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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】量子デバイス及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20240625BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20240625BHJP
   H01L 23/32 20060101ALI20240625BHJP
   H10N 60/82 20230101ALI20240625BHJP
【FI】
H01L21/60 311Q
H01L23/12 F
H01L23/12 Q
H01L23/32 D
H10N60/82
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020106152
(22)【出願日】2020-06-19
(65)【公開番号】P2022002238
(43)【公開日】2022-01-06
【審査請求日】2023-05-10
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「高効率・高速処理を可能とするAIチップ・次世代コンピューティングの技術開発/次世代コンピューティング技術の開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】難波 兼二
(72)【発明者】
【氏名】山口 彩未
(72)【発明者】
【氏名】宮田 明
(72)【発明者】
【氏名】菊池 克
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 秀
(72)【発明者】
【氏名】西 教徳
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 英行
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-537239(JP,A)
【文献】特開2000-174050(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
H01L 23/12
H10N 60/82
H01L 23/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターポーザと、
量子チップと、
前記インターポーザと前記量子チップとの間に設けられ、前記インターポーザの配線層と前記量子チップの配線層とを電気的に接続する接続部と、
を備え、
前記接続部は、
前記インターポーザの主面に配置された複数のピラーと、
前記複数のピラーの表面において前記量子チップの配線層と接触するように、かつ、前記複数のピラーのそれぞれの先端外周部における厚みが先端中央部における厚みよりも厚くなるように設けられた金属膜と、
を有
前記金属膜は
単層構造を有し、Nb又はそれを含む合金によって構成されている、
量子デバイス。
【請求項2】
インターポーザと、
量子チップと、
前記インターポーザと前記量子チップとの間に設けられ、前記インターポーザの配線層と前記量子チップの配線層とを電気的に接続する接続部と、
を備え、
前記接続部は、
前記インターポーザの主面に配置された複数のピラーと、
前記複数のピラーの表面において前記量子チップの配線層と接触するように、かつ、前記複数のピラーのそれぞれの先端外周部における厚みが先端中央部における厚みよりも厚くなるように設けられた金属膜と、
を有し、
前記金属膜は、多層構造を有し、少なくとも一つの層が超電導材料によって構成されている、
量子デバイス。
【請求項3】
前記金属膜は、多層構造を有し、最上位層がそれ以外の層よりも展延性の高い金属材料によって構成されている、
請求項に記載の量子デバイス。
【請求項4】
前記金属膜は、多層構造を有し、前記複数のピラーに接する層がNb又はそれを含む合金によって構成され、かつ、最上位層がIn又はそれを含む合金によって構成されている、
請求項又はに記載の量子デバイス。
【請求項5】
前記金属膜は、三層構造を有し、前記複数のピラーに接する層がNb又はそれを含む合金によって構成され、最上位層がIn又はそれを含む合金によって構成され、かつ、これらの間の層がTi又はTiNによって構成されている、
請求項の何れか一項に記載の量子デバイス。
【請求項6】
前記金属膜は、前記インターポーザの配線層の表面から連続するようにして、前記複数のピラーの表面に設けられている、
請求項1~の何れか一項に記載の量子デバイス。
【請求項7】
インターポーザの主面に複数のピラーを配置するステップと、
前記複数のピラーの表面に、単層構造を有し、Nb又はそれを含む合金によって構成されている金属膜を設けるステップと、
量子チップの配線層と前記金属膜とが接するように、前記インターポーザの主面に前記量子チップを配置するステップと、
を備え、
前記金属膜を設けるステップでは、前記金属膜を、前記複数のピラーのそれぞれの先端外周部における厚みが先端中央部における厚みよりも厚くなるように設ける、
量子デバイスの製造方法。
【請求項8】
インターポーザの主面に複数のピラーを配置するステップと、
前記複数のピラーの表面に、多層構造を有し、少なくとも一つの層が超電導材料によって構成されている金属膜を設けるステップと、
量子チップの配線層と前記金属膜とが接するように、前記インターポーザの主面に前記量子チップを配置するステップと、
を備え、
前記金属膜を設けるステップでは、前記金属膜を、前記複数のピラーのそれぞれの先端外周部における厚みが先端中央部における厚みよりも厚くなるように設ける、
量子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、量子デバイス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
量子コンピュータ装置では、超電導材料を用いて構成された量子デバイスが搭載されている。この量子デバイスは、極低温の環境下に置かれることで、超電導現象を利用した動作を実現することができる。なお、極低温とは、例えば、ニオブ(Nb)の場合には9K程度、アルミニウム(Al)の場合には1.2K程度である。
【0003】
量子デバイスに関連する技術は、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1には、量子ドットデバイスパッケージとインターポーザとが結合コンポーネント(ソルダボール等を含む)によって結合された構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2019-537239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、量子ドットデバイスパッケージ(量子チップ)と、インターポーザとが、結合コンポーネントによってどのように結合されているのか具体的な内容が開示されていない。したがって、特許文献1では、デバイス冷却時などにおいて、各部材の熱膨張計数の差に起因して発生する意図しない応力が結合コンポーネントに加わってしまい、結合コンポーネントによる良好な結合を維持することができない可能性がある。つまり、特許文献1の構造では、量子デバイスの品質を低下させてしまうという課題があった。
【0006】
本開示の目的は、上述した課題を解決する量子デバイス及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施の形態によれば、量子デバイスは、インターポーザと、量子チップと、前記インターポーザと前記量子チップとの間に設けられ、前記インターポーザの配線層と前記量子チップの配線層とを電気的に接続する接続部と、を備え、前記接続部は、前記インターポーザの主面に配置された複数のピラーと、前記複数のピラーの表面において前記量子チップの配線層と接触するように、かつ、前記複数のピラーのそれぞれの先端外周部における厚みが先端中央部における厚みよりも厚くなるように設けられた金属膜と、を有する。
【0008】
一実施の形態によれば、量子デバイスの製造方法は、インターポーザの主面に複数のピラーを配置するステップと、前記複数のピラーの表面に金属膜を設けるステップと、量子チップの配線層と前記金属膜とが接するように、前記インターポーザの主面に前記量子チップを配置するステップと、を備え、前記金属膜を設けるステップでは、前記金属膜を、前記複数のピラーのそれぞれの先端外周部における厚みが先端中央部における厚みよりも厚くなるように設ける。
【発明の効果】
【0009】
前記一実施の形態によれば、品質を向上させることが可能な量子デバイス及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1に係る量子デバイスの概略断面図である。
図2図1に示す量子デバイスの接続部を拡大した概略断面図である。
図3図1に示す量子デバイスの製造方法を説明するための図である。
図4図1に示す量子デバイスの変形例の接続部を拡大した概略断面図である。
図5】構想段階の量子デバイスの概略断面図である。
図6図5に示す量子デバイスの接続部を拡大した概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について説明する。なお、図面は簡略的なものであるから、この図面の記載を根拠として実施の形態の技術的範囲を狭く解釈してはならない。また、同一の要素には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0012】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明する。ただし、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、応用例、詳細説明、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。例えば、量子チップ、インターポーザがそれぞれ複数構成されることも含む。
【0013】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(動作ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数等(個数、数値、量、範囲等を含む)についても同様である。
【0014】
以下、量子コンピューティングとは、量子力学的な現象(量子ビット)を用いてデータを操作する領域のことである。量子力学的な現象とは、複数の状態の重ね合わせ(量子変数が複数の異なる状態を同時にとること)、もつれ(複数の量子変数が空間または時間に関わらず関係する状態)などとなる。量子チップには、量子ビットを生成する量子回路が設けられている。
【0015】
<発明者らによる事前検討>
実施の形態1に係る量子デバイス100について説明する前に、発明者らが事前検討した内容について説明する。
【0016】
図5は、実施の形態1に至る前の構想段階の量子デバイス500の概略断面図である。また、図6は、図5に示す量子デバイス500の接続部を拡大した概略断面図である。量子デバイス500は、量子コンピュータ装置に搭載されており、極低温の環境下に置かれることで、超電導現象を利用した動作を実現している。
【0017】
具体的には、量子デバイス500は、量子チップ511と、インターポーザ512と、接続部530と、試料台516と、ベース基板528と、ボンディングワイヤ526と、を備える。
【0018】
試料台516の主面には、インターポーザ512及びベース基板528が近接配置されている。なお、試料台516は、冷却機能を有している。
【0019】
インターポーザ512は、インターポーザ基板512aと、配線層512bと、金属膜512cと、を備える。インターポーザ基板512a(以下、単にインターポーザ512とも称す)の一方の主面(試料台516に接する面とは逆の面)には、配線層512bが形成され、さらにその表面には、金属膜512cが配線層512bの一部として形成されている。
【0020】
なお、配線層512bは、超電導材料及び常電導材料の何れかによって構成されている。超電導材料とは、例えば、ニオブ(Nb)、ニオブ窒化物(NbN)、アルミニウム(Al)、インジウム(In)、鉛(Pb)、スズ(Sn)、レニウム(Re)、パラジウム(Pd)、チタン(Ti)、チタン窒化物(TiN)、タンタル(Ta)、及び、これらの何れかを含む合金等の金属材料のことである。常電導材料とは、例えば、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、及び、これらの何れかを含む合金等の金属材料のことである。本例では、配線層512bが常電導材料のCuによって構成されている場合について説明する。
【0021】
また、金属膜512cは、超電導材料によって構成されている。超電導材料とは、例えば、ニオブ(Nb)、ニオブ窒化物(NbN)、アルミニウム(Al)、インジウム(In)、鉛(Pb)、スズ(Sn)、レニウム(Re)、パラジウム(Pd)、チタン(Ti)、チタン窒化物(TiN)、タンタル(Ta)、及び、これらの何れかを含む合金等の金属材料のことである。本例では、金属膜512cが、Nbによって構成されている場合について説明する。
【0022】
量子チップ511は、量子チップ本体511aと、配線層511bと、を備える。配線層511bは、量子チップ本体511a(以下、単に量子チップ511とも称す)の一方の主面に形成されている。なお、量子チップ511の配線層511bは、超電導材料によって構成されている。本例では、配線層511bが、Nbによって構成されている場合について説明する。
【0023】
量子チップ511とインターポーザ512とは、互いの配線層同士が対向するように配置されている。
【0024】
接続部530は、量子チップ511とインターポーザ512との間に設けられ、量子チップ511の配線層511bと、インターポーザ512の配線層512bと、を電気的に接続している。それにより、量子チップ511及びインターポーザ512間の信号の受け渡しが可能となる。なお、量子チップ511及びインターポーザ512間では非接触の信号の受け渡しが行われる場合もある。
【0025】
具体的には、接続部530は、複数のピラー531と、金属膜532と、を備える。複数のピラー531は、インターポーザ512の一方の主面から突出するようにして形成(配置)されている。例えば、各ピラー531の先端中央部は、インターポーザ512の一方の主面から最も突出しており、各ピラー531の先端外周部は、丸みを帯びている(R形状を有している)。金属膜532は、複数のピラー531の表面に形成(配置)されている。ここで、金属膜532は、インターポーザ512の配線層512bの表面に形成された金属膜512cに連なるようにして、複数のピラー531の表面に形成されている。
【0026】
なお、複数のピラー531は、超電導材料及び常電導材料の何れかによって構成されている。本例では、複数のピラー531が、常電導材料のCuによって構成されている場合について説明する。また、金属膜532は、金属膜512cと同じく超電導材料によって構成されている。本例では、金属膜532が、Nbによって構成されている場合について説明する。
【0027】
インターポーザ512の配線層512b(金属膜512cを含む)と、ベース基板528の配線層527とは、ボンディングワイヤ526によって接続されている。それにより、量子チップ511の信号線(端子)は、インターポーザ512、及び、ボンディングワイヤ526を介して外部に引き出される。
【0028】
また、量子チップ511の熱は、インターポーザ512を介して、冷却機能を有する試料台516に放熱される。それにより、量子デバイス500は、超電導現象を利用可能な極低温の状態に保たれる。
【0029】
ここで、図6を参照すると、量子デバイス500に設けられた接続部530では、ピラー531の表面に形成された金属膜532の厚みが均一になっている。具体的には、ピラー531の先端中央部における金属膜532の厚みd5と、ピラー531の先端外周部における金属膜532の厚みd6とが、同等程度となっている。それにより、接続部530と量子チップ511の配線層511bとの接触面が小さくなってしまうため、例えばデバイス冷却時などにおいて、各部材の熱膨張率の差に起因して発生した意図しない応力がピラー531の先端中央部に集中してしまう可能性がある。その場合、量子デバイス500は、接続部530による良好な接続を維持することができない。換言すると、量子デバイス500は、高い品質を維持することができない。また、歩留まりも低下してしまう。
【0030】
そこで、品質及び歩留まりを向上させることが可能な、実施の形態1にかかる量子デバイス100が見いだされた。
【0031】
<実施の形態1>
図1は、実施の形態1に係る量子デバイス100の概略断面図である。また、図2は、図1に示す量子デバイス100の接続部を拡大した概略断面図である。量子デバイス100は、量子コンピュータ装置に搭載されており、極低温の環境下に置かれることで、超電導現象を利用した動作を実現している。
【0032】
具体的には、量子デバイス100は、量子チップ111と、インターポーザ112と、接続部130と、試料台116と、ベース基板128と、ボンディングワイヤ126と、を備える。
【0033】
試料台116の主面には、インターポーザ112及びベース基板128が近接配置されている。なお、試料台116は、冷却機能を有している。具体的には、試料台116は、熱伝導の関係から銅(Cu)、銅を含む合金、又は、アルミニウム(Al)によって構成されることが好ましい。試料台116がアルミニウムによって構成される場合、アルマイト処理による絶縁化が施されてもよい。
【0034】
インターポーザ112は、インターポーザ基板112aと、配線層112bと、金属膜112cと、を備える。インターポーザ基板112a(以下、単にインターポーザ112とも称す)の一方の主面(試料台116に接する面とは逆の面)には、配線層112bが形成され、さらにその表面には、金属膜112cが配線層112bの一部として形成されている。インターポーザ112は、例えば、シリコン(Si)を含んでいる。なお、インターポーザ112は、量子チップ111を実装することができるのであれば、シリコンを含むものに限らず、サファイア、化合物半導体材料(IV族、III-V族、II-VI族)、ガラス、セラミック等の他の電子材料を含んでもよい。インターポーザ基板112aの表面は、シリコン酸化膜(SiO2、TEOS膜等)で覆われていることが好ましい。
【0035】
なお、配線層112bは、超電導材料及び常電導材料の何れかによって構成されている。超電導材料とは、例えば、ニオブ(Nb)、ニオブ窒化物(NbN)、アルミニウム(Al)、インジウム(In)、鉛(Pb)、スズ(Sn)、レニウム(Re)、パラジウム(Pd)、チタン(Ti)、チタン窒化物(TiN)、タンタル(Ta)、及び、これらの何れかを含む合金等の金属材料のことである。常電導材料とは、例えば、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、及び、これらの何れかを含む合金等の金属材料のことである。本例では、配線層112bが常電導材料のCuによって構成されている場合について説明する。
【0036】
また、金属膜112cは、超電導材料によって構成されている。超電導材料とは、例えば、ニオブ(Nb)、ニオブ窒化物(NbN)、アルミニウム(Al)、インジウム(In)、鉛(Pb)、スズ(Sn)、レニウム(Re)、パラジウム(Pd)、チタン(Ti)、チタン窒化物(TiN)、タンタル(Ta)、及び、これらの何れかを含む合金等の金属材料のことである。本例では、金属膜112cが、Nbによって構成されている場合について説明する。
【0037】
量子チップ111は、量子チップ本体111aと、配線層111bと、を備える。配線層111bは、量子チップ本体111a(以下、単に量子チップ111とも称す)の一方の主面に形成されている。量子チップ111は、例えば、シリコン(Si)を含んでいる。なお、量子チップ111は、当該量子チップ111が量子ビットを構成することができるのであれば、シリコンを含むものに限らず、サファイアや化合物半導体材料(IV族、III-V族、II-VI族)等の他の電子材料を含んでもよい。また、量子チップ111は、単結晶である方が望ましいが、多結晶やアモルファスでも構わない。さらに、量子チップ111の配線層111bは、超電導材料によって構成されている。本例では、配線層111bが、Nbによって構成されている場合について説明する。
【0038】
量子チップ111とインターポーザ112とは、互いの配線層同士が対向するように配置されている。
【0039】
接続部130は、量子チップ111とインターポーザ112との間に設けられ、量子チップ111の配線層111bと、インターポーザ112の配線層112bと、を電気的に接続している。それにより、量子チップ111及びインターポーザ112間の信号の受け渡しが可能となる。なお、量子チップ111及びインターポーザ112間では非接触の信号の受け渡しが行われる場合もある。
【0040】
具体的には、接続部130は、複数のピラー131と、金属膜132と、を備える。複数のピラー131は、インターポーザ112の一方の主面から突出するようにして形成(配置)されている。例えば、各ピラー131の先端中央部は、インターポーザ112の一方の主面から最も突出しており、各ピラー131の先端外周部は、丸みを帯びている(R形状を有している)。金属膜132は、複数のピラー131の表面に形成(配置)されている。ここで、金属膜132は、インターポーザ112の配線層112bの表面に形成された金属膜112cに連なるようにして、複数のピラー131の表面に形成されている。
【0041】
なお、複数のピラー131は、超電導材料及び常電導材料の何れかによって構成されている。例えば、冷却性能を高める場合には、常電導材料によって構成されることが好ましい。本例では、複数のピラー131が、常電導材料のCuによって構成されている場合について説明する。また、金属膜132は、金属膜112cと同じく超電導材料によって構成されている。本例では、金属膜132が、Nbによって構成されている場合について説明する。
【0042】
インターポーザ112の配線層112b(金属膜112cを含む)と、ベース基板128の配線層127とは、ボンディングワイヤ126によって接続されている。それにより、量子チップ111の信号線(端子)は、インターポーザ112、及び、ボンディングワイヤ126を介して外部に引き出される。
【0043】
また、量子チップ111の熱は、インターポーザ112を介して、冷却機能を有する試料台116に放熱される。それにより、量子デバイス100は、超電導現象を利用可能な極低温の状態に保たれる。
【0044】
ここで、図2を参照すると、量子デバイス100に設けられた接続部130では、ピラー131の表面に形成された金属膜132の厚みが均一になっていない。具体的には、ピラー131の先端外周部における金属膜132の厚みd2が、ピラー131の先端中央部における金属膜132の厚みd1よりも厚くなっている。換言すると、金属膜132は、ピラー131の先端中央部から先端外周部にかけて徐々に厚みを増すように形成されている。それにより、接続部130と量子チップ111の配線層111bとの接触面が大きくなるため、デバイス冷却時等において、各部材の熱膨張率の差に起因して意図しない応力が発生した場合でも、ピラー131の先端中央部に応力が集中するのを防ぐことができる。つまり、デバイス冷却時などにおいて、各部材の熱膨張率の差に起因して意図しない応力が発生した場合でも、ピラー131に加わる応力を分散させることができる。その結果、本実施の形態に係る量子デバイス100は、接続部130による量子チップ111及びインターポーザ112間の安定した接続を確保することが可能になるため、品質及び歩留まりを向上させることができる。
【0045】
続いて、図3を用いて、量子デバイス100の製造方法の一部を簡単に説明する。
図3は、量子デバイス100の製造方法を説明するための図である。
【0046】
まず、インターポーザ112の主面に、配線層112bを形成し、その後、インターポーザ112の主面から突出するように複数のピラー131を形成する。その後、複数のピラー131の表面に、金属膜132を形成する。それにより、接続部130が形成される。なお、金属膜132は、配線層112bの表面に形成された金属膜112cに連なるようにして形成される。ここで、金属膜132を形成する工程では、金属膜132を、複数のピラー131のそれぞれの先端外周部における厚みが先端中央部における厚みよりも厚くなるように形成する。
【0047】
その後、量子チップ111を、吸着孔161aから吸い上げることによって、実装ヘッド161に吸着させる。また、インターポーザ112を、吸着孔162aから吸い上げることによって、実装ステージ162に吸着させる。そして、実装ヘッド161及び実装ステージ162の少なくとも一方を移動させることにより、量子チップ111の配線層111bとインターポーザ112の配線層112bとを対向させる(ステップS101)。
【0048】
その後、実装ヘッド161及び実装ステージ162の少なくとも一方をさらに移動させることにより、インターポーザ112の配線層112bに形成された接続部130と、量子チップ111の配線層111bと、接触させる(ステップS102)。
【0049】
量子チップ111がインターポーザ112上に設置(固定)されると、実装ヘッド161及び実装ステージ162による吸着は解除され、量子デバイス100が取り出される(ステップS103)。
【0050】
このように、本実施の形態に係る量子デバイス100では、複数のピラー131のそれぞれの先端外周部における金属膜132の厚みが先端中央部における金属膜132の厚みよりも厚くなっている。それにより、接続部130と量子チップ111の配線層111bとの接触面が大きくなるため、デバイス冷却時等において、各部材の熱膨張率の差に起因して意図しない応力が発生した場合でも、ピラー131の先端中央部に応力が集中するのを防ぐことができる。その結果、本実施の形態に係る量子デバイス100は、接続部130による量子チップ111及びインターポーザ112間の安定した接続を確保することが可能になるため、品質及び歩留まりを向上させることができる。
【0051】
本実施の形態では、インターポーザ112の配線層112bが常電導材料によって構成され、その表面に形成された金属膜112cが超電導材料によって構成された場合を例に説明したが、これに限られない。インターポーザ112の配線層112bは、Nb等の超電導材料によって構成されてもよい。この場合、配線層112bの表面に金属膜112cが形成される必要は無い。またこの場合、例えば、インターポーザ112の配線層112bと、複数のピラー131のそれぞれの表面に形成された金属膜132とは、連なるようにして形成(一体形成)される。
【0052】
(量子デバイス100の変形例)
図4は、量子デバイス100の変形例である量子デバイス100aの接続部130を拡大した概略断面図である。量子デバイス100では、接続部130の構成要素である金属膜132(及び金属膜112c)が単層構造であった。それに対し、量子デバイス100aでは、金属膜132(及び金属膜112c)が多層構造を有している。
【0053】
具合的には、量子デバイス100aでは、接続部130の構成要素である金属膜132が、三層構造を有し、最下位層132aがNbにより構成され、最上位層132bがInにより構成され、それらの間の中間層132cがTi又はTiNにより構成されている。なお、Ti又はTiNの中間層132cは、Nb層132aとIn層132bとの間の接着性を向上させるためのものである。金属膜132に連なって配線層112bの表面に金属膜112cについては、金属膜132の場合と同様であるため、その説明を省略する。
【0054】
なお、量子チップ111の配線層111bと接続部130との接合は、超音波接合によるIn層132bに対する局所的な加熱によって行われる。それにより、量子素子への熱的なダメージが抑制される。
【0055】
ここで、金属膜132の三層構造のうち、量子チップ111の配線層111bに接する最上位層132bは、他の層よりも展延性の高い金属材料(ここではIn)によって構成されている。この展延性の高い金属材料によって、デバイス冷却時等において発生する意図しない応力はさらに緩和される。それにより、量子デバイス100aは、接続部130による量子チップ111及びインターポーザ112間のより安定した接続を確保することが可能になるため、品質及び歩留まりをさらに向上させることができる。
【0056】
このように、量子デバイス100aは、金属膜132の三層構造のうち、量子チップ111の配線層111bに接する最上位層132bに展延性の高い金属材料を用いることにより、デバイス冷却時等において発生する意図しない応力をさらに緩和させることができる。それにより、量子デバイス100aは、接続部130による量子チップ111及びインターポーザ112間のより安定した接続を確保することが可能になるため、品質及び歩留まりをさらに向上させることができる。
【0057】
以上、図面を参照して、本開示の実施の形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等が可能である。
【0058】
図4では、量子チップ111の配線層111bがNbによって構成され、接続部130の金属膜132が、三層構造を有し、最下位層がNbによって構成され、最上位層がInによって構成され、中間層がTi又はTiNによって構成された場合を説明したが、これに限られない。
【0059】
例えば、量子チップ111の配線層111bは、Alによって構成され、接続部130が配置される部位には、Ti又はTiNからなる層がさらに配置されてもよい。また、接続部130の金属膜132は、三層構造を有し、最下位層から最上位層にかけて順にAl、Ti(又はTiN)、In又はこれを含む合金によって構成されてもよい。なお、In又はこれを含む合金の代わりに、Sn、Pb、又は、これらの何れかを含む合金が用いられても良い。Ti層又はTiN層は、AlとInとの合金化を防ぐために設けられている。これは、配線層112bの表面に形成された金属膜112cについても同様である。
【0060】
或いは、例えば、量子チップ111の配線層111bは、Taによって構成され、接続部130の金属膜132は、二層構造を有し、最下位層がTaによって構成され、最上位層がIn、Sn、Pb又はこれらの何れかを含む合金によって構成されてもよい。これは、配線層112bの表面に形成された金属膜112cについても同様である。
【0061】
要するに、接続部130の構成要素である金属膜132は、単層又は多層構造を有し、少なくとも一層が超電導材料によって構成されていればよい。
【符号の説明】
【0062】
100 量子デバイス
100a 量子デバイス
111 量子チップ
111a 量子チップ本体
111b 配線層
112 インターポーザ
112a インターポーザ基板
112b 配線層
112c 金属膜
116 試料台
126 ボンディングワイヤ
127 配線層
128 ベース基板
130 接続部
131 ピラー
132 金属膜
132a Nb層
132b In層
132c Ti又はTiNの層
161 実装ヘッド
161a 吸着孔
162 実装ステージ
162a 吸着孔
500 量子デバイス
511 量子チップ
511a 量子チップ本体
511b 配線層
512 インターポーザ
512a インターポーザ基板
512b 配線層
512c 金属膜
516 試料台
526 ボンディングワイヤ
527 配線層
528 ベース基板
530 接続部
531 ピラー
532 金属膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6