IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コニカミノルタ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-画像形成装置、および画像形成方法 図1
  • 特許-画像形成装置、および画像形成方法 図2
  • 特許-画像形成装置、および画像形成方法 図3
  • 特許-画像形成装置、および画像形成方法 図4
  • 特許-画像形成装置、および画像形成方法 図5
  • 特許-画像形成装置、および画像形成方法 図6
  • 特許-画像形成装置、および画像形成方法 図7
  • 特許-画像形成装置、および画像形成方法 図8
  • 特許-画像形成装置、および画像形成方法 図9
  • 特許-画像形成装置、および画像形成方法 図10
  • 特許-画像形成装置、および画像形成方法 図11
  • 特許-画像形成装置、および画像形成方法 図12
  • 特許-画像形成装置、および画像形成方法 図13
  • 特許-画像形成装置、および画像形成方法 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】画像形成装置、および画像形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
G03G21/00 370
G03G21/00 318
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020103518
(22)【出願日】2020-06-16
(65)【公開番号】P2021196523
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山中 大樹
【審査官】小池 俊次
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-226181(JP,A)
【文献】特開2018-156023(JP,A)
【文献】特開2020-013028(JP,A)
【文献】特開2008-107398(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナーの極性と同極性に帯電される感光体と、
前記感光体の表面に静電潜像を形成するための露光を行う露光装置と、
前記静電潜像が形成された前記感光体の表面に帯電したトナーを供給する現像装置と、
前記帯電したトナーによるトナー画像を担持するための像担持面を有する像担持体と、
シート状の媒体を介して前記帯電したトナーに対する逆極性の電荷を印加することにより、前記像担持面上のトナー画像を前記シート状の媒体に転写する転写装置と、
前記媒体に転写されずに前記像担持面に残った残留トナーをクリーニングブレードでそぎ取って除去するクリーニング装置と、
前記媒体に前記トナー画像を転写する直前の前記像担持面に対して、前記帯電したトナーに対する逆極性の電荷を放電する放電装置と、
前記像担持面における前記残留トナーの量に基づいて、微露光を実施する領域を設定する微露光領域設定部と、
前記残留トナーの量に基づいて前記放電装置の放電電圧を設定する放電電圧設定部とを備え、
前記露光装置は、前記静電潜像に対する前記トナーの付着によって前記感光体の表面に前記トナー画像を形成するための通常露光と、前記通常露光よりも露光強度の低い前記微露光とを実施し、前記微露光領域設定部での設定にしたがって前記微露光を実施する
画像形成装置。
【請求項2】
帯電したトナーによるトナー画像を担持するための像担持面を有する像担持体と、
シート状の媒体を介して前記帯電したトナーに対する逆極性の電荷を印加することにより、前記像担持面上のトナー画像を前記シート状の媒体に転写する転写装置と、
前記媒体に転写されずに前記像担持面に残った残留トナーをクリーニングブレードでそぎ取って除去するクリーニング装置と、
前記媒体に前記トナー画像を転写する直前の前記像担持面に対して、前記帯電したトナーに対する逆極性の電荷を放電する放電装置と、
前記クリーニングブレードに対して相対的に移動する前記像担持体の駆動トルクが所定範囲となるように、前記放電装置の放電電圧を設定する放電電圧設定部とを備える
画像形成装置。
【請求項3】
前記トナーの極性と同極性に帯電される感光体と、
前記感光体の表面に静電潜像を形成するための露光を行う露光装置と、
前記静電潜像が形成された前記感光体の表面に前記帯電したトナーを供給する現像装置とを備え、
前記露光装置は、前記静電潜像に対する前記トナーの付着によって前記感光体の表面に前記トナー画像を形成するための通常露光と、前記通常露光よりも露光強度の低い微露光とを実施する
請求項に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記放電装置は、前記通常露光によって形成された前記トナー画像の前記媒体への転写率が維持される電圧での放電を実施する
請求項1または3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記微露光領域設定部は、前記通常露光による前記感光体の表面の電位変化に対して、前記微露光による前記感光体の表面の電位変化が影響することのない領域に、前記微露光領域を設定する
請求項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記媒体に形成するトナー画像に関する画像データに基づいて、前記残留トナーの量を算出する残留トナー量算出部を備えた
請求項1~5のうちの何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記残留トナー量算出部は、前記画像データと共に、環境データ、前記トナーの劣化度、および前記トナー画像の形成条件に基づいて前記残留トナーの量を算出する
請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記媒体に前記トナーを転写した後の前記像担持面のトナー付着量を検出するトナー付着量検出装置と、
前記トナー付着量検出装置で検出したトナー付着量に基づいて、前記残留トナーの量を算出する残留トナー算出部を備えた
請求項1~5のうちの何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記媒体に転写されたトナー画像におけるトナー付着量を検出するトナー付着量検出装置と、
前記トナー付着量検出装置で検出したトナー付着量に基づいて、前記残留トナーの量を算出する残留トナー算出部を備えた
請求項1~5のうちの何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記像担持体は、前記トナーの極性と同極性に帯電される感光体であり、
前記シート状の媒体は、中間転写ベルトである
請求項1~のうちの何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記像担持体は、中間転写ベルトであり、
前記シート状の媒体は、記録媒体である
請求項1~のうちの何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項12】
トナーの極性と同極性に感光体を帯電させ、
露光装置により前記感光体の表面に静電潜像を形成するための露光を行ない、
現像装置により前記静電潜像が形成された前記感光体の表面に帯電したトナーを供給し、
前記帯電したトナーによるトナー画像を像担持体の像担持面に担持させ、
転写装置によりシート状の媒体を介して前記帯電したトナーに対する逆極性の電荷を印加することにより、前記像担持面上のトナー画像を前記シート状の媒体に転写し、
前記媒体に転写されずに前記像担持面に残った残留トナーを、クリーニング装置のクリーニングブレードによりそぎ取って除去し、
放電装置により、前記トナー画像を転写する直前の前記像担持面に対して、前記帯電したトナーに対する逆極性の電荷を放電し、
微露光領域設定部により前記像担持面における前記残留トナーの量に基づいて、微露光を実施する領域を設定し、
放電電圧設定部により前記残留トナーの量に基づいて前記放電装置の放電電圧を設定する画像形成方法において、
前記露光装置が、前記静電潜像に対する前記トナーの付着によって前記感光体の表面に前記トナー画像を形成するための通常露光と、前記通常露光よりも露光強度の低い前記微露光とを実施し、前記微露光領域設定部での設定にしたがって前記微露光を実施する
画像形成方法。
【請求項13】
帯電したトナーによるトナー画像を像担持体の像担持面に担持させ、
転写装置によりシート状の媒体を介して前記帯電したトナーに対する逆極性の電荷を印加することにより、前記像担持面上のトナー画像を前記シート状の媒体に転写し、
前記媒体に転写されずに前記像担持面に残った残留トナーを、クリーニング装置のクリーニングブレードによりそぎ取って除去し、
放電装置により、前記トナー画像を転写する直前の前記像担持面に対して、前記帯電したトナーに対する逆極性の電荷を放電する画像形成方法において、
放電電圧設定部が、前記クリーニングブレードに対して相対的に移動する前記像担持体の駆動トルクが所定範囲となるように、前記放電装置の放電電圧を設定する
画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、および画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トナー画像を形成する画像形成装置は、感光体や中間転写ベルトなどの像担持面に残存するトナーを除去するためのクリーニング機構を備えている。このクリーニング機構は、主にゴム製のクリーニングブレードにより、像担持面の残存トナーを摩擦でそぎ取る構成が一般的である。このようなクリーニング機構においては、紙粉などの異物がクリーニングブレードのエッジ部に挟まるとクリーニングブレードにダメージが加わり、クリーニング不良を引き起こす。これを防止する技術として、像担持面に一定量以上のトナーを残してクリーニングブレードにトナーを供給することで、クリーニングブレードにダメージが加わることを防止する技術が開示されている。このような技術として、下記特許文献1には「トナー像を形成するときに前記トナー像が形成されない非画像形成領域に視認されにくい捕捉トナー像を形成して前記像担持体に保持させ、前記捕捉トナー像のうち転写されずに前記像担持体に残ったトナーを、前記清掃部材(クリーニングブレード)が接する部位に到達させる動作を実行する手段とを備える。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-156023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一般的な画像形成装置では、転写部においての転写率が90%程度となるように設計されている。このため、像担持面には10%程度の極僅かな量のトナーしか残すことができず、クリーニングブレードと像担持面との当接部に、必要量のトナーを供給することが困難であった。
【0005】
そこで本発明は、クリーニングブレードと像担持面との当接部に必要量のトナーを供給することが可能で、これによりクリーニング性能を維持することが可能な画像形成装置および画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するための本発明は、帯電したトナーによるトナー画像を担持するための像担持面を有する像担持体と、シート状の媒体を介して前記帯電したトナーに対する逆極性の電荷を印加することにより、前記像担持面上のトナー画像を前記シート状の媒体に転写する転写装置と、前記媒体に転写されずに前記像担持面に残った残留トナーをクリーニングブレードでそぎ取って除去するクリーニング装置と、前記媒体に前記トナー画像を転写する直前の前記像担持面に対して、前記帯電したトナーに対する逆極性の電荷を放電する放電装置とを備えた画像形成装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、クリーニングブレードと像担持面との当接部に必要量のトナーを供給することが可能で、これによりクリーニング不良を防止することが可能な画像形成装置、および画像形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態の画像形成装置の構成を示す概略図である。
図2】実施形態に係る画像形成装置が有する制御装置の構成を説明するブロック図である。
図3】実施形態に係る画像形成方法を示すフローチャートである。
図4】要因毎のトナーの転写率、および逆転写率を示す図である。
図5】実施形態の画像形成方法において実施する画像形成のための露光を説明する図である。
図6】実施形態の画像形成方法において実施する微露光を説明する図である。
図7】露光強度によるトナーの現像状態を説明するための図である。
図8】像担持面に対するトナーの付着状態による記録媒体へのトナーの転写を説明する図である。
図9】微露光においてのトナーの現像状態を説明するための図である。
図10】微露光領域の設定を説明する図(その1)である。
図11】微露光領域の設定を説明する図(その2)である。
図12】実施形態の画像形成方法において実施するトナーに対する逆電荷の付与の効果を説明する図である。
図13】実施形態の変形例1で作成するチャートを示す図である。
図14】実施形態の変形例2を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を適用した画像形成装置、および画像形成方法に関する実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
≪画像形成装置≫
図1は、実施形態の画像形成装置1の構成を示す概略図である。図1に示す画像形成装置1は、シート状の記録媒体Sにトナー画像を形成する電子写真方式のものであって、画像形成部10、転写ユニット20、および定着装置30を備えている。またこの画像形成装置1は、さらに放電装置40、および制御装置60を備えている。以下、画像形成装置1が有する各部および装置の詳細な構成を説明する。
【0011】
<画像形成部10>
画像形成部10は、例えばイエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナー画像を形成するための4つの画像形成ユニット10y,10m,10c,10kを有する。各画像形成ユニット10y,10m,10c,10kは、それぞれが感光体11と、感光体11の周囲に配置されたクリーニング装置12、帯電装置13、露光装置14、および現像装置15を備えている。これらは、次のようである。
【0012】
[感光体11]
感光体11は、トナー画像が形成される像担持体の1つであって、駆動モーターによって回転するドラム状であり、ドラム状の側周表面11aを像担持面としている。各画像形成ユニット10y,10m,10c,10kの感光体11は、軸方向を平行に保ち、軸方向と垂直な方向に配列されている。
【0013】
[クリーニング装置12]
クリーニング装置12は、感光体11の側周表面11aの残留トナーを除去する。このようなクリーニング装置12は、ここでの図示を省略したクリーニングブレードを備えている。クリーニングブレードは、側周表面11aの軸方向の全域にわったって側周表面11aに当接する状態で配置され、側周表面11aからトナーをそぎ取って除去する。
【0014】
[帯電装置13]
帯電装置13は、クリーニング装置12によって残留トナーが除去された感光体11の側周表面11aを一様に帯電する。一例として帯電装置13は、感光体11の側周表面11aを負に帯電させることとする。
【0015】
[露光装置14]
露光装置14は、帯電装置13によって負に帯電させた側周表面11aに、レーザービームの照射によって静電潜像を形成するための露光を行う。特にこの露光装置14は、記録媒体Sにトナー画像を形成するための通常の露光と、次に説明する転写ユニット20の中間転写ベルト21にトナーを残留させるための微露光とを実施する。微露光は、通常の露光よりも露光強度が低い露光であることとする。このような露光装置14によって実施される露光および微露光は、以降に説明する制御装置60からの指示に基づいて実施される。
【0016】
[現像装置15]
現像装置15は、露光装置14によって静電潜像が形成された感光体11の側周表面11aに、負に帯電させたトナーを供給することにより、感光体11の側周表面11aに形成された静電潜像に各色のトナーを付着させる。これにより、画像形成ユニット10yにおける感光体11の側周表面11aには、イエローのトナーを付着させたトナー画像が形成される。画像形成ユニット10mにおける感光体11の表面には、マゼンタのトナーを付着させたトナー画像が形成される。画像形成ユニット10cの感光体11にはシアンのトナーを付着させたトナー画像が形成される。また画像形成ユニット10kの感光体11には、ブラックのトナーを付着させたトナー画像が形成される。
【0017】
<転写ユニット20>
転写ユニット20は、画像形成部10と並列して配置されている。この転写ユニット20は、中間転写ベルト21と、複数のローラー22、複数の一次転写ローラー23、二次転写ローラー24、除電ローラー25、およびクリーニング装置26を備えている。これらは、次のようである。
【0018】
[中間転写ベルト21]
中間転写ベルト21は、帯電したトナーによるトナー画像を担持するための像担持体の1つである。中間転写ベルト21は、回転する無端ベルトとして構成されたもので、複数のローラー22に掛け渡された状態で配置され、その外周面が像担持面21aとなっている。このような中間転写ベルト21は、画像形成ユニット10y,10m,10c,10kの各感光体11の回転方向とは逆方向に回転する。また中間転写ベルト21は、クリーニング装置12と現像装置15との間において、全ての感光体11の側周表面11aに対して、像担持面21aを順次に接触させる状態で配置されている。
【0019】
[ローラー22]
ローラー22は、中間転写ベルト21に内接され、中間転写ベルト21の像担持面21aを、全ての感光体11の側周表面11aに接触させるように、中間転写ベルト21の内周側に配設されている。これらのローラー22のうちの1つは、中間転写ベルト21を回転させるための駆動ローラーとして構成されている。
【0020】
[一次転写ローラー23]
一次転写ローラー23は、中間転写ベルト21の内周側で、各画像形成ユニット10y,10m,10c,10kの感光体11と対向するそれぞれの位置において、各感光体11との間に中間転写ベルト21を挟持する状態で配置されている。これらの一次転写ローラー23は、トナーと反対の極性の電圧が印加され、これにより感光体11の像担持面21a上に付着したトナーを中間転写ベルト21の像担持面21aに転写させる転写装置である。
【0021】
[二次転写ローラー24]
二次転写ローラー24は、記録媒体Sに前記トナー画像を転写する転写装置である。この二次転写ローラー24は、中間転写ベルト21の像担持面21a側において、複数のローラー22のうちの1つに対向する位置に配置され、ローラー22との間に中間転写ベルト21と記録媒体Sとを挟持する。二次転写ローラー24は、記録媒体Sを介してトナーとは逆極性の電荷を中間転写ベルト21の像担持面21a側に印加する。これにより、二次転写ローラー24とローラー22とが接触するニップ部は、中間転写ベルト21の像担持面21a上に形成されたトナー画像を、ここでの図示を省略した媒体供給装置から搬送された記録媒体Sに転写する転写位置となる。
【0022】
[除電ローラー25]
除電ローラー25は、中間転写ベルト21の回転方向おける二次転写ローラー24の下流側で、かつ一次転写ローラー23の上流側において、像担持面21aに対向して配置され、中間転写ベルト21の電荷を除去する。
【0023】
[クリーニング装置26]
クリーニング装置26は、中間転写ベルト21の回転方向おける除電ローラー25の下流側で、かつ一次転写ローラー23の上流側において像担持面21aに対向して配置されている。このクリーニング装置26は、中間転写ベルト21の像担持面21aに残留したトナーを除去するためのものである。このようなクリーニング装置26は、像担持面21aに当接させたクリーニングブレード26aを備えている。クリーニングブレード26aは、中間転写ベルト21の幅方向の全域にわったって像担持面21aに当接する状態で配置され、クリーニングブレード26aに対して相対的に移動する像担持面21aからトナーをそぎ取って除去する。
【0024】
<定着装置30>
定着装置30は、記録媒体Sの搬送方向xに対して、転写ユニット20における二次転写ローラー24の下流側に配置されている。この定着装置30は、二次転写ローラー24から供給された記録媒体Sを加熱した状態でニップして搬送し、記録媒体Sに転写されたトナー画像を記録媒体Sに定着させる。
【0025】
<放電装置40>
放電装置40は、中間転写ベルト21の回転方向おける一次転写ローラー23の下流側で、かつ二次転写ローラー24の上流側に配置されている。この放電装置40は、二次転写ローラー24の直前において、像担持面21aに対してトナーと逆極性の電荷を放電するコロナ放電装置である。この放電装置40の放電により、像担持面21a上のトナーに対して逆極性の電荷が付与される。このような放電装置40は、次に説明する制御装置60からの指示によって放電電位が制御される。
【0026】
<制御装置60>
制御装置60は、画像データに基づいて、上述した各部の駆動を制御する。特にこの制御装置60は、二次転写ローラー24を通過した後の中間転写ベルト21の像担持面21aに、必要量の残留トナーを残すための制御を実施する。ここで残留トナーの必要量とは、像担持面21aとクリーニング装置26のクリーニングブレード26aとの間に挟まった紙粉などの異物が、クリーニングブレード26aのエッジに到達することを阻止できる量であって、クリーニング不良の発生を防止できる量である。この必要量は、実験的に得られた量であって、以降においては必要残留トナー量[Q]として説明する。
【0027】
このような制御装置60は、計算機によって構成されている。計算機は、いわゆるコンピューターとして用いられるハードウェアである。計算機は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、およびROM(Read Only Memory)やHDD(hard disk drive)のような不揮発性の記憶部、さらにはネットワークインターフェースを備えていてもよい。
【0028】
このような計算機によって構成された制御装置60は、記録媒体Sにトナー画像を形成するための画像形成プログラムを不揮発性の記憶部に保存する。特にこの制御装置60は、画像形成の実施に際し、トナー転写後の像担持面21aに必要量の残留トナーを残すための画像形成プログラムを保持する。また制御装置60は、保存された画像形成プログラムに基づく処理を実行することにより、画像形成ユニット10y,10m,10c,10kの露光装置14、および放電装置40の駆動を制御する。
【0029】
図2は、実施形態に係る画像形成装置1が有する制御装置60の構成を説明するブロック図である。この図に示すように、制御装置60は、各画像形成ユニット10y,10m,10c,10k、転写ユニット20、定着装置30、および放電装置40に接続され、これらの各部を制御する。このような制御装置60は、制御プログラムを実行する各機能部として、データ取得部61と、残留トナー量算出部62と、残留トナー不足量算出部63と、微露光領域設定部64と、露光データ作成部65と、放電電圧設定部66と、画像形成制御部67とを備える。これらの各機能部が実行するプログラムの手順は、次の画像形成方法において詳細に説明する。
【0030】
≪画像形成方法≫
次に、以上のような画像形成装置1において実施される画像形成方法を説明する。図3は、実施形態に係る画像形成方法の一例を示すフローチャートであって、画像形成装置1の制御装置60が有する画像形成プログラムによって実施されるトナー画像の形成の手順を示している。このフローチャートに示す手順は、ここでの図示を省略した入力部または外部装置から、画像形成装置1に対して画像形成のジョブの実施が入力されたことによって開始される。以下、図3のフローチャートに沿って、先の図1図2および他の必要図を参照しつつ、実施形態の画像形成方法を説明する。
【0031】
<ステップS101>
ステップS101において、データ取得部61は、画像形成のために必要なデータを取得する。データ取得部61が取得するデータは、ジョブデータと、像担持面21aの残留トナーの量に影響を及ぼす要因に関する要因データである。
【0032】
このうちジョブデータは、記録媒体Sの種類や色などの記録媒体Sに関するデータと、記録媒体Sに形成する画像の画像データである。これらのジョブデータは、画像形成のジョブの実施において、ここでの図示を省略した入力部から入力されるか、または外部装置から受信され、制御装置60の記憶部または所定の記憶部に保持させたデータである。
【0033】
また要因データは、画像形成のジョブを実施する際の、(a)環境湿度、(b)トナー滞留時間、および(c)上流部の転写電流などである。このうち(a)環境湿度は、画像形成装置1が配置されている環境の湿度である。(b)トナー滞留時間は、画像形成ユニット10y,10m,10c,10kが有する現像装置15においてのトナーの滞留時間である。また(c)上流部の転写電流は、二次転写ローラー24の上流部である、画像形成ユニット10y,10m,10c,10kにおける転写電流である。これらの要因データは、ここでの図示を省略した入力部から入力されるか、またはここでの図示を省略した各検出器から取得したデータであることとする。
【0034】
<ステップS102>
ステップS102において、残留トナー量算出部62は、データ取得部61で取得したデータに基づいて、残留トナー量[Q1]を算出する。ここで残留トナー量[Q1]とは、基準条件で画像形成のジョブを実施した場合に、記録媒体Sに転写されずに二次転写ローラー24を通過した後の中間転写ベルト21の像担持面21aに残留する残留トナーの量である。また基準条件での画像形成とは、画像データのみに基づく通常露光による画像形成であることとする。
【0035】
残留トナー量算出部62は、データ取得部61で取得したデータに基づいて、下記式(1)のようにして残留トナー量[Q1]を算出する。
【0036】
【数1】
【0037】
上記式(1)において、トナー付着量[g/cm2]は、像担持面21aの画像形成部における、単位面積あたりのトナーの付着量である。媒体面積[cm2]は、記録媒体Sの面積であって、ジョブの入力情報から得られる。印字率[%]は、記録媒体Sにおいて画像が形成される領域の面積であって、画像データから算出される頁毎の値である。また転写率[%]は、中間転写ベルト21の像担持面21aから記録媒体Sへのトナーの転写率である。ここで、上記式(1)に示す転写率は、上述した要因データの値によって下記のように影響を受ける。
【0038】
図4は、要因毎のトナーの転写率、および逆転写率を示す図である。この図に示すように、トナーの転写率は、(a)環境湿度の上昇、および(b)現像装置におけるトナー滞留時間の長期化にともなって低下する。これは、トナーの転写率が、トナーの帯電量に起因するところが大きいためである。すなわち、トナーは、現像装置15内で撹拌することによって負に帯電されるが、環境湿度が高い場合や、現像装置15におけるトナー滞留時間が長期化してトナーが劣化した場合、現像装置15においてトナーが帯電し難くなるため、転写率が低下するのである。
【0039】
またトナーの逆転写率は、(c)上流部の転写電流の上昇にともなって上昇する。これは、各画像形成ユニット10y,10m,10c,10kの一次転写ローラー23において、トナーと反対の極性の電圧が印加されることにより、トナーが逆極性に帯電する場合がある。この場合、転写の下流側において、本来の転写方向とは逆方向にトナーが転写される逆転写が生じる。そのため、転写電流の大きさによっても、残留トナー量[Q1]が変わるため、転写部ごとにこれらの条件を複合的に計算して逆転写率を求める。
【0040】
残留トナー量算出部62は、これらの要因に対するトナーの転写率/逆転写率のデータを保持する。そして、保持したデータを参照し、ステップS101で取得した要因データに基づいてトナーの転写率を算出し、算出した転写率を上記式(1)に当てはめて残留トナー量[Q1]を算出する。
【0041】
<ステップS103>
ステップS103において、残留トナー不足量算出部63は、残留トナー量算出部62で算出した残留トナー量[Q1]と、予め設定された必要残留トナー量[Q]とに基づいて、残留トナー不足量[Q2]を算出する。
【0042】
ここで必要残留トナー量[Q]とは、先にも説明したように、像担持面21aとクリーニング装置26のクリーニングブレード26aとの間に挟まった紙粉などの異物が、クリーニングブレード26aのエッジに到達することを阻止できる量である。このような必要残留トナー量[Q]は、予め実験的に得られた値であって、例えば記録媒体Sの種類毎の値である。必要残留トナー量[Q]は、図示を省略した入力部から入力され残留トナー不足量算出部63に保持されていることとする。また残留トナー不足量[Q2]は、上述した基準条件での画像形成で不足する残留トナー量である。
【0043】
残留トナー不足量算出部63は、ジョブの入力情報に基づいて、ジョブで画像を形成する記録媒体Sの種類に対応する必要残留トナー量[Q]を選択する。そして、選択した必要残留トナー量[Q]と、ステップS102で算出した残留トナー量[Q1]との差分を、残留トナー不足量[Q2]として算出する。
【0044】
<ステップS104>
ステップS104において、微露光領域設定部64は、データ取得部61で取得した画像データと、残留トナー不足量算出部63で算出された残留トナー不足量[Q2]とに基づいて、微露光を実施する領域を設定する。
【0045】
ここで微露光とは、露光装置14による露光強度が、画像形成のための通常露光と比較して弱く設定された露光であって、できるだけ記録媒体Sにトナーが転写されないように、露光強度を弱めた露光である。このような微露光は、記録媒体Sにトナーが転写されない程度の厚みと間隔で、像担持面21aにトナーを担持させるための露光である。
【0046】
以下、微露光領域の設定を説明するのに先立ち、先ず画像形成のための通常の露光と対比させて微露光についての詳細を説明する。
【0047】
-微露光について-
図5は、実施形態の画像形成方法において実施する画像形成のための露光を説明する図である。この図に示す様に、画像形成装置による露光においては、一般的に露光強度と露光面積とを制御して階調を表現していくスクリーン処理が用いられる。この際、通常の画像形成においての露光では、任意の面積内において、先ず一つの画素内で露光強度を上昇させ、次に露光画素面積を拡大する手順を繰り返すことで階調を形成していく。これに対し、微露光は次のように実施される。
【0048】
図6は、実施形態の画像形成方法において実施する微露光を説明する図である。この図に示す様に、微露光の場合には、任意の面積内において、先ず露光画素面積を拡大し、次に各画素の露光強度を上昇させる手順を繰り返すことで階調を形成していく。
【0049】
図7は、露光強度によるトナーの現像状態を説明するための図であって、現像に際しての各電位を示している。この図に示す様に、電子写真方式の画像形成装置1において、帯電装置13は、感光体11を負の感光体電位[V1]に帯電たせる。また現像装置15は、トナーを、感光体11よりも絶対値で低い負の現像電位[Vt]に帯電させる。これにより、トナーが感光体11の側周表面11aに付着しないような電界を形成している。したがって、記録媒体Sには、トナーが転写されず、画像が形成されることはない。
【0050】
このような構成において、露光装置14は、感光体11の側周表面11aにレーザービームを照射する露光を行い、露光部の電位を露光後電位[V2][V2’]にまで下げる。この際、露光装置14による露光強度が十分に強い場合(A)であれば、露光後電位[V2]が現像電位[Vt]よりも低くなり、露光部に静電潜像が形成される。これにより、露光後電位[V2]と現像電位[Vt]との差分に対応する現像量のトナーが、側周表面11aの静電潜像に付着し、記録媒体Sの対応する領域に転写されて画像が形成される。
【0051】
一方、露光装置14による露光強度が弱い場合(B)には、露光後電位[V2]が現像電位[Vt]よりも低くならず、露光部にトナーが付着することはない。したがって、記録媒体Sの対応する領域に画像が形成されることはない。
【0052】
このため、先に図5を用いて説明したように、画像形成のための通常の露光においては、階調表現に際して、まず露光強度を徐々に上げることで、感光体の露光後電位[V2]を下げることを優先し、次に隣接部を露光して面積を多くするという順序で階調形成していくことが一般的である。
【0053】
これに対して図6を用いて説明した微露光は、できるだけ記録媒体Sにトナーが転写されないように露光強度を弱く保って、感光体の露光後電位[V2]が下がりすぎることのないようにした露光である。
【0054】
ここで、中間転写ベルト21の像担持面21aから記録媒体Sへのトナーの転写部では、二次転写ローラー24が記録媒体Sを介してトナーとは逆電荷を印加し、これにより中間転写ベルト21の像担持面21aから記録媒体Sにトナー画像を転写する。この際、中間転写ベルト21の像担持面21aに対するトナーの付着状態によって、記録媒体Sへのトナーの転写量に差が生じる。
【0055】
図8は、像担持面21aに対するトナー2の付着状態による記録媒体Sへのトナー2の転写を説明する図であって、中間転写ベルト21の像担持面21aにおいてのトナー2の密集状態が高い場合(A)と、低い場合(B)を示している。これらの図に示すように、トナー2の密集状態が高い場合(A)は、低い場合(B)と比較して、記録媒体Sへのトナー2の転写量が多くなる。これは、トナー2の密集状態が高い場合(A)は、トナー2に対して二次転写ローラー24から印加される逆電荷の影響が大きく作用することに起因する。さらに、トナー2が局所的に集中することで、トナー2同士の引き合う力が大きく作用することにも起因する。このため、中間転写ベルト21の像担持面21aにトナー2が付着していても、トナー2の密集状体が十分に低く離散的であればば、記録媒体Sには転写されずに中間転写ベルト21の像担持面21aにトナー2が残されることが判る。このことから、上述した微露光は、トナーが離散的に現像されるように微露光を実施することが重要である。
【0056】
図9は、微露光においてのトナーの現像状態を説明するための図であって、微露光で離散的に現像される理由を説明する。先にも説明した通り、露光装置14による露光強度が弱い場合(A)には、露光後電位[V2]が現像電位[Vt]を大きく下回ることはない。しかしながら、露光強度の制御は複雑であり画像形成速度の高速化に対応するために、一般的には露光強度は数段階程度の強度で使い分けられている。そのため、1段階目の露光強度では、露光後電位[V2]が現像電位[Vt]より下がらなかった場合、2段階目の露光強度で露光することになる。しかしながら、露光強度の分解能が低いため、2段階目の露光強度では、露光後電位[V2]が現像電位[Vt]を大きく下回る場合がある。この場合、少量のトナーを現像したいにも関わらず、大量のトナーが現像されてしまう可能性がある。
【0057】
そこで、微露光では1段階目でトナーが現像されない場合、隣接画素や少し離れた画素を2段階目の露光強度で露光を行う(B)。そうすることで、1画素単位では現像電位[Vt]を下回らない露光後電位[V2]が、2画素の合算によって現像電位[Vt]を下回るようになる。この場合、少し離れた画素の露光でも露光後電位[V2]が合算で下がるのは、一般的に高解像度な露光装置14ではレーザー1本あたりの露光面積の方が、1画素の面積より広く設計されているためである。
【0058】
以上のように、微露光の実施においては、ごく少量のトナーを現像できるように、露光強度と露光位置を制御する必要がある。このため、微露光は、上述したような露光強度が弱い露光強度での露光を、側周表面11a、21aにおいてトナーができるだけ密集しないよう間隔を開けた各画素に対して離散的に実施される。
【0059】
なお、前述の説明では、微露光の実施においては、1段階目の露光強度で徐々に露光面積を増やしていって、任意の面積内を全面露光した後に、2段階目の露光強度とすることとした。しかしながら、露光強度とトナーが現像されるか否かは、現像電位[Vt]と感光体電位[V1]との差(カブリマージン)、感光体の感度、およびトナーの帯電量などの様々な要因で決定される。よって、ごく少量のトナーが現像されるという条件を満たせる限り、先に2段階目の露光強度を用いるなどの方法をとってもよい。これらの条件については事前に実験的に求めておき、実機の状態に応じて複数の条件を使い分けても良い。
【0060】
-微露光領域の設定について-
本ステップS104において、微露光領域設定部64は、以上のような微露光を実施する領域を記録媒体S上に設定する。この際、微露光領域設定部64は、ステップS101で取得した画像データと、ステップS103において算出した残留トナー不足量[Q2]とに基づいて、微露光領域を設定する。
【0061】
図10は、微露光領域の設定を説明する図(その1)である。この図に示すように、微露光領域設定部64は、トナーの転写が可能な領域[Ar1]のうち、ステップS101で取得した画像データに基づく画像形成領域[Ar2]を外した領域に微露光領域を設定する。これにより、画像形成領域[Ar2]に対する微露光の影響を抑える。微露光領域設定部64は、記録媒体S上において画像形成領域[Ar2]を外した非画像形成領域、または記録媒体Sの外側の領域や、記録媒体Sの間の領域に、微露光領域を設定する。この際、微露光領域設定部64は、画像形成領域[Ar2]に対して所定の間隔[D]を隔てた領域に、微露光領域を設定することが重要である。この間隔[D]は、次のようである。
【0062】
図11は、微露光領域の設定を説明する図(その2)である。この図は、通常露光と微露光とを近接させて実施した場合(A)と、通常露光と微露光とを隔てて実施した場合(B)の感光体11の側周表面11aの電位を示している。
【0063】
この図に示すように、通常露光と微露光とを近接させて実施した場合(A)、これらの露光の中間位置において感光体の露光後電位[V2]が合算される。これにより、画像形成のための通常露光の範囲を外れてトナーが過剰に現像され、画像の形成範囲に対して微露光の影響が及んでしまう。これに対し、通常露光と微露光とを隔てて実施した場合(B)、これらの露光による露光後電位[V2]は、影響を及ぼし合うことがない。したがって微露光を実施する範囲は、画像を形成するための通常露光に対して露光後電位[V2]が影響を及ぼすことのない間隔だけ隔てた位置に設定されることとする。露光におけるこの間隔が、図10を用いて説明した画像形成領域[Ar2]に対して設定する間隔[D]に相当する。
【0064】
微露光領域設定部64は、以上のように画像形成領域[Ar2]に対して所定の間隔[D]を隔てた領域に、微露光領域を設定する際、まず画像に対して影響を与えない記録媒体Sの外、次に記録媒体S上の優先順に微露光領域を設定する。この場合、残留トナー不足量[Q2]が満たされる面積となるように、上述した優先順に微露光領域を設定していく。
【0065】
特に記録媒体S上に対して微露光領域を設定する場合には、微露光領域のトナーの記録媒体S上への転写を、できるだけ抑えるように設定することが望ましい。このため記録媒体S上においては、微細な領域毎に分割して微露光領域を設定することで、微露光領域においての記録媒体S上へのトナーの転写を防止する。
【0066】
また、クリーニング装置26に供給する残留トナー量は、クリーニング装置26におけるクリーニングブレード26aの軸方向全領域にわたって均等になることが望ましい。その場合には、軸方向をいくつかの領域に分割し、その領域毎に微露光領域を設定してもよい。なお、この場合、先のステップS102において、残留トナー量算出部62は、分割した領域毎に残留トナー量[Q1]を算出する。またステップS103において、残留トナー不足量算出部63は、分割した領域毎に残留トナー不足量[Q2]を算出する。そして、本ステップS104において、微露光領域設定部64は、分割した領域毎に微露光領域を設定する。この際、微露光領域設定部64は、残留トナー不足量[Q2]を供給できる程度の面積の微露光領域を設定する。
【0067】
なお、以上の説明は、中間転写ベルト21から記録媒体Sへの二次転写時として簡易的に説明したものだが、実際には各色の感光体11から中間転写ベルト21への一次転写時にも同様の計算を行い、感光体11への残留トナー量も同様に計算し、それらを複合的に計算して各色の微露光面積等を決めることが好ましい。
【0068】
さらに微露光領域設定部64は、トナーの色を考慮して各感光体11に微露光領域の設定を割り振ることが好ましい。すなわち、微露光は記録媒体Sに対してトナーが転写されないように微露光の露光強度や離散性が設定されていたとしても、微露光に起因する記録媒体Sへのトナーの転写をゼロにすることは難しい。そこで微露光領域設定部64は、記録媒体Sに対して目立ちにくい色のトナー画像を形成するための感光体11に対して、微露光領域の設定をより多く割り振る。例えば記録媒体Sが白色であれば、イエロー(Y)の画像形成ユニット10yの感光体11に対して、微露光領域の設定をより多く割り振るようにする。
【0069】
<ステップS105>
ステップS105において、露光データ作成部65は、データ取得部61で取得した画像データと、微露光領域設定部64で設定して微露光領域とに基づいて、各画像形成ユニット10y,10m,10c,10kの露光装置14において実施する露光走査のための露光データを作成する。
【0070】
<ステップS106>
ステップS106において、放電電圧設定部66は、放電装置40による放電電圧を設定する。ここで、二次転写ローラー24の直前のトナーに対し、放電装置40~の放電によって逆極性の電荷を付与した場合の、記録媒体Sへのトナーの転写を説明する。
【0071】
図12は、実施形態の画像形成方法において実施するトナーに対する逆電荷の付与の効果を説明する図である。この図は、二次転写ローラー24を通過する前後における中間転写ベルト21と記録媒体Sとの間のトナー2の状態であって、画像形成のための通常露光の領域(A)と、微露光の領域(B)を示している。
【0072】
この図に示すように、放電装置40からの放電電圧の印加によってトナー2に逆電荷(+電荷)を付与すると、微露光の領域(B)においては、トナー2が離散的であるため、中間転写ベルト21上のトナー2は殆どが逆極性(+)に帯電する。このため、逆極性(+)に帯電された二次転写ローラー24側にトナー2が転写されず、二次転写ローラー24を通過した後にも、中間転写ベルト21上に殆どのトナー2が残される。
【0073】
これに対して、通常露光の領域(A)においては、トナー2が集約的であるため、中間転写ベルト21上のトナー2のうちの表層に位置するトナー2のみが逆極性(+)に帯電する。このため、逆極性(+)に帯電された二次転写ローラー24を通過する際には、逆極性となっていない負極性のトナー2が、記録媒体Sに転写される。また、この際、中間転写ベルト21上のトナー2のうちの表層に位置する逆極性(+)のトナー2も、負極性のトナー2との引き合いにより、記録媒体Sに一緒に転写される。
【0074】
したがって本ステップS106において、放電電圧設定部66は、微露光の領域(B)のトナー2の記録媒体S上への転写を抑えつつ、通常露光の領域(A)のトナー2の記録媒体S上への転写を妨げることのない程度に、放電装置40における放電電圧を設定する。つまり放電電圧設定部66は、放電装置40からの放電を実施した場合と実施しない場合とで、通常露光によって形成されたトナー画像を構成するトナーの記録媒体への転写率が同程度に維持されるように、放電装置40での放電電圧を設定する。
【0075】
ここでトナー2の帯電のし易さは、環境湿度など各種要因に影響される。そこで、放電電圧設定部66は、各種要因毎に実験的に求めたデータに基づいて、放電装置40による放電電圧を設定する。また、放電装置40による逆電荷の付与量は、通常画像への影響を与えない範囲で転写残トナーを最大化する用に設定されることが望ましいが、残留トナーが必要以上に多くならないように適切に制御される必要もある。よって、放電電圧設定部66は、ステップS104で設定した微露光領域の面積と、ステップS102で算出した残留トナー量とから、実験的なデータに基づいて、必要残留トナー量[Q]となるように放電装置40の放電電圧を設定し、トナーに対する逆極性の電荷の付与量を調整する。
【0076】
さらに、画像部の画像形成状態によっては、放電装置40の放電電圧が同じでも、記録媒体Sに対するトナーの転写率への影響が異なる場合がある。具体的には、細線や独立したドットなどのように、画像形成部が連続する面積が小さいほど、逆電荷付与によるトナーの転写率の低下が顕著になる。これは、通常露光と微露光の関係と同じ現象である。そこで、放電電圧設定部66は、1頁毎、または軸方向に区切った所定の範囲において、画像形成部が連続する面積の最小値が小さいほど、逆電荷の付与量(放電電圧)を小さく設定する。これにより、画像形成部に対して、放電装置40による逆電荷の付与の影響を小さく抑える。
【0077】
<ステップS107>
ステップS107において、画像形成制御部67は、露光データ作成部65で作成した露光データに基づいて各露光装置14を制御し、かつ放電電圧設定部66で算出した放電電圧設定部66での設定に基づいて放電装置40の放電電圧を制御し、画像形成処理を実行する。
【0078】
これにより露光装置14は、通常の画像形成のための露光と、ステップS104において設定した領域に対する微露光とを実施する。さらに放電装置40は、ステップS106で設定された放電電圧で放電を実施する。
【0079】
<ステップS108>
ステップS108において、画像形成制御部67は、ジョブにおいて設定された全ての頁についての画像形成が終了したか否かの判断を実施する。画像形成制御部67は、終了した(YES)と判断した場合には処理を終了させ、終了していない(NO)と判断した場合にはステップS102に戻り、次の頁についてステップS102以降の処理を繰り返し実施する。
【0080】
なお、図3のフローチャートを用いて説明した画像形成方法の手順では、頁毎に露光データの作成と放電電圧を設定して画像形成処理を実行することとした。しかしながら、画像形成方法の手順は、露光データの作成、及び放電電圧の設定を、任意の画像形成単位で実施する手順であってもよいし、全頁を通して実施する手順であってもよい。また画像形成方法の手順は、複数頁または全頁について、任意の範囲で露光データの作成、及び放電電圧の設定を実施した後、画像形成処理を実施する手順であってもよい。この手順は、計算処理の負荷や他制御との兼ね合いを考慮し、生産性が最も高くなるように実施されることが望ましい。
【0081】
≪実施形態の効果≫
以上説明した実施形態によれば、記録媒体Sに対するトナーSの転写部の直前において、放電装置40によってトナー2に逆電荷を付与することにより、トナー2の転写を抑制することができる。特に、画像形成のための通常露光とは別に、露光強度を抑えた微露光と組み合わせることで、通常の画像形成に対する影響を抑えつつ、微露光部のトナーの転写を抑え、像担持面21aに対する残留トナー量を増加させることができる。この結果、像担持面21aとクリーニングブレード26aとの間に必要十分な量で残留トナーを供給することができ、紙粉等がクリーニング部に到達する状況でも、クリーニングブレード26aにダメージを与えずクリーニング性能を維持することが可能になる。
【0082】
≪変形例1≫
次に上述した実施形態の変形例1を説明する。図1に示すように、変形例1の画像形成装置1は、中間転写ベルト21の像担持面21aに対向させて、トナー付着量検出装置50を設けた構成である。これにより、図2に示した残留トナー量算出部62での処理が異なる。その他の構成は、上述した実施形態と同様である。このため以下においては、トナー付着量検出装置50の構成と、残留トナー量算出部62での処理を説明する。
【0083】
<トナー付着量検出装置50>
トナー付着量検出装置50は、中間転写ベルト21の回転方向おける二次転写ローラー24の下流側で、かつ除電ローラー25の上流側に配置されている。このトナー付着量検出装置50は、二次転写ローラー24を通過した中間転写ベルト21の像担持面21a上に残留するトナー量を検出する。このようなトナー付着量検出装置50は、像担持面21aに対するトナー付着量、すなわち残留トナー量を光学的に検知する装置である。
【0084】
<残留トナー量算出部62>
残留トナー量算出部62は、記録媒体Sの種類毎に、予め実験的にトナー付着量検出装置50で検出した残留トナー量を保持し、保持した残留トナー量に基づいて、ジョブにおける残留トナー量を算出する。
【0085】
ここで、残留トナー量算出部62が保持する残留トナー量は、予め実験的に得られた値である。この場合、予め残留トナー量を検知するためのチャートを各記録媒体Sに画像形成し、その場合に中間転写ベルト21の像担持面21a上における残留トナー量をトナー付着量検出装置50で検出することとする。
【0086】
図13は、実施形態の変形例1で作成するチャートを示す図であって、残留トナー量を検知するためのチャートを示す。この図に示すように、各記録媒体Sに形成するチャートは、各色トナーによる各階調の各画像を、トナー付着量検出装置50の検出範囲に対応させて形成する。また、微露光を実施する微露光領域も形成する。トナー付着量検出装置50は、このチャートにおける各画像および微露光領域に対応する像担持面21a上の領域について、残留トナー量を検出する。残留トナー量算出部62は、トナー付着量検出装置50で検出された残留トナー量を、記録媒体Sの種類に対応付けて保持する。
【0087】
このような構成において実施される画像形成方法は、図3を用いて説明したステップS102を、次のように実施すればよく、他のステップは実施形態と同様である。
【0088】
<ステップS102>
ステップS102において、残留トナー量算出部62は、データ取得部61で取得した記録媒体Sに関する情報に基づいて、保持している残留トナー量のデータの中から、ジョブで使用する記録媒体Sに該当する残留トナー量を抽出する。ここで抽出する残留トナー量は、基準の残留トナー量となる。次いで、残留トナー量算出部62は、データ取得部61で取得した画像データと、抽出した基準の残留トナー量とに基づいて、このジョブにおいての残留トナー量を算出する。
【0089】
<変形例1の効果>
このような変形例1によれば、材質、厚さ、含水率、凹凸具合などが異なる多種多様な記録媒体S毎に、画像形成に際しての残留トナー量を正確に算出することができる。このため、より正確に残留トナー不足量を算出することができ、またその結果に基づいて微露光領域を設定することができる。このため、より確実に、クリーニングブレード26aにダメージを与えずクリーニング性能を維持することが可能になる。
【0090】
なお、上述したチャートの形成、およびトナー付着量検出装置50による残留トナー量の検出は、例えば画像形成装置1の設置時に、サービスとユーザーで連携をとって、使用する記録媒体毎に実施しておくこととする。さらに、新たに使用したい記録媒体Sが出てきたときに再度実施してもよい。
【0091】
また上述したチャートの形成、およびトナー付着量検出装置50による残留トナー量の検出は、例えば画像形成中における中間転写ベルト21の駆動トルクに基づいて実施してもよい。すなわち中間転写ベルト21の像担持面21aの残留トナー量によって変動する値であり、残留トナー量が少ない場合には像担持面21aとクリーニングブレード26aとの摩擦が大きくなって駆動トルクが上昇する。
【0092】
そこで、図2に示した画像形成制御部67は、予め、像担持面21aの残留トナー量が必要残留トナー量[Q]である場合の駆動トルクの最小値を閾値として保持しておく。また画像形成制御部67は、中間転写ベルト21の駆動トルクの測定値を、中間転写ベルト21の駆動部から取得し、取得した駆動トルクが閾値を超えたと判断した場合に、チャートの形成を実施し、トナー付着量検出装置50による残留トナー量の検出を実施させる。そして、残留トナー量算出部62は、検出した残留トナー量に基づいて、実施中のジョブにおける残留トナー量を算出する(ステップS102)。
【0093】
また、画像形成制御部67は、取得した駆動トルクが閾値を超えたと判断した場合には、外部装置に対して残留トナー量の不足を報知し、ユーザーに対してチャートの形成を促すようにしてもよい。チャートを形成した場合には、トナー付着量検出装置50によって、像担持面21aに対する残留トナー量を検出する。そして残留トナー量算出部62は、検出した残留トナー量に基づいてジョブにおける残留トナー量を算出する。これは、図3に示すステップS102に相当し、さらにステップS103以降を実施する。
【0094】
また、図13を用いて説明したチャートを形成する際には、図1に示した放電装置40からの所定の放電電圧により、チャート形成のためのトナーに対して逆電荷を付与してもよい。この場合、図3を用いて説明したステップS106では、さらに、トナー付着量検出装置50で検出した残留トナー量と、チャートを形成した際の放電電圧とに基づいて、ジョブを実施する際の放電電圧を設定してもよい。
【0095】
さらに、トナー付着量検出装置50は、二次転写ローラー24を通過した記録媒体Sに対向して配置されてもよい(図1参照)。この場合、トナー付着量検出装置50は、記録媒体S上に転写されたトナー量を測定する。またこの場合、残留トナー量算出部62は、記録媒体S上に形成されたチャートのトナー量を検出する。そして、残留トナー量算出部62は、チャートのトナー量からトナーの転写率を推定し、さらに先の式(1)に基づいて残留トナー量[Q1]を算出する。
【0096】
≪変形例2≫
次に上述して実施形態の変形例2を説明する。上述した実施形態においては、図3のフローチャートに示すように、ステップS106において放電電圧を設定した後に、ステップS107においてはその設定にしたがって画像形成処理を実施する構成とした。しかしながら、放電電圧は、画像形成処理の実施において測定した中間転写ベルト21の駆動トルクに基づいて随時に調整する構成であってもよい。この場合、ステップS107は省略し、以下のフローを平行して実施する。
【0097】
図14は、実施形態の変形例2を説明するフローチャートであって、図2に示す放電電圧設定部66において実施される手順である。このフローチャートに示す手順は、ジョブの画像形成処理の開始と同期し開始され、所定速度で繰り返されることとする。以下図1図2、および図14に基づいて、変形例2を説明する。
<ステップS201>
先ず、ステップS201において、放電電圧設定部66は、中間転写ベルト21の駆動トルクの値を、中間転写ベルト21の駆動部から取得する。
【0098】
<ステップS202>
ステップS202において、放電電圧設定部66は、取得した駆動トルクの値が、予め設定した許容範囲内であるか、許容範囲を超えているか、許容範囲を下回っているのかの判断を実施する。ここで中間転写ベルト21の駆動トルクは、中間転写ベルト21の像担持面21aの残留トナー量によって変動する値であり、残留トナー量が少ない場合には像担持面21aとクリーニングブレード26aとの摩擦が大きくなって駆動トルクが上昇する。そこで、放電電圧設定部66は、予め、像担持面21aの残留トナー量が必要残留トナー量[Q]である場合の駆動トルクの許容範囲を保持しておく。放電電圧設定部66は、取得した駆動トルクが、許容範囲を超えている(OV)と判断した場合にステップS203に進み、許容範囲を下回っている(UND)と判断した場合に、次のステップS204に進む。また、許容範囲内である(YES)と判断した場合には処理を終了させる。
【0099】
<ステップS203>
ステップS203において、放電電圧設定部66は、放電装置40による放電電圧を、予め設定された増加幅で増加させ、処理を終了させる。
【0100】
<ステップS204>
ステップS204において、放電電圧設定部66は、放電装置40による放電電圧を、予め設定された増加幅で減少させ、処理を終了させる。
【0101】
<変形例2の効果>
このような変形例2によれば、放電電圧が、中間転写ベルト21の駆動トルクに基づいて随時に調整されるため、像担持面21aとクリーニングブレード26aとの間に随時必要十分な量で残留トナーを供給することができる。
【0102】
なお、本変形例2では、中間転写ベルト21の駆動トルクによって放電装置40の放電電圧を増減させる構成としたが、トナーの帯電量によって放電装置40の放電電圧を増減させる構成としてもよい。この場合、例えば現像装置15または中間転写ベルト21の像担持面21aに対向する位置に、トナーの帯電量を検出する帯電量検出装置を設ける。そして放電電圧設定部66は、この帯電量検出装置で測定したトナーの帯電量に基づいて、放電装置40の放電電圧を設定する。
【0103】
そこで、放電電圧設定部66は、予め、像担持面21aの残留トナー量が必要残留トナー量[Q]である場合のトナーの帯電量の許容範囲を保持しておく。放電電圧設定部66は、帯電量検出装置で測定したトナーの帯電量が、許容範囲を超えていると判断した場合には、放電装置40による放電電圧を、予め設定された増加幅で増加さる。一方、放電電圧設定部66は、帯電量検出装置で測定したトナーの帯電量が、許容範囲を下回っていると判断した場合には、放電装置40による放電電圧を、予め設定された増加幅で減少さる。
【0104】
≪その他≫
なお、以上説明した実施形態および変形例1,2の何れでも、像担持面21aとクリーニングブレード26aとの間に必要十分な量で残留トナーを供給できない場合には、記録媒体S間に、通常露光によって相当量のトナー帯を形成することで残留トナーの不足分を補うようにしてもよい。また、以上の実施形態および変形例1,2では、微露光と、記録媒体Sへの転写直前のトナーに対する逆電荷付与の両方を行う構成を説明したが、本発明は微露光を実施せずに逆電荷付与のみであっても、画像形成に影響を与えずに残留トナー量を増加させる効果を得ることができる。また、微露光の代わりにカブリトナーを増やすことや、白紙部への通常露光による画像形成などの他の手段と、逆電荷付与を併用しても良い。
【0105】
さらに、感光体11の側周表面11aを像担持面とし、中間転写ベルト21をシート状の媒体とした場合であっても、本発明を適用することができる。これにより、感光体11の側周表面11aに設けたクリーニング装置12のクリーニングレードにダメージを与えずクリーニング性能を維持することが可能になる。なお、この場合、放電装置40は、各感光体11の回転方向に対して、各一次転写ローラー23の下流で、かつ各クリーニング装置12の上流に配置すればよい。
【符号の説明】
【0106】
1…画像形成装置
2…トナー
11…感光体
14…露光装置
15…現像装置
21…中間転写ベルト(像担持体)
21a…像担持面
24…二次転写ローラー(転写装置)
26…クリーニング装置
26a…クリーニングブレード
40…放電装置
50…トナー付着量検出装置
62…残留トナー量算出部
64…微露光領域設定部
66…放電電圧設定部
S…記録媒体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14