニル系モノマーの具体例としては、1-ビニルピペラジン、(4-ビニルピペラジン-1-イル)メタンアミン、2-(4-ビニルピペラジン-1-イル)エタン-1-アミン、2-ビニルピペラジン、(3-ビニルピペラジン-1-イル)メタンアミン、2-(3-ビニルピペラジン-1-イル)エタン-1-アミン、(2-ビニルピペラジン-1-イル)メタンアミン、2-(2-ビニルピペラジン-1-イル)エタン-1-アミン、2-ビニルピリジン、3-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、1-ビニルイミダゾール、2-ビニルイミダゾール、4-ビニルイミダゾール、9-ビニルカルバゾールなどが挙げられる。また、上記ビニル系モノマーは、ビニル基以外の任意の位置に、置換基を有していてもよく、ビニル基には、メチル基やシアノ基を置換基として有していてもよい。
本発明で用いるビニル系ポリマーは、ホモポリマーであってもよいし、2種類以上のビニル系モノマーを原料としたコポリマーであってもよい。
【0017】
本発明で用いるビニル系ポリマーの好ましい具体例は、ポリ(1-ビニルピペラジン)、ポリ((4-ビニルピペラジン-1-イル)メタンアミン)、ポリ(2-(4-ビニルピペラジン-1-イル)エタン-1-アミン)、ポリ(2-ビニルピリジン)、ポリ(3-ビニルピリジン)、ポリ(4-ビニルピリジン)、ポリ(1-ビニルイミダゾール)、ポリ(2-ビニルイミダゾール)、ポリ(4-ビニルイミダゾール)、ポリ(9-ビニルカルバゾール)である。
【0018】
本発明で用いるポリアミドは、主鎖にアミド結合を有しているポリマーである。図2(c)に示すように、ピペラジン骨格を主鎖に有する場合、主鎖のカルボニル基とカルボニル基の間に、ピペラジン骨格を有し、ピペラジン骨格の複素環中の窒素とカルボニル基がアミド結合を構成している。ピリジン、イミダゾールまたはカルバゾール骨格等の1級または2級のアミノ基を2以上有する他の複素環式アミン呼格を主鎖に有する場合も、図2(c)と同様に、カルボニル基とカルボニル基の間に、複素環式アミン骨格を有する。
【0019】
本発明で用いるポリアミドに、ピペラジン骨格を有する場合、図2(d)に示すように、アミド基を連結する炭素にピペラジン骨格直接が結合していてもよいし、アルキル基、アミノ基を介してピペラジン骨格が結合していてもよい。ピリジン、イミダゾールまたはカルバゾール骨格等の他の複素環式アミン骨格を有する場合、図2(d)と同様に、アミド基を連結する炭素にピリジン、イミダゾールまたはカルバゾール骨格等の複素環式アミン骨格が直接結合していてもよいし、アルキル基、アミノ基を介して結合していてもよい。
【0020】
本発明で用いるポリアミドは、ピペラジン骨格を主鎖または側鎖に有するポリマーが好ましく、図2(c)に示す、ピペラジン骨格を主鎖に有するポリマーがより好ましい。
本発明で用いる主鎖にピペラジン骨格を有するポリアミドは、ピペラジン骨格を有するアミンと、ジカルボン酸との重縮合反応によって得られる。
【0021】
ピペラジン骨格を有するアミンの好ましい例としては、ピペラジン、(アミノメチル)ピペラジン、(アミノエチル)ピペラジン、(アミノプロピル)ピペラジン、(アミノブチル)ピペラジン、1,4-ビス(アミノメチル)ピペラジン、1,4-ビス(2-アミノエチル)ピペラジン、1,4-ビス(3-アミノプロピル)ピペラジン、1,4-ビス(4-アミノブチル)ピペラジンなどが挙げられる。これらの中でも、(アミノエチル)ピペラジン、1,4-ビス(3-アミノプロピル)ピペラジンがより好ましい。また、これらのアミンは、アミド結合を形成し得る窒素以外の任意の位置に、置換基を有していてもよい。
【0022】
ジカルボン酸の好ましい例としては、1H-イミダゾール-2,4-ジカルボン酸、1H-イミダゾール-2,5-ジカルボン酸、1H-イミダゾール-4,5-ジカルボン酸、ピリジン-2,3-ジカルボン酸、ピリジン-2,4-ジカルボン酸、ピリジン-2,5-ジカルボン酸、ピリジン-2,6-ジカルボン酸、ピリジン-3,4-ジカルボン酸、ピリジン-3,5-ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などが挙げられる。また、これらのジカルボン酸は、アミド結合を形成し得るカルボキシル基以外の任意の位置に、置換基を有していてもよい。
【0023】
本発明で用いるポリアミドは、上記のアミンとジカルボン酸の組み合わせで得られるポリアミドであれば好ましく用いることができ、(アミノエチル)ピペラジンとアジピン酸の組み合わせで得られるポリアミドが特に好ましい。
また、本発明で用いるポリアミドは、主鎖にポリアルキレングリコールの構造を有していてもよい。具体的には、(アミノエチル)ピペラジン、アジピン酸、およびビス(アミノプロピル)ポリエチレングリコールの骨格を有するポリアミドが挙げられる。
【0024】
また、本発明で用いるポリアミドは、ピペラジン、ピリジン、イミダゾールまたはカルバゾール等の複素環式アミン骨格を有するポリアミドと、その他のポリマーとの混合物や、共重合体であってもよい。この場合、その他のポリマーの具体例としては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリペンタメチレンアジパミド(ナイロン56)、ポリペンタメチレンセバカミド(ナイロン510)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/6I)、ポリキシリレンアジパミド(ナイロンXD6)などが挙げられる。
【0025】
本発明で用いるビニル系ポリマーやポリアミドの分子量は、3000以上1000000以下であればよく、10000以上50000以下であることが好ましい。
【0026】
本発明の酸化セリウムのナノ粒子は、CeとCeOの混合物で構成される酸化セリウム粒子(本明細書中では中心核と記載する場合がある)を中心として、その表面が上記のポリマーで被覆された構造を有する。中心核の粒径は、1nm以上100nm以下程度であればよい。当該粒子径は、透過型電子顕微鏡を使って、長軸径、短軸径、定方向径のうち2つ以上の長さを測定し、その平均値を粒子径として算出する。
【0027】
中心核のCeとCeO2の比率は、セリウム(III)とセリウム(IV)の比として算出することができる。比を算出する際には、本発明の酸化セリウムのナノ粒子を乾燥させ、X線光電子分光法(XPS)により算出すればよい。CeとCeOにおけるセリウム(III)とセリウム(IV)のエネルギー状態は、X線吸収微細構造スペクトル測定(X-ray Absorption Fine Structure ; XAFS)により観察することができる。XAFSスペクトル中、吸収端より約20eVの構造がXANES(X-ray Absorption Near Edge Structure)、吸収端より約100eV以上高エネルギー側に現れる広域X線吸収微細構造がEXAFS(Extended X-ray Absorption Fine Structure)と呼ばれる。XANESから着目原子の価数や構造に関する情報が得られ、EXAFS解析では、実スペクトルのフーリエ変換(FT-EXAFS/動径分布関数に相当)により、試料の局所構造、着目原子周囲の原子種、価数、距離、に関する情報が得られる。酸化セリウムの酸化還元反応に関するセリウム(III)とセリウム(IV)のエネルギー状態は、XANESスペクトルの極大吸収のピーク位置やピーク強度比に反映される。
【0028】
X線吸収微細構造スペクトル測定によって得られるCe L3端XANESスペクトルは、5726.0~5729.0eVおよび5735.0~5739.0eVの間に極大吸収を有することが好ましい。
【0029】
本発明の酸化セリウムのナノ粒子の好ましい粒径は、表面のポリマー層を含めて、流体力学的直径として、200nm以下が好ましい。流体力学的直径は、本発明の酸化セリウムのナノ粒子を、水、エタノール、ピリジンなどの任意の溶媒に溶解し、動的光散乱を測定して自己相関関数を導き、マルカート法(Marquadt法)によって解析し、個数変換ヒストグラムから平均粒子径として算出する。動的光散乱の測定には、大塚電子株式会社のELS-Zを用いる。
【0030】
本発明の酸化セリウムのナノ粒子は、工程a:ピペラジン、ピリジン、イミダゾールまたはカルバゾール等の複素環式アミン骨格を有するポリマーの溶液と、セリウム(III)イオンを含む溶液またはセリウム(III)塩とを混合し、混合溶液を得る工程、および工程b:工程aで得られた混合溶液に酸化剤を添加する工程、を含む、酸化セリウムのナノ粒子の製造方法によって製造することができる。以下、本発明の酸化セリウムのナノ粒子の製造方法を工程別に説明する。
【0031】
工程aは、ピペラジン、ピリジン、イミダゾールまたはカルバゾール等の複素環式アミン骨格を有するポリマーの溶液と、セリウム(III)イオンを含む溶液またはセリウム(III)塩とを混合し、混合溶液を得る工程である。工程aで用いるポリマーの溶液は、上記のポリマーを任意の溶媒に溶解して調製することができる。溶媒は、水または水と相溶性のある溶媒が好ましい。水と相溶性のある溶媒の具体例としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、グリセロール、エチレングリコール、アセトン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、トリエチルアミン、ピリジンなどが挙げられる。ポリアミドやポリビニルイミダゾールであれば水に溶解することが好ましく、ポリ(4-ビニルピリジン)、ポリ(2-ビニルピリジン)であれば80%エタノール水溶液に溶解することが好ましく、ポリビニルカルバゾールであればピリジンに溶解することが好ましい。ポリマーが溶解しにくい場合、加温や超音波処理をして溶解してもよい。
ポリマーの溶液の濃度は質量濃度で、0.01%以上5%以下が好ましく、0.1%以上2%以下がより好ましい。
【0032】
ポリマーの溶液と、セリウム(III)イオンを含む溶液またはセリウム(III)塩との混合方法は、ポリマーの溶液と、セリウム(III)イオンを含む溶液をそれぞれ調製して混合してもよいし、ポリマーの溶液の溶媒が水または、水と相溶性のある溶媒である場合には、ポリマーの溶液にセリウム(III)塩を添加して混合してもよい。セリウム(III)イオンを含む溶液は、セリウム(III)塩を任意の溶媒に溶解して調製すればよい。セリウム(III)塩には、例えば硝酸セリウム(III)・六水和物を用いればよい。
【0033】
セリウム(III)塩として、硝酸セリウム(III)・六水和物を用いる場合には、ポリマーに対する硝酸セリウム(III)・六水和物の質量比が、0.1以上5.0以下になるように混合することが好ましい。混合溶液は、溶液が均一になるまで5分以上混合することが好ましい。
【0034】
工程bは、工程aで得られた混合溶液に酸化剤を添加する工程である。工程bで用いる酸化剤は、次亜塩素酸、過マンガン酸塩、クロム酸、二クロム酸、過酸化水素などが挙げられる。これらの中でも特に過酸化水素が好ましい。添加量は、セリウム(III)イオンに対してモル等量として、0.1等量以上10等量以下であればよく、好ましくは1等量以上2等量以下である。
【0035】
工程aで得られた混合溶液に酸化剤を添加すると、セリウム(III)イオンがセリウム(IV)に酸化され、CeとCeOの混合物で構成される酸化セリウム粒子を中心として、その表面が上記のポリマーで被覆された粒子の形成反応が開始される。ポリマーとセリウム(III)イオンの混合溶液に酸化剤を添加すると、本発明の酸化セリウムのナノ粒子の形成反応が始まる。また、その反応の際には、溶液が黄色、橙色、赤色、褐色などに着色する。これは、セリウム(III)イオンが、セリウム(IV)に変化することによる呈色であり、着色度合いは、酸化セリウムのナノ粒子の表面に存在するセリウム(III)とセリウム(IV)の比で決定する。反応終了は色の変化がなくなった点で判断することができる。通常30分~1時間程度で反応は終了する。
【0036】
例えば、0.1質量%のポリビニルイミダゾール水溶液5mlに対し、10質量%の硝酸セリウム(III)六水和物水溶液を100μl添加して混合し、その後、1.2質量%の過酸化水素水溶液を100μl添加して40℃に加温すると、溶液が最初は黄色に変化し、その後徐々に黄色が濃くなり、最終的に橙色に変化して反応が終了する。
【0037】
本発明の酸化セリウムのナノ粒子の大きさは、ポリマーの溶液の濃度によって調整することができる。高い濃度のポリマーの溶液を用いれば、大きな粒径の粒子が得られ、低い濃度のポリマーの溶液を用いれば、小さな粒径の粒子が得られる。
【0038】
本発明の酸化セリウムのナノ粒子の大きさは、他には反応温度で調整することもできる。反応温度をポリマーのガラス転移温度(Tg)以上にすれば、大きな粒径の粒子が得られ、Tg未満にすれば、小さな粒径の粒子が得られる。反応温度は4~95℃の間で任意に設定することができる。
【0039】
本発明の酸化セリウムのナノ粒子は、反応終了後の溶液中で保存してもよいし、本発明の酸化セリウムのナノ粒子を反応終了後の溶液から取り出して、乾燥させた状態で保存してもよい。溶液中で保存する場合、冷蔵保存が好ましい。本発明の酸化セリウムのナノ粒子を乾燥させる場合には、まず、反応終了後の溶液を限外ろ過膜で濾過したり、半透明膜で透析したりして、反応終了後の溶液中に残存している未反応の酸化剤およびセリウム(III)イオン並びに余分なポリマーを除去し、エバポレーターや凍結乾燥機などを用いて乾燥させればよい。
【0040】
本発明の酸化セリウムのナノ粒子を用いれば、核酸やポリペプチドを分解することができる。例えば、核酸とポリペプチドを主成分とする、ウイルスを分解できる可能性がある。また、ポリペプチドを主成分とする、アレルゲンを分解できる可能性がある。
【0041】
本明細書において、核酸を分解するとは、核酸を構成するヌクレオチド鎖に切断が起こることを意味する。核酸が分解されると、核酸の立体構造が変化したり、核酸の断片化がおきたりする。例えば、プラスミドのような環状2本鎖核酸の場合、核酸が切断されていない状態では、クローズドサーキュラー構造、2本鎖のうちの1本が切断されるとオープンサーキュラー構造、2本鎖が両方切断されるとリニア構造となる。
本明細書において、ポリペプチドを分解するとは、ポリペプチド鎖に切断が起こることを意味し、ポリペプチドの立体構造が変化したり、ポリペプチドの断片化がおきたりする。
【0042】
本発明の酸化セリウムのナノ粒子を用いて核酸やポリペプチドを分解する場合には、乾燥させた状態で、核酸やポリペプチドを含む試料と接触させてもよいし、本発明の酸化セリウムのナノ粒子を含む溶液として、上記反応終了後の溶液をそのまま核酸やポリペプチドを含む試料と接触させてもよい。接触の方法としては、核酸やポリペプチドを含む試料が液体である場合には、本発明の酸化セリウムのナノ粒子または、本発明の酸化セリウムのナノ粒子を含む溶液を添加して混合すればよい。また、本発明の酸化セリウムのナノ粒子を含む溶液を、霧状にして空間に散布すれば、ウイルス等の空気中に存在する核酸やポリペプチドを含む試料と接触させることができる。また、本発明の酸化セリウムのナノ粒子を、繊維、チューブ、ビーズ、ゴム、フィルム、プラスチック等に添加剤として練り込んだり、これらの表面に塗布したりして、核酸やポリペプチドを含む試料と接触させることもできる。本発明の酸化セリウムのナノ粒子を含む溶液を調製する場合には、水や任意の溶液と混合すればよい。
【0043】
本発明の酸化セリウムのナノ粒子で分解可能な核酸は、ヌクレオチドが直鎖状または環状に重合した核酸であれば、特に限定はなく、人工核酸でもよい。核酸には、例えば、RNA、DNA、RNA/DNA(キメラ)などが挙げられる。DNAには、cDNA、マイクロDNA(miDNA)、プラスミドDNA、ゲノムDNA、及び合成DNA、セルフリーDNA(cfDNA)、ctDNA、ミトコンドリアDNA(mtDNA)などが挙げられる。また、RNAには、total RNA、mRNA、rRNA、miRNA、siRNA、snoRNA、snRNAもしくはnon-coding RNA、それらの前駆体又は合成RNAなどが挙げられる。合成DNA及び合成RNAは、所定の塩基配列(天然型配列又は非天然型配列のいずれでもよい)に基づいて、例えば自動核酸合成機を用いて、人工的に調製したものである。人工核酸には、例えばLNA、BNAが挙げられる。分解にあたっては、これらの核酸を含む任意の試料を用いることができる。
【0044】
本発明の酸化セリウムのナノ粒子で分解可能なポリペプチドは、タンパク質や、所定のアミノ酸配列(天然型配列又は非天然型配列のいずれでもよい)に基づいて、人工的に合成したポリペプチドなどが挙げられる。
また、主鎖にポリペプチド構造を保持した核酸様の構造を有するポリペプチド核酸(PNA)や、タンパク質と核酸が主成分であるウイルスなども、核酸またはポリペプチドを含む試料として用いることができる。
【0045】
核酸が分解されたことを確認する方法には、アクリルアミドゲル電気泳動、アガロースゲル電気泳動およびキャピラリー電気泳動などの電気泳動、サイズ排除クロマトグラフィー、質量分析等を用いて核酸を分析する方法が挙げられる。核酸が分解された場合、分解前と比べて対象のバンド濃度やピーク強度が減少、バンドやピークの消失などを確認することができる。また、分解前と比べて、小さい断片の存在を示す新規バンドやピークが出現したりすることでも確認できる。具体的には、環状2本鎖核酸が分解した場合、クローズドサーキュラー構造、オープンサーキュラー構造、リニア構造は、電気泳動で別々のバンドとして確認できる。また、核酸が分解によって立体構造が変化すると、電気泳動の結果、分解前と比べてバンドの位置が変化する場合もある。
ポリペプチドが分解されたことは、上記の核酸の分解の確認と同様の方法で確認することができる。
【0046】
核酸やポリペプチドの分解率は、以下の方法で分解率を算出することができる。まず、核酸やポリペプチドを含む試料を本発明の酸化セリウムのナノ粒子と接触させたサンプル(以降本明細書中では、単にサンプルと記載する場合がある。)を調製する。コントロールのバンドには、本発明の酸化セリウムのナノ粒子と接触させていない核酸やポリペプチドを含む試料を用いる。前記本発明の酸化セリウムのナノ粒子と接触させたサンプルと、コントロールを上記の電気泳動、サイズ排除クロマトグラフィーなどで分析する。電気泳動を用いる場合は、コントロールとサンプルを電気泳動して、同じ位置のバンド濃度を確認して、それぞれバンドの濃度を数値化し、コントロールのバンド濃度値を(X)、サンプルのバンド濃度値を(Y)として、(X)と(Y)の差を取り、この値の(X)に対する割合を分解率とする。本発明の酸化セリウムのナノ粒子と、核酸やポリペプチドを含む試料を接触させた際に、本発明の酸化セリウムのナノ粒子に、核酸やポリペプチドが吸着した場合には、任意の溶出液を用いて核酸やポリペプチドを溶出させて回収すればよい。溶出液には、クエン酸とクエン酸ナトリウムを含むクエン酸緩衝液、リン酸とリン酸ナトリウムを含むリン酸緩衝液、トリスヒドロキシアミノメタンと塩酸を含むTris-塩酸緩衝液にEDTAを添加したTris-EDTA緩衝液などを用いることができる。
【0047】
本発明の酸化セリウムのナノ粒子は、酸化剤として用いることができる。例えば、本発明の酸化セリウムのナノ粒子の酸化作用を利用して、有機合成反応、高分子重合や半導体のウェットエッチングに用いることができる。また、酸化作用を利用して、酸化酵素に代わる物質として用いることができる。具体的には、オキシダーゼやペルオキシダーゼの代わりとして抗体-抗原反応や核酸のハイブリダイゼーションを使った検出反応や組織染色に用いたり、電極へ固定化することで電気化学的な検出反応に用いることができる。このような酸化剤としての性能は後述するオキシダーゼ活性を測定する方法やペルオキシダーゼ活性を測定する方法などで評価することができる。他には、酸化作用を利用して漂白剤・消毒剤として汚れ、ニオイ、アレルゲンの分解・除去に用いることができる。具体的には、漂白剤として衣類、食器、台所、トイレ、洗面所、風呂場、医療器具などの洗浄に使用することができる。また、消毒剤としてプール、浴槽、温泉に添加したり、ボディーソープ、手洗い洗剤、消毒薬、うがい薬、洗口液などとして用いることができる。このような酸化剤としての性能は後述する有機色素の退色反応などで評価することができる。
【0048】
有機色素の退色反応は、酸化チタンにおける光触媒性能の評価にも使用され、得られた色素の分解率は、有機物を酸化分解する特性の指標として用いられる。具体的には、色素の分解率は以下のように算出する。まず本発明の酸化セリウムのナノ粒子の溶液と、アシッドオレンジ7(AO7)などの有機色素を混合、所定の時間静置する。コントロールとして、酸化セリウムのナノ粒子を含まないAO7の溶液に対しても同様の処理を行う。反応後、全ての溶液の吸収スペクトルを測定する。解析にはAO7の極大吸収波長である485nmの吸光度を用いる。コントロールの吸光度(I)と酸化セリウムのナノ粒子を含んだ溶液の吸光度(I)の差を取り、コントロールの吸光度(I)に対する割合を分解率として算出する。
【0049】
オキシダーゼ活性は、A.Asati,Angew. Chem. Int. Ed. 2009, 48, 2308-2312.に示されるような方法で値を求めることができる。具体的には、TMBZなどの酸化により呈色する試薬を使って希釈系列を作成し、それぞれに同一濃度の本発明の酸化セリウムのナノ粒子の溶液を加えて3,3’,5,5’-Tetramethylbenzidine(TMBZ)の呈色反応を行う。この反応に対してミカエリス・メンテン式を適応してオキシダーゼ活性を算出する。各TMBZ濃度における吸光度の経時変化から反応速度を算出し、基質にあたるTMBZ濃度の逆数に対して反応速度の逆数をプロットする。基質濃度ごとにプロットを行って直線を得て、y切片の逆数から最大反応速度Vmaxを、その値に直線の傾きを掛けてミカエリス・メンテン定数Kmを算出する。オキシダーゼ活性を示す値として最大反応速度Vmaxを比較する。オキシダーゼ活性はTMBZの代わりに、2,2’-Azinobis(3-ethylbenzothiazoline-6-sulfonic Acid)(AzBTS)やドーパミンといった化合物を使って測定することもできる。
【0050】
本発明の酸化セリウムのナノ粒子は、抗酸化剤として用いることができる。本発明において抗酸化剤とは、還元性をもち、脂質の過酸化を抑えたり、活性酸素(スーパーオキシドイオン、ヒドロキシラジカル、過酸化水素など)と反応してその作用を抑制する物質を指す(標準化学用語辞典第2版、丸善出版)。例えば、本発明の酸化セリウムのナノ粒子の抗酸化作用を利用して、有機化学反応における還元剤や、高分子重合におけるラジカル停止剤として用いることができる。また、抗酸化作用を利用して、化粧品として、過酸化脂質や活性酸素からの皮膚を保護することに用いることができる。他には、抗酸化作用を利用して、抗酸化酵素に代わる物質として用いることができる。具体的には、カタラーゼの代わりとして、過酸化水素の検出反応や電極へ固定化することで電気化学的な検出反応に用いることができる。また、食品、半導体、繊維、紙パルプ製造や、公衆浴場の殺菌、配管内のスライム除去などで産業利用された過酸化水素を中和することに用いることができる。このような性能は後述するカタラーゼ活性などで評価することができる。さらに、抗酸化作用を利用して、酸化防止剤として用いることができる。具体的には、ゴム、プラスチック、燃料、洗剤、食品、動物飼料の劣化を防ぐために、これらに添加することができる。このような抗酸化剤としての性能は後述する活性種のスカベンジ反応などで評価することができる。
【0051】
さらに、本発明の酸化セリウムのナノ粒子は、抗酸化剤として酸化ストレスや炎症に関する人または動物用の医薬品として用いることができる。一般に、カタラーゼ活性を有する酸化セリウムのナノ粒子は、注入、点滴または移植等の局所的、経腸的または非経口的な方法により被検体に投与されることで、脳卒中、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、虚血再灌流傷害などの酸化ストレス関連疾患を予防および治療に用いることができるとされている。また、カタラーゼ活性を有する酸化セリウムのナノ粒子は、カニューレ、カテーテルまたはステントのような医療器具や透析膜に代表される人工器官の表面に保持されることで、局所的にまたは全身的に炎症を減少させることができるとされている。
【0052】
活性種のスカベンジ反応は、Y. Xue,J.Phys.Chem.C 2011, 115,4433-4438.に示されるような方法で色素保持率として測定することができる。具体的には、塩化鉄(II)水溶液と過酸化水素水溶液を混合してフェントン反応によりヒドロキシラジカルを発生させる。そこへ本発明の酸化セリウムのナノ粒子の溶液を加えてラジカル消去反応を行う。この混合液とメチレンブルーなどの有機色素を混合、所定の時間静置する。コントロールとして、酸化セリウムのナノ粒子を含まない溶液に対しても同様の処理を行う。さらに、反応液と同濃度のメチレンブルー溶液を基準液として調製し、上記の溶液の吸収スペクトルを測定する。解析にはメチレンブルーの極大吸収波長である664nmの吸光度を用いる。基準液の吸光度(I)とコントロールの吸光度(I)の差(ΔI)と、本発明の酸化セリウムのナノ粒子を含んだ溶液の吸光度(I)とコントロールの吸光度(I)の差(ΔI)を算出する。前者(ΔI)に対しての後者(ΔI)の割合を分解率として算出し、色素保持率とする。この値はラジカル消去性能を示す値となる。色素保持率はメチレンブルーの代わりに、メチルバイオレッドを使って求めることもできる。
【0053】
カタラーゼ活性は、特表2018-508568号公報に示されるようにサーモフィッシャーサイエンティフィック社のAmplex Red Catalase Assay Kit(A22180)を用い、プロトコルにしたがって値を求めることができる。キットに含まれるReaction Bufferと本発明の酸化セリウムのナノ粒子、過酸化水素水溶液を混合し、30分間静置して過酸化水素の分解反応を行う。反応液を30kDの限外ろ過膜へ通過させ、フロースルー溶液をキットに含まれるWorking Solutionと混合し、37℃で30分間反応させる。反応によって生成したResorufinを544nmで励起し、590nmの蛍光強度を測定する。キットに含まれる活性値既知のカタラーゼの標品で作成した検量線と比較して、酸化セリウムのナノ粒子のカタラーゼ活性を算出する。カタラーゼ活性の測定には、他にはBioAssay System社のEnzyChrom Catalase Assay Kitなどを用いることもできる。
【0054】
本発明の酸化セリウムのナノ粒子は、抗カビ剤として用いることができる。抗カビ剤としての性能を評価する方法としては、例えばカビ胞子懸濁液と試験液を混合し、無機塩寒天培地やグルコース含有の無機塩寒天培地で培養し、発育状態を観察する方法、寒天培地に試験液を添加して生育の抑制を観察する方法や生育阻止円を測定する方法が挙げられる。本発明において、抗カビ性能は、寒天培地に試験液を添加して生育の抑制を観察する方法や生育阻止円を測定する方法が好ましく用いられる。
【0055】
本発明の酸化セリウムのナノ粒子において不活性化できるカビ類は、例えば、アオカビ(Penicillium)、クロコウジカビ(Aspergillus)、ススカビ(Alternaria)、クロカビ(Cladosporium)、ツチアオカビ(Trichoderma)、ケタマカビ(Chaetomium)などが挙げられる。
【0056】
抗カビ剤として用いる場合、本発明の酸化セリウムのナノ粒子を、繊維、チューブ、ビーズ、ゴム、フィルム、プラスチック等に添加剤として練り込んだり、これらの表面に塗布した加工品は、台所流し台用の排水口菊割れカバー、排水口栓、窓ガラス固定用パッキン、鏡固定用のパッキン、風呂場、洗面台や台所の防水パッキン、冷蔵庫のドア内張りパッキン、バスマット、洗面器やいすのすべり止めゴム、ホース、シャワーヘッド、浄水器に使用されるパッキン、浄水器のプラスチック製品、洗濯機に使用されるパッキン、洗濯機のプラスチック製品、エアコン用フィルター、空気清浄機用フィルター、掃除機用フィルター、換気扇用フィルター、車両用フィルター、空調用フィルター、エアコンのフィン、エアコン吹き出し口のルーバー等のプラスチック部品ならびに送風ファン等、カーエアコンのフィン、カーエアコン吹き出し口のルーバー等のプラスチック部品ならびに送風ファン、衣類、寝具、網戸用ネット、鶏舎用ネット、蚊屋などのネット類、壁紙や窓、ブラインド、病院内などのビル用内装材、電車や自動車などの内装材、車両用シート、ブラインド、椅子、ソファー、ウイルスを扱う設備、ドア、天井板、床板、窓などの建装材として様々な分野に利用することができる。
【0057】
本発明の酸化セリウムのナノ粒子は、抗ウイルス剤として用いることができる。抗ウイルス剤としての性能を評価する方法としては、本発明の酸化セリウムのナノ粒子をウイルスと接触させ、接触後のウイルス量を定量する。ウイルスを定量する方法としては、ELISA法によりウイルス抗原量を測定する方法、PCRによりウイルス核酸を定量する方法、プラーク法により感染価を測定する方法、50%感染量測定法により感染価を測定する方法などが挙げられる。本発明において抗ウイルス性能は、プラーク法や50%感染量測定法により感染価を測定する方法が好ましく用いられる。ウイルス感染価の単位は、50%感染量測定法においては、培養細胞を対象に試験した場合TCID50(Tissue culture infectious dose 50)、孵化鶏卵を用いた場合EID50(Egg infectious dose 50)、動物ではLD50(Lethal dose 50)で表記する。また、50%感染量測定法においては得られたデータから感染価を算出する方法としてReed-Muench法やBehrens-Kaeber法、Spearman―Karber法などがあるが、本発明ではReed-Muench法を用いる。抗ウイルス性能の判定基準は、一般に、本発明の酸化セリウムのナノ粒子を作用させる前の感染価や本発明のナノ粒子を含まない対照に対し、感染価の対数減少値が2.0以上となれば、抗ウイルス性能は有効と判定される。
【0058】
本発明の酸化セリウムのナノ粒子において不活性化できるウイルスは、例えば、ライノウイルス、ポリオウイルス、口蹄疫ウイルス、ロタウイルス、ノロウイルス、エンテロウイルス、ヘパトウイルス、アストロウイルス、サポウイルス、E型肝炎ウイルス、A型、B型、C型インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、ムンプスウイルス(おたふくかぜ)、麻疹ウイルス、ヒトメタニューモウイルス、RSウイルス、ニパウイルス、ヘンドラウイルス、黄熱ウイルス、デングウイルス、日本脳炎ウイルス、ウエストナイルウイルス、B型、C型肝炎ウイルス、東部および西部馬脳炎ウイルス、オニョンニョンウイルス、風疹ウイルス、ラッサウイルス、フニンウイルス、マチュポウイルス、グアナリトウイルス、サビアウイルス、クリミアコンゴ出血熱ウイルス、スナバエ熱、ハンタウイルス、シンノンブレウイルス、狂犬病ウイルス、エボラウイルス、マーブルグウイルス、コウモリリッサウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ヒトコロナウイルス、SARSコロナウイルス、ヒトポルボウイルス、ポリオーマウイルス、ヒトパピローマウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、水痘帯状発疹ウイルス、EBウイルス、サイトメガロウイルス、天然痘ウイルス、サル痘ウイルス、牛痘ウイルス、モラシポックスウイルス、パラポックスウイルスなどが挙げられる。
【0059】
抗ウイルス剤として用いる場合、本発明の酸化セリウムのナノ粒子を、繊維、チューブ、ビーズ、ゴム、フィルム、プラスチック等に添加剤として練り込んだり、これらの表面に塗布した加工品は、マスク、医療用キャップ、医療用シューズカバー、エアコン用フィルター、空気清浄機用フィルター、掃除機用フィルター、換気扇用フィルター、車両用フィルター、空調用フィルター、エアコンのフィン、エアコン吹き出し口のルーバー等のプラスチック部品ならびに送風ファン等、カーエアコンのフィン、カーエアコン吹き出し口のルーバー等のプラスチック部品ならびに送風ファン、衣類、寝具、網戸用ネット、鶏舎用ネット、蚊屋などのネット類、壁紙や窓、ブラインド、病院内などのビル用内装材、電車や自動車などの内装材、車両用シート、ブラインド、椅子、ソファー、ウイルスを扱う設備、ドア、天井板、床板、窓などの建装材として様々な分野に利用することができる。
【実施例
【0060】
本発明を以下の実施例によってさらに具体的に説明する。
<材料と方法>
ポリアクリル酸ナトリウム、ポリ(4-ビニルピリジン)、ポリ(2-ビニルピリジン)はメルク株式会社より、ポリ(1-ビニルイミダゾール)とポリ(9-ビニルカルバゾール)は丸善石油化学株式会社より、硝酸セリウム(III)六水和物と30質量%過酸化水素水は富士フイルム和光純薬株式会社より入手した。
その他の試薬については、富士フイルム和光純薬株式会社、東京化成株式会社、シグマーアルドリッチジャパン合同会社から購入し、特に精製することなくそのまま用いた。
【0061】
以下の実施例では、(アミノエチル)ピペラジンとアジピン酸を構造単位として有するポリマーをポリアミド(1)、(アミノエチル)ピペラジンとビス(アミノプロピル)ポリエチレングリコールとアジピン酸を構造単位として有するポリマーをポリアミド(2)としてそれぞれ記載し、これらのポリマーは、特開平11-166121号公報を参考に調製した。
ホットプレートはIKAジャパン株式会社のIKA C-MAG HP4を用いた。
ポリマーで表面が被覆された酸化セリウムのナノ粒子の流体力学的直径の測定には、大塚電子株式会社のゼータ電位・粒子測定システムELS-Zを用い、セリウム(III)とセリウム(IV)の比は、PHI社のQuantera SXMを用いた。
QM9414株はNBRC(NITE Biological Resource Center)より入手して用いた。
【0062】
(実施例1)ポリアミド(1)で表面が被覆された酸化セリウムのナノ粒子の調製
ピペラジン骨格を有するポリマーの水溶液として、0.1質量%のポリアミド(1)水溶液を用いた。0.1質量%のポリアミド(1)水溶液5mlに対し、10質量%の硝酸セリウム(III)六水和物水溶液を100μl添加し、室温で5分間攪拌した。その後、1.2質量%の過酸化水素水溶液を100μl添加し、40℃に加温して1時間反応させ、ポリアミド(1)で表面が被覆された酸化セリウムのナノ粒子の黄色水溶液を得た。当該水溶液を30kDの限外ろ過膜で精製し、ポリアミド(1)で表面が被覆された酸化セリウムのナノ粒子を溶液として得た。
【0063】
(実施例2)ポリアミド(2)で表面が被覆された酸化セリウムのナノ粒子の調製
ピペラジン骨格を有するポリマーの水溶液として、0.1質量%のポリアミド(2)水溶液を用いた以外は実施例1と同様の条件で反応を行い、ポリアミド(2)で表面が被覆された酸化セリウムのナノ粒子の黄色水溶液を得た。当該水溶液を30kDの限外ろ過膜で精製し、ポリアミド(2)で表面が被覆された酸化セリウムのナノ粒子を溶液として得た。
【0064】
(実施例3)ポリ(1-ビニルイミダゾール)で表面が被覆された酸化セリウムのナノ粒子の調製
イミダゾール骨格を有するポリマーの水溶液として、0.1質量%のポリ(1-ビニルイミダゾール)水溶液を用いた以外は実施例1と同様の条件で反応を行い、ポリ(1-ビニルイミダゾール)で表面が被覆された酸化セリウムのナノ粒子の橙色水溶液を得た。当該水溶液を30kDの限外ろ過膜で精製し、ポリ(1-ビニルイミダゾール)で表面が被覆された酸化セリウムのナノ粒子を溶液として得た。
【0065】
(実施例4)ポリ(4-ビニルピリジン)で表面が被覆された酸化セリウムのナノ粒子の調製
ピリジン骨格を有するポリマーの水溶液として、溶媒に80容量%エタノール水溶液を使用した、0.1質量%のポリ(4-ビニルピリジン)のエタノール水溶液5mlを用いた以外は実施例1と同様の条件で反応を行い、ポリ(4-ビニルピリジン)で表面が被覆された酸化セリウムのナノ粒子の赤褐色溶液を得た。当該エタノール水溶液に水を添加して70容量%に希釈し、30kDの限外ろ過膜で精製し、遠心エバポレーターで溶媒を除去してジメチルスルホキシドに再溶解して、ポリ(4-ビニルピリジン)で表面が被覆された酸化セリウムのナノ粒子を溶液として得た。
【0066】
(実施例5)ポリ(2-ビニルピリジン)で表面が被覆された酸化セリウムのナノ粒子の調製
ピリジン骨格を有するポリマーの水溶液として、溶媒に80容量%エタノール水溶液を使用した、0.1質量%のポリ(2-ビニルピリジン)のエタノール水溶液を用いた以外は実施例1と同様の条件で反応を行い、ポリ(2-ビニルピリジン)で表面が被覆された酸化セリウムのナノ粒子の褐色溶液を得た。当該溶液に水を添加して70容量%に希釈し、30kDの限外ろ過膜で精製し、遠心エバポレーターで溶媒を除去してジメチルスルホキシドに再溶解して、ポリ(2-ビニルピリジン)で表面が被覆された酸化セリウムのナノ粒子を溶液として得た。
【0067】
(実施例6)ポリ(9-ビニルカルバゾール)で表面が被覆された酸化セリウムのナノ粒子の調製
カルバゾール骨格を有するポリマーの水溶液として、0.1質量%のポリ(9-ビニルカルバゾール)のピリジン溶液を用いた以外は実施例1と同様の条件で反応を行い、ポリ(9-ビニルカルバゾール)で表面が被覆された酸化セリウムのナノ粒子の橙色溶液を得た。当該水溶液を、10000Gで1時間遠心して上清を除き、ジメチルスルホキシド(DMSO)に再溶解して、ポリ(9-ビニルカルバゾール)で表面が被覆された酸化セリウムのナノ粒子を溶液として得た。
【0068】
(比較例1)ポリアクリル酸で表面が被覆された酸化セリウムのナノ粒子の調製
ポリマー水溶液として、1質量%のポリアクリル酸ナトリウム水溶液を用いた以外は、実施例1と同様の条件で反応を行い、ポリアクリル酸ナトリウムで表面が被覆された酸化セリウムのナノ粒子の黄色水溶液を得た。当該水溶液を、30kDの限外ろ過膜で精製し、ポリアクリル酸で表面が被覆された酸化セリウムのナノ粒子を溶液として得た。
【0069】
(比較例2)
特表2018-508568号公報を参考に、クエン酸(CA)/エチレンジアミン二コハク酸三ナトリウム塩(EDDS)を安定化剤とする酸化セリウムのナノ粒子を作製した。
【0070】
(表面がポリマーで被覆された酸化セリウムのナノ粒子の流体力学的直径の測定)
実施例1~6で調製したポリマーで表面が被覆された酸化セリウムのナノ粒子の流体力学直径を、動的光散乱(DLS)によって測定した。測定時の溶媒は、ポリマーがポリアミド(1)、ポリアミド(2)およびポリ(1-ビニルイミダゾール)の場合は水、ポリ(4-ビニルピリジン)またはポリ(2-ビニルピリジン)の場合はエタノール、ポリ(9-ビニルカルバゾール)の場合はピリジンを用いた。個数換算により流体力学直径を得た。得られた値を表1に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
(表面がポリマーで被覆された酸化セリウムのナノ粒子のCe4+/Ce3+比の測定)
実施例1~6で得られた酸化セリウムのナノ粒子のCe3+に対するCe4+の比をX線光電子分光法(XPS)によって測定した。測定において、励起X線をmonocheomatic AlKα1,2線(1486.6eV)、X線径を200μm、光電子脱出角度を45°とした。測定にあたり、実施例1~3で調製した酸化セリウムのナノ粒子は精製後に水で凍結乾燥し、実施例4~6で調製した酸化セリウムのナノ粒子は精製後に遠心エバポレーターで乾燥したものを用いた。得られた値を表1に示す。
【0073】
(核酸の分解試験)
実施例1~6、および比較例1で調製したナノ粒子の溶液をそれぞれ2mg/mlになるように濃度を調整した。最初に、実施例1~6で調製したナノ粒子の溶液中に含まれる本発明の酸化セリウムのナノ粒子の濃度を以下のように算出した。質量を測定したカバーガラスに、実施例1~6で調製したナノ粒子の溶液を滴下し、ホットプレートで加熱した。空冷後、カバーガラスの質量をもう一度測定し、加熱前の質量との差を取ることで、本発明の酸化セリウムのナノ粒子の質量を求めた。この質量を滴下した溶液量で割り、本発明の酸化セリウムのナノ粒子溶液の濃度とした。この濃度の値を基に、本発明の酸化セリウムのナノ粒子の濃度をそれぞれ調整し、以下の実験に用いた。
実施例1~3で調製した本発明の酸化セリウムのナノ粒子、および比較例1で調製した酸化セリウムのナノ粒子の水溶液2μl、核酸を含む試料として100ng/μlのpUC19の溶液0.5μl、および50mM酢酸緩衝液(pH5)2.5μlを加え、室温で1時間静置し、核酸の分解反応を行った。
実施例4~6で調製した2mg/mlの本発明の酸化セリウムのナノ粒子のジメチルスルホキシド溶液を2μl、核酸を含む試料として100ng/μlのpUC19の溶液0.5μl、および150mM酢酸緩衝液(pH5)0.5μlを加え、室温で1時間静置し、核酸の分解反応を行った。
【0074】
コントロールとして、水2μl、100ng/μlのpUC19を0.5μl、および50mM酢酸緩衝液(pH5)2.5μlを加え、室温で1時間静置した。
それぞれの反応後の溶液に、10%SDS(Sodium dodecylsulfate polyacrylamide)を2μlと0.5Mのリン酸緩衝液(pH7)を3μl加えてアガロースゲルで電気泳動を行った。
電気泳動したアガロースゲルをエチジウムブロマイドで染色し、pUC19のバンドを検出した。核酸を含む試料を実施例1~6および比較例1に記載の酸化セリウムのナノ粒子と接触させると、pUC19が切断されて、pUC19のクローズドサーキュラー構造のバンドと、オープンサーキュラー構造の新規バンドが確認できた。一方、コントロールでは、オープンサーキュラー構造のバンドは確認されず、クローズドサーキュラー構造のバンドのみが確認された。
それぞれのクローズドサーキュラー構造のバンド濃度(Y)を算出して、コントロールのクローズドサーキュラー構造のバンド濃度を(X)との差を取り、この値の(X)に対する割合を分解率として算出した。結果を表2に示した。
これらの結果から、本発明の酸化セリウムのナノ粒子を用いると、高い分解率で核酸を分解できることが確認できた。
一方、比較例1の酸化セリウムのナノ粒子では、pUC19切断は観察されなかった。
【0075】
【表2】
【0076】
(ポリペプチドの分解試験)
0.2mg/mlになるように調整した実施例2で調製した本発明の酸化セリウムのナノ粒子の水溶液3μl、ポリペプチドを含む試料として1mg/mlのオボアルブミン(OVA)3μl、および50mM酢酸緩衝液(pH5)6μlを加え、40℃で1時間静置し、ポリペプチドの分解反応を行った。
コントロールとして、滅菌蒸留水3μl、1mg/mlのOVA3μl、および50mM酢酸緩衝液(pH5)6μlを加え、40℃で1時間静置し、ポリペプチドの分解反応を行った。
それぞれの反応後の溶液に、NuPAGE LDS Sample Buffer(ThermoFisher社)を4μl加え、95℃で10分間加熱し、アクリルアミドゲルで電気泳動を行った。
【0077】
電気泳動したアクリルアミドゲルをOriole(Bio-RAD社)で染色し、OVAのバンドを検出した。ポリペプチドを含む試料を実施例2に記載の酸化セリウムのナノ粒子と接触させると、OVAが分解されてバンド濃度が低下し、スメアな新規バンドが確認できた。一方、コントロールでは、分解を示すスメアなバンドは確認されなかった。
コントロールのバンドの濃度(X)と、コントロールと同じ分子量の位置の本実施例10のバンドの濃度(Y)をそれぞれ算出し、(X)と(Y)の差を取り、この値の(X)に対する割合を分解率として算出した。結果を表3に示した。
比較例1で調製した酸化セリウムのナノ粒子についても、同様の操作および条件でポリペプチドの分解反応を行い、分解率を算出した。
【0078】
本結果から、本発明の酸化セリウムのナノ粒子を用いると、高い分解率でポリプチドを分解できることが確認できた。
一方、比較例1の酸化セリウムのナノ粒子では、ポリペプチドの分解はほとんど確認できなかった。
【0079】
【表3】
【0080】
(色素の分解試験)
2mg/mlになるように調製した実施例1~3で調製した本発明の酸化セリウムのナノ粒子の水溶液30μl、有機色素を含む試料として0.5mg/mlのアシッドオレンジ7(AO7)60μl、および蒸留水1.41mlを加え、40℃で3時間静置し、色素の分解反応を行った。コントロールとして、酸化セリウムのナノ粒子を含まないAO7の溶液に対しても同様の処理を行った。反応後の水溶液を100μl取って1.9mlの蒸留水で希釈し、吸収スペクトルを測定した。コントロールのサンプルは加熱前後で吸収スペクトルに変化は見られなかった。
解析にはAO7の極大吸収波長である485nmの吸光度を用いた。コントロールの吸光度と本実施例11の吸光度の差を取り、コントロールの485nmの吸光度に対する割合を分解率として算出した。結果を表4に示した。
比較例1で調製した酸化セリウムのナノ粒子についても、同様の操作および条件で色素の分解試験を行い、分解率を算出した。
【0081】
本結果から、本発明の酸化セリウムのナノ粒子を用いると、高い分解率で色素を分解できることが確認できた。このような特性により本発明の酸化セリウムのナノ粒子は酸化剤として用いることができる。
一方、比較例1の酸化セリウムのナノ粒子では、色素の分解はほとんど確認できなかった。
【0082】
【表4】
【0083】
(オキシダーゼ活性測定)
TMBZは90%DMSO水溶液に溶解し、10、5、2.5、1.25、0.625mMの希釈系列を作成した。50mMのクエン酸緩衝液(pH4)160μlと各濃度のTMBZ溶液20μlを混合し、96ウェルプレートに加えた。そこへ2mg/mlになるように調製した実施例1~3で調製した本発明の酸化セリウムのナノ粒子の水溶液を20μl加え、直ちにプレートリーダーへセットして、TMBZの青色呈色に伴う652nmの吸光度の経時変化を測定した。測定間隔は30秒、測定期間は10分とした。
オキシダーゼ活性の算出には、ミカエリス・メンテン式を適用した。本オキシダーゼ活性測定では、ナノセリアの濃度変化がないことから定常状態近似を行い、ミカエリス・メンテン定数Kmと最大反応速度Vmaxを求めた。ミカエリス・メンテン式の解析にはラインウィーバープロット(両逆数プロット)を用いた。得られた結果のうち、オキシダーゼ活性を示す値である最大反応速度Vmaxを表5に示した。
【0084】
比較例1で調製した酸化セリウムのナノ粒子についても、同様の操作および条件でオキシダーゼ活性測定を行い、最大反応速度Vmaxを算出した。
本結果から、本発明の酸化セリウムのナノ粒子には高いオキシダーゼ活性があることが確認できた。このような特性により本発明の酸化セリウムのナノ粒子は酸化剤として用いることができる。
一方、比較例1の酸化セリウムのナノ粒子では、実施例1~3の酸化セリウムのナノ粒子と比較して、オキシダーゼ活性は低い値となった。
【0085】
【表5】
【0086】
(カタラーゼ活性測定)
カタラーゼ活性は、サーモフィッシャーサイエンティフィック社のAmplex Red Catalase Assay Kit(A22180)を用い、プロトコルにしたがって測定した。簡潔には、Reaction Buffer 50μl、16μg/mlの実施例1~3で調製した本発明の酸化セリウムのナノ粒子25μl、40μMの過酸化水素水溶液25μlを混合し、30分間静置して過酸化水素の分解反応を行った。反応液を30kDの限外ろ過膜へ通過させ、フロースルー溶液100μlをWorking Solution50μlと混合し、37℃で30分間反応させた。反応によって生成したResorufinを544nmで励起し、590nmの蛍光強度を測定した。活性値既知のカタラーゼの標品で作成した検量線と比較して、酸化セリウムのナノ粒子のカタラーゼ活性を算出した。結果を表6に示した。
比較例2で調製した酸化セリウムのナノ粒子についても、同様の操作および条件でカタラーゼ活性測定を行い、カタラーゼ活性を算出した。
【0087】
本結果から、本発明の酸化セリウムのナノ粒子には高いカタラーゼ活性があることが確認できた。このような特性により本発明の酸化セリウムのナノ粒子は抗酸化剤として用いることができる。
一方、比較例2の酸化セリウムのナノ粒子では、実施例1~3の酸化セリウムのナノ粒子と比較して、カタラーゼ活性は低い値となった。
【0088】
【表6】
【0089】
(ラジカル消去による色素保持試験)
1mMの塩化鉄(II)水溶液を100μlと1mMの過酸化水素水溶液100μlを混合し、そこへ0.4mg/mlになるように調製した実施例1~3で調製した本発明の酸化セリウムのナノ粒子の溶液10μlを加え、室温で5分間静置した。この混合液に対し、100μМのメチレンブルー水溶液を90μl添加し、25分間室温で静置した。コントロールとして、酸化セリウムのナノ粒子を含まない溶液に対しても同様の処理を行った。また、100μМメチレンブルー水溶液90μlと蒸留水210μlを混合した基準液を調製した。上記の溶液の吸収スペクトルを測定した。
解析にはメチレンブルーの極大吸収波長である664nmの吸光度を用いた。基準液の吸光度(I)とコントロールの吸光度(I)の差(ΔI)と、実施例1~3の吸光度(I)とコントロールの吸光度(I)の差(ΔI)を算出した。前者(ΔI)に対しての後者(ΔI)の割合を分解率として算出し、色素保持率とした。結果を表7に示した。
比較例1で調製した0.4mg/mlの酸化セリウムのナノ粒子についても、同様の操作および条件で色素保持試験を行い、色素保持率を算出した。
【0090】
本結果から、本発明の酸化セリウムのナノ粒子を用いると、ラジカルを消去できることが確認できた。このような特性により本発明の酸化セリウムのナノ粒子は抗酸化剤として用いることができる。
一方、比較例1の酸化セリウムのナノ粒子では、実施例1~3の酸化セリウムのナノ粒子と比較して、色素保持率は低い値となった。
【0091】
【表7】
【0092】
(抗カビ試験)
2mg/mlになるように実施例2で調製した本発明の酸化セリウムのナノ粒子の溶液を、0.45μmの滅菌フィルターを通した。図3に示すように、ポテトデキストロース寒天培地(PDA培地)を3分割し、そのうちの1つの培地の他の分割された培地との区画領域に酸化セリウムのナノ粒子の溶液を塗布し、クリーンベンチ内で30分風乾した。ツチアオカビ(Trichodermaに属する公知の変異株であるQM9414株(NBRC31329))を、他の1つの分割された培地に植菌して28℃で培養し、カビの育成が本発明のナノ粒子の塗布面で抑制されるのかを評価した。
結果を図4に示した。培養開始42時間後にカビの育成を確認し、311時間後ではカビの育成が本発明のナノ粒子の塗布面で停止していることが観察された。
本結果から、本発明の酸化セリウムのナノ粒子には抗カビ性能があることが確認できた。
【0093】
(ウイルス不活化試験)
本試験は一般財団法人北里環境科学センターにて実施した。10mg/mlになるように調製した実施例2で調製した本発明の酸化セリウムのナノ粒子の溶液0.9mlにウイルス液(ネコカリシウイルス, Feline calicivirus, F-9, ATCC, VR-782, ノロウイルス代替)0.1mlを混合し、1時間作用させた。その後、PBSを作用停止液として加え、ウイルスに対する作用を停止させた。この溶液をウイルス価測定用試料の原液としてTCID50法で感染価を測定した。
本発明の酸化セリウムのナノ粒子を作用させる前の感染価に対する感染価の対数減少値を表8に示した。
また、比較例1で調製した酸化セリウムのナノ粒子の溶液についても、同様の操作および条件でウイルス不活化試験を行い、感染価の対数減少値を算出して、結果を表8に示した。
【0094】
本結果から、対数減少値が4.0であることから本発明の酸化セリウムのナノ粒子には99.99%の抗ウイルス活性があることが確認できた。
一方、比較例1の酸化セリウムのナノ粒子では、対数減少値が-0.4であることからウイルス不活化性能が低い値となった。
【0095】
【表8】
【0096】
(XAFS観察)
10mg/mlになるように実施例2で調製した本発明の酸化セリウムのナノ粒子の溶液にX線を照射し、その吸収量を計測することにより、X線吸収微細構造(X-ray Absorption Fine Structure)スペクトルを測定した。測定条件は、実験施設が高エネルギー加速器研究機構 放射光科学研究施設(Photon Factory)BL12C、分光器がSi(111)2結晶分光器、吸収端がCe L3吸収端、検出法が透過法、検出器がイオンチャンバーとした。
CeL3端XANESスペクトルを図5に示した。縦軸は、スペクトルの5724.4eVを吸収端(E0)とし、E0から-150~-30eVの範囲の吸収の平均値を0、E0から+150~+400eVの範囲の吸収の平均値を1として比を取ることで設定した。
また、比較例1で調製した酸化セリウムのナノ粒子の溶液についても、同様の操作および条件でXAFS観察を行い、得られたCeL3端XANESスペクトルを図5に示した。
【0097】
本結果から、本発明の酸化セリウムのナノ粒子には5726.0~5729.0eVの間である5728.003eVと、5735.0~5739.0eVの間である5736.582eVに極大吸収を有することが分かった。
一方、比較例1の酸化セリウムのナノ粒子は、5725.631eV、5736.582eVに極大吸収を有し、5735.0~5739.0eVの間には極大吸収を有するものの、5726.0~5729.0eVの間には極大吸収を有さないことが分かった。
【0098】
(参考例1)XAFS観察
ナノ粒子ではない酸化セリウムの結晶、セリウム塩である炭酸セリウム(III)、硝酸セリウム(III)、硝酸アンモニウムセリウム(IV)を用いた以外は、上記の実施例1~3で行ったXAFS観察と同様の操作および条件でXAFS観察を行い、得られたCeL3端XANESスペクトルを図6に示した。酸化セリウムの結晶は5729.751eV、5736.582eVに極大吸収を有し、炭酸セリウム(III)は5725.161eVに極大吸収を有し、硝酸セリウム(III)は5725.316eVに極大吸収を有し、硝酸アンモニウムセリウム(IV)は5725.796eV、5736.105eVに極大吸収を有し、いずれの公知のセリウム塩やセリウム化合物では5726.0~5729.0eV及び5735.0~5739.0eVの間に極大吸収がないことが分かった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6