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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】車両前部構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 19/18 20060101AFI20240625BHJP
   B60R 19/04 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
B60R19/18 G
B60R19/04 M
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020041577
(22)【出願日】2020-03-11
(65)【公開番号】P2021142815
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100183689
【弁理士】
【氏名又は名称】諏訪 華子
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】堀内 正直
(72)【発明者】
【氏名】山本 賢治
(72)【発明者】
【氏名】川野 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 弘道
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 淳
【審査官】山本 賢明
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-148343(JP,A)
【文献】国際公開第2012/046647(WO,A1)
【文献】特開2009-001199(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 19/18
B60R 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前面を形成するバンパーフェイシャの後方に配置され、車幅方向に延設されたバンパービームと、
前記バンパービームの前面に沿って配置され、車両前方からの荷重を吸収する吸収部材と、
前記バンパービームの下部に取り付けられ、前記バンパービームよりも前方かつ下方に延び、車両前方からの障害物の進入を受け止める受け部材と、を備え
前記受け部材は、その後端部が前記バンパービームの下面に接合される上面部と、前記上面部の前縁部の下方に垂設された前面部とを有し、
前記前面部は、前記バンパービームの前面よりも前方に位置し、前記吸収部材の前面よりも後方に位置する
ことを特徴とする、車両前部構造
【請求項2】
前記バンパービームの下面と面一な下面を持つ底面部と、前記バンパービームの前面に固定されるとともに前記底面部の後方に位置する後面部と、を有する取付ブラケットを備え、
前記受け部材は、前記上面部の前記後端部よりも前側において前記取付ブラケットの前記底面部に接合される
ことを特徴とする、請求項記載の車両前部構造。
【請求項3】
前記バンパーフェイシャの下端部には、車両後方に向かって延びるフランジ部が形成され、
前記前面部の下縁部は、少なくとも前記フランジ部よりも上方の高さに位置する
ことを特徴とする、請求項又は記載の車両前部構造。
【請求項4】
前記受け部材には、前記バンパービームの車幅方向中央部に配置される中央受け部材と、前記バンパービームの左右両端部であって前記中央受け部材と間隔をあけて配置される端部受け部材と、が含まれる
ことを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の車両前部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バンパーフェイシャに対する軽衝突と歩行者保護とを考慮した車両前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両前方から加わる荷重(以下、単に「荷重」という)を効率よく吸収するための車両前部構造が提案されている(例えば特許文献1参照)。荷重の吸収効率が高いほど、車両に衝突した歩行者に与えるダメージを低減することが可能となる。歩行者と車両とが衝突する場合には、車両が受けるダメージよりも歩行者が受けるダメージの方が大きくなりやすいため、車両側で効率よく荷重を吸収することが、歩行者保護の観点から重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5169967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、物体との車両前面の軽衝突時に、その衝突荷重を構造物であるバンパービームを用いて、より車両前方で受け止めることができれば、販売会社や修理業者等に車両を持ち込まずに走行を継続したり、修理業者等で修理する場合であってもその修理費用を安く抑えたりすることが可能となる。しかしながら、軽衝突時の荷重をより車両前方で受け止められるよう、バンパービームを車両前方に配置しただけでは、歩行者保護を十分に図ることができない。
【0005】
本件の車両前部構造は、このような課題に鑑み案出されたもので、歩行者保護を図りつつ軽衝突時の荷重を受け止めることを目的の一つとする。なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)ここで開示する車両前部構造は、車両前面を形成するバンパーフェイシャの後方に配置され、車幅方向に延設されたバンパービームと、前記バンパービームの前面に沿って配置され、車両前方からの荷重を吸収する吸収部材と、前記バンパービームの下部に取り付けられ、前記バンパービームよりも前方かつ下方に延び、車両前方からの障害物の進入を受け止める受け部材と、を備えている。また、前記受け部材は、その後端部が前記バンパービームの下面に接合される上面部と、前記上面部の前縁部の下方に垂設された前面部とを有し、前記前面部は、前記バンパービームの前面よりも前方に位置し、前記吸収部材の前面よりも後方に位置する。
【0008】
)前記車両前部構造は、前記バンパービームの下面と面一な下面を持つ底面部と、前記バンパービームの前面に固定されるとともに前記底面部の後方に位置する後面部と、を有する取付ブラケットを備えることが好ましい。この場合、前記受け部材は、前記上面部の前記後端部よりも前側において前記取付ブラケットの前記底面部に接合されることが好ましい。
【0009】
)前記バンパーフェイシャの下端部には、車両後方に向かって延びるフランジ部が形成され、前記前面部の下縁部は、少なくとも前記フランジ部よりも上方の高さに位置することが好ましい。
)前記受け部材には、前記バンパービームの車幅方向中央部に配置される中央受け部材と、前記バンパービームの左右両端部であって前記中央受け部材と間隔をあけて配置される端部受け部材と、が含まれることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
開示した車両前部構造によれば、吸収部材及び受け部材により歩行者保護を図りつつ軽衝突時の荷重を受け止めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る車両前部構造が適用された車両を示す模式図である。
図2図1に示す車両のバンパーフェイシャを示す斜視図である。
図3図1に示す車両前部構造の要部を車両前後方向に切断した模式的な縦断面図(図2のA-A矢視断面図に相当)である。
図4】実施形態に係る車両前部構造の要部を左斜め前上方から見た斜視図である。
図5図3に示す構造の車両前面に対し、歩行者が接触した場合の作用を説明する模式図である。
図6図3に示す構造の車両前面に対し、相手車両が軽衝突したと仮定した場合の作用を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面を参照して、実施形態としての車両前部構造について説明する。以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0013】
以下の説明では、車両の前進方向を車両前方(単に「前方」という)とし、後進方向を車両後方(単に「後方」という)とし、前方を基準に左右を定める。また、車両前後方向を単に「前後方向」という。また、重力の方向を下方、その逆を上方として上下方向を定める。なお、上下方向は、鉛直方向と完全に一致していなくてもよく、鉛直方向に対して僅かに傾斜していてもよい。同様に、前後方向は水平方向と完全に一致していなくてもよい。
【0014】
[1.構成]
図1に透視して示すように、本実施形態の車両前部構造は、バンパーフェイシャ2の後方に配置されたバンパービーム3と、バンパービーム3の前面に沿って配置された吸収部材4と、バンパービーム3の下部に取り付けられた受け部材10(図3参照)と、を備える。
【0015】
バンパーフェイシャ2は車両1の前面を形成するパネル部材である。本実施形態のバンパーフェイシャ2は、図2に示すように、アッパーバンパー2A及びロアバンパー2Bの二部品から構成される。ロアバンパー2Bには、ライセンスプレート(図示略)が取り付けられるライセンスブラケット2Cが一体成形されている。図3に示すように、ライセンスブラケット2Cは、前後方向に沿う鉛直断面形状が後方へ開口したC字形状となっている。すなわち、ライセンスブラケット2Cは、ライセンスプレートが取り付けられる前面部と、前面部の上縁部及び下縁部のそれぞれから後方に屈曲形成されたフランジ部2dとを有する。ライセンスブラケット2Cはバンパーフェイシャ2の一部であり、フランジ部2dはバンパーフェイシャ2の下端部において車両後方に向かって延設された部分である。
【0016】
図1に示すように、バンパービーム3は車幅方向に延設された構造部材である。本実施形態のバンパービーム3は、左右一対のサイドメンバ5の前端部に固定されたクラッシュボックス6同士を繋ぐ横架材として設けられる。なお、バンパービーム3の構成は特に限られず、一つの部材で構成されてもよいし、リブや凹凸面が設けられていてもよい。図4ではバンパービーム3,受け部材10及び後述する取付ブラケット20以外の部材を省略している。
【0017】
図3に示すように、吸収部材4は、車両1の前方からの荷重(衝突エネルギー)を吸収するための部材(EAコア)であり、バンパービーム3の前面に固定される。吸収部材4は、例えばバンパービーム3の車幅寸法と同等の車幅寸法に形成される。また、吸収部材4は、その前面4aとバンパーフェイシャ2の後面との間に僅かな隙間ができる位置(バンパーフェイシャ2の直後方)に配置される。本実施形態では、吸収部材4の前面4aが、ライセンスブラケット2CのC字形状の内側(ライセンスブラケット2Cの上縁部及び下縁部の少なくとも一方と鉛直方向で重なる場所)に位置している。
【0018】
クラッシュボックス6は、吸収部材4と同様、車両1の前方からの荷重(衝突エネルギー)を吸収するための部材であり、バンパービーム3の後面に固定される。なお、クラッシュボックス6は、おもに車両1が他車両や建物等の構造物に衝突したときに変形することで荷重を吸収する機能を持ち、吸収部材4は、車両1の軽衝突時に変形することで荷重を吸収する機能を持つ。なお、本実施形態の車両1は、グランドクリアランスの大きなオフロード車であり、バンパーフェイシャ2の下端部の内側(後方)に図示しないロアバーが配置される。
【0019】
受け部材10は、バンパービーム3よりも前方かつ下方に延び、車両前方からの障害物(物体)の進入を受け止める部材である。すなわち、受け部材10には少なくとも前方からの物体を受け止める面が設けられる。本実施形態の受け部材10は、バンパービーム3の下面3bに接合される上面部11と、上面部11の前縁部の下方に垂設された前面部12とを有する。本実施形態の受け部材10は、一枚の平板部材を、前後方向に沿う鉛直断面形状が略L字状になるように屈曲形成されたものである。なお、図4に示すように、受け部材10の車幅方向両端部にフランジを形成してもよい。また、剛性を高めるために凹凸面やリブを設けてもよい。
【0020】
図3に示すように、受け部材10は、上面部11の後端部がバンパービーム3に対し、例えばボルト等の締結具で固定される。上面部11は、バンパービーム3の下面3bに沿い、前後方向かつ車幅方向に延在する。また、受け部材10の前面部12は、バンパービーム3の前面よりも前方に位置し、吸収部材4の前面4aよりも後方に位置する。本実施形態の受け部材10では、吸収部材4の前後方向中央部の下方に前面部12が位置している。前面部12は、車両前方からの物体の進入を受け止める機能を持つことから、上下方向かつ車幅方向に延在する。また、少なくとも前面部12の下縁部は、バンパーフェイシャ2(ライセンスブラケット2C)の下端に位置するフランジ部2dよりも上方の高さに位置する。
【0021】
本実施形態の車両前部構造では、バンパービーム3に対する受け部材10の姿勢を安定的に保持するための取付ブラケット20が設けられる。取付ブラケット20は、バンパービーム3の下面3bと面一な下面を持つ底面部21と、バンパービーム3の前面に固定されるとともに底面部21の後方に位置する後面部22とを有する。本実施形態の取付ブラケット20は、一枚の平板部材を、前後方向に沿う鉛直断面形状が略L字状になるように屈曲形成されたものである。
【0022】
取付ブラケット20は、その後面部22がバンパービーム3に対し、例えばボルト等の締結具で固定される。また、受け部材10は、その上面部11の後端部(すなわちバンパービーム3との固定部)よりも前側において取付ブラケット20の底面部21に接合される。受け部材10及び取付ブラケット20は、例えば溶接により接合される。なお、本実施形態では、取付ブラケット20の底面部21の前縁が、受け部材10の前面部12よりも後方に位置する。
【0023】
図4に示すように、本実施形態の車両前部構造では、車幅方向に間隔をあけて三つの受け部材10が設けられる。すなわち受け部材10には、バンパービーム3の車幅方向中央部に配置される中央受け部材10Cと、バンパービーム3の左端部に配置される左受け部材10L(端部受け部材)と、バンパービーム3の右端部に配置される右受け部材10R(端部受け部材)とが含まれる。
【0024】
中央受け部材10Cは、三つの受け部材10C,10L,10Rのなかで車幅寸法が最も長い。中央受け部材10Cの左側の縁部は、ライセンスブラケット2Cの左側の縁部と同じ車幅方向位置か、あるいは、これよりも左側に位置する。同様に、中央受け部材10Cの右側の縁部は、ライセンスブラケット2Cの右側の縁部と同じ車幅方向位置か、あるいは、これよりも右側に位置する。すなわち、中央受け部材10Cの車幅寸法は、ライセンスブラケット2Cの車幅方向以上に設定される。
【0025】
左受け部材10L及び右受け部材10Rは互いに左右対称になるよう設けられる。なお、三つの受け部材10C,10L,10Rの前後寸法はいずれも略同一であり、上下寸法もいずれも同一である。ただし、バンパービーム3の左右両端部が後方へ僅かに湾曲した形状である場合には、例えば、左右の受け部材10L,10Rの前後寸法を、中央受け部材10Cの前後寸法よりもやや長くすることで、三つの受け部材10C,10L,10Rの前面部12の前後位置を同一にしてもよい。
【0026】
[2.作用,効果]
次に、図5及び図6を用いて、上述した車両前部構造を備えた車両1と歩行者(障害物)とが接触した場合、及び、車両1と他車両(障害物)とが軽衝突した場合の作用について説明する。なお、図5では、歩行者の脚部を模した衝突対象物30とバンパーフェイシャ2とが接触した後の状態を示す。また、図6では、相手車両のバンパーを模した衝突対象物40がバンパーフェイシャ2に軽衝突した後の状態を二点鎖線で示す。
【0027】
図5に示すように、バンパーフェイシャ2に対し、前方から衝突対象物30が衝突すると、バンパーフェイシャ2(例えばライセンスブラケット2C)に当たり、その後方に位置する吸収部材4が変形して衝突荷重を吸収する。歩行者との衝突では、衝突荷重が比較的小さいことから、バンパーフェイシャ2及び吸収部材4の変形により荷重を吸収でき、受け部材10はその機能を発揮しないことが多い。
【0028】
また、図6に示すように、ここで例示する衝突対象物40は、相手車両のバンパー下部を模した凸部41を有する。バンパーフェイシャ2に対し、前方から衝突対象物40が進入してくると、図中に二点鎖線で示すように、凸部41はバンパーフェイシャ2(例えばライセンスブラケット2C)の下部に当たる。このとき、吸収部材4が凸部41と接触しない高さに位置していても、凸部41は受け部材10の前面部12に当たり、受け部材10によって衝突対象物40の進入が抑制される。
【0029】
(1)このように、上述した車両前部構造によれば、バンパービーム3の高さ位置で前方から入力された荷重は、吸収部材4により吸収できるため、例えば歩行者が車両前面に衝突した際の歩行者保護性能を高めることができる。一方、バンパービーム3の高さ位置よりも下方に前方から進入してきた障害物(例えば先行車両のリアバンパー)は、受け部材10によって受け止められるため、進入量を抑えることができる。つまり、上述した車両前部構造によれば、歩行者保護を図りつつ軽衝突時の荷重を受け止めることができる。
【0030】
これにより、軽衝突後の修理費の低減や、ヘッドランプ等の動作不良を回避できる。また、このような軽衝突時のバンパー法規を定めた国にも対応可能となる。なお、バンパービーム3の高さ位置に前方から物体が進入してきた場合は、吸収部材4で荷重を吸収できるとともにバンパービーム3によってその物体を受け止めることができる。
【0031】
従来の車両では、バンパーフェイシャの前面に、バンパーフェイシャとは別体のライセンスブラケットが取り付けられていたが、上述したバンパーフェイシャ2は、ライセンスブラケット2Cと一体成形されている。このため、従来の構成よりも、ライセンスブラケットの位置における板材を一枚少なくすることができる。これにより、バンパーフェイシャ2の剛性が従来の構成よりも低くなるため、前方から入力される荷重により吸収部材4が変形しやすくなる。つまり、ライセンスブラケット2Cの潰れ残りを低減でき、荷重吸収性能を高めることができるため、歩行者保護性能をより高めることができる。
【0032】
また、本実施形態のライセンスブラケット2CはC字断面に形成されていることから、ライセンスブラケット2Cの潰れ残りをなくすことができるとともに、前方から入力される荷重により吸収部材4がより変形しやすくなる。このため、荷重吸収性能をより高めることができ、歩行者保護性能をより高めることができる。
【0033】
さらに、本実施形態の車両前部構造では、C字断面のライセンスブラケット2Cの内側に吸収部材4の前面4aが位置するように吸収部材4が配置されていることから、前方から荷重が入力されたときに吸収部材4がより変形しやすい。これにより、荷重吸収性能をより高めることができ、歩行者保護性能をより高めることができる。
【0034】
(2)上述した受け部材10は、上面部11及び前面部12を有するL字形状であり、前面部12がバンパービーム3の前面よりも前方に位置し、吸収部材4の前面よりも後方に位置することから、前方から進入する障害物を受け止めることができるとともに、受け部材10の下方に存在する機器や部材との干渉を回避でき、簡素な構成で軽量化を図ることもできる。
【0035】
(3)上述した車両前部構造によれば、取付ブラケット20により受け部材10の姿勢を安定的に保持できるため、受け部材10の前面部12をバンパービーム3の前面よりも前方に突出させて配置できる。これにより、前方から進入してくる物体を早期に受け止めることができ、進入量をより抑えることができる。
【0036】
(4)上述した車両前部構造によれば、受け部材10の前面部12が、少なくともバンパーフェイシャ2の下端部のフランジ部2dよりも上方の高さに位置することから、バンパーフェイシャ2が後方に押されて進入してきても、バンパーフェイシャ2と受け部材10との干渉を回避できる。これにより、より適切に荷重吸収性能を高めることができ、歩行者保護性能をより高めることができる。
【0037】
(5)上述した車両前部構造によれば、受け部材10が車幅方向全体にわたって設けられるのではなく、部分的に(すなわち、中央受け部材10C及び左右の受け部材10L,10Rの三つが)配置されるため、軽量化を図りつつ、歩行者保護と軽衝突時の荷重受け止めとを両立することができる。
【0038】
[3.その他]
上述した車両前部構造は一例であって、上述したものに限られない。例えば、受け部材10が三つの受け部材10C,10L,10Rを含んでいなくてもよく、車幅方向全体にわたって延設されていてもよい。また、取付ブラケット20は必須ではなく、省略可能である。少なくとも、受け部材10がバンパービーム3の下部に固定されていればよい。なお、受け部材10と吸収部材4とバンパービーム3とのそれぞれの固定方法は上述した方法(締結具による固定や溶接)に限られない。
【0039】
受け部材10は板状でなくてもよいし、その形状は上述したL字形状でなくてもよい。受け部材10は少なくとも、前方から進入してくる障害物を受け止める面を有していればよく、上記の上面部11及び前面部12以外の部位が存在していてもよいし、例えば上面部11に代えて、バンパービーム3に固定するための部位が設けられていてもよい。
【0040】
上述したバンパーフェイシャ2の構成も一例である。例えば、アッパーバンパー2A,ロアバンパー2Bが一体となったバンパーフェイシャであってもよいし、ライセンスブラケットがバンパーフェイシャと別体で設けられてもよい。また、ライセンスブラケット2Cがバンパーフェイシャ2と一体成形される場合であっても、ライセンスブラケット2Cの形状が断面C字状でなくてもよい。バンパーフェイシャ2と吸収部材4との位置関係も適宜設定可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 車両
2 バンパーフェイシャ
2A アッパーバンパー
2B ロアバンパー
2C ライセンスブラケット
2d フランジ部
3 バンパービーム
3b 下面
4 吸収部材
4a 前面
5 サイドメンバ
6 クラッシュボックス
10 受け部材
10C 中央受け部材
10L 左受け部材(端部受け部材)
10R 右受け部材(端部受け部材)
11 上面部
12 前面部
20 取付ブラケット
21 底面部
22 後面部
30 脚部を模した衝突対象物(障害物)
40 相手車両を模した衝突対象物(障害物)
41 凸部
図1
図2
図3
図4
図5
図6