(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/13 20060101AFI20240625BHJP
B60C 11/03 20060101ALI20240625BHJP
B60C 11/12 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
B60C11/13 C
B60C11/03 300D
B60C11/12 A
B60C11/12 C
B60C11/03 B
(21)【出願番号】P 2020103861
(22)【出願日】2020-06-16
【審査請求日】2023-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】八木 健太
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-138902(JP,A)
【文献】特開2019-156177(JP,A)
【文献】特開2016-132441(JP,A)
【文献】特開2015-058734(JP,A)
【文献】特開2016-137763(JP,A)
【文献】特開2018-001804(JP,A)
【文献】特開平11-342708(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/00-11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、タイヤ周方向に連続して延びる周方向溝に区分された第1陸部と、前記第1陸部を横断する複数の第1横溝とを含み、
前記第1陸部は、前記第1横溝によって区分された複数の第1ブロックを含み、
前記第1ブロックの少なくとも1つには、前記第1ブロックをタイヤ周方向で分断する第2横溝と、サイプとが形成され、
前記第2横溝は、タイヤ軸方向に対して第1方向に傾斜した一対の両端部と、前記両端部の間に位置し、かつ、前記第1方向とは逆向きの第2方向に傾斜した中央部とを含
み、
前記中央部の最大の深さは、前記サイプの最大の深さよりも小さい、
タイヤ。
【請求項2】
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、タイヤ周方向に連続して延びる周方向溝に区分された第1陸部と、前記第1陸部を横断する複数の第1横溝とを含み、
前記第1陸部は、前記第1横溝によって区分された複数の第1ブロックを含み、
前記第1ブロックの少なくとも1つには、前記第1ブロックをタイヤ周方向で分断する第2横溝と、サイプとが形成され、
前記第2横溝は、タイヤ軸方向に対して第1方向に傾斜した一対の両端部と、前記両端部の間に位置し、かつ、前記第1方向とは逆向きの第2方向に傾斜した中央部とを含み、
前記一対の両端部のそれぞれの溝幅は、前記中央部の溝幅よりも大きい、
タイヤ。
【請求項3】
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、タイヤ周方向に連続して延びる周方向溝に区分された第1陸部と、前記第1陸部を横断する複数の第1横溝とを含み、
前記第1陸部は、前記第1横溝によって区分された複数の第1ブロックを含み、
前記第1ブロックの少なくとも1つには、前記第1ブロックをタイヤ周方向で分断する第2横溝と、サイプとが形成され、
前記第2横溝は、タイヤ軸方向に対して第1方向に傾斜した一対の両端部と、前記両端部の間に位置し、かつ、前記第1方向とは逆向きの第2方向に傾斜した中央部とを含み、
車両への装着の向きが指定され、
前記トレッド部は、車両装着時に車両内側となる内側トレッド端を含み、
前記第1陸部は、タイヤ赤道と前記内側トレッド端との間に設けられている、
タイヤ。
【請求項4】
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、タイヤ周方向に連続して延びる周方向溝に区分された第1陸部と、前記第1陸部を横断する複数の第1横溝とを含み、
前記第1陸部は、前記第1横溝によって区分された複数の第1ブロックを含み、
前記第1ブロックの少なくとも1つには、前記第1ブロックをタイヤ周方向で分断する第2横溝と、サイプとが形成され、
前記第2横溝は、タイヤ軸方向に対して第1方向に傾斜した一対の両端部と、前記両端部の間に位置し、かつ、前記第1方向とは逆向きの第2方向に傾斜した中央部とを含み、
前記トレッド部は、複数の前記周方向溝を含み、
前記周方向溝は、前記第1陸部のタイヤ赤道側に隣接する内側クラウン周方向溝を含み、
前記内側クラウン周方向溝は、前記複数の周方向溝のうち最も大きい溝幅を有している、
タイヤ。
【請求項5】
前記第2横溝の溝幅は、前記第1横溝の溝幅よりも小さい、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記第1横溝は、それぞれ、前記第2方向に傾斜している、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記中央部のタイヤ軸方向に対する角度は、前記第1横溝のタイヤ軸方向に対する角度よりも大きい、請求項1ないし6のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記サイプは、前記第1方向に傾斜している、請求項1ないし7のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記サイプは、前記第2横溝に連通していない、請求項1ないし8のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項10】
前記サイプは、その長さ方向及び深さ方向に波状に延びる3Dサイプである、請求項1ないし9のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項11】
前記第1横溝のタイヤ軸方向に対する角度は、20~40°である、請求項1ないし10のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項12】
前記中央部のタイヤ軸方向に対する角度は、50~70°である、請求項1ないし11のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項13】
前記両端部のタイヤ軸方向に対する角度は、20~40°である、請求項1ないし12のいずれか1項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、外側ショルダーブロックに縦サイピング及びバットレス細溝が設けられた空気入りタイヤが提案されている。前記空気入りタイヤは、前記縦サイピングによってタイヤ周方向のエッジ成分を増加させ、ひいては氷路での旋回性能を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、冬期での使用を前提としたタイヤには、氷上旋回性能のより一層の向上が求められている。
【0005】
発明者らは、横溝及びサイプの形状等を改善することによって氷上の水膜を効果的に除去できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0006】
本発明は、以上のような実情に鑑み案出なされたもので、優れた氷上旋回性能を発揮し得るタイヤを提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、トレッド部を有するタイヤであって、前記トレッド部は、タイヤ周方向に連続して延びる周方向溝に区分された第1陸部と、前記第1陸部を横断する複数の第1横溝とを含み、前記第1陸部は、前記第1横溝によって区分された複数の第1ブロックを含み、前記第1ブロックの少なくとも1つには、前記第1ブロックをタイヤ周方向で分断する第2横溝と、サイプとが形成され、前記第2横溝は、タイヤ軸方向に対して第1方向に傾斜した一対の両端部と、前記両端部の間に位置し、かつ、前記第1方向とは逆向きの第2方向に傾斜した中央部とを含む。
【0008】
本発明のタイヤにおいて、前記第2横溝の溝幅は、前記第1横溝の溝幅よりも小さいのが望ましい。
【0009】
本発明のタイヤにおいて、前記一対の両端部のそれぞれの溝幅は、前記中央部の溝幅よりも大きいのが望ましい。
【0010】
本発明のタイヤにおいて、前記一対の両端部のそれぞれのタイヤ軸方向の長さは、前記中央部のタイヤ軸方向の長さよりも小さいのが望ましい。
【0011】
本発明のタイヤにおいて、前記第1横溝は、それぞれ、前記第2方向に傾斜しているのが望ましい。
【0012】
本発明のタイヤにおいて、前記中央部のタイヤ軸方向に対する角度は、前記第1横溝のタイヤ軸方向に対する角度よりも大きいのが望ましい。
【0013】
本発明のタイヤにおいて、前記中央部の最大の深さは、前記サイプの最大の深さよりも小さいのが望ましい。
【0014】
本発明のタイヤにおいて、前記サイプは、前記第1方向に傾斜しているのが望ましい。
【0015】
本発明のタイヤにおいて、前記サイプは、前記第2横溝に連通していないのが望ましい。
【0016】
本発明のタイヤにおいて、前記サイプは、その長さ方向及び深さ方向に波状に延びる3Dサイプであるのが望ましい。
【0017】
本発明のタイヤにおいて、前記第1横溝のタイヤ軸方向に対する角度は、20~40°であるのが望ましい。
【0018】
本発明のタイヤにおいて、前記中央部のタイヤ軸方向に対する角度は、50~70°であるのが望ましい。
【0019】
本発明のタイヤにおいて、前記両端部のタイヤ軸方向に対する角度は、20~40°であるのが望ましい。
【0020】
本発明のタイヤは、車両への装着の向きが指定され、前記トレッド部は、車両装着時に車両内側となる内側トレッド端を含み、前記第1陸部は、タイヤ赤道と前記内側トレッド端との間に設けられているのが望ましい。
【0021】
本発明のタイヤにおいて、前記トレッド部は、複数の前記周方向溝を含み、前記周方向溝は、前記第1陸部のタイヤ赤道側に隣接する内側クラウン周方向溝を含み、前記内側クラウン周方向溝は、前記複数の周方向溝のうち最も大きい溝幅を有しているのが望ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明のタイヤは、上記の構成を採用したことによって、優れた氷上旋回性能を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態のタイヤのトレッド部の展開図である。
【
図6】
図2のサイプのサイプ壁の拡大斜視図である。
【
図7】
図1の第1陸部、第2陸部及び第3陸部の拡大図である。
【
図8】
図1の第4陸部及び第5陸部の拡大図である。
【
図9】本発明の他の実施形態の第1陸部の拡大図である。
【
図10】本発明の他の実施形態の第1陸部の拡大図である。
【
図11】比較例のタイヤの第1陸部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態のタイヤ1のトレッド部2の展開図である。
図1に示されるように、本実施形態のタイヤ1は、例えば、冬期での使用を前提とした乗用車用の空気入りタイヤとして用いられる。但し、本発明のタイヤ1は、このような態様に限定されるものではない。
【0025】
本実施形態のタイヤ1は、例えば、車両への装着の向きが指定されたトレッド部2を有する。車両への装着の向きは、例えば、サイドウォール部等に文字やマークで表示されている(図示省略)。
【0026】
トレッド部2は、外側トレッド端Toとの内側トレッド端Tiとの間でタイヤ周方向に連続して延びる4本の周方向溝3と、前記周方向溝3に区分された5つの陸部4とで構成されている。すなわち、本発明のタイヤ1は、所謂5リブタイヤとして構成されている。但し、本発明のタイヤ1は、このような態様に限定されるものではなく、例えば、3本の周方向溝3と4つの陸部4で構成された所謂4リブタイヤでも良い。
【0027】
外側トレッド端Toは、車両装着時に車両外側に位置することが意図されたトレッド端であり、内側トレッド端Tiは、車両装着時に車両内側に位置することが意図されたトレッド端である。外側トレッド端To及び内側トレッド端Tiは、それぞれ、正規状態のタイヤ1に正規荷重が負荷されキャンバー角0°で平面に接地したときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置に相当する。
【0028】
「正規状態」とは、各種の規格が定められた空気入りタイヤの場合、タイヤが正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも、無負荷の状態である。各種の規格が定められていないタイヤや、非空気式タイヤの場合、前記正規状態は、タイヤの使用目的に応じた標準的な使用状態であって無負荷の状態を意味する。本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ各部の寸法等は、前記正規状態で測定された値である。なお、本明細書で説明された各構成は、ゴム成形品に含まれる通常の誤差を許容するものとする。
【0029】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。
【0030】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0031】
「正規荷重」は、各種の規格が定められた空気入りタイヤの場合、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。また、各種の規格が定められていないタイヤや、非空気式タイヤの場合、「正規荷重」は、タイヤの標準使用状態において、1つのタイヤに作用する荷重を指す。前記「標準使用状態」とは、タイヤの使用目的に応じた標準的な車両にタイヤが装着され、かつ、前記車両が走行可能な状態で平坦な路面上に静止している状態を指す。
【0032】
周方向溝3は、例えば、内側クラウン周方向溝5、内側ショルダー周方向溝6、外側クラウン周方向溝7及び外側ショルダー周方向溝8を含む。内側クラウン周方向溝5は、タイヤ赤道Cと内側トレッド端Tiとの間に設けられている。内側ショルダー周方向溝6は、内側クラウン周方向溝5と内側トレッド端Tiとの間に設けられている。外側クラウン周方向溝7は、タイヤ赤道Cと外側トレッド端Toとの間に設けられている。外側ショルダー周方向溝8は、外側クラウン周方向溝7と外側トレッド端Toとの間に設けられている。
【0033】
周方向溝3は、タイヤ周方向に直線状に延びるものや、ジグザグ状に延びるもの等、種々の態様を採用し得る。本実施形態では、内側クラウン周方向溝5、内側ショルダー周方向溝6及び外側ショルダー周方向溝8が、タイヤ周方向に平行に直線状に延びている。一方、外側クラウン周方向溝7は、ジグザグ状に延びている。但し、本発明のタイヤ1は、このような態様に限定されるものではない。
【0034】
外側ショルダー周方向溝8又は内側ショルダー周方向溝6の溝中心線からタイヤ赤道Cまでのタイヤ軸方向の距離L1は、例えば、トレッド幅TWの20%~35%である。外側クラウン周方向溝7又は内側クラウン周方向溝5の溝中心線からタイヤ赤道Cまでのタイヤ軸方向の距離L2は、例えば、トレッド幅TWの3%~15%である。望ましい態様では、内側クラウン周方向溝5の溝中心線からタイヤ赤道Cまでのタイヤ軸方向の距離は、外側クラウン周方向溝7の溝中心線からタイヤ赤道Cまでのタイヤ軸方向の距離よりも大きい。なお、トレッド幅TWは、前記正規状態における外側トレッド端Toから内側トレッド端Tiまでのタイヤ軸方向の距離である。
【0035】
周方向溝3の溝幅W1は、少なくとも3mm以上であるのが望ましい。望ましい態様では、周方向溝3の溝幅W1は、トレッド幅TWの2.0%~5.0%である。本実施形態では、4本の周方向溝3の内、内側クラウン周方向溝5が最も大きい溝幅を有している。
【0036】
陸部4は、第1陸部11を含む。第1陸部11は、例えば、タイヤ赤道Cと内側トレッド端Tiとの間に設けられているのが望ましい。本実施形態の第1陸部11は、内側クラウン周方向溝5と内側ショルダー周方向溝6との間に区分されている。
【0037】
図2には、第1陸部11の拡大図が示されている。
図2に示されるように、第1陸部11には、第1陸部11を横断する複数の第1横溝16が設けられている。これにより、第1陸部11は、第1横溝16によって区分された複数の第1ブロック18を含んでいる。
【0038】
第1ブロック18の少なくとも1つには、第1ブロック18をタイヤ周方向で分断する第2横溝20と、複数のサイプ25とが形成されている。本実施形態の第2横溝20は、内側クラウン周方向溝5から内側ショルダー周方向溝6まで延びることにより、第1ブロック18を分断している。
【0039】
本明細書において、「サイプ」とは、微小な幅を有する切れ込み要素であって、互いに向き合う2つのサイプ壁の間の幅が0.6mm以下のものを指す。サイプの前記幅は、望ましくは0.1~0.5mmであり、より望ましくは0.2~0.4mmである。本実施形態のサイプは、その全深さに亘って、前記幅が上述の範囲とされている。なお、本明細書では、ある切れ込み要素の横断面において、幅が0.6mm以下の領域をその全深さの50%以上含むものは、幅が0.6mmを超える領域を一部に含むものであっても、サイプ(溝要素を含むサイプ)として扱うものとする。また、ある切れ込み要素の横断面において、幅が0.6mmよりも大きい領域をその全深さの50%以上含むものは、幅が0.6mm以下の領域を一部に含むものであっても、溝(サイプ要素を含む溝)として扱うものとする。
【0040】
図3には、第2横溝20の拡大図が示されている。
図3に示されるように、第2横溝20は、タイヤ軸方向に対して第1方向に傾斜した一対の両端部21と、両端部21の間に位置し、かつ、第1方向とは逆向きの第2方向に傾斜した中央部22とを含む。本明細書において、「第1方向に傾斜する」とは、右上がりに傾斜している態様を指し、「第2方向に傾斜する」とは、右下がりに傾斜している態様を指す。本発明のタイヤ1は、上記の構成を採用したことによって、優れた氷上旋回性能を発揮することができる。その理由としては、以下のメカニズムが推察される。
【0041】
氷上走行時、本発明のタイヤ1は、第1横溝16によって氷上の水膜をタイヤ周方向に分断する。一方、第2横溝20が中央部22及び両端部21を含むことにより、第2横溝20のエッジは、タイヤ周方向の一方側に凸となる部分と、タイヤ周方向の他方側に凸となる部分を含む。このため、第2横溝20のエッジは、第1横溝16が分断した水膜をさらにタイヤ軸方向に分断できる。また、第1横溝16及び第2横溝20によって分断された水膜は、サイプ25によって効果的に吸収される。このような作用により、各溝及びサイプのエッジが氷上においても大きな摩擦力を発揮できる。さらに、第2横溝20の中央部22及び両端部21のエッジは、タイヤ軸方向の摩擦力を提供するため、氷上旋回性能が向上する。
【0042】
以下、本実施形態のさらに詳細な構成が説明される。なお、以下で説明される各構成は、本実施形態の具体的態様を示すものである。したがって、本発明は、以下で説明される構成を具えないものであっても、上述の効果を発揮し得るのは言うまでもない。また、上述の特徴を具えた本発明のタイヤに、以下で説明される各構成のいずれか1つが単独で適用されても、各構成に応じた性能の向上は期待できる。さらに、以下で説明される各構成のいくつかが複合して適用された場合、各構成に応じた複合的な性能の向上が期待できる。
【0043】
図2に示されるように、複数の第1横溝16は、それぞれ、タイヤ軸方向に対して同じ向きに傾斜している。本実施形態の第1横溝16は、それぞれ、第2方向に傾斜している。第1横溝16のタイヤ軸方向に対する角度θ1は、例えば、20~40°である。このような第1横溝16は、氷上においてタイヤ軸方向の摩擦力も提供できる。
【0044】
本実施形態の第1横溝16は、例えば、一定の溝幅で直線状に延びている。第1横溝16の溝幅W2は、例えば、1.0~8.0mmであり、望ましくは2.0~6.0mmである。
【0045】
図4には、
図2のA-A線断面図が示されている。
図4に示されるように、第1横溝16の最大の深さd1は、例えば、3.0~11.0mmであり、望ましくは6.0~9.5mmである。
【0046】
第1横溝16の溝底面は、例えば、部分的にタイヤ半径方向外側に突出した突出部16aを含む。突出部16aは、例えば、第1横溝16のタイヤ軸方向の端部に設けられており、本実施形態では第1横溝16の内側クラウン周方向溝5側の端部に設けられている。突出部16aのタイヤ半径方向の高さh1は、例えば、0.5~2.0mmである。突出部16aのタイヤ軸方向の長さは、第1横溝16のタイヤ軸方向の長さの望ましくは30%以下であり、より望ましくは5%~15%である。このような突出部16aは、第1横溝16内に雪や氷の欠片が詰まるのを防ぐことができる。
【0047】
図2に示されるように、第1横溝16と内側クラウン周方向溝5とが連なって構成される鋭角の出隅部28には、第1ブロック18の踏面に傾斜して連なる面取り部28aが構成されている。このような面取り部28aは、第1ブロック18の剛性を向上させるのに役立つ。
【0048】
第2横溝20の溝幅は、第1横溝16の溝幅W2よりも小さい。具体的には、第2横溝20の最大の溝幅W3が、一対の両端部21の一方に構成されており、この溝幅W3が第1横溝16の溝幅W2よりも小さい。第2横溝20の前記溝幅W3は、第1横溝16の溝幅W2の40%~60%である。このような第2横溝20は、氷上旋回性能とドライ路面での操縦安定性(以下、単に「操縦安定性」という場合がある。)とをバランス良く向上させるのに役立つ。
【0049】
図3に示されるように、第2横溝20の中央部22は、例えば、第1陸部11(
図2に示す)のタイヤ軸方向の中心位置を横切っている。中央部22のタイヤ軸方向の長さL3は、第1陸部11のタイヤ軸方向の幅W4(
図2に示され、以下、同様である。)の25%~45%である。なお、本明細書において、溝の長さは、溝中心線で測定されるものとする。
【0050】
中央部22は、例えば、タイヤ軸方向に対して一定の角度で傾斜し、直線状に延びている。中央部22のタイヤ軸方向に対する角度θ2は、第1横溝16のタイヤ軸方向に対する角度θ1(
図2に示す)よりも大きいのが望ましい。具体的には、中央部22の前記角度は、50~70°であり、望ましくは55~65°である。
【0051】
図2に示されるように、中央部22の溝幅W5は、第2横溝20の最小の溝幅を構成している。中央部22の溝幅W5は、例えば、0.6mmよりも大きく、かつ、3.0mm以下である。本実施形態の中央部22は、例えば、溝幅が0.6mmより大きくかつ2.0mm以下である細溝として構成されている。これにより、中央部22において互いに向き合う2つの溝壁が接触し、第1ブロック18の剛性が向上する。したがって、第1ブロック18の倒れ込みが抑制され、操縦安定性が向上する。
【0052】
中央部22の深さは、第1横溝16の深さよりも小さいのが望ましい。さらに望ましい態様では、中央部22の最大の深さは、サイプ25の最大の深さよりも小さい。中央部22の前記深さは、サイプ25の前記深さの20%~40%が望ましい。また、中央部22の深さは、例えば、0.2~5.0mmであり、望ましくは0.5~3.0mmである。これにより、氷上旋回性能及び操縦安定性がバランス良く向上する。
【0053】
本実施形態の両端部21は、内側クラウン周方向溝5に連なる第1端部23と、内側ショルダー周方向溝6に連なる第2端部24とで構成されている。また、第1端部23及び第2端部24は、それぞれ、タイヤ軸方向に対して一定の角度で傾斜し、直線状に延びている。これにより、本実施形態の第2横溝20は、中央部22と、中央部22から内側クラウン周方向溝5まで延びる第1端部23と、中央部22から内側ショルダー周方向溝6まで延びる第2端部24とを含むN字状の横溝に構成されている。
【0054】
図3に示されるように、両端部21のタイヤ軸方向に対する角度θ3は、例えば、10~50°であり、望ましくは20~40°である。また、中央部22と第1端部23との間の角度θ4、及び、中央部22と第2端部24との間の角度θ5は、それぞれ、70~110°であり、望ましくは80~100°である。これにより、第2横溝20のエッジがさらに氷上の水膜を切断し易くなり、氷上旋回性能が向上する。
【0055】
両端部21の溝幅W6は、例えば、0.6mmよりも大きく、かつ、5.0mm以下である。本実施形態の両端部21の溝幅W6は、例えば、1.0~4.0mmであり、望ましくは2.0~3.0mmである。さらに望ましい態様では、一対の両端部21のそれぞれの溝幅W6が、中央部22の溝幅W5よりも大きい。具体的には、前記溝幅W6は、前記溝幅W5の2.0~3.5倍である。また、第2端部24の溝幅が、第1端部23の溝幅よりも小さい。このような両端部21は、氷上旋回性能を効果的に高める。
【0056】
氷上旋回性能と操縦安定性とをバランス良く向上させるために、一対の両端部21のそれぞれのタイヤ軸方向の長さL4は、例えば、中央部22のタイヤ軸方向の長さL3よりも大きい。一対の両端部21のそれぞれのタイヤ軸方向の長さL4は、例えば、第1陸部11のタイヤ軸方向の幅W4の25%~40%である。
【0057】
図5には、
図2のB-B線断面図が示されている。
図5に示されるように、両端部21の深さは、第1横溝16の深さよりも小さく、かつ、中央部22の深さよりも大きいのが望ましい。両端部21の最大の深さは、例えば、2.0~7.0mmであり、望ましくは3.0~7.0mmである。
【0058】
第1端部23及び第2端部24は、それぞれ、中央部22から第2横溝20の端に向かって、深さが大きくなっている。望ましい態様では、第1端部23の最大の深さd2は、第2端部24の最大の深さd3よりも大きい。これにより、第1ブロック18の剛性が内側トレッド端Ti側に向かって大きくなるため、ドライ路面での操縦安定性が向上する。
【0059】
図2に示されるように、第1ブロック18には、タイヤ軸方向に対して傾斜した複数のサイプ25が設けられている。本実施形態では、サイプ25の少なくとも1本が第1方向に傾斜しており、望ましい態様では、第1ブロック18に設けられた各サイプ25が第1方向に傾斜している。各サイプ25のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、10~50°であり、望ましくは20~40°である。このようなサイプ25は、第1横溝16及び第2横溝20と協働して、多方向に摩擦力を提供し、氷上旋回性能を向上させる。
【0060】
本実施形態では、各サイプ25がジグザグ状に延びている。この場合、上述の傾斜の向きや角度は、サイプの両端を結んだ直線の傾斜の向きや角度で判断するものとする。
【0061】
サイプ25の少なくとも1本は、第2横溝20に連通していないのが望ましい。より望ましい態様では、第1ブロック18に設けられた各サイプ25が、第2横溝20に連通していない。各サイプ25の端と第2横溝20との間隔は、例えば、0.5~2.0mmであり、望ましくは0.8~1.2mmである。これにより、各サイプ25の長さが十分に確保され、かつ、第1ブロック18の剛性が維持される。
【0062】
図6には、サイプ25のサイプ壁25wを示す拡大斜視図が示されている。
図6に示されるように、本実施形態の各サイプ25は、例えば、その長さ方向及び深さ方向に波状に延びる3Dサイプである。これにより、互いに向き合う2つのサイプ壁25wが接触したとき、第1ブロック18の見かけの剛性が高められ、操縦安定性が向上する。但し、本発明は、このような態様に限定されるものではなく、サイプ25は、例えば、その長さ方向及び深さ方向に直線状に延びるものでも良い。
【0063】
氷上旋回性能とドライ路面での操縦安定性とをバランス良く向上させるために、サイプ25の深さは、例えば、2.0~9.0mmであり、望ましくは4.0~8.0mmである。
【0064】
図1に示されるように、本実施形態のトレッド部2は、上述の第1陸部11に加え、第2陸部12、第3陸部13、第4陸部14及び第5陸部15を含む。第2陸部12は、第1陸部11の内側トレッド端Ti側に隣接しており、内側ショルダー周方向溝6と内側トレッド端Tiとの間に区分されている。第3陸部13は、第1陸部11の外側トレッド端To側に隣接しており、外側クラウン周方向溝7と内側クラウン周方向溝5との間に区分されている。第4陸部14は、第3陸部13の外側トレッド端To側に隣接しており、外側クラウン周方向溝7と外側ショルダー周方向溝8との間に区分されている。第5陸部15は、第4陸部14の外側トレッド端To側に隣接しており、外側ショルダー周方向溝8と外側トレッド端Toとの間に区分されている。
【0065】
図7には、第1陸部11、第2陸部12及び第3陸部13の拡大図が示されている。
図7に示されるように、第2陸部12には、第2陸部12を横断する複数の内側ショルダー横溝30が設けられている。これにより、第2陸部12は、複数の内側ショルダーブロック31を含んでいる。
【0066】
内側ショルダー横溝30は、例えば、第1方向に傾斜している。内側ショルダー横溝30のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、5~15°である。さらに望ましい態様では、内側ショルダー横溝30のタイヤ軸方向に対する角度は、第1横溝16のタイヤ軸方向に対する角度よりも小さい。このような内側ショルダー横溝30は、氷上でのトラクション性能を高める。
【0067】
内側ショルダー横溝30は、第1溝縁30a及び第2溝縁30bを含む。前記第1溝縁30aは、例えば、直線状に延びている。第2溝縁30bは、例えば、ジグザグ状に曲がっている。より具体的には、第2溝縁30bは、その長さ方向に緩傾斜縁30cと急傾斜縁30dとを交互に含む。緩傾斜縁30cは、タイヤ軸方向に延びている。急傾斜縁30dのタイヤ軸方向に対する角度は、緩傾斜縁30cのタイヤ軸方向に対する角度よりも大きい。また、急傾斜縁30dの長さは、緩傾斜縁30cの長さよりも小さい。このような第2溝縁30bを有する内側ショルダー横溝30は、その内部で雪や氷屑を押し固めることができる。
【0068】
本実施形態では、内側ショルダー横溝30の内側ショルダー周方向溝6側の端部をタイヤ軸方向に平行に延長した領域は、第1横溝16の内側ショルダー周方向溝6側の端部の少なくとも一部と重複する。これにより、内側ショルダー横溝30及び第1横溝16が協働して氷上でのトラクション性能を高める。
【0069】
内側ショルダーブロック31には、タイヤ周方向に延びる内側ショルダー縦細溝32が設けられている。内側ショルダー縦細溝32は、例えば、タイヤ周方向に隣り合う2つの内側ショルダー横溝30の間を連通している。このような内側ショルダー縦細溝32は、氷上においてタイヤ軸方向の摩擦力を提供する。
【0070】
内側ショルダーブロック31は、内側ショルダー周方向溝6と内側ショルダー縦細溝32との間に区分された第1片33と、内側ショルダー縦細溝32よりも内側トレッド端Ti側に区分された第2片34とを含んでいる。
【0071】
第1片33及び第2片34には、それぞれ、ジグザグ状に延びる複数の内側ショルダーサイプ35が設けられている。各内側ショルダーサイプ35は、例えば、第1方向に傾斜している。望ましい態様では、各内側ショルダーサイプ35のタイヤ軸方向に対する角度は、第1ブロック18に設けられたサイプ25のタイヤ軸方向に対する角度よりも小さい。これにより、氷上旋回性能と氷上でのトラクション性能とがバランス良く向上する。
【0072】
望ましい態様では、第1片33に設けられた複数の内側ショルダーサイプ35のサイプ間隔は、第1ブロック18に設けられた複数のサイプ25のサイプ間隔よりも大きいのが望ましい。さらに望ましい態様では、第2片34に設けられた複数の内側ショルダーサイプ35のサイプ間隔は、第1片33に設けられた複数の内側ショルダーサイプ35のサイプ間隔よりも大きいのが望ましい。これにより、第2陸部12の剛性が第1陸部11の剛性より大きくなり、ドライ路面での操縦安定性が向上する。なお、「サイプ間隔」とは、2つのサイプ間の最小の距離を意味する。
【0073】
第3陸部13には、第3陸部13を横断する複数のクラウン横溝40が設けられている。これにより、第3陸部13は、クラウン横溝40に区分された複数のクラウンブロック41を含んでいる。
【0074】
クラウン横溝40は、例えば、第1方向に傾斜している。クラウン横溝40のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、15~25°である。さらに望ましい態様では、クラウン横溝40のタイヤ軸方向に対する角度は、第1横溝16のタイヤ軸方向に対する角度よりも小さい。また、クラウン横溝40のタイヤ軸方向に対する角度は、内側ショルダー横溝30のタイヤ軸方向に対する角度よりも大きい。これにより、クラウン横溝40、第1横溝16及び内側ショルダー横溝30が協働して多方向に摩擦力を提供し、氷上での旋回性能及びトラクション性能が向上する。
【0075】
クラウン横溝40の内側クラウン周方向溝5側の端部は、第1横溝16の内側クラウン周方向溝5側の端部をタイヤ軸方向に平行に延長した領域と重複しないのが望ましい。また、クラウン横溝40の内側クラウン周方向溝5側の端部は、第2横溝20の第1端部23をその長さ方向に沿って延長した領域と重複するのが望ましい。これにより、クラウン横溝40及び第1横溝16が協働して氷上でのトラクション性能を向上させる。
【0076】
クラウン横溝40は、例えば、外側クラウン周方向溝7側の端部の溝幅が外側トレッド端To側に向かって大きくなっているのが望ましい。このようなクラウン横溝40は、内部に雪や氷屑が詰まり難い。
【0077】
クラウンブロック41には、例えば、第1途切れ溝43及び第2途切れ溝44と、ジグザグ状に延びる複数のクラウンサイプ45とが設けられている。
【0078】
第1途切れ溝43は、内側クラウン周方向溝5から延びクラウンブロック41内で途切れている。第2途切れ溝44は、外側クラウン周方向溝7から延びクラウンブロック41内で途切れている。本実施形態の第1途切れ溝43及び第2途切れ溝44は、それぞれ、クラウンブロック41のタイヤ軸方向の中心位置まで達することなく途切れている。また、第1途切れ溝43及び第2途切れ溝44は、それぞれ、第2方向に傾斜している。このような第1途切れ溝43及び第2途切れ溝44は、氷上旋回性能と操縦安定性とをバランス良く高めるのに役立つ。
【0079】
各クラウンサイプ45は、例えば、第2方向に傾斜している。クラウンサイプ45のタイヤ軸方向に対する角度は、第1ブロック18に設けられたサイプ25のタイヤ軸方向に対する角度よりも小さい。このようなクラウンサイプ45は、氷上での旋回性能及びトラクション性能をバランス良く向上させる。
【0080】
図8には、第4陸部14及び第5陸部15の拡大図が示されている。
図8に示されるように、第4陸部14には、第4陸部14を横断する複数の外側ミドル横溝46が設けられている。これにより、第4陸部14は、外側ミドル横溝46に区分された複数の外側ミドルブロック47を含んでいる。
【0081】
外側ミドル横溝46は、例えば、第2方向に傾斜している。外側ミドル横溝46のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、15~25°である。さらに望ましい態様では、外側ミドル横溝46のタイヤ軸方向に対する角度は、第1横溝16のタイヤ軸方向に対する角度よりも小さい。
【0082】
外側ミドルブロック47には、外側ミドル途切れ溝48と、ジグザグ状に延びる複数の外側ミドルサイプ49が設けられている。
【0083】
外側ミドル途切れ溝48は、例えば、外側クラウン周方向溝7から延びかつ外側ミドルブロック47内で途切れている。外側ミドル途切れ溝48は、例えば、第2方向に傾斜している。外側ミドル途切れ溝48のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、10~20°である。このような外側ミドル途切れ溝48は、外側ミドルブロック47の剛性を維持しつつ、氷上でのトラクション性能を高めるのに役立つ。
【0084】
図1に示されるように、外側ミドル途切れ溝48の外側クラウン周方向溝7側の端部は、クラウン横溝40の外側クラウン周方向溝7側の端部をタイヤ軸方向に平行に延長した領域と重複しているのが望ましい。これにより、外側ミドル途切れ溝48及びクラウン横溝40が協働して氷上でのトラクション性能を高める。
【0085】
図8に示されるように、外側ミドルサイプ49は、例えば、第1方向に傾斜している。外側ミドルサイプ49のタイヤ軸方向に対する角度は、第1ブロック18に設けられたサイプ25のタイヤ軸方向に対する角度よりも小さいのが望ましい。このような外側ミドルサイプ49は、多方向に摩擦力を提供し、氷上旋回性能を高めるのに役立つ。
【0086】
第5陸部15には、第5陸部15を横断する複数の外側ショルダー横溝50が設けられている。これにより、第5陸部15は、外側ショルダー横溝50に区分された複数の外側ショルダーブロック51を含んでいる。
【0087】
外側ショルダー横溝50は、例えば、タイヤ軸方向に対して10°以下の角度で延びている。望ましい態様では、外側ショルダー横溝50の外側ショルダー周方向溝8側の端部は、外側ミドル横溝46の外側ショルダー周方向溝8側の端部をタイヤ軸方向に平行に延長した領域と重複するのが望ましい。
【0088】
外側ショルダーブロック51には、タイヤ周方向に延びる外側ショルダー縦細溝52とジグザグ状に延びる複数の外側ショルダーサイプ53とが設けられている。
【0089】
外側ショルダー縦細溝52は、タイヤ周方向で隣り合う外側ショルダー横溝50の間を連通している。外側ショルダー縦細溝52は、例えば、部分的に折れ曲がっているのが望ましい。このような外側ショルダー縦細溝52は、氷上において、タイヤ周方向の摩擦力も提供する。
【0090】
外側ショルダーサイプ53のタイヤ軸方向に対する角度は、第1ブロック18に設けられたサイプ25のタイヤ軸方向に対する角度よりも小さいのが望ましい。
【0091】
図1に示されるように、本実施形態のトレッド部2のランド比は、例えば、70%~90%であり、望ましくは80%~88%である。これにより、氷上旋回性能とドライ路面での操縦安定性がバランス良く向上する。なお、本明細書において、「ランド比」とは、トレッド部2に設けられた溝及びサイプを全て埋めた状態におけるトレッド部2の接地面の面積に対する、実際のトレッド部の接地面の面積の割合を意味する。
【0092】
以下、本発明の他の実施形態が説明される。他の実施形態を示す図において、既に説明された要素には、上述のものと同じ符号が付されており、上述の構成を適用することができる。
【0093】
図9及び
図10には、他の実施形態の第1陸部11の拡大図が示されている。
図9に示される実施形態では、第2横溝20について、中央部22のタイヤ軸方向に対する角度θ2、及び、両端部21のタイヤ軸方向に対する角度θ3が、それぞれ、第1横溝16のタイヤ軸方向に対する角度θ1よりも大きい。これにより、氷上旋回性能がより一層向上する。
【0094】
また、
図9で示される実施形態では、中央部22と第1端部23との間の角度θ4、及び、中央部22と第2端部24との間の角度θ5が、それぞれ、鋭角とされており、望ましくは60~80°とされている。これにより、第2横溝20のエッジが水膜を切断し易くなる。
【0095】
図10に示される実施形態では、第2横溝20について、中央部22のタイヤ軸方向に対する角度θ2、及び、両端部21のタイヤ軸方向に対する角度θ3が、それぞれ、第1横溝16のタイヤ軸方向に対する角度θ1よりも小さい。
【0096】
また、
図10で示される実施形態では、中央部22と第1端部23との間の角度θ4、及び、中央部22と第2端部24との間の角度θ5が、それぞれ、鈍角とされており、望ましくは130~150°とされている。これにより、第1ブロック18の剛性が向上し、優れた操縦安定性が発揮される。
【0097】
以上、本発明の一実施形態のタイヤが詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【実施例】
【0098】
図1の基本トレッドパターンを有するサイズ195/65R15のタイヤが、表1の仕様に基づき試作された。比較例として、
図11に示される第1陸部aを有するタイヤが試作された。
図11に示されるように、比較例の第1陸部aに区分されたブロックbには、内側ショルダー周方向溝cから延びかつブロックb内で途切れる途切れ溝dが設けられている。比較例のタイヤは、上述の構成を除き、
図1に示されるものと実質的に同じパターンを有している。各テストタイヤについて、氷上旋回性能及びドライ路面での操縦安定性がテストされた。各テストタイヤの共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
装着リム:15×6.0JJ
タイヤ内圧:前輪230kPa、後輪230kPa
テスト車両:排気量1500cc、前輪駆動車
タイヤ装着位置:全輪
【0099】
<氷上旋回性能>
上記テスト車両で氷上を走行したときの旋回性能が、運転者の官能により評価された。結果は、比較例を100とする評点であり、数値が大きい程、氷上旋回性能が優れていることを示す。
【0100】
<ドライ路面での操縦安定性>
上記テスト車両を用いて、ドライ路面を走行したときの操縦安定性が、運転者の官能により評価された。結果は、比較例を100とする評点であり、数値が大きい程、ドライ路面での操縦安定性が優れていることを示す。
テストの結果が表1に示される。
【0101】
【0102】
表1に示されるように、本発明の第2横溝を有する各実施例は、優れた氷上旋回性能を発揮していることが確認できた。また、各実施例は、ドライ路面での操縦安定性を維持していることも確認できた。
【0103】
図2で示される第1陸部を有する実施形態について、中央部の長さ及び深さを変化させたテストタイヤが作成され、上述のテストが実施された。なお、第1陸部の幅及びサイプの深さは、各実施例において共通している。
テストの結果が表2に示される。
【0104】
【0105】
表2に示されるように、中央部の長さ及び深さが、氷上旋回性能及びドライ路面での操縦安定性と高い関連性を有していることが確認できた。
【符号の説明】
【0106】
2 トレッド部
3 周方向溝
11 第1陸部
16 第1横溝
18 第1ブロック
20 第2横溝
21 両端部
22 中央部
25 サイプ