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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】複合ダンパ
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/02 20060101AFI20240625BHJP
   F16F 15/04 20060101ALI20240625BHJP
   F16F 7/00 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
E04H9/02 351
F16F15/04 A
F16F15/04 P
F16F7/00 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020034345
(22)【出願日】2020-02-28
(65)【公開番号】P2021134645
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(72)【発明者】
【氏名】村上 翔
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-179980(JP,A)
【文献】特開平11-108114(JP,A)
【文献】特開2017-115553(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/02
F16F 7/00,15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダンパーユニットAと、
ダンパーユニットBと、
前記ダンパーユニットAと前記ダンパーユニットBとを接続する接続部材と
を備え、
前記ダンパーユニットAは、
順に対向するように配置された少なくとも3枚以上の奇数枚のプレートと、
前記プレートの間にそれぞれ配置され、かつ、プレートにそれぞれ加硫接着された複数の粘弾性体と
を有し、
前記ダンパーユニットBは、
順に対向するように配置された少なくとも3枚以上の奇数枚のプレートと、
前記ダンパーユニットBのプレートの間にそれぞれ配置され、かつ、プレートにそれぞれ加硫接着された複数の粘弾性体と
を有し、
前記接続部材は、
前記ダンパーユニットAの前記プレートのうち対向する方向において奇数の位置に配置された奇数プレートと、前記ダンパーユニットBの前記プレートのうち対向する方向において奇数の位置に配置された奇数プレートとを接続する第1接続部材と、
前記ダンパーユニットAの前記プレートのうち対向する方向において偶数の位置に配置された偶数プレートと、前記ダンパーユニットBの前記プレートのうち対向する方向において偶数の位置に配置された偶数プレートとを接続する第2接続部材と
を備え
前記ダンパーユニットAのプレートと前記ダンパーユニットBのプレートとは、予め定められた軸Wに沿って直列に並ぶように配置され、
前記ダンパーユニットAのプレートと前記ダンパーユニットBのプレートの、
前記奇数プレートと前記偶数プレートのうち何れか一方のプレートは、何れも前記奇数プレートと前記偶数プレートとが対向する対向領域から前記軸Wに沿ってはみ出しており、他方のプレートは、何れも前記奇数プレートと前記偶数プレートとが対向する対向領域から前記軸Wに直交する方向にはみ出しており、
前記第1接続部材と前記第2接続部材のうち、
一方は前記ダンパーユニットAと前記ダンパーユニットBとの間に配置され、前記奇数プレートと前記偶数プレートのうち前記対向領域から前記軸Wに沿ってはみ出した部位に締結されており、
他方は前記ダンパーユニットAのプレートとダンパーユニットBのプレートとのうち前記軸Wに直交した側縁部に配置されており、前記奇数プレートと前記偶数プレートのうち前記対向領域から前記軸Wに直交する方向にはみ出した部位に締結されている
複合ダンパ。
【請求項2】
前記第1接続部材と前記第2接続部材のうち、前記ダンパーユニットAのプレートとダンパーユニットBのプレートとのうち前記軸Wに直交した側縁部に配置された接続部材は、前記軸Wに直交した両側の側縁部に設けられた、請求項に記載された複合ダンパ。
【請求項3】
請求項2に記載された複合ダンパがプレートの厚さ方向に重ねられており、
かつ、厚さ方向に重ねられた複合ダンパの前記奇数プレートと、厚さ方向に重ねられた複合ダンパの前記偶数プレートがそれぞれ連動して動くように接続部材によって接続された、複合ダンパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合ダンパに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2007-46722号公報には、制震装置が開示されている。ここで開示される制震装置は、建物の架構に生ずる振動エネルギーを吸収するための装置である。ここで開示されている制震装置は、同公報の図1に示されているように、第1板材と、第2板材と、中継板材と、粘弾性体とを備えている。第1板材は、架構の一の部位に取り付けられている。第2板材は、架構の他の部位に取り付けられている。中継板材は、第1板材及び第2板材と部分的に重なり合うように設けられている。粘弾性体は、第1板材及び第2板材と中継板材との重なり合う部分に介装されている。建物の架構の変形に対して、第1板材と、第2板材と、中継板材とに相対的な変位が生じる。それに伴い、粘弾性体にせん断変形が生じて、建物の架構に生ずる振動エネルギーが吸収される。また、同公報では、図4および図6に示されているように、中継板材を介して、プレート状の粘弾性体を厚さ方向に重ねた構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-46722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、地震時には建物の構造材に大きな振動エネルギーが作用する。かかる振動エネルギーを吸収し、建物の揺れを抑制するには、大きな振動エネルギーを効率良く吸収できる制震装置が設置されることが望ましい。粘弾性体の面積および厚さを大きくすれば、粘弾性体のせん断変形によって、大きなエネルギーを吸収できるようになるが、粘弾性体の面積および厚さを大きくするには、大型の加硫設備が必要になる。また、建物によって、制震装置を設置できる、例えば、壁の大きさや厚さに制約がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ここで開示される複合ダンパの一実施形態は、ダンパーユニットAと、ダンパーユニットBと、ダンパーユニットAとダンパーユニットBとを接続する接続部材とを備えている。
ダンパーユニットAは、順に対向するように配置された少なくとも3枚以上の奇数枚のプレートと、プレートの間にそれぞれ配置され、かつ、プレートにそれぞれ加硫接着された複数の粘弾性体とを有していてもよい。
ダンパーユニットBは、順に対向するように配置された少なくとも3枚以上の奇数枚のプレートと、ダンパーユニットBのプレートの間にそれぞれ配置され、かつ、プレートにそれぞれ加硫接着された複数の粘弾性体とを有していてもよい。
接続部材は、第1接続部材と、第2接続部材とを備えていてもよい。第1接続部材は、ダンパーユニットAのプレートのうち対向する方向において奇数の位置に配置された奇数プレートと、ダンパーユニットBのプレートのうち対向する方向において奇数の位置に配置された奇数プレートとを接続する部材である。第2接続部材は、ダンパーユニットAのプレートのうち対向する方向において偶数の位置に配置された偶数プレートと、ダンパーユニットBのプレートのうち対向する方向において偶数の位置に配置された偶数プレートとを接続する部材である。
【0006】
かかる複合ダンパによれば、製造設備を大型化せずに、大きなエネルギーを吸収できる制震装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、複合ダンパ10の正面図である。
図2図2は、複合ダンパ10の断面図である。
図3図3は、複合ダンパ10の模式的な正面図である。
図4図4は、複合ダンパ10の模式的な正面図である。
図5図5は、複合ダンパ10の模式的な正面図である。
図6図6は、複合ダンパ10の模式的な正面図である。
図7図7は、ダンパーユニットAの正面図である。
図8図8は、ダンパーユニットBの正面図である。
図9図9は、他の実施形態に係る複合ダンパを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、ここで開示される複合ダンパを図面に基づいて説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。各図面は模式的に描かれており、必ずしも実物を反映していない。また、各図面は、一例を示すのみであり、特に言及されない限りにおいて本発明を限定しない。また、同一の作用を奏する部材・部位には、適宜に同一の符号を付し、重複する説明を省略する。上、下、左、右、前、後の向きは、図中、U、D、L、R、F、Rrの矢印でそれぞれ表されている。
【0009】
図1は、複合ダンパ10の正面図である。図2は、複合ダンパ10の断面図である。図2では、図1のII―II断面が示されている。図1および図2に示された形態では、複合ダンパ10は、ダンパーユニットAと、ダンパーユニットBと、ダンパーユニットAとダンパーユニットBとを接続する接続部材Cとを備えている。
【0010】
図3図6は、それぞれ複合ダンパ10の模式的な正面図である。図3では、ダンパーユニットAとダンパーユニットBの手前にある奇数プレートであるプレート13A1,13B1(図1参照)がそれぞれ取り除かれた状態が示されている。図3では、偶数プレートであるプレート12A1,12B1が手前に露見している。図4では、プレート12A1,12B1がそれぞれ取り除かれた状態が示されている。図4では、真ん中のプレート11A,11Bが手前に露見している。図5では、真ん中のプレート11A,11Bがさらに取り除かれた状態が示されている。図5では、プレート12A2,12B2が手前に露見した状態が示されている。図6では、プレート12A2,12B2がさらに取り除かれ、奥にあるプレート13A2,13B2が手前に露見した状態が示されている。図7は、ダンパーユニットAの正面図である。図8は、ダンパーユニットBの正面図である。
【0011】
〈ダンパーユニットA〉
ダンパーユニットAは、図1図2および図7に示されているように、プレート11A,12A1,12A2,13A1,13A2と、粘弾性体21A,22A,23A,24Aとを備えている。
【0012】
この実施形態では、プレート11A,12A1,12A2,13A1,13A2は、略長方形のプレートのプレートである。ダンパーユニットAには、少なくとも3枚以上の奇数枚(この実施形態では、5枚)のプレート11A,12A1,12A2,13A1,13A2が用意されている。プレート11A,12A1,12A2,13A1,13A2のうち、プレート11Aは、プレート11A,12A1,12A2,13A1,13A2が対向する方向において真ん中に配置されている。プレート12A1は、プレート11Aの手前(正面側)に対向している。プレート12A2は、プレート11Aの奥(背面側)に対向している。プレート13A1は、プレート12A1の手前(正面側)に対向している。プレート13A2は、プレート12A2の奥(背面側)に対向している。このようにプレート11A,12A1,12A2,13A1,13A2は、プレート11Aを中心として手前および奥に順に対向するように配置されている。
【0013】
図1図4および図6に示されているように、ダンパーユニットAのプレート11A,12A1,12A2,13A1,13A2のうち、対向する方向において奇数の位置に配置されたプレート11A,13A1,13A2は奇数プレート1Aと称される。図3および図5に示されているように、偶数の位置に配置されたプレート12A1,12A2は偶数プレート2Aと称される。換言すると、この実施形態では、真ん中に配置されているプレート11Aを中心に手前および奥に1つおきに配置されたプレート11A,13A1,13A2が、奇数プレート1Aと称される。また、奇数プレート1Aの間にあるプレート12A1,12A2が偶数プレート2Aと称される。
【0014】
プレート11A,12A1,12A2,13A1および13A2は、それぞれ略矩形形状であり、それぞれ矩形の対向領域を有している。奇数プレート1Aは、図1図4および図6に示されているように、対向領域から左右にそれぞれはみ出した長方形形状を有している。また、奇数プレート1Aは、対向領域から左右にそれぞれはみ出した部位に、接続部1A1,1A2を有している。この実施形態では、接続部1A1,1A2には、ボルト孔1A1a,1A2aを有している。偶数プレート2Aは、対向領域から上下にそれぞれはみ出した長方形形状を有している。偶数プレート2Aは、図3および図5に示されているように、対向領域から上下にそれぞれはみ出した部位に、接続部2A1,2A2が設けられている。接続部2A1,2A2には、ボルト孔2A1a,2A2aを有している。
【0015】
粘弾性体21A,22A,23A,24Aは、プレート11A,12A1,12A2,13A1,13A2の間にそれぞれ配置されている。粘弾性体21A,22A,23A,24Aは、プレート11A,12A1,12A2,13A1,13A2のうち当該粘弾性体を挟むプレートにそれぞれ加硫接着されている。この実施形態では、粘弾性体21A,22A,23A,24Aは、プレート11A,12A1,12A2,13A1および13A2が対向する対向領域に収められている。粘弾性体21A,22A,23A,24Aは、それぞれ所定の厚さの直方体形状に成形されている。
【0016】
〈ダンパーユニットB〉
ダンパーユニットBは、図1図2および図8に示されているように、プレート11B,12B1,12B2,13B1,13B2と、粘弾性体21B,22B,23B,24Bとを備えている。
【0017】
この実施形態では、プレート11B,12B1,12B2,13B1,13B2は、略長方形のプレートである。ダンパーユニットBには、少なくとも3枚以上の奇数枚(この実施形態では、5枚)のプレート11B,12B1,12B2,13B1,13B2が用意されている。プレート11B,12B1,12B2,13B1,13B2のうち、プレート11Bは、プレート11B,12B1,12B2,13B1,13B2が対向する方向において真ん中に配置されている。プレート12B1は、プレート11Bの手前(正面側)に対向している。プレート12B2は、プレート11Bの奥(背面側)に対向している。プレート13B1は、プレート12B1の手前(正面側)に対向している。プレート13B2は、プレート12B2の奥(背面側)に対向している。このようにプレート11B,12B1,12B2,13B1,13B2は、プレート11Bを中心として手前および奥に順に対向するように配置されている。
【0018】
図1図4および図6に示されているように、ダンパーユニットBのプレート11B,12B1,12B2,13B1,13B2のうち、対向する方向において奇数の位置に配置されたプレート11B,13B1,13B2は奇数プレート1Bと称される。偶数の位置に配置されたプレート12B1,12B2は偶数プレート2Bと称される。換言すると、この実施形態では、真ん中に配置されているプレート11Bを中心に手前および奥に1つおきに配置されたプレート11B,13B1,13B2が奇数プレート1Bと称される。また、図3および図5に示されているように、奇数プレート1Bの間にあるプレート12B1,12B2が偶数プレート2Bと称される。
【0019】
プレート11B,12B1,12B2,13B1および13B2は、それぞれ略矩形形状であり、それぞれ矩形の対向領域を有している。奇数プレート1Bは、図1図4および図6に示されているように、対向領域から左右にそれぞれはみ出した長方形形状を有している。また、奇数プレート1Bは、対向領域から左にはみ出した部位に、接続部1B1が設けられている。この実施形態では、接続部1B1にボルト孔1B1aを有している。偶数プレート2Bは、対向領域から上下にそれぞれはみ出した長方形形状を有している。偶数プレート2Bは、図3および図5に示されているように、対向領域から上下にそれぞれはみ出した部位に、接続部2B1,2B2を有している。接続部2B1,2B2には、ボルト孔2B1a,2B2aを有している。また、ダンパーユニットBの偶数プレート2Bは、対向領域から右側にはみ出した位置に接続部2B3が設けられている。接続部2B3には、ボルト孔2B3aを有している。
【0020】
粘弾性体21B,22B,23B,24Bは、プレート11B,12B1,12B2,13B1,13B2の間にそれぞれ配置されている。粘弾性体21B,22B,23B,24Bは、プレート11B,12B1,12B2,13B1,13B2のうち当該粘弾性体を挟むプレートにそれぞれ加硫接着されている。この実施形態では、粘弾性体21B,22B,23B,24Bは、プレート11B,12B1,12B2,13B1および13B2が対向する対向領域に収められている。粘弾性体21B,22B,23B,24Bは、それぞれ所定の厚さの直方体形状に成形されている。
【0021】
ダンパーユニットAとダンパーユニットBとが向かい合った側には、図1から図6に示されているように、ダンパーユニットAの奇数プレート1Aに設けられた接続部1A2と、ダンパーユニットBの奇数プレート1Bに設けられた接続部1B1とが配置されている。ダンパーユニットAとダンパーユニットBとが向かい合った側とは反対側には、ダンパーユニットAの奇数プレート1Aの接続部1A1と、ダンパーユニットBの偶数プレート2Bの接続部2B3が配置されている。
【0022】
〈接続部材C〉
接続部材Cは、第1接続部材C1と第2接続部材C2とが設けられている。
【0023】
第1接続部材C1は、ダンパーユニットAの奇数プレート1Aと、ダンパーユニットBの奇数プレート1Bとを接続する部材である。
第2接続部材C2は、ダンパーユニットAの偶数プレート2Aと、ダンパーユニットBの偶数プレート2Bとを接続する部材である。
【0024】
第1接続部材C1は、ダンパーユニットAとダンパーユニットBとが向かい合った位置に配置されている。この実施形態では、第1接続部材C1として、接続部材C11(図3参照)と、接続部材C12(図2および図5参照)とを備えている。
【0025】
第1接続部材C1は、プレート状の部材である。第1接続部材C1は、ダンパーユニットAとダンパーユニットBとが向かい合った位置において、ダンパーユニットAの奇数プレート1Aの接続部1A2と、ダンパーユニットBの奇数プレート1Bの接続部1B1とに架け渡されている。第1接続部材C1の接続部材C11,C12には、接続部1A2のボルト孔1A2aと、接続部1B1のボルト孔1B1aとに合わせてボルト孔C11a,C12aが形成されている(図3図5参照)。ダンパーユニットAの奇数プレート1Aの接続部1A2およびダンパーユニットBの奇数プレート1Bの接続部1B1と、第1接続部材C1とは、それぞれボルトナットで締結されている。
【0026】
第2接続部材C2は、ダンパーユニットAの偶数プレート2Aと、ダンパーユニットBの偶数プレート2Bとを接続する部材である。第2接続部材C2は、接続部材C21~C26を備えている。接続部材C21~C26は、それぞれ長いプレート状の部材である。
【0027】
接続部材C21および接続部材C22は、図1に示されているように、ダンパーユニットAのプレート12A1とダンパーユニットBのプレート12B1の手前に配置されている。
接続部材C21は、ダンパーユニットAとダンパーユニットBの対向領域の上にはみ出した接続部2A1,2B1(図3参照)の手前側に架け渡されている。接続部材C21は、接続部2A1,2B1のボルト孔2A1a,2B1a(図3参照)に対応したボルト孔C21aを有している。
接続部材C22は、ダンパーユニットAとダンパーユニットBの対向領域の下にはみ出した接続部2A2,2B2に架け渡されている。接続部材C22は、接続部2A2,2B2のボルト孔2A2a,2B2a(図3参照)に対応したボルト孔C22aを有している。
【0028】
接続部材C23および接続部材C24は、図3および4に示されているように、ダンパーユニットAのプレート12A1とプレート12A2との間、および、ダンパーユニットBのプレート12B1とプレート12B2との間にそれぞれ挟まれている。
接続部材C23は、ダンパーユニットAとダンパーユニットBの対向領域の上にはみ出した接続部2A1,2B1に架け渡されている。接続部材C23は、接続部2A1,2B1のボルト孔2A1a,2B1a(図3および図5参照)に対応したボルト孔C23aを有している。
接続部材C24は、ダンパーユニットAとダンパーユニットBの対向領域の下にはみ出した接続部2A2,2B2に架け渡されている。接続部材C24は、接続部2A2,2B2のボルト孔2A2a,2B2a(図3および図5参照)に対応したボルト孔C24aを有している。
【0029】
接続部材C25および接続部材C26は、図5および6に示されているように、ダンパーユニットAのプレート12A2とダンパーユニットBのプレート12B2の奥に配置されている。
接続部材C25は、ダンパーユニットAとダンパーユニットBの対向領域の上にはみ出した接続部2A1,2B1に架け渡されている。接続部材C25は、接続部2A1,2B1のボルト孔2A1a,2B1a(図5参照)に対応したボルト孔C25aを有している。
接続部材C26は、ダンパーユニットAとダンパーユニットBの対向領域の下にはみ出した接続部2A2,2B2に架け渡されている。接続部材C26は、接続部2A2,2B2のボルト孔2A2a,2B2a(図5参照)に対応したボルト孔C26aを有している。
【0030】
かかる接続部材C21~C26は、それぞれボルト孔C21a~C26aにボルトナットが取付けられることによって、ダンパーユニットA,Bに接続されている。
【0031】
かかる複合ダンパ10では、ダンパーユニットAの奇数プレート1Aに第1入力部D1が設けられ、ダンパーユニットBの偶数プレート2Bに第2入力部D2が設けられている。図1に示された形態では、第1入力部D1は、ダンパーユニットAの左端部の接続部1A1である。かかるダンパーユニットAの左端部の接続部1A1には、複合ダンパ10に外力を入力するための外部の構造S1が取付けられうる。第2入力部D2は、ダンパーユニットBの右端部の接続部2B3である。かかるダンパーユニットBの右端部の接続部2B3には、複合ダンパ10に外力を入力するための外部の構造S2が取付けられうる。
【0032】
複合ダンパ10は、ダンパーユニットAの奇数プレート1Aに設けられた第1入力部D1と、ダンパーユニットBの偶数プレート2Bに設けられた第2入力部D2とを通じて、外部構造S1,S2に生じた相対的な変位が入力される。そして、入力された外部構造S1,S2に生じた相対的な変位に応じて、ダンパーユニットAの奇数プレート1AとダンパーユニットBの偶数プレート2Bとに相対的な変位が生じる。ダンパーユニットAの奇数プレート1Aは、第1接続部材C1を通じてダンパーユニットBの奇数プレート1Bに接続されている。ダンパーユニットBの偶数プレート2Bは、第2接続部材C2を通じてダンパーユニットAの偶数プレート2Aに接続されている。その結果、ダンパーユニットAでは、奇数プレート1Aと偶数プレート2Aとの間の粘弾性体21A,22A,23A,24Aにせん断変形が生じる。ダンパーユニットBでは、奇数プレート1Bと偶数プレート2Bとの間の粘弾性体21B,22B,23B,24Bにせん断変形が生じる。このため、粘弾性体21A,22A,23A,24Aと粘弾性体21B,22B,23B,24Bのせん断変形に応じた反力が、入力された外部構造S1,S2に作用する。また、ダンパーユニットAの粘弾性体21A,22A,23A,24Aと、ダンパーユニットBの粘弾性体21B,22B,23B,24Bとは、それぞれせん断変形に応じたエネルギーを消費する。
【0033】
例えば、外部構造S1,S2に相対的な変位が繰り返されるような場合には、第1入力部D1と第2入力部D2を通じて、ダンパーユニットAとダンパーユニットBにそれぞれ相対的な変位が繰り返し入力される。このとき、ダンパーユニットAの粘弾性体21A,22A,23A,24Aと、ダンパーユニットBの粘弾性体21B,22B,23B,24Bとに、それぞれせん断変形が繰り返し入力される。また、かかるせん断変形に応じたエネルギーが消費される。このため、複合ダンパ10は、外部構造S1,S2に相対的な変位が繰り返されるような場合には、外部構造S1,S2からエネルギーを吸収することができる。
【0034】
外部構造S1,S2は、例えば、建物の構造材でありうる。外部構造S1,S2は、例えば、対向する一対の柱や、対向する一対の横架材に接続された部材でありうる。地震時には建物の構造材に大きな振動エネルギーが作用する。複合ダンパ10は、建物の対向する一対の柱や、対向する一対の横架材に接続された部材に取付けられていることによって、建物の構造材に生じた振動に応じて、ダンパーユニットAとダンパーユニットBとに相対的な変位が繰り返し入力される。そして、ダンパーユニットAの粘弾性体21A,22A,23A,24Aと、ダンパーユニットBの粘弾性体21B,22B,23B,24Bとに、それぞれせん断変形が繰り返し入力される。また、かかるせん断変形に応じたエネルギーが消費される。かかる作用において、複合ダンパ10は、建物に作用した振動エネルギーを吸収し、建物の揺れを小さく抑制するとともに、早期に減衰させる。
【0035】
また、複合ダンパ10によれば、ダンパーユニットAと、ダンパーユニットBは、それぞれ別個独立して粘弾性体とプレートを備えている。このため、ダンパーユニットAと、ダンパーユニットBとは、それぞれ別個に加硫成形される。ダンパーユニットAと、ダンパーユニットBとを加硫成形するための装置は、それぞれダンパーユニットAと、ダンパーユニットBとが収まりうる金型が用意されるとよい。このため、加硫成形するための装置が、粘弾性体21A,22A,23A,24Aおよび粘弾性体21B,22B,23B,24Bの合計の面積、あるいは、体積に比べて大型化しにくい。このように、複合ダンパ10は、全体として一体に動く大型の制震装置を構成しているが、各構成部材であるダンパーユニットAとダンパーユニットBは、それぞれ別個に作製できる。
【0036】
プレートの対向方向に直交する面において、離れた複数の対向領域にそれぞれ独立した粘弾性体を有するものの、プレートが共通しているなど、全体を一体成形する必要があると、製造設備が大型化する。これに対して、ここで開示された複合ダンパ10は、プレートの対向方向に直交する面において、離れた複数の対向領域にそれぞれ独立した粘弾性体を有する。しかし、それぞれの対向領域において、ダンパーユニットAとダンパーユニットBとが、独立して成形可能である。このため、製造設備を小型化することができる。また、複合ダンパ10の製造コストが低く抑えられうる。
【0037】
図1に示された形態では、ダンパーユニットAのプレートとダンパーユニットBのプレートとは、予め定められた軸Wに沿って直列に並ぶように配置されている。また、ダンパーユニットAの奇数プレート1AとダンパーユニットBの奇数プレート1Bとを接続する第1接続部材C1は、ダンパーユニットAとダンパーユニットBとの間に配置されている。ダンパーユニットAの偶数プレート2AとダンパーユニットBの偶数プレート2Bとを接続する第2接続部材C2は、偶数プレート2A,2Bのうち軸Wに直交した側縁部に配置されている。
【0038】
このように、第1接続部材C1と第2接続部材C2のうち、一方はダンパーユニットAとダンパーユニットBとの間に配置されていてもよい。そして、他方はダンパーユニットAのプレートとダンパーユニットBのプレートのうち、軸Wに直交した側縁部に配置されていてもよい。これにより、ダンパーユニットAとダンパーユニットBのプレートに沿った面方向に分けて、第1接続部材C1と第2接続部材C2とが配置される領域が設けられる。このため、複合ダンパ10の省スペース化、スペースの有効利用が図られる。
【0039】
なお、かかる構成は、図1に示された形態に限定されない。例えば、ダンパーユニットAの偶数プレート2AとダンパーユニットBの偶数プレート2Bとを接続する第2接続部材C2は、ダンパーユニットAとダンパーユニットBとの間に配置されていてもよい。また、ダンパーユニットAの奇数プレート1AとダンパーユニットBの奇数プレート1Bとを接続する第1接続部材C1は、奇数プレート1A,1Bのうち軸Wに直交した側縁部に配置されていてもよい。
【0040】
また、第1接続部材C1と第2接続部材C2のうち、ダンパーユニットAのプレートとダンパーユニットBのプレートとのうち軸Wに直交した側縁部に配置された接続部材は、軸Wに直交した両側の側縁部に設けられていてもよい。例えば、図1に示された形態では、第2接続部材C2は、ダンパーユニットAのプレートとダンパーユニットBのプレートとのうち軸Wに直交した両側の側縁部に設けられている。この場合、第2接続部材C2によって接続されたダンパーユニットAの偶数プレート2AとダンパーユニットBの偶数プレート2Bとが、両端で支持される。このため、ダンパーユニットAの偶数プレート2AとダンパーユニットBの偶数プレート2Bとが、ダンパーユニットAの奇数プレート1AとダンパーユニットBの奇数プレート1Bに対して寄れることなく安定して動きやすい。
【0041】
また、図1および図2では、ダンパーユニットAとダンパーユニットBは、それぞれ5枚のプレートが対向するように配置されている。ダンパーユニットAとダンパーユニットBのプレートの数は、それぞれ5枚に限定されない。ダンパーユニットAとダンパーユニットBは、少なくとも3枚以上の奇数枚で構成されるとよい。そして、ダンパーユニットAとダンパーユニットBとで、対向するプレートの数は同じ数であってもよい。この場合、対向するプレートの数に応じて、その間に配置される粘弾性体の数が増える。対向するプレートに加硫接着された各粘弾性体の面積および厚さが同じであれば、粘弾性体の数が増えるほど、ダンパーユニットA、Bのそれぞれが吸収しうるエネルギーが大きくなりうる。このように、図1および図2と同様の構成にて、ダンパーユニットAとダンパーユニットBを粘弾性体の厚さ方向に大型化してもよい。この場合、製造設備が大型化しうる。
【0042】
図9は、他の実施形態に係る複合ダンパを示す断面図である。図9では、複合ダンパ10A,10Bがプレートの厚さ方向に重ねられている。複合ダンパの正面図は、適宜に図1が参照されうる。そして、ダンパーユニットAとダンパーユニットBの対向領域からそれぞれはみ出した部位に設けられた接続部1A2,1B1が、それぞれ第1接続部材C1によって接続されている。ダンパーユニットAの対向領域から上下にそれぞれはみ出した部位に配置された接続部2A1,2A2と、ダンパーユニットBの対向領域から上下にはみ出した部位に配置された接続部2B1,2B2とは、それぞれ第2接続部材C2で接続されている(図1参照)。さらに、複合ダンパ10A,10BのダンパーユニットAは、それぞれ対向領域から左側にはみ出した部位に設けられた奇数プレート1Aの接続部1A1が接続部材C3で接続されている。また、複合ダンパ10A,10BのダンパーユニットBの対向領域から右側にはみ出した部位に設けられた偶数プレート2Bの接続部2B3が接続部材C4で接続されている。この場合、ダンパーユニットAとダンパーユニットBは、それぞれ別個に製造できる。このため、大型の複合ダンパを製造するのに際し、製造設備が大型化するのを抑制できる。
【0043】
このように複合ダンパ10は、プレートの厚さ方向に重ねられてもよい。そして、ダンパーユニットAとダンパーユニットBの奇数プレート1A,1Bと、ダンパーユニットAとダンパーユニットBの偶数プレート2A,2Bがそれぞれ連動して動くように接続部材によって接続されてもよい。
【0044】
このように、ここで開示される複合ダンパは、順に対向するように配置された少なくとも3枚以上の奇数枚のプレートと、プレートの間にそれぞれ配置され、かつ、プレートにそれぞれ加硫接着された複数の粘弾性体とを備えた複数のダンパーユニットをさらに有していてもよい。
そして、複合ダンパに含まれる任意の一つのダンパーユニットの奇数プレートと、他のダンパーユニットの奇数プレートとが連動して動くように、複合ダンパに含まれる全てのダンパーユニットの奇数プレートを接続する複数の接続部材を備えているとよい。また、複合ダンパに含まれる任意の一のダンパーユニットの偶数プレートと、他のダンパーユニットの偶数プレートとが連動して動くように、複合ダンパに含まれる全てのダンパーユニットの偶数プレートを接続する複数の接続部材を備えているとよい。
【0045】
例えば、図1に示された複合ダンパ10であれば、図示は省略するが、上下方向にさらに複合ダンパ10を並べてもよい。そして、軸Wに沿って対向領域からはみ出した位置に設けられた、奇数プレート1Aの接続部1A1を複合ダンパ10間で接続してもよい。また、偶数プレート2Bの接続部2B3を複合ダンパ10間で接続してもよい。また、上下に対向する複合ダンパ10の偶数プレート2A,2Bの接続部2A1,2A2,2B1,2B2をそれぞれ接続する。上下方向に並べられた複合ダンパ10において接続してもよい。これによって、上下方向に並べられた複数の複合ダンパ10のダンパーユニットAとダンパーユニットBの奇数プレート1A,1Bと偶数プレート2A,2Bとが、それぞれ連動して動くように構成されてもよい。なお、例示した実施形態では、ダンパーユニットAとダンパーユニットBの対向するプレートの数は、同じ数であるが、複合ダンパは、かかる形態に限定されない。ダンパーユニットAとダンパーユニットBとで、奇数プレート1A,1Bと偶数プレート2A,2Bとが、それぞれ連動して動くように構成されていればよく、ダンパーユニットAとダンパーユニットBの対向するプレートの数は、異なっていてもよい。
【0046】
これにより、建物に作用する大きな振動エネルギーを効率良く吸収できる制震装置が、建物の壁に対してより広い面積をカバーするようにダンパーユニットA、ダンパーユニットBが配置された複合ダンパ10を提供しうる。
【0047】
以上、ここで開示される複合ダンパについて、種々説明したが、ここで開示される制震装置は、特に言及されない限りにおいて、上述した実施形態や変形例に限定されない。また、種々言及した実施形態や変形例の各構成は、互いに阻害しない関係であれば、適宜に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0048】
1A ダンパーユニットAの奇数プレート
1A1,1A2 接続部
1A1a,1A2a ボルト孔
1B ダンパーユニットBの奇数プレート
1B1 接続部
1B1a ボルト孔
2A ダンパーユニットAの偶数プレート
2A1,2A2 接続部
2A1a,2A2a ボルト孔
2B ダンパーユニットBの偶数プレート
2B1,2B2,2B3 接続部
2B1a,2B2a,2B3a ボルト孔
10,10A,10B 複合ダンパ
11A,12A1,12A2,13A1,13A2 ダンパーユニットAのプレート
11B,12B1,12B2,13B1,13B2 ダンパーユニットBのプレート
21A,22A,23A,24A ダンパーユニットAの粘弾性体
21B,22B,23B,24B ダンパーユニットBの粘弾性体
A ダンパーユニット
B ダンパーユニット
C 接続部材
C1 第1接続部材
C11,C12 接続部材
C11a,C12a ボルト孔
C2 第2接続部材
C21~C26 接続部材
C21a~C26a ボルト孔
C3 接続部材
C4 接続部材
D1 第1入力部
D2 第2入力部
S1,S2 外部構造
W 軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9