(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】二重容器、二重容器の製造方法及び二重プリフォーム
(51)【国際特許分類】
B65D 1/02 20060101AFI20240625BHJP
B65D 1/00 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
B65D1/02 111
B65D1/00 120
(21)【出願番号】P 2020086748
(22)【出願日】2020-05-18
【審査請求日】2023-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003768
【氏名又は名称】東洋製罐グループホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福嶋 萩人
(72)【発明者】
【氏名】阿久沢 典男
(72)【発明者】
【氏名】市川 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】飯野 裕喜
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-210181(JP,A)
【文献】特開2010-082916(JP,A)
【文献】特開平11-245941(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/02
B65D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を収容し収縮可能な内容器と、前記内容器を内包する外容器とが剥離可能に構成された二重容器であって、
前記内容器と前記外容器との間に配置され、内容物の品質を保持する機能性材料をフィルム状に形成した機能層を有する機能フィルムを備え、
前記機能フィルムは、
前記内容器が成形される内プリフォームの内側からブローを行い周方向に膨張延伸させる延伸ブロー成形が行われたときに、前記延伸ブロー成形におけるブローの熱と圧力とにより前記内容器に融着され、前記内容器の収縮に追随するように前記内容器に接着性を有している
ことを特徴とする二重容器。
【請求項2】
内容物を収容し収縮可能な内容器と、前記内容器を内包する外容器とが剥離可能に構成され、口部と胴部と底部とを備えた二重容器であって、
前記内容器と前記外容器との間に配置され、内容物の品質を保持する機能性材料をフィルム状に形成した機能層を有する機能フィルムを備え、
前記機能フィルムは、
前記口部において前記内容器と前記外容器ともに嵌合されて固定され、
前記底部の少なくとも一部においては前記内容器に融着されておらず、
前記内容器の収縮に追随するように前記内容器に接着性を有している
ことを特徴とする二重容器。
【請求項3】
前記機能フィルムは、
前記機能層と、
前記内容器に対向するとともに、前記機能層に積層された裏面層とを有し、
前記裏面層は、熱により前記内容器に融着される
ことを特徴とする請求項1
又は2に記載の二重容器。
【請求項4】
前記機能フィルムは、前記外容器に対向するとともに、前記機能層に積層された表面
層を有し、
前記表面層または前記外容器の内側に、前記外容器と前記機能フィルムとが融着することを防止する融着防止層が形成されている
ことを特徴とする請求項
3に記載の二重容器。
【請求項5】
前記内容器及び前記裏面層は、ポリエステル系樹脂を用いて成形される
ことを特徴とする請求項
3または請求項
4に記載の二重容器。
【請求項6】
前記機能性材料は、ガスバリア性を有するガスバリア材料である
ことを特徴とする請求項1~
5のいずれかに記載の二重容器。
【請求項7】
内容物を収容し収縮可能な内容器と、前記内容器を内包する外容器とが剥離可能に構成された二重容器の製造方法であって、
前記内容器が成形される内プリフォームと前記外容器が成形される外プリフォームとの間に、内容物の品質を保持する機能性材料をフィルム状に形成した機能層を有する機能フィルムを挟み込んだ二重プリフォームを準備するスタック工程と、
前記二重プリフォームを加熱するとともに、前記二重プリフォームの内側からブローを行い、前記内プリフォームと前記外プリフォームと前記機能フィルムとを一体として周方向に膨張延伸する延伸ブロー工程と、を備え、
前記機能フィルムは、前記内容器の収縮に追随するように、前記延伸ブロー工程においてブローの熱と圧力とにより前記内容器に融着される
ことを特徴とする二重容器の製造方法。
【請求項8】
前記機能フィルムは、前記外プリフォームに対向するとともに、前記機能層に積層された表面層とを有し、
前記表面層または前記外プリフォームの内側に、前記外容器と前記機能フィルムとが融着することを防止する融着防止層が形成されている
ことを特徴とする請求項
7に記載の二重容器の製造方法。
【請求項9】
前記スタック工程は、
前記二重プリフォームの口部において、前記機能フィルムを前記内プリフォームと前記外プリフォームともに嵌合して固定する、
ことを特徴とする請求項
7または請求項
8に記載の二重容器の製造方法。
【請求項10】
内容物を収容し収縮可能な内容器と、前記内容器を内包する外容器とが剥離可能に構成された二重容器に成形される二重プリフォームであって、
前記内容器が成形される内プリフォームと前記外容器が成形される外プリフォームとの間に配置され、内容物の品質を保持する機能性材料をフィルム状に形成した機能層を有する機能フィルムを備え、
前記機能フィルムは、
前記内プリフォームの内側からブローを行い周方向に膨張延伸させる延伸ブロー成形が行われたときに、前記延伸ブロー成形におけるブローの熱と圧力とにより前記内容器に融着され、前記内容器の収縮に追随するように前記内容器に接着性を有している
ことを特徴とする二重プリフォーム。
【請求項11】
内容物を収容し収縮可能な内容器と、前記内容器を内包する外容器とが剥離可能に構成された二重容器であって口部と胴部と底部とを備えた前記二重容器に成形される二重プリフォームであって、
前記内容器が成形される内プリフォームと前記外容器が成形される外プリフォームとの間に配置され、内容物の品質を保持する機能性材料をフィルム状に形成した機能層を有する機能フィルムを備え、
前記機能フィルムは、
前記二重プリフォームの口部において前記内プリフォームと前記外プリフォームともに嵌合されて固定され、
前記二重プリフォームの底部の少なくとも一部においては前記内プリフォームに融着されず、
前記内プリフォームから成形される前記内容器の収縮に追随するように前記内容器に接着性を有する
ことを特徴とする二重プリフォーム。
【請求項12】
前記機能フィルムは、
前記機能層と、
前記内プリフォームに対向するとともに、前記機能層に積層された裏面層とを有し、
前記裏面層は、熱により前記内容器に融着される
ことを特徴とする請求項
10又は11に記載の二重プリフォーム。
【請求項13】
前記機能フィルムは、前記外プリフォームに対向するとともに、前記機能層に積層された表面
層を有し、
前記表面層または前記外プリフォームの内側に、前記外容器と前記機能フィルムとが融着することを防止する融着防止層が形成されている
ことを特徴とする請求項12に記載の二重プリフォーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外容器と内容器とが剥離可能に構成された二重容器、二重容器の製造方法及び二重プリフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、飲料、液体調味料又は液体化粧品などの内容物を収容し、その鮮度を保持するポリエチレンテレフタラート(PET樹脂)の容器として、外容器と内容器とが剥離可能に構成された二重容器が知られている(例えば特許文献1)。
【0003】
また、内容物の品質を保持するために、PET樹脂から形成された二重容器においては、内容物を収容する内容器にガスバリア性を有するブレンド樹脂材料を含ませることが知られている(例えば特許文献2)。
【0004】
ここで、ガスバリア性の機能としては、酸素吸収剤のような酸素を吸収するアクティブバリア性と、酸素の侵入を防ぐパッシブバリア性との機能に大別されることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-186059号公報
【文献】特開2017-13833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、アクティブバリア性を有する酸素吸収剤を含ませたブレンド樹脂材料を内容器に用いても、長期保存をしておくと時間経過により酸素吸収剤が酸素を吸収し、酸素吸収剤による酸素バリア性が失活してしまう。
【0007】
また、パッシブバリア性を有するバリア剤を含ませたブレンド樹脂材料を内容器に用いたとしても、PET樹脂とバリア剤とが含まれたブレンド樹脂をミクロ的にみると海島状になり、例えば島状のバリア剤では酸素の侵入が防止されるものの、海状のPET樹脂では空気が通過してしまう。更に、リサイクルの観点からも、PET樹脂にバリア剤を含ませる含量の割合は限られている。
【0008】
特に、外容器と内容器とが剥離可能に構成された二重容器においては、内容物が吐出されることにより内容器が収縮すると、外容器と内容器との間の空気が流入することから、内容物の品質を保持する機能性をより向上させることが望まれていた。
【0009】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、内容物の品質を保持する機能性をより向上させた二重容器、二重容器の製造方法及び二重プリフォームを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る二重容器は、内容物を収容し収縮可能な内容器と、前記内容器を内包する外容器とが剥離可能に構成された二重容器であって、前記内容器と前記外容器との間に配置され、内容物の品質を保持する機能性材料をフィルム状に形成した機能層を有する機能フィルムを備え、前記機能フィルムは、前記内容器が成形される内プリフォームの内側からブローを行い周方向に膨張延伸させる延伸ブロー成形が行われたときに、前記延伸ブロー成形におけるブローの熱と圧力とにより前記内容器に融着され、前記内容器の収縮に追随するように前記内容器に接着性を有していることを特徴とする。
また、本発明に係る二重容器は、内容物を収容し収縮可能な内容器と、前記内容器を内包する外容器とが剥離可能に構成され、口部と胴部と底部とを備えた二重容器であって、前記内容器と前記外容器との間に配置され、内容物の品質を保持する機能性材料をフィルム状に形成した機能層を有する機能フィルムを備え、前記機能フィルムは、前記口部において前記内容器と前記外容器ともに嵌合されて固定され、前記底部の少なくとも一部においては前記内容器に融着されておらず、前記内容器の収縮に追随するように前記内容器に接着性を有していることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る二重容器の製造方法は、内容物を収容し収縮可能な内容器と、前記内容器を内包する外容器とが剥離可能に構成された二重容器の製造方法であって、前記内容器が成形される内プリフォームと前記外容器が成形される外プリフォームとの間に、内容物の品質を保持する機能性材料をフィルム状に形成した機能層を有する機能フィルムを挟み込んだ二重プリフォームを準備するスタック工程と、前記二重プリフォームを加熱するとともに、前記二重プリフォームの内側からブローを行い、前記内プリフォームと前記外プリフォームと前記機能フィルムとを一体として周方向に膨張延伸する延伸ブロー工程と、を備え、前記機能フィルムは、前記内容器の収縮に追随するように、前記延伸ブロー工程においてブローの熱と圧力とにより前記内容器に融着されることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る二重プリフォームは、内容物を収容し収縮可能な内容器と、前記内容器を内包する外容器とが剥離可能に構成された二重容器に成形される二重プリフォームであって、前記内容器が成形される内プリフォームと前記外容器が成形される外プリフォームとの間に配置され、内容物の品質を保持する機能性材料をフィルム状に形成した機能層を有する機能フィルムを備え、前記機能フィルムは、前記内プリフォームの内側からブローを行い周方向に膨張延伸させる延伸ブロー成形が行われたときに、前記延伸ブロー成形におけるブローの熱と圧力とにより前記内容器に融着され、前記内容器の収縮に追随するように前記内容器に接着性を有していることを特徴とする。
また、本発明に係る二重プリフォームは、内容物を収容し収縮可能な内容器と、前記内容器を内包する外容器とが剥離可能に構成された二重容器であって口部と胴部と底部とを備えた前記二重容器に成形される二重プリフォームであって、前記内容器が成形される内プリフォームと前記外容器が成形される外プリフォームとの間に配置され、内容物の品質を保持する機能性材料をフィルム状に形成した機能層を有する機能フィルムを備え、前記機能フィルムは、前記二重プリフォームの口部において前記内プリフォームと前記外プリフォームともに嵌合されて固定され、前記二重プリフォームの底部の少なくとも一部においては前記内プリフォームに融着されず、前記内プリフォームから成形される前記内容器の収縮に追随するように前記内容器に接着性を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、内容物の品質を保持する機能性をより向上させた二重容器、二重容器の製造方法及び二重プリフォームを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】機能フィルムの縦断面を模式的に示す図である。
【
図3】二重プリフォームの縦断面を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
本実施形態では、ボトル形状を有する二重容器1の中心軸Zに沿った方向を「軸方向」とも称し、二重容器1の中心軸Zを回転軸として周回する方向を「周方向」とも称し、二重容器1の中心軸Zに直交する方向を「径方向」とも称する。また、二重容器1の口部3から底部6へ向かう軸方向を「下方」とも称し、二重容器1の底部6から口部3へ向かう軸方向を「上方」とも称する。また、二重容器1の中心軸Zに沿った平面で二重容器1を切断した断面を「縦断面」とも称し、二重容器1の中心軸Zに直交する平面で二重容器1を切断した断面を「横断面」とも称する。
【0017】
[二重容器1の構成]
図1は、本実施形態に係る二重容器1の縦断面を模式的に示す図である。
【0018】
図1に示すように、二重容器1は、ボトル形状を有する合成樹脂製の容器であり、二重容器1の一端部であり内容物の注出口21を有する口部3と、二重容器1の他端部であり接地面を有する底部6と、径方向外方に広がりながら口部3から下方へ延びる肩部4と、肩部4から下方に延びて底部6に連なる胴部5とを備える。二重容器1の内容物は、お茶やコーヒー等の飲料、醤油等の液体調味料又はシャンプー等の液体化粧品が挙げられる。
【0019】
また、二重容器1は、二重容器1の外郭を構成すると共に内容器20を内包するボトル形状の外容器10と、内容物を収容すると共に外容器10の内面に沿った形状を有する内容器20と、内容器20の外面に融着された機能フィルム30とを備える。二重容器1は、外容器10と、機能フィルム30が融着された内容器20との間に空隙Aが形成されており、外容器10と内容器20とは剥離可能に構成されている。
【0020】
外容器10及び内容器20は、ポリオレフィン系樹脂、エチレン-ビニル系共重合体、スチレン系樹脂、ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフエニレンオキサイド樹脂、又は、生分解性樹脂を用いて成形される。好適には、外容器10及び内容器20は、ポリオレフィン系樹脂、又は、ポリエステル系樹脂を用いて成形される。より好適には、外容器10及び内容器20は、ポリエステル系樹脂を用いて成形される。このポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、及び、これらの共重合ポリエステル等の樹脂が挙げられる。特に好適には、外容器10及び内容器20は、ポリエチレンテレフタレート樹脂(以下「PET樹脂」という)を用いて成形される。
【0021】
本実施形態においては、外容器10の厚みは約400μmに形成され、内容器20の厚みは約100μmに形成されている。なお、外容器10及び内容器20の厚みは、適宜設計変更が自由である。
【0022】
機能フィルム30は、内容物の品質を保持する機能を果たす無延伸フィルムであり、外容器10及び内容器20を製造するときの延伸ブロー成形におけるブローの熱と圧力とにより内容器20に融着されることになる。
【0023】
[機能フィルム30の構成]
図2は、本実施形態に係る機能フィルム30の縦断面を模式的に示す図である。また、
図2(a)は、本実施形態に係る機能フィルム30の縦断面の一例であり、
図2(b)は、本実施形態の変形例に係る機能フィルム30の縦断面の一例である。
【0024】
図2(a)に示すように、機能フィルム30は、内容物の品質を保持する機能性材料をフィルム状に形成した機能層31と、内容器20に対向するとともに、機能層31に積層された裏面層32と、外容器10に対向するとともに、機能層31に積層された表面層33とを有する三層構成となっている。
【0025】
本実施形態においては、機能フィルム30の膜厚として、機能層31の膜厚が約5~10μm、裏面層32の膜厚が約2~4μm、表面層33の膜厚が約3~5μmの膜厚から形成され、機能層31の膜厚が最も厚くなるように形成されている。なお、機能フィルム30の機能層31、裏面層32及び表面層33の膜厚は、適宜設計変更が自由である。
【0026】
機能層31は、機能性材料として、ガスバリア性を有するガスバリア材料を用いて成形されている。好適には、MXD6、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンフラノエート(PEF)を用いて成形されることが望ましく、特に好適には、MXD6を用いて機能層31を成形することが望ましい。
【0027】
裏面層32及び表面層33は、ポリエステル系樹脂を用いて成形されている。好適には、内容器20と同じ樹脂を用いて成形されることが望ましく、特に好適には、内容器20、裏面層32及び表面層33は、ポリエチレンテレフタレート樹脂を用いて成形されることが望ましい。
【0028】
特に、内容器20及び裏面層32は、同じ樹脂のポリエチレンテレフタレート樹脂を用いて成形されることにより、延伸ブロー成形におけるブローの熱と圧力とにより内容器20に融着されやすくなり、内容器20が収縮する際には内容器20の収縮に追随するように接着性を付与することができる。
【0029】
また、
図2(b)に示すように、内容器20及び裏面層32は、同じ樹脂のポリエチレンテレフタレート樹脂を用いて成形しなくてもよいし、内容器20をポリエチレンテレフタレートと機能性材料とをブレンドさせたブレンド樹脂材料を用いて成形してもよい。このように、内容器20がブレンド樹脂材料を用いて成形されることにより、機能性材料による内容物の品質を保持する機能性をより高めることもできる。
【0030】
また、
図2においては図示を省略しているが、機能フィルム30の表面層33または外容器10の内面側には、外容器10と機能フィルム30とが融着することを防止する融着防止層が形成されている。この融着防止層に関しては、詳しくは
図3を用いて後述する。
【0031】
なお、本実施形態においては、機能性材料としてガスバリア性を有するガスバリア材料を用いて機能層31を成形したが、遮光性、保温性のある材料を用いて機能層31を成形してもよい。
【0032】
さらには、機能フィルム30は、機能層31と裏面層32と表面層33とを有する三層構成とせずに、三層以上の構成としてもよい。さらには、機能フィルム30を、機能層31と裏面層32と有する二層構成としてもよい。このように、機能フィルム30を機能層31と裏面層32との二層構成としても、内容器20の収縮に追随するように接着性を付与しながらも、機能性材料による内容物の品質を保持する機能性も付与することができる。
【0033】
[二重プリフォーム500の構成]
図3は、本実施形態に係る二重プリフォーム500の縦断面を模式的に示す図である。また、
図3(a)は、二重プリフォーム500を準備する工程を模式的に示す図であり、
図3(a)は、二重プリフォーム500の模式的に示す図である。
【0034】
図3(b)に示すように、二重プリフォーム500は、外容器10が成形される管状の外プリフォーム100と、機能フィルム30が成形されるベースフィルム300と、内容器20が成形される管状の内プリフォーム200とを備えている。この二重プリフォーム500を延伸ブロー成形することによって、二重容器1が成形されることになる。従って、二重プリフォーム500と二重容器1、外容器10と外プリフォーム100、内容器20と内プリフォーム200、機能フィルム30とベースフィルム300は、機能的に同質のものである。
【0035】
二重プリフォーム500は、口部3に相当し、延伸ブロー成形によって延伸されない部分である非延伸部分Mと、肩部4、胴部5及び底部6に相当し、延伸ブロー成形によって延伸される部分である延伸部分Nとから構成される。
【0036】
本実施形態においては、外容器10に成形される管状の外プリフォーム100と、内容器20に成形される管状の内プリフォーム200とは、延伸ブロー成形前であることから外容器10及び内容器20の厚みよりも厚く、外容器10の厚みは約3000μmに形成され、内容器20の厚みは約1500μmに形成されている。なお、外プリフォーム100及び内プリフォーム200の厚みは、適宜設計変更が自由である。
【0037】
機能フィルム30に成形されるベースフィルム300の構成は、
図2に示したように、機能層31と裏面層32と表面層33とを有する三層構成となっている。また、本実施形態においては、ベースフィルム300の膜厚は、延伸ブロー成形前であることから機能フィルム30の膜厚よりも厚く、機能層31の膜厚が約50~100μm、裏面層32の膜厚が約20~40μm、表面層33の膜厚が約30~50μmの膜厚から形成されている。なお、ベースフィルム300の機能層31、裏面層32及び表面層33の膜厚は、適宜設計変更が自由である。
【0038】
以下に二重プリフォーム500を準備する工程について説明する。
【0039】
図3(a)に示すように、ベースフィルム300(機能フィルム30)の表面層33となる樹脂層が外プリフォーム100と対向するように、ベースフィルム300を円筒状に形成して、外プリフォーム100に挿入する。ここで、ベースフィルム300を円筒状に形成する際には、
図3(b)に示すように、ある程度重なり部分ができることになる。
【0040】
また、ベースフィルム300を外プリフォーム100に挿入する際には、ベースフィルム300の外面側または外プリフォーム100の内面側に、外プリフォーム100(外容器10)とベースフィルム300(機能フィルム30)とが融着することを防止する融着防止層を形成する。
ここで、本実施形態においては、融着防止層を形成する方法の一例として、パラフィンオイル等の潤滑油400を塗布している。
【0041】
そして、非延伸部分Mの口部においてベースフィルム300が外プリフォーム100と内プリフォーム200とで挟まれて固定されるように、内プリフォーム200を円筒状に形成されたベースフィルム300内に挿入する。
【0042】
これにより、
図3(b)に示すように、外プリフォーム100と内プリフォーム200との間に、内容物の品質を保持する機能性材料をフィルム状に形成した機能層を有するベースフィルム300を挟み込んだ二重プリフォーム500が準備できることになる。
【0043】
なお、本実施形態においては、二重プリフォーム500の準備にあたり、ベースフィルム300を円筒状に形成して外プリフォーム100に挿入した後に、内プリフォーム200を外プリフォーム100と円筒状のベースフィルム300に挿入するように構成したが、ベースフィルム300を円筒状に形成して内プリフォーム200に巻き付けた後、ベースフィルム300と内プリフォーム200とを外プリフォーム100に挿入するように構成してもよい。
【0044】
また、ベースフィルム300は、二重プリフォーム500の延伸部分Nにおいては、外プリフォーム100にも内プリフォーム200にも固定(接着)されておらず、二重プリフォーム500の底部においては解放状態にある。
【0045】
[二重容器1の製造工程]
図4は、二重容器1の製造工程を示す図である。
【0046】
図4に示すように、最初に、二重プリフォームを準備するスタック工程(S10)を行う。
【0047】
スタック工程(S10)においては、
図3に示したように、外プリフォーム100と内プリフォーム200との間に、融着防止層としての潤滑油400が塗布されたベースフィルム300を挟み込み、二重プリフォーム500を準備する。
【0048】
スタック工程(S10)が行われた後には、二重プリフォーム500を延伸ブロー成形する延伸ブロー工程(S20)を行う。
【0049】
延伸ブロー工程(S20)においては、まず、二重プリフォーム500を形成しているPET樹脂のガラス転移温度(Tg)以上、融点未満の温度(約100~120℃)に加熱する。次に、二重プリフォーム500にストレッチロッドを挿入して軸方向に延伸させ、同時に、ブロー流体(例えばエア)を吹き込んで周方向に二重プリフォーム500を膨張延伸させる。
【0050】
このとき、PET樹脂のガラス転移温度以上に加熱された内プリフォーム200とベースフィルム300がブロー圧によって融着されるが、外プリフォーム100とベースフィルム300の間には潤滑油400が存在するために融着されることはなく容易に剥離される。
これにより、二重容器1の製造後には、機能フィルム30は、内容器20の収縮に追随するように、内容器20に接着性を有することになる。
【0051】
また、潤滑油400がベースフィルム300と外プリフォーム100との摩擦力低下の役割を果たすため、ベースフィルム300が二重プリフォーム500に完全に固定されていなくても延伸ブロー成形においてベースフィルム300(機能フィルム30)にしわが発生することを防ぐことができる。
【0052】
なお、本実施形態の延伸ブロー工程(S20)においては、外容器10のプリフォームと内容器20のプリフォームとを二重プリフォーム500として、同時に延伸ブロー成形するようにしたが、外容器10のプリフォームを延伸ブロー成形した後に、外容器10の内側において内容器20のプリフォームを延伸ブロー成形するようにしてもよい。
【0053】
[二重容器の評価結果]
図5は、二重容器の評価結果を示す表である。
【0054】
図5(a)は、二重容器1の酸素透過度を評価する表であり、縦軸を酸素濃度(%)、横軸を経過時間(週)として示している。また、点線が本実施形態における機能フィルム30を有する二重容器1を示し、実線が機能フィルム30を有さない従来の二重容器を示している。
【0055】
ここで、
図5(a)は、測定条件としては下記のとおりである。
密封方法:蒸着PETシール
保管条件:温度37℃、湿度30%RH
測定方法:OXY4trace(高感度センサー)
【0056】
図5(a)に示すように、本実施形態における機能フィルム30を有する二重容器1は、従来の二重容器と比べ、約2倍のガスバリア性を有することが把握できる。
【0057】
図5(b)は、二重容器における機能フィルム30の内容器20への接着性を評価する表である。また、
図5(b)における二重容器1の内容器20は、PET樹脂で成形している。
【0058】
図5(b)に示す「最内層PET」とは、機能フィルム30を機能層31と裏面層32と表面層33とを有する三層構成とし、機能フィルム30における内容器20に対向する接着層(裏面層32)を内容器20と同じPET樹脂で成形したものである。この「最内層PET」では、PET樹脂同士の裏面層32と内容器20との接着性を評価している。
【0059】
また、
図5(b)に示す「最内層MXD6」とは、機能フィルム30を機能層31と表面層33とを有する二層構成とし、機能フィルム30における内容器20に対向する接着層をMXD6で成形された機能層31としたものである。この「最内層MXD6」では、MXD6で成形された機能層31とPET樹脂で成形された内容器20との接着性を評価している。
【0060】
ここで、
図5(b)においては、「最内層PET」及び「最内層MXD6」の機能フィルム30を用いて、それぞれ5本ずつの二重容器1を製造した後、内容器20を収縮・復元させ、機能フィルム30が内容器20から剥離しているかどうかを目視で確認したものである。
【0061】
図5(b)に示すように、機能フィルム30における内容器20に対向する接着層を内容器20と同じPET樹脂で成形することで、機能フィルム30と内容器20との接着性が良化していることが把握できる。
【0062】
以上のように、本実施形態に係る二重容器1では、機能性材料をフィルム状に形成した機能層31を有する機能フィルム30を備えたことにより、内容物の品質を保持する品質保持機能をより向上させることができる。
【0063】
また、本実施形態に係る二重容器1では、機能フィルム30が内容器20の収縮に追随するように内容器20に接着性を有していることから、内容器20が収縮した後に、外容器10と内容器20との間の空気が流入し空隙Aが大きくなったとしても、従来に比べ長期間にわたって内容物の品質を保持することができる。特に、機能フィルム30を三層構成とし、内容器20に対向する裏面層32を内容器20と同じPET樹脂で成形することで、機能フィルム30と内容器20との接着性を良化させることができる。
【0064】
また、本実施形態に係る二重容器1では、潤滑油400がベースフィルム300と外プリフォーム100との間に塗布されていることから、外プリフォーム100(外容器10)とベースフィルム300(機能フィルム30)とが融着することを防止することができるとともに、機能フィルム30にしわが発生することも防止することができる。
【0065】
また、本実施形態に係る二重容器1では、PET樹脂の二重容器1としてリサイクルを行う際には、リサイクル工程で破砕後、風力選別や浮沈選別により機能フィルム30を除外することでリサイクル後の品質を高めることができる。
【0066】
上述の実施形態は、変形例を含めて各実施形態同士で互いの技術を適用することができる。上述の実施形態は、本発明の内容を限定するものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない程度に変更を加えることができる。
【0067】
上述の実施形態及び特許請求の範囲で使用される用語は、限定的でない用語として解釈されるべきである。例えば、「含む」という用語は、「含むものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。「備える」という用語は、「備えるものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。「有する」という用語は、「有するものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0068】
1 二重容器
3 口部
4 肩部
5 胴部
6 底部
10 外容器
20 内容器
30 機能フィルム
31 機能層
32 裏面層
33 表面層
100 外プリフォーム(外容器)
200 内プリフォーム(内容器)
300 ベースフィルム(機能フィルム)
A 空隙
M 非延伸部分
N 延伸部分
Z 中心軸