(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/13 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
B60C11/13 A
(21)【出願番号】P 2020108901
(22)【出願日】2020-06-24
【審査請求日】2023-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】中島 幸一
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-076810(JP,A)
【文献】特開平06-115318(JP,A)
【文献】特開2005-035328(JP,A)
【文献】特開2019-018798(JP,A)
【文献】特開2013-043614(JP,A)
【文献】特開2004-058936(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/00-11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤであって、
トレッド部に、2つの溝壁を含む少なくとも1本の溝が設けられており、
前記溝壁の少なくとも一方には、前記溝壁から突出した突部が設けられており、
前記突部は、前記溝の長さ方向に延びる少なくとも1つのリブを含み、
前記リブは、前記溝壁からタイヤ半径方向外側に向かうような傾斜で、前記溝壁から突出し、
前記リブは、前記溝壁から前記傾斜に沿った方向に最も離れた位置に平坦な先端面を有
し、
前記リブは、タイヤ半径方向に複数配されており、
タイヤ半径方向に間隔をあけて配された2つの前記リブ間の間隙の厚さt2は、前記リブ厚さt1よりも小さい、
タイヤ。
【請求項2】
前記溝の長さ方向と直交する断面において、前記先端面は、直線状に延びる部分を1.0mm以上含む、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記溝の長さ方向と直交する断面において、前記先端面の角度は、前記先端面に立てたタイヤ法線に対して0~50°である、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記溝壁の両方に、前記突部が設けられている、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記傾斜の角度は、前記溝壁に立てたタイヤ法線に対して、25~80°である、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記リブは、前記溝の長さ方向と直交する断面において、平行四辺形状である、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記突部は、タイヤ半径方向に間隔をあけて配された少なくとも2つの前記リブを含み、
前記少なくとも2つのリブにおいて、前記傾斜の角度が、溝底側に位置するものほど小さい、請求項1ないし6のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記少なくとも2つのリブにおいて、前記先端面の角度が、溝底側に位置するものほど大きい、請求項7に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記リブのリブ高さが、前記溝の溝幅の6%~40%である、請求項1ないし8のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項10】
前記リブのリブ厚さが、前記溝壁からのリブ高さの50%~150%である、請求項1ないし9のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項11】
前記突部は、タイヤ半径方向に間隔をあけて配された少なくとも2つの前記リブと、前記リブを互いに連結する連結部とを含む、請求項1ないし10のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項12】
前記連結部の前記溝の長さ方向の長さは、前記リブの前記溝壁に沿ったリブ厚さよりも大きい、請求項11に記載のタイヤ。
【請求項13】
1つの前記溝壁には、3~7個の前記リブが設けられている、請求項1ないし12のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項14】
前記間隙の厚さt2は、前記リブ厚さt1の50%~80%である、請求項1ないし13のいずれか1項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、タイヤのトレッド部には、排水用の溝が形成されている。これらの溝に小石が挟まれて保持されるいわゆる「石噛み」が生じると、溝底や溝壁が損傷する場合がある。石噛みを防止するために、溝底や溝壁に石噛み防止用の突起等が設けられたタイヤが種々提案されている(例えば、下記特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-067246号公報
【文献】特開2011-093392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のタイヤは、石噛みの抑制する効果はある程度期待できるが、一旦、溝内に挟まった石を積極的に排出する効果は少なく、改善が求められていた。
【0005】
本発明は、以上のような問題点に鑑み案出なされたもので、優れた耐石噛み性能を発揮し得るタイヤを提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、タイヤであって、トレッド部に、2つの溝壁を含む少なくとも1本の溝が設けられており、前記溝壁の少なくとも一方には、前記溝壁から突出した突部が設けられており、前記突部は、前記溝の長さ方向に延びる少なくとも1つのリブを含み、前記リブは、前記溝壁からタイヤ半径方向外側に向かうような傾斜で、前記溝壁から突出し、前記リブは、前記溝壁から前記傾斜に沿った方向に最も離れた位置に平坦な先端面を有する。
【0007】
本発明のタイヤにおいて、前記溝の長さ方向と直交する断面において、前記先端面は、直線状に延びる部分を1.0mm以上含むのが望ましい。
【0008】
本発明のタイヤにおいて、前記溝の長さ方向と直交する断面において、前記先端面の角度は、前記先端面に立てたタイヤ法線に対して0~50°であるのが望ましい。
【0009】
本発明のタイヤにおいて、前記溝壁の両方に、前記突部が設けられているのが望ましい。
【0010】
本発明のタイヤにおいて、前記傾斜の角度は、前記溝壁に立てたタイヤ法線に対して、25~80°であるのが望ましい。
【0011】
本発明のタイヤにおいて、前記リブは、前記溝の長さ方向と直交する断面において、平行四辺形状であるのが望ましい。
【0012】
本発明のタイヤにおいて、前記突部は、タイヤ半径方向に間隔をあけて配された少なくとも2つの前記リブを含み、前記少なくとも2つのリブにおいて、前記傾斜の角度が、溝底側に位置するものほど小さいのが望ましい。
【0013】
本発明のタイヤにおいて、前記少なくとも2つのリブにおいて、前記先端面の角度が、溝底側に位置するものほど大きいのが望ましい。
【0014】
本発明のタイヤにおいて、前記リブのリブ高さが、前記溝の溝幅の6%~40%であるのが望ましい。
【0015】
本発明のタイヤにおいて、前記リブのリブ厚さが、前記溝壁から前記傾斜に沿ったリブ高さの50%~150%であるのが望ましい。
【0016】
本発明のタイヤにおいて、前記突部は、タイヤ半径方向に間隔をあけて配された少なくとも2つの前記リブと、前記リブを互いに連結する連結部とを含むのが望ましい。
【0017】
本発明のタイヤにおいて、前記連結部の前記溝の長さ方向の長さは、前記リブの前記溝壁に沿ったリブ厚さよりも大きいのが望ましい。
【0018】
本発明のタイヤにおいて、1つの前記溝壁には、3~7個の前記リブが設けられているのが望ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明のタイヤのトレッド部には、2つの溝壁を含む少なくとも1本の溝が設けられている。前記溝壁の少なくとも一方には、前記溝壁から突出した突部が設けられている。前記突部は、前記溝の長さ方向に延びる少なくとも1つのリブを含む。前記リブは、前記溝壁からタイヤ半径方向外側に向かうような傾斜で、前記溝壁から突出している。また、前記リブは、前記溝壁から前記傾斜に沿った方向に最も離れた位置に先端面を有している。
【0020】
本発明のタイヤでは、傾斜の向きが特定された前記リブにより、溝内への石の進入を抑制することができる。また、仮に、溝内に石が保持された場合でも、傾斜の向きが特定された前記リブは、その弾性復元力によって、前記石をタイヤ半径方向外側に押すように機能する。これにより、前記石は、タイヤの回転に伴ってタイヤ半径方向外側に移動し、溝の外部に容易に排出される。とりわけ、本発明では、前記リブが先端面を有し、前記先端面のタイヤ法線に対する角度が規定されているため、前記リブは、前記先端面を介して前記石に大きな力を付与できる。これらにより、本発明のタイヤは、優れた耐石噛み性能を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態のタイヤのトレッド部の展開図である。
【
図4】溝内に石が保持されたときの溝の拡大断面図である。
【
図6】
図5の溝内に石が保持されたときの溝の拡大断面図である。
【
図7】(a)は、比較例1の溝の拡大断面図であり、(b)は、比較例2の溝の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本発明の一実施形態を示すタイヤ1のトレッド部2の展開図である。
図1に示されるように、本実施形態のタイヤ1は、例えば、乗用車用の空気入りタイヤとして好適に使用される。但し、本発明は、このような態様に限定されるものではなく、重荷重用の空気入りタイヤや自動二輪車用の空気入りタイヤ、又は、タイヤの内部に加圧された空気が充填されない非空気式タイヤに用いられても良い。
【0023】
本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ各部の寸法等は、タイヤが正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填されかつ無負荷の状態である正規状態で測定された値が示される。
【0024】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。
【0025】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0026】
トレッド部2には、2つの溝壁を含む少なくとも1本の溝3が設けられている。前記溝3は、タイヤ周方向に連続して延びる主溝4や、タイヤ軸方向に延びる横溝5を含む。
【0027】
図2には、溝3の溝壁6を示す拡大斜視図が示されている。
図3には、溝3の長さ方向(以下、「溝長さ方向」という場合がある。)と直交する断面図が示されている。
図2及び
図3に示されるように、溝壁6の少なくとも一方には、溝壁6から突出した突部10が設けられている。
図3に示されるように、本実施形態では、両方の溝壁6に、突部10が設けられている。
【0028】
図2に示されるように、突部10は、溝3の長さ方向に延びる少なくとも1つのリブ11を含む。また、リブ11は、それぞれ、溝壁6からタイヤ半径方向外側に向かうような傾斜で、溝壁6から突出している。換言すれば、リブ11は、リブ11が属する溝壁6とは反対側の溝壁6に向かって、タイヤ半径方向外側に傾斜している。
【0029】
図3に示されるように、リブ11は、溝壁6から前記傾斜に沿った方向に最も離れた位置に平坦な先端面15を有している。
【0030】
本発明のタイヤでは、傾斜の向きが特定されたリブ11により、溝内への石の進入を抑制することができる。また、
図4に示されるように、仮に、溝3内に石Sが保持された場合でも、傾斜の向きが特定されたリブ11は、その弾性復元力によって、石Sをタイヤ半径方向外側に押すように機能する。これにより、石Sは、タイヤの回転に伴ってタイヤ半径方向外側に移動し、溝3の外部に容易に排出される。とりわけ、本発明のリブ11は、平坦な先端面15を有しているため、リブの先端に稜線が構成されている従来のものと比較して、大きな弾性復元力を期待できる。これらにより、本発明のタイヤ1は、優れた耐石噛み性能を発揮することができる。なお、平坦な先端面15とは、溝の長さ方向と直交する断面において、直線状に延びる部分を少なくとも1.0mm以上含んでいる。また、先端面15は、リブ11の根元部分の溝壁6に沿った断面の50%~100%の範囲で平坦状に延びるのが望ましい。このような先端面15によって石Sを確実に排出することができる。
【0031】
溝3の長さ方向と直交する断面において、先端面15に立てたタイヤ法線に対する、先端面15の角度θ2は、例えば、0~50°である。先端面15は、例えば、タイヤ半径方向外側に向かって、この先端面15が属する溝壁6側に傾斜しているのが望ましい。前記角度θ2は、10~25°であるのがより望ましい。このような先端面15を有するリブ11は、先端面15を介して石Sに大きな力を付与できる。なお、タイヤ法線とは、タイヤ半径方向に対して平行に延びる仮想の直線である。なお、先端面15が曲面の場合、前記角度θ2は、先端面15の溝壁6から最も離れた点を通る接線で測定される。
【0032】
図1に示されるように、各リブ11の長さは、例えば、溝3の長さの50%以上を占めているのが望ましく、本実施形態では、各リブ11が溝3の長さの60%以上を占めている。これにより、耐石噛み性能が確実に向上する。なお、理解し易いように、
図1では、最もタイヤ半径方向外側のリブ11が着色されており、そのタイヤ半径方向内側に配された連結部12が破線で示されている。
【0033】
図3に示されるように、溝壁6には、例えば、タイヤ半径方向に間隔をあけて複数のリブ11が配されている。本実施形態の1つの溝壁6には、3~7個のリブ11が設けられている。本実施形態では、各リブ11が実質的に同じ断面形状で構成されている。但し、本発明は、このような態様に限定されるものではなく、後述されるように、リブ11の形状や寸法が各リブ11によって異なるものでも良い。なお、「実質的に同じ断面形状」とは、ゴム成形品に通常含まれる寸法誤差を許容するものである。
【0034】
リブ11のそれぞれは、例えば、溝3の長さ方向と直交する断面において、矩形状であるのが望ましく、本実施形態では平行四辺形状とされる。より具体的には、リブ11は、タイヤ半径方向外側の外側面13と、タイヤ半径方向内側の内側面14とが互いに平行であり、かつ、先端面15と、リブ11の根元において溝壁6をタイヤ半径方向に延長した仮想面とが互いに平行である。このような断面を有するリブ11は、大きな弾性復元力を発揮し、耐石噛み性能をさらに向上させる。
【0035】
本実施形態の各リブ11は、一定の断面形状を保ったまま、溝3の長さ方向に延びている。但し、本発明のリブ11は、このような態様に限定されるものではなく、例えば、断面形状が溝3の長さ方向に変化するものでも良い。
【0036】
リブ11のリブ高さh1は、例えば、溝3の溝幅W1の6%~40%であり、望ましくは20%~30%である。本実施形態では、1つの溝壁6に設けられたリブ11のそれぞれのリブ高さh1が、上述の範囲とされる。このようなリブ11は、溝3の排水性を維持しつつ、耐石噛み性能を高めることができる。なお、リブ高さh1は、溝壁6からリブ11の先端面15までの、前記溝壁6と直交する方向の距離である。先端面15と溝壁6とが非平行の場合、リブ高さh1は、溝壁6から先端面15の外端(溝壁6から最も離れた端)までの前記距離に相当する。
【0037】
リブ11のリブ厚さt1は、リブ高さh1の望ましくは50%以上、より望ましくは60%以上、さらに望ましくは70%以上であり、望ましくは150%以下、より望ましくは120%以下、さらに望ましくは100%以下である。本実施形態では、1つの溝壁6に設けられたリブ11のそれぞれのリブ厚さt1が、上述の範囲とされる。このようなリブ11は、適度な弾性復元力を有し、溝の排水性を維持しつつ石噛み性能を高めるのに役立つ。なお、リブ厚さt1は、外側面13から内側面14までの、リブ11の中心線11cと直交する方向の距離に相当する。前記外側面13と前記内側面14とが非平行である場合は、リブ11の根元部分での前記距離が前記リブ厚さt1とされる。
【0038】
溝壁6に立てたタイヤ法線に対するリブ11の傾斜の角度θ1は、望ましくは25°以上、より望ましくは30°以上、さらに望ましくは35°以上であり、望ましくは80°以下、より望ましくは60°以下、さらに望ましくは50°以下である。本実施形態では、1つの溝壁6に設けられたリブ11のそれぞれの前記角度θ1が、上述の範囲とされる。なお、前記傾斜の角度θ1は、タイヤ法線に対するリブ11の中心線11cの角度で定義される。リブ11の中心線11cは、リブ11の溝壁6に沿った方向の厚さを2等分する線である。
【0039】
本実施形態では、少なくとも2つのリブ11の先端面15が、実質的に、溝壁6と平行な平面上に位置する。より望ましい態様として、1つの溝壁6に配された各リブ11の先端面15が、実質的に、溝壁6と平行な平面上に位置する。なお、前記「実質的に」とは、ゴム成形品に通常含まれる寸法誤差を許容するものであり、先端面15同士のリブ高さ方向の位置ずれ量が、1.0mm以下である態様を含むものとする。
【0040】
本実施形態の突部10は、タイヤ半径方向に間隔をあけて配された少なくとも2つのリブ11と、リブ11を互いに連結する連結部12とを含む。連結部12を含む突部10は、石の進入抑制効果をさらに高め、かつ、突部10の弾性復元力をより大きくし、耐石噛み性能をさらに高める。
【0041】
本実施形態では、2つのリブ11間の間隙16がタイヤ半径方向に複数配されている。また、これらの間隙16のそれぞれに連結部12が設けられている。本実施形態では、1つの間隙16の溝長さ方向の中央部に、1つの連結部12が設けられている。これにより、突部10の加硫成形不良が効果的に抑制される。他の実施形態では、1つの間隙16に複数の連結部12が配されても良い。この場合、間隙16の溝長さ方向の両端及び複数の連結部12で区画される領域のタイヤ周方向の長さが、連結部12の配置によって等分されるのが望ましい。これにより、突部10の剛性が効果的に高められる。
【0042】
連結部12が溝長さ方向に複数設けられる場合、例えば、溝の長さが20~50mmごとに1つの連結部12が設けられるのが望ましい。これにより、加硫成形不良が抑制されつつ、優れた耐石噛み性能が得られる。
【0043】
間隙16の厚さt2は、例えば、リブ厚さt1の50%~80%であり、望ましくは60%~70%である。本実施形態では、各間隙16が上述の範囲とされる。このような間隙16の配置により、例えば、
図4に示される最内側のリブ11aとその外側のリブ11bのように、溝3の変形によって隣り合うリブ11同士が接触したときに大きな弾性復元力が発揮され、ひいては溝内の石が排出され易くなる。なお、間隙16の厚さt2は、リブ11の外側面13から、これと向き合うリブ11の内側面14までの、リブ11の中心線11cと直交する方向の距離に相当する。前記外側面13と前記内側面14とが非平行である場合は、リブ11の根元部分における前記距離が前記厚さt2とされる。前記外側面13と前記内側面14とが非平行である場合は、リブ11の根元部分における間隙16の厚さt2が、リブ11の根元部分におけるリブ厚さt1に対して50%~80%とされるのが望ましい。
【0044】
連結部12の溝長さ方向の長さL1(
図2に示す)は、例えば、リブ厚さt1よりも大きいのが望ましい。具体的には、連結部12の前記長さL1は、リブ厚さt1の110%~150%である。このような連結部12は、リブ11の弾性復元力を効果的に高める。
【0045】
図2に示されるように、連結部12は、間隙16ごとに溝長さ方向の同じ位置で配されているのが望ましい。これにより、複数の連結部12がタイヤ半径方向に並んだ部分で大きな弾性復元力が期待できる。但し、このような態様に限定されるものではなく、連結部12は、例えば、間隙16ごとに溝長さ方向に分散して配されても良い。
【0046】
図1に示されるように、本実施形態では、主溝4及び横溝5のそれぞれにリブ11が設けられている。これにより、耐石噛み性能がさらに向上する。
【0047】
図5には、本発明の他の実施形態の溝3の断面図が示されている。なお、
図5において、上述の実施形態と共通する要素には、同一の符号が付され、ここでの説明は省略される。
図5に示されるように、この実施形態では、少なくとも2つのリブ11において、傾斜の角度θ1が、溝底側に位置するものほど小さい。より具体的には、1つの溝壁6に設けられた複数のリブ11の全てにおいて、傾斜の角度θ1が、溝底側に位置するもの程小さくなっている。また、この実施形態の前記角度θ1の範囲は、望ましくは25°以上、より望ましくは30°以上、さらに望ましくは35°以上であり、望ましくは80°以下、より望ましくは50°以下、さらに望ましくは45°以下である。
【0048】
この実施形態では、少なくとも2つのリブ11において、先端面15の角度θ2が、溝底側に位置するものほど大きい。より具体的には、1つの溝壁6に設けられた複数のリブ11の全てにおいて、先端面15の角度θ2が、溝底側に位置するもの程大きくなっている。また、この実施形態の先端面15の角度θ2の範囲は、例えば、2~30°であり、望ましくは4~10°である。
【0049】
この実施形態では、
図6に示されるように、溝底付近まで石Sが入り込んだとき、溝底側のリブ11の先端面15が石Sに押されてこのリブ11が圧縮変形し易く、石に大きな弾性復元力が作用し易い。従って、この実施形態では、さらに優れた耐石噛み性能が期待できる。
【0050】
以上、本発明の一実施形態のタイヤが詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【実施例】
【0051】
図1の基本パターンを有するサイズ205/85R16のタイヤが試作された。比較例1として、
図7(a)に示されるように、溝aに突部が設けられていないタイヤが試作された。比較例2として、
図7(b)に示されるように、溝aに実質的に先端面を有しないリブbが設けられたタイヤが試作された。比較例3として、先端面の角度θ2が0°であるタイヤが試作された。比較例4として、先端面の角度θ2が55°であるタイヤが試作された。比較例1乃至4のタイヤは、上述の事項を除き、
図1に示されるものと実質的に同じパターンを有している。各テストタイヤの石噛み性能がテストされた。各テストタイヤの共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
装着リム:16×5.5
タイヤ内圧:600kPa
テスト車両:排気量2500cc、四輪駆動車
タイヤ装着位置:全輪
【0052】
<耐石噛み性能>
前記テスト車両で砂利道を一定距離走行し、溝内に入り込んだ石が全て採取され、その総重量が測定された。結果は、比較例の前記石の総重量を100とする指数であり、数値が小さい程、耐石噛み性能が優れていることを示す。
テストの結果が表1~4に示される。
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
テストの結果、実施例のタイヤは、優れた耐石噛み性能を発揮していることが確認できた。とりわけ、本発明の様に、先端面を有するリブは、
図7(b)に示されるように、実質的に先端面を有しないリブと比較して有意に耐石噛み性能を向上させていることが確認できた。
【符号の説明】
【0058】
2 トレッド部
6 溝壁
3 溝
10 突部
11 リブ
12 連結部