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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】加熱装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
G03G15/20 515
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020058591
(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公開番号】P2021157099
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原 瞳子
(72)【発明者】
【氏名】井上 徹
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 和善
(72)【発明者】
【氏名】宮田 敏行
(72)【発明者】
【氏名】小柳 聖
【審査官】小池 俊次
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-039049(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する回転部と、
前記回転部との間に被加熱材を挟んで該回転部と共に回転し、該被加熱材を搬送する搬送ベルトと、
前記搬送ベルトの内周面に接触する接触面と、前記内周面に対して非接触とされた平面状の非接触面と、を有し、発熱により前記搬送ベルトを介して前記被加熱材を加熱する加熱部と、
前記加熱部の非接触面に接触する平面状の外面と、作動液が封入された断面円形状の空間が形成された内部と、を有し、該作動液の作用により前記搬送ベルトのベルト幅方向に沿って熱移動させるヒートパイプと、
を備え、
前記ヒートパイプは、前記搬送ベルトの内周面に対して非接触である
加熱装置。
【請求項2】
前記ヒートパイプは、
前記外面としての第一外面と、
前記空間の断面円形状の内周面の一部に沿った断面円弧状に形成された第二外面と、
で外周面が構成されている
請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
前記ヒートパイプは、
前記第二外面が、前記空間の断面円形状の内周面と同心の円弧として形成されている
請求項2に記載の加熱装置。
【請求項4】
前記ヒートパイプは、
円筒体の一部が切断されて、前記第一外面が形成されている
請求項2又は3に記載の加熱装置。
【請求項5】
前記ヒートパイプは、
前記第一外面での厚みが前記第二外面での厚みよりも薄い
請求項2又は3に記載の加熱装置。
【請求項6】
前記ヒートパイプは、
軸方向端部において、円筒状に形成されている
請求項1~5のいずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項7】
前記ヒートパイプは、
前記軸方向端部において、前記非接触面に対して隙間を有している
請求項6に記載の加熱装置。
【請求項8】
前記ヒートパイプは、
前記空間における前記非接触面側に配置され、前記作動液を軸方向に沿って移動させる毛細管を形成する形成部材を
有する
請求項1~7のいずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項9】
記録媒体に画像を形成する画像形成部と、
加熱により、前記画像を前記記録媒体に定着する請求項1~8のいずれか1項に記載の加熱装置と、
を備える画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、加熱手段と該加熱手段に圧接しながら回転自在に配設されたフィルム部材と、該フィルム部材を介して前記加熱手段に圧接するように配設された加圧手段によって形成された定着ニップへ、被加熱材を通過させる画像形成装置において、前記加熱手段がプレート状のヒートパイプであり、前記ヒートパイプ基板上の定着ニップ側の面に、絶縁層を介して発熱体が印刷され、さらに最表面は絶縁層でコーティングされていることを特徴とする加熱手段を備えた画像形成装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-142834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回転部と搬送ベルトとで搬送される被加熱材を、搬送ベルトを介して加熱部で加熱する構成において、ヒートパイプによって加熱部の高温部から低温部へ熱移動させる構成(以下、構成Aという)が考えられる。
【0005】
上記構成Aにおいて、円筒状のヒートパイプを用いた場合では、該ヒートパイプの外周面が断面円形状であるため、加熱部に対する接触面積が小さくなりやすい。
【0006】
本発明は、ヒートパイプが円筒状である構成に比べ、加熱部に対する接触面積を確保できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1態様は、回転する回転部と、前記回転部との間に被加熱材を挟んで該回転部と共に回転し、該被加熱材を搬送する搬送ベルトと、前記搬送ベルトの内周面に接触する接触面と、前記内周面に対して非接触とされた平面状の非接触面と、を有し、発熱により前記搬送ベルトを介して前記被加熱材を加熱する加熱部と、前記加熱部の非接触面に接触する平面状の外面と、作動液が封入された断面円形状の空間が形成された内部と、を有し、該作動液の作用により前記搬送ベルトのベルト幅方向に沿って熱移動させるヒートパイプと、を備える。
【0008】
第2態様では、前記ヒートパイプは、前記外面としての第一外面と、前記空間の断面円形状の内周面の一部に沿った断面円弧状に形成された第二外面と、で外周面が構成されている。
【0009】
第3態様では、前記ヒートパイプは、前記第二外面が、前記空間の断面円形状の内周面と同心の円弧として形成されている。
【0010】
第4態様では、前記ヒートパイプは、円筒体の一部が切断されて、前記第一外面が形成されている。
【0011】
第5態様では、前記ヒートパイプは、前記第一外面での厚みが前記第二外面での厚みよりも薄い。
【0012】
第6態様では、前記ヒートパイプは、軸方向端部において、円筒状に形成されている。
【0013】
第7態様では、前記ヒートパイプは、前記軸方向端部において、前記非接触面に対して隙間を有している。
【0014】
第8態様では、前記ヒートパイプは、前記空間における前記非接触面側に配置され、前記作動液を軸方向に沿って移動させる毛細管を形成する形成部材を有する。
【0015】
第9態様は、記録媒体に画像を形成する画像形成部と、加熱により、前記画像を前記記録媒体に定着する第1態様~第8態様のいずれか1つの態様に係る加熱装置と、を備える。
【発明の効果】
【0016】
第1態様の構成によれば、ヒートパイプが円筒状である構成に比べ、加熱部に対する接触面積を確保できる。
【0017】
第2態様の構成によれば、第二外面が断面多角形状である構成に比べ、第二外面と内周面との間の厚さのばらつきが小さい。
【0018】
第3態様の構成によれば、空間の断面円形状の内周面の中心と第二外面の中心とがずれた構成に比べ、第二外面と内周面との間の厚さのばらつきが小さい。
【0019】
第4態様の構成によれば、円筒状のヒートパイプを外周の一部を潰すことで第一外面を形成する構成に比べ、ヒートパイプが作動液の膨張圧によって円筒状に変形することが抑制される。
【0020】
第5態様の構成によれば、第一外面での厚みが第二外面での厚みと同じである構成に比べ、搬送ベルトのベルト幅方向に沿った温度ムラを低減できる。
【0021】
第6態様の構成によれば、ヒートパイプの軸方向端部における非接触面側が平面状に形成されている構成に比べ、ヒートパイプの軸方向端部と非接触面との接触面積を小さくできる。
【0022】
第7態様の構成によれば、ヒートパイプの軸方向端部が非接触面に接触する構成に比べ、ヒートパイプの軸方向端部において、作動液の膨張が生じにくくなる。
【0023】
第8態様の構成によれば、形成部材が、空間の非接触面とは反対側に配置されている構成に比べ、搬送ベルトのベルト幅方向に沿った温度ムラを低減できる。
【0024】
第9態様の構成によれば、ヒートパイプが円筒状である構成に比べ、画像の定着ムラが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本実施形態に係る画像形成装置の構成を示す概略図である。
図2】本実施形態に係る定着装置の構成を示す概略図である。
図3】本実施形態に係る加熱部の構成を示す概略図である。
図4】本実施形態に係る加熱部及びヒートパイプの構成を示す平面図である。
図5】本実施形態に係るヒートパイプの構成を示す概略図である。
図6】本実施形態に係るヒートパイプの切断前の円筒体を示す概略図である。
図7】本実施形態に係るヒートパイプの軸方向端部の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明に係る実施形態の一例を図面に基づき説明する。
【0027】
(画像形成装置10)
本実施形態に係る画像形成装置10の構成を説明する。図1は、本実施形態に係る画像形成装置10の構成を示す概略図である。以下の説明では、画像形成装置10について、高さ方向を「装置高さ方向」と称し、奥行き方向を「装置奥行方向」と称し、左右方向を「装置幅方向」と称する。装置高さ方向、装置奥行方向及び装置幅方向は、互いに直交する方向である。各図では、装置高さ方向を矢印X方向で示し、装置奥行方向を矢印Z方向で示し、装置幅方向を矢印Y方向で示している。なお、これらの方向は、説明の便宜上、定めた方向であるから、装置構成がこれらの方向に限定されるものではない。
【0028】
画像形成装置10は、図1に示されるように、装置本体11と、用紙Pを収容する収容部12と、用紙Pを搬送する搬送部14と、用紙Pにトナー像Gを形成する像形成部16と、定着装置30と、を備えている。
【0029】
用紙Pは、記録媒体の一例であり、被加熱材の一例である。トナー像Gは、画像の一例である。像形成部16は、画像形成部の一例である。搬送部14は、用紙Pを収容部12から装置高さ方向の上側に向けて、搬送経路Tに沿って搬送する。像形成部16は、一例として、単色又は複数色のトナーを用いて、公知の電子写真方式である帯電、露光、現像、転写の各工程を行い、搬送部14で搬送される用紙Pにトナー像Gを形成する。
【0030】
(定着装置30)
図1に示される定着装置30は、加熱装置の一例である。この定着装置30は、像形成部16によって用紙Pに形成されたトナー像Gを、加熱により、該用紙Pに定着する装置である。具体的には、定着装置30は、図1に示されるように、装置本体50と、加圧ロール40と、加熱ベルト60と、を有している。さらに、定着装置30は、図2に示されるように、加熱部70と、支持部80と、ヒートパイプ90と、を有している。以下に、定着装置30の各部の具体的な構成について説明する。
【0031】
(装置本体50)
図1に示される装置本体50は、画像形成装置10の装置本体11に対して着脱可能に設けられている。これにより、定着装置30全体が、画像形成装置10の装置本体11に対して着脱可能とされる。装置本体50は、定着装置30の各部を支持する支持フレーム(図示省略)を有している。
【0032】
(加圧ロール40及び加熱ベルト60)
加圧ロール40は、回転部の一例である。加熱ベルト60は、搬送ベルトの一例である。
【0033】
加圧ロール40及び加熱ベルト60は互いに対向して配置されている。
【0034】
加熱ベルト60は、環状、具体的には、無端状に形成されている。加熱ベルト60は、一例として、外周面にフッ素コーティングが施されたポリイミド樹脂製の部材とされている。加熱ベルト60のベルト幅方向の両端部は、図示されない支持部材により回転可能に支持されている。
【0035】
なお、ベルト幅方向は、加熱ベルト60が回転する回転方向に対して交差する方向(具体的には、直交する方向)であり、図中のZ方向に沿った方向である。このベルト幅方向は、加圧ロール40の回転軸方向(以下、軸方向という)に沿った方向ともいえる。
【0036】
加圧ロール40は、装置奥行方向(Z方向)を軸方向とする軸部45と、軸部45の外周に形成された弾性層46と、弾性層46の外周に形成された離型層47と、を有している。軸部45は、図示されないバネを含む押付部によって、加熱部70側に向けて押し付けられている。これにより、加熱ベルト60と加圧ロール40とが接触する接触領域50S(すなわち、定着ニップ)が形成される。換言すれば、接触領域50Sは、加熱ベルト60と加圧ロール40との間に形成される領域である。
【0037】
さらに、加圧ロール40は、軸部45が、軸受(図示省略)に支持され、駆動部(図示省略)によって回転する。一方、加熱ベルト60は、加圧ロール40に従動して回転する。これにより、加熱ベルト60は、加圧ロール40との間に用紙Pを挟んで加圧ロール40と共に回転し、該用紙Pを搬送する。この用紙Pは、加圧ロール40と加熱ベルト60で加圧されると共に、加熱部70で加熱されることで、用紙Pに形成されたトナー像Gが定着される。
【0038】
(加熱部70)
加熱部70は、図2に示されるように、加熱ベルト60の内側に配置され、後述する支持部80により支持されている。この加熱部70は、装置幅方向(Y方向)を厚み方向とする面状(板状)とされ、加熱ベルト60のベルト幅方向(Z方向)に沿って長さを有している。
【0039】
図3に示されるように、加熱部70は、加熱ベルト60の内周面60Aに接触する接触面70Aと、内周面60Aに対して非接触とされた平面状の非接触面70Bと、を有している。非接触面70Bは、接触面70Aに対する加熱ベルト60側とは反対側に配置されている。換言すれば、非接触面70Bは、接触面70Aに対して対向して配置されている。さらに言えば、非接触面70Bは、接触面70Aに対して平行に配置されている。すなわち、非接触面70Bと接触面70Aとの距離が、装置高さ方向(X方向)に一定とされている。
【0040】
さらに、加熱部70は、図3に示されるように、基材72と、抵抗体74と、保護層76と、を有している。基材72は、装置奥行方向(Z方向)に長く装置高さ方向(X方向)に短い矩形板で構成されている。この基材72は、一例として、アルミナの成形体で構成されている。基材72の装置幅方向(Y方向)の厚さは、一例として、1〔mm〕程度となっている。
【0041】
抵抗体74は、基材72における加圧ロール40側の面72A(以下、表面72Aという)に設けられている。抵抗体74における装置奥行方向の両端部に電極(図示省略)が形成されている。該電極は電源(図示省略)が接続されている。該電源から抵抗体74が通電されることで、抵抗体74の内部抵抗によるジュール熱が生じ、抵抗体74が発熱する。
【0042】
保護層76は、基材72の表面72Aに形成されており、抵抗体74を覆っている。この保護層76が加熱部70の接触面70Aを構成している。そして、加熱部70では、抵抗体74の発熱により加熱ベルト60を介して用紙Pを加熱する。
【0043】
(支持部80)
図2に示される支持部80は、加熱ベルト60を支持する機能を有している。さらに、支持部80は、加熱部70を支持する機能を有している。具体的には、支持部80は、支持フレーム82と、保持部材84と、を有している。
【0044】
支持フレーム82は、装置奥行方向(Z方向)に長い部材である。支持フレーム82の断面形状は、装置奥行方向から見た場合に、加圧ロール40側に向けて開口するU字状となっている。また、支持フレーム82は、装置奥行方向の両端部が装置本体50に支持されている。
【0045】
保持部材84は、一例として、装置奥行方向に長い液晶ポリマーの部材である。また、保持部材84は、支持フレーム82の加圧側の部位に取り付けられ、加熱部70を保持している。
【0046】
(ヒートパイプ90)
ヒートパイプ90は、図2に示されるように、加熱部70の非接触面70Bに一本設けられている。このヒートパイプ90は、図4に示されるように、加熱部70の長手方向(Z方向)に沿って配置されている。すなわち、ヒートパイプ90の軸方向と加熱部70の長手方向とが一致している。また、ヒートパイプ90は、加熱部70の短手方向(X方向)の中央部に配置されている。
【0047】
ヒートパイプ90は、図5に示されるように、内部94と外周面95とを有する本体部96と、ワイヤ97と、を備えている。なお、図2では、ワイヤ97を省略して図示している。
【0048】
ヒートパイプ90の内部94には、作動液が封入された断面円形状の空間93が形成されている。該空間93は、ヒートパイプ90の軸方向に沿って延びている。なお、作動液は、空間93内が減圧された状態で封入されている。
【0049】
ヒートパイプ90の外周面95は、加熱部70の非接触面70Bに接触する平面状の第一外面91と、空間93の断面円形状の内周面93Aの一部に沿った断面円弧状に形成された第二外面92と、で構成されている。第二外面92は、具体的には、内周面93Aと同心の円弧として形成されている。また、第二外面92は、加熱部70の非接触面70Bに対して非接触である面である。さらに言えば、第二外面92は、定着装置30における他の部材に対して非接触であり、支持部80の支持フレーム82に囲まれた空間に露出している(図2参照)。
【0050】
本実施形態では、ヒートパイプ90は、円筒体190(図6参照)の一部が切断されて、第一外面91が形成されている。具体的には、図6に示されるように、該円筒体190(切断前のヒートパイプ90に相当)の軸方向断面視にて、接線N1と接線N2との間において、接線N1、N2に平行な切断線N3にて、該円筒体190が切断されることで、第一外面91を有するヒートパイプ90が形成される。接線N1は、円筒体190の内周面190Aを通る接線である。接線N2は、接線N1と平行で、且つ該円筒体190の外周面190Bを通る接線である。
【0051】
ヒートパイプ90は、図5に示されるように、第一外面91での厚みS1が第二外面92での厚みS2よりも薄くなっている。なお、厚みS1、S2は、ヒートパイプ90の径方向に沿った厚みである。また、ヒートパイプの外半径は、一例として、第二外面92の部分で、例えば、1mm以上5mm以下とされている。また、第一外面91における加熱部70の短手方向(X方向)に沿った寸法は、外半径以下とされている。
【0052】
さらに、ヒートパイプ90は、図7に示されるように、軸方向端部において、円筒状に形成されている。具体的には、ヒートパイプ90は、軸方向両端部90Bにおいて、円筒状に形成されている。換言すれば、ヒートパイプ90は、軸方向両端部90Bにおいて、断面円形状の外周面99を有している。さらに言えば、前述の外周面95は、軸方向両端部90Bの間の軸方向中央部側の部分に形成されている。ヒートパイプ90は、軸方向両端部90Bにおいて、非接触面70Bに対して隙間98を有している。
【0053】
なお、ヒートパイプ90の軸方向両端部90Bは、軸方向中央部より外径が小さくされている。また、ヒートパイプ90の軸方向両端部90Bにおける内径は、一例として、軸方向中央部と同じとされている。また、ヒートパイプ90の軸方向両端は、円筒状の状態からかしめることで閉じられている。
【0054】
図5に示されるワイヤ97は、形成部材の一例である。ワイヤ97は、ヒートパイプ90の空間93に配置されている。ワイヤ97は複数本が束ねられて空間93に、ヒートパイプ90の軸方向に沿って配置されている。これにより、作動液を軸方向に沿って移動させる毛細管が形成される。このように、本実施形態では、ワイヤ97によって、毛細管構造(いわゆる、ウィック)が形成されている。
【0055】
ワイヤ97は、具体的には、ヒートパイプ90の空間93における非接触面70B側に配置されている。換言すれば、ワイヤ97は、ヒートパイプ90の内周面93Aにおける第一外面91に対向する位置に配置されている。なお、ワイヤ97は、保持部材(図示省略)によって、ヒートパイプ90の内周面93Aの全周に接触した状態で保持されている。
【0056】
そして、ヒートパイプ90は、内部94に封入された作動液の作用により、加熱ベルト60のベルト幅方向に沿って熱移動させる。具体的には、以下のようにして、加熱部70の熱を移動させる。加熱部70の高温部でヒートパイプ90に加えられた熱によって作動液が沸騰する。この沸騰で生じた作動液の蒸気が、圧力差によって、加熱部70の低温部へ移動する。該蒸気が該低温部で凝縮することで、凝縮熱が加熱部70へ放出される。そして、凝縮した作動液は、ワイヤ97で形成された毛細管による毛細管現象により、元の位置(加熱部70の高温部)へ戻る。
【0057】
(本実施形態に係る作用)
次に、本実施形態に係る作用を説明する。
【0058】
本実施形態に係る画像形成装置によれば、像形成部16が、搬送部14で搬送される用紙Pにトナー像Gを形成する。像形成部16によって用紙Pに形成されたトナー像Gは、定着装置30において、加圧ロール40と加熱ベルト60で加圧されると共に、加熱部70で加熱されることで、用紙Pに定着される。
【0059】
本実施形態では、加熱部70に温度分布が生じると、ヒートパイプ90が、内部94に封入された作動液の作用により、加熱部70の高温部から低温部へ、加熱ベルト60のベルト幅方向に沿って熱移動させる。
【0060】
なお、加熱部70の温度分布は、加熱部70のベルト幅方向よりも小さい寸法の用紙Pに対して画像を定着する場合などに生じる。この場合では、加熱部70のベルト幅方向の一部において、熱が用紙Pへ奪われるため、加熱部70に温度分布が生じる。
【0061】
そして、ヒートパイプ90は、作動液が封入された断面円形状の空間93が形成された内部94と、加熱部70の非接触面70Bに接触する平面状の第一外面91と、を有している。
【0062】
ここで、角筒状のヒートパイプを用いる構成(以下、第一構成という)では、ヒートパイプの内部の空間が断面矩形状であるため、作動液の膨張による圧力がヒートパイプの一部に対して偏って作用し、ヒートパイプが破損する場合がある。
【0063】
これに対して、ヒートパイプ90は、ヒートパイプ90の内部94の空間93が、断面円形状に形成されているので、第一構成に比べ、作動液の膨張による圧力の周方向に沿ったばらつきが小さい。このため、ヒートパイプ90によれば、第一構成に比べ、作動液の膨張に対するヒートパイプの耐久性が向上する。
【0064】
また、円筒状のヒートパイプを用いる構成(以下、第二構成という)では、ヒートパイプの外周面が断面円形状であるため、加熱部70に対する接触面積が小さくなりやすい。
【0065】
これに対して、ヒートパイプ90は、平面状の第一外面91が、加熱部70の非接触面70Bに接触するので、加熱部70の非接触面70Bに対する接触面積が確保される。この結果、加熱部70の高温部から低温部へ熱が効率よく移動され、加熱ベルト60のベルト幅方向に沿った温度ムラが低減される。これにより、定着装置30における定着ムラが抑制される。
【0066】
また、ヒートパイプ90では、第二外面92が、空間93の断面円形状の内周面93Aの一部に沿った断面円弧状に形成されている。このため、第二外面92が断面多角形状である構成に比べ、第二外面92と内周面93Aとの間の厚さのばらつきが小さい。さらに具体的には、第二外面92は、内周面93Aと同心の円弧として形成されている。このため、内周面93Aの中心と第二外面92の中心とがずれた構成に比べ、第二外面92と内周面93Aとの間の厚さのばらつきが小さい。
【0067】
また、本実施形態では、ヒートパイプ90は、円筒状の一部が切断されて、第一外面91が形成されている。ここで、円筒状のヒートパイプを外周の一部を潰すことで第一外面を形成する構成(以下、第三構成という)では、ヒートパイプが作動液の膨張圧によって円筒状に戻る場合がある。
【0068】
これに対して、本実施形態では、ヒートパイプ90は、円筒状の一部が切断されて、第一外面91が形成されているので、第三構成に比べ、ヒートパイプ90が作動液の膨張圧によって円筒状に変形することが抑制される。
【0069】
また、本実施形態では、ヒートパイプ90は、第一外面91での厚みS1が第二外面92での厚みS2よりも薄くなっている。このため、第一外面91での厚みS1が第二外面92での厚みS2と同じである構成に比べ、加熱部70の高温部から低温部へ熱が効率よく移動され、加熱ベルト60のベルト幅方向に沿った温度ムラが低減される。
【0070】
また、本実施形態では、ヒートパイプ90は、軸方向両端部90Bにおいて、加熱部70の非接触面70Bに対して隙間98を有している。このため、ヒートパイプ90の軸方向両端部90Bが、加熱部70の非接触面70Bに接触する構成に比べ、ヒートパイプ90の軸方向両端部90Bにおいて、作動液の膨張が生じにくくなる。これにより、ヒートパイプ90の軸方向両端部90Bで内圧が高くなることが抑制され、軸方向両端部90Bの破損が抑制される。
【0071】
また、本実施形態では、ヒートパイプ90は、図7に示されるように、軸方向両端部90Bにおいて、円筒状に形成されている。このため、ヒートパイプ90の軸方向両端部90Bにおける非接触面70B側が平面状に形成されている構成に比べ、軸方向両端部90Bが、振動等により、加熱部70の非接触面70Bに接触したとしても、軸方向両端部90Bと非接触面70Bとの接触面積を小さくできる。
【0072】
本実施形態のヒートパイプ90では、図5に示されるように、ワイヤ97が、ヒートパイプ90の空間93における非接触面70B側に配置されている。このため、ワイヤ97が、空間93における非接触面70B側とは反対側に配置されている構成に比べ、加熱部70の高温部から低温部へ熱が効率よく移動され、加熱ベルト60のベルト幅方向に沿った温度ムラが低減される。
【0073】
(変形例)
本実施形態では、形成部材の一例として、ワイヤ97を用いたが、これに限られない。例えば、形成部材の一例としては、例えば、メッシュ材を用いてもよく、毛細管を形成する部材であればよい。
【0074】
また、本実施形態では、一本のヒートパイプ90が、加熱部70に設けられていたが、これに限られない。複数本のヒートパイプ90が、加熱部70に設けられていてもよい。
【0075】
また、本実施形態では、ヒートパイプ90の第二外面92が、空間93の断面円形状の内周面93Aの一部に沿った断面円弧状に形成されていたが、これに限られない。例えば、第二外面92が、軸方向断面視にて、楕円形状、多角形状である構成であってもよい。また、第二外面92は、例えば、一部に平面を有していてもよい。
【0076】
さらに本実施形態では、第二外面92が、内周面93Aと同心の円弧として形成されていたが、これに限られない。例えば、内周面93Aの中心と第二外面92の中心とがずれた構成であってもよい。
【0077】
また、本実施形態では、ヒートパイプ90は、円筒状の一部が切断されて、第一外面91が形成されていたが、これに限られない。例えば、円筒状のヒートパイプを外周の一部を潰すことで第一外面91を形成する構成であってもよい。
【0078】
また、本実施形態では、ヒートパイプ90は、第一外面91での厚みS1が第二外面92での厚みS2よりも薄くなっていたが、これに限られない。例えば、第一外面91での厚みS1が第二外面92での厚みS2と同じである構成であってもよい。
【0079】
また、本実施形態では、ヒートパイプ90は、軸方向両端部90Bにおいて、加熱部70の非接触面70Bに対して隙間98を有していたが、これに限られない。例えば、ヒートパイプ90の軸方向両端部90Bが、加熱部70の非接触面70Bに接触する構成であってもよい。
【0080】
また、本実施形態では、ヒートパイプ90は、図7に示されるように、軸方向両端部90Bにおいて、円筒状に形成されていたが、これに限られない。例えば、ヒートパイプ90の軸方向両端部90Bにおける非接触面70B側が平面状に形成されている構成であってもよい。
【0081】
本発明は、上記の実施形態に限るものではなく、その主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形、変更、改良が可能である。例えば、上記に示した変形例は、適宜、複数を組み合わせて構成してもよい。
【符号の説明】
【0082】
10 画像形成装置
16 像形成部(画像形成部の一例)
30 定着装置(加熱装置の一例)
40 加圧ロール(回転部の一例)
60 加熱ベルト(搬送ベルトの一例)
60A 内周面
70 加熱部
70A 接触面
70B 非接触面
90 ヒートパイプ
90B 軸方向両端部
91 第一外面
92 第二外面
93 空間
94 内部
95 外周面
97 ワイヤ(形成部材の一例)
98 隙間
P 用紙(記録媒体の一例、被加熱材の一例)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7