IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セイコーエプソン株式会社の特許一覧

特許7508927三次元造形装置、および、三次元造形物の製造方法
<>
  • 特許-三次元造形装置、および、三次元造形物の製造方法 図1
  • 特許-三次元造形装置、および、三次元造形物の製造方法 図2
  • 特許-三次元造形装置、および、三次元造形物の製造方法 図3
  • 特許-三次元造形装置、および、三次元造形物の製造方法 図4
  • 特許-三次元造形装置、および、三次元造形物の製造方法 図5
  • 特許-三次元造形装置、および、三次元造形物の製造方法 図6
  • 特許-三次元造形装置、および、三次元造形物の製造方法 図7
  • 特許-三次元造形装置、および、三次元造形物の製造方法 図8
  • 特許-三次元造形装置、および、三次元造形物の製造方法 図9
  • 特許-三次元造形装置、および、三次元造形物の製造方法 図10
  • 特許-三次元造形装置、および、三次元造形物の製造方法 図11
  • 特許-三次元造形装置、および、三次元造形物の製造方法 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】三次元造形装置、および、三次元造形物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/393 20170101AFI20240625BHJP
   B29C 64/106 20170101ALI20240625BHJP
   B29C 64/321 20170101ALI20240625BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240625BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20240625BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20240625BHJP
【FI】
B29C64/393
B29C64/106
B29C64/321
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y50/02
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020127823
(22)【出願日】2020-07-29
(65)【公開番号】P2022025173
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今福 茂
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/065657(WO,A2)
【文献】特開2019-142149(JP,A)
【文献】特表2019-525856(JP,A)
【文献】特開平05-345359(JP,A)
【文献】国際公開第2017/163429(WO,A1)
【文献】特開2018-086829(JP,A)
【文献】特開2017-043805(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
層を積層して三次元造形物を造形する三次元造形装置であって、
造形材料をテーブルに向けて吐出する吐出部と、
前記吐出部の吐出位置から一定距離離れた測定位置において前記造形材料を測定する測定部と、
前記テーブルに対して前記吐出位置および前記測定位置を相対移動させる位置変更部と、
制御部と、を備え、
前記測定位置が移動する移動範囲は、前記造形材料が前記テーブル上に堆積される造形領域よりも広く、
前記制御部は、
少なくとも前記移動範囲と前記造形領域とが重なる領域において前記測定部に測定値の測定を行わせ、
前記吐出部によって前記造形材料が吐出されてから、吐出された前記造形材料を前記測定部により測定するまでの時間差に応じて、前記測定値を補正し、
前記吐出部および前記位置変更部を制御し、補正した前記測定値に応じて前記三次元造形物を造形する、
三次元造形装置。
【請求項2】
請求項1に記載の三次元造形装置であって、
前記制御部は、前記吐出位置の進行方向の後方に前記測定位置を移動させる、三次元造形装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の三次元造形装置であって、
前記制御部は、前記移動範囲のうちの前記造形領域と重ならない範囲において、前記測定部による前記測定値の測定を停止させる、三次元造形装置。
【請求項4】
請求項1からまでのいずれか一項に記載の三次元造形装置であって、
前記制御部は、前記吐出位置と前記測定位置との距離に応じて、前記位置変更部による前記測定位置の移動を制御する、三次元造形装置。
【請求項5】
請求項1からまでのいずれか一項に記載の三次元造形装置であって、
前記測定部は、前記吐出部によって吐出された前記造形材料の、温度、線幅、および、吐出量のうちの少なくとも一つを測定する、三次元造形装置。
【請求項6】
請求項1からまでのいずれか一項に記載の三次元造形装置であって、
前記制御部は、前記測定値に応じて、前記造形材料の温度、前記造形材料の吐出量、および、前記吐出位置の移動速度の少なくとも一つを制御して、前記三次元造形物を造形する、三次元造形装置。
【請求項7】
請求項1からまでのいずれか一項に記載の三次元造形装置であって、
前記位置変更部は、前記吐出部の移動経路に沿って、前記テーブルに対して前記吐出位置および前記測定位置を一体的に相対移動させ、
前記制御部は、前記造形領域に、前記測定位置が通過しない非通過領域が含まれる場合、前記吐出部の前記移動経路に、前記造形材料が吐出されない前記吐出部の前記移動経路が追加された前記移動経路に沿って、前記非通過領域を前記測定位置が通過するように前記位置変更部を制御する、
三次元造形装置。
【請求項8】
造形材料をテーブルに向けて吐出する吐出部と、
前記吐出部の吐出位置から一定距離離れた測定位置において前記造形材料を測定する測定部と、
前記テーブルに対して前記吐出位置および前記測定位置を相対移動させる位置変更部と、
を備える三次元造形装置による三次元造形物の製造方法であって、
前記測定位置が移動する移動範囲は、前記造形材料が前記テーブル上に堆積される造形領域よりも広く、
少なくとも前記移動範囲と前記造形領域とが重なる領域において前記測定部に測定値の測定を行わせ、
前記吐出部によって前記造形材料が吐出されてから、吐出された前記造形材料を前記測定部により測定するまでの時間差に応じて、前記測定値を補正し、
前記吐出部および前記位置変更部を制御し、補正した前記測定値に応じて前記三次元造形物を造形する、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、三次元造形装置、三次元造形物の製造方法および情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載された三次元造形装置は、吐出部から吐出された造形材料の液体成分を蒸発させるために、熱を放射するランプをランプ支持部に備えている。ランプ支持部には、ランプと共に非接触式の温度計が備えられており、ランプの加熱領域の温度が測定される。この三次元造形装置は、温度計によって測定された温度が所定の温度となるように、ランプに供給する電力を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-43805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、温度計とランプとが同じランプ支持部に備えられているものの、温度計が設けられている位置と、吐出部が設けられている位置とは離れている。そのため、吐出部から造形材料が吐出される領域と、温度計で温度が測定される領域とに相違が生じ、造形精度に影響を与える可能性がある。このような問題は、特許文献1のように、材料を吐出後に加熱する三次元造形装置に限らず、予め溶融した材料を吐出部から吐出する三次元造形装置にも共通した課題である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1の形態によれば、層を積層して三次元造形物を造形する三次元造形装置が提供される。この三次元造形装置は、造形材料をテーブルに向けて吐出する吐出部と、前記吐出部の吐出位置から一定距離離れた測定位置において前記造形材料を測定する測定部と、前記テーブルに対して前記吐出位置および前記測定位置を相対移動させる位置変更部と、制御部と、を備え、前記測定位置が移動する移動範囲は、前記造形材料が前記テーブル上に堆積される造形領域よりも広く、前記制御部は、少なくとも前記移動範囲と前記造形領域とが重なる領域において前記測定部に測定値の測定を行わせ、前記吐出部によって前記造形材料が吐出されてから、吐出された前記造形材料を前記測定部により測定するまでの時間差に応じて、前記測定値を補正し、前記吐出部および前記位置変更部を制御し、補正した前記測定値に応じて前記三次元造形物を造形する。
【0006】
本開示の第2の形態によれば、造形材料をテーブルに向けて吐出する吐出部と、前記吐出部の吐出位置から一定距離離れた測定位置において前記造形材料を測定する測定部と、前記テーブルに対して前記吐出位置および前記測定位置を相対移動させる位置変更部と、を備える三次元造形装置による三次元造形物の製造方法が提供される。この製造方法は、前記測定位置が移動する移動範囲は、前記造形材料が前記テーブル上に堆積される造形領域よりも広く、少なくとも前記移動範囲と前記造形領域とが重なる領域において前記測定部に測定値の測定を行わせ、前記吐出部によって前記造形材料が吐出されてから、吐出された前記造形材料を前記測定部により測定するまでの時間差に応じて、前記測定値を補正し、前記吐出部および前記位置変更部を制御し、補正した前記測定値に応じて前記三次元造形物を造形する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】三次元造形装置の概略構成を示す説明図である。
図2】スクリューの溝形成面側の構成を示す斜視図である。
図3】バレルの対向面側の構成を示す図である。
図4】三次元造形物が造形されていく様子を模式的に示す図である。
図5】三次元造形処理のフローチャートである。
図6】造形領域および測定部移動範囲を示す図である。
図7】測定部が通過しない非通過領域を示す図である。
図8】非通過領域に測定部を通過させるための追加経路を示す図である。
図9】測定処理の詳細なフローチャートである。
図10】測定部がオフにされる領域を示す図である。
図11】測定値の補正方法を示す説明図である。
図12】第2実施形態におけるノズルおよび測定部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.第1実施形態:
図1は、第1実施形態における三次元造形装置100の概略構成を示す説明図である。図1には、互いに直交するX,Y,Z方向を示す矢印が示されている。X方向およびY方向は、水平面に平行な方向であり、Z方向は、重力方向とは反対の方向である。X,Y,Z方向を示す矢印は、他の図においても、図示の方向が図1と対応するように適宜、図示してある。以下の説明において、向きを特定する場合には、正の方向を「+」、負の方向を「-」として、方向表記に正負の符合を併用する。
【0010】
三次元造形装置100は、層を積層して三次元造形物を造形する装置である。三次元造形装置100は、三次元造形物の基台となる造形用のテーブル210と、造形材料をテーブル210に向けて吐出する吐出部60と、吐出部60から一定距離離れた位置に設けられた測定部80と、テーブル210に対して吐出部60および測定部80を相対移動させる位置変更部230と、三次元造形装置100を制御する制御部101と、を備える。また、三次元造形装置100は、造形材料に転化される前の材料の供給源である材料供給部20と、材料の少なくとも一部を可塑化して造形材料へと転化させ、吐出部60に供給する可塑化部30と、を備える。
【0011】
材料供給部20は、可塑化部30に、造形材料を生成するための原材料MRを供給する。材料供給部20は、例えば、原材料MRを収容するホッパーによって構成される。材料供給部20は、下方に排出口を有している。当該排出口は、連通路22を介して、可塑化部30に接続されている。原材料MRは、ペレットや粉末等の形態で材料供給部20に投入される。本実施形態では、ペレット状のABS樹脂の材料が用いられる。
【0012】
可塑化部30は、材料供給部20から供給された原材料MRを可塑化させて流動性を発現させたペースト状の造形材料を生成し、吐出部60へと導く。本実施形態において、「可塑化」とは、熱可塑性を有する材料に熱が加わり溶融することを意味する。また、「溶融」とは、熱可塑性を有する材料が融点以上の温度に加熱されて液状になることのみならず、熱可塑性を有する材料がガラス転移点以上の温度に加熱されることにより軟化し、流動性が発現することをも意味する。
【0013】
可塑化部30は、スクリュー40と、バレル50と、ケース31と、駆動モーター32と、を有する。
【0014】
スクリュー40は、その回転軸RXに沿った方向の高さが直径よりも小さい略円柱形状を有している。スクリュー40は、ケース31とバレル50とによって囲まれた空間に収容されている。スクリュー40は、バレル50に対向する端面に、回転軸RXに略垂直な溝形成面48を有している。溝形成面48は、回転軸RXに略垂直なバレル50の対向面52と対向する。スクリュー40の、溝形成面48とは反対側の面には、駆動モーター32が接続されている。スクリュー40は、駆動モーター32が発生させるトルクによって、回転軸RXを中心に回転する。駆動モーター32は、制御部101の制御下で駆動される。
【0015】
図2は、スクリュー40の溝形成面48側の構成を示す斜視図である。図2には、スクリュー40の回転軸RXの位置が一点鎖線で示されている。溝形成面48には、溝42が設けられている。スクリュー40のことを、「フラットスクリュー」、「ローター」あるいは「スクロール」と呼ぶことも可能である。
【0016】
スクリュー40の溝42は、いわゆるスクロール溝を構成する。溝42は、中央部46から、スクリュー40の外周に向かって弧を描くように渦状に延びている。溝42は、インボリュート曲線状や、螺旋状に延びるように構成されてもよい。溝形成面48には、溝42の側壁部を構成し、各溝42に沿って延びている凸条部43が設けられている。溝42は、スクリュー40の側面に設けられた材料導入口44まで連続している。この材料導入口44は、連通路22から溝42に材料を受け入れる部分である。材料供給部20から供給された材料は、連通路22および材料導入口44を介して、スクリュー40とバレル50との間に供給される。
【0017】
溝形成面48の中央部46は、溝42の一端が接続されている窪みとして構成されている。中央部46は、図3に示すバレル50の対向面52に設けられた連通孔56に対向する。中央部46は、回転軸RXと交差する。
【0018】
図2には、3つの溝42と、3つの凸条部43と、3つの材料導入口44を有するスクリュー40の例が示されている。スクリュー40に設けられる溝42、凸条部43および材料導入口44の数は、3つに限定されない。スクリュー40には、1つの溝42のみが設けられていてもよいし、2以上の複数の溝42が設けられていてもよい。また、溝42の数に合わせて任意の数の凸条部43および材料導入口44が設けられてもよい。
【0019】
図3は、バレル50の対向面52側の構成を示す図である。上述したように、バレル50は、スクリュー40の溝形成面48に対向する対向面52を有している。対向面52の中央には、吐出部60に連通する連通孔56が設けられている。対向面52における連通孔56の周りには、複数の案内溝54が設けられている。それぞれの案内溝54は、一端が連通孔56に接続され、連通孔56から対向面52の外周に向かって渦状に延びている。それぞれの案内溝54は、造形材料を連通孔56に導く機能を有している。なお、案内溝54は形成されていなくてもよい。
【0020】
図1に示すように、バレル50には、スクリュー40の溝42内に供給された原材料MRを加熱するためのヒーター58が埋め込まれている。ヒーター58によって加熱される温度は、制御部101によって制御される。
【0021】
吐出部60は、-Z方向に開口し、可塑化部30によって生成された造形材料をテーブル210に向かって吐出するノズル62を備える。X,Y方向におけるノズル62の位置が、吐出部60によって造形材料が吐出される吐出位置である。スクリュー40とノズル62との間には、造形材料が流れる流路65が備えられている。ノズル62は、流路65を通じて、バレル50の連通孔56に連通している。吐出部60には、流路65の開度を調整可能な吐出量調整部70が設けられている。
【0022】
本実施形態において、吐出量調整部70は、バタフライバルブによって構成されている。吐出量調整部70は、一方向に延びる軸状部材である駆動軸72と、駆動軸72の回転により回動する弁体73と、駆動軸72の回転駆動力を発生するバルブ駆動部74と、を備える。
【0023】
駆動軸72は、造形材料の流れ方向に交差するように流路65の途中に取り付けられている。より具体的には、駆動軸72は、流路65内の造形材料の流通方向に対して垂直な向きであるY方向に平行になるように取り付けられている。駆動軸72は、Y方向に沿った中心軸を中心に回転可能である。
【0024】
弁体73は、流路65内において回転する板状部材である。弁体73は、例えば、駆動軸72の流路65内に配置されている部位を板状に加工することによって形成される。弁体73を、その板面に垂直な方向に見たときの形状は、弁体73が配置されている部位における流路65の開口形状とほぼ一致する。
【0025】
バルブ駆動部74は、制御部101の制御下において、駆動軸72を回転させる。バルブ駆動部74は、例えば、ステッピングモーターによって構成される。駆動軸72の回転によって弁体73が流路65内において回転する。
【0026】
弁体73の板面を、流路65における造形材料の流通方向に対して垂直にされた状態が、流路65が閉じられた状態である。この状態では、流路65からノズル62への造形材料の流入が遮断され、ノズル62からの造形材料の流出が停止される。弁体73の板面が、駆動軸72の回転によって、この垂直にされた状態から回転されると、流路65からノズル62への造形材料の流入が許容され、弁体73の回転角度に応じた吐出量の造形材料がノズル62から流出する。図1に示されているように、流路65における造形材料の流通方向に沿った状態が、流路65が全開となる状態である。この状態は、ノズル62からの単位時間あたりの造形材料の吐出量が最大となる。このように、吐出量調整部70は、造形材料の流出のON/OFFとともに、造形材料の吐出量の調整を実現できる。
【0027】
テーブル210は、吐出部60に対向する位置に配置されている。第1実施形態では、吐出部60に対向するテーブル210の造形面211は、X,Y方向、すなわち水平方向に平行となるように配置される。三次元造形装置100は、後述する三次元造形処理において、吐出部60からテーブル210の造形面211に向けて造形材料を吐出させて層を積層することによって三次元造形物を造形する。
【0028】
位置変更部230は、テーブル210と吐出部60との相対位置を変化させる。第1実施形態では、吐出部60の位置が固定されており、位置変更部230は、テーブル210を移動させる。位置変更部230は、3つのモーターMの駆動力によって、テーブル210をX,Y,Z方向の3軸方向に移動させる3軸ポジショナーによって構成される。位置変更部230は、制御部101の制御下において、吐出部60とテーブル210との相対的な位置関係を変更する。本明細書において、特に断らない限り、吐出部60の移動とは、吐出部60のノズル62を、テーブル210に対して相対移動させることを意味する。
【0029】
なお、他の実施形態では、位置変更部230によってテーブル210を移動させる構成の代わりに、テーブル210の位置が固定された状態で、位置変更部230がノズル62を移動させてもよい。また、位置変更部230によってテーブル210をZ方向に移動させ、ノズル62をX,Y方向に移動させてもよい。その他、位置変更部230によってテーブル210をX,Y方向に移動させ、ノズル62をZ方向に移動させてもよい。
【0030】
測定部80は、ノズル62の近傍に設けられている。本実施形態の測定部80は、非接触式の温度センサーである。測定部80は、テーブル210上に吐出された造形材料の温度を測定する。測定部80によって測定された測定値は、制御部101によって取得される。本実施形態において、測定部80は、ノズル62に対して-X方向側にオフセットして配置されており、測定部80とノズル62とは、X方向において、距離D1、離れている。つまり、X,Y方向において、測定部80によって測定が行われる測定位置は、吐出部60の吐出位置から一定距離離れている。位置変更部230によってノズル62がテーブル210に対して相対移動されると、それに伴い、測定部80も、X方向においてノズル62から距離D1離れた状態を保ちつつ、テーブル210に対して相対移動される。そのため、測定部80は、ノズル62が+X方向に移動する場合、ノズル62から吐出されてテーブル210に着弾した直後の造形材料の温度を測定することが可能である。なお、以下において、測定部80を移動させることは、テーブル210に対して測定位置を相対移動させることを意味し、吐出部60あるいはノズル62を移動させることは、テーブル210に対して吐出位置を相対移動させることを意味する。また、測定部80の位置は、測定位置のことであり、吐出部60あるいはノズル62の位置は、吐出位置のことである。
【0031】
制御部101は、三次元造形装置100全体の動作を制御する制御装置である。制御部101は、1つ、または、複数のプロセッサーと、主記憶装置と、外部との信号の入出力を行う入出力インターフェイスとを備えるコンピューターによって構成される。制御部101は、主記憶装置上に読み込んだプログラムや命令をプロセッサーが実行することによって、データ生成部102としての機能のほか、種々の機能を発揮する。制御部101は、コンピューターによって構成される代わりに、各機能の少なくとも一部を実現するための複数の回路を組み合わせた構成により実現されてもよい。制御部101のことを情報処理装置ともいう。
【0032】
データ生成部102は、位置変更部230によって吐出部60および測定部80を移動させつつ吐出部60から造形材料を吐出させるための造形データを生成する。制御部101は、データ生成部102によって生成された造形データに従って、吐出部60および位置変更部230を制御してテーブル210上に三次元造形物を造形する。
【0033】
データ生成部102は、三次元造形物の形状を表す3次元CADデータなどの形状データを用いて、造形データの生成を行う。造形データには、吐出部60の移動経路を表す連続した複数の経路データが含まれている。各経路データには、その経路の始点と終点とを示す座標データが含まれ、更に、その経路を移動する移動速度を表す速度データと、その経路において吐出される造形材料の量を表す吐出量データとが対応づけられている。造形材料の吐出量を一定として、吐出部60の移動速度を遅くすれば、テーブル210上に吐出される造形材料の線幅は太くなり、移動速度を早くすれば、線幅は細くなる。また、吐出部60の移動速度を一定として、造形材料の吐出量を多くすれば、線幅は太くなり、吐出量を少なくすれば、線幅は細くなる。造形材料の吐出量は、単位面積当たりの吐出量として表されてもよいし、経路あたりの絶対量として表されてもよい。
【0034】
図4は、三次元造形装置100において三次元造形物が造形されていく様子を模式的に示す図である。三次元造形装置100では、上述したように、可塑化部30において、回転しているスクリュー40の溝42に供給された固体状態の原材料MRが溶融されて造形材料MMが生成される。制御部101は、テーブル210の造形面211とノズル62との距離を保持したまま、テーブル210の造形面211に沿った方向に、テーブル210に対するノズル62の位置を変えながら、ノズル62から造形材料MMを吐出させる。ノズル62から吐出された造形材料MMは、ノズル62の移動方向に連続して堆積されていく。こうしたノズル62による走査によって、ノズル62の走査経路に沿って線状に延びる線状部位LPが造形される。
【0035】
制御部101は、上記のノズル62による走査を繰り返して層MLを形成する。制御部101は、1つの層MLを形成した後、テーブル210に対するノズル62の位置を、Z方向に移動させる。そして、これまでに形成された層MLの上に、さらに層MLを積み重ねることによって三次元造形物を造形していく。
【0036】
制御部101は、例えば、一層分の層MLの堆積を完了した場合にノズル62をZ方向に移動させる場合や、不連続のパスを造形する場合等において、ノズル62からの造形材料の吐出を一時的に中断させることがある。この場合、制御部101は、吐出量調整部70の弁体73によって流路65を閉塞させて、ノズル62からの造形材料MMの吐出を停止させる。制御部101は、ノズル62の位置を変更した後、吐出量調整部70の弁体73によって流路65を開くことによって、変更後のノズル62の位置から造形材料MMの堆積を再開させる。
【0037】
図5は、制御部101によって実行される三次元造形処理のフローチャートである。このフローチャートは、三次元造形装置100による三次元造形物の製造方法を表す。
【0038】
ステップS10において、データ生成部102は、造形データを生成する。例えば、データ生成部102は、外部から入力された三次元造形物の形状を表す3次元CADデータを解析し、三次元造形物を、XY平面に沿って複数の層にスライスする。そして、各層について、その層の外郭を表す経路と、外郭の内部を埋める経路とを含む造形データを生成する。各層の造形データのことをスライスデータともいう。
【0039】
ステップS20において、制御部101は、ステップS10において生成した造形データを層毎に解析し、その造形データによって造形材料がテーブル上に堆積される造形領域の全てを測定部80が通過するか否かを判断する。より具体的には、制御部101は、造形材料が堆積される造形領域から、測定部80が移動する移動範囲を求め、造形領域と測定部80の移動範囲とを対比し、測定部80の移動範囲が造形領域に全て含まれる場合に、造形領域の全てを測定部が通過すると判断する。なお、以下では、測定部80が移動する移動範囲のことを、「測定部移動範囲」という。
【0040】
図6は、造形領域MAおよび測定部移動範囲TRを示す図である。この図は、吐出部60からテーブル210を見た場合における造形領域MAと測定部移動範囲TRとを示している。本実施形態では、測定部80は、ノズル62に対して-X方向に距離D1離れている。そのため、測定部移動範囲TRは、造形領域MAを-X方向に距離D1シフトさせた範囲となり、造形領域MAの全てを測定部80が通過しないことになる。なお、図6以降の図では、造形領域MAと測定部移動範囲TRとの範囲をそれぞれわかりやすくするため、測定部移動範囲TRの大きさを若干小さく表示している。
【0041】
図5のステップS20において、造形領域MAの全てを測定部80が通過しないと判断した場合、制御部101は、ステップS30において、造形領域MAのうち、測定部80が通過しない非通過領域を抽出する。なお、ステップS20において、造形領域MAの全てを測定部80が通過すると判断された場合には、制御部101は、ステップS30および後述するステップS40の処理をスキップする。
【0042】
図7は、測定部80が通過しない非通過領域UPAを示す図である。図7には、ノズル62と測定部80の位置関係も併せて示している。図7には、ノズル62が移動する経路を破線で示している。図7に示すように、本実施形態では、測定部80は、ノズル62の-X方向側に位置している。そのため、造形領域MAの右端の、距離D1に相当する幅分の領域には、測定部80が通過しない。そのため、測定部80は、造形領域MAの右端の距離D1に相当する幅の領域を、非通過領域UPAとして抽出する。なお、本実施形態において、制御部101は、造形領域MAの右端の距離D1に相当する幅の領域以外にも、造形領域MAのうち、造形時に吐出部60が+X方向に移動しない領域、つまり、造形時に測定部80が吐出部60の後方に位置しない領域を、非通過領域UPAとして抽出する。
【0043】
図5のステップS40において、制御部101は、ステップS30で抽出した非通過領域UPAに測定部80を通過させるためのノズル62の経路を造形データに追加することにより、測定部移動範囲TRを造形領域MAよりも拡大する。
【0044】
図8は、非通過領域UPAに測定部80を通過させるための追加経路APを示す図である。図8に示す造形領域MAおよび測定部移動範囲TRは矩形状の領域である。そのため非通過領域UPAは、造形領域MAの+X方向側の端部にY方向に沿って長尺の領域となる。従って、制御部101は、このY方向に沿って長尺な領域を測定部80が通過するように、既存の経路の終点からノズル62と測定部80との距離D1に応じて+X方向に延びる経路AP1と、経路AP1の終点から+Y方向に延びる経路AP2とを含む追加経路APを、造形データに追加する。このように、経路データに追加経路APを追加することにより、測定部移動範囲TRは、当初の範囲よりも広くなり、造形領域MAを包含することになる。広くなった測定部移動範囲を、図8では、測定部移動範囲TR2として示している。以下の説明において特に断りない場合、測定部移動範囲TRとは、図8の測定部移動範囲TR2のことを指す。制御部101は、追加経路APにおける造形材料の吐出量をゼロに設定する。こうすることにより、追加経路APにおいては、造形材料は吐出されず、非通過領域UPAの測定のみを行うことができる。なお、上記のように追加経路APは、その層における経路の終端と連続するように追加されることが好ましい。
【0045】
図5のステップS50において、制御部101は、ステップS10において生成した造形データまたはステップS40において追加経路APを追加した造形データから、1層目に造形する1層分のデータを読み込む。
【0046】
ステップS60において、制御部101は、ステップS50において読み込んだデータに従って、位置変更部230および吐出量調整部70を制御して、テーブル210上に造形材料を堆積させて造形を行う。
【0047】
ステップS70において、制御部101は、テーブル210上に堆積された造形材料の温度を測定する測定処理を実行する。制御部101は、ステップS60において造形材料が吐出されてから、その造形材料の温度が測定されるまでの時間差をカウントして記憶しておく。
【0048】
図9は、測定処理の詳細なフローチャートである。ステップS72において、制御部101は、現在の測定部80の位置を算出する。本実施形態では、現在の測定部80の位置は、現在のノズル62の位置から-X方向に距離D1だけ離れた位置である。
【0049】
ステップS74において、制御部101は、算出された測定部80の位置が、現在の層において造形材料が堆積される造形領域MA内であるか否かを判定する。測定部80の位置が造形領域MA内であると判定された場合、制御部101は、ステップS76において、現在の測定部80の位置において、測定部80を作動させ、造形材料の温度を測定する。一方、測定部80の位置が造形領域MA内ではないと判定された場合、制御部101は、ステップS78において、測定部80をオフにし、造形材料の測定を行わせない。
【0050】
図10は、上述した測定処理において、測定部80がオフにされる領域を示す図である。本実施形態では、測定部80は、ノズル62の-X方向に配置されている。そのため、造形領域MAの左側に隣接する幅D1の範囲は、測定部移動範囲TRに該当するものの、造形材料は堆積されない領域となる。従って、上記測定処理によって、測定部80がこの範囲に位置する場合には、測定部80はオフにされ、温度の測定は行われない。図10には、測定部80がオフにされる造形領域MAの範囲を、測定部オフ領域OAとして示している。
【0051】
図5のステップS80において、制御部101は、測定部80によって測定された温度の補正を行う測定値補正処理を実行する。この測定値補正処理において、制御部101は、ノズル62によって造形材料が吐出されてから、吐出された造形材料を測定部80によって測定するまでの時間差に応じて、測定値の補正を行う。
【0052】
図11は、測定値の補正方法を示す説明図である。図11には、造形材料がノズル62から吐出されてからの経過時間に応じた造形材料の温度の測定値の変化を示すグラフが示されている。例えば、図8の第1位置P1において造形材料がノズル62から吐出された場合には、その直後に測定部80が第1位置P1に到達して造形材料の温度を測定するため、図11に示すように、第1位置P1における測定値は、ノズル62から吐出された直後の造形材料の温度とほぼ同じである。これに対して、図8に示す第2位置P2において造形材料がノズル62から吐出された場合では、第2位置P2は、非通過領域UPAに含まれていることから、測定部80が第2位置P2を通過するのは、追加経路AP上をノズル62が通過するタイミングである。従って、図11に示すように、第2位置P2における測定値は、造形材料の温度が大幅に低下したタイミングになる。そこで、制御部101は、ノズル62によって造形材料が吐出されてから、吐出された造形材料を測定部80によって測定するまでの時間差に応じて、測定値の補正を行う。具体的には、時間差が大きいほど実際の測定値に対して大きな係数を乗じることにより補正量を大きくし、時間差が小さいほど実際の測定値に対して小さな係数を乗ずることにより補正量を小さくする。こうすることによって吐出と測定との時間差にかかわらず、造形材料の温度を適正に求めることが可能である。なお、時間差に応じて測定値に対して乗ずる係数は、予め実験やシミュレーションを行うことにより、関数やマップによって規定する。係数は、材料の種類や造形温度などに応じて定められていてもよい。
【0053】
なお、上述したステップS70およびステップS80の処理は、ステップS60において造形処理が行われている間に同時並列的に行われる処理である。
【0054】
図5のステップS90において、制御部101は、1層分の造形が完了したか否かを判断する。1層分の造形が完了していなければ、処理をステップS60に戻して、引き続き、その層の造形を行う。1層分の造形が完了していれば、ステップS100において、制御部101は、すべての層の造形が完了したか否かを判定する。すべての層の造形が完了したと判定した場合、制御部101は、当該三次元造形処理を終了させる。
【0055】
ステップS100において、すべての層の造形が完了していないと判定した場合、制御部101は、ステップS110において、測定部80によって測定された測定結果に基づき、次の層の造形時におけるヒーター58の温度を設定する。例えば、制御部101は、測定部80によって測定された1層分の造形材料の温度の平均値を求め、その温度が所定の温度よりも低ければ、ヒーター58の温度を高め、所定の温度よりも高ければ、ヒーター58の温度を低下させる。こうすることにより、測定部80による測定値に応じて、造形材料の温度を制御することができる。
【0056】
ステップS110によってヒーター58の温度を調整した後、制御部101は、処理をステップS50に戻し、次の層の造形データを読み込んで、ステップS60からステップS90までの処理を繰り返すことにより、その層の造形を行う。
【0057】
以上で説明した本実施形態によれば、制御部101は、測定部80が通過しない非通過領域UPAを造形領域MAから抽出し、その非通過領域UPAを測定部80が通過するように追加経路APを追加することによって、測定部80が移動する測定部移動範囲TRを、造形材料がテーブル210上に堆積される造形領域MAよりも広くする。そして、少なくともその測定部移動範囲TRと造形領域MAとが重なる領域において、測定部80に測定値を測定させるので、造形領域MAに、測定が行われない領域が生じることを抑制できる。従って、吐出部60から造形材料が吐出される領域と、測定部80によって測定値が測定される領域とに相違が生じることによって造形精度に影響を与える可能性を低減できる。
【0058】
また、本実施形態によれば、制御部101は、測定部移動範囲TRのうちの造形領域MAと重ならない範囲において、測定部80による測定値の測定を停止させる。そのため、測定部80による測定範囲が小さくなり、測定に関する処理負担を軽減することができる。
【0059】
また、本実施形態によれば、制御部101は、吐出部60によって造形材料が吐出されてから、吐出された造形材料を測定部80により測定するまでの時間差に応じて、測定値を補正し、その補正された測定値を用いて三次元造形物を造形する。そのため、適正な測定値を用いて三次元造形物を造形することができる。特に本実施形態では、吐出部60の移動と並行して測定部80により造形材料の温度を測定するため、1層毎に造形材料の温度を測定するよりも、造形時間を短縮することができ、また、造形と測定との時間的隔たりを小さくできるので、温度の補正量を最低限とすることができる。
【0060】
また、本実施形態によれば、制御部101は、図8に示したように、吐出部60と測定部80との距離D1に応じて経路AP1を追加することにより、位置変更部230による測定部80の移動を制御する。そのため、吐出部60と測定部80との距離D1に応じて測定部80を適正に移動させることができる。
【0061】
また、本実施形態によれば、制御部101は、測定部80によって測定された測定値に応じてヒーター58の温度を設定することにより、造形材料の温度を制御して三次元造形物を造形する。そのため、層間における造形材料の接着性を適切に制御することができる。従って、三次元造形物の造形精度を高めることができる。
【0062】
B.第2実施形態:
上述した第1実施形態では、測定部80は、ノズル62の-X方向側に設けられている。これに対して、第2実施形態では、測定部80は、ノズル62を中心に回転可能に設けられている。
【0063】
図12は、第2実施形態におけるノズル62および測定部80をテーブル210側から+Z方向に見た図である。本実施形態において、測定部80は、ノズル62から距離D1離れた位置において、ノズル62の周囲を回転可能なリング状の回転体85に取り付けられている。回転体85は、ギアあるいはベルトによって連結された図示していない駆動モーターによって回転する。回転体85による測定部80の回転動作は、制御部101が回転体85に連結された駆動モーターを制御することによって制御される。なお、回転体85自体が、リング状のモーターとして構成されていてもよい。
【0064】
本実施形態では、制御部101は、測定部80が常にノズル62の進行方向の後方に位置するように、回転体85を回転させる。こうすることにより、ノズル62から吐出された造形材料の温度を、ノズル62の進行方向にかかわらず、吐出直後に測定することが可能になる。この結果、造形材料の温度を精度良く測定することができるので、三次元造形物の造形精度を向上させることができる。
【0065】
C.他の実施形態:
(C-1)上記実施形態では、測定部80は、吐出部60によって吐出された造形材料の温度を測定している。これに対して、測定部80は、吐出部60によって吐出された造形材料の線幅や吐出量を測定してもよい。線幅は、例えば、測定部80をレーザー変位センサーやイメージセンサーによって構成し、ノズルの進行方向に対して垂直な方向における造形材料の幅を検出することによって測定することができる。また、吐出量は、例えば、測定部80を非接触式の変位センサーとイメージセンサーとによって構成し、造形材料の高さと幅を検出してそれらを掛け合わせることで、測定することができる。
【0066】
測定部80によって造形材料の線幅や吐出量を測定する場合、制御部101は、測定された線幅あるいは吐出量が所定の値になるように、位置変更部230によってノズル62の移動速度を調整してもよい。また、吐出量調整部70あるいはスクリュー40を駆動する駆動モーター32によって吐出量を調整してもよい。これらの調整は、フィードバック制御を実行することによってリアルタイムに行ってもよいし、上記実施形態のように、次の層の造形時に行ってもよい。なお、上記実施形態では、測定部80によって温度を測定し、その測定結果を次の層の造形時におけるヒーター58の温度制御に用いたが、測定された温度が所定の温度になるように、ヒーター58の温度をリアルタイムに制御してもよい。
【0067】
(C-2)上記実施形態では、測定部移動範囲TRのうちの造形領域MAと重ならない範囲において、測定部80による測定値の測定を停止させている。これに対して、測定部移動範囲TRのうちの造形領域MAと重ならない範囲においても、測定部80による測定を停止させず、そのまま測定を行ってもよい。この場合、測定部移動範囲TRのうちの造形領域MAと重ならない範囲において測定された測定値は、各種制御において用いないことが好ましい。
【0068】
(C-3)上記実施形態の三次元造形処理において実行される測定値補正処理は省略してもよい。
【0069】
(C-4)上記実施形態では、可塑化部30は、溝42が形成された溝形成面48を有するスクリュー40と、溝形成面48に対抗する対向面52を有するバレル50とを備えている。これに対して、可塑化部30は、例えば、円筒状のバレルと、その中に配置された螺旋状のインラインスクリューを備えていてもよい。また、吐出部60として、例えばFDM(熱溶解積層法)に用いられるヘッドを採用してもよい。
【0070】
(C-5)上記実施形態の測定部80は、ノズル62の直径よりも広い温度の測定可能であってもよい。この場合、例えば、第1実施形態では、ノズル62が-X方向に移動する場合には、現在のパスよりも前のパスにおいて堆積された未測定の隣接パスの造形材料の温度を測定することが可能である。このような測定部80としては、例えば、サーモグラフィーを適用することができる。
【0071】
(C-6)上記第1実施形態では、測定部80は、ノズル62に対して-X方向側にオフセットして配置されているが、測定部80は、ノズル62に対して水平方向において斜め方向にオフセットして配置されていてもよい。
【0072】
(C-7)上記実施形態では、材料供給部20に供給される原材料として、ペレット状のABS樹脂の材料が用いられる。これに対して、三次元造形装置100は、例えば、熱可塑性を有する材料や、金属材料、セラミック材料等の種々の材料を主材料として三次元造形物を造形することができる。ここで、「主材料」とは、三次元造形物の形状を形作っている中心となる材料を意味し、三次元造形物において50重量%以上の含有率を占める材料を意味する。上述した造形材料には、それらの主材料を単体で溶融したものや、主材料とともに含有される一部の成分が溶融してペースト状にされたものが含まれる。
【0073】
熱可塑性を有する材料としては、例えば、下記の熱可塑性樹脂材料を用いることができる。
<熱可塑性樹脂材料の例>
ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリアセタール樹脂(POM)、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリアミド樹脂(PA)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、ポリ乳酸樹脂(PLA)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートなどの汎用エンジニアリングプラスチック、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトンなどのエンジニアリングプラスチック。
【0074】
熱可塑性を有する材料には、顔料や、金属、セラミック、その他に、ワックス、難燃剤、酸化防止剤、熱安定剤などの添加剤等が混入されていてもよい。熱可塑性を有する材料は、可塑化部30において、スクリュー40の回転とヒーター58の加熱によって可塑化されて溶融した状態に転化される。熱可塑性を有する材料の溶融によって生成された造形材料は、ノズル62から吐出された後、温度の低下によって硬化する。
【0075】
三次元造形装置100では、上述した熱可塑性を有する材料の代わりに、例えば、以下の金属材料が主材料として用いられてもよい。この場合には、下記の金属材料を粉末状にした粉末材料に、造形材料の生成の際に溶融する成分が混合されて、原材料として可塑化部30に投入されることが望ましい。
<金属材料の例>
マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、コバルト(Co)やクロム(Cr)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)の単一の金属、もしくはこれらの金属を1つ以上含む合金。
<前記合金の例>
マルエージング鋼、ステンレス、コバルトクロムモリブデン、チタニウム合金、ニッケル合金、アルミニウム合金、コバルト合金、コバルトクロム合金。
【0076】
三次元造形装置100においては、上記の金属材料の代わりに、セラミック材料を主材料として用いることが可能である。セラミック材料としては、例えば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムなどの酸化物セラミックスや、窒化アルミニウムなどの非酸化物セラミックスなどが使用可能である。主材料として、上述したような金属材料やセラミック材料を用いる場合には、テーブル210に配置された造形材料はレーザーの照射や温風などによる焼結によって硬化されてもよい。
【0077】
材料供給部20に原材料として投入される金属材料やセラミック材料の粉末材料は、単一の金属の粉末や合金の粉末、セラミック材料の粉末を、複数種類、混合した混合材料であってもよい。また、金属材料やセラミック材料の粉末材料は、例えば、上で例示したような熱可塑性樹脂、あるいは、それ以外の熱可塑性樹脂によってコーティングされていてもよい。この場合には、可塑化部30において、その熱可塑性樹脂が溶融して流動性が発現されるものとしてもよい。
【0078】
材料供給部20に原材料として投入される金属材料やセラミック材料の粉末材料には、例えば、以下のような溶剤を添加することもできる。溶剤は、下記の中から選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
<溶剤の例>
水;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸iso-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸iso-ブチル等の酢酸エステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、エチル-n-ブチルケトン、ジイソプロピルケトン、アセチルアセトン等のケトン類;エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;テトラアルキルアンモニウムアセテート類;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤;ピリジン、γ-ピコリン、2,6-ルチジン等のピリジン系溶剤;テトラアルキルアンモニウムアセテート(例えば、テトラブチルアンモニウムアセテート等);ブチルカルビトールアセテート等のイオン液体等。
【0079】
その他に、材料供給部20に原材料として投入される金属材料やセラミック材料の粉末材料には、例えば、以下のようなバインダーを添加することもできる。
<バインダーの例>
アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、セルロース系樹脂或いはその他の合成樹脂又はPLA(ポリ乳酸)、PA(ポリアミド)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)或いはその他の熱可塑性樹脂。
【0080】
D.他の形態:
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、以下に記載する各形態中の技術的特徴に対応する実施形態の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0081】
(1)本開示の第1の形態によれば、層を積層して三次元造形物を造形する三次元造形装置が提供される。この三次元造形装置は、造形材料をテーブルに向けて吐出する吐出部と、前記吐出部の吐出位置から一定距離離れた測定位置において前記造形材料を測定する測定部と、前記テーブルに対して前記吐出位置および前記測定位置を相対移動させる位置変更部と、制御部と、を備え、前記測定位置が移動する移動範囲は、前記造形材料が前記テーブル上に堆積される造形領域よりも広く、前記制御部は、少なくとも前記移動範囲と前記造形領域とが重なる領域において前記測定部に測定値の測定を行わせ、前記吐出部および前記位置変更部を制御し、前記測定値に応じて前記三次元造形物を造形する。
このような形態では、測定位置が移動する移動範囲が、造形材料がテーブル上に堆積される造形領域よりも広く、少なくとも移動範囲と造形領域とが重なる領域において測定部が測定値を測定する。そのため、造形領域に、測定が行われない領域が生じることを抑制できる。この結果、吐出部から造形材料が吐出される領域と、測定部によって測定値が測定される領域とに相違が生じることによって造形精度に影響を与える可能性を低減できる。
【0082】
(2)上記形態において、前記制御部は、前記吐出位置の進行方向の後方に前記測定位置を移動させてもよい。このような形態によれば、測定値を精度良く測定できる。
【0083】
(3)上記形態において、前記制御部は、前記移動範囲のうちの前記造形領域と重ならない範囲において、前記測定部による前記測定値の測定を停止させてもよい。このような形態によれば、測定部による測定範囲を小さくすることができる。
【0084】
(4)上記形態において、前記制御部は、前記吐出部によって前記造形材料が吐出されてから、吐出された前記造形材料を前記測定部により測定するまでの時間差に応じて、前記測定値を補正し、補正した前記測定値に応じて前記三次元造形物を造形してもよい。このような形態によれば、適正な測定値を用いて三次元造形物を造形できる。
【0085】
(5)上記形態において、前記制御部は、前記吐出位置と前記測定位置との距離に応じて、前記位置変更部による前記測定位置の移動を制御してもよい。このような態様によれば、吐出部と測定部との距離に応じて測定部を適正に移動させることができる。
【0086】
(6)上記形態において、前記測定部は、前記吐出部によって吐出された前記造形材料の、温度、線幅、および、吐出量のうちの少なくとも一つを測定してもよい。
【0087】
(7)上記形態において、前記制御部は、前記測定値に応じて、前記造形材料の温度、前記造形材料の吐出量、および、前記吐出位置の移動速度の少なくとも一つを制御して、前記三次元造形物を造形してもよい。このような形態によれば、三次元造形物の造形精度を高めることができる。
【0088】
(8)上記形態において、材料の少なくとも一部を可塑化して前記造形材料とする可塑化部を備え、前記可塑化部は、回転軸を中心に回転し、溝が形成された溝形成面を有するスクリュー、および、前記溝形成面に対向する対向面を有し、前記造形材料が流出する連通孔が前記対向面に設けられたバレルを備えてもよい。このような形態によれば、装置を小型化できる。
【0089】
(9)本開示の第2の形態によれば、造形材料をテーブルに向けて吐出する吐出部と、前記吐出部の吐出位置から一定距離離れた測定位置において前記造形材料を測定する測定部と、前記テーブルに対して前記吐出位置および前記測定位置を相対移動させる位置変更部と、を備える三次元造形装置による三次元造形物の製造方法が提供される。この製造方法は、前記測定位置が移動する移動範囲は、前記造形材料が前記テーブル上に堆積される造形領域よりも広く、少なくとも前記移動範囲と前記造形領域とが重なる領域において前記測定部に測定値の測定を行わせ、前記吐出部および前記位置変更部を制御し、前記測定値に応じて前記三次元造形物を造形する。
【0090】
(10)本開示の第3の形態によれば、造形材料をテーブルに向けて吐出する吐出部と、前記吐出部の吐出位置から一定距離離れた測定位置において前記造形材料を測定する測定部と、前記テーブルに対して前記吐出位置および前記測定位置を相対移動させる位置変更部と、を備える三次元造形装置が用いるデータを生成する情報処理装置が提供される。この情報処理装置は、前記測定位置が移動する移動範囲は、前記造形材料が前記テーブル上に堆積される造形領域よりも広く、少なくとも前記移動範囲と前記造形領域とが重なる領域において前記測定部が測定値の測定が可能なように前記吐出位置の移動経路を表す造形データを生成するデータ生成部を備える。
【符号の説明】
【0091】
20…材料供給部、22…連通路、30…可塑化部、31…ケース、32…駆動モーター、40…スクリュー、42…溝、43…凸条部、44…材料導入口、46…中央部、48…溝形成面、50…バレル、52…対向面、54…案内溝、56…連通孔、58…ヒーター、60…吐出部、62…ノズル、65…流路、70…吐出量調整部、72…駆動軸、73…弁体、74…バルブ駆動部、80…測定部、85…回転体、100…三次元造形装置、101…制御部、102…データ生成部、210…テーブル、211…造形面、230…位置変更部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12