(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】電池システム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/02 20160101AFI20240625BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
H02J7/02 J
H02J7/00 Y
H02J7/00 X
(21)【出願番号】P 2020096973
(22)【出願日】2020-06-03
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今出 侑希
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-187027(JP,A)
【文献】特開2010-035285(JP,A)
【文献】特開2009-081958(JP,A)
【文献】国際公開第2008/026476(WO,A1)
【文献】特開2018-050400(JP,A)
【文献】国際公開第2019/123907(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0253140(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H02J 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列接続された複数の二次電池と、
前記複数の二次電池の各々の開回路電圧を用いて前記複数の二次電池に流れる電流を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記複数の二次電池の各々の前記開回路電圧のうちの最大値と最小値との
電圧差分を算出し、
連続的な充放電においては、算出された
前記電圧差分を用いて取得される指標値が大きい場合には、前記指標値が小さい場合よりも前記複数の二次電池に流れる電流を制限する
電流制限制御を実行し、
小刻みな充放電においては、第1積算値と第2積算値との差分が第1しきい値以上の場合に前記電流制限制御を実行し、
前記第1積算値は、前記複数の二次電池のうちの第1電池の発熱量と放熱量との差分の積算値であって、
前記第2積算値は、前記複数の二次電池のうちの第2電池の発熱量と放熱量との差分の積算値である、電池システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記
電圧差分の履歴を用いて算出される平均値を前記指標値として取得する、請求項1に記載の電池システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記指標値が
第2しきい値よりも高い場合には、前記指標値が前記
第2しきい値よりも低い場合よりも前記複数の二次電池に流れる電流の大きさの最大値を低下させる、請求項1または2に記載の電池システム。
【請求項4】
前記電池システムは、
前記複数の二次電池の電圧を検出する電圧検出装置と、
前記複数の二次電池に流れる電流を検出する電流検出装置とをさらに備え、
前記制御装置は、
前記電圧検出装置を用いて前記複数の二次電池の無負荷状態での電圧を取得し、
取得された前記電圧を用いて前記複数の二次電池の各々の充電状態の初期値を推定し、
前記充電状態の前記初期値と前記電流検出装置を用いて検出される電流と前記複数の二次電池の各々の電池容量とによって前記複数の二次電池の各々の前記充電状態を推定し、
推定された前記複数の二次電池の各々の前記充電状態を用いて前記複数の二次電池の各々の前記開回路電圧を算出する、請求項1~3のいずれかに記載の電池システム。
【請求項5】
前記電池システムは、予め定められた情報を報知する報知装置をさらに備え、
前記制御装置は、前記指標値が
第3しきい値よりも大きい場合には、前記報知装置を用いて前記電池システムが異常状態であることを示す情報を報知する、請求項1~4のいずれかに記載の電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、並列接続された複数の二次電池を含む電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両等に搭載される電池システムとして、たとえば、二次電池が並列接続された構成を有するものが知られている。このような構成を有する電池システムにおいては、並列接続された二次電池間での温度ばらつきや電流ばらつきが発生するため、これらのばらつきを考慮して適切な電池保護制御を行なうことが求められる。
【0003】
たとえば、特開2019-124567号公報(特許文献1)には、以下のように並列接続された複数の二次電池間の電流ばらつきの度合いを推定する技術が開示される。すなわち、並列接続された複数の二次電池のうちの高温電池および低温電池の各々について発熱および冷却を考慮して温度と相関する温度指標が算出される。そして、高温電池の温度指標から低温電池の温度指標を差し引くことによって複数の電池間の温度ばらつきの度合いが設定され、設定された温度ばらつきの度合いを用いて複数の電池間の電流ばらつきの度合いが推定される。そして、推定された電流ばらつきに応じて最大電流が設定されることによって複数の電池に流れる電流が制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような複数の二次電池が並列接続された電池システムを搭載した車両において、高速道路での高速走行が継続するような連続的な放電と、プラグイン充電が行なわれるような連続的な充電とが繰り返される場合には、複数の二次電池のうちの内部抵抗が比較的高い電池が発熱する状態になっても電流が制限されない場合がある。これは、複数の二次電池が並列接続された電池システムにおいては、充放電の開始時には、内部抵抗が比較的高い電池に一時的に電流が集中するが、充電または放電が長時間継続すると、電流差が解消するためである。そのため、内部抵抗が比較的高い電池が発熱した状態が継続し、電池の劣化が促進される可能性がある。
【0006】
本開示は、上述した課題を解決するためになされたものであって、その目的は、並列接続された複数の二次電池の劣化を抑制可能にする電池システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のある局面に係る電池システムは、並列接続された複数の二次電池と、複数の二次電池の各々の開回路電圧を用いて複数の二次電池に流れる電流を制御する制御装置とを備える。制御装置は、複数の二次電池の各々の開回路電圧のうちの最大値と最小値との差分を算出する。制御装置は、算出された差分を用いて取得される指標値が大きい場合には、指標値が小さい場合よりも複数の二次電池に流れる電流を制限する。
【0008】
このようにすると、開回路電圧の最大値と最小値との差分が大きくなるほど、複数の二次電池間の電流差が解消した状態になる。そのため、差分を用いて取得される指標値が大きい場合には、指標値が小さい場合よりも複数の二次電池に流れる電流を制限することによって、複数の二次電池のうちの内部抵抗が比較的高い電池が発熱して電池の劣化が促進する温度になることを抑制することができる。
【0009】
ある実施の形態においては、制御装置は、差分の履歴を用いて算出される平均値を指標値として取得する。
【0010】
このようにすると、平均値が大きくなるほど、複数の二次電池間の電流差が解消した状態になる。そのため、平均値が大きい場合には、平均値が小さい場合よりも複数の二次電池に流れる電流を制限することによって、複数の二次電池のうちの内部抵抗が比較的高い電池が発熱して電池の劣化が促進する温度になることを抑制することができる。
【0011】
さらにある実施の形態においては、制御装置は、指標値がしきい値よりも高い場合には、指標値がしきい値よりも低い場合よりも複数の二次電池に流れる電流の大きさの最大値を低下させる。
【0012】
このようにすると、指標値がしきい値よりも高い場合には、複数の二次電池に流れる電流の最大値が低下させられるので、複数の二次電池のうちの内部抵抗が比較的高い電池が発熱して電池の劣化が促進する温度になることを抑制することができる。
【0013】
さらにある実施の形態においては、電池システムは、複数の二次電池の電圧を検出する電圧検出装置と、複数の二次電池に流れる電流を検出する電流検出装置とをさらに備える。制御装置は、電圧検出装置を用いて複数の二次電池の無負荷状態での電圧を取得する。制御装置は、取得された電圧を用いて複数の二次電池の各々の充電状態の初期値を推定する。制御装置は、充電状態の初期値と電流検出装置を用いて検出される電流と複数の二次電池の各々の電池容量とによって複数の二次電池の各々の充電状態を推定する。制御装置は、推定された複数の二次電池の各々の充電状態を用いて複数の二次電池の各々の開回路電圧を算出する。
【0014】
このようにすると、複数の二次電池の各々の開回路電圧を精度高く算出することができるため、複数の二次電池の各々の開回路電圧を用いて取得される指標値によって複数の二次電池に流れる電流を適切に制限することができる。そのため、複数の二次電池のうちの内部抵抗が比較的高い電池が発熱して電池の劣化が促進する温度になることを抑制することができる。
【0015】
さらにある実施の形態においては、電池システムは、予め定められた情報を報知する報知装置をさらに備える。制御装置は、指標値がしきい値よりも大きい場合には、報知装置を用いて電池システムが異常状態であることを示す情報を報知する。
【0016】
このようにすると、電池システムが異常状態であることをユーザに認識させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本開示によると、並列接続された複数の二次電池の劣化を抑制可能にする電池システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施の形態に係る電池システムを搭載した車両の全体構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】本実施の形態における組電池の構成の一例を説明するための図である。
【
図3】小刻みな充放電が行なわれる場合の電流とΔOCVと電池温度の変化の一例を示すタイミングチャートである。
【
図4】小刻みな充放電が行なわれる場合の第1積算値と第2積算値との差分の変化を説明するための図である。
【
図5】組電池を構成する複数の二次電池の等価回路の一例を示す図である。
【
図6】連続的な充放電が行なわれる場合の電流とΔOCVと電池温度の変化の一例を示すタイミングチャートである。
【
図7】連続的な充放電が行なわれる場合の第1積算値と第2積算値との差分の変化を説明するための図である。
【
図8】ECUで実行される処理の一例を示すフローチャートである。
【
図9】無負荷状態の組電池に対して連続的な充電が行なわれる場合の各電池のSOCの変化の一例を説明するための図である。
【
図10】無負荷状態の組電池に対して連続的な充電が行なわれる場合の各電池のOCVの変化の一例を説明するための図である。
【
図11】ECUの動作を説明するためのタイミングチャートである。
【
図12】変形例における組電池の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0020】
以下では、この実施の形態に係る電池システムが電気自動車に搭載される例について説明する。
図1は、本実施の形態に係る電池システムを搭載した車両1の全体構成の一例を示すブロック図である。
【0021】
図1を参照して、車両1は、電池システム2と、モータジェネレータ(以下、「MG(Motor Generator)」と称する)10と、動力伝達ギヤ20と、駆動輪30とを備える。電池システム2は、電力制御ユニット(以下、「PCU(Power Control Unit)」と称する)40と、システムメインリレー(以下、「SMR(System Main Relay)」と称する)50と、組電池100と、表示装置260と、電子制御ユニット(以下、「Electronic Control Unit」と称する)300とを備える。
【0022】
MG10は、たとえば、三相交流回転電機である。MG10の出力トルクは、減速機等によって構成された動力伝達ギヤ20を介して駆動輪30に伝達される。MG10は、車両1の回生制動動作時には、駆動輪30の回転力によって発電することも可能である。なお、
図1では、MG10が1つだけ設けられる構成が示されるが、MG10の数は、1つに限定されず、MG10を複数(たとえば、2つ)設ける構成としてもよい。
【0023】
PCU40は、たとえば、インバータとコンバータと(いずれも図示せず)を含む。組電池100の放電時には、コンバータは、組電池100から供給された電圧を昇圧してインバータに供給する。インバータは、コンバータから供給された直流電力を交流電力に変換してMG10を駆動する。一方、組電池100の充電時には、インバータは、MG10によって発電された交流電力を直流電力に変換してコンバータに供給する。コンバータは、インバータから供給された電圧を降圧して組電池100に供給する。
【0024】
SMR50は、組電池100とPCU40とを結ぶ電流経路に電気的に接続されている。SMR50がECU100からの制御信号に応じて閉成されている場合、組電池100とPCU40との間で電力の授受が行なわれ得る。なお、SMR50がECU300からの制御信号に応じて開放されている場合、組電池100とPCU40との間が電気的に遮断される。
【0025】
組電池100は、再充電が可能に構成された直流電源である。組電池100は、たとえば、ニッケル水素電池あるいはリチウムイオン電池(たとえば、固体の電解質が用いられるいわゆる全固体電池や液体の電解質が用いられる電池を含む)などの二次電池のセルを蓄電要素として複数個含んで構成される。本実施の形態において、組電池100は、たとえば、複数の二次電池が並列に接続されて構成される。
【0026】
図2は、本実施の形態における組電池100の構成の一例を説明するための図である。
図2に示すように、組電池100は、たとえば、複数の二次電池102,104が並列に接続された電池ブロックを含む。
【0027】
本実施の形態においては、組電池100を構成する二次電池102,104のうちの二次電池102を二次電池104よりも内部抵抗が高い高抵抗電池であるものとし、二次電池104を低抵抗電池であるものとする。
【0028】
表示装置260は、たとえば、車両1の室内の着座した運転者が視認可能な位置に設けられる。表示装置260は、たとえば、液晶ディスプレイ、あるいは、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等によって構成される。表示装置260は、ECU300からの制御信号(たとえば、警告信号等)に応じて所定の情報を表示する。
【0029】
ECU300には、電圧センサ210と、電流センサ220と、電池温度センサ230とが接続される。
【0030】
電圧センサ210は、組電池100の電圧Vbを検出する。電流センサ220は、組電池100に入出力される電流Ibを検出する。電池温度センサ230は、二次電池102の温度Tb1と、二次電池104の温度Tb2とを検出する。各センサは、その検出結果をECU300へ出力するように構成される。
【0031】
ECU300は、CPU(Central Processing Unit)301と、メモリ302とを含んで構成される。メモリ302は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、および書き換え可能な不揮発性メモリを含む。メモリ302(たとえば、ROM)に記憶されているプログラムをCPU301が実行することで、各種制御が実行される。ECU300は、たとえば、各センサから受ける信号、並びにメモリ302に記憶されたマップおよびプログラムに基づいて、車両1が所望の状態となるように各機器の動作(より具体的には、組電池100の充放電)を制御する。なお、ECU300が行なう各種制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で処理することも可能である。
【0032】
以上のような構成を有する電池システム2においては、並列接続された二次電池102,104間での温度ばらつきや電流ばらつきが発生するため、これらのばらつきを考慮して適切な電池保護制御を行なうことが求められる。
【0033】
図3は、小刻みな充放電が行なわれる場合の電流とΔOCVと電池温度の変化の一例を示すタイミングチャートである。小刻みな充放電とは、たとえば、短期的な充電(たとえば、30秒以下の充電)と短期的な放電(たとえば、30秒以下の放電)とが交互に繰り返し行なわれる充放電状態を示し、車両1が市街地走行する場合の充放電パターンに相当する。ΔOCVは、二次電池102の開回路電圧(Open Circuit Voltage)OCV
1と、二次電池104の開回路電圧OCV
2との差分(OCV
2-OCV
1)を示す。
【0034】
図3のLN1は、組電池100に流れる電流の変化を示す。
図3のLN2(破線)は、二次電池102(高抵抗電池)に流れる電流の変化を示す。
図3のLN3(実線)は、二次電池104(低抵抗電池)に流れる電流の変化を示す。
図3のLN4は、ΔOCVの変化を示す。
図3のLN5(細線)は、二次電池102(高抵抗電池)の温度の変化を示す。
図3のLN6(太線)は、二次電池104(低抵抗電池)の温度の変化を示す。なお、二次電池102,104の温度の初期値は、たとえば、いずれも60℃であるものとする。
【0035】
図3のLN1に示すように、組電池100に対して小刻みな充放電が行なわれる場合を想定する。このとき、
図3のLN2およびLN3に示すように、充電が開始された時点(たとえば、時間T(0))から放電に切り替わる時点(たとえば、時間T(1))までの間においては、電流が低抵抗電池に集中する。そのため、低抵抗電池に流れる電流の大きさが高抵抗電池に流れる電流の大きさよりも大きくなる。
【0036】
一方、放電が開始された時点(たとえば、時間T(1))から次に充電に切り替わる時点までの間においても、電流が低抵抗電池に集中する。そのため、低抵抗電池に流れる電流の大きさが高抵抗電池に流れる電流の大きさよりも大きくなる。
【0037】
低抵抗電池に電流が集中するため、組電池100の充電中においては、低抵抗電池のOCVの基準値(たとえば、無負荷時)からの上昇量が高抵抗電池のOCVの基準値からの上昇量よりも大きくなるとともに、ΔOCVが増加していく。一方、組電池100の放電中においては、ΔOCVが減少するため、ΔOCVは、
図3のLN4に示すように、充電時に増加し、放電時に減少する変化を繰り返す。
【0038】
低抵抗電池に電流が集中した状態が継続するため、低抵抗電池の温度(
図3のLN6)は、高抵抗電池の温度(
図3のLN5)よりも高い状態が継続し、かつ、温度差が拡大していく。その結果、低抵抗電池の劣化が促進する場合がある。
【0039】
このような低抵抗電池の劣化を抑制するため、たとえば、二次電池102における発熱量と放熱量との差分の積算値(以下、第1積算値と記載する)と、二次電池104における発熱量と放熱量との差分の積算値(以下、第2積算値と記載する)との差を算出し、算出された第1積算値と第2積算値との差を用いて電流を制限することが可能となる。なお、電池の発熱量は、たとえば、二次電池102,104に流れる電流等を用いて算出される。電池の放熱量は、たとえば、冷却装置(図示せず)の作動量等を用いて算出される。発熱量および放熱量の算出については、公知の技術を用いればよくその詳細な説明はここでは行なわない。
【0040】
図4は、小刻みな充放電が行なわれる場合の第1積算値と第2積算値との差の変化を説明するための図である。
図4のLN7は、組電池100に流れる電流の変化を示し、
図3のLN1に示す電流の変化に相当する。
図4のLN8は、第1積算値と第2積算値との差の大きさの変化を示す。
図4のLN9(細線)は、二次電池102(高抵抗電池)の温度の変化を示し、
図3のLN5に示す温度の変化に相当する。
図4のLN10(太線)は、二次電池104(低抵抗電池)の温度の変化を示し、
図3のLN6に示す温度の変化に相当する。
【0041】
図4のLN7に示すように、組電池100に対して小刻みな充放電が行なわれる場合、上述したとおり、低抵抗電池に電流が集中するため、低抵抗電池の温度(
図4のLN10)が高抵抗電池の温度(
図4のLN9)よりも高い状態が継続し、かつ、温度差が拡大していく。
【0042】
第1積算値と第2積算値との差の大きさは、
図4のLN8に示すように、温度差の拡大に対応して増加していく。そのため、たとえば、第1積算値と第2積算値との差の大きさがしきい値A以上である場合に、最大電流を低下させる電流制限制御を実行することによって、
図4の時間T(2)以降において、二次電池104の温度が上昇することを抑制することが可能となる。
【0043】
しかしながら、上述のような複数の二次電池102,104が並列接続された電池システム2において、たとえば、連続的な充放電が行なわれる場合には、第1積算値と第2積算値との差を用いた電流制限制御を適切に実行できず、組電池100を構成する一部の二次電池の温度が、劣化が促進する程度に上昇する場合がある。ここで、連続的な充放電とは、たとえば、高速道路での高速走行が継続するような長期的な放電(たとえば、200秒以上の放電)と、プラグイン充電が行なわれるような長期的な充電(たとえば、200秒以上の充電)とが交互に繰り返し行なわれる充放電状態を示す。
【0044】
連続的な充放電が行なわれる場合、充放電の開始した時点から一定時間が経過するまでは、低抵抗電池に電流が一時的に集中するものの、その後に二次電池102,104間での電流差が解消する場合がある。その結果、高抵抗電池の温度の方が低抵抗電池の温度よりも高い状態が継続し、かつ、温度差が拡大していく。その結果、高抵抗電池の劣化が促進する場合がある。
【0045】
図5は、組電池100を構成する複数の二次電池102,104の等価回路の一例を示す図である。
図5に示すように、二次電池102は、電圧源102aと、内部抵抗102bとを含む。さらに二次電池104は、電圧源104aと、内部抵抗104bとを含む。電圧源102aおよび電圧源104aは、いずれも同一の電圧を示す。内部抵抗102bの抵抗値は、内部抵抗104bの抵抗値よりも高い。
【0046】
このように構成される組電池100において、たとえば、連続的な充電が行なわれる場合には、充電が開始された直後においては、低抵抗電池に電流が一時的に集中して流れる。一方、連続的な充電が行なわれると、低抵抗電池のOCV2が高抵抗電池のOCV1よりも大きくなり、ΔOCVが拡大する。ΔOCVが拡大するとともに、低抵抗電池への電流の集中が軽減され、低抵抗電池と高抵抗電池との間の電流差が解消される。
【0047】
図6は、連続的な充放電が行なわれる場合の電流とΔOCVと電池温度の変化の一例を示すタイミングチャートである。
【0048】
図6のLN11は、組電池100に流れる電流の変化を示す。
図6のLN12(破線)は、二次電池102(高抵抗電池)に流れる電流の変化を示す。
図6のLN13(実線)は、二次電池104(低抵抗電池)に流れる電流の変化を示す。
図6のLN14は、ΔOCVの変化を示す。
図6のLN15(細線)は、二次電池102(高抵抗電池)の温度の変化を示す。
図6のLN16(太線)は、二次電池104(低抵抗電池)の温度の変化を示す。なお、二次電池102,104の温度の初期値は、たとえば、いずれも60℃であるものとする。
【0049】
図6のLN11に示すように、組電池100に対して連続的な充放電が行なわれる場合を想定する。このとき、
図6のLN12およびLN13に示すように、充電が開始された時点(たとえば、時間T(3))から一定時間が経過する時点(たとえば、時間T(4))までの間においては、低抵抗電池に流れる電流の大きさが高抵抗電池に流れる電流の大きさよりも大きくなるとともに、ΔOCVが増加していく。このとき、低抵抗電池に流れる電流の大きさは、時間が経過するほど低下していき、高抵抗電池に流れる電流の大きさは、時間が経過するほど増加していく。そして、充電が開始された時点から一定時間が経過した時点において、低抵抗電池に流れる電流と、高抵抗電池に流れる電流とが同程度になる。低抵抗電池と高抵抗電池との間における電流差が解消することによって、内部抵抗が高い分だけ高抵抗電池における発熱量が低抵抗電池における発熱量よりも高くなる。そのため、一定時間が経過した時点から次に放電に切り替わる時点(たとえば、時間T(4))までの間においては、高抵抗電池の温度(
図6のLN15)の上昇量が低抵抗電池の温度(
図6のLN16)の上昇量よりも大きくなる。
【0050】
一方、放電が開始された時点から一定時間が経過する時点までの間においては、低抵抗電池に流れる電流の大きさが高抵抗電池に流れる電流の大きさよりも大きくなるとともに、ΔOCVが減少していく。このとき、低抵抗電池に流れる電流の大きさは、時間が経過するほど低下していき、高抵抗電池に流れる電流の大きさは、時間が経過するほど増加していく。そして、放電が開始された時点から一定時間が経過した時点において、低抵抗電池と高抵抗電池との間における電流差が解消することによって、高抵抗電池における発熱量が低抵抗電池における発熱量よりも高くなる。そのため、一定時間が経過した時点から次に充電に切り替わる時点までの間においては、高抵抗電池の温度の上昇量が低抵抗電池の温度の上昇量よりも大きくなる。
【0051】
このとき、小刻みな充放電が行なわれる場合と同様に、第1積算値と第2積算値との差を用いて電流制限を行なう場合、適切に電流制限が行なわれない場合がある。
【0052】
図7は、連続的な充放電が行なわれる場合の第1積算値と第2積算値との差分の変化を説明するための図である。
図7のLN17は、組電池100に流れる電流の変化を示し、
図6のLN11に示す電流の変化に相当する。
図7のLN18は、第1積算値と第2積算値との差の大きさの変化を示す。
図7のLN19(細線)は、高抵抗電池の温度の変化を示し、
図6のLN15に示す温度の変化に相当する。
図7のLN20は、低抵抗電池の温度の変化を示し、
図6のLN16に示す温度の変化に相当する。
【0053】
図7のLN17に示すように、組電池100に対して連続的な充放電が行なわれる場合、電流差が解消された状態が継続することによって、高抵抗電池の温度(
図7のLN19)が低抵抗電池の温度(
図7のLN20)よりも高い状態が継続し、かつ、温度差が拡大していく。
【0054】
しかしながら、第1積算値と第2積算値との差の大きさは、
図7のLN18に示すように、温度差の拡大に対応して増加していくが、電流差が解消することによって、上述のしきい値Aよりも低い状態が持続する。その結果、電流制限制御が実行されないため、高抵抗電池の温度上昇が継続することになる。その結果、高抵抗電池の劣化が促進する場合がある。
【0055】
そこで、本実施の形態においては、ECU300が、複数の二次電池の各々のOCVのうちの最大値と最小値との差分(ΔOCV)を用いて指標値を取得し、取得された指標値が大きい場合には、指標値が小さい場合よりも複数の二次電池に流れる電流を制限するものとする。より具体的には、ECU300は、ΔOCVの履歴を用いて算出される平均値を指標値として取得する。また、ECU300は、指標値がしきい値よりも高い場合には、指標値がしきい値よりも低い場合よりも複数の二次電池に流れる電流の大きさの最大値を低下させる。
【0056】
このようにすると、ΔOCVが大きくなるほど、複数の二次電池間の電流差が解消した状態になる。そのため、ΔOCVを用いて取得される指標値が大きい場合には、指標値が小さい場合よりも複数の二次電池に流れる電流を制限することによって、複数の二次電池のうちの高抵抗電池が発熱して電池の劣化が促進する温度になることを抑制することができる。
【0057】
以下、
図8を参照して、ECU300で実行される処理について説明する。
図8は、ECU300で実行される処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、
図1に示したECU300により所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0058】
ステップ(以下、ステップをSと記載する)100にて、ECU300は、組電池100の電流を取得する。ECU300は、たとえば、電流センサ220を用いて組電池100に流れる電流Ibを取得する。
【0059】
S102にて、ECU300は、各電池の電流を算出する。ECU300は、たとえば、以下の式(1)および式(2)を用いて二次電池102,104の各々に流れる電流I1,I2を算出する。
【0060】
【0061】
式(1)および式(2)中の「k」は、演算ステップを示す。「OCV1」および「OCV2」の初期値(すなわち、OCV1[0]およびOCV2[0])は、無負荷状態の電圧を示す。「R1」および「R2」は、予め取得された二次電池102,104の内部抵抗をそれぞれ示す。「R1」および「R2」は、たとえば、二次電池102,104の製造段階や組電池100を組み立てる際(再生バッテリとして組み立てる場合を含む。以下、製造段階等と記載する)において測定されてもよい。また、OCV1[0]およびOCV2[0]は、たとえば、二次電池102,104の製造段階等において測定されてもよいし、あるいは、SMR50が遮断状態である場合や、組電池100の充放電が行なわれていない状態である場合に、電圧センサ210を用いて検出されてもよい。
【0062】
S104にて、ECU300は、各電池のSOCを算出する。ECU300は、たとえば、以下の式(3)および式(4)を用いて二次電池102のSOC1と、二次電池104のSOC2とを算出する。
【0063】
【0064】
式(3)および式(4)中の「k」は、演算ステップを示す。「Δt」は制御周期を示す。SOC1およびSOC2の初期値(すなわち、SOC1[0]およびSOC2[0])は、たとえば、OCV1[0]およびOCV2[0]と、OCVとSOCとの関係を示すテーブルとを用いてそれぞれ算出される。OCVとSOCとの関係を示すテーブルは、たとえば、予め実験等によって適合され、ECU300のメモリ302に予め記憶される。
【0065】
「Cap1」および「Cap2」は、それぞれ二次電池102,104の電池容量を示す。電池容量Cap1,Cap2の初期値としては、たとえば、満充電容量に相当する予め定められた値が設定される。電池容量Cap1,Cap2の初期値としては、たとえば、二次電池102,104の製造段階等において測定されてもよい。なお、ECU300は、組電池100に対する長時間の充電(たとえば、プラグイン充電)が行なわれる場合には、充電前後の電圧から充電前後のSOCを算出し、算出されたSOCの差分ΔSOCを算出する。そして、算出されたΔSOCに対応する充電量から、満充電状態(SOCが100%)に相当する電力量を電池容量として算出する。
【0066】
S106にて、ECU300は、各電池のOCVを算出する。ECU300は、算出された各電池のSOCを用いて二次電池102のOCV1および二次電池104のOCV2を算出する。ECU300は、たとえば、算出された各電池のSOC1,SOC2と、OCVとSOCとの関係を示すテーブルとを用いて二次電池102のOCV1と二次電池104のOCV2とを算出する。
【0067】
S108にて、ECU300は、ΔOCVを算出する。ECU300は、OCV2からをOCV1減算することによってΔOCVを算出する。
【0068】
S110にて、ECU300は、ΔOCVの平均値Aveを算出する。ECU300は、ΔOCVの履歴を用いて平均値Aveを算出する。ECU300は、たとえば、算出されたΔOCVと、直前の予め定められた期間におけるΔOCVの履歴とを用いて指数平滑移動平均(EMA:Exponentially smoothed Moving Average)により平均値Aveを算出する。指数平滑移動平均は、ΔOCVの履歴の各々に設定される重み係数を古い履歴ほど指数関数的に減少させるものである。重みの減少度合いは、たとえば、平滑化係数αとして設定される。平滑化係数αは、0と1との間の値を示す。指数平滑移動平均は、たとえば、Ave[k]=Ave[k-1]+α(ΔOCV[k]-Ave[k-1])の式を用いて算出される。なお、指数平滑移動平均による平均値Aveの算出方法や平滑化係数αの設定方法としては公知であるため、その詳細な説明はここでは行なわない。
【0069】
S112にて、ECU300は、算出された平均値Aveが第1範囲を超えているか否かを判定する。第1範囲は、ユーザに対する警告報知を行なうか否かを判定するための値であって、上限値Ave(0)から下限値Ave(2)までの範囲を含む。第1範囲は、たとえば、実験等によって適合される。ECU300は、たとえば、算出された平均値Aveが上限値Ave(0)を超えていたり、あるいは、下限値Ave(2)を下回ったりする場合に、第1範囲を超えていると判定する。算出された平均値Aveが第1範囲を超えていると判定される場合(S112にてYES)、処理はS114に移される。
【0070】
S114にて、ECU300は、算出された平均値Aveが第2範囲を超えているか否かを判定する。第2範囲は、電流制限制御を実行するための値であって、上限値Ave(1)(>Ave(0))から下限値Ave(3)(<Ave(2))までの範囲を含む。第2範囲は、たとえば、実験等によって適合される。ECU300は、たとえば、算出された平均値Aveが上限値Ave(1)を超えていたり、あるいは、下限値Ave(3)を下回ったりする場合に、第2範囲を超えていると判定する。算出された平均値Aveが第2範囲を超えていると判定される場合(S114にてYES)、処理はS116に移される。
【0071】
S116にて、ECU300は、電流制限制御を実行する。ECU300は、たとえば、電流の大きさの最大値を示す最大電流Imaxを設定して、設定された最大電流Imaxを超えないようにPCU40を制御する。ECU300は、組電池100の状態に基づいて設定される許可電流Iaに、ΔOCVを含む組電池100の状態に基づいて設定される補正係数Cを乗算することによって最大電流Imaxを算出する。
【0072】
ECU300は、たとえば、組電池100の温度と、組電池100のSOCとを用いて許可電流Iaを設定する。ECU300は、たとえば、温度とSOCと許可電流との関係を示すテーブルやマップあるいは数式を用いて組電池100の温度と、組電池100のSOCとから許可電流Iaを算出する。上述したようなテーブルやマップあるいは数式は、たとえば、ECU300のメモリ302に予め記憶される。温度とSOCと許可電流との関係は、たとえば、温度が常温(たとえば、15℃~25℃)に近づくほど許可電流Iaが高くなり、温度が常温から離れるほど許可電流Iaが低くなる関係を含む。さらに、温度とSOCと許可電流との関係は、たとえば、SOCが制御中心に近づくほど許可電流Iaが大きくなり、SOCが制御中心から離れるほど許可電流Iaが小さくなる関係を含む。
【0073】
ECU300は、たとえば、二次電池102の温度Tb1と、二次電池104の温度Tb2のうちのいずれか一方を組電池100の温度として設定してもよいし、温度Tb1と温度Tb2との平均値を組電池100の温度として設定してもよい。さらに、ECU300は、たとえば、二次電池102のSOC1と二次電池104のSOC2とのうちのいずれか一方を組電池100のSOCとして設定してもよいし、SOC1とSOC2との平均値を組電池100のSOCとして設定してもよい。
【0074】
さらに、ECU300は、ΔOCVと、組電池100の温度と、組電池100のSOCとを用いて補正係数Cを設定する。補正係数Cは、0よりも大きく、かつ、1よりも小さい値を示す。ECU300は、たとえば、ΔOCVと温度とSOCと補正係数Cとの関係を示すテーブルやマップあるいは数式を用いてΔOCVと、組電池100の温度と、組電池100のSOCとから補正係数Cを設定する。上述したようなテーブルやマップあるいは数式は、たとえば、ECU300のメモリ302に予め記憶される。ΔOCVと温度とSOCと補正係数との関係は、たとえば、ΔOCVの大きさが増加するほど補正係数が低下し、ΔOCVの大きさが減少するほど補正係数が増加する関係を含む。さらに、ΔOCVと温度とSOCと補正係数との関係は、たとえば、温度が常温に近づくほど補正係数が増加し、温度が常温から離れるほど補正係数が低下する関係を含む。さらに、ΔOCVと温度とSOCと補正係数との関係は、たとえば、SOCが制御中心に近づくほど補正係数Cが増加し、SOCが制御中心から離れるほど補正係数Cが減少する関係を含む。
【0075】
ECU300は、たとえば、複数の二次電池102,104のうちの最小温度を組電池100の温度として設定する。ECU300は、組電池100の充電時においては、複数の二次電池102,104のうちの最大SOCを組電池100のSOCとして設定する。また、ECU300は、組電池100の放電時においては、複数の二次電池102,104のうちの最小SOCを組電池100のSOCとして設定する。
【0076】
なお、平均値Aveが第2範囲を超えていないと判定される場合(S114にてNO)、処理はS118に移される。
【0077】
S118にて、ECU300は、警告信号を表示装置260に出力する。警告信号は、たとえば、電池システム2が異常状態であることを示す情報を表示装置260に表示するための制御信号を含む。また、平均値Aveが第1範囲を超えてないと判定される場合(S112にてNO)、処理はS120に移される。
【0078】
S120にて、ECU300は、通常電流制御を実行する。具体的には、ECU300は、最大電流として予め定められた値を設定し、設定された最大電流を超えないようにPCU40を制御する。通常電流制御における最大電流は、たとえば、電流制限制御で設定され得る最大電流よりも高い値となる。さらに通常電流制御においては、たとえば、予め定められた時間当たりの変化量に予め定められた上限値が設定されるものとする。
【0079】
以上のような構造およびフローチャートに基づく本実施の形態に係る電池システム2に含まれるECU300の動作について
図9、
図10および
図11を参照しつつ説明する。
【0080】
たとえば、組電池100において、連続的な充電が行なわれる場合を想定する。この場合、組電池100に流れる電流が取得され(S100)、取得された組電池100の電流に基づいて各電池(二次電池102,104)の電流I1およびI2が算出される(S102)。算出された各電池の電流に基づいて各電池のSOC1およびSOC2が算出される(S104)。そして、算出された各電池のSOC1およびSOC2に基づいて各電池のOCV1およびOCV2が算出される(S106)。
【0081】
図9は、無負荷状態の組電池100に対して連続的な充電が行なわれる場合の各電池のSOCの変化の一例を説明するための図である。
図9の横軸は、時間を示す。
図9の縦軸は、SOCを示す。
図9の破線は、高抵抗電池である二次電池102のSOCの変化を示す。
図9の実線は、低抵抗電池である二次電池104のSOCの変化を示す。
【0082】
さらに、
図10は、無負荷状態の組電池100に対して連続的な充電が行なわれる場合の各電池のOCVの変化の一例を説明するための図である。
図10の横軸は、時間を示す。
図10の縦軸は、
OCVを示す。
図10の破線は、高抵抗電池である二次電池102のOCVの変化を示す。
図10の実線は、低抵抗電池である二次電池104の
OCVの変化を示す。
【0083】
連続的な充電が開始される場合には、
図9に示すように、充電開始後の一定時間においては、低抵抗電池に電流が集中するため、低抵抗電池のSOC
2の単位時間当たりの増加量(
図9の実線の傾き)が高抵抗電池のSOC
1の単位時間当たりの増加量(
図9の破線の傾き)よりも大きくなる。そのため、
図10に示すように、充電開始後の一定時間においては、低抵抗電池のOCV
2の単位時間当たりの増加量(
図10の実線の傾き)が高抵抗電池のOCV
1の単位時間当たりの増加量(
図10の破線の傾き)よりも大きくなる。
【0084】
そして、充電が開始されてから一定時間が経過した後においては、低抵抗電池と高抵抗電池とで電流差が解消される。そのため、
図9および
図10に示すように、低抵抗電池と高抵抗電池との間において、SOCの単位時間当たりの増加量もOCVの単位時間当たりの増加量も同程度になる。
【0085】
連続的な放電が行なわれる場合には、充電時とは逆にSOC1、SOC2、OCV1およびOCV2が減少するように変化し、放電開始後の一定時間においては、低抵抗電池のSOC2の単位時間当たりの減少量が高抵抗電池のSOC1の単位時間当たりの減少量よりも大きくなる。そのため、放電開始後の一定時間においては、低抵抗電池のOCV2の単位時間当たりの減少量が高抵抗電池のOCV1の単位時間当たりの減少量よりも大きくなる。そして、放電が開始されてから一定時間が経過した後においては、低抵抗電池と高抵抗電池とで電流差が解消される。そのため、低抵抗電池と高抵抗電池との間において、SOCの単位時間当たりの減少量もOCVの単位時間当たりの減少量も同程度になる。
【0086】
二次電池102,104のOCV1およびOCV2が算出されると、OCV2からOCV1を減算することによってΔOCVが算出される(S108)。そして、算出されたΔOCVの履歴を用いて平均値Aveが算出される(S110)。
【0087】
図11は、ECU300の動作を説明するためのタイミングチャートである。
図11のLN21は、組電池100に流れる電流の変化を示す。
図11のLN22(破線)は、二次電池102(高抵抗電池)に流れる電流の変化を示す。
図11のLN23(実線)は、二次電池104(低抵抗電池)に流れる電流の変化を示す。
図11のLN24は、ΔOCVの変化を示す。
図11のLN25(細線)は、二次電池102(高抵抗電池)の温度の変化を示す。
図11のLN26(太線)は、二次電池104(低抵抗電池)の温度の変化を示す。
【0088】
図11のLN21に示すように、組電池100に対して連続的な充放電が行なわれる場合を想定する。
図11のLN22およびLN23に示すように、たとえば、時間T(5)にて充電が開始されると、通常電流制御において、予め定められた時間当たりの変化量に上限値が設定されているため、時間T(5)と時間T(6)との間において二段階で充電電流が増加する。時間T(6)から一定時間が経過するまでの間においては、低抵抗電池に流れる電流の大きさが高抵抗電池に流れる電流の大きさよりも大きくなるとともに、ΔOCVが増加していく。このとき、低抵抗電池に流れる電流の大きさは、時間が経過するほど低下していき、高抵抗電池に流れる電流の大きさは、時間が経過するほど増加していく。そして、時間T(6)から一定時間が経過した時点において、低抵抗電池に流れる電流と、高抵抗電池に流れる電流とが同程度になる。このようにして、低抵抗電池と高抵抗電池との間における電流差が解消する一方で、
図11のLN24に示すように、ΔOCVが増加し、
図11のLN24に示すように、時間T(7)にて、平均値Aveがしきい値Ave(0)よりも大きくなり(S112にてYES)、かつ、しきい値Ave(1)以下のときに(S114にてNO)、警告信号が出力されることで(S118)、電池システム2が異常状態である旨の警報がユーザに報知される。そして、時間T(8)にて、ΔOCVの平均値Aveがしきい値Ave(1)よりも大きくなると(S114にてYES)、電流制限制御が実行される(S116)。電流制限制御が実行されることによって、
図11のLN21に示すように最大電流が制限されることによって、
図11のLN25およびLN26に示すように、高抵抗電池の温度上昇が抑制されるため、高抵抗電池と低抵抗電池の温度差の拡大が抑制される。
【0089】
一方、
図11のLN22およびLN23に示すように、たとえば、時間T(9)にて放電が開始されると、ΔOCVが第1範囲内であるため(S112にてNO)、通常電流制御が実行されており(S120)、予め定められた時間当たりの変化量に上限値が設定されている。そのため、時間T(9)と時間T(10)との間において二段階で放電電流が増加する。時間T(10)から一定時間が経過するまでの間においては、低抵抗電池に流れる電流の大きさが高抵抗電池に流れる電流の大きさよりも大きくなるとともに、ΔOCVが低下していく。このとき、低抵抗電池に流れる電流の大きさは、時間が経過するほど低下していき、高抵抗電池に流れる電流の大きさは、時間が経過するほど増加していく。そして、時間T(10)から一定時間が経過した時点において、低抵抗電池に流れる電流と、高抵抗電池に流れる電流とが同程度になる。このようにして、低抵抗電池と高抵抗電池との間における電流差が解消する一方で、
図11のLN24に示すように、ΔOCVが低下し、
図11のLN24に示すように、時間T(11)にて、平均値Aveがしきい値Ave(2)よりも小さくなり(S112にてYES)、かつ、しきい値Ave(3)以上のときに(S114にてNO)、警告信号が出力されることで(S118)、電池システム2が異常状態である旨の警報がユーザに報知される。そして、時間T(12)にて、ΔOCVの平均値Aveがしきい値Ave(3)よりも小さくなると(S114にてYES)、電流制限制御が実行される(S116)。電流制限制御が実行されることによって、
図11のLN21に示すように時間T(12)にて、最大電流が制限され、
図11のLN25およびLN26に示すように、高抵抗電池の温度上昇が抑制される。そのため、高抵抗電池と低抵抗電池の温度差の拡大が抑制される。
【0090】
以上のようにして、本実施の形態に係る電池システム2を搭載する電気自動車においては、高速走行やプラグイン充電が繰り返されるような連続的な充放電が行なわれる場合に、ΔOCVが大きくなるほど、複数の二次電池間の電流差が解消した状態になり、高抵抗電池の温度が上昇し、高抵抗電池と低抵抗電池の温度差が拡大する場合がある。そのため、ΔOCVを用いて取得される指標値である平均値Aveが大きい場合には、平均値Aveが小さい場合よりも複数の二次電池に流れる電流が制限されるように電流制限制御が実行されることによって、複数の二次電池のうちの高抵抗電池が発熱して電池の劣化が促進する温度になることを抑制することができる。したがって、並列接続された複数の二次電池の劣化を抑制可能にする電池システムを提供することができる。
【0091】
さらに式(1)~(4)を用いることによって、複数の二次電池の各々のOCVを精度高く算出することができるため、複数の二次電池の各々のOCVを用いて取得される指標値であるΔOCVの平均値Aveによって複数の二次電池に流れる電流を適切に制限することができる。そのため、複数の二次電池のうちの内部抵抗が比較的高い電池が発熱して電池の劣化が促進する温度になることを抑制することができる。
【0092】
さらに許可電流Iaと補正係数Cとを用いて複数の二次電池に流れる電流の最大電流Imaxを適切に設定することができるため、複数の二次電池のうちの内部抵抗が比較的高い電池が発熱して電池の劣化が促進する温度になることを抑制することができる。
【0093】
さらに指標値である平均値Aveが第1範囲を超えている場合には、表示装置260を用いて電池システム2が異常状態であることを示す情報が報知されるので、電池システム2が異常状態であることをユーザに認識させることができる。
【0094】
以下、変形例について記載する。
【0095】
本実施の形態においては、車両1として電気自動車を一例として説明したが、並列に接続された組電池を搭載した車両であればよく、特に電気自動車に限定されるものではなく、たとえば、駆動用モータジェネレータと、動力源としてのエンジンとを搭載したハイブリッド車両であってもよい。
【0096】
さらに本実施の形態においては、ΔOCVの平均値Aveが第2範囲を超えている場合に電流制限制御を実行するものとして説明したが、たとえば、連続的な充放電が行なわれているか否かを判定し、連続的な充放電が行なわれており、かつ、ΔOCVの平均値Aveが第2範囲を超えている場合に、電流制限制御を実行してもよい。さらに、小刻みな充放電が行なわれている場合には、第1積算値と第2積算値との差分がしきい値以上であるときに電流制限制御を実行するようにしてもよい。
【0097】
さらに本実施の形態においては、ΔOCVの履歴を用いた指数平滑移動平均による平均値を指標値として算出するものとして説明したが、特にこれに限定されるものではなく、たとえば、ΔOCVの履歴を用いた単純移動平均あるいは加重移動平均による平均値を指標として算出してもよい。
【0098】
さらに本実施の形態においては、組電池100が二次電池102,104によって構成される場合を一例として説明したが、並列接続される二次電池の個数は、特に2つに限定されるものではなく、3つ以上であってもよい。この場合、並列接続される二次電池のうちのOCVの最大値と、最小値とを用いてΔOCVが算出される。さらに、並列接続された電池ブロックの個数は、特に1つに限定されるものではなく、2つ以上であってもよい。この場合、電池ブロック毎にΔOCVが算出され、いずれかの電池ブロックのΔOCVが第2範囲を超える場合に電流制限制御が実行される。
【0099】
図12は、変形例における組電池100の構成の一例を示す図である。
図12に示すように、組電池100は、N個の二次電池が並列に接続された電池ブロック100-1がM個直列に接続される構成であってもよい。この場合、電池ブロック100-1~100-Mの各々の電圧が電圧センサ210-1~210-Mによって検出され、検出結果がECU300に送信される。
【0100】
このように構成される場合、ECU300は、組電池100を構成する二次電池の各々のOCVを算出する。ECU300は、たとえば、いずれかの電池ブロックに含まれる複数の二次電池のうちのOCVの最大値と最小値とを用いてΔOCVを算出する。このようにして、ECU300は、電池ブロック100-1~100-Mの各々のΔOCVを算出する。
【0101】
ECU300は、電池ブロック100-1~100-Mの各々において算出された複数のΔOCVのうちの少なくともいずれかが第1範囲を超える場合に警告信号を出力する。また、ECU300は、電池ブロック100-1~100-Mの各々において算出された複数のΔOCVのうちの少なくともいずれかが第2範囲を超える場合に電流制限制御を実行する。このようにしても、複数の二次電池のうちの高抵抗電池が発熱して電池の劣化が促進する温度になることを抑制することができる。
【0102】
なお、上記した変形例は、その全部または一部を適宜組み合わせて実施してもよい。
【0103】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0104】
1 車両、2 電池システム、10 MG、20 動力伝達ギヤ、30 駆動輪、40 PCU、50 SMR、100 組電池、102,104 二次電池、102a,104a 電圧源、102b,104b 内部抵抗、210 電圧センサ、220 電流センサ、230 電池温度センサ、260 表示装置、300 ECU、301 CPU、302 メモリ。