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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】研磨治具
(51)【国際特許分類】
   B24B 29/04 20060101AFI20240625BHJP
   B24D 18/00 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
B24B29/04
B24D18/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020121147
(22)【出願日】2020-07-15
(65)【公開番号】P2022018210
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-07-03
(73)【特許権者】
【識別番号】593166462
【氏名又は名称】サムテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100143085
【弁理士】
【氏名又は名称】藤飯 章弘
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 純三
(72)【発明者】
【氏名】三島 慎一
(72)【発明者】
【氏名】山崎 全彦
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】特開昭48-052094(JP,A)
【文献】特開2013-078669(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0054743(US,A1)
【文献】実開昭51-135897(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 29/04、33/02、33/08
B24D 18/00
B08B 9/087
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
孔と、前記孔の開口部回りに形成され、前記孔の手前側から奥に向かって直径が大きくなる内側末広がり面とを備える被研磨物の前記内側末広がり面を研磨する研磨治具であって、
回転駆動部を有する回転手段に軸基端部が取り付けられ、前記回転駆動部により軸周り方向に回転可能に保持される軸本体部と、
前記軸本体部と一体的に回転するように前記軸本体部の軸先端部に取り付けられる研磨加工部とを備えており、
前記研磨加工部は、前記孔を介して前記被研磨物の内部に挿入される回動アーム部材を備えており、
前記回動アーム部材は、前記軸本体部の回転軸線に対して拡がり角度の大きい状態と拡がり角度の小さい状態との間で姿勢変化可能に構成されると共に、前記軸本体部に設けられる付勢部材によって、拡がり角度の大きい状態に向けて付勢されており、
前記回動アーム部材の先端部には、前記内側末広がり面に当接する研磨本体部が設けられており、
前記回動アーム部材は、その基端部が、前記軸本体部の回転軸線と交差する方向に延びる第1支軸により揺動可能に軸支されており、
前記研磨本体部は、前記回動アーム部材の先端部において、前記第1支軸と平行な第2支軸によって揺動可能に軸支されており、
前記研磨本体部は、揺動基部と、押圧補助部材と、研磨部材とを備えており、
前記揺動基部は、前記第2支軸に軸支されており、前記第2支軸を間に挟んで前記第2支軸の軸方向と交差する方向に延びるように形成されると共に、前記回動アーム部材が拡がる方向を向く取付面を備えており、
前記取付面上には、前記研磨部材が配置されており、
前記押圧補助部材は、弾性材料から形成され、前記取付面と前記研磨部材との間に介在されて配置されていることを特徴とする研磨治具。
【請求項2】
前記押圧補助部材は、傾斜面部を備えており、
前記取付面を前記軸本体部の軸線方向と平行となるように前記揺動基部の位置を設定した場合において、前記傾斜面部は、少なくともその一部において、前記軸本体部の前記軸基端部から前記軸先端部に向く方向に向かうに従い、前記取付面から離隔する方向に傾斜していることを特徴とする請求項に記載の研磨治具。
【請求項3】
前記取付面を前記軸本体部の軸線方向と平行となるように前記揺動基部の位置を設定した場合において、
前記取付面に配設される前記押圧補助部材の取付位置は、前記第2支軸の軸心よりも、前記軸本体部の前記軸基端部から前記軸先端部に向く方向側であることを特徴とする請求項に記載の研磨治具。
【請求項4】
前記軸本体部は、前記回転手段に一端側が取り付けられる第1軸部と、前記研磨加工部が一端側に取り付けられる第2軸部と、前記第1軸部の他端側及び前記第2軸部の他端側を接続する弾性部材とを備えており、前記付勢部材は、前記第2軸部に設けられていることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の研磨治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨治具、特に、孔の開口部回りに形成され、孔の手前側から奥に向かって直径が大きくなる内側末広がり面を有する被研磨物の内側末広がり面を研磨する研磨治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、高圧ガスを貯蔵するための各種貯蔵用容器が用いられている。このような貯蔵用容器としては、例えば、金属製のライナーを繊維強化樹脂層で補強した高圧ガス容器や、アルミニウム等の金属材料のみで形成された高圧ガス容器が一般的に用いられている。また、高圧ガス容器の端部には高圧ガス充填・放出用の孔であるポート部が形成されており、該ポート部は、通常、金属絞り加工を施すことによって形成される、
【0003】
近年高圧ガス容器中に貯蔵するガス量を増加させるために、充填圧力の高圧化が望まれており、高圧ガス容器の強度に対する要求が高くなっている。また、高圧ガスの充填放出の要求繰り返し数も増加することが求められ、高圧ガス容器には、優れた疲労特性が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、高圧ガスの充填・放出用のポート部は、金属絞り加工によって形成されるため、加工面にシワが発生してしまい、当該シワ部分で応力集中等が発生し、優れた強度や優れた疲労特性を発揮する高圧ガス容器を得ることが難しいという問題があった。
【0005】
高圧ガス容器の外側面に生じる加工シワは、研磨することにより容易に除去可能であるが、特に、図9の要部拡大断面図に示すように、孔の開口部周りに形成され、孔の手前側から奥に向かって直径が大きくなる内側末広がり面となる部分については、発生した加工シワを除去することは困難であり、このような内面側のシワを効率良く除去する方法が開発されることが望まれている。
【0006】
本発明は上記要望に鑑みなされたものであり、孔と、該孔の開口部回りに形成され、孔の手前側から奥に向かって直径が大きくなる内側末広がり面とを備える被研磨物の内側末広がり面を効率良く研磨することができる研磨治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の前記目的は、孔と、前記孔の開口部回りに形成され、前記孔の手前側から奥に向かって直径が大きくなる内側末広がり面とを備える被研磨物の前記内側末広がり面を研磨する研磨治具であって、回転駆動部を有する回転手段に軸基端部が取り付けられ、前記回転駆動部により軸周り方向に回転可能に保持される軸本体部と、前記軸本体部と一体的に回転するように前記軸本体部の軸先端部に取り付けられる研磨加工部とを備えており、前記研磨加工部は、前記孔を介して前記被研磨物の内部に挿入される回動アーム部材を備えており、前記回動アーム部材は、前記軸本体部の回転軸線に対して拡がり角度の大きい状態と拡がり角度の小さい状態との間で姿勢変化可能に構成されると共に、前記軸本体部に設けられる付勢部材によって、拡がり角度の大きい状態に向けて付勢されており、前記回動アーム部材の先端部には、前記内側末広がり面に当接する研磨本体部が設けられており、前記回動アーム部材は、その基端部が、前記軸本体部の回転軸線と交差する方向に延びる第1支軸により揺動可能に軸支されており、前記研磨本体部は、前記回動アーム部材の先端部において、前記第1支軸と平行な第2支軸によって揺動可能に軸支されており、前記研磨本体部は、揺動基部と、押圧補助部材と、研磨部材とを備えており、前記揺動基部は、前記第2支軸に軸支されており、前記第2支軸を間に挟んで前記第2支軸の軸方向と交差する方向に延びるように形成されると共に、前記回動アーム部材が拡がる方向を向く取付面を備えており、前記取付面上には、前記研磨部材が配置されており、前記押圧補助部材は、弾性材料から形成され、前記取付面と前記研磨部材との間に介在されて配置されていることを特徴とする研磨治具により達成される。
【0010】
また、前記押圧補助部材は、傾斜面部を備えており、前記取付面を前記軸本体部の軸線方向と平行となるように前記揺動基部の位置を設定した場合において、前記傾斜面部は、少なくともその一部において、前記軸本体部の前記軸基端部から前記軸先端部に向く方向に向かうに従い、前記取付面から離隔する方向に傾斜していることが好ましい。
【0011】
また、前記取付面を前記軸本体部の軸線方向と平行となるように前記揺動基部の位置を設定した場合において、前記取付面に配設される前記押圧補助部材の取付位置は、前記第2支軸の軸心よりも、前記軸本体部の前記軸基端部から前記軸先端部に向く方向側であることが好ましい。
【0012】
また、前記軸本体部は、前記回転手段に一端側が取り付けられる第1軸部と、前記研磨加工部が一端側に取り付けられる第2軸部と、前記第1軸部の他端側及び前記第2軸部の他端側を接続する弾性部材とを備えており、前記付勢部材は、前記第2軸部に設けられることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、孔と、該孔の開口部回りに形成され、孔の手前側から奥に向かって直径が大きくなる内側末広がり面とを備える被研磨物の内側末広がり面を効率良く研磨することができる研磨治具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る研磨治具の概略構成図である。
図2図1に示す研磨治具が備えるアーム取付部材を説明するための平面図である。
図3図1の要部拡大図である。
図4図1に示す研磨治具が備える回動アーム部材及び研磨本体部に関する要部拡大図である。
図5図1に示す研磨治具の作動を説明するための説明図である。
図6図1に示す研磨治具が有する軸本体部の変形例を示す概略構成図である。
図7図1に示す研磨治具が備える研磨本体部の変形例を説明するための説明図である。
図8図1に示す研磨治具が備える研磨本体部の変形例を説明するための説明図である。
図9】被研磨物の一例に関する要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。なお、各図は、構成の理解を容易ならしめるために部分的に拡大・縮小している。図1は、本発明の一実施形態にかかる研磨治具1の概略構成図である。
【0016】
本発明に係る研磨治具1は、図8に示すように、孔と、孔の開口部回りに形成され、孔の手前側から奥に向かって直径が大きくなる内側末広がり面とを備える高圧ガス容器のような被研磨物の内側末広がり面を研磨するための治具である。この研磨治具1は、図1に示すように、軸本体部2と、研磨加工部3とを備えている。
【0017】
軸本体部2は、丸棒状に形成されており、一方端部である軸基端部21、及び、他方端部である軸先端部22を備えている。軸基端部21は、回転駆動部を有する回転手段(図示せず)に取り付けられ、該回転駆動部により軸周り方向に回転可能に保持される部位である。軸先端部22には、研磨加工部3が取り付けられており、当該研磨加工部3は、軸本体部2と一体的に回転するように構成される。
【0018】
また、軸先端部22には、付勢部材であるコイルバネ23が設けられている。このコイルバネ23(付勢部材)は、軸本体部2の軸先端部22において、軸本体部2と同軸で外装されている。コイルバネ23の一方端(軸基端部21側の端部)は、軸本体部2に固定されるストッパ24に当接しており、コイルバネ23の他方端(軸本体部2の先端側の端部)は、研磨加工部3が備える摺動部材31に当接するように構成されている。なお、付勢部材は、コイルバネに限定されるものではなく、例えば、油圧式又は空気圧式等の流体圧シリンダや、ゴム体等を用いることもできる。また、ストッパ24は、軸本体部2の軸線方向に沿って、その位置を変更可能に構成することが好ましい、例えば、軸本体部2の表面に雄ネジ部を形成し、当該雄ネジ部に螺合する雌ネジ部を内周面に備えるリング部材としてストッパ24を形成することにより、該ストッパ24を軸本体部2の軸線方向に沿って、その設置位置を変更可能に構成することができる。
【0019】
研磨加工部3は、摺動部材31、アーム取付部材32、回動アーム部材33、研磨本体部34とを備えている。摺動部材31は、軸本体部2と同軸に軸先端部22に外装される部材であり、軸先端部22において、軸本体部2の軸線方向に沿って摺動可能に構成されている。この摺動部材31は、軸本体部2の軸線方向を法線方向とする(軸線方向に対して垂直な方向に延びる)、当接面部31aを備えている。また、摺動部材31は、軸本体部2の先端と、付勢部材(コイルバネ23)との間に配設されている。
【0020】
アーム取付部材32は、軸本体部2の先端に固定されて取り付けられる部材であり、回動アーム部材33を揺動可能に保持すると共に、上述の摺動部材31が軸本体部2から抜け出ることを防止する機能を有している。なお、付勢部材であるコイルバネ23に対して何らの外力を付加しない状態において、コイルバネ23の付勢力によって、軸本体部2の軸基端部21から軸先端部22に向く方向に向けて摺動部材31をアーム取付部材32に押し当てることができるように、コイルバネ23、摺動部材31、アーム取付部材32の位置が設定されている。
【0021】
また、アーム取付部材32は、図1や、図1の矢視A方向から見た平面図である図2に示すように、軸本体部2の軸線方向に対して垂直な方向に向かって突出する突出部32aを複数備えている、本実施形態においては、2つの突出部32aを備えるように構成されている。なお、突出部32aの数は、2つに限定されるものではなく、1であってもよく、3つ、4つ等複数備えるように構成してもよい、また、突出部32aを複数備えるように構成する場合には、各突出部32aは、軸本体部2の軸線周りの周方向において等角度間隔又は略等角度間隔となるように形成されている。また、これら各突出部32aには、軸本体部2の軸線(回転軸線)と交差する方向に延びる第1支軸32bが設けられている。
【0022】
回動アーム部材33は、孔を介して被研磨物の内部に挿入される部材であり、一方端部である基端部と、他方端部である先端部とを備える棒状部材である。この回動アーム部材33は、その基端部が、軸本体部2の軸線と交差する方向に延びる第1支軸32bに軸支されており、揺動可能に構成されている。つまり、回動アーム部材33は、図1(a)(b)に示すように、軸本体部2の軸線(回転軸線)に対して拡がり角度の大きい状態(図1(a))と拡がり角度の小さい状態(図1(b))との間で姿勢変化可能に構成されている。
【0023】
また、付勢部材であるコイルバネ23に対して何らの外力を付加しない状態において、回動アーム部材33は、コイルバネ23の付勢力によって、軸本体部2の軸線(回転軸線)に対して拡がり角度の大きい状態に向けて付勢されている。より具体的に説明すると、コイルバネ23の付勢力によって、軸本体部2の軸基端部21から軸先端部22に向く方向に向かって押し当てられる摺動部材31によって、回動アーム部材33の基端部側先端が、軸本体部2の軸基端部21から軸先端部22に向く方向に向かって押圧され、この押圧によって、第1支軸32b周りに回動アーム部材33が回動し、軸本体部2の軸線(回転軸線)に対して拡がり角度の大きい状態に向けて付勢されることになる。このような回動アーム部材33の作動を可能にするため、回動アーム部材33の基端部側先端は、要部拡大図である図3に示すように、回動アーム部材33の長手方向に対して傾斜する傾斜面33aを備えるように構成することが好ましい、なお、傾斜面33aは、軸本体部2の軸線に近い側の端縁が先細となるように形成することが好ましい。
【0024】
研磨本体部34は、回動アーム部材33の先端部に配置される部材であり、被研磨物における内側末広がり面に当接して該内側末広がり面を研磨する機能を有する部材である。この研磨本体部34は、回動アーム部材33の先端部において、第1支軸32bと平行な第2支軸35によって揺動可能に軸支されている。
【0025】
この研磨本体部34は、図4の要部拡大図に示すように、揺動基部341と、研磨部材342と、押圧補助部材343とを備えている。揺動基部341は、第2支軸35に軸支される部材であり、該第2支軸35を間に挟んで第2支軸35の軸方向と交差する方向に延びるように形成されている。また、揺動基部341は、回動アーム部材33が拡がる方向を向く取付面344を備えている。
【0026】
研磨部材342は、被研磨物における内側末広がり面に当接して該内側末広がり面を研磨する部材であり、種々のものを採用することができるが、例えば、シート状に形成される研磨パッドを好適に用いることができる。
【0027】
押圧補助部材343は、例えば、天然ゴム、合成ゴム、及びポリウレタン等の弾性材料から形成される部材であり、取付面344と研磨部材342との間に介在されて配置される。また、本実施形態においては、図4に示すように、押圧補助部材343は、傾斜面部343aを備えて構成されており、研磨部材342は、傾斜面部343aの全域を被覆するように配置されている。ここで、この傾斜面部343aは、取付面344を軸本体部2の軸線方向と平行となるように揺動基部341の位置を設定した場合において、軸本体部2の軸基端部21から軸先端部22に向く方向に向かうに従い、取付面344から離隔する方向に傾斜するように構成している。また、傾斜面部343aの傾斜面形状は、湾曲面として構成してもよく、傾斜角度が一定となる傾斜面として構成してよい。
【0028】
以上の構成を備えた研磨治具1の作動について、以下説明する。まず、例えば、回転手段に研磨治具1が有する軸本体部2の軸基端部21を固定すると共に、手指等により2つの回動アーム部材33を一括して握ることにより、図1(b)に示すように、それぞれを軸本体部2の軸線側に近づけるように移動させる。ここで、各回動アーム部材33を軸線側に近づけることにより、回動アーム部材33が第1支軸32b周りに回動して基端部側先端が摺動部材31の当接面部31aを押し上げ、付勢部材であるコイルバネ23が圧縮される方向に縮むことになる。
【0029】
回動アーム部材33を一括して握った状態を維持しつつ、各回動アーム部材33の先端に配置されている研磨加工部3を、被研磨物の孔に挿入する。挿入と同時に、手指による回動アーム部材33の把持を解除することにより、付勢部材であるコイルバネ23の付勢力によって、図5に示すように、各回動アーム部材33は、軸本体部2の回転軸線に対して拡がり角度の大きい状態となるように付勢され、回動アーム部材33の先端部に配置される研磨本体部34は、被研磨物の内側末広がり面に当接可能な状態となる。
【0030】
次いで、回転駆動部を有する回転手段を駆動して、軸本体部2をその軸線周りに回転させて、内側末広がり面の研磨を行う。研磨に際しては、研磨本体部34の差し込み量や孔の内周面に対する軸本体部2の距離を適宜変化させながら、内側末広がり面の全領域に研磨部材342が当接するように研磨治具1の位置調整を行う。回動アーム部材33は、コイルバネ23によって、軸本体部2の回転軸線に対して拡がり角度の大きい状態に向けて付勢されており、更に、回転による遠心力の作用が加わることにより、より強く研磨部材342を内側末広がり面に当接させることができ、当該内側末広がり面に形成されているシワが効果的にかつ効率良く除去される。
【0031】
内側末広がり面に形成されているシワを研磨によって除去する作業が終了した際には、回転手段の駆動を停止し、研磨治具1を被研磨物の孔から引き抜くことにより、各回動アーム部材33は、孔の内面との干渉によって軸本体部2の軸線側に近づくように移動し、孔から取り出されることになる。
【0032】
本実施形態に係る研磨治具1によれば、上述のように、被研磨物の内側末広がり面を効率良くかつ効果的に研磨して、形成されるシワを容易に除去することが可能となる。
【0033】
また、研磨本体部34において、揺動基部341と研磨部材342との間に弾性材料から形成される押圧補助部材343を備えている為、内側末広がり面に対して押し付けられる研磨部材342の当接状態を均一化することができ、より一層、効率良く内側末広がり面に形成されているシワを除去することが可能となる。
【0034】
また、上記実施形態においては、押圧補助部材343が、傾斜面部343aを備えるように構成されている。このような構成を採用することにより、押圧補助部材343の厚みが薄い部分から厚い部分に向けて、押圧補助部材343の撓み量を変化させることが可能となり、内側末広がり面に対して押し付けられる研磨部材342の押し付け力を変化させることが可能となる。この結果、研磨される内側末広がり面の研磨状態を均一化することが可能となる。また、押圧補助部材343が傾斜面を備えることにより、内側末広がり面の表面形状に研磨部材342が沿いやすくなる為、効率良く内側末広がり面に形成されているシワを除去することが可能となる。
【0035】
以上、本発明の一実施形態に係る研磨治具1について説明したが、研磨治具1の具体的構成は、上記実施形態に限定されない。例えば、軸本体部2を、図6に示すように、回転手段に一端側が取り付けられる第1軸部25と、研磨加工部3が一端側に取り付けられる第2軸部26と、第1軸部25の他端側及び第2軸部26の他端側を接続する弾性部材27とを備えるように構成してもよい。なお、このような構成を採用する場合、付勢部材であるコイルバネ23は、第2軸部26に設けられる。このように、第1軸部25の他端側及び第2軸部26の他端側を接続する弾性部材27を備えるように構成することにより、研磨加工部3の回転軸と軸本体部2の回転軸との間で発生するおそれのある軸ズレを吸収できるフレキシブルな軸体として軸本体部2を構成することが可能となり、振動の低減を図り研磨の作業性を向上させることができる。また、研磨治具1の寿命が低下することを効果的に抑制することが可能となる。
【0036】
また、図6に示すように、第1軸部25と同軸状に外装される錘部材28を設けて軸本体部2を構成してもよい。このような錘部材28を設けることにより、研磨加工部3を安定的に回転させることが可能となり、研磨の作業性を向上させることができる。なお、錘部材28を第2軸部26上において同軸状に外装して設置してもよい。
【0037】
また、上記実施形態においては、研磨本体部34は、取付面344と研磨部材342との間に押圧補助部材343が介在されて構成されているが、このような押圧補助部材343を省略し、取付面344上に直接的に研磨部材342を配置するように構成してもよい。
【0038】
また、上記実施形態においては、押圧補助部材343が、傾斜面部343aを備えるように構成されているが、この傾斜面を省略し、取付面344と略平行な表面を有する形状として構成してもよい。
【0039】
また、上記実施形態においては、押圧補助部材343は、図4に示すように、取付面344の全域を被覆するように配置されているが、例えば、図7に示すように、取付面344を軸本体部2の軸線方向と平行となるように揺動基部341の位置を設定した場合において、取付面344に配設される押圧補助部材343の取付位置が、第2支軸35の軸心よりも、軸本体部2の軸基端部21から軸先端部22に向く方向側の取付面344の一部領域に設定してもよい。図7においては、第2支軸35の軸心に対して、軸本体部2の軸基端部21から軸先端部22に向く方向側の取付面344の片側領域に設けるように構成している。このような構成を採用することにより、取付面344と研磨部材342との間に押圧補助部材343が設けられていない領域と、押圧補助部材343が設けられる領域とを形成することができ、内側末広がり面に対して押し付けられる研磨部材342の当たり方を異ならせることが可能となる。これにより、一層効率良く内側末広がり面に形成されているシワを除去し、研磨される内側末広がり面の研磨状態を均一化することが可能となる。
【0040】
また、上記実施形態においては、押圧補助部材343が備える傾斜面部343aは、その全域において、取付面344を軸本体部2の軸線方向と平行となるように揺動基部341の位置を設定した場合において、軸本体部2の軸基端部21から軸先端部22に向く方向に向かうに従い、取付面344から離隔する方向に傾斜するように構成しているが、このような構成に特に限定されず、例えば、図8に示すように、一部において、軸本体部2の軸基端部21から軸先端部22に向く方向に向かうに従い、取付面344から離隔する方向に傾斜するように構成し、他の部分においては、軸本体部2の軸基端部21から軸先端部22に向く方向に向かうに従い、取付面344に向かって近接する方向に傾斜するように構成してもよい。なお、図8においては、研磨部材342を省略している。
【符号の説明】
【0041】
1 研磨部材
2 軸本体部
21 軸基端部
22 軸先端部
23 コイルバネ
24 ストッパ
25 第1軸部
26 第2軸部
27 弾性部材
28 錘部材
3 研磨加工部
31 摺動部材
32 アーム取付部材
33 回動アーム部材
34 研磨本体部
341 揺動基部
342 研磨部材
343 押圧補助部材
344 取付面
343a 傾斜面部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9