(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】通信システム、及び通信方法
(51)【国際特許分類】
H04M 11/04 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
H04M11/04
(21)【出願番号】P 2020096797
(22)【出願日】2020-06-03
【審査請求日】2023-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】山田 航平
(72)【発明者】
【氏名】上原 祥広
(72)【発明者】
【氏名】林 尚輝
(72)【発明者】
【氏名】道 浩之
【審査官】石井 則之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/225634(WO,A1)
【文献】特開2019-160005(JP,A)
【文献】特開2006-31470(JP,A)
【文献】特開2001-76276(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04M 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の通信方式による第1通信回線と、LPWA規格の通信方式による第2通信回線との二つの回線を用いて、センサ端末によって測定される環境データをサーバ装置に集約させる通信システムであって、
災害発生に関する所定の起動条件に基づいて、前記第1通信回線と共に前記第2通信回線を起動させるか否かを判定する起動判定部と、
前記起動判定部による判定結果に基づいて、前記第1通信回線及び前記第2通信回線のそれぞれを介して行う通信を制御する通信制御部と、
を備える通信システム。
【請求項2】
前記起動判定部は、前記起動条件を充足しないと判定される場合に前記第1通信回線を起動させると判定し、前記起動条件を充足すると判定された場合に前記第1通信回線が起動しているか否かに関わらず前記第2通信回線を起動させると判定する、
請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
災害発生に関する警報を取得する警報取得部と、
前記警報取得部によって取得された前記警報に警報レベルを対応付けた警報テーブル、及び前記第2通信回線を起動させる警報レベルを示す閾値情報を記憶する記憶部と、
を備え、
前記起動判定部は、前記警報取得部によって取得された前記警報に基づいて前記警報テーブル及び前記閾値情報を参照し、当該警報に対応する警報レベルが、前記第2通信回線を起動させる警報レベル以上である場合に、前記第2通信回線を起動させると判定する、
請求項1又は請求項2に記載の通信システム。
【請求項4】
前記環境データを取得する環境データ取得部と、
前記環境データ取得部によって取得された前記環境データに環境レベルを対応付けた環境テーブル、及び前記第2通信回線を起動させる環境レベルを示す閾値情報を記憶する記憶部と、
を備え、
前記起動判定部は、前記環境データ取得部によって取得された前記環境データに基づいて前記環境テーブル及び前記閾値情報を参照し、当該環境データに対応する環境レベルが、前記第2通信回線を起動させる環境レベル以上である場合に、前記第2通信回線を起動させると判定する、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の通信システム。
【請求項5】
前記環境データは、センサ端末によって測定された放射線量を示すデータである、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の通信システム。
【請求項6】
前記サーバ装置は、
センサ端末から前記第1通信回線を介して通知される前記環境データである第1データを取得する第1取得部と、
センサ端末から前記第2通信回線を介して通知される前記環境データである第2データを取得する第2取得部と、
前記第1データと前記第2データを比較した比較結果に基づいて、前記環境データを前記第1通信回線又は前記第2通信回線の少なくとも一方を介して再送させるか否かを判定する再送判定部と、
を備える請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の通信システム。
【請求項7】
センサ端末から前記第2通信回線を使用して通知される前記環境データを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶される前記環境データのデータ容量が所定の閾値未満となるように制御するデータ容量監視部と、
を更に備える請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の通信システム。
【請求項8】
前記通信制御部は、前記第1通信回線と共に前記第2通信回線を介した通信を行う場合、前記第1通信回線のみを使用する通信を行う場合と異なる通信頻度にて通信が行われるように制御する、
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の通信システム。
【請求項9】
前記第2通信回線がLPWA規格におけるZETA(登録商標)に準拠する通信を行う、
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の通信システム。
【請求項10】
所定の通信方式による第1通信回線と、LPWA規格の通信方式による第2通信回線との二つの回線を用いて、センサ端末によって測定される環境データをサーバ装置に集約させる通信システムにおける通信方法であって、
起動判定部が、災害発生に関する所定の起動条件に基づいて、前記第1通信回線と共に前記第2通信回線を起動させるか否かを判定し、
通信制御部が、前記起動判定部による判定結果に基づいて、前記第1通信回線及び前記第2通信回線のそれぞれを介して行う通信を制御する、
通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システム、及び通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地震、津波や台風、あるいは原発事故などによる災害時に、必要なデータ(震度、浸水深さ、放射線量など)を、所定の位置に配置したセンサから確実に取得する必要がある。このような災害時において行政機関などの防災センターと、データを取得するセンサの各々との間の通信回線が遮断された場合、その後のデータを取得することができなくなる。この対策として、例えば、特許文献1に示されているように、第1の通信路(第1通信回線)と第2の通信路(第2通信回線)との各々を設ける技術がある。特許文献1では、防災無線システムにおける親局と子局との間の通信回線を二重化することにより、故障など何らかの原因によって第1の通信路が遮断されても、第2の通信路を用いた通信を継続させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1においては、第1の通信路が遮断された場合に、第2の通信路に切替えて通信が行なわれる。このため、複数の通信回線を確保しているにもかかわらず、常に1つの回線のみを使用した通信が行われるため、複数の通信回線が有効に活用されているとは言い難かった。一方、常時、複数の通信回線を使用した第2の通信路で通信を継続させようとすると複数回線分の電力が消費されてしまうため運用コストを増大させてしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものである。本発明の目的は、電力の消費を抑制しつつ、複数の通信回線を有効に活用することができる通信システム及び通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の、通信システムは、所定の通信方式による第1通信回線と、LPWA規格の通信方式による第2通信回線との二つの回線を用いて、センサ端末によって測定される環境データをサーバ装置に集約させる通信システムであって、災害発生に関する所定の起動条件に基づいて、前記第1通信回線と共に前記第2通信回線を起動させるか否かを判定する起動判定部と、前記起動判定部による判定結果に基づいて、前記第1通信回線及び前記第2通信回線のそれぞれを介して行う通信を制御する通信制御部と、を備える通信システムである。
【0007】
本発明の、通信方法は、所定の通信方式による第1通信回線と、LPWA規格の通信方式による第2通信回線との二つの回線を用いて、センサ端末によって測定される環境データをサーバ装置に集約させる通信システムにおける通信方法であって、起動判定部が、災害発生に関する所定の起動条件に基づいて、前記第1通信回線と共に前記第2通信回線を起動させるか否かを判定し、通信制御部が、前記起動判定部による判定結果に基づいて、前記第1通信回線及び前記第2通信回線のそれぞれを介して行う通信を制御する、通信方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電力の消費を抑制しつつ、複数の通信回線を有効に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態による通信システム1の構成例を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施形態によるサーバ装置10の構成例を示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施形態によるセンサ端末30の構成例を示すブロック図である。
【
図4】本発明の実施形態による警報テーブル情報190の構成例を示す図である。
【
図5】本発明の実施形態による環境テーブル情報191の構成例を示す図である。
【
図6】本発明の実施形態による閾値情報192の構成例を示す図である。
【
図7】本発明の実施形態による通信システム1が行う処理の流れを示すシーケンス図である。
【
図8】本発明の実施形態による通信システム1が行う処理の流れを示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態による通信システム1の構成例を示すブロック図である。通信システム1は、例えば、サーバ装置10と、第1通信ネットワーク20、第2通信ネットワーク21と、複数のセンサ端末30(センサ端末30-1、30-2、…、30-N)と、緊急警報サーバ40とを備える。Nは任意の自然数である。
【0012】
通信システム1において、サーバ装置10と、センサ端末30とが、第1通信ネットワーク20及び第2通信ネットワーク21のそれぞれを介して互いに通信可能に接続される。すなわち、通信システム1において、サーバ装置10とセンサ端末30とは第1通信ネットワーク20を介して通信可能であると共に、第2通信ネットワーク21を介して通信可能である。また、通信システム1において、サーバ装置10と緊急警報サーバ40とが通信可能に接続される。
【0013】
通信システム1は、センサ端末30によって測定される環境データをサーバ装置10に集約させる通信システムである。環境データは、環境に関する情報であって、例えば、放射線の線量、所定の種類の有毒ガス、あるいは悪臭ガスの濃度、飛散される花粉の単位面積当たりの数、騒音の強度、排煙による飛散物量、あるいは他の有害物質の濃度などを示す情報である。
【0014】
サーバ装置10は、センサ端末30を制御し、センサ端末30によって測定された環境データを集約するコンピュータ装置である。例えば、サーバ装置10は、センサ端末30に制御信号を送信し、当該制御信号にしたがった通信を行うようにセンサ端末30に命令する。ここでの制御信号には、サーバ装置10とセンサ端末30との通信条件、例えば、送信する際に使用する通信方式、及び送信のタイミングや頻度などが示されている。
【0015】
特に、サーバ装置10は、災害発生の状況に応じて、通信回線を制御する。ここで想定する災害とは、環境データに影響を及ぼすことが予想される災害であり、例えば、放射性物質が拡散することが予想される原子力事故、特定の有毒ガス等が発生することが予想される工場火災や地震、或いは水害などである。このような災害が発生した時には、環境データを確実に正確に測定し続けることにより、災害の規模や状況を把握したり、人体への影響を予測したりすることができる。このため、サーバ装置10は、災害発生の状況に応じて、確実に環境データを集約できるように通信回線を制御する。ここでの通信回線とは、サーバ装置10とセンサ端末30との間の通信回線であり、第1通信ネットワーク20のみとするか、第1通信ネットワーク20と共に第2通信ネットワーク21とにするかを制御する。
【0016】
例えば、サーバ装置10は、緊急警報サーバ40から受信した警報の内容に基づいて、通信回線を制御する。或いは、サーバ装置10は、センサ端末30から受信した環境データの内容に基づいて通信経路を制御する。サーバ装置10が通信回線を制御する具体的な方法については、後で詳しく説明する。
【0017】
第1通信ネットワーク20は、所定の通信方式による通信を行う。ここでの所定の通信方式は、インターネット、WAN(Wide Area Network)、LAN(Local Area Network)、プロバイダ装置、無線基地局、専用回線などのうちの一部または全部を含む通信網である。また、第1通信ネットワーク20は、後述するLPWA(Low Power Wide Area)規格の通信方式による通信を行ってもよい。
【0018】
第2通信ネットワーク21は、LPWA規格の通信方式による通信を行う。第2通信ネットワーク21は、例えば、Sigfox(登録商標)やLoRa(登録商標)、ZETA(登録商標)などに準拠した通信方式による通信を行う。LPWA規格の通信方式では、通信速度を抑えることにより、既存の通信網、例えばLTE(Long Term Evolution)などと比較して消費電力を少なく抑えていることを特徴とする。また、Bluetooth(登録商標)などの近距離無線通信と比較して、通信距離が大きく、例えば数十kmから~100km程度であることを特徴とする。また、第2通信ネットワーク21にZETAが適用される場合、通信帯域を複数の帯域に分割した超狭帯域(UNB(Ultra Narrow Band))を用いた多チャンネル通信が行われるようにしてもよい。この場合において、通信に用いるチャンネルの帯域が、毎回同じ帯域に固定されていてもよいし、毎回固定することなく、変化するように運用されてもよい。これにより、空いている帯域を利用した通信を行うことができるため、帯域が他の装置に利用されていることにより通信が制限されてしまうことを抑制することが可能である。
【0019】
なお、通信システム1において、サーバ装置10とセンサ端末30との間の第2通信ネットワーク21による通信を中継する中継器が配置されてもよい。これにより、通信距離を、より長く設定することが可能となる。
【0020】
センサ端末30は、測定対象を測定する各種のセンサと通信機能とを備えた装置である。ここでの各種のセンサは、環境データを測定するセンサであって、例えば、放射線の線量、所定の種類の有毒ガスなどを測定するセンサである。センサ端末30は、サーバ装置10の制御にしたがって、第1通信ネットワーク20又は、第1通信ネットワーク20と第2通信ネットワーク21を共に使用することにより、サーバ装置10に環境データを送信する。
【0021】
緊急警報サーバ40は、緊急警報を送信するコンピュータ装置である。緊急警報サーバ40は、例えば、行政機関の災害対策センターなどに設けられ、災害発生時などにおいて緊急警報が発令された場合に、その緊急警報を送信する。
【0022】
図2は、本発明の実施形態によるサーバ装置10の構成例を示すブロック図である。サーバ装置10は、例えば、主回線通信部11と、サブ回線通信部12と、起動判定部13と、通信制御部14と、再送判定部15と、データ容量監視部17と、装置制御部18と、記憶部19とを備える。
【0023】
主回線通信部11は、第1通信ネットワーク20を介してセンサ端末30と通信を行う機能部であり、例えば、インターネット通信モジュールなどにより構成される。サブ回線通信部12は、第2通信ネットワーク21を介してセンサ端末30と通信を行う機能部であり、例えば、LPWA規格の通信モジュールなどにより構成される。
【0024】
起動判定部13は、通信回線を起動させるか否かを判定する。起動判定部13は、災害発生に関する所定の起動条件に基づいて、第1通信ネットワーク20と共に第2通信ネットワーク21を起動させるか否かを判定する。例えば、起動判定部13は、平常時には、第1通信ネットワーク20のみを起動させると判定する。ここでの平常時とは、災害が発生していない状況にある時であり、例えば、緊急警報サーバ40によって警報が送信されていない状況にあり、尚且つ、センサ端末30によって測定された環境データが異常な数値を示していない状況にある場合である。
【0025】
起動判定部13は、異常時には、第1通信ネットワーク20と共に第2通信ネットワーク21を起動させると判定する。ここでの異常時とは、災害が発生した状況にある時であり、例えば、緊急警報サーバ40によって警報が送信された場合、又はセンサ端末30によって測定された環境データが異常な数値を示している場合である。
【0026】
ここで、通信回線を制御する具体的な方法について説明する。まず、緊急警報サーバ40によって警報が送信された場合に通信回線を制御する方法について説明する。起動判定部13は、緊急警報サーバ40からの警報が送信された場合、その警報を取得し、取得した警報の内容に基づいて警報テーブル情報190を参照する。警報テーブル情報190は、記憶部19に記憶される情報であって警報の内容に警報レベルが対応づけられた情報である。これにより起動判定部13は、警報の内容に対応する警報レベルを取得する。さらに起動判定部13は、取得した警報レベルに基づいて閾値情報192を参照する。閾値情報192は、記憶部19に記憶される情報であって、第1通信ネットワーク20と共に第2通信ネットワーク21を起動させる場合の警報レベルの閾値(最低レベル)が示された情報である。起動判定部13は、警報の内容に対応する警報レベルが、閾値情報192に示された警報レベル以上である場合に、第1通信ネットワーク20と共に第2通信ネットワーク21を起動させると判定する。
【0027】
次に、センサ端末30によって測定された環境データが異常な数値を示している場合に通信回線を制御する方法ついて説明する。起動判定部13は、センサ端末30からの通知された環境データを取得し、取得した環境データの数値に基づいて環境テーブル情報191を参照する。環境テーブル情報191は、記憶部19に記憶される情報であって環境データの数値に環境レベルが対応づけられた情報である。これにより起動判定部13は、環境データの値に対応する環境レベルを取得する。さらに起動判定部13は、取得した環境レベルに基づいて閾値情報192を参照する。閾値情報192は、記憶部19に記憶される情報であって、第1通信ネットワーク20と共に第2通信ネットワーク21を起動させる場合の環境レベルの閾値(最低レベル)が示された情報である。起動判定部13は、環境データの値に対応する環境レベルが、閾値情報192に示された環境レベル以上である場合に、第1通信ネットワーク20と共に第2通信ネットワーク21を起動させると判定する。
【0028】
通信制御部14は、起動判定部13の判定結果にしたがって通信回線を制御する。通信制御部14は、起動判定部13によって第1通信ネットワーク20のみを起動させると判定された場合、第1通信ネットワーク20のみを起動させる。通信制御部14は、起動判定部13によって第1通信ネットワーク20と共に第2通信ネットワーク21を起動させると判定された場合、第1通信ネットワーク20と共に第2通信ネットワーク21を起動させる。
【0029】
通信制御部14は、通信回線を制御するのみならず、通信頻度や再送の条件などを制御する。例えば、通信制御部14は、異常時において詳細な環境データを集約させる必要があると判定される場合には、平常時と比較して通信頻度が高くなるように制御する。この場合、通信制御部14は、センサ端末30に、環境データの送信間隔を平常時よりも小さくするように命令する。また、通信制御部14は、通信頻度が高くなるように制御した後に、例えば災害の状況が安定する等して詳細な環境データを集約させる必要がなくなったと判定される場合には、通信頻度を平常時の状態に戻すように制御してもよい。
【0030】
また、通信制御部14は、後述する再送判定部15により環境データを再送させる必要があると判定される場合には、センサ端末30に、環境データを再送するように命令する。この場合において、通信制御部14は、環境データを再送する際に使用する通信回線を指定するようにしてもよい。例えば、通信制御部14は、第1通信ネットワーク20のみを用いて環境データを再送するように指定してもよいし、第2通信ネットワーク21のみを用いて環境データを再送するように指定してもよいし、第1通信ネットワーク20と第2通信ネットワーク21の両方を用いて環境データを再送するように指定してもよい。
【0031】
また、通信制御部14は、後述するデータ容量監視部17により環境データを記憶させる容量が不足する可能性があると判定される場合には、サーバ装置10とは異なる装置(例えば、クラウドなどのデータベースサーバ)に環境データを送信するように、センサ端末30に命令する。この場合において、通信制御部14は、別の装置に環境データを送信する際に使用する通信回線を指定するようにしてもよい。例えば、通信制御部14は、第1通信ネットワーク20を用いて通知される環境データを別の装置に送信するように指定してもよいし、第2通信ネットワーク21を用いて通知される環境データを別の装置に送信するように指定してもよいし、第1通信ネットワーク20と第2通信ネットワーク21を用いて通知される環境データを共に、別の装置に送信するように指定してもよい。
【0032】
再送判定部15は、環境データを再送させるか否かを判定する。再送判定部15は、例えば、環境データの通知に使用された通信回線によって、環境データが互いに異なる数値を示す場合など、受信した環境データが信頼できるものでない場合に、環境データを再送させると判定する。この場合、災害が発生するなどして第1通信ネットワーク20と、第2通信ネットワーク21の両方を使用して環境データの集約が行われていることを前提とする。
【0033】
環境データが信頼できるものであるか否かを判定する判定方法として、例えば、以下の2つの判定方法1、及び判定方法2が考えられる。
【0034】
判定方法1として、例えば、再送判定部15は、同時期に、第1通信ネットワーク20を介して受信された環境データ(以下、第1データという)を取得すると共に、第2通信ネットワーク21を介して受信された環境データ(以下、第2データという)を取得する。再送判定部15は、第1データと第2データを比較し、例えば、第1データと第2データの差分を算出する。再送判定部15は、算出した差分が所定の閾値以上である場合、環境データを再送させると判定する。第1データと第2データの何れか一方、又は両方に誤りがあると考えられるためである。環境データに誤りが発生する要因として、通信回線上に突発的なノイズが発生したり、回線が一時的に切断されたりする通信回線の不具合が発生したことが考えられる。再送判定部15は、再送された第1データと第2データの差分が所定の閾値未満であれば、通信回線の不具合が解消されたとみなし、誤りない環境データを取得できたとして、環境データの再送を停止させる。
【0035】
一方、再送判定部15は、再送された第1データと第2データの差分が所定の閾値以上であれば、その都度、環境データを再送させる。再送判定部15は、所定の回数を再送させても、再送された第1データと第2データの差分が所定の閾値以上である場合は、環境データを集約させる過程において何らかの不具合(センサ、或いは通信回線の異常など)があるとみなす。再送判定部15は、何等かの不具合があるとみなした場合には、不具合の要因をそれ以上探索することはなく、第1通信ネットワーク20のみ、或いは第1通信ネットワーク20と第2通信ネットワーク21の両方の回線を介した環境データの取得を継続させる。この場合において、再送判定部15は、環境データを集約させる過程において何らかの不具合がある旨を、環境データに付与するようにしてもよい。或いは、再送判定部15は、何らかの不具合があるとみなした環境データを測定したセンサ端末30からのデータ集約を停止させるようにしてもよい。
【0036】
或いは、再送判定部15は、環境データを集約させる過程において何らかの不具合があるとみなした場合に、その旨をアラートとして現地へ確認指示等をだしてもよい。この場合の現地とは、何らかの不具合があるとみなされた環境データを測定したセンサ端末30が設置されている場所である。
【0037】
判定方法2として、再送判定部15は、第1データと第2データの差分が所定の閾値以上である場合、近隣のセンサ端末30から通知された環境データ(以下、第3データという)と、比較する。ここでの近隣のセンサ端末30とは、第1データと第2データを測定したセンサ端末30が設置されている場所の近隣に設置されたセンサ端末30である。近隣とする範囲は、環境データの値がほぼ同等とみなすことが可能な範囲であればよく、センサ端末30が測定する測定対象、及びセンサの測定性能などに応じて任意に設定されてよい。ここでの第3データは、第1通信ネットワーク20を介して受信された環境データと、第2通信ネットワーク21を介して受信された環境データとの差分が所定の閾値未満であることを確認済であるものを用いることが望ましい。
【0038】
例えば、再送判定部15は、第1データと第3データとの差分(以下、第1差分という)、第2データと第3データの差分(以下、第2差分という)をそれぞれ算出する。再送判定部15は、算出した第1差分が所定の閾値未満であって、第2差分が所定の閾値以上である場合、第2データに誤りがあるとみなす。一方、再送判定部15は、算出した第1差分が所定の閾値以上であって、第2差分が所定の閾値未満である場合、第1データに誤りがあるとみなす。この場合、再送判定部15は、誤りがあるとみなした環境データが通知された通信回路を介して環境データを再送させるようにする。
【0039】
なお、上記では、第3データを測定したセンサ端末30が、第1データ及び第2データを測定したセンサ端末30の近隣に設置されている場合を例に説明した。しかしながら、これに限定されることはない。再送判定部15は、第1データと第2データを測定したセンサ端末30の近隣に別のセンサ端末30が存在しない場合、任意のセンサ端末30を用いて、第1データと第2データの何れに誤りがあるかを判定するようにしてもよい。この場合、例えば、再送判定部15は、平常時において、複数のセンサ端末30のそれぞれによって測定される環境データを集約する際に、各々の環境データの相対関係(以下、オフセットという)を把握しておく。
【0040】
再送判定部15は、第1データと第2データの差分が所定の閾値以上である場合、任意のセンサ端末30から通知された環境データ(以下、第4データという)と、比較する。再送判定部15は、第1データと第4データとの差分(以下、第3差分という)、第2データと第4データの差分(以下、第4差分という)をそれぞれ算出する。再送判定部15は、算出した第3差分が所定のオフセット閾値未満であって、第2差分が所定のオフセット閾値以上である場合、第2データに誤りがあるとみなす。ここでのオフセット閾値は、第1データと第2データを測定したセンサ端末30と、第4データを測定したセンサ端末30との平常時において把握されているオフセットに、所定の閾値を加算したものである。再送判定部15は、第3差分が所定のオフセット閾値以上であって、第4差分が所定のオフセット閾値未満である場合、第1データに誤りがあるとみなす。
【0041】
なお、再送判定部15は、上述した判定方法1、及び判定方法2を単独で実施するようにしてもよいし、判定方法1、及び判定方法2を併用して実施するようにしてもよい。
【0042】
本実施形態では、センサ端末30から集約された環境データを記憶させる。特に、災害発生時においては、第1通信ネットワーク20と、第2通信ネットワーク21の両方を使用して環境データの集約が行われる。このため、記憶部19に記憶される容量が急激に増える可能性がある。記憶部19に記憶される容量が急激に増えると、記憶部19に環境データを記憶し続けることが困難となる可能性がある。この場合、災害の規模や状況を把握したり、人体への影響を予測したりすることができなくなる。
【0043】
この対策として、データ容量監視部17は、記憶部19に記憶される環境データの容量を監視する。例えば、データ容量監視部17は、第1通信ネットワーク20と、第2通信ネットワーク21の両方を使用して環境データの集約が行われる場合において、記憶部19に記憶されている環境データの容量を取得する。データ容量監視部17は、取得した容量が所定の閾値以上である場合には、記憶部19に記憶させる環境データを制限すると判定する。この場合、データ容量監視部17は、例えば、通信制御部14を介して、センサ端末30から通知される環境データの通知先を、別の装置に通知するように制御する。
【0044】
或いは、データ容量監視部17は、センサ端末30から通知される環境データに、大きな変化がない場合には、センサ端末30から通知される環境データを間引いて記憶部19に記憶させるようにするようにしてもよい。或いは、データ容量監視部17は、センサ端末30から通知される環境データに、大きな変化がない場合には、通信制御部14を介してセンサ端末30から通知される環境データの通知頻度を低下させるように制御するようにしてもよい。
【0045】
装置制御部18は、サーバ装置10を統括的に制御する。装置制御部18は、例えば、緊急警報サーバ40から受信した警報を起動判定部13に出力する。装置制御部18は、起動判定部13によって判定された判定結果を通信制御部14に出力する。装置制御部18は、再送判定部15によって判定された判定結果を通信制御部14に出力する。装置制御部18は、データ容量監視部17によって記憶部19に記憶させる環境データを制限する判定された場合に、その判定に応じた処理を行う。例えば、装置制御部18は、センサ端末30に環境データの通知先を変更させる場合や、環境データを通知させる頻度を低下させる場合には、その旨を通信制御部14に出力する。装置制御部18は、センサ端末30から通知された環境データを間引いて記憶させる場合には、主回線通信部11及びサブ回線通信部12によって受信される環境データを間引いて記憶部19に記憶させる。
【0046】
記憶部19は、記憶媒体、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、RAM(Random Access read/write Memory)、ROM(Read Only Memory)、またはこれらの記憶媒体の任意の組み合わせによって構成される。記憶部19は、サーバ装置10の各種処理を実行するためのプログラム、及び各種処理を行う際に利用される一時的なデータを記憶する。
【0047】
記憶部19は、例えば、警報テーブル情報190と、環境テーブル情報191と、閾値情報192とを記憶する。警報テーブル情報190は、警報の内容と警報レベルとが対応づけられた情報である。環境テーブル情報191は、環境データの値と環境レベルとが対応づけられた情報である。閾値情報192は、第1通信ネットワーク20と共に第2通信ネットワーク21を起動させる、警報レベル及び環境レベルが示された情報である。
【0048】
図3は、本発明の実施形態によるセンサ端末30の構成例を示すブロック図である。センサ端末30は、例えば、センサ部300と、通信モジュール310とを備える。センサ部300は、各種のセンサであり、例えば放射線量を測定するセンサや、ガス濃度を測定するセンサなどである。通信モジュール310は、主回線通信部31と、サブ回線通信部32と、センサ情報取得部33と、通信制御部34と、制御部37と、記憶部38とを備える。
【0049】
主回線通信部31は、第1通信ネットワーク20を介してサーバ装置10と通信を行う。主回線通信部31は、第1通信ネットワーク20を介して、環境データをサーバ装置10に送信する。主回線通信部31は、例えば、サーバ装置10からの制御信号を受信する。
【0050】
サブ回線通信部32は、第2通信ネットワーク21を介してサーバ装置10と通信を行う。サブ回線通信部32は、第2通信ネットワーク21を介して、環境データをサーバ装置10に送信する。サブ回線通信部32は、主回線通信部31に代えて、或いは第1通信ネットワーク20と共に、サーバ装置10からの制御信号を受信するようにしてもよい。
【0051】
センサ情報取得部33は、例えば、センサ部300と接続するIO(Input Output)ポートであり、IOポートを介してセンサ部300と接続されることにより、センサ部300によって測定された情報(環境データ)を取得する。センサ情報取得部33は、取得した環境データを記憶部38に記憶させる。
【0052】
通信制御部34は、サーバ装置10にしたがって環境データのサーバ装置10への通知を制御する。通信制御部34は、サーバ装置10から送信される制御信号を、主回線通信部31又はサブ回線通信部32を介して取得する。通信制御部34は、第1通信ネットワーク20を起動させる旨の制御信号を取得した場合、主回線通信部31及び第1通信ネットワーク20を介して、環境データをサーバ装置10に送信させる。通信制御部34は、第1通信ネットワーク20と共に第2通信ネットワーク21を起動させる旨の制御信号を取得した場合、主回線通信部31及び第1通信ネットワーク20を介して、環境データをサーバ装置10に送信させると共に、サブ回線通信部32及び第2通信ネットワーク21を介して、環境データをサーバ装置10に送信する。通信制御部34は、環境データの送信頻度を変更する旨の制御信号を取得した場合、環境データをサーバ装置10に送信させる頻度を変更する。通信制御部34は、環境データを通知する通知先を変更する旨の制御信号を取得した場合、環境データを別の装置に送信する。
【0053】
制御部37は、センサ端末30を統括的に制御する。制御部37は、センサ情報取得部33によって取得された環境データを通信制御部34の制御に基づいて主回線通信部31、及びサブ回線通信部32に出力する。
【0054】
記憶部38は、記憶媒体、例えば、HDD、フラッシュメモリ、EEPROM、RAM、ROM、またはこれらの記憶媒体の任意の組み合わせによって構成される。記憶部38は、センサ端末30の各種処理を実行するためのプログラム、及び各種処理を行う際に利用される一時的なデータを記憶する。記憶部38は、環境データ280を記憶する。環境データ280は、センサ部300によって測定された情報である。
【0055】
図4は、本発明の実施形態による警報テーブル情報190の構成例を示す図である。警報テーブル情報190は、例えば、テーブルIDと、警報情報と、警報レベルなどの項目を備える。テーブルIDはテーブルを一意に識別する識別情報である。ここでのテーブルは、警報の内容と警報レベルの対応付けを示す。警報情報は、警報によって示される具体的な内容であり、例えば、情報種別と情報内容の項目を備える。警報種別は、警報の種別を示す情報であり、この例では地震、津波、炉内温度などを示している。炉内温度とは、原子力発電所の原子炉の内部温度を示している。情報内容は、情報種別で特定される警報の内容を示す情報であり、この例では、地震の警報にはその地震の震度を示している。警報レベルは、警報情報で特定される警報に対応づけられた警報レベルである。この例では、警報として、炉内温度に関する警報がなされた場合、炉内温度がメルトダウン相当であれば警報レベルはレベル5であり、所定の温度(図では「炉内温度XX以上」と記載)である場合には警報レベルはレベル3であることが示されている。
【0056】
図5は、本発明の実施形態による環境テーブル情報191の構成例を示す図である。この例では、環境データが放射線の線量である場合における環境テーブル情報191の例を示している。このように、環境テーブル情報191は、環境データとして測定される測定対象ごとに作成されてよい。環境テーブル情報191は、例えば、テーブルIDと、放射線量と、環境レベルなどの項目を備える。テーブルIDはテーブルを一意に識別する識別情報である。ここでのテーブルは、環境データの値と環境レベルの対応付けを示す。放射線量は、測定された放射線の量である。環境レベルは、環境データの値に相当する放射線量に対応づけられた環境レベルである。この例では、放射線量が所定の閾値以上(図では「○○以上」と記載)であれば環境レベルはレベル5であり、所定の閾値未満(図では「XX~○○未満」と記載)である場合には環境レベルはレベル4であることが示されている。
【0057】
図6は、本発明の実施形態による閾値情報192の構成例を示す図である。閾値情報192は、例えば、閾値IDと、対象と、閾値などの項目を備える。閾値IDは閾値を一意に識別する識別情報である。対象は、閾値IDで特定される閾値を設定する対象であり、この図の例では、警報レベルと環境レベルが対象として示されている。閾値は、閾値IDで特定される対象について、第1通信ネットワーク20と共に第2通信ネットワーク21を起動させる閾値を示す情報である。この例では、警報レベル、環境レベル共にレベル4以上である場合に第1通信ネットワーク20と共に第2通信ネットワーク21を起動させることが示されている。
【0058】
図7、及び
図8は、本発明の実施形態による通信システム1が行う処理の流れを示すシーケンス図である。
図7には警報が送信された場合に通信回線を制御する処理の流れが示されている。
図8には環境データが異常な数値を示している場合に通信回線を制御する処理の流れが示されている。なお、
図7、及び
図8のフローにおいては、平常時における運用、すなわち第1通信ネットワーク20を用いた環境データの集約が定期的に行われていることを前提とする。また、
図7、及び
図8のフローにおける「センサ情報」はセンサによって測定された情報であり、「環境データ」の一例である。
【0059】
まず、
図7を用いて、警報が送信された場合に通信回線を制御する処理の流れを説明する。
【0060】
ステップS10において、サーバ装置10は、閾値情報192を記憶する。例えば、キーボードやマウスなどの入力装置を介して作業員などによる設定がなされるにより、サーバ装置10に閾値情報192が記憶される。
【0061】
ステップS11において、緊急警報サーバ40は警報を送信する。緊急警報サーバ40が送信した警報は、ステップS12において、サーバ装置10に受信される。
【0062】
ステップS13において、サーバ装置10は、受信した警報の内容に基づいて、警報レベルが閾値以上であるか否かを判定する。ここでの閾値は、第1通信ネットワーク20と共に第2通信ネットワーク21を起動させると判定する警報レベルの閾値を示す。サーバ装置10は、受信した警報に基づいて警報テーブル情報190を参照し、警報の内容に対応する警報レベルを取得する。サーバ装置10は、取得した警報レベルに基づいて閾値情報192を参照し、警報レベルが閾値以上であるか否かを判定する。サーバ装置10は、受信した警報の内容に対応する警報レベルが閾値以上である場合、センサ端末30に、第1通信ネットワーク20と共に第2通信ネットワーク21を起動させる制御信号を送信する。一方、サーバ装置10は、受信した警報の内容に対応する警報レベルが閾値未満である場合、ステップS12に戻り、警報の受信を待つ。
【0063】
ステップS14において、センサ端末30は、サーバ装置10からの制御信号にしたがい、サブ回線(第2通信ネットワーク21)を起動させる。ここでの制御信号は、第1通信ネットワーク20と共に第2通信ネットワーク21を起動させる命令を示す信号である。
【0064】
ステップS15において、センサ端末30は、サブ回線を使用した環境データの通知を開始する。センサ端末30は、所定のタイミング(送信タイミング)にて、メイン回線(第1通信ネットワーク20)と、サブ回線の両方を使用してセンサ情報(環境データ)をサーバ装置10に送信する。
【0065】
ステップD16において、サーバ装置10は、メイン回線と、サブ回線の両方からセンサ情報を受信する。ステップS17において、サーバ装置10は、受信したセンサ情報が信頼できるか否かを判定する。サーバ装置10は、例えば、メイン回線を介して取得したセンサ情報と、サブ回線を介して取得したセンサ情報との差分が所定の閾値未満である場合にセンサ情報が信頼できると判定し、差分が所定の閾値以上である場合にセンサ情報が信頼できないと判定する。サーバ装置10は、受信したセンサ情報が信頼できない場合、センサ端末30に環境データの再送を要求する。一方、サーバ装置10は、受信したセンサ情報が信頼できる場合にはステップS20に進む。
【0066】
ステップS18において、センサ端末30は、サーバ装置10からの指示にしたがって、センサ情報を再送する。異常時において、ステップS15~S18に示す処理が繰り返される。
【0067】
ステップS19において、緊急警報サーバ40は、警報が解除されるなど、災害発生の状況が変化した場合に、新たな警報(警報の解除を含む)を送信する。ステップS12において、サーバ装置10は、警報を受信する。ステップS13において、サーバ装置10は、受信した警報の内容に基づいて、警報レベルが閾値以上であるか否かを判定する。サーバ装置10は、受信した警報の内容に対応する警報レベルが閾値以上である場合、ステップS16に戻り、第1通信ネットワーク20と共に第2通信ネットワーク21の両方からのセンサ情報の集約を継続させる。一方、サーバ装置10は、受信した警報の内容に対応する警報レベルが閾値未満である場合、センサ端末30に、第2通信ネットワーク21を停止させる制御信号を送信する。ステップS22において、センサ端末30は、サーバ装置10の制御にしたがい、第2通信ネットワーク21による環境データの通知を停止する。
【0068】
次に、
図8を用いて、環境データが異常な数値を示している場合に通信回線を制御する処理の流れを説明する。ステップS30、S34~S38に示す処理は、ステップS10、S14~S18に示す処理と同等であるため、その説明を省略する。
【0069】
ステップS31において、センサ端末30は測定したセンサ情報をサーバ装置10に通知する。ここでの通知は、メイン回線(第1通信ネットワーク20)を用いて行われる。
【0070】
ステップS32において、サーバ装置10はセンサ情報を受信する。ステップS33において、サーバ装置10は、受信したセンサ情報の値に基づいて、環境レベルが閾値以上であるか否かを判定する。ここでの閾値は、第1通信ネットワーク20と共に第2通信ネットワーク21を起動させると判定する環境レベルの閾値を示す。サーバ装置10は、受信したセンサ情報に基づいて環境テーブル情報191を参照し、センサ情報の値に対応する環境レベルを取得する。サーバ装置10は、取得した環境レベルに基づいて閾値情報192を参照し、環境レベルが閾値以上であるか否かを判定する。サーバ装置10は、受信したセンサ情報の値に対応する環境レベルが閾値以上である場合、センサ端末30に、第1通信ネットワーク20と共に第2通信ネットワーク21を起動させる制御信号を送信する。一方、サーバ装置10は、受信した警報の内容に対応する警報レベルが閾値未満である場合、ステップS32に戻り、センサ情報の通知を待つ。
【0071】
ステップS39において、サーバ装置10は、センサ端末30から通知されたセンサ情報の値に基づいて、環境レベルが閾値以上であるか否かを判定する。サーバ装置10は、受信したセンサ情報の値に対応する環境レベルが閾値以上である場合、ステップS36に戻り、第1通信ネットワーク20と共に第2通信ネットワーク21の両方からのセンサ情報の集約を継続させる。一方、サーバ装置10は、受信したセンサ情報の値に対応する環境レベルが閾値未満である場合、センサ端末30に、第2通信ネットワーク21を停止させる制御信号を送信する。ステップS40において、センサ端末30は、サーバ装置10の制御にしたがい、第2通信ネットワーク21による環境データの通知を停止する。
【0072】
以上説明したように、実施形態の通信システム1は、第1通信ネットワーク20と第2通信ネットワーク21との二つの回線を用いて、センサ端末30によって測定される環境データをサーバ装置10に集約させるシステムである。通信システム1は、起動判定部13と、通信制御部14とを備える。起動判定部13は、災害発生に関する所定の起動条件に基づいて、第1通信ネットワーク20と共に第2通信ネットワーク21を起動させるか否かを判定する。通信制御部14は、起動判定部13による判定結果に基づいて、第1通信ネットワーク20及び第2通信ネットワーク21のそれぞれを介して行う通信を制御する。これにより、実施形態の通信システム1では、災害発生の状況に応じて、第1通信ネットワーク20のみを使用して環境データを集約させるか、第1通信ネットワーク20と第2通信ネットワーク21とを用いて環境データを集約させるかを切り替えることができる。すなわち、平常時には第1通信ネットワーク20のみを用いて電力の消費を抑え、異常時には環境データを確実に精度よく測定することができる。したがって、電力の消費を抑制しつつ、複数の通信回線を有効に活用することが可能である。さらに、第2通信ネットワーク21はLPWA規格の通信回線であることから、複数の回線を利用した場合であっても消費電力を抑えたデータ集約が可能である。
【0073】
第1通信ネットワーク20は、「第1通信回線」の一例である。
第2通信ネットワーク21は、「第2通信回線」の一例である。
上述した実施形態では、サーバ装置10が、起動判定部13及び通信制御部14を備える場合を例に説明したが、これに限定されることはない。起動判定部13や通信制御部14が、サーバ装置10とは異なるクラウド装置などのコンピュータ装置に設けられ、クラウド装置を介してサーバ装置10及びセンサ端末30の通信を制御するようにしてもよい。
【0074】
また、実施形態の通信システム1では、起動判定部13は、起動条件を充足しないと判定される場合に、第1通信ネットワーク20を起動させると判定し、起動条件を充足すると判定された場合に第1通信ネットワーク20が起動しているか否かに関わらず第2通信ネットワーク21を起動させると判定する。これにより、実施形態の通信システム1では、第1通信ネットワーク20が故障などで起動していない場合でなくとも、第2通信ネットワーク21を介した環境データの集約を行うことができる。したがって、第2通信ネットワーク21を、単なる予備の通信回線とする場合と比較して、より有効に活用することが可能である。
【0075】
また、実施形態の通信システム1では、装置制御部18と記憶部19とを備える。装置制御部18は、「警報取得部」の一例であり、災害発生に関する警報を取得する。記憶部19は、警報テーブル情報190と閾値情報192とを記憶する。警報テーブル情報190は、警報に警報レベルを対応付けた情報である。閾値情報192は第2通信ネットワーク21を起動させる警報レベルを示す情報である。起動判定部13は、装置制御部18によって取得された警報に基づいて警報テーブル情報190及び閾値情報192を参照し、当該警報に対応する警報レベルが、第2通信ネットワーク21を起動させる警報レベル以上である場合に、第1通信ネットワーク20を起動させると判定する。
【0076】
また、実施形態の通信システム1では、装置制御部18は、「環境データ取得部」の一例であり、環境データを取得する。記憶部19は、環境テーブル情報191と閾値情報192を記憶する。環境テーブル情報191は、環境データに環境レベルを対応付けた情報である。閾値情報192は、第2通信ネットワーク21を起動させる環境レベルを示す情報である。起動判定部13は、装置制御部18によって取得された環境データに基づいて環境テーブル情報191及び閾値情報192を参照し、当該環境データに対応する環境レベルが、第2通信ネットワーク21を起動させる環境レベル以上である場合に、第2通信ネットワーク21を起動させると判定する。
【0077】
これにより、実施形態の通信システム1では、予め記憶させておいたテーブルや閾値を参照するという簡単な処理により、第1通信ネットワーク20を起動させるか否かを判定することができる。しかも、テーブルや閾値を書き換えることにより、種々の警報に対応させたり、第1通信ネットワーク20を起動させる基準を変更したりすることができ、柔軟な対応が可能となる。
【0078】
また、実施形態の通信システム1では、環境データは、センサ端末30によって測定された放射線量を示すデータである。これにより実施形態の通信システム1では、災害発生の譲許に応じて、複数の通信回線を有効に利用した放射線量の集約を行うことが可能である。
【0079】
また、実施形態の通信システム1では、サーバ装置10は、主回線通信部11とサブ回線通信部12と、再送判定部15とを備える。主回線通信部11は、「第1取得部」の一例であり、第1データを取得する。第1データは、センサ端末30から第1通信ネットワーク20を介して通知される環境データである。サブ回線通信部12は、「第2取得部」の一例であり、第2データを取得する。第2データは、センサ端末30から第2通信ネットワーク21を介して通知される環境データである。再送判定部15は、第1データと第2データを比較した比較結果に基づいて、環境データを、第1通信ネットワーク20又は第2通信ネットワーク21の少なくとも一方を介して再送させるか否かを判定する。これにより、実施形態の通信システム1では、複数の通信回線を介して集約させた環境データが相違する場合に環境データを再送させることができ、環境データをより精度よく集約させることが可能である。
【0080】
また、実施形態の通信システム1では、データ容量監視部17を備える。記憶部19はセンサ端末30から第2通信ネットワーク21を使用して通知される環境データを記憶する。データ容量監視部17は、記憶部19に記憶される環境データのデータ容量が所定の閾値未満となるように制御する。これにより、実施形態の通信システム1では、異常時において第2通信ネットワーク21を介して集約した環境データのデータ容量が急増した場合であっても記憶部19に記憶させるデータのデータ容量を制御することができる。したがってメモリリークなどによりデータ集約に不具合が発生することを抑制することができる。
【0081】
上述した実施形態では、サーバ装置10が、再送判定部15、データ容量監視部17、記憶部19を備える場合を例に説明したが、これに限定されることはない。再送判定部15やデータ容量監視部17、或いは記憶部19が、サーバ装置10とは異なるクラウド装置などのコンピュータ装置に設けられ、クラウド装置を介してサーバ装置10への再送や記憶させるデータを制御するようにしてもよい。また、クラウド装置のデータベースに環境データの全部又は一部が記憶されるようにしてもよい。
【0082】
また、実施形態の通信システム1では、通信制御部14は、第1通信ネットワーク20と共に第2通信ネットワーク21を介した通信を行う場合、第1通信ネットワーク20のみを使用する通信を行う場合と異なる通信頻度にて通信が行われるように制御する。これにより、実施形態の通信システム1では、平常時と異常時とで、通信頻度を変更させてデータを集約することができ、災害発生の状況に応じたデータ集約が可能である。
【0083】
また、実施形態の通信システム1では、第2通信ネットワーク21がLPWA規格におけるZETA(登録商標)に準拠する通信を行う。これにより、実施形態の通信システム1では、ZETAを利用したデータ集約を行うことができる。
【0084】
なお、上述の各実施の形態で説明した機能は、ハードウェアを用いて構成するにとどまらず、ソフトウェアを用いて各機能を記載したプログラムをコンピュータに読み込ませて実現することもできる。また、各機能は、適宜ソフトウェア、ハードウェアのいずれかを選択して構成するものであってもよい。
【0085】
上述した実施形態における通信システム1、サーバ装置10の全部または一部をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0086】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0087】
1…通信システム
10…サーバ装置
11…主回線通信部
12…サブ回線通信部
13…起動判定部
14…通信制御部
15…再送判定部
17…データ容量監視部
18…装置制御部(警報取得部)、(環境データ取得部)
19…記憶部
190…警報テーブル情報
191…環境テーブル情報
192…閾値情報
20…第1通信ネットワーク(第1通信回線)
21…第2通信ネットワーク(第2通信回線)
30…センサ端末