(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】経腸栄養用オスコネクタ
(51)【国際特許分類】
A61M 39/10 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
A61M39/10 120
(21)【出願番号】P 2020049654
(22)【出願日】2020-03-19
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川邉 美浪
(72)【発明者】
【氏名】山辺 康平
【審査官】鈴木 洋昭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/003923(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/087880(WO,A1)
【文献】特開2011-229550(JP,A)
【文献】特開2006-230739(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 39/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側に設けられた経腸栄養用のメスコネクタに挿入可能なオスルアー部を有する本体部と、
前記本体部上に取り付けられ、前記メスコネクタと螺合可能なカプラーと、
前記オスルアー部及び前記カプラーの開口部を塞ぐキャップとを備え、
前記カプラーは、前記本体部上から取り外し可能であり、
前記キャップは、前記カプラーが前記本体部上から移動しないように、前記カプラー及び前記本体部に係合
し、
前記キャップは、前記カプラーの開口部よりも外径が大きい天面部と、前記オスルアー部に外嵌する内筒と、前記カプラーに外嵌する外筒とを有している、経腸栄養用オスコネクタ。
【請求項2】
前記キャップは、前記カプラーの開口部に嵌着される、請求項1に記載の経腸栄養用オスコネクタ。
【請求項3】
前記外筒は、前記カプラーよりも軟質の材料により形成されている、請求項1又は2に記載の経腸栄養用オスコネクタ。
【請求項4】
前記外筒の内面には、前記カプラーの外周面に設けられた凹凸と相補的な嵌合用凹凸が設けられている、請求項
1~3のいずれか1項に記載の経腸栄養用オスコネクタ。
【請求項5】
上流側に設けられた経腸栄養用のメスコネクタに挿入可能なオスルアー部を有する本体部と、
前記本体部上に取り付けられ、前記メスコネクタと螺合可能なカプラーと、
前記オスルアー部及び前記カプラーの開口部を塞ぐキャップと、
前記キャップと前記本体部とを連結する連結部とを備え、
前記カプラーは、前記本体部上から取り外し可能であり、
前記キャップは、前記カプラーが前記本体部上から移動しないように、前記カプラー及び前記本体部に係合し、
前記カプラーは、前記本体部より下流側にスライド可能であり、
前記
連結部は、前記本体部に接続
される固定リング及び前記固定リングと前記キャップとを連結するバンドを有し、
前記キャップと前記カプラーとが係合している状態において、前記カプラーは前記キャップと前記
固定リングとの間に位置
し、
前記キャップと前記カプラーとの係合が解除された状態において、前記カプラーは前記バンドが内側に位置する状態で、前記固定リングを越えて下流側に移動可能である、経腸栄養用オスコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は経腸栄養用オスコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
医療機器においては、種々の接続部が存在する。近年、医療機器の増加により、医療機器の誤接続が大きな問題となっている。このため、医療機器の誤接続を防止するために、新しいコネクタの規格が定められつつある。具体的には、医療機器を6つのカテゴリーに分け、異なるカテゴリーの医療機器を互いに接続できないコネクタとすることが求められている。例えば、栄養に関する分野においては、患者側上流端にオスルアーを有するオスコネクタを設け、供給側下流端にオスルアーを受け入れるメスコネクタを設ける規格となっている。当該規格により、従来、患者側上流端に設けられるコネクタはメスコネクタであったが、オスコネクタに変更される。
【0003】
患者側上流端に設けられるオスコネクタは、長期に使用され、また、栄養剤の投与に用いられる。このため、常に清潔にしておく必要があり、清浄の維持が容易であることは非常に重要である。このようなオスコネクタを清掃するための器具として、オスルアーとカプラーとの隙間に付着した汚れを除去するための専用の器具が検討されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0004】
しかし、このような洗浄器具を用いても、狭い隙間を洗浄することは容易ではない。このため、カプラーをオスルアーを有する本体部から分離可能にし、汚れたカプラーを取り外して洗浄したり、新しいカプラーに交換したりすることが検討されている(例えば、特許文献2を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-188522号公報
【文献】国際公開第2015/087880号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、患者側上流端に設けられるオスコネクタは、長期に使用されるため、本体部から取り外し可能なカプラーである場合、カプラーが本体部に対して正しい位置に取り付けられていない状態で放置されたりする可能性がある。このような状態でカプラーが放置されると、カプラーの内側にほこり等が溜まりやすくなり、オスルアー及びカプラーを清浄に維持できない。
【0007】
本開示の課題は、本体部から取り外し可能なカプラーを清浄に維持することが容易な経腸栄養用オスコネクタを実現できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の経腸栄養用オスコネクタの一態様は、上流側に設けられた経腸栄養用のメスコネクタに挿入可能なオスルアー部を有する本体部と、本体部上に取り付けられメスコネクタと螺合可能なカプラーと、オスルアー部及びカプラーの開口部を塞ぐキャップとを備え、カプラーは、本体部上から取り外し可能であり、キャップは、カプラーが本体部上から移動しないように、カプラー及び本体部に係合する。
【0009】
このような構成とすることにより、メスコネクタから取り外されて、オスコネクタが使用されていない場合に、キャップが取り外し可能なカプラーを本体部上に保持するため、カプラーを清浄に保つことが容易にできる。
【0010】
経腸栄養用オスコネクタの一態様において、キャップは、カプラーの開口部に嵌着されるようにできる。このような構成とすれば、キャップの着脱が容易となる。
【0011】
経腸栄養用オスコネクタの一態様において、キャップは、カプラーの外面を覆う部分を有しており、カプラーよりも軟質の材料により形成されていてもよい。このような構成とすることにより、患者の皮膚に当接しても痛みを生じさせにくくできる。
【0012】
経腸栄養用オスコネクタの一態様において、カプラーは、本体部に対して相対回転させることにより、本体部から取り外し可能であり、キャップは本体部に接続する連結部を有し、連結部は、本体部に対して相対回転が規制された状態で固定されているようにできる。このような構成とすることにより、キャップと係合したカプラーの本体部に対する相対回転を容易に規制でき、カプラーと本体部が意図せず回転して、カプラーが本体部から分離してしまう事態を防止できる。
【0013】
この場合において、連結部は、本体部に設けられた固定リング接続部に外嵌する固定リングを有し、固定リングの内面には、固定リング接続部の外周に設けられた凹凸と相補的な回転防止凹凸が設けられていてもよい。このような構成とすれば、連結部の本体部に対する相対回転を容易に規制できる。
【0014】
また、連結部は、本体部に外嵌する固定リングを有し、固定リングは、カプラーが本体部に取り付けられている場合に、カプラー及び本体部に挟持されて、カプラー及び本体部との間に摩擦係合力を生じさせるようにしてもよい。このような構成とすることにより、連結部の本体部に対する相対回転を規制すると共に、カプラーの本体部に対する相対回転をさらに生じにくくすることができる。
【0015】
経腸栄養用オスコネクタの一態様において、キャップは、カプラーに外嵌する外筒を有し、外筒の内面には、カプラーの外周面に設けられた凹凸と相補的な嵌合用凹凸が設けられていてもよい。このような構成とすることにより、カプラー係合部のカプラーに対する相対回転を容易に規制できる。
【0016】
経腸栄養用オスコネクタの一態様において、カプラーは本体部より下流側にスライド可能であり、キャップは本体部に接続する連結部を有し、キャップとカプラーとが係合している状態において、カプラーはキャップと連結部の基端との間に位置してもよい。このような構成とすることにより、カプラーの本体部に対する相対移動を容易に規制できる。このような構成とすることにより、カプラーが下流側に移動して、患者の留置部位等に接触する事態を防止することができる。
【発明の効果】
【0017】
本開示の経腸栄養用オスコネクタによれば、本体部から取り外し可能なカプラーを清浄に維持することが容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1の実施形態に係る経腸栄養用オスコネクタを示す斜視図である。
【
図2】第1の実施形態に係る経腸栄養用オスコネクタを示す側面図である。
【
図3】第1の実施形態に係る経腸栄養用オスコネクタを示す断面図である。
【
図4】第1の実施形態に係る経腸栄養用オスコネクタの本体部を示す側面図である。
【
図5】第1の実施形態に係る経腸栄養用オスコネクタのキャップを示す平面図である。
【
図7】天面部とカプラーとの係合状態を示す断面図である。
【
図10】第2の実施形態に係る経腸栄養用オスコネクタを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1~
図7に示すように、本開示の第1の実施形態に係る経腸栄養用オスコネクタ100Aは、本体部101と、本体部101に着脱可能に取り付けられたカプラー102と、本体部101及びカプラー102と係合するキャップ103とを備えている。
【0020】
本体部101は、上流側に配置された
図8に示すようなメスコネクタ300の内腔に挿入可能なオスルアー部111を有している。本体部101のオスルアー部111よりも下流側の外表面には、ネジ山114を有するカプラー取付部113が設けられている。カプラー取付部113の下流側には第1鍔状部115が設けられ、第1鍔状部115の下流側には第1鍔状部115と間隔をおいて第2鍔状部116が設けられている。第1鍔状部115と第2鍔状部116との間には、固定リング接続部117が設けられている。本体部101の下流側には、患者側へ向かうチューブを接続するチューブ接続部112が設けられている。
【0021】
カプラー102は、筒状であり、その内周面の上流側にはメスコネクタ300に設けられたメスコネクタ雄ネジ311と螺合する第1の雌ネジ121が設けられ、下流側にはネジ山114と螺合する第2の雌ネジ122が設けられている。カプラー102を本体部101に対して相対回転させて、第2の雌ネジ122と本体部101のネジ山114とを螺合させることにより、カプラー102は、本体部101上の第1の位置に固定される。カプラー102が第1の位置に固定されることにより、オスルアー部111をメスコネクタ300に挿入し、第1の雌ネジ121をメスコネクタ雄ネジ311と螺合させることができる。第1の位置に固定されたカプラー102を、第2の雌ネジ122とネジ山114との螺合を解除するように本体部101に対して相対回転させると、カプラー102を本体部101から取り外すことができる。
【0022】
本実施形態において、第1の雌ネジ121は、カプラー102を下流側から見て右方向に回転させることにより上流側に配置されたメスコネクタ300のメスコネクタ雄ネジ311と螺合する右ネジ(正ネジ)であり、第2の雌ネジ122は、カプラー102を下流側から見て右方向に回転させることにより下流側に配置された本体部101のネジ山114と螺合する左ネジ(逆ネジ)である。このような構成とすれば、ロック機構が無くてもカプラー102とメスコネクタ300との螺合を解除する際に、カプラー102と本体部101との螺合が緩まないようにできる。但し、第2の雌ネジ122及びネジ山114も正ネジとすることができる。このようにすれば、ロック機構が無くてもカプラー102とメスコネクタ300とを螺合させる際に、カプラー102と本体部101との螺合が緩まないようにできる。
【0023】
キャップ103は、オスルアー部111の上流端開口を塞ぐ天面部131と、本体部101と天面部131とを連結する連結部132とを有している。天面部131は、オスルアー部111に外嵌して液密を保つ内筒151と、カプラー102に外嵌する外筒152とを有しており、オスルアー部111の開口を塞ぐだけでなく、カプラー102と係合するカプラー係合部として機能する。本実施形態においては、外筒152の内面には、カプラー102の外面に設けられたリブ124と相補的な凹部152aが設けられている。リブ124と凹部152aとが係合することにより、天面部131のカプラー102に対する相対回転が確実に規制される。但し、外筒152の内面に、リブ124と相補的な凹部を設けなくてもよい。
【0024】
本実施形態において、連結部132は固定リング161と、固定リング161と天面部131とを接続するバンド162とを有している。固定リング161の内径は、本体部101に設けられた固定リング接続部117の外径とほぼ一致しており、固定リング161の内周には、回転防止用の複数の凸部161aが設けられている。凸部161aは、両側部が径方向内側にほぼ垂直に起立する形状となっており、固定リング接続部117には、凸部161aと相補的な形状の凹部117aが設けられている。固定リング161を固定リング接続部117にはめ込むと、凸部161aと凹部117aとがかみ合い、固定リング161の本体部101に対する相対回転が規制される。
【0025】
本実施形態において、天面部131と連結部132とは一体に形成されており、天面部131は連結部132に対して相対回転しない。このため、固定リング161が本体部101に対して相対回転しないように係合し、固定リング161が本体部101に対して相対回転して、意図せずカプラー102が本体部101に対して相対回転してしまう事態を低減する。
【0026】
本実施形態において、第1の位置に固定されたカプラー102にキャップ103の天面部131を係合させると、キャップ103によりカプラー102はオスコネクタ上流側に保持されて、洗浄後の非使用時において、カプラー102をオスコネクタに係止させておくことができる。また、非使用時において、キャップ103の天面部131がカプラー102の開口部を塞ぎ、カプラー102内にほこり等が浸入して汚染が生じる事態を低減することができる。また、カプラー102の本体部101に対する相対回転が規制され、カプラー102は本体部101に対して第1の位置から移動できなくなる。本実施形態のキャップ103を用いることにより、メスコネクタ300に接続されていない状態でカプラー102が意図せずに回転して本体部101から脱離し、そのまま放置されるような事態を生じにくくすることができる。また、キャップ103に外筒152及びカプラー102が挿入される環状の空隙が形成されていることで、キャップ103をオスルアーに取り付ける際に、使用者はカプラー102をキャップ103に取り付けることを失念しにくく、カプラー102をキャップ103に取り付けるように使用者を誘導することができる。
【0027】
本実施形態において、固定リング161に設けた凸部161aと、固定リング接続部117に設けられた凹部117aとが係合することにより、固定リング161がどちらの方向にも相対回転しないようにした。しかし、固定リング161が本体部101に対して回転できるようにしてもよい。例えば、
図6に示すように、周方向側縁の一方は径方向内側に急角度で立ち上がり、他方は径方向内側になだらかに傾斜するような凸部161bを固定リング161の内周に設け、固定リング接続部117の外周にはこれと相補的な凹部を設けることができる。このようにすれば、固定リング161を凸部161bのなだらかに傾斜する側には回転可能で、逆方向には回転しないようにでき、カプラー102と本体部101の螺合が解除される方向に固定リング161が回転しにくいようにすることもできる。
【0028】
本実施形態においては、固定リング161の内周に凸部を設け、固定リング接続部117の外周に凹部を設けたが、固定リング161の内周と固定リング接続部117の外周とに相補的な凹凸があればよく、凹凸を逆に設けたり、双方に凹凸を設けたりしてもよい。また、固定リング161の内周と固定リング接続部117の外周とに凹凸を設けるのではなく、固定リング161の軸方向端面に凹凸を設け、対応する第1鍔状部115又は第2鍔状部116の当接面にこれと相補的な凹凸を設けてもよい。
【0029】
本実施形態において、本体部101に対して相対回転しない固定リング161により、連結部132を本体部101に係合したが、他の構成とすることもできる。例えば、固定リング161を用いずに連結部132のバンド162を本体部101に接着又は溶着等して固定することができる。
【0030】
また、
図9に示すように、固定リング161をカプラー102の下流端とネジ山114のネジ座である第1鍔状部115との間に挟み込んで相対回転しないように固定することもできる。この場合、カプラー102を本体部101の下流側に移動するように相対回転させると、固定リング161がカプラー102と本体部101とに挟持されて、固定リング161に圧縮が生じる。このような状態において、固定リング161とカプラー102及び本体部101との間には摩擦係合力が生じ、カプラー102が本体部101から分離する方向に相対回転しにくくなる。つまり、固定リング161とカプラー102の下流端及び第1鍔状部115との間に摩擦係合力が働くようにすれば、カプラー102が本体部101に対してさらに相対回転しにくくなり、意図しないカプラー102の脱離をさらに生じにくくすることができる。摩擦係合力を大きくする観点からは、固定リング161を、本体部101及びカプラー102よりも軟質の材料により形成することが好ましい。なお、この場合にも、固定リング161の内周面と、カプラー取付部113の下流端とに相補的な凹凸を設けることができる。
【0031】
また、カプラー102と本体部101との係合方法がネジではなく、L字状の溝等によって、カプラー102が本体部101に対して相対回転して位置が固定されるような態様においても意図しないカプラー102の脱離を生じにくくすることができる。さらに、カプラー102が本体部101に対して相対回転せず軸方向の相対移動のみで凹凸嵌合した後に、相対回転させることでカプラー102が本体部101に対して係合解除するような構成においても意図しないカプラー102の脱離を生じにくくすることができる。
【0032】
連結部132は本体部101に固定するのではなく、本体部101に対して相対回転しないように固定されている他の部材に相対回転しないように固定することもできる。例えば、本体部101の下流側に固定されているチューブに連結部132を相対回転しないように係合させることができる。
【0033】
固定リング161と天面部131とを接続するバンド162は、バンド162のねじれによる天面部131及び固定リング161の相対移動を生じにくくするために、ある程度硬質の材料により形成することが好ましい。また、バンド162の硬度が高い場合には、天面部131とカプラー102とを係合させる際に天面部131と固定リング161とが接近するようなバンド162の屈曲を容易にするために、バンド162に肉薄部を設けることもできる。
【0034】
本実施形態において、連結部132と天面部131とを一体に形成したが、連結部132と天面部131とはそれぞれ別体で形成してもよい。例えば、別々に形成した、連結部132を天面部131に係止、接着又は溶着等により固定することができる。
【0035】
本実施形態において、天面部131がカプラー102に係合する機構として、外筒152の内面にカプラー102の外面に設けられたリブ124と係合する凹部152aを設けた。しかし、天面部131は、カプラー102と係合できればよく、例えば、リブ124とは別に外筒152の内面とカプラー102の外面とに相補的な構造を設けて係合させることもできる。また、外筒152の内面とカプラー102の外面とに相補的な構造が存在せず、外筒152の内面とカプラー102の外面との間の摩擦力によって係合させることもできる。
【0036】
天面部131は、カプラー102に対して係合できれば、外嵌する構成に限らない。例えば、天面部131がカプラー102に内嵌する構成としたり、カプラー102の内面に設けられたネジ山と係合する構成としたりすることもできる。なお、天面部131がカプラー102に嵌着する構成とすることにより、キャップ103のカプラー102への係合が容易となる。但し、嵌着以外の方法によりキャップ103をカプラー102へ係合させる構成とすることもでき、例えば天面部131を多少ひねるようにして第1の雌ネジ121と係合させるような構成とすることもできる。
【0037】
但し、外筒152をカプラー102に外嵌させる構成であれば、天面部131とカプラー102とを容易に係合させることができる。また、カプラー102の外面の少なくとも一部が外筒152に覆われるため、カプラー102が患者の皮膚に直接当たらないようにできる。外筒152をカプラー102よりも柔らかい材料により形成すれば、カプラー102が皮膚に直接当たることにより生じる痛みを低減することができる。天面部131をカプラー102に外嵌させずに、キャップ103の相対回転を規制する場合にも、カプラー102の外面の少なくとも一部を覆う柔らかい部材を設ければ、カプラー102の直接の当接を避け、痛みを低減する効果が得られる。
【0038】
本実施形態において、天面部131は、外縁の連結部132と反対側の位置にタブ154を有している。タブ154を設けることにより天面部131のカプラー102への脱着が容易となる。但し、タブ154は必要に応じて設ければよく、設けなくてもよい。
【0039】
本実施形態においては、キャップ103がカプラー102と本体部101と係合することにより、カプラー102の本体部101に対する相対回転を規制している。このため、ネジ以外の相対回転によりカプラー102と本体部101との着脱を可能にする種々の機構を有する経腸栄養用オスコネクタにおいても、本実施形態のキャップ103を設けることにより、非使用時にカプラー102が正しい位置に取り付けられた状態を維持することが容易となる。
【0040】
また、カプラーを本体部に対して相対回転させる以外の方法により、カプラーを本体部に着脱可能にしてもよい。例えば、カプラーに設けられた可撓片を操作することによりカプラーと本体部との係合が解除され、カプラーが本体部から取り外し可能になる場合、本体部及びカプラーと係合する本実施形態のキャプを取り付けることにより、可撓片が誤操作されてもキャプによりカプラーの位置が保持され、カプラーが分離しないようにできる。また、本体部及びカプラーと係合すると共に、可撓片を操作できないように覆う部材をキャップに設ければ、可撓片の誤操作自体を生じにくくすることができる。また、可撓片によらず、凹凸を利用して、カプラーと本体部との係合又は解除がカプラーと本体の軸方向相対移動で生じるようにしてもよい。カプラーと本体部との係合機構はロック機構を有していても、有していなくてもよい。カプラーと本体部との係合方法又は解除方法がどのような方法であっても、キャップがカプラーを保持する構成であることで、非使用時において、カプラーがオスコネクタ上流側に取り付けられた状態を維持することができる。
【0041】
また、カプラー102が上流側に取り外されることによりオスルアー部111が露出するのではなく、カプラー102が下流側に移動して本体部101上から取り外されるいわゆるスライド式カプラーの場合にも、キャップ103を適用することができる。スライド式カプラーにキャップ103を適用することにより、カプラー102の意図しない移動を生じにくくして、カプラー102を本体部101上に維持することが容易となる。
【0042】
図10には、第2の実施形態に係る経腸栄養用オスコネクタ100Bを示している。経腸栄養用オスコネクタ100Bは、カプラー102を本体101上の第1の位置から取り外し、本体部101に対して下流側の第2の位置に移動可能であり、オスルアー部111を露出させることができる。なお、第2の実施形態に係る経腸栄養用オスコネクタ100Bは第1の実施形態と異なり、カプラー102を経腸栄養用オスコネクタ100Bから完全に分離させることはできない。即ち、カプラー102は、本体101の上流側を超えて移動させることができず、本体101の下流側を超えて、本体101の下流に接続される可撓性のチューブ350上を移動することができるが、チューブ350の下流側は患者に留置されるため、カプラー102は経腸栄養用オスコネクタ100Bから完全に分離することができない。
【0043】
本実施形態において、本体部101は、オスルアー部111よりも下流側に鍔状部118を有し、カプラー102は、鍔状部118よりも内径が大きい大径部125と、大径部125より下流側に設けられ、鍔状部118よりも内径が小さい小径部126を有している。小径部126の上流側の端部は、第1の位置において鍔状部118の下流側の端部と当接しカプラー102が第1の位置を超えて上流側に移動しないようになっている。本実施形態の経腸栄養用オスコネクタ100Bは、第1の位置においてカプラー102が本体部101に対して自由に回転できる、いわゆるフリーロックタイプのコネクタである。なお、カプラー102が第1の位置よりも上流側に移動しないようにする機構はどのようなものであってもよく、鍔状部118を設ける以外の方法により実現してもよい。また、第1の位置においてカプラー102が解除可能にロックされるような機構を有していてもよい。
【0044】
カプラー102の小径部126よりも上流側には、鍔状部118よりも小径の部分は存在せず、本体部101の鍔状部118よりも下流側には小径部126よりも大径の部分は存在しないので、カプラー102は、第1の位置よりも下流側へ移動可能である。しかし、本実施形態においては、第1の位置においては、キャップ103とカプラー102とを係合させることができ、キャップ103とカプラー102とを係合している場合には、カプラー102はキャップ103によりオスコネクタの上流側に保持されて、カプラー102が留置部位に接触して汚染される事態を防止する。
【0045】
本実施形態において、キャップ103は、カプラー102に嵌着して係合する天面部131と、本体部101と係合すると共に天面部131と連結された連結部132とを有している。天面部131は、オスルアー部111に外嵌して液密を保つ内筒151と、カプラー102に外嵌する外筒152とを有している。カプラー102が、第1の位置にある場合には、オスルアー部111の上流端が、カプラー102の上流端からわずかに突出した状態となる。内筒151及び外筒152は、この状態においてオスルアー部111及びカプラー102と係合するように設計されている。
【0046】
本実施形態において外筒152の内面には、カプラー102の外面に設けられたリブ124と相補的な凹部152aが設けられている。リブ124と凹部152aとが係合することにより、天面部131とカプラー102とをより強固に嵌着させることができる。リブ124と凹部152aとの係合により、天面部131とカプラー102との相対回転も規制されるが、天面部131とカプラー102とが相対回転してもかまわない。
【0047】
連結部132は天面部131と反対側に固定リング161を有している。固定リング161の内径は、本体部101に設けられた固定リング接続部117の外径とほぼ一致しており、固定リング161を固定リング接続部117にはめ込むことにより、連結部132を本体部101と係合させることができる。連結部132は、本体部101と係合していれば、本体部101に対して相対回転してもかまわない。
【0048】
第1の位置にあるカプラー102に天面部131を係合させると、連結部132のバンド162は、固定リング161からほぼ垂直に立ち上がるように長さ及び硬さが調整されている。このため、カプラー102は、第1の位置から下流側へ移動することができない。一方、カプラー102の小径部126の内径は、チューブ350の外径と、バンド162の厚さとの和よりも少し大きい。天面部131をカプラー102に係合させていない場合は、カプラー102の内側にバンド162が位置するようにできるので、カプラー102は、固定リング161の接続位置を越えて下流側に移動させることができるが、カプラー102は、天面部131を乗り越えることができないため、カプラー102の下流側への移動範囲は、バンド162の長さによって制限される。このため、カプラー102が第1の位置から下流側へ移動したとしても、カプラー102が患者の留置部位等に接触する事態が防止される。
【0049】
なお、カプラー102の下流側への移動距離を制限する機構は、このような機構に限らない。例えば、連結部132の基端を本体部101に接続された可撓性のチューブ350の本体部101から所定の距離離れた位置に固定し、カプラー102が連結部132の固定された基端に当接することにより、それ以上の下流側への移動を規制するようにしてもよい。
【0050】
本実施形態のキャップ103は、カプラー102がメスコネクタと螺合させることができる第1の位置にある場合に天面部131をカプラー102に係合させることができる。このため、キャップ103を取り付けることによりカプラー102を第1の位置にある状態とし、且つ第1の位置からの移動を規制できる。
【0051】
第2の実施形態においても、天面部131及び連結部132について第1の実施形態と同様の種々の変形を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本開示の経腸栄養用オスコネクタは、本体部から取り外し可能なカプラーを清浄に維持することが容易にでき、ISO80369-3に準拠した経腸栄養の分野において特に有用である。
【符号の説明】
【0053】
100A 経腸栄養用オスコネクタ
100B 経腸栄養用オスコネクタ
101 本体部
102 カプラー
103 キャップ
111 オスルアー部
112 チューブ接続部
113 カプラー取付部
114 ネジ山
115 第1鍔状部
116 第2鍔状部
117 固定リング接続部
117a 凹部
118 鍔状部
121 第1の雌ネジ
122 第2の雌ネジ
124 リブ
125 大径部
126 小径部
131 天面部
132 連結部
151 内筒
152 外筒
152a 凹部
154 タブ
161 固定リング
161a 凸部
161b 凸部
162 バンド
300 メスコネクタ
311 メスコネクタ雄ネジ
350 チューブ