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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】パイプベンダー
(51)【国際特許分類】
   B21D 7/025 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
B21D7/025 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020092054
(22)【出願日】2020-05-27
(65)【公開番号】P2021186820
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】秋山 健
(72)【発明者】
【氏名】宝来 亮汰
(72)【発明者】
【氏名】百々 泰
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-141335(JP,A)
【文献】実開平03-057419(JP,U)
【文献】実開平02-087512(JP,U)
【文献】特開平07-308717(JP,A)
【文献】特開平10-058049(JP,A)
【文献】特開2008-161922(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 7/025
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプの曲げ対象部分を巻き付けて回転する曲げ型と、
前記曲げ対象部分を前記曲げ型に押し付けながら前記曲げ型と同軸で回転する締め型と、
前記パイプの加工済み部が載置されている床面の下方から上方に移動し、前記曲げ型及び前記締め型の曲げ回転動作に伴って旋回した後の前記加工済み部が停止すべき正規停止位置に前記加工済み部があるときに、当該加工済み部の旋回方向の前方が当接する当て止め部と、
前記床面の下方から上方に移動し、前記曲げ回転動作に伴って旋回した後の前記加工済み部を、当該加工済み部の旋回方向の後方から前記当て止め部に向かう方向に押圧する押圧部と、
前記床面の下方に配置され、前記床面に形成されている開口部を通じて前記押圧部を前記床面の上方と下方との間で移動させる第1駆動機構と、
前記床面の下方に設置され、前記第1駆動機構を前記当て止め部に向かう方向に移動させる第2駆動機構と、を備える、パイプベンダー。
【請求項2】
前記床面の下方に配置され、前記床面に形成されている開口部を通じて前記当て止め部を前記床面の上方と下方との間で移動させる第3駆動機構を備える、請求項1記載のパイプベンダー。
【請求項3】
パイプの曲げ対象部分を巻き付けて回転する曲げ型と、
前記曲げ対象部分を前記曲げ型に押し付けながら前記曲げ型と同軸で回転する締め型と、
前記パイプの加工済み部が載置されている床面の下方から上方に移動し、前記曲げ型及び前記締め型の曲げ回転動作に伴って旋回した後の前記加工済み部が停止すべき正規停止位置に前記加工済み部があるときに、当該加工済み部の旋回方向の前方が当接する当て止め部と、
前記床面の下方から上方に移動し、前記曲げ回転動作に伴って旋回した後の前記加工済み部を、当該加工済み部の旋回方向の後方から前記当て止め部に向かう方向に押圧する押圧部と、
前記床面の下方に配置され、前記床面に形成されている開口部を通じて前記押圧部を前記床面の上方と下方との間で移動させる第1駆動機構と、
前記床面の下方に設置され、前記第1駆動機構を前記当て止め部に向かう方向に移動させる第2駆動機構と、
前記床面の下方に配置され、前記開口部を通じて前記当て止め部を前記床面の上方と下方との間で移動させる第3駆動機構と、
前記第1駆動機構、前記第2駆動機構及び前記第3駆動機構の動作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記第3駆動機構に、前記当て止め部を前記床面の上方に移動させ、かつ、前記第1駆動機構に、前記押圧部を前記床面の上方に移動させた後、前記第2駆動機構に、前記第1駆動機構を前記当て止め部に向かう方向に移動させることで、前記押圧部に前記加工済み部を押圧させる、イプベンダー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パイプベンダーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼管等のパイプを所望の形状に曲げる装置として、パイプベンダーが存在する。パイプベンダーは、直管状である加工前のパイプに対して、連続曲げ加工を施すことが可能である。
【0003】
一般に、パイプベンダーは、すでに曲げ加工が施された加工済み部も床面上で同時に旋回させながらパイプを曲げる。このとき、パイプPの曲げ対象部分を曲げる曲げ加工動作から、この曲げ加工動作に伴って旋回する加工済み部が旋回後に位置する理論上の正規停止位置が予め想定される。ところが、実際には、加工済み部には床面との摩擦に起因して弾性変形が生じ、加工済み
部が正規停止位置の手前で停止する場合がある。このように加工済み部に弾性変形分の変位が復元することを、スプリングバックと呼ぶこともある。
【0004】
このスプリングバックの発生への対策として、予め目標回転角度にスプリングバック分の角度を加算した上で曲げ加工動作を行うことが考えられる。例えば、パイプベンダーは、目標回転角度を180°としているとき、曲げ加工動作後にスプリングバックにより加工済み部に5°の復元が生じると見込み、予め回転角度を185°として曲げ加工動作を実施することができる。しかし、加工済み部が曲げ加工動作の終了時点で停止する位置がどこになるかについては、加工済み部と床面との摩擦により変化するので、実際には、スプリングバック量を正確に見積もることは難しい。
【0005】
そこで、スプリングバックの発生への更なる対策として、曲げ加工動作後に、弾性変形した加工済み部を正規停止位置まで強制的に送ることが考えられる。特許文献1は、曲げ型を取り付けたパイプベンダーの上方に設置される、パイプベンダーの回転軸と同一中心で回転可能なアーム装置に関連する技術を開示している。このアーム装置を用いることで、曲げ加工動作後に、先端に設けられた爪によりパイプの加工済み部を支持して回転することで、加工済み部を正規停止位置まで送ることができる。また、特許文献2及び特許文献3は、加工済み部の形状が崩れないようにするための旋回テーブルを備えたパイプベンダーに関連する技術を開示している。この旋回テーブルを用いることで、予め加工済み部を正規停止位置に向けて旋回させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実開平1-172419号公報
【文献】実開平3-18914号公報
【文献】実開平3-18915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に開示されているアーム装置では、爪が上方から加工済み部を支持する。そのため、例えば、加工済み部が、一部が床面から浮き上がっているような立体曲げ形状を有する場合には、アーム装置の旋回時に爪が浮き上がり部分と干渉し、所望の支持位置に移動することができないこともあり得る。
【0008】
また、特許文献2又は特許文献3に開示されている旋回テーブルは、加工済み部を載置する床面全体が回転する機構である。そのため、旋回テーブルを旋回させるということは、非常に大きな慣性質量を旋回させるのと同義であるので、例えば、曲げ加工時の旋回速度を上げるには限界があり、生産時間を短縮させてパイプを曲げ加工することが難しい。また、旋回テーブルの構造上、曲げ加工動作の回転中心と、加工済み部を載置して実際に旋回するテーブル部分の旋回中心とは、完全に一致しないため、加工済み部と床面との間には、ある程度の摩擦が生じる。したがって、加工済み部を正規停止位置に正確に停止させることができない場合もあり得る。
【0009】
そこで、本開示は、旋回後のパイプの加工済み部をより正確に正規停止位置に停止させるのに有利なパイプベンダーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示に係るパイプベンダーは、パイプの曲げ対象部分を巻き付けて回転する曲げ型と、曲げ対象部分を曲げ型に押し付けながら曲げ型と同軸で回転する締め型と、パイプの加工済み部が載置されている床面の下方から上方に移動し、曲げ型及び締め型の曲げ回転動作に伴って旋回した後の加工済み部が停止すべき正規停止位置に加工済み部があるときに、当該加工済み部の旋回方向の前方が当接する当て止め部と、床面の下方から上方に移動し、曲げ回転動作に伴って旋回した後の加工済み部を、当該加工済み部の旋回方向の後方から当て止め部に向かう方向に押圧する押圧部と、床面の下方に配置され、床面に形成されている開口部を通じて押圧部を床面の上方と下方との間で移動させる第1駆動機構と、床面の下方に設置され、第1駆動機構を当て止め部に向かう方向に移動させる第2駆動機構と、を備える。
【0011】
記のパイプベンダーは、床面の下方に配置され、床面に形成されている開口部を通じて当て止め部を床面の上方と下方との間で移動させる第3駆動機構を備えてもよい。上記のパイプベンダーは、パイプの曲げ対象部分を巻き付けて回転する曲げ型と、曲げ対象部分を曲げ型に押し付けながら曲げ型と同軸で回転する締め型と、パイプの加工済み部が載置されている床面の下方から上方に移動し、曲げ型及び締め型の曲げ回転動作に伴って旋回した後の加工済み部が停止すべき正規停止位置に加工済み部があるときに、当該加工済み部の旋回方向の前方が当接する当て止め部と、床面の下方から上方に移動し、曲げ回転動作に伴って旋回した後の加工済み部を、当該加工済み部の旋回方向の後方から当て止め部に向かう方向に押圧する押圧部と、床面の下方に配置され、床面に形成されている開口部を通じて押圧部を床面の上方と下方との間で移動させる第1駆動機構と、床面の下方に設置され、第1駆動機構を当て止め部に向かう方向に移動させる第2駆動機構と、床面の下方に配置され、開口部を通じて当て止め部を床面の上方と下方との間で移動させる第3駆動機構と、第1駆動機構、第2駆動機構及び第3駆動機構の動作を制御する制御部と、を備え、制御部は、第3駆動機構に、当て止め部を床面の上方に移動させ、かつ、第1駆動機構に、押圧部を床面の上方に移動させた後、第2駆動機構に、第1駆動機構を当て止め部に向かう方向に移動させることで、押圧部に加工済み部を押圧させ
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、旋回後のパイプの加工済み部をより正確に正規停止位置に停止させるのに有利なパイプベンダーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態に係るパイプベンダーの曲げ加工直前の状態を示す平面図である。
図2】加工済み部の旋回停止時におけるパイプベンダーの状態を示す平面図である。
図3】加工済み部を正規停止位置に位置させたパイプベンダーの状態を示す平面図である。
図4】パイプ押圧機構及びパイプ位置決め機構の一連の動作を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、いくつかの例示的な実施形態について、図面を参照して説明する。ここで、実施形態に示す寸法、材料、その他、具体的な数値等は例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。また、実質的に同一の機能及び構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、本開示に直接関係のない要素については図示を省略する。
【0015】
図1は、一実施形態に係るパイプベンダー1の曲げ加工直前の状態を示す平面図である。パイプベンダー1は、ワークであるパイプPを曲げる装置である。パイプPは、例えば、各種規格に準じた一般的な鋼管である。図1では、加工済み部P1がこれから旋回する方向を白抜きの矢印で示している。図1以下の各図では、一例として、鉛直方向にZ軸を取り、Z軸に垂直な水平面内において、曲げ加工前のパイプPを曲げ加工部10へ搬送する搬送方向Fに並行となるX軸を取り、X軸に垂直な方向にY軸を取る。
【0016】
図2は、加工済み部P1が図1に示す状態から旋回した後の旋回停止位置にあるときのパイプベンダー1の状態を示す平面図である。ここで、旋回停止位置とは、加工済み部P1が曲げ型12及び締め型13の曲げ加工動作に伴って旋回し、当該曲げ回転動作の終了に伴って旋回を終了したときに、加工済み部P1が自然に停止する実際上の停止位置をいう。図2では、加工済み部P1が旋回してきた方向を白抜きの矢印で示している。
【0017】
図3は、加工済み部P1が図2に示す状態から修正されて正規停止位置に位置したときのパイプベンダー1の状態を示す平面図である。ここで、正規停止位置とは、加工済み部P1が曲げ回転動作に伴って旋回し、当該曲げ回転動作の終了に伴って旋回を終了したときに、加工済み部P1が停止していることが望ましい目標位置をいう。図3では、加工済み部P1がパイプ押圧機構20により押圧されて移動した方向を白抜きの矢印で示している。
【0018】
また、図1等の各図では、曲げ加工の例えば中盤や終盤の工程を行うときのパイプベンダー1の状態が示されている。ここで、中盤や終盤の工程とは、すでに複数回の曲げ加工が施されていることで加工済み部P1が蛇行曲げ管となっているパイプPに対して、さらに曲げ加工を施す工程をいう。特に終盤の工程では、加工済み部P1は、最終の製品形状に近い形になっている。図1等に示す例では、加工済み部P1が、互いに平行に並ぶ5つの直進パイプ部を含む。5つの直進パイプ部とは、具体的には、パイプ押圧機構20により押圧される第1パイプ部P11から順に、第2パイプ部P12、第3パイプ部P13、第4パイプ部P14、及び、曲げ対象部分に最も近い第5パイプ部P15を示す。また、加工済み部P1は、床面100(図4参照)に載置されており、曲げ加工時には床面100上を移動する。
【0019】
パイプベンダー1は、実際にパイプPに曲げ加工を施す曲げ加工部10と、曲げ加工部10とは別位置にパイプ押圧機構20及びパイプ位置決め機構30と、制御部40とを備える。なお、不図示であるが、パイプベンダー1は、曲げ加工部10に向けてパイプPを搬送する搬送部を備える。
【0020】
曲げ加工部10は、曲げ型12と、締め型13と、締め型クランプ機構14と、圧力型15とを備える。
【0021】
曲げ型12は、パイプPの曲げ対象部分が押し付けられた状態で回転することで、パイプPを曲げる型である。曲げ型12は、円柱又は円板状の外形を有し、中心軸Oを回転軸として回転可能である。曲げ型12の外周には、パイプPの外周面を当接させる周溝12aが形成されている。周溝12aの断面形状は、パイプPの円形断面に対応した略半円形である。周溝12aの周断面の曲率半径は、パイプPの所望の曲げ半径に対応している。また、曲げ型12は、外周の一部に、直線状に延出されたクランプ部12bを有する。つまり、クランプ部12bでの周溝12aは、例外的に直線状である。また、本実施形態における曲げ型12は、円柱又は円板状の外形を有するものとしているが、これに代えて、角が曲げられた四角柱又は四角板のような他の外形を有していてもよい。
【0022】
締め型13は、パイプPの曲げ対象部分よりも先端側の部分を曲げ型12に押し付けて曲げ型12とともに回転する型である。なお、締め型は、クランプ型とも呼ばれる。締め型13は、曲げ型12の回転軸と同軸で回転可能な回転テーブル13a上に設置される。つまり、締め型13は、中心軸O周りの回転テーブル13aの回転駆動に伴って回転する。なお、回転テーブルは、クランプ台とも呼ばれる。締め型13は、曲げ型12のクランプ部12bとの対向面に、パイプPの円形断面に対応する略半円形断面の押圧溝13bを有する。締め型13は、曲げ型12に対して近づいたり離れたりすることが可能である。
【0023】
締め型クランプ機構14は、回転テーブル13a上に設置され、曲げ型12に向かう方向に締め型13を移動させる。つまり、締め型13は、締め型クランプ機構14を介して回転テーブル13aに設置されている。締め型クランプ機構14は、曲げ型12の周溝12aと締め型13の押圧溝13bとの間にパイプPが存在するときに締め型13を移動させることでパイプPを加圧し、パイプPを曲げ型12と締め型13とでクランプさせることができる。
【0024】
圧力型15は、締め型13の上流側に設置され、パイプPの曲げ外側と接触し、曲げ加工によるパイプPからの反力を受け止める型である。圧力型15は、パイプPとの接触面に、パイプPの円形断面に対応する略半円形断面の直線溝15aを有する。圧力型15は、パイプPに対して近づいたり離れたりすることが可能である。また、圧力型15は、パイプPの移動に追従して、搬送方向Fに移動可能である。
【0025】
圧力型クランプ機構16は、パイプPに向かう方向に圧力型15を移動させる。圧力型クランプ機構16は、曲げ型12の中心軸O及び搬送方向Fの双方に対して直角な押圧方向に圧力型15を押し出し、圧力型15にパイプPの反力を受け止めさせることができる。圧力型クランプ機構16が設けられていることで、圧力型15は、曲げ加工によりパイプPが軸方向に引かれるのと一体で搬送方向Fに移動可能である。
【0026】
また、不図示の搬送部は、搬送方向Fに沿ってパイプPを曲げ加工部10に搬送するパイプ搬送装置を備える。パイプ搬送装置は、パイプPをその中心軸回りに回転させることができるものであってもよい。パイプ搬送装置がパイプPをその中心軸回りに所望の量だけ回転させることで、パイプベンダー1は、パイプPの曲げ方向を所望の方向に調整し、加工済み部P1を立体曲げ形状とすることができる。
【0027】
図4は、パイプ押圧機構20及びパイプ位置決め機構30の一連の動作を示す断面図である。
【0028】
パイプ押圧機構20は、旋回停止位置にある加工済み部P1が正規停止位置に位置するように、加工済み部P1を押圧する。ここで、鉛直方向の上方から加工済み部P1が旋回する床面100に向かって、パイプベンダー1を見たとする。このような平面上では、本実施形態におけるパイプ押圧機構20は、図2及び図3に示すように、旋回停止位置にある加工済み部P1を、加工済み部P1の旋回方向の後方から当て止め部31に向かう方向に押圧することができる位置に配置される。
【0029】
パイプ押圧機構20は、押圧部21と、第1駆動機構22と、第2駆動機構23とを備える。これらの構成要素のうち、第1駆動機構22と第2駆動機構23とは、床面100の下方にある例えば工場床面101上に設置される。床面100は、上記のとおり加工済み部P1が載置されて旋回する面であり、金属板や木板等で構成される。つまり、第1駆動機構22と第2駆動機構23とは、床面100と工場床面101との間の空間内にある。
【0030】
押圧部21は、加工済み部P1の特に第1パイプ部P11と直接的に接触して加工済み部P1を押圧するブロック状の部材である。ここで、床面100には、押圧部21を貫通可能とする第1開口部100aが予め形成されている。押圧部21は、第1開口部100aを通じて床面100の上方と下方との間で移動可能である。
【0031】
第1駆動機構22は、押圧部21を床面100の上方と下方との間で移動させる。第1駆動機構22は、例えば、直動機構の一種である直動式アクチュエーターである。本実施形態では、一例として、第1駆動機構22が油圧式のシリンダーであるものとする。ただし、直動式アクチュエーターは、これに限定されるものではなく、エアーシリンダーや電動式のシリンダー等であってもよい。又は、第1駆動機構22は、ラックピニオンやボールねじ等の直動機構を含むものであってもよい。第1駆動機構22は、本実施形態では鉛直方向に対応するZ方向に沿って直動する第1シャフト22aを備える。第1シャフト22aの先端には、押圧部21が取り付けられる。ここで、押圧部21は、加工済み部P1に対して面接触する場合、接触面は、図2に示す押圧直前と図3に示す押圧時とでは、接触角度が変化する。そこで、押圧部21は、第1シャフト22aに対して姿勢を変化可能にとりつけられてもよい。又は、押圧部21の形状は、図2等に示すような直方体状ではなく、第1シャフト22aと同軸の円柱状であってもよい。
【0032】
第2駆動機構23は、第1駆動機構22を押圧部21の押圧方向に沿って移動させる。第2駆動機構23も、第1駆動機構22と同様の直動機構を採用可能であり、例えば直動式アクチュエーターである。第2駆動機構23は、本実施形態では押圧方向に対応するX方向に沿って直動する第2シャフト23aを備える。第2シャフト23aの先端には、第1駆動機構22が取り付けられる。第2駆動機構23は、例えば、第1取付金具24を介して工場床面101上に設置される。
【0033】
パイプ位置決め機構30は、旋回後に押圧部21により押されてきた加工済み部P1を、正規停止位置に位置するように位置決めする。つまり、パイプ位置決め機構30は、予め規定された正規停止位置に合わせて設置される。本実施形態では、一例として、図1に示す旋回開始位置から90°反時計回りに旋回した位置を正規停止位置としている。また、本実施形態では、一例として、パイプ位置決め機構30が2つある。
【0034】
パイプ位置決め機構30は、当て止め部31と、第3駆動機構32とを備える。第3駆動機構32は、床面100の下方にある例えば工場床面101上に設置される。つまり、第3駆動機構32は、床面100と工場床面101との間の空間内にある。
【0035】
当て止め部31は、加工済み部P1の旋回方向の前方にある第5パイプ部P15が当接される円柱状の部材である。ここで、床面100には、当て止め部31を貫通可能とする第2開口部100bが予め形成されている。当て止め部31は、第2開口部100bを通じて床面100の上方と下方との間で移動可能である。なお、本実施形態では、第2開口部100bは、パイプ押圧機構20の押圧部21が貫通する第1開口部100aとは異なるものとしているが、これらの開口部は連続していてもよい。
【0036】
第3駆動機構32は、当て止め部31を床面100の上方と下方との間で移動させる。第3駆動機構32も、第1駆動機構22と同様の直動機構を採用可能であり、例えば直動式アクチュエーターである。第3駆動機構32は、本実施形態では鉛直方向に対応するZ方向に沿って直動する第3シャフト32aを備える。第3シャフト32aの先端には、円柱状である当て止め部31が同軸に取り付けられる。第3駆動機構32は、例えば、第2取付金具33を介して工場床面101上に設置される。
【0037】
ここで、当て止め部31は、床面100の上方から突出したときに、図3に示すように、加工済み部P1が正規停止位置にある状態で、第5パイプ部P15の側面と当接する位置に配置される。図3に示す例では、正規停止位置にある加工済み部P1の第5パイプ部P15の側面が、Y方向に沿って延伸する基準線AX上に位置する。この場合、2つの当て止め部31は、それぞれ基準線AXと接触しながら一列に並ぶことになる。
【0038】
そして、制御部40は、作業者の指示に基づいて、曲げ加工部10における曲げ加工動作や、パイプ搬送装置によるパイプ搬送動作などを制御する。また、本実施形態では、制御部40は、パイプ押圧機構20及びパイプ位置決め機構30の動作を制御する。
【0039】
次に、パイプベンダー1における基本的な曲げ加工動作について説明する。
【0040】
加工対象であるパイプPは、予め、パイプ搬送装置により曲げ加工部10に搬送され、パイプPの曲げ対象部分が曲げ型12に対して適切な位置に配置される。曲げ型12及び締め型13は、図1に示される初期位置においてパイプPを把持する。
【0041】
次に、曲げ型12及び締め型13は、パイプPの一部を把持したまま、中心軸O回りに一体的に回転移動する。なお、本実施形態においても、目標回転角度にスプリングバック分の角度を加算した上で曲げ加工動作を行ってもよい。パイプPは、曲げ型12及び締め型13の回転により、搬送方向Fに引かれつつ、周溝12aに巻き付けられて曲げられる。同時に、パイプPを側方から押圧している圧力型15は、パイプPの軸方向の移動に追従して移動する。
【0042】
パイプベンダー1は、曲げ加工部10における曲げ加工動作と、パイプ搬送装置によるパイプPの搬送動作とを組み合わせた連続曲げ加工を行うことで、最終的には、図1等に示すような蛇行曲げ管等の連続曲げ管を製作することができる。
【0043】
次に、パイプ押圧機構20及びパイプ位置決め機構30を採用したことによる曲げ加工時のパイプベンダー1の作用について説明する。
【0044】
例えば、図1に示すような初期状態からパイプPに曲げ加工動作を行った場合、曲げ加工動作に伴って床面100上を旋回した加工済み部P1は、曲げ加工動作の終了後、一度で図3に示すような正規停止位置に停止することが望ましい。しかし、実際には、加工済み部P1は、旋回時に床面100との間で摩擦抵抗を受けるので、図2に示すように、一部に弾性変形が生じた状態で停止する場合がある。ここで、加工済み部P1の質量をM、摩擦抵抗係数をμ、重力加速度をgとすると、摩擦抵抗はμMgで表される。なお、図2では、摩擦抵抗が作用する方向を加工済み部P1上の矢印で表している。そこで、本実施形態では、制御部40は、曲げ加工動作が終了し、併せて加工済み部P1の旋回動作も終了した後に、パイプ押圧機構20及びパイプ位置決め機構30に、正規停止位置に加工済み部P1を位置させる。
【0045】
まず、制御部40が曲げ加工動作を開始させて、その後、曲げ加工動作が終了して加工済み部P1が旋回停止位置にあるとき、パイプ押圧機構20及びパイプ位置決め機構30の各構成要素は、図4(a)に示すように、それぞれ床面100の下方にある。このとき、第1駆動機構22は、押圧部21を最下方に位置させている。第2駆動機構23は、第1駆動機構22を押圧方向の最後方に位置させている。また、第3駆動機構32は、当て止め部31を最下方に位置させている。
【0046】
次に、制御部40は、図4(b)に示すように、旋回停止位置にある加工済み部P1に押圧部21を当接させる。図4(b)は、図2中のIVB-IVB部に対応し、パイプ押圧機構20及び1つのパイプ位置決め機構30を通りXZ平面で切断した断面図に相当する。具体的には、制御部40は、図4(a)に示す状態から、第1駆動機構22に、押圧部21が床面100から上方に突出するように、すなわち、押圧部21の一側面がX方向で加工済み部P1に相対するように、押圧部21を上方に移動させる。次に、制御部40は、第2駆動機構23に、押圧部21の一側面が加工済み部P1と当接するまで、第1駆動機構22をX方向とは反対方向に移動させる。
【0047】
ここで、本実施形態では、押圧部21は、加工済み部P1の旋回方向の後方から当て止め部31に向かう方向で加工済み部P1を押圧する。また、図2及び図3に示す例では、押圧方向はX方向の反対方向に相当する。この場合、押圧部21は、加工済み部P1のうち旋回方向の最も後方に位置する第1パイプ部P11に、X方向に沿って当接することになる。
【0048】
また、制御部40は、図4(a)に示す状態から、第3駆動機構32に、当て止め部31が床面100から上方に突出するように、すなわち、当て止め部31の一側面がX方向で加工済み部P1に相対するように、当て止め部31を上方に移動させる。
【0049】
次に、制御部40は、図4(c)に示すように、押圧部21に加工済み部P1を押圧させる。図4(c)は、図3中のIVC-IVC部に対応し、パイプ押圧機構20及び1つのパイプ位置決め機構30を通りXZ平面で切断した断面図に相当する。押圧部21による押圧は、具体的には、第2駆動機構23に、押圧方向であるX方向とは反対方向に第1駆動機構22を移動させることで行われる。加工済み部P1は、押圧部21による押圧により当て止め部31に向かって移動し、いずれ、加工済み部P1の一部である第5パイプ部P15が当て止め部31に当接する。
【0050】
ここで、制御部40は、第5パイプ部P15が当て止め部31に当接した直後に、第2駆動機構23の駆動を停止させてもよい。この場合、例えば、パイプ位置決め機構30に検出センサーを設置し、検出センサーが第5パイプ部P15の接触を検知したときに、制御部40が第2駆動機構23の駆動を停止させることができる。又は、制御部40は、第5パイプ部P15が当て止め部31に当接した後、予め所望の加工済み部P1の形状から求められている押圧部21の停止位置に押圧部21が位置したときに、第2駆動機構23の駆動を停止させてもよい。さらに、制御部40は、第5パイプ部P15が当て止め部31に当接した後、別途設けられた検出センサーを用いて加工済み部P1の形状や姿勢を検出し、所望の形状等になっていることを検知したときに、第2駆動機構23の駆動を停止させてもよい。
【0051】
押圧部21による加工済み部P1への押圧が終了した後は、制御部40は、図4を参照して説明した一連の動作とは反対の動作を行わせることで、パイプ押圧機構20及びパイプ位置決め機構30を、図4(a)に示すような待機状態に維持させることができる。
【0052】
次に、本実施形態に係るパイプベンダー1による効果について説明する。
【0053】
本実施形態に係るパイプベンダー1は、パイプPの曲げ対象部分を巻き付けて回転する曲げ型12と、曲げ対象部分を曲げ型12に押し付けながら曲げ型12と同軸で回転する締め型13とを備える。パイプベンダー1は、パイプPの加工済み部が載置されている床面100の下方から上方に移動する当て止め部31を備える。当て止め部31は、曲げ型12及び締め型13の曲げ回転動作に伴って旋回した後の加工済み部P1が停止すべき正規停止位置に加工済み部P1があるときに、当該加工済み部P1の旋回方向の前方が当接する。また、パイプベンダー1は、床面100の下方から上方に移動し、曲げ回転動作に伴って旋回した後の加工済み部P1を、当該加工済み部P1の旋回方向の後方から当て止め部31に向かう方向に押圧する押圧部21を備える。
【0054】
このようなパイプベンダー1によれば、曲げ加工動作の終了後に加工済み部P1が正規停止位置にない場合でも、当て止め部31を基準として加工済み部P1を正規停止位置に位置させることができる。また、旋回停止位置にある加工済み部P1を正規停止位置に位置させるには、押圧部21が、当て止め部31に向かって加工済み部P1を押圧して移動させるだけである。したがって、加工済み部P1の大小によることなく、曲げ角度を一定に維持させやすいので、曲げ角度の精度の向上に有利となる。
【0055】
したがって、本実施形態によれば、旋回後のパイプPの加工済み部P1をより正確に正規停止位置に停止させるのに有利なパイプベンダー1を提供することができる。
【0056】
また、パイプベンダー1は、床面100の下方に配置され、床面100に形成されている第1開口部100aを通じて押圧部21を床面100の上方と下方との間で移動させる第1駆動機構22を備えてもよい。また、パイプベンダー1は、床面100の下方に設置され、第1駆動機構22を当て止め部31に向かう方向に移動させる第2駆動機構23を備えてもよい。
【0057】
このようなパイプベンダー1によれば、押圧部21に押圧させる機構は、基本的に床面100の下方に配置され、加工済み部P1の上方に位置しない。したがって、例えば、加工済み部P1が立体曲げ形状を有する場合に、押圧部21等が加工済み部P1の浮き上がり部分と干渉して所望の支持位置に移動することができないということを予め回避することができる。
【0058】
また、パイプベンダー1によれば、押圧部21を移動させる機構が簡易的であるため、加工済み部P1全体を旋回させるような旋回テーブルを用いる場合などと比べて、加工済み部P1を正規停止位置に位置させるのに要する出力を小さくすることできる。また、従来の旋回テーブルを用いる場合に比べて、旋回速度を早くすることができる。
【0059】
また、パイプベンダー1は、床面100の下方に配置され、床面100に形成されている第2開口部100bを通じて当て止め部31を床面100の上方と下方との間で移動させる第3駆動機構32を備えてもよい。
【0060】
このようなパイプベンダー1によれば、当て止め部31を移動させる機構は、基本的に床面100の下方に配置され、加工済み部P1の上方に位置しない。したがって、例えば、加工済み部P1が立体曲げ形状を有する場合に、当て止め部31を移動させる機構が加工済み部P1の浮き上がり部分と干渉して所望の支持位置に移動することができないということを予め回避することができる。
【0061】
また、パイプベンダー1は、第1駆動機構22、第2駆動機構23及び第3駆動機構32の動作を制御する制御部40を備えてもよい。この場合、制御部40は、第3駆動機構32に、当て止め部31を床面100の上方に移動させ、かつ、第1駆動機構22に、押圧部21を床面100の上方に移動させる。その後、制御部40は、第2駆動機構23に、第1駆動機構22を当て止め部31に向かう方向に移動させることで、押圧部21に加工済み部P1を押圧させてもよい。
【0062】
このようなパイプベンダー1によれば、簡易的な構成で、かつ、簡易的な制御で、加工済み部P1を正規停止位置に停止させることができる。
【0063】
また、パイプベンダー1では、当て止め部31及び第3駆動機構32の組は、複数あってもよい。
【0064】
このようなパイプベンダー1によれば、加工済み部P1が当接される当て止め部31が増えるので、加工済み部P1をより正確に正規停止位置に位置させることができる。
【0065】
なお、予め想定される加工済み部P1の大きさが小さい場合には、パイプベンダー1は、パイプ位置決め機構30を1つだけ備えることとしてもよい。
【0066】
いくつかの実施形態を説明したが、上記開示内容に基づいて実施形態の修正または変形をすることが可能である。上記実施形態のすべての構成要素、及び請求の範囲に記載されたすべての特徴は、それらが互いに矛盾しない限り、個々に抜き出して組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 パイプベンダー
12 曲げ型
13 締め型
21 押圧部
22 第1駆動機構
23 第2駆動機構
31 当て止め部
32 第3駆動機構
40 制御部
100 床面
100a 第1開口部
100b 第2開口部
P パイプ
P1 加工済み部
図1
図2
図3
図4