(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】双方向絶縁型DC/DCコンバータとその制御方法
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
H02M3/28 H
(21)【出願番号】P 2020149003
(22)【出願日】2020-09-04
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】大井 一伸
【審査官】東 昌秋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/008854(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/056503(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00-3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの独立した直流電圧のうち電圧の高い方である1次側直流電圧と、
2つの独立した直流電圧のうち電圧の低い方である2次側直流電圧と、
前記1次側直流電圧に接続され、前記1次側直流電圧を交流電圧に変換する第1インバータと、
前記2次側直流電圧に接続され、前記2次側直流電圧を交流電圧に変換する第2インバータと、
前記第1,第2インバータの交流出力を結合するトランスと、
前記第1,第2インバータと前記トランスの間に直列に接続されたリアクトル、または前記トランスの漏れインダクタンス、あるいはその両方と、
前記第1,第2インバータのゲート信号を生成する制御部と、
を備えたDAB方式の双方向絶縁型DC/DCコンバータであって、
前記制御部は、前記第1インバータの出力電圧のパルス幅を決定する第1パルス幅指令値と、前記第2インバータの出力電圧のパルス幅を決定する第2パルス幅指令値と、前記第1,第2インバータの出力電圧の位相差を決定する位相差指令値を演算し、
前記制御部は、前記位相差指令値と、前記第2パルス幅指令値と、前記第1パルス幅指令値と、に基づいて、前記ゲート信号を生成するゲート信号生成部を備え、
前記制御部は、前記第2パルス幅指令値を1未満に設定し、
前記制御部は、基本波成分において前記第2インバータを力率1で運転可能な場合は力率1で運転し、
前記制御部は、
前記第1パルス幅指令値を以下の(8)式で算出する第1演算部を備えたことを特徴とする双方向絶縁型DC/DCコンバータ。
【数8】
W1:第1パルス幅指令値
W2:第2パルス幅指令値
Vdc1:1次側直流電圧検出信号
Vdc2:2次側直流電圧検出信号
θ:位相差指令値
【請求項2】
前記制御部は、
融通電力のフィードバック制御に基づいて前記第1,第2インバータの出力電圧の第1位相差を決定するフィードバック制御部を備え、
前記第1位相差を前記位相差指令値とすることを特徴とする請求項1記載の双方向絶縁型DC/DCコンバータ。
【請求項3】
2つの独立した直流電圧のうち電圧の高い方である1次側直流電圧と、
2つの独立した直流電圧のうち電圧の低い方である2次側直流電圧と、
前記1次側直流電圧に接続され、前記1次側直流電圧を交流電圧に変換する第1インバータと、
前記2次側直流電圧に接続され、前記2次側直流電圧を交流電圧に変換する第2インバータと、
前記第1,第2インバータの交流出力を結合するトランスと、
前記第1,第2インバータと前記トランスの間に直列に接続されたリアクトル、または前記トランスの漏れインダクタンス、あるいはその両方と、
前記第1,第2インバータのゲート信号を生成する制御部と、
を備えたDAB方式の双方向絶縁型DC/DCコンバータであって、
前記制御部は、前記第1インバータの出力電圧のパルス幅を決定する第1パルス幅指令値と、前記第2インバータの出力電圧のパルス幅を決定する第2パルス幅指令値と、前記第1,第2インバータの出力電圧の位相差を決定する位相差指令値を演算し、
前記制御部は、前記位相差指令値と、前記第2パルス幅指令値と、前記第1パルス幅指令値と、に基づいて、前記ゲート信号を生成するゲート信号生成部を備え、
前記制御部は、前記第2パルス幅指令値を1未満に設定し、
前記制御部は、基本波成分において前記第2インバータを力率1で運転可能な場合は力率1で運転し、
前記制御部は、
前記第1,第2インバータの出力電圧の第2位相差を以下の(10)式で算出する第2演算部と、
前記第1パルス幅指令値を以下の(11)式で算出する第1演算部と、
を備え、
前記第2位相差を前記位相差指令値とすることを特徴とする双方向絶縁型DC/DCコンバータ。
【数10】
【数11】
P
*:融通電力指令値
ω:角周波数
L:リアクタンス
W1:第1パルス幅指令値
W2:第2パルス幅指令値
Vdc1:1次側直流電圧検出信号
Vdc2:2次側直流電圧検出信号
θa:第2位相差
【請求項4】
2つの独立した直流電圧のうち電圧の高い方である1次側直流電圧と、
2つの独立した直流電圧のうち電圧の低い方である2次側直流電圧と、
前記1次側直流電圧に接続され、前記1次側直流電圧を交流電圧に変換する第1インバータと、
前記2次側直流電圧に接続され、前記2次側直流電圧を交流電圧に変換する第2インバータと、
前記第1,第2インバータの交流出力を結合するトランスと、
前記第1,第2インバータと前記トランスの間に直列に接続されたリアクトル、または前記トランスの漏れインダクタンス、あるいはその両方と、
前記第1,第2インバータのゲート信号を生成する制御部と、
を備えたDAB方式の双方向絶縁型DC/DCコンバータであって、
前記制御部は、前記第1インバータの出力電圧のパルス幅を決定する第1パルス幅指令値と、前記第2インバータの出力電圧のパルス幅を決定する第2パルス幅指令値と、前記第1,第2インバータの出力電圧の位相差を決定する位相差指令値を演算し、
前記制御部は、前記位相差指令値と、前記第2パルス幅指令値と、前記第1パルス幅指令値と、に基づいて、前記ゲート信号を生成するゲート信号生成部を備え、
前記制御部は、前記第2パルス幅指令値を1未満に設定し、
前記制御部は、基本波成分において前記第2インバータを力率1で運転可能な場合は力率1で運転し、
前記制御部は、
前記第1,第2インバータの出力電圧の第2位相差を以下の(10)式で算出する第2演算部と、
前記第1パルス幅指令値を以下の(11)式で算出する第1演算部と、
融通電力のフィードバック制御に基づいて前記第1,第2インバータの出力電圧の第1位相差を決定するフィードバック制御部と、を備え、
前記第1位相差と前記第2位相差とを加算した値を前記位相差指令値とすることを特徴とする双方向絶縁型DC/DCコンバータ。
【数10】
【数11】
P
*:融通電力指令値
ω:角周波数
L:リアクタンス
W1:第1パルス幅指令値
W2:第2パルス幅指令値
Vdc1:1次側直流電圧検出信号
Vdc2:2次側直流電圧検出信号
θa:第2位相差
【請求項5】
2つの独立した直流電圧のうち電圧の高い方である1次側直流電圧と、
2つの独立した直流電圧のうち電圧の低い方である2次側直流電圧と、
前記1次側直流電圧に接続され、前記1次側直流電圧を交流電圧に変換する第1インバータと、
前記2次側直流電圧に接続され、前記2次側直流電圧を交流電圧に変換する第2インバータと、
前記第1,第2インバータの交流出力を結合するトランスと、
前記第1,第2インバータと前記トランスの間に直列に接続されたリアクトル、または前記トランスの漏れインダクタンス、あるいはその両方と、
前記第1,第2インバータのゲート信号を生成する制御部と、
を備えたDAB方式の双方向絶縁型DC/DCコンバータであって、
前記制御部は、前記第1インバータの出力電圧のパルス幅を決定する第1パルス幅指令値と、前記第2インバータの出力電圧のパルス幅を決定する第2パルス幅指令値と、前記第1,第2インバータの出力電圧の位相差を決定する位相差指令値を演算し、
前記制御部は、前記位相差指令値と、前記第2パルス幅指令値と、前記第1パルス幅指令値を補正した補正第1パルス幅指令値と、に基づいて、前記ゲート信号を生成するゲート信号生成部を備え、
前記制御部は、前記第2パルス幅指令値を1未満に設定し、
前記制御部は、
前記第1,第2インバータの出力電圧の第2位相差を以下の(10)式で算出する第2演算部と、
前記第1パルス幅指令値を以下の(11)式により前記第2位相差に基づき算出する第1演算部と、
前記第1パルス幅指令値を補正して前記補正第1パルス幅指令値を出力するパルス幅指令値補正部と、
前記第1,第2インバータの出力電圧の第3位相差を以下の(12)式に基づいて算出する第3演算部と、
融通電力のフィードバック制御に基づいて前記第1,第2インバータの出力電圧の第1位相差を決定するフィードバック制御部と、を備え、
前記第1位相差と前記第3位相差とを加算した値を前記位相差指令値とすることを特徴とする双方向絶縁型DC/DCコンバータ。
【数10】
【数11】
【数12】
P
*:融通電力指令値
ω:角周波数
L:リアクタンス
W1:第1パルス幅指令値
W2:第2パルス幅指令値
W1’:補正第1パルス幅指令値
Vdc1:1次側直流電圧検出信号
Vdc2:2次側直流電圧検出信号
θa:第2位相差
θb:第3位相差
【請求項6】
2つの独立した直流電圧のうちどちらか一方である1次側直流電圧と、
2つの独立した直流電圧のうち他方である2次側直流電圧と、
前記1次側直流電圧に接続され、前記1次側直流電圧を交流電圧に変換する第1インバータと、
前記2次側直流電圧に接続され、前記2次側直流電圧を交流電圧に変換する第2インバータと、
前記第1,第2インバータの交流出力を結合するトランスと、
前記第1,第2インバータと前記トランスの間に直列に接続されたリアクトル、または前記トランスの漏れインダクタンス、あるいはその両方と、
前記第1,第2インバータのゲート信号を生成する制御部と、
を備えたDAB方式の双方向絶縁型DC/DCコンバータであって、
前記制御部は、前記第1インバータの出力電圧のパルス幅を決定する第1パルス幅指令値と、前記第2インバータの出力電圧のパルス幅を決定する第2パルス幅指令値と、前記第1,第2インバータの出力電圧の位相差を決定する位相差指令値を演算し、
前記制御部は、前記位相差指令値と、前記第2パルス幅指令値と、前記第1パルス幅指令値と、に基づいて、前記ゲート信号を生成するゲート信号生成部を備え、
前記制御部は、前記第1パルス幅指令値と前記第2パルス幅指令値を1未満に設定し、
前記制御部は、
前記第1,第2インバータの出力電圧の第3位相差を以下の(12)式で算出する第3演算部と、
融通電力のフィードバック制御に基づいて前記第1,第2インバータの出力電圧の第1位相差を決定するフィードバック制御部と、を備え、
前記第1位相差と前記第3位相差を加算した値を前記位相差指令値とすることを特徴とする双方向絶縁型DC/DCコンバータ。
【数12】
P
*:融通電力指令値
ω:角周波数
L:リアクタンス
W2:第2パルス幅指令値
W1’:第1パルス幅指令値
Vdc1:1次側直流電圧検出信号
Vdc2:2次側直流電圧検出信号
θb:第3位相差
【請求項7】
2つの独立した直流電圧のうちどちらか一方である1次側直流電圧と、
2つの独立した直流電圧のうち他方である2次側直流電圧と、
前記1次側直流電圧に接続され、前記1次側直流電圧を交流電圧に変換する第1インバータと、
前記2次側直流電圧に接続され、前記2次側直流電圧を交流電圧に変換する第2インバータと、
前記第1,第2インバータの交流出力を結合するトランスと、
前記第1,第2インバータと前記トランスの間に直列に接続されたリアクトル、または前記トランスの漏れインダクタンス、あるいはその両方と、
前記第1,第2インバータのゲート信号を生成する制御部と、
を備えたDAB方式の双方向絶縁型DC/DCコンバータであって、
前記制御部は、前記第1インバータの出力電圧のパルス幅を決定する第1パルス幅指令値と、前記第2インバータの出力電圧のパルス幅を決定する第2パルス幅指令値と、前記第1,第2インバータの出力電圧の位相差を決定する位相差指令値を演算し、
前記制御部は、前記位相差指令値と、前記第2パルス幅指令値と、補正第1パルス幅指令値と、に基づいて前記ゲート信号を生成するゲート信号生成部を備え、
前記制御部は、前記第2パルス幅指令値を1未満に設定し、
前記制御部は、
前記第1,第2インバータの出力電圧の第2位相差を以下の(10)式で算出する第2演算部と、
前記第1パルス幅指令値を以下の(11)式で算出する第1演算部と、
前記第1パルス幅指令値を補正して前記補正第1パルス幅指令値を出力するパルス幅指令値補正部と、
前記第1,第2インバータの直流電圧の差が閾値よりも大きい時は前記補正第1パルス幅指令値を用いて、前記第1,第2インバータの直流電圧の差が前記閾値以下の時は前記補正第1パルス幅指令値を前記第2パルス幅指令値に等しい値に設定し直して、以下の(12)式により前記第1,第2インバータの出力電圧の第3位相差を算出する第3演算部と、
融通電力のフィードバック制御に基づいて前記第1,第2インバータの出力電圧の第1位相差を決定するフィードバック制御部と、
前記第1位相差と前記第3位相差とを加算した値を前記位相差指令値とすることを特徴とする双方向絶縁型DC/DCコンバータ。
【数10】
【数11】
【数12】
P
*:融通電力指令値
ω:角周波数
L:リアクタンス
W1:第1パルス幅指令値
W2:第2パルス幅指令値
W1’:補正第1パルス幅指令値(2台のインバータの直流電圧の差が閾値以下の時はW1’=W2)
Vdc1:1次側直流電圧検出信号
Vdc2:2次側直流電圧検出信号
θa:第2位相差
θb:第3位相差
【請求項8】
前記第2パルス幅指令値を固定値とすることを特徴とする請求項1~7のうち何れかに記載の双方向絶縁型DC/DCコンバータ。
【請求項9】
前記第2パルス幅指令値を融通電力指令値に基づいて可変とすることを特徴とする請求項1~7のうち何れかに記載の双方向絶縁型DC/DCコンバータ。
【請求項10】
2つの独立した直流電圧のうち電圧の高い方である1次側直流電圧と、
2つの独立した直流電圧のうち電圧の低い方である2次側直流電圧と、
前記1次側直流電圧に接続され、前記1次側直流電圧を交流電圧に変換する第1インバータと、
前記2次側直流電圧に接続され、前記2次側直流電圧を交流電圧に変換する第2インバータと、
前記第1,第2インバータの交流出力を結合するトランスと、
前記第1,第2インバータと前記トランスの間に直列に接続されたリアクトル、または前記トランスの漏れインダクタンス、あるいはその両方と、
前記第1,第2インバータのゲート信号を生成する制御部と、
を備えたDAB方式の双方向絶縁型DC/DCコンバータの制御方法であって、
前記制御部は、前記第1インバータの出力電圧のパルス幅を決定する第1パルス幅指令値と、前記第2インバータの出力電圧のパルス幅を決定する第2パルス幅指令値と、前記第1,第2インバータの出力電圧の位相差を決定する位相差指令値を演算し、
前記制御部のゲート信号生成部は、前記位相差指令値と、前記第2パルス幅指令値と、前記第1パルス幅指令値と、に基づいて、前記ゲート信号を生成
し、
前記制御部は、前記第2パルス幅指令値を1未満に設定し、
前記制御部は、基本波成分において前記第2インバータを力率1で運転可能な場合は力率1で運転し、
前記制御部の第1演算部は、
前記第1パルス幅指令値を以下の(8)式で算出することを特徴とする双方向絶縁型DC/DCコンバータの制御方法。
【数8】
W1:第1パルス幅指令値
W2:第2パルス幅指令値
Vdc1:1次側直流電圧検出信号
Vdc2:2次側直流電圧検出信号
θ:位相差指令値
【請求項11】
2つの独立した直流電圧のうち電圧の高い方である1次側直流電圧と、
2つの独立した直流電圧のうち電圧の低い方である2次側直流電圧と、
前記1次側直流電圧に接続され、前記1次側直流電圧を交流電圧に変換する第1インバータと、
前記2次側直流電圧に接続され、前記2次側直流電圧を交流電圧に変換する第2インバータと、
前記第1,第2インバータの交流出力を結合するトランスと、
前記第1,第2インバータと前記トランスの間に直列に接続されたリアクトル、または前記トランスの漏れインダクタンス、あるいはその両方と、
前記第1,第2インバータのゲート信号を生成する制御部と、
を備えたDAB方式の双方向絶縁型DC/DCコンバータの制御方法であって、
前記制御部は、前記第1インバータの出力電圧のパルス幅を決定する第1パルス幅指令値と、前記第2インバータの出力電圧のパルス幅を決定する第2パルス幅指令値と、前記第1,第2インバータの出力電圧の位相差を決定する位相差指令値を演算し、
前記制御部のゲート信号生成部は、前記位相差指令値と、前記第2パルス幅指令値と、前記第1パルス幅指令値と、に基づいて、前記ゲート信号を生成し、
前記制御部は、前記第2パルス幅指令値を1未満に設定し、
前記制御部は、基本波成分において前記第2インバータを力率1で運転可能な場合は力率1で運転し、
前記制御部は、
第2演算部が、前記第1,第2インバータの出力電圧の第2位相差を以下の(10)式で算出し、
第1演算部が、前記第1パルス幅指令値を以下の(11)式で算出し、
前記第2位相差を前記位相差指令値とすることを特徴とする双方向絶縁型DC/DCコンバータの制御方法。
【数10】
【数11】
P
*:融通電力指令値
ω:角周波数
L:リアクタンス
W1:第1パルス幅指令値
W2:第2パルス幅指令値
Vdc1:1次側直流電圧検出信号
Vdc2:2次側直流電圧検出信号
θa:第2位相差
【請求項12】
2つの独立した直流電圧のうち電圧の高い方である1次側直流電圧と、
2つの独立した直流電圧のうち電圧の低い方である2次側直流電圧と、
前記1次側直流電圧に接続され、前記1次側直流電圧を交流電圧に変換する第1インバータと、
前記2次側直流電圧に接続され、前記2次側直流電圧を交流電圧に変換する第2インバータと、
前記第1,第2インバータの交流出力を結合するトランスと、
前記第1,第2インバータと前記トランスの間に直列に接続されたリアクトル、または前記トランスの漏れインダクタンス、あるいはその両方と、
前記第1,第2インバータのゲート信号を生成する制御部と、
を備えたDAB方式の双方向絶縁型DC/DCコンバータの制御方法であって、
前記制御部は、前記第1インバータの出力電圧のパルス幅を決定する第1パルス幅指令値と、前記第2インバータの出力電圧のパルス幅を決定する第2パルス幅指令値と、前記第1,第2インバータの出力電圧の位相差を決定する位相差指令値を演算し、
前記制御部のゲート信号生成部は、前記位相差指令値と、前記第2パルス幅指令値と、前記第1パルス幅指令値と、に基づいて、前記ゲート信号を生成し、
前記制御部は、前記第2パルス幅指令値を1未満に設定し、
前記制御部は、基本波成分において前記第2インバータを力率1で運転可能な場合は力率1で運転し、
前記制御部は、
第2演算部が、前記第1,第2インバータの出力電圧の第2位相差を以下の(10)式で算出し、
第1演算部が、前記第1パルス幅指令値を以下の(11)式で算出し、
フィードバック制御部が、融通電力のフィードバック制御に基づいて前記第1,第2インバータの出力電圧の第1位相差を決定し、
前記第1位相差と前記第2位相差とを加算した値を前記位相差指令値とすることを特徴とする双方向絶縁型DC/DCコンバータの制御方法。
【数10】
【数11】
P
*:融通電力指令値
ω:角周波数
L:リアクタンス
W1:第1パルス幅指令値
W2:第2パルス幅指令値
Vdc1:1次側直流電圧検出信号
Vdc2:2次側直流電圧検出信号
θa:第2位相差
【請求項13】
2つの独立した直流電圧のうち電圧の高い方である1次側直流電圧と、
2つの独立した直流電圧のうち電圧の低い方である2次側直流電圧と、
前記1次側直流電圧に接続され、前記1次側直流電圧を交流電圧に変換する第1インバータと、
前記2次側直流電圧に接続され、前記2次側直流電圧を交流電圧に変換する第2インバータと、
前記第1,第2インバータの交流出力を結合するトランスと、
前記第1,第2インバータと前記トランスの間に直列に接続されたリアクトル、または前記トランスの漏れインダクタンス、あるいはその両方と、
前記第1,第2インバータのゲート信号を生成する制御部と、
を備えたDAB方式の双方向絶縁型DC/DCコンバータの制御方法であって、
前記制御部は、前記第1インバータの出力電圧のパルス幅を決定する第1パルス幅指令値と、前記第2インバータの出力電圧のパルス幅を決定する第2パルス幅指令値と、前記第1,第2インバータの出力電圧の位相差を決定する位相差指令値を演算し、
前記制御部のゲート信号生成部は、前記位相差指令値と、前記第2パルス幅指令値と、前記第1パルス幅指令値を補正した補正第1パルス幅指令値と、に基づいて、前記ゲート信号を生成し、
前記制御部は、前記第2パルス幅指令値を1未満に設定し、
前記制御部は、
第2演算部が、前記第1,第2インバータの出力電圧の第2位相差を以下の(10)式で算出し、
第1演算部が、前記第1パルス幅指令値を以下の(11)式により前記第2位相差に基づきで算出し、
パルス幅指令値補正部が、前記第1パルス幅指令値を補正して前記補正第1パルス幅指令値を出力し、
第3演算部が、前記第1,第2インバータの出力電圧の第3位相差を以下の(12)式に基づいて算出し、
フィードバック制御部が、融通電力のフィードバック制御に基づいて前記第1,第2インバータの出力電圧の第1位相差を決定し、
前記第1位相差と前記第3位相差とを加算した値を前記位相差指令値とすることを特徴とする双方向絶縁型DC/DCコンバータの制御方法。
【数10】
【数11】
【数12】
P
*:融通電力指令値
ω:角周波数
L:リアクタンス
W1:第1パルス幅指令値
W2:第2パルス幅指令値
W1’:補正第1パルス幅指令値
Vdc1:1次側直流電圧検出信号
Vdc2:2次側直流電圧検出信号
θa:第2位相差
θb:第3位相差
【請求項14】
2つの独立した直流電圧のうちどちらか一方である1次側直流電圧と、
2つの独立した直流電圧のうち他方である2次側直流電圧と、
前記1次側直流電圧に接続され、前記1次側直流電圧を交流電圧に変換する第1インバータと、
前記2次側直流電圧に接続され、前記2次側直流電圧を交流電圧に変換する第2インバータと、
前記第1,第2インバータの交流出力を結合するトランスと、
前記第1,第2インバータと前記トランスの間に直列に接続されたリアクトル、または前記トランスの漏れインダクタンス、あるいはその両方と、
前記第1,第2インバータのゲート信号を生成する制御部と、
を備えたDAB方式の双方向絶縁型DC/DCコンバータの制御方法であって、
前記制御部は、前記第1インバータの出力電圧のパルス幅を決定する第1パルス幅指令値と、前記第2インバータの出力電圧のパルス幅を決定する第2パルス幅指令値と、前記第1,第2インバータの出力電圧の位相差を決定する位相差指令値を演算し、
前記制御部のゲート信号生成部は、前記位相差指令値と、前記第2パルス幅指令値と、前記第1パルス幅指令値と、に基づいて、前記ゲート信号を生成し、
前記制御部は、前記第1パルス幅指令値と前記第2パルス幅指令値を1未満に設定し、
前記制御部は、
第3演算部が、前記第1,第2インバータの出力電圧の第3位相差を以下の(12)式で算出し、
フィードバック制御部が、融通電力のフィードバック制御に基づいて前記第1,第2インバータの出力電圧の第1位相差を決定し、
前記第1位相差と前記第3位相差を加算した値を前記位相差指令値とすることを特徴とする双方向絶縁型DC/DCコンバータ
の制御方法。
【数12】
P
*:融通電力指令値
ω:角周波数
L:リアクタンス
W2:第2パルス幅指令値
W1’:第1パルス幅指令値
Vdc1:1次側直流電圧検出信号
Vdc2:2次側直流電圧検出信号
θb:第3位相差
【請求項15】
2つの独立した直流電圧のうちどちらか一方である1次側直流電圧と、
2つの独立した直流電圧のうち他方である2次側直流電圧と、
前記1次側直流電圧に接続され、前記1次側直流電圧を交流電圧に変換する第1インバータと、
前記2次側直流電圧に接続され、前記2次側直流電圧を交流電圧に変換する第2インバータと、
前記第1,第2インバータの交流出力を結合するトランスと、
前記第1,第2インバータと前記トランスの間に直列に接続されたリアクトル、または前記トランスの漏れインダクタンス、あるいはその両方と、
前記第1,第2インバータのゲート信号を生成する制御部と、
を備えたDAB方式の双方向絶縁型DC/DCコンバータの制御方法であって、
前記制御部は、前記第1インバータの出力電圧のパルス幅を決定する第1パルス幅指令値と、前記第2インバータの出力電圧のパルス幅を決定する第2パルス幅指令値と、前記第1,第2インバータの出力電圧の位相差を決定する位相差指令値を演算し、
前記制御部のゲート信号生成部は、前記位相差指令値と、前記第2パルス幅指令値と、補正第1パルス幅指令値と、に基づいて前記ゲート信号を生成し、
前記制御部は、前記第2パルス幅指令値を1未満に設定し、
前記制御部は、
第2演算部が、前記第1,第2インバータの出力電圧の第2位相差を以下の(10)式で算出し、
第1演算部が、前記第1パルス幅指令値を以下の(11)式で算出し、
パルス幅指令値補正部が、前記第1パルス幅指令値を補正して前記補正第1パルス幅指令値を出力し、
第3演算部が、前記第1,第2インバータの直流電圧の差が閾値よりも大きい時は前記補正第1パルス幅指令値を用いて、前記第1,第2インバータの直流電圧の差が前記閾値以下の時は前記補正第1パルス幅指令値を前記第2パルス幅指令値に等しい値に設定し直して、以下の(12)式により前記第1,第2インバータの出力電圧の第3位相差を算出し、
フィードバック制御部が、融通電力のフィードバック制御に基づいて前記第1,第2インバータの出力電圧の第1位相差を決定し、
前記第1位相差と前記第3位相差とを加算した値を前記位相差指令値とすることを特徴とする双方向絶縁型DC/DCコンバータの制御方法。
【数10】
【数11】
【数12】
P
*:融通電力指令値
ω:角周波数
L:リアクタンス
W1:第1パルス幅指令値
W2:第2パルス幅指令値
W1’:補正第1パルス幅指令値(2台のインバータの直流電圧の差が閾値以下の時はW1’=W2)
Vdc1:1次側直流電圧検出信号
Vdc2:2次側直流電圧検出信号
θa:第2位相差
θb:第3位相差
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電力をインバータにより高周波の交流電力に変換し、トランスを用いて絶縁し、別のインバータで直流に変換するデュアルアクティブブリッジ(DAB)方式の双向絶縁型DC/DCコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、インバータ2台の交流出力を高周波トランスで結合したDAB方式の双方向絶縁型DC/DCコンバータが示されている。
図6にDAB方式の双方向絶縁型DC/DCコンバータの回路図を示す。リアクトルで結合された2台の交流電源の間には、位相進みの電源から位相遅れの電源へ有効電力が流れる。DAB方式の双方向絶縁型DC/DCコンバータではこの現象を利用して電力融通を行う。
【0003】
図7に1次側インバータ出力電圧V1と2次側インバータ出力電圧V2の位相差θを設定し、1次側から2次側へ電力融通を行う際の電圧およびゲート指令波形を示す。トランスは印加される電圧の周波数が高いほど鉄心の断面積を小さくできる。そのためDAB用のトランスは例えば20kHzの高周波での駆動を前提に設計され、インバータも同じく20kHz程度の高周波で駆動する。そのため装置の全損失のうちスイッチング損失の占める割合は大きい。
【0004】
これに対処するため、非特許文献1ではソフトスイッチング技術の適用によるスイッチング損失低減を検討している。しかし、1次側と2次側で直流電圧に差がある場合はソフトスイッチングが成立しにくくなることが課題である。その原因の1つは、直流電圧が大きい方のインバータから直流電圧が低い方のインバータへ遅れ無効電力が流れ、直流電圧が低い方のインバータは進み力率で運転してしまうことである。
【0005】
特許文献1,2には、1次側と2次側の直流電圧の差が大きい場合でもソフトスイッチングを成立させる方法が開示されている。
図8に動作波形を示す。特許文献1,2とも直流電圧が大きい方のインバータの上アーム側のスイッチングデバイス2つ(T11,T13)または下アーム側のスイッチングデバイス2つ(T12,T14)を同時にONして出力電圧が零となる期間を設定している。
【0006】
これにより直流電圧が大きい方のインバータが出力する遅れ無効電力を小さくし、直流電圧が低い方のインバータを遅れ力率で運転させることでソフトスイッチングを成立させる。
【0007】
出力電圧が零ではないパルス幅の設定方法として、特許文献1では1次側と2次側のインバータ出力電圧の時間積を一致させる方法と、基本波成分の振幅を一致させる方法を開示している。特許文献2では、実効値を一致させる方法を開示している。
【0008】
非特許文献2,3は、以上の文献とは異なりリアクトル電流ILを低減することで銅損・導通損失を抑え効率を向上させている。リアクトル電流が最小となる条件として、直流電圧が大きい方のインバータが高周波トランスやリアクトルに供給される無効電力をすべて負担し、直流電圧が小さい方のインバータを力率1で運転することが示されている。非特許文献3では、この条件を実現させるためのパルス幅の計算方法が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2013-251998号公報
【文献】特表2015-056503号公報
【非特許文献】
【0010】
【文献】井上重徳、赤木泰文、「双方向絶縁形DC/DCコンバータの動作電圧と損失解析」、電気学会論文誌C、127巻2号、2007年、pp189-pp197
【文献】比嘉隼、長野剛、伊藤淳一、「デュアルアクティブブリッジコンバータの制御法に応じたトランスの低損失化に関する検討」、平成27年電気学会全国大会、第4分冊、pp130-pp131
【文献】長野剛、比嘉隼、伊藤淳一、「A Novel Control Method Focusing on Reactive Power for A Dual Active Bridge Converter」2014.IEEE
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
近年ではSiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)を採用したスイッチングデバイスの普及が進んでいる。これらのデバイスはスイッチング損失が小さいため、ソフトスイッチングを行わなくても高い効率が得られるようになりつつある。その一方で全損失のうち高周波トランスやリアクトルの鉄損・銅損、デバイスの導通損失の占める割合が増加してきているため、これらの損失の低減が課題である。
【0012】
鉄損は、磁界の周波数が高いほど大きくなることが知られている。鉄損の低減には、印加電圧の高調波成分の低減が有効であり、そのためには直流電圧が大きい方だけでなく小さい方のインバータの出力電圧もパルス幅を短くして零期間を設ければよい。
図9にその動作波形を示す。
【0013】
銅損や導通損失の低減には、非特許文献2,3が有効である。しかし、非特許文献2,3では直流電圧が小さい方のインバータ出力電圧のパルス幅は1固定である。単純にパルス幅を短くすると、力率1での運転を維持できなくなり銅損・導通損失が増加するほかに、指令値通りの電力融通ができなくなる問題も発生する。
【0014】
対策としては、インバータ出力無効電力を検出してパルス幅を調整するフィードバック制御の適用が考えられる。しかし、高周波の無効電力を精度よく検出するためにはサンプリング周波数の増加、性能のよい電流検出器の適用、電圧と電流の検出遅延のずれの補正、といった対応が必要であり、コストや調整時間が増加してしまう。
【0015】
また、指令値通りの融通電力を得るためには、融通電力を検出して位相を調整するフィードバック制御を併用する必要がある。しかし、融通電力と位相、無効電力とパルス幅の関係は完全に独立ではなく、パルス幅を増加することでも融通電力は増加する。
【0016】
このように干渉する2つのフィードバック制御を併用すると制御の安定性が低下する恐れがある。制御ゲインを下げれば安定性は改善するが、その反面応答速度が低下し、指令値通りの融通電力が得られるまで時間がかかってしまう。その間はコンデンサなど電力蓄積要素で対応することになるが、応答速度が低下するほど大容量のコンデンサが必要になり、装置の大型化、高コスト化の原因となる。
【0017】
以上示したようなことから、双方向絶縁型DC/DCコンバータにおいて、損失低減、応答速度向上、ノイズ低減を実現することが課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、前記従来の問題に鑑み、案出されたもので、その一態様は、2つの独立した直流電圧のうち電圧の高い方または等しい場合のどちらか一方である1次側直流電圧と、2つの独立した直流電圧のうち電圧の低い方または等しい場合の他方である2次側直流電圧と、前記1次側直流電圧に接続され、前記1次側直流電圧を交流電圧に変換する第1インバータと、前記2次側直流電圧に接続され、前記2次側直流電圧を交流電圧に変換する第2インバータと、前記第1,第2インバータの交流出力を結合するトランスと、前記第1,第2インバータと前記トランスの間に直列に接続されたリアクトル、または前記トランスの漏れインダクタンス、あるいはその両方と、前記第1,第2インバータのゲート信号を生成する制御部と、を備えたDAB方式の双方向絶縁型DC/DCコンバータであって、前記制御部は、前記第1インバータの出力電圧のパルス幅を決定する第1パルス幅指令値と、前記第2インバータの出力電圧のパルス幅を決定する第2パルス幅指令値と、前記第1,第2パルス幅指令値の出力電圧の位相差を決定する位相差指令値を演算し、前記制御部は、前記位相差指令値と、前記第2パルス幅指令値と、前記第1パルス幅指令値と、に基づいて、または、前記位相差指令値と、前記第2パルス幅指令値と、前記第1パルス幅指令値を補正した補正第1パルス幅指令値と、に基づいて、または、前記位相差指令値と、前記第2パルス幅指令値と、に基づいて、前記ゲート信号を生成するゲート信号生成部を備え、前記制御部は、前記第2パルス幅指令値を1未満に設定し、かつ、基本波成分において前記第2インバータを力率1で運転可能な場合は力率1で運転し、または、基本波成分において前記第2インバータを遅れ力率で運転し前記リアクトルや前記トランスに供給される遅れ無効電力のうち前記第2インバータが分担する割合を半分以下にしたことを特徴とする。
【0019】
また、その一態様として、前記制御部は、前記第1パルス幅指令値を以下の(8)式で算出する第1演算部を備えたことを特徴とする。
【0020】
【0021】
W1:第1パルス幅指令値
W2:第2パルス幅指令値
Vdc1:1次側直流電圧検出信号
Vdc2:2次側直流電圧検出信号
θ:位相差指令値。
【0022】
また、その一態様として、前記制御部は、融通電力のフィードバック制御に基づいて前記第1,第2インバータの出力電圧の第1位相差を決定するフィードバック制御部を備え、前記第1位相差を前記位相差指令値とし、前記ゲート信号生成部は、前記位相差指令値と、前記第2パルス幅指令値と、前記第1パルス幅指令値と、に基づいて前記ゲート信号を生成することを特徴とする。
【0023】
また、他の態様として、前記制御部は、前記第1,第2インバータの出力電圧の第2位相差を以下の(10)式で算出する第2演算部と、前記第1パルス幅指令値を以下の(11)式で算出する第1演算部と、を備え、前記第2位相差を前記位相差指令値とし、前記ゲート信号生成部は、前記位相差指令値と、前記第2パルス幅指令値と、前記第1パルス幅指令値と、に基づいて前記ゲート信号を生成することを特徴とする。
【0024】
【0025】
【0026】
P*:融通電力指令値
ω:角周波数
L:リアクタンス
W1:第1パルス幅指令値
W2:第2パルス幅指令値
Vdc1:1次側直流電圧検出信号
Vdc2:2次側直流電圧検出信号
θa:第2位相差。
【0027】
また、他の態様として、前記制御部は、前記第1,第2インバータの出力電圧の第2位相差を以下の(10)式で算出する第2演算部と、前記第1パルス幅指令値を以下の(11)式で算出する第1演算部と、融通電力のフィードバック制御に基づいて前記第1,第2インバータの出力電圧の第1位相差を決定するフィードバック制御部と、を備え、前記第1位相差と前記第2位相差とを加算した値を前記位相差指令値とし、前記ゲート信号生成部は、前記位相差指令値と、前記第2パルス幅指令値と、前記第1パルス幅指令値と、に基づいて前記ゲート信号を生成することを特徴とする。
【0028】
【0029】
【0030】
P*:融通電力指令値
ω:角周波数
L:リアクタンス
W1:第1パルス幅指令値
W2:第2パルス幅指令値
Vdc1:1次側直流電圧検出信号
Vdc2:2次側直流電圧検出信号
θa:第2位相差。
【0031】
また、他の態様として、前記制御部は、前記第1,第2インバータの出力電圧の第2位相差を以下の(10)式で算出する第2演算部と、前記第1パルス幅指令値を以下の(11)式で算出する第1演算部と、前記第1パルス幅指令値を補正して補正第1パルス幅指令値を出力するパルス幅指令値補正部と、前記第1,第2インバータの出力電圧の第3位相差を以下の(12)式に基づいて算出する第3演算部と、融通電力のフィードバック制御に基づいて前記第1,第2インバータの出力電圧の第1位相差を決定するフィードバック制御部と、を備え、前記第1位相差と前記第3位相差とを加算した値を前記位相差指令値とし、前記ゲート信号生成部は、前記位相差指令値と、前記第2パルス幅指令値と、前記補正第1パルス幅指令値と、に基づいて前記ゲート信号を生成することを特徴とする。
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】
P*:融通電力指令値
ω:角周波数
L:リアクタンス
W1:第1パルス幅指令値
W2:第2パルス幅指令値
W1’:補正第1パルス幅指令値
Vdc1:1次側直流電圧検出信号
Vdc2:2次側直流電圧検出信号
θa:第2位相差
θb:第3位相差。
【0036】
また、他の態様として、前記制御部は、第1パルス幅指令値と、第2パルス幅指令値を1未満に設定し、前記制御部は、前記第1,第2インバータの出力電圧の第3位相差を以下の(12)式で算出する第3演算部と、融通電力のフィードバック制御に基づいて前記第1,第2インバータの出力電圧の第1位相差を決定するフィードバック制御部と、を備え、前記第1位相差と前記第3位相差を加算した値を前記位相差指令値とし、前記ゲート信号生成部は、前記位相差指令値と、前記第2パルス幅指令値と、前記第1パルス幅指令値と、に基づいて前記ゲート信号を生成することを特徴とする。
【0037】
【0038】
P*:融通電力指令値
ω:角周波数
L:リアクタンス
W2:第2パルス幅指令値
W1’:第1パルス幅指令値
Vdc1:1次側直流電圧検出信号
Vdc2:2次側直流電圧検出信号
θb:第3位相差。
【0039】
また、他の態様として、制御部は、前記第1,第2インバータの出力電圧の第2位相差を以下の(10)式で算出する第2演算部と、前記第1パルス幅指令値を以下の(11)式で算出する第1演算部と、前記第1パルス幅指令値を補正して補正第1パルス幅指令値を出力するパルス幅指令値補正部と、前記第1,第2インバータの直流電圧の差が閾値よりも大きい時は前記補正第1パルス幅指令値を用いて、前記第1,第2インバータの直流電圧の差が前記閾値以下の時は前記補正第1パルス幅指令値の代わりに前記第2パルス幅指令値を用いて、以下の(12)式により前記第1,第2インバータの出力電圧の第3位相差を算出する第3演算部と、融通電力のフィードバック制御に基づいて前記第1,第2インバータの出力電圧の第1位相差を決定するフィードバック制御部と、前記第1位相差と前記第3位相差とを加算した値を前記位相差指令値とし、前記ゲート信号生成部は、前記第1,第2インバータの直流電圧の差が前記閾値よりも大きい時は、前記位相差指令値と、前記第2パルス幅指令値と、前記補正第1パルス幅指令値と、に基づいて前記ゲート信号を生成し、前記第1,第2インバータの直流電圧の差が前記閾値以下の時は、前記位相差指令値と、前記第2パルス幅指令値と、に基づいて前記ゲート信号を生成することを特徴とする。
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
P*:融通電力指令値
ω:角周波数
L:リアクタンス
W1:第1パルス幅指令値
W2:第2パルス幅指令値
W1’:補正第1パルス幅指令値(2台のインバータの直流電圧の差が閾値以下の時はW1’=W2)
Vdc1:1次側直流電圧検出信号
Vdc2:2次側直流電圧検出信号
θa:第2位相差
θb:第3位相差。
【0044】
また、その一態様として、前記第2パルス幅指令値を固定値とすることを特徴とする。
【0045】
また、他の態様として、前記第2パルス幅指令値を融通電力指令値に基づいて可変とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば、双方向絶縁型DC/DCコンバータにおいて、損失低減、応答速度向上、ノイズ低減を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】実施形態1における制御部の構成を示すブロック図。
【
図2】実施形態2における制御部の構成を示すブロック図。
【
図3】実施形態3における制御部の構成を示すブロック図。
【
図4】実施形態4における制御部の構成を示すブロック図。
【
図5】実施形態5における制御部の構成を示すブロック図。
【
図6】DAB方式の双方向絶縁型DC/DCコンバータの主回路構成図。
【
図7】DAB方式の双方向絶縁型DC/DCコンバータの動作波形を示す図。
【
図8】直流電圧が大きい方のインバータに出力電圧が零となる期間を設けた動作波形を示す図。
【
図9】1次側2次側両方のインバータに出力電圧が零となる期間を設けた動作波形を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明では、1次側2次側両方のインバータに出力電圧が零となる期間を設定し、高周波トランスやリアクトルへの印加電圧の急変を低減することで鉄損とノイズを抑える。
【0049】
また、1次側と2次側で直流電圧に差がある場合において、リアクトル電流が最小となるようインバータ出力電圧のパルス幅を設定することで、スイッチング素子の導通損や高周波トランス・リアクトルの銅損を低減する。
【0050】
さらに、コンバータ融通電力の指令値と1次側・2次側直流電圧から、指令値通りの電力融通に必要な各インバータの出力電圧位相差と、リアクトル電流を最小とするために必要なインバータ出力電圧のパルス幅を計算しフィードフォワード制御を行えるようにすることで、応答速度を向上させる。
【0051】
最後に、計算により求めたパルス幅が上限を超えて実現できない、あるいは出力電圧に含まれる高調波をさらに小さくする目的で計算により求めたパルス幅よりも短くする場合でも、できる限りリアクトル電流を小さくし指令値通りの電力融通を行えるようにする。
【0052】
これにより、双方向絶縁型DC/DCコンバータにおいて、損失低減、応答速度向上、ノイズ低減を実現する
以下、本願発明における双方向絶縁型DC/DCコンバータの実施形態1~5を
図1~
図6に基づいて詳述する。
【0053】
[実施形態1]
まず、
図6に基づいて、双方向絶縁型DC/DCコンバータの主回路構成の一例を説明する。
【0054】
1次側直流電圧Vdc1の正極と負極との間にはコンデンサC1が接続される。加えて、1次側直流電圧Vdc1の正極と負極との間には第1,第2スイッチングデバイスT11,T12が直列接続される。さらに、1次側直流電圧Vdc1の正極と負極との間には第3,第4スイッチングデバイスT13,T14も直列接続される。
【0055】
第1,第2スイッチングデバイスT11,T12の接続点には、リアクトルL1の一端が接続される。第3,第4スイッチングデバイスT13,T14の接続点にはリアクトルL2の一端が接続される。リアクトルL1の他端とリアクトルL2の他端との間にはトランスTrの1次巻線が接続される。
【0056】
2次側直流電圧Vdc2の正極と負極との間にはコンデンサC2が接続される。加えて、2次側直流電圧Vdc2の正極と負極との間には第5,第6スイッチングデバイスT21,T22が直列接続される。さらに、2次側直流電圧Vdc2の正極と負極との間には第7,第8スイッチングデバイスT23,T34も直列接続される。
【0057】
第5,第6スイッチングデバイスT21,T22の接続点には、リアクトルL3の一端が接続される。第7,第8スイッチングデバイスT23,T24の接続点にはリアクトルL4の一端が接続される。リアクトルL3の他端とリアクトルL3の他端との間にはトランスTrの2次巻線が接続される。
【0058】
実施形態1~3では、Vdc1≧Vdc2を想定する。すなわち、直流電圧が大きい方を1次側インバータ(第1インバータ)、小さい方を2次側インバータ(第2インバータ)と定義する。
【0059】
図6では、1次側,2次側インバータとトランスTrと間に直列にリアクトルL1~L4を接続しているが、リアクトルL1~L4の代わりにトランスTrの漏れインダクタンスとしてもよい。また、リアクトルL1~L4とトランスTrの漏れインダクタンスの両方としてもよい。
【0060】
図9に示すように2次側インバータにも出力電圧が零となる期間を設定するが、その位相差指令値θと1次側インバータの出力電圧の第1パルス幅指令値W1,2次側インバータの出力電圧の第2パルス幅指令値W2の設定方法を説明する。
【0061】
図1に本実施形態1の制御部のブロック図を示す。本実施形態1の制御部は、乗算器1と、ローパスフィルタ2と、減算器3と、アンプ4と、第1演算部5と、乗算器6,7と、ゲート信号生成部8,9と、を備える。なお、乗算器1と、ローパスフィルタ2と、減算器3と、アンプ4と、でフィードバック制御部10とする。
【0062】
乗算器1は、2次側直流電圧検出信号Vdc2と2次側直流電流検出信号Idc2の積を求め2次側に入力された有効電力を演算する。また、乗算器1では、1次側直流電流Idc1を検出して1次側直流電圧検出信号Vdc1と1次側直流電流検出信号Idc1の積から1次側が出力した有効電力を求めてもよい。
【0063】
ローパスフィルタ2は、乗算器1で求めた電力に重畳する基本波の2倍の脈動やノイズを除去する。
【0064】
減算器3は、融通電力指令値P*と求めた電力(ローパスフィルタ2の出力)との偏差を求める。融通電力指令値P*にはマイナスの値を設定することもできる。この場合、有効電力は2次側から1次側へ融通される。
【0065】
アンプ4は、偏差を増幅して1次側,2次側インバータ出力電圧の第1位相差θを求める。ここでは、例として比例積分アンプを用いる。
【0066】
このように、フィードバック制御部10は、融通電力のフィードバック制御に基づいて1次側,2次側インバータの出力電圧の第1位相差θを決定する。本実施形態1では、この第1位相差θを位相差指令値θとする。
【0067】
第1演算部5は、1次側直流電圧検出信号Vdc1と2次側直流電圧検出信号Vdc2と位相差指令値(第1位相差)θから後述する(8)式に基づいて1次側インバータ出力電圧の第1パルス幅指令値W1を求める。第1演算部5の処理が本実施形態1の特徴である。
【0068】
乗算器6は、位相差指令値θを0.5倍する。乗算器7は、0.5θを-1倍する。
【0069】
ゲート信号生成部8は、0.5θと第1パルス幅指令値W1を入力し、1次側インバータのゲート信号を求める。ゲート信号生成部8の出力は、第1~第4スイッチングデバイスT11,T12,T13,T14に入力される。
【0070】
ゲート信号生成部9は、-0.5θと第2パルス幅指令値W2を入力し、2次側インバータのゲート信号を求める。ゲート信号生成部9の出力は、第5~第8スイッチングデバイスT21,T22,T23,T24に入力される。
【0071】
2次側インバータ出力電圧の第2パルス幅指令値W2は、例えば0.7~0.95程度の1に近い固定値とする。または、融通電力指令値P*が零に近いときは小さく、融通電力指令値P*が零から離れるほど大きくなる上限を0.7~0.95程度とした可変値としてもよい。
【0072】
本実施形態1では、インバータ出力電圧の基本波成分に着目し、与えられた第2パルス幅指令値W2,フィードバック制御により求めた位相差指令値(第1位相差)θに対して、2次側インバータを力率1で運転させるために必要な第1パルス幅指令値W1を後述する(8)式により求め1次側インバータを駆動することで、リアクトル電流の基本波成分を最小にする。
【0073】
まず、
図9に示すパルス幅(第2パルス幅指令値W2),振幅(2次側直流電圧検出信号Vdc2)の矩形波の基本波成分を求める。パルス幅は0<W2≦1で定義され、点弧角α2とは、(1)式の関係がある。
【0074】
【0075】
2次側インバータ出力電圧V2の矩形波をフーリエ級数展開すると、(2)式となる。なお、ωは角周波数とする。
【0076】
【0077】
よって、2次側インバータ出力電圧V2の基本波成分の実効値V21rmsは、(3)式となる。
【0078】
【0079】
次に、第2パルス幅指令値W2を決定する。2次側インバータ出力電圧V2に含まれる高調波成分を低減するためにはW2<1とする必要があり、大きな電力を伝送するためには第1パルス幅指令値W1をなるべく大きくして2次側インバータ出力電圧V2の基本波成分の実効値を大きくする必要がある。例えばW2=0.9とすると、2次側インバータ出力電圧V2の基本波成分の実効値V21rmsは(4)式であり、基本波振幅は1.2%しか低下しない。
【0080】
【0081】
同じ電力を伝送する場合、電流増加は1.2%、銅損増加は2.5%程度で済む。一方、3次高調波を見ると2次側インバータ出力電圧V2の3次高調波の実効値V23rmsは(5)式となり、10.9%低減できる。
【0082】
【0083】
5次高調波ならば29.3%低減できる。よって、第2パルス幅指令値W2を少し短くするだけならば銅損にほとんど影響を与えず高周波のトランスTrやリアクトルL1~L4への印加電圧の高調波成分を抑え、鉄損を抑制できる。ここでは、第2パルス幅指令値W2は0.7~0.95程度の1に近い固定値とする。または、融通電力指令値P*が零に近いときは小さく、融通電力指令値P*が零から離れるほど大きくなる上限を0.7~0.95程度とした可変値としてもよい。
【0084】
今度は、第1パルス幅指令値W1を求める。2台のインバータ出力電圧の位相差がθのとき、2次側インバータの基本波成分を力率1で運転させるための条件は、(6)式である。
【0085】
【0086】
1次側インバータ出力電圧V1の基本波成分の実効値V11rmsは(7)式に示すように同様に求めることができる。
【0087】
【0088】
以上より、第1パルス幅指令値W1は以下の(8)式で求めることができる。
【0089】
【0090】
以上より求めた第1パルス幅指令値W1をゲート信号生成部8に入力し、1次側インバータから電圧を出力することで、2次側インバータは力率1で運転しリアクトル電流の基本波成分を最小にすることができる。
【0091】
(8)式では、条件によってはsin-1を求めることができない場合がある。これは、1次側直流電圧検出信号Vdc1が小さすぎ第1パルス幅指令値W1を1としても2次側インバータを力率1で運転できないことを示している。このような場合ではW1=1とすることで、1次側インバータでできる限り多くの無効電力を負担し、2次側インバータの力率をなるべく1に近づけ、0<W1≦1の条件下でリアクトル電流の基本波成分を最小にできる。
【0092】
以上示したように、本実施形態1によれば、直流電圧が小さい方のインバータ出力電圧のパルス幅を小さくした場合でも力率1で運転でき、リアクトル電流を小さく抑え銅損や導通損を低減することができる。
【0093】
また、直流電圧が小さい方のインバータ出力電圧のパルス幅を小さくすることで高周波トランスやリアクトルの鉄損やノイズを抑えることができる。
【0094】
また、(8)式を用いて直流電圧が大きい方のインバータ出力電圧パルス幅を求めるため、無効電力のフィードバック制御が不要となる。これにより、周波数帯域に低い電流検出器を用いることができコストを低減できる。また、制御の安定性が向上する。
【0095】
[実施形態2]
図2に本実施形態2の制御部のブロック図を示す。本実施形態2は実施形態1の制御部に対して、第2演算部11と、加算器12が追加されている。
【0096】
第2演算部11は、第2パルス幅指令値W2,融通電力指令値P*,2次側直流電圧検出信号Vdc2を入力し、後述する(10)式に基づいて1次側,2次側インバータ出力電圧の第2位相差θaを求める。
【0097】
加算器12は、アンプ4の出力(第1位相差)と第2位相差θaを加算し、位相差指令値θとして出力する。本実施系形態2では、フィードバック制御部10の出力である第1位相差と第2位相差θaとを加算した値を位相差指令値θとする。
【0098】
また、第1演算部5は、第1位相差ではなく第2位相差θaを入力する。そして、第1パルス幅指令値W1の演算には、後述する(11)式を用いる。
【0099】
実施形態1では、位相差指令値θをフィードバック制御により得た第1位相差としている。そのため、アンプ4のゲインが高すぎると制御が不安定になる恐れがある。ゲインが低ければ制御は安定するが、応答速度が遅くなり、融通電力指令値P*が変化してから実際の融通電力が融通電力指令値P*に等しくなるまで時間がかかるという問題が生じる。
【0100】
本実施形態2では、第2パルス幅指令値W2と融通電力指令値P*から必要な第2位相差θaを後述する(10)式により求め1次側インバータを駆動することで、応答速度を向上させる。2台のインバータ間のリアクタンスをLとすると、基本波成分によるインバータ間の融通電力Pは(9)式で表される。
【0101】
【0102】
これは、非特許文献1の(1)式とは異なるが、非特許文献1では高調波も考慮している反面パルス幅の変更に対応できないという違いがある。高調波に起因する誤差は、例えば3次に着目するとフーリエ級数展開結果より3次高調波電圧の振幅は基本波の1/3以下である。電流は、リアクタンスと周波数に反比例するので基本波の1/9以下であるため、電力誤差は1/27≒3.7%以下と小さい。
【0103】
融通電力指令値P*の電力融通に必要な第2位相差θaを求める。1次側直流電圧検出信号Vdc1は十分大きく2次側インバータを力率1で運転できると仮定して、1次側インバータ出力電圧V1の基本波成分の実効値V11rmsは(6)式で、2次側インバータ出力電圧V2の基本波成分の実効値V21rmsは(3)式で表現される。よって、第2位相差θaは融通電力指令値P*と第2パルス幅指令値W2を用いて(10)式で表すことができる。
【0104】
【0105】
アンプ4の出力にこの第2位相差θaを加算して位相差指令値θとすることで、応答速度を向上させることができる。アンプ4によるフィードバックは高調波を無視したことによる誤差やリアクトルの誤差、電圧検出の誤差などを補償するため本実施形態2でも併用する。これらの誤差は小さいためアンプ4のゲインは低くてもよく、制御の安定性は向上する。第1パルス幅指令値W1は、実施形態1と同様に求めることができる。ただし、位相差には第2位相差θaを用いて、(11)式となる。
【0106】
【0107】
実施形態2では、アンプ4の出力を位相差の補正量としたが、電力指令値の補正量として融通電力指令値P*と加算し(10)式に代入して位相差指令値θを求めてもよい。アンプ4の入力と出力が同じ電力であり線形の関係にあるため、ゲイン設計が容易になり安定性も向上するという長所が得られる。その反面、応答速度の要求されるフィードバックにおいて(10)式の演算を行う必要があり、制御基板に要求させる性能が高くなるという短所がある。
【0108】
また、本実施形態2では、第1位相差と第2位相差θaを加算した値と位相差指令値θとしているが、第2位相差θaを位相差指令値θとしてゲート信号生成部8,9でゲート信号を生成した構成も本願発明に含めるものとする。
【0109】
以上示したように、本実施形態2によれば、実施形態1の作用効果に加えて以下の効果が得られる。
【0110】
(10)式を用いて電力融通に必要な位相差を求めるため、電力指令値を与えてからその通りの融通電力が得られるまでの時間を短くすることができる。そのため、融通電力のフィードバック制御ゲインを下げることができ、制御の安定性が向上する。
【0111】
[実施形態3]
図3に本実施形態3の制御部のブロック図を示す。本実施形態3は実施形態2の制御部に、減算器13と、リミッタ14と、第3演算部15が追加されている。なお、減算器13とリミッタ14とでパルス幅指令補正部16とする。パルス幅指令補正部16は、第1パルス幅指令値W1に演算を行い、補正第1パルス幅指令値W1’を出力する。
【0112】
減算器13は第1パルス幅指令値W1からβを減算する。リミッタ14は、減算器13の出力を上限値で制限し、補正第1パルス幅指令値W1’を出力する。第3演算部15は、補正第1パルス幅指令値W1’と第2パルス幅指令値W2,融通電力指令値P*,1次側,2次側直流電圧検出信号Vdc1,Vdc2から後述する(12)式に基づいて1次側,2次側インバータ出力電圧の第3位相差θbを求める。
【0113】
加算器12は、アンプ4の出力(第1位相差)と第3位相差θbを加算した値を位相差指令値θとして出力する。以降は実施形態1,2と同様に、0.5θと-0.5θをゲート信号生成部8,9に入力する。1次側のゲート信号生成部8には、第1パルス幅指令値W1ではなく補正第1パルス幅指令値W1’を入力する。
【0114】
実施形態1や実施形態2では1次側直流電圧検出信号Vdc1と2次側直流電圧検出信号Vdc2の差が小さい場合や融通電力指令値P*が大きい場合などW1=1となることがある。この場合では1次側のインバータ出力電圧高調波を低減できないため、鉄損やノイズの低減効果が小さくなってしまう。
【0115】
ここで第1パルス幅指令値W1に制限を設けることもできるが、第1パルス幅指令値W1を減少させると基本波成分の実効値V11rmsも小さくなり、(9)式より融通電力が減少してしまう。フィードバック制御があるため指令値通りの電力融通を行うことはできるが、偏差が小さくなるまでに時間がかかってしまう。
【0116】
本実施形態3では、(11)式によって得られた第1パルス幅指令値W1が例えば0.7~0.95程度以下となるよう上限を設定し、第1パルス幅指令値W1から新しい補正第1パルス幅指令値W1’を得る。補正第1パルス幅指令値W1’を(7)式,(9)式に代入し、融通電力指令値P*の電力融通に必要な第3位相差θbを(12)式により求める。
【0117】
【0118】
得られた第3位相差θbをアンプ4の出力(第1位相差)に加算して位相差指令値θとする。また、1次側のゲート信号生成部8には第1パルス幅指令値W1ではなく補正第1パルス幅指令値W1’を入力する。
【0119】
β=0かつ第1パルス幅指令値W1が上限よりも小さくW1’=W1となった場合は、(10)式と(12)式の演算結果は一致しθa=θbとなる。そのためW1’=W1ならば(12)式の演算を省略することで、CPUやFPGA等の負担を低減することができる。
図3ではW1’=W1においても(12)式の演算を行うが動作に支障はなく、(12)式の演算を実施するか否かの判断が不要になるので制御ブロックを簡略化できる。
【0120】
補正第1パルス幅指令値W1’を求める際には他の演算を行ってもよい。演算の例としては、小さな値βを設定して第1パルス幅指令値W1をβだけ小さくする。第1パルス幅指令値W1を少し小さくすると2次側インバータは力率が少しだけ小さくなり、遅れ力率で運転する。
【0121】
これにより2次側インバータはソフトスイッチングに成功しやすくなり、特にSi(ケイ素)を用いたスイッチングデバイスを適用した場合において効率を向上できる。または第1パルス幅指令値W1(W1e)を以下の(13)式で求めると、1次側インバータ出力電圧V1の基本波成分の実効値V11rmsと2次側インバータ出力電圧V2の基本波成分の実効値V21rmsが等しくなり各インバータの出力する無効電力は等しくなる。
【0122】
【0123】
これに対し、0~1の範囲内で定めた係数γを用意して(14)式とすることで、2次側インバータの遅れ無効電力の分担は半分以下となる。
【0124】
【0125】
以上示したように、本実施形態3によれば、実施形態2の作用効果に加えて以下の効果が得られる。
【0126】
直流電圧が大きい方のインバータ出力電圧のパルス幅を必ず設定した値以下に制限できるため、特定の条件下で鉄損やノイズの低減効果が低下してしまう事態を避けることができる。
【0127】
また、直流電圧が小さい方のインバータの力率を少しだけ小さくし遅れ力率で運転できるため、ソフトスイッチングに成功しやすくなりスイッチング損失を低減できる。
【0128】
また、直流電圧が大きい方のインバータ出力電圧のパルス幅を操作した場合でも、(12)式により位相差を演算し直すことで指令値通りの電力融通を行うことができ、応答時間を短縮できる。
【0129】
[実施形態4]
実施形態4,5では、Vdc1とVdc2の大小関係の制約はない。
【0130】
図4に本実施形態4の制御部のブロック図を示す。本実施形態4は、
図1に示す実施形態1の制御部から第1演算部5を除去した一般的なDABの制御部に第3演算部15を追加する。
【0131】
実施形態3ではW1’を補正第1パルス幅指令値と定義してしたが、本実施形態4ではW1’を第1パルス幅指令値と定義する。また、第1パルス幅指令値W1’は、例えば0.7~0.95程度の1に近い固定値とする。または、融通電力指令値P*が零に近いときは小さく、融通電力指令値P*が零から離れるほど大きくなる上限を0.7~0.95程度とした可変値としてもよい。また、第2パルス幅指令値W2に等しくしてもよい。
【0132】
第3演算部15は、第1パルス幅指令値W1’,パルス幅指令値W2,融通電力指令値P*,1次側直流電圧検出信号Vdc1,2次側直流電圧検出信号Vdc2から(12)式に基づいて各インバータ出力電圧の第3位相差θbを求める。ただし、(12)式においてW1’=W2とする。
【0133】
実施形態1~3ではVdc1≧Vdc2を想定した。Vdc1<Vdc2となった場合でも、直流電圧の大きい方を1次側、小さい方を2次側と見なして(8)式,(10)式~(12)式に入力する1次側直流電圧検出信号Vdc1と2次側直流電圧検出信号Vdc2を入れ替え、ゲート信号生成部8,9に入力する第1パルス幅指令値W1(実施形態3では補正第1パルス幅指令値W1’),第2パルス幅指令値W2を入れ替えればDABを動作させることができる。
【0134】
本実施形態4では、常に1次側直流電圧検出信号Vdc1と2次側直流電圧検出信号Vdc2がだいたい等しくなる条件への適用を想定し、切り替えを不要とした方式である。
【0135】
実施形態3ならば第1パルス幅指令値W1に上限が設定され補正第1パルス幅指令値W1’が求められるが、その上限の設計値が第2パルス幅指令値W2に等しければW1’≒W2となる。(11)式より、Vdc1≒Vdc2においてθa≒0ならばW1≒W2,第2位相差θaの絶対値が大きければ第1パルス幅指令値W1は増加し1に近づく。
【0136】
そこで、本実施形態4ではそれぞれの第1パルス幅指令値W1’,第2パルス幅指令値W2をあらかじめ定めた値とする。第1パルス幅指令値W1’は第2パルス幅指令値W2と同じ方法で設定する。すなわち、0.7~0.95程度の1に近い固定値、または融通電力指令値P*が零に近いときは小さく融通電力指令値P*が零から離れるほど大きくなる上限を0.7~0.95程度とした可変値としてもよい。W1’=W2としてもよい。
【0137】
この条件においても、電力融通に必要な第3位相差θbは(12)式により求めることができ、応答時間を短縮することができる。W1’=W2とすれば直流電圧の大きい方のインバータが遅れ無効電力を多く分担するため(直流電圧が小さい方のインバータがトランスに供給される無効電力を分担する割合を半分以下にするため)、リアクトル電流の基本波成分は最小とはならないが最小に近づけることができる。
【0138】
以上示したように、本実施形態4によれば、両方の直流電圧がだいたい等しい場合において、両方のインバータ出力電圧のパルス幅を小さくすることで高周波トランスやリアクトルの鉄損やノイズを抑えることができる。
【0139】
また、直流電圧の大小関係によって演算式やゲート信号生成部8,9に入力する信号を切り替える必要がなくなるため、動作が安定しやすくなり、高周波トランスの磁気飽和の恐れを低減することができる。
【0140】
また、両方のインバータが遅れ力率で運転するため、ソフトスイッチングに成功しやすくなりスイッチング損失を低減できる。
【0141】
また、直流電圧の大きい方のインバータが遅れ無効電力を多く分担するため、リアクトル電流も最小とはならないが低減でき、銅損・導通損失を抑制できる。
【0142】
[実施形態5]
図5に本実施形態5の制御部のブロック図を示す。本実施形態5は、実施形態3の制御部に対して、比較器17と、スイッチ18a,18bと、減算器19と、絶対値演算器20と、比較器21と、スイッチ22と、スイッチ23a,23bと、を追加する。
【0143】
比較器17は、1次側直流電圧検出信号Vdc1と2次側直流電圧検出信号Vdc2の大小関係を出力する。スイッチ18a,18bは、Vdc1>Vdc2ならば(10)式,(11)式,(12)式に代入する1次側直流電圧検出信号Vdc1と2次側直流電圧検出信号Vdc2をそのままとし、Vdc1<Vdc2ならば(10)式(11)式,(12)式に代入する1次側直流電圧検出信号Vdc1と2次側直流電圧検出信号Vdc2を入れ替える。
【0144】
減算器19は、1次側直流電圧検出信号Vdc1と2次側直流電圧検出信号Vdc2の差を求める。絶対値演算器20は、差の絶対値を求める。比較器21は、絶対値と閾値Vthとの大小関係を求める。この閾値Vthは、前回の比較結果に応じて値を変化させるヒステリシス特性を持たせてもよい。
【0145】
スイッチ22は、絶対値|Vdc1-Vdc2|が閾値Vthよりも大きければ、補正第1パルス幅指令値W1’を出力し、絶対値|Vdc1-Vdc2|が閾値Vth以下であれば、第2パルス幅指令値W2を出力する。
【0146】
第3演算部15は、絶対値|Vdc1-Vdc2|が閾値Vthよりも大きければ、補正第1パルス幅指令値W1’をそのまま(12)式に代入し、絶対値|Vdc1-Vdc2|が閾値Vth以下であれば、(12)式において補正第1パルス幅指令値W1’の代わりに第2パルス幅指令値W2を代入して第3位相差θbを算出する。
【0147】
スイッチ23a,23bは、Vdc1>Vdc2ならばゲート信号生成部8,9に入力する補正第1パルス幅指令値W1’,第2パルス幅指令値W2をそのままとし、Vdc1<Vdc2ならばゲート信号生成部8,9に入力する補正第1パルス幅指令値W1’,第2パルス幅指令値W2を入れ替える。
【0148】
本実施形態5は、Vdc1≒Vdc2の場合は実施形態4で運転し、1次側直流電圧検出信号Vdc1と2次側直流電圧検出信号Vdc2の差が閾値Vthを超えているときは実施形態3で運転する。また、本実施形態5ではVdc1<Vdc2でも実施形態3を用いて運転できるようにした。
【0149】
すなわち、Vdc1<Vdc2においては(10)式~(12)式に入力する1次側直流電圧検出信号Vdc1と2次側直流電圧検出信号Vdc2を入れ替え、ゲート信号生成部8,9に入力する補正第1パルス幅指令値W1’,第2パルス幅指令値W2を入れ替える機能を持たせている。
【0150】
このため、本実施形態5は直流電圧の大小関係の制限を受けずに適用することができる。ただし、Vdc1≒Vdc2では簡略化して両方の出力電圧パルス幅を等しく第2パルス幅指令値W2にした。運転モードを切り替えるための閾値Vthは、切り替え頻度を下げるため前回の比較結果に応じて値を変化させるヒステリシス特性を持たせてもよい。
【0151】
以上示したように、本実施形態5によれば、直流電圧の差が大きいときは実施形態3の、小さいときは実施形態4の効果を得られる。また、直流電圧の大小関係が反転しても適用することができる。
【0152】
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変形および修正が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変形および修正が特許請求の範囲に属することは当然のことである。
【符号の説明】
【0153】
1,6,7…乗算器
2…ローパスフィルタ
3,13,19…減算器
4…アンプ
5…第1演算部
8,9…ゲート信号生成部
10…フィードバック制御部
11…第2演算部
12…加算器
14…リミッタ
15…第3演算器
16…パルス幅指令補正部
17,21…比較器
18a,18b,22,23a,23…スイッチ
20…絶対値演算器