(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】制御装置、および、潅水プログラム
(51)【国際特許分類】
A01G 25/16 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
A01G25/16
(21)【出願番号】P 2020161287
(22)【出願日】2020-09-25
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】新美 直久
(72)【発明者】
【氏名】黒田 道毅
(72)【発明者】
【氏名】内ヶ島 寛
(72)【発明者】
【氏名】横地 智宏
(72)【発明者】
【氏名】谷奥 弘資
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 直樹
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-54(JP,A)
【文献】特開2016-49102(JP,A)
【文献】特開2004-124599(JP,A)
【文献】特開昭61-195628(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0020089(US,A1)
【文献】N.Nishitha, Vasuda R, M.Poojith and T.K.Ramesh,Irrigation Monitoring and Controlling System,2020 International Conference on Communication and Signal Processing,2020年07月28日,pp. 0853 - 0857
【文献】Dingbao Wang and Ximing Cai,Irrigation Scheduling-Role of Weather Forecasting and Farmers’ Behavior,Journal of Water Resources Planning and Management,2009年09月,Vol. 135, No. 5,pp. 364 - 372
【文献】田邉直大,山崎達也,土壌センサと天候情報を用いた露地栽培適応灌水実験システムの構築,電子情報通信学会2018年総合大会講演論文集,日本,一般社団法人電子情報通信学会,2018年03月06日,pp. 367
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 25/16
IEEE Xplore
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物(30)の生育する野外の圃場(20)に潅漑水を供給する給水装置(100)を制御することで、前記圃場に供給される潅漑水の供給時刻と量を制御する制御装置であって、
前記圃場を複数に分けた分割エリアそれぞれに設けられた環境センサ(310)から入力される環境値と、外部情報源(1000)から入力される前記圃場の天気予報と、を格納する格納部(333,500,620)と、
前記環境値と前記天気予報とに基づいて、潅水期間において複数の前記分割エリアそれぞれに個別に供給する潅漑水の供給時刻と量の決定された潅水スケジュールを演算する演算部(334,610)と、
前記潅水スケジュールに基づく、複数の前記分割エリアそれぞれへの潅漑水の供給と非供給とを制御する制御信号を前記給水装置に出力する出力部(332,630)と、を有する制御装置。
【請求項2】
前記環境値には前記分割エリアの作土層の土壌水分量が含まれ、
前記格納部には、前記天気予報と前記環境値の他に、前記植物の成長阻害水分点と永久しおれ点が格納され、
前記演算部は、前記成長阻害水分点と前記永久しおれ点との間の目標値として、前記成長阻害水分点側の第1目標値と、前記永久しおれ点側の第2目標値とを設定し、複数の前記分割エリアそれぞれの前記土壌水分量が前記第1目標値と前記第2目標値との間に保たれるように前記潅水スケジュールを決定する請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記環境値には、前記土壌水分量の他に、前記分割エリアの前記作土層に含まれる水分の単位時間あたりの蒸発量が含まれ、
前記格納部には、前記天気予報、前記環境値、前記成長阻害水分点、および、前記永久しおれ点の他に、前記植物が単位時間あたりに水分を吸収する吸水量と前記作土層の水分保持能力が格納され、
前記演算部は、前記環境値、前記吸水量、および、前記水分保持能力に基づいて、前記潅水期間における前記土壌水分量の単位時間あたりの減少量を推定する請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記演算部は、前記潅水期間の始まりにおける前記土壌水分量、前記潅水期間における前記土壌水分量の単位時間あたりの減少量、および、前記天気予報に基づいて、前記潅水期間における潅漑水の供給時刻と量を決定する請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記蒸発量に関わる物理量としては、日射量、温度、湿度、および、風量のうちの少なくとも1つがある請求項3または請求項4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記演算部は、前記第2目標値と前記永久しおれ点との差を、前記給水装置が故障したときに復旧することが見込まれる復旧時間と、前記土壌水分量の単位時間あたりの減少量とに基づいて設定する請求項3~5いずれか1項に記載の制御装置。
【請求項7】
前記演算部は、前記潅水期間において前記土壌水分量が前記第2目標値に達することの予想される時刻を、潅漑水の供給時刻にする請求項3~6いずれか1項に記載の制御装置。
【請求項8】
前記演算部は、前記成長阻害水分点と前記第1目標値との差を、前記圃場の気候に基づいて設定する請求項2~7いずれか1項に記載の制御装置。
【請求項9】
前記圃場の気候には、前記潅水期間での前記圃場の平均的な降雨量の期待値と、前記潅水期間での前記天気予報によって予測される総降雨量のうちの少なくとも1つが含まれている請求項8に記載の制御装置。
【請求項10】
前記演算部は、前記天気予報で予測される降雨予報時刻よりも前の時刻における潅漑水の総給水量を、前記降雨予報時刻における降雨によって、前記土壌水分量が前記降雨予報時刻で前記第1目標値を超えることが抑えられるように前記潅水スケジュールを決定する請求項2~9いずれか1項に記載の制御装置。
【請求項11】
前記演算部は、複数の前記分割エリアそれぞれの前記環境値に基づいて、複数の前記分割エリアそれぞれの天候予測を行い、前記環境値に基づく前記天候予測と、前記天気予報と、に基づいて、前記潅水スケジュールを演算する請求項1~10いずれか1項に記載の制御装置。
【請求項12】
プロセッサにより実行される潅水プログラムであって、
前記プロセッサに、
植物(30)の生育する野外の圃場(20)を複数に分けた分割エリアそれぞれに設けられた環境センサ(310)から入力される環境値と、外部情報源(1000)から入力される天気予報と、を取得させ、
前記環境値と前記天気予報とに基づいて、潅水期間において複数の前記分割エリアそれぞれに個別に供給する潅漑水の供給時刻と量の決定された潅水スケジュールを演算させ、
前記潅水スケジュールに基づく前記分割エリアへの潅漑水の供給と非供給を制御する制御信号を出力させる潅水プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載の開示は、圃場への潅漑水の供給を制御する制御装置、および、潅水プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示されるように、水供給装置と制御装置を備える自動潅水システムが知られている。制御装置によって、水供給装置から圃場に水が供給されるタイミングと量が制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示される自動潅水システムを農業ハウス以外に適用した場合、天候変化などによって、土壌水分量が圃場で生育する植物に対して不適になる虞がある。
【0005】
本開示の目的は、土壌水分量が植物にとって不適になることの抑制された制御装置、および、潅水プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様による制御装置は、植物(30)の生育する野外の圃場(20)に潅漑水を供給する給水装置(100)を制御することで、圃場に供給される潅漑水の供給時刻と量を制御する制御装置であって、
圃場を複数に分けた分割エリアそれぞれに設けられた環境センサ(310)から入力される環境値と、外部情報源(1000)から入力される圃場の天気予報と、を格納する格納部(333,500,620)と、
環境値と天気予報とに基づいて、潅水期間において複数の分割エリアそれぞれに個別に供給する潅漑水の供給時刻と量の決定された潅水スケジュールを演算する演算部(334,610)と、
潅水スケジュールに基づく、複数の分割エリアそれぞれへの潅漑水の供給と非供給とを制御する制御信号を給水装置に出力する出力部(332,630)と、を有する。
【0007】
本開示の一態様による潅水プログラムは、
プロセッサにより実行される潅水プログラムであって、
プロセッサに、
植物(30)の生育する野外の圃場(20)を複数に分けた分割エリアそれぞれに設けられた環境センサ(310)から入力される環境値と、外部情報源(1000)から入力される天気予報と、を取得させ、
環境値と天気予報とに基づいて、潅水期間において複数の分割エリアそれぞれに個別に供給する潅漑水の供給時刻と量の決定された潅水スケジュールを演算させ、
潅水スケジュールに基づく分割エリアへの潅漑水の供給と非供給を制御する制御信号を出力させる。
【0008】
このように潅水スケジュールが環境値と天気予報に基づいて決定される。そのため、降雨や乾燥などの天候変化によって野外の分割エリアの土壌水分量が植物(30)にとって不適な値になることが抑制される。
【0009】
なお、上記の括弧内の参照番号は、後述の実施形態に記載の構成との対応関係を示すものに過ぎず、技術的範囲を何ら制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】圃場に設けられた潅水システムを模式的に示す斜視図である。
【
図2】給水配管と配管モジュールを示す側面図である。
【
図3】潅水システムを説明するための模式図である。
【
図6】センサ処理を説明するためのフローチャートである。
【
図7】更新処理を説明するためのフローチャートである。
【
図8】監視処理を説明するためのフローチャートである。
【
図9】給水処理を説明するためのフローチャートである。
【
図10】潅水処理を説明するためのフローチャートである。
【
図11】ユーザ更新処理を説明するためのフローチャートである。
【
図12】強制更新処理を説明するためのフローチャートである。
【
図13】個別潅水処理を説明するためのフローチャートである。
【
図14】潅水スケジュールを説明するためのタイミングチャートである。
【
図15】潅水スケジュールを説明するためのタイミングチャートである。
【
図16】潅水スケジュールを説明するためのタイミングチャートである。
【
図17】潅水スケジュールを説明するためのタイミングチャートである。
【
図18】潅水スケジュールを説明するためのタイミングチャートである。
【
図19】潅水スケジュールを説明するためのタイミングチャートである。
【
図20】潅水スケジュールの更新処理を説明するためのフローチャートである。
【
図21】圃場に監視部が行列配置された状態を示す模式図である。
【
図22】圃場上空の雨雲の移動を説明するための模式図である。
【
図23】圃場上空の雨雲の移動を説明するための模式図である。
【
図24】天候予測処理を説明するためのフローチャートである。
【
図25】センサ処理の更新処理を説明するためのフローチャートである。
【
図26】日射量と間欠駆動間隔の対応関係を説明するためのグラフ図である。
【
図27】降雨量と間欠駆動間隔の対応関係を説明するためのグラフ図である。
【
図28】複数の監視部の駆動開始時刻を説明するための模式図である。
【
図29】複数の監視部の駆動開始時刻を説明するための模式図である。
【
図30】複数の監視部の駆動開始時刻を説明するための模式図である。
【
図31】複数の監視部の蓄電量を示すグラフ図である。
【
図34】払拭処理を説明するためのフローチャートである。
【
図35】降雨量検出処理を説明するためのフローチャートである。
【
図36】センサケースの変形例を説明するための上面図である。
【
図37】カメラを用いた降雨量検出処理を説明するためのフローチャートである。
【
図38】第1センサケース、第2センサケース、連結ケースを示す斜視図である。
【
図42】霧検出処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本開示を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。
【0012】
各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせが可能である。また、特に組み合わせに支障が生じなければ、組み合わせが可能であることを明示していなくても、実施形態同士、実施形態と変形例、および、変形例同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0013】
(第1実施形態)
図1~
図20に基づいて本実施形態に係る潅水システムを説明する。
【0014】
以下においては互いに直交の関係にある3方向を、x方向、y方向、z方向と示す。本実施形態ではx方向とy方向とによって規定される平面が水平面に沿っている。z方向が鉛直方向に沿っている。図面においては「方向」の記載を省略して、単に、x、y、zと図示している。
【0015】
<圃場>
潅水システム10は丘や平野に開墾された野外の圃場20に適用される。以下においては説明を簡便とするため、
図1に示すように、潅水システム10が平野に開墾された圃場20に適用された形態を説明する。この圃場20の広さは数10平方メートル~数1000平方キロメートルになっている。
【0016】
圃場20にはx方向に延びる畝などの生育場所が複数設けられている。これらx方向に延びる複数の生育場所がy方向で離間して並んでいる。これら複数の生育場所それぞれに植物30の種や苗が埋められる。この植物30としては、例えば、葡萄、トウモロコシ、アーモンド、ラズベリー、葉菜、綿などがある。
【0017】
1つの生育場所で複数の植物30が生育される。
図1に示すように、複数の植物30はx方向で並んで1つの列を成している。以下においてはこのx方向で列を成して並ぶ複数の植物30を植物群31と示す。圃場20では複数の植物群31がy方向で離間して並んでいる。
【0018】
複数の植物群31のy方向の最短離間距離は、1つの植物群31に含まれる複数の植物30のx方向の最短離間距離よりも長くなっている。複数の植物群31のy方向の離間間隔は生育する植物30の種類や圃場20の起伏と気候に応じて種々変更される。
【0019】
複数の植物群31のy方向の離間間隔は1m~10mほどである。例え植物30の枝葉がy方向に生い茂ったとしても、2つの植物群31の間を人がx方向に移動できる程度の幅が確保されている。
【0020】
<潅水システム>
潅水システム10は給水装置100と制御装置200を備えている。給水装置100は潅漑水を圃場20の植物30に供給する。制御装置200は潅水期間において給水装置100から植物30に供給される潅漑水の供給時刻と量を決定する。制御装置200は給水装置100の潅水スケジュールを決定する。
【0021】
<給水装置>
給水装置100は、ポンプ110、給水配管130、および、配管モジュール150を有する。ポンプ110は潅漑水を給水配管130に供給する。配管モジュール150は給水配管130に供給された潅漑水の吐出を制御する。
【0022】
<ポンプ>
ポンプ110は常時駆動状態になっている。若しくは、ポンプ110は昼間駆動状態になっている。ポンプ110はタンクやため池に貯水されている潅漑水を汲み出し、それを給水配管130に供給する。潅漑水は井戸水、河川水、雨水、および、市水などである。
【0023】
後述するように給水配管130には複数の給水弁152が設けられている。これら複数の給水弁152それぞれが閉状態であり、なおかつ、給水配管130からの潅漑水の漏れが生じていない場合、給水配管130は潅漑水で満たされる。この際、給水配管130内の水圧は、ポンプ110の吐出能力に依存した値(ポンプ圧)になる。
【0024】
給水弁152が閉状態から開状態になると、給水配管130から圃場20に潅漑水が吐出される。潅漑水の吐出量が時間平均的に安定すると、給水配管130内の水圧は、ポンプ圧よりも水圧の低い流動圧になる。
【0025】
<給水配管>
給水配管130は主配管131と滴下配管132を有する。主配管131はポンプ110に連結されている。滴下配管132は主配管131に連結されている。ポンプ110によって主配管131から滴下配管132に潅漑水が供給される。この潅漑水が滴下配管132から圃場20に供給される。
【0026】
<主配管>
主配管131は縦配管133と横配管134を有する。縦配管133はy方向に延びている。横配管134はx方向に延びている。縦配管133と横配管134は互いに連結されている。係る構成のために潅漑水は主配管131内をy方向とx方向とに流れる。
【0027】
図1に示す一例では、1つのポンプ110に1つの縦配管133が連結されている。このy方向に延びる縦配管133から複数の横配管134がx方向に延びている。横配管134のz方向の位置は成熟した植物30の頂点よりも地面から離間するように設定されている。
【0028】
なおもちろんではあるが、
図1に示す構成は一例に過ぎない。圃場20に設けられるポンプ110と縦配管133の数、1つのポンプ110に連結される縦配管133の数、1つの横配管134に連結される縦配管133の数、および、横配管134と縦配管133のz方向の位置は特に限定されない。
【0029】
複数の横配管134はy方向で離間して並んでいる。複数の横配管134のy方向の最短離間距離は、複数の植物群31のy方向の最短離間距離と同等になっている。複数の横配管134の1つが複数の植物群31の1つに設けられている。横配管134は植物群31の延長方向に沿ってx方向に延びている。この横配管134に滴下配管132が連結されている。
【0030】
<滴下配管>
滴下配管132は1つの横配管134に複数連結されている。1つの横配管134に連結される複数の滴下配管132はx方向で離間して並んでいる。
【0031】
図2に示すように滴下配管132は延長配管135と分岐配管136を有する。延長配管135は横配管134からz方向に垂れ下がって延びている。延長配管135の先端側にはx方向に開口する2つの連結口が形成されている。これら2つの連結口に分岐配管136が連結されている。
【0032】
分岐配管136は2つの連結口の一方に連結される第1分岐配管136aと、2つの連結口の他方に連結される第2分岐配管136bと、を有する。第1分岐配管136aと第2分岐配管136bは延長配管135との連結位置からx方向において互いに逆向きに延びている。
【0033】
第1分岐配管136aと第2分岐配管136bそれぞれには、潅漑水の流動する内部空間とその外の外部空間とを連通する滴下孔137が形成されている。滴下孔137は第1分岐配管136aと第2分岐配管136bそれぞれの地面側の下面に開口している。
【0034】
なお、滴下孔137は第1分岐配管136aと第2分岐配管136bそれぞれの空側の上面に開口してもよい。また、滴下孔137は第1分岐配管136aと第2分岐配管136bそれぞれの上面と下面とを連結する側面に開口してもよい。
【0035】
滴下孔137は第1分岐配管136aと第2分岐配管136bそれぞれに複数形成されている。これら複数の滴下孔137はx方向で離間して並んでいる。複数の滴下孔137のx方向の離間間隔は複数の植物30のx方向の離間間隔と同等になっている。
図2に示す一例では、第1分岐配管136aと第2分岐配管136bそれぞれに滴下孔137が3つ形成されている。
【0036】
なお、複数の滴下孔137の離間間隔と複数の植物30の離間間隔は異なっていてもよい。第1分岐配管136aと第2分岐配管136bに形成される滴下孔137の数は3つに限定されない。
【0037】
<潅漑水の流動>
ポンプ110によって縦配管133に供給された潅漑水は、縦配管133内をy方向に流れる。この潅漑水は縦配管133に連結された複数の横配管134それぞれに供給される。潅漑水は複数の横配管134内それぞれをx方向に流れる。
【0038】
横配管134内を流れる潅漑水は延長配管135を介して分岐配管136に流れ着く。この潅漑水が第1分岐配管136aと第2分岐配管136bそれぞれの滴下孔137から吐出される。これにより潅漑水が植物30に供給される。
【0039】
図1に示す一例では、第1分岐配管136aと第2分岐配管136bそれぞれは、z方向において植物30の頂点側よりも圃場20の地面側に位置している。第1分岐配管136aと第2分岐配管136bそれぞれの滴下孔137から滴下された潅漑水は主として植物30の幹やその根本に供給される。
【0040】
<散水ノズル>
なお、滴下孔137に散水ノズルが取り付けられた構成を採用することもできる。そしてこの散水ノズルから噴射される潅漑水の噴射方向を、z方向において、地面側や空側に向けてもよい。空側に向かって潅漑水を噴射させる場合、地面側に向かって潅漑水を噴射させる構成と比べて、潅漑水の噴射方向が水平方向に広がりやすくなる。そのために散水ノズルから噴射される潅漑水が圃場20の広範囲に散水される。
【0041】
地面側と空側のいずれに向かって潅漑水を噴射させるかは、潅漑水を供給する植物30の種類、圃場20の作土層の深さ、および、圃場20の気候などに基づいて決定することができる。例えば、植物30が根を広く張ったり、作土層が浅かったり、乾燥しがたい気候の場合、空側に向けて潅漑水を噴射させる。植物30が根を深く張ったり、作土層が深かったり、乾燥しやすい気候の場合、地面側に向けて潅漑水を噴射させる。
【0042】
<配管モジュール>
図2に簡略的に示すように、配管モジュール150は滴下配管132に設けられる。配管モジュール150は収納箱151、給水弁152、および、水圧センサ153を有する。収納箱151の中に給水弁152と水圧センサ153が収納されている。収納箱151は図面では断面図で示している。
【0043】
<給水弁>
給水弁152は第1分岐配管136aと第2分岐配管136bそれぞれの延長配管135の連結位置側に設けられている。第1分岐配管136aと第2分岐配管136bそれぞれの延長配管135から離間した先端側と給水弁152との間に全ての滴下孔137が位置している。
【0044】
給水弁152が開状態になると、延長配管135と滴下孔137が連通する。これにより滴下孔137から潅漑水が吐出される。逆に、給水弁152が閉状態になると、延長配管135と滴下孔137との連通が遮断される。これにより滴下孔137からの潅漑水の吐出が止まる。
【0045】
第1分岐配管136aに設けられた給水弁152と第2分岐配管136bに設けられた給水弁152は制御装置200によって独立して開閉制御される。係る開閉制御により、第1分岐配管136aの滴下孔137からの潅漑水の吐出と、第2分岐配管136bの滴下孔137からの潅漑水の吐出とが独立して制御される。給水弁152としては、吐出信号の入力と未入力とによって開状態と閉状態とに切り換え可能な電磁弁が採用される。
【0046】
<水圧センサ>
水圧センサ153は延長配管135における第1分岐配管136aと第2分岐配管136bの連結される2つの連結口側それぞれに設けられている。これら2つの水圧センサ153それぞれによって延長配管135内の水圧が検出される。この水圧センサ153で検出された水圧は制御装置200に出力される。
【0047】
なお、水圧センサ153の配置場所としては上記例に限定されない。例えば、第1分岐配管136aにおける延長配管135との連結位置と給水弁152の配置位置との間、および、第2分岐配管136bにおける延長配管135との連結位置と給水弁152の配置位置との間それぞれに水圧センサ153が設けられてもよい。延長配管135におけるz方向に延長する部位に水圧センサ153が設けられてもよい。延長配管135における横配管134との連結部位に水圧センサ153が設けられてもよい。水圧センサ153の配置場所は、滴下配管132の潅漑水の流動経路における、給水弁152よりも横配管134側であればよい。
【0048】
給水弁152が閉状態になり、延長配管135が潅漑水で満たされると、水圧センサ153でポンプ圧が検出される。
【0049】
給水弁152が閉状態から開状態になると、分岐配管136から潅漑水が吐出される。潅漑水の吐出量が時間平均的に安定すると、水圧センサ153で流動圧が検出される。
【0050】
給水弁152が開状態から閉状態になると、給水配管130からの潅漑水の吐出が止まる。給水配管130内の水圧は流動圧からポンプ圧へと徐々に回復する。水圧センサ153ではこの流動圧からポンプ圧へと徐々に回復する過渡期の水圧が検出される。
【0051】
なお、給水配管130や給水弁152に破損が生じ、その破損個所から潅漑水が漏れている場合、水圧センサ153で検出される水圧が減少する。これによって破損が生じているか否かを検出することができる。この破損の検出処理は制御装置200で実行される。
【0052】
<制御装置>
図1および
図3に示すように制御装置200は、監視部300、統合通信部400、情報格納部500、および、統合演算部600を有する。図面では統合通信部400をICDと表記している。
【0053】
制御装置200は監視部300を複数有する。複数の監視部300は複数の配管モジュール150とともに圃場20に設けられている。監視部300と配管モジュール150とは電気的に接続されている。
【0054】
監視部300には水圧センサ153で検出された水圧が入力される。そして監視部300は圃場20の環境に関わる物理量を環境値として検出している。複数の監視部300それぞれはこれら水圧と環境値とを統合通信部400に無線通信で出力している。
【0055】
統合通信部400は複数の監視部300それぞれから入力された水圧と環境値を情報格納部500に無線通信で出力する。これら水圧と環境値とが情報格納部500に格納される。情報格納部500はいわゆるクラウドである。
【0056】
統合演算部600は情報格納部500に格納された水圧と環境値などの諸情報を読み出す。そして統合演算部600は読み出した諸情報を適宜処理し、それをユーザのスマートフォンやパソコンのモニタ700に表示する。図面ではモニタ700をMと表記している。
【0057】
統合演算部600はユーザのスマートフォンやパソコンなどに含まれている。統合演算部600は情報処理演算機器610、メモリ620、および、通信装置630を有する。図面では情報処理演算機器610をIPCE、メモリ620をMM、通信装置630をCDと表記している。
【0058】
情報処理演算機器610は潅水に関わる演算処理を行うが、その機能は潅水アプリケーションプログラムがダウンロードされることで実現される。メモリ620はコンピュータやプロセッサによって読み取り可能なプログラムを非一時的に格納する非遷移的実体的記憶媒体である。通信装置630は無線通信機能を備えている。以下、表記が煩雑となることを避けるため、これら各構成要素を特に区別して表記せずに、統合演算部600を用いて本実施形態の技術内容を説明する。情報処理演算機器610が処理演算部に相当する。
【0059】
ユーザは潅水スケジュールに関わるユーザ指示を、タッチパネルやキーボードなどの入力機器800を用いて統合演算部600に入力する。統合演算部600はこのユーザ指示と情報格納部500から読み出した諸情報とに基づいて、潅水スケジュールを決定する。ユーザからの指示がない場合、統合演算部600は諸情報に基づいて潅水スケジュールを自動的に決定する。図面では入力機器800をIDと表記している。
【0060】
統合演算部600は決定した潅水スケジュールにおいて潅漑水の供給開始時刻であると判定すると、給水弁152を開閉制御する指示信号を情報格納部500に出力する。この指示信号が情報格納部500から統合通信部400を介して監視部300に入力される。監視部300は指示信号に基づいて給水弁152への吐出信号の出力と非出力とを制御する。これにより給水弁152の開閉状態が制御される。この結果、圃場20への潅漑水の供給が制御される。指示信号と吐出信号のうちの少なくとも一方が制御信号に相当する。
【0061】
<分割エリア>
図1に示すように監視部300は配管モジュール150とともに、1つの滴下配管132につき1つ設けられる。そのため、
図3に模式的に示すように、複数の監視部300は、複数の配管モジュール150の備える給水弁152および水圧センサ153とともに、圃場20においてx方向を行方向、y方向を列方向として、行列配置される。
【0062】
係る構成により、行方向と列方向とによって区切られる複数の分割エリアそれぞれの環境が、それらに設けられた複数の監視部300それぞれによって個別に監視される。それとともに、複数の分割エリアそれぞれにおける潅漑水の供給が、複数の監視部300と複数の配管モジュール150それぞれによって個別に制御される。
【0063】
<監視部>
図3に示すように監視部300は環境センサ310と制御部320を有する。制御部320に配管モジュール150の給水弁152と水圧センサ153が電気的に接続されている。図面では環境センサ310をES、給水弁152をWB、水圧センサ153をWPSと表記している。
【0064】
複数の環境センサ310は配管モジュール150とともに圃場20で行列配置される。これら複数の環境センサ310によって複数の分割エリアそれぞれの環境値が検出される。また複数の水圧センサ153によって複数の分割エリアそれぞれの水圧が検出される。これら複数の分割エリアそれぞれの環境値と水圧とが情報格納部500に格納される。
【0065】
図4に示すように制御部320は、マイコン330、通信部340、RTC350、および、発電部360を有する。マイコンはマイクロコンピュータの略である。RTCはReal Time Clockの略である。図面では通信部340をCDPと表記している。
【0066】
マイコン330には環境値と水圧が入力される。マイコン330はこれら環境値と水圧を、通信部340を介して統合通信部400に出力する。またマイコン330には統合通信部400から指示信号が入力される。マイコン330はこの指示信号に基づいて吐出信号を給水弁152に出力する。マイコン330が演算処理部に相当する。
【0067】
マイコン330は動作モードとしてスリープモードと通常モードを有する。スリープモードはマイコン330が演算処理を停止している状態である。通常モードはマイコン330が演算処理を実行している状態である。通常モードはスリープモードよりも消費電力が多くなっている。
【0068】
通信部340は統合通信部400と無線通信を行っている。通信部340はマイコン330から出力された電気信号を無線信号として統合通信部400に出力する。それとともに通信部340は統合通信部400から出力された無線信号を受信して電気信号に変換する。通信部340はその電気信号をマイコン330に出力する。電気信号に指示信号が含まれている場合、マイコン330はスリープモードから通常モードに切り換わる。
【0069】
RTC350は、時を刻む時計機能と時間を計測するタイマー機能を有する。RTC350は予め設定された時刻になった場合、若しくは、予め設定された時間が経過した場合、マイコン330にウェイクアップ信号を出力する。このウェイクアップ信号がスリープモードのマイコン330に入力されると、マイコン330はスリープモードから通常モードに切り換わる。RTC350は起床部に相当する。
【0070】
発電部360は光エネルギーを電気エネルギーに変換している。発電部360は監視部300の電力供給源になっている。発電部360からRTC350に電力供給が絶えず行われている。これによりRTC350の時計機能とタイマー機能が損なわれることが抑制されている。
【0071】
上記したように横配管134のz方向の位置は成熟した植物30の頂点よりも地面から離間している。制御部320はこの横配管134に機械的に連結されている。係る構成のため、育成した植物30によって、太陽光が発電部360に入射することが妨げられ難くなっている。発電部360での光エネルギーの電気エネルギーへの変換が妨げられ難くなっている。
【0072】
<環境センサ>
圃場20の分割エリア毎に変化することの想定される環境値としては土壌水分量がある。複数の環境センサ310それぞれが土壌水分量を検出する土壌水分センサ311を備えている。複数の土壌水分センサ311によって複数の分割エリアそれぞれの土壌水分量が検出される。図面では土壌水分センサ311をSMSと表記している。
【0073】
圃場20の起伏や植物30の育成状況によっては、分割エリア毎に変化することの想定される環境値として日射量がある。本実施形態では、複数の環境センサ310それぞれが日射量を検出する日射センサ312を備えている。これら複数の日射センサ312によって複数の分割エリアそれぞれの日射量が検出される。図面では日射センサ312をSRSと表記している。
【0074】
これら複数の分割エリアそれぞれで検出された土壌水分量と日射量を行列配置することで、圃場20の土壌水分量分布と日射量分布をモニタ700にマップ表示することが可能になる。同様にして、複数の分割エリアそれぞれに設けられた複数の水圧センサ153で検出された水圧を行列配置することで、圃場20に張り巡らされた給水配管130の水圧分布をモニタ700にマップ表示することが可能になる。係るマップ表示処理は統合演算部600で行われる。
【0075】
圃場20全体の環境値としては降雨量、温度、湿度、気圧、および、風量がある。これらを検出するセンサとしては、レインセンサ313、温度センサ314、湿度センサ315、気圧センサ316、および、風センサ317がある。これらは複数の監視部300のうちの少なくとも1つの環境センサ310に含まれている。
【0076】
図4に代表として示す監視部300の環境センサ310には、これら圃場20全体の環境値を検出する各種センサが含まれている。図面ではレインセンサ313をRS、温度センサ314をTS、湿度センサ315をMS、気圧センサ316をPS、風センサ317をWSと表記している。風センサ317は風量だけではなく風向も検出してもよい。
【0077】
なお、これらレインセンサ313、温度センサ314、湿度センサ315、気圧センサ316、および、風センサ317のうちの少なくとも1つが圃場20で行列配置された構成を採用することもできる。
【0078】
係る構成は、例えば、圃場20が広かったり、圃場20の起伏が激しかったり、圃場20の気候が激しかったりするために、分割エリア毎に降雨量、温度、湿度、気圧、および、風量が大きく変化しやすい場合に有効である。これらセンサで検出された降雨量、温度、湿度、気圧、および、風量を行列配置することで、これら環境値をモニタ700にマップ表示することが可能になる。
【0079】
また、圃場20全体の環境値を検出するセンサが統合通信部400に設けられた構成を採用することもできる。係る構成の場合、これらセンサの出力は統合通信部400を介して通信部340に出力される。それとともに、これらセンサの出力は統合通信部400を介して情報格納部500に格納される。
【0080】
係る構成は、例えば、圃場20が狭かったり、圃場20の起伏がなだらかであったり、圃場20の気候が安定していたりするために、分割エリア毎に降雨量、温度、湿度、気圧、および、風量が変化し難い場合に有効である。
【0081】
<土壌水分量>
これまでに説明した各種環境値のうち、潅水システム10が制御する環境値は土壌水分量である。潅水システム10は分割エリア毎に潅漑水の供給時刻と供給量を制御する。こうすることで分割エリア毎の土壌水分量が個別に制御される。
【0082】
植物30は圃場20の作土層に根を張っている。植物30の生育はこの作土層の土壌に含まれる水分量(土壌水分量)に依存している。土壌水分量が成長阻害水分点を上回ると植物30に病害が発生する。土壌水分量が永久しおれ点を下回ると植物30のしおれが回復しなくなる。
【0083】
これら成長阻害水分点と永久しおれ点とは植物30の種類に応じて異なるものの、その値は既知である。これらの値は情報格納部500に記憶されている。
【0084】
土壌水分量の現在値は土壌水分センサ311で検出される。土壌水分量に関わりのある物理量としては、土壌水分量張力(pF値)や土壌誘電率(ε)がある。本実施形態の土壌水分センサ311はpF値を検出している。
【0085】
作土層の土壌水分量は圃場20の環境変化のために増減する。圃場20に雨が降ると土壌水分量が増大する。作土層から水が蒸発すると土壌水分量が減少する。また、植物30が水分を吸収したり、作土層よりも下層へ水が浸透したりすると土壌水分量が減少する。
【0086】
作土層に降り注がれる雨の量(降雨量)はレインセンサ313で検出される。
【0087】
作土層から蒸発する水分量(蒸発量)は、日射量、温度、湿度、および、風量に依存している。これらは、日射センサ312、温度センサ314、湿度センサ315、および、風センサ317で検出される。
【0088】
植物30が単位時間あたりに水分を吸収する吸水量は、植物30の種類によって予め推定することができる。単位時間あたりに作土層よりも下層に浸透する水分量は、土壌の水分保持能力によって予め推定することができる。これら推定値は情報格納部500に記憶されている。
【0089】
以上に示したように、作土層の土壌水分量の現在値、環境変化による作土層の土壌水分量の現在値からの増加、および、減少予測に関わる予測値それぞれが環境センサ310で検出される。これらが環境値として情報格納部500に格納される。また、植物30の成長阻害水分点と永久しおれ点、および、植物30が単位時間あたりに水分を吸収する吸水量と土壌の水分保持能力が情報格納部500に格納されている。そして、上記したユーザからの指示(ユーザ指示)が情報格納部500に格納される。このように、情報格納部500には潅水スケジュールを決定するための諸情報が格納される。
【0090】
<マイコン>
図4に示すようにマイコン330は取得部331、信号出力部332、記憶部333、および、処理部334を備えている。図面では取得部331をAD、信号出力部332をSOU、記憶部333をMU、処理部334をPUと表記している。
【0091】
取得部331には環境センサ310で検出された環境値が入力される。また取得部331には水圧センサ153で検出された水圧が入力される。取得部331とこれら環境センサ310および水圧センサ153それぞれが電気的に接続されている。
図1では、取得部331と土壌水分センサ311、および、取得部331と水圧センサ153を接続するワイヤ160を代表として図示している。
【0092】
信号出力部332は給水弁152と電気的に接続されている。信号出力部332から給水弁152に、給水弁152を開閉制御するための吐出信号が出力される。吐出信号の未入力時に給水弁152は閉状態になっている。吐出信号の入力時に給水弁152は開状態になっている。
【0093】
記憶部333はコンピュータやプロセッサによって読み取り可能なプログラムを非一時的に格納する非遷移的実体的記憶媒体である。記憶部333には処理部334が演算処理を実行するためのプログラムが記憶されている。このプログラムには上記した潅水アプリケーションプログラムの少なくとも一部が含まれている。また、記憶部333には処理部334が演算処理を実行する際のデータが一時的に記憶される。そして記憶部333には取得部331と通信部340それぞれに入力される各種データと、その各種データの取得時刻とが記憶される。
【0094】
処理部334はRTC350からウェイクアップ信号が入力されるとスリープモードから通常モードになる。通常モードにおいて処理部334は記憶部333に記憶されているプログラムと各種データを読み込んで演算処理を実行する。処理部334は演算部に相当する。
【0095】
処理部334は取得部331に入力された各種センサ信号、通信部340に入力された指示信号の取得時刻をRTC350から読み出している。処理部334は指示信号とその取得時刻を記憶部333に記憶させる。
【0096】
また、処理部334は環境センサ310と水圧センサ153から入力された環境値と水圧、および、それらの取得時刻を通信部340と統合通信部400を介して情報格納部500に格納している。そして処理部334は、情報格納部500、統合通信部400、および、通信部340を介して統合演算部600から入力された指示信号に基づいて、信号出力部332を介して給水弁152に吐出信号を出力している。
【0097】
<通信部>
通信部340は処理部334から入力された電気信号を無線信号に変換する。通信部340はこの無線信号を統合通信部400に出力する。また通信部340は統合通信部400から出力された無線信号を電気信号に変換する。通信部340はこの電気信号を処理部334に出力する。
【0098】
通信部340が出力する無線信号には、
図5に簡易的に示すようにアドレス341とデータ342とが含まれている。図面においてアドレス341をADD、データ342をDATと表記している。
【0099】
図3に示すように複数の通信部340と統合通信部400との間で無線信号の送受信が行われる。無線信号に含まれるアドレス341は、複数の通信部340のうちのいずれから出力されたかを示す識別コードである。換言すれば、無線信号に含まれるアドレスは、複数の処理部334のうちのいずれから出力されたかを示す識別コードである。複数の記憶部333それぞれに固有のアドレス341が保存されている。
【0100】
統合通信部400から出力される無線信号にもアドレス341が含まれている。そしてこの無線信号のデータ342には指示信号が含まれている。この無線信号を複数の通信部340それぞれが受信する。
【0101】
この無線信号が複数の通信部340それぞれで電気信号に変換される。そしてこの電気信号が複数の処理部334それぞれに入力される。複数の処理部334のうち、その電気信号に含まれるアドレス341と同一のアドレス341を保有する処理部334のみが、その電気信号に基づく演算処理を実行する。
【0102】
後述するようにマイコン330はスリープモードと通常モードとを交互に繰り返す間欠駆動をする。そのために通信部340と統合通信部400との間での無線通信は頻繁には行われない。通信部340と統合通信部400との間で無線通信を行う時間間隔が長くなっている。1回の無線通信でデータ342に含めることのできるデータ量を多くすることが可能になっている。
【0103】
<発電部>
発電部360は太陽電池361、蓄電部362、電流センサ363、および、電力センサ364を有する。図面では太陽電池361をSB、蓄電部362をESU、電流センサ363をCS、電力センサ364をPSと表記している。
【0104】
太陽電池361は光エネルギーを電気エネルギーに変換する。蓄電部362はその電気エネルギー(電力)を蓄電する。蓄電部362に蓄電された電力が監視部300の駆動電力として活用される。
【0105】
電流センサ363は太陽電池361から蓄電部362に出力される電流を検出する。電力センサ364は蓄電部362から出力される電力を検出する。処理部334はこの電流と電力も通信部340と統合通信部400を介して情報格納部500に格納している。
【0106】
監視部300の駆動電力は発電部360で発電された電力に依存している。そのために発電部360に入射する光量が少ないと、監視部300の駆動電力が枯渇する虞がある。これを避けるために監視部300のマイコン330は間欠駆動を行っている。
【0107】
<RTC>
RTC350は上記した間欠駆動の時間間隔(起床周期)が経過するごとにウェイクアップ信号をマイコン330に出力している。これによりマイコン330はスリープモードと通常モードとを交互に繰り返している。
【0108】
上記の起床周期は、蓄電部362に蓄電された電力量(蓄電量)に応じて統合演算部600によって決定される。換言すれば、間欠駆動間隔は、蓄電量に応じて統合演算部600によって決定される。
【0109】
統合演算部600は情報格納部500に格納された電力に基づいて蓄電量を算出する。統合演算部600は蓄電量が少ないほどに間欠駆動間隔を長く設定する。逆に言えば、統合演算部600は蓄電量が多いほどに間欠駆動間隔を短く設定する。
【0110】
統合演算部600は間欠駆動間隔を指示信号に含ませる。この指示信号をマイコン330の処理部334が取得すると、処理部334は間欠駆動間隔を調整する。すなわち、処理部334はRTC350の起床周期を調整する。
【0111】
なお、圃場20の環境が数秒単位で極端に変化することはまれである。そのために間欠駆動間隔は数十秒~数十時間単位になっている。これに応じて、無線通信を行う時間間隔も数十秒~数十時間単位になっている。
【0112】
<潅水システムの駆動>
これまでに説明したように、潅水システム10では、複数の監視部300と統合演算部600との間での信号の送受信、および、情報格納部500への各種データの保存が行われている。複数の監視部300と統合演算部600それぞれは、起床周期毎に処理するサイクルタスクと、突発的に処理するイベントタスクとを実行している。
【0113】
これらサイクルタスクとイベントタスクとには処理の優先順位がある。これらタスクの処理タイミングが同一になった場合、サイクルタスクよりもイベントタスクの処理が優先される。
【0114】
サイクルタスクとして、複数の監視部300それぞれは
図6に示すセンサ処理を実行している。統合演算部600は
図7に示す更新処理を実行している。
【0115】
イベントタスクとして、複数の監視部300それぞれは
図8に示す監視処理と
図9に示す給水処理を実行している。統合演算部600は
図10に示す潅水処理、
図11に示すユーザ更新処理、および、
図12に示す強制更新処理を実行している。
【0116】
以下、
図6と
図7に基づいて、サイクルタスクとしてのセンサ処理と更新処理を説明する。なお、フローチャートを示す各図面においては、スタートをS、エンドをEで表記している。
【0117】
<センサ処理>
図6に示すスタートの前において、監視部300のマイコン330はスリープモードになっている。このマイコン330にRTC350からウェイクアップ信号が入力される。これによりマイコン330はスリープモードから通常モードに切り換わる。それとともに、マイコン330は
図6に示すセンサ処理を実行し始める。このセンサ処理はマイコン330の間欠駆動間隔で実行される。
【0118】
ステップS10においてマイコン330は、各種センサから入力されるセンサ信号を取得する。それとともに、マイコン330はRTC350の出力に基づいてセンサ信号の取得時刻を取得する。この後にマイコン330はステップS20へ進む。
【0119】
ステップS20へ進むとマイコン330は、取得したセンサ信号と取得時刻それぞれを記憶する。この後にマイコン330はステップS30へ進む。
【0120】
ステップS30へ進むとマイコン330は、センサ情報としてのセンサ信号と取得時刻を無線通信によって通信部340から統合通信部400に出力する。このセンサ情報が統合通信部400によって情報格納部500に格納される。マイコン330はスリープモードに移行し、センサ処理を終了する。
【0121】
<更新処理>
統合演算部600は
図7に示す更新処理を更新周期が経過するごとに実行している。この更新周期はマイコン330の間欠駆動間隔と同程度になっている。
【0122】
ステップS110において統合演算部600は、情報格納部500に格納されている諸情報を読み出す。そして統合演算部600はステップS120へ進む。
【0123】
ステップS120へ進むと統合演算部600は、読み込んだ諸情報に基づいて、複数の監視部300それぞれの潅水スケジュールを更新する。また統合演算部600は複数の監視部300それぞれのセンサ処理を更新する。具体的に言えば、統合演算部600はセンサ処理を実行するタイミングに相当する、間欠駆動間隔を更新する。そして統合演算部600はその更新した潅水スケジュールと間欠駆動間隔を自身が保有するとともに、情報格納部500に格納する。この後に情報格納部500は更新処理を終了する。
【0124】
以上に示したように、サイクルタスクによって、センサ情報、潅水スケジュール、および、間欠駆動間隔が更新される。
【0125】
次に、
図8~
図12に基づいて、イベントタスクとしての監視処理、給水処理、潅水処理、ユーザ更新処理、および、強制更新処理を説明する。なお、監視処理、給水処理、および、潅水処理それぞれは、監視部300の駆動電力の枯渇を避けるために、昼間に実行される。昼間か否かの判定は、現在時刻と日射センサ312で検出される日射量などによって検出することができる。
【0126】
<監視処理>
図8に示すスタートの前において、監視部300のマイコン330はスリープモードになっている。このマイコン330に無線通信によって統合演算部600から指示信号が入力される。この結果、マイコン330はスリープモードから通常モードに切り換わる。それとともに、マイコン330は
図8に示す監視処理を実行し始める。
【0127】
ステップS210においてマイコン330は、入力された指示信号とそれの取得時刻を記憶する。この後にマイコン330はステップS220へ進む。
【0128】
ステップS220へ進むとマイコン330は、指示信号に給水弁152を閉状態から開状態にする給水指示が含まれているか否かを判定する。給水指示が指示信号に含まれている場合、マイコン330はステップS230へ進む。給水指示が指示信号に含まれていない場合、マイコン330はステップS240へ進む。
【0129】
ステップS230へ進むとマイコン330は、
図9に示す給水処理を実行する。すなわちマイコン330はステップS231において、給水指示にしたがって、給水弁152に吐出信号を出力する。この後、マイコン330はステップS232へ進む。
【0130】
ステップS232へ進むとマイコン330は、指示信号に含まれている給水時間が経過したか否かを判定する。給水時間が経過していない場合、マイコン330は吐出信号の給水弁152への出力を継続する。給水時間が経過した場合、マイコン330はステップS233へ進む。
【0131】
ステップS233へ進むとマイコン330は、吐出信号の出力を停止する。そしてマイコン330は
図8に示すステップS240へ進む。
【0132】
ステップS240へ進むとマイコン330は、指示信号に間欠駆動間隔の更新指示が含まれているか否かを判定する。間欠駆動間隔の更新指示が指示信号に含まれている場合、マイコン330はステップS250へ進む。間欠駆動間隔の更新指示が指示信号に含まれていない場合、マイコン330はステップS260へ進む。
【0133】
なお、上記した間欠駆動間隔の更新指示は、統合演算部600若しくは情報格納部500から複数の監視部300それぞれに指示信号として定期的若しくは不定期的に出力されている。
【0134】
ステップS250へ進むとマイコン330の処理部334はRTC350のウェイクアップ信号を出力する時間間隔を調整する。この後、マイコン330はステップS260へ進む。
【0135】
ステップS260へ進むとマイコン330は、
図6に基づいて説明したセンサ処理を実行する。マイコン330がステップS230の給水処理を実行した場合、ステップS260において潅漑水の供給後の環境値が検出される。マイコン330がステップS260の給水処理を実行しなかった場合、ステップS260において潅漑水の供給されていない環境値が検出される。この環境値が情報格納部500に格納される。センサ処理を実行し終えるとマイコン330はスリープモードに移行し、監視処理を終了する。
【0136】
<潅水処理>
統合演算部600は
図10に示す潅水処理を、複数の監視部300それぞれの潅水スケジュールにおいて、潅漑水を供給するタイミングになるごとに実行している。
【0137】
ステップS310において統合演算部600は、複数の監視部300のうちの潅漑水を供給する予定になっている分割エリアの監視部300に向けて、給水指示を含む指示信号(給水信号)を出力する。この後に統合演算部600はステップS320へ進む。
【0138】
給水指示には、吐出信号の出力開始と、吐出信号の出力時間(給水時間)とが含まれている。この給水指示を受信した監視部300は
図8に基づいて説明した監視処理を実行する。
【0139】
ステップS320へ進むと統合演算部600は、監視部300の監視処理が終了するまで待機状態になる。監視処理が終了した場合、統合演算部600はステップS330へ進む。
【0140】
なお、監視処理が終了したか否かの判断は、例えば、監視処理が終了することが見込まれる時間だけ経過したか否かに基づいて行うことができる。監視処理が終了したか否かを監視部300に対して問い合わせることによって行うことができる。監視処理の終了判断方法については特に限定されない。
【0141】
ステップS330へ進むと統合演算部600は、
図7に基づいて説明した更新処理を実行する。これにより、潅漑水の供給後の環境値に基づいて、潅水スケジュールが更新される。
【0142】
なお、複数の分割エリアそれぞれに設けられた複数の監視部300それぞれの潅水スケジュールの少なくとも一部における、潅漑水の供給開始時刻を一律に同時刻に定めてもよい。ただし、複数の分割エリアそれぞれで要求される潅漑水の供給量は異なることが想定される。そのために複数の分割エリアそれぞれでの潅漑水の供給開始時刻を一律に同時刻にしたとしても、複数の分割エリアそれぞれでの潅漑水の供給終了時刻は同一若しくは不同になる。
【0143】
係る構成の場合、統合演算部600はステップS310において、複数の分割エリアそれぞれに設けられた複数の監視部300の少なくとも一部に向けて給水信号を出力する。統合演算部600はステップS320において、複数の潅水スケジュールのうち、最も給水時間の長い分割エリアにおける監視部300での監視処理が終了するまで待機状態になる。
【0144】
<ユーザ更新処理>
統合演算部600は
図11に示すユーザ更新処理を、潅水スケジュールや間欠駆動間隔の調整に関わるユーザ指示が入力機器800から入力された際に実行している。
【0145】
ステップS410において統合演算部600は、入力されたユーザ指示を情報格納部500に格納する。この後に統合演算部600はステップS420へ進む。
【0146】
ステップS420へ進むと統合演算部600は、
図7に基づいて説明した更新処理を実行する。これにより、ユーザ指示に基づいて、潅水スケジュールや間欠駆動間隔が更新される。
【0147】
<強制更新処理>
統合演算部600は
図12に示す強制更新処理を、潅水スケジュールと間欠駆動間隔の更新に関わるユーザ指示が入力された際に実行している。
【0148】
ステップS510において統合演算部600は、センサ処理の実行を要求する要求指示を含む指示信号(要求信号)を出力する。この要求信号が無線通信によって監視部300に出力される。この後に統合演算部600はステップS520へ進む。
【0149】
ステップS520へ進むと統合演算部600は、監視部300のセンサ処理が終了するまで待機状態になる。センサ処理が終了した場合、統合演算部600はステップS530へ進む。
【0150】
なお、センサ処理が終了したか否かの判断は、例えば、センサ処理が終了することが見込まれる時間だけ経過したか否かに基づいて行うことができる。また、センサ処理が終了したか否かを監視部300に対して問い合わせることによって行うことができる。センサ処理の終了判断方法については特に限定されない。
【0151】
ステップS530へ進むと統合演算部600は、
図7に基づいて説明した更新処理を実行する。これにより、ユーザの更新要求時の各種データに基づいて、潅水スケジュールと間欠駆動間隔が更新される。
【0152】
<個別潅水処理>
以上、
図6~
図12に基づいて説明したように、本実施形態においては、複数の分割エリアそれぞれでの潅水スケジュールが統合演算部600で決定される。そして、複数の潅水スケジュールそれぞれに基づく潅漑水の供給が統合演算部600によって制御される。
【0153】
ただし、複数の分割エリアそれぞれでの潅水スケジュールが統合演算部600で決定されるものの、複数の潅水スケジュールそれぞれに基づく潅漑水の供給が複数の監視部300それぞれによって個別に制御される構成を採用することもできる。
【0154】
この変形例の場合、
図6に示すセンサ処理と
図10に示す潅水処理に代わって、監視部300が
図13に示す個別潅水処理を実行する。
【0155】
図13に示すスタートの前において、監視部300のマイコン330はスリープモードになっている。RTC350からウェイクアップ信号が入力されると、マイコン330はスリープモードから通常モードに切り換わる。それとともに、マイコン330は
図13に示す個別潅水処理を実行し始める。個別潅水処理はマイコン330の間欠駆動間隔で実行される。監視部300は個別潅水処理をサイクルタスクとして実行する。
【0156】
ステップS610においてマイコン330は、情報格納部500に格納された潅水スケジュールと間欠駆動間隔を読み込む。この後にマイコン330はステップS620へ進む。
【0157】
ステップS620へ進むとマイコン330は、読み込んだ潅水スケジュールにおける潅漑水の供給開始時刻後になっているか否かを判定する。潅漑水の供給開始時刻後の場合、マイコン330はステップS630へ進む。潅漑水の供給開始時刻前の場合、マイコン330はステップS640へ進む。
【0158】
ステップS630へ進むとマイコン330は、
図9に示す給水処理を実行する。その後、マイコン330はステップS640へ進む。
【0159】
ステップS640へ進むとマイコン330は、読み込んだ間欠駆動間隔と、記憶している間欠駆動間隔とを比較する。両者に差がある場合、マイコン330はステップS650へ進む。両者に差がない場合、マイコン330はステップS660へ進む。
【0160】
ステップS650へ進むとマイコン330の処理部334はRTC350のウェイクアップ信号を出力する時間間隔を調整する。これにより間欠駆動間隔が更新される。この後、マイコン330はステップS660へ進む。
【0161】
ステップS660へ進むとマイコン330は、
図6に基づいて説明したセンサ処理を実行する。センサ処理を実行し終えるとマイコン330はスリープモードに移行し、個別潅水処理を終了する。
【0162】
なお、予め読み込んだ潅水スケジュールに含まれる給水開始時刻時にRTC350から給水開始信号を出力するように設定しておいてもよい。マイコン330はこの給水開始信号を受信すると、
図9に示す給水処理を実行してもよい。
【0163】
<独立更新>
さらに例示すると、複数の分割エリアそれぞれでの潅水スケジュールを複数の監視部300それぞれが独立して決定する構成を採用することもできる。係る構成においては、複数の監視部300それぞれが
図7に示す更新処理を実行する。
【0164】
ステップS110において複数の監視部300それぞれは、情報格納部500に格納されたユーザのユーザ指示、植物30の成長阻害水分点と永久しおれ点、および、植物30が単位時間あたりに水分を吸収する吸水量と土壌の水分保持能力などの諸情報を読み込む。それとともに複数の監視部300それぞれは、環境センサ310で検出される環境値を取得する。
【0165】
なお、通信障害のために、情報格納部500に格納された諸情報を複数の監視部300が読み込めなくなることが想定される。そのために上記構成の場合、複数の監視部300それぞれは情報格納部500から読み込んだ諸情報を記憶しておく。そしてこれら記憶した情報が通信障害などのために更新されない場合、複数の監視部300それぞれは、その更新されていない情報と、環境センサ310で検出される環境値とに基づいて潅水スケジュールを決定する。若しくは、複数の監視部300それぞれは、環境センサ310で検出される環境値に基づいて潅水スケジュールを決定する。
【0166】
<監視部通信>
圃場20が広かったり、起伏が激しかったり、天気が荒れたりしている場合、通信障害によって、統合演算部600と複数の監視部300それぞれとの間での情報伝達がうまくいかないことが起こりえる。統合通信部400と複数の監視部300それぞれとの間での無線通信がうまくいかないことが起こりえる。
【0167】
圃場20の起伏や通信を阻害する障害物を何ら考慮しなかった場合、統合通信部400との離間距離の短い監視部300は、統合通信部400との離間距離の遠い監視部300と比べて、統合通信部400との通信障害が起きがたいことが期待される。
【0168】
そこで、例えば複数の監視部300のうち、統合通信部400との離間距離の短い監視部300を子機とし、離間距離の長い監視部300を孫機とする。そして、孫機と統合通信部400との無線通信を、子機を介して行う構成を採用することもできる。
【0169】
<天気予報と潅水スケジュール>
これまでに説明したように、情報格納部500には土壌水分量の現在値と減少変化の予測値、および、ユーザ指示が格納される。そして情報格納部500には植物30の成長阻害水分点と永久しおれ点、および、植物30が単位時間あたりに水分を吸収する吸水量と土壌の水分保持能力が格納されている。
【0170】
これらの他に、
図1と
図3に示すように、情報格納部500には外部情報源1000から出力配信される圃場20の天気予報が格納される。図面においては外部情報源1000をESIと表記している。
【0171】
図7に基づいて説明した更新処理のS110において統合演算部600は、この天気予報を含む諸情報を情報格納部500から読み出す。そして統合演算部600はS120において複数の監視部300それぞれの潅水スケジュールを決定する。
【0172】
<目標値と推定値>
統合演算部600は、潅水スケジュールを決定するにあたって、例えば
図14~
図19に示す土壌水分量の目標値と推定値を算出する。
図14~
図19の縦軸は土壌水分量を示している。横軸は時間を示している。図面において土壌水分量をW、時間をTで表記している。
【0173】
土壌水分量の目標値は、当然ながらにして、成長阻害水分点と永久しおれ点との間の値に設定される。そして、植物30の健全な育成を試みるために、土壌水分量の目標値は理論値である成長阻害水分点と永久しおれ点それぞれからある程度離れた値に設定される。
【0174】
統合演算部600は、この土壌水分量の目標値として、成長阻害水分点側の上限目標値と、永久しおれ点側の下限目標値とを設定する。統合演算部600は潅水スケジュールの設定される潅水期間においては、土壌水分量の推定値がこの上限目標値と下限目標値との間になるように、潅水スケジュールを決定する。また、大雨のために土壌水分量の推定値が上限目標値を上回ることが予想されたとしても、統合演算部600は土壌水分量の推定値が成長阻害水分点を超えないように潅水スケジュールを決定する。上限目標値が第1目標値に相当する。下限目標値が第2目標値に相当する。
【0175】
図面において成長阻害水分点をGBMP、永久しおれ点をPWP、上限目標値をULT、下限目標値をLLTと表記している。成長阻害水分点と永久しおれ点を破線で示している。上限目標値と下限目標値を一点鎖線で示している。そして土壌水分量の推定値を実線で示している。
【0176】
成長阻害水分点と上限目標値との間には乖離がある。この上限乖離幅は、上記した植物30の健全な育成を加味するとともに、圃場20の気候に基づいて決定される。この圃場20の気候には、潅水スケジュールの潅水期間での圃場20の平均的な降雨量の期待値や、潅水スケジュールの潅水期間での天気予報によって予測される総降雨量が含まれている。潅水期間での圃場20の平均的な降雨量の期待値は情報格納部500に格納されている。図面において上限乖離幅をULDと表記している。
【0177】
同様にして、永久しおれ点と下限目標値との間には乖離がある。この下限乖離幅は、植物30の健全な育成を加味するとともに、給水装置100で故障が起きた時に復旧の見込まれる復旧時間や土壌水分量の単位時間あたりの減少量などに基づいて決定される。例えば、下限乖離幅は復旧時間と土壌水分量の単位時間あたりの減少量とを乗算した値に基づいて決定される。復旧時間は情報格納部500に格納されている。図面において下限乖離幅をLLDと表記している。
【0178】
例えば外部情報源1000から1週間分の天気予報が情報格納部500に格納される場合、統合演算部600は1週間分の潅水スケジュールを決定する。この1週間の間において、天気予報によって何ら降雨予報がない場合、土壌水分量の推定値は時間経過とともに漸次低下することが予想される。この土壌水分量の推定値の単位時間あたりの減少量は、作土層の土壌水分量の減少変化の予測値に基づいて決定される。以下、表記を簡便とするため、必要に応じて、土壌水分量の推定値を、単に推定値と表記する。
【0179】
<突発給水>
図14に示す一例では、時刻t0から推定値が漸次低下する。このように漸次低下した結果、推定値は時刻t1において下限目標値を下回ることが予想される。そこで統合演算部600は、この時刻t1での潅漑水の供給開始を決定する。このように一例として示すように、潅漑水の供給開始時刻を、推定値が下限目標値に到達する時刻に設定することができる。
【0180】
統合演算部600は、推定値が上限目標値に達するように、時刻t1での給水量を決定する。すなわち統合演算部600は、時刻t1での給水時間tswを決定する。これにより給水時間tswだけ経過した時刻t2になると、推定値は上限目標値に達する。その後、推定値は再び漸次低下する。なお図面においては、給水時間tswを誇張して長めに表記している。
【0181】
上記の給水によって、時刻t0から1週間経過後の時刻teにおいて推定値は上限目標値と下限目標値との間にあることが期待される。そのために統合演算部600は時刻t2から時刻teの間での潅漑水の供給を行わないことを決定する。
【0182】
さらに例示すれば、例えば
図15に示すように、潅水スケジュールの潅水期間において、天気予報によって時刻trにおいて棒で示すだけの降雨予報がある場合、統合演算部600は潅水スケジュールを以下のように決定する。
【0183】
図15に示す一例においても、時刻t0から推定値は漸次低下する。そして時刻t1において推定値は下限目標値を下回ることが予想される。そこで統合演算部600は、この時刻t1において潅漑水の供給開始を決定する。
【0184】
ただし、時刻t1以降の時刻trにおいて降雨が予報されている。そこで統合演算部600は、時刻t1における潅漑水の供給と時刻trにおける降雨とによって、推定値が時刻trで上限目標値になるように、時刻t1における潅漑水の供給量を決定する。この
図15に示す時刻t1での給水時間tswは、時刻trでの降雨のため、
図14に示す時刻t1での給水時間tswよりも短くなっている。
【0185】
時刻t1において潅漑水の供給が開始し、給水時間tswだけ経過した時刻t3になると潅漑水の供給が終了する。この潅漑水の供給によって推定値は上限目標値の手前まで上昇する。
【0186】
その後、推定値は再び漸次低下する。しかしながら時刻trでの降雨のため、推定値は上限目標値程度に到達することが期待される。
【0187】
なお、この一例においては、時刻trにおいて推定値を上限目標値にすることを示している。しかしながら、潅漑水の供給と降雨とによって増大する推定値が上限目標値を上回らないのであれば、どの時刻に推定値を上限目標値若しくはそれよりも低い値(中間目標値)にするのかは、特には限定されない。
【0188】
<定期給水>
これまでに説明した潅水スケジュールでは、潅漑水の供給開始時刻が、推定値が下限目標値に到達する時刻に設定される例を示した。しかしながら、潅漑水の供給開始時刻を予め設定しておく構成を採用することもできる。
【0189】
以下、係る構成における潅水スケジュールを
図16~
図19に基づいて説明する。この一例においては、潅水スケジュールの潅水期間において所定の給水周期で計3回の給水が計画されている。時刻ts1、ts2、ts3において潅漑水の供給が行われる。
【0190】
例えば
図16に示すように、潅水期間において、天気予報によって何ら降雨予報がない場合、統合演算部600は潅水スケジュールを以下のように決定する。
【0191】
推定値は時刻t0から第1供給時刻ts1に至るまで漸次低下することが予想される。統合演算部600は、推定値が上限目標値に達するように、第1供給時刻ts1での給水量を決定する。すなわち統合演算部600は、第1供給時刻ts1での第1給水時間tsw1を決定する。
【0192】
第1供給時刻ts1での給水が行われた後、推定値は第2供給時刻ts2に至るまで漸次低下する。統合演算部600は、推定値が上限目標値に達するように、第2供給時刻ts2での第2給水時間tsw2を決定する。
【0193】
第2供給時刻ts2での給水が行われた後、推定値は第3供給時刻ts3に至るまで漸次低下する。統合演算部600は、推定値が上限目標値に達するように、第3供給時刻ts3での第3給水時間tsw3を決定する。
【0194】
以上に示した潅水スケジュールに基づく潅漑水の供給を実行することで、時刻t0から1週間経過後の時刻teにおいて推定値は上限目標値の手前の値にあることが期待される。潅水スケジュールにおいて土壌水分量が上限目標値の近傍に保たれることが期待される。なお当然ではあるが、供給時刻での給水量を調整することで、潅水スケジュールにおいて土壌水分量を中間目標値の近傍に保ってもよい。
【0195】
例えば
図17に示すように、潅水期間において、天気予報によって時刻trにおいて棒で示すだけの降雨量の降雨予報がある場合、統合演算部600は潅水スケジュールを以下のように決定する。
【0196】
図17に示す一例においても、推定値は時刻t0から第1供給時刻ts1に至るまで漸次低下する。統合演算部600は、推定値が上限目標値に達するように、第1供給時刻ts1での第1給水時間tsw1を決定する。
【0197】
この後、推定値は第2供給時刻ts2に至るまで漸次低下する。そして、第2供給時刻ts2以降の時刻trにおいて降雨が予報されている。そこで統合演算部600は、第2供給時刻ts2における潅漑水の供給と時刻trにおける降雨とによって、推定値が時刻trで上限目標値になるように、第2供給時刻ts2での第2給水時間tsw2を決定する。この
図17に示す第2給水時間tsw2は、時刻trでの降雨のため、
図16に示す第2給水時間tsw2よりも短くなっている。
【0198】
第2供給時刻ts2での給水が行われた後、推定値は上限目標値の手前まで上昇する。その後、推定値は再び漸次低下する。しかしながら時刻trでの降雨により、推定値は上限目標値程度に到達する。
【0199】
時刻trでの降雨の後、推定値は第3供給時刻ts3に至るまで漸次低下する。この際、統合演算部600は、推定値が上限目標値に達するように、第3供給時刻ts3での第3給水時間tsw3を決定する。この
図17に示す第3給水時間tsw3は、第2給水時間tsw2以降の時刻trでの降雨のため、
図16に示す第3給水時間tsw3よりも短くなっている。
【0200】
例えば
図18に示すように、潅水期間において、天気予報によって時刻trにおいて棒で示すだけの大降雨量の降雨予報がある場合、統合演算部600は潅水スケジュールを以下のように決定する。
【0201】
統合演算部600は第2供給時刻ts2における潅漑水の供給と時刻trにおける降雨とによって、時刻trにおいて推定値が上限目標値を超えるか否かを判定する。
図18に示す一例では、時刻trでの降雨量が多いため、例え第2供給時刻ts2での給水の中止を決定したとしても、推定値が時刻trにおいて上限目標値を超えることが予想される。
【0202】
そこで統合演算部600は、例えば
図19に示すように、第2供給時刻ts2での給水を中止した際における時刻trでの推定値と上限目標値との差分量の分だけ、第1供給時刻ts1での給水量を低減する。これにより時刻trでの推定値が上限目標値になっている。
【0203】
このように統合演算部600は、降雨予報時刻よりも手前での供給時刻における総給水量を、降雨予報時刻において推定量が上限目標値を超えることが抑えられるように、潅水スケジュールを決定する。
【0204】
なお、大雨のために降雨予報時刻で推定値が上限目標値を超えるとともに、その降雨予報時刻よりも前の時刻で推定値が下限目標値を下回ることが想定される。この場合、統合演算部600は、降雨予報時刻において推定値が成長阻害水分点を超えない範囲において、降雨予報時刻よりも前の供給時刻での給水を行う。
【0205】
急激な乾燥のために、定期的な供給時刻の間において、推定値が下限目標値を下回ることが想定される。そのため、これまでに
図16~
図19に基づいて説明した定期給水に追加して、
図14と
図15に基づいて説明した突発給水を行ってもよい。すなわち、定期的な供給時刻の間における、推定値が下限目標値に到達する時刻に、給水を実行してもかまわない。若しくは、係る突発的な給水の実行を避けるために、推定値の単位時間あたりの減少量に基づいて、給水周期を変更してもよい。
【0206】
供給時刻と降雨予報時刻とが被ることが想定される。降雨量はあくまで予報であり、降雨によって土壌水分量がどれだけ増大するのかを予測するのは困難である。そのため、降雨時に給水を行うと、土壌水分量が意図せずして過剰に増大する虞がある。これを避けるため、供給時刻と降雨予報時刻とが被る場合、推定値が下限目標値を下回らない範囲において、供給時刻を降雨予報時刻よりも後の時刻に変更する。
【0207】
<潅水スケジュールの更新処理>
統合演算部600は、
図7に基づいて説明した更新処理のステップS120において、
図20に示す潅水スケジュールの更新処理を実行する。
【0208】
図20に示すスタートの前において、統合演算部600は
図7に示すステップS110を実行している。そのために統合演算部600は情報格納部500に格納された諸情報を読み出している。
【0209】
ステップS121において統合演算部600は、作土層から蒸発する水分量に関わる環境値、植物30が単位時間あたりに水分を吸収する吸水量、および、単位時間あたりに作土層よりも下層に浸透する水分量に基づいて土壌水分量の単位時間あたりの減少量を算出する。そして統合演算部600は、算出した土壌水分量の単位時間あたりの減少量と、情報格納部500から読み出した土壌水分量の現在値と、に基づいて、給水と降雨による土壌水分量の増大を無視した、土壌水分量の推定値を算出する。この後に統合演算部600はステップS122へ進む。
【0210】
ステップS122へ進むと統合演算部600は、成長阻害水分点、潅水スケジュールの潅水期間での圃場20の平均的な降雨量の期待値、および、潅水スケジュールの潅水期間での天気予報によって予測される総降雨量などに基づいて上限目標値を算出する。それとともに統合演算部600は、永久しおれ点、復旧時間、および、ステップS121で算出した土壌水分量の単位時間あたりの減少量などに基づいて下限目標値を算出する。この後に統合演算部600はステップS123へ進む。
【0211】
突発的に潅漑水を供給する場合、ステップS123において統合演算部600は、推定値が下限目標値を下回ることの予想される時刻を給水時刻として定める。定期的に潅漑水を供給する場合、ステップS123において統合演算部600は、前回の給水時刻からの経過時間と給水周期に基づいて、潅水スケジュールにおける給水時刻を算出する。また、突発的な給水と定期的な給水の両方を行う場合、ステップS123において統合演算部600は、推定値が下限目標値を下回ることの予想される時刻、および、前回の給水時刻からの経過時間と給水周期に基づいて、潅水スケジュールにおける給水時刻を算出する。この後に統合演算部600はステップS124へ進む。
【0212】
ステップS124へ進むと統合演算部600は、給水時刻における推定値と上限目標値との差に基づいて、給水量を算出する。統合演算部600は、潅水スケジュールの始め側の給水時刻から終わり側の給水時刻の順に、各給水時刻での給水量を算出する。こうすることで統合演算部600は、給水による土壌水分量の増大を加味した、土壌水分量の推定値を算出する。この後に統合演算部600はステップS125へ進む。
【0213】
ステップS125へ進むと統合演算部600は、潅水スケジュールの潅水期間における、降雨による土壌水分量の増大を算出する。もちろん、潅水期間において天気予報での降雨予報が一切ない場合、降雨による土壌水分量の増大はゼロである。この後に統合演算部600はステップS126へ進む。
【0214】
ステップS126へ進むと統合演算部600は、これまでに算出した給水時刻、給水量、および、降雨予報時刻での降雨によって、土壌水分量の推定値が潅水期間の全てにおいて上限目標値と下限目標値の間に収まっているか否かを判定する。土壌水分量の推定値が潅水期間の全てにおいて上限目標値と下限目標値の間に収まっている場合に統合演算部600は潅水スケジュールの更新処理を終了する。
【0215】
これに反して、土壌水分量の推定値が潅水期間の全てにおいて上限目標値と下限目標値の間に収まっていない場合、統合演算部600はステップS122へ戻る。そして統合演算部600は目標値、給水時刻、および、給水量を再計算する。統合演算部600は土壌水分量の推定値が潅水期間の全てにおいて上限目標値と下限目標値の間に収まるまでステップS123~ステップS126を繰り返す。
【0216】
なお、統合演算部600は給水量、給水時刻、目標値の順に再計算する。給水量だけを再計算した結果、土壌水分量の推定値が潅水期間の全てにおいて上限目標値と下限目標値の間に収まるのであれば、統合演算部600は給水時刻と目標値を再計算しない。給水量だけを再計算しても、土壌水分量の推定値が潅水期間の全てにおいて上限目標値と下限目標値の間に収まらない場合、統合演算部600は給水量と給水時刻を再計算する。これでも土壌水分量の推定値が潅水期間の全てにおいて上限目標値と下限目標値の間に収まらない場合、統合演算部600は給水量、給水時刻、および、目標値それぞれを再計算する。この際、統合演算部600は上限目標値を成長阻害水分点に近づける。また統合演算部600は下限目標値を永久しおれ点に近づける。
【0217】
<作用効果>
これまでに説明したように、環境値などに基づく土壌水分量の推定値と天気予報とに基づいて、潅水スケジュールが決定される。これによれば、降雨や乾燥などの天候変化によって野外の分割エリアの土壌水分量が植物30にとって不適になることが抑制される。土壌水分量が成長阻害水分点を上回ったり、永久しおれ点を下回ったりすることが抑制される。
【0218】
統合演算部600は、潅水スケジュールの潅水期間の全てにおいて、土壌水分量の推定値が成長阻害水分点よりも低い上限目標値を上回ることがないように給水量を決定している。そして統合演算部600は、成長阻害水分点と上限目標値との乖離幅(上限乖離幅)を、圃場20の気候などに基づいて決定している。この圃場20の気候には、潅水期間での圃場20の平均的な降雨量の期待値や、潅水期間での天気予報によって予測される総降雨量が含まれている。
【0219】
このように上限乖離幅を設定することで、潅漑水の供給によって土壌水分量を上限目標値に近づけた後、天気予報よりも多めの降雨があったとしても、土壌水分量が成長阻害水分点に到達することが抑制される。
【0220】
統合演算部600は、潅水スケジュールにおける土壌水分量の推定値が永久しおれ点よりも高い下限目標値を下回ることがないように給水量を決定している。そして統合演算部600は、永久しおれ点と下限目標値との乖離幅(下限乖離幅)を、復旧時間と土壌水分量の単位時間あたりの減少量などに基づいて決定している。
【0221】
このように下限乖離幅を設定することで、例え土壌水分量が下限目標値に近い際に、給水弁152の故障などによって潅漑水の供給ができなくなったとしても、その故障が復旧されるまでに、土壌水分量が永久しおれ点に到達することが抑制される。
【0222】
統合演算部600は、潅水スケジュールにおける土壌水分量の推定値が下限目標値に達する時刻に給水を行う。これにより土壌水分量が下限目標値を下回ることが抑制される。
【0223】
統合演算部600は、降雨予報時刻と潅漑水の供給時刻とを異ならせる。これによれば、降雨予報よりも降雨量が多かったとしても、土壌水分量が過剰に増大することが抑制される。
【0224】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を
図21~
図24に基づいて説明する。
【0225】
第1実施形態では、統合演算部600が外部情報源1000から入力される天気予報を用いて複数の分割エリアそれぞれの潅水スケジュールを決定する例を示した。これに対して本実施形態では、統合演算部600が複数の監視部300それぞれで検出される環境値に基づいて、圃場20の天候変化を予測する。そして統合演算部600はその天候予測を用いて複数の分割エリアそれぞれの潅水スケジュールを決定する。
【0226】
例えば、日本においては通称アメダスと呼ばれる自動気象データ収集システムが各地方の気象観測地点に設けられている。これら各地方の気象観測地点に設けられたアメダスで、降雨量、気温、日照時間、風向と風速などの気象データが観測されている。また気象衛星などによって日本上空の雨雲の分布と推移などの気象データが観測されている。これら各地方の気象観測地点のアメダスと気象衛星で観測される気象データに基づく天気予報が気象庁から発表されている。
【0227】
これは、他の国々においても同様である。各地方の気象観測地点と衛星とによって観測された気象データに基づく天気予報が各国で発表されている。
【0228】
ただし、気象データを取得する気象観測地点の分布は均等にはなっていない。気象観測地点の分布密度は人口密度が密な地域ほど密になっている。換言すれば、気象観測地点の分布密度は人口密度が疎な地域ほど粗になっている。
【0229】
潅水システム10の設けられる圃場20は概して人口密度の疎な地域に開墾される。そのため、天気予報で通知される圃場20の開墾された地域の天候変化は、圃場20の全域で差がない一律的なものになっていることが起こりうる。
【0230】
人口密度の疎な地域に開墾される圃場20は、概して広かったり、起伏が激しかったり、気候が激しかったりする。そのため、圃場20の全域の天候変化を通知する天気予報に反して、圃場20の東側と西側とで天候が著しく異なることが起こりうる。東側で豪雨、西側で晴天、という状況が起こりうる。雨雲の動きによっては、東側と西側とでの一日における積算降雨量や積算日射量が著しく異なることが起こりうる。このように東側と西側とでの天候変化が異なるにもかかわらず、東側と西側の天気予報が同等であることが起こりうる。
【0231】
そこで、本実施形態の潅水システム10では、複数の分割エリアそれぞれで検出される環境値に基づいて、圃場20の天候変化を予測する。そして、その天候予測を用いて、複数の分割エリアそれぞれの潅水スケジュールを決定する。
【0232】
本実施形態では、複数の監視部300それぞれの環境センサ310に、土壌水分センサ311、日射センサ312、レインセンサ313、温度センサ314、湿度センサ315、気圧センサ316、および、風センサ317が含まれている。これら各種センサによって分割エリアの環境値が検出される。
【0233】
これまでに説明したように、複数の監視部300は圃場20で行列配置されている。本実施形態の説明を簡便とするため、
図21~
図23に模式的に示すように、100個の監視部300が圃場20において10行10列に行列配置されているとする。行方向はx方向に相当し、東西に沿っている。列方向はy方向に相当し、南北に沿っている。
【0234】
これら図面では、例えば
図1に示す諸要素のうち、以下に説明する監視部300の行列配置とはかかわりの薄い構成要素の表記を省略している。また、表記が煩雑となることを避けるために、10行目と10列目の監視部300それぞれのみに符号を付与している。
【0235】
図面においては、ポンプ110から離間するにしたがって、行番号と列番号とを順次増大させている。例えば1行目を1Lと表記し、1列目を1Cと表記している。行番号が少ない側を北側、多い側を南側としている。列番号が少ない側を東側、多い側を西側としている。この例示では統合通信部400が圃場20の東側に位置している。そのために列番号の少ない監視部300が統合通信部400の近くに位置する監視部300に相当する。
【0236】
図面に記載の構成においては、1行~5行目の1列~5列目に位置する複数の監視部300が圃場20の北東側の環境値を観測することになる。1行~5行目の6列~10列目に位置する複数の監視部300が圃場20の北西側の環境値を観測することになる。6行~10行目の1列~5列目に位置する複数の監視部300が圃場20の南東側の環境値を観測することになる。6行~10行目の6列~10列目に位置する複数の監視部300が圃場20の南西側の環境値を観測することになる。
【0237】
以下においては表記を簡便とするため、圃場20の北東側、北西側、南東側、南西側それぞれに設けられた複数の監視部300それぞれをまとめて、北東監視部群301、北西監視部群302、南東監視部群303、南西監視部群304と表記する。図面においてはこれら4つの監視部群を区別するための境界線BLを一点鎖線で表記している。これら4つの監視部群それぞれには計25個の監視部300が含まれている。
【0238】
例えば
図22に示すように、ハッチングで示す雨雲RCが圃場20の南西側に位置する場合、南西監視部群304に含まれる複数の監視部300の一部で降雨が検出される。当然ながらにして、他の3つの監視部群に含まれる複数の監視部300それぞれでは降雨が検出されない。この降雨の検出の有無により、圃場20の南西側だけに雨雲RCがあることが検出される。
【0239】
所定時間経過した後、例えば
図23に示すように雨雲RCが進行した場合、南西監視部群304で雨滴を検出する監視部300の数が増大する。これら行方向と列方向とで隣り合う複数の監視部300で検出される環境値の差分から、雨雲RCの進行方向と速さとが検出される。
【0240】
代表として、9行9列目に位置する監視部300に着目して説明する。この監視部300は、
図22と
図23それぞれで示す時点で雨雲RCの直下に位置している。そのためにこの監視部300ではいずれの時点でも雨滴が検出される。
【0241】
これに対して、この監視部300と隣り合う8行9列目の監視部300、8行8列目の監視部300、および、9行8列目に位置する監視部300それぞれは、
図22に示す時点において雨雲RCの直下に位置していない。そのためにこれら3つの監視部300では
図22に示す時点で雨滴が検出されない。
【0242】
しかしながら、所定時間経過した後の
図23に示す時点において、これら3つの監視部300それぞれは雨雲RCの直下に位置している。そのためにこれら3つの監視部300では
図23に示す時点で雨滴が検出される。
【0243】
以上に示した複数の監視部300での雨滴検出の時間変化により、雨雲RCは9行9列目から8行9列目に向かって進んでいることが観測される。すなわち、雨雲RCは圃場20の北西側に進んでいることが観測される。
【0244】
同様にして、雨雲RCは9行9列目から8行8列目に向かって進んでいることが観測される。すなわち、雨雲RCは圃場20の北東側に進んでいることが観測される。
【0245】
雨雲RCは9行9列目から9行8列目に向かって進んでいることが観測される。すなわち、雨雲RCは圃場20の南東側に進んでいることが観測される。
【0246】
さらに言えば、
図23に示す時点において、7行9列目と7行7列目の監視部300それぞれで雨滴が検出されないのに対して、9行7列目に位置する監視部300で雨滴が検出される。
【0247】
これらの検出結果の差から、雨雲RCは圃場20の北西側と北東側よりも南東側に向かって速く進んでいることが観測される。
【0248】
以上に示したように、複数の監視部300で検出される雨滴などの環境値の差やその時間変化を検出することで、圃場20の一部の領域に生じた雨雲RCが、他の領域にどのように進行するかを予測することができる。また、圃場20内の降雨量の時間変化と積算降雨量を実際に検出するとともに予測することができる。さらに言えば、圃場20内の日射量の時間変化と積算日射量を実際に検出するとともに予測することができる。このように、圃場20内における天候変化を検出するとともに予測することができる。
【0249】
この天候予測が統合演算部600で行われる。統合演算部600は天候予測に応じて、複数の監視部300それぞれの潅水スケジュールを更新する。
【0250】
<天候予測処理>
統合演算部600は、サイクルタスクとして、
図24に示す天候予測処理を実行する。この処理結果は、
図20に基づいて説明した潅水スケジュールの更新処理に反映される。
【0251】
図24のステップS710において統合演算部600は、複数の監視部300それぞれの環境値の時間変化を算出する。また統合演算部600は、行方向と列方向で隣接する監視部300それぞれで検出される各種環境値の差と時間変化を算出する。さらに統合演算部600は、
図21~
図23に示す例に即して言えば、4つの監視部群に含まれる監視部300で検出された各種環境値の差と時間変化を算出する。その後、統合演算部600はステップS720へ進む。
【0252】
ステップS720へ進むと統合演算部600は、ステップS710で算出した値が検出誤差以下か否かを判定する。雲などによる一時的な日射の遮蔽、圃場20の各分割エリアでの起伏や土壌差などを無視すると、天候に変化がない場合、算出した値は検出誤差以下になることが予想される。天候に変化がある場合、算出した値は検出誤差よりも大きくなることが予想される。係る演算処理を行うことで、統合演算部600は天候変化の起きているエリアと天候変化の起きていないエリアとを特定する。
図22と
図23に示す降雨量の変化だけに着目して言えば、圃場20の南西側の一部が天候変化の起きているエリア、他のエリアが天候変化の起きていないエリアに相当する。
【0253】
次に統合演算部600は、天候変化の起きているエリアと天候変化の起きていないエリアの地理的な離間距離(遠近)を算出する。統合演算部600は、この離間距離と天候変化のあるエリアの環境値の時間変化に基づいて、各エリアで生じている降雨や晴天が、将来、どのエリアでどれだけ先の未来で起きるのかを算出する。このように統合演算部600は複数の分割エリアで検出される環境値に基づいて複数の分割エリアそれぞれの天候予測を行う。この後に統合演算部600はステップS730へ進む。
【0254】
ステップS730へ進むと統合演算部600は、ステップS720で算出した天候予測と外部情報源1000から通知された天気予報の差を算出する。この天候予測と天気予報の差が、例えば
図20に基づいて説明した潅水スケジュールの更新処理のステップS125に反映される。
【0255】
天候予測と天気予報の差があらかじめ決められた天候判定値よりも大きい場合、天気予報と天候予測のうち、天候予測だけを用いて潅水期間の始めのほうの潅水スケジュールを決定してもよい。
【0256】
なお、統合演算部600は、外部情報源1000から天気予報を取得せずに、天候予測に基づいて潅水スケジュールを決定してもよい。この場合、統合演算部600は
図24に示すステップS730を実行しない。また、この場合に設定される潅水スケジュールの潅水期間は、天気予報を用いる場合の潅水期間よりも短くなる。
【0257】
<作用効果>
これまでに説明したように、統合演算部600は圃場20の天候予測に基づいて潅水スケジュールを更新している。そのため、天候変化によって野外の圃場20の土壌水分量が成長阻害水分点を上回ったり、永久しおれ点を下回ったりすることが抑制される。植物30に適した土壌水分量に制御される。この結果、植物30の健全な育成が阻害されることが抑制される。
【0258】
なお本実施形態に記載の潅水システム10には、第1実施形態に記載の潅水システム10の構成要素の少なくとも1つが含まれている。そのために本実施形態の潅水システム10は、第1実施形態に記載の潅水システム10と同等の構成要素によって、第1実施形態で記載した作用効果を奏することは言うまでもない。そのためにその記載を省略する。以下に示す他の実施形態でも重複する作用効果の記載を省略する。
【0259】
(第3実施形態)
(技術分野)
本開示は、潅水システム、および、監視部に関するものである。
【0260】
(背景技術)
特開2017-9305号公報に示されるように、環境エネルギー発電変換部と制御部とを備えるセンシング装置が知られている。環境エネルギー発電変換部はセンシング対象から得られる環境エネルギーを電力に変換する。制御部は環境エネルギー発電変換部で得られる電力に基づいて、センシング装置の状態監視周期を制御している。
【0261】
(発明が解決しようとする課題)
上記公報に記載のセンシング装置では、発電で得られた電力に基づいてセンシング装置の駆動を決めている。しかしながら、センシング装置の置かれた環境の変化によって、駆動するための電力が枯渇する虞がある。
【0262】
本開示の目的は、電力の枯渇の抑制された潅水システムと監視部を提供することである。
【0263】
(課題を解決するための手段)
本開示の一態様による潅水システムは、植物(30)の生育する野外の圃場(20)を複数に分けた分割エリアそれぞれに設けられた複数の監視部(300)と、
複数の監視部それぞれと無線通信する統合演算部(600)と、を有する潅水システムであって、
監視部は、
統合演算部と無線信号を送受信する通信部(340)と、
分割エリアの環境値を検出する環境センサ(310)と、
第1モードと第1モードよりも消費電力の多い第2モードとを備え、ウェイクアップ信号が入力されると第1モードから第2モードに切り換わって演算処理を実行する演算処理部(330)と、
ウェイクアップ信号を演算処理部に起床周期で出力する起床部(350)と、
光エネルギーを電気エネルギーに変換し、電気エネルギーを電力として蓄電するとともに、蓄電された電力を演算処理部に供給する発電部(360)と、を有し、
統合演算部は、発電部に蓄電された蓄電量と、環境センサで検出された環境値と、に基づいて起床周期を決定する。
【0264】
本開示の一態様による監視部は、植物(30)の生育する野外の圃場(20)を複数に分けた分割エリアそれぞれに設けられる監視部であって、
分割エリアの環境値を検出する環境センサ(310)と、
第1モードと第1モードよりも消費電力の多い第2モードとを備え、ウェイクアップ信号が入力されると第1モードから第2モードに切り換わって演算処理を実行する演算処理部(330)と、
ウェイクアップ信号を演算処理部に起床周期で出力する起床部(350)と、
光エネルギーを電気エネルギーに変換し、電気エネルギーを電力として蓄電するとともに、蓄電された電力を演算処理部に供給する発電部(360)と、を有し、
演算処理部は、発電部に蓄電された蓄電量と、環境センサで検出された環境値と、に基づいて起床周期を決定する。
【0265】
これによれば、圃場(20)の環境変化によって蓄電量が枯渇することが抑制される。
【0266】
【0267】
第1実施形態では、複数の監視部300それぞれの備えるRTC350からウェイクアップ信号の出力される時間間隔(起床周期)が、蓄電部362に蓄電された電力量(蓄電量)に応じて決定される例を示した。すなわち、複数の監視部300それぞれの備えるマイコン330の間欠駆動間隔が、蓄電量に応じて決定される例を示した。
【0268】
これに対して本実施形態では、複数の監視部300それぞれの備えるマイコン330の間欠駆動間隔が、蓄電量、日射量、降雨量、および、時刻に基づいて決定される。また、間欠駆動間隔で実行されるセンサ処理の処理内容もこれらに基づいて決定される。
【0269】
第1実施形態で説明したように、太陽電池361で光エネルギーから電気エネルギーに変換された電力が蓄電部362に蓄電される。したがって太陽電池361に入射する光量が少なくなると、太陽電池361での発電量が低下し、それによって蓄電部362に蓄電される電力量が低下する。マイコン330の駆動によって蓄電部362に蓄電された電力が枯渇する虞がある。
【0270】
太陽電池361に入射する光量は、日射量、降雨量、および、時刻に依存している。そこで、本実施形態の統合演算部600は、複数の監視部300それぞれの備えるマイコン330の間欠駆動間隔とセンサ処理の処理内容を、蓄電量、日射量、降雨量、および、時刻それぞれに基づいて決定する。
【0271】
なお、厳密に言えば、太陽電池361に入射する光量は複数の監視部300それぞれの緯度にも依存している。複数の監視部300それぞれの緯度は、例えば、複数の監視部300それぞれにGPSを搭載することで検出することができる。若しくは、統合演算部600にGPSを搭載したり、入力機器800を介して統合演算部600にユーザから圃場20の緯度を入力したりすることで、複数の監視部300それぞれの緯度が決定される。以下においては特に言及しないが、統合演算部600は間欠駆動間隔とセンサ処理の処理内容を決定するに当たって、複数の監視部300の緯度も用いる。
【0272】
<センサ処理の更新処理>
統合演算部600は、
図7に基づいて説明した更新処理のステップS120において、
図25に示すセンサ処理の更新処理を実行する。この処理結果は、
図8に基づいて説明した更新処理の間欠駆動間隔に反映される。またこの処理結果は、
図6に基づいて説明したセンサ処理の処理内容に反映される。統合演算部600はこの処理を行うための比較値として、充電値、昼夜判定値、および、雨天判定値を備えている。
【0273】
図25のステップS810において統合演算部600は、蓄電量が充電値よりも大きいか否かを判定する。蓄電量が充電値よりも大きい場合、統合演算部600はステップS820へ進む。蓄電量が充電値以下の場合、統合演算部600は蓄電部362の電力量が枯渇する虞があると判断する。この際に統合演算部600はステップS830へ進む。
【0274】
ステップS820へ進むと統合演算部600は、日射量が昼夜判定値よりも大きいか否かを判定する。日射量が昼夜判定値よりも大きい場合、統合演算部600は発電するだけの光量が太陽電池361に入射されていると判定する。この際に統合演算部600はステップS840へ進む。これに反して日射量が昼夜判定値以下の場合、統合演算部600はステップS830へ進む。
【0275】
ステップS840へ進むと統合演算部600は、降雨量が雨天判定値よりも大きいか否かを判定する。降雨量が雨天判定値よりも大きい場合、統合演算部600は降雨があると判定する。この際に統合演算部600はステップS850へ進む。これに反して降雨量が雨天判定値以下の場合、統合演算部600はステップS860へ進む。
【0276】
ステップS850へ進むと統合演算部600は、蓄電量と日射量と降雨量それぞれの時間変化を検出する。蓄電量が増加傾向にある場合、統合演算部600は検出した蓄電量を増加補正する。逆に蓄電量が減少傾向にある場合、統合演算部600は検出した蓄電量を減少補正する。
【0277】
同様にして、日射量が増加傾向にある場合、統合演算部600は検出した日射量を増加補正する。日射量が減少傾向にある場合、統合演算部600は検出した日射量を減少補正する。降雨量が増加傾向にある場合、統合演算部600は検出した降雨量を増加補正する。降雨量が減少傾向にある場合、統合演算部600は検出した降雨量を減少補正する。以上に示したように、蓄電量、日射量、および、降雨量の増減傾向に合わせて、蓄電量、日射量、および、降雨量を増減補正する。この後に統合演算部600はステップS870へ進む。
【0278】
ステップS870へ進むと統合演算部600は、ステップS850で増減補正した蓄電量と日射量と降雨量それぞれと現在時刻とに基づいて間欠駆動間隔とセンサ処理の処理内容を決定する。そして統合演算部600はセンサ処理の更新処理を終了する。
【0279】
具体的に言えば、ステップS870において統合演算部600は、先ず蓄電量と現在時刻に基づいて間欠駆動間隔の基本値を決定する。統合演算部600は蓄電量が高いほどに間欠駆動間隔の基本値を短く設定する。統合演算部600は現在時刻が日差しの強い時刻に近いほどに間欠駆動間隔の基本値を短く設定する。
【0280】
そして例えば
図26に示すように、統合演算部600は日射量が増大するほどに間欠駆動間隔の基本値を短くする。
図27に示すように、統合演算部600は降雨量が増大するほどに間欠駆動間隔の基本値を長くする。
【0281】
図26と
図27の縦軸は任意値、横軸は時間を示している。任意値をAU、時間をTで表記している。日射量と降雨量を実線で示している。間欠駆動間隔を棒グラフの隣接間隔で示している。
【0282】
また、ステップS870において統合演算部600は、蓄電量と現在時刻に基づいてセンサ処理の基本内容を決定する。そして統合演算部600は、日射量が増大するほどにセンサ処理での処理内容を充実させる。すなわち、処理負荷を高める。統合演算部600は降雨量が増大するほどにセンサ処理での処理内容を簡素化させる。そなわち、処理負荷を弱める。
【0283】
図6に基づいて説明したように、センサ処理において複数の監視部300それぞれのマイコン330は、各種センサから入力されるセンサ信号を取得し、そのセンサ信号と取得時刻とを無線通信によって通信部340から統合通信部400に出力している。センサ処理の処理内容の充実度は、各種センサから入力される複数のセンサ信号の処理数に相当する。センサ信号の処理数が多いほどにセンサ処理の処理内容が充実する。センサ信号の処理数が多いほどに処理負荷が強まる。
【0284】
これまでに説明したように、センサ信号の種類としては、水圧、電流、電力、土壌水分量、日射量、降雨量、温度、湿度、気圧、および、風量がある。これらにはセンサ処理において選定される優先順位がある。優先順位を一例として示すと、例えば、水圧、電力、土壌水分量、日射量、降雨量、電流、温度、湿度、気圧、風量の順になっている。水圧、電力、土壌水分量それぞれの優先順位が他と比べて高くなっている。これらの次に日射量と降雨量の優先順位が高くなっている。これらに比べて電流、温度、湿度、気圧、風量の優先順位が低くなっている。センサ処理での処理内容が最大限に簡素化された場合、センサ処理において、水圧、蓄電量、土壌水分量のうちの少なくとも1つが無線通信によって通信部340から統合通信部400に出力される。
【0285】
フローを遡って、ステップS840において降雨量が雨天判定値以下と判定してステップS860へ進むと統合演算部600は、蓄電量と日射量の時間変化を検出する。そして統合演算部600は上記したように蓄電量と日射量を増減補正する。この後に統合演算部600はステップS880へ進む。
【0286】
ステップS880へ進むと統合演算部600は、ステップS860で増減補正した蓄電量と日射量それぞれと現在時刻とに基づいて間欠駆動間隔とセンサ処理の処理内容を決定する。
【0287】
フローを遡って、ステップS820において日射量が昼夜判定値以下と判定してステップS830へ進むと統合演算部600は、蓄電量の時間変化を検出する。同様にして、ステップS810において蓄電量が充電値以下と判定してステップS830へ進むと統合演算部600は、蓄電量の時間変化を検出する。そして統合演算部600は上記したように蓄電量を増減補正する。この後に統合演算部600はステップS890へ進む。
【0288】
ステップS890へ進むと統合演算部600は、ステップS830で増減補正した蓄電量と現在時刻とに基づいて間欠駆動間隔とセンサ処理の処理内容を決定する。
【0289】
なお、ステップS830とステップS890においては、単に間欠駆動間隔とセンサ処理の処理内容を規定値に設定してもよい。この規定値としては、間欠駆動間隔を最長、センサ処理において水圧、蓄電量、土壌水分量を選定、などと設定することができる。
【0290】
なお、晴天であるにも関わらず、俄雨や給水による被水がある場合、水滴による光の屈折と水滴の蒸発とによって、日射センサ312で検出される日射量が乱雑に変化する。そしてレインセンサ313で一時的に降雨が検出される。係る変化のために間欠駆動間隔とセンサ処理の処理内容とが逐一変化することを避けるために、統合演算部600はセンサ処理の更新処理において日射量と降雨量それぞれの時間平均値を用いてもよい。
【0291】
<作用効果>
以上に示したように、間欠駆動間隔(起床周期)が、蓄電量、日射量、降雨量、時刻に基づいて決定される。このように間欠駆動間隔が監視部300の蓄電量と圃場20の環境値に応じて決定されるため、蓄電量の枯渇が抑制される。
【0292】
また、間欠駆動間隔が蓄電量と圃場20の環境値に応じて適切に短くなる。そのために蓄電量の減少が抑制されるとともに、センサ処理の実行間隔が狭まる。これにより情報格納部500に格納されるセンサ情報の更新頻度が低下することが抑制される。この結果、センサ情報に基づいて決定される潅水スケジュールが、圃場20の実際の環境値に基づいて決定される潅水スケジュールに近くなる。
【0293】
蓄電量が充電値以下の場合、日射量と降雨量とに依らずに蓄電量に基づいて間欠駆動間隔を決定している。これによれば、蓄電量が充電値以下であるにも関わらずに、例えば夜間でのライトから照射される光の入射による一時的な日射センサ312での日射量の検出によって間欠駆動間隔が短くなることが抑制される。これにより蓄電量が枯渇することが抑制される。
【0294】
日射量が昼夜判定値以下の場合、日射量に依らずに蓄電量に基づいて間欠駆動間隔を決定している。これによれば、光の入射による太陽電池361での発電が期待できない夜間に間欠駆動間隔が日射量と降雨量に基づいて変動することが抑制される。
【0295】
降雨量が雨天判定値以下の場合、降雨量に依らずに間欠駆動間隔を決定している。これによれば、俄雨や給水による一時的な被水によって、実際には降雨がないにも関わらずに、間欠駆動間隔が変動することが抑制される。
【0296】
センサ処理の処理内容の充実度が監視部300の蓄電量と圃場20の環境値に応じて決定される。このようにセンサ処理による電力消費量が監視部300の蓄電量と圃場20の環境値に応じて決定されるため、蓄電量の枯渇が抑制される。
【0297】
<センサ処理の更新処理の変形例>
センサ処理の更新処理において、間欠駆動間隔とセンサ処理の処理内容を決定する例を示した。しかしながらこのセンサ処理の更新処理において、センサ処理の処理内容を変更しなくともよい。この場合、統合演算部600は
図25に示すステップS870~ステップS890においてセンサ処理の処理内容の決定を実行しない。
【0298】
センサ処理の更新処理において、変化値補正を行う例を示した。しかしながら変化値補正を行わなくともよい。この場合、統合演算部600はステップS830、ステップS850、ステップS860を実行しない。
【0299】
センサ処理の更新処理において、降雨量を用いる例を示した。しかしながら降雨量を用いなくともよい。この場合、統合演算部600はステップS840、ステップS850、および、ステップS870を実行しない。ステップS820において日射量が昼夜判定値よりも大きい場合、統合演算部600はステップS860へ進む。
【0300】
センサ処理の更新処理において、日射量を用いる例を示した。しかしながら日射量を用いなくともよい。この場合、統合演算部600はステップS820、ステップS860、および、ステップS880を実行しない。ステップS810において蓄電量が充電値よりも大きい場合、統合演算部600はステップS840へ進む。そして統合演算部600はステップS850において蓄電量と降雨量の増減補正を行い、ステップS870において蓄電量と降雨量それぞれと現在時刻とに基づいて間欠駆動間隔とセンサ処理の処理内容を決定する。
【0301】
センサ処理の更新処理において、現在時刻を用いる例を示した。しかしながら現在時刻を用いなくともよい。この場合、統合演算部600はステップS870~ステップS890において現在時刻を用いて間欠駆動間隔とセンサ処理の処理内容とを決定しない。
【0302】
統合演算部600が複数の監視部300それぞれの間欠駆動間隔とセンサ処理の処理内容を決定する例を示した。しかしながら複数の監視部300それぞれが間欠駆動間隔とセンサ処理の処理内容を決定してもよい。
【0303】
<監視部の駆動開始時刻>
なお、これまでの実施形態では、複数の監視部300それぞれの間欠駆動における駆動開始時刻について言及してこなかった。これら複数の監視部300の駆動開始時刻は等しくてもよいし異なってもよい。
【0304】
以下、複数の監視部300それぞれの駆動開始時刻を
図28~
図31に一例として示す。これら図面においては、説明を簡便とするために、駆動開始時刻が等しい監視部300に同一のハッチングを施している。
【0305】
図28に示す一例では、奇数列目に位置する複数の監視部300それぞれの駆動開始時刻が等しくなっている。偶数列目に位置する複数の監視部300それぞれの駆動開始時刻が等しくなっている。
【0306】
図29に示す一例では、奇数列目であり奇数行目に位置する複数の監視部300それぞれと偶数列目であり偶数行目に位置する複数の監視部300それぞれの駆動開始時刻が等しくなっている。奇数列目であり偶数行目に位置する複数の監視部300それぞれと偶数列目であり奇数行目に位置する複数の監視部300それぞれの駆動開始時刻が等しくなっている。
【0307】
図30に示す一例では、圃場20の北東側に位置する北東監視部群301に含まれる複数の監視部300それぞれの駆動開始時刻が等しくなっている。圃場20の北西側に位置する北西監視部群302に含まれる複数の監視部300それぞれの駆動開始時刻が等しくなっている。圃場20の南東側に位置する南東監視部群303に含まれる複数の監視部300それぞれの駆動開始時刻が等しくなっている。圃場20の南西側に位置する南西監視部群304に含まれる複数の監視部300それぞれの駆動開始時刻が等しくなっている。
【0308】
図31には、複数の監視部300のうち1行目に位置する10個の監視部300それぞれの蓄電量を、100個の監視部300のうちの代表として棒グラフで示している。縦軸が蓄電量、横軸が列を示している。蓄電量はPSと表記し、列はCと表記している。
【0309】
図31に示す一例では、5列目、6列目、4列目、7列目、3列目、8列目、2列目、9列目、1列目、10列目に位置する監視部300の順に、蓄電量が高くなっている。係る状態において、1行目に位置する複数の監視部300それぞれの駆動開始時刻を、5列目、6列目、4列目、7列目、3列目、8列目、2列目、9列目、1列目、10列目の蓄電量の大きさ順にしてもよい。
【0310】
若しくは、
図31に破線で示す基準蓄電量よりも蓄電量の高い5個の監視部300それぞれの駆動開始時刻を等しくしてもよい。この基準蓄電量よりも蓄電量の低い5個の監視部300それぞれの駆動開始時刻を等しくしてもよい。図面では基準蓄電量をSPSと表記している。
【0311】
<太陽電池の劣化判定>
なお、日射センサ312で検出される日射量と、太陽電池361での発電量とには相関関係がある。太陽電池361で劣化が生じていなければ、日射センサ312で検出される日射量に応じた発電が太陽電池361でなされることが期待される。この太陽電池361で実際に発電された電力量は上記の電流センサ363で検出される電流量などに基づいて算出することができる。
【0312】
そこで、検出された日射量から太陽電池361で発電されることの期待される発電量と、検出された電流量に基づく発電量とを比較することで、太陽電池361の劣化具合を判定することができる。例えば、電流量から算出された発電量が日射量から期待される発電量の90%程度の場合、太陽電池361の発電効率が10%程度落ちるほどに劣化した、と判定することができる。
【0313】
この太陽電池361の劣化判定は、複数の監視部300それぞれが行ってもよいし、統合演算部600が行ってもよい。例えば、太陽電池361の発電効率が50%程度落ちたために、太陽電池361の交換を必要とする場合、統合演算部600がその旨をモニタ700に表記してもよい。これにより太陽電池361の交換がユーザに通知される。
【0314】
(第4実施形態)
(技術分野)
本開示は、監視部、および、潅水システムに関するものである。
【0315】
(背景技術)
特開2015-231326号公報に示されるように、ソーラパネルの汚染検出方法が知られている。
【0316】
(発明が解決しようとする課題)
上記公報に記載の方法によってソーラパネルの汚染を検出できたとしても、その汚染を除去する構成が開示されていなかった。
【0317】
本開示の目的は、汚染を除去する具体的な構成を備える監視部、および、潅水システムを提供することである。
【0318】
(課題を解決するための手段)
本開示の一態様による監視部は、植物(30)が生育する野外の圃場(20)を複数に分けた複数の分割エリアそれぞれに、複数の分割エリアそれぞれに潅漑水を供給する給水装置(100)とともに設けられる監視部であって、
筐体(371)、および、筐体の開口を閉塞する、透過性の蓋部(372)を備えるケース(370)と、
ケースの内部空間において蓋部の内部空間側の内面(372b)と対向配置され、内面の裏側の外面(372a)の第1領域から入射する光の光量を検出する日射センサ(312)と、
内部空間において内面と対向配置され、外面における第1領域とは異なる第2領域から入射する光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池(361)と、
外面における第1領域および第2領域それぞれとは異なる第3領域に付着する液体を検出する液体センサ(313,318)と、
太陽電池から出力される電流を検出する電流センサ(363)と、
外面上を摺動するワイパ(373)と、
日射センサで検出される日射量から太陽電池で発電されることの期待される電力と、電流センサで検出される電流量から太陽電池で発電された電力との差分の絶対値が汚れ判定値よりも大きく、なおかつ、液体センサで外面に液体が付着していることが検出された場合、ワイパを駆動させる演算処理部(330)と、を有する。
【0319】
本開示の一態様による潅水システムは、
植物(30)が生育する野外の圃場(20)を複数に分けた複数の分割エリアそれぞれに、複数の分割エリアに潅漑水を供給する給水装置(100)とともに設けられる複数の監視部(300)と、
複数の監視部それぞれと無線通信する統合演算部(600)と、を有する潅水システムであって、
監視部は、
筐体(371)、および、筐体の開口を閉塞する、透過性の蓋部(372)を備えるケース(370)と、
ケースの内部空間において蓋部の内部空間側の内面(372b)と対向配置され、内面の裏側の外面(372a)の第1領域から入射する光の光量を検出する日射センサ(312)と、
内部空間において内面と対向配置され、外面における第1領域とは異なる第2領域から入射する光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池(361)と、
外面における第1領域および第2領域それぞれとは異なる第3領域に付着する液体を検出する液体センサ(313,318)と、
太陽電池から出力される電流を検出する電流センサ(363)と、
外面上を摺動するワイパ(373)と、
日射センサで検出される日射量と、電流センサで検出される電流と、液体センサの検出結果それぞれを取得し、これらを統合演算部に向けて出力する演算処理部(330)と、
演算処理部の出力を無線信号として統合演算部に出力する通信部(340)と、を有し、
統合演算部は、日射センサで検出される日射量から太陽電池で発電されることの期待される電力と、電流センサで検出される電流量から太陽電池で発電された電力との差分の絶対値が汚れ判定値よりも大きく、なおかつ、液体センサで外面に液体が付着していることが検出された場合、ワイパの駆動指示を含む指示信号を監視部に出力する。
【0320】
これにより外面(372a)の汚染が除去される。それとともに、ワイパの摺動によって外面(372a)が傷つくことが抑制される。
【0321】
【0322】
本実施形態の監視部300は
図32と
図33に示すセンサケース370を有する。センサケース370には日射センサ312、レインセンサ313、制御部320が収納されている。
図33では制御部320の構成要素のうちマイコン330、太陽電池361、および、電流センサ363のみを図示している。
【0323】
センサケース370はz方向を軸方向とする筒形状の筐体371と、筐体371の開口を閉塞する蓋部372と、を有する。筐体371はz方向で並ぶ2つの底面のうち、地面側の底面が閉塞され、空側の底面が開口している。蓋部372はこの空側の底面の開口を閉塞している。
【0324】
蓋部372は透過性を備えている。そのために蓋部372の外面372aに入射した太陽光などの光は、蓋部372の外面372aからその内部へと入射する。この光は蓋部372の内部を伝搬した後、外面372aの裏側の内面372bから筐体371の内部空間へと出射する。
【0325】
日射センサ312、レインセンサ313、および、太陽電池361それぞれは筐体371の内部空間において蓋部372の内面372bと対向配置されている。そのために内面372bから出射した光は日射センサ312と太陽電池361それぞれに入射する。レインセンサ313と外面372aとの間での光の伝搬が可能になっている。
【0326】
係る配置構成のため、日射センサ312によって日射量が検出される。レインセンサ313によって外面372aに付着した水滴が検出される。太陽電池361によって光エネルギーが電気エネルギーに変換される。
【0327】
ところで、光の入射する蓋部372の外面372aが汚れている場合、蓋部372の内部に光が入射しがたくなる。
【0328】
図33に示すように、日射センサ312と太陽電池361はz方向に直交する方向で離間している。そのために日射センサ312と太陽電池361それぞれが対向する外面372aの領域が異なる。日射センサ312と太陽電池361それぞれに主として入射する光の通る外面372aの領域が異なる。
【0329】
例えば、外面372aにおける日射センサ312に入射する光の通ることの期待される領域(日射領域)に汚れが付着していた場合、日射センサ312に入射する光量が少なくなる。これにより日射量の検出精度が低下する。
【0330】
同様にして、外面372aにおける太陽電池361に入射する光の通ることの期待される領域(太陽領域)に汚れが付着していた場合、太陽電池361に入射する光量が少なくなる。これにより発電量が減少する。
【0331】
レインセンサ313も日射センサ312と太陽電池361それぞれとz方向に直交する方向で離間している。そのため、外面372aにおける主としてレインセンサ313で水滴の付着を検出する領域(雨領域)は、上記した日射領域および太陽領域とは位置が異なっている。この雨領域に汚れが付着していた場合、レインセンサ313での水滴の検出精度が低下する。
【0332】
係る課題を解決するため、センサケース370の蓋部372の外面372a側にワイパ373が設けられている。筐体371内にはこのワイパ373を駆動するためのモータ374が設けられている。このモータ374の駆動によってワイパ373が外面372a上を摺動する。ワイパ373の回転によって蓋部372の外面372aに付着した汚れが払拭される。これにより蓋部372の内部に光が入射し難くなることが抑制される。
【0333】
ただし、外面372aに水などの液体が何ら付着していない場合、ワイパ373の外面372a上の摺動によって、外面372aに付着した汚れを除去することが困難になる虞がある。また、ワイパ373と外面372aとの間の摩擦が強まり、ワイパ373の外面372a上での摺動によって、外面372aに傷がつく虞がある。外面372aに傷がつくと、その傷のある場所で光の乱反射が生じ、蓋部372の内部に光が入射しがたくなる虞がある。
【0334】
<払拭処理>
そこでマイコン330は
図6に基づいて説明したセンサ処理と並行して、サイクルタスクとしての
図34に示す払拭処理を実行する。マイコン330はこの払拭処理を行うための比較値として、汚れ判定値を備えている。
【0335】
図34のステップS1010においてマイコン330は日射量と電流量を取得する。そしてマイコン330はステップS1020へ進む。
【0336】
ステップS1020へ進むとマイコン330は、日射センサ312で検出される日射量によって太陽電池361で発電されることの期待される発電量を算出する。それとともにマイコン330は電流センサ363で検出された電流量によって太陽電池361で発電された発電量を算出する。この後にマイコン330はステップS1030へ進む。
【0337】
ステップS1030へ進むとマイコン330は、日射量に基づく発電量と電流量に基づいて算出された太陽電池361の発電量との差分をとる。この差分の絶対値が汚れ判定値よりも大きいか否かを判定する。差分の絶対値が汚れ判定値よりも大きい場合、マイコン330はステップS1040へ進む。差分の絶対値が汚れ判定値以下の場合、マイコン330は払拭処理を終了する。
【0338】
なお、汚れ判定値は、例えば、太陽電池361が理論上最も酷く劣化した際に発電することの期待される発電量と、太陽電池361が一切劣化していない時に発電することの期待される発電量との差に基づいて決定することができる。汚れ判定値は、太陽電池361の劣化では説明できないほどに発電量が低下したか否かを判定するための値である。
【0339】
上記したように、外面372aにおける日射センサ312に入射する光の通ることの期待される日射領域と、外面372aにおける太陽電池361に入射する光の通ることの期待される太陽領域とは、位置が異なっている。そのためにこれら日射領域と太陽領域それぞれに対して、同等の汚れが付着することは起きにくい。日射領域と太陽領域に付着する汚れの量に差が生じることが想定される。
【0340】
そのため、上記したように日射領域を通って日射センサ312に入射する日射量に基づいて算出された発電量と、電流センサ363で検出された電流量に基づいて算出された太陽電池361の発電量との差分をとる。日射領域と太陽領域の一方に汚れが付着していた場合、2つの発電量の差分の絶対値が大きくなり、それが汚れ判定値を上回ることが期待される。
【0341】
差分の絶対値が汚れ判定値よりも大きいと判定してステップS1040へ進むとマイコン330は、レインセンサ313から降雨量を検出する。この後にマイコン330はステップS1050へ進む。
【0342】
なお、厳密に言えば、レインセンサ313で検出される降雨量は、外面372aの雨領域に付着した水滴の付着面積に相当する。雨領域に対する付着面積の割合が高まるほどに降雨量が多いと判断することができる。
【0343】
ステップS1050へ進むとマイコン330は、レインセンサ313で検出された降雨量に基づいて、外面372aに水滴が付着しているか否かを判定する。この水滴の付着判定は、例えば
図25に基づいて説明したセンサ処理の更新処理で用いた雨天判定値よりも降雨量が高いか否かに基づいて判定することができる。降雨量が雨天判定値よりも高い場合、マイコン330はステップS1060へ進む。降雨量が雨天判定値以下の場合、マイコン330は払拭処理を終了する。
【0344】
ステップS1060へ進むとマイコン330は、ワイパ373を駆動させる。これにより外面372aに付着した汚れが払拭される。
【0345】
<作用効果>
以上に示したように、マイコン330は外面372aに汚れが付着しているか否かを判定する。そしてマイコン330は外面372aに水滴が付着しているか否かを判定する。外面372aに水滴が付着している場合、マイコン330はワイパ373を駆動させる。逆に、外面372aに水滴が付着していない場合、マイコン330はワイパ373を駆動させない。係る制御を実行することで、外面372aに付着した汚れが払拭される。それとともに、ワイパ373の摺動によって外面372aに傷がつくことが抑制される。
【0346】
これまでに説明したように、監視部300は野外の圃場20に設けられる。圃場20には雨が降る。そのためにセンサケース370の外面372aに雨滴が付着する。また、圃場20に潅漑水が供給される。この潅漑水の滴下孔137から吐出される吐出方向の延長線上にセンサケース370が位置する場合、潅漑水が外面372aに付着する可能性が高まる。
【0347】
係る構成のため、例えば単にセンサケース370が路傍に設けられる構成と比べて、蓋部372の外面372aに汚れを除去するための水滴が付着しやすくなっている。外面372aに潅漑水などの汚れを除去するための液体を塗布するための専用の噴射機構を圃場20に設けなくともよくなっている。
【0348】
なおもちろんではあるが、このような噴射機構が圃場20に設けられた構成を採用することもできる。噴射機構から吐出される液体を複数のセンサケース370に対して選択的に塗布する構成を採用することもできる。複数のセンサケース370のうちのいずれのセンサケース370に対して液体を塗布させるかは、例えば、各センサケース370の外面372aに対する滴下孔137から吐出された潅漑水の付着しやすさに応じて決定することができる。
【0349】
第1実施形態で説明した散水ノズルが滴下孔137に取り付けられ、この散水ノズルからの潅漑水の噴射方向の延長線上にセンサケース370が設けられた構成を採用することができる。これによれば、給水弁152の開閉制御によって散水ノズルからの潅漑水の噴射を制御することで、センサケース370の外面372aに汚れを除去するための水滴を付着させることができる。このように、植物30への給水とセンサケース370の外面372aの汚れ除去それぞれに潅漑水が活用される構成を採用することもできる。
【0350】
払拭処理を複数の監視部300それぞれのマイコン330が実行する例を示した。しかしながらこの払拭処理を統合演算部600が実行してもよい。この場合、統合演算部600は
図34に示す払拭処理のステップS1010~ステップS1050を複数の監視部300それぞれに対して実行する。そして統合演算部600はステップS1060において、ワイパ作動の指示を含む指示信号を監視部300に向けて出力する。ワイパ作動の指示が駆動指示に相当する。
【0351】
<レインセンサ>
これまで、レインセンサ313の具体的な構成について特に言及してこなかった。レインセンサ313としては例えば以下に示す構成を採用することができる。
【0352】
図示しないが、レインセンサ313は発光部と受光部を備える構成を採用することができる。発光部は内面372b側から外面372aの雨領域に向けて光を出射する。受光部は自身に入射した光を電気信号に変換する。
【0353】
雨領域に水滴が何ら付着していない場合、発光部から出射された光の多くが外面372aと空気との間の界面で反射する。その反射光が受光部に入射する。この際に受光部で受光される光量が最大になる。受光部はこの光量に応じた電気信号をマイコン330に出力する。
【0354】
しかしながら、雨領域に水滴が付着している場合、発光部から出射された光の一部が外面372aから水滴に進み、その水滴の外に出射する。そのためにこの光が受光部で受光されなくなる。外面372aと空気との間の界面で反射される光が減り、受光部で受光される光量が減少する。この減少した光量に応じた電気信号が受光部からマイコン330に出力される。
【0355】
このように、雨領域に水滴が付着すると受光部から出力される電気信号が変化する。そしてその変化量は、雨領域に付着する水滴の付着面積が広いほどに大きくなる。このようにレインセンサ313は雨領域における水滴の付着面積に応じた電気信号を生成する。
【0356】
<降雨量検出処理>
なお、レインセンサ313とワイパ373とによって積算降雨量を算出することもできる。この場合、マイコン330はサイクルタスクとしての
図35に示す降雨量検出処理を実行する。
【0357】
図35に示すステップS1110においてマイコン330は、レインセンサ313の出力を取得する。次にマイコン330はステップS1120へ進む。
【0358】
ステップS1120へ進むとマイコン330は、レインセンサ313の出力に基づいて、雨領域に水滴が付着しているか否かを判定する。雨領域に水滴が付着している場合、マイコン330はステップS1130へ進む。雨領域に水滴が付着していない場合、マイコン330はステップS1150へ進む。
【0359】
ステップS1130へ進むとマイコン330は、ワイパ373を作動し始める。これにより外面372aに付着した水滴が除去される。この際、マイコン330はステップS1140の処理を実行する。すなわちマイコン330はカウンタを作動させて、ワイパ373が外面372aを払拭する回数を計測する。この後にマイコン330はステップS1150へ進む。
【0360】
ステップS1150へ進むとマイコン330は、監視時間が経過したか否かを判定する。監視時間が経過した場合、マイコン330はステップS1160へ進む。監視時間が経過していない場合、マイコン330はステップS1110~ステップS1150を繰り返す。これにより監視時間内での水滴付着の判定が継続される。監視時間内でのワイパ373による払拭が継続されるとともに監視時間内におけるワイパ373の払拭回数が計測される。
【0361】
ステップS1160へ進むとマイコン330は、レインセンサ313で検出された水滴の付着面積、ワイパ373の監視時間内における払拭回数とに基づいて、監視時間内における積算降雨量を算出する。そしてマイコン330はこの積算降雨量を含む雨情報を、通信部340から統合通信部400に出力する。
【0362】
<カメラを用いた降雨量検出処理>
なお、
図36に示すように、監視部300がレインセンサ313の代わりにカメラ318を備える構成を採用することもできる。カメラ318は外面372aの上方側を撮像する。この構成の場合、監視部300のマイコン330はサイクルタスクとしての
図37に示すカメラ318を用いた降雨量検出処理を実行する。レインセンサ313とカメラ318が液体センサに相当する。
【0363】
図37に示すステップS1210においてマイコン330は、日射量を取得する。次にマイコン330はステップS1220へ進む。
【0364】
ステップS1220へ進むとマイコン330は、取得した日射量に基づいて昼間か否かを判定する。この昼間判定は、例えば
図25に基づいて説明したセンサ処理の更新処理で用いた昼夜判定値よりも日射量が高いか否かに基づいて判定することができる。日射量が昼夜判定値よりも高い場合、マイコン330はステップS1230へ進む。日射量が昼夜判定値以下の場合、マイコン330は降雨量検出処理を終了する。
【0365】
ステップS1230へ進むとマイコン330は、カメラ318を駆動し始める。そしてカメラ318によって外面372aの上方側を撮影させる。この後にマイコン330はステップS1240へ進む。
【0366】
ステップS1240へ進むとマイコン330は、カメラ318で撮影された画像に基づいて、外面372aに水滴が付着しているか否かを判定する。外面372aに水滴が付着している場合、マイコン330はステップS1250へ進む。外面372aに水滴が付着していない場合、マイコン330はステップS1280へ進む。
【0367】
外面372aに水滴が付着しているか否かの判定は、例えば、画像の焦点のずれが生じているか否かに基づいて行うことができる。
【0368】
ステップS1250へ進むとマイコン330は、外面372aに付着している水滴の付着面積が大きいか否かを判定する。付着面積が大きい場合、マイコン330はステップS1260へ進む。付着面積が小さい場合、マイコン330はステップS1280へ進む。なお、この付着面積の大小判定については、上記したように、例えば雨天判定値を用いることができる。
【0369】
ステップS1260へ進むとマイコン330は、ワイパ373を作動し始める。これにより外面372aに付着した水滴が除去される。この際、マイコン330はステップS1270の処理を実行する。マイコン330はカウンタを作動させて、ワイパ373が外面372aを払拭する回数を計測する。この後にマイコン330はステップS1280へ進む。
【0370】
ステップS1280へ進むとマイコン330は、監視時間が経過したか否かを判定する。監視時間が経過した場合、マイコン330はステップS1290へ進む。監視時間が経過していない場合、マイコン330はステップS1230~ステップS1280を繰り返す。これにより監視時間内での画像取得による水滴付着の判定が継続される。監視時間内でのワイパ373による払拭が継続されるとともに、監視時間内におけるワイパ373の払拭回数が計測される。
【0371】
ステップS1290へ進むとマイコン330は、カメラ318で検出された水滴の付着面積と、ワイパ373の監視時間内における払拭回数とに基づいて、監視時間内における積算降雨量を算出する。マイコン330はこの積算降雨量を含む雨情報を、通信部340から統合通信部400に出力する。
【0372】
(第5実施形態)
(技術分野)
本開示は、監視部に関するものである。
【0373】
(背景技術)
特許第3444192号公報に示されるように、車両の自動運転システムに含められる撮像環境推定装置が知られている。
【0374】
(発明が解決しようとする課題)
上記公報に記載の撮像環境推定装置は、道路上で車両から離間するように延びる白線と撮像装置との距離、および、撮像した白線のボケ度合いに基づく近似直線を算出している。そして撮像環境推定装置は、この近似直線の傾きの大きさに基づいて、霧と降雨とを判別している。
【0375】
係る判別を行っているため、検出対象としての車両から離間するように延びる白線がない場合、霧と降雨とを判別するための近似直線を算出することができなかった。そのために霧を検出することができなくなる虞がある。
【0376】
本開示の目的は、霧を検出することのできる監視部を提供することである。
【0377】
(課題を解決するための手段)
本開示の一態様による監視部は、第1面(380b)に基準画像(384)の設けられた上部(376)と、
基準画像を撮影するカメラ(318)と、
第2面(379a)にカメラの一部が設けられる態様で、カメラを収納する下部(375)と、
第1面と第2面とが離間しつつ対向する態様で上部と下部とを連結するとともに、第1面と第2面との間の対向空間と外部雰囲気とを連通するための連通窓(385c)の形成された支持部(385)と、
連通窓よりも開口面積が狭く、連通窓と外部雰囲気とを連通する連通孔(386a)が形成されるとともに、連通窓を覆うように支持部に連結される庇部(386)と、
カメラで撮影された基準画像の焦点ズレに基づいて、第1面に水滴が生じたか否かを判定する演算処理部(330)と、を有する。
【0378】
これによれば、降雨による水滴ではなく、結露による水滴が第1面(380b)に付着しやすくなる。そのため、第1面(380b)に設けられた基準画像(384)の焦点ズレに基づくことで、霧が発生しているか否かを検出することができる。
【0379】
【0380】
図38に示すように、本実施形態の監視部300は第1センサケース375、第2センサケース376、および、連結ケース377を有する。第1センサケース375と第2センサケース376が連結ケース377を介してz方向に並んでいる。そして第1センサケース375と第2センサケース376は連結ケース377を介して機械的に連結されている。これら3者の一部は、樹脂成形などによって一体的に連結されていてもよい。
【0381】
第1センサケース375には、制御部320の構成要素のうち太陽電池361以外の構成要素が収納されている。また
図39に示すように、第1センサケース375にはカメラ318が収納されている。
図40に示すように、第2センサケース376には日射センサ312と太陽電池361が収納されている。これら第1センサケース375に収納された収納物と第2センサケース376に収納された収納物とは、連結ケース377を介して延長した配線などを介して電気的に接続されている。
【0382】
なお、
図40では制御部320の構成要素のうちマイコン330、太陽電池361、および、電流センサ363を図示している。マイコン330と電流センサ363は第1センサケース375に収納されるが、
図40では、これらがz方向に沿って第2センサケース376に投影された位置を破線で示している。
【0383】
第1センサケース375は筒形状の第1筐体378と、第1筐体378の開口を閉塞する第1蓋部379と、を有する。第1筐体378は底部と側壁を有する。底部はz方向で並ぶ2面を有する。側壁はこの2面の内の空側に位置する1つの面からz方向に起立している。それとともに側壁はz方向まわりの周方向で環状に延びている。側壁の先端側で第1筐体378の開口が区画されている。
【0384】
第1蓋部379はz方向で並ぶ第1センサケース375側の下面とその裏側の上面379aを有する。第1蓋部379は第1下面が第1筐体378の底部とz方向で対向する態様で、第1筐体378に連結される。第1蓋部379によって、第1筐体378の開口が閉塞されている。上面379aが第2面に相当する。
【0385】
第1蓋部379には、下面と上面379aとをz方向に貫通する貫通孔が形成されている。この貫通孔にカメラ318が設けられている。カメラ318の先端側が貫通孔の上面379a側の開口から突出している。このカメラ318によって上面379aの上方側が撮影される。
【0386】
本実施形態では、カメラ318の設けられる貫通孔の上面379aの形成位置と、上面379aの幾何学的中心とが異なっている。ただし、両者の位置は一致していてもよい。
【0387】
本実施形態では、上面379aが平坦になっている。しかしながら、上面379aは平坦でなくともよい。例えば、上面379aは貫通孔の開口位置を頂点として、第1筐体378から離れるようにz方向に突起していてもよい。係る構成の場合、例え上面379aに水滴が付着したとしても、貫通孔に設けられたカメラ318から離れるように、水滴が上面379a上を流れ落ちやすくなる。
【0388】
また、カメラ318における貫通孔の上面379a側の開口から突出した部位よりも上面379aの塗れ性を高めてもよい。換言すれば、カメラ318における貫通孔の上面379a側の開口から突出した部位の撥水性を上面379aよりも高めてもよい。係る構成を採用することで、カメラ318に水滴が付着した状態が維持されることが抑制される。さらに言えば、カメラ318のレンズを払拭するための専用ワイパが上面379aに設けられてもよい。
【0389】
第2センサケース376は筒形状の第2筐体380と、第2筐体380の開口を閉塞する第2蓋部381と、を有する。第2筐体380は底部と側壁を有する。底部はz方向で並ぶ下外面380bとその裏側の下内面を有する。側壁はこの下内面からz方向に起立している。それとともに側壁は周方向で環状に延びている。側壁の先端側で第2筐体380の開口が区画されている。下外面380bが第1面に相当する。
【0390】
第2蓋部381はz方向で並ぶ上外面381aとその裏側の上内面を有する。第2蓋部381は上内面が底部の下内面とz方向で対向する態様で、第2筐体380に連結される。第2蓋部381によって、第2筐体380の開口が閉塞されている。第2センサケース376の内部空間はz方向において第2蓋部381の上内面と底部の下内面との間に位置している。
【0391】
第2筐体380と第2蓋部381それぞれは透過性を備えている。そのために第2蓋部381の上外面381aに入射した光は、上外面381aから第2蓋部381の内部へと入射する。この光は第2蓋部381の内部を伝搬した後、上内面から第2センサケース376の内部空間へと出射する。反対に、第2筐体380の底部の下外面380bに入射した光は、下外面380bから底部の内部へと入射する。この光は底部の内部を伝搬した後、下内面から第2センサケース376の内部空間へと出射する。若しくは、この光は底部と側壁を伝搬した後、第2蓋部381の内部へと入射する。
【0392】
日射センサ312と太陽電池361それぞれは第2蓋部381の上内面とz方向で対向配置されている。そのためにこの上内面から第2センサケース376の内部空間に出射した光は日射センサ312と太陽電池361それぞれに入射する。
【0393】
図40に示すように第2蓋部381の上外面381a側に上側ワイパ382が設けられている。
図41に示すように第2筐体380の下外面380b側に下側ワイパ383が設けられている。そして第2センサケース376にはこれら上側ワイパ382と下側ワイパ383それぞれを駆動するためのモータ374が設けられている。
【0394】
このモータ374の駆動によって上側ワイパ382が上外面381a上を摺動する。モータ374の駆動によって下側ワイパ383が下外面380b上を摺動する。これにより上外面381aと下外面380bそれぞれに付着した水滴や汚れが払拭される。
【0395】
図38と
図39に示すように、第2センサケース376の下外面380bと第1センサケース375の上面379aとがz方向で離間しつつ対向するように、第2センサケース376と第1センサケース375の相対位置が連結ケース377によって定められている。
【0396】
上記したように第1センサケース375には上面379aの上方側を撮影するカメラ318が設けられている。このカメラ318は第2センサケース376の下外面380bとz方向で対向している。それとともにカメラ318は透過性を備える第2センサケース376の上外面381aとz方向で並んでいる。カメラ318はこれら下外面380bと上外面381aそれぞれの一部を撮影可能になっている。
【0397】
なお、カメラ318の視野角に位置する下外面380bと上外面381aとの間の領域に空気があってもよいし、なくともよい。視野角に位置する下外面380bと上外面381aとの間の領域に空気がない構成は、例えば、この視野角に位置する第2筐体380の底部の下内面と第2蓋部381の上内面との間の領域を透過性の材料で占有することで実現することができる。この透過性の材料としては、例えば、第2筐体380や第2蓋部381の形成材料を採用することができる。この視野角に位置する下内面と上内面との間の領域が、第2筐体380若しくは第2蓋部381の一部によって占有されてもよい。
【0398】
図40と
図41に、カメラ318で撮影される領域(撮影領域SA)を一点鎖線で囲って示す。この撮影領域SAは第2センサケース376に収納される日射センサ312、太陽電池361、および、モータ374それぞれとz方向に直交する方向で離間している。撮影領域SAは上外面381aにおける日射センサ312に入射する光の通ることの期待される日射領域と上外面381aにおける太陽電池361に入射する光の通ることの期待される太陽領域それぞれとz方向に直交する方向で離間している。
【0399】
図41に示すように、下外面380bにおける撮影領域SA内には、基準画像としての霧記号384が設けられている。カメラ318のピント(焦点)はこの霧記号384に合わせられている。そのために下外面380bに水滴などが付着していない場合、カメラ318によって撮影される霧記号384の画像の焦点が合う。しかしながら、下外面380bに水滴などが付着すると、水滴による光の乱反射のため、カメラ318によって撮影される霧記号384の画像の焦点がずれる。
【0400】
図38と
図39に示すように、連結ケース377は支持部385と庇部386を有する。支持部385はz方向を軸方向とする筒形状を成している。支持部385におけるz方向で並ぶ2つの底面それぞれが開口している。支持部385はこれら2つの底面の一部として、z方向まわりの周方向に環状に延びる上環状端面と下環状端面を有する。
【0401】
支持部385の上環状端面が第2センサケース376の下外面380bの縁側とz方向で対向配置されている。支持部385と第2センサケース376とは接着剤や嵌合などによって機械的に連結されている。
【0402】
支持部385の下環状端面が第1センサケース375の上面379aの縁側とz方向で対向配置されている。支持部385と第1センサケース375とは接着剤や嵌合などによって機械的に連結されている。
【0403】
支持部385は上環状端面と下環状端面とを連結する環状の内側面385aと外側面385bとを有する。内側面385aによって支持部385の中空が区画されている。この中空はz方向において第2センサケース376の下外面380bと第1センサケース375の上面379aとの間に位置している。外側面385bは外部雰囲気に晒される。
【0404】
図39に示すように、支持部385には内側面385aと外側面385bとを貫通して、支持部385の中空と外部雰囲気とを連通する連通窓385cが形成されている。連通窓385cはz方向に直交する方向に開口している。すなわち連通窓385cは水平方向に開口している。支持部385の中空の少なくとも一部が対向空間に相当する。
【0405】
図38に示すように、庇部386は連通窓385cを覆うように支持部385に設けられる。庇部386には連通窓385cよりも開口面積の狭い連通孔386aが形成されている。
【0406】
この連通孔386aはz方向において地面側に開口している。そして連通孔386aは連通窓385cと連通している。係る構成のため、地面側から庇部386に向かう外気が、連通孔386aと連通窓385cを介して支持部385の中空に流れ込む。これに反して、空側から庇部386に向かう雨滴などが、連通窓385cを介して支持部385の中空に浸入することが、庇部386によって抑制されている。
【0407】
なお、連通孔386aと連通窓385cとの間の連通経路の構成は特に限定されない。連通経路の構成としては、連通孔386aから連通窓385cに雨水などの液体が浸入することを抑制する構成であれば適宜採用することができる。例えば、連通経路の具体的な構成としては、少なくとも1回は折り返して延長することで経路長が長くなったラビリンス構造を採用することもできる。
【0408】
支持部385の中空は第1センサケース375の上面379aと第2センサケース376の下外面380bとの間に位置している。そのため、上面379aに設けられたカメラ318と下外面380bに設けられた霧記号384それぞれが支持部385の中空に設けられる。カメラ318と霧記号384それぞれが連通孔386aと連通窓385cを介して支持部385の中空に流れ込んだ外気に晒されている。
【0409】
例えば圃場20に霧が発生した場合、大量の水分を含んだ外気が支持部385の中空に流れ込む。この結果、霧記号384の設けられた下外面380bに結露が生じる。この結露によって水滴の付着した下外面380bの霧記号384をカメラ318によって撮影すると、水滴による光の乱反射のため、焦点のずれた霧記号384の画像が取得される。
【0410】
これに反して、圃場20に降雨が発生した場合、その雨滴が支持部385の中空に浸入することが抑制される。多少の水分を含んだ外気が支持部385の中空に流れ込むだけである。そのため、霧記号384の設けられた下外面380bに水滴が付着することが抑制される。この水滴の付着の抑制された下外面380bの霧記号384をカメラ318によって撮影すると、焦点のあった霧記号384の画像が取得される。
【0411】
<霧検出処理>
監視部300のマイコン330はサイクルタスクとしての
図42に示す霧検出処理を実行する。マイコン330は
図6に基づいて説明したセンサ処理と並行して、この霧検出処理を実行する。
【0412】
図42に示すステップS1310においてマイコン330は、日射量を取得する。次にマイコン330はステップS1320へ進む。
【0413】
ステップS1320へ進むとマイコン330は、取得した日射量に基づいて昼間か否かを判定する。この昼間判定は、例えば、上記した昼夜判定値よりも日射量が高いか否かに基づいて判定することができる。日射量が昼夜判定値よりも高い場合、マイコン330はステップS1330へ進む。日射量が昼夜判定値以下の場合、マイコン330は霧検出処理を終了する。
【0414】
ステップS1330へ進むとマイコン330は、カメラ318を駆動し始める。そしてカメラ318によって下外面380bの霧記号384を撮影させる。この後にマイコン330はステップS1340へ進む。
【0415】
ステップS1340へ進むとマイコン330は、カメラ318で撮影された霧記号384の画像がぼやけているか否かを判定する。画像がぼやけている場合、マイコン330はステップS1350へ進む。画像がぼやけていない場合、マイコン330は霧検出処理を終了する。
【0416】
ステップS1350へ進むとマイコン330は、下側ワイパ383を作動し始める。これにより下外面380bに付着した水滴や汚れが除去される。なおこの際、マイコン330は上側ワイパ382も作動し始める。これにより上外面381aに付着した水滴や汚れが除去される。この後にマイコン330はステップS1360へ進む。
【0417】
ステップS1360へ進むとマイコン330は、除去時間が経過したか否かを判定する。除去時間が経過した場合、マイコン330は霧検出処理を終了する。除去時間が経過していない場合、マイコン330はステップS1350~ステップS1360を繰り返し、下側ワイパ383と上側ワイパ382の作動を継続する。
【0418】
<作用効果>
以上に示したように、カメラ318によって霧記号384の画像を取得する。そしてその画像に含まれる霧記号384の焦点のずれを判定する。これにより、圃場20に霧が発生しているか否かを判定することができる。
【0419】
なお、霧検出処理の実行にかかわらずに、下側ワイパ383と上側ワイパ382による下外面380bと上外面381aの払拭を行ってもよい。そしてこの払拭の後にカメラ318のピントを上外面381aに合わせて、
図37に基づいて説明したカメラ318を用いた降雨量検出処理を実行してもよい。これにより降雨量が検出される。若しくは、上外面381aに霧記号384と同様の雨記号を設け、この雨記号のぼやけ具合に基づいて降雨を検出してもよい。
【0420】
本実施形態では下外面380bに下側ワイパ383が設けられる例を示した。しかしながら、例えば、下外面380bにおける、カメラ318の視野角に含まれるとともに、霧記号384を除く範囲に撥水処理を施しておけば、下側ワイパ383を省略することもできる。また、下外面380bに付着した水滴を吹き飛ばすための超音波を発生する超音波素子を監視部300が備える構成を採用することもできる。
【0421】
(その他変形例)
第1実施形態では、横配管134が成熟した植物30の頂点よりもz方向において地面から離間している例を示した。しかしながら、横配管134は成熟した植物30の頂点よりもz方向において地面側に位置してもよい。
【0422】
第1実施形態では、横配管134と縦配管133それぞれが圃場20の空側に設けられる例を示した。しかしながら、横配管134と縦配管133のうちの少なくとも一方が地面に設けられてもよい。横配管134と縦配管133のうちの少なくとも一方が地中に設けられてもよい。
【0423】
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態が本開示に示されているが、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0424】
(技術的思想)
本明細書には、以下に示す種々の技術的思想が含まれている。
【0425】
<天候予測>
[技術的思想1]
植物(30)の生育する野外の圃場(20)に潅漑水を供給する給水装置(100)を制御することで、前記圃場に供給される潅漑水の供給時刻と量を制御する制御装置であって、
前記圃場を複数に分けた分割エリアそれぞれに設けられた環境センサ(310)から入力される環境値を格納する格納部(500,620)と、
複数の前記分割エリアそれぞれの前記環境値に基づいて、複数の前記分割エリアそれぞれの天候予測を行い、前記天候予測に基づいて、潅水期間において複数の前記分割エリアそれぞれに個別に供給する潅漑水の供給時刻と量の決定された潅水スケジュールを演算する処理演算部(610)と、
前記潅水スケジュールに基づく、複数の前記分割エリアそれぞれへの潅漑水の供給と非供給とを制御する制御信号を前記給水装置に出力する出力部(332,630)と、を有する制御装置。
[技術的思想2]
前記処理演算部は、複数の前記分割エリアそれぞれの前記環境値の時間変化と、前記圃場での地理的な位置の異なる複数の前記分割エリアそれぞれの前記環境値の差とその時間変化とに基づいて、複数の前記分割エリアそれぞれの前記天候予測を行う技術的思想1に記載の制御装置。
[技術的思想3]
前記処理演算部は、前記圃場での地理的な位置の異なる複数の前記分割エリアそれぞれの前記環境値の差とその時間変化とに基づいて、天候変化の起きている前記分割エリアと天候変化の起きていない前記分割エリアとを特定し、天候変化の起きている前記分割エリアと天候変化の起きていない前記分割エリアの地理的な離間距離を算出し、前記離間距離と複数の前記分割エリアの前記環境値の時間変化に基づいて、複数の前記分割エリアそれぞれの前記天候予測を行う技術的思想2に記載の制御装置。
[技術的思想4]
前記格納部には、前記環境値の他に、外部情報源(1000)から入力される前記圃場の天気予報が格納され、
前記処理演算部は、前記天候予測と前記天気予報とに基づいて、前記潅水スケジュールを決定する技術的思想1~3いずれか1項に記載の制御装置。
[技術的思想5]
プロセッサにより実行される潅水プログラムであって、
前記プロセッサに、
植物(30)の生育する野外の圃場(20)を複数に分けた分割エリアそれぞれに設けられた環境センサ(310)から入力される環境値を取得させ、
複数の前記分割エリアそれぞれの前記環境値に基づいて、複数の前記分割エリアそれぞれの天候予測を演算させ、
前記天候予測に基づいて、潅水期間において複数の前記分割エリアそれぞれに個別に供給する潅漑水の供給時刻と量の決定された潅水スケジュールを演算させ、
前記潅水スケジュールに基づく前記分割エリアへの潅漑水の供給と非供給とを制御する制御信号を出力させる潅水プログラム。
【0426】
<間欠駆動間隔>
[技術的思想1]
植物(30)の生育する野外の圃場(20)を複数に分けた分割エリアそれぞれに設けられた複数の監視部(300)と、
複数の前記監視部それぞれと無線通信する統合演算部(600)と、を有する潅水システムであって、
前記監視部は、
前記統合演算部と無線信号を送受信する通信部(340)と、
前記分割エリアの環境値を検出する環境センサ(310)と、
第1モードと前記第1モードよりも消費電力の多い第2モードとを備え、ウェイクアップ信号が入力されると前記第1モードから前記第2モードに切り換わって演算処理を実行する演算処理部(330)と、
前記ウェイクアップ信号を前記演算処理部に起床周期で出力する起床部(350)と、
光エネルギーを電気エネルギーに変換し、前記電気エネルギーを電力として蓄電するとともに、蓄電された電力を前記演算処理部に供給する発電部(360)と、を有し、
前記統合演算部は、前記発電部に蓄電された蓄電量と、前記環境センサで検出された前記環境値と、に基づいて前記起床周期を決定する潅水システム。
[技術的思想2]
前記統合演算部は、前記蓄電量が充電値以下の場合、前記蓄電量に基づいて前記起床周期を決定し、前記蓄電量が前記充電値よりも高い場合、前記蓄電量と前記環境値に基づいて前記起床周期を決定する技術的思想1に記載の潅水システム。
[技術的思想3]
前記環境値には日射量が含まれ、
前記統合演算部は、前記日射量が昼夜判定値以下の場合、前記蓄電量に基づいて前記起床周期を決定し、前記日射量が昼夜判定値よりも高い場合、前記蓄電量と前記日射量に基づいて前記起床周期を決定する技術的思想1または技術的思想2に記載の潅水システム。
[技術的思想4]
前記統合演算部は、前記蓄電量と前記日射量それぞれの時間変化を検出し、前記蓄電量の増減傾向に合わせて増減補正された前記蓄電量、若しくは、前記蓄電量の増減傾向に合わせて増減補正された前記蓄電量と前記日射量の増減傾向に合わせて増減補正された前記日射量に基づいて前記起床周期を決定する技術的思想3に記載の潅水システム。
[技術的思想5]
前記統合演算部は、前記日射量が昼夜判定値よりも高い場合、前記蓄電量が増大するほどに前記起床周期を短くし、前記日射量が増大するほどに前記起床周期を短くする技術的思想3または技術的思想4に記載の潅水システム。
[技術的思想6]
前記環境値には降雨量が含まれ、
前記統合演算部は、前記降雨量が雨天判定値以下の場合、前記蓄電量に基づいて前記起床周期を決定し、前記降雨量が前記雨天判定値よりも高い場合、前記蓄電量と前記降雨量に基づいて前記起床周期を決定する技術的思想1~5いずれか1項に記載の潅水システム。
[技術的思想7]
前記統合演算部は、前記蓄電量と前記降雨量それぞれの時間変化を検出し、前記蓄電量の増減傾向に合わせて増減補正された前記蓄電量、若しくは、前記蓄電量の増減傾向に合わせて増減補正された前記蓄電量と前記降雨量の増減傾向に合わせて増減補正された前記降雨量に基づいて前記起床周期を決定する技術的思想6に記載の潅水システム。
[技術的思想8]
前記統合演算部は、前記降雨量が前記雨天判定値よりも高い場合、前記蓄電量が増大するほどに前記起床周期を短くし、前記降雨量が増大するほどに前記起床周期を長くする技術的思想6または技術的思想7に記載の潅水システム。
[技術的思想9]
前記統合演算部は、前記蓄電量と前記環境値とに基づいて、前記第2モードの前記演算処理部が実行する前記演算処理の処理負荷を決定する技術的思想1~8いずれか1項に記載の潅水システム。
[技術的思想10]
前記起床部は時間を刻んでおり、
前記統合演算部は、前記蓄電量、前記環境値、および、前記起床部で示される時刻に基づいて、前記起床周期を決定する技術的思想1~8いずれか1項に記載の潅水システム。
[技術的思想11]
前記統合演算部は、前記蓄電量、前記環境値、および、前記時刻に基づいて、前記第2モードの前記演算処理部が実行する前記演算処理の処理負荷を決定する技術的思想10に記載の潅水システム。
[技術的思想12]
前記統合演算部は、前記起床周期が短くなるほどに前記処理負荷を強め、前記起床周期が長くなるほどに前記処理負荷を弱める技術的思想9または技術的思想11に記載の潅水システム。
[技術的思想13]
前記監視部は成熟した前記植物の頂点よりも地面から離間している技術的思想1~12いずれか1項に記載の潅水システム。
[技術的思想14]
植物(30)の生育する野外の圃場(20)を複数に分けた分割エリアそれぞれに設けられる監視部であって、
前記分割エリアの環境値を検出する環境センサ(310)と、
第1モードと前記第1モードよりも消費電力の多い第2モードとを備え、ウェイクアップ信号が入力されると前記第1モードから前記第2モードに切り換わって演算処理を実行する演算処理部(330)と、
前記ウェイクアップ信号を前記演算処理部に起床周期で出力する起床部(350)と、
光エネルギーを電気エネルギーに変換し、前記電気エネルギーを電力として蓄電するとともに、蓄電された電力を前記演算処理部に供給する発電部(360)と、を有し、
前記演算処理部は、前記発電部に蓄電された蓄電量と、前記環境センサで検出された環境値と、に基づいて前記起床周期を決定する監視部。
【0427】
<汚染除去>
[技術的思想1]
植物(30)が生育する野外の圃場(20)を複数に分けた複数の分割エリアそれぞれに、複数の前記分割エリアそれぞれに潅漑水を供給する給水装置(100)とともに設けられる監視部であって、
筐体(371)、および、前記筐体の開口を閉塞する、透過性の蓋部(372)を備えるケース(370)と、
前記ケースの内部空間において前記蓋部の前記内部空間側の内面(372b)と対向配置され、前記内面の裏側の外面(372a)の第1領域から入射する光の光量を検出する日射センサ(312)と、
前記内部空間において前記内面と対向配置され、前記外面における前記第1領域とは異なる第2領域から入射する光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池(361)と、
前記外面における前記第1領域および前記第2領域それぞれとは異なる第3領域に付着する液体を検出する液体センサ(313,318)と、
前記太陽電池から出力される電流を検出する電流センサ(363)と、
前記外面上を摺動するワイパ(373)と、
前記日射センサで検出される日射量から前記太陽電池で発電されることの期待される電力と、前記電流センサで検出される電流量から前記太陽電池で発電された電力との差分の絶対値が汚れ判定値よりも大きく、なおかつ、前記液体センサで前記外面に液体が付着していることが検出された場合、前記ワイパを駆動させる演算処理部(330)と、を有する監視部。
[技術的思想2]
複数の前記監視部のうちの少なくとも1つは、前記給水装置から前記圃場へと吐出される潅漑水の吐出方向の延長線上に設けられている技術的思想1に記載の監視部。
[技術的思想3]
植物(30)が生育する野外の圃場(20)を複数に分けた複数の分割エリアそれぞれに、複数の前記分割エリアに潅漑水を供給する給水装置(100)とともに設けられる複数の監視部(300)と、
複数の前記監視部それぞれと無線通信する統合演算部(600)と、を有する潅水システムであって、
前記監視部は、
筐体(371)、および、前記筐体の開口を閉塞する、透過性の蓋部(372)を備えるケース(370)と、
前記ケースの内部空間において前記蓋部の前記内部空間側の内面(372b)と対向配置され、前記内面の裏側の外面(372a)の第1領域から入射する光の光量を検出する日射センサ(312)と、
前記内部空間において前記内面と対向配置され、前記外面における前記第1領域とは異なる第2領域から入射する光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池(361)と、
前記外面における前記第1領域および前記第2領域それぞれとは異なる第3領域に付着する液体を検出する液体センサ(313,318)と、
前記太陽電池から出力される電流を検出する電流センサ(363)と、
前記外面上を摺動するワイパ(373)と、
前記日射センサで検出される日射量と、前記電流センサで検出される電流と、前記液体センサの検出結果それぞれを取得し、これらを前記統合演算部に向けて出力する演算処理部(330)と、
前記演算処理部の出力を無線信号として前記統合演算部に出力する通信部(340)と、を有し、
前記統合演算部は、前記日射センサで検出される日射量から前記太陽電池で発電されることの期待される電力と、前記電流センサで検出される電流量から前記太陽電池で発電された電力との差分の絶対値が汚れ判定値よりも大きく、なおかつ、前記液体センサで前記外面に液体が付着していることが検出された場合、前記ワイパの駆動指示を含む指示信号を前記監視部に出力する潅水システム。
【0428】
<霧検出>
[技術的思想1]
第1面(380b)に基準画像(384)の設けられた上部(376)と、
前記基準画像を撮影するカメラ(318)と、
第2面(379a)に前記カメラの一部が設けられる態様で、前記カメラを収納する下部(375)と、
前記第1面と前記第2面とが離間しつつ対向する態様で前記上部と前記下部とを連結するとともに、前記第1面と前記第2面との間の対向空間と外部雰囲気とを連通するための連通窓(385c)の形成された支持部(385)と、
前記連通窓よりも開口面積が狭く、前記連通窓と前記外部雰囲気とを連通する連通孔(386a)が形成されるとともに、前記連通窓を覆うように前記支持部に連結される庇部(386)と、
前記カメラで撮影された前記基準画像の焦点ズレに基づいて、前記第1面に水滴が生じたか否かを判定する演算処理部(330)と、を有する監視部。
[技術的思想2]
前記上部は透過性を有し、
前記カメラは前記基準画像だけではなく、前記上部における前記第1面とは反対側の前記外部雰囲気に晒される外面(381a)も撮影し、
前記演算処理部は前記カメラで撮影された前記外面の画像に基づいて、前記外面に水滴が付着しているか否かを判定する技術的思想1に記載の監視部。
[技術的思想3]
前記上部には前記外面を払拭する上側ワイパ(382)が設けられており、
前記演算処理部は、前記外面に水滴が付着していると判定すると、前記上側ワイパを駆動して、前記外面を払拭する技術的思想2に記載の監視部。
[技術的思想4]
前記上部には、前記外面から入射する光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池(361)、および、前記外面から入射する光の光量を検出する日射センサ(312)のうちの少なくとも1つが設けられている技術的思想2または技術的思想3に記載の監視部。
[技術的思想5]
前記上部には前記第1面を払拭する下側ワイパ(383)が設けられており、
前記演算処理部は、前記第1面に結露が生じていると判定すると、前記下側ワイパを駆動して、前記第1面を払拭する技術的思想1~4いずれか1項に記載の監視部。
[技術的思想6]
前記第2面は前記カメラの設けられる場所を頂点として、前記上部側に突起している技術的思想1~5いずれか1項に記載の監視部。
[技術的思想7]
前記カメラにおける前記第2面側に設けられた部位は、前記第2面よりも撥水性が高い技術的思想1~6いずれか1項に記載の監視部。
[技術的思想8]
植物(30)が生育する野外の圃場(20)に設けられる技術的思想1~7いずれか1項に記載の監視部。
【符号の説明】
【0429】
10…潅水システム、20…圃場、30…植物、100…給水装置、200…制御装置、310…環境センサ、312…日射センサ、313…レインセンサ、318…カメラ、330…マイコン、332…信号出力部、333…記憶部、334…処理部、350…RTC、360…発電部、361…太陽電池、363…電流センサ、370…センサケース、371…筐体、372…蓋部、372a…外面、372b…内面、373…ワイパ、375…第1センサケース、376…第2センサケース、379a…上面、380b…下外面、381a…上外面、382…上側ワイパ、383…下側ワイパ、384…霧記号、385…支持部、385c…連通窓、386…庇部、386a…連通孔、500…情報格納部、600…統合演算部、610…情報処理演算機器、620…メモリ、630…通信装置、1000…外部情報源