(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】画像読取装置、画像形成装置及び画像読取装置の検査方法
(51)【国際特許分類】
H04N 1/04 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
H04N1/04 101
(21)【出願番号】P 2020085375
(22)【出願日】2020-05-14
【審査請求日】2023-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 康範
【審査官】橘 高志
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-074516(JP,A)
【文献】特開2007-251531(JP,A)
【文献】特開2014-168051(JP,A)
【文献】国際公開第2013/179668(WO,A1)
【文献】特開平01-205659(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/04
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
色の濃度が均一の基準板に光を照射する複数の光源と、
前記基準板から反射した光を検出する
複数のセンサと、
複数の前記センサが検出した検出信号を取得する制御部と、を備え、
前記制御部は、
複数の前記センサが検出した検出信号であるRGB輝度波形に対してホワイトバランス処理を行い、ホワイトバランス処理を行ったRGB輝度波形をXYZ表色系に変換し、変換したXYZ表色系に基づいて、複数の前記光源の色調のバラツキを判断
し、
複数の前記センサが検出した検出信号であるRaw波形からなるRGB輝度波形をXYZ表色系に変換し、変換したXYZ表色系に基づいて、複数の前記センサ間の感度のバラツキを判断する
画像読取装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記XYZ表色系の信号情報からx座標値及び/又はy座標値を算出し、算出したx座標値及び/又はy座標値から複数の前記光源の色調のバラツキを判断する
請求項
1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記制御部は、画素ごとのx座標値及び/又はy座標値を算出し、算出したx座標値及び/又はy座標値と基準座標の差から、複数の前記光源の色調のバラツキを判断する
請求項
2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記基準板は、白チャートが形成された白基準板である
請求項
1から3のいずれか1項に記載の画像読取装置。
【請求項5】
記録媒体に画像を形成する画像形成部と、
前記記録媒体に形成された画像を読み取る画像読取部と、
前記画像読取部を制御する制御部と、を備え、
前記画像読取部は、
色の濃度が均一の基準板に光を照射する複数の光源と、
前記基準板から反射した光を検出する
複数のセンサと、を備え、
前記制御部は、
複数の前記センサが検出した検出信号であるRGB輝度波形に対してホワイトバランス処理を行い、ホワイトバランス処理を行ったRGB輝度波形をXYZ表色系に変換し、変換したXYZ表色系に基づいて、複数の前記光源の色調のバラツキを判断
し、
複数の前記センサが検出した検出信号であるRaw波形からなるRGB輝度波形をXYZ表色系に変換し、変換したXYZ表色系に基づいて、複数の前記センサ間の感度のバラツキを判断する
画像形成装置。
【請求項6】
色の濃度が均一の基準板に複数の光源から光を照射する処理と、
前記基準板から反射した光を
複数のセンサにより検出する処理と、
複数の前記センサが検出した検出信号である
RGB輝度波形に対してホワイトバランス処理を行い、ホワイトバランス処理を行ったRGB輝度波形をXYZ表色系の信号情報に変換する処理と、
変換した変換した前記XYZ表色系の信号情報から複数の前記光源の色調のバラツキを判断する処理と、
複数の前記センサが検出した検出信号であるRaw波形からなるRGB輝度波形をXYZ表色系に変換し、変換したXYZ表色系の信号情報に基づいて、複数の前記センサ間の感度のバラツキを判断する処置と、
を含む画像読取装置の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読取装置、画像形成装置及び画像読取装置の検査方法に関する。
【0002】
一般的に、画像形成装置では、形成された画像の品質を確認するために、記録媒体に形成された画像を読み取る画像読取装置が設けられている。画像読取装置は、記録媒体に形成された画像面に光を照射し、画像面から反射された光をセンサにより検出している。
【0003】
また、画像読取装置には、読み取りに必要な光量を確保するために複数の光源が設けられている。そして、複数の光源は、その製造時の個体差や、変動により色調にバラツキが発生しているため、センサの読み取りにもバラツキが発生していた。
【0004】
このような、読み取りバラツキを補正するために、例えば、特許文献1に記載されているようなものがある。特許文献1には、一つの基準色の複数階調のパッチを含むパターン画像を読み取ることで取得した画像データの色バランス値を算出し、この色バランス値に基づいて色バランスを補正する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、色のバラツキを検出するために、特別な階調チャートやカラーパッチ等が必要であり、画像読取装置の検査動作が大変煩雑なものとなっていた。
【0007】
本発明は、上述のような従来の問題点に鑑み、特別な階調チャートやカラーパッチを用いることなく複数の光源の色調のバラツキを容易に検出することができる画像読取装置、画像形成装置及び画像読取装置の検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明の画像読取装置は、色の濃度が均一の基準板に光を照射する複数の光源と、基準板から反射した光を検出するセンサと、センサが検出した検出信号を取得する制御部と、を備えている。そして、制御部は、検出信号であるRGB輝度波形をXYZ表色系の信号情報に変換し、変換したXYZ表色系の信号情報から複数の光源の色調のバラツキを判断する。
【0009】
また、本発明の画像形成装置は、記録媒体に画像を形成する画像形成部と、記録媒体に形成された画像を読み取る画像読取部と、画像読取部を制御する制御部と、を備えている。画像読取部は、色の濃度が均一の基準板に光を照射する複数の光源と、基準板から反射した光を検出するセンサと、を備えている。そして、制御部は、センサが検出した検出信号であるRGB輝度波形をXYZ表色系の信号情報に変換し、変換したXYZ表色系の信号情報から複数の光源の色調のバラツキを判断する。
【0010】
さらに、本発明の画像読取装置の検査方法は、以下(1)から(4)に示す処理を含む。
(1)色の濃度が均一の基準板に複数の光源から光を照射する処理。
(2)基準板から反射した光をセンサにより検出する処理。
(3)センサが検出した検出信号であるRGB輝度波形をXYZ表色系の信号情報に変換する処理。
(4)変換した変換したXYZ表色系の信号情報から複数の光源の色調のバラツキを判断する処理。
【発明の効果】
【0011】
上記構成の画像読取装置、画像形成装置及び画像読取装置の検査方法によれば、特別な階調チャートやカラーパッチを用いることなく複数の光源の色調のバラツキを容易に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態例に係る画像形成装置を示す全体構成図である。
【
図2】本発明の実施の形態例に係る画像形成装置における画像読取部を示す概略構成図である。
【
図3】本発明の実施の形態例に係る画像形成装置における画像読取部を構成する撮像部を示すもので、
図3Aは撮像部の概略構成図、
図3Bは撮像部を記録媒体側から見た平面図である。
【
図4】本発明の実施の形態例に係る画像形成装置における制御系の構成を示すブロック図である。
【
図5】本発明の実施の形態例に係る画像形成装置における画像読取部の検査処理動作を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の実施の形態例に係る画像形成装置におけるラインセンサが検出した検出信号に対してホワイトバランス処理を行ったRGB輝度波形図であり、複数の光源に色ムラがある例を示している。
【
図7】
図6に示すRGB輝度波形図からXYZ表色系に変換し、画素ごとのxy座標値の分布を示す図である。
【
図8】
図7に示す分布図から画素ごとのxy座標値における基準座標として最小座標値からの差を示すプロファイル図である。
【
図9】本発明の実施の形態例に係る画像形成装置におけるラインセンサが検出した検出信号に対してホワイトバランス処理を行ったRGB輝度波形図であり、複数の光源に色ムラが無い例を示している。
【
図10】
図9に示すRGB輝度波形図からXYZ表色系に変換し、画素ごとのxy座標値の分布を示す図である。
【
図11】
図10に示す分布図から画素ごとのxy座標値における基準座標として最小座標値からの差を示すプロファイル図である。
【
図12】本発明の実施の形態例に係る画像形成装置におけるラインセンサが検出した検出信号のRaw波形のRGB輝度波形図であり、ラインセンサ間に感度ムラが有る例を示している。
【
図13】
図12に示すRGB輝度波形図からXYZ表色系に変換し、画素ごとのxy座標値の分布を示す図である。
【
図14】
図13に示す分布図から画素ごとのxy座標値における基準座標として最小座標値からの差を示すプロファイル図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態例について、
図1~
図14を参照して説明する。なお、各図において共通する部材には、同一の符号を付している。
【0014】
1.実施の形態例
1-1.画像形成装置の構成例
まず、本発明の実施の形態例(以下、「本例」という。)にかかる画像形成装置の構成例について
図1を参照して説明する。
図1は、画像形成装置の全体構成を示す概略構成図である。
【0015】
図1に示す画像形成装置1は、インクジェットヘッドに設けたノズルからインクを吐出することで記録媒体に画像を形成(記録)するインクジェット記録装置である。この画像形成装置1は、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)及びブラック(Bk)の4色のインクを重ね合わせるカラー画像形成装置である。
【0016】
画像形成装置1は、給紙部2と、搬送部4と、排出部5と、画像形成部6と、定着部7と、画像読取装置を示す画像読取部8と、制御部10とを有している。そして、画像形成装置1は、外部装置100(
図4参照)から入力された画像データを記録媒体の一例を示す用紙Pに形成する。
【0017】
給紙部2は、給紙トレー11と、用紙供給部12とを有している。給紙トレー11は、記録媒体の一例を示す用紙Pを載置可能に設けられた板状の部材である。給紙トレー11は、載置された用紙Pの枚数に応じて上下方向に移動可能に設けられている。そして、給紙トレー11に載置された複数の用紙Pのうち上下方向の最上部の用紙Pは、用紙供給部12により搬送される位置で保持される。
【0018】
用紙供給部12は、複数(本例では、2つ)のローラと、ベルト部材とを有している。ベルト部材は、長手方向の両端が接続された無端状に形成されている。ベルト部材は、ローラに張架されている。そして、ローラのうち一方のローラが回転駆動することで、ベルト部材は、2つのローラの間を循環移動する。これにより、ベルト部材に載置された用紙Pが搬送される。
【0019】
また、用紙供給部12は、ローラを回転駆動する不図示の駆動部や、給紙トレー11に載置された最上部の用紙Pをベルト部材に受け渡す供給装置を有している。そして、用紙供給部12は、ベルト部材に載置された用紙Pを搬送部4に向けて搬送し、画像形成部6に給紙する。
【0020】
さらに、用紙供給部12は、用紙Pにおける搬送方向Yと直交する幅方向Xの位置を合わせるガイド部材を有している。そして、用紙供給部12は、搬送部4に給紙する用紙Pの幅方向Xの位置を所定の位置に合わせる。
【0021】
搬送部4は、駆動ローラ21と、従動ローラ22と、搬送ベルト23とを有している。駆動ローラ21と、従動ローラ22は、略円柱状に形成されている。そして、駆動ローラ21及び従動ローラ22は、その軸方向が幅方向Xと平行になるように配置されている。駆動ローラ21と従動ローラ22は、搬送方向Yに所定の間隔を空けて配置されている。本例では、駆動ローラ21は、従動ローラ22よりも搬送方向Yの下流側に配置されている。駆動ローラ21には、搬送駆動部51(
図4参照)が接続されている。そして、駆動ローラ21は、搬送駆動部51により回転駆動する。
【0022】
搬送ベルト23は、可撓性を有する平板状のスチール板を複数繋ぎ合わせたスチールベルトにより構成されている。搬送ベルト23は、長手方向の両端が接続された無端状に形成されている。搬送ベルト23には、複数の吸引孔が開口している。吸引孔は、略円形に開口している。吸引孔25は、エッチングによりスチール板に形成されている。
【0023】
図1に示すように、上述した構成を有する搬送ベルト23は、駆動ローラ21と従動ローラ22に張架されている。駆動ローラ21が回転駆動することで、搬送ベルト23は、駆動ローラ21と従動ローラ22の間を循環移動する。これにより、搬送ベルト23に載置された用紙Pが搬送される。
【0024】
また、搬送部4には、不図示の吸引部を有している。吸引部は、吸引ファンにより構成されている。吸引部は、搬送ベルト23における用紙Pが載置される載置面とは反対側の面に配置されている。吸引部は、搬送ベルト23に設けた吸引孔25、26を介して用紙Pを吸引する。これにより、搬送部4によって用紙Pを搬送する際に、用紙Pの位置がずれることを防止することができる。
【0025】
また、画像形成部6、定着部7及び画像読取部8は、搬送部4における搬送ベルト23の載置面と対向して配置されている。画像形成部6は、定着部7及び画像読取部8よりも搬送方向Yの上流側に配置される。
【0026】
画像形成部6は、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、ブラック(K)に応じて4つのヘッドユニット6Y、6M、6C、6Kを有している。4つのヘッドユニット6Y、6M、6C、6Kは、搬送方向Yの上流側から、例えば、イエロー、マゼンダ、シアン、ブラックの順に配置されている。
【0027】
ヘッドユニット6Y、6M、6C、6Kは、幅方向Xにおいて用紙Pの全体を覆う長さ(幅)に設定されている。すなわち、画像形成装置1は、ワンパス方式のラインヘッド型画像形成装置である。4つのヘッドユニット6Y、6M、6C、6Kは、それぞれ吐出するインクの色が異なるのみで、互いに同一の構成を有している。なお、本例は、画像形成装置1としてワンパス方式の画像形成装置を適用した例を説明したが、これに限定されるものではなく、ヘッドユニットが搬送方向と直交する方向に移動して画像形成を行うスキャン方式の画像形成装置にも適用できるものである。
【0028】
ヘッドユニット6Y、6M、6C、6Kは、複数のインクジェットヘッド55(
図4参照)を有している。そして、2つのインクジェットヘッド55が1組となって、1つのインクジェットモジューを構成している。
【0029】
複数のインクジェットモジュールは、搬送方向Yに沿って2列並べられている。そして、一列のインクジェットモジュールは、幅方向Xに沿って4つ並べて配置されている。また、インクジェットモジュールは、2列のインクジェットモジュールが搬送方向Yに沿って互い違い千鳥状に配置されている。なお、ヘッドユニット6Y、6M、6C、6Kは、複数のノズルを1ユニットに配置した1ヘッドユニットでも良い。
【0030】
また、インクジェットヘッド55は、複数のノズルを有している。そして、インクジェットヘッド55は、ノズルからインクを用紙Pに向けて吐出する。これにより、搬送部4の搬送ベルト23に載置された用紙Pに画像が形成される。
【0031】
なお、画像形成部6と給紙部2の間に、用紙Pを所定の温度に加熱する加熱部を設けてもよい。
【0032】
画像形成部6における搬送方向Yの下流側には、定着部7が配置されている。定着部7としては、例えば、低圧水銀ランプ等の紫外線を照射する蛍光管が適用される。そして、定着部7は、紫外線を搬送ベルト23により搬送された用紙Pに向けて照射し、用紙P状に吐出されたインクを硬化させる。これにより、定着部7は、用紙Pに形成された画像を定着させる。
【0033】
紫外線を発する蛍光管としては、低圧水銀ランプの他、数百Pa~1MPa程度の動作圧力を有する水銀ランプ、殺菌灯として利用可能な光源、冷陰極管、紫外線レーザー光源、メタルハライドランプ、発光ダイオードなどが挙げられる。これらの中で、紫外線をより高照度で照射可能であって消費電力の少ない光源(例えば発光ダイオード等)がより望ましい。
【0034】
なお、定着部7としては紫外線を照射するものに限定されるものではなく、インクの性質に応じてインクを硬化させる性質を有するエネルギー線を照射するものであればよく、光源もエネルギー線の波長などに応じて置換される。さらに、定着部7としては、紫外線等の光を照射するものに限定されるものではない。定着部7としては、例えば、用紙に熱を与えることでインクを乾燥させたり、インクに化学的な変化を起こさせる液体を付与させたりするもの等その他各種の方法を適用できるものである。
【0035】
また、定着部7における搬送ベルト23と対向する端部には、遮光板18が設けられている。遮光板18は、定着部7による紫外線の照射範囲を囲むように配置されている。そして、遮光板18は、紫外線が照射範囲から漏れ出ることを防止している。これにより、定着部7から出射された紫外線が、画像形成部6に照射されて、インクジェットヘッド55のノズル内でインクが硬化することを防ぐことができる。
【0036】
また、定着部7における搬送方向Yの下流側には、画像読取部8が配置されている。画像読取部8は、用紙Pに形成された画像を読み取る。そして、画像読取部8は、読み取った画像情報を制御部10に出力する。なお、画像読取部8の詳細な構成については、後述する。
【0037】
また、画像読取部8の搬送方向の下流側には、排出部5が配置されている。すなわち、排出部5は、搬送部4における搬送方向Yの最下流に配置され、画像形成部6、定着部7及び画像読取部8は、給紙部2と排出部5の間に配置される。
【0038】
排出部5は、搬送部4から搬送され、かつ画像形成部6及び定着部7によって画像が形成された用紙Pを格納する。排出部5は、平板状の排紙トレー14を有している。そして、排出部5は、排紙トレー14上に画像が形成された用紙Pを載置する。
【0039】
次に、
図2、
図3A及び
図3Bを参照して画像読取部8の構成について説明する。
図2は、画像読取部8を示す概略構成図、
図3Aは、画像読取部8を構成する撮像部31A、31B、31Cを示すもので、
図3Aは撮像部31Aを示す概略構成図、
図3Bは、撮像部31Aを記録媒体側、すなわち搬送ベルト側から見た平面図である。
【0040】
図2に示すように、画像読取部8は、搬送ベルト23と対向し、かつ幅方向Xに沿って配置されている。画像読取部8は、第1撮像部31Aと、第2撮像部31Bと、第3撮像部31Cと、を有している。第1撮像部31A、第2撮像部31B及び第3撮像部31Cは、幅方向Xに沿って並べて配置されている。
【0041】
図3Aに示すように、第1撮像部31Aは、筐体32と、レンズ33と、ラインセンサ34Aと、複数の光源35と、複数の反射部36と、防塵ガラス37とを有している。レンズ33、ラインセンサ34A、複数の光源35及び複数の反射部36は、筐体32内に収容されている。
【0042】
筐体32における搬送ベルト23と対向する面には、開口部38が形成されている。開口部38には、防塵ガラス37が嵌め込まれている。防塵ガラス37は、開口部38から埃や塵が筐体32内に入り込むことを防止している。
【0043】
レンズ33及び複数の反射部36は、第1ラインセンサ34Aに向けて光を集光する。第1ラインセンサ34Aは、例えば、CCD(Charge Coupled Device)センサ、又はCOMS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサで構成されている。そして、第1ラインセンサ34Aは、複数の検出素子が幅方向Xに沿って並べて配置されている。すなわち、第1ラインセンサ34Aの検出面は、線状に配置されている。
【0044】
複数の光源35は、例えば、LED(Light Emitting Diode)により構成されている。複数の光源35は、筐体32内において防塵ガラス37の近傍に配置されている。
図3Bに示すように、複数の光源35は、幅方向Xに沿って列状に配置されている。また、2列の複数の光源35は、搬送方向Yに間隔をあけて配置される。
図3Aに示すように、2列の複数の光源35の間を、搬送ベルト23から第1ラインセンサ34Aまでの光軸(以下、検知軸という)L4が通過する。
【0045】
光源35から照射されて光は、防塵ガラス37を通過し、搬送ベルト23に向けて照射される。なお、光源35は、搬送ベルト23に対して所定の入射角θで光を照射する。そして、光源35から照射された光の光軸(以下、照射軸という)L3は、搬送ベルト23と直交する方向に対して傾斜している。
【0046】
また、画像を読み取る際、光源35から照射された光は、搬送ベルト23に載置された記録媒体Pにより反射(散乱)され、複数の反射部36及びレンズ33を介して第1ラインセンサ34に入射する。これにより、第1ラインセンサ34Aは、画像形成部6及び定着部7により用紙Pに形成された画像を読み取る。読み取った画像のデータは、制御部10に送られる。
【0047】
なお、第1ラインセンサ34Aを構成する検出素子の読取り幅は、インクジェットヘッド55のノズルの間隔よりも広く設定されている。また、第1ラインセンサ34Aの分解能は、ヘッドユニットの解像度よりも粗く設定されている。
【0048】
また、第2撮像部31Bは、レンズ33と、第2ラインセンサ34Bを有しており、第3撮像部31Cは、レンズ33と、第3ラインセンサ34Cを有している。そして、第2撮像部31B及び第3撮像部31Cの構成は、第1撮像部31Aと同一であるため、その説明は省略する。
【0049】
1-2.制御系の構成例
次に、画像形成装置1の制御系の構成について
図4を参照して説明する。
図4は、画像形成装置1の制御系の構成を示すブロック図である。
【0050】
図4に示すように、画像形成装置1は、制御部10と、搬送駆動部51と、操作表示部52と、入出力インターフェース53と、画像形成部6と、定着部7と、画像読取部8と、を備えている。制御部10は、例えばCPU(Central Processing Unit)41と、CPU41の作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)42と、CPU41が実行するプログラム等を記憶するためのROM(Read Only Memory)43と、を有する。
【0051】
さらに、制御部10は、大容量記憶装置としてのハードディスクドライブ(HDD)等からなる記憶部44を有している。記憶部44には、画像読取部8が読み取った画像のデータ情報等が格納される。
【0052】
制御部10のCPU41は、画像形成部6、定着部7、画像読取部8、RAM42、ROM43、記憶部44、搬送駆動部51、操作表示部52、入出力インターフェース53にそれぞれシステムバス57を介して接続されている。そして、CPU41は、装置全体を制御する。
【0053】
搬送駆動部51は、制御部10により制御されて、駆動ローラ21及び用紙供給部12を駆動させて、所定のタイミングで用紙Pを給紙すると共に搬送する。
【0054】
操作表示部52は、液晶表示装置(LCD)又は有機ELD(Electro Luminescence Display)等のディスプレイからなるタッチパネルである。この操作表示部52は、ユーザに対する指示メニュー、ノズルの吐出検出動作に関する情報や、画像形成部6のラインセンサ34A、34B、34Cの傾きに関する情報や、取得した画像データに関する情報等を表示する。さらに、操作表示部52は、複数のキーを備え、ユーザのキー操作による各種の指示、文字、数字などのデータの入力を受け付ける入力部としての役割を持つ。
【0055】
入出力インターフェース53は、PC(パーソナルコンピュータ)や、ファクシミリ装置等の外部装置100に接続されている。そして、入出力インターフェース53は、外部装置100から画像データを受信する。入出力インターフェース53は、受信した画像データを制御部10に出力する。そして、制御部10は、入出力インターフェース53から受信した画像データを画像処理する。また、制御部10は、受信した画像データに対し、必要に応じて、シェーディング補正、画像濃度調整、画像圧縮等の画像処理を行う。
【0056】
また、画像形成部6は、制御部10によって画像処理された画像データを受け取り、画像データに基づいて用紙P上に所定の画像を形成する。具体的には、画像形成部6は、ヘッド制御部54によってインクジェットヘッド55を制御し、インクジェットヘッド55からインクを所定の位置に吐出させる。
【0057】
画像形成部6により用紙Pに形成された画像は、画像読取部8によって読み取られ、その画像データが制御部10に送られる。また、画像読取部8は、撮像制御部56により各ラインセンサ34A、34B、34Cを制御し、所定のタイミングで画像を読み取る。
【0058】
また、画像読取部8の補正処理時において、制御部10は、画像読取部8の検出信号に基づいて、ラインセンサ34A、34B、34C間の感度ムラや、複数の光源35の色調のムラを判断する。
【0059】
2.画像読取部の検査方法
次に、上述した構成を有する画像形成装置1における画像読取部の検査方法の一例について
図5から
図14を参照して説明する。なお、補正処理動作の一例として、ラインセンサ34A、34B、34Cの感度ムラや、光源35の色ムラを判断する例について説明する。
図5は、画像読取部8の検査処理動作を示すフローチャートである。
【0060】
まず、検査処理動作を行う際に、
図3Aに示すように、搬送ベルト23に白基準板M1を載置する。そして、制御部10は、搬送駆動部51を制御し、白基準板M1を画像読取部8まで搬送する。なお、本例では、白基準板M1を、搬送ベルト23を用いて画像読取部8まで搬送する例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、補正処理機構を画像読取部8と対向する位置に配置し、この補正処理機構に白基準板M1を設置してもよい。
【0061】
図5に示すように、制御部10は、画像読取部8を制御し、白基準板M1を読み取る(ステップS11)。そして、画像読取部8は、ラインセンサ34A、34B、34Cが検出した検出信号を制御部10に出力する。次に、制御部10は、後述するステップS12からステップS18の処理を行い、光源35の色ムラを判断すると共に、後述するステップS21からステップS26の処理を行いラインセンサ34A、34B、34Cの感度ムラを判断する。
【0062】
光源35の色ムラ判断処理では、まず、制御部10は、ラインセンサ34A、34B、34Cが検出した検出信号であるRGB輝度波形に対してホワイトバランス処理を行う(ステップS12)。
図6及び
図9は、ホワイトバランス処理を行ったRGB輝度波形である。
図6及び
図9における縦軸は出力レベルを示し、横軸は主走査方向の画素の位置を示している。
図6及び
図9に示すように、制御部10は、R輝度値、G輝度値及びB輝度値を全て略同じ値に変換し、ホワイトバランスを取る。
【0063】
次に、制御部10は、ホワイトバランス処理を行ったRGB輝度波形を、RGB表色系からXYZ表色系に変換する(ステップS13)。ここで、XYZ表色系は、加法混色の原理に基づいて、三原色の混合量によって色を表す体系である。RGB表色系からXYZ表色系への変換は、例えば、色変換座標行列式を用いて行われる。
【0064】
次に、制御部10は、この変換したXYZ表色系の信号情報から、1画素ごと、すなわちラインセンサ34A、34B、34Cの画素ごとに、色度座標であるx座標値と、y座標値を算出する(ステップS14)。
【0065】
図7及び
図10は、画素ごとのxy座標値の分布を示す図である。
図7及び
図10における縦軸はy座標を示し、横軸はx座標を示す。ステップS14の処理を行うことで、
図7及び
図10に示す画素ごとのxy座標値の分布を得ることができる。
【0066】
次に、制御部10は、基準座標と各画素のxy座標値との差(距離)を算出する(ステップS15)。基準座標としては、例えば、全画素のxy座標値の最小座標や、最大座標を適用してもよく、あるいは全画素のxy座標値の平均座標を適用してもよい。または、基準座標としては、全画素のxy座標値における任意の座標値を設定してもよく、その他各種のxy座標値が適用可能である。
【0067】
図8及び
図11は、画素ごとのxy座標値における基準座標として最小座標値からの差を示すプロファイル図である。
図8及び
図11における縦軸は最小座標値からの差を示し、横軸は主走査方向の画素の位置を示している。ステップS15の処理を行うことで、
図8及び
図11に示すプロファイル図を得ることができる。
【0068】
【0069】
次に、制御部10は、基準座標からの差が予め設定した第1閾値を超えたか否かを判断する(ステップS16)。
図8に示すように、基準座標からの差が第1閾値を超えたと判断した場合(ステップS16のYES判定)、制御部10は、光源35に色ムラが有ると判断する(ステップS17)。
【0070】
これに対して、
図11に示すように、基準座標からの差が第1閾値を超えていないと判断した場合(ステップS16のNO判定)、制御部10は、光源35に色ムラが無いと判断する(ステップS18)。これにより、特別なチャートを用いることなく、複数の光源35の色調のバラツキ、すなわち色ムラを容易に判断することができる。
【0071】
また、ラインセンサ34A、34B、34Cの感度ムラ判断処理では、ステップS11の処理が終了すると、制御部10は、ラインセンサ34A、34B、34Cが検出した検出信号であるRaw波形を取得する。なお、このRaw波形は、RGB輝度波形である。
図12は、ラインセンサ34A、34B、34Cが検出した検出信号であるRaw波形を示す図である。
図12における縦軸は出力レベルを示し、横軸は主走査方向の画素の位置を示している。
【0072】
そして、制御部10は、Raw波形を、RGB表色系からXYZ表色系に変換する(ステップS21)。次に、次に、制御部10は、この変換したXYZ表色系から、1画素ごと、すなわちラインセンサ34A、34B、34Cの画素ごとに、色度座標であるx座標値と、y座標値を算出する(ステップS22)。
【0073】
図13は、画素ごとのxy座標値の分布を示す図である。
図13における縦軸はy座標を示し、横軸はx座標を示す。ステップS22の処理を行うことで、
図13に示す画素ごとのxy座標値の分布を得ることができる。
【0074】
次に、制御部10は、基準座標と各画素のxy座標値との差(距離)を算出する(ステップS23)。基準座標としては、光源35の色ムラ判断処理と同様に、全画素のxy座標値における任意の座標を適用することができる。
【0075】
図14は、画素ごとのxy座標値における基準座標として最小座標値からの差を示すプロファイル図である。
図14における縦軸は最小座標値からの差を示し、横軸は主走査方向の画素の位置を示している。ステップS23の処理を行うことで、
図14に示すプロファイル図を得ることができる。
【0076】
次に、制御部10は、基準座標からの差が予め設定した第2閾値を超えたか否かを判断する(ステップS24)。
図14に示すように、基準座標からの差が第2閾値を超えたと判断した場合(ステップS24のYES判定)、制御部10は、ラインセンサ34A、34B、34C間に感度ムラが有ると判断する(ステップS25)。
【0077】
なお、
図12から
図14は、
図9から
図11に示す光源35に色ムラが無い状態のRaw波形である。このように、光源35に色ムラが無い場合でも、ラインセンサ34A、34B、34C間に感度ムラが発生する場合がある。そして、本例の検査方法によれば、光源35の色ムラだけでなく、ラインセンサ34A、34B、34C間に感度ムラも検出することができる。
【0078】
上述したように、光源35の色ムラの判断処理とラインセンサ34A、34B、34C間の感度ムラの判断処理をそれぞれ別に行っている。これにより、シェーディング補正後の形成された画像の色ムラの原因が、光源35の色ムラなのか、ラインセンサ34A、34B、34C間の感度ムラなのかを判別することができる。
【0079】
これに対して、基準座標からの差が第2閾値を超えていないと判断した場合(ステップS24のNO判定)、制御部10は、ラインセンサ34A、34B、34C間に感度ムラが無いと判断する(ステップS26)。これにより、画像読取部8の検査動作が完了する。
【0080】
ステップS17及びステップS25に示すように、色ムラや感度ムラが有ると判断した場合、例えば、制御部10は、ユーザに対して光源35やラインセンサ34A、34B、34Cの交換するように報知する。
【0081】
または、光源35に色ムラが有ると判断した場合、制御部10は、複数の光源35の色ムラ(色調のバラツキ)から主走査方向の光源35の位置に応じて補正係数を求める。そして、制御部10は、求めた補正係数を画像形成部6に出力する。すなわち、複数の光源35に掛けるシェーディング補正を画像形成部6での画像形成処理に行う。これにより、光源35の色ムラの影響を受けることなく、画像を形成することができる。その結果、光源35の交換が不要となる。
【0082】
なお、ラインセンサ34A、34B、34C間に感度ムラが有ると判断した場合でも、同様に、制御部10は、ラインセンサ34A、34B、34C間に感度ムラから主走査方向のラインセンサ34A、34B、34Cの位置に応じて補正係数を求める。そして、制御部10は、求めた補正係数を画像形成部6に出力し、画像形成部6での画像形成処理に補正を行う。これにより、ラインセンサ34A、34B、34C感の感度ムラの影響を受けることなく、画像を形成することができ、ラインセンサ34A、34B、34Cの交換が不要となる。
【0083】
なお、ステップS15及びステップS23の処理において基準座標と各画素のxy座標値との差(距離)を算出し、ステップS16及びステップS24の処理において、その差が閾値を超えていないか否かを判断する例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、xy座標値のうちx座標値のみと基準座標との差を算出してもよく、あるいはy座標値のみと基準座標との差を算出してもよい。
【0084】
また、上述した検査動作は、画像読取部8の出荷時に行ってもよい。あるいは、制御部10は、所定の期間ごとに上述した検査動作を行ってもよい。所定の期間ごとに検査動作を行うことで、光源35やラインセンサ34A、34B、34Cの経時変化を確認することができ、光源35やラインセンサ34A、34B、34Cの交換時期や、メンテナンス時期を判断することができる。
【0085】
なお、本発明は上述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0086】
なお、基準板としては、白チャートが形成された白基準板M1に限定されるものではない。基準板としては、色の濃度が均一なチャートが形成されたものであればよく、例えば、幅方向(主走査方向)の色の濃度が均一な用紙を適用してもよい。光源ムラ等を検知に必要な専用チャートが不要となる。これにより、複数の光源35の色調のバラツキやラインセンサ34A、34B、34C間の感度のバラツキを容易に検出することができる。
【0087】
また、制御部として、画像形成装置1全体を制御する制御部10を適用した例を説明したが、これに限定されるものではなく、画像読取装置である画像読取部8のみを制御する制御部を適用してもよい。
【0088】
上述した実施の形態例では、画像形成装置としてインクジェット記録装置に限定されるものではなく、画像形成装置としては、トナーを記録媒体に定着さえる電子写真方式の画像形成装置や、その他各種の画像形成装置にも適用できるものである。
【0089】
上述した実施の形態例では、ラインセンサを3つ設けた例を説明したが、ラインセンサの数は、これに限定されるものではなく、ラインセンサを幅方向Xに沿って4つ以上設けてもよく、あるいはラインセンサを2つだけ設けてもよい。
【0090】
また、上述した実施の形態例では、記録媒体として用紙を用いた例を説明したが、これに限定されるものではなく、記録媒体としては、例えば、布帛、プラスチックフィルム、ガラス板等その他各種の記録媒体を適用できるものである。
【符号の説明】
【0091】
1…画像形成装置、 2…給紙部、 4…搬送部、 5…排出部、 6…画像形成部、 6Y、6M、6C、6K…ヘッドユニット、 7…定着部、 8…画像読取部、 10…制御部、 11…給紙トレー、 12…用紙供給部、 14…排紙トレー、 21…駆動ローラ、 22…従動ローラ、 23…搬送ベルト、 31A、31B、31C…撮像部、 32…筐体、 33…レンズ、 34A、34B、34C…ラインセンサ、 35…光源、 36…反射部、 37…防塵ガラス、 38…開口部、 41…CPU、 42…RAM、 43…ROM、 44…記憶部、 51…搬送駆動部、 52…操作表示部、 53…入出力インターフェース、 54…ヘッド制御部、 55…インクジェットヘッド、 56…撮像制御部、 57…システムバス、 100…外部装置、 M1…白基準板(基準板)、 P…用紙(記録媒体)、 X…幅方向、 Y…搬送方向