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特許7508905水まわり機器及び水まわり機器の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】水まわり機器及び水まわり機器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/042 20060101AFI20240625BHJP
   C25D 5/34 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
E03C1/042 B
C25D5/34
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020117792
(22)【出願日】2020-07-08
(65)【公開番号】P2021092133
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】P 2019216625
(32)【優先日】2019-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】馬場 友貴
(72)【発明者】
【氏名】清水 哲
(72)【発明者】
【氏名】川崎 拓真
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-163362(JP,A)
【文献】特開2003-252000(JP,A)
【文献】特開平2-118090(JP,A)
【文献】特開2005-238535(JP,A)
【文献】特開2008-106487(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/042
C25D 5/34 - 5/52
C23C 24/00 -30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の本体部と、
前記本体部の表面の上に設けられた第1層と、
を備え、
前記本体部は、前記表面側に、複数の凹部と複数の凸部とを含む本体凹凸を有し、
前記第1層は、表面側に、複数の凹部と複数の凸部とを含み、前記本体凹凸に沿うように形成された第1凹凸を有し、
前記本体凹凸の平均高さは、前記本体凹凸の平均長さよりも小さく、
前記本体凹凸の平均高さは、0.8μmを超え3.7μm未満であり、
前記本体凹凸の前記平均長さに対する前記本体凹凸の前記平均高さの比は、0.01を超え0.05未満であることを特徴とする水まわり機器。
【請求項2】
前記本体凹凸の前記平均長さに対する前記本体凹凸の前記平均高さの比は、0.016を超え0.040未満であることを特徴とする請求項記載の水まわり機器。
【請求項3】
前記本体凹凸の前記平均長さに対する前記本体凹凸の前記平均高さの比は、0.019以上0.037以下であることを特徴とする請求項記載の水まわり機器。
【請求項4】
前記第1凹凸の平均高さは、0.7μmよりも大きく、
前記第1凹凸の平均長さに対する前記第1凹凸の前記平均高さの比は、0.01を超え0.05未満であることを特徴とする請求項1~のいずれか1つに記載の水まわり機器。
【請求項5】
前記第1凹凸の平均長さに対する前記第1凹凸の前記平均高さの比は、0.013を超え0.042未満であることを特徴とする請求項記載の水まわり機器。
【請求項6】
前記第1凹凸の平均長さに対する前記第1凹凸の前記平均高さの比は、0.016以上0.037以下であることを特徴とする請求項記載の水まわり機器。
【請求項7】
前記本体凹凸の前記平均高さは、前記第1層の厚みよりも大きいことを特徴とする請求項1~のいずれか1つに記載の水まわり機器。
【請求項8】
前記本体部と前記第1層との間に設けられた第2層をさらに備え、
前記第2層の硬度は、前記第1層の硬度よりも低く、
前記第2層は、表面側に、複数の凹部と複数の凸部とを含み、前記本体凹凸に沿うように形成された第2凹凸を有することを特徴とする請求項1~のいずれか1つに記載の水まわり機器。
【請求項9】
金属製の本体部の表面に対してショットブラスト加工を行うことで、前記本体部の前記表面側に、複数の凹部と複数の凸部とを含む本体凹凸を形成する凹凸形成工程と、
前記本体凹凸が形成された前記本体部の前記表面の上に、第1層を形成する第1層形成工程と、
を備え、
前記凹凸形成工程において、前記本体凹凸の平均高さを、前記本体凹凸の平均長さよりも小さくし、前記本体凹凸の平均高さを、0.8μmを超え3.7μm未満にし、前記本体凹凸の前記平均長さに対する前記本体凹凸の前記平均高さの比を、0.01を超え0.05未満にし
前記第1層形成工程において、前記第1層の表面側に、複数の凹部と複数の凸部とを含み、前記本体凹凸に沿う第1凹凸が形成されるように、前記第1層を形成することを特徴とする水まわり機器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的に、水まわり機器及び水まわり機器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水栓装置などの金属製の水まわり機器が知られている(例えば、特許文献1)。このような水まわり機器の表面は、光が当たると強い光沢感を呈する。
【0003】
一方で、水まわり機器の表面の光沢感を抑制するために、表面に艶消し加工を施すことが知られている。このような艶消し加工は、例えば、ショットブラストなどにより水まわり機器の表面に微細な凹凸を形成することで行われる。
【0004】
しかし、ショットブラストなどにより艶消し加工を施すと、水まわり機器の表面に形成される凹凸の高さ(深さ)が大きくなり過ぎてしまう場合がある。水まわり機器の表面に形成される凹凸の高さが大きくなり過ぎると、凹凸に溜まった水が除去しにくくなり、水まわり機器の表面で水垢の付着が起こりやすくなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-106487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、艶消し加工により表面の光沢感を抑制しつつ、凹凸による水垢の付着を抑制できる水まわり機器及び水まわり機器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、金属製の本体部と、前記本体部の表面の上に設けられた第1層と、を備え、前記本体部は、前記表面側に、複数の凹部と複数の凸部とを含む本体凹凸を有し、前記第1層は、表面側に、複数の凹部と複数の凸部とを含み、前記本体凹凸に沿うように形成された第1凹凸を有し、前記本体凹凸の平均高さは、前記本体凹凸の平均長さよりも小さいことを特徴とする水まわり機器である。
【0008】
この水まわり機器によれば、本体部が本体凹凸を有し、第1層が本体凹凸に沿う第1凹凸を有することで、水まわり機器の表面の光沢感が強くなり過ぎないように艶消しすることができる。また、本体凹凸の平均高さを本体凹凸の平均長さよりも小さくすることで、水まわり機器の表面の光沢感が強くなり過ぎないように艶消しできる一方で、水まわり機器の表面の凹凸の高さが大きくなり過ぎてしまうことを抑制できる。これにより、艶消し加工により表面の光沢感を抑制しつつ、凹凸による水垢の付着を抑制できる。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、前記本体凹凸の平均高さは、0.8μmよりも大きく、前記本体凹凸の前記平均長さに対する前記本体凹凸の前記平均高さの比は、0.01を超え0.05未満であることを特徴とする水まわり機器である。
【0010】
この水まわり機器によれば、本体凹凸の平均高さをこの範囲とすることで、水まわり機器の表面の凹凸の高さが大きくなり過ぎたり小さくなり過ぎたりすることを抑制できる。これにより、艶消し加工により表面の光沢感を抑制しつつ、程よく光沢感(艶)を残すことができる。
【0011】
第3の発明は、第2の発明において、前記本体凹凸の前記平均長さに対する前記本体凹凸の前記平均高さの比は、0.016を超え0.040未満であることを特徴とする水まわり機器である。
【0012】
この水まわり機器によれば、本体凹凸の平均長さに対する本体凹凸の平均高さの比をこの範囲とすることで、水まわり機器の表面の凹凸の高さが大きくなり過ぎたり小さくなり過ぎたりすることをより抑制できる。これにより、水まわり機器の表面において、光沢感とマット感を両立させることができる。
【0013】
第4の発明は、第3の発明において、前記本体凹凸の前記平均長さに対する前記本体凹凸の前記平均高さの比は、0.019以上0.037以下であることを特徴とする水まわり機器である。
【0014】
この水まわり機器によれば、本体凹凸の平均長さに対する本体凹凸の平均高さの比をこの範囲とすることで、水まわり機器の表面の凹凸の高さが大きくなり過ぎたり小さくなり過ぎたりすることをより抑制できる。これにより、水まわり機器の表面において、光沢感とマット感を両立させることができる。
【0015】
第5の発明は、第1~第4のいずれか1つの発明において、前記第1凹凸の平均高さは、0.7μmよりも大きく、前記第1凹凸の平均長さに対する前記第1凹凸の前記平均高さの比は、0.01を超え0.05未満であることを特徴とする水まわり機器である。
【0016】
この水まわり機器によれば、第1凹凸の平均高さをこの範囲とすることで、水まわり機器の表面の凹凸の高さが大きくなり過ぎたり小さくなり過ぎたりすることを抑制できる。これにより、艶消し加工により表面の光沢感を抑制しつつ、程よく光沢感(艶)を残すことができる。
【0017】
第6の発明は、第5の発明において、前記第1凹凸の平均長さに対する前記第1凹凸の前記平均高さの比は、0.013を超え0.042未満であることを特徴とする水まわり機器である。
【0018】
この水まわり機器によれば、第1凹凸の平均長さに対する第1凹凸の平均高さの比をこの範囲とすることで、水まわり機器の表面の凹凸の高さが大きくなり過ぎたり小さくなり過ぎたりすることをより抑制できる。これにより、水まわり機器の表面において、光沢感とマット感を両立させることができる。
【0019】
第7の発明は、第6の発明において、前記第1凹凸の平均長さに対する前記第1凹凸の前記平均高さの比は、0.016以上0.037以下であることを特徴とする水まわり機器である。
【0020】
この水まわり機器によれば、第1凹凸の平均長さに対する第1凹凸の平均高さの比をこの範囲とすることで、水まわり機器の表面の凹凸の高さが大きくなり過ぎたり小さくなり過ぎたりすることをより抑制できる。これにより、水まわり機器の表面において、光沢感とマット感を両立させることができる。
【0021】
第8の発明は、第1~第7のいずれか1つの発明において、前記本体凹凸の前記平均高さは、前記第1層の厚みよりも大きいことを特徴とする水まわり機器である。
【0022】
この水まわり機器によれば、本体凹凸の平均高さを第1層の厚みよりも大きくすることで、第1凹凸をより本体凹凸に沿ったものとすることができる。これにより、表面の光沢感を適度な範囲に調整しやすい。
【0023】
第9の発明は、第1~第8のいずれか1つの発明において、前記本体部と前記第1層との間に設けられた第2層をさらに備え、前記第2層の硬度は、前記第1層の硬度よりも低く、前記第2層は、表面側に、複数の凹部と複数の凸部とを含み、前記本体凹凸に沿うように形成された第2凹凸を有することを特徴とする水まわり機器である。
【0024】
この水まわり機器によれば、第2層が設けられる場合に、第2層が本体凹凸に沿う第2凹凸を有することで、第2凹凸を介して第1凹凸に本体凹凸を反映させることができるため、艶消し加工により表面の光沢感を抑制しつつ、凹凸による水垢の付着を抑制できる。
【0025】
第10の発明は、金属製の本体部の表面に対してショットブラスト加工を行うことで、前記本体部の前記表面側に、複数の凹部と複数の凸部とを含む本体凹凸を形成する凹凸形成工程と、前記本体凹凸が形成された前記本体部の前記表面の上に、第1層を形成する第1層形成工程と、を備え、前記凹凸形成工程において、前記本体凹凸の平均高さを、前記本体凹凸の平均長さよりも小さくし、前記第1層形成工程において、前記第1層の表面側に、複数の凹部と複数の凸部とを含み、前記本体凹凸に沿う第1凹凸が形成されるように、前記第1層を形成することを特徴とする水まわり機器の製造方法である。
【0026】
この水まわり機器の製造方法によれば、本体部に本体凹凸を形成し、第1層に本体凹凸に沿う第1凹凸を形成することで、水まわり機器の表面の光沢感が強くなり過ぎないように艶消しすることができる。また、本体凹凸の平均高さを本体凹凸の平均長さよりも小さくすることで、水まわり機器の表面の光沢感が強くなり過ぎないように艶消しできる一方で、水まわり機器の表面の凹凸の高さが大きくなり過ぎてしまうことを抑制できる。これにより、艶消し加工により表面の光沢感を抑制しつつ、凹凸による水垢の付着を抑制できる水まわり機器を提供することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の態様によれば、艶消し加工により表面の光沢感を抑制しつつ、凹凸による水垢の付着を抑制できる水まわり機器及び水まわり機器の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】実施形態に係る水まわり機器を備えた水まわり設備を模式的に表す斜視図である。
図2】第1実施形態に係る水まわり機器の表面付近を模式的に表す断面図である。
図3】凹凸の平均高さRcを表す模式図である。
図4】凹凸の平均長さRSmを表す模式図である。
図5図5(a)~図5(c)は、第1実施形態に係る水まわり機器の製造方法を模式的に表す断面図である。
図6】第2実施形態に係る水まわり機器の表面付近を模式的に表す断面図である。
図7図7(a)~図7(c)は、第2実施形態に係る水まわり機器の製造方法を模式的に表す断面図である。
図8図8(a)及び図8(b)は、第2実施形態に係る水まわり機器の製造方法を模式的に表す断面図である。
図9】実験結果を表す表である。
図10】実験結果を表す表である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0030】
図1は、実施形態に係る水まわり機器を備えた水まわり設備を模式的に表す斜視図である。
図1に表したように、実施形態に係る水まわり設備500は、水まわり機器100と、ボウル200と、を備えている。水まわり機器100は、例えば、内部に水が流れる流路を有する機器である。水まわり機器100は、内部に水が流れる流路を有する機器の周辺で使用され、水がかかる可能性のある機器であってもよい。
【0031】
この例では、水まわり機器100は、水栓装置である。水まわり機器100は、吐水部101と、支持部102と、操作部103と、を有する。吐水部101は、下方に位置するボウル200に向かって水を吐出する。支持部102は、吐水部101の下方に設けられている。支持部102は、下端においてボウル200の上面に固定されており、吐水部101を支持している。吐水部101及び支持部102の内部には、水が流れる流路が設けられている。操作部103は、吐水部101の上方に設けられたレバーである。使用者は、操作部103を操作することで、吐水部101からの水の吐出や停止、吐出される水の温度調整や流量調整などを行うことができる。
【0032】
水まわり機器100は、水栓装置に限定されず、例えば、ボウル200に取り付けられる排水金具、浴室に設けられる手すり、トイレに設けられる紙巻き器、キッチンに設けられる取っ手などであってもよい。
【0033】
図2は、第1実施形態に係る水まわり機器の表面付近を模式的に表す断面図である。
図2に表したように、第1実施形態に係る水まわり機器100は、本体部40と、第1層10と、を備えている。
【0034】
本体部40は、金属製である。本体部40は、例えば、ステンレスなどを含む。
【0035】
本体部40は、表面40a側に、本体凹凸41を有する。本体凹凸41は、複数の凹部41aと、複数の凸部41bと、を含む。本体凹凸41の凹部41aは、積層方向に窪んでいる。本体凹凸41の凸部41bは、積層方向に突出している。ここで、「積層方向」とは、本体部40と第1層10とを結ぶ方向である。つまり、積層方向は、本体部40の表面40aに対して直交する方向である。
【0036】
第1層10は、本体部40の表面40aの上に設けられている。換言すれば、第1層10は、本体部40の表面40aの外側に設けられている。第1層10は、例えば、最表面に位置する。
【0037】
第1層10は、本体部40の表面40aの上に直接的に設けられていてもよいし、本体部40の表面40aの上に他の層(例えば、後述の第2層20や第3層30)を介して間接的に設けられていてもよい。つまり、第1層10は、本体部40の表面40aに接していてもよいし、本体部40の表面40aに接していなくてもよい。この例では、第1層10は、本体部40の表面40aに接している。
【0038】
第1層10は、例えば、金属製である。第1層10は、例えば、炭窒化クロム、クロム、ニッケル、スズ-コバルト合金、金などを含む。第1層10が炭窒化クロムを含む場合、第1層10は、例えば、黒色である。この場合、第1層10を設けることで、例えば、水まわり機器100の表面を着色することができる。換言すれば、この場合、第1層10は、例えば、着色層として機能する。第1層10がクロム、ニッケル、スズ-コバルト合金、金などを含む場合、第1層10を設けることで、水まわり機器100の耐摩耗性を向上させるとともに、水まわり機器100の表面に金属光沢を付与することができる。
【0039】
第1層10は、表面10a側に、第1凹凸11を有する。第1凹凸11は、複数の凹部11aと、複数の凸部11bと、を含む。第1凹凸11の凹部11aは、積層方向に窪んでいる。第1凹凸11の凸部11bは、積層方向に突出している。
【0040】
第1凹凸11は、本体凹凸41に沿う。換言すれば、第1凹凸11は、本体凹凸41に追従している。つまり、第1凹凸11の凹部11aは、積層方向において、本体凹凸41の凹部41aと重なる。また、第1凹凸11の凸部11bは、積層方向において、本体凹凸41の凸部41bと重なる。
【0041】
このように、本体部40が本体凹凸41を有し、第1層10が本体凹凸41に沿う第1凹凸11を有することで、水まわり機器100の表面の光沢感が強くなり過ぎないように艶消しすることができる。
【0042】
第1層10の厚みT1は、例えば、0.1μm以上3.0μm以下(例えば、1μm程度)である。
【0043】
なお、ここでいう「厚み」とは、積層方向の長さである。厚みは、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)により得られる断面画像における複数の箇所の積層方向の長さの平均値として算出することができる。
【0044】
第1層10は、本体部40の表面40aの上の少なくとも一部に設けられていればよく、本体部40の表面40aの上の全面に設けられていることが好ましい。
【0045】
本体凹凸41は、本体部40の表面40a側の少なくとも一部に設けられていればよく、本体部40の表面40a側の全面に設けられていることが好ましい。また、第1凹凸11は、第1層10の表面10a側の少なくとも一部に設けられていればよく、第1層10の表面10a側の全面に設けられていることが好ましい。
【0046】
以下、各部の凹凸について、さらに詳しく説明する。
図3は、凹凸の平均高さRcを表す模式図である。
なお、図3では、本体部40における本体凹凸41の平均高さRc(Rc4)を例に挙げて説明するが、第1層10における第1凹凸11の平均高さRc1も、本体凹凸41の平均高さRc4と同様にして算出することができる。また、後述の第2層20における第2凹凸21の平均高さRc2及び第3層30における第3凹凸31の平均高さRc3も、本体凹凸41の平均高さRc4と同様にして算出することができる。
【0047】
図3に表したように、凹凸の平均高さRcは、基準長さLにおける輪郭曲線要素の高さZtiの平均値であり、下記の式(1)で表される。「輪郭曲線要素」とは、隣り合う凹部と凸部とを一組としたものである。より具体的には、例えば、図3に表したように、本体部40の本体凹凸41を構成する1つの凹部41aの底部から、その凹部41aの隣にある凸部41bの頂部までの積層方向の長さを輪郭曲線要素の高さZti(例えば、Zt1、Zt2、Zt3、Ztmなど)としたとき、平均高さRcは、基準長さLの間に含まれるm個の輪郭曲線要素の高さZt1~Ztmの平均値として表される。平均高さRcは、JIS B 0601:2001に準拠する。
【数1】
【0048】
図4は、凹凸の平均長さRSmを表す模式図である。
なお、図4では、本体部40における本体凹凸41の平均長さRSm(RSm4)を例に挙げて説明するが、第1層10における第1凹凸11の平均長さRSm1も、本体凹凸41の平均長さRSm4と同様にして算出することができる。また、後述の第2層20における第2凹凸21の平均長さRSm2、第3層30における第3凹凸31の平均長さRSm3も、本体凹凸41の平均長さRSm4と同様にして算出することができる。
【0049】
図4に表したように、凹凸の平均長さRSmは、基準長さLにおける輪郭曲線要素の長さXsiの平均値であり、下記の式(2)で表される。より具体的には、例えば、図4に表したように、本体部40の本体凹凸41を構成する1つの凸部41bの頂部から、その凸部41bの隣にある凸部41bの頂部までの測定方向(積層方向に直交する方向)の長さを輪郭曲線要素の長さXsi(例えば、Xs1、Xs2、Xs3など)としたとき、平均長さRSmは、基準長さLの間に含まれるm個の輪郭曲線要素の長さXs1~Xsmの平均値として表される。平均長さRSmは、JIS B 0601:2001に準拠する。
【数2】
【0050】
凹凸の平均高さRc及び平均長さRSmは、例えば、Mitutoyo社製の表面粗さ測定機SV-3200L4を用いて測定することができる。
【0051】
本体凹凸41の平均高さRc4は、本体凹凸41の平均長さRSm4よりも小さい。つまり、本体凹凸41に含まれる複数の凹部41aの深さ(高さ)の平均値は、本体凹凸41に含まれる複数の凹部41aの幅の平均値よりも小さい。
【0052】
このように、本体凹凸41の平均高さRc4を本体凹凸41の平均長さRSm4よりも小さくすることで、水まわり機器100の表面の光沢感が強くなり過ぎないように艶消しできる一方で、水まわり機器100の表面の凹凸の高さが大きくなり過ぎてしまうことを抑制できる。これにより、艶消し加工により表面の光沢感を抑制しつつ、凹凸による水垢の付着を抑制できる。
【0053】
なお、本体部40の少なくとも一部において、本体凹凸41の平均高さRc4が本体凹凸41の平均長さRSm4よりも小さければよく、本体部40の全部において、本体凹凸41の平均高さRc4が本体凹凸41の平均長さRSm4よりも小さいことが好ましい。また、水まわり機器100が水栓装置の場合、例えば、使用者から見えやすい吐水部101の上面や、操作部103の上面、支持部102の前面及び側面などにおいて、本体凹凸41の平均高さRc4が本体凹凸41の平均長さRSm4よりも小さくなるような艶消し加工が施されていることが好ましい。
【0054】
本体凹凸41の平均高さRc4は、例えば、0.8μmよりも大きく、好ましくは0.8μmを超え3.7μm未満である。本体凹凸41の平均長さRSm4は、例えば、40μm以上200μm以下であり、好ましくは51.0μmを超え93.0μm未満である。また、本体凹凸41の平均長さRSm4に対する本体凹凸41の平均高さRc4の比(Rc4/RSm4)は、例えば、0.01を超え0.05未満である。
【0055】
本体凹凸41の平均高さRc4をこの範囲とすることで、水まわり機器100の表面の凹凸の高さが大きくなり過ぎたり小さくなり過ぎたりすることを抑制できる。これにより、艶消し加工により表面の光沢感を抑制しつつ、程よく光沢感(艶)を残すことができる。
【0056】
また、本体凹凸41の平均長さRSm4に対する本体凹凸41の平均高さRc4の比(Rc4/RSm4)は、0.016を超え0.040未満であることが好ましく、0.019以上0.037以下であることがより好ましい。
【0057】
本体凹凸41の平均長さRSm4に対する本体凹凸41の平均高さRc4の比をこの範囲とすることで、水まわり機器100の表面の凹凸の高さが大きくなり過ぎたり小さくなり過ぎたりすることをより抑制できる。これにより、水まわり機器100の表面において、光沢感とマット感を両立させることができる。
【0058】
また、上記のように、第1層10の第1凹凸11は、本体部40の本体凹凸41に沿う。第1凹凸11の平均高さRc1は、第1凹凸11の平均長さRSm1よりも小さい。つまり、第1凹凸11に含まれる複数の凹部11aの深さ(高さ)の平均値は、第1凹凸11に含まれる複数の凹部11aの幅の平均値よりも小さい。
【0059】
第1凹凸11の平均高さRc1は、例えば、0.7μmよりも大きく、好ましくは0.7μmを超え4.4μm未満である。第1凹凸11の平均長さRSm1は、例えば、40μm以上200μm以下であり、好ましくは55.0μmを超え105.9μm未満である。また、第1凹凸11の平均長さRSm1に対する第1凹凸11の平均高さRc1の比(Rc1/RSm1)は、例えば、0.01を超え0.05未満である。
【0060】
第1凹凸11の平均高さRc1をこの範囲とすることで、水まわり機器100の表面の凹凸の高さが大きくなり過ぎたり小さくなり過ぎたりすることを抑制できる。これにより、艶消し加工により表面の光沢感を抑制しつつ、程よく光沢感(艶)を残すことができる。
【0061】
また、第1凹凸11の平均長さRSm1に対する第1凹凸11の平均高さRc1の比(Rc1/RSm1)は、0.013を超え0.042未満であることが好ましく、0.016以上0.037以下であることがより好ましい。
【0062】
第1凹凸11の平均長さRSm1に対する第1凹凸11の平均高さRc1の比をこの範囲とすることで、水まわり機器100の表面の凹凸の高さが大きくなり過ぎたり小さくなり過ぎたりすることをより抑制できる。これにより、水まわり機器100の表面において、光沢感とマット感を両立させることができる。
【0063】
また、本体凹凸41の平均高さRc4は、例えば、第1層10の厚みT1(図2参照)よりも大きい。このように、本体凹凸41の平均高さRc4を第1層10の厚みT1よりも大きくすることで、第1凹凸11をより本体凹凸41に沿ったものとすることができる。これにより、表面の光沢感を適度な範囲に調整しやすい。
【0064】
以下、第1実施形態に係る水まわり機器100の製造方法について説明する。
図5(a)~図5(c)は、第1実施形態に係る水まわり機器の製造方法を模式的に表す断面図である。
【0065】
第1実施形態に係る水まわり機器の製造方法では、まず、図5(a)に表したように、金属製の本体部40を用意する。次に、図5(b)に表したように、本体部40の表面40aに対してショットブラスト加工を行うことで、本体部40の表面40a側に、複数の凹部41aと複数の凸部41bとを含む本体凹凸41を形成する(凹凸形成工程)。
【0066】
凹凸形成工程においては、本体凹凸41の平均高さRc4を、本体凹凸41の平均長さRSm4よりも小さくする。例えば、ショットブラスト加工における加工条件を変更することで、本体凹凸41の平均高さRc4及び平均長さRSm4を調整することができる。より具体的には、投射材(粒体)の粒径や投射材を投射する速度(空気の圧力)を変更することで、本体凹凸41の平均高さRc4及び平均長さRSm4を調整することができる。
【0067】
次に、図5(c)に表したように、本体部40の表面40aの上に、第1層10を形成する(第1層形成工程)。この例では、第1層10は、炭窒化クロムを含み、例えば、化学気相成長(CVD:Chemical Vapor Deposition)法、物理気相成長(PVD:Physical Vapor Deposition)法、スパッタリング法などにより形成される。第1層形成工程においては、第1層10の表面10a側に、複数の凹部11aと複数の凸部11bとを含み、本体凹凸41に沿う第1凹凸11が形成されるように、第1層10を形成する。
【0068】
このように、本体部40に本体凹凸41を形成し、第1層10に本体凹凸41に沿う第1凹凸11を形成することで、水まわり機器100の表面の光沢感が強くなり過ぎないように艶消しすることができる。また、本体凹凸41の平均高さRc4を本体凹凸41の平均長さRSm4よりも小さくすることで、水まわり機器100の表面の光沢感が強くなり過ぎないように艶消しできる一方で、水まわり機器100の表面の凹凸の高さが大きくなり過ぎてしまうことを抑制できる。これにより、艶消し加工により表面の光沢感を抑制しつつ、凹凸による水垢の付着を抑制できる水まわり機器を提供することができる。
【0069】
なお、水まわり機器100の最表面に凹凸を形成する手段として、例えば、凹凸形成工程を第1層形成工程の後に行うことが考えられる。しかし、第1層10に対してショットブラスト加工を行うと、第1層10の表面にひび割れなどが発生する恐れがある。
【0070】
そこで、実施形態においては、第1層形成工程の前に、凹凸形成工程を行う。これにより、水まわり機器100の表面にひび割れなどが発生することを抑制しつつ、水まわり機器100の表面に適度な光沢感を残して艶消し加工を施すことができる。
【0071】
図6は、第2実施形態に係る水まわり機器の表面付近を模式的に表す断面図である。
図6に表したように、第2実施形態に係る水まわり機器100Aは、本体部40と、第1層10と、第2層20と、第3層30と、を備えている。
【0072】
この例では、本体部40は、例えば、黄銅などの銅合金またはステンレスなどを含む。本体部40は、例えば、亜鉛製の基材の表面に銅メッキが施されたものであってもよい。本体部40は、表面40a側に、本体凹凸41を有する。
【0073】
第1層10は、第1実施形態における第1層10と同じである。第1層10は、表面10a側に、第1凹凸11を有する。第1層10は、例えば、最表面に位置する。
【0074】
第2層20は、積層方向において、本体部40と第1層10との間に設けられている。つまり、第2層20は、本体部40の表面40aの上かつ第1層10の表面10aの下に設けられている。換言すれば、第2層20は、本体部40の表面40aの外側かつ第1層10の表面10aの内側に設けられている。第2層20は、第1層10と同じ方向に積層されている。
【0075】
第2層20が設けられる場合、第2層20は、本体部40の表面40aの上に直接的に設けられていてもよいし、本体部40の表面40aの上に他の層を介して間接的に設けられていてもよい。つまり、第2層20は、本体部4の表面40aに接していてもよいし、本体部40の表面40aに接していなくてもよい。この例では、第2層20は、本体部40の表面40aに接している。
【0076】
第2層20は、例えば、金属製である。第2層20は、例えば、ニッケル、銅などを含む。第2層20の硬度は、第1層10の硬度よりも低い。第1層10の硬度及び第2層20の硬度は、例えば、JIS Z 2244:2009に準拠した測定方法により測定することができる。第2層20を設けることで、水まわり機器100の耐食性を向上させることができる。第2層20は、必要に応じて設けられ、省略可能である。
【0077】
第2層20は、表面20a側に、第2凹凸21を有する。第2凹凸21は、複数の凹部21aと、複数の凸部21bと、を含む。第2凹凸21の凹部21aは、積層方向に窪んでいる。第2凹凸21の凸部21bは、積層方向に突出している。
【0078】
第2凹凸21は、本体凹凸41に沿う。換言すれば、第2凹凸21は、本体凹凸41に追従している。つまり、第2凹凸21の凹部21aは、積層方向において、本体凹凸41の凹部41aと重なる。また、第2凹凸21の凸部21bは、積層方向において、本体凹凸41の凸部41bと重なる。
【0079】
このように、第2層20が設けられる場合に、第2層20が本体凹凸41に沿う第2凹凸21を有することで、第2凹凸21を介して第1凹凸11に本体凹凸41を反映させることができるため、水まわり機器100の表面の光沢感が強くなり過ぎないように艶消しすることができる。
【0080】
第3層30は、積層方向において、第2層20と第1層10との間に設けられている。つまり、第3層30は、第2層20の表面20aの上かつ第1層10の表面10aの下に設けられている。換言すれば、第3層30は、第2層20の表面20aの外側かつ第1層10の表面10aの内側に設けられている。第3層30は、第1層10及び第2層20と同じ方向に積層されている。
【0081】
第3層30が設けられる場合、第3層30は、第2層20の表面20aの上に直接的に設けられていてもよいし、第2層20の表面20aの上に他の層を介して間接的に設けられていてもよい。つまり、第3層30は、第2層20の表面20aに接していてもよいし、第2層20の表面20aに接していなくてもよい。この例では、第3層30は、第2層20の表面20aに接している。
【0082】
また、第2層20が設けられず、第3層30が設けられる場合、第3層30は、本体部40の表面40aの上に直接的に設けられていてもよいし、本体部40の表面40aの上に他の層を介して間接的に設けられていてもよい。つまり、第3層30は、本体部40の表面40aに接していてもよいし、本体部40の表面40aに接していなくてもよい。
【0083】
第3層30は、例えば、金属製である。第3層30は、例えば、クロム、ニッケル、スズ-コバルト合金、金などを含む。第3層30を設けることで、水まわり機器100の耐摩耗性を向上させるとともに、水まわり機器100の表面に金属光沢を付与することができる。第3層30は、必要に応じて設けられ、省略可能である。
【0084】
第3層30は、表面30a側に、第3凹凸31を有する。第3凹凸31は、複数の凹部31aと、複数の凸部31bと、を含む。第3凹凸31の凹部31aは、積層方向に窪んでいる。第3凹凸31の凸部31bは、積層方向に突出している。
【0085】
第3凹凸31は、本体凹凸41に沿う。換言すれば、第3凹凸31は、本体凹凸41に追従している。つまり、第3凹凸31の凹部31aは、積層方向において、本体凹凸41の凹部41aと重なる。また、第3凹凸31の凸部31bは、積層方向において、本体凹凸41の凸部41bと重なる。なお、この例では、第3凹凸31は、第2凹凸21を介して本体凹凸41に沿っている。
【0086】
このように、第3層30が設けられる場合に、第3層30が第2凹凸21に沿う第3凹凸31を有することで、第3凹凸31を介して第1凹凸11に本体凹凸41を反映させることができるため、艶消し加工により表面の光沢感を抑制しつつ、凹凸による水垢の付着を抑制できる。
【0087】
また、第3層30の厚みT3は、例えば、第2層20の厚みT2よりも小さい。このように、第3層30の厚みT3を第2層20の厚みT2よりも小さくすることで、第3凹凸31をより第2凹凸21に沿ったものとすることができる。これにより、表面の光沢感を適度な範囲に調整しやすい。
【0088】
また、第1層10の厚みT1は、例えば、第3層30の厚みT3よりも大きい。また、第2層20の厚みT2は、例えば、第1層10の厚みT1よりも大きい。
【0089】
より具体的には、第1層10の厚みT1は、例えば、0.1μm以上3.0μm以下(例えば、1μm程度)である。第2層20の厚みT2は、例えば、2μm以上30μm以下である。第3層の厚みT3は、例えば、0.1μm以上2.0μm以下(例えば、0.5μm程度)である。
【0090】
第2層20が設けられる場合、第2層20は、本体部40の表面40aの上の少なくとも一部に設けられていればよく、本体部40の表面40aの上の全面に設けられていることが好ましい。また、第3層30が設けられる場合、第3層30は、第2層20の表面20aの上の少なくとも一部に設けられていればよく、第2層20の表面20aの上の全面に設けられていることが好ましい。また、第3層30の上に第1層10が設けられる場合、第1層10は、第3層30の表面30aの上の少なくとも一部に設けられていればよく、第3層30の表面30aの上の全面に設けられていることが好ましい。
【0091】
また、第2層20が設けられる場合、第2凹凸21は、第2層20の表面20a側の少なくとも一部に設けられていればよく、第2層20の表面20a側の全面に設けられていることが好ましい。また、第3層30が設けられる場合、第3凹凸31は、第3層30の表面30a側の少なくとも一部に設けられていればよく、第3層30の表面30a側の全面に設けられていることが好ましい。
【0092】
実施形態においては、本体部40と第2層20との間、第2層20と第3層30との間、及び第3層30と第1層10との間の少なくともいずれかに、クロム、ニッケル、スズ-コバルト合金、金などを含む層をさらに設けてもよい。このような層を設ける場合も、表面側に下側の層の凹凸に沿う凹凸を設けることで、この凹凸を介して上側の層に本体凹凸41を反映させることができる。
【0093】
上述のように、第2層20における第2凹凸21の平均高さRc2及び第3層30における第3凹凸31の平均高さRc3は、本体凹凸41の平均高さRc4と同様にして算出することができる(図3及び式(1)参照)。また、第2層20における第2凹凸21の平均長さRSm2、第3層30における第3凹凸31の平均長さRSm3は、本体凹凸41の平均長さRSm4と同様にして算出することができる(図4及び式(2)参照)。
【0094】
第2凹凸21の平均高さRc2は、例えば、第2凹凸21の平均長さRSm2よりも小さい。つまり、第2凹凸21に含まれる複数の凹部21aの深さ(高さ)の平均値は、第2凹凸21に含まれる複数の凹部21aの幅の平均値よりも小さい。
【0095】
第2凹凸21の平均高さRc2は、例えば、1μm以上であり、好ましくは1μm以上6.3μm以下である。第2凹凸21の平均長さRSm2は、例えば、40μm以上200μm以下であり、好ましくは51.0μmを超え93.0μm未満である。また、第2凹凸21の平均長さRSm2に対する第2凹凸21の平均高さRc2の比(Rc2/RSm2)は、例えば、0.01を超え0.05未満である。
【0096】
第2凹凸21の平均高さRc2をこの範囲とすることで、第2層20が設けられる場合に、水まわり機器100の表面の凹凸の高さが大きくなり過ぎたり小さくなり過ぎたりすることを抑制できる。これにより、艶消し加工により表面の光沢感を抑制しつつ、程よく光沢感(艶)を残すことができる。
【0097】
第3凹凸31の平均高さRc3は、例えば、第3凹凸31の平均長さRSm3よりも小さい。つまり、第3凹凸31に含まれる複数の凹部31aの深さ(高さ)の平均値は、第3凹凸31に含まれる複数の凹部31aの幅の平均値よりも小さい。
【0098】
第3凹凸31の平均高さRc3は、例えば、1μm以上であり、好ましくは1μm以上6.3μm以下である。第3凹凸31の平均長さRSm3は、例えば、40μm以上200μm以下であり、好ましくは51.0μmを超え93.0μm未満である。また、第3凹凸31の平均長さRSm3に対する第3凹凸31の平均高さRc3の比(Rc3/RSm3)は、例えば、0.01を超え0.05未満である。
【0099】
第3凹凸31の平均高さRc3をこの範囲とすることで、第3層30が設けられる場合に、水まわり機器100の表面の凹凸の高さが大きくなり過ぎたり小さくなり過ぎたりすることを抑制できる。これにより、艶消し加工により表面の光沢感を抑制しつつ、程よく光沢感(艶)を残すことができる。
【0100】
以下、第2実施形態に係る水まわり機器100の製造方法について説明する。
図7(a)~図7(c)は、第2実施形態に係る水まわり機器の製造方法を模式的に表す断面図である。
図8(a)及び図8(b)は、第2実施形態に係る水まわり機器の製造方法を模式的に表す断面図である。
【0101】
第2実施形態に係る水まわり機器の製造方法では、まず、図7(a)に表したように、金属製の本体部40を用意する。次に、図7(b)に表したように、本体部40の表面40aに対してショットブラスト加工を行うことで、本体部40の表面40a側に、複数の凹部41aと複数の凸部41bとを含む本体凹凸41を形成する(凹凸形成工程)。第2実施形態における凹凸形成工程は、第1実施形態における凹凸形成工程と同様にして行うことができる。
【0102】
次に、図7(c)に表したように、本体部40の表面40aの上に、第2層20を形成する(第2層形成工程)。第2層20は、例えば、電解メッキなどにより形成される。第2層形成工程においては、第2層20の表面20a側に、複数の凹部21aと複数の凸部21bとを含み、本体凹凸41に沿う第2凹凸21が形成されるように、第2層20を形成する。第2層形成工程は、必要に応じて行われ、省略可能である。
【0103】
次に、図8(a)に表したように、1第2層20の表面20aの上に、第3層30を形成する(第3層形成工程)。第3層30は、例えば、電解メッキなどにより形成される。第3層形成工程においては、第3層30の表面30a側に、複数の凹部31aと複数の凸部31bとを含み、第2凹凸に沿う第3凹凸31が形成されるように、第3層30を形成する。第3層形成工程は、必要に応じて行われ、省略可能である。
【0104】
次に、図8(b)に表したように、第3層30の表面30aの上に、第1層10を形成する(第1層形成工程)。この例では、第1層10は、炭窒化クロムを含み、例えば、化学気相成長(CVD:Chemical Vapor Deposition)法、物理気相成長(PVD:Physical Vapor Deposition)法、スパッタリング法などにより形成される。第1層形成工程においては、第1層10の表面10a側に、複数の凹部11aと複数の凸部11bとを含み、第3凹凸31に沿う第1凹凸11が形成されるように第1層10を形成する。
【0105】
このように、本体部40と第1層10との間に第2層20及び第3層30が設けられる場合にも、第2層20に本体凹凸41に沿う第2凹凸21を形成し、第3層30に第2凹凸21に沿う第3凹凸31を形成することで、第2凹凸21及び第3凹凸31を介して第1凹凸11に本体凹凸41を反映させることができるため、水まわり機器100の表面の光沢感が強くなり過ぎないように艶消しすることができる。
【0106】
なお、水まわり機器100の最表面に凹凸を形成する手段として、例えば、凹凸形成工程を第1層形成工程または第3層形成工程の後に行うことが考えられる。しかし、第1層10や第3層30に対してショットブラスト加工を行うと、第1層10や第3層30の表面にひび割れなどが発生する恐れがある。
【0107】
そこで、実施形態においては、第2層形成工程の前に、凹凸形成工程を行う。これにより、水まわり機器100の表面にひび割れなどが発生することを抑制しつつ、水まわり機器100の表面に適度な光沢感を残して艶消し加工を施すことができる。
【0108】
本発明者らは、本体凹凸41及び第1凹凸11と外観との関係性について、以下の実験を行った。実験では、まず、本体部40からなるサンプル1~19を準備した。次に、サンプル1~19のそれぞれにおいて、異なる加工条件でショットブラスト加工を行い、本体部40の表面40aに様々な平均高さRc及び平均長さRSmを有する本体凹凸41を形成した。本体凹凸41を形成した後のサンプル1~19において、本体凹凸41の平均高さRc4、平均長さRSm4、平均長さRSm4に対する平均高さRc4の比(Rc4/RSm4)、及び光沢度を測定し、外観を目視で確認して光沢感及びマット感の有無を判定した。結果を図9に示す。
【0109】
次に、サンプル1~19のそれぞれにおいて、本体凹凸41を形成した本体部40の表面40aの上に炭窒化クロムを含む第1層10をPVDにより形成した。第1層10を形成した後のサンプル1~19において、第1凹凸11の平均高さRc1、平均長さRSm1、平均長さRSm1に対する平均高さRc1の比(Rc1/RSm1)、及び光沢度を測定し、外観を目視で確認して光沢感及びマット感の有無を判定した。結果を図10に示す。
【0110】
図9及び図10は、実験結果を表す表である。
図9及び図10では、外観について、光沢感もマット感もあるもの(艶有りマット)を「○」、マット感のないもの(マット感無し)及び光沢感のないもの(艶無しマット)を「×」とした。
【0111】
図9及び図10に表したように、本体凹凸41の平均長さRSm4に対する平均高さRc4の比(Rc4/RSm4)が0.006~0.016のサンプル1~5では、第1凹凸11の平均長さRSm1に対する平均高さRc1の比(Rc1/RSm1)が0.005~0.013であった。第1層10を形成した後のサンプル1~5の外観は、光沢感はあるもののマット感のない「マット感無し」の外観であった。
【0112】
また、図9及び図10に表したように、本体凹凸41の平均長さRSm4に対する平均高さRc4の比(Rc4/RSm4)が0.040~0.101のサンプル15~19では、第1凹凸11の平均長さRSm1に対する平均高さRc1の比(Rc1/RSm1)が0.042~0.109であった。第1層10を形成した後のサンプル15~19の外観は、マット感はあるものの光沢感のない「艶無しマット」の外観であった。
【0113】
これに対し、図9及び図10に表したように、本体凹凸41の平均長さRSm4に対する平均高さRc4の比(Rc4/RSm4)が0.019~0.037(0.016を超え0.040未満)のサンプル6~14では、第1凹凸11の平均長さRSm1に対する平均高さRc1の比(Rc1/RSm1)が0.016~0.037(0.013を超え0.042未満)であった。第1層10を形成した後のサンプル6~14の外観は、光沢感もマット感もある「艶有りマット」の外観であった。
【0114】
以上、説明したように、実施形態によれば、艶消し加工により表面の光沢感を抑制しつつ、凹凸による水垢の付着を抑制できる水まわり機器及び水まわり機器の製造方法を提供することができる。
【0115】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、水まわり機器などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0116】
10 第1層、 10a 表面、 11 第1凹凸、 11a 凹部、 11b 凸部、 20 第2層、 20a 表面、 21 第2凹凸、 21a 凹部、 21b 凸部、 30 第3層、 30a 表面、 31 第3凹凸、 31a 凹部、 31b 凸部、 40 本体部、 40a 表面、 41 本体凹凸、 41a 凹部、 41b 凸部、 100、100A 水まわり機器、 101 吐水部、 102 支持部、 103 操作部、 200 ボウル、 500 水まわり設備、 L 基準長さ、 Rc、Rc1~Rc4 平均高さ、 RSm、RSm1~RSm4 平均長さ、 T1~T3 厚み、 Xs1~Xs3、Xsm 長さ、 Zt1~Zt3、Ztm 高さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10