(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】音量調整装置および音量調整プログラム
(51)【国際特許分類】
G10L 15/10 20060101AFI20240625BHJP
A63F 13/54 20140101ALI20240625BHJP
A63F 13/424 20140101ALI20240625BHJP
A63F 13/215 20140101ALI20240625BHJP
G10L 15/00 20130101ALI20240625BHJP
【FI】
G10L15/10 200W
A63F13/54
A63F13/424
A63F13/215
G10L15/00 200H
(21)【出願番号】P 2020146489
(22)【出願日】2020-09-01
【審査請求日】2023-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】志田 来夢
(72)【発明者】
【氏名】安田 明生
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 景
(72)【発明者】
【氏名】橋口 聡明
【審査官】大野 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-143479(JP,A)
【文献】特開2001-086246(JP,A)
【文献】特開2014-132464(JP,A)
【文献】特開2007-259888(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10L 15/10
A63F 13/54
A63F 13/424
A63F 13/215
G10L 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のユーザの音声を取得するユーザ音声取得部と、
キーワード
および当該キーワードの優先度の情報を保持するキーワード保持部と、
前記第1のユーザの音声中に前記キーワードが検出された場合に、前記第1のユーザと通話している第2のユーザの音声およびゲーム音の少なくとも一つの音量を調整する音量調整部と
を備え
、
前記音量調整部は、前記第1のユーザの所定時間の音声中に複数の前記キーワードが検出された場合に、前記優先度の高い前記キーワードに基づいて、前記第2のユーザの音声および前記ゲーム音の少なくとも一つの音量を調整する音量調整装置。
【請求項2】
前記キーワード保持部は、前記キーワードによる音量指示情報をさらに保持し、
前記音量調整部は、検出されたキーワードの前記音量指示情報に基づき音量の調整を行う
請求項1に記載の音量調整装置。
【請求項3】
前記キーワード保持部は、前記第1のユーザの指示に基づき前記キーワード
および前記優先度を設定可能に構成される
請求項1または2に記載の音量調整装置。
【請求項4】
ゲーム内の状況を取得するゲーム状況取得部をさらに備え、
前記音量調整部は、前記ゲーム内の状況に基づいて音量の調整を行う
請求項1から3のいずれか記載の音量調整装置。
【請求項5】
第1のユーザの音声を取得するユーザ音声取得ステップと、
前記第1のユーザの音声中に所定のキーワードが検出された場合に、前記第1のユーザと通話している第2のユーザの音声およびゲーム音の少なくとも一つの音量を調整する音量調整ステップと
をコンピュータに実行させ
、
前記音量調整ステップは、前記第1のユーザの所定時間の音声中に複数の前記キーワードが検出された場合に、設定された優先度の高い前記キーワードに基づいて、前記第2のユーザの音声および前記ゲーム音の少なくとも一つの音量を調整する音量調整プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲーム中のチャット音声やゲーム音の音量を調整する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、遠隔にいるユーザと同時に遊べるオンラインゲームが益々増えており、スマートフォン、タブレット、パーソナルコンピュータ、ゲーム専用機等の様々なデバイスで気軽に楽しむことができる。
【0003】
オンラインであるため、遠隔にいるユーザと同じ場所でコミュニケーションを取れないという不便はあるが、それを補うものとして、ゲーム内でテキストによるチャット機能をサポートしているゲームも多い。さらに、テキストではなく、ユーザ同士がゲームをしながら音声でチャットできるいわゆるボイスチャット機能をサポートしているゲームも増えている。また、そのボイスチャット機能のみを提供するサービスやアプリケーションも登場している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ゲームで遊びながらボイスチャットを行う場合、ゲーム音とボイスチャット音声という二種類の音が同時に存在するため、ゲーム音が大きすぎればボイスチャット音声が聞きづらくなり、ボイスチャット音声が大きすぎればゲーム中の重要な音を聞き漏らしてしまう等の問題がある。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、ゲーム中におけるユーザ音声とゲーム音を適切に調整することのできる音量調整装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の音量調整装置は、第1のユーザの音声を取得するユーザ音声取得部と、キーワードを保持するキーワード保持部と、前記第1のユーザの音声中に前記キーワードが検出された場合に、前記第1のユーザと通話している第2のユーザの音声およびゲーム音の少なくとも一つの音量を調整する音量調整部とを備える。
【0008】
本発明の別の態様の音量調整プログラムは、第1のユーザの音声を取得するユーザ音声取得ステップと、前記第1のユーザの音声中に所定のキーワードが検出された場合に、前記第1のユーザと通話している第2のユーザの音声およびゲーム音の少なくとも一つの音量を調整する音量調整ステップとをコンピュータに実行させる。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ゲームを実行しているユーザの音声に含まれるキーワードに応じて、適切に音量調整を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態に係る音量調整装置を含むシステムの全体構成図である。
【
図3】実施の形態に係る音量調整装置の処理フローを示すフローチャートである。
【
図4】他の実施の形態に係る音量調節装置を含むシステムの全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は実施の形態に係る音量調整装置100を含むシステムの全体構成図である。本図では第1ユーザAと第2ユーザBが同一のゲームを同時にプレイしながら、ボイスチャットでの通話を行う例を示す。
【0013】
第1ユーザAは自身の第1端末20Aを使用してゲームおよび第2ユーザBとのボイスチャットを行う。第1端末20Aは、第1コントローラ21A、第1マイク22Aおよび第1スピーカ23Aを備える。第1コントローラ21Aは、ゲームの操作およびその他の入力操作を行う。第1端末20Aの種類に応じて適当な第1コントローラ21Aを用いることができるが、例えば、第1端末20Aがパーソナルコンピュータの場合はキーボードやマウス、スマートフォンやタブレットの場合はタッチスクリーン、ゲーム専用機の場合はそのコントローラ等を用いることができる。
【0014】
第1マイク22Aは、第1ユーザAのボイスチャット音声を取り込むものであり、本図では第1端末20Aに内蔵されたものとして表示されている。しかしながら、第1マイク22Aは第1端末20Aに外付けされるものや、第1端末20Aとは全く独立したものであっても構わない。
【0015】
第1スピーカ23Aは、ゲームの音および第1ユーザAの通話相手である第2ユーザBからのボイスチャット音声を再生するものであり、第1端末20Aに内蔵されたものとして表示されている。しかしながら、上記の第1マイク22Aと同様、第1端末20Aに外付けのものでも、全く独立したものでも構わない。
【0016】
第2ユーザBの第2端末20Bは、第1ユーザAの第1端末20Aと同様に、第2コントローラ21B、第2マイク22B、第2スピーカ23Bを有する。基本的には上記の第1端末20Aに関する説明が当てはまるので、説明を省略する。なお、第2スピーカ23Bは、ゲームの音および第2ユーザBの通話相手である第1ユーザAからのボイスチャット音声を再生するものであるが、本実施の形態においては、第1ユーザA側の第1スピーカ23Aでの再生音に焦点を当てて説明を行うので、第2スピーカ23Bへの入力音については図示を省略している。
【0017】
ゲームサーバ30は、ゲームのプログラムを実行するサーバであって、第1ユーザA、第2ユーザBを含むユーザのコントローラ入力に応じて、ゲームを進行させる。
【0018】
音量調整装置100は、ゲーム音およびユーザ音声(本図においては第2ユーザBのボイスチャット音声)の少なくとも一方の音量を調整する。音量調整装置100は、ユーザ音声取得部110、キーワード登録部120、キーワード保持部130、キーワード検出部140、ゲーム状況取得部150、音量調整部160、音声重畳部170を有する。
【0019】
ユーザ音声取得部110は、ゲームを実行しているユーザの音声を取得する。本実施の形態では、第1マイク22Aから取り込まれた第1ユーザAの音声を取得するものとして図示されている。但し、変形例として後述するように第2マイク22Bから取り込まれた第2ユーザBの音声も加えて取得するように構成してもよい。
【0020】
キーワード登録部120は、第1ユーザAの第1コントローラ21Aからのキーワード登録指示に基づき、キーワード保持部130へのキーワードの登録を行う。ここではキーワードの新規登録だけでなく、既存のキーワードの変更や削除の登録を行うこともできる。
【0021】
キーワード保持部130は、前述の通り、第1ユーザAの指示に基づきキーワード登録部120を介してキーワードを設定可能に構成され、その設定されたキーワードを保持する。保持されるキーワードは、ユーザの登録操作によらず予め設定されているものであってもよい。また、第1ユーザAはそのように予め設定されているパスワードをキーワード登録部120を介して適宜変更や削除をすることができる。
【0022】
キーワード検出部140は、キーワード保持部130で保持されているキーワードについて、ユーザ音声取得部110で取得されたユーザ音声を対象としてキーワードの検出処理を行う。複数のキーワードがキーワード保持部130に保持されている場合は、それぞれのキーワードについて検出処理が実行される。
【0023】
キーワード検出部140におけるキーワードの検出の方法としては、例えば以下のようなものが考えられる。
(1)音声情報に基づくキーワード検出:キーワード検出部140は、キーワード保持部130に保持されているキーワードを読み出す際に、当該キーワードを読み上げる音声情報を生成し、その音声情報を、ユーザ音声取得部110で取得されたユーザの音声と比較し、キーワード検出を行う。
(2)テキスト情報に基づくキーワード検出:キーワード検出部140は、ユーザ音声取得部110で取得されたユーザ音声をテキスト情報に変換し、そのテキスト情報を、キーワード保持部130に保持されたキーワードのテキスト情報と比較し、キーワード検出を行う。
【0024】
ゲーム状況取得部150は、ゲームサーバ30を介してゲームの状況を取得する。ゲームの状況の例としては、「敵と戦闘中」、「フィールドを移動中」、「拠点で休息中」、「集会所で他ユーザと情報交換中」等があるが、個々のゲームに応じて様々な場面、状況が想定されうる。
【0025】
また、ゲーム状況取得部150は、各ユーザのコントローラからの入力自体をゲーム状況として取得することができる。例えば、第1ユーザAが第1コントローラ21Aで、銃を敵に向かって発射する操作を行った場合、その操作自体が「敵と戦闘中」というゲームの状況を示すものとなる。同様に、第1ユーザAとゲーム内で近接範囲内にいる別のユーザ(Cとする)が銃を発射する操作を行った場合、第1ユーザAに対する攻撃が行われたとみなして第1ユーザAが「敵(第3ユーザC)と戦闘中」というゲームの状況を取得することができる。
【0026】
さらに、ゲーム内のユーザに関する各種パラメータに基づいてゲーム状況を取得することもできる。例えば、上記の例で、第1ユーザAと第3ユーザCの位置パラメータが互いに近接範囲内にあることを示しており、その状態で第1ユーザAまたは第3ユーザCの体力パラメータが急激に減少した場合、一方が他方を攻撃したとみなして「敵と戦闘中」というゲームの状況を取得することができる。また、この例において、第1ユーザAと第3ユーザCの敵対度を示すパラメータが存在する場合は、位置パラメータによる近接範囲検出と、敵対度パラメータによる敵対関係検出により、攻撃による体力変化が検出されていなくても、「敵と戦闘中」と判断することも可能である。
【0027】
上記のように様々な例を挙げて説明したが、ゲームサーバ30からはゲームの状況に関する多様な情報が入手可能であり、ゲーム状況取得部150は、ゲームの詳細な状況をリアルタイムに取得可能である。
【0028】
つづいて、音量調整部160は、キーワード検出部140とゲーム状況取得部150からの情報に基づき、ゲーム音の音量制御情報であるゲーム音量制御情報161と、ユーザのボイスチャット音声の音量制御情報であるユーザ音量制御情報162を生成する。詳細な処理についてはフローチャートを参照して後述するが、音量調整部160における主な処理内容は以下の通りである。
【0029】
(1)キーワード検出部140で検出されたキーワードに基づき、音量制御情報161、162を生成する。
(2)ゲーム状況取得部150で取得されたゲームの状況を参照し、(1)で生成された音量制御情報161、162に基づく音量制御を行うことが問題ないかを判定する。
(3)(2)で問題ないと判定された場合は、(1)で生成された音量制御情報161、162に基づいて音量制御を実行する。(2)で問題あると判定された場合は、(1)に基づく音量制御を実施しないか、あるいは音量制御情報161、162に適当な調整を加えた上で音量制御を実行する。
【0030】
音声重畳部170は、ゲーム音量制御情報161に基づき音量が制御されたゲーム音と、ユーザ音量制御情報162に基づき音量が制御されたユーザ音声を重畳する。本図では、第1ユーザAの第1スピーカ23Aで再生される音声に着目して説明しているため、音声重畳部170でゲーム音と重畳されるユーザ音声とは、第1ユーザAのボイスチャットの相手である第2ユーザBの第2マイク22Bから取り込まれた音声を意味する。
【0031】
つづいて、
図2を参照して、キーワード保持部130に保持されるキーワードのリスト構造を説明する。このリスト構造は大別して、キーワードフィールド131、優先度フィールド132、音量指示情報フィールド133、処理分類フィールド134を有する。キーワードフィールド131には、キーワード登録部120によって登録されたキーワードや、予め設定されているキーワードが格納される。
【0032】
なお、キーワードとして何を登録するかは任意である。例えば「ゲーム音が大きい」「ゲーム音が小さい」「チャット音が大きい」「チャット音が小さい」等の音量調整の必要性を述べるものでもよい。また、「敵がいる」「ここは怪しい」「周りに注意しろ」「助けて」等のゲーム中で注意を喚起するようなものでもよい。ゲーム内の特定の地名やキャラクターの名前といった、ゲームの内容に関連するものでもよい。あるいは、全く意味をなさない文字列をキーワードとして設定することも可能である。
【0033】
優先度フィールド132には、各キーワードの優先度の情報が格納される。この優先度は、ユーザ音声取得部110によって取得された所定長(例えば10秒)のユーザ音声中に、複数の登録キーワードが含まれていた場合に、優先度の最も高いキーワードに基づく音量調整を実行するためのものである。言い換えれば、前記所定長のユーザ音声中で検出された複数のキーワードのうち、優先度が二番目以下のキーワードは無視され、それらに基づく音量調整は実行されない。
【0034】
優先度フィールド132に格納する優先度情報の様式は適宜選択可能であるが、例えば、図示されるように、重複のない自然数を入力値として、数値が低いものを優先度が高いキーワードとして設定することができる(この場合、最高優先度は「1」)。また、リストへの登録時にキーワードを優先度に従って降順または昇順に配列するルールとすれば、その配列自体が優先度を表すことになるので、専用の優先度フィールド132を設ける必要はない。
【0035】
音量指示情報フィールド133には、各キーワードについて、ゲーム音の音量に関するゲーム音量指示情報1331、ボイスチャットのユーザ音声の音量に関するユーザ音量指示情報1332が格納される。これは各キーワードがキーワード検出部140で検出されたときに、ゲーム音とユーザ音声をどのように調整するかを指示するものである。これらの音量指示情報の様式は適宜選択可能であるが、大きくは、ゲーム音量/ユーザ音量それぞれを「上げる」(up)、「下げる」(down)、「維持する」(keep)という3種類の指示が可能である。
【0036】
本実施の形態では、ゲーム音量とユーザ音量のいずれかが大きすぎるまたは小さすぎる状態を改善することを目的としているため、ゲーム音量を「上げる」場合はユーザ音量を「下げる」または「維持する」のが好ましい。逆にユーザ音量を「上げる」場合はゲーム音量を「下げる」または「維持する」のが好ましい。しかしながら、この音量指示情報はユーザのキーワード登録や予めのキーワードの設定の際に自由に設定できるものであり、ゲーム音量およびユーザ音量の両方を同時に「上げる」または「下げる」ような音量調整指示を行うことももちろん可能である。
【0037】
ゲーム音量/ユーザ音量を「上げる」または「下げる」ことを指示する情報としては、現状の音量に比べて上げる/下げる割合(パーセント)を具体的に指定してもよい。また、ゲーム音量とユーザ音量の相対的な割合(パーセント)を指定することで、所望の音量バランスを実現することもできる。
【0038】
処理分類フィールド134は、各キーワードが検出された場合に、どのような処理フローで音量調整を実行するのかを指定するフィールドである。具体的にはフローチャートを参照して後述するが、大別して以下の情報を指定することができる。
(1)即時実行:ゲーム状況取得部150で取得されるゲーム状況を参照せずに、そのキーワードの音量指示情報1331、1332に基づく音量調整を即時に実行
(2)ゲーム状況参照(全部):ゲーム状況取得部150で取得されるゲーム状況を参照する処理フローに移行し、そのキーワードの音量指示情報1331、1332に基づく音量調整の実施可否を判断
(3)ゲーム状況参照(一部):ゲーム状況取得部150で取得されるゲーム状況を参照する処理フローの一部のみを実行し、そのキーワードの音量指示情報1331、1332に基づく音量調整の実施可否を判断
【0039】
以上のリスト構造において、上記の各フィールドの情報はキーワード登録部120を介してユーザが任意に設定可能である。ユーザの登録作業負担を減らすために、例えば、処理分類フィールド134の内容は「ゲーム状況参照(全部)」をデフォルト入力値とし、ユーザが変更したい場合のみ適宜変更できるような構成としてもよい。また、優先度フィールド132の情報は、新しく登録されたキーワードに最高の優先度を自動的に割り当てるようにしてもよい。
【0040】
図3は、以上の構成に基づいて音量調整を行う処理フローを示す。本図および以下の説明において、「S」はステップを意味する。S10では、ユーザ音声取得部110によってユーザ(
図1の例では第1ユーザA)のボイスチャットの音声を取得する。S20では、キーワード検出部140によって、S10で取得されたユーザ音声中にキーワード保持部130で保持されているキーワードが含まれているかどうかが検出される。前述の通り、ここでのキーワード検出処理は所定長(例えば10秒)のユーザ音声を単位として実行する。キーワードが検出されなかった場合はS10に戻り、キーワードが検出された場合はS30に進む。
【0041】
S30では、S20で複数のキーワードが検出されたかどうかをキーワード検出部140が判定する。複数のキーワードが検出された場合はS31に進み、
図2における優先度フィールド132を参照して、検出された複数のキーワードのうち最高の優先度が設定されたものが選択される。S20において検出されたキーワードが一つのみの場合は、そのキーワードが選択されてそのままS40に進む。
【0042】
S40では、音量調整部160が、
図2における処理分類フィールド134を参照し、後続の音量調整フローを決定する。選択されたキーワードについての処理分類フィールド134の情報が「即時実行」の場合は、S50に進み、当該キーワードについての音量指示情報フィールド133の内容に基づいて、ゲーム音およびユーザ音声の音量調整を即時に実行する。このとき、選択されたキーワードの音量指示情報フィールド133におけるゲーム音量指示情報1331、ユーザ音量指示情報1332が、そのまま
図1におけるゲーム音量制御情報161、ユーザ音量制御情報162となり、ゲーム音とユーザ音声の音量制御が実行される。
【0043】
この「即時実行」の場合、音量調整においてゲーム状況取得部150で取得されるゲームの状況を参照することなく、迅速に音量調整を完了することができる。したがって、緊急性の高いキーワードや、ゲーム状況に左右されないキーワードに「即時実行」の処理分類を付与すると有利である。
【0044】
一方、S40において、処理分類フィールド134の情報が「ゲーム状況参照(全部)」の場合、S60およびS70を含むゲーム状況に基づく判定ステップに進む。S60では、ゲーム状況取得部150で取得された第1のゲーム状況に基づいて音量調整部160が判定処理を行う。
図3の例においては、第1のゲーム状況として「敵と戦闘中か」否かを判定する(判定基準は前述した)。
【0045】
S60において「敵と戦闘中」と判断された場合、S61に進む。敵との戦闘中はゲーム音に基づいて敵の動きを正確に把握することが重要であるため、S61では音量調整部160がゲーム音の音量を上げ、ユーザ音声の音量を下げる処理を行っている。これにより
図1における第1ユーザAの第1スピーカ23Aからはゲーム音がよりはっきりと聞こえるようになり、同時に音量が抑えられた第2ユーザBのボイスチャット音声に邪魔されることなく敵との戦闘に集中することができる。
【0046】
なお、S61における音量調整の内容は、ゲーム音量の増加量、ユーザ音量の減少量を絶対値やパーセントで指定するものであってもよいし、選択されたキーワードの音量指示情報133への補正をかけるものであってもよい。例えば、選択されたキーワードの音量指示情報133の内容が「ゲーム音量維持」「ユーザ音量5%減」であった場合に、S61における補正内容が「ゲーム音量10%増」「ユーザ音量5%減」であった場合、最終的な音量調整内容は、それぞれの内容を加味して「ゲーム音量10%増(0%+10%)」「ユーザ音量10%減(5%+5%)」等とすることができる。なお、これらの最終的な音量調整内容が、
図1におけるゲーム音量制御情報161、ユーザ音量制御情報162を構成する。
【0047】
S60に戻り、「敵と戦闘中」との第1のゲーム状況に該当しなかった場合は、S70に進む。S70では、ゲーム状況取得部150で取得された第2のゲーム状況に基づいて音量調整部160が判定処理を行う。
図3の例においては、第2のゲーム状況として「ゲーム音が大きいか」を判定する。「ゲーム音が大きいか」否かはゲーム状況取得部150を介してゲームサーバ30から取得されるゲーム音の音量情報を所定の閾値と比較して判定することができる。なお、実際のゲームにおいてゲーム音が大きいと判断される場合の例としては、BGMが大きすぎる、突然の発砲や爆撃が起きる、花火等の大音量の効果音が伴うイベントが発生する等が想定される。
【0048】
このように大きなゲーム音が発生している場合に、選択されたキーワードの音量指示情報133にそのまま従って音量調整を行ってしまうと、ゲーム音量がユーザ音量に比してさらに大きくなってしまう場合もあるので、続くS71において、音量調整部160がゲーム音の音量を下げ、ユーザ音声の音量を上げる処理を行っている。これにより、
図1において第1ユーザAの第1スピーカ23Aからは音量が適切に抑えられたゲーム音が聞こえるとともに、第2ユーザBのボイスチャットの音声がよりはっきりと聞こえるようになる。
【0049】
なお、S61に関して前述したのと同様に、S71における音量調整の内容は、ゲーム音量の減少量、ユーザ音量の増加量を絶対値やパーセントとして指定するものであってもよいし、選択されたキーワードの音量指示情報133への補正をかけるものであってもよい。
【0050】
S70に戻り、「ゲーム音が大きい」との第2のゲーム状況に該当しなかった場合は、前述したS50に進み、選択されたキーワードの音量指示情報133に基づく音量調整が実行される。
【0051】
最後に再度S40に戻り、処理分類フィールド134の情報が「ゲーム状況参照(一部)」だった場合、第1のゲーム状況の判定ステップであるS60をスキップして、第2のゲーム状況の判定ステップであるS70に進む。このように、キーワードの内容によっては、全てのゲーム状況の判定ステップを経る必要がない場合もあり、処理分類フィールド134で必要な判定ステップのみを指定することで、それらを迅速に実行することができる。
【0052】
以上のフローチャートによれば、S40までに選択されたキーワードに基づいてゲーム音とユーザ音声の音量を適切に調整することができる。したがって、ゲーム中にボイスチャットをする場合にゲーム音が大きすぎる/小さすぎる、あるいは、ボイスチャットのユーザ音声が大きすぎる/小さすぎるという問題の発生を抑制することができる。
【0053】
さらに、S40までにキーワードが選択された後に、ゲーム内の状況に基づく判定ステップ(S60、S70)を設けることで、実際のゲームの状況も参照してゲーム音とユーザ音声の音量を適切に調整することができる。
【0054】
また、S40においてキーワードの処理分類フィールド134の内容に基づいて後続の処理フローを変更可能とすることで、キーワードごとに最適な音量調整処理を迅速に行うことができる。
【0055】
図4は、他の実施の形態に係る音量調整装置100を含むシステムの全体構成図である。本図の構成は
図1とほぼ同じであり、同一の構成要素については図示および説明を省略する。
図1との大きな違いは、
図1に示されていた第1ユーザAと第2ユーザBに加え、第3の第3ユーザC(第3端末20Cとして表示)が示されている点である。本例では、第1ユーザAはゲームをプレイしながら、第2ユーザBとボイスチャットを行っており、同時にゲーム内で敵対関係にある第3ユーザCと戦闘中の状況にあるとする。
【0056】
以上の構成において、
図3のフローチャートに基づいて第1ユーザAに対する音量調整の処理フローを説明する。第1ユーザAに対する音量調整は、第1ユーザAのボイスチャット音声中で所定のキーワードが検出されるのを契機として開始される(S20)。そして、S40において、キーワードの処理分類フィールド134が「ゲーム状況参照(全部)」であった場合、S60に進み「敵と戦闘中か」否かが判定される。
【0057】
本例において「敵」とは第3ユーザCのことである。第1ユーザAが第3ユーザCと戦闘中であるか否かは様々な指標を用いて判定可能であることは前述した通りであるが、特に
図4においては第3ユーザCの第3端末20Cの第3コントローラ21Cによる操作情報をゲームサーバ30およびゲーム状況取得部150を介して取得することで、より高精度かつ迅速に戦闘状態か否かを判定することができる。すなわち、ゲーム内で第1ユーザAの近接範囲にいる第3ユーザCが、銃を発射する等の攻撃操作を第3コントローラ21Cで行った場合、第1ユーザAが攻撃操作を行うのを待つまでもなく、第1ユーザAが戦闘状態にあることを即時に判定することができる。
【0058】
また、本例において、音量調整部160による音量調整が行われるユーザ音声は、第2ユーザBの第2マイク22Bから取り込まれる第2ユーザBのボイスチャット音声である。この場合、前述のS60において、第1ユーザAが第3ユーザCと戦闘状態にあると判定された場合、S61において、第2ユーザBのチャット音量を下げることが可能である。したがって、第1ユーザAは、第3ユーザCとの戦闘中においては、第2ユーザBとのボイスチャット音量を抑えて、戦闘に集中することができる。このように、本実施の形態によれば、複数ユーザ(A、B、C)が関係する複雑な場合であっても、適切に音量の調整を行うことができる。
【0059】
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明した。実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0060】
図1および
図4においては、第1ユーザAの音声中のキーワード検出を行う構成としていたが、第1ユーザAのボイスチャットの相手である第2ユーザBの音声中のキーワード検出を加えて行う構成としてもよい。この場合、ユーザ音声取得部110は第1ユーザAと第2ユーザBの音声を取得し、キーワード検出部140は各ユーザの音声に含まれているキーワードを検出する。第1ユーザAと第2ユーザBの間でキーワードを事前に共有できている場合には、いずれかのユーザがキーワードをボイスチャット中で使用すれば音量調整を行うことができるので利便性が向上する。
【0061】
また、
図1および
図4においては、音量調整装置100が第1ユーザAの第1スピーカ23Aの音量調整を行う構成としていたが、同様に第2ユーザBの第2スピーカ23Bの音量調整を行う構成としてもよい。その場合にキーワード保持部130に格納されるキーワードのリストは、第1ユーザAと第2ユーザBで共通のものとしてもよいし、別個のものとしてもよい。
【0062】
音量調整装置100が、第1ユーザAの第1スピーカ23Aで再生される第2ユーザBの音声の音量の調整を行ったときに、それを第2ユーザBに報知してもよい。報知の方法は様々なものが考えられるが、第2スピーカ23Bからの音声で報知してもよいし、第2端末20Bの表示画面上でその情報を表示してもよい。第2ユーザBの音声の音量が下げられた場合、その報知を受け取ることにより、第2ユーザBは第1ユーザAがボイスチャットによって邪魔されたくない状況にいることを認識できる。逆に、第2ユーザBの音声の音量が上げられた場合、第2ユーザBは自身の音声が第1ユーザAに聞こえづらいということを認識できる。
【0063】
音量調整装置100における音量調整を行う際に、時間帯やユーザのいる場所を考慮してもよい。例えば、夜の時間帯では、音量調整部160が生成するゲーム音量制御情報161およびユーザ音量制御情報162において、音量増加の上限値を引き下げることが考えられる。また、第1ユーザAが駅などの騒音が大きい場所にいる場合、第1端末20Aに設けられるGPS等でその位置情報を検出し、それに基づきゲーム音量またはユーザ音量の増加量を増やすこともできる。
【0064】
なお、実施の形態で説明した各装置の機能構成はハードウェア資源またはソフトウェア資源により、あるいはハードウェア資源とソフトウェア資源の協働により実現できる。ハードウェア資源としてプロセッサ、ROM、RAM、その他のLSIを利用できる。ソフトウェア資源としてオペレーティングシステム、アプリケーション等のプログラムを利用できる。
【符号の説明】
【0065】
30…ゲームサーバ、100…音量調整装置、110…ユーザ音声取得部、120…キーワード登録部、130…キーワード保持部、140…キーワード検出部、150…ゲーム状況取得部、160…音量調整部、170…音声重畳部。