(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】移動体の電源システム
(51)【国際特許分類】
B60R 16/02 20060101AFI20240625BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240625BHJP
H02H 7/18 20060101ALI20240625BHJP
B60R 16/023 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
B60R16/02 645A
H02J7/00 S
H02H7/18
B60R16/023 P
(21)【出願番号】P 2020158402
(22)【出願日】2020-09-23
【審査請求日】2023-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森本 康治
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 勉
(72)【発明者】
【氏名】吉武 慎介
(72)【発明者】
【氏名】岡野 俊一
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-220058(JP,A)
【文献】特開2017-136924(JP,A)
【文献】特開2020-108307(JP,A)
【文献】特開2019-209945(JP,A)
【文献】特開2001-298873(JP,A)
【文献】特開2016-201740(JP,A)
【文献】米国特許第9718420(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
H02J 7/00
H02H 7/18
B60R 16/023
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の電源システムであって、
バッテリと、
前記移動体が有するデバイスに制御信号を送信可能な複数のサブ演算装置と、
前記複数のサブ演算装置とそれぞれ通信接続され、該複数のサブ演算装置を統括制御する中央演算装置と、
前記バッテリ、少なくとも1つの前記サブ演算装置、及び前記中央演算装置にそれぞれ電気的に接続され、前記バッテリと前記少なくとも1つのサブ演算装置及び前記中央演算装置との間の電源経路を中継する中継装置と、を備え、
前記中継装置は、前記バッテリから前記少なくとも1つのサブ演算装置への電力供給のオン/オフをそれぞれ制御する複数のスイッチシステムを有し、
前記中央演算装置は、前記中継装置と通信可能であるとともに、前記各スイッチシステムのオン/オフを制御する制御信号を出力可能な通電制御部を有し、
前記バッテリは、第1バッテリと、該第1バッテリよりも高電圧な電力を供給可能な第2バッテリとを含み、
前記中継装置は、前記第1バッテリに接続されるヒューズボックスと、前記第2バッテリから供給される電力の電圧を前記第1バッテリの電圧に降圧するDCDCコンバータとを含み、
前記複数のサブ
演算装置のうち、複数の前記デバイスを制御するサブ
演算装置の前記スイッチシステムは、前記DCDCコンバータに配置されることを特徴とする移動体の電源システム。
【請求項2】
請求項1に記載の移動体の電源システムにおいて、
前記中央演算装置は、前記少なくとも1つのサブ演算装置から少なくとも通電状態に関する情報を取得するための通信部を内蔵することを特徴とする移動体の電源システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の移動体の電源システムにおいて、
前記通電制御部は、前記バッテリと前記サブ演算装置との間における通電異常があるときに、該通電異常が発生している前記サブ演算装置に対応する前記スイッチシステムをオフするように構成され、
さらに前記通電制御部は、前記中継装置に複数の前記サブ演算装置が接続されている場合において、一の前記サブ演算装置に対応する前記スイッチシステムをオフにするときに、当該一のサブ演算装置と関連する他の前記サブ演算装置に対応する前記スイッチシステムについてもオフにすべく、前記中継装置に制御信号を出力するように構成されていることを特徴とする移動体の電源システム。
【請求項4】
請求項3に記載の移動体の電源システムにおいて、
前記中央演算装置は、前記サブ演算装置の前記スイッチシステムをオフにしたときには、前記スイッチシステムをオフにした前記サブ演算装置が制御する前記デバイスを、当該サブ演算装置に代わり制御することを特徴とする移動体の電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、移動体の電源システムに関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車などの移動体には多数の電子機器が配置される。これに伴い、各電子機器への電源供給の構成が検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、異なるネットワークのECU(演算装置)同士の通信を中継するゲートウェイECUを設け、全てのネットワークがスリープ状態になってから最初に送信を開始する送信対象ECUが存在するネットワークだけをウェイクアップさせる車載通信システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、各演算装置は、制御対象であるデバイスと同様にバッテリから電力が供給されることで作動する。このため、演算装置にショートなどの通電異常が発生した場合には、バッテリからの電力が無駄に消費されることになる。このため、演算装置に通電異常が生じたときには、当該演算装置に対する電力供給を出来限り迅速に遮断することが好ましい。
【0006】
特許文献1では、ゲートウェイECUによって各演算装置のウェイクアップ状態を制御することで電力の消費を抑制が期待できる。しかし、各演算装置に対する通電異常が生じたときの各演算装置に対する制御については考慮されていない。このため、移動体の電動化が進む近年において、移動体における電費を向上させるという観点からは改良の余地がある。
【0007】
ここに開示された技術は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、演算装置に通電異常が生じたときに、該演算装置に対する電力供給を出来限り迅速に遮断して、移動体における電費を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、ここに開示された技術では、移動体の電源システムを対象として、バッテリと、前記移動体が有するデバイスに制御信号を送信可能な複数のサブ演算装置と、前記複数のサブ演算装置とそれぞれ通信接続され、該複数のサブ演算装置を統括制御する中央演算装置と、前記バッテリ、少なくとも1つの前記サブ演算装置、及び前記中央演算装置にそれぞれ電気的に接続され、前記バッテリと前記少なくとも1つのサブ演算装置及び前記中央演算装置との間の電源経路を中継する中継装置と、を備え、前記中継装置は、前記バッテリから前記サブ演算装置への電力供給のオン/オフをそれぞれ制御する複数のスイッチシステムを有し、前記中央演算装置は、前記中継装置と通信可能であるとともに、前記各スイッチシステムのオン/オフを制御する制御信号を出力可能な通電制御部を有する、という構成とした。
【0009】
この構成によると、中央演算装置は、各サブ演算装置と通信接続されているため、各サブ演算装置における通電状態に関する情報を取得することができる。また、中央演算装置は、中継装置における各サブ演算装置のスイッチシステムのオン/オフを制御可能である。このため、中央演算装置は、サブ演算装置から通電異常の情報が送られてきたときには、通電異常が生じているサブ演算装置への電力供給を迅速に遮断することができる。これにより、移動体における電費を向上させることができる。
【0010】
前記移動体の電源システムにおいて、前記中央演算装置は、前記少なくとも1つのサブ演算装置から少なくとも通電状態に関する情報を取得するための通信部を内蔵する、という構成でもよい。
【0011】
この構成によると、中央演算装置は、各サブ演算装置から通電状態に関する情報を確実に取得することができる。これにより、通電異常が生じているサブ演算装置への電力供給をより迅速に遮断することができる。
【0012】
前記移動体の電源システムにおいて、前記バッテリは、第1バッテリと、該第1バッテリよりも高電圧な電力を供給可能な第2バッテリとを含み、前記中継装置は、前記第2バッテリから供給される電力の電圧を前記第1バッテリの電圧に降圧するDCDCコンバータを含む、という構成でもよい。
【0013】
すなわち、ハイブリッド車両などでは、一般的に、走行のための駆動力を生成するモータを作動させるバッテリの電圧と、パワーウィンドウのモータを作動させるバッテリの電圧とは異なる。このような場合、電圧が相対的に高いバッテリからも作動電圧が低いデバイスのECUに電力供給ができるように、DCDCコンバータが設けられる。前記の構成では、DCDCコンバータを、スイッチシステムを有する中継装置とすることで、ヒューズボックスを別途設ける必要がなくなる。このため、電源システムをコンパクトな構成とすることができる。
【0014】
前記移動体の電源システムにおいて、前記通電制御部は、前記バッテリと前記サブ演算装置との間における通電異常があるときに、該通電異常が発生している前記サブ演算装置に対応する前記スイッチシステムをオフするように構成され、さらに前記通電制御部は、前記中継装置に複数の前記サブ演算装置が接続されている場合において、一の前記サブ演算装置に対応する前記スイッチシステムをオフにするときに、当該一のサブ演算装置と関連する他の前記サブ演算装置に対応する前記スイッチシステムについてもオフにすべく、前記中継装置に制御信号を出力するように構成されている、という構成でもよい。
【0015】
すなわち、通電異常が生じたサブ演算装置が制御するデバイス(以下、第1デバイスという)と、正常なサブ演算装置が制御するデバイス(以下、第2デバイスという)とが連動して作動するものであった場合、一方のサブ演算装置のみ電力供給を遮断すると、第2デバイスは機能しなくなる。この結果、機能しないデバイスに対して電力を供給することになり、無駄な電力を消費するおそれがある。したがって、たとえ第2デバイスを制御するサブ演算装置が正常な状態であったとしても、通電異常が生じたサブ演算装置と一緒に電力供給を遮断することが好ましい。よって、前記の構成では、移動体における電費をより向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、ここに開示された技術によると、演算装置に通電異常が生じたときに、該演算装置に対する電力供給を出来限り迅速に遮断することができる。これにより、移動体における電費を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態1に係る電源システムが搭載された車両の電力供給系統を示す構成図である。
【
図3】第1サブECUに通電異常が生じたときの中央ECUの制御を概略的に示すブロック図である。
【
図4】実施形態2の電力供給系統の変形例を示すブロック図である。
【
図5】実施形態3に係る電源システムが搭載された車両の電力供給系統を示す構成図である。
【
図6】実施形態3における電力供給系統を示すブロック図である。
【
図7】実施形態4に係る電源システムが搭載された車両の電力供給系統を示す構成図である。
【
図8】実施形態4における電力供給系統を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る電源システムが搭載された移動体の電力供給系統の構成を示す。本実施形態1において、移動体は自動車の車両1である。この車両1は、4つのサイドドアと1つのバックドアとを備える5ドア式の車両である。車両1は、運転者によるアクセル等の操作に応じて走行するマニュアル運転と、運転者の操作をアシストして走行するアシスト運転と、運転者の操作なしに走行する自動運転とが可能な車両である。以下の説明においては、移動体のこと単に車両1と表現することがある。また、「前」、「後」、「右」、及び「左」については、「車両1の前」、「車両1の後」、「車両1の右」、及び「車両1の左」を意味する。
【0020】
車両1は、
図1に示すように、バッテリ2と、車両1が有するデバイスに制御信号を送信可能な第1~第4サブECU11~14(Electric Control Unit)と、第1~第4サブECU11~14とそれぞれ通信接続され、第1~第4サブECU11~14を統括制御する中央ECU20と、を備える。バッテリ2、第1~第4サブECU11~14、及び中央ECU20は、それぞれ給電線を介してヒューズボックス30に接続されている。各電線は、電力が供給できる電線であればよく、例えばワイヤーハーネスで構成されている。尚、サブECUの数は4つ未満でも5つ以上でもよい。また、バッテリ2やヒューズボックス30が複数あってもよい。電線の数は、サブECUの数、バッテリ2の数、ヒューズボックス30の数に応じて増減される。
【0021】
バッテリ2は、本実施形態1では12Vバッテリである。バッテリ2は、例えば、鉛蓄電池で構成されている。
【0022】
第1~第4サブECU11~14は、それぞれコンピュータハードウェアであって、具体的には、CPUを有するプロセッサ、複数のモジュールが格納されたメモリ等をそれぞれ有している。第1~第4サブECU11~14は、車両1に搭載されたデバイスと通信可能にそれぞれ接続されている。第1~第4サブECU11~14は、中央ECU20からの制御信号に基づいて各デバイスに制御信号を出力する。デバイスは、センサやアクチュエータを含む概念であり、例えば、
図1に示すようなトランスミッションD1、ワイパーD2,カーナビD3、及びウィンカーD4等である。本実施形態1では、トランスミッションD1は第4サブECU14により制御され、カーナビD3は第2サブECU12により制御され、ウィンカーD4は第3サブECU13により制御される。ワイパーD2は、動作は第1サブECU11により制御される一方で、電源は第2サブECU12により制御される。デバイスは、ここで例示したものに限らず、他にも車両1に多数搭載されていてよい。尚、以下の説明において、例示したトランスミッションD1、ワイパーD2,カーナビD3、及びウィンカーD4を区別しないときには、単にデバイスD1~D4ということがある。
【0023】
中央ECU20は、
図2に示すように、マイクロコントロールユニット(以下、MCU21という)と、第1~第4サブECU11~14と通信するための通信部22とを有する。
【0024】
MCU21は、各デバイスD1~D4を制御するための制御信号を生成して、第1~第4サブECU11~14にそれぞれ送信する。中央ECU20が第1~第4サブECU11~14に対して出力する制御信号は、例えば、各デバイスD1~D4の動作目標を示すものであり、実際に各デバイスD1~D4を作動させる制御量は、第1~第4サブECU11~14により生成される。MCU21は、動作しないサブECUがあるとき(後述のように電力供給を遮断するとき)には、当該サブECUが制御するデバイスを、当該サブECUに代わって直接制御する。また、MCU21は、ヒューズボックス30と通信可能であり、ヒューズボックス30の作動を制御することで、第1~第4サブECU11~14への通電を制御することが可能である。MCU21による通電制御についての詳細は後述する。
【0025】
通信部22は、MCU21が生成した制御信号を第1~第4サブECU11~14に送信するとともに、第1~第4サブECU11~14から作動状態についての情報を取得する。第1~第4サブECU11~14の作動状態とは、第1~第4サブECU11~14の通電状態を含む。第1~第4サブECU11~14の通電状態とは、例えば、電線の異常による過電流やECU内でのショート等を含む。通信部22と第1~第4サブECU11~14との間の通信方式は、CAN(Controller Area Network)、CAN-FD(CAN with Flexible Datarate)、イーサネット(登録商標)等を用いることができる。通信部22と第1~第4サブECU11~14との間の通信方式は、無線方式でもよく、一部を無線方式にして、他を有線方式にしてもよい。通信部22は、中央ECU20のメモリに格納されたモジュールの一例である。
【0026】
ヒューズボックス30は、バッテリ2と第1~第4サブECU11~14及び中央ECU20との間の電源経路を中継する中継装置として機能する。具体的に、ヒューズボックス30は、バッテリ2から供給される電力を第1~第4サブECU11~14及び中央ECU20に分けて、第1~第4サブECU11~14及び中央ECU20に配電する機能を有するものである。
【0027】
ヒューズボックス30は、
図2に示すように、バッテリ2から第1~第4サブECU11~14への電力供給のオン/オフをそれぞれ制御する複数のスイッチシステムを有する。バッテリ2と第1~第4サブECU11~14との間のスイッチシステムは、半導体ヒューズでそれぞれ構成されている。バッテリ2と第1サブECU11との間には第1半導体ヒューズ31が設けられ、バッテリ2と第2サブECU12との間には第2半導体ヒューズ32が設けられ、バッテリ2と第3サブECU13との間には第3半導体ヒューズ33が設けられ、バッテリ2と第4サブECU14との間には第4半導体ヒューズ34が設けられている。また、ヒューズボックス30は、バッテリ2から中央ECU20への電力供給のオン/オフを制御するヒューズ35を有する。
【0028】
第1~第4半導体ヒューズ31~34は、MCU21と通信可能に構成されている。MCU21と第1~第4半導体ヒューズ31~34との間の通信方式は、CAN、CAN-FD、イーサネット(登録商標)等を用いることができる。第1~第4半導体ヒューズ31~34は、MCU21によってオン/オフ状態が制御される。つまり、バッテリ2と第1~第4サブECU11~14との間の通電状態は、MCU21により制御されている。例えば、MCU21により、第1半導体ヒューズ31がオン状態とされたときには、バッテリ2から第1サブECU11に電力が供給される一方で、MCU21により、第1半導体ヒューズ31がオフ状態とされたときには、バッテリ2から第1サブECU11への電力供給が遮断される。このことから、MCU21は通電制御部を構成する。
【0029】
ここで、従来のヒューズボックスでは、第1~第4サブECU11~14は、電線に過電流が流れたときにヒューズが断線ことで保護されていた。しかし、第1~第4サブECU11~14のいずれかに内部でショートなどの通電異常が発生した場合には、従来のヒューズによる保護ができない。通電異常が発生したサブECUでは、必要以上に電流が消費されるようになり、車両1の電費が悪化することになる。また、通電異常状態のサブECUに電力を供給し続けると、通電状態が更に悪化して、故障してしまうおそれもある。このため、車両1の電費を向上させる観点及び故障を予防する観点からは、通電異常が生じたサブECUへの電力供給を出来る限り迅速に遮断することが望ましい。
【0030】
これに対し、本実施形態1では、中央ECU20は、第1~第4サブECU11~14から通電異常の情報を取得したときには、通電異常のあるサブECUの半導体ヒューズをオフ状態にする。これにより、通電異常のあるサブECUへの電力供給を遮断することができる。
【0031】
また、中央ECU20は、一のサブECUに対応する半導体ヒューズをオフ状態にするときに、当該一のサブECUと関連する他のサブECUに対応する半導体ヒューズについてもオフにするように構成されている。具体的には、例えば、第1サブECU11の内部でショートが発生したとする。このとき、第1サブECU11への電力供給のみを遮断させると、ワイパーD2の動作を制御することができないが、第2サブECU12によりワイパーD2に電力供給はできる状態となる。この場合、ワイパーD2を適切に作動させることができずに、無理にワイパーD2を作動させると、ワイパーD2が故障するおそれがある。このため、中央ECU20は、第2サブECU21の通電状態が正常であっても、第1サブECU11に連動して第2サブECU12の動作についても電力供給を遮断させる。また、中央ECU20は、逆に、第2サブECU12への電力供給を遮断するときには、第1サブECU11への電力供給も連動して遮断する。そして、中央ECU20は、ワイパーD2及びカーナビD3を直接制御する。尚、電力供給を遮断させるサブECUの組み合わせは、例えば、中央ECU20のメモリにテーブルの形式で記憶されていてもよい。また、「一のサブECUと関連する他のサブECU」とは、前述のように、一のサブECUが制御するデバイスと関連するデバイスを制御するサブECUや、一のサブECUにおけるデバイスの制御状態に基づいて、自身が制御するデバイスの制御状態を決定する他のサブECUのことを意味する。
【0032】
次に、
図3を参照しながら、サブECUの通電を遮断するまでのプロセスについて説明する。まず、例えば、第1サブECU11にショートが発生したとする。第1サブECU11にショートが発生したという情報は、中央ECU20の通信部22に伝達される。第1サブECU11のショートの情報は、通信部22からMCU21に伝達される。MCU21は、メモリに記憶されたテーブル等を読み込んで、第1サブECU11と連動して停止させるべきサブECU(ここでは、第2サブECU12)を決定する。そして、MCU21は、第1半導体ヒューズ31と第2半導体ヒューズ32とに制御信号を送信して、第1半導体ヒューズ31及び第2半導体ヒューズ32をオフ状態にする。以上により、第1サブECU11及び第2サブECU12への通電が遮断される。一方で、第3及び第4サブECU13,14については、第3及び第4半導体ヒューズ33,34のオン状態が維持されて、通電状態が維持される。
【0033】
このように、本実施形態1では、中央ECU20は、第1~第4サブECU11~14と通信接続されているため、各サブECU11~13における通電状態に関する情報を取得することができる。また、中央ECU20は、ヒューズボックス30における第1~第4半導体ヒューズ31~34のオン/オフを制御可能である。このため、中央ECU20は、サブECUから通電異常の情報が送られてきたときには、通電異常が生じているサブECUへの電力供給を迅速に遮断することができる。これにより、車両1における電費を向上させることができる。
【0034】
特に、本実施形態1において、中央ECU20は、各サブECU11~14から少なくとも通電状態に関する情報を取得するための通信部22を内蔵する。これにより、中央ECU20は、各サブECU11~14から通電状態に関する情報を確実に取得することができる。これにより、通電異常が生じているサブECUへの電力供給をより迅速に遮断することができる。
【0035】
さらに、本実施形態において、中央ECU20は、一のサブECUに対応する半導体ヒューズをオフにするときに、当該一のサブECUと関連する他のサブECUに対応する半導体ヒューズについてもオフにするように構成されている。これにより、車両1における電費をより向上させることができるとともに、デバイスの動作不良を抑制することができる。
【0036】
(実施形態2)
以下、実施形態2について、図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下の説明において前記実施形態1と共通の部分については、同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0037】
本実施形態2は、
図4に示すように、ヒューズボックス30と中央ECU20とが一体化されて、1つの電力分配装置230を構成している点で前記実施形態1とは異なる。ヒューズボックス30と中央ECU20とは、例えば、1つの筐体に収納されていたり、1つの基板上に搭載されたりして、一体化されている。
【0038】
中央ECU20は、ヒューズボックス30と一体化された状態であっても、第1~第4サブECU11~14と通信可能に構成されている。このため、中央ECU20は、第1~第4サブECU11~14の少なくとも1つに通電異常が生じたときには、ヒューズボックス30内の対応する半導体ヒューズをオフ状態にする。
【0039】
本実施形態2の構成であっても、中央ECU20は、サブECUから通電異常の情報が送られてきたときには、通電異常が生じているサブECUへの電力供給を迅速に遮断することができるため、車両1における電費を向上させることができる。
【0040】
特に、本実施形態2では、ヒューズボックス30と中央ECU20とが一体化されているため、半導体ヒューズのオン/オフ制御にかかる時間を短縮することができる。これにより、車両1における電費をより向上させることができる。また、ヒューズボックス30と中央ECU20とが一体化されていることにより、電力供給系統の構成を出来る限りコンパクトにすることができる。
【0041】
(実施形態3)
以下、実施形態3について、図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下の説明において前記実施形態1及び2と共通の部分については、同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0042】
図5に示すように、本実施形態3では、車両301の電力供給系統は、相対的に電圧が低い電力を供給するための低圧バッテリ302と、相対的に電圧が高い電力を供給するための高圧バッテリ303とを有する。低圧バッテリ302は、例えば12Vバッテリであって、鉛蓄電池等で構成されている。高圧バッテリ303は、例えば48Vバッテリであって、リチウムイオン電池等で構成されている。
【0043】
車両301の電力供給系統は、ヒューズボックス330とDCDCコンバータ340(以下、単にコンバータ340という)とを有する。低圧バッテリ302は、電線を介してヒューズボックス330に接続されるとともに、電線を介してコンバータ340と接続されている。高圧バッテリ303は、電線を介してコンバータ340と接続されている。
【0044】
ヒューズボックス330は、低圧バッテリ302から第3サブECU13への電力供給のオン/オフをそれぞれ制御するスイッチシステムを有する。スイッチシステムは、メカニカルヒューズ333で構成されている。
【0045】
コンバータ340は、高圧バッテリ303から供給される電力の電圧を、低圧バッテリ302と同じ電圧(例えば、12V)に降圧する。コンバータ340は、降圧後の電力を第1、第2、及び第4サブECU11,12,14や中央ECU20に供給する。DCDCコンバータ340は、中継装置の一例である。
【0046】
図6に示すように、コンバータ340は、2つのコンバータ回路341,342と、各コンバータ回路341,342を制御する2つのコントローラ343,344と、各コントローラ343,344に制御信号を出力するCPU345とを有する。各コンバータ回路341,342は、CPU345からの制御信号に基づいて、各コントローラ343,344により制御される。各コンバータ回路341,342は、高圧バッテリ303の電圧(例えば48V)を低圧バッテリ302と同程度の電圧(例えば12V)に低下させる。
【0047】
コンバータ340は、中央ECU20と通信するための通信IC346を有する。通信IC346は、中央ECU20の通信IC22から送られてくる信号を受信して、CPU345に送信する。コンバータ340の通信IC346と中央ECU20の通信IC22との間の通信方式は、例えば、CANやCAN-FD等を採用することができる。
【0048】
図6に示すように、コンバータ340は、高圧バッテリ303から第1、第2、及び第4サブECU11,12,14への電力供給のオン/オフをそれぞれ制御する複数のスイッチシステムを有する。各スイッチシステムは、第1、第2、及び第4半導体ヒューズ347,348,349でそれぞれ構成されている。また、コンバータ340は、高圧バッテリ303から中央ECU20への電力供給のオン/オフを制御する中央半導体ヒューズ350を有する。
【0049】
第1、第2、及び第4半導体ヒューズ347,348,349は、CPU345によってオン/オフ状態が制御される。CPU345は、通信IC346を介して中央ECU20から第1、第2、及び第4半導体ヒューズ347,348,349の少なくとも1つのオン/オフに関する制御信号を受信したときに、対応する半導体ヒューズのオン/オフ状態を切り換える。結果的に、高圧バッテリ303と第1、第2、及び第4サブECU11,12,14との間の通電状態は、中央ECU20により制御されている。
【0050】
各サブECU11~14をヒューズボックス330に接続するか又はコンバータ340に接続するかは、例えば、電線の長さによって決まる。すなわち、ヒューズボックス330に接続するよりもコンバータ340に接続した方が、電線が短くなって電線の抵抗による電圧降下を抑制できるときには、コンバータ340に優先的に接続する。一方で、電線が元々長く、コンバータ340に接続したとしも電線を短くすることによる効果を得にくいとき(例えば、
図5の第3サブECU13)には、ヒューズボックス330に接続する。また、サブECU自身により通電状態を細かく検査した方がよいサブECU、すなわち、第2サブECU12のように1つのECUで複数のデバイスを制御するようなものはコンバータ340に接続される。
【0051】
本実施形態3でも、前記実施形態1及び2と同様に、中央ECU20は、第1、第2、及び第4サブECU11,12,14の少なくとも1つに通電異常が生じたときには、対応する半導体ヒューズをオフ状態にして、通電異常が生じたサブECUへの電力供給を遮断する。また、本実施形態3の構成でも、中央ECU20は、第1及び第2サブECU11,12の一方への電力供給を遮断するときには、第1及び第2サブECU11,12の他方への電力供給も遮断する。
【0052】
本実施形態3の構成であっても、中央ECU20は、第3サブECU13から通電異常の情報が送られてきたときには、第3サブECU13への電力供給を迅速に遮断することができるため、車両301における電費を向上させることができる。
【0053】
(実施形態4)
以下、実施形態4について、図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下の説明において前記実施形態1~3と共通の部分については、同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0054】
図7に示すように、本実施形態4では、車両401の電力供給系統は、前記実施形態3と同様に、相対的に電圧が低い低圧バッテリ402と、相対的に電圧が高い高圧バッテリ403とを有する。低圧バッテリ402は、例えば12Vバッテリであって、鉛蓄電池等で構成されている。高圧バッテリ403は、例えば48Vバッテリであって、リチウムイオン電池等で構成されている。
【0055】
本実施形態4に係る車両401の電力供給系統は、電力供給系統にDCDCコンバータ440(以下、単にコンバータ440という)が設けられている一方で、ヒューズボックスが設けられていない点で、前記実施形態3とは異なる。低圧バッテリ402は、電線を介してコンバータ340と接続されている。高圧バッテリ403は、電線を介してコンバータ340と接続されている。
【0056】
コンバータ440は、高圧バッテリ403から供給される電力を、低圧バッテリ402と同じ電圧(例えば、12V)に変換して、第1~第4サブECU11~14や中央ECU20に供給する。DCDCコンバータ440は、中継装置の一例である。
【0057】
コンバータ340は、前記実施形態3と同様に、2つのコンバータ回路441,442と、各コンバータ回路441,442を制御する2つのコントローラ443,444と、各コントローラ443,444に制御信号を出力するCPU445と、中央ECU20と通信するための通信IC446を有する。
【0058】
図8に示すように、コンバータ440は、高圧バッテリ403から第1~第4サブECU11~14への電力供給のオン/オフをそれぞれ制御する複数のスイッチシステムを有する。各スイッチシステムは、第1~第4半導体ヒューズ447~450でそれぞれ構成されている。また、コンバータ440は、高圧バッテリ403から中央ECU20への電力供給のオン/オフを制御する中央半導体ヒューズ451を有する。
【0059】
第1~第4半導体ヒューズ447~450は、CPU445によってオン/オフ状態がそれぞれ制御される。CPU445は、通信IC346を介して中央ECU20から第1~第4半導体ヒューズ447~450のオン/オフに関する制御信号を受信したときに、第1~第4半導体ヒューズ447~450のオン/オフ状態を切り換える。結果的に、高圧バッテリ303と第1~第4サブECU11~14との間の通電状態は、中央ECU20により制御されている。
【0060】
本実施形態4でも、中央ECU20は、第1~第4サブECU11~14の少なくとも1つに通電異常が生じたときには、対応する半導体ヒューズをオフ状態にして、異常が生じたサブECUへの電力供給を遮断する。また、本実施形態4の構成でも、中央ECU20は、第1及び第2サブECU11,12の一方への電力供給を遮断するときには、第1及び第2サブECU11,12の他方への電力供給も遮断する。
【0061】
本実施形態4の構成であっても、中央ECU20は、サブECUから通電異常の情報が送られてきたときには、通電異常が生じているサブECUへの電力供給を迅速に遮断することができるため、車両401における電費を向上させることができる。
【0062】
特に、本実施形態4では、ヒューズボックスを省略することができるため、電力供給系統が高圧バッテリ403を有する構成であっても、前記実施形態3のような場合と比較して、電力供給系統の構成をコンパクトにすることができる。
【0063】
(その他の実施形態)
ここに開示された技術は、前述の実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
【0064】
例えば、前述の実施形態1で説明したように、中央ECU20は、サブECUに通電異常が生じたときに、当該サブECUへの電力供給を遮断していた。これだけでなく、例えば、車両1が障害物と衝突した際には、第4サブECU14のように、トランスミッションD1などの車両の基本性能(走行、制動、操舵等)に関するデバイスを制御するサブECUへの電力供給を遮断するように構成されていてもよい。また、車両1が障害物と衝突した際には、第1及び第2サブECU11,12のように走行時にのみ使用するデバイスのみを制御するサブECUへの電力供給を遮断して、第3サブECU13のようにハザードランプの起動などの緊急停車時に必要なデバイスを制御するサブECUへの電力供給を維持するようにしてもよい。これにより、バッテリの電力を緊急停車時に必要なデバイスの制御に優先的に使用することができる。
【0065】
また、前述の実施形態3及び4では、中央ECU20がDCDCコンバータ340,440内のCPU345,445に制御信号を送って、該制御信号を受信したCPU345,445が半導体ヒューズ347~349,447~450のオン/オフを制御するように構成されていた。これに限らず、中央ECU20が、CPU345,445を介することなく、半導体ヒューズ347~349,447~450を直接制御するようにしてもよい。
【0066】
また、前述の実施形態では、移動体として自動車の車両を対象としていたが、これに限らず、重機の車両等を対象としてもよい。
【0067】
前述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本開示の範囲を限定的に解釈してはならない。本開示の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本開示の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0068】
ここに開示された技術は、移動体の電源システムにおいて、移動体における電費を向上させるために有用である。
【符号の説明】
【0069】
1 車両(移動体)
2 バッテリ
11 第1サブECU(サブ演算装置)
12 第2サブECU(サブ演算装置)
13 第3サブECU(サブ演算装置)
14 第4サブECU(サブ演算装置)
20 中央ECU(中央演算装置)
21 MCU(通電制御部)
30 ヒューズボックス(中継装置)
31 第1半導体ヒューズ(スイッチシステム)
32 第2半導体ヒューズ(スイッチシステム)
33 第3半導体ヒューズ(スイッチシステム)
34 第4半導体ヒューズ(スイッチシステム)
301 車両(移動体)
302 低圧バッテリ(第1バッテリ)
303 高圧バッテリ(第2バッテリ)
340 DCDCコンバータ(中継装置)
347 第1半導体ヒューズ(スイッチシステム)
348 第2半導体ヒューズ(スイッチシステム)
349 第4半導体ヒューズ(スイッチシステム)
401 車両(移動体)
402 低圧バッテリ(第1バッテリ)
403 高圧バッテリ(第2バッテリ)
440 DCDCコンバータ(中継装置)
447 第1半導体ヒューズ(スイッチシステム)
448 第2半導体ヒューズ(スイッチシステム)
449 第3半導体ヒューズ(スイッチシステム)
450 第4半導体ヒューズ(スイッチシステム)