(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】キャビネットおよびトイレ装置
(51)【国際特許分類】
A47K 17/00 20060101AFI20240625BHJP
E03D 11/00 20060101ALI20240625BHJP
A47B 81/00 20060101ALI20240625BHJP
E03D 11/14 20060101ALN20240625BHJP
【FI】
A47K17/00
E03D11/00 A
A47B81/00 K
E03D11/14
(21)【出願番号】P 2020155827
(22)【出願日】2020-09-16
【審査請求日】2023-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】執行 佳史
(72)【発明者】
【氏名】占部 正和
(72)【発明者】
【氏名】向坊 裕樹
【審査官】村川 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-058576(JP,A)
【文献】実開平01-156284(JP,U)
【文献】特開2003-325383(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02238883(EP,A1)
【文献】中国実用新案第202730920(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 17/00
E03D 11/00
A47B 81/00
E03D 11/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トイレ室に配置されるキャビネットであって、
前記トイレ室の壁面に固定される固定部と、
前記固定部に取り付けられる前面パネルと、
前記前面パネルを前記トイレ室の床面から支持するとともに、前記床面に対する前記前面パネルの上下方向の位置を調整可能な支持手段と
を備え
、
前記支持手段は、前記床面に固定される、キャビネット。
【請求項2】
前記支持手段は、
前記床面および前記前面パネルの一方に設けられる挿通部材と、
前記床面および前記前面パネルの他方に設けられ、前記挿通部材と係合する被挿通部材と
を備え、
前記挿通部材は、前記被挿通部材と係合した状態で前記被挿通部材に対して上下方向に移動可能である、請求項1に記載のキャビネット。
【請求項3】
前記挿通部材は、前記被挿通部材と係合した状態で前記被挿通部材に対して左右方向に移動可能である、請求項2に記載のキャビネット。
【請求項4】
トイレ室に配置されるキャビネットであって、
前記トイレ室の壁面に固定される固定部と、
前記固定部に取り付けられる前面パネルと、
前記前面パネルを前記トイレ室の床面から支持するとともに、前記床面に対する前記前面パネルの上下方向の位置を調整可能な支持手段と
を備え
、
前記支持手段は、
前記床面および前記前面パネルの一方に設けられる挿通部材と、
前記床面および前記前面パネルの他方に設けられ、前記挿通部材と係合する被挿通部材と
を備え、
前記挿通部材は、前記被挿通部材と係合した状態で前記被挿通部材に対して上下方向に移動可能であり、
前記挿通部材は、前記被挿通部材と係合した状態で前記被挿通部材に対して左右方向に移動可能である、キャビネット。
【請求項5】
前記前面パネルに隣接する側面パネルをさらに備え、
前記側面パネルは、前記支持手段が備える前記挿通部材および前記被挿通部材のうち前記前面パネルに設けられる部材と係合することによって前記支持手段に支持される、請求項
2~4のいずれか一つに記載のキャビネット。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか一つに記載のキャビネットと、
前記キャビネットに支持される便器本体と
を備える、トイレ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、キャビネットおよびトイレ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トイレ室に設置されて各種の物品を収容するキャビネットが知られている。たとえば、特許文献1には、大便器の後方に配置されて、大便器に供給される洗浄水を貯留するタンクを隠蔽するキャビネットが開示されている。
【0003】
また、キャビネットの前面パネルをキャビネットのフレームに固定する技術が知られている(特許文献2参照)。このような前面パネルは、たとえば浸水を防止したり、床面の凹凸や傾斜等に対応したりするために、前面パネルを床面からある程度浮かせた状態でフレームに取り付ける必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-325383号公報
【文献】特開2019-058576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前面パネルを床面から浮かせて取り付けた場合、前面パネルの下部が前後方向に傾くおそれがある。そこで、たとえば床面に固定部材を取り付けて、かかる固定部材に前面パネルの下部を固定することで前面パネルの前後の傾きを抑えることが考えられる。しかしながら、床面に凹凸や傾斜等があると、固定部材と前面パネルとの上下方向の位置関係がずれてしまい、前面パネルを適切に固定することができなくなるおそれがある。
【0006】
これを解決するために、たとえば固定部材と床面との間にスペーサーを設けることも考えられるが、現場ごとの調整作業が発生することとなり、施工性が低下するため望ましくない。また、スペーサー等の別部材が必要となることで、部品点数の増加によるコストの増加も懸念される。
【0007】
実施形態の一態様は、上記に鑑みてなされたものであって、床面に凹凸や傾斜等がある場合であっても、床面から浮かせた状態の前面パネルを適切に支持することができるキャビネットおよびトイレ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の一態様に係るキャビネットは、トイレ室に配置されるキャビネットであって、前記トイレ室の壁面に固定される固定部と、前記固定部に取り付けられる前面パネルと、前記前面パネルを前記トイレ室の床面から支持するとともに、前記床面に対する前記前面パネルの上下方向の位置を調整可能な支持手段とを備える。
【0009】
前面パネルを支持しつつ、前面パネルの上下方向の位置を調整できるため、床面に凹凸や傾斜等がある場合であっても、スペーサー等の別部材を用いることなく、床面から浮かせた状態の前面パネルを適切に支持することができる。したがって、コストを抑えつつ前面パネルを施工することができる。
【0010】
また、上記キャビネットにおいて、前記支持手段は、前記床面および前記前面パネルの一方に設けられる挿通部材と、前記床面および前記前面パネルの他方に設けられ、前記挿通部材と係合する被挿通部材とを備え、前記挿通部材は、前記被挿通部材と係合した状態で前記被挿通部材に対して上下方向に移動可能である。
【0011】
かかる構成によれば、比較的簡易な構成で、前面パネルと床面との上下方向の位置ずれを吸収することができる。
【0012】
また、上記キャビネットにおいて、前記挿通部材は、前記被挿通部材と係合した状態で前記被挿通部材に対して左右方向に移動可能である。
【0013】
かかる構成によれば、寸法誤差等によって前面パネルが左右方向にずれた場合でも、かかる左右方向のずれを支持手段によって吸収することができる。
【0014】
また、上記キャビネットは、前記前面パネルに隣接する側面パネルをさらに備え、前記側面パネルは、前記支持手段が備える前記挿通部材および前記被挿通部材のうち前記前面パネルに設けられる部材と係合することによって前記支持手段に支持される。
【0015】
かかる構成によれば、部品点数を削減しつつ、側面パネルを支持することができる。また、前面パネルの位置が変わった場合でも前面パネルと側面パネルとの間に隙間が生じることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
実施形態の一態様によれば、床面に凹凸や傾斜等がある場合であっても、床面から浮かせた状態の前面パネルを適切に支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、実施形態に係るトイレ装置の斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るトイレ装置の側面図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るキャビネットの斜視図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る第1フレームを正面側から見た斜視図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る第1フレームを背面側から見た斜視図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る第2フレームを正面側から見た斜視図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る第2フレームを背面側から見た斜視図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係るフレームの施工手順を説明するための図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係る第1支持部周辺の斜視図である。
【
図10】
図10は、実施形態に係る第1支持部周辺の背面図である。
【
図11】
図11は、実施形態に係る下部側面パネルを背面側から見た斜視図である。
【
図12】
図12は、実施形態に係る第2支持部周辺の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本願の開示するキャビネットおよびトイレ装置の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0019】
<トイレ装置の全体構成>
まず、
図1を参照して実施形態に係るトイレ装置の構成について
図1および
図2を参照して説明する。
図1は、実施形態に係るトイレ装置の斜視図である。また、
図2は、実施形態に係るトイレ装置の側面図である。
図1では、
図2に示す衛生洗浄装置が省略されている。
【0020】
なお、
図1には、説明を分かりやすくするために、鉛直上向きを正方向とするZ軸を含む3次元の直交座標系が図示されている。かかる直交座標系は、他の図においても図示される場合がある。また、かかる直交座標系は、X軸正方向をトイレ装置の前方と規定し、Z軸正方向をトレイ装置の上方と規定している。言い換えれば、本明細書では、便蓋を背にして便座に着座した使用者からみた上方、下方、前方、後方、右側方、及び左側方を、それぞれ「上方」、「下方」、「前方」、「後方」、「右側方」、及び「左側方」と規定している。
【0021】
図1および
図2に示すように、実施形態に係るトイレ装置1は、便器本体2と、衛生洗浄装置3と、キャビネット4とを備える。便器本体2、衛生洗浄装置3およびキャビネット4は、トイレ室に設置される。
【0022】
(便器本体2について)
便器本体2は、壁掛式の洋式大便器である。便器本体2は、キャビネット4の内部に収容された後述するフレーム20(
図2参照)に支持される。これにより、便器本体2は、トイレ室の床面F(
図2参照)から浮いた状態となっている。
【0023】
便器本体2は、たとえば、汚物を受けるボウル部、ボウル部の後方(上流側)に形成される導水路とボウル部の下部と連通するトラップ管路等を備える。ボウル部の上縁には、リムが形成され、リムの後方側には、導水路から供給される洗浄水を吐水するリム吐水口が形成される。リム吐水口から吐水された洗浄水は、旋回しながら下降してボウル部を洗浄する。
【0024】
便器本体2は、たとえば陶器製である。なお、便器本体2は、樹脂製であってもよいし、陶器および樹脂の組み合わせにより形成されてもよい。
【0025】
(衛生洗浄装置3について)
衛生洗浄装置3は、便器本体2の上面に設置されるケーシングと、ケーシングに対して回動可能に支持された便座および便蓋を備える。ケーシングの内部には、たとえば、便座に座った使用者の人体局部(「おしり」など)の洗浄を実現する身体洗浄機能部などが内蔵されている。たとえば、ケーシングの内部には、洗浄ノズルや、洗浄ノズルの動作を制御する制御回路などが設けられる。洗浄ノズルは、使用者が便座に座っているときに、ケーシングの内部から前方へ進出した状態で、使用者の局部に向けて洗浄水を吐出する。また、ケーシングには、便座に座った使用者の「おしり」などに向けて温風を吹き付けて乾燥させる「温風乾燥機能」や「脱臭ユニット」や「室内暖房ユニット」などの各種の機器が適宜設けられていてもよい。
【0026】
(キャビネット4について)
キャビネット4は、キャビネット本体10と、フレーム20と、タンク30とを備える。また、ここでは図示を省略するが、キャビネット4は、タンク30に対して洗浄水を供給する給水装置、タンク30の底面に設けられた排水弁を駆動させる排水弁装置等を備えていてもよい。また、キャビネット4は、トイレ室内の人体を検知するための電波センサや、電波センサの検知結果に基づいてトイレ室を照明する照明部等を備えていてもよい。
【0027】
キャビネット本体10は、便器本体2の後方に配置される。具体的には、キャビネット本体10は、便器本体2の後方に位置するトイレ室の壁面Wに寄せて配置される。
【0028】
キャビネット本体10は、たとえば直方体状の箱体であり、物品(後述するフレーム20、タンク30等)を収容可能な空間を内部に有する。
図1では、キャビネット本体10の左右幅が便器本体2の左右幅と同程度である場合の例を示しているが、キャビネット本体10の左右幅は、たとえば、トイレ室の壁面Wの左右幅と同程度であってもよい。
【0029】
キャビネット本体10は、前面パネル11と、左右一対の側面パネル12,12と、上面パネル13とを備える。前面パネル11は、キャビネット本体10の前面を構成する板状の部材である。前面パネル11は、トイレ室の床面Fに対して略垂直かつトイレ室の壁面Wに対して略平行に設けられる。側面パネル12は、キャビネット本体10の側面を構成する板状の部材である。側面パネル12は、トイレ室の床面Fおよび壁面Wに対して略垂直に設けられる。上面パネル13は、キャビネット本体10の上面を構成する板状の部材である。上面パネル13は、トイレ室の床面Fに対して略平行かつトイレ室の壁面Wに対して略垂直に設けられる。
【0030】
これら前面パネル11、側面パネル12,12および上面パネル13とトイレ室の壁面Wとによって、キャビネット本体10の内部空間が形成される。前面パネル11および側面パネル12,12は、後述するフレーム20に固定される。
【0031】
前面パネル11は、上部前面パネル111と、下部前面パネル112とを備える。上部前面パネル111と下部前面パネル112とは、分離可能に構成される。下部前面パネル112には、タンク30に貯留された洗浄水を便器本体2に供給するための給水管(図示せず)や、便器本体2から洗浄水を排出するための排水管(図示せず)を挿通させるための開口部が設けられており(
図3参照)、この開口部は、便器本体2によって塞がれている。このように、キャビネット本体10の前面は、上部前面パネル111、下部前面パネル112および便器本体2によって覆われている。
【0032】
また、側面パネル12は、上部側面パネル121と、下部側面パネル122とを備える。上部側面パネル121と下部側面パネル122とは、分離可能に構成される。下部側面パネル122は、キャビネット4の点検口を塞ぐパネルに相当する。すなわち、実施形態に係るキャビネット4は、下部側面パネル122を取り外すことにより、キャビネット本体10の内部にアクセスすることができる。
【0033】
図2に示すように、前面パネル11の下部前面パネル112および側面パネル12の下部側面パネル122は、たとえば浸水を防止したり、床面Fの凹凸や傾斜等に対応したりするために、床面Fから浮かせた状態でフレーム20に取り付けられている。
【0034】
ここで、下部前面パネル112を床面Fから浮かせて取り付けた場合、たとえば下部前面パネル112の上部のみをフレーム20に固定すると、下部前面パネル112の下部が前後方向に傾くおそれがある。このため、たとえば床面Fに固定部材を取り付けて、かかる固定部材に前面パネルの下部を固定することで下部前面パネル112の前後の傾きを抑制することが考えられる。しかしながら、床面Fに凹凸や傾斜等があると、固定部材と下部前面パネル112との上下方向の位置関係がずれてしまい、下部前面パネル112を適切に固定することができなくなるおそれがある。
【0035】
これを解決するために、たとえば固定部材と床面Fとの間にスペーサーを設けることも考えられるが、現場ごとの調整作業が発生することとなり、施工性が低下するため望ましくない。また、スペーサー等の別部材が必要となることで、部品点数の増加によるコストの増加も懸念される。
【0036】
そこで、実施形態に係るキャビネット4では、床面Fに対する下部前面パネル112の上下方向の位置を調整可能な支持手段を用いて、下部前面パネル112を床面Fから浮かせた状態で支持することとした。この点については後述する。
【0037】
フレーム20は、キャビネット本体10の内部に収容される。フレーム20は、トイレ室の壁面Wに接するように配置された状態で、トイレ室の床面Fおよび壁面Wに固定される。フレーム20は、便器本体2をトイレ室の床面Fから離隔させた状態で支持する。また、フレーム20には、上述したキャビネット本体10の前面パネル11および側面パネル12,12が固定される。すなわち、フレーム20は、キャビネット本体10をトイレ室の床面Fおよび壁面Wに固定するためのフレームでもある。フレーム20の具体的な構成については後述する。
【0038】
タンク30は、キャビネット本体10の内部に収容される。タンク30は、外部の給水源(図示せず)に接続され、給水源から供給される洗浄水を貯留する。タンク30の下部には、給水管(図示せず)が接続されており、タンク30に貯留された洗浄水は、給水管を介して便器本体2に供給される。タンク30の内部には、給水源からの水をタンク30に供給する給水装置、および、給水管に連通するタンク30の排水口を開閉する排水弁装置などが設けられている。これら給水装置および排水弁装置による洗浄動作(給排水動作)は、トイレ室に設置された操作部(図示せず)に対するボタン操作によって開始される。なお、タンク30は、便器本体2よりも上方に配置される。
【0039】
(フレーム20および支持手段の構成について)
次に、上述したフレーム20および支持手段の構成について説明する。まず、
図3~
図8を参照してフレーム20の構成について説明する。
図3は、実施形態に係るキャビネット4の斜視図である。
図3では、フレーム20の構造がわかるように、上部前面パネル111、下部側面パネル122、上面パネル13およびタンク30等を適宜省略して示している。
【0040】
また、
図4は、実施形態に係る第1フレームを正面側から見た斜視図であり、
図5は、実施形態に係る第1フレームを背面側から見た斜視図である。また、
図6は、実施形態に係る第2フレームを正面側から見た斜視図であり、
図7は、実施形態に係る第2フレームを背面側から見た斜視図である。また、
図8は、実施形態に係るフレーム20の施工手順を説明するための図である。
【0041】
図3~
図6に示すように、フレーム20は、第1フレーム21と、第2フレーム22とを備える。第1フレーム21は、トイレ室の床面Fおよび壁面Wに固定され、便器本体2を支持する。第2フレーム22は、第1フレーム21上に載置された状態でトイレ室の壁面Wに固定され、前面パネル11および側面パネル12,12を支持する。
【0042】
図3、
図4および
図5に示すように、第1フレーム21は、左右一対の第1支柱部材211,211と、左右一対の第2支柱部材212,212と、左右一対の第3支柱部材213,213とを備える。
【0043】
左右一対の第1支柱部材211,211は、左右方向に間隔をあけて床面Fに立設される。具体的には、左右一対の第1支柱部材211,211は、後述する3つの第1梁部材214,214,214のうち最下部の第1梁部材214を介して床面Fに立設される。第1支柱部材211,211は、壁面Wに接している。
【0044】
左右一対の第2支柱部材212,212は、左右方向に間隔をあけて床面Fに立設される。具体的には、左右一対の第2支柱部材212,212は、後述する左右一対の第3梁部材216,216を介して床面Fに立設される。各第2支柱部材212は、第1支柱部材211の前方に第1支柱部材211と間隔をあけて配置される。各第2支柱部材212には、便器本体2を固定するための固定穴212aが設けられる。なお、第1支柱部材211および第2支柱部材212の長さは、略同一である。
【0045】
左右一対の第3支柱部材213,213は、左右一対の第1支柱部材211,211に取り付けられ、第1支柱部材211,211よりも上方に延在する。
【0046】
また、第1フレーム21は、複数(ここでは、3つ)の第1梁部材214,214,214と、左右一対の第2梁部材215,215と、左右一対の第3梁部材216,216と、第4梁部材217とを備える。
【0047】
複数の第1梁部材214,214,214は、上下方向に互いに間隔をあけて配置され、左右一対の第1支柱部材211,211同士または左右一対の第3支柱部材213,213同士を連結する。具体的には、複数の第1梁部材214,214,214のうち最上部の第1梁部材214および中央の第1梁部材214は、左右一対の第3支柱部材213,213同士を連結し、最下部の第1梁部材214は、左右一対の第1支柱部材211,211同士を連結する。
【0048】
複数の第1梁部材214,214,214のうち最上部の第1梁部材214および左右一対の第3支柱部材213,213には、第1フレーム21を壁面Wに固定するための複数の固定穴214aが設けられている。また、複数の第1梁部材214,214,214のうち最下部の第1梁部材214は床面Fに設置されており、第1フレーム21を床面Fに固定するための複数の固定穴214bが設けられている。
【0049】
左右一対の第2梁部材215,215は、第1支柱部材211の上部と、この第1支柱部材211の前方に配置された第2支柱部材212の上部とを連結する。なお、左右一対の第2梁部材215,215は、複数の第1梁部材214,214,214のうち中央の第1梁部材214にも連結されている。左右一対の第3梁部材216,216は、第1支柱部材211の下部と、この第1支柱部材211の前方に配置された第2支柱部材212の下部とを連結する。左右一対の第3梁部材216,216は、床面Fに設置される。第4梁部材217は、左右一対の第2支柱部材212,212同士を連結する。
【0050】
つづいて第2フレーム22の構成について説明する。
図3、
図6および
図7に示すように、第2フレーム22は、複数(ここでは、2つ)の第1連結部材221,222と、左右一対の第2連結部材223,223とを備える。
【0051】
第1連結部材221,222は、左右一対の上部側面パネル121同士を連結する。2つの第1連結部材221,222のうち後方に配置される第1連結部材221は、壁面Wに接している。第1連結部材221には、第2フレーム22を壁面Wに取り付けるための複数の固定穴221aが設けられている。また、2つの第1連結部材221,222のうち前方に配置される第1連結部材222には、上部前面パネル111(
図1参照)を第2フレーム22に取り付けるための複数の固定穴222aが設けられている。
【0052】
左右一対の第2連結部材223,223は、上部側面パネル121と下部前面パネル112とを連結する。具体的には、左右一対の第2連結部材223,223のうち一方は、左右一対の下部前面パネル112,112のうち一方と下部前面パネル112とを連結する。同様に、左右一対の第2連結部材223,223のうち他方は、左右一対の下部前面パネル112,112のうち他方と下部前面パネル112とを連結する。
【0053】
また、左右一対の第2連結部材223,223は、左右一対の下部前面パネル112,112と上部前面パネル111(
図1参照)とを連結する。すなわち、左右一対の第2連結部材223,223は、左右一対の上部側面パネル121,121、上部前面パネル111および下部前面パネル112を一体的に連結する。
【0054】
このように、下部前面パネル112は、第1連結部材221,222ならびに第2連結部材223,223(すなわち、第2フレーム22)および左右一対の上部側面パネル121,121を介して壁面Wに固定される。
【0055】
次に、フレーム20の施工手順について説明する。
図8に示すように、まず、第1フレーム21をトイレ室の壁面Wおよび床面Fに固定する。具体的には、最上部の第1梁部材214に設けられた複数の固定穴214aにネジ(図示せず)を挿通させることにより、第1フレーム21を壁面Wに固定する。また、最下部の第1梁部材214に設けられた複数の固定穴214bにネジ(図示せず)を挿通させることにより、第1フレーム21を床面Fに固定する。
【0056】
つづいて、第2フレーム22を第1フレーム21上に設置する。具体的には、第2フレーム22の第1連結部材221を、第1フレーム21が備える最上部の第1梁部材214の上に載置する。
【0057】
つづいて、第2フレーム22をトイレ室の壁面Wに固定する。具体的には、第1連結部材221に設けられた複数の固定穴221aにネジ(図示せず)を挿通させることにより、第2フレーム22を壁面Wに固定する。その後、第2フレーム22に上部前面パネル111、左右一対の下部側面パネル122,122が取り付けられ、上部前面パネル111および左右一対の下部側面パネル122,122上に上面パネル13が取り付けられる。
【0058】
ここで、上述したように、下部前面パネル112は、左右一対の第2連結部材223,223に上部が固定されるが、下部前面パネル112の上部のみを固定すると、下部前面パネル112の下部が前後方向に傾くおそれがある。床面Fに固定部材を取り付け、かかる固定部材に下部前面パネル112の下部を固定することも考えられるが、床面Fに凹凸や傾斜等があると、下部前面パネル112と固定部材との上下方向の位置関係がずれてしまい、下部前面パネル112を適切に固定することができなくなるおそれがある。
【0059】
これに対し、実施形態に係るキャビネット4は、
図3に示すように、左右一対の第1支持部50を備える。第1支持部50は、床面Fに対する下部前面パネル112の上下方向の位置を調整可能な支持手段の一例である。
【0060】
(第1支持部50について)
以下、第1支持部50の構成について
図3、
図9および
図10を参照して説明する。
図9は、実施形態に係る第1支持部50周辺の斜視図である。また、
図10は、実施形態に係る第1支持部50周辺の背面図である。
【0061】
図3に示すように、実施形態に係る第1支持部50は、下部前面パネル112の下部の左右2箇所の角部にそれぞれ設けられる。
【0062】
図9および
図10に示すように、第1支持部50は、挿通部材51と被挿通部材52とを備える。実施形態において、挿通部材51は、床面Fに設けられ、被挿通部材52は、下部前面パネル112に設けられる。なお、これに限らず、床面Fに被挿通部材52が設けられ、下部前面パネル112に挿通部材51が設けられてもよい。
【0063】
挿通部材51は、たとえばL字金具であり、床面Fに対して水平に設けられる固定部位511と、下部前面パネル112に対して水平に設けられる挿通部位512とを有する。固定部位511は床面Fに当接し、挿通部位512は下部前面パネル112の裏面に当接する。固定部位511には、複数の固定穴511aが設けられており、かかる固定穴511aにネジが挿通されることにより、挿通部材51は床面Fに固定される。固定部位511に設けられる固定穴511aの数は図示の例に限定されない。
【0064】
被挿通部材52は、たとえば板バネであり、下部前面パネル112の裏面に固定される固定部位521と、固定部位521から下部前面パネル112の外方(
図9に示す例では、Y軸正方向)に向かって延在する被挿通部位522とを有する。被挿通部材52は、弾性を有しており、被挿通部位522と下部前面パネル112の裏面との間で部材を挟み込むことができる。また、被挿通部材52は、被挿通部位522から見て固定部位521が設けられる方向以外の方向から、被挿通部位522と下部前面パネル112の裏面との間に部材を挿通させることができる。具体的には、被挿通部位522は、下方または上方方向から挿通部材51を挿通させることが可能である。また、被挿通部位522は、下部前面パネル112の外方から挿通部材51を挿通させることも可能である。
【0065】
第1支持部50は、挿通部材51の挿通部位512を下部前面パネル112の裏面に当接させることにより、下部前面パネル112の下部が後方に傾くことを抑制することができる。また、第1支持部50は、挿通部材51の挿通部位512を被挿通部材52の被挿通部位522と下部前面パネル112の裏面との間で挟み込むことにより、下部前面パネル112の下部が前方に傾くことを抑制することができる。
【0066】
さらに、第1支持部50は、挿通部材51における挿通部位512の上辺512aの高さ位置が、被挿通部材52における被挿通部位522の下辺522aよりも高く、被挿通部位522の上辺522bよりも低い範囲において、下部前面パネル112の下部が前方に傾くことを抑制することができる。すなわち、第1支持部50は、床面Fの凹凸や傾斜等による挿通部材51と被挿通部材52との上下方向の位置ずれ、言い換えれば、床面Fと下部前面パネル112との上下方向の位置ずれを上記範囲(すなわち、被挿通部位522の上下幅に相当する範囲)において許容することができる。
【0067】
また、第1支持部50は、被挿通部材52における被挿通部位522の左辺522cから右辺522dまでの範囲において、被挿通部材52と挿通部材51との左右方向の位置ずれ、言い換えれば、下部前面パネル112の左右方向の位置ずれを上記範囲(すなわち、被挿通部位522の左右幅)において許容することができる。
【0068】
このように、実施形態にかかるキャビネット4は、下部前面パネル112をトイレ室の床面Fから支持するとともに、床面Fに対する下部前面パネル112の上下方向の位置を調整可能な第1支持部50を備える。これにより、床面Fに凹凸や傾斜等がある場合であっても、スペーサー等の別部材を用いることなく、床面Fから浮かせた状態の下部前面パネル112を適切に支持することができる。したがって、コストを抑えつつ下部前面パネル112を施工することができる。
【0069】
また、第1支持部50は、床面Fおよび下部前面パネル112の一方に設けられる挿通部材51と、床面Fおよび下部前面パネル112の他方に設けられ、挿通部材51と係合する被挿通部材52とを備える。そして、挿通部材51は、被挿通部材52と係合した状態で被挿通部材52に対して上下方向に移動可能である。かかる構成とすることにより、比較的簡易な構成で、下部前面パネル112と床面Fとの上下方向の位置ずれを吸収することができる。
【0070】
また、挿通部材51は、被挿通部材52と係合した状態で被挿通部材52に対して左右方向に移動可能である。したがって、たとえば寸法誤差等によって下部前面パネル112が左右方向にずれた場合でも、かかる左右方向のずれを第1支持部50によって吸収することができる。
【0071】
(下部側面パネル122の支持構造について)
次に、下部側面パネル122の支持構造について
図11および
図12を参照して説明する。
図11は、実施形態に係る下部側面パネル122を背面側から見た斜視図である。また、
図12は、実施形態に係る第2支持部周辺の拡大斜視図である。
【0072】
図11に示すように、実施形態に係るキャビネット4は、第2支持部60と、第3支持部80とを備える。
【0073】
第2支持部60は、当接部材61,62と、挿通部材63と、被挿通部材64とを備える。当接部材61は、たとえば上下方向に延在する板状の金具であり、上部側面パネル121の裏面下部に一端が固定されており、他端側において下部側面パネル122の裏面上部に当接する。当接部材62は、たとえば上下方向に延在する板状の金具であり、下部側面パネル122の裏面上部に一端が固定されており、他端側において上部側面パネル121の裏面下部に当接する。
【0074】
挿通部材63は、たとえば挿通部材51と同様のL字金具である。挿通部材63は、下部側面パネル122の裏面上部に固定されるとともに、下部前面パネル112の裏面に当接する。被挿通部材64は、被挿通部材52と同様たとえば板バネ等の弾性部材である。被挿通部材64は、被挿通部材52と同様の向きで下部前面パネル112の裏面に固定されており、下部前面パネル112の裏面との間で挿通部材63を挟み込むことができる。
【0075】
第2支持部60は、上記のように構成されており、被挿通部材64と下部前面パネル112の裏面との間に挿通部材63を挟み込むことで、下部側面パネル122を床面Fから浮かせた状態で支持することができる。また、第2支持部60は、上部側面パネル121に設けられた当接部材61が下部側面パネル122の裏面上部に当接することで、下部側面パネル122の上部がキャビネット本体10の内方(
図11に示す例では、Y軸正方向)に傾くことを抑制することができる。また、第2支持部60は、下部側面パネル122に設けられた当接部材62が上部側面パネル121の裏面下部に当接することで、下部側面パネル122の上部がキャビネット本体10の外方(
図11に示す例では、Y軸負方向)に傾くことを抑制することができる。
【0076】
なお、下部側面パネル122は、第2連結部材223にも当接している。これにより、第2連結部材223は、下部側面パネル122の上部がキャビネット本体10の内方に傾くことを抑制することができる。
【0077】
第3支持部80は、挿通部材81と、被挿通部材52とを備える。被挿通部材52は、第1支持部50が備える被挿通部材52と同一の部材である。すなわち、第3支持部80は、第1支持部50と被挿通部材52を共有している。
【0078】
挿通部材81は、たとえば挿通部材51と同様のL字金具である。具体的には、
図12に示すように、挿通部材81は、下部側面パネル122の裏面に対して水平に設けられる固定部位811と、下部前面パネル112の裏面に対して水平に設けられる挿通部位812とを有する。固定部位811は下部側面パネル122の裏面に接し、挿通部位812は下部前面パネル112の裏面に当接する。
【0079】
かかる第3支持部80は、挿通部材81の挿通部位812を被挿通部材52の被挿通部位522と下部前面パネル112の裏面との間で挟み込むことにより、下部側面パネル122の下部が左右方向に傾くことを抑制することができる。
【0080】
このように、実施形態に係るキャビネット4は、下部前面パネル112に隣接する下部側面パネル122をさらに備え、下部側面パネル122は、第1支持部50が備える挿通部材51および被挿通部材52のうち下部前面パネル112に設けられる部材(ここでは、被挿通部材52)と係合することによって第1支持部50に支持される。
【0081】
かかる構成によれば、部品点数を削減しつつ、下部側面パネル122を支持することができる。また、下部前面パネル112の位置が変わった場合でも下部前面パネル112と下部側面パネル122との間に隙間が生じることを抑制することができる。
【0082】
上述してきたように、実施形態に係るキャビネット(一例として、キャビネット4)は、トイレ室に配置されるキャビネットであって、固定部(一例として、フレーム20)と、前面パネル(一例として、下部前面パネル112)と、支持手段(一例として、第1支持部50)とを備える。固定部は、トイレ室の壁面(一例として、壁面W)に固定される。前面パネルは、固定部に取り付けられる。支持手段は、前面パネルをトイレ室の床面(一例として、床面F)から支持するとともに、床面に対する前面パネルの上下方向の位置を調整可能である。
【0083】
したがって、実施形態に係るキャビネットによれば、床面に凹凸や傾斜等がある場合であっても、床面から浮かせた状態の前面パネルを適切に支持することができる。
【0084】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0085】
1 :トイレ装置
2 :便器本体
3 :衛生洗浄装置
4 :キャビネット
10 :キャビネット本体
11 :前面パネル
12 :側面パネル
13 :上面パネル
20 :フレーム
21 :第1フレーム
22 :第2フレーム
30 :タンク
50 :第1支持部
51 :挿通部材
52 :被挿通部材
60 :第2支持部
61 :当接部材
62 :当接部材
63 :挿通部材
64 :被挿通部材
80 :第3支持部
81 :挿通部材
111 :上部前面パネル
112 :下部前面パネル
121 :上部側面パネル
122 :下部側面パネル
211 :第1支柱部材
212 :第2支柱部材
213 :第3支柱部材
214 :第1梁部材
215 :第2梁部材
216 :第3梁部材
217 :第4梁部材
221 :第1連結部材
222 :第1連結部材
223 :第2連結部材
511 :固定部位
512 :挿通部位
521 :固定部位
522 :被挿通部位
811 :固定部位
812 :挿通部位
F :床面
W :壁面